III.概要
ある実施形態においては、ANGPTL4と特異的に結合し、かつANGPTL4の少なくとも1つの活性を中和するモノクローナル抗体を提供する。ある実施形態では、該モノクローナル抗体がマウスモノクローナル抗体である。ある実施形態では、該モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である。ある実施形態では、該モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である。ある実施形態では、該モノクローナル抗体がLPL活性を増加させる。ある実施形態では、該モノクローナル抗体がin vivoで少なくとも1つの血清脂質のレベルを低下させる。
ある実施形態においては、該モノクローナル抗体が、配列番号1または配列番号50の残基21から残基174までの領域内にあるエピトープと結合する。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が、配列番号2の残基21から残基169までの領域内にあるエピトープと結合する。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が14D12である。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が15F2である。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が90B4である。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が14D12と同じエピトープに特異的に結合する。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が15F2と同じエピトープに特異的に結合する。ある実施形態では、該モノクローナル抗体が90B4と同じエピトープに特異的に結合する。
ある実施形態においては、ANGPTL4と特異的に結合する、重鎖と軽鎖を含む抗体を提供し、ここで該重鎖は、配列番号12〜14のいずれか1つに示すアミノ酸配列;配列番号21、39および20のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDR;または配列番号27〜29のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含むものであり、そして該抗体はANGPTL4の少なくとも1つの活性を中和する。ある実施形態においては、ANGPTL4と特異的に結合する、重鎖と軽鎖を含む抗体を提供し、ここで該軽鎖は、配列番号16〜18のいずれか1つに示すアミノ酸配列;配列番号30〜32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDR;または配列番号33〜35のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含むものであり、そして該抗体はANGPTL4の少なくとも1つの活性を中和する。
ある実施形態においては、重鎖が配列番号12〜14のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。ある実施形態では、重鎖が配列番号21、39および20のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む、抗体を提供する。ある実施形態では、重鎖が配列番号27〜29のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む、抗体を提供する。ある実施形態では、軽鎖が配列番号16〜18のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。ある実施形態では、軽鎖が配列番号30〜32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む、抗体を提供する。ある実施形態では、軽鎖が配列番号33〜35のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む、抗体を提供する。
ある実施形態においては、抗体が配列番号12に示すアミノ酸配列を含む重鎖を含む。ある実施形態では、抗体が配列番号13に示すアミノ酸配列を含む重鎖を含む。ある実施形態では、抗体が配列番号14に示すアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
ある実施形態においては、抗体が配列番号16に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。ある実施形態では、抗体が配列番号17に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。ある実施形態では、抗体が配列番号18に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
ある実施形態においては、重鎖が配列番号21に示すCDR1、配列番号39に示すCDR2、および配列番号20に示すCDR3を含む、抗体を提供する。ある実施形態では、配列番号20中のXが任意のアミノ酸である。ある実施形態では、配列番号20中のXが疎水性アミノ酸である。ある実施形態では、配列番号20中のXがグリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、またはアラニンである。ある実施形態では、配列番号20中のXがバリンまたはイソロイシンである。ある実施形態では、配列番号20中のXがバリンまたはイソロイシンである。ある実施形態では、配列番号39中のXが任意のアミノ酸である。ある実施形態では、配列番号39中のXがグリシン、アスパラギン酸、またはチロシンである。ある実施形態では、重鎖が配列番号27に示すCDR1、配列番号28に示すCDR2、および配列番号29に示すCDR3を含む、抗体を提供する。
ある実施形態においては、軽鎖が配列番号30に示すCDR1、配列番号31に示すCDR2、および配列番号32に示すCDR3を含む、抗体を提供する。ある実施形態においては、軽鎖が配列番号33に示すCDR1、配列番号34に示すCDR2、および配列番号35に示すCDR3を含む、抗体を提供する。
ある実施形態においては、抗体が抗体フラグメントである。ある実施形態では、抗体がscFvフラグメントである。ある実施形態では、抗体がFabフラグメントである。ある実施形態では、抗体がF(ab’)2フラグメントである。ある実施形態では、抗体がFab’フラグメントである。
ある実施形態において、ANGPTL4に対する抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を有するペプチドと結合する。ある実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を有するペプチドと結合する。ある実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、配列番号43のアミノ酸配列を有するペプチドと結合する。ある実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を有するペプチドと結合し、かつ配列番号43のアミノ酸配列を有するペプチドと結合する。
ある実施形態においては、医薬組成物を提供し、該組成物は、ANGPTL4と特異的に結合し、かつANGPTL4の少なくとも1つの活性を中和するモノクローナル抗体を含有する。ある実施形態では、脂質代謝障害の治療方法を提供し、該方法は有効量の該医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。ある実施形態では、1以上の血清脂質のレベルを下げる方法を提供し、該方法は有効量の該医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。ある実施形態では、高トリグリセリド血症の治療方法を提供し、該方法は有効量の該医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。ある実施形態では、高コレステロール血症の治療方法を提供し、該方法は有効量の該医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。ある実施形態では、肥満の治療方法を提供し、該方法は有効量の該医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。ある実施形態では、糖尿病の治療方法を提供し、該方法は有効量の該医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。
IV.図面の簡単な説明
本明細書の最後に記載する。
V.各種の実施形態の詳細な説明
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明は、単に典型的かつ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載の本発明を制限するものではない。
本明細書において、単数形の使用は、特に断らないかぎり、複数形を含むものとする。本明細書において、「1つ」という語は、特に断らないかぎり、「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、「または」の使用は、特に断らないかぎり、「および/または」を意味する。さらに、「含む」および他の変形語の使用は、制限することではない。また、「要素」または「成分」のような用語は、特に断らないかぎり、1ユニットを含む要素または成分と、2ユニット以上を含む要素または成分との両方を包含する。
本明細書で用いるセクションの見出しは、単に構成上の目的のためであり、そこに記載する主題を制限するものと解釈されるべきでない。本明細書に引用する全ての文献または文献の一部(特許、特許出願、論文、書物、専門書を含むが、これらに限らない)は、あらゆる目的のためにその全体を参照により本明細書に組み入れるものとする。組み込んだ文献および同様の資料がある用語を定義しており、それが本明細書中で定義するその用語と矛盾する場合には、本明細書が優先する。
A. 定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体をさすために、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、天然のアミノ酸を含むアミノ酸重合体だけでなく、1個または複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸重合体にも当てはまる。アミノ酸の重合体はどのような長さのものであってもよい。
本明細書で用いる「抗体」とは、完全な抗体または抗体フラグメント(抗原との結合について完全な抗体と競合する)をさす。抗体フラグメントには、限定するものではないが、Fab、Fab’、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ(diabodies)、および完全な抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体フラグメントが含まれる。例えば、Hudsonら (2003) Nature Med. 9:129-134を参照されたい。ある実施形態では、抗体フラグメントが完全な抗体の酵素的または化学的切断により作製される。ある実施形態では、抗体フラグメントが組換えDNA法により作製される。
「天然のポリペプチド」とは、自然界に存在するポリペプチドをさす。「天然の抗体」とは、自然界に存在する抗体をさす。
「モノクローナル抗体」とは、同一のエピトープと特異的に結合する、実質的に均一な抗体集団からの抗体をさす。ある実施形態では、モノクローナル抗体はハイブリドーマにより分泌される。そのような特定の実施形態では、ハイブリドーマを当業者に公知の方法により作製する(例えば、Kohler and Milstein (1975) Nature, 256: 495-499を参照されたい)。ある実施形態では、モノクローナル抗体は組換えDNA法を用いて作製される(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。ある実施形態では、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイライブラリーから単離される抗体フラグメントをさす(例えば、Clacksonら (1991) Nature 352: 624-628、およびMarksら (1991) J. Mol. Biol. 222: 581-597を参照されたい)。種々の他のモノクローナル抗体作製技術については、例えばHarlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。
「キメラ」抗体とは、少なくとも2つの異なる供給源に由来する成分から構成された抗体をさす。ある実施形態において、キメラ抗体は、第1の生物種由来の抗体の一部を、別の分子(例えば、第2の生物種由来の抗体の一部)に融合させたものを含んでなる。このような特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト由来の抗体の一部に融合された、非ヒト動物由来の抗体の一部を含んでなる。このような特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト由来の抗体の定常領域に融合された、非ヒト動物由来の抗体の可変領域の全部または一部を含んでなる。
「ヒト化」抗体とは、それがヒト抗体に(アミノ酸配列の点で)よりぴったりとマッチするように改変されている非ヒト抗体をさす。したがって、ヒト化抗体はキメラ抗体の1種である。ある実施形態においては、非ヒト抗体の可変領域の抗原結合残基以外のアミノ酸残基が改変される。ある実施形態において、ヒト化抗体を構築するには、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)の全部または一部を、所望の抗原結合特異性を有する別の抗体(例えば、非ヒト抗体)由来のCDRの全部または一部と置き換える。ある実施形態では、ヒト化抗体は、そのCDRの全部または実質的に全部が非ヒト抗体のCDRに一致し、かつフレームワーク領域(FR)の全部または実質的に全部がヒト抗体のFRに一致する可変領域を含んでなる。ある実施形態では、ヒト化抗体がヒト抗体の定常領域(Fc)をさらに含んでなる。
「ヒト抗体」とは、ヒト抗体配列を含み、非ヒト動物由来の抗体配列を含まないモノクローナル抗体をさす。ある実施形態において、ヒト抗体は天然の抗体には見出せない合成配列を含んでいてもよい。この用語は、抗体が作られる様式によって制限されない。例えば、各種の実施形態では、ヒト抗体はトランスジェニックマウスにおいて、ファージディスプレイにより、ヒトBリンパ球により、または組換え法により作製しうる。
「中和抗体」または「中和する抗体」とは、その抗体が特異的に結合するエピトープを含むポリペプチドの少なくとも1つの活性を低下させる抗体をさす。ある実施形態では、中和抗体がin vitroおよび/またはin vivoで活性を低下させる。
「抗原結合部位」とは、抗原と特異的に結合することができる抗体の部分をさす。ある実施形態では、抗原結合部位は抗体の1つまたは複数の可変領域により提供される。
「エピトープ」とは、免疫グロブリンまたはT細胞受容体と特異的に結合することができるポリペプチド決定基をさす。ある実施形態において、エピトープは抗体が特異的に結合する抗原の領域である。ある実施形態では、エピトープはアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニル基のような分子の化学的に活性な表面基群を含みうる。ある実施形態では、エピトープは特定の三次元構造特性(例えば、「立体配座」エピトープ)および/または特定の電荷特性を備えている。
特定の抗体が2つのエピトープと特異的に結合する場合、1つのエピトープはもう1つのエピトープと「同一」であると規定される。ある実施形態では、異なる一次アミノ酸配列を有するポリペプチドが同一のエピトープを含む可能性がある。ある実施形態では、同一のエピトープが異なる一次アミノ酸配列をもつ可能性がある。異なる抗体が同一のエピトープへの結合について競合する場合に、それらの異なる抗体は同一のエピトープに結合すると言える。
ある抗体がタンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物中である抗原を優先的に認識する場合、該抗体は該抗原と「特異的に結合する」。ある実施形態において、抗体は特定のエピトープと特異的に結合する抗原結合部位を含む。そのような特定の実施形態では、異なる抗原がその特定のエピトープを含むかぎり、その抗体は異なる抗原と結合することができる。例えば、ある場合に、異なる生物種由来の同種タンパク質は同一のエピトープを含みうる。ある実施形態において解離定数(KD)が<1μMであるとき、ある実施形態において解離定数(KD)が<100nMであるとき、また、ある実施形態において解離定数(KD)が<10nMであるとき、抗体は抗原と特異的に結合すると言える。
「ANGPTL4」とは、ほかで特定しないかぎり、任意の脊椎動物または哺乳動物起源(ヒト、ウシ、ニワトリ、げっ歯類、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、霊長類、サル、モルモットを含むが、これらに限らない)からのアンジオポエチン様タンパク質4(angiopoietin like protein 4)をさす。この用語はまた、天然のANGPTL4の少なくとも1つのin vivoまたはin vitro活性を保持する天然のANGPTL4の断片および変異体をさす。この用語は、ANGPTL4の全長のプロセッシングされていない前駆体型、ならびにシグナルペプチドの翻訳後切断により生じる成熟型およびフィブリノーゲンドメインのタンパク質加水分解プロセッシングにより生じる型を包含する。ある実施形態において、全長のプロセッシングされていないマウスANGPTL4は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、全長のプロセッシングされていないマウスANGPTL4は配列番号50に示すアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、全長のプロセッシングされていないヒトANGPTL4は配列番号2に示すアミノ酸配列を有する。
「Angptl4」はANGPTL4をコードする核酸をさす。
「LPL」とは、任意の脊椎動物または哺乳動物起源(ヒト、ウシ、ニワトリ、げっ歯類、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、霊長類、サル、モルモットを含むが、これらに限らない)からのリポタンパク質リパーゼをさす。ある実施形態において、リポタンパク質リパーゼは、キロミクロンや超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリアシルグリセロールをジアシルグリセロールと遊離の脂肪酸アニオンとに加水分解することを触媒する。ある実施形態では、リポタンパク質リパーゼはジアシルグリセロールを加水分解することもできる。
「作用物質」とは、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子、または生物学的材料から得られる抽出物をさす。
「アンタゴニスト」とは、ANGPTL4の活性を低下させる作用物質をさす。
「アゴニスト」とは、ANGPTL4の活性を増加させる作用物質をさす。
「患者」とは、ヒトおよび動物の被験者を含む。ある実施形態において、患者は哺乳動物である。ある実施形態において、患者はヒトである。
基準ポリペプチドの「断片」とは、その基準ポリペプチドのいずれかの部分からのアミノ酸の連続した広がりをさす。断片は基準ポリペプチドの長さよりも短いどのような長さのものであってもよい。
基準ポリペプチドの「変異体」とは、その基準ポリペプチドに対して1以上のアミノ酸置換、欠失、または挿入を有するポリペプチドをさす。
「保存的」アミノ酸置換とは、ポリペプチド中のアミノ酸を、サイズや電荷のような性質が類似している別のアミノ酸で置換することをいう。ある実施形態では、保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドは未置換ポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持する。保存的アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸残基を含んでいてもよく、一般には、かかる非天然アミノ酸残基は生物学的系での合成ではなく化学的ペプチド合成により組み込まれる。これらには、限定するものではないが、ペプチド模倣体、およびアミノ酸成分の他の逆転または反転形態が含まれる。
天然に存在する残基は、共通の側鎖の性質に基づいていくつかのクラスに分類される:
1) 疎水性: ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2) 中性親水性: Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
3) 酸性: Asp、Glu;
4) 塩基性: His、Lys、Arg;
5) 鎖の配向に影響を与える残基: Gly、Pro;
6) 芳香族: Trp、Tyr、Phe。
例えば、非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスからのメンバーと交換することを含む。そのような置換残基は非ヒト抗体と相同なヒト抗体の領域、または該分子の非相同領域に導入することができる。
置換を行う際には、ある実施形態によれば、アミノ酸のハイドロパシー値を考慮してもよい。各アミノ酸はその疎水性と電荷特性に基づいてハイドロパシー値を割り当てられている。それらは次のとおりである:イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン(+3.8); フェニルアラニン(+2.8); システイン/シスチン(+2.5); メチオニン(+1.9); アラニン(+1.8); グリシン(-0.4); トレオニン(-0.7); セリン(-0.8); トリプトファン(-0.9); チロシン(-1.3); プロリン(-1.6); ヒスチジン(-3.2); グルタミン酸(-3.5); グルタミン(-3.5); アスパラギン酸(-3.5); アスパラギン(-3.5); リシン(-3.9); およびアルギニン(-4.5)。
タンパク質に相互作用型生物学的機能を付与する上でのアミノ酸のハイドロパシー値の重要性は、いくつかの場合において、当技術分野で理解されている。Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131 (1982)。ある場合には、特定のアミノ酸を同様のハイドロパシー値またはスコアをもつ他のアミノ酸で置換しても、依然として同様の生物学的活性を保持することが知られている。ハイドロパシー値に基づいて変更する場合、ある実施形態では、ハイドロパシー値が±2以内にあるアミノ酸同士の置換が含まれる。ある実施形態では、±1以内にあるものが、またある実施形態では、±0.5以内にあるものが含まれる。
また、当技術分野では、類似アミノ酸同士の置換を親水性に基づいて効果的に行うことができることも理解されており、特に、こうして作られた生物学的に機能性のタンパク質またはペプチドが本発明の場合のように免疫学的実施形態での使用を目的としている場合にはそうである。ある実施形態では、タンパク質の最大局所平均親水性(その隣接アミノ酸の親水性に左右される)はその免疫原性と抗原性(すなわち、そのタンパク質の生物学的性質)に相関する。
以下の親水性値がこれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0); リシン(+3.0); アスパラギン酸(+3.0 ± 1); グルタミン酸(+3.0 ± 1); セリン(+0.3); アスパラギン(+0.2); グルタミン(+0.2); グリシン(0); トレオニン(-0.4); プロリン(-0.5 ± 1); アラニン(-0.5); ヒスチジン(-0.5); システイン(-1.0); メチオニン(-1.3); バリン(-1.5); ロイシン(-1.8); イソロイシン(-1.8); チロシン(-2.3); フェニルアラニン(-2.5) およびトリプトファン(-3.4)。類似の親水性値に基づいて変更する場合、ある実施形態では、親水性値が±2以内にあるアミノ酸同士の置換が含まれる。ある実施形態では、±1以内にあるものが、またある実施形態では、±0.5以内にあるものが含まれる。また、一次アミノ酸配列から親水性に基づいてエピトープを同定することもできる。これらの領域は「エピトープコア領域」とも呼ばれている。アミノ酸置換の例を表1に示す。
当業者は、本明細書に記載のペプチドの適当な変異体を、周知の技術を用いて確認することができるだろう。ある実施形態において、当業者であれば、活性にとって重要ではないと考えられる領域を標的とすることによって、活性を破壊することなく変更しうる分子の適当な領域を同定できよう。ある実施形態では、類似のポリペプチド間で保存されている分子の残基および部分を同定することができる。ある実施形態では、生物学的活性または構造にとって重要でありうる領域でさえも、生物学的活性を破壊したりポリペプチドの構造に有害な影響を及ぼしたりすることなく、保存的アミノ酸置換に付すことができる。
さらに、ある実施形態において、当業者は、類似のポリペプチドにおいて活性や構造に重要な意味をもつ残基を同定するための構造-機能研究を検討してもよい。このような比較から、ある実施形態では、タンパク質中のアミノ酸残基(類似のタンパク質において活性や構造に重要であるアミノ酸残基に相当する)の重要性を予測することができる。ある実施形態では、当業者であれば、そのような予測された重要なアミノ酸残基に代えて化学的に類似したアミノ酸による置換を選ぶことができる。
ある実施形態においては、当業者は、類似のポリペプチドにおいて三次元構造およびその構造に関係するアミノ酸配列を解析することもできる。ある実施形態では、そのような情報を考慮して、その三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基の整列を予測しうる。ある実施形態では、タンパク質の表面に存在すると予想されるアミノ酸残基に対して過激な変更を行わないように選択する。なぜならば、そうした残基は他の分子との重要な相互作用に関与している可能性があるからである。さらに、ある実施形態においては、それぞれの所望のアミノ酸残基に単一のアミノ酸置換を含む試験変異体を作製することができる。続いて、ある実施形態では、当業者に公知の活性アッセイを用いてこれらの変異体をスクリーニングする。ある実施形態では、かかる変異体が適当な変異体についての情報を集めるために使用されるだろう。例えば、ある実施形態において、特定のアミノ酸残基への変更が破壊された、望ましくないほどに低下した、または不適当な活性をもたらすことが判明したならば、そのような変更のある変異体を回避しうる。言い換えれば、ある実施形態においては、こうしたルーチンな実験から集めた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換が単独でまたは他の変異との組合せで回避されねばならないアミノ酸を容易に決定することができる。
いくつかの科学文献では二次構造の予測を熱心に行っている。例えば、Moult J., Curr. Op. in Biotech., 7(4):422-427 (1996); Chouら, Biochemistry, 13(2):222-245 (1974); Chouら, Biochemistry, 113(2):211-222 (1974); Chouら, Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47:45-148 (1978); Chouら, Ann. Rev. Biochem., 47:251-276 および Chouら, Biophys. J., 26:367-384 (1979)を参照されたい。さらに、二次構造の予測をアシストするために現在ではコンピュータプログラムが利用可能である。二次構造を予測する方法の1つは、ホモロジーモデリング(homology modeling)に基づくものである。例えば、30%を上回る配列同一性、または40%を超える類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は類似した構造トポロジーをもつことが多い。タンパク質構造のデータベース(PDB)の蓄積により、ポリペプチド構造内の潜在的折りたたみの数を含めた二次構造の予測が向上した。例えば、Holmら, Nucl. Acid. Res., 27(1):244-247 (1999)を参照されたい。所定のポリペプチドまたはタンパク質には限られた数の折りたたみが存在すること、また、ひとたび臨界数の構造が解明されると、構造予測は劇的により精確になることが提案されている (Brennerら, Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997))。
