JP2008525030A - グリコール酸の酵素的製造 - Google Patents

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Abstract

グリコロニトリルからのグリコール酸の酵素的製造のためにさまざまな方法が提供される。これらの方法としては、1)グリコロニトリルからグリコール酸へ変換するための改善されたニトリラーゼ活性を有するアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼ変異の使用、および2)触媒安定性および/または生産性を改善する方法が挙げられる。触媒安定性/生産性を改善する方法としては、反応安定剤の使用、実質的に酸素を含まない条件下での反応の実行、および反応混合物における基質の濃度の制御が挙げられる。

Description

本発明は、微生物学および分子生物学の分野に関する。より具体的には、グリコロニトリルからのグリコール酸の酵素的製造の方法が、改善されたニトリラーゼ活性を有する変異ニトリラーゼを使用することにより提供される。
本出願は、いずれも2004年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/638,176号明細書および同第60/638,127号明細書の利益を主張する。
グリコール酸(HOCH2COOH、CAS登録番号は79−14−1)は、カルボン酸のα−ヒドロキシ酸ファミリーの最も単純なメンバーである。その特性は、ポリグリコール酸(PGA)の調製におけるモノマーとして、およびパーソナルケア製品における構成要素として、井戸改修、皮革工業、およびオイルやガス工業、洗濯および繊維工業における使用を含む広範囲の消費者および工業用途のために理想的である。グリコール酸は、さまざまな工業(乳および食品加工器具洗浄剤、家庭および工業用洗浄剤、工業洗浄剤[輸送器具、石造、プリント基板、ステンレス鋼ボイラーおよび加工器具、冷却塔/熱交換器用]、および金属加工[金属酸洗い、銅光沢、エッチング、電気メッキ、電気研磨用]における洗浄剤の主成分でもある。最近、ポリグリコール酸が、食品および炭酸飲料を包装するためのガスバリヤ材として有用である(すなわち、高い酸素バリヤ特性を示す)ことが報告されている(特許文献1)。しかし、グリコール酸の伝統的な化学合成では、ガスバリヤ材用のポリグリコール酸の調製における使用前に除去する必要がある相当な量の不純物が生成される。グリコール酸を商業的に製造する新しい技術、特に高純度かつ低費用でグリコール酸を製造する技術は、業界によって熱心に受入れられるであろう。
開始材料として対応するα−ヒドロキシニトリルおよび触媒として微生物を使用するα−ヒドロキシ酸を調製するためのさまざまな方法が知られている。製造されるα−ヒドロキシ酸の例としては、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸、マンデル酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−4−ブチロラクトン、および4−メチルチオ酪酸が挙げられる。これらの生成物は、ノカルジア(Nocardia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、オウレオバクテリウム(Aureobacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、カセオバクター(Caseobacter)属、アルケリゲネス(Alcaligenes)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、アエロモナス(Aeromonas)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、エルビニア(Erwinia)属、カンジダ(Candida)属、バクテリジウム(Bacteridium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、コクリオボルス(Cochliobolus)属、フサリウム(Fusarium)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、オブスムバクテリウム(Obsumbacterium)属、およびゴルドナ(Gordona)属に属するものなどの微生物を使用して合成される。(米国特許公報(特許文献2)に対応する(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)に対応する(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)に対応する(特許文献9)、(特許文献11)、米国特許公報(特許文献10)に対応する(特許文献12)、(特許文献13)に対応する(特許文献14)、(特許文献15)に対応する(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)に対応する(特許文献18))。
しかし、上記の対応するα−ヒドロキシニトリルからα−ヒドロキシ酸を調製するための最も周知の方法では、商業的需要に合致する十分な高濃度で生成物が製造され、蓄積されることはない。これはしばしば、反応期間の早期の酵素不活性化の結果である。米国特許公報(特許文献19)は、「α−ヒドロキシニトリルがニトリラーゼまたはニトリルヒドラターゼを使用して酵素的に加水分解または水和され、α−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシアミドを生成する場合、酵素は短時間内に不活性化されるという点で問題が生じる。したがって、α−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシアミドを高濃度および高収量で得ることは困難である。」ことを開示している(第1欄、49−54行)。反応混合物におけるアルデヒド濃度(アルデヒドおよびシアン化水素とのα−ヒドロキシニトリルの分離によって形成)および/またはα−ヒドロキシニトリル濃度を規定範囲内に維持することが、この問題を回避する1つの方法である。
米国特許公報(特許文献17)はさらに、迅速な酵素不活性化に関する難点に対処する。具体的には、米国特許公報(特許文献17)は、分離平衡化に従って、α−ヒドロキシニトリル化合物が部分的に対応するアルデヒドに分離することに言及している。これらのアルデヒドは、タンパク質との結合によって短時間内に酵素を不活性化し、それによって、α−ヒドロキシニトリルから高い生産性とともに高濃度でα−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシアミドを得ることを困難にする(第2欄、16−29行)。アルデヒドの蓄積による酵素不活性化を阻止する解決法として、リン酸または次亜リン酸イオンが反応混合物に添加された。米国特許公報(特許文献10)では、亜硫酸イオン、二亜硫酸イオン、または亜ジチオン酸イオンが使用され、アルデヒドを抑制し、かつ酵素不活性化を阻止する。しかし、さらに上記の通りかかる添加剤によって製造され、蓄積されるα−ヒドロキシ酸の濃度は大きくない。
米国特許公報(特許文献20)は、α−ヒドロキシ酸生成物の低い蓄積が分離アルデヒド蓄積による短時間内の酵素不活性化に関係していることを開示している。これらの発明者は、酵素活性が、対応するアルデヒドまたはケトンと共に水中でα−ヒドロキシニトリルの部分分離において生成される(非特許文献1)シアン化水素の存在下に阻害されることを示している(非特許文献2)。これらの発明者は、その酵素活性が、反応混合物にシアン化物を添加することによって改善されうる微生物を使用することによってアルデヒド誘発酵素不活性化の課題を解決した。シアン化物の添加は、アルデヒドおよびシアン化水素とのα−ヒドロキシニトリルの分離を制限した。
特にグリコール酸の製造に関して、グリコロニトリルが、そのいずれかが酵素活性を不活性化にしうる、シアン化水素およびホルムアルデヒドと可逆的に分離することが知られている。米国特許公報(特許文献21)は、「ニトリラーゼ」活性を有する細菌を使用する対応するニトリルから有機酸を調製する方法を記載し、基質としてのグリコロニトリルをリストアップしている。具体的には、この特許は、この目的のためのバチルス(Bacillus)、バクテリジウム(Bacteridium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)の使用を記載している。ニトリラーゼ活性を有すると記載されているが、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)R312は、米国特許公報(特許文献21)の実施例のすべてにおいて使用される唯一の株である。ブレビバクテリウム(Brevibacterium)R312は、ニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ活性を有するが、ニトリラーゼ活性を有さないことが知られている(非特許文献3)。
コリネバクテリウム(Corynebacterium)種に属する微生物を使用することによって乳酸、グリコール酸、および2−ヒドロキシイソ酪酸を調製する方法が、(特許文献22)に開示されている。(特許文献23)は、ロドコッカス(Rhodococcus)またはゴルドナ(Gordona)ヒドロラーゼの作用によってグリコロニトリルからグリコール酸を製造するための方法を開示している。グリコール酸の選択性は、グリコール酸アミドの形成なしにほぼ100%と報告されている。米国特許公報(特許文献20)は、グリコール酸を含む、α−ヒドロキシニトリルからα−ヒドロキシ酸を製造するための方法の実施例を開示している。この開示により、すべての微生物触媒が前記課題により高濃度のグリコール酸を製造できるわけではないことが認められ、産業上、有利な微生物を見出すためにスクリーニング試験を行う必要があることが示される。米国特許公報(特許文献20)は、具体的には、バリオボラックス(Variovorax)種およびアルスロバクター(Arthrobacter)種を同定している。α−ヒドロキシニトリルまたはα−ヒドロキシ酸の抑制効果に耐性である微生物は、耐久性の活性を有し、高濃度で所望の生成物を製造しうる。
アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W(ATCC55746)は、脂肪族ニトリラーゼ(EC3.5.5.7)活性のほか、ニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1.84)活性およびアミダーゼ(EC3.5.1.4)活性の組合せによっても特徴づけられる。米国特許公報(特許文献24)は、短時間に35−70℃下、適切な緩衝液中でアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72W(ATCC55746)の懸濁液を加熱し、所望のニトリラーゼ活性の大幅な減少をもたらすことなく、全細胞触媒の望ましくないニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ活性を非活性化することを開示している。
A.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼをコードする遺伝子はクローン化され、組換え発現されている(米国特許公報(特許文献25)に対応する(特許文献26)および(非特許文献4)。A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼは、グリコール酸(米国特許公報(特許文献27))を含む、α−ヒドロキシニトリルを対応するα−ヒドロキシカルボン酸に高い収量で変換する(米国特許公報(特許文献28))。しかし、100%変換までの高い収量でグリコロニトリルのグリコール酸への変換の改善されたニトリラーゼ活性を有する変異ニトリラーゼは、工業製造費用を削減するためにきわめて有用であろう。
酵素触媒を使用するグリコール酸を製造する方法は、高濃度でグリコロニトリルをグリコール酸に変換しうる酵素触媒の使用を経済的に必要とし、および高い触媒生産性(kgグリコール酸/kg酵素触媒)および容積生産性(グリコール酸/L/時のグラム)がある。酵素触媒は多重連続バッチ反応、またはグリコロニトリルの一定の添加およびグリコール酸の除去を使用する連続反応で使用でき、いずれかの操作モードにおいて、触媒活性および寿命は高い容積生産性および触媒生産性が得られるようになり、かつバッチ反応の場合には、触媒は連続バッチ反応間の酵素活性の大幅な喪失なしに多重反応サイクルで利用されなければならない。グリコロニトリル加水分解に対する改善されたニトリラーゼ活性を有する変異性ニトリラーゼは容積生産性における改善を提供しうる。グリコロニトリル反応混合物における遊離ホルムアルデヒド(およびおそらく他の不純物)の不活性化効果が、さまざまな程度にすべてのニトリラーゼ触媒に好ましくない影響を及ぼすという事実を踏まえて、グリコロニトリルの加水分解のための反応条件下で酵素活性を安定化する改善(結果として触媒生産性の相対的増大をもたらす)も必要である。
解決すべき課題は、グリコロニトリルの加水分解のためのニトリラーゼ活性の大幅な改善を示す酵素触媒を使用するグリコール酸容積生産性を増大させる方法を提供することである。解決すべき追加の課題は、グリコール酸製造のために酵素触媒の生産性および安定性を増大させ、それによって、酵素触媒費用および全体的な製造費用を削減する方法を提供することである。
国際公開第2005/106005A1号パンフレット 米国特許第5,223,416号明細書 特開平04−99495号公報 特開平04−99496号公報 特開平04−218385号公報 米国特許第5,234,826号明細書 特開平04−99497号公報 米国特許第5,296,373号明細書 特開平05−95795号公報 米国特許第5,326,702号明細書 特開平05−21987号公報 特開平05−192189号公報 欧州特許第0610048A号明細書 特開平06−237789号公報 欧州特許第0610049A号明細書 特開平06−284899号公報 米国特許第5,508,181号明細書 特開平07−213296号公報 米国特許第5,756,306号明細書 米国特許第6,037,155号明細書 米国特許第3,940,316号明細書 特開昭61−56086号公報 特開平09−28390号公報 米国特許第5,814,508号明細書 米国特許第6,870,038号明細書 国際公開第01/75077号パンフレット 米国特許第6,416,980号明細書 米国特許第6,383,786号明細書 米国特許第10/919182号明細書 米国仮特許出願第60/638128号明細書 米国仮特許出願第60/638148号明細書 米国特許出願第60/638126号明細書 米国特許第5,605,793号明細書 米国特許第5,811,238号明細書 米国特許第5,830,721号明細書 米国特許第5,837,458号明細書 米国特許第2,175,805号明細書 米国特許第2,890,238号明細書 米国特許第5,187,301号明細書 米国仮特許出願第60/638127号明細書 米国特許第2004/0210087号明細書 米国特許第2004/0138409A1号明細書 米国特許第6,291,708 B1号明細書 Chemical Reviews, 第42巻、189頁(1948年) Agricultural Biological Chemistry、第46巻、1165頁(1982年) ツルネイックス(Tourneix)ら、Antonie van Leeuwenhoek、52:173−182頁 (1986年) チャーハン(Chauhan)ら、Appl Microbiol Biotechnol、61:118−122頁(2003年) Nucleic Acids Research 13:3021−3030頁(1985年) Biochemical Journal 219(第2号):345−373頁(1984年) オウチクロフ(Outchkourov)ら、Protein Expr Purif、24(1):18−24頁(2002年) フェング(Feng)ら、Biochemistry,39(50):15399−15409頁(2000年)) コワン(Cowan)ら、Extremophiles、2:207−216頁(1998年) ペース(Pace),H.およびブレナー(Brenner),C.、Genome Biology、2(1):reviews 1−9頁(2001年) オーレイリー(O’Reilly),C.およびターナー(Turner),P.、J Appl Microbiol、95:1161−1174頁(2003年) Methods in Biotechnology、第1巻:Immobilization of Enzymes and Cells、ゴルドン(Gordon)F.ビッカースタッフ(Bickerstaff)編、フマーナ・プレス(Humana Press)、ニュージャージー州トトワ(Totowa、NJ)、米国(USA)、1997年 Recombinant Microbes for Industrial and Agricultural Applications、ムロッカ(Murooka)ら編、マルセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York、NY)(1994年) メルニコフ(Melnikov)ら、Nucleic Acids Research、27(4):1056−1062頁(1999年) (クームス(Coombs)ら、Proteins(1998年)、259−311頁、1プレート。Angeletti、Ruth Hogue編、アカデミック(Academic):カリフォルニア州サンディアゴ(San Diego、CA) フロマント(Fromant)ら、Anal Biochem、224(1):347−53頁(1995年) リン・ゲルケ(Goerke)ら、Biotechniques、23(3):409−12頁(1997年) サンブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.およびマニアチス(Maniatis),T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory):Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(NY)(1989年) ニクソン(Nixon)ら、PNAS、94:1069−1073頁 (1997年) グルスリー(Gurthrie),J.およびクリモア(Cullimore),P.、Can J.Chem.、58(13):1281−1294頁 トーマス(Thomas)D.ブロック(Brock)、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版(1989年)シナウアー・アソシエーツ社(Sinauer Associates,Inc.)、Sunderland、マサチューセッツ州(MA)(1989年) デスパンデ(Deshpande)、ムクンド(Mukund)V.、Appl.Biochem.Biotechnol.36(3): 227−234頁(1992年) Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、第7版、ペリー(Perry)、ロバート(Robert)H.、グリーン(Green)、ダウ(Dow) W.、およびマロニー(Maloney)、ジェームス(James)O.編、マグロウヒルカンパニー社(McGraw Hill Companies,Inc.)、New York、ニューヨーク州(NY)、1997年、以後「Perry’s」を参照 ワセワル(Wasewar)ら、J.Biotechnol.、97:59−68頁 (2002年) タマダ(Tamada)ら、Ind.Eng.Chem.Res.29:1319−1326頁(1990年)、 タマダ(Tamada)ら、Ind.Eng.Chem.Res. 29:1327−1333頁(1990年) インシ(Inci),I.(Chem.Biochem.Eng.Q.,16(2):81−85年(2002年) インシ(Inci),I.およびウスル(Uslu), H.、J.Chem.Eng.Data、50:536−540頁(2005年) グルスリー(Gurthrie),J.およびクリモア(Cullimore),P.、Can J.Chem.、58(13):1281−1294頁、 トーマス(Thomas)D.ブロック(Brock)、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、(1989年)第2版、シナウアー・アソシエーツ社(Sinauer Associates,Inc.)、(Sunderland、マサチューセッツ州(MA)) T.J.シルハビー(Silhavy)、M.L.ベナン(Bennan)、およびL.W.エンクイスト(Enquist)、Experiments with Gene Fusions、(1984年)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Cold Spring、ニューヨーク州(NY) オーズベル(Ausbel),F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、(1994−1998年)ジョン・ワイリー(John Wiley)&サンズ(Sons)社(Inc.)、ニューヨーク(New York)
本発明は、グリコロニトリルからのグリコール酸の酵素的製造のための方法を提供する。
a)グリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させるステップであって、前記ポリペプチドが、
(1)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
(2)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換と
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
(b)塩または酸の形で(a)において製造されるグリコール酸を回収するステップを含み、前記酵素触媒が、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供することを特長とするグリコロニトリルからグリコール酸を製造する方法が提供される。
本発明の別の態様において、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離核酸分子が提供されるが、前記核酸分子は、
a)アミノ酸残基168でのメチオニン、またはトレオニンによる置換、および
b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換による配列番号6のアミノ酸配列を有し、前記ポリペプチドが、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供する核酸分子が提供される。
さらなる態様において、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、
a)アミノ酸残基168でのメチオニン、またはトレオニンによる置換、および
b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換による配列番号6のアミノ酸配列を有し、前記ポリペプチドが、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供する単離ポリペプチドが提供される。
(配列表)
以下の配列の説明および本明細書に添付された配列表は、37C.F.R.§1.821〜1.825に記載された特許出願におけるヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の開示を規定する規則に従うものである。配列の説明は、参照により本明細書で援用される、(非特許文献5)および(非特許文献6)に記載されたIUPAC−IYUB標準に従って定義されたヌクレオチド配列の特徴を表す1文字表記およびアミノ酸を表す3文字表記を含む。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号および書式は、37C.F.R.§1.822に記載された規則に従うものである。
配列番号1は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列を増幅するために使用されるプライマー165のヌクレオチド配列である。増幅PCR生成物はその後にpUC19へクローン化され(ニュー・イングランド・バイオラブス(New England Biolabs)、Bevery、マサチューセッツ州(MA)、GenBank(登録商標)L09137)、プラスミドpSW138を作る。
