JP4928467B2 - ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法 - Google Patents

ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機酸合成、分子生物学、および微生物学の分野に関する。より具体的には、ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法が、ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒を使用することにより提供される。
本出願は、米国仮特許出願第60/638,168号明細書、米国仮特許出願第60/638,148号明細書、米国仮特許出願第60/638176号明細書、米国仮特許出願第60/638,127号明細書、米国仮特許出願第60/638,128号明細書、および米国仮特許出願第60/638,126号明細書の利益を主張するが、各々2004年12月22日に出願されたものである。
グリコール酸(HOCH2COOH、CAS登録番号は79−14−1)は、カルボン酸のα−ヒドロキシ酸ファミリーの最も単純なメンバーである。その特性は、ポリグリコール酸(PGA)の調製におけるモノマーとして、およびパーソナルケア製品における構成要素として、井戸改修、皮革工業、およびオイルやガス工業、洗濯および繊維工業における使用を含む広範囲の消費者および工業用途のために理想的である。グリコール酸は、さまざまな工業(乳および食品加工器具洗浄剤、家庭および工業用洗浄剤、工業洗浄剤[輸送器具、石造、プリント基板、ステンレス鋼ボイラーおよび加工器具、冷却塔/熱交換器用]、および金属加工[金属酸洗い、銅光沢、エッチング、電気メッキ、電気研磨用]における洗浄剤の主成分でもある。最近、ポリグリコール酸が、食品および炭酸飲料を包装するためのガスバリヤ材として有用である(すなわち、高い酸素バリヤ特性を示す)ことが報告されている(特許文献1)。しかし、グリコール酸の伝統的な化学合成では、ガスバリヤ材用のポリグリコール酸の調製における使用前に除去する必要がある相当な量の不純物が生成される。グリコール酸を商業的に製造する新しい技術、特に高純度かつ低費用でグリコール酸を製造する技術は、業界によって熱心に受入れられるであろう。
微生物触媒は、対応するアミドの中間生成はないニトリラーゼ(EC3.5.5.7)を使用し(式1)、または、ニトリルヒドラターゼ(NHase)が最初にニトリルをアミドに変換し、次いでアミドがその後にアミダーゼによって対応するカルボン酸に変換されるニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1.84)とアミダーゼ(EC3.5.1.4)との酵素の組合せによって(式2)、ニトリル(例えば、グリコロニトリル)を直接、対応するカルボン酸(例えば、グリコール酸)に加水分解しうる。
Figure 0004928467
グリコール酸の酵素合成は、グリコロニトリルの実質的に純粋な形態を必要とする。ホルムアルデヒドおよびシアン化水素の水溶液を反応させることによってグリコロニトリルを合成する方法が以前に報告されている(米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)、式3)。
(3)HCN+HCHO → HOCH2CN
しかし、これらの方法は一般的に結果として、不純物および/または反応の副産物(過剰な反応性ホルムアルデヒドを含む)の多くが、触媒不活性化を含む、グリコロニトリルのグリコール酸への酵素変換に干渉しうるため、大幅な精製(例えば、蒸留精製)を必要とする水性グリコロニトリル反応生成物をもたらす。酵素触媒の不活性化は、触媒の全体的な生産性(すなわち、触媒1グラム当りに形成されるグリコール酸の総グラム)を減少させ、全体的な方法に多大な費用を追加させるが、これが製造の化学的方法と比べ酵素製造方法を経済的に実行不可能にしうる。かかるものとして、不純物の少ないグリコロニトリルをもたらす反応条件、特に反応生成物における遊離ホルムアルデヒドの量に対処するものが必要である。グリコロニトリル合成条件は、1)全体的なグリコロニトリル収量を増大させ、2)望ましくない不純物および/または副産物を最小限に抑え、かつ3)酵素合成に適切なグリコロニトリル調製物を製造する費用を減少させることである。
開始材料として対応するα−ヒドロキシニトリルおよび触媒として微生物を使用するα−ヒドロキシ酸を調製するためのさまざまな方法が知られている。製造されるα−ヒドロキシ酸の例としては、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸、マンデル酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−4−ブチロラクトン、および4−メチルチオ酪酸が挙げられる。これらの生成物は、ノカルジア(Nocardia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、オウレオバクテリウム(Aureobacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、カセオバクター(Caseobacter)属、アルケリゲネス(Alcaligenes)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、アエロモナス(Aeromonas)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、エルビニア(Erwinia)属、カンジダ(Candida)属、バクテリジウム(Bacteridium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、コクリオボルス(Cochliobolus)属、フサリウム(Fusarium)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、オブスムバクテリウム(Obsumbacterium)属、およびゴルドナ(Gordona)属に属するものなどの微生物を使用して合成される。(米国特許公報(特許文献5)に対応する(特許文献6)、(特許文献7)、および(特許文献8)、米国特許公報(特許文献9)に対応する(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)に対応する(特許文献12)、(特許文献14)、米国特許公報(特許文献13)に対応する(特許文献15)、(特許文献16)に対応する(特許文献17)、(特許文献18)に対応する(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)に対応する(特許文献21))。