二次構造を予測する別の方法には、「スレッディング」(threading)(例えば、Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol., 7(3):377-87 (1997); Sipplら, Structure, 4(1):15-19 (1996)を参照)、「プロファイル解析」(例えば、Bowieら, Science, 253:164-170 (1991); Gribskovら, Meth. Enzym., 183:146-159 (1990); Gribskovら, Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358 (1987)を参照)、および「進化的連関」(evolutionary linkage)(例えば、Holmら, Nucl. Acid. Res., 27(1):244-247 (1999)、およびBrennerら, Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997)を参照)が含まれる。
ある実施形態において、基準抗体の変異体には、グリコシル化部位の数および/またはタイプが基準抗体のアミノ酸配列に対して改変されているグリコシル化変異体が含まれる。ある実施形態では、ポリペプチドの変異体は天然のポリペプチドよりも多数または少数のN-結合型グリコシル化部位を含む。N-結合型グリコシル化部位は配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrにより特徴づけられ、ここでXにより示されるアミノ酸残基はプロリン以外の任意のアミノ酸残基でありうる。この配列を生み出すアミノ酸残基の置換は、N-結合型糖鎖の付加のための新しい潜在的部位をもたらす。これとは別に、前記配列を排除する置換は既存のN-結合型糖鎖を除くことになる。ある実施形態では、N-結合型糖鎖の再配列が行われ、この場合には1以上のN-結合型グリコシル化部位(一般的には天然に存在する部位)が除かれて、1以上の新しいN-結合型部位が作り出される。抗体変異体の例としてシステイン変異体が挙げられるが、かかる変異体では1個以上のシステイン残基が基準抗体のアミノ酸配列から欠失されるか、または別のアミノ酸(例えば、セリン)に置換される。ある実施形態において、システイン変異体は、抗体を生物学的に活性な立体構造にリフォールディングしなければならない場合(例えば、不溶性の封入体を単離した後など)に有用でありうる。ある実施形態では、システイン変異体が天然のポリペプチドより少数のシステイン残基を有する。ある実施形態では、システイン変異体が対になっていないシステインから生じる相互作用を最小限にするために偶数のシステイン残基を有する。
ある実施形態によれば、アミノ酸置換は、(1)タンパク質加水分解に対する感受性を低減させるもの、(2)酸化に対する感受性を低減させるもの、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を改変するもの、(4)結合親和性を改変するもの、および/または(5)そのようなポリペプチドに他の物理化学的性質または機能的性質を付与するもしくは修飾するものである。ある実施形態によれば、単一または複数のアミノ酸置換(ある実施形態では、保存的アミノ酸置換)を天然に存在する配列(ある実施形態では、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチド部分)において行うことができる。ある実施形態において、保存的アミノ酸置換は、典型的には、基準配列の構造的特徴を実質的に変えないものである(例えば、ある実施形態では、置換用アミノ酸は基準配列に生じるヘリックスを破壊したり、基準配列に特徴的な他のタイプの二次構造を破壊したりするようなものであってはならない)。当技術分野で認められているポリペプチド二次および三次構造の例は、例えば、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編, W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze編, Garland Publishing, New York, N.Y. (1991)); およびThorntonら Nature 354:105 (1991)に記載されている。
核酸配列に関する「同一性パーセント」または「同一性%」は、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)エンジンを用いてアライメントさせた少なくとも2つのポリヌクレオチド配列間の同一のヌクレオチドのパーセンテージをさす。Tatusovaら (1999) FEMS Microbiol Lett. 174:247-250を参照されたい。BLASTエンジン(バージョン2.2.10)は、National Center for Biotechnology Information (NCBI)(Bethesda, MD)から一般公開されている。2つのポリヌクレオチド配列をアライメントさせるためには、「Blast 2 Sequences」ツールが用いられ、これは次のようなデフォルト値のパラメーターセットで「blastn」プログラムを利用する:
Matrix: 適用せず
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open gap: 5ペナルティ
Extension gap: 2ペナルティ
Gap x dropoff: 50
Expect: 10.0
Word size: 11
Filter: on
ポリペプチド配列に関する「同一性パーセント」または「同一性%」は、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)エンジンを用いてアライメントさせた少なくとも2つのポリペプチド配列間の同一アミノ酸のパーセンテージをさす。Tatusovaら (1999) FEMS Microbiol Lett. 174:247-250を参照されたい。BLASTエンジン(バージョン2.2.10)は、National Center for Biotechnology Information (NCBI)(Bethesda, MD)から一般公開されている。2つのポリペプチド配列をアライメントさせるためには、「Blast 2 Sequences」ツールが用いられ、これは次のようなデフォルト値のパラメーターセットで「blastp」プログラムを利用する:
Matrix: BLOSUM62
Open gap: 11ペナルティ
Extension gap: 1ペナルティ
Gap_x dropoff: 50
Expect: 10.0
Word size: 3
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「有効用量」または「有効量」とは、患者の症状の軽減をもたらすかまたは所望の生物学的成果をもたらす薬剤(例えば、中和抗体)の量をさす。ある実施形態において、有効用量または有効量は、ANGPTL4の少なくとも1つの活性を低下させるのに十分な量である。ある実施形態では、有効用量または有効量が以下の第V部のGに記載するとおりに決定される。
「治療」という用語は、特に断らないかぎり、治療的処置と予防的/防止的処置の両方を包含する。治療が必要な個体には、限定するものではないが、特定の症状もしくは障害を既に有する個体だけでなく、特定の症状もしくは障害を被るリスクのある個体(例えば、予防的/防止的処置が必要な個体)も含まれる。「治療する」なる用語は、治療的および/または予防的/防止的目的のために患者に薬剤を投与することを意味する。
「治療剤」とは、治療効果および/または予防効果をもたらすためにin vivo投与される薬剤をさす。
「治療用抗体」とは、治療効果および/または予防効果をもたらすためにin vivo投与される抗体をさす。
「単離された核酸」および「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、互換的に用いられ、ゲノム、cDNAもしくは合成起源のポリヌクレオチドまたはその任意の組合せをさす。「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が自然界で見出されるポリヌクレオチドの全部または一部と会合していない、(2)それが自然界では結合していないポリヌクレオチドと結合している、あるいは(3)自然界でより大きな配列の一部として存在しないものである。
B. 天然抗体および特定の抗体フラグメントの構造
天然抗体は通常、四量体構造をとる。四量体は通常、2つの同一のポリペプチド鎖対を有し、それぞれの対は1つの軽鎖(特定の実施形態では、約25kDa)と1つの重鎖(特定の実施形態では、約50〜70kDa)とを有する。天然抗体では、重鎖は可変領域、VH、ならびに3つの定常領域、CH1、CH2、およびCH3を有する。VHドメインは重鎖のアミノ末端にあり、CH3ドメインはカルボキシ末端にある。天然抗体では、軽鎖は可変領域、VL、および定常領域、CLを有する。軽鎖の可変領域は軽鎖のアミノ末端にある。天然抗体では、それぞれの軽鎖/重鎖対の可変領域が通常、抗原結合部位を形成する。定常領域は通常、エフェクター機能に関与する。
天然のヒト軽鎖は通常、カッパおよびラムダ軽鎖に分類される。天然のヒト重鎖は通常、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがそれらに限定されないサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を含むがそれらに限定されないサブクラスを有する。IgAは、IgA1およびIgA2を含むがそれらに限定されないサブクラスを有する。天然のヒト軽鎖および重鎖では、可変領域と定常領域は通常、約12個またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。例えば、Fundamental Immunology (1989) ch. 7(Paul, W., 編、第二版Raven Press, N.Y.)を参照されたい。
天然抗体では、可変領域は通常、比較的保存性の高いフレームワーク領域(FR)が相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域によって連結されているという同一の一般構造を示す。それぞれの対の2つの鎖に由来するCDRは通常、フレームワーク領域によって整列され、それが特異的なエピトープへの結合を可能にしうる。N末端からC末端に向かって、軽鎖と重鎖の両可変領域は通常、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を有する。重鎖のCDRはH1、H2、およびH3と呼ばれ、一方、軽鎖のCDRはL1、L2、およびL3と呼ばれる。通常、CDR3が抗原結合部位の中で最大の分子多様性の源である。例えば、特定の場合、H3は2アミノ酸残基の短さであり得、または26以上であり得る。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては通常、Kabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Publication No. 91-3242, vols. 1-3, Bethesda, MD); ChothiaおよびLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);またはChothiaらNature 342:878-883 (1989)の定義に従う。本明細書において「CDR」という用語は、特に規定されない限り、軽鎖または重鎖のいずれかに由来するCDRを指す。
「Fab」フラグメントは、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のCH1および可変領域を有する。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成できない。「Fab’」フラグメントは、1つの軽鎖およびCH1とCH2ドメインとの間に伸びている更なる定常領域を含む1つの重鎖を有する。Fab’フラグメントの2つの重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合が形成され、「F(ab’)2」分子が形成されうる。
「Fv」フラグメントは、重鎖と軽鎖の両方に由来する可変領域を有するが、定常領域を欠いている。一本鎖Fv(scFv)フラグメントは、柔軟性のあるリンカーによって連結された重鎖および軽鎖の可変領域を有し、抗原結合領域を有する単一ポリペプチド鎖を形成する。典型的な一本鎖抗体はWO 88/01649ならびに米国特許第4,946,778号および第5,260,203号において詳細に議論される。場合によっては、Fvより低い親和性ではあるが、単独の可変領域(Fvの半分)が、抗原を認識して結合する能力を持ちうる。
本明細書において使用される場合、「重鎖」という用語は、単独でまたは軽鎖とともに抗原特異性を与えるのに十分な重鎖可変領域配列を有するポリペプチドを指す。
本明細書において使用される場合、「軽鎖」という用語は、単独でまたは重鎖とともに抗原特異性を与えるのに十分な軽鎖可変領域配列を有するポリペプチドを指す。
C. 特定の抗体
特定の実施形態では、ANGPTL4に特異的に結合するモノクローナル抗体が提供される。このような特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、in vivoおよび/またはin vitroにおいてANGPTL4の少なくとも1つの活性を低下させる中和モノクローナル抗体である。
特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vitroにおいてANGPTL4の存在下でのLPL活性をレスキューする。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいて少なくとも1つの血清脂質レベルを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいて血清トリグリセリドレベルを低下させる。特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいて総コレステロールレベルを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいて遊離脂肪酸(FFA)レベルを低下させる。
特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいてLDLrノックアウトマウスの血清トリグリセリドを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいてLDLrノックアウトマウスの総コレステロールを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいてApoEノックアウトマウスの血清トリグリセリドを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいてApoEノックアウトマウスの総コレステロールを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいてdb/dbマウスの血清トリグリセリドを低下させる。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、in vivoにおいてdb/dbマウスの総コレステロールを低下させる。
特定の実施形態では、マウスANGPTL4に特異的に結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、ヒトANGPTL4に特異的に結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、異なる種に由来するANGPTL4中の同一のエピトープに特異的に結合する中和モノクローナル抗体(すなわち、交差反応性を示す抗体)が提供される。このような特定の実施形態では、抗体はマウスANGPTL4とヒトANGPTL4との両方に特異的に結合する。
特定の実施形態では、ANGPTL4のN末端コイルドコイルドメイン内のエピトープに特異的に結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、マウスANGPTL4のN末端コイルドコイルドメイン内のエピトープに特異的に結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体は、マウスANGPTL4の残基21〜残基174の領域(配列番号1または配列番号50)内のエピトープに特異的に結合する。特定の実施形態では、ヒトANGPTL4のN末端コイルドコイルドメイン内のエピトープに特異的に結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体は、ヒトANGPTL4(配列番号2)の残基21〜残基169の領域内のエピトープに特異的に結合する。
特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体は非ヒトモノクローナル抗体である。このような特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体はげっ歯類のモノクローナル抗体である。このような特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体はマウスのモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体はキメラモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体はヒト化モノクローナル抗体である。特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体はヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、キメラ、ヒト化、および/またはヒトモノクローナル抗体は、ヒトの治療抗体として有用である。
特定の実施形態では、中和モノクローナル抗体は抗体フラグメントである。典型的な抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ(diabody)、および他の抗体フラグメントが挙げられるがそれらに限定されない。
14D12、90B4、および15F2で示される代表的な中和モノクローナル抗体が提供される。それらの抗体は、マウスANGPTL4(配列番号1または配列番号50)の残基21〜174内のエピトープに結合する。それらの抗体はまた、ANGPTL4活性を中和する。従って、(例えば、ヒトまたはマウスANGPTL4のいずれかにおいて)同一のエピトープに結合する抗体もまた、中和活性を有することが期待されるであろう。ANGPTL4に対する特定の中和モノクローナル抗体は、配列番号40〜48より選択される1つ以上のペプチドに結合する。ANGPTL4に対する特定の中和モノクローナル抗体は、配列番号40〜43より選択される1つ以上のペプチドに結合する。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、配列番号40の配列を有するペプチドに結合する。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、配列番号41の配列を有するペプチドに結合する。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、配列番号43の配列を有するペプチドに結合する。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体は、配列番号41の配列を有するペプチドと配列番号43の配列を有するペプチドとの両方に結合する。
特定の実施形態では、モノクローナル抗体14D12が結合するのと同一のエピトープに結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、モノクローナル抗体15F2が結合するのと同一のエピトープに結合する中和モノクローナル抗体が提供される。特定の実施形態では、モノクローナル抗体90B4が結合するのと同一のエピトープに結合する中和モノクローナル抗体が提供される。
特定の中和抗体は、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
特定の中和抗体は、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。特定の中和抗体は、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。特定の中和抗体は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号18に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。
1. キメラ化およびヒト化モノクローナル抗体
特定の実施形態では、非ヒト抗体はキメラ化される。特定の実施形態では、ヒトANGPTL4に特異的に結合するマウスモノクローナル抗体がキメラ化される。キメラ抗体を作製するための特定の代表的な方法は、例えば、Morrisonら(1984) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 81:6851-6855; Neubergerら(1984) Nature 312:604-608; Takedaら(1985) Nature 314:452-454; ならびに米国特許第6,075,181号および第5,877,397号において提供される。
特定の実施形態では、非ヒト抗体は「ヒト化」される。特定の実施形態では、ヒトANGPTL4に特異的に結合するマウスモノクローナル抗体がヒト化される。特定の実施形態では、マウスANGPTL4に対して誘導されたが、ヒトANGPTL4に特異的に結合する(すなわち、交差反応する)マウスモノクローナル抗体がヒト化される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒトに投与した場合、それらの結合特異性を保持したまま、免疫原性が低下している(例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応が低下している)。特定の実施形態では、ヒト化は、下記に詳述されるような、CDRグラフトおよび人間工学を含むがそれらに限定されない方法によって達成される。
ヒト化抗体の特定の実施形態では、望ましい結合特異性を有する抗体(「ドナー」抗体)の軽鎖および重鎖可変領域に由来する1つ以上の相補性決定領域(CDR)が、「アクセプター」抗体のヒトフレームワーク領域(FR)にグラフトされる。代表的なCDRグラフトは、例えば、米国特許第6,180,370号、第5,693,762号、第5,693,761号、第5,585,089号、および第5,530,101号; Queenら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033に記載される。特定の実施形態では、軽鎖および重鎖可変領域に由来する1つ以上のCDRは、アクセプター抗体のコンセンサスヒトFRにグラフトされる。コンセンサスヒトFRを作成するために、特定の実施形態では、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列に由来するFRをアライメントしてコンセンサスアミノ酸配列を同定する。
特定の実施形態では、アクセプター抗体中の特定のFRアミノ酸は、ドナー抗体由来のFRアミノ酸と置換される。このような特定の実施形態では、ドナー抗体由来のFRアミノ酸は、標的抗原に対するドナー抗体の親和性に寄与するアミノ酸である。例えば、米国特許第6,180,370号、第5,693,762号、第5,693,761号、第5,585,089号、および第5,530,101; Queenら(1989) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033を参照されたい。特定の実施形態では、ドナーおよび/またはアクセプター抗体をモデリングして、抗原への結合に関与すると思われる残基および/または抗原結合部位の構造に寄与すると思われる残基を同定し、FR残基などの、ドナー抗体において置換されるべき残基の選択を支援するために、コンピュータープログラムが用いられる。
特定の実施形態では、ドナー抗体由来のCDRが、ヒト定常領域を有するアクセプター抗体にグラフトされる。このような特定の実施形態では、FRもまたアクセプターにグラフトされる。特定の実施形態では、ドナー抗体由来のCDRは一本鎖Fv抗体に由来する。特定の実施形態では、ドナー抗体由来のFRは一本鎖Fv抗体に由来する。特定の実施形態では、ヒト化抗体に移植されるCDRは更に、標的抗原に対するヒト化抗体の親和性を増加させるために(例えば、アミノ酸置換、欠失、または挿入によって)改変される。特定の実施形態では、ヒト化抗体に移植されるFRは更に、標的抗原に対するヒト化抗体の親和性を増加させるために(例えば、アミノ酸置換、欠失、または挿入によって)改変される。
特定の実施形態では、非ヒト抗体は「人間工学」(human engineering)法を用いてヒト化されうる。例えば、米国特許第5,766,886号および第5,869,619号を参照されたい。人間工学の特定の実施形態では、可変領域内の特定のアミノ酸残基が(a)抗原結合に関与する、(b)抗体表面に露出する(すなわち、溶媒と接触しやすい)、または(c)抗体可変領域に埋め込まれる(すなわち、可変領域の構造の維持に関与する)という可能性を評価するために、抗体可変領域の構造の情報(例えば、結晶構造および/または分子モデリングから得られた情報)が用いられる。更に、特定の実施形態では、ヒト可変領域間で保存されている残基を同定するために、ヒト可変領域コンセンサス配列が生成される。特定の実施形態では、その情報は、非ヒト抗体の可変領域のアミノ酸残基を置換するべきかどうかについての指針を提供する。
特定の中和抗体は、14D12のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、15F2のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、90B4のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、14D12の少なくとも1つのCDRを有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、15F2の少なくとも1つのCDRを有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、90B4の少なくとも1つのCDRを有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、14D12の少なくとも2つのCDRを有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、15F2の少なくとも2つのCDRを有する重鎖を含む。特定の中和抗体は、90B4の少なくとも2つのCDRを有する重鎖を含む。
特定の中和抗体は、14D12のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、15F2のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、90B4のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、14D12の少なくとも1つのCDRを有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、15F2の少なくとも1つのCDRを有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、90B4の少なくとも1つのCDRを有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、14D12の少なくとも2つのCDRを有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、15F2の少なくとも2つのCDRを有する軽鎖を含む。特定の中和抗体は、90B4の少なくとも2つのCDRを有する軽鎖を含む。
2. 抗体アイソタイプ
特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEより選択される任意のアイソタイプである。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、IgGアイソタイプである。このような特定の実施形態では、抗体は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、IgMアイソタイプである。このような特定の実施形態では、抗体は、サブクラスIgM1またはIgM2である。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、IgAアイソタイプである。このような特定の実施形態では、抗体は、サブクラスIgA1またはIgA2である。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、ヒトカッパ軽鎖およびヒトIgG1またはIgG2重鎖を有する。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、マウスカッパ軽鎖およびマウスIgG1またはIgG2重鎖を有する。
3. 修飾抗体
様々な実施形態において、抗体は、その1つ以上の特性を改変するために修飾される。特定の実施形態では、修飾抗体は、安定性の増加、循環時間の増加、または免疫原性の減少のような、非修飾抗体を越える利点を持ちうる(例えば、米国特許第4,179,337号を参照されたい)。特定の実施形態では、抗体は、それを非タンパク質性成分に結合することによって、修飾される。特定の実施形態では、抗体は、抗体のグリコシル化状態を改変することによって(例えば、抗体上の炭水化物鎖の数、種類、結合、および/または位置を改変することによって)修飾される。特定の実施形態では、抗体はグリコシル化されないように改変される。
特定の実施形態では、1つ以上の化学成分が抗体のアミノ酸骨格および/または炭水化物残基に結合される。抗体に化学成分を結合させるための特定の代表的な方法は、当業者に知られている。このような方法としては、アシル化反応またはアルキル化反応が挙げられるがそれらに限定されない。例えば、EP 0 401 384; Malik ら(1992), Exp. Hematol., 20:1028-1035; Mediscript, Mountain Court, Friern Barnet Lane, London N20 OLD, UK により出版されたFrancis (1992), Focus on Growth Factors, 3(2):4-10; EP 0 154 316; EP 0 401 384; WO 92/16221; WO 95/34326; WO 95/13312; WO 96/11953; WO 96/19459およびWO 96/19459を参照されたい。特定の実施形態では、任意のこれらの反応は、そのアミノ末端で化学的に修飾された抗体を作製するために用いられる。
特定の実施形態では、抗体は、酵素標識、蛍光標識、同位体標識または親和性標識などの検出可能な標識に結合される。このような特定の実施形態において、検出可能な標識は、抗体の検出または単離を可能にする。特定の実施形態では、検出可能な標識は、抗体が結合した抗原の検出を可能にする。
特定の実施形態では、抗体は、それを1つ以上のポリマーに結合させることによって修飾される。特定の実施形態では、抗体は1つ以上の水溶性ポリマーに結合される。このような特定の実施形態では、水溶性ポリマーへの結合は、抗体が生理環境のような水性環境において沈殿する可能性を低下させる。特定の実施形態では、治療抗体が水溶性ポリマーに結合される。特定の実施形態において、当業者は、ポリマー/抗体コンジュゲートが患者の治療に用いられるかどうか、ならびに、その場合、抗体の薬理学的特性(例えば、半減期、用量、活性、抗原性、および/または他の要因)を含むがそれらに限定されない検討事項に基づいて、適切な水溶性ポリマーを選択できる。
特定の代表的な臨床上許容され得る水溶性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG); ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド;エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体;モノメトキシポリエチレングリコール;カルボキシメチルセルロース;デキストラン;ポリビニルアルコール(PVA);ポリビニルピロリドン、ポリ-1, 3-ジオキソラン;ポリ-1,3,6-トリオキサン;エチレン/無水マレイン酸共重合体;ポリ-β-アミノ酸(ホモ重合体もしくはランダム共重合体のいずれか);ポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコールホモ重合体(PPG)および他のポリアルキレンオキシド;ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体;ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)および他のポリオキシエチル化ポリオール;ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、コロン酸(colonic acids)もしくは他の炭水化物ポリマー;ならびにフィコール、デキストラン、またはそれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。特定の代表的なPEGとしては、モノ-(C1-C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-PEGなどの、抗体修飾に有用であることが当技術分野において既知の特定の形態が挙げられるがそれらに限定されない。特定の実施形態では、PEGプロピオンアルデヒドは、その水中での安定性のため製造に有利でありうる。
特定の実施形態では、水溶性ポリマーは任意の分子量である。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは分岐または非分岐型である。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、約2kDa〜約100kDaの平均分子量を有し、その範囲の両端値の間のすべての点を含む。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、約5kDa〜約40kDaの平均分子量を有する。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、約10kDa〜約35kDaの平均分子量を有する。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、約15kDa〜約30kDaの平均分子量を有する。
特定の実施形態では、抗体はPEGに結合される(すなわち、抗体は「peg化」される)。様々な実施形態で、PEGは哺乳動物において低い毒性を示す。Carpenterら(1971) Toxicol. Appl. Pharmacol., 18, 35-40を参照されたい。特に、アデノシンデアミナーゼのPEG付加物は、ヒトにおいて重症複合免疫不全症候群の治療に使用するために、米国で認可された。様々な実施形態において、PEGは抗体の免疫原性を低下させうる。例えば、特定の実施形態では、非ヒト配列を有する抗体へのPEGの結合は、ヒトに投与した場合、その抗体の抗原性を低下させうる。
特定の実施形態では、ポリマーは抗体の1つ以上の反応性アミノ酸残基に結合される。特定の典型的な反応性アミノ酸残基としては、アミノ末端のアミノ酸のアルファアミノ基、リジン側鎖のイプシロンアミノ基、システイン側鎖のスルフヒドリル基、アスパルチルおよびグルタミル側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端のアミノ酸のアルファカルボキシル基、チロシン側鎖、および特定のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基に結合した活性化グリコシル鎖が挙げられるが、それらに限定されない。タンパク質との直接反応に適した特定の代表的な活性型のPEG(「PEG試薬」)が当業者に知られている。例えば、特定の実施形態では、アミノ基との結合に適したPEG試薬としては、PEGのカルボン酸またはカルボネート誘導体の活性エステル、例えば、脱離基がN-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェノール、イミダゾールもしくは1-ヒドロキシ-2-ニトロベンゼン-4-スルホネートであるものが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、マレイミドまたはハロアセチル基を含むPEG試薬が、スルフヒドリル基を修飾するために用いられる。特定の実施形態では、アミノ、ヒドラジンおよび/またはヒドラジド基を含むPEG試薬が、タンパク質中の炭水化物基の過ヨウ素酸酸化によって生じるアルデヒドとの反応に使用されうる。
特定の実施形態では、水溶性ポリマーは少なくとも1つの反応基を有する。特定の実施形態では、PEGなどの水溶性ポリマーの活性型誘導体は、水溶性ポリマーと活性化基との反応によって作製される。特定の実施形態では、活性化基は、単官能性、二官能性、または多官能性でありうる。水溶性ポリマーを2つ以上の抗体に結合させるために使用され得る特定の代表的な活性化基としては、以下の基、すなわち、スルホン(例えば、クロロスルホン、ビニルスルホンおよびジビニルスルホン)、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート、アジジリン(azidirine)、オキシラン、および5-ピリジルが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、PEG誘導体は通常、pH約11以下の水性環境で長期間に渡り加水分解に対して安定である。特定の実施形態では、抗体などの別の分子に結合されたPEG誘導体は、その分子に加水分解からの安定性をもたらす。特定の代表的なホモ二官能性PEG誘導体としては、PEG-ビス-クロロスルホンおよびPEG-ビス-ビニルスルホンが挙げられるがそれらに限定されない(WO 95/13312参照)。
D. モノクローナル抗体を作製する特定の方法
1. 特定のハイブリドーマ法
特定の実施形態では、モノクローナル抗体は標準的な方法によって産生される。特定の実施形態では、モノクローナル抗体はハイブリドーマに基づく方法によって産生される。このような特定の方法は当業者に知られている。例えば、Kohlerら(1975) Nature 256:495-497; HarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 6 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。このような特定の実施形態では、マウス、ラット、ハムスター、サル、または他の哺乳動物などの適切な動物が、抗体分泌細胞を作製するために、免疫原によって免疫される。特定の実施形態では、抗体分泌細胞は、リンパ球または脾細胞などのB細胞である。特定の実施形態では、リンパ球(例えば、ヒトリンパ球)は、抗体分泌細胞を作製するためにin vitroで免疫される。例えば、Borrebackら(1988) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 85:3995-3999を参照されたい。
特定の実施形態では、抗体分泌細胞は、骨髄性細胞株などの「不死化」細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞が作製される。特定の実施形態では、目的とする抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えばELISAによって同定される。特定の実施形態では、このような細胞はその後、標準的な方法を用いてサブクローニングされ、培養され得る。特定の実施形態では、このような細胞はまた、適切な動物宿主における腹水腫瘍としてin vivoで増殖され得る。特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養液、血清、または腹水から、アフィニティークロマトグラフィーなどの標準的な分離法を用いて単離される。特定の実施形態に従ったハイブリドーマの作製およびモノクローナル抗体の精製のための手引きは、例えば、HarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 8 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)において提供される。
特定の実施形態では、マウスモノクローナル抗体は、遺伝子改変マウスを免疫原で免疫することによって作製される。このような特定の実施形態では、マウスは、部分的または完全にANGPTL4機能を欠如しているANGPTL4欠損マウスである。このような特定の実施形態では、マウスは、ANGPTL4をコードする遺伝子のすべてまたは一部を欠如している「ノックアウト」マウスである。特定の実施形態では、このようなノックアウトマウスはマウスANGPTL4で免疫される。特定の実施形態では、このようなノックアウトマウスはヒトANGPTL4で免疫される。
特定の実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)において産生される。例えば、米国特許第6,075,181 A号および第6,114,598 A号;ならびにWO 98/24893 A2を参照されたい。例えば、特定の実施形態では、ヒト免疫グロブリン遺伝子は、(例えば、酵母人工染色体、ヒト染色体断片、または生殖細胞系への組み込みを用いて)内在性Ig遺伝子が不活性化されているマウスに導入される。例えば、Jakobovitsら(1993) Nature 362:255-258; Tomizukaら(2000) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:722-727;および(トランスジェニックマウスのXenoMouse II(登録商標)系統を記載している)Mendezら(1997) Nat. Genet. 15:146-156を参照されたい。
特定の実施形態では、このようなトランスジェニックマウスが免疫原によって免疫される。このような特定の実施形態では、抗体を発現するマウスから(B細胞などの)リンパ細胞が得られる。このような特定の実施形態では、このように回収された細胞は、骨髄性細胞株などの「不死化」細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞が作製される。このような特定の実施形態では、ハイブリドーマ細胞は、目的の抗原に特異的な抗体を産生するものを同定するために、スクリーニングおよび選択される。ヒトモノクローナル抗体の産生に適した特定の代表的な方法およびトランスジェニックマウスは、例えば、Jakobovitsら(1993) Nature 362:255-258; Jakobovits (1995) Curr. Opin. Biotechnol. 6:561-566; Lonbergら(1995) Int. Rev. Immunol. 13:65-93; Fishwildら(1996) Nat. Biotechnol. 14:845-851; Mendezら(1997) Nat. Genet. 15:146-156; Green (1999) J. Immunol. Methods 231:11-23; Tomizukaら(2000) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:722-727に記載され、Littleら(2000) Immunol. Today 21:364-370;およびWO 98/24893に概説される。特定の実施形態では、ANGPTL4に対するヒトモノクローナル抗体が治療抗体としての使用に適している。下記の第V部のGを参照されたい。
2. 特定のディスプレイに基づく方法
特定の実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、下記に記載される任意の方法のような、ディスプレイに基づく方法を用いて産生される。
特定の実施形態では、モノクローナル抗体はファージディスプレイ法を用いて産生される。特定の代表的な抗体ファージディスプレイ法は当業者に知られており、例えば、Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols (2002) 178:1-37 (O’BrienおよびAitken,編、Human Press, Totowa, NJ)のHoogenboom, Overview of Antibody Phage-Display Technology and Its Applicationsに記載される。例えば、特定の実施形態では、抗体のライブラリーは、非溶原性繊維状ファージfdまたはM13などの繊維状ファージの表面に提示される。特定の実施形態では、抗体は、scFv、Fab、VH-VL 対を安定化するために操作された分子間ジスルフィド結合を有するFv、およびダイアボディーなどの抗体フラグメントである。特定の実施形態では、望ましい結合特異性を有する抗体はその後選択され得る。抗体ファージディスプレイ法の特定の代表的な実施形態は、下記において更に詳細に記載される。
特定の実施形態では、抗体ファージディスプレイライブラリーは、当業者にとって既知の特定の方法を用いて調製され得る。例えば、Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols (2002) 178:1-37 (O’BrienおよびAitken,編、Human Press, Totowa, NJ)のHoogenboom, Overview of Antibody Phage-Display Technology and Its Applicationsを参照されたい。特定の実施形態では、可変遺伝子レパートリーは、ゲノムDNAまたは抗体分泌細胞のmRNAに由来するcDNAのPCR増幅によって調製される。例えば、特定の実施形態では、cDNAはB細胞のmRNAから調製される。特定の実施形態では、重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAは、例えばPCRによって増幅される。
特定の実施形態では、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAは適切なベクターにクローニングされる。特定の実施形態では、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAはクローニングの過程で無作為に組み合わされ、それによって多様なscFvまたはFabをコードするcDNAライブラリーがアセンブリされる。特定の実施形態では、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAは、適切なベクターにクローニングされる前にライゲーションされる。特定の実施形態では、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAは、適切なベクターへの段階的クローニングによってライゲーションされる。
特定の実施形態では、cDNAは、ファージミドベクターなどのファージディスプレイベクターにクローニングされる。pCES1などの特定の代表的なファージミドベクターが当業者に知られている。特定の実施形態では、重鎖と軽鎖との両方をコードするcDNAは、同一のベクター上に存在する。例えば、特定の実施形態では、scFvをコードするcDNAは、マイナーファージコートタンパク質pIIIをコードする遺伝子IIIのすべてまたは一部の読み枠にクローニングされる。このような特定の実施形態では、ファージミドはファージ表面におけるscFv-pIII融合物の発現をもたらす。あるいは、特定の実施形態では、重鎖(または軽鎖)をコードするcDNAは遺伝子IIIのすべてまたは一部の読み枠にクローニングされ、軽鎖(または重鎖)をコードするcDNAは同一のベクターにおいてシグナル配列の下流にクローニングされる。シグナル配列は宿主細胞のペリプラズム内への軽鎖(または重鎖)の発現をもたらし、そこで重鎖および軽鎖は会合してFabフラグメントとなる。あるいは、特定の実施形態では、重鎖をコードするcDNAと軽鎖をコードするcDNAは別のベクター上に存在する。このような特定の実施形態では、重鎖および軽鎖cDNAは、一方はファージミドに、他方はファージベクターに、別々にクローニングされ、それら両方は宿主細胞におけるin vivoでの再結合のためのシグナルを含む。
特定の実施形態では、組換えファージミドまたはファージベクターは、E. coliなどの適切な細菌宿主に導入される。ファージミドを用いた特定の実施形態では、宿主にファージ構造タンパク質を提供するためのヘルパーファージを感染させ、それによってファージ表面に抗体-pIII融合タンパク質を有するファージ粒子の発現を可能にする。
特定の実施形態では、in vitroで再構成される可変遺伝子のレパートリーを用いて「合成」抗体ライブラリーが構築される。例えば、特定の実施形態では、重鎖または軽鎖をコードする個々の遺伝子断片(それぞれ、V-D-JもしくはV-J)は、PCRを用いて無作為に組み合わされる。このような特定の実施形態では、例えばエラープローンPCRによって、更なる配列多様性がCDRおよび場合によってはFRに導入され得る。このような特定の実施形態では、更なる配列多様性は、CDR3、例えば重鎖のH3に導入される。
特定の実施形態では、免疫されていない動物由来の核酸を用いて上述のように、「ナイーブ」または「ユニバーサル」ファージディスプレイライブラリーが構築される。特定の実施形態では、免疫されていない動物はヒトである。特定の実施形態では、免疫された動物由来の核酸を用いて上述のように、「免疫された」ファージディスプレイライブラリーが構築される。特定の実施形態では、免疫される動物は、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、またはサルである。このような特定の実施形態では、動物は下記に記載される任意の免疫原によって免疫される。
特定の代表的なユニバーサルヒト抗体ファージディスプレイライブラリーは、商業的供給源から入手可能である。特定の代表的なライブラリーとしては、MorphoSys AG (Martinstreid/Munich, Germany)からのHuCAL(登録商標)シリーズのライブラリー; MAbstract(登録商標)技術を用いたCrucell (Leiden, the Netherlands) からのライブラリー; BioInvent (Lund, Sweden)からのn-CoDeR(商標)Fabライブラリー;およびCambridge Antibody Technology (Cambridge, UK)から入手可能なライブラリーが挙げられるが、それらに限定されない。
特定の実施形態では、目的とする結合特異性を有する抗体のファージディスプレイライブラリーからの選択は、一連のパニングステップによって達成される。パニングの特定の実施形態では、ライブラリーファージ調製物は抗原に暴露される。このような特定の実施形態にでは、ファージ-抗原複合体は洗浄され、結合しなかったファージが除去される。このような特定の実施形態では、結合したファージは回収され、その後、E. coliに感染させることによって増幅される。このような特定の実施形態では、モノクローナル抗体産生ファージは、単一プラークをピッキングすることによってクローニングされうる。特定の実施形態では、上述の過程が繰り返される。
特定の実施形態では、パニングに用いられる抗原は下記に記載される任意の免疫原である。特定の実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーによる抗原結合ファージの精製を可能にするために、抗原は固相支持体に固定化される。特定の実施形態では、抗原はビオチン化され、それにより、ストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズを用いて結合したファージを結合しなかったファージから分離することを可能にする。特定の実施形態では、抗原は、細胞上(直接パニングのため)、組織凍結切片、または膜上(例えば、ナイロンもしくはニトロセルロースメンブレン)に固定化されうる。特定のパニング法の他の変形例は、当業者によって通常決定されうる。
特定の実施形態では、モノクローナル抗体を産生するために、酵母ディスプレイシステムが用いられる。このような特定の実施形態では、抗体は、酵母AGA2タンパク質のすべてまたは一部との融合タンパク質として発現され、酵母細胞壁の表面に提示されるようになる。このような特定の実施形態では、目的とする結合特異性を有する抗体を発現している酵母細胞はその後、細胞を蛍光標識抗原に暴露することによって同定され得る。このような特定の実施形態では、抗原と結合する酵母細胞はその後、フローサイトメトリーによって単離され得る。例えば、Boderら(1997) Nat. Biotechnol. 15:553-557を参照されたい。
3. 特定の親和性成熟法
特定の実施形態では、特定の抗原に対する抗体の親和性は、抗体にin vitroでの親和性成熟(すなわち「指向進化」)を受けさせることによって増加する。In vivoでは、自然抗体は、体細胞超変異とそれに続く選択によって親和性成熟を受ける。特定のin vitroでの方法はそのin vivoでの過程を模倣し、それによって、自然抗体の親和性と同等またはそれを上回る親和性を有する抗体の産生を可能にする。
親和性成熟の特定の実施形態では、突然変異は、目的とする結合特異性を有する抗体の可変領域をコードする核酸配列に導入される。例えば、Hudsonら(2003) Nature Med. 9:129-134; Brekkeら(2002) Nature Reviews 2:52-62を参照されたい。特定の実施形態では、突然変異は、重鎖、軽鎖、または両方の可変領域に導入される。特定の実施形態では、突然変異は1つ以上のCDRに導入される。このような特定の実施形態では、突然変異は、H3、L3、または両方に導入される。特定の実施形態では、突然変異は1つ以上のFRに導入される。特定の実施形態では、突然変異のライブラリーは、例えば、ファージ、リボソーム、または酵母ディスプレイライブラリーにおいて作製され、標準的なスクリーニング法によって、増加した親和性を有する抗体が同定されうる。例えば、Boderら(2000) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:10701-10705; Footeら(2000) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:10679-10681; Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols (2002) 178:1-37 (O’BrienおよびAitken,編、Human Press, Totowa, NJ)のHoogenboom, Overview of Antibody Phage-Display Technology and Its Applications;ならびにHanesら(1998) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 95:14130-14135を参照されたい。
特定の実施形態では、突然変異は、抗体の構造、例えば、抗原結合部位の情報に基づいた部位特異的突然変異誘発によって導入される。特定の実施形態では、突然変異は、CDRのコンビナトリアル突然変異誘発を用いて導入される。特定の実施形態では、可変領域コード配列のすべてまたは一部は、例えば、E. coli突然変異誘発細胞、相同遺伝子再構成、またはエラープローンPCRを用いて、無作為に突然変異誘発される。特定の実施形態では、突然変異は「DNAシャフリング」を用いて導入される。例えば、Crameriら(1996) Nature Med. 2:100-102; Fermerら(2004) Tumor Biology 25:7-13を参照されたい。
特定の実施形態では、増加した親和性を有する抗体を作製するために、「チェーンシャフリング」(chain shuffling)が用いられる。チェーンシャフリングの特定の実施形態では、一方の鎖、例えば軽鎖は軽鎖のレパートリーと置換されるが、他方の鎖、例えば重鎖は変化させずに特異性を与える。このような特定の実施形態では、同じ重鎖と、軽鎖のレパートリーに由来するそれぞれの軽鎖とが組み合わされて発現される、鎖をシャッフルした抗体のライブラリーが作製される。特定の実施形態では、このようなライブラリーはその後、増加した親和性を有する抗体についてスクリーニングされうる。特定の実施形態では、重鎖と軽鎖の両方が順次置換される。特定の実施形態では、重鎖および/または軽鎖の可変領域のみが置換される。特定の実施形態では、重鎖および/または軽鎖の可変領域の一部、例えばCDRのみが置換される。例えば、Hudsonら(2003) Nature Med. 9:129-134; Brekkeら(2002) Nature Reviews 2:52-62; Kangら(1991) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 88:11120-11123; Marksら(1992) Biotechnology 10:779-83を参照されたい。
特定の実施形態では、ヒトANGPTL4に特異的に結合するマウスモノクローナル抗体(マウスANGPTL4に対するマウスモノクローナル抗体であるが、ヒトANGPTL4に特異的に結合する(すなわち、交差反応する)ものを含むがそれに限定されない)が、連続的なチェーンシャフリングを受ける。特定の実施形態では、例えば、既定のマウスモノクローナル抗体の重鎖は新たなヒト軽鎖のレパートリーと組み合わされ、目的とする親和性を有する抗体が選択される。このような特定の実施形態において、選択された抗体の軽鎖は次に、新たなヒト重鎖のレパートリーと組み合わされ、望ましい親和性を有する抗体が選択される。このようにして、特定の実施形態では、目的とする抗原結合特異性および親和性を有するヒト抗体が選択される。
あるいは、特定の実施形態では、既定のマウスモノクローナル抗体の重鎖が新たなヒト軽鎖のレパートリーと組み合わされ、望ましい親和性を有する抗体はこの1回目のシャフリングから選択される。特定の実施形態では、元のマウスモノクローナル抗体の軽鎖は新たなヒト重鎖のレパートリーと組み合わされ、望ましい親和性を有する抗体はこの2回目のシャフリングから選択される。特定の実施形態では、1回目のシャフリングで選択された抗体に由来するヒト軽鎖がその後、2回目のシャフリングで選択された抗体に由来するヒト重鎖と組み合わされる。このようにして、特定の実施形態では、目的とする抗原結合特異性および親和性を有するヒト抗体が選択される。
特定の実施形態では、抗体選択と親和性成熟を交互に行う「リボソームディスプレイ」法が用いられる。リボソームディスプレイ法の特定の実施形態では、抗体をコードする核酸は、選択ステップの間にRT-PCRによって増幅される。従って、特定の実施形態では、核酸に突然変異を導入するためにエラープローンポリメラーゼが使用されうる。このような方法の非限定的な例は、Hanesら(1998) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 95:14130-14135に詳細に記載される。
4. 特定の組換え法
特定の実施形態では、モノクローナル抗体は組換え技術によって産生される。例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい。このような特定の実施形態では、モノクローナル抗体鎖をコードする核酸がクローニングされ、適切な宿主細胞において発現される。例えば、特定の実施形態では、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞などの目的とする抗体を発現している細胞から、標準的な方法を用いてRNAが調製され得る。特定の実施形態では、RNAはその後、標準的な方法を用いてcDNAを作製するために使用され得る。特定の実施形態では、重鎖または軽鎖ポリペプチドをコードするcDNAは、例えばPCRによって、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅される。特定の実施形態では、cDNAは適切な発現ベクターにクローニングされる。特定の実施形態では、発現ベクターはその後、内因的に抗体を産生しない宿主細胞のような適切な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトされる。特定の代表的な宿主細胞としては、E. coli、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および骨髄腫細胞が挙げられるが、それらに限定されない。重鎖および軽鎖が同一宿主内で共発現する特定の実施形態では、再構成された抗体が単離されうる。
特定の実施形態では、重鎖または軽鎖をコードするcDNAは改変され得る。例えば、特定の実施形態では、マウス重鎖または軽鎖の定常領域は、ヒト重鎖または軽鎖の定常領域と置換され得る。このように、特定の実施形態では、ヒト抗体定常領域を有するが、マウス抗体の結合特異性を保持するキメラ抗体が産生され得る。
特定の実施形態では、組換え抗体は特定の細胞株において発現され得る。特定の実施形態では、特定の抗体をコードする配列は、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換に使用され得る。特定の実施形態によると、形質転換は、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の既知の方法によって可能である。特定の代表的な方法としては、ウイルス(またはウイルスベクター内)へのポリヌクレオチドのパッケージングおよびウイルス(またはベクター)による宿主細胞の形質導入、ならびに、米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、および第4,959,455号などの、当技術分野において既知の特定のトランスフェクション法の使用が挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、使用される形質転換法は、形質転換される宿主に依存しうる。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための特定の代表的な方法は当技術分野において知られており、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル化、および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられるが、それらに限定されない。
発現のための宿主として利用可能な特定の代表的な哺乳動物細胞株には、当技術分野において知られており、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞株が含まれるがそれらに限定されず、それらにはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスターの腎臓(BHK)細胞、サルの腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、および多数の他の細胞株が含まれるがそれらに限定されない。特定の実施形態では、細胞株は、いずれの細胞株が特異的にANGPTL4と結合する高レベルの抗体を産生するかを測定することによって選択されうる。
E. 特定のポリペプチド免疫原
特定の実施形態では、抗体を作製するために、動物を免疫原で免疫する。特定の実施形態では、免疫原はANGPTL4を含むポリペプチドである。特定の実施形態では、免疫原はANGPTL4の断片を含むポリペプチドである。特定の実施形態では、免疫原はANGPTL4のN末端コイルドコイルドメインを含むポリペプチドである。
特定の実施形態では、免疫原はマウスANGPTL4を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号1のアミノ酸配列を有するマウスANGPTL4を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号50のアミノ酸配列を有するマウスANGPTL4を含む。特定の実施形態では、免疫原はマウスANGPTL4の断片を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号1の残基21〜残基174の断片を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号50の残基21〜残基174の断片を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号1の残基21〜残基174の連続した約10〜20のアミノ酸の任意のペプチドを含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号50の残基21〜残基174の連続した約10〜20のアミノ酸の任意のペプチドを含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号40〜48のいずれかより選択されるペプチドを含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号40、41、42、および43より選択されるペプチドを含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号40、41、42、および43より選択される1つ以上のアミノ酸配列を有するペプチドを含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号41、42、および43を有するペプチドを含む。このような特定の実施形態では、免疫原性を有する可能性が高いペプチドが選択される。このような特定の実施形態では、親水性であると予測され、かつ/または、その折りたたみ状態において天然のマウスANGPTL4の表面に露出する可能性が高いペプチドが選択される。適切な免疫原性ペプチドを選択するための代表的な手引きは、例えば、Ausubelら(1989) Current Protocols in Molecular Biology Ch. 11.14 (John Wiley & Sons, NY);ならびにHarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 5 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)において提供される。
タンパク質のペプチド部分が親水性であり、そのためにタンパク質の表面に露出する可能性が高いかどうかを予測するための特定の代表的なアルゴリズムは、当業者に知られている。特定のこのようなアルゴリズムは、タンパク質の一次配列情報を用いてこのような予測を行う。特定のこのようなアルゴリズムは、例えば、HoppおよびWoods (1981) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 78:3824-3828、またはKyteおよびDoolittle (1982) J. Mol. Biol. 157:105-132の方法に基づく。タンパク質の一次アミノ酸配列に基づいてタンパク質の二次構造を予測するための特定の代表的なアルゴリズムは、当業者に知られている。例えば、Corriganら(1982) Comput. Programs Biomed. 3:163-168を参照されたい。特定のこのようなアルゴリズムは、例えば、ChouおよびFasman (1978) Ann. Rev. Biochem. 47:25-276の方法に基づく。特定の実施形態では、β-ターンを形成すると予測され、そのためにタンパク質の表面に露出すると思われるペプチド部分が、免疫原として選択されうる。
特定の実施形態では、免疫原はヒトANGPTL4を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトANGPTL4を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号2の残基21〜残基169の断片を含む。特定の実施形態では、免疫原は、配列番号2の残基21〜残基169の連続した約10〜20のアミノ酸の任意のペプチドを含む。このような特定の実施形態では、免疫原性を有する可能性が高いペプチドが選択される。このような特定の実施形態では、親水性であると予測され、かつ/または、その折りたたみ状態において天然のヒトANGPTL4の表面に露出する可能性が高いペプチドが選択される。適切な免疫原性ペプチドを選択するための代表的な手引きは、例えば、Ausubelら(1989) Current Protocols in Molecular Biology Ch. 11.14 (John Wiley & Sons, NY);ならびにHarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 5 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)において提供される。
特定の実施形態では、動物は免疫原および1つ以上のアジュバントによって免疫される。特定の実施形態では、アジュバントは、免疫反応を増加させるために、宿主となる種に応じて使用される。特定の代表的なアジュバントとしては、(完全および不完全)フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの無機塩類、界面活性物質、キトサン、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、ならびに、BCG (bacille Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumなどの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、免疫原、例えば、ペプチド免疫原への免疫反応は、免疫原を別の免疫原性分子すなわち「キャリアタンパク質」と結合することによって増強される。特定の代表的なキャリアタンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、オボアルブミン、コレラトキソイド、およびその免疫原性断片が挙げられるが、それらに限定されない。ペプチド免疫原のキャリアタンパク質との結合における代表的な手引きについては、例えば、Ausubelら(1989) Current Protocols in Molecular Biology Ch. 11.15 (John Wiley & Sons, NY);ならびにHarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 5 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。
特定の実施形態では、上記の任意の免疫原は標準的な組換え法を用いて産生され得る。例えば、特定の実施形態では、マウスもしくはヒトのANGPTL4をコードするポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドの断片は、適切な発現ベクターにクローニングされうる。特定の実施形態では、そのポリヌクレオチドは、配列番号3または配列番号4の核酸配列を含む。特定の実施形態では、組換えベクターはその後、適切な宿主細胞に導入される。特定の実施形態では、ポリペプチドはその後、宿主細胞から標準的な方法によって単離される。特定の代表的な組換えタンパク質発現の方法については、例えば、Ausubelら(1991) Current Protocols in Molecular Biology Ch. 16 (John Wiley & Sons, NY)を参照されたい。
F. 特定のアッセイ
1. 特定の結合アッセイ
特定の実施形態では、抗体は、ANGPTL4への結合について、抗体の抗原への結合を検出する特定の日常的な方法を用いてスクリーニングされる。例えば、特定の実施形態では、モノクローナル抗体のANGPTL4への結合能力は、ウェスタンブロットなどの標準的な免疫ブロッティング法によってアッセイされる。例えば、Ausubelら(1992) Current Protocols in Molecular Biology Ch. 10.8 (John Wiley & Sons, NY); HarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。特定の実施形態において、このようなアッセイに使用されるANGPTL4は単離されていてもよく、またはタンパク質および/もしくは高分子の複合混合物中に存在してもよい。
特定の実施形態では、モノクローナル抗体のANGPTL4への結合能力は、競合的結合アッセイを用いてアッセイされ、それはANGPTL4への結合について候補抗体が既知の抗ANGPTL4抗体と競合する能力を評価する。このような特定の実施形態では、既知の抗ANGPTL4抗体は、下記の第VI部のJに記載される任意のモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、競合的結合アッセイはELISAを用いて行われる。例えば、HarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。
特定の実施形態では、結合アッセイは、ANGPTL4に対する抗体の結合速度論(例えば、速度定数)または結合親和性(例えば、結合定数もしくは解離定数)を定量化するために用いられる。特定の実施形態では、結合の速度論または親和性は、固相支持体に抗原(例えば、ANGPTL4)を固定化することによって、「固相」で測定される。固定化された抗原は溶液から抗体を「捕捉」する。特定の実施形態では、結合の速度論または親和性は、固相支持体に抗体(例えば、ANGPTL4に対する抗体)を固定化することによって、「固相」で測定される。固定化された抗体は溶液から抗原を「捕捉」する。
特定の実施形態では、結合速度論または結合親和性はELISAに基づく方法を用いて測定される。特定の実施形態では、結合速度論または結合親和性は、Biacore表面プラズモン共鳴技術(Biacore, Piscataway, NJ)などのバイオセンサーに基づく技術を用いて測定される。特定のこのような方法は当業者に知られている。例えば、McCaffertyら(編)(1996) Antibody Engineering: A Practical Approach (IRL, Oxford, UK); Goldbergら(1993) Curr. Opin. Immunol. 5:278-281; Karlssonら(1991) J. Immunol. Methods 145:229-240; Malmqvist (1993) Curr. Opin. Immunol. 5:282-286を参照し、概説としては、Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols (2002) 178:1-37 at 19 (O’BrienおよびAitken編、Human Press, Totowa, NJ)のHoogenboom, Overview of Antibody Phage-Display Technology and Its Applicationsを参照されたい。
特定の実施形態では、ANGPTL4に特異的に結合するFabフラグメントの結合速度論または結合親和性が測定される。特定の場合、Fabフラグメントは多量体化しない特性を有する。多量体化は、場合によっては、「固相」法における結合速度論および結合親和性の測定を困難にし得る。例えば、Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols (2002) 178:1-37 at 19 (O’BrienおよびAitken編、Human Press, Totowa, NJ)のHoogenboom, Overview of Antibody Phage-Display Technology and Its Applicationsを参照されたい。従って、特定の実施形態では、ANGPTL4に特異的に結合するFabフラグメントは、例えばELISAに基づくアッセイまたはBiacoreアッセイなどの、抗原が固相支持体に固定化される結合アッセイでの使用に適している。特定の実施形態では、Fabフラグメントは、ANGPTL4に特異的に結合する完全な抗体から酵素法を用いて作製される。特定の実施形態では、Fabフラグメントは、第V部のD.3に上述されたような組換え発現系において、Fabフラグメントをコードする核酸を発現させることによって産生される。
特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体の結合速度論または結合親和性は、「液相」法を用いて測定される。このような方法では、結合の速度論または親和性は、溶液中の抗体抗原複合体について測定される。特定のこのような方法は当業者に知られている。このような方法の非限定的な例は、「結合平衡除外法」すなわち「KinExA」である。例えば、Blakeら(1996) J. Biol. Chem. 271:27677-27685; Drakeら(2004) Anal. Biochem. 328:35-43(Biacoreの「固相」法とKinExAの「液相」法とを比較している)を参照されたい。特定の実施形態では、KinExAを実施するための装置はSapidyne Instruments, Inc. (Boise, ID)により提供される。
特定の実施形態では、多価抗体もしくは多量体化する抗体の結合速度論または結合親和性は、液相法を用いて測定される。特定の場合、多価抗体もしくは多量体化する抗体の結合速度論または結合親和性の測定は、液相での分析に適している。
特定の実施形態では、そのKDによって測定される抗ANGPTL4抗体の結合親和性は、約10-6M以下である。特定の実施形態では、抗ANGPTL4抗体の結合親和性は、約10-7 M、約10-8 M、または約10-9 M以下である。このような特定の実施形態では、抗ANGPTL4抗体は治療抗体として使用されうる。例えば、Hudsonら(2003) Nature Med. 9:129-134を参照されたい。特定の実施形態では、10-9 M未満の結合親和性(例えば、約100 pM〜約5 pMの結合親和性を含むがそれに限定されない、約500 pM〜約0.5 pMの結合親和性)は、例えば、親和性成熟法を用いて達成可能である。例えば、Boderら(2000) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:10701-10705を参照されたい。
特定の実施形態では、マウスANGPTL4に対して誘導させたモノクローナル抗体は、ヒトANGPTL4への特異的結合について、例えば、本明細書において記載されたもののような特定の通常の検出方法を用いてスクリーニングされる。マウスANGPTL4とヒトANGPTL4の両方に結合する(すなわち、「交差反応性」を示す)モノクローナル抗体の能力は、マウスおよびヒトANGPTL4における同一エピトープの存在を示唆する。変性条件を用いる検出方法の特定の実施形態(例えば、ウェスタンブロット)では、交差反応性は、マウスモノクローナル抗体がマウスおよびヒトANGPTL4における同一の「線状」エピトープに結合することを示唆する。非変性条件を用いる検出方法の特定の実施形態では、交差反応性は、マウスモノクローナル抗体がマウスおよびヒトANGPTL4における同一エピトープ(例えば、線状エピトープまたは立体構造エピトープ)に結合することを示唆する。
2. 特定のエピトープマッピングの方法
様々な実施形態において、モノクローナル抗体が結合するエピトープは、任意の多数のアッセイによって同定される。特定の代表的なアッセイは、例えば、Morris, Methods in Molecular Biology Vol.66: Epitope Mapping Protocols (1996) (Humana Press, Totowa, NJ)に記載される。例えば、エピトープマッピングは、遺伝子断片発現アッセイまたはペプチドに基づくアッセイによって達成されうる。遺伝子断片発現アッセイの特定の実施形態では、例えば、ANGPTL4の断片をコードする核酸が原核細胞において発現され、単離される。このような特定の実施形態では、それらの断片に結合するモノクローナル抗体の能力はその後、例えば、免疫沈降または免疫ブロッティングによって評価される。特定の実施形態では、ANGPTL4の断片をコードする核酸は、in vitroにおいて放射性アミノ酸の存在下で転写され、翻訳される。ANGPTL4の放射性標識断片はその後、モノクローナル抗体への結合について検査される。特定の実施形態では、ANGPTL4の断片はタンパク質分解的断片化によって生成される。特定の実施形態では、エピトープは、ファージまたは酵母の表面に提示されたランダムペプチドのライブラリーを用いて同定される。特定の実施形態では、エピトープは、ANGPTL4の重複合成ペプチド断片のライブラリーを、モノクローナル抗体への結合について検査することにより同定される。特定の実施形態では、エピトープは、下記に記載されるもののような、競合アッセイを用いて同定される。
3. 特定の競合アッセイ
特定の実施形態では、関心のあるモノクローナル抗体と同一のANGPTL4のエピトープに結合するモノクローナル抗体が同定される。特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、例えば、上述のようなエピトープマッピングによって同定される。特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、通常の競合アッセイによって同定される。例えば、HarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch. 14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。非限定的な例となる競合アッセイでは、ANGPTL4またはその断片はマルチウェルプレートのウェル上に固定化される。特定のこのような実施形態では、関心のあるモノクローナル抗体は、標準的な方法によって蛍光標識(特定の実施形態では、フルオレセインイソチオシアネート)で標識される。特定のこのような実施形態では、関心のある標識モノクローナル抗体と標識されていないテストモノクローナル抗体との混合物がウェルに添加される。特定のこのような実施形態では、各ウェルの蛍光が定量化され、標識されていないテストモノクローナル抗体が関心のある標識モノクローナル抗体の結合を遮断する程度を測定する。特定の実施形態において、互いの結合を50%以上遮断する場合、モノクローナル抗体はエピトープを共有すると見なされる。代表的な競合アッセイもまた、例えば、Morris, Methods in Molecular Biology Vol.66: Epitope Mapping Protocols (1996) (Humana Press, Totowa, NJ)に記載される。非限定的な例となる競合アッセイは、下記の第VI部のOにおいて提供される。
4. 中和抗体を同定するための特定のアッセイ
特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、中和抗体、すなわち、in vivoおよび/またはin vitroにおいてANGPTL4の活性を低下させるものについてスクリーニングされる。特定の実施形態において、ANGPTL4の活性とは、LPLを阻害するANGPTL4の能力である。従って、特定の実施形態では、中和抗体は、ANGPTL4の存在下でのLPL活性を増加させるその能力によって同定される。このような特定の実施形態では、中和抗体は、対照抗体と比較して少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%まで LPL活性を増加させる。in vivoおよびin vitroにおいてLPL活性を測定する特定の代表的なアッセイは、それぞれ下記の第VI部のDおよび第VI部のIにおいて提供される。
特定の実施形態では、in vivoにおいてANGPTL4の活性を低下させる中和抗体は、少なくとも1つの血清脂質レベルを減少させるその能力によって同定される。特定の典型的な血清脂質としては、トリグリセリド、コレステロール、および遊離脂肪酸が挙げられるが、それらに限定されない。このような特定の実施形態では、中和抗体は、対照抗体と比較して、少なくとも1つの血清脂質レベルを少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%減少させる。特定の実施形態では、in vivoにおいてANGPTL4の活性を低下させる中和抗体は、脂肪含有食の特定の作用を弱める、またはそれから保護するその能力によって同定される。特定の典型的な作用としては、体重増加、肥満、グルコース不耐性(高血糖症)、インスリン非感受性(高インスリン血症)、肝臓脂肪症(脂肪肝)、および筋肉細胞内への脂質蓄積が挙げられるが、それらに限定されない。このような作用を測定する特定の代表的なアッセイは、下記の第VI部のC、第VI部のE、および第VI部のFにおいて提供される。
G. 中和モノクローナル抗体を用いた特定の医薬組成物および治療方法
特定の実施形態では、中和抗体は治療抗体として使用されうる。治療抗体として使用される特定の代表的な中和抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体が挙げられるがそれらに限定されない。当業者は特定の抗体の治療薬としての使用に精通している。例えば、1980年代半ば以来、1ダース以上もの抗体が、治療薬としての使用のためにFDAによって認可されている。例えば、Hudsonら(2003) Nature Med. 9:129-134; Gura (2002) Nature 417:584-586; Brekkeら(2002) Nature Reviews 2:52-62を参照されたい。特定のFDAに認可された抗体としては、様々な癌、炎症、およびウイルス感染を治療するために使用されるもの、ならびに移植片拒絶反応を防ぐために使用されるものが挙げられる。例えば、Gura (2002) Nature 417:584-586; Brekkeら(2002) Nature Reviews 2:52-62を参照されたい。更に、1ダース以上もの抗体が現在臨床試験中である。例えば、Brekkeら(2002) Nature Reviews 2:52-62を参照されたい。
特定の実施形態では、有効量のANGPTL4に対する中和抗体の投与を含む、脂質代謝障害を治療するための方法が提供される。特定の実施形態では、有効量のANGPTL4に対する中和抗体の投与を含む、急性の脂質代謝障害を治療するための方法が提供される。特定の実施形態では、有効量のANGPTL4に対する中和抗体の投与を含む、慢性の脂質代謝障害を治療するための方法が提供される。
本明細書において用いられる場合、「脂質代謝障害」としては、二次性高脂血症(高トリグリセリド血症および高コレステロール血症を含む)を引き起こし得る障害が挙げられるがそれらに限定されない。特定の典型的な脂質代謝障害としては、アテローム性動脈硬化症、異常脂質血症、高トリグリセリド血症(薬物誘導性高トリグリセリド血症、利尿薬誘導性高トリグリセリド血症、アルコール誘導性高トリグリセリド血症、β-アドレナリン遮断薬誘導性高トリグリセリド血症、エストロゲン誘導性高トリグリセリド血症、グルココルチコイド誘導性高トリグリセリド血症、レチノイド誘導性高トリグリセリド血症、シメチジン誘導性高トリグリセリド血症、および家族性高トリグリセリド血症を含む)、高トリグリセリド血症に関連した急性膵炎、カイロミクロン症候群、カイロミクロン血症、Apo-Eの欠損、LPLの欠損または低活性、高脂血症(家族性混合型高脂血症を含む)、高コレステロール血症、高コレステロール血症に関連した痛風、黄色腫症(皮下のコレステロール沈着)、冠動脈疾患(虚血性心疾患とも呼ばれる)、冠動脈疾患に関連した炎症、再狭窄、末梢血管障害、ならびに卒中が挙げられるが、それらに限定されない。特定の典型的な脂質代謝障害としては、肥満、メタボリックシンドロームの個々の要素(例えば、中心性肥満、FBG/前糖尿病/糖尿病、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、および高血圧)を含むメタボリックシンドローム、甲状腺機能低下症、尿毒症、ならびに(急速な体重増加を含む)体重増加に関連した他の症状、体重減少、体重減少の維持、または体重減少後の体重再増加の危険性などの、体重に関連した障害が挙げられるが、それらに限定されない。特定の典型的な脂質代謝障害としては、糖尿病、高血圧、およびインスリン抵抗性に関連した多嚢胞性卵巣症候群などの、関連した血糖障害が挙げられるがそれらに限定されない。特定の典型的な脂質代謝障害としては、腎臓移植、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、末端肥大症、全身性エリテマトーデス、異常グロブリン血症、脂肪異栄養症、糖原病I型、およびアジソン病が挙げられるが、それらに限定されない。
脂質代謝障害としては、二次性高トリグリセリド血症(I、V、およびIV型を含むがそれらに限定されないHTG)が挙げられるがそれらに限定されず、それには、(過度の飲酒、体重増加、および肥満を含むがそれらに限定されない)食生活によるHTG、(外因性エストロゲン、タモキシフェン、レチノイド、チアジド、クロルタリドン、ベータ遮断薬、(リトナビルを含むがそれに限定されない)プロテアーゼ阻害剤、プロポフォール注入、および非経口脂質注入を含むがそれらに限定されない)薬物によるHTG、(糖尿病、妊娠、慢性腎不全、甲状腺機能低下症、家族性高脂血症、および膵炎を含むがそれらに限定されない)代謝障害によるHTGが含まれるが、それらに限定されない。
脂質代謝障害としては、血管アクセス機能障害に関連した脂質障害;(前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、肺癌および膵臓癌を含むがそれらに限定されない)新生組織形成を含むがそれに限定されない増殖性疾患に関連した脂質障害;例えば、感染症、創傷治癒、免疫不全症候群(AIDSおよび異常分化に関連したそれらの症候群を含むがそれらに限定されない他の症候群)、瘢痕形成、アテローム性動脈硬化症、再狭窄および移植片拒絶反応、自己免疫疾患、ならびに慢性炎症性疾患および障害に関連するものを含むがそれらに限定されない炎症に応答して起こる障害(それらには、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスを含むがそれらに限定されない障害、ならびに、クローン病、大腸炎、炎症性腸疾患、ライム病を含む反応性関節炎、インスリン依存性糖尿病、臓器特異的自己免疫、多発性硬化症、橋本甲状腺炎およびグレイヴズ病、シェーグレン症候群、接触性皮膚炎、乾癬、強皮症、移植片対宿主拒絶反応、サルコイドーシス、マラリア、敗血症、膵炎、アレルギー(喘息およびアレルギー性鼻炎を含むがそれに限定されない)を含むがそれらに限定されないアトピー性症状、食品アレルギーを含むがそれに限定されない消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎および糸球体腎炎、血液凝固障害、内毒素性ショックならびに、睡眠時無呼吸および眠気などの他の炎症介在性障害を含むがそれらに限定されない障害が含まれるがそれらに限定されない)が挙げられるが、それらに限定されない。
特定の実施形態では、有効量のANGPTL4に対する抗体および別の治療薬の投与を含む、脂質代謝障害を治療するための方法が提供される。このような特定の実施形態では、有効量の更なる治療薬は投与される。特定の実施形態では、更なる治療薬はANGPTL4に対する別の抗体である。特定の実施形態では、更なる治療薬は非抗体の薬剤である。特定の実施形態では、更なる治療薬は、1つ以上の血清脂質レベルを低下させる薬剤である。特定の代表的な更なる治療薬としては、HMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、およびフルバスタチン)などのコレステロール合成阻害剤(スタチン);コレスチラミンおよび他の樹脂などの胆汁捕捉剤;ナイアシンなどのVLDL分泌阻害剤;フィブリン酸誘導体などのリポタンパク質リパーゼ刺激剤;プロブコールなどの脂溶性抗酸化剤;アシルCoA コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤;ファルネソイドX受容体アンタゴニスト;ステロール調節結合タンパク質切断活性化タンパク質(SCAP)活性化剤;ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)阻害剤;ならびにApoE関連ペプチドが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、更なる治療薬は、高比重リポタンパク質(HDL)を上昇させる薬剤である。このような薬剤の非限定的な例には、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤が含まれるがそれに限定されない。
特定の実施形態では、有効量のANGPTL4に対する抗体、ならびに製薬上許容されうる希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤および/またはアジュバントを含有する医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、有効量のANGPTL4に対する抗体ならびに有効量の少なくとも1つの更なる治療薬を、製薬上許容されうる希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤および/またはアジュバントとともに含有する医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬は上述のものから選択される。
特定の実施形態では、医薬組成物のための製剤材料は、用いられる用量および濃度において受容者に対して毒性を持たない。
特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘性、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解または放出の速度、吸収性または透過性を改良、維持、または保存するための製剤材料を含有する。特定の実施形態では、適切な製剤材料としては、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンおよびリジン);抗菌剤;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウム);バッファー(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩および他の有機酸);充填剤(例えば、マンニトールおよびグリシン);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、およびヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン);増量剤;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースおよびデキストリン);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンおよび免疫グロブリン);着色料、着香料、および賦形剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩を形成する対イオン(例えば、ナトリウム);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸および過酸化水素);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20およびポリソルベート80)、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、およびチロキサポール);安定性向上剤(例えば、スクロースおよびソルビトール);等張性向上剤(例えば、ハロゲン化アルカリ金属(例えば、塩化ナトリウムまたはカリウム)、マンニトール、およびソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤;ならびに製薬アジュバントが挙げられるが、それらに限定されない(Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、A.R. Gennaro, 編、Mack Publishing Company (1990))。
特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体または他の治療用分子は、半減期を延長するビヒクルと結合される。特定の代表的な半減期を延長するビヒクルが当技術分野において知られている。特定のこのようなビヒクルとしては、Fcドメイン、ポリエチレングリコール、およびデキストランが挙げられるが、それらに限定されない。特定のこのようなビヒクルは、例えば、公開されたPCT出願WO 99/25044に記載される。
特定の実施形態では、最適な医薬組成物は、例えば、目的とする投与経路、送達形式、および望ましい用量に応じて、当業者により決定されるであろう。例えば、上記のRemington's Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。特定の実施形態では、このような組成物は、中和抗体の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度、in vivoでのクリアランス速度に影響を及ぼしうる。
特定の実施形態では、医薬組成物中の主要なビヒクルまたは担体は、水性もしくは非水性の性質のいずれかでありうる。例えば、特定の実施形態では、適切なビヒクルまたは担体は、注射用の水、生理食塩水、または人工脳脊髄液であり、場合により、非経口投与用の組成物において一般的な他の物質が追加されうる。特定の典型的なビヒクルとしては、中性緩衝生理食塩水および血清アルブミンを配合した生理食塩水が挙げられるがそれらに限定されない。特定の実施形態では、医薬組成物は、約pH 7.0〜8.5のTrisバッファー、または約pH 4.0〜5.5の酢酸バッファーを含有し、それは更にソルビトールまたは適切なその代替物を含有しうる。特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する組成物は、望ましい純度を有する選択された組成物と任意の製剤物質(Remington's Pharmaceutical Sciences、上記)とを混合することによって、凍結乾燥固体もしくは水溶液の形状として、保存用に調製されうる。特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する組成物は、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として処方されうる。
特定の実施形態では、医薬組成物は非経口投与のために選択される。特定の実施形態では、医薬組成物は、吸入のため、または、経口のような消化管を介した送達のために選択される。製薬上許容されうる組成物を調製するための特定の代表的な技術は、当業者の技術の範囲内である。
特定の実施形態では、製剤成分は、投与部位に許容されうる濃度で存在する。特定の実施形態では、バッファーは組成物を生理的なpHまたはそれよりわずかに低いpHに維持するために使用され、通常、約5〜8のpH範囲内である。
特定の実施形態では、非経口投与が企図される場合、医薬組成物は、発熱物質を含まず非経口的に許容されうる水溶液の形状でありえ、製薬上許容されうるビヒクル中に更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する望ましい抗体を含有している。特定の実施形態では、非経口注射用のビヒクルは滅菌蒸留水であり、その中に、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体が滅菌等張液として処方され、適切に保存される。特定の実施形態では、製剤は、所望の分子の、注射可能なマイクロスフェア、生体分解性粒子、高分子化合物(例えばポリ乳酸もしくはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームなどの物質との処方を含むことができ、それは、その後デポー注射によって送達されうる生成物の制御放出または持続放出を提供しうる。特定の実施形態では、ヒアルロン酸が使用されてもよく、循環血液中での持続時間を向上させる作用を持ちうる。特定の実施形態では、所望の分子を導入するために、埋め込み型の薬物送達装置が使用されうる。
特定の実施形態では、医薬組成物は吸入用に処方されうる。特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体は、吸入用の乾燥粉末として処方されうる。特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する吸入溶液が、エアロゾル送達のための推進剤とともに処方されうる。特定の実施形態では、溶液は噴霧されうる。
特定の実施形態では、製剤は経口投与されうる。特定の実施形態では、この方法で投与される、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体は、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の配合に通常使用される担体とともに、またはそれを含まずに処方されうる。特定の実施形態では、カプセルは、消化管内で生体利用性を最大にし、浸透前の分解を最小にする時点で製剤の有効成分を放出するように設計されうる。特定の実施形態では、任意の更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体の吸収を促進するために、少なくとも1つの更なる物質が追加され得る。特定の実施形態では、希釈剤、着香料、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および/または結合剤もまた使用されうる。
特定の実施形態では、医薬組成物は、錠剤の製造に適した毒性を持たない賦形剤との混合物中に、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まない有効量のANGPTL4に対する抗体を含有する。特定の実施形態では、錠剤を滅菌水または別の適切なビヒクルに溶解することによって、溶液が単位投与剤型に調製されうる。特定の典型的な賦形剤としては、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトース、およびリン酸カルシウム);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、およびアラビアゴム);ならびに滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルク)が挙げられるが、それらに限定されない。
更なる医薬組成物は当業者にとって明白であり、持続送達または制御送達製剤中に少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する製剤を含んでいる。特定の代表的な持続送達または制御送達製剤としては、リポソーム担体、生体分解性微粒子、多孔質ビーズ、およびデポー注射が挙げられるが、それらに限定されない。特定の製剤を調製するための特定の代表的な技術は、当業者に知られている。特定の実施形態では、持続放出製剤は、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形での半透性ポリマーマトリックスを含みうる。特定の代表的な持続放出マトリックスとしては、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(例えば、米国特許第3,773,919号およびEP 058,481参照)、L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタミン酸との共重合体(例えば、Sidmanら(1983) Biopolymers 22:547-556参照)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(例えば、Langerら(1981) J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277およびLanger (1982) Chem. Tech. 12:98-105参照)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、上記)、ならびにポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、持続放出組成物はリポソームを含んでもよく、それは、特定の実施形態では、当技術分野において既知の任意のいくつかの方法によって調製され得る。例えば、Eppsteinら(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692; EP 036,676; EP 088,046; およびEP 143,949を参照されたい。
特定の実施形態では、in vivo投与のために使用される医薬組成物は通常滅菌される。特定の実施形態では、これは滅菌したろ過膜を介したろ過によって達成されうる。特定の実施形態において、組成物が凍結乾燥される場合、この方法を用いた滅菌は凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに実施されうる。特定の実施形態では、非経口投与のための組成物は凍結乾燥された形または溶液で保存されうる。特定の実施形態では、非経口組成物は通常、滅菌した接続口を有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液のバッグまたはバイアルに収容される。
特定の実施形態では、医薬組成物が処方された時点で、それは、溶液、懸濁液、ゲル、乳液、固体として、または乾燥粉末もしくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存されうる。特定の実施形態では、このような製剤は、すぐに使用可能な形状または投与前に再構成される形状(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存されうる。
特定の実施形態では、単回投与ユニットを製造するためのキットが提供される。特定の実施形態では、キットは、それぞれ乾燥タンパク質を入れた第一の容器と水性製剤を入れた第二の容器の両方を含みうる。特定の実施形態では、単一または複数の隔室を有する事前に充填された注射器(例えば、液体注射器およびリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットが含まれる。
特定の実施形態では、治療に用いられるべき、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物の有効量は、例えば、治療の状況および目的によって異なるであろう。当業者は、特定の実施形態に応じて治療に適した投与量レベルが、一つには、送達される分子、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体が使用されている適応症、投与経路、ならびに患者の大きさ(体重、体表面もしくは臓器の大きさ)および/または状態(年齢および全体的な健康状態)によって異なることを理解するであろう。特定の実施形態では、最適な治療効果を得るために、臨床医は投与量の力価を検査し、投与経路を変更しうる。特定の実施形態では、標準的な投与量は、上述の要因に応じて、患者の体重kgあたり約0.1μg〜約100 mgまでまたはそれ以上でありうる。特定の実施形態では、投与量は、0.1μg/kg〜約100 mg/kgまで;1μg/kg〜約100 mg/kgまで;または5μg/kg〜約100 mg/kgまでの範囲でありえ、前記の任意の両端値の間のすべての点を含みうる。特定の実施形態では、投与量は、約10 mg/kg体重〜約60 mg/kg体重の間である。特定の実施形態では、投与量は、約10 mg/kg体重、約20 mg/kg体重、約30 mg/kg体重、約40 mg/kg体重、約50 mg/kg体重、または約60 mg/kg体重である。
特定の実施形態では、適切な投与量は、下記の例えば第VI部のP、R、およびT〜Yにおいて提供されるような動物実験に基づいて決定されうる。
特定の実施形態では、投与頻度は、ANGPTL4に対する抗体および、該当する場合には、使用される製剤中の任意の更なる治療薬の薬物動態パラメーターを考慮に入れるであろう。特定の実施形態では、臨床医は、投与量が望ましい効果を達成するまで、組成物を投与するであろう。特定の実施形態では、そのために組成物は、単回投与として、または経時的な(同一量の目的とする分子を含有してもしなくてもよい)2回以上の投与として、または埋め込み型装置もしくはカテーテルを介した持続注入として投与されうる。特定の実施形態では、適切な投与量の更なる改善は当業者によって日常的に行われ、彼らによって日常的に行われる作業の範囲内である。特定の実施形態では、適切な投与量は、適切な用量応答データの使用によって確定されうる。特定の実施形態では、患者は、ANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物の1回の投与を受ける。特定の実施形態では、患者は、ANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物の、1日あたり1回、2回、3回、または4回の投与を受ける。特定の実施形態では、患者は、ANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物の、1週間あたり1回、2回、3回、4回、5回または6回の投与を受ける。特定の実施形態では、患者は、ANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物の、1ヶ月あたり1回または2回の投与を受ける。
特定の実施形態では、医薬組成物の投与経路は既知の方法と一致し、例えば、経口で、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内への注射を介して;持続放出システムもしくは埋め込み型装置による。特定の実施形態では、組成物は、ボーラス注射によってまたは持続的に点滴によって、または埋め込み型装置によって投与されうる。
特定の実施形態では、組成物は、目的とする分子が吸着もしくは封入された膜、スポンジまたは別の適切な素材の移植によって局所投与されうる。特定の実施形態において、埋め込み型装置が用いられる場合、装置は任意の適切な組織または臓器に移植され、目的とする分子の送達は拡散、持続放出型ボーラス、または持続投与でありうる。
特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物のex vivoでの使用が望ましいかもしれない。このような特定の場合、患者から摘出された細胞、組織および/または臓器を、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体を含有する医薬組成物に触れさせ、その後、該細胞、組織および/または臓器を再度患者に移植する。
特定の実施形態では、少なくとも1つの更なる治療薬を含む、またはそれを含まないANGPTL4に対する抗体は、本明細書に記載されたような方法を用いて、そのポリペプチドを発現および分泌するように遺伝子操作された特定の細胞を移植することによって送達される。特定の実施形態では、このような細胞は動物細胞もしくはヒト細胞でありえ、自己細胞、異種(heterologous)細胞、または異種(xenogeneic)細胞でありうる。特定の実施形態では、細胞は不死化されうる。特定の実施形態では、免疫反応の可能性を減少させるために、細胞は周囲の組織の浸潤を避けるように封入されうる。特定の実施形態では、封入素材は通常、タンパク質生成物の放出を可能にするが、患者の免疫系によるもしくは周囲の組織由来の他の有害な因子による細胞の破壊を防ぐ、生体適合性のある、半透性ポリマーの封入体または膜である。
H. 特定の検出および診断方法
特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体はin vivoまたはin vitroにおけるANGPTL4の存在を検出するために使用される。特定の実施形態では、in vivoにおけるANGPTL4のレベルは、脂質代謝障害などの病状と相関し、従ってその病状の診断を可能にする。ANGPTL4に対する抗体によって診断されうる特定の典型的な病状は、上記に記載されている。
特定の代表的な検出方法は当技術分野において知られており、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット、ウェスタンブロット、免疫蛍光検査法、および免疫沈降が挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、例えば、抗体を標識と結合させることによってそれらを直接検出しうるように修飾される。特定の代表的な標識としては、蛍光団、発色団、放射性原子、高電子密度試薬、酵素、およびリガンドが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体は、ある種の抗体に結合する標識された「二次」抗体(例えば、ヤギ抗マウス抗体)を用いることによって検出される。
I. 特定のANGPTL4アンタゴニストおよびアゴニストのスクリーニング方法
特定の実施形態では、ANGPTL4に結合する薬剤のスクリーニング方法が提供される。特定の実施形態では、スクリーニング方法は、ANGPTL4を適切な条件下で1つ以上の薬剤候補に暴露すること、およびANGPTL4と該1つ以上の薬剤候補との結合を評価することを含む。特定の実施形態では、スクリーニング方法は、競合的結合アッセイにおけるANGPTL4に対する抗体の使用を含む。このような特定の実施形態では、ANGPTL4に対する抗体およびANGPTL4を含有する第一結合混合物が用いられる。第一結合混合物におけるANGPTL4と抗体との間の結合量(M0)が測定される。抗体、ANGPTL4、およびスクリーニングされるべき薬剤を含有する第二結合混合物もまた用いられる。第二結合混合物におけるANGPTL4と抗体との間の結合量(M1)が測定される。第一結合混合物における結合量は、例えば、M1/M0比の計算によって第二結合混合物における結合量と比較される。第二結合混合物におけるANGPTL4に対する抗体の結合量が第一結合混合物におけるANGPTL4に対する抗体の結合量より少ない場合、薬剤はANGPTL4に結合できると考えられる。特定の実施形態では、ANGPTL4に結合する薬剤は、抗体のANGPTL4への結合を少なくとも約10%(すなわち、M1/M0<0.9)、少なくとも約30%(すなわち、M1/M0<0.7)、少なくとも約50%(すなわち、M1/M0<0.5)、少なくとも約70%(すなわち、M1/M0<0.3)、少なくとも約80%(すなわち、M1/M0<0.2)、少なくとも約90%(すなわち、M1/M0<0.1)、または少なくとも約95%(すなわち、M1/M0<0.05)減少させる。
特定の実施形態では、上述の任意のスクリーニング方法に使用されるANGPTL4は、ANGPTL4のN末端コイルドコイルドメインまたはその断片である。ANGPTL4のN末端コイルドコイルドメイン内に結合する特定の抗体が中和活性を有するという出願人の観察に基づき(下記の第VI部のLおよび第VI部のP参照)、スクリーニング方法によってANGPTL4のN末端コイルドコイルドメインに結合すると同定された薬剤(例えば、抗体または非抗体性の薬剤)は、 ANGPTL4活性のアンタゴニスト候補である。特定の実施形態では、アンタゴニスト活性は、アンタゴニスト候補が第VI部のDおよび第VI部のIに記載されるもののようなin vivoまたはin vitroアッセイにおいてANGPTL4を中和することを実証することによって検証される。特定の実施形態では、ANGPTL4のアンタゴニストは脂質代謝障害の治療に使用される。
特定の実施形態では、ANGPTL4のフィブリノーゲンドメインに結合する薬剤のスクリーニング方法が提供される。ANGPTL4のフィブリノーゲンドメイン内に結合する抗体(6G11)がANGPTL4活性を向上させるという出願人の観察に基づき(第VI部のL、第VI部のP参照)、スクリーニング方法によってANGPTL4のフィブリノゲンドメインに結合すると同定された薬剤(例えば、抗体または非抗体性の薬剤)は、ANGPTL4活性のアゴニスト候補である。特定の実施形態では、アゴニスト活性は、アゴニスト候補が第VI部のIに記載されるアッセイのようなin vitroアッセイにおいてANGPTL4を増強することを実証することによって、またはin vivo でアゴニスト候補を投与することおよび1つ以上の血清脂質レベルの増加について検査することによって検証される。特定の実施形態では、ANGPTL4のアゴニストは、拒食症、過食症、ならびに、癌、嚢胞性線維症、およびAIDSのような疾患に関連した悪液質(消耗)などの過度の体重減少に関連した特定の障害の治療に使用される。
ANGPTL4への結合についてスクリーニングされ得る特定の典型的な薬剤としては、抗体、低分子(例えば、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物または有機金属化合物の塩、単糖類、アミノ酸、ヌクレオシド、およびヌクレオチド)、アプタマー、ペプチド、ならびにペプチド模倣薬が挙げられるが、それらに限定されない。特定の典型的なペプチドとしては、ランダムペプチドライブラリー(例えば、Lamら(1991) Nature 354:82-84; Houghtenら(1991) Nature 354:84-86参照)の構成要素ならびにD-および/またはL-立体配置アミノ酸で作製されたコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリーの構成要素を含むがそれらに限定されない可溶性ペプチド;ならびに無作為のまたは部分的に縮重した、方向性のあるリン酸化ペプチドライブラリー(例えば、Songyang (1993) Cell 72:767-778参照)の構成要素を含むがそれに限定されないリン酸化ペプチドが挙げられる。
特定の実施形態では、コンピュータモデリングおよび検索技術が、ANGPTL4に結合する化合物の同定、または既に同定された化合物の改良を可能にする。特定の代表的な分子モデリングシステムとしては、CHARMMおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, MA)が挙げられるがそれらに限定されない。CHARMMはエネルギー最小化および分子動力学関数を実行する。QUANTAは、分子構造の、構築、グラフィックモデリングおよび解析を実行する。QUANTAは、分子同士の挙動の、相互作用的な構築、改変、視覚化、および解析を可能にする。
J. ANGPTL4の核酸アンタゴニスト
特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸の発現を減少させる単離核酸が提供される。特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸はマウスANGPTL4をコードする。特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸はヒトANGPTL4をコードする。特定の実施形態では、単離核酸はアンチセンス核酸である。このような特定の実施形態では、アンチセンス核酸は、RNaseHに基づく機構によって標的mRNAの分解を促進する一本鎖DNA分子である。特定の実施形態では、アンチセンス核酸は約8〜30ヌクレオチドの長さ(両端値の間のすべての点を含む)のオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、アンチセンス核酸は約18〜26ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドである。
特定の実施形態では、アンチセンス核酸は、RNA干渉(RNAi)に基づく機構によって標的核酸の発現を減少させるRNA分子を含む。RNAiに適した特定の代表的なRNA分子としては、低分子干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(mRNA)、小型非コードRNA(tiny non-coding RNA: tncRNA)、および低分子調節RNA(smRNA)が挙げられるが、それらに限定されない。特定の代表的なRNAi機構およびRNAiにおいて使用するためのRNA分子の総説については、例えば、Novinaら(2004) Nature 430:161-164を参照されたい。
特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸の発現を減少させるsiRNAが提供される。特定の実施形態では、siRNAは約18〜26ヌクレオチドの長さ(両端値の間のすべての点を含む)のオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、siRNAは約20〜24ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド、または約21〜23ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、siRNAは二本鎖RNAである。特定の実施形態では、siRNAは、siRNAのアンチセンス鎖に相補的な標的mRNA分子の分解を誘導するであろう。例えば、Novinaら(2004) Nature 430:161-164を参照されたい。
アンチセンスDNA分子またはsiRNAなどのアンチセンス核酸の活性は、しばしば標的mRNAの二次構造の影響を受ける。例えば、Vickersら(2003) J. Biol. Chem. 278:7108-7118を参照されたい。従って、特定の実施形態では、塩基対合に使用可能な標的mRNAの領域に相補的なアンチセンス核酸が選択される。特定の実施形態では、標的mRNAの適切な領域は、「遺伝子歩行(gene walk)」の実施、例えば、多数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、標的mRNAの様々な領域にハイブリダイズするそれらの能力について、および/または標的mRNA発現を減少させるそれらの能力について、実験的に検査することによって同定される。例えば、Vickersら(2003) J. Biol. Chem. 278:7108-7118; Hillら(1999) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 21:728-737を参照されたい。特定の実施形態では、標的mRNAのどのような他の領域にもハイブリダイズしない標的mRNAの領域を同定するための、mRNA二次構造予測プログラムまたは関連アルゴリズムを用いて、標的mRNAの適切な領域を同定する。例えば、Hillら(1999) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 21:728-737を参照されたい。特定の実施形態では、標的mRNAの適切な領域を同定するために、上記方法の両方の組み合わせが用いられる。例えば、Hillら(1999) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 21:728-737を参照されたい。
特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸の発現を減少させることによってANGPTL4活性を低下させる方法が提供される。特定の実施形態では、その方法は、in vitroまたはin vivoの細胞においてANGPTL4をコードする核酸の発現を減少させることを含む。特定の実施形態では、その方法は、ANGPTL4をコードする核酸の発現を減少させるアンチセンス核酸を、in vitroまたはin vivoの細胞に投与することを含む。特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸はヒトANGPTL4をコードする。特定の実施形態では、ANGPTL4をコードする核酸はマウスANGPTL4をコードする。
特定の実施形態では、上述(第V部のG)の障害のような脂質代謝障害を治療する方法が提供される。特定の実施形態では、その方法は、患者にANGPTL4をコードする核酸の発現を減少させる有効量のアンチセンス核酸を投与することを含む。特定の実施形態では、アンチセンス核酸はANGPTL4をコードする核酸を発現する臓器に送達される。特定の研究では、ANGPTL4が絶食条件下で肝臓、下垂体、および脂肪組織において誘導されることが示された(Geら(2004) J. Lipid Res. 45:2071-2079)。従って、特定の実施形態では、アンチセンス核酸は、肝臓、下垂体、または脂肪組織に送達される。アンチセンス核酸のin vivo投与、および肝臓などの特定の臓器への持続送達を含むin vivoでのアンチセンス核酸の持続送達のための特定の代表的な手引きは、例えば、Khanら(2004) J. Drug Targeting 12:393-404において提供される。特定の実施形態では、持続送達は、生分解性ポリマーに封入された、または別の方法で含有されたアンチセンス核酸を投与することによって達成される。例えば、特定の実施形態では、アンチセンス核酸はポリ(グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア(例えば、0.5〜20μm; 3000 MW)内に含有されうる。特定の実施形態では、アンチセンス核酸は親油性成分とコンジュゲートされる(Khanら(2004) J. Drug Targeting 12:393-404参照)。
VI.実施例
A. マウス飼育および食餌研究
マウス研究は、連邦政府の指針に沿って行った。下に示すように、マウスを12時間明/12時間暗の一定周期にて24℃で飼育し、水および齧歯類用の固形飼料(chow)(脂質由来カロリー22%) (製品番号5001; Purina, St. Louis, MO)または高脂質食餌(HFD)(脂質由来カロリー60%) (製品番号D12492; Research Diets, New Brunswick, NJ.)を自由に摂取できるようにした。HFDを与えるマウスには、その食餌を4〜5週齢以降に与えた。以下に「絶食状態」にあると呼ぶマウスには、飼料を16時間与えなかった。
B. ANGPTL4のin vivo 過剰発現は高脂血症を引き起こした
1. マウスANGPTL4の過剰発現
全長マウスANGPTL4(配列番号1)をコードするcDNAをアデノウイルスベクターpFADのAd E1-欠失領域に挿入して、該cDNAをサイトメガロウイスルプロモーターの制御下に配置した。Cell Biology: A Laboratory Handbook 第1巻, pp. 500-512 (J.E. Celis編, 第2版 1998)中のHittら,“Construction and propagation of human adenovirus vectors”を参照されたい。得られた構築物Ad5-mAngptl-4Tを、CHO細胞に感染させるために使用した。対照として、β-ガラクトシダーゼをコードするcDNAをアデノウイルスベクターpFADのAd E1-欠失領域に挿入し、該cDNAをサイトメガロウイスルプロモーターの制御下に配置した。得られた構築物Ad5-β-galもCHO細胞に感染させるために使用した。マウスANGPTL4 cDNAまたはβ-ガラクトシダーゼcDNAの発現は、感染CHO細胞の抽出物のウェスタンブロットにより確認した。
Ad5-mAngptl-4TまたはAd5-β-galを、5 x 1010 vpにてC57BL/6Jマウスに尾静脈から注射した。アデノウイルス感染マウス由来の血液サンプルを感染後の種々の時点で採血した。血清中のトリグリセリドおよびコレステロールレベルは、Cobas Integra 500 (Roche, Basel, スイス)を用いて測定した。血清中の遊離脂肪酸(FFA)レベルはNEFA Cキット(99475409, Wako, Richmond, VA)を用いて測定した。
図1A、1B、および1Cに示すように、Ad5-mAngptl-4Tを注射したマウス(黒塗りの四角)は、Ad5-β-galを注射した対照マウス(白抜きの四角)と比べて、トリグリセリド、総コレステロール、および遊離脂肪酸(FFA)の絶食時血清レベルの増加を示した。特に、Ad5-mAngptl-4T-注射マウスにおけるトリグリセリドおよびFFAの絶食時血清レベルは、注射後2日以内に上昇し、4日後にピークに達した(図1Aおよび1C)。4日目には、Ad5-mAngptl-4T注射マウスでは、対照マウスと比べて、トリグリセリドが約18倍に、また、FFAが約9倍に増加した。Ad5-mAngptl-4注射マウスでは対照マウスと比較して、総コレステロールの絶食時血清レベルもまた著しく増加した(図1B)。Ad5-mAngptl-4TまたはAd5-β-galの注射から3日後の絶食時血清トリグリセリドおよびコレステロールレベルも、図2および3に示す。
2. ヒトANGPTL4の過剰発現
ヒトANGPTL4のマウスに対する影響を調べるために、ヒトANGPTL4を野生型マウスで過剰発現させた。全長ヒトANGPTL4 (配列番号2)をコードするcDNAを、アデノウイルスベクターpFADのAd E1-欠失領域に挿入して、該cDNAをサイトメガロウイスルプロモーターの制御下に配置した。得られた構築物Ad5-hAngptl4T、または対照構築物Ad5-β-galを5 x 1010 vpにてC57BL/6Jマウスの尾静脈に注射した。血清中のトリグリセリドおよびコレステロールレベルを注射後4日目に測定した。図4および図5に示すように、ヒトANGPTL4は、対照構築物と比べて、絶食時血清トリグリセリドおよびコレステロールレベルを著しく増加させた。この調査において、ヒトANGPTL4はマウスではグルコースレベルに対して何ら影響を及ぼさなかった(データ未掲載)。こうした結果は、ヒトANGPTL4が、マウスANGPTL4と同様に、マウスにおいて絶食時血清脂質レベルを増加させることができる、ということを実証する。
C. Angptl4ノックアウトマウスでは血清脂質レベルが減少していた
ANGPTL4の欠失が、ANGPTL4の過剰発現と比べて血清脂質レベルに対して逆の影響を及ぼすかを調べるために(すなわちANGPTL4の欠失が血清脂質レベルを減少させるかを調べるために)、Angptl4をマウスから「ノックアウト」させた。マウスにおいてAngptl4をノックアウトするために、Angptl4遺伝子座にレトロウイルスベクターが挿入されたES細胞クローンをC57BL/6-Tyrc-Brd 宿主胚盤胞内に注入した。Zambrowiczら(1998) Nature 392:608-611を参照されたい。キメラマウスを作製し、C57BL/6-Tyrc-Brdマウスへと育てた。得られたAngptl4+/-子孫を近親交配させてAngptl4-/-マウスを作製した。ウイルスの組込みおよび単一コピーの内在性遺伝子を検出するために、それぞれネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子断片およびマウスCsk遺伝子(MMU05247)のエクソン1を含む断片をプローブとして使用して定量的ドットブロット(Bio-Rad, Hercules, CA)を行うことにより、尾部DNAの遺伝子型を決定した。
図29に示すように、ノックアウトマウスはいくらか生存率が低下していた。さらに、いくつかの仔マウスは離乳前に膨張した腹部および腸リンパ管拡張症を示すことが見出された。
さらに、高脂質食餌(HFD)を与えたノックアウトマウスは、HFDを与えた野生型マウスよりも生存率が低かった。図30を参照されたい。いくつかの死亡したノックアウトマウスは膨張した腹部を有することが見出され、いくつかは腸間膜リンパ節において脂質蓄積(lipid-laden)マクロファージおよび/または慢性炎症を有することが見出された。さらに、いくつかのマウスは拡張したリンパ管を有することが見出された。
標準(「固形飼料(chow)」)食餌を与えられたマウスにおける血清脂質レベルに対するAngptl4欠失の影響を評価するために、ノックアウトマウスおよび野生型マウスの摂食状態および絶食状態における血清トリグリセリドおよびコレステロールレベルを調べた。結果を図6に示す(「n」は使用したマウスの数を表す)。絶食状態のノックアウトマウス(「HOM」)の血清トリグリセリドレベルは、絶食状態の野生型マウスの血清トリグリセリドレベルよりも70%低かった(図6A)。絶食状態のノックアウトマウスの総血清コレステロールレベルおよび遊離脂肪酸(FFA)レベルもまた、絶食状態の野生型マウスの総血清コレステロールレベルおよび遊離脂肪酸(FFA)レベルよりも著しく低かった(図6Bおよび6C)。
図25のパネルAは、標準(「固形飼料(chow)」)食餌を与えた雄野生型、ヘテロ接合型、およびノックアウトマウスの絶食時血清トリグリセリド、総コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)、および低密度リポタンパク質(LDL)レベルを示す。ヘテロ接合型雄マウスの絶食時血清トリグリセリドレベルは、この実験における野生型雄マウスよりも41%低かった。ノックアウト雄マウスの絶食時血清トリグリセリドレベルは、この実験における野生型雄マウスよりも59%低かった。ヘテロ接合型およびノックアウト雄マウスの絶食時総コレステロールレベルは、この実験における野生型雄マウスよりも、それぞれ10%および21%低かった。
図25のパネルBは、標準(「固形飼料(chow)」)食餌を与えた雌野生型およびノックアウトマウスの絶食時血清トリグリセリド、総コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)、および低密度リポタンパク質(LDL)レベルを示す。ノックアウト雌マウスの絶食時血清トリグリセリドレベルは、この実験における野生型雌マウスよりも27%低かった。ノックアウト雌マウスの絶食時総コレステロールレベルは、この実験における野生型雌マウスよりも33%低かった。雌ノックアウトマウスの絶食時HDLレベルは、この実験における雌野生型マウスよりも31%低かった。
食餌誘発性肥満(DIO)を有するノックアウトおよび野生型マウスの血清脂質レベルに対するAngptl4欠失の影響も調べた。ノックアウトマウスおよび野生型マウスに高脂質食餌(HFD)を与えてDIOを誘発させた。次にこれらマウスの血清脂質レベルについて摂食状態および絶食状態で調べた。図6Aおよび6Bに示すように、ノックアウトマウスでは摂食状態および絶食状態の両方において、血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルが著しく減少した。さらに、絶食状態のノックアウトマウスでは、FFAレベルも著しく減少した。図6Cを参照されたい。
図26は、高脂質食餌(HFD)を与えた野生型およびノックアウト雄マウスにおける、絶食時血清トリグリセリド、総コレステロール、HDL、およびLDLレベルを示す。この実験において、HFD食餌を与えたノックアウト雄マウスの絶食時血清トリグリセリドレベルは、HFDを与えた野生型マウスよりも77%低かった。HFD食餌を与えたノックアウト雄マウスの絶食時総コレステロールレベルは、この実験においてHFDを与えた野生型マウスよりも35%低かった。
さらに、ノックアウトマウスは、かなりの程度にDIOから保護された。HFDを与えた野生型マウスは標準食餌を与えた野生型マウスに比べて際立って肥満になった。図7Aおよび7Bを参照されたい。しかしながら、標準食餌またはHFDのいずれかを与えたAngptl4ノックアウトマウスでは、体重増加および体脂肪増加が著しく低減された。図7A〜7Dを参照されたい。体重減少の大部分は体脂肪量の減少に起因するものであり、除脂肪体重(lean body mass)の減少に起因するものではない。
図27のパネルAは、高脂質食餌(HFD)を与えた雄野生型(「WT」)およびノックアウト(「Hom」)マウスの体脂肪の総グラム数を示す。HFDを与えたノックアウト雄マウスは、HFDを与えた野生型雄マウスよりも体脂肪が著しく少なかった。図27のパネルBは、HFDを与えた雌野生型(「WT」)およびノックアウト(「Hom」)マウスにおける経時的な体脂肪の総グラム数を示す。この実験は、HFDを与えた雌野生型マウスと比較して、HFDを与えた雌ノックアウトマウスの方が体脂肪が少ないという傾向を示す。
HFDを与えた雄ノックアウトマウスは、HFDを与えた雄野生型マウスと同じような食糧摂取であった。図28のパネルAを参照されたい。HFDを与えた雄ノックアウトマウスはまたHFDを与えた雄野生型マウスと同じようなレベルの糞脂肪含量であった。図28のパネルBを参照されたい。
総じて、こうした結果は、Angptl4欠失が血清脂質を低下させ、肥満に対する保護を付与することを示した。
D. Angptl4ノックアウトマウスは、絶食状態において脂肪細胞LPL活性の低下を示さなかった
摂食状態および絶食状態の野生型およびノックアウトマウス由来の脂肪組織(精巣上体の脂肪パッド組織)中の内在性LPL活性を検査した。Kinematicaホモジェナイザーを用いて、氷冷ホモジェナイズ用バッファー(0.025 M NH3 (pH 8.2)、BSA 1 mg/ml、5 mM EDTA、ヘパリン5 IU/ml、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で、組織サンプル(0.3〜1.0 g)をホモジェナイズした。3,000 g、4℃で10分の遠心分離後に上清を回収した。
上清中のLPL活性は、Bergoeら(1996) Biochem. J. 313:893-898)のアッセイに基づき、基質であるグリセロール-トリ[9,10(n)-3H]オレエートから放出されるオレイン酸の量から測定した。100μlの上清を等容量の基質溶液(2 mMグリセロールトリ[9,10(n)-3H]オレエート(131 kbeq/μmol)、189 ng/mlのL-α-ホスファチジルコリン、14 mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、140 mM Tris-HCl(pH 8.0)、15%グリセロール、および10%熱不活性化ウシ胎児血清)に37℃で1時間加えた。3.25 mlのメタノール/クロロホルム/ヘキサン混合液(141:125:100、v/v/v)および1.05 mlの0.1 M K2CO3-ホウ酸バッファー(pH 10.5)を添加することにより反応を停止させた。激しいボルテックス撹拌および3,000 g、室温で15分の遠心分離後に、Beckman Coulter LS6500 液体シンチレーションカウンターを用いて、水/メタノール相の1 mlアリコート中の3Hの量を測定した。
野生型マウスでは、摂食状態での内在性LPL活性と比べて、絶食状態での内在性LPL活性は著しく低下していた。図8を参照されたい。この結果は、絶食状態においてANGPTL4発現が誘導され、そのことによりLPL活性が低下するという以前の観察と一致した。例えばGeら(2004) J. Lipid Res. 45:2071-2079を参照されたい。しかしながら、ノックアウトマウスでは、摂食状態での内在性LPL活性と比べて、絶食状態における内在性LPL活性は低下しなかった。この結果はノックアウトマウスにANGPTL4が存在しないことと一致した。
E. Angptl4ノックアウトマウスは肝臓脂肪症(脂肪肝)から保護された
HFDは肝臓脂肪症(脂肪肝)と関連している。Angptl4欠失がHFD-誘発型肝臓脂肪症からの保護を示すかを調べるために、局在化陽子磁気共鳴分光学(MRS)を用いて、HFDおよび標準食餌を与えた野生型マウスおよびノックアウトマウス由来の肝臓中の脂質レベルを測定した。肝脂肪濃度と脂肪浸潤の程度の両方を評価した。
高周波送受信用の内径38 mmのバードケージ型コイルを使用する、7テスラ16 cm口径PharmaScanシステム(Bruker BioSpin, Billerica, MA)を用いて、in vivo MRSを行った。磁石内部の予熱された水循環系によりマウスの体温を維持しながら1.5〜2%イソフルランを用いてマウスを麻酔した。マウスの呼吸活動を絶えずモニタリングした。肝臓全体を網羅する一連のT1スカウトイメージ(scout image)に基づいて、血管と脂肪組織を慎重に避けながら、関心領域(volume of interest: VOI)を選択した。PRESSシークエンス(TE = 28 ms、TR= 1.0 s、196平均、水抑制: オフ、VOI: 1.8×1.8×1.8 mm3、または2×2×2 mm)を用いて呼吸を同期化させながら局在化1H-MRSを得た。水および脂肪ピーク下の面積の積分を用いて脂肪含有率(脂肪%)を計算した。Thomsenら(1994) Magnetic Resonance Imaging 12:487-495を参照されたい。
HFDを与えた野生型マウス由来の肝臓は、標準(「chow」)食餌を与えた野生型マウス由来の肝臓と比べて著しく高い脂質レベルを示した。図9Aを参照されたい。しかしながら、HFDを与えたノックアウト(「HOM」)マウス由来の肝臓は、標準食餌を与えたノックアウトマウス由来の肝臓と比べて、脂質レベルの著しい増加を示さなかった。その上、HFDを与えたノックアウトマウス由来の肝臓は、HFDを与えた野生型マウス由来の肝臓と比べて著しく低い脂質レベルを示した。こうした結果と一致して、HFDを与えたノックアウトマウス由来の肝臓切片のオイルレッドO染色からは、HFDを与えた野生型マウス由来の肝臓切片と比べて、脂質滴の数および大きさが著しく減少していることが明らかにされた。図9Bを参照されたい。その上、HFDを与えたノックアウトマウスの肝臓切片中の脂質滴の数および大きさは、標準食餌を与えた野生型マウスのそれと似ていた。こうした結果はAngptl4-欠失マウスがHFD-誘発型肝臓脂肪症から保護されたことを示す。
ノックアウトマウスおよび野生型マウスにおける骨格筋の筋肉細胞内脂質(IMCL)含有率も測定し、この組織が、肝臓と同様に、ノックアウトマウスにおいて脂質蓄積から保護されるかを調べた。筋肉細胞内脂質含量の決定のために、高周波送受信用の内径19 mmのバードケージ型コイルを使用する、7テスラ16 cm口径PharmaScanシステムを用いて、in vivo MRS研究を行った。上記のようにマウスを1.5〜2%イソフルランで麻酔し、次いでマウスの後肢を磁石の長手方向軸に沿って整列させながらコイルの内側に配置した。左または右の前頸骨筋から、血管構造および粗大な脂肪組織貯蔵所を避けながら、1.5×1.5×1.5 mm3の関心領域(VOI)を選択した。IMCLと筋肉細胞外脂質(EMCL)のピークがスペクトル中で明確に区別されることを確実にするために、PRESSシークエンス(TE = 16 ms、TR= 2.0 s、292平均、CHESS水抑制)を用いて局在化1H-MRSを得た。ICMLおよびtCr(総クリエーション(creation))ピーク下の面積の積分を使用してICML含有率(ICML/tCr比)を計算した。(8週齢および15月齢の肥満ZDFラットの前頸骨筋のtCr濃度は、それぞれ136+/-2.2および132+/-1.0μmol/g乾燥重量であった。Kuhlmannら(2003) Diabetes 52:138-44を参照のこと)。
HFDを与えたノックアウトマウスは、HFDを与えた野生型マウスと比べて、著しく低い筋肉細胞内脂質含有率を示した。図10を参照されたい。したがって、Angptl4欠失は、肝臓や骨格筋のような重要な組織を脂質蓄積から保護した。
F. Angptl4ノックアウトマウスはグルコース不耐性から保護された
高レベルの肝臓および筋肉細胞内脂質含有率はインスリン非感受性と関連することが知られている。さらに、HFDはグルコース不耐性と関連することが知られている。Angptl4欠失がこうした影響から保護するかを検討するために、野生型マウスおよびノックアウトマウスにおけるグルコースおよびインスリンの血清レベルを調べた。
野生型マウスおよびノックアウトマウスにHFDを与えた。16時間の絶食後に、Accu-Check Advantage (2138930, Roche, Indianapolis, IN)を用いて血糖を測定した。その直後に、2 gグルコース/kg体重を、経口強制飼養により、20%滅菌グルコース溶液として投与した。その後いくつかの時点で血糖を測定した。図11のパネルCを参照されたい。この実験において、HFDを与えたノックアウトマウスは、HFDを与えた野生型マウスよりもグルコース耐性であり、このことは、2 g グルコース/kg体重の経口強制飼養を与えられたノックアウトマウスの経時的な血糖値が同じ処置を受けた野生型マウスよりも低かったことを意味する。この結果は統計的に有意であった。
野生型およびノックアウトマウスにHFDを与えた。明周期の開始時に6時間絶食させた後に、血糖を測定した。その直後に、75 mU/mlのインスリン溶液を用いて、750 mU/kg体重のインスリン(Humulin R, Eli Lilly)を腹腔内注射した。その後複数の時点で血糖を測定した。図11のパネルDを参照されたい。この実験において、HFDを与えたノックアウトマウスは、HFDを与えた野生型マウスよりもインスリン感受性であり、このことは、75 mU/mlのインスリンの注射が、同じ処置を受けている野生型マウスよりも経時的に低いグルコースレベルをもたらしたことを意味する。この結果は統計的に有意であった。
HFDを与えた野生型マウスのグルコースおよびインスリンの絶食時血清レベルは、標準食餌を与えた野生型マウスにおけるそれらよりも著しく高く、このことはHFD-誘発型高血糖症および高インスリン血症を示す。図11のパネルAおよびBを参照されたい。しかしながら、HFDを与えたノックアウトマウスにおけるグルコースおよびインスリンの両方の絶食時血清レベルは、標準食餌を与えた野生型マウスまたはノックアウトマウスにおけるレベルと著しくは異なっておらず、このことは、Angptl4欠失がHFD-誘発型高血糖症および高インスリン血症からの保護をもたらしたことを示す。図11のパネルAおよびBを参照されたい。
G. マウスANGPTL4の過剰発現はノックアウトマウスにおいて血清脂質レベルを上昇させた
マウスANGPTL4の過剰発現がAngptl4ノックアウトマウスのいずれかの表現型をレスキュー(rescue)することができるかを調べるために、Ad5-mAngptl-4T構築物(上述、第VI部のB.1)を5 x 1010 vpでノックアウトマウスの尾静脈内に注射した。対照として、Ad5-β-gal構築物(上述、第VI部のB.1)を5 x 1010 vpでノックアウトマウスの尾静脈内に注射した。注射から3日後に、Ad5-mAngptl-4T構築物を注射したノックアウトマウスは、対照構築物を注射したノックアウトマウスよりも著しく高いレベルの絶食時血清トリグリセリドおよびコレステロールを示した。図12および13を参照されたい。その上、Ad5-mAngptl-4T構築物を注射したノックアウトマウスのトリグリセリドおよびコレステロールのレベルは、Ad5-mAngptl-4T構築物を注射した野生型マウスにおけるそれらと同程度であった。図12および13を、図2および3と比較されたい。こうした結果は、マウスANGPTL4の過剰発現が、Angptl4ノックアウトマウスの低減された血清脂質レベルを反転させる、ということを実証した。
H. マウスANGPTL4の製造と精製
組換えANGPTL4を発現させるために、CHO細胞に1.5 x 1011 vpの組換えアデノウイルスAd5-mAngptl-4T(上述、第VI部のB.1)を感染させた。16〜24時間後に、培地を無血清培地(EX-CELL 325-PF CHO培地, 14335, JRH, Lenexa, KS)と交換した。24〜36時間ごとに、条件培地(conditioned medium)を回収し、新鮮な無血清培地と交換し、合計5回の回収を行った。
条件培地(1 L)をニッケルキレート樹脂(R801-01, Invitrogen, Carlsbad, CA)の10〜12 mlカラムに加えた。カラムを5カラム容量の洗浄バッファー(10 mMイミダゾール、20 mM Tris pH 7.8、500 mM NaCl)で洗浄した。結合したANGPTL4を、溶出バッファー(500 mMイミダゾール、20 mM Tris pH 7.8、500 mM NaCl)を用いて溶出させ、一連の1.5 ml画分として回収した。ウェスタンブロッティングおよび簡便な青色染色を用いて回収画分中のANGPTL4の存在を調べた。ANGPTL4を含有する画分を一緒にプールし、分注し、次いで-70℃で凍結させた。
I. ANGPTL4によるLPL活性の阻害
マウスANGPTL4がLPL活性に及ぼす影響を、in vitroアッセイを用いて調べた。LPL活性は、以下のように、基質グリセロール-トリ[9,10(n)-3H]オレエートから放出されるオレイン酸の量から測定した(Shimizugawaら(2002) J. Biol. Chem. 277:33742-33748の方法に基づく)。
用時調製したウシLPL(L2254, Sigma, St. Louis, MO)の溶液を、等容量の基質溶液(2 mMグリセロールトリ[9, 10 (n)-3H]オレエーと(131 kbeq/μmol)、189 ng/mlのL-α-ホスファチジルコリン、14 mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、140 mM Tris-HCl (pH 8.0)、15%グリセロール、および10%熱不活性化ウシ胎児血清)と共に、0〜400 nMマウスANGPTL4(上述のように調製、第VI部のH)の存在下で、37℃で1時間インキュベートした。3.25 mlのメタノール/クロロホルム/ヘキサン混合液(141:125:100、v/v/v)および1.05 mlの0.1 M K2CO3-ホウ酸バッファー(pH 10.5)を添加することにより反応を停止させた。激しいボルテックス撹拌および3,000 g、室温で15分の遠心分離後に、Beckman Coulter LS6500液体シンチレーションカウンターを用いて、水/メタノール相の1 mlアリコート中の3Hの量を決定した。1単位のLPL活性は、基質からの37℃、1分当たり1μmolの3H-標識オレイン酸の放出と定義した。マウスANGPTL4は約25 nMのIC50(50%阻害に必要な濃度)にてウシLPLを阻害した。図14を参照されたい。
J. Angptl4ノックアウトマウスにおける、ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の生成
マウスANGPTL4に対するモノクローナル抗体を生成させるために、上の第VI部のHに説明したように製造した精製マウスANGPTL4を用いて、Angptl4ノックアウトマウスを初回免疫(prime)し、その後2〜3週ごとに追加免疫(boost)した。初回免疫および追加免疫にはそれぞれ完全および不完全フロイントアジュバントも使用した。2〜3回の追加免疫後に、ELISAを用いて血清力価をモニタリングした。適度に高い力価が達成されたら、脾細胞を免疫マウスから回収し、PEG1500を融合物質として用いて骨髄腫細胞(P3/NSI/1-Ag4-1)と融合させた。得られた細胞融合生成物をハイブリドーマ培地に希釈し、次いで96ウェル型組織培養プレートに播種した。1日後、ハイブリドーマ培養物にHAT培地を添加した。必要に応じて培地を3または4日おきに交換した。10〜14日の選択と培養後に、マウスANGPTL4を抗原として使用するELISAによりハイブリドーマをスクリーニングした。14D12、15F2、2G12、10E4、1A4、5A6、14D2、および6G11と命名した9種のモノクローナル抗体が、マウスANGPTL4への特異的結合を示した。
全長マウスANGPTL4 (配列番号1)のアミノ酸残基151〜168に対応する配列LAPTHLDNGVDKTSRGKRを有するペプチドに対してもモノクローナル抗体を誘発させた。(このペプチドは、配列番号1の位置168のアミノ酸がリシンであるのに対して、該ペプチドのC末端アミノ酸はアルギニンであることを除けば、配列番号1のアミノ酸残基151〜168と同一である)。注射前にこのペプチドをKLHにコンジュゲートさせた。そのペプチドに対するモノクローナル抗体は、全長マウスANGPTL4に特異的に結合することができた。このモノクローナル抗体を4A8と命名した。
K. ELISA法
ELISAを用いてマウスANGPTL4への結合について抗体をスクリーニングした。96ウェル型Nunc Maxi-Sorp ImmunoPlatesTM (Nunc #446612, Roskilde, Denmark)に、コーティングバッファー(BupHTM 炭酸-重炭酸バッファー, Pierce #28382, Rockford, IL)中の2.5μg/mlのANGPTL4溶液を50μl/ウェルで添加して、一晩4℃でコーティングを行った。コーティングバッファーを除去し、250μl/ウェルのブロッキングバッファー(1%BlockerTM BSA, Pierce #37525, PBS中)を室温で2時間添加することによりプレートをブロッキングした。50μlのハイブリドーマ上清(未希釈またはブロッキングバッファー中に希釈)または単離した抗ANGPTL4抗体(未希釈またはブロッキングバッファー中に希釈)をウェルに添加し、室温で少なくとも1時間インキュベートした。PBS/Tween 20を用いてウェルを4回洗浄した。100μlの希釈(1:5,000〜1:10,000)HRP-コンジュゲート ヤギ抗マウスIgG(Pierce #31446)をウェルに添加し37℃で1時間インキュベートした。PBS/Tween 20を用いてウェルを6回洗浄した。50μlのTMB(テトラメチルベンジジン)溶液(ImmunoPure(登録商標)TMB基質キット, Pierce #34021)を5〜10分、ウェルに添加することにより抗ANGPTL4抗体を検出した。プレートは、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて分光光度法的に450 nmで読み取った。
L. モノクローナル抗体のin vitro中和活性
モノクローナル抗体を、上の第VI部のIで説明したLPL活性のin vitroアッセイにおいてANGPTL4活性を中和する能力について評価した。別々のLPL活性アッセイを、25 nMマウスANGPTL4および約125 nMのそれぞれの上記9種のモノクローナル抗体の存在下で行った。結果を図15に示す。各抗体の中和活性は、LPL活性を増大させるその抗体の能力、すなわちANGPTL4による阻害からLPLを「レスキュー(rescue)」する能力により実証される。レスキュー活性は、ANGPTL4のみの存在下でのLPL活性と比べたときの、ANGPTL4および抗ANGPTL4抗体の両方の存在下でのLPL活性の増大パーセンテージとして図15に表されている。9種の抗体のうちの5種、4A8、14D12、15F2、2G12、および10E4は、LPL活性の増大をもたらし、このことは、これらの抗体がANGPTL4活性を中和することによりLPL活性をレスキューしたことを示す。特に、抗体4A8、14D12、および15F2は50%より多くLPL活性をレスキューした。9種の抗体のうちの4種、1A4、5A6、14D2、および6G11は、LPLをより一層阻害するようであり、このことは、これらの抗体がANGPTL4活性を増強することができることを示す。
M. アイソタイピング
14D12、15F2、4A8、および6G11のアイソタイプを標準法により決定した。4A8と6G11はIgG1アイソタイプのものであり、また、14D12と15F2はIgG2aアイソタイプのものである。(下の第VI部のPの表2の第3および4列を参照されたい)。
N. モノクローナル抗体のエピトープマッピング
モノクローナル抗体14D12、15F2、および6G11を、マウスANGPTL4のN末端コイルドコイルドメイン(配列番号1のアミノ酸21〜174由来)およびマウスANGPTL4のC末端フィブリノーゲン様ドメイン(配列番号1のアミノ酸174〜410由来)への結合についてELISAにより試験した。14D12および15F2はマウスANGPTL4のN末端コイルドコイルドメインに特異的に結合した。6G11はマウスANGPTL4のC末端フィブリノーゲン様ドメインに特異的に結合した。
O. エピトープ・ビニング(binning)
モノクローナル抗体14D12、15F2、および4A8が同じエピトープに結合するかを調べるために、Luminex(登録商標) 100マルチプレックス技術およびLuminex(登録商標) 100TM分析器(Luminex Corporation, Austin, TX)を用いてエピトープ・ビニングを実施した。Jiaら(2004) J. Immunol. Methods 288:91-98を参照されたい。エピトープ・ビニングは、典型的には抗体サンドイッチ型競合アッセイを利用し、該アッセイでは「参照」抗体に結合した抗原への結合について「プローブ」抗体を試験する。もしプローブ抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するならば、そのエピトープは参照抗体によりマスキングされていることから、該プローブ抗体は抗原に効率的には結合しない。
エピトープ・ビニングを実施するために、差次的に標識されたxMAPTMカルボキシル化ミクロスフェア(Luminex, Austin, TX)を光から保護し、捕捉抗体(ウサギモノクローナル抗マウスIgG)でコーティングした。次に所定の標識を有するコーティングされたミクロスフェアに、3種の参照抗体のうちの1種(14D12、15F2、または4A8)を選択的に捕捉させ、そのことにより各参照抗体が異なる標識と結合するようにした。差次的に標識されたミクロスフェアを一緒にして、マイクロウェルプレートのウェルに添加した。ミクロスフェアをウェル中に分配させ4℃で一晩インキュベートした。マウスANGPTL4をウェルに添加し、撹拌しながら25℃で1時間インキュベートし、その後洗浄した。3種のプローブ抗体のうちの1種(14D12、15F2、または4A8)を各ウェルに添加し、その後25℃で1時間インキュベートし、次いで洗浄した。ビオチン化検出抗体(ウサギモノクローナル抗マウスIgG)をウェルに添加して、プローブ抗体によるANGPTL4の結合を検出した。ストレプトアビジン-PEをウェルに添加し30分インキュベートした。各ウェルについて、Luminex(登録商標) 100TM分析器(二重レーザー、フローに基づく、選別および検出プラットフォーム)を使用して、各ミクロスフェアに結合した特定の標識(したがって参照抗体の正体)、および各ミクロスフェアに関連するPE-誘導シグナルの大きさを検出した。PE-誘導シグナルの大きさは、マウスANGPTL4に結合したプローブ抗体の量と正比例する。
結果を図16に示す。4A8をプローブ抗体として使用したとき(1つ目のセットの3本の棒)、該抗体は、14D12および15F2を参照抗体として使用したときの両方において、強力な蛍光シグナル(黒および白の棒)により示されるとおり、マウスANGPTL4に結合した。このことから、4A8は、14D12および15F2と同じエピトープに結合しない。14D12をプローブ抗体として使用したとき(2つ目のセットの3本の棒)の該抗体は、4A8を参照抗体として使用したときはマウスANGPTL4に結合したが、15F2を参照抗体として使用したときには弱い結合しか示さなかった(灰色の棒と白の棒を比較されたい)。このことから、14D12と15F2は同じエピトープに結合する可能性が高い。同様に、15F2をプローブ抗体として使用したとき(最後のセットの3本の棒)の該抗体は、4A8を参照抗体として使用したときにはマウスANGPTL4に結合したが、14D12を参照抗体として使用したときには弱い結合しか示さず(灰色の棒と黒の棒を比較されたい)、このことは14D12と15F2が同じエピトープに結合に結合する可能性が高いことを裏付けた。
BIACORE(登録商標)3000システム(Biacore AB, Uppsala スウェーデン)を製造者の説明書に従って使用して、2回目のエピトープ・ビニング実験を実施した。BIACORE(登録商標)3000システムは、表面プラズモン共鳴技術を用いて、生体分子相互作用のリアルタイム解析を可能にする。本質的には、遊離抗体の結合を阻害する抗原-抗体複合体の能力を用いて、競合阻害の過程での共通のエピトープ結合を決定する。
実験は、抗体14D12、15F2、90B4、16B10、4A8、および9C10を用いて行った。抗体は、BIACOREチップ上に直接固定するか、またはチップに結合させた抗マウスIgG Fcによる捕捉によりチップに連結させた。各抗体のエピトープ・ビン(bin)を決定するために、結合した抗体を、N-mANGPTL4および、溶解状態の同じ抗体または溶解状態の異なる抗体のいずれかとインキュベートした。次にこの系を平衡に達するようにした。相互結合阻害に基づき、次のエピトープ・ビン(bin)が割り当てられた: ビンIは14D12および15F2を含み、ビンII は90B4および16B10を含み、ビンIIIは4A8のみを含み、ビンIVは9C10を含んでいた。こうした結果は、上に記載した最初のエピトープ・ビニング実験と一致する。
P. 中和活性を有するモノクローナル抗体のin vivo投与はノックアウト表現型を再現させた
in vitro中和活性を有する抗体をマウスに投与して、かかる抗体がAngptl4ノックアウトマウスの表現型を再現することができるかを調べた。抗体をin vivo投与するために、下の表2に示すように、標準食餌を与えたマウス(「chowを与えた」マウス)またはHFD-誘発型DIOを有するマウスに、30μgのモノクローナル抗体を体重1グラム当たり10μlの容量で注射した。抗KLH抗体を対照抗体として投与した。トリグリセリド、コレステロール、およびFFAの絶食時血清レベルを4日後に測定した。
結果を図17〜19に示す。標準食餌を与えたマウスでは、14D12の1回投与は、絶食時血清トリグリセリドレベルを72.7%および67.0%(2つの独立した実験)、絶食時総コレステロールレベルを27.1%および21.3%(2つの独立した実験)、ならびに絶食時FFAレベルを44.3%(単一の実験)も著しく減少させた。同様に、15F2の1回投与は、絶食時血清トリグリセリドレベルを67.6%および71.8%(2つの独立した実験)、絶食時総コレステロールレベルを22.8%および28.0%(2つの独立した実験)、ならびに絶食時FFAレベルを39.3%(単一の実験)も減少させた。こうした観察は、14D12および15F2がin vitroにおいてLPL活性をレスキューする能力と一致する。しかしながら、4A8はin vitroにおいてLPL活性をレスキューすることができたにもかかわらず、この抗体の1回投与は、絶食時血清トリグリセリド、コレステロール、およびFFAレベルに対して有意な影響を及ぼさなかった(棒グラフ、図17〜19を参照されたい)。対照的に、6G11の1回投与は絶食時血清トリグリセリドレベルを66.4%上昇させ、このことは、in vitroにおいてLPL活性をより一層阻害する該抗体の能力と一致した。6G11の投与は、絶食時総コレステロールおよびFFAレベルに対しては有意な影響を及ぼさなかった(棒グラフ、図18〜19を参照されたい)。
HFD-誘発型DIOを有するマウスを用いて得られた結果を図20〜21に示す。14D12の1回投与は、絶食時血清トリグリセリドレベルを53.2%、および絶食時総コレステロールレベルを27.6%低下させた。同様に15F2は、絶食時血清トリグリセリドレベルを56.6%、およびコレステロールレベルを31.0%低下させた。4A8は、絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルのいずれにも有意な影響を及ぼさなかった(棒グラフ、図20〜21を参照されたい)。6G11の1回投与は、絶食時血清トリグリセリドレベルを60.9%も著しく上昇させたが、絶食時総コレステロールレベルに対しては有意な影響を示さなかった(棒グラフ、図21を参照されたい)。FFAレベルはDIOマウスでは測定されなかった。
上の結果は、ANGPTL4活性を中和する特定の抗体の投与が、Angptl4ノックアウトマウスにおいて見られる低下した血清脂質レベルを再現させることを示した。こうした結果に基づき、かかる抗体の投与は、Angptl4ノックアウト表現型の他の特徴、例えば、絶食状態における内在性LPL活性の増加、肝臓脂肪症および筋肉細胞内脂質蓄積からの増大した保護、ならびにグルコース耐性からの増大した保護を再現させるであろうと期待される。
また、継続的投与の効果を評価するために、中和抗体を5週間にわたり投与した。HFD-誘発型DIOを有するマウスに、14D12、15F2、またはアイソタイプの一致する対照抗体(抗KLH)を週1回、5週間にわたり注射した。用量は、体重1グラム当たり10μlの容量中に、30μgのモノクローナル抗体とした。絶食時血清脂質レベルを測定し、抗体の1回投与のみを受けたマウス由来の絶食時血清脂質レベルと比較した。図22〜23に示すように、14D12の1回投与は絶食時血清トリグリセリドを53.22%およびコレステロールを27.58%低下させ、これに対して5週間にわたる14D12の週1回投与は、絶食時血清トリグリセリドを59.36%およびコレステロールを44.21%低下させた。同様に、15F2の1回投与は絶食時血清トリグリセリドを56.61%、およびコレステロールを30.97%低下させ、これに対して5週間にわたる15F2の週1回投与は絶食時血清トリグリセリドを64.45%、およびコレステロールを32.73%低下させた。この研究において、5週間にわたる14D12または15F2の週1回投与は、1回投与と比べて、FFA、グルコース耐性、または体重に対して顕著な影響を及ぼさなかった(データ未掲載)。こうした結果は、ANGPTL4活性を中和する抗体の継続的投与が、1回投与と比べて、絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを維持するか、またはさらに低下させることを示した。
14D12、15F2、または対照抗体(抗KLH)を上記のように5週間にわたり週1回注射したDIOマウスにおけるケトン体(KB)の絶食時血清レベルも測定した。14D12または15F2を注射したDIOマウスは、対照抗体を注射したDIOマウスよりもケトン体のレベルが著しく高かった。図24を参照されたい。ケトン体は、生体が脂質を分解するときに生じることが知られている。このことから、ケトン体レベルの増加は、中和抗体を注射したマウスにおいて肝臓および筋肉細胞内脂質レベルを低下させる機構である可能性がある。
Q. Angptl4ノックアウトマウスにおける、ヒトおよびマウスANGPTL4と交差反応するモノクローナル抗体の生成
マウスANGPTL4のアミノ末端ドメインの一部を有するN-mANGPTL4を用いて、ヒトおよびマウスANGPTL4の両方と交差反応するモノクローナル抗体をAngptl4ノックアウトマウスにおいて誘発させた。
マウスANGPTL4のアミノ酸23〜180をコードするポリヌクレオチド配列を、発現ベクターpET22b(+)(Novagen)にクローニングした。そのベクターはN末端pelBリーダー配列、ならびにC末端Hisタグをコードする。得られた発現ベクターをpET-N-mANGPTL4と呼ぶ。タンパク質に翻訳して、pelB配列の11アミノ酸以外の全部を除去した後に、N-mANGPTL4は配列番号10に記載の配列を有する。その配列は、pelB配列由来の11アミノ酸、それに続くマウスANGPTL4のアミノ酸23〜180(表6で下線を施した)、それに続く2アミノ酸リンカーおよびHisタグを有する。
N-mANGPTL4を大腸菌(E. coli)から次のように発現させて精製する。50μg/mlのクロラムフェニコールおよび100μg/mlのカルベニシリンを含有する10mlのLBに、pET-N-mANGPTL4で形質転換された大腸菌(E. coli)のコロニーを1つ接種する。これを37℃で一晩培養する。次に10 mlの培養物を、抗生物質フリーの500 mlのLBに移し、OD600が0.6に達するまで(約2時間)37℃でインキュベートする。IPTGを添加して最終濃度1 mMとし、次いで培養物を200 rpmで振とうしながら30℃で4時間インキュベートする。次いで培養物を氷上に5分置く。JLA16.25ローター中で8000 rpm、15分の遠心分離により細胞をペレット化させる。次にペレットを50 mlの溶解バッファー(50 mM Tris、pH 7.5、0.5 M NaCl、1%Triton X-100、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)および0.25 ml PMSF (イソプロパノール中0.1 M))に再懸濁する。その後溶解細胞をJA25.5ローター中で9700 rpm、30分遠心分離する。上清を分離し、SW28ローター中で28,000 rpm、30分の遠心分離によりさらに上清を清澄化する。次にProbond (Ni)クロマトグラフィー(Invitrogen)を用いて、清澄化された上清から組換えN-mANGPTL4を精製することができる。
溶解細胞の遠心分離後に残留した不溶性ペレットから組換えN-mANGPTL4を精製するために、30 ml溶解バッファーを用いてペレットを洗浄し、JA25.5ローター中で9700 rpmで遠心分離する。洗浄工程を2回繰り返し、合計3回の洗浄を行う。次にペレット由来の不溶性タンパク質を10 mlの変性バッファー(50 mM Tris、pH 8.0、6 M グアニジンHCl)に溶解させる。その後、溶液をJA25.5ローター中で28,000 rpmで30分遠心分離する。次に上清を5 ml Probond樹脂カラムに加える。カラムを50 mlの洗浄バッファー(50 mM Tris、pH 8.0、1 M NaCl、8 Mウレア、15 mM イミダゾール)で洗浄する。洗浄バッファーから再生バッファー(50 mM Tris、pH 8.0、1 M NaCl、0.5%Tween 20)への50 ml濃度勾配を利用して、組換えタンパク質をカラム中でリフォールディングさせる。その後、溶出バッファー(250 mMイミダゾールを含む再生バッファー)を用いて組換えタンパク質を溶出させる。組換えタンパク質を含む画分を回収し、貯蔵バッファー(50 mM Tris、pH 8.0、100 mM NaCl、0.2%Tween 20)に対して透析する。精製N-mANGPTL4を等分し、-70℃で貯蔵する。
完全フロイントアジュバント中の40μgのN-mANGPTL4を腹腔内注射してマウスを初回免疫した。2週間後に不完全フロイントアジュバント(IFA)中の30μgのN-mANGPTL4を腹腔内注射してマウスを追加免疫し、次いでさらに2週間後にIFA中の20μgのN-mANGPTL4を用いて再度腹腔内免疫した。別の方法として、キトサン系のアジュバントを使用することができる。例えば、米国特許番号第5,912,000号; 第5,965,144号; および第5,980,912号を参照されたい。0.25μg/mlのmANGPTL4を50μl用いてウェルをコーティングしたこと以外は上の実施例Kに記載のとおりにELISAを用いて、2回目の追加免疫から1週間後に血清力価を測定した。2回目の追加免疫から2週間後に、上記第VI部のHに記載のように作製した10μgの精製マウスANGPTL4をIFA中で用いてマウスを腹腔内免疫した。3回目の追加免疫から1週間後に、この段落で上に記載したようにELISAを用いて血清力価を再度測定した。3回目の追加免疫から約2週間半後に、10μgのN-mANGPTL4を静脈内注射してマウスを追加免疫した。
3日後に免疫マウスから脾臓細胞を回収し、PEG1500を融合物質として使用して、該脾臓細胞を骨髄腫細胞(NSI)と融合させた。得られた細胞融合生成物をハイブリドーマ培地に希釈し、次いで96ウェル型組織培養プレートに播種した。1日後、ハイブリドーマ培養物にHAT培地を添加した。必要に応じて培地を3〜4日おきに交換した。
10〜14日間の選択と培養後に、ELISAを用いてハイブリドーマをスクリーニングして、ヒトおよびマウスANGPTL4と交差反応する抗体を発現するハイブリドーマを同定した。ELISAは上の実施例Kに記載のように行ったが、ただしプレートは0.25μg/mlのタンパク質溶液を50μl用いてコーティングし、マウスANGPTL4およびヒトANGPTL4の両方に対して各抗体を別々に試験した。マウスANGPTL4およびヒトANGPTL4は、上の実施例Hに説明したように、それぞれAd5-mAngptl4TおよびAd5-mAngptl4Tを感染させたCHO細胞の条件培地から精製した。マウスおよびヒトANGPTL4と交差反応する15種類のモノクローナル抗体を選択した。選択された抗体のアイソタイプを決定した。これらを表3に示す。
R. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体のin vivo活性
抗体14D12、19C9、18G3、18A2、9C10、および90B4、ならびに対照としての抗KLHを、次のようにして、マウス中で特定のin vivo活性について試験した。30mg/kg体重の抗体をC57アルビノ野生型マウスに腹腔内注射した。各抗体を5匹のマウスで試験した。4日後に絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを測定した。この実験における抗体注射マウスの絶食時血清トリグリセリドレベルを図31に示す。抗体14D12および90B4は、絶食時血清トリグリセリドを、統計的に有意に、それぞれ73.6%および54.9%減少させた。この実験における抗体注射マウスの絶食時総コレステロールレベルを図32に示す。抗体14D12および90B4は、絶食時総コレステロールを、統計的に有意に、それぞれ25.2%および22.2%減少させた。
S. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の相対的結合親和性
N-mANGPTL4およびN-hANGPTL4のそれぞれに対する、抗体90B4、15F2、および14D12の結合親和性をELISAにより測定した。N-hANGPTL4を、上の実施例QにおいてN-mANGPTL4について記載したように、細菌から発現させ精製した。ヒトANGPTL4のアミノ酸24〜175をコードするポリヌクレオチド配列を、発現ベクターpET22b(+)(このベクターはN末端pelBリーダー配列およびC末端Hisタグをコードする)にクローニングした。タンパク質の翻訳とpelB配列の11アミノ酸以外の全アミノ酸の除去を経て、N-hANGPTL4は配列番号11に示す配列を有する。その配列はpelB配列由来の11アミノ酸、それに続くヒトANGPTL4のアミノ酸24〜175(表6で下線を施した)、それに続く2アミノ酸リンカーおよびHisタグを有する。ウェル当たり50μlの0.25μg/mlタンパク質(N-mANGPTL4またはN-hANGPTL4)を用いてプレートをコーティングした以外は、上の実施例Kに記載のようにELISAを実施した。0μg/ml、0.08μg/ml、0.4μg/ml、2μg/ml、および10μg/ml抗体における結合を測定した。この実験の結果を図33に示す。90B4は、15F2または14D12のいずれよりも、N-mANGPTL4(パネルA)およびN-hANGPTL4(パネルB)の両方に対する親和性が大きかった。15F2は14D12よりもN-mANGPTL4に対する親和性が大きかったが、N-hANGPTL4に対しては14D12と同程度の親和性であった。
T. 血清トリグリセリドの低減における14D12の用量応答
HFDを与えた5匹のC57アルビノ野生型マウスに、下に記載する特定濃度の14D12抗体または抗KLH抗体のいずれかを皮下注射した。4日および7日後に、時間0と比べた総トリグリセリドの減少パーセントを決定した。この実験において試験した抗体濃度は0.3 mg/kg 体重、1 mg/kg体重、3 mg/kg体重、10 mg/kg体重、30 mg/kg体重、および90 mg/kg体重であった。この実験の結果を図34に示す。10 mg/kg 体重、30 mg/kg 体重、および90 mg/kg体重の投与は、4日後に、血清トリグリセリドの統計的に有意な減少をもたらした。図34のパネルAを参照されたい。この効果は持続し、7日後にも統計的に有意なままであった。図34のパネルBを参照されたい。
U. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の薬力学および薬物動態学
14D12の薬力学を決定するために、C57アルビノマウスに30μg/g体重の14D12を注射し、次いで下の表4に示す特定の時間間隔後に該マウスの絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを測定した。マウスには通常の(「chow」)食餌を与えた。各3匹のマウスからなる合計8グループを実験に使用した。3匹のマウスからなる1グループには抗体を注射せず、ベースラインとして用いた。残りの7グループのマウスには14D12注射を施した。次のスケジュールに従い、マウスに注射を施し、絶食させ、採血した:
14D12の薬物動態を決定するために、4匹のC57アルビノマウスに30 mg/kg体重の14D12を1日目の午前8時に注射した。対照として、4匹の別のC57アルビノマウスに30 mg/kgの抗KLHを1日目の午前8時に注射した。次いで各マウスから1時間、5時間、10時間、1日、2日、4日、7日、10日、および14日後に採血を行い、以下のように血中抗体濃度を決定した。0.5μg/mlのN-mANGPTL4を50μl用いて各ウェルをコーティングした以外は、上の実施例Kに説明したようにしてELISAを実施した。ELISAを用いてマウス血清の次の希釈物を試験した: 1:103、1: 104、1:105、1:106。マウス血清希釈物と並行して、0.08μg/ml、0.4 μg/ml、2 μg/ml、および10 μg/mlの14D12を含む標準品を試験した。
これらの実験の結果を図35に示す。パネルAは、経時的な14D12濃度および絶食時血清トリグリセリドレベルのプロットを示す。14D12濃度は注射の約24時間後にピークに達し、これに対して絶食時血清トリグリセリド濃度は注射から約96時間後に最小値に達し、注射後少なくとも336時間(ここで実験を終了させた)まで低下したままである。パネルBは、経時的な14D12濃度および絶食時総コレステロールレベルのプロットを示す。上記のように、14D12濃度は注射から約24時間後にピークに達する。絶食時総コレステロールは注射から約168時間後に最小値に達し、注射後少なくとも336時間(ここで実験を終了させた)まで低下したままである。
V. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の、ヒトANGPTL4過剰発現マウスへの投与
特定のモノクローナル抗体が、ヒトANGPTL4を過剰発現するマウスにおいて絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールを減少させることができるか否かを調べるために、Ad5-hAngptl4T(上の実施例B.2に記載)を1 x 109 IU/マウスにてC57アルビノマウスの尾静脈に注射した。それぞれが5匹のマウスからなる合計4グループにAd5-hAngptl4Tを注射した。4グループのそれぞれに、ウイルス感染と同時に、30 mg/kgの抗体も注射した。注射した抗体は、抗KLH、14D12、15F2、および90B4であった。4日後に、マウスの絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを測定した。
図36に、この実験におけるマウスの摂食時血清トリグリセリドレベルを示す。図36では、各グループ中の5匹のマウスをそれぞれ異なる記号で表す。抗KLHを注射したマウスは、血清トリグリセリドレベルが約750 mg/dl〜約1900 mg/dlであった。14D12を注射したマウスのうちの3匹は、抗KLHを注射したマウスよりも血清トリグリセリドレベルが低かった。14D12を注射した残りのマウスは、抗KLHを注射したマウスと比べてトリグリセリドレベルが高かった。15F2を注射したマウスのうちの3匹は、抗KLHを注射したマウスよりも血清トリグリセリドレベルが十分に低く、これに対して15F2を注射した残り2匹のマウスは、抗KLHを注射したマウスと血清トリグリセリドレベルが類似していた。最後に、90B4を注射したマウスのうちの3匹は、抗KLHを注射したマウスよりも血清トリグリセリドレベルが低く、これに対して90B4を注射したマウスのうち2匹は、抗KLHを注射したマウスと比べて血清トリグリセリドレベルが高かった。
これらの結果は、ANGPTL4に対する抗体を注射したマウスの約半数が、抗KLH抗体を注射したマウスと比べて低い血清トリグリセリドレベルを有することを示す。ANGPTL4に対する抗体を注射した何匹かのマウスは血清トリグリセリドレベルが上昇していたが、これはAd-hANGPTL4T感染と肝臓で起こりうる発現の差異に起因する可能性がある。
図37に、この実験におけるマウスの絶食時総コレステロールレベルを示す。各グループ中の5匹のマウスをそれぞれ図36におけるのと同じ記号で表す。抗KLHを注射したマウスは5匹とも、総コレステロールレベルが約180 mg/dl〜約240 mg/dlであった。14D12を注射したマウスのうちの3匹は、抗KLHを注射したマウスよりも総コレステロールレベルが低かった。14D12を注射した残り2匹のマウスは、抗KLHを注射したマウスよりも総コレステロールレベルが高かった。15F2を注射したマウスのうちの4匹は抗KLHを注射したマウスよりも総コレステロールレベルが低く、これに対して15F2を注射したマウスの1匹は抗KLHを注射したマウスと総コレステロールレベルが同程度であった。最後に、90B4を注射したマウスのうちの2匹は抗KLHを注射したマウスよりも総コレステロールレベルが低く、これに対して90B4を注射したマウスの1匹は抗KLHを注射したマウスとコレステロールレベルが同程度であり、また、90B4を注射したマウスの1匹は抗KLHを注射したマウスよりも総コレステロールレベルが高かった。
総じて、Ad5-hANGPTL4Tを感染させかつANGPTL4に対する抗体を注射したマウスの約半数は、Ad5-hANGPTL4Tを感染させかつ抗KLHを注射したマウスよりも総コレステロールレベルが低かった。ここでも、Ad5-hANGPTL4Tを感染させ、かつANGPTL4に対する抗体を注射したマウスのうちで、コレステロールレベルが上昇したものは、Ad5-ANGPTL4T感染と起こりうる肝臓での発現の差異に起因する可能性がある。
こうした結果は、抗体14D12、15F2、および90B4の注射が、ヒトANGPTL4を過剰発現するマウスにおいて血清トリグリセリドおよび総コレステロールを減少させうることを実証する。
W. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の、LDLrノックアウトマウスへの投与
LDLrノックアウトマウスは、高い血清コレステロールレベルを有することが見出されており、特に高脂質食餌を与えたときはそうである。例えばIshibashiら(1993) J. Clin. Invest. 92 :883-93を参照のこと。ANGPTL4に対する特定のモノクローナル抗体がLDLrノックアウトマウスの血清コレステロールおよびトリグリセリドレベルを減少させることができるかを調べるために、次の実験を行った。それぞれ15匹の12〜13週齢LDLrノックアウトマウス(Jackson Laboratories、系統B6.129S7-Ldlrtm1Her/J)からなる3グループに、ビヒクルのみ、30 mg/kg 抗KLH、または30 mg/kg 14D12を腹腔内注射した。各マウスに週1回の注射を15週間にわたり施した。15匹のマウスからなる第4のグループを未処置のままとした。すべてのマウスには最初の注射の日から開始して、Clinton食餌(Research Diets、製品番号D12107)を与えた。
15週間の終わりに各マウスにおける絶食時血清トリグリセリドレベルを測定した。図38を参照されたい。14D12を注射したマウスの血清トリグリセリドレベルは、抗KLHもしくはビヒクルを注射したマウス、または未処置のままのマウスの血清トリグリセリドレベルよりも著しく低かった。
15週間の終わりに各マウスの絶食時総コレステロールレベルを測定した。図39を参照されたい。14D12を注射したマウスの総コレステロールレベルは、抗KLHもしくはビヒクルを注射したマウス、または未処置のままのマウスの総コレステロールレベルよりも著しく低かった。
この実験において、14週間にわたり毎週14D12を注射したLDLrノックアウトマウスは、14週間にわたり抗KLHまたはビヒクルを注射したLDLrノックアウトマウスと比べてグルコース耐性またはインスリンレベルに差がなかった。その上、この実験において、8週間にわたり毎週14D12を注射したマウスと、8週間にわたり毎週抗KLHもしくはビヒクルを注射したマウスとの間には、体脂肪含量、体脂肪率、除脂肪体重に差はなかった。最後に、この実験において、15週間にわたり毎週14D12を注射したマウスの大動脈プラークの発生率は、15週間にわたり毎週抗KLHまたはビヒクルのいずれかを注射したマウスの大動脈プラークの発生率と統計的な有意差がなかった(データ未掲載)。
こうした結果は、14D12が、LDLrノックアウトマウスの血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを低下させることができることを示す。しかしながら、この実験においてモノクローナル抗体14D12は、これらのマウスにグルコース耐性の増大やインスリンレベルの変化を引き起こさなかった。この実験においてモノクローナル抗体14D12は、これらのマウスの身体組成を変化させず、大動脈プラークの発生率を減少させなかった。その上、実験終了時に、14D12の週1回の注射を15回施した13匹のLDLrノックアウトマウス中の1匹は腹部が膨張しており、一方14D12の週1回の注射を15回施した13匹のLDLrノックアウトマウス中の2匹は腸間膜リンパ節とリンパ管に典型的な病巣があった。最後に、14D12の週1回の注射を15回施したLDLrノックアウトマウスでは、抗KLHまたはビヒクルを施したマウスと比べて、血清炎症性サイトカインは高くはなかった(データ未掲載)。
次に、LDLrノックアウトマウスへの14D12の1回注射の影響を検討した。各マウスに30 mg/kg体重の抗KLHまたは14D12のいずれかを1回腹腔内注射した。6匹のマウスに14D12を注射し、5匹のマウスに抗KLHを注射した。4日後に、マウスの絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを測定した。
絶食時血清トリグリセリドレベルを図42に示す。14D12の1回注射は、4日後に血清トリグリセリドの68.8%の減少をもたらした。この結果は統計的に有意であった。絶食時総コレステロールレベルを図43に示す。この実験において14D12はコレステロールレベルを統計的に有意な程度には減少させなかった。
こうした結果は、この実験において試験したANGPTL4に対するモノクローナル抗体の1回注射が、LDLrノックアウトマウスの血清トリグリセリドを著しく減少させることを実証した。
X. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の、ApoEノックアウトマウスへの投与
ApoEノックアウトマウスは自然発症高コレステロール血症を発症することが見出されている。例えば、Piedrahitaら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89(10):4471-5; およびZhangら(1992) Science 258(5081):468-71を参照のこと。ANGPTL4に対する特定のモノクローナル抗体がApoEノックアウトマウスの血清コレステロールおよびトリグリセリドレベルを減少させることができるか否かを調べるために、次の実験を行った。それぞれ14週齢のApoEノックアウトマウス(Taconic Aminal Models、系統B6.129P2-Apoetm1Unc N11)15匹からなる3グループに、ビヒクルのみ、30 mg/kgの抗KLH、または30 mg/kgの14D12を腹腔内注射した。各マウスに週1回の注射を15週間にわたり施した。15匹のマウスからなる第4のグループを未処置のままとした。すべてのマウスに最初の注射の日から開始してWestern食餌(Research Diets, 製品番号D12079B)を与えた。
15週間の終わりに各マウスの絶食時血清トリグリセリドレベルを測定した。図40を参照されたい。14D12を注射したマウスの血清トリグリセリドレベルは、抗KLHを注射したマウスまたは未処置マウスの血清トリグリセリドレベルよりも著しく低かった。しかしながら、この実験では、14D12を注射したマウスの血清トリグリセリドレベルは、ビヒクルのみで処置したマウスの血清トリグリセリドレベルと比べて有意に低くはなかった。
15週間の終わりに各マウスの絶食時総コレステロールレベルを測定した。図41を参照されたい。この実験では、14D12を注射したマウスの総コレステロールレベルは、抗KLHまたはビヒクルを注射したマウスの総コレステロールレベルよりも有意に低くはなかったが、未処置マウスの総コレステロールレベルよりは有意に低かった。
この実験において、15週間にわたり毎週14D12を注射したマウスと、15週間にわたり毎週抗KLHまたはビヒクルを注射したマウスとの間には、体脂肪含量、体脂肪率、除脂肪体重に差はなかった。その上、この実験において、15週間にわたり毎週14D12を注射したマウスの大動脈プラークの発生率は、15週間にわたり毎週抗KLHまたはビヒクルのいずれかを注射したマウスの大動脈プラークの発生率と、統計的な有意差がなかった(データ未掲載)。
こうした結果は、14D12がApoEノックアウトマウスの血清トリグリセリドレベルを低下させることができることを示した。しかしながらこの実験において、モノクローナル抗体14D12はApoEノックアウトマウスの総コレステロールレベルを低下させなかった。この実験において、モノクローナル抗体14D12はまた、そうしたマウスの身体組成を変更せず、また、大動脈プラークの発生率を減少させなかった。その上、実験の終了時に、14D12の週1回注射を15回施した15匹のApoEノックアウトマウスのうちの3匹は腹部が膨張しており、一方14D12の週1回注射を15回施した15匹のApoEノックアウトマウスのうちの13匹は、腸間膜リンパ節とリンパ管に典型的な病巣があった。最後に、14D12の週1回注射を15回施した15匹のApoEノックアウトマウスのうちの6匹は、乳び性腹水を示した。14D12の週1回注射を15回施したApoEノックアウトマウスの血清炎症性サイトカインは、抗KLHまたはビヒクルを施したマウスと比べて高くはなかった(データ未掲載)。
次に、ApoEノックアウトマウスへの14D12の1回注射の影響を検討した。各マウスに30 mg/kg体重の抗KLHまたは14D12のいずれかの腹腔内注射を1回施した。6匹のマウスに14D12を注射し、7匹のマウスに抗KLHを注射した。4日後に、マウスの絶食時血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを測定した。
絶食時血清トリグリセリドレベルを図44に示す。14D12の1回注射は、4日後に、血清トリグリセリドを55.4%減少させた。この結果は統計的に有意であった。絶食時総コレステロールレベルを図45に示す。14D12の1回注射は、4日後に総コレステロールを39.5%減少させた。この結果も統計的に有意であった。
こうした結果はモノクローナル抗体14D12の1回注射が、ApoEノックアウトマウスにおいて血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルの有意な低下をもたらし得ることを実証した。
Y. ANGPTL4に対するモノクローナル抗体の、db/dbマウスへの投与
db/dbマウスは肥満および糖尿病の表現型を示すことが見出されている。例えばChenら(1996) Cell 84 :491-495;およびChua Jrら(1996) Science 271 :994-996を参照のこと。ANGPTL4に対する特定のモノクローナル抗体の、肥満および糖尿病パラメーターに対する影響を検討するために、次の実験を行った。
10匹のdb/dbマウスからなる第1グループの各マウスに30 mg/kg体重の抗KLHを皮下注射した。10匹のdb/dbマウスからなる第2グループの各マウスに30 mg/kg体重の14D12を皮下注射した。注射前に絶食時血清トリグリセリドレベルを測定しておき、ついで注射から1週間後に測定した。その後マウスに週1回注射を施し、週1回注射を8回施した後に絶食時血清トリグリセリドレベルを測定した。マウスにはchow食餌を与えた。
結果を図46に示す。パネルAは、抗KLHまたは14D12の1回注射から1週間後の絶食時血清トリグリセリドレベルを示す。この実験において、14D12の注射は、血清トリグリセリドを統計的に有意に減少させた。パネルBは、14D12または抗KLHを用いた週1回注射を8回施した後のマウスの絶食時血清トリグリセリドを示す。この実験において、14D12は血清トリグリセリドを56%減少させ、これは統計的に有意であった。
この実験において、血清グルコースおよびインスリンレベルは、14D12注射を施しても変化しなかった。この実験ではマウスの体重もまた、14D12注射を施しても変化しなかった。
Z. ANGPTL4に対する特定のモノクローナル抗体の配列決定
Gillilandら(1996) Tissue Antigens 47: 1-20に記載の方法の改良法を用いて、14D12、15F2、および90B4の重鎖および軽鎖可変領域をクローニングし配列決定した。マウス遺伝的バックグラウンドに適当なRACEプライマーおよびPCRプライマーを使用するように該方法を改変した。図47には、コンセンサス配列(配列番号15)を含めて、重鎖可変領域のアライメントを示す。さらに、各抗体同士の重鎖可変領域の相同性パーセントをその図中に示す。14D12の重鎖可変領域(配列番号12)および15F2の重鎖可変領域(配列番号13)は99%同一であり、これに対して90B4の重鎖可変領域(配列番号14)は14D12および15F2の重鎖可変領域と40%同一であるに過ぎない。
図48には、コンセンサス配列(配列番号19)を含めて、軽鎖可変領域のアライメントを示す。軽鎖可変領域同士の相同性パーセントも示す。15F2の軽鎖可変領域(配列番号17)および90B4の軽鎖可変領域(配列番号18)は99%同一であり、これに対して14D12の軽鎖可変領域(配列番号16)は、15F2および90B4の軽鎖可変領域と、それぞれ52%および51%同一であるに過ぎない。
AA. ANGPTL4に対する特定のモノクローナル抗体のエピトープマッピング
モノクローナル抗体15F2、14D12、および90B4についてのエピトープを同定するために、次の実験を行った。マウスANGPTL4の種々の断片をin vitroで翻訳させた。断片の位置を表5に示し、断片の配列を表6に示す(配列番号40〜48)。表5中の開始アミノ酸および終了アミノ酸は、配列番号50に示されるmANGPTL4のアミノ酸配列を参照している。
各断片は、PCRを用いて作製した構築物から発現させた。各PCR誘導構築物は、T7プロモーター、His6タグをコードする配列、小さなユビキチン様修飾因子(SUMO)をコードする配列、およびANGPTL4断片をコードする配列を含むものであった。RTS大腸菌(E. coli) Linear Template Generation Set (Roche Diagnostics)およびRTS 100 大腸菌(E. coli) HYキット(Roche Diagnostics)を、いずれも製造者の指示に従って使用して、PCR構築物をin vitro翻訳させた。断片中のANGPTL4部分は、表5に示すように、「gs1」、「gs2」などと呼ぶ。HisタグおよびSUMO配列を含むin vitro翻訳されたタンパク質断片は、図49に示すように、「His-SUMO-gs1」、「His-SUMO-gs2」などと呼ぶ。
in vitro翻訳タンパク質断片を、N-mANGPTL4と共に、4つのSDS-PAGEゲルで分離し、4つのニトロセルロースブロットに転写した。次に5%脱脂粉乳含有TBS(TBS-NFDM)を用いてこれらのブロットを1〜2時間ブロッキングした。ブロッキングの後に、0.5%Tween-20含有TBS(TBS-Tween)を用いてブロットを5分ずつ4回すすいだ。次にブロットを試験抗体(14D12、15F2、90B4、または抗His)を含有するTBS-NFDM中4℃で一晩インキュベートした。ブロットは、TBS-Tweenを用いて5分ずつ4回すすぎ、その後HRP-カップリングヤギ抗マウス抗体(Southern Biotechnology Associates)の1:6000希釈物を含むTBS-NFDM中で1時間インキュベートした。ブロットは、TBS-Tweenを用いて5分ずつ4回すすぎ、その後SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate (Pierce Biotechnology)を製造者の指示に従って使用して発色させた。別の方法として、Western BreezeTM Immunodetection Kit (Invitrogen)を用いてブロットを発色させることができる。
この実験の結果を図49に示す。この実験では、抗体14D12はN-mANGPTL4にのみ結合した。この実験において14D12は他の断片のいずれにも結合しないようであった。この結果は、14D12が15F2や90B4よりも弱い結合抗体であることによるのかもしれない。例えば実施例Sおよび図33を参照されたい。抗体15F2はHis-SUMO-gs1に結合した。この結果は、15F2がmANGPTL4のQ24とP98の間の領域(配列番号40)に少なくとも結合することを示唆する。抗体90B4はHis-SUMO-gs2およびHis-SUMO-gs4に結合した。この結果は、90B4エピトープが、mANGPTL4のL49とP98の間(配列番号41)およびE99とL151の間(配列番号43)の部分を含むことを示唆する。
BB. siRNA
SMARTselectionTM法(Dharmacon, Inc., Lafayette, CO)を用いてsiRNA用のオリゴヌクレオチドを同定した。この方法は、標的mRNAを強力かつ特異的に分解する蓋然性が高いsiRNAを同定するための多重成分アルゴリズムを使用する。この方法を用いて、siRNAとして使用するための4種の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを同定した。この4種のオリゴヌクレオチドの配列を配列番号5〜8に示す。
これらのオリゴヌクレオチドは、ヒトANGPTL4をコードするmRNAの分解(したがって発現)を誘導するために使用する。4種のオリゴヌクレオチドを、RNaseフリーの緩衝溶液中に最終濃度約20μMへと再懸濁した、単一の試薬であるSMARTpool(登録商標)試薬(Dharmacon, Inc., Lafayette, CO)内で混合する。標準トランスフェクション法を用いてこれらのオリゴヌクレオチドを約1〜200 nM siRNAの濃度で培養細胞にトランスフェクトさせる。
細胞に基づくアッセイを用いて、該オリゴヌクレオチドがヒトANGPTL4をコードするmRNAのin vitro分解を誘導することを確認する。該オリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトされるHela細胞を6ウェルプレート上に播種し、37℃のインキュベーター内で5%CO2を供給しながら一晩増殖させる。播種密度は約100,000細胞/ウェルである。翌日、該オリゴヌクレオチドを、1ml増殖培地中約10〜100 nMという最終濃度で、細胞内にトランスフェクトさせる。トランスフェクションから48時間後に細胞を回収する。Qiagen RNeasyキットを用いて全RNAを分離する。ノーザンブロット分析を用いてAngptl4 mRNAの量を分析する。
上記実施例は、とりわけマウスANGPTL4に対する特定の中和モノクローナル抗体およびそうした抗体のマウス中でのin vivo効果について説明するが、当業者ならば、ヒトANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体が作製可能であり、また、かかる抗体はヒト中で同一または類似のin vivo効果を有するであろう、ということを容易に認識するであろう。この結論は、部分的には、ヒトANGPTL4とマウスANGPTL4が、構造的および機能的特性を共有する、進化的に保存されたタンパク質であるという観察に基づく。例えばGeら(2004) J. Biol. Chem. 279:2038-2045を参照のこと。例えば、ヒトおよびマウスANGPTL4は約77%アミノ酸配列同一性を共有する。ヒトおよびマウスANGPTL4はまた、共通する二次構造的構成要素、例えばN末端コイルドコイルドメインおよびC末端フィブリノーゲン様ドメインを共有する。その上、ヒトANGPTL4の、マウス中で過剰発現させたときの血清脂質レベルを上昇させる能力から実証されるとおり、ヒトANGPTL4はマウスANGPTL4と類似する機能を有する。第VI部のB.2を参照されたい。
また当技術分野で一般に認識されていることとして、マウスは、中和抗体を使用する、種々の症状や疾患の治療用のモデルとして普通に使用される。例えば、中和抗体は、マウスにおけるプリオン病、糖尿病、および炎症を治療するために使用されてきた。例えば、Whiteら(2003)
Nature 422:80-83; Cailleauら(1997)
Diabetes 46:937-940;およびLochnerら(2002)
J. Immunol. Methods 259:149-157を参照されたい。後者(Lochnerら)の研究では、マウスIL-18を中和するモノクローナル抗体がIL-18 欠損マウス中で誘発された。そうしたマウスモノクローナル抗体は、野生型マウスにおいてリポ多糖-誘発型炎症応答を抑制する能力を有していた。このことから、当業者ならば、前述した実施例が、ヒトの病状の治療における、ヒトANGPTL4に対する中和モノクローナル抗体の使用を支持するものである、と結論付けるであろう。