配列番号2は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列を増幅するために使用されるプライマー166のヌクレオチド配列である。増幅PCR生成物はその後にpUC19へクローン化され(ニュー・イングランド・バイオラブス(New England Biolabs)、Bevery、マサチューセッツ州(MA)、GenBank(登録商標)L09137)、プラスミドpSW138を作る。
配列番号3は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを増幅するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号4は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを増幅するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号5は、大腸菌(E.coli)における組換え発現を促進するTTGからATGへの開始コドンにおける変化を含むアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列のヌクレオチド配列である。
配列番号6は、大腸菌(E.coli)における組換え発現を促進するTTGからATGへの開始コドンにおける変化を含む配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされるアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼの推定アミノ酸配列である。
配列番号7は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換をもたらした(L201Q、Leu→Gln)。
配列番号8は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201(Leu201→Gln)での単一アミノ酸置換を含む変異ニトリラーゼ(配列番号7)の推定アミノ酸配列である。
配列番号9は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201で単一アミノ酸置換(L201A、Leu→Ala)をもたらした。
配列番号10は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Ala)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号9)の推定アミノ酸配列である。
配列番号11は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201C、Leu→Cys)をもたらした。
配列番号12は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Cys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号11)の推定アミノ酸配列である。
配列番号13は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201C、Leu→Thr)をもたらした。
配列番号14は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Thr)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号13)の推定アミノ酸配列である。
配列番号15は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201G、Leu→Gly)をもたらした。
配列番号16は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(L201→Gly)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号15)の推定アミノ酸配列である。
配列番号17は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201H、Leu→His)をもたらした。
配列番号18は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(L201→His)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号17)の推定アミノ酸配列である。
配列番号19は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201K、Leu→Lys)をもたらした。
配列番号20は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(L201→Lys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号19)の推定アミノ酸配列である。
配列番号21は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201K、Leu→Asn)をもたらした。
配列番号22は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Asn)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号21)の推定アミノ酸配列である。
配列番号23は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201S、Leu→Ser)をもたらした。
配列番号24は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Ser)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号23)の推定アミノ酸配列である。
配列番号25は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168K、Phe→Lys)をもたらした。
配列番号26は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Lys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号25)の推定アミノ酸配列である。
配列番号27は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168M、Phe→Met)をもたらした。
配列番号28は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Met)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号27)の推定アミノ酸配列である。
配列番号29は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168T、Phe→Thr)をもたらした。
配列番号30は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Thr)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号29)の推定アミノ酸配列である。
配列番号31は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168V、Phe→Val)をもたらした。
配列番号32は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Val)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号31)の推定アミノ酸配列である。
配列番号33は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(T210A、Thr→Ala)をもたらした。
配列番号34は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置210での単一アミノ酸置換(Thr210→Ala)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号33)の推定アミノ酸配列である。
配列番号35は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(T210C、Thr→Cys)をもたらした。
配列番号36は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置210での単一アミノ酸置換(Thr210→Cys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号35)の推定アミノ酸配列である。
配列番号37は、大腸菌(E.coli)SS1001(ATCC PTA−1177、参照により本明細書で援用される米国特許公報(特許文献25)において発現されるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号38は、大腸菌(E.coli)SS1001(ATCC PTA−1177)において発現されるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号33)の推定アミノ酸配列である。
以下の生物寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の下に行われた。すなわち、
Figure 2008525030
本明細書で使用される「ATCC」は、ATCC、10801 University Blvd.、Manassas、バージニア州(VA)20110−2209、米国(USA)に設置されたアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション国際寄託機関(American Culture Collection International Depository Authority)を指す。「国際寄託指定」はATCCによる寄託における培養に対する登録番号である。
リストアップされた寄託は、指示国際寄託において少なくとも三十(30)年間維持され、それを開示する特許の付与とともに一般の人々に利用可能となる。寄託の利用可能性は、政府の措置によって付与される特許権の特例において本発明を実践するための許可を構成することはない。
(発明を実施するための最良の形態)
上記の課題は、改善されたニトリラーゼ活性を有するアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wニトリラーゼ変異を使用する高収量および高濃度で対応するグリコロニトリルからグリコール酸を調製する方法を提供することによって解決されている。上記課題を解決する方法としては、1)グリコロニトリルのグリコール酸への変換のための改善されたニトリラーゼ活性および/または改善された触媒生産性を有するアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wニトリラーゼ変異の使用、および2)グリコロニトリルのグリコール酸への変換のための反応条件下で触媒安定性および/または生産性を改善する方法が挙げられる。グリコロニトリルのグリコール酸への変換のための反応条件下で触媒安定性/生産性を改善する方法としては、1)酵素触媒活性を安定化する添加剤の使用、2)実質的に酸素を含まない条件下の反応の実行、および3)グリコロニトリルの標的濃度が維持されるように反応混合物へのグリコロニトリルの供給速度の制御が挙げられる。
(定義)
本開示において、多くの用語および略語が使用される。以下の定義が、別段の規定がない限り適用される。
本明細書で使用される「を含む」は、請求の範囲において言及された規定された特徴、整数、ステップ、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分、またはそれのグループの存在または付加を排除することはない。
本明細書で使用される、使用される発明の成分または反応物質の量を修正する「約」という語は、例えば、現状で濃縮物製造または溶液使用のために使用される典型的な測定および液体処理手順を通じて、これらの手順における不注意による誤りを通じて、組成物を製造し、または方法を実行するなどために使用される成分の製造、供給源、または純度の差異を通じて生じる数量のばらつきを指す。「約」という語は、特定の初期混合物に由来する組成物に対する異なる平衡条件により異なる量をも包含する。「約」という語によって修正されているかどうかに関係なく、請求の範囲は、量の同等物を含む。1つの実施形態において、「約」という語は、報告された数値の10%以内、好ましくは、報告された数値の5%以内を意味する。
本明細書で使用される「回収」は、本方法によって形成される生成物の単離、精製、または移動を意味する。当技術分野で公知である反応混合物から生成物を単離し、精製する方法は、選択的沈殿、結晶化、ろ過、反応性溶媒抽出、イオン交換、電気透析、重合、蒸留、熱分解、アルコール分解、およびそれらの組合せを含みうるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、「回収」という語は、生成物混合物(一般的に酵素触媒のろ過後)を別の反応に移し、1つまたは複数の追加の生成物を作成することをも含みうる。
本明細書で使用される「酵素触媒」または「微生物細胞触媒」という語は、グリコロニトリルをグリコール酸およびアンモニアに変更するためのニトリラーゼ活性(すなわち、ニトリラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む)によって特徴づけられる触媒を指す。酵素触媒は、全微生物細胞、透過性微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つまたは複数の成分、部分的に精製された酵素、または精製酵素の形でありうる。酵素触媒は、可溶性または不溶性支持体内またはその上で遊離(非固定化)または固定化でありうる。本明細書で使用される「リサイクルされた酵素触媒」は、バッチ反応で酵素触媒として再使用される酵素触媒を指す。
本明細書で使用される「触媒生産性」および「酵素触媒生産性」という語は、触媒のグラム当りの製造される生成物の総量を指す。本発明において、触媒はニトリラーゼ酵素(EC3.5.5.7)であり、形成される生成物はグリコール酸および/またはグリコール酸アンモニウムである(反応のpHに依存)。一般に、本方法は、製造されるグリコール酸が主にグリコール酸の対応する塩の形であるように(すなわち、グリコール酸アンモニウム)本質的にpHが中性条件下で行われる。一般に、触媒リサイクルとのバッチ反応において、触媒活性は各々のリサイクル反応とともに減少する(酵素不活性化)。
本明細書で使用される「アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)」、「アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W」、および「A.ファシリス(facilis)」は置き換え可能に使用され、登録番号55746(「ATCC55746」)を有するアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(国際寄託機関)に寄託されたアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wを指す。
本明細書で使用される「大腸菌(Escherichia coli)」および「E.coli」という語は置き換え可能に使用される。組換え発現に適切な大腸菌(E.coli)の一部の株は、国際寄託番号ATCC47076を有する大腸菌(E.coli)MG1655、国際寄託番号ATCC53911を有する大腸菌(E.coli)FM5、国際寄託番号ATCC27325を有する大腸菌(E.coli)W3110、国際寄託番号ATCC35695を有する大腸菌(E.coli)MC4100、および国際寄託番号ATCC12435を有する大腸菌(E.coli)W1485を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、適切な大腸菌(Escherichia coli)株は、大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)および大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)を含む。
本明細書で使用される「大腸菌(E.coli)SS1001」または「SS1001」という語は、ATCC登録番号PTA−1177を有するアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wニトリラーゼを発現する形質転換大腸菌(E.coli)株を指す(米国特許公報(特許文献25)、本明細書で全体として参照により援用される)。組換え発現大腸菌(E.coli)SS1001ニトリラーゼ(配列番号38)は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号6)と比べ2つの小さな配列変化を含有する。開始コドンはGTGからATGに変化して組換え発現を促進し、アーチファクトがクローニング中に導入され、結果としてC末端近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
本明細書で使用される「グリコロニトリル」という語は「GLN」と略され、ヒドロキシアセトニトリル、2−ヒドロキシアセトニトリル、ヒドロキシメチルニトリル、およびCAS登録番号107−16−4の他のすべての同義語と同義である。
本明細書で使用される「グリコール酸」という語は「GLA」と略され、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエタン酸と同義であり、CAS登録番号79−14−1の他のすべての同義語である。本方法によって製造されるグリコール酸は、プロトン化したカルボン酸および/または対応するアンモニウム塩の形でありうる。
本明細書で使用される「グリコール酸アンモニウム」という語は、「NH4GLA」と略される。
本明細書で使用される「グリコリド」という語は、CAS登録番号502−97−6の化合物を指す。
本明細書で使用される「適切な水性グリコロニトリル反応混合物」および「適切な水性反応混合物」という語は、グリコロニトリルおよび酵素触媒が接触することになる材料および水を指す。
本明細書で使用される「ニトリラーゼ触媒」という語は本明細書において、ニトリラーゼ活性(EC3.5.5.7)によって特徴づけられる酵素触媒を指す。ニトリラーゼ酵素が直接、中間体として対応するアミドを形成することなく脂肪族ニトリルを対応するカルボン酸に変換する(式1)。
Figure 2008525030
本明細書で使用される「改善されたニトリラーゼ」、「変異ニトリラーゼ」、「アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W変異ニトリラーゼ」、および「タンパク質改変ニトリラーゼ」という語は、同一の反応条件下でA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼと比べグリコロニトリルのグリコール酸への変換に向けた大幅に改善されたニトリラーゼ活性を有する本ニトリラーゼを指すために置き換え可能に使用される。1つの実施形態において、ニトリラーゼ活性の改善は、組換え発現され(同一の発現系を使用)、本質的に同一の反応条件下でアッセイされる場合、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対する本変異ニトリラーゼ触媒のニトリラーゼ活性を比較することによって判定されうる。SDS−PAGE分析は、本変異とそのそれぞれの対照(配列番号6)との間のタンパク質発現レベルが本質的に同一であることを示した。かかるものとして、ニトリラーゼ活性の改善は、天然A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼに対する構造的改良の結果と考えられている。
「ニトリラーゼ活性」という語は、グリコロニトリルをグリコール酸(または対応するグリコール酸アンモニウム)に変換する場合のタンパク質の単位質量(例えば、ミリグラム)、乾燥細胞重量、またはビーズ重量(固定化触媒)当りの酵素活性を指す。ニトリラーゼ活性の比較は、乾燥細胞重量またはビーズ重量に比例して測定された。A.ファシリス(facilis)72W対照(配列番号6)と改善された変異との間のニトリラーゼ発現レベルは、SDS−PAGEゲルのレーザー濃度分析を使用して数量的に区別できないため、ニトリラーゼ活性の比較および報告された改善は、乾燥細胞重量(dcw)またはビーズ重量(bw)に対して測定された。
本明細書で使用される「酵素活性の1単位」または「ニトリラーゼ活性の1単位」または「U」という語は、規定温度(例えば、25℃)で毎分1μmolのグリコール酸生成物(GLA U/g乾燥細胞重量またはビーズ重量)の製造に必要とされる酵素活性の量と定義される。
本明細書で使用される「相対ニトリラーゼ活性」、「改善されたニトリラーゼ活性」、および「ニトリラーゼ活性の相対改善」という語は、基準(対照)ニトリラーゼ活性の倍数(または分数)として表現されるニトリラーゼ活性を指す。本変異ニトリラーゼは、天然アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼで確認されるニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の大幅な改善を示す。本発明において、相対ニトリラーゼ活性における「大幅な改善」は、同一の反応条件下で対照(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ、配列番号6)のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも1.5倍高いニトリラーゼ活性の改善である。別の実施形態において、この改善は、同一の反応条件下で対照のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも2倍高いニトリラーゼ活性である。さらなる実施形態において、この改善は、同一の反応条件下で対照のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも4倍高いニトリラーゼ活性である。
本明細書で使用される「初期反応速度」という語は、指定反応条件下でのグリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度の測定であり、反応速度の測定はグリコロニトリルの反応混合物への初期添加とともに開始し、ここで反応速度はある期間にわたって測定され、グリコロニトリルの濃度は反応の経過中、約50ミリモル(mM)を上回ったままである。反応速度は単位時間当りに製造されるグリコール酸の濃度の変化として測定される(例えば、モルグリコール酸/L/分またはmMグルコール酸/時)。
本明細書で使用される「組換え生物」、「形質転換宿主」、「形質転換体」、トランスジェニック生物」、および「形質転換微生物宿主」という語は、異種または外来DNAで形質転換されている宿主生物を指す。本発明の組換え生物は、活性ニトリラーゼ酵素をコードする外来コード配列または遺伝子を発現する。「形質転換」は、DNA断片の宿主生物への移動を指す。移動DNA断片は、染色体または染色体外に宿主生物へ(すなわち、ベクターによって)組込まれうる。本明細書で使用される「形質転換カセット」という語は、通常、プラスミドの一部として宿主細胞への挿入のための便利に配置された一連の遺伝要素を含有するDNAの特定の断片を指す。本明細書で使用される「発現カセット」という語は、宿主における遺伝子発現の増強も可能にする、通常、プラスミドの一部として宿主細胞への挿入のために便利に配置される一連の遺伝要素を含有するDNAの特定の断片を指す。
本明細書で使用される「核酸断片」および「核酸分子」という語は、コード配列に先行する(5’、上流)またはこれに続く(3’、下流)全遺伝子、コード配列、および/または調節塩基配列をコードしうるDNA分子を指す。1つの態様において、本核酸分子は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
本明細書で使用される「遺伝子」という語は、特定のタンパク質を発現する核酸分子を指す。本明細書で使用される通り、これはコード配列に先行する(5’非コード配列)およびこれに続く(3’非コード配列)調節配列を含むことも含まないこともありうる。「天然遺伝子」はそれ自身の調節配列で自然に存在する遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、自然にはいっしょに存在しない調節およびコード配列を含む天然遺伝子ではない遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源由来である調節配列およびコード配列、または同一の起源由来であるが、自然に存在するものと異なる形で配置された調節配列およびコード配列を含んで成りうる。「内在性遺伝子」は、生物のゲノムにおけるその自然の位置における天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物には通常存在しないが、遺伝子導入によって宿主生物へ導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物、またはキメラ遺伝子へ挿入される天然遺伝子を含んで成りうる。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノムへ導入されている遺伝子である。
本明細書で使用される「コード配列」という語は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。本明細書で使用される通り、「適切な調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、範囲内、または下流(3’非コード配列)に位置し、かつ関連コード配列の転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位、およびステムループ構造を含みうる。
「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’に位置している。プロモーターは、全体として、天然遺伝子由来であり、自然に存在する異なるプロモーター由来の異なる要素から成り、または合成DNA断片を含んでなりうる。ほとんどの細胞型でほとんどの時間にまたはほとんどの環境条件下で遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の化合物または環境条件の存在下のみに遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「誘導的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は完全に規定されていないため、異なる長さのDNA断片は同一のプロモーター活性を有しうる。
本明細書で使用される「機能しうるように連結」という語は、1つの配列の機能がその他によって影響されるような単一核酸分子での核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を与えることが可能である場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)コード配列と機能しうるように連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンスの配向で調節配列に機能しうるように連結されうる。
本明細書で使用される「3’非コード配列」という語は、コード配列の下流に位置したDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列(通常、真核生物に限定)、およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことが可能な調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナル(通常、真核生物に限定)は通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸断片の付加に影響を及ぼすことによって特徴づけられる。
当業者は、所定のアミノ酸を特定するヌクレオチドコドンの使用における特定の宿主細胞によって示される「コドン−バイアス」を十分に知っている。したがって、宿主における改善された発現のための遺伝子を合成する場合、そのコドンの用法が宿主細胞の好ましいコドンバイアスを反映するように遺伝子をデザインすることが望ましい。配列情報が入手可能である宿主細胞由来の遺伝子の調査によりそのコドンバイアスが決定されうる。コドン最適化が当技術分野で公知であり、酵母(非特許文献7)および大腸菌(E.coli)(非特許文献8)を含むがこれらに限定されないさまざまな系について記載されている。
(アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼ)
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(EC3.5.5.1)は脂肪族または芳香族ニトリルからカルボン酸を製造するための強固な触媒である((特許文献26)、米国特許公報(特許文献25)、およびチャーハン(Chauhan)ら、上記)。これはα−ヒドロキシニトリル(すなわち、グリコロニトリル)のα−ヒドロキシカルボン酸(すなわち、グリコール酸)の変換を触媒することも証明されている(米国特許公報(特許文献28)および米国特許公報(特許文献27)を参照);参照により全体として本明細書で援用される。
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを含む既知のニトリラーゼすべては、酵素活性部位において求核システインを有し(非特許文献9)、(非特許文献10)、およびチャーハン(Chauhan)ら、上記)、かつすべてはチオール試薬(1.0mM濃度の塩化銅、硝酸銀、酢酸第二水銀、塩化第二鉄の各々がA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ酵素活性の主な減少をもたらした)によって不活性化の影響を受けやすい。システイン残基は、非可逆的にスルフィン酸に酸化されることも可能であり、結果として酵素活性の喪失をもたらす。さまざまな不活性化機序に対するニトリラーゼ酵素の感度にもかかわらず、固定化A.ファシリス(facilis)72W細胞は強固であり、多くのリサイクル反応後にそのニトリラーゼ活性の多くを保持することが可能である(米国特許公報(特許文献25))。
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの他の細菌ニトリラーゼとの配列比較が報告されている(米国特許公報(特許文献25)、チャーハン(Chauhan)ら、上記)。72Wニトリラーゼは、アミノ末端近くの16アミノ酸領域(配列番号6のアミノ酸残基40−55)および必須システイン残基を含有する触媒領域(配列番号6のアミノ酸残基160−173)を含むいくつかの保存署名ドメインを有する。このシステイン残基(配列番号6のCys164)は、保存グルタミン酸(配列番号6のGlu48)およびリシン残基(配列番号6のLys130)とともに、すべてのニトリラーゼに存在する触媒トリアドモチーフを形成する(ペース(Pace),H.およびブレナー(Brenner),C.、上記)。一部の構造的類似性が報告されたニトリラーゼの中に保たれていたが、基質特異性は大きく異なる(非特許文献11)。
(突然変異ニトリラーゼ酵素特性)
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ由来のいくつかの変異ニトリラーゼは以前に報告されている(米国特許公報(特許文献29)、参照により本明細書で援用される)。米国特許公報(特許文献29)において、さまざまな変異ニトリラーゼが選択され、3−ヒドロキシニトリルを3−ヒドロキシ酸(すなわち、3−ヒドロキシブチロニトリルおよび3−ヒドロキシバレロニトリル)に変換するためのニトリラーゼ活性における相対的改善(組換え発現された天然72Wニトリラーゼの活性に対して)についてスクリーニングした。
米国特許公報(特許文献29)に記載されたニトリラーゼ変異とともに使用される発現系は、プラスミドpTrcHis2−TOPO(登録商標)および大腸菌(E.coli)宿主TOP10(いずれもインビトロジェン(Invitorogen)製、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA)に基づく。ニトリラーゼ変異F168L(配列番号6においてPheからLeuに変化した残基168)、F168V(PheからValに変化した残基168、配列番号32)、F168K(PheからLysに変化した残基168、配列番号26)、T210A(ThrからAlaに変化した残基210、配列番号34)、およびT210C(ThrからCysに変化した残基210、配列番号36)の活性を、実施例2に記載された方法を使用する同一の発現システムにおける天然酵素(「対照」、配列番号6)と比較した。おそらくGLNをGLAに変換させる場合大幅に改善されたニトリラーゼ活性を有するとして最初に同定された突然変異F168L、T210A、およびT210Cは、その後に天然の72Wニトリラーゼと同様のニトリラーゼ活性を有することがわかった。意外にも、米国特許公報(特許文献29)に記載された変異ニトリラーゼの2つ(F168K、Phe168→Lys;F168V、Phe168→Val)(本明細書では、それぞれ、配列番号26および32によって示される)はグリコロニトリル(2−ヒドロキシニトリル)をグリコール酸に変換させる場合ニトリラーゼ活性の大幅な改善も示した。しかし、米国特許公報(特許文献29)に記載された他の変異ニトリラーゼ(例えば、T210A、配列番号34、T210C、配列番号36)は、グリコロニトリルをグリコール酸に変換してもニトリラーゼ活性の大幅な改善を示さなかった。
本実施例に記載されている通り、変異性PCRおよび標的飽和突然変異誘発を使用し、天然72Wニトリラーゼコード配列(配列番号5)をランダムに突然変異させた。結果として、アミノ酸残基位置168(野生型配列におけるフェニルアラニン)および201(野生型配列におけるロイシン)でのアミノ酸置換をもたらした突然変異は、ニトリラーゼ活性を大幅に増大させると思われた。本明細書で使用される「アミノ酸残基位置)という語は、N末端メチオニン残基から測定されるとき基準配列(配列番号6)に対して特定の位置に存在するアミノ酸を指す。標的飽和突然変異誘発を行い、両方の残基位置(168および201)でのすべてのアミノ酸置換を評価した。グリコロニトリルをグリコール酸(すなわち、本反応条件下でグリコール酸アンモニウム塩の形で)に変換する大幅に改善されたニトリラーゼ活性を有するいくつかの追加の変異が同定された。本変異ニトリラーゼは、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wニトリラーゼ配列(配列番号6)に対して少なくとも1つのアミノ酸置換からなる。かかるものとして、本変異のニトリラーゼの各々のアミノ酸配列は、本明細書に記載されている通り少なくとも1つのアミノ酸置換されたアミノ酸配列配列番号6(基準配列)を有する。
1つの実施形態において、本方法において有用な適切な変異ニトリラーゼは、
a)アミノ酸位置168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンの置換、および
b)アミノ酸位置201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンの置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換で配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列含んで成り、前記ポリペプチドは、グリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合ニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の改善を示す。
別の実施形態において、本方法において有用な適切な変異ニトリラーゼは、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。さらに別の実施形態において、本方法において有用な適切な変異ニトリラーゼは、配列番号7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、および31からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
1つの態様において、本発明は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離核酸分子を含み、前記ポリペプチドが、
a)アミノ酸残基168でのメチオニン、またはトレオニンによる置換、および
b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を伴う配列番号6のアミノ酸配列を有し、前記ポリペプチドが、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供する。
別の態様において、本発明は、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、28、および30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離核酸分子を含む。さらなる態様において、本発明は、配列番号7、9、11、13、15、17、19、21、23、27、および29からなる群から選択される核酸配列を有する単離核酸分子を含む。
1つの実施形態において、本発明は、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、
a)アミノ酸残基168でのメチオニン、またはトレオニンによる置換、および
b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を伴う配列番号6のアミノ酸配列を有し、前記ポリペプチドが、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供する。
別の実施形態において、本発明は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、28、および30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
測定された活性の単位(U)を触媒重量で割ることによってニトリラーゼ活性を計算した。触媒重量は、精製タンパク質重量、湿細胞重量、乾燥細胞重量、または固定化触媒の重量に関して測定されうる(すなわち、カラギナンおよび/またはGA/PEI架橋触媒/アルギン酸ビーズを使用)。本発明において、ニトリラーゼ活性は、乾燥細胞重量のグラム当りの活性の単位(U/g DCW)または触媒ビーズのグラム当りの活性の単位として報告された(固定化触媒比較)。単位触媒重量としての乾燥細胞重量に基づくニトリラーゼ活性比較により、ニトリラーゼタンパク質生成のレベルを考慮しなければならない。さまざまな形質転換体とそのそれぞれの対照との間のニトリラーゼ酵素の発現レベルを測定し、本質的に同一であることを確認した(すなわち、同一の遺伝背景において比較した場合)。したがって、さまざまな変異の報告されたニトリラーゼ活性における改善は、酵素の構造的変更の結果であると考えられた。
変異ニトリラーゼの(およびA.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼ対照の)コード配列を同一のベクター背景(pTrcHis2−TOPO(登録商標)またはpUC19)および宿主において発現させた。すなわち、大腸菌(E.coli)TOP10(インビトロジェン)、大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)、または大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)。相対的改善は、同一のベクターおよび宿主背景を使用して適切な対照との比較に基づいた。SDS−PAGE分析(レーザー密度計を使用した量化)は、各変異(および対照)におけるニトリラーゼタンパク質発現レベルが本質的に等しいことを明らかに示した(使用された同一の発現システムおよび宿主により予想通り)。相対的酵素活性は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)を発現するそれぞれの大腸菌(E.coli)対照形質転換体において測定されるニトリラーゼ活性に対してさまざまな変異触媒について測定されたニトリラーゼ活性の倍増として報告された。
非固定化触媒について、変異ニトリラーゼのニトリラーゼ活性(U/g乾燥細胞重量)を、乾燥細胞重量のグラム当り25℃下、グリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度(μmol GLA/分)を測定することによって判定した。固定化触媒比較のために、25℃下、グリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度(μmol GLA/分)を測定することによって活性を判定し、固定化細胞触媒ビーズのグラム当りのニトリラーゼ活性の単位(U/gビーズ)として報告した。ニトリラーゼ活性の1単位(U)は、25℃下、1マイクロモルグリコール酸/分の生産と同等である。
特定の変異ニトリラーゼについて、DNAコード領域内の点置換突然変異および結果として生じるアミノ酸変化は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wアミノ酸配列(配列番号6)を参照して、以下のフォーマットの1つを使用して規定される。すなわち
1.拡張フォーマット:野生型アミノ酸は(標準3文字略号を使用して)配列番号6内の対応するアミノ酸残基位置の後、同一の残基位置での変異内に存在する新しいアミノ酸ととともに提供される。例えば、「Phe168からLys」または「Phe168→Lys」により、フェニルアラニンが突然変異の結果としてリシンに変化したアミノ酸残基位置168での配列番号6における突然変異が記載される。
2.短略フォーマット:野生型アミノ酸(標準単一文字略号によって表示)には配列番号6のアミノ酸残基位置が続いた後、変異アミノ酸(やはり標準単一文字略号によって表示)が続く。例えば、「F168K」により、フェニルアラニンが突然変異の結果としてリシンに変化したアミノ酸残基位置168での配列番号6における突然変異が記載される。
(ニトリラーゼ触媒を使用するグリコロニトリルのグリコール酸への加水分解)
加水分解反応は、グリコロニトリルを含む水性反応混合物と酵素触媒を接触させることによって行われた。全組換え微生物細胞(本変異ニトリラーゼを発現する)を前処理なしに酵素触媒として使用することができる。微生物細胞触媒は反応混合物に直接添加され、または中空繊維膜カートリッジもしくは限外ろ過膜を使用してバルク反応混合物から別々に維持されうる。あるいは、微生物細胞はポリマーマトリックス(例えば、カラゲナンまたはポリアクリルアミドゲル(PAG)粒子)または不溶性固体支持体(例えば、セリット)に固定化され、酵素触媒の回収および再利用を促進する(米国特許公報(特許文献25))。精製酵素または部分的精製酵素も全細胞から単離し、触媒として直接使用することができ、または触媒は、ポリマーマトリックスもしくは不溶性支持体に固定化されうる。細胞の固定化または単離酵素のための方法は広く報告されており、当業者に公知である(非特許文献12)。A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ触媒の固定化は以前に報告されている(米国特許公報(特許文献25))。
水性反応混合物における酵素触媒の濃度は酵素触媒の特定の活性に依存し、反応の所望の速度を得るために選択される。加水分解反応における触媒として使用される微生物細胞の湿細胞重量は一般的に総反応体積のmL当り0.001グラム〜0.250グラムの湿細胞、好ましくは、mL当り0.002グラム〜0.050グラムの湿細胞である。
加水分解反応の温度は、反応速度および酵素触媒活性の安定性を制御するために選択される。反応の温度は、反応混合物の凝固点よりわずかに上(およそ0℃)〜約65℃でありうるが、好ましい反応温度の範囲は約5℃〜約35℃である。微生物細胞触媒懸濁液は、蒸留水中、または約5.0〜約10.0、好ましくは、約5.5〜約8.0、より好ましくは、約5.5〜約7.7、かつ最も好ましくは、約6.0〜約7.7の反応の初期pHを維持する緩衝液の水溶液中で細胞を懸濁することによって調製されうる。反応の進行とともに、反応混合物のpHは、対応するニトリル官能性からカルボン酸のアンモニウム塩の形成により変化しうる。反応は、pH制御なしにグリコロニトリルの変換を完了するために実行することができ、または適切な酸または塩基を反応の経過中に添加し、所望のpHを維持することができる。
グリコロニトリルは25℃下にすべての部分において水と完全に混和性であることがわかった。基質(すなわち、α−ヒドロキシニトリル)の可溶性も水相において溶液の温度および/または塩濃度(緩衝液またはグリコール酸アンモニウムとしても周知の生成物グリコール酸アンモニウム塩)に依存するよう反応条件が選ばれる場合、反応混合物は最初に2相から成りうる。すなわち、酵素触媒および溶解α−ヒドロキシニトリルを含有する水相、および有機相(非溶解α−ヒドロキシニトリル)。反応が進行すると、α−ヒドロキシニトリルは水相に溶解し、最終的に単一相の生成物混合物が得られる。反応は、酵素加水分解反応速度とほぼ同等の速度で反応混合物にα−ヒドロキシニトリルを添加することによって実行し、それによって単一相の水性反応混合物を維持し、高い開始材料濃度で酵素の基質阻害という潜在的な問題を回避することができる。
グリコール酸はプロトン化したカルボン酸および/またはその対応するアンモニウム塩の混合物として生成物混合物において存在し(生成物混合物のpHに依存)、また生成物混合物に存在しうる緩衝液とともにカルボン酸の塩として存在しうる。グリコール酸生成物は、プロトン化したカルボン酸として、または、必要に応じて、カルボン酸の塩として、反応混合物から単離されうる。
グリコロニトリルの完全変換時の生成物混合物におけるグリコール酸の最終濃度は、0.001Mからグリコール酸生成物の溶解限度までの範囲でありうる。1つの実施形態において、グリコール酸の濃度は、約0.10M〜約9.0Mとなる。別の実施形態において、グリコール酸の濃度は約0.2M〜約4.0Mとなる。グリコール酸は、反応混合物のpHを濃縮塩酸または硫酸などの適切な鉱酸で約1.0〜約3.0に調節し、適切な有機溶媒でグリコール酸を抽出することによって(触媒の除去後)生成物混合物から単離されうる。1つの実施形態において、適切な有機溶媒は、Alamine(登録商標)336(アルキル基が長さC8〜C10である第3アルキルアミン、コグニス社(Cognis Corp.)、オハイオ州シンチナティ(Cincinnati、OH))のメチルイソブチルケトン、1−オクタノール、1−デカノール、トルエン、キシレン(混合)、ケロシン、メチルt−ブチルエーテル、エチルエーテル、およびジクロロメタンからなる群から選択される1つまたは複数の希釈剤との混合物である(参照により本明細書で援用される(同時係属の(特許文献30)を参照)。グリコール酸は水を使用して有機溶媒から逆抽出されうる。
1つの実施形態において、有機抽出物は塩化ナトリウムで飽和され、適切な乾燥剤(例えば、硫酸マグネシウム)と接触され、ろ過され、溶媒は除去され(例えば、回転蒸発によって)高収量および高純度(一般的に純度98.99%)で所望の生成物が生じる。必要に応じて、生成物はさらに結晶化または蒸留によって精製されうる。
別の実施形態において、グリコール酸は、直接脱アンモニアおよび/または濃縮、結晶化、反応性溶媒抽出、イオン交換、電気透析、解糖、重合、蒸留、熱分解(塩クラッキング)、アルコール分解、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない他の精製方法を使用してグリコール酸アンモニウムから直接単離されうる(各出願が参照により全体として本明細書で援用される(同時係属の(特許文献31)および同時係属の(特許文献32))。
(微生物発現)
本ニトリラーゼ変異は、異種宿主細胞、好ましくは、微生物宿主において製造されうる。本発明において特に有用となるのは、大規模な発酵方法に容易に適合される細胞である。かかる微生物は工業的バイオプロセスの当技術分野で公知であり、その例は、(非特許文献13)において確認することができ、発酵性細菌のほか酵母および糸状菌を含む。宿主細胞としては、コマモナス(Comamonas)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、アゾトバクター(Azotobacter)種、シトロバクター(Citrobacter)種、エンテロバクター(Enterobacter)種、クロストリジウム(Clostridium)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、サルモネラ(Salmonella)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、サッカロミセス(Saccharomyces)種、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)種、ピチア(Pichia)種、クルイベロミセス(Kluyveromyces)種、カンジダ(Candida)種、ハンセニュウラ(Hansenula)種、デュナリエラ(Dunaliella)種、デバリオミセス(Debaryomyces)種、ケカビ(Mucor)種、トルロプシス(Torulopsis)種、メチロバクテリア(Methylobacteria)種、バチルス(Bacillus)種、エシェリキア(Escherichia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、リゾビウム(Rhizobium)種、およびストレプトミセス(Streptomyces)種が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいのは、大腸菌(E.coli)である。変異ニトリラーゼ遺伝子が発現されうる適切な大腸菌(E.coli)宿主細胞の例としては、本明細書に規定されている宿主細胞、およびMG1655(ATCC47076)、FM5(ATCC53911)、W3110(ATCC27325)、MC4100(ATCC35695)、W1485(ATCC12435)、およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。別の態様において、好ましい大腸菌(E.coli)宿主株は、MG1655(ATCC47076)またはFM5(ATCC53911)である。
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの異種発現は以前に報告されている(チャーハン(Chauhan)ら、上記、および米国特許公報(特許文献25))。チャーハン(Chauhan)らは、活性A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号38)を発現する大腸菌(E.coli)株(大腸菌(E.coli) SS1001(ATCCPTA−1177))を報告している。組換え発現(大腸菌(E.coli)SS1001)ニトリラーゼのコード配列は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号5および6)と比べ2つの小さな配列変化を含んだ。開始コドンはGTGからATGに変化し、組換え発現を促進し、クローニング中にアーチファクトが導入され、結果としてC末端の近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
産業上適切な宿主における組換え発現はいくつかの利点を有する。第一に、一般的に使用される生産宿主の多くのための遺伝子ツールボックスは通常、目的の遺伝子が得られた微生物の多くのために利用可能な遺伝子ツールボックスと比べ十分に開発されている。これらの宿主における組換え発現は通常、天然宿主における発現よりも費用効果がある。例えば、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ細胞は、発酵によって増殖される場合、比較的高価な炭素基質であるグリセロール上で増殖し、安価なグルコースを使用して有効に増殖しないことが証明されている。対照的に、大腸菌(E.coli)形質転換体は、約半分の時間でA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ細胞と同一の細胞密度にグルコース上で増殖し、バイオ触媒製造費用を大幅に削減しうる(米国特許公報(特許文献25))。
外来タンパク質の高レベルの発現を方向づける調節塩基配列を含有する微生物発現システムおよび発現ベクターが当業者に公知である。これらを使用し、本変異ニトリラーゼの遺伝子産物の生成ためのキメラ遺伝子を構成しうる。次いで、これらのキメラ遺伝子は、形質転換によって適切な微生物へ導入され、変異ニトリラーゼ酵素の高レベルの発現を提供しうる。本発明の核酸分子は、天然A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼのものに対して増強または変化したニトリラーゼ活性レベルを有する遺伝子産物を生成するために使用される。1つの態様において、本変異遺伝子によってコードされるポリペプチドは、グリコロニトリルをグリコール酸に変換するためにニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の改善(配列番号6によって表されるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの活性と比べ)を提供する。
キメラ遺伝子は宿主細胞の特性の変更において有効となる。例えば、適切なプロモーターの制御下に本ニトリラーゼをコードするキメラ遺伝子の少なくとも1つのコピーを宿主細胞に導入することにより、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する改善された能力が宿主細胞に与えられる。本発明のキメラ遺伝子は、本変異ニトリラーゼ配列の遺伝子発現を推進するために有用な適切な調節塩基配列を含む。調節塩基配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、およびリボソーム結合部位を含むであろうが、これらに限定されない。これらの配列が宿主生物由来であれば好ましく、しかし、当業者は、異種調節塩基配列も使用されうることを理解するであろう。
キメラ遺伝子は、それを適切な発現ベクターにクローニングすることによって適切な宿主へ導入されうる。適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットが当技術分野で公知である。一般的に、ベクターまたはカセットは関連遺伝子の転写および翻訳を方向づける配列、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体の組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始制御を有するコード配列の領域5’および転写終結を制御するDNA断片の領域3’を含む。両方の制御領域が宿主細胞と同種の遺伝子由来であることが最も好ましいが、かかる制御領域が生産宿主として選択される特定の種原産の遺伝子由来である必要はない。
1つの実施形態において、調節塩基配列はプロモーターを含む。プロモーターは構成的または誘導的でありうる。誘導的プロモーターは一般に特定の刺激物(例えば、lacプロモーターを含むIPTGまたは乳糖)に反応する。誘導的プロモーターは、2−3例を挙げると、化学薬品、増殖サイクル、温度の変化、pHの変化、およびオスモル濃度の変化を含む、さまざまな刺激物に反応しうる。
所望の宿主細胞における本変異ニトリラーゼの発現を推進するために有用である開始制御領域またはプロモーターは無数であり、当業者に周知であるが、それらには、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス(Saccharomyces)の発現に有用)、AOX1(ピチア(Pichia)の発現に有用)、およびlac、trp、lPL、lPR、T7、tac、PBAD、npr、およびtrc(特に大腸菌(Escherichia coli)の発現に有用)が含まれるが、これらに限定されない。大腸菌(E.coli)における発現を推進するために特に有用なプロモーターの追加の例としては、大腸菌(E.coli)のトリプトファンオペロンプロモーターPtrp、大腸菌(E.coli)の乳糖オペロンプロモーターPlac、大腸菌(E.coli)のPtacプロモーター、ラムダファージライトプロモーターPR、ラムダファージレフトプロモーターPL、T7プロモーター、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)からのGAP遺伝子のプロモーター、またはコマモナス(Comamonas)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、アゾトバクター(Azotobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アスペルギルス(Aspergillus)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、チゴミセス(Zygosaccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンセニュウラ(Hansenula)、デュナリエラ(Dunaliella)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ケカビ(Mucor)、トルロプシス(Torulopsis)、メチロバクテリア(Methylobacteria)、バチルス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、リゾビウム(Rhizobium)、およびストレプトミセス(Streptomyces)からなる群から選択される微生物の群から単離される少なくとも1つのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
終結制御領域は、好ましい宿主原産のさまざまな遺伝子由来でもありうる。場合により、終結部位は不必要でありうるが、しかし、含まれることが最も好ましい。
また、挿入遺伝物質は、リボソーム結合部位を含みうる。リボソーム結合部位はラムダファージCII遺伝子由来でよく、またはコマモナス(Comamonas)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、アゾトバクター(Azotobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アスペルギルス(Aspergillus)、サッカロミセス(Saccharomyces)、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、ピチア(Pichia)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンセニュウラ(Hansenula)、デュナリエラ(Dunaliella)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ケカビ(Mucor)、トルロプシス(Torulopsis)、メチロバクテリア(Methylobacteria)、バチルス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、リゾビウム(Rhizobium)、およびストレプトミセス(Streptomyces)の遺伝子由来のリボソーム結合部位からなる群から選択される。
場合により、遺伝子産物は、好ましくは、形質転換宿主の分泌生成物でありうる。所望のタンパク質の増殖培地への分泌は、精製手順を簡易化し、費用を削減する。分泌シグナル配列はしばしば細胞膜上の発現可能なタンパク質の活性輸送の促進に有用である。分泌が可能な形質転換宿主は、分泌シグナルをコードするDNA配列の宿主に組込むことによってもたらされうる。適切なシグナル配列を選択する方法が当技術分野で公知である(例えば、(特許文献33)、(特許文献34)を参照)。分泌シグナルDNAは発現制御DNAとそのコード配列またはコード配列断片との間、および後者を有するリーディングフレームに位置しうる。
(タンパク質工学)
本変異ニトリラーゼを突然変異誘発によって製造した。本ヌクレオチドを使用し、さらに強化または変化した活性を有する遺伝子産物を製造しうることが考えられる。1)ランダム突然変異誘発、2)ドメインスワッピング(ジンクフィンガードメインまたは制限酵素を使用)、3)変異性PCR(非特許文献14)、4)部位特異的突然変異誘発(非特許文献15)、および5)「遺伝子シャフリング」(参照により本明細書で援用される、米国特許公報(特許文献35)、米国特許公報(特許文献36)、米国特許公報(特許文献37)、および米国特許公報(特許文献38)を含むが、これらに限定されない活性の変化および強化を有する遺伝子産物を製造する天然遺伝子配列を変異させるためのさまざまな方法が周知である。
ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を使用し、ヌクレオチドのmis取り込みによって多数の突然変異の同時作成によりDNA断片を増幅することができる。これはdNTPの比率の変化または反応におけるさまざまな量の塩化マンガンの添加などのPCR条件の変更によって達成されうる((非特許文献16)、(非特許文献17))。次いで、突然変異DNA断片のプールをクローン化し、突然変異プラスミドのライブラリーをもたらし、次いでこれらは大腸菌(E.coli)などの宿主における発現後にスクリーニングされうる。
遺伝子シャフリングの方法は、その容易な実施、突然変異誘発の高い速度、スクリーニングの容易さにより特に魅力的である。遺伝子シャフリングの方法は、目的の遺伝子との類似性および/または相違を有する追加のDNA部位の集団の存在下に特定のサイズの断片への目的の遺伝子の制限酵素切断を含む。次いで、この断片のプールは変性および再アニールされ、突然変異遺伝子をもたらす。次いで、突然変異遺伝子は活性の変化についてスクリーニングされる。
本微生物配列はさらに変異され、本方法による活性の変化または強化についてスクリーニングされうる。配列は二本鎖であり、50bp〜10kBの範囲のさまざまな長さでありうる。配列はランダムに、当該技術分野で公知の制限酵素を使用して約10bp〜1000bpの範囲の断片に消化されうる(非特許文献18)(以後「マニアチス(Maniatis)」)。本配列に加えて、本配列の全部または部分にハイブリダイズ可能である断片の集団を添加することができる。同様に、本配列にハイブリダイズ可能ではない断片の集団をも添加することができる。一般的に、これらの追加の断片の集団は、総核酸と比べ重量で約10〜約20倍過剰に添加される。一般に、本方法が行われる場合は、混合物中の異なる特定の核酸断片の数は約100〜約1000となる。ランダム核酸断片の混合集団は変性し、一本鎖核酸断片を形成し、次いで再アニールされる。他の一本鎖核酸断片と相同性の部位を有する一本鎖核酸断片のみが再アニールする。ランダム核酸断片は加熱によって変性されうる。当業者は、二本鎖核酸を完全に変性するのに必要な条件を決定しうる。好ましくは、温度は、約80℃〜100℃である。核酸断片は冷却によって再アニールされうる。好ましくは、温度は約20℃〜約75℃である。再生はポリエチレングリコール(「PEG」)または塩の添加によって加速されうる。適切な塩濃度は0mM〜約200mMでありうる。次いで、アニールされた核酸断片は、核酸ポリメラーゼおよび各dNTP(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP)の存在下にインキュベートされる。核酸ポリメラーゼはクレノウ(Klenow)断片、Taqポリマー、または当該技術分野で周知の他のDNAポリメラーゼでありうる。ポリメラーゼはアニーリング前に、アニーリングと同時に、またはアニーリング後にランダム核酸断片に添加されうる。ポリメラーゼの存在下の変性、再生、およびインキュベーションのサイクルは所望の回数反復される。好ましくは、サイクルは約2〜約50回反復され、より好ましくは、配列は10〜約40回反復される。結果として生じる核酸は、約50bp〜約100kBの大きな二本鎖ポリヌクレオチドであり、標準のクローニングおよび発現プロトコールによる発現および活性の変化についてスクリーニングされうる(マニアチス(Maniatis)、上記)。
さらに、ハイブリッドタンパク質は遺伝子シャフリング(エクソンシャフリング)法を使用する機能的ドメインの融合によってアセンブリされうる(非特許文献19)。本遺伝子の機能的ドメインは、他の遺伝子の機能的ドメインと結合し、所望の触媒機能を有する新規の酵素をもたらしうる。ハイブリッド酵素がPCRオーバーラップ伸長法を使用して構成され、当業者に公知の方法を使用してさまざまな発現ベクターへクローン化されうる。
(グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合のニトリラーゼの安定性および生産性を改善する安定化剤)
グリコロニトリルはホルムアルデヒドをシアン化水素と反応させることによって合成されうる(米国特許公報(特許文献39)、米国特許公報(特許文献40)、米国特許公報(特許文献41)、および米国特許公報(特許文献42))。反応物質の純度およびグリコロニトリルを製造するために使用される反応条件によって、さまざまな不純物が最終生成物に存在しうる。これらの不純物は、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する効率を阻害しうる。1つの実施形態において、グリコロニトリル水溶液は、酵素的にグリコール酸に変換される前に望ましくない不純物を除去するために処理されうる。
酵素触媒の安定性/生産性を増大させる別の方法が、触媒安定性および/または生産性を阻害しうるグリコロニトリル溶液における望ましくない化合物と反応する1つまたは複数の化合物の添加である。望ましくない化合物としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド由来不純物、ホルムアルデヒド由来オリゴマーおよびポリマー、グリコールアミド、グリコールアミド由来不純物、シアン化水素由来不純物、シアン化水素由来オリゴマーおよびポリマー、グリコロニトリル由来不純物、グリコロニトリル由来オリゴマーおよびポリマー、グリコリド、グリコール酸の線状オリゴマー、およびたぶん酸素(実質的に酸素を含まない条件下で行われた反応は触媒安定性を改善した)が挙げられるが、これらに限定されない。望ましくない化合物は、1)ニトリラーゼ触媒と反応し、これを不活性化し、2)反応においてグリコロニトリルと競合し、3)グリコロニトリルまたはグリコール酸と反応し、望ましくない副産物を形成し、または4)組換え宿主細胞に有害な影響を及ぼす(すなわち、細胞溶解を促進する)ものも含まれうる。グリコロニトリル反応混合物に添加されうる適切な化合物の例は、チオ硫酸(例えば、カリウムチオ硫酸、K223)、亜ジチオン酸(例えば、ナトリウム亜ジチオン酸、Na224)、およびシアン化物化合物(例えば、HCN、NaCN、KCN等)を含みうるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、化合物は、酵素触媒の添加前、添加中、または添加後にグリコロニトリル反応混合物に添加される。別の実施形態において、反応混合物における最終濃度が反応混合物の少なくとも約0.001M〜約5wt%未満になるように化合物が反応混合物に添加される。さらなる実施形態において、最終濃度が少なくとも約0.01Mになるように化合物は反応混合物に添加される。さらに別の実施形態において、化合物の最終濃度が約0.01M〜約1Mになるように化合物は反応混合物に添加される。
本発明のさらなる態様において、本方法は実質的に酸素を含まない条件下で行われる。本明細書で使用される「酸素を含まない条件」、「酸素を含まない雰囲気」、および「実質的に酸素を含まない条件」という語は、窒素などの非反応性気体を使用し、反応管をパージおよび/またはブランケットし、酸素分子(O2)が本方法中に存在しないようにすることを指す。当業者は、微量の酸素分子が実質的に酸素を含まない条件下で存在しうることを認める。1つの態様において、「実質的に酸素を含まない」という語は、酸素分子濃度が反応管における気体の約5%未満、好ましくは、2%未満、より好ましくは、1%未満、かつ最も好ましくは、0.1%未満である反応条件である。別の態様において、本方法は、窒素(N2)を使用し、反応管における水性反応混合物をブランケットする実質的に酸素を含まない条件下で行われる。
(触媒安定性および生産性を改善するグリコロニトリル濃度の制御)
ニトリラーゼ安定性を増大させる別の方法は、水性反応混合物におけるグリコロニトリルの最大濃度の制御である。以前に記載された通り、グリコロニトリルは極性溶媒で分解し、ホルムアルデヒドおよびシアン化水素を放出する。反応混合物におけるホルムアルデヒドは酵素触媒と反応し、早すぎる不活性化、および触媒生産性の減少をもたらす。溶液中のグリコロニトリルの濃度の制御は、触媒安定性および触媒の生産性(触媒のグラム当りで製造されるグリコール酸のグラム)を増大させうる。実施例12−15に示されているように(表9)、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W由来のニトリラーゼ触媒は、わずか3つのリサイクル反応後に3Mグリコロニトリルを含有する反応におけるその活性を迅速に喪失する。濃度を1Mに減少させ、および/または1M増分で3Mグリコロニトリルの段階的な添加(以前のグリコロニトリルの添加がグリコール酸アンモニウムに変換された後添加される)は、触媒生産性を大幅に増加させる(表9)。1つの実施形態において、グリコロニトリルの水性反応混合物への段階的な添加(アリコート)が触媒の生産性を増加させる。別の実施形態において、グリコロニトリルは段階的に水性反応混合物に添加され、グリコロニトリルの総濃度は反応中に約1M以下のままである。
実施例15に示されているように、グリコロニトリルの連続的添加によっても数リサイクルの反応にわたって触媒生産性が増加する。1つの実施形態において、グリコロニトリルからグリコール酸アンモニウムを製造する方法ではグリコロニトリルの連続的添加が使用される。別の実施形態において、グリコロニトリルの添加速度は、触媒のKmの少なくとも5倍である。本触媒は一般的におよそ1mM(野生型A.ファシリス(facilis)72W、配列番号6)〜約2.7mMのグリコロニトリルに対するKmを有する。当技術分野で周知の通り、Km値のおよそ5倍の基質濃度(すなわち、5×2.7mM=13.5mM)は結果として、最大反応速度(Vmax)のおよそ97%である反応速度をもたらす。さらに別の実施形態において、グリコロニトリル供給速度は、反応混合物におけるグリコロニトリル濃度が約5mM〜約1M、好ましくは、約100mM〜約1M、より好ましくは、約100mM〜約500mMを維持するように制御される。
(pHの制御)
本発明のニトリラーゼ触媒を使用する反応は一般的に約5〜約10、好ましくは、5.5〜約8、より好ましくは、約5.5〜約7.7、かつ最も好ましくは、約6〜約7.7のpHで実行される。
(グリコール酸およびグリコロニトリルの分析)
グリコール酸の生成を分析するために適切な分析方法は当該技術分野で公知であり、HPLC、CE、GC、およびMSを含むが、これらに限定されない。例えば、HPLC分析を使用し、屈折率検出器およびBio−Rad HPX−87Hカラム(30cm×直径7.8mm)および50℃下に移動相として1.0mL/分(等張)で0.01N硫酸を使用してグリコール酸生産量を測定した。HPLC方法は基質(グリコロニトリル)および生成物(グリコール酸)の両方の定量化に適切であった。
(微生物触媒の工業的製造)
本変異ニトリラーゼ遺伝子を使用する本ニトリラーゼの商業的製造が望ましい場合、さまざまな培養方法が使用されうる。一連の発酵は、バッチ、フェドバッチ、または連続的様式、当技術分野で公知の方法で実行されうる((非特許文献20)、(非特許文献21))。
代表的なバッチ培養方法は、培地の組成物が培養の開始時に設定され、培養方法中に人工的な変更にさらされない閉鎖システムである。したがって、培養方法の開始時に、培地には所望の微生物を接種し、増殖および代謝活性がシステムに何も添加せずに起こることを可能にする。しかし、一般的に、「バッチ」培養は炭素源の添加に関してバッチであり、しばしばpHおよび酸素濃度などの因子を制御する試みが行われる。バッチシステムにおいて、システムの代謝産物およびバイオマス組成物は培養が終了するまで一定に変化する。バッチ内では培養細胞は静止遅滞期から高い増殖対数期に、かつ最終的に静止期に抑制し、ここで増殖速度は減少または停止する。未処置の場合、静止期の細胞は最終的に死滅する。対数期における細胞はしばしば最終生成物の製造のバルクに関与し、一部のシステムにおいて介在する。静止または後対数期生産は他のシステムで得ることができる。
標準バッチシステムでの変形物はフェドバッチシステムである。フェドバッチ培養方法も本発明において適切であり、基質が培養の進行とともに除々に添加されることを除き典型的なバッチシステムを含む。フェドバッチシステムは、カタボライトリプレッションが細胞の代謝を阻害する傾向があり、かつ培地において限定された量の基質を有することが望ましい場合に有用である。フェドバッチシステムにおける実際の基質濃度の測定は困難であり、したがって、pH、溶解酸素、およびCO2など排ガスの分圧など測定可能な因子の変化に基づき推定される。バッチおよびフェドバッチ培養方法が一般的であり、かつ当技術分野では周知であり、例はブロック(Brock)(上記)およびデスパンデ(Deshpande)(上記)で確認されうる。
本ニトリラーゼ触媒の商業的製造は連続的培養によっても達成されうる。連続的培養は開放システムであり、ここでは規定の培養培地が連続的にバイオ反応器に供給され、等量の馴化培地がプロセッシングのため同時に除去される。連続的培養は一般に一定の高い液相密度で細胞を維持するが、ここで細胞は主に対数期増殖にある。あるいは、連続的培養は、固定化細胞で実施されうるが、ここで炭素および栄養は連続的に添加され、有益な生成物、副産物、または廃棄物が連続的に細胞塊から除去される。細胞固定化は、天然および/または合成材料からなる広範囲の固体支持体を使用して実行されうる。
連続的または半連続的培養は、細胞増殖または最終細胞濃度に影響を及ぼす1つの因子または多くの因子の調節を可能にする。例えば、1つの方法は、炭素源また窒素レベルなど制限栄養を固定速度で維持し、他のすべてのパラメータの抑制を可能にする。他のシステムにおいて、増殖に影響を及ぼす多くの因子が連続的変更されうると同時に、培地濁度によって測定される細胞濃度が一定に保持される。連続的システムは、定常増殖条件の維持をめざし、したがって除去される培地による細胞消失は培養における細胞増殖速度に対してバランスをとる必要がある。連続的培養方法のために栄養および増殖因子を調節する方法、および細胞形成の速度を最大限にするための方法は、工業微生物学の当技術分野で公知であり、さまざまな方法がブロック(Brock)(上記)によって詳述されている。
本発明における発酵培地は適切な炭素基質を含有していなければならない。適切な基質は、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類、乳糖またはショ糖などの二糖類、でんぷんもしくはセルロースまたはそれの混合物などの多糖類、およびチーズホエー液、コーンスティープリカー、ビート糖蜜、および大麦モルトなど再生可能な原料からの非精製混合物を含みうるが、これらに限定されない。したがって、本発明において使用される炭素源は基質を含有する幅広い炭素を包含し、微生物の選択によってのみ限定されることが意図されている。
(グリコール酸アンモニウムからグリコール酸を回収する方法)
対応するアンモニウム塩から有機酸を回収および/または得る方法は当該技術分野で周知である。グリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を回収および/または得る方法としては、イオン交換(陰イオンおよび/または陽イオン)、電気透析、反応性溶媒抽出、熱分解、アルコール分解(エステル化の後、グリコール酸エステルのグリコール酸への加水分解)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
(イオン交換(陽イオン))
陽イオン交換は、溶解イオン種が化学量論的に固体によって吸収される可逆性の方法である。陽イオン交換は当技術分野で公知である。本方法において、グリコール酸アンモニウムは陽イオン交換樹脂に供給されるが、そこでアンモニウムイオンは陽子と交換され、グリコール酸を形成する(実施例28を参照)。グリコール酸はカラムを通過し、収集される。
樹脂がアンモニウムイオンで飽和されると、酸、例えば、硫酸による再生により副産物である硫酸アンモニウム塩が生じる。陽イオン交換は、刺激移動床またはカルーセルを使用してバッチ中に実行されうる((非特許文献22)、以後「Perry’s」を参照)。樹脂の選択は供給濃度に影響を及ぼしうるが、これは約0.02wt%〜約50wt%グリコール酸アンモニウム、好ましくは、約0.02wt%〜約40wt%でありうる。使用される再生酸は一般的に約0.5wt%〜約20wt%である。
(イオン交換(陰イオン))
陰イオン交換も当技術分野で公知である。陰イオン交換は、弱陰イオン樹脂が使用されることを除き陽イオン交換と同様である((非特許文献22)を参照)。前と同様、樹脂の選択は供給濃度に影響を及ぼしうるが、これは約0.02wt%〜約90wt%グリコール酸アンモニウム、好ましくは、約0.02wt%〜約40wt%でありうる。樹脂の再生では一般的に弱酸が使用される。
(溶媒抽出(反応性))
カルボン酸を単離するために使用されている1つの方法が反応性抽出である。この方法は、乳酸アンモニウムから乳酸を抽出するために有用であることが報告されている((非特許文献23))。反応性抽出は、水相で酸と複合体を形成する反応性有機溶媒(すなわち、アミン)の使用を含む。この方法における第1のステップは一般的に所望の酸の塩を含有する水溶液の酸性化を含む。次いで、酸性化水溶液は、一般的に反応性第3アミンおよび1つまたは複数の希釈剤からなる有機溶媒と接触する。反応性アミン(一般的に、Alamine(登録商標)336、コグニス社(Cognis Corp)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati、OH)など第3C8−C10トリアルキルアミン)は、有機相で優先的に可溶性である酸/アミン錯体を形成するカルボン酸と反応する((非特許文献24)、(非特許文献25))。第3アルキルアミンの使用は一般的に、通常の溶媒抽出物で得られるであろうものより高い分配係数を提供する。次いで、逆抽出を使用し、有機相から酸を回収する。
((非特許文献26)、(非特許文献27))は、グリコール酸の抽出のために反応性アミン溶媒の使用を報告している。しかし、これらの実験では、純水中に溶解した純粋なグリコール酸の抽出係数が報告された。インシ(Inci)は、濃縮水性グリコール酸アンモニウムなど、複合水性マトリックス(例えば、大量の鉱塩および他の不純物を含むグリコール酸の水溶液)からグリコール酸を得る方法を説明または教示していない。
反応性溶媒抽出を使用し、グリコール酸アンモニウムの水溶液からグリコール酸を得ることもできる(例えば、同時係属中の米国仮特許出願第60/638,128号明細書、参照により本明細書で援用される、を参照)。より具体的には、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を単離する方法が提供されるが、この方法は、
a)第1の相を提供するステップであって、前記第1の相が、
i)前記第1の相の約30体積パーセント〜約99体積パーセントが、式
Figure 2008525030
[式中、R1、R2、およびR3は独立してC8〜C12アルキル基である。]を有する少なくとも1つの第3アルキルアミンであり、かつ
ii)前記第1の相の約1体積パーセント〜約70体積パーセントが、メチルイソブチルケトン、1−オクタノール、1−デカノール、塩化メチレン、1−クロロブタン、クロロベンゼン、クロロホルム、ケロシン、トルエン、混合キシレン、トリブチルリン酸、およびそれの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの希釈剤である
を含む水不混和有機混合物であるステップと、
b)第2の相を提供するステップであって、前記第2の相が、約3以下のpHを有するグリコール酸を含む水溶液であり、前記第2の相が、
i)グリコール酸アンモニウムの水溶液を提供する方法であって、前記グリコール酸アンモニウムの水溶液が約5重量%〜約40重量%の濃度のグリコール酸アンモニウムを有する方法と、
ii)(b)(i)のグリコール酸アンモニウム水溶液のpHを約3以下に低下させるのに十分な量の鉱酸を添加し、それによってグリコール酸を含む水溶液が形成される方法と
によって形成されるステップと、
c)前記第1の相を反応性抽出方法で前記第2の相と接触させ、それによってグリコール酸充填第1の相を形成するステップと、
d)前記グリコール酸充填第1の相を単離するステップと、
e)前記グリコール酸充填第1の相を逆抽出方法で第3の相と接触させ、それによってグリコール酸充填第1の相のグリコール酸が前記第3の相へ抽出されるステップであって、前記第3の相が前記グリコール酸充填第1の相で非混合性であるステップと、
f)前記第3の相からグリコール酸を回収するステップと
を含む。
1つの実施形態において、第3トリアルキルアミンは、トリ−n−オクチルアミン、トリ−イソオクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、およびトリ−n−ドデシルアミンからなる群から選択される。別の実施形態において、第3トリアルキルアミンは、Alamine(登録商標)308(CAS#2757−28−0)、Alamine(登録商標)300(CAS#1116−76−3)、Alamine(登録商標)304−1(CAS#102−87−4)、およびAlamine(登録商標)336(CAS#68814−95−9)(コグニス社(Cognis Corp.)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati、OH)からなる群から選択される。さらなる実施形態において、希釈剤は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ケロシン、トルエン、混合キシレン、1−オクタノール、およびそれの混合物からなる群から選択される。さらに別の実施形態において、水非混合性有機溶媒は、90%(vol/vol)Alamine(登録商標)336:10%(vol/vol)MIBK、90%Alamine(登録商標)336:10%1−オクタノール、90%Alamine(登録商標)336:10%トルエン、および90%Alamine(登録商標)336:10%混合キシレンからなる群から選択される。
第1の相の第3トリアルキルアミンの濃度は、約30パーセント(vol/vol)〜約99パーセント(vol/vol)、好ましくは、約50パーセント(vol/vol)〜約90パーセント(vol/vol)、かつ最も好ましくは、約70パーセント(vol/vol)〜約90パーセント(vol/vol)でありうる。第1の相の希釈剤の量は、約1パーセント(vol/vol)〜約70パーセント(vol/vol)、好ましくは、約10パーセント〜約50パーセント、かつ最も好ましくは、約10〜約30パーセントでありうる。
グリコール酸を抽出するための適切な有機抽出混合物は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、1−オクタノール、1−デカノール、塩化メチレン、1−クロロブタン、クロロベンゼン、クロロホルム、ケロシン、トルエン、混合キシレン、およびトリブチルリン酸からなる群から選択される1つまたは複数の希釈剤とAlamine(登録商標)336との混合物からなる。1つの実施形態において、有機相抽出物は、MIBK、1−オクタノール、トルエン、キシレン、およびケロシンからなる群から選択される1つまたは複数の希釈剤と組合せたAlamine336からなる。別の実施形態において、反応性有機溶媒は、約50%〜約95%Alamine(登録商標)336、好ましくは、約65%〜約95%oの有機溶媒混合物からなる。有機溶媒は、約50%〜約5%希釈剤、好ましくは、35%〜約5%の有機溶媒混合物での1つまたは複数の希釈剤からなる。1つの実施形態において、混合有機溶媒は、約70%Alamine(登録商標)336、約10%MIBK、および約20%ケロシンからなる。別の実施形態において、混合有機溶媒は、約90%アラミン(Alamine)(登録商標)336、およびMIBK、1−オクタノール、トルエン、およびキシレンからなる群から選択される約10%希釈剤からなる。
当業者は、有機相の好ましい温度を決定することができる。1つの実施形態において、抽出反応は、約10℃〜約90℃、より好ましくは、約20℃〜約75℃、かつ最も好ましくは、約25℃〜約75℃の温度下に行われる。
酸性化水相からグリコール酸を抽出するために必要とされる混合有機溶媒の量は溶媒充填の程度に依存する。当業者は、水相に存在するグリコール酸の量に依存するグリコール酸を抽出するために使用される混合有機溶媒の体積を調節することができる。グリコール酸は逆抽出によって有機相から回収されうる。
グリコール酸アンモニウムからグリコール酸を得る別の方法が、エステル化剤の存在下での熱分解である。溶媒は、反応性アンモニアからグリコール酸を保護する(それによってアミド形成を阻止する)ことによって作用し、または有機反応性抽出溶媒として作用し、それによって酸の分離に役立ちうる(米国特許公報(特許文献43)、参照により全体として本明細書で援用される)。場合により、この方法は、アルコールをも含みうるが、それによってエステル(有機溶媒中でより可溶性でありうる)をもたらす。有機溶媒は、第3アルキルアミン、アルコール、アミド、エーテル、ケトン、リンエステル、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、アルキルスルフィド、およびそれらの組合せからなる群から選択されうる。次いで、グリコール酸(または対応するエステル)は、逆抽出ステップ中に有機溶媒(液相)から回収される。回収溶媒は塩分割反応ステップにリサイクルされうる。残念ながら、溶媒抽出/逆抽出は、さまざまな非混合性液体が分離することが困難である複雑な物理的混合物を形成するため問題が生じうる。
(アルコール分解(エステル化))
グリコール酸アンモニウムをアルコールと反応させ、対応するグリコール酸エステルを形成することができる。エステル結合の加水分解によってグリコール酸エステルをグリコール酸および対応するアルコールへ変換させることができる。加水分解は化学的または酵素的に(すなわち、エステラーゼ、プロテアーゼ等の使用)達成されうる。カルボン酸エステルを加水分解する方法は当該技術分野で公知である(参照により本明細書で援用される、(非特許文献28)、および米国特許公報(特許文献44)を参照)。
例えば、コックレム(Cockrem)(米国特許公報(特許文献45))は、酸、エステル、および未反応アンモニウム塩を含有する液体流れを製造するアルコールとの有機酸のアンモニウム塩の混合物の迅速な加熱を開示している。有機酸および/またはエステルはその後に液体生成物流れから単離されうる。
あるいは、同時係属の(特許文献32)は、
(a)(i)グリコール酸アンモニウムを含む水溶液と、
(ii)式
2−OH
[式中、R2はC1〜C4直鎖または分岐アルキル基である。]を有するアルコールを含む加熱アルコール蒸気供給流れと、
(iii)反応管と、を提供するステップと、
(b)グリコール酸アンモニウムを含む前記水溶液を前記反応管における前記加熱アルコール蒸気供給流れと接触させ、それによってグリコール酸エステルを含む第1の蒸気生成物流れが生成されるステップと、
(c)前記第1の蒸気生成物流れからグリコール酸エステルを回収するステップと、
を含むグリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を得る方法を提供している。
グリコール酸エステルは、エステル結合の加水分解によってグリコール酸および対応するアルコールへ変換されうる。加水分解は化学的または酵素的に(すなわち、エステラーゼ、プロテアーゼ等の使用)達成されうる。カルボン酸エステルを加水分解する方法は当該技術分野で公知である(参照により本明細書で援用される、(非特許文献28)および米国特許公報(特許文献44)を参照)。
1つの実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、およびt−ブタノールからなる群から選択される。好ましい実施形態において、アルコールはメタノールである。
カルボン酸アンモニウム塩と接触した加熱アルコール蒸気の量は、一般的に水性供給流れにおいてカルボン酸塩アンモニウムに対してモル過剰にある。加熱アルコール蒸気に対するカルボン酸アンモニウム塩のモル比は変動しうるが、一般的にカルボン酸アンモニウム塩のモル当り約5〜約300モル(少なくとも約5:1〜約300:1のモル比)、好ましくは、カルボン酸アンモニウム塩のモル当り約5〜約200モル、最も好ましくは、カルボン酸アンモニウム塩のモル当り約20〜約100モルである。モル過剰のアルコール蒸気はアミド形成を阻害する傾向がある。
アルコール蒸気供給流れ(例えば、メタノール)温度は一般的に、アルコールが一般にその蒸気相にとどまり、それがエステル化剤およびストリッピング/担体ガスとして確実に作用するように選択される。反応室に入る加熱アルコール蒸気供給流れの温度は、選択アルコールおよび特定の器具の形状に従って変動しうる。供給された加熱アルコール蒸気は、反応の熱源、エステル化剤、および本方法によって形成されるカルボン酸エステルのストリッピング/担体ガスとして作用する。
本実施例ではグリコール酸メチル(その後にグリコール酸に加水分解される)を形成する加熱メタノール蒸気の使用が例示される。一般的に、加熱メタノール蒸気の温度は約140℃〜約350℃である。1つの実施形態において、メタノール蒸気供給流れの温度は約170℃〜約300℃である。別の実施形態において、メタノール蒸気供給流れの温度は約230℃〜約250℃である。
アルコール分解反応器の典型的な作業温度は、約140℃〜約300℃、好ましくは約170℃〜約200℃である。1つの態様において、カルボン酸アンモニウム塩はグリコール酸アンモニウムであり、アルコールはメタノールである。特定の組合せが使用される反応器温度は、一般的に約100℃〜約300℃、好ましくは、約150℃〜約250℃、より好ましくは、約170℃〜約225℃、かつ最も好ましくは、約170℃〜約200℃である。
反応器は、場合により、所望のカルボン酸エステルの収量を改善するパッキング材料または高沸点流体/液体を含む。パッキングまたは高沸点流体の利点は、塩水溶液とアルコール蒸気との間の接触を改善することである。パッキングはランダムパッキング、工学的パッキング、またはさまざまな蒸留プレートデザインでありうる。ペリー(Perry)の第7版第14.23〜14.61章(非特許文献22)を参照。気液反応システムの商業的デザインがペリー(Perry)の図23−25、23−26、および13−79に示されている。高沸点流体は、選択作業条件で低い蒸気圧力を有するように選択され、回収エステルから容易に分離されなければならない。流体は、エステル化化学(鉱油など)に不活性またはポリアルキレングリコール(ポリオール)などエステル化化学に潜在的に関与しうる。ポリオールは分子量が150を上回り、少なくとも1つのヒドロキシル基などを有する材料である。典型的なポリオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)のほか、これらのポリアルキレンエーテルグリコールのコポリマーが挙げられる。
(電気透析)
双極膜による電気透析(EDBM)が対応するアンモニウム塩からの有機酸の回収に提案されている。EDBMを作動するために、溶液は導電性でなければならない。弱酸のアンモニウム塩のために、EDBMの生成物(有機酸および水酸化アンモニウム)はきわめて弱い導体であり、結果として溶液の高い抵抗および低い生産速度が生じる。これを弱めるために、導電性塩(すなわち、塩化アンモニウム)が塩基ループ(水酸化アンモニウム流れ)に添加される。塩基濃度が増加するとともに、アンモニアは溶液から除去され、アンモニウム塩はリサイクルされ、導電性を維持しうる。
有機酸のアンモニウム塩の組成物は、カルシウムなどの多価陽イオンについて注意深くモニタリングする必要がある。これらの陽イオンはヒドロキシル基と結合させることによって沈殿し、膜を破壊しうる。多価陽イオンの濃度は、好ましくは、約5ppm以下、最も好ましくは、約1ppm以下である。
例えば、典型的なラボスケールのEDBMシステムは、アンモニウム塩に適切な膜で構成されうる。まず、約5wt%塩化アンモニウムを含有する再循環塩基ループが確立される。約3Mのグリコール酸アンモニウム再循環ループもまた確立される。典型的なバッチテストランが約0.5〜約1.0kA/m2の一定の電流で行われる。循環ループは約1時間〜約5時間維持される。EDBMの続行とともに、グリコール酸アンモニウムループにおける導電性およびpHは減少する。一般的に、かかる条件下で実行されるEDBMは少なくとも約80%のグリコール酸アンモニウムをグリコール酸へ変換することが予想される。結果として生じるグリコール酸/グリコール酸アンモニウム溶液はその後に強陽イオン交換樹脂または他の方法で処理され、変換を完了しうる。
(重合)
ヒドロキシル基からなるカルボン酸のアンモニウム塩は、凝縮重合を受け、二量体、オリゴマー、およびポリマーを形成すると同時に、アンモニアを遊離しうる。結果として生じるポリマーは、任意の数の周知の方法を使用する反応混合物から分離されうる。反応混合物から分離されると、脱重合を使用して遊離酸を得ることができる。
(熱塩クラッキング)
熱分解(「塩クラッキング」)を使用し、グリコール酸を含む生成物を得ることができる(参照により全体として本明細書で援用される同時係属の(特許文献31)を参照)。本方法は、実質的に無水グリコール酸アンモニウム塩を熱分解する前に1つまたは複数の化学薬品の添加を必要としない。熱塩クラッキングは、1つまたは複数の本回収方法と結合し、さらにグリコール酸を単離することができる。
この方法における第1のステップは、グリコール酸アンモニウムの水溶液を含む供給流れからの自由水の除去であり、これにより実質的無水のグリコール酸アンモニウム塩が形成される(実質的に無水の塩は室温(約25℃)では粘性の液体である)。水性反応混合物から自由水を除去する、蒸留、真空蒸留、凍結乾燥、および蒸発を含むが、これらに限定されない方法が当技術分野で公知である。
この方法における次のステップは、実質的に無水塩を真空下にアンモニウム塩をグリコール酸およびアンモニアへ熱分解させるのに十分な温度に加熱するステップを含む。使用される温度は、塩の熱分解が起こると同時に、酸の分解を最小限に抑え、かつ/またはグリコールアミドなどの望ましくない副産物を生成しうる望ましくない副反応を最小限に抑えるように選択しなければならない。実質的に無水グリコール酸アンモニウム塩は一般的に、グリコール酸を含む生成物へ塩を熱分解するのに十分な時間、真空(0.5〜約385mmHg絶対圧力)下に約100℃〜約140℃以下の温度に加熱される。アンモニウムの除去を助けるために真空が使用される。適切な真空圧力は当業者によって決定されうる。典型的な真空範囲の例が、約0.5〜約385mm絶対圧力である。アンモニウム塩の熱分解ではすべての蒸発器デザインが使用されうるが、ワイプフィルム蒸発器が好ましい。
規定条件下で塩を熱分解することにより、融解グリコール酸アンモニウムの相当な部分がグリコール酸およびグリコリド(グリコール酸の環状二量体)、グリコール酸の線状ポリマー形態(一般的に二量体で五量体までの)、グリコール酸の線状ポリマー形態のアンモニウム塩(一般的に二量体で五量体までの)、およびグリコールアミドなど一部の追加の副産物へ変換される。当業者は、グリコール酸アンモニウムを熱分解するために使用される条件を調節し、遊離グリコール酸生成を最適化すると同時に、グリコールアミドの生成など望ましくない副反応を最小限に抑えることができる。熱分解中に生成されるアンモニアは回収され、リサイクルされうる。場合により、水性グリコール酸アンモニウム溶液は部分的に脱アンモニア化され、大幅に少ないアンモニウムイオンを含有する脱アンモニア生成物を生成する。この脱アンモニア生成物は、それほど廃棄物(鉱塩)が発生しないためその後の加工に特に魅力である。
グリコール酸アンモニウムを含む溶液からのグリコール酸の回収に加えて、グリコール酸アンモニウムを含む溶液は、傾斜法またはろ過を含むが、これらに限定されない既知の方法によるニトリラーゼ触媒からの分離、およびその後に場合によりろ過物からの水の蒸留による濃縮によって直接回収されうる。
出願人は、具体的に、本開示においてすべての引例の全内容を援用する。さらに、量、濃度、もしくは他の値、またはパラメータが範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値として示されている場合、これは具体的には、範囲が個別に開示されているかどうかに関係なく、一対の上限範囲または好ましい値および下限範囲または好ましい値から形成されるすべての範囲を開示していると理解すべきである。数値の範囲が本明細書で開示されている場合、特に明記しない限り、範囲はそれの端点のほか、範囲内のすべての整数、および分数を含むことが意図されている。本発明の範囲が、範囲を規定する場合に挙げられた特定の値に限定されることは意図されていない。
(一般方法)
細菌培養の維持および増殖に適切な材料および方法は当技術分野で公知である。以下の実施例における使用に適切な方法は、Manual of Methods for General Bacteriology(1994年)フィリップ・ゲルハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マリー(Murray)、ラルフ(Ralph)N.コスティロウ(Costilow)、ユージン(Eugene)W.ネスター(Nester)、ウィリス(Willis)A.ウッド(Wood)、ノエル(Noel) R.クリーク(Krieg)、およびG.ブリッグス フィリップス(Briggs Phillips)編、米国微生物学会(American Society for Microbiology)、Washington,DC.)または(非特許文献29)における記載で確認されうる。
ゲノムDNA調製、PCR増幅、DNAのクローニングの所望の目標を生成するためのエンドおよびエキソヌクレアーゼによるDNA修飾、ライゲーション、および細菌形質転換のために必要な手順は当技術分野で公知である。ここで使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング法は当技術分野で公知であり、マニアチス(Maniatis)、上記、および(非特許文献30)、(非特許文献31)によって記載されている。
明細書における略語は、測定単位、方法、特性、または化合物に以下の通り対応する。すなわち、「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μM]はマイクロモルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量%を意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「L」はリットルを意味し、「mL」はミリリトルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「kb」はキロベースを意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、「HPLC」は高性能液体クロマトグラフィーを意味し、「OD」は指定波長での光学密度を意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「rpm」は毎分回転数を意味し、「SDS−PAGE」はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動を意味し、「dcw」は乾燥細胞重量を意味し、「U」はニトリラーゼ活性の単位を意味し、「GLA」はグリコール酸または対応するアンモニウム塩を意味し、「NH4GLA」はグリコール酸アンモニウムを意味し、「GLN」はグリコロニトリルを意味し、「Rxn」は反応を意味し、「mM GLA/h」は毎時mM GLAで測定された初期反応速度を意味し、「ca.」はおよそを意味し、「HCN」はシアン化水素を意味し、かつ「HCHO」はホルムアルデヒドを意味する。
(実施例1)
(高複製ニトリラーゼ発現プラスミドの構成)
合成オリゴヌクレオチドプライマー165(5’−CGACTGCAGTAAGGAGGAATAGGACATGGTTTCGTATAACAGCAAGTTC−3’、配列番号1)および
166(5’−TGATCTAGAGCTTGGAGAATAAAGGGGAAGACCAGAGATG−3’、配列番号2)
(これらは、それぞれ、PstlおよびXbal制限部位(下線)を組込む)を使用し、A.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)ゲノムDNA(配列番号5)からのニトリラーゼ遺伝子をPCR増幅した。
典型的なPCRパラメータは以下の通りである。
ステップ1:95℃で5分
ステップ2:95℃で0.5分(変性)
ステップ3:55℃で0.5分(アニーリング)
ステップ4:74℃で1分(伸長)
ステップ2−4は25サイクル反復される
PCR試薬は、ロシュ・ディアグノスティックス社(Roche Diagnostics Corporation)(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis,IN)によって供給され、かつ同社によって推奨されている通り使用される。
天然アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72W配列からの唯一の変化は、大腸菌(E.coli)における発現を促進するGからAへの第1のヌクレオチドへの変化である。その際、ニトリラーゼ遺伝子の開始コドンは天然GTGからATGへ変化した。したがって、対応するニトリラーゼタンパク質の第1のアミノ酸は天然バリンからメチオニン(配列番号6)ヘ変化する。オリゴヌクレオチドプライマー165は、リボゾーム結合部位(太字)およびコドン(TAG)をニトリラーゼの翻訳の開始前にlacZの翻訳を止めるためにも導入する。PCR生成物をPstlおよびXbalで消化し、PstlおよびXbalで消化したpUC19へクローン化し(GenBank(商標)L09137、ニュー・イングランド・バイオラボス(New England Biolabs)、マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,Mass.))、pSW138として同定されたプラスミドを生成した。
(実施例2)
(大腸菌(E.coli)における活性ニトルラーゼの発現)
プラスミドpSW138を使用し、大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)および大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)を変換し、それぞれ、(1)MG1655/pSW138および(2)FM5/pSW138で識別された2つの株を生成した。各々の株を以下に記載した通り、ニトリラーゼ活性(グリコロニトリルのグリコール酸への変換)のために増殖、誘発、および分析した。6つの複製を各々の株について実行する。
1.細菌増殖
株接種材料をアンピシリン(50mg/L)を補充したLB培地で37℃下、振盪させて(200rpm)16−18時間、増殖させた。
2.ニトリラーゼ発現の誘導
十分な接種材料をアンピシリン(50mg/L)およびIPTG(1mM)を補充した新鮮LB培地に添加し、およそ0.1の初期OD(600nm)を得た。培養物を37℃下、振盪させて(200rpm)およそ6−8時間インキュベートした。
3.細菌回収
細菌細胞を遠心分離によって回収し、できる限り多くの液体を除去し、細胞ペレットを−70℃下に凍結した。
4.ニトリラーゼ活性のアッセイ
マイクロ攪拌バーを備えた温度調節された(25℃)20mLガラス製シンチレーションバイアルへ基質溶液(0.667Mグリコロニトリル、TCI)3.0mLおよび細胞懸濁液(100mMピロリン酸ナトリウムpH6.0中400mg湿細胞重量/mL、0.1μg/mL DNAse)1.0mLを添加した。最終グリコロニトリル濃度は500mMであり、最終細胞濃度は100mg/mLであった。試料(100μL)を5、10、15、30、45、および60分の時点で除去し、アッセイ混合物(脱イオン水100μL、6.0N HCl 3μL、200mM n−プロパノール200μL)に添加した後、ボルテックスし、遠心分離した。結果として生じる上清をHPLC(HPX 87Hカラム、30cm×7.8mm、0.01N H2SO4移動相、50℃で1.0mL/分の流れ、10μL注入体積、20分分析時間)によってグリコロニトリル(GLN)およびグリコール酸(GLA)について分析した。乾燥細胞重量(dcw)をマイクロ波乾燥によって複製サンプルで測定した。ニトリラーゼ活性をU/g dcwとして報告したが、ここで1単位(U)は25℃下1分での1μmolのGLNをGLAへ変換する(表2)。
Figure 2008525030
(実施例3)
(変異性ポリメラーゼ連鎖反応によるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼランダム突然変異誘発ライブラリの構成)
Puregene(登録商標)DNA単離キットをメーカーの指示(ジーントラ・システムズ(Gentra Systems)、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN)に従って使用することによりA.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)からゲノムDNAを調製した。GeneMorph(登録商標)PCR突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA))により供給された指示に従って配列番号3(5’−GCGCATATG GTTTCGTATAACAGCAAGTTCC3’)および配列番号4(5’−ATAGGATCCTTATGGCTACTTTGCTGGGACCG−3’)として識別されたプライマーを使用することにより、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ遺伝子(コード配列、配列番号5)で変異性PCRを実行した。低い突然変異頻度(0−3突然変異/kb)および中間の突然変異頻度(3−7突然変異/kb)を誘発するために推奨される反応条件を使用した。10パーセントの1.1kb PCR生成物をpTrcHis2 TOPO(登録商標)TA発現キット(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(CA,Carlsbad))により供給された指示に従って発現ベクターpTrcHis2 TOPO(登録商標)へライゲートした。ライゲーション混合物の半分を供給元の勧告(インビトロジェン(Invitrogen)に従って大腸菌(E.coli)TOP10ヘ形質転換した。1パーセントの形質転換混合物を50mg/Lアンピシリンで補充したLBプレートへプレーティングした。結果として生じる形質転換体は合計200−400コロニーとなり、生成された総PCR生成物が、改善された酵素活性をスクリーニングにするのに必要な十分すぎる400,000−800,000コロニーをもたらすことが可能であることを示した。突然変異の頻度はクローンのランダム選択試料のヌクレオチド配列解析によって確認された。配列解析では、およそ50%の挿入が、予想通り順方向の配向にあったことも確認された。SDS−PAGE分析では、順方向の配向の挿入を有する本質的にすべてのクローンが、勧告通り(インビトロジェン(Invitrogen))増殖および誘発されると、約41kDaのニトリラーゼタンパク質を発現することが確認された。
また、天然A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ遺伝子は、配列番号3および配列番号4で識別されたプライマーを使用する標準PCRによって増幅され、結果として生じるDNA生成物をメーカーの勧告に従ってpTrcHis2 TOPO(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen))へクローン化し、プラスミドpNM18を生成した。pNM18による大腸菌(E.coli)TOP10または大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)の形質転換は、それぞれの対照として有用な株をもたらした。pNM18(配列番号5)におけるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ「対照」配列は、大腸菌(E.coli)における発現を促進する、GTGからATGへの開始コドンにおける変化を除き、野生型A.ファシリス(facilis)72Wのコード配列と同一である。
(実施例4)
(ニトリラーゼ活性の増大に対するA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼランダム突然変異誘発ライブラリのスクリーニング)
低い突然変異頻度の変異性PCRライブラリ(実施例3に記載された通り構成)からおよそ10,000コロニーを50mg/Lアンピシリンを補充したLB寒天上にプレーティングした。高い処理量のスクリーニングをロボットを使用する96ウェルマイクロタイタープレートにおいて実行した。37℃下、200rpm振盪で18時間、50mg/Lアンピシリンおよび1mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラニシド)を補充した液体LB中で個々のコロニーの増殖後、培養物には37℃下、80Hz線形振盪で1時間50mMグリコロニトリル(GLN)を供給した。細菌細胞をろ過して除去することによって反応を停止し、分析すべき上清をマイクロタイタープレートに密閉し、分析まで4℃下に保存した。
グリコール酸(GLA)の生成を単一イオンモードでM−Hイオン、m/z75をモニタリングする陰イオンモードで大気圧化学イオン化(APCI)質量分析によって測定した。使用した質量分析計は、マイクロマス(Micromass)(ウォーターズ(Waters))クァットロ・ウルティマ(Quattro Ultima)トリプル・クワッドであり、設定は以下の通りであった。すなわち、ソース温度=150℃、プローブ温度=300℃、コーンガス=80L/時、脱溶媒和ガス=700−800L/時。コーン電圧=35V、コロナ電圧=20mA。増倍=600V、ドウェル=0.1秒、チャンネル間遅延=0.02秒。移動相は、1針当たり3.5mL/分で50/50MeOH/H2Oであり、LCパッキングス・アキュレート(Packings Acurate)スプリッタを使用する質量分析計への導入前の溶離剤のスプリットが1:5であった。試料30mLを5mL試料ループに注入する889連続注入8弁バンクを備えたギルソン(Gilson)215自動試料採取器によって試料を送達した。ハドソン・プレート・クレーン(Hudson Plate Crane)XTプレートハンドリングロボットが、プレートをギルソン(Gilson)自動試料採取器のデッキに送達した。5mL/分での同じ溶媒による針および注入ポートの洗浄を各々一連の8回の注入間に行った。この方法によって、ニトリラーゼ活性が増大した7つの株を識別して単離した。
(実施例5)
(ニトリラーゼ活性の増大を与えるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼにおける突然変異の識別)
ヌクレオチド配列解析を使用し、実施例4に記載された通り単離された7つのTOP10変異株のニトリラーゼ遺伝子に存在する突然変異を識別し、対応するアミノ酸変化を推定した。7つの株すべては同一のニトリラーゼ配列(配列番号8)を示し、pNM18−201Qとして識別されるプラスミドにおけるGLNに変化した位置201で単一のアミノ酸変化、Leu(L201Q)を有した。この変化は、SDS−PAGE分析によって測定される通り、ニトリラーゼタンパク質生成に対する検出可能な効果を(天然酵素と比べ)示さなかった。
(実施例6)
(アミノ酸残基位置201でのニトリラーゼの飽和突然変異誘発)
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ酵素のアミノ酸位置201での飽和突然変異誘発ライブラリを縮重オリゴヌクレオチドおよびQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA))をメーカーの指示に従って使用することにより構成した。このライブラリのおよそ500のメンバーを以前に記載した通り(実施例4)ニトリラーゼ活性の増大ついてスクリーニングした。ヌクレオチド配列解析を使用し、ニトリラーゼ活性の増大を与える位置201でのアミノ酸変化を判定した。L201Q(配列番号8)に加えて、ニトリラーゼ活性の増大を与える以下の突然変異をスクリーニングから識別した。すなわち、それぞれ、pNM18−201G、pNM18−201H、pNM18−201K、pNM18−201N、pNM18−201S、pNM18−201A、pNM18−201C、およびpNM18−201Tとして識別されたプラスミドにおけるL201G(配列番号16)、L201H(配列番号18)、L201K(配列番号20)、L201N(配列番号22)、L201S(配列番号24)、L201A(配列番号10)、L201C(配列番号12)、およびL201T(配列番号14)。
(実施例7)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ触媒ドメインの標的飽和突然変異誘発)
われわれは、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)内の触媒ドメインが、2−ヒドロキシニトリル、すなわちグリコール酸へのニトリラーゼ活性を増大させる試みにおいて突然変異する適切な部位であると仮定した。
既知の細菌ニトリラーゼの中で一般に保存されていない残渣(下線)のA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)触媒ドメイン(160G 161 162L 163 164C 165 166E 167 168 169 170 171L 172 173)内の飽和突然変異誘発を縮重オリゴヌクレオチドおよびQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA))をメーカーの指示に従って使用することにより達成した。具体的には、9つのミニライブラリ(500−1000コロニー)を、標的された活性部位残渣(上記の下線)の各々について構成した。これらのライブラリを以前に記載した通りニトリラーゼ活性の増大についてスクリーニングした。ヌクレオチド配列解析を使用し、ニトリラーゼ活性の増大を与えるアミノ酸変化を判定した。ニトリラーゼ活性の増大を与える以下の変化を識別した。すなわち、それぞれ、pNM18−168K、pNM18−168M、pNM18−168T、およびpNM18−168Vとして識別されたプラスミドにおけるF168K(配列番号26)、F168M(配列番号28)、F168T(配列番号30)、およびF168V(配列番号32)。
(実施例8)
(MG1655/pSW138−168K、MG1655/pSW138−168M、MG1655/pSW138−168T、MG1655/pSW138−168V、MG1655/pSW138−201Q、MG1655/pSW138−201G、MG1655/pSW138−201H、MG1655/pSW138−201K、MG1655/pSW138−201N、およびMG1655/pSW138−201Sの構成)
プラスミドpNM18−168K、pNM18−168M、pNM18−168T、 pNM18−168V、pNM18−201Q、pNM18−201G、pNM18−201H、pNM18−201K、pNM18−201N、およびpNM18−201Sの各々をEcoRIで切断し、より小さなEcoRl断片(907bp)をプラスミドpSW138にサブクローン化し(実施例1に記載)、これもEcoRlで切断されていたが、それぞれ、プラスミドpSW138−168K、pSW138−168M、pSW138−168T、pSW138−168V、pSW138−201Q、pSW138−201G、pSW138−201H、pSW138−201K、pSW138−201N、およびpSW138−201Sを生成した。プラスミドpSW138−168K、pSW138−168M、pSW138−168T、pSW138−168V、pSW138−201Q、pSW138−201G、pSW138−201H、pSW138−201K、pSW138−201N、およびpSW138−201Sの各々を使用し、大腸菌(E.coli)MG1655を変換し、それぞれ、株MG1655/pSW138−168K、MG1655/pSW138−168M、MG1655/pSW138−168T、MG1655/pSW138−168V、MG1655/pSW138−201Q、MG1655/pSW138−201G、MG1655/pSW138−201H、MG1655/pSW138−201K、MG1655/pSW138−201N、およびMG1655/pSW138−201Sを生成した。
(実施例9)
(10リットル発酵によって生成される突然変異のニトリラーゼ活性)
大腸菌(E.coli)種培養を発酵槽の接種前に30℃下、振盪して(300rpm6−10時間(OD550=1−2)mL当り0.1mgのアンピシリンを補充したLB培地500mL中で増殖させた。
ニトリラーゼ株の増殖は、グルコース、アンモニア、および塩を有する無機培地を使用する14−Lブラウン・バイオスタット(Braun Biostat)C発酵槽(B.ブラウン・バイオスタット・インターナショナルGmbh、ドイツ、メルズンゲン(Melsungen))において行われた。IPTG(FM5/pNM18ベース株用)または乳糖(MG1655/pSW138ベース株用)を誘導のために使用した。
滅菌前発酵槽培地(7.5L)が表2に示されている。滅菌後付加としては、フィルタ滅菌化微量元素(表3)、mL当り0.1mgのアンピシリン、L当り2gのカザミノ酸(ジフコ(Difco)、L当り4gのグルコース、および500mL種培養物が挙げられる。
発酵設定値は表4に示されている。NH4OH(40%w/v)およびH2PO4(20%w/v)をpH調節用に使用した。溶解酸素濃度は攪拌により25%の空気飽和で調節され、最初に酸素需要の増大および後に続く曝気とともに上昇した。IPTG誘導および乳糖誘導とともに使用される発酵供給プロトコールは、それぞれ、表5および6に示されている。グルコース供給速度は、グルコースが5g/L以上に蓄積した場合は削減された。FM5/pNM18ベース株については、IPTGがOD550=20−30で0.5mMに添加された。40−56時間後、細胞を5−10℃に冷却し、遠心分離によって回収した。ニトリラーゼ活性を記載した通り(実施例2)測定し、結果は表8に示されている。
Figure 2008525030
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Figure 2008525030
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Figure 2008525030
Figure 2008525030
(実施例10)
(大腸菌(E.coli)TOP10/pNM18、大腸菌TOP10/pNM18−201A、大腸菌TOP10/pNM18−201C、および大腸菌TOP10/pNM128−201Tのニトリラーゼ活性の測定(振盪フラスコ))
複製で、一夜培養物(LB+50μg/mLアンピシリン、振盪により37℃)10mLを200mL(LB+50μg/mlアンピシリン+1mM IPTG)に添加し、37℃下、振盪して4−5時間インキュベートした(最終OD600およそ2.0)。細胞を4℃下に遠心分離によって収集し、80℃下に保存した。
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラスバイアルに水中1.0Mグリコロニトリル1.0mLを添加し、バイアルとその内容物を温度調節水槽中25℃に平衡化した。攪拌とともに、25℃に前平衡化した湿細胞ペースト40−100mgを含有する0.100Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1.0mLをバイアルに添加した(最終[GLN]=0.5M)。試料(0.100mL)を所定の時間で取り、水0.100mL、6.0N酢酸0.020mL、および水中0.2M酪酸ナトリウム0.200mLからなる溶液(HPLC外部標準)と混合した。結果として生じる混合物を遠心分離し、結果として生じる上清をグリコール酸についてSupelco(登録商標)(シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich Corp.)LC−18−DBカラム(15cm×4.6mm):移動相:水性10mM酢酸ナトリウム(NaOAc)、10mM酢酸(AcOH)、7.5%(v/v)メタノールを使用するHPLCによって分析した。各々の細胞ペーストの乾燥細胞重量(dcw)を測定し、これを使用して細胞特異的ニトリラーゼ活性を計算した。表8は、天然ニトリラーゼと比較したニトリラーゼ変異のニトリラーゼ活性の増加の概要を示す。
Figure 2008525030
(実施例11)
(固定化大腸菌(E.coli)SS1001(ATCC PTA−1177)の調製)
大腸菌(E.coli)株SS1001(ATCCPTA−1177)は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを発現する形質転換大腸菌(E.coli)株である(米国特許公報(特許文献25)、参照により本明細書で援用される)。組換え発現(大腸菌(E.coli))SS1001)ニトリラーゼのコード配列(配列番号37−38)は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号5)と比較して2つの小さな配列変化を含有する。開始コドンはGTGからATGに変化して組換え発現を促進し、アーチファクトがクローニング中に導入され、これは結果としてC末端の近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
この株を以前に記載した通り(米国特許公報(特許文献29)の実施例8を参照)10−L発酵において増殖させ、細胞ペースト(グリコロニトリル(GLN)を以下の通りGLNをグリコール酸(GLA)に変換する方法で使用した)。
大腸菌(E.coli)SS1001細胞を最初に以下の手順に従ってカラギナンビーズ(固定化大腸菌(E.coli)SS1001)に固定化した。迅速な攪拌とともに、カラギナン(FMC GP911、FMC社(Corp.)、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA)9gをゆっくりと50℃下、脱イオン化蒸留水231gに添加し、結果として生じる混合物をカラギナンが完全に溶解するまで80℃に加熱し、結果として生じる溶液を攪拌して47℃に冷却した。攪拌バーを備えた分離ビーカーにおいて、凍結大腸菌(E.coli)SS1001細胞(39.53%dcw)75.9gを約25℃下0.35M Na2HPO4(pH7.3)84.1gに添加し、細胞が完全に懸濁するまで混合し、次いでデオキシリボヌクレアーゼI溶液(12,500U/mL DNase(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)、ミズーリ州セントルイス(St. Louis,MO)10μL/細胞懸濁液100mL)を添加した。細胞懸濁液を攪拌してカラギナン溶液に添加する直前に45−46℃に加熱した。攪拌とともに、47℃下の大腸菌(E.coli)SS1001細胞懸濁液160.0gを47℃下のカラギナン溶液に添加し、結果として生じる細胞/カラギナン懸濁液を電気加熱20ゲージ針を通じて47℃下に注入し、攪拌して室温(約21−22℃)下に0.25M KHCO3(pH=7.3)に滴下し、針を通じる流速は5−8mL/分に設定した。結果として生じるビーズを1時間、攪拌して固化させ、0.25M KHCO3(pH7.3)に保存した。ビーズの化学架橋を水中25%グルタルアルデヒド(GA)(シグマ(Sigma)M752−07)0.5gを0.25M KHCO3(pH7.3)48mL中に懸濁したビーズ20gに添加し、室温下に1時間攪拌することによって実行した。次いで、ビーズの懸濁液に水中12.5wt%ポリエチレンイミン(PEI、BASF LUPASOL PS、BASF株式会社(Aktiengesellschaft)、ドイツ、ルードビヒスハーフェン(Ludwigshafen)2.0gを添加した後、さらに1時間、室温下に混合した。GA/PEI架橋ビーズを5℃下に1.0M NH4HCO3(pH7.3)に保存した。
GLNのGLAへのバイオ触媒変換後にHPLCを行った。反応混合物のアリコート(0.2mL)を水中6M HCl 0.01mLおよび0.25M n−プロパノール0.8mL(HPLC外部標準)に添加し、HPLC(HPX 87Hカラム(バイオ・ラッド(Bio−Rad)、カリフォルニア州ヘラクレス(Hercules,CA))、30cm×7.8mm、0.01N H2SO4移動相、50℃下に1.0mL/分流、10μL注入体積、屈折率(RI)検出器、20分分析時間)によってGLNおよびGLAについて分析した。GA/PEI架橋カラギナン/7.5%(dcw)大腸菌(E.coli)SS1001ビーズのニトリラーゼ活性は、約12U/gビーズであったが、ここで1単位(U)は25℃下1分での1μmolのGLNをGLAへ変換する。
(実施例12)
(1Mグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例11)4g、脱イオン化水13.73mL、5M NH4GLA 0.4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))1.87mL、0.89M GLN最終濃度、pH7.6に調節したpHを充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水14.13mLおよびGLN 1.87mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、かつバイオ触媒リサイクルを反復した。最初のバイオ触媒リサイクルでのNH4GLA合成の初速度は143mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表9に示されている(「1M」)。
(実施例13)
(およそ3Mグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例11)4g、脱イオン化水6.39mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))5.61mL、2.68M GLN最終濃度、pH7.6に調節したpHを充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水6.39mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN 5.61mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、かつバイオ触媒リサイクルを反復した。最初のバイオ触媒リサイクルでのNH4GLA合成の初速度は207mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表9に示されている(「3M」)。
(実施例14)
(グリコール酸アンモニウム(NH4GLA)を得るおよそ1M増分(1M+1M+1M)でのおよそ3Mグリコロニトリルの添加)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例11)4g、脱イオン化水8.13mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))1.87mL、0.89M GLN最終濃度、pH7.6に調節したpHを充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.87mLの第2の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.87mLの第3の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、反応を完了し、およそ3M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水8.13mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN 1.87mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLN、水、および緩衝剤の添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つのおよそ1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。最初のリサイクル(リサイクル当りGLNの3つの約1M部分)における最初の1M GLN溶液でのNH4GLA合成の初速度は155mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表9に示されている(「1M+1M+1M)=3M」)。
(実施例25)
(グリコール酸アンモニウム(NH4GLA)を得るグリコロニトリルの0.2M GLNへの連続的添加)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例11)4g、脱イオン化水8mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))0.4mLを充填し、pHをpH7.6に調節し、混合物を25℃下に撹拌し、GLN溶液を連続的に0.2M前後のGLN濃度を維持するために消費されるGLN消費の速度で3MまでGLNを添加し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水8mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN 0.4mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、かつ新しいバイオ触媒リサイクルをGLN消費の速度で3M GLNまでのGLNの添加により反復した。最初のバイオ触媒リサイクル(リサイクル総当り3M GLN)のNH4GLA合成の初速度は144mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表9に示されている(「0.2M連続」)。
Figure 2008525030
(実施例16)
(さまざまなレベルの架橋からなるGA/PEI架橋カラギナン/大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210Aビーズの調製)
プラスミドpTrcHis2−TOPO(登録商標)からニトリラーゼ変異210Ala(配列番号34)を発現するプラスミドpNM18−210Aを使用し、大腸菌(E.coli)FM5を変換し、FM5/pNM18−21として識別される株を生成した。この株を以前に記載した通り(米国特許公報(特許文献29)の実施例8を参照、参照により本明細書で援用される)10−L発酵で増殖させ、細胞ペーストを以下の通りGLNをグリコール酸(GLA)に変換する方法で使用した。
大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210A細胞を最初に以下の手順に従ってカラギナンビーズに固定化した。迅速な攪拌により、カラギナン(FMC GP911)12gをゆっくりと50℃下に脱イオン化蒸留水228gに添加し、結果として生じる混合物をカラギナンが完全に溶解するまで80℃に加熱し、結果として生じる溶液を攪拌して52℃に冷却した。攪拌バーを備えた分離ビーカーにおいて、凍結大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210A細胞(26.7%dcw)74.9gを約25℃下0.35M Na2HPO4(pH7.3)85.1gに添加し、細胞が完全に懸濁するまで混合し、次いでデオキシリボヌクレアーゼI溶液(12,500U/mL DNase(シグマ(Sigma))10μL/細胞懸濁液100mL)を添加した。細胞懸濁液を230ミクロンおよび140ミクロンNupro TFろ過エレメントフィルタを通じて連続的にろ過し、カラギナン溶液への添加直前に50℃に攪拌しながら加熱した。攪拌とともに、50℃下の大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210A細胞懸濁液160.0gを52℃下のカラギナン溶液に添加し、結果として生じる細胞/カラギナン懸濁液を電気加熱20ゲージ針を通じて47℃下に注入し、攪拌して室温(約21−22℃)下に0.25M KHCO3(pH=7.3)に滴下し、針を通じる流速は5−8mL/分に設定した。結果として生じるビーズを1時間、攪拌して固化させ、0.25M KHCO3(pH7.3)に保存した。ビーズの化学架橋を水中25%グルタルアルデヒド(GA)(シグマ(Sigma)M752−07)0.5g(以後「バイオ触媒1」と呼ぶ)または2.0g(以後「バイオ触媒2」と呼ぶ)のいずれかの0.25M KHCO3(pH7.3)48mL中に懸濁したビーズ20gへの添加、および室温下に1時間攪拌することによって実行した。次いで、ビーズの懸濁液に水中12.5wt%ポリエチレンイミン(PEI、BASF LUPASOL PS)2.0g(バイオ触媒1)または4.0g(バイオ触媒2)のいずれかを添加し、さらに18時間、室温下に混合した。GA/PEI架橋ビーズを5℃下に1.0M NH4HCO3(pH7.3)に保存した。
GLNのGLAへのバイオ触媒変換後にHPLCを行った。反応混合物のアリコート(0.2mL)を水中6M HCl 0.01mLおよび0.25M n−プロパノール0.8mL(HPLC外部標準)に添加し、HPLC(HPX 87Hカラム、30cm×7.8mm、0.01N H2SO4移動相、50℃下に1.0mL/分流、10μL注入体積、屈折率(RI)検出器、20分分析時間)によってGLNおよびGLAについて分析した。GA/PEI架橋カラギナン/5%(dcw)大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210Aビーズのニトリラーゼ活性は、約13U/gビーズであったが、ここで1単位(U)は25℃下1分での1μmolのGLNをGLAへ変換する。
(実施例17(比較))
(空気中の添加剤なしのグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管にバイオ触媒1 4g、脱イオン化水12.42mL、4M NH4GLA 0.5mL、およびGLN(水中約52wt%(フルカ(Fluka))1.78mL、1M GLN最終濃度、pH7.6を充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.78mLの第2の部分を添加し、pHを水酸化アンモニウムでpH7.6に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.78mLの第3の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、反応を完了し、3.1M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水12.42mL、およびGLN 1.78mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLNの添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つの1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。リサイクル対リサイクル回数における最初の1M FLN溶液の変換の初速度の減少率は表10に示されている(リサイクル反応は反応2〜8である)。
(実施例18)
(酸素を含まない環境下に添加剤なしのグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
窒素下オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管にバイオ触媒1 4g、脱イオン化水12.42mL、4M NH4GLA 0.5mL、およびGLN(水中約52wt%(フルカ(Fluka))1.78mL、1M GLN最終濃度、pH7.6を充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.78mLおよび水0.2mLを添加し、pHを水酸化アンモニウムでpH7.6に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.78mLの第3の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、反応を完了し、3.1M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水12.46mL、およびGLN 1.78mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLN 1.78mL、脱イオン水 0.2mL、および緩衝剤の添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つの1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。リサイクル反応対リサイクル反応回数における最初の1M GLN溶液の変換の初速度の減少率は表10に示されている(リサイクル反応は反応2〜8である)。
(実施例19)
(酸素を含まない環境下チオ硫酸または亜ジオチン酸の存在下のグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換))
バイオ触媒リサイクルを脱イオン水12.42mLの代わりに、脱イオン水12.22mLおよび水中添加剤(チオ硫酸カリウム、K223または亜ジオチン酸ナトリウム、K224)の1M溶液を添加してリサイクルを開始し、かつ水0.2mLの代わりに、水中添加剤の1M溶液0.2mLをGLN 1.78mLの各々の添加とともに反応管に添加することを除き、実施例28に記載された通りに実行した。リサイクル対リサイクル回数における最初の1M GLN溶液の変換の初速度の減少率は表10に示されている(リサイクル反応は反応2〜8である)。
Figure 2008525030
(実施例20)
(pH6.0での空気中添加剤なしのグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換))
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管にバイオ触媒1 4g、脱イオン化水12.42mL、4M NH4GLA 0.5mL、およびGLN(水中約52wt%(フルカ(Fluka))1.78mL、1M GLN最終濃度、pH6.0を充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.78mLの第2の部分を添加し、pHを水酸化アンモニウムでpH6.0に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.78mLの第3の部分を添加し、pHをpH6.0に調節し、反応を完了し、3.1M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水12.42mL、およびGLN 1.78mLをpH6.0にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLNの添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル反応(3つの1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。バイオ触媒1についてのリサイクル反応対リサイクル反応回数における最初の1M GLN溶液の変換の初速度の減少は表11に示されている(リサイクル反応は反応2〜4である)。
Figure 2008525030
(実施例21)
(さまざまな反応pHでA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138細胞を使用するグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた50−mLジャケット付き反応管にGA/PEI架橋カラギナンビーズ(実施例11に記載された方法を使用して調製)4gを充填し、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)を発現する5%(dcw)大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138を含有する0.1M NH4GLA(pH7.0)の72mL)で15分間2回洗浄した。次いで管には蒸留水10.88gおよび4.0M NH4GLA(pH7.5)2.98mL、70wt%グリコール酸(GLA)(アルドリッチ(Aldrich)または水中1:4希釈の水酸化アンモニウム(28−30wt%)のいずれかの適量を添加し(表12)、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌し、水中49.88wt%グリコロニトリル(GLN)2.15mL(2.25g、19.6mmol(フルカ(Fluka))を添加し、pH4.0、4.7、5.5、6.7、または7.5で1M GLNを得た(表13)。
4つの0.100−mL反応試料をGLN添加後の所定の時間に除去し、HPLCによって分析し、初期反応速度を測定した。各々のpHで実行される複製での速度の平均としての初期反応速度は表13に示されている。
Figure 2008525030
Figure 2008525030
(実施例22)
(シアン化水素(HCN)の存在または非存在下にA.ファシリス(facilis)72ニトリラーゼを発現する固定化大腸菌(E.coli)FM5/pNM18を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
オーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた50−mLジャケット付き反応管にGA/PEI架橋カラギナンビーズ(実施例11に記載された方法を使用して調製)4gを充填し、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)を発現する5%(dcw)大腸菌(E.coli)FM5/pNM18を含有する0.1M NH4GLA(pH7.5)72mL)で15分間2回洗浄した。次いで管には蒸留水10.9gおよび4.0M NH4GLA(pH7.5)3.0mLを添加し、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌し、水中50wt%HCN0.063mL(0.054g、1mmol)の有無による水中60.51wt%グリコロニトリル(GLN)の1.777mLのアリコート(1.885g、20.0mmol(フルカ(Fluka)、再蒸留))を最初に添加した直後に水中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:16希釈0.320mLを添加した。4つの0.100−mL反応試料を最初のGLN添加後の所定の時間に除去し、HPLCによって分析し、初期反応速度を測定した。GLN変換の完了時、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々の第2のアリコートを添加してGLNの濃度を<1MおよびpHを7.0−7.5の範囲内に維持し、GLN変換が完了した後、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々の第3のアリコートを添加した。反応の完了時、>99%の収量でグリコール酸(アンモニウム塩として)を生成するGLNの100%変換が認められ、添加GLNから生成されたグリコール酸アンモニウムの濃度はおよそ2.5Mであった(約23.7mLの最終反応体積で初期グリコール酸アンモニウム緩衝液を含む、3.0M総グリコール酸アンモニウム)。
第1の反応の終了時、水性生成物混合物を触媒から静かに注ぎ(窒素下)、次いで反応管には蒸留、脱イオン化水13.9mLを添加し、真上に記載した通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムのアリコートの添加によって25℃下に第2の反応を実行した。触媒リサイクルによる連続バッチ反応の初期反応速度は表14に示されている(リサイクル反応は反応2〜9である)。
Figure 2008525030
(実施例24)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを発現する固定化大腸菌(E.coli)FM5/pNM18を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムの加水分解の連続バッチ反応におけるホルムアルデヒドまたはシアン化水素のいずれかの添加の影響)
反応を実行し、特徴づけ、かつ水中60.51wt%グリコロニトリル(GLN)1.777mL(1.885g、20.0mmol(フルカ(Fluka)、再蒸留))の各々のアリコートが、水中37wt%HCHO 0.074mL(0.081g、1mmol)(リサイクル1、2、3、および6)または水中50wt%HCN 0.063mL(0.054g、1mmol)(リサイクル4、5、およ7)のいずれかを含むことを除き、HCNの添加なしの反応のために実施例23に記載された通りバイオ触媒をリサイクルした(表15)。HCHOまたはHCNの添加なしの反応のデータは比較のために表14から反復されている。
Figure 2008525030
(実施例25)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ突然変異L201Qを発現する大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−L201Q細胞を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
50−mL遠心分離管にA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異L201Q(配列番号8)を発現する大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−L201Q 6gおよび0.35M Na2HPO4(pH7.5)7.54mL、0.35M Na2HPO4(pH7.5)35mLを添加し、管を5000rpmで20分間遠心分離し、上清を注意深く、かつ完全に細胞ペーストから除去し、遠心分離細胞ペースト935mgをオーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた150−mLジャケット付き反応管に移した。次いで管には0.3M NH4GLA(pH7.5)52.54mL、4.0M NH4GLA(pH7.5)7.88mL、および蒸留水9.63mLを添加し、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌し、水中54.61wt%グリコロニトリル(GLN)7.82mL(8.18g、78.3mmol(フルカ(Fluka))を添加し、pHを水中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:4希釈によってpH7.5に調節した。初期反応速度を測定するために、4つの0.050−mL反応試料を第1のGLNの添加後の所定の時間に除去し、アッセイ混合物(6.0N HCl 0.025mLおよび0.18M n−プロパノール0.800mL)に添加し、ボルテックスし、12,000rpmで6分間、遠心分離し、上清を実施例2に記載されている通りHPLCによって分析した。GLN変換の完了時、GLNの第2のアリコートを添加し、pHを水酸化アンモニウムで7.5に調節し、GLN変換が完了した後、第3のGLNアリコートを添加し、pHをpH7.5に調節した。反応の完了時、>99%収量でグリコール酸(アンモニウム塩として)を生成するGLNの100%変換が認められ、添加GLNから生成されたグリコール酸アンモニウムの濃度はおよそ2.5Mであった(約94.05mLの最終反応体積で初期グリコール酸アンモニウム緩衝液を含む、2.9M総グリコール酸アンモニウム)。
第1の反応の終了時、水性生成物混合物を細胞ペーストから遠心分離した(5000rpm、20分)。細胞ペーストを秤量し、元の反応管に移した。次いで管には0.3M NH4GLA(pH7.5)52.54mL、4.0M NH4GLA(pH7.5)7.88mL、および蒸留水9.63mLを添加し、反応管を窒素で洗い流し、第2の反応を真上に記載されている通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムのアリコートの添加によって25℃下に実行した。上記の反応溶液の遠心分離による反応4後に回収された細胞ペーストの重量は964mgであった。
触媒リサイクルとの連続バッチ反応の初期反応速度は表16に示されている(リサイクル反応は反応2〜4である)。
Figure 2008525030
(実施例26)
(A.ファシリス(facilis)72WニトリラーゼまたはA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ突然変異を発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
オーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた50−mLジャケット付き反応管にGA/PEI架橋カラギナンビーズ(実施例11に記載された方法を使用して調製)8gを充填し、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)、またはA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異F168V(配列番号32)、F168M(配列番号28)、F168K(配列番号26)、F168T(配列番号30)、およびL201Q(配列番号8)を発現する5%(dcw)大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を含有する0.1M NH4GLA(pH7.0)72mL)で15分間2回洗浄した。次いで管には蒸留水14.632gおよび4.0M NH4GLA(pH7.0)6.0mLを添加し、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌すると同時にプログラム可能な注射器ポンプを使用し、水中59wt%グリコロニトリル(GLN)(1.14g、12.0mmol(フルカ(Fluka)、再蒸留)1.08mLおよび水(合計2.304mL)中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:16希釈0.288mLの8つのアリコートを添加し、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々1つのアリコートを2時間毎に同時に添加し、GLNの濃度を<400mMおよびpHを6.5−7.5の範囲内に維持した。4つの0.050−mL反応試料をGLN添加後の所定の時間に除去し、HPLCによって分析し、初期反応速度を測定した。反応の完了時、>99%の収量でグリコール酸(アンモニウム塩として)を生成するGLNの100%変換が認められ、添加GLNから生成されたグリコール酸アンモニウムの濃度はおよそ2.4Mであった(約39.5mLの最終反応体積で初期グリコール酸アンモニウム緩衝液を含む、3.0M総グリコール酸アンモニウム)。
第1の反応の終了時、水性生成物混合物を触媒から静かに注ぎ(窒素下)、固定化細胞触媒(8.0g)と残りの生成物混合物(約2.3g)の混合物約10.3gを残した。次いで、反応管には蒸留、脱イオン化水18.3mLを添加し、真上に記載した通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムのアリコートの添加によって25℃下に第2の反応を実行した。触媒リサイクルによる連続バッチ反応の初期反応速度は表17に示されている(リサイクル反応は反応2〜55である)。
触媒生産性(生成された総グラムGLA/グラム乾燥細胞重量(dcw)酵素触媒)を結果としてグリコロニトリルの100%変換をもたらした触媒リサイクルとの連続バッチ反応の総数から各々のニトリラーゼについて計算した。各々の酵素触媒についての触媒生産性は以下の通りであった。すなわち、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168V、GLA/g dcw(55連続バッチ反応)1001g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168M、GLA/g dcw(26連続バッチ反応)473g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168K、GLA/g dcw(26連続バッチ反応)473g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168T、GLA/g dcw(20連続バッチ反応)364g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−L201Q、GLA/g dcw(19連続バッチ反応)346g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138、GLA/g dcw(10連続バッチ反応)182g。
Figure 2008525030
Figure 2008525030
(実施例27)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異F168Vを発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を使用するGLNの変換によって得られるグリコール酸アンモニウムの特性化)
固定化MG1655/pSW138−F168Vバイオ触媒によるGLN(フルカ(Fluka)、再蒸留)加水分解(実施例26、表17を参照)によって得られる生成物溶液の組成物を評価するために、反応5、10、および38で生成された生成物溶液をHPLCおよび1H NMR分光法によって特性化した。HPLCによって測定されたグリコール酸の濃度は3.1Mであった。量的1H NMRスペクトルを500MHzで作動するバリアン・ユニティー・イノバ(Varian Unity Inova)分光計(バリアン(Varian)社(Inc.)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto、CA))を使用して得た。反応生成物150μLをD2O 400μLとともに5mmのNMR管に添加することによって試料を調製した。
1H NMRスペクトルを5ppm、および90度パルス(49dbのトランスミッタ出力で5.9マイクロ秒)で配置したトランスミッタにより6000Hzのスペクトル幅を使用して取得した。48,000点の総データサイズをもたらす4秒の取得時間を使用した。最長の1H T1(8秒)はメタノールCH3陽子と関連し、したがって、取得前の総遅延時間は50秒(すなわち、メタノールCH31の5倍超)に設定した。この前遅延時間は、単純遅延時間(「d1」)と−6dbのトランスミッタ出力での残留水の共鳴に適用される30秒の溶媒飽和パルスとの間で分割された。32スキャンの信号加算平均に先立ち、4つの定常状態(「ダミー」)スキャンがあり、およそ32分の総実験時間を示した。割当は1H NMR化学シフトを以前の二次元NMR相関実験で得られたものと比較することによって、かつスパイク実験によって得られた。
1H NMR分光法によってグリコール酸アンモニウム生成物溶液で得られた不純物は、その官能基に基づき、以下の官能基カテゴリーに分類された。すなわち、ホルムアルデヒド由来、ギ酸由来、メタノール由来、およびメチル由来。カテゴリーの各々の陽子信号の積分ピーク面積は以下の通り割当てられた。すなわち、2つの陽子はホルムアルデヒド官能性に割当てられ、1つの陽子はギ酸官能性に割当てられ、3つの陽子はメタノール官能性に割当てられ、かつ3つの陽子はメチル官能性に割当てられた。グリコール酸アンモニウムの集積ピーク面積は2(グリコール酸アンモニウム陽子の数)で割られ、100%の値が割当てられた。不純物官能基カテゴリーの各々で確認された集積ピーク面積を対応する電子の数で割り(上記参照)、結果として生じる集積ピーク面積を存在するグリコール酸アンモニウムの濃度に対して不純物のパーセント濃度を測定する試料に存在する1つのグリコール酸陽子の集積ピーク面積で割った。グリコール酸アンモニウムの収量(GLNの100%変換に基づく)およびグリコール酸アンモニウムの%純度(グリコール酸および総不純物の相対濃度に基づく)は表17に示されている。
Figure 2008525030
(実施例28)
(固定床イオン交換クロマトグラフィーによるグリコール酸アンモニウムからのグリコール酸の単離)
同時係属の(特許文献42)(参照により本明細書で援用される)の実施例4−8に記載されたシアン化水素およびホルムアルデヒドから合成されたGLNを、添加剤なしに(反応体積を18倍に拡大したことを除き)、実施例12に記載されている通りグリコール酸アンモニウムに変換し、固定床イオン交換を使用し、グリコール酸アンモニウム生成物溶液をグリコール酸に変換した。
テフロン(Teflon)(登録商標)PTFEエンドキャプおよびH+形態でのDowex(登録商標)G−26強酸陽イオン樹脂(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co)を備えた5cm内径×60cmホウケイ酸ガラスカラム(スペクトル−クロマトグラフィー)を使用した。5ガロンポリプロピレン供給水差しを使用し、樹脂の前後洗浄のために超高純度水(Sybron−Barnstead Nanopure II unitによって製造された18+MΩ)をカラム供給ポンプ(オールテフロン(Teflon)(登録商標)ヘッド付のCole−Parmer可変速隔膜ポンプ)に供給した。水差しをつねに窒素パージし、大気CO2の吸収を阻止した。充填カラム(初期高=23”、床体積=1147mL)を>5MΩの流出物に超高純度水で前洗浄後、グリコール酸アンモニウム(1.3リットル(1428g)、pH=7.09)を40mLで床上向流にポンプで通し、グリコール酸が使い果たされるとユニットを同一の速度でポンピングする超高純度水に切替え、供給材料を床に押通し続けた。実行中、カラム流出物を前洗浄HDPP(高密度ポリプロピレン)試料瓶を使用して連続的に50mL増分で捕捉し、合計38の流出物の50−mL試料を連続的に採取し、pH(pH計)、グリコール酸濃度(HPLC)、およびアンモニウムイオン含有量(イオンクロマトグラフィーによる)について分析した。
アンモニウムイオン含有量の測定は、CD20導電性検出器を備えたDionex IP25ポンプおよびDionex CS17カラム(3−11mMスルホン酸メタン、1.0mL/分、100マイクロアンプに設定したDionex CSRSウルトラで抑制、1.0mL/分、100マイクロリットル試料ループ)を使用して行い、陽イオン3−11mM CS17法を分析に適用した。
フラクション12〜23を複合し(総600mL)、一夜、新鮮なDowex(登録商標)G−26樹脂(脱イオン化水45mLで20分間、3回前洗浄)5gで攪拌し、グリコール酸溶液651gをろ過によって収集した。溶液を回転蒸発によって濃縮し、70wt%グリコール酸(生成物140g)を生成した。不純物についての70wt%グリコール酸の分析は、グリコール酸の純度が99.9%を上回ることを示した。

Claims (32)

  1. グリコロニトリルからグリコール酸を製造する方法であって、
    a)グリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させるステップであって、前記ポリペプチドが、
    1)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
    2)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
    からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
    (b)塩または酸の形で(a)において製造されるグリコール酸を回収するステップを含み、前記酵素触媒が、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供することを特徴とする方法。
  2. 前記アミノ酸配列が、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および32からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記酵素触媒が、同一の反応条件下でA.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)の活性に対してグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、ニトリラーゼ活性の少なくとも約2倍の改善を提供する改善されたニトリラーゼ触媒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記酵素触媒が、同一の反応条件下でA.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)の活性に対してグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、ニトリラーゼ活性の少なくとも約4倍の改善を提供する改善されたニトリラーゼ触媒であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  5. 前記酵素触媒が全微生物細胞、透過性微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つまたは複数の細胞成分、部分的に精製された酵素、または精製酵素の形であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記全微生物細胞が前記ポリペプチドを組換え発現する形質転換微生物宿主細胞であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記形質転換微生物宿主細胞が、コマモナス(Comamonas)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、アゾトバクター(Azotobacter)種、シトロバクター(Citrobacter)種、エンテロバクター(Enterobacter)種、クロストリジウム(Clostridium)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、サルモネラ(Salmonella)種、ラクトバチルス(Latobacillus)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、サッカロミセス(Saccharomyces)種、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)種、ピチア(Pichia)種、クルイベロミセス(Kluyveromyces)種、カンジダ(Candida)種、ハンセニュウラ(Hansenula)種、デュナリエラ(Dunaliella)種、デバリオミセス(Debaryomyces)種、ケカビ(Mucor)種、トルロプシス(Torulopsis)種、メチロバクテリア(Methylobacteria)種、バチルス(Bacillus)種、エシェリキア(Escherichia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、リゾビウム(Rhizobium)種、およびストレプトミセス(Streptomyces)種からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  8. 前記形質転換微生物宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 前記形質転換微生物宿主細胞が、国際寄託番号ATCC47076を有する大腸菌(E.coli)MG1655および国際寄託番号ATCC53911を有する大腸菌(E.coli)FM5からなる群から選択される大腸菌(Escherichia coli)株であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記酵素触媒が可溶性または不溶性支持体中にもしくはその上で固定化されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記水性反応混合物において製造されるグリコール酸アンモニウムの濃度が約0.02wt%〜約90wt%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 前記水性反応混合物において製造されるグリコール酸アンモニウムの濃度が約0.02wt%〜約40wt%であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 前記水性反応混合物におけるグリコロニトリル濃度が約5mM〜約1Mの範囲であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  14. 前記水性反応混合物におけるグリコロニトリル濃度が連続的またはアリコート添加によって維持されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 前記水性反応混合物におけるpHが約5.5〜約7.7に維持されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  16. グリコロニトリルのグリコール酸への酵素変換が実質的に酸素を含まない条件下で起こることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  17. 前記水性反応混合物が、5wt%未満の濃度でチオ硫酸カリウムおよび亜ジオチオン酸ナトリウムからなる群から選択される安定剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  18. 前記酵素触媒がリサイクルされた酵素触媒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  19. 前記酵素触媒が乾燥細胞重量酵素触媒のグラム当り少なくとも300グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  20. 前記酵素触媒が乾燥細胞重量酵素触媒のグラム当り少なくとも450グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供することを特徴とする請求項19に記載の方法
  21. 前記酵素触媒が乾燥細胞重量酵素触媒のグラム当り少なくとも1000グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供することを特徴とする請求項20に記載の方法
  22. ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離核酸分子であって、前記ポリペプチドが、
    a)アミノ酸残基168でのメチオニン、またはトレオニンによる置換、および
    b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
    からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、前記ポリペプチドが、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供することを特徴とする単離核酸分子。
  23. 配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、28、および30からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードすることを特徴とする請求項22に記載の単離核酸分子。
  24. 配列番号7、9、11、13、15、17、19、21、23、27、および29からなる群から選択される核酸配列を有することを特徴とする請求項23に記載の単離核酸分子。
  25. 適切な調節塩基配列に機能しうるように連結された請求項22から24のいずれか一項に記載の単離核酸分子を含むことを特徴とするキメラ遺伝子。
  26. 請求項25に記載のキメラ遺伝子を含むことを特徴とする発現カセット。
  27. 請求項26に記載の発現カセットを含むことを特徴とする形質転換宿主細胞。
  28. 前記宿主細胞が、コマモナス(Comamonas)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、アゾトバクター(Azotobacter)種、シトロバクター(Citrobacter)種、エンテロバクター(Enterobacter)種、クロストリジウム(Clostridium)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、サルモネラ(Salmonella)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、サッカロミセス(Saccharomyces)種、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)種、ピチア(Pichia)種、クルイベロミセス(Kluyveromyces)種、カンジダ(Candida)種、ハンセニュウラ(Hansenula)種、デュナリエラ(Dunaliella)種、デバリオミセス(Debaryomyces)種、ケカビ(Mucor)種、トルロプシス(Torulopsis)種、メチロバクテリア(Methylobacteria)種、バチルス(Bacillus)種、エシェリキア(Escherichia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、リゾビウム(Rhizobium)種、およびストレプトミセス(Streptomyces)種からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の形質転換宿主細胞。
  29. 前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)であることを特徴とする請求項28に記載の形質転換宿主細胞。
  30. 前記宿主細胞が、国際寄託番号ATCC47076を有する大腸菌(E.coli)MG1655、および国際寄託番号ATCC53911を有する大腸菌(E.coli)FM5からなる群から選択されることを特徴とする請求項29に記載の形質転換宿主細胞。
  31. ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、
    a)アミノ酸残基168でのメチオニン、またはトレオニンによる置換、および
    b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
    からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、前記ポリペプチドが、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換させる場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供することを特徴とする単離ポリペプチド。
  32. 配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、28、および30からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードすることを特徴とする請求項31に記載の単離ポリペプチド。
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