しかし、上記の対応するα−ヒドロキシニトリルからα−ヒドロキシ酸を調製するための最も周知の方法では、商業的需要に合致する十分な高濃度で生成物が製造され、蓄積されることはない。これはしばしば、反応期間の早期の酵素不活性化の結果である。米国特許公報(特許文献22)は、「α−ヒドロキシニトリルがニトリラーゼまたはニトリルヒドラターゼを使用して酵素的に加水分解または水和され、α−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシアミドを生成する場合、酵素は短時間内に不活性化されるという点で問題が生じる。したがって、α−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシアミドを高濃度および高収量で得ることは困難である。」ことを開示している(第1欄、49−54行)。反応混合物におけるアルデヒド濃度(アルデヒドおよびシアン化水素とのα−ヒドロキシニトリルの分離によって形成)および/またはα−ヒドロキシニトリル濃度を規定範囲内に維持することが、この問題を回避する1つの方法である。
米国特許公報(特許文献20)はさらに、迅速な酵素不活性化に関する難点に対処する。具体的には、米国特許公報(特許文献20)は、分離平衡化に従って、α−ヒドロキシニトリル化合物が部分的に対応するアルデヒドに分離することに言及している。これらのアルデヒドは、タンパク質との結合によって短時間内に酵素を不活性化し、それによって、α−ヒドロキシニトリルから高い生産性とともに高濃度でα−ヒドロキシ酸またはα−ヒドロキシアミドを得ることを困難にする(第2欄、16−29行)。アルデヒドの蓄積による酵素不活性化を阻止する解決法として、リン酸または次亜リン酸イオンが反応混合物に添加された。米国特許公報(特許文献13)では、亜硫酸イオン、二亜硫酸イオン、または亜ジチオン酸イオンが使用され、アルデヒドを抑制し、かつ酵素不活性化を阻止する。しかし、さらに上記の通りかかる添加剤によって製造され、蓄積されるα−ヒドロキシ酸の濃度は大きくない。
米国特許公報(特許文献23)は、α−ヒドロキシ酸生成物の低い蓄積が分離アルデヒド蓄積による短時間内の酵素不活性化に関係していることを開示している。これらの発明者は、酵素活性が、対応するアルデヒドまたはケトンと共に水中でα−ヒドロキシニトリルの部分分離において生成される(非特許文献1)シアン化水素の存在下に阻害されることを示している(非特許文献2)。これらの発明者は、その酵素活性が、反応混合物にシアン化物を添加することによって改善されうる微生物を使用することによってアルデヒド誘発酵素不活性化の課題を解決した。シアン化物の添加は、アルデヒドおよびシアン化水素とのα−ヒドロキシニトリルの分離を制限した。
特にグリコール酸の製造に関して、グリコロニトリルが、そのいずれかが酵素不活性化に関与しうる、シアン化水素およびホルムアルデヒドと可逆的に分離することが知られている。米国特許公報(特許文献24)は、「ニトリラーゼ」活性を有する細菌を使用する対応するニトリルから有機酸を調製する方法を記載し、基質としてのグリコロニトリルをリストアップしている。具体的には、この特許は、この目的のためのバチルス(Bacillus)、バクテリジウム(Bacteridium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)の使用を記載している。ニトリラーゼ活性を有すると記載されているが、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)R312は、米国特許公報(特許文献24)の実施例のすべてにおいて使用される唯一の株である。ブレビバクテリウム(Brevibacterium)R312は、ニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ活性を有するが、ニトリラーゼ活性を有さないことが知られている(非特許文献3)。
コリネバクテリウム(Corynebacterium)種に属する微生物を使用することによって乳酸、グリコール酸、および2−ヒドロキシイソ酪酸を調製する方法が、(特許文献25)に開示されている。(特許文献26)は、ロドコッカス(Rhodococcus)またはゴルドナ(Gordona)ヒドロラーゼの作用によってグリコロニトリルからグリコール酸を製造するための方法を開示している。グリコール酸の選択性は、グリコール酸アミドの形成なしにほぼ100%と報告されている。米国特許公報(特許文献23)は、グリコール酸を含む、α−ヒドロキシニトリルからα−ヒドロキシ酸を製造するための方法の実施例を開示している。この開示により、すべての微生物触媒が前記課題により高濃度のグリコール酸を製造できるわけではないことが認められ、産業上、有利な微生物を見出すためにスクリーニング試験を行う必要があることが示される。米国特許公報(特許文献23)は、具体的には、バリオボラックス(Variovorax)種およびアルスロバクター(Arthrobacter)種を同定している。α−ヒドロキシニトリルまたはα−ヒドロキシ酸の抑制効果に耐性である微生物は、耐久性の活性を有し、高濃度で所望の生成物を製造しうる。
アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W(ATCC55746)は、脂肪族ニトリラーゼ(EC3.5.5.7)活性のほか、ニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1.84)活性およびアミダーゼ(EC3.5.1.4)活性の組合せによって特徴づけられる。A.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼをコードする遺伝子はクローン化され、組換え発現されている(米国特許公報(特許文献27)に対応する(特許文献28)および(非特許文献4))。A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼは、グリコール酸(米国特許公報(特許文献29))を含む、α−ヒドロキシニトリルを対応するα−ヒドロキシカルボン酸に高い収量で変換する(米国特許公報(特許文献30))。しかし、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼに対して改善されたニトリラーゼ活性を有する酵素触媒は、100%までの変換で高い収量でグリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合に、グリコール酸を製造する費用の削減においてきわめて有用となる。
酵素触媒を使用するグリコール酸を経済的に製造する方法は、1)高純度のグリコロニトリルの供給源、2)高純度による高濃度でグリコロニトリルをグリコール酸に変換しうる酵素触媒の使用、および3)製造されるグリコール酸を回収する方法を必要とする。1つの実施形態において、この方法は、高い触媒生産性(kgグリコール酸/kg酵素触媒)および容積生産性(グリコール酸/L/時のグラム)を有する酵素触媒の使用を含む。酵素触媒は多重連続バッチ反応、またはグリコロニトリルの一定の添加およびグリコール酸の除去を使用する連続反応で使用でき、いずれかの操作モードにおいて、触媒活性および寿命は高い容積生産性および触媒生産性が得られるようになり、かつバッチ反応の場合には、触媒は連続バッチ反応間の酵素活性の大幅な喪失なしに多重反応サイクルで利用されなければならない。グリコロニトリル加水分解に対する改善された活性を有するニトリラーゼは容積生産性における改善を提供しうる。グリコロニトリル反応混合物における遊離ホルムアルデヒド(およびおそらく他の不純物)の不活性化効果が、さまざまな程度にすべてのニトリラーゼ触媒に好ましくない影響を及ぼすという事実を踏まえて、グリコロニトリルの加水分解のための反応条件下で酵素活性を安定化する改善(結果として触媒生産性の相対的増大をもたらす)も必要である。
酵素触媒を使用するグリコロニトリルのグリコール酸への酵素変換は通常、結果として、主にグリコール酸アンモニウムを含む水溶液の製造をもたらす(すなわち、反応は一般的に約6〜約9のpHで実行される)。イオン交換(陰イオンおよび/または陽イオン)、電気透析、反応性溶媒抽出、重合、熱分解(塩クラッキング)、アルコール分解、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない、グリコール酸アンモニウムの水溶液からグリコール酸を得るさまざまな方法が使用されうる。
国際公開第2005/106005A1号パンフレット 米国特許第2,175,805号明細書 米国特許第2,890,238号明細書 米国特許第5,187,301号明細書 米国特許第5,223,416号明細書 特開平04−99495号公報 特開平04−99496号公報 特開平04−218385号公報 米国特許第5,234,826号明細書 特開平04−99497号公報 米国特許第5,296,373号明細書 特開平05−95795号公報 米国特許第5,326,702号明細書 特開平05−21987号公報 特開平05−192189号公報 欧州特許第0610048A号明細書 特開平06−237789号公報 欧州特許第0610049A号明細書 特開平06−284899号公報 米国特許第5,508,181号明細書 特開平07−213296号公報 米国特許第5,756,306号明細書 米国特許第6,037,155号明細書 米国特許第3,940,316号明細書 特開昭61−56086号公報 特開平09−28390号公報 米国特許第6,870,038号明細書 国際公開第01/75077号パンフレット 米国特許第6,416,980号明細書 米国特許第6,383,786号明細書 米国特許第10/919182号明細書 欧州特許第546049号明細書 国際公開第93/24631号パンフレット 米国特許第2004/0210087号明細書 米国特許第6,291,708 B1号明細書 米国特許第6,251,650号明細書 米国特許第5,858,736号明細書 米国特許第5,922,589号明細書 米国特許第10/977893号明細書 モイリー(Mowry)、デービッド(David)T.、Chemical Reviews, 第42巻、189−283頁(1948年) アサノ(Asano)ら、Agricultural Biological Chemistry、第46巻、1165−1174頁(1982年) ツルネイックス(Tourneix)ら、Antonie van Leeuwenhoek、52:173−182頁 (1986年) チャーハン(Chauhan)ら、Appl Microbiol Biotechnol、61:118−122頁(2003年) Nucleic Acids Research 13:3021−3030頁(1985年) Biochemical Journal 219(第2号):345−373頁(1984年) オウチクロフ(Outchkourov)ら、Protein Expr Purif、24(1):18−24頁(2002年) フェング(Feng)ら、Biochemistry,39(50):15399−15409頁(2000年)) コワン(Cowan)ら、Extremophiles、2:207−216頁(1998年) ペース(Pace),H.およびブレナー(Brenner),C.、Genome Biology、2(1):reviews 1−9頁(2001年) Methods in Biotechnology、第1巻:Immobilization of Enzymes and Cells、ゴルドン(Gordon)F.ビッカースタッフ(Bickerstaff)編、フマーナ・プレス(Humana Press)、、ニュージャージー州トトワ(Totowa、NJ)、米国(USA)、1997年 Recombinant Microbes for Industrial and Agricultural Applications、ムロッカ(Murooka)ら編、マルセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、、ニューヨーク州ニューヨーク(New York、NY)(1994年) トーマス(Thomas)D.ブロック(Brock)、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版(1989年)シナウアー・アソシエーツ社(Sinauer Associates,Inc.)、、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland、MA)(1989年) デスパンデ(Deshpande)、ムクンド(Mukund)V.、Appl.Biochem.Biotechnol.36(3): 227−234頁(1992年) Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、第7版、ペリー(Perry)、ロバート(Robert)H.、グリーン(Green)、ダウ(Dow) W.、およびマロニー(Maloney)、ジェームス(James)O.編、マグロウヒルカンパニー社(McGraw Hill Companies,Inc.)、、ニューヨーク州ニューヨーク(New York、NY)、1997年 ワセワル(Wasewar)ら、J.Biotechnol.、97:59−68頁 (2002年) タマダ(Tamada)ら、Ind.Eng.Chem.Res.29:1319−1326頁(1990年)、 タマダ(Tamada)ら、Ind.Eng.Chem.Res.29:1327−1333頁(1990年) インシ(Inci),I.(Chem.Biochem.Eng.Q.,16(2):81−85頁(2002年) インシ(Inci),I.およびウスル(Uslu), H.、J.Chem.Eng.Data、50:536−540頁(2005年) アザ(Azza)ら、(FEMS Microbiol.Lett.、122:129頁(1994年)) コバヤシ(Kobayashi)ら(Eur.J.Biochem.、217:327頁(1993年)) ウー(Wu)ら(DNA Cell Biol.、17:915−920頁)(1998年)) T.J.シルハビー(Silhavy)、M.L.ベナン(Bennan)、およびL.W.エンクイスト(Enquist)、Experiments with Gene Fusions、(1984年)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールドスプリング(Cold Spring)、ニューヨーク州(NY) オーズベル(Ausbel),F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、(1994−1998年)ジョン・ワイリー(John Wiley)&サンズ(Sons)社(Inc.)、ニューヨーク(New York)
解決すべき課題は、高い収量および高純度で(酸の塩の形で)グリコール酸を製造する方法を提供することである。1つの実施形態において、所望の方法は、1)グリコール酸アンモニウムへの酵素変換に適切なホルムアルデヒドおよびシアン化水素からのグリコロニトリル(すなわち「高純度」グリコロニトリル)を含む水溶液の調製、2)高純度のグリコロニトリルをグリコール酸アンモニウムに加水分解するニトリラーゼ活性を有する酵素触媒の使用、および3)グリコール酸アンモニウムから高純度のグリコール酸を得る方法を含むものとする。別の実施形態において、この方法は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対して改善されたニトリラーゼ活性(それによって容積生産性を増大させる)を有する酵素触媒、および触媒の安定性および生産性を改善する反応条件の使用を含む。
本課題は、
a)特定可能な時間にわたって約90℃〜約150℃の温度に加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れを提供するステップと、
b)(a)の加熱された水性供給流れをグリコロニトリル合成に適切な温度でシアン化水素と接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと、
c)ステップ(b)で製造されるグリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させるステップであって、前記ポリペプチドが、
(1)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
(2)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、それによってグリコール酸が塩または酸の形で製造され、前記酵素触媒が、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合に、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼ触媒のニトリラーゼ活性に対して少なくとも1.5倍の増加を提供するステップと、
d)塩または酸の形で(c)において製造されるグリコール酸を回収するステップと
を含むホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造する方法を提供することによって解決されている。
1つの実施形態において、ステップd)におけるグリコール酸を回収する方法は、イオン交換、電気透析、反応性溶媒抽出、熱分解、アルコール分解、重合、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
本方法を使用して製造される高純度のグリコロニトリルは、イオン交換と組合せてニトリラーゼ活性(すなわち、ニトリラーゼ)を有するポリペプチドを含む酵素触媒を使用する場合に高純度のグリコール酸の製造を可能にする。かかるものとして、
(a)特定可能な時間にわたって約90℃〜約150℃の温度に加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れを提供するステップと、
(b)(a)の加熱された水性供給流れをグリコロニトリル合成に適切な温度でシアン化水素と接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと、
(c)ステップ(b)のグリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させ、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
(d)イオン交換によって(c)において製造されたグリコール酸を回収するステップであって、前記グリコール酸が少なくとも99.9%の純度を有するステップと
を含む、ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法が提供される。
(図面、配列表、および生物寄託の簡単な説明)
本発明は、図面、配列表、生物寄託、および本出願を同時に形成する詳細な説明からより完全に理解されうる。
(配列表)
以下の配列の説明および本明細書に添付された配列表は、37C.F.R.§1.821〜1.825に記載された特許出願におけるヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の開示を規定する規則に従うものである。配列の説明は、参照により本明細書で援用される、(非特許文献5)および(非特許文献6)に記載されたIUPAC−IYUB標準に従って定義されたヌクレオチド配列の特徴を表す1文字表記およびアミノ酸を表す3文字表記を含む。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号および書式は、37C.F.R.§1.822に記載された規則に従うものである。
配列番号1は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列を増幅するために使用されるプライマー165のヌクレオチド配列である。増幅PCR生成物はその後にpUC19へクローン化され(ニュー・イングランド・バイオラブス(New England Biolabs)、Bevery、マサチューセッツ州(MA)、GenBank(登録商標)L09137)、プラスミドpSW138を作る。
配列番号2は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列を増幅するために使用されるプライマー166のヌクレオチド配列である。増幅PCR生成物はその後にpUC19へクローン化され(ニュー・イングランド・バイオラブス(New England Biolabs)、Bevery、マサチューセッツ州(MA)、GenBank(登録商標)L09137)、プラスミドpSW138を作る。
配列番号3は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを増幅するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号4は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを増幅するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号5は、大腸菌(E.coli)における組換え発現を促進するTTGからATGへの開始コドンにおける変化を含むアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列のヌクレオチド配列である。
配列番号6は、大腸菌(E.coli)における組換え発現を促進するTTGからATGへの開始コドンにおける変化を含む配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされるアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼの推定アミノ酸配列である。
配列番号7は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換をもたらした(L201Q、Leu→Gln)。
配列番号8は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201(Leu201→Gln)での単一アミノ酸置換を含む変異ニトリラーゼ(配列番号7)の推定アミノ酸配列である。
配列番号9は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201で単一アミノ酸置換(L201A、Leu→Ala)をもたらした。
配列番号10は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Ala)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号9)の推定アミノ酸配列である。
配列番号11は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201C、Leu→Cys)をもたらした。
配列番号12は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Cys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号11)の推定アミノ酸配列である。
配列番号13は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201C、Leu→Thr)をもたらした。
配列番号14は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Thr)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号13)の推定アミノ酸配列である。
配列番号15は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201G、Leu→Gly)をもたらした。
配列番号16は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(L201→Gly)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号15)の推定アミノ酸配列である。
配列番号17は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201H、Leu→His)をもたらした。
配列番号18は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(L201→His)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号17)の推定アミノ酸配列である。
配列番号19は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201K、Leu→Lys)をもたらした。
配列番号20は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(L201→Lys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号19)の推定アミノ酸配列である。
配列番号21は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201K、Leu→Asn)をもたらした。
配列番号22は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Asn)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号21)の推定アミノ酸配列である。
配列番号23は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置201での単一アミノ酸置換(L201S、Leu→Ser)をもたらした。
配列番号24は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置201での単一アミノ酸置換(Leu201→Ser)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号23)の推定アミノ酸配列である。
配列番号25は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168K、Phe→Lys)をもたらした。
配列番号26は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Lys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号25)の推定アミノ酸配列である。
配列番号27は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168M、Phe→Met)をもたらした。
配列番号28は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Met)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号27)の推定アミノ酸配列である。
配列番号29は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168T、Phe→Thr)をもたらした。
配列番号30は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Thr)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号29)の推定アミノ酸配列である。
配列番号31は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(F168V、Phe→Val)をもたらした。
配列番号32は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置168での単一アミノ酸置換(Phe168→Val)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号31)の推定アミノ酸配列である。
配列番号33は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(T210A、Thr→Ala)をもたらした。
配列番号34は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置210での単一アミノ酸置換(Thr210→Ala)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号33)の推定アミノ酸配列である。
配列番号35は、コドン変化を含むA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異のヌクレオチド配列であり、これは結果として残基位置168での単一アミノ酸置換(T210C、Thr→Cys)をもたらした。
配列番号36は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの残基位置210での単一アミノ酸置換(Thr210→Cys)を含む変異ニトリラーゼ(配列番号35)の推定アミノ酸配列である。
配列番号37は、大腸菌(E.coli)SS1001(ATCC PTA−1177、参照により本明細書で援用される米国特許公報(特許文献27)において発現されるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号38は、大腸菌(E.coli)SS1001(ATCC PTA−1177)において発現されるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号33)の推定アミノ酸配列である。
配列番号39は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチド間に保存された触媒部位のアミノ酸配列である。
(生物寄託)
以下の生物寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の下に行われた。すなわち、
Figure 0004928467
本明細書で使用される「ATCC」は、ATCC、10801 University Blvd.、Manassas、バージニア州(VA)20110−2209、米国(USA)に設置されたアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション国際寄託機関(American Culture Collection International Depository Authority)を指す。「国際寄託指定」はATCCによる寄託における培養に対する登録番号である。
リストアップされた寄託は、指示国際寄託において少なくとも三十(30)年間維持され、それを開示する特許の付与とともに一般の人々に利用可能となる。寄託の利用可能性は、政府の措置によって付与される特許権の特例において本発明を実践するための許可を構成することはない。
ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための総合的な方法が提供される。この方法は、加熱処理ホルムアルデヒドおよびシアン化水素をグリコロニトリル合成に適切な温度で接触させることによるグリコロニトリルの合成で開始される。この反応の生成物は、より少ない不純物を有するグリコロニトリルの水溶液である(例えば、未反応モノマー「遊離」ホルムアルデヒド)。高純度のグリコロニトリルは、その後にニトリラーゼ活性を有する酵素触媒と接触し、それによってグリコール酸アンモニウムを含む水溶液が生成される。次いで、高純度のグリコール酸(少なくとも99.9%の純度を有する)は、イオン交換などの方法を使用してグリコール酸アンモニウムから得ることができる。
1つの実施形態において、この方法では、同一条件下でアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72W(ATCC55746)ニトリラーゼ(配列番号6)のニトリラーゼ活性と比べると大幅な(すなわち、少なくとも1.5倍の)ニトリラーゼ活性の改善を提供するポリペプチドを含む酵素触媒が使用される。触媒活性の改善は、触媒生産性および容積生産性を増大させ、高純度のグリコール酸を製造する全体的な費用を減少させる。
別の実施形態において、酵素触媒は、
(a)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
(b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換による配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むニトリラーゼ活性の大幅な改善を有する。
さらなる実施形態において、酵素触媒は、酵素触媒の1グラム乾燥細胞重量当り少なくとも300グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供する。
グリコロニトリルを含む水溶液は、反応物のpHが一般的に約pH6〜約pH8(グリコール酸のpKa約3.83)に維持されるニトリラーゼ活性を有する酵素触媒を使用してグリコール酸(グリコール酸アンモニウム)のアンモニウム塩に変換される。次いで、イオン交換、電気透析、反応性溶媒抽出、熱分解(塩クラッキング)、アルコール分解、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されないさまざまな方法が、グリコール酸アンモニウムの水溶液からグリコール酸を得るために使用されうる。当業者は、グリコール酸のための好ましい単離/精製法が、エネルギー費用、副産物値、廃棄物処理費用、資本設備投資、資金調達の機会のほか、環境的配慮を含む地域法、州法、および国内法、規定および規制など土地にまつわる特殊要因によって決定されることを認めるであろう。
酵素触媒の安定性および生産性を改善し、それによって触媒費用および製造の全体的な費用を減少させるいくつかの方法の条件も提供される。これらの方法の条件としては、1)酵素触媒の活性を安定化する添加剤の使用、2)実質的に酸素を含まない条件下の酵素触媒反応の実行、および3)グリコロニトリルの標的濃度が維持されるように反応混合物へのグリコロニトリルの供給速度の制御が挙げられる。
(定義)
本開示において、多くの用語および略語が使用される。以下の定義が、別段の規定がない限り適用される。
本明細書で使用される「を含む」は、請求の範囲において言及された規定された特徴、整数、ステップ、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分、またはそれのグループの存在または付加を排除することはない。
本明細書で使用される、使用される発明の成分または反応物質の量を修正する「約」という語は、例えば、現状で濃縮物製造または溶液使用のために使用される典型的な測定および液体処理手順を通じて、これらの手順における不注意による誤りを通じて、組成物を製造し、または方法を実行するなどために使用される成分の製造、供給源、または純度の差異を通じて生じる数量のばらつきを指す。「約」という語は、特定の初期混合物に由来する組成物に対する異なる平衡条件により異なる量をも包含する。「約」という語によって修正されているかどうかに関係なく、請求の範囲は、量の同等物を含む。1つの実施形態において、「約」という語は、報告された数値の10%以内、好ましくは、報告された数値の5%以内を意味する。
本明細書で使用される「回収」は、本方法によって形成される生成物の単離、精製、または移動を意味する。当技術分野で公知である反応混合物から生成物を単離し、精製する方法は、選択的沈殿、結晶化、ろ過、反応性溶媒抽出、イオン交換、電気透析、重合、蒸留、熱分解、アルコール分解、カラムクロマトグラフィー、およびそれらの組合せを含みうるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、「回収」という語は、生成物混合物(一般的に酵素触媒のろ過後)を別の反応に移し、1つまたは複数の追加の生成物を作成することをも含みうる。好ましい実施形態において、イオン交換を使用してグリコール酸を回収する。
本明細書で使用される「グリコロニトリル」という語は「GLN」と略され、ヒドロキシアセトニトリル、2−ヒドロキシアセトニトリル、ヒドロキシメチルニトリル、およびCAS登録番号107−16−4の他のすべての同義語と同義である。
本明細書で使用される「グリコール酸」という語は「GLA」と略され、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエタン酸と同義であり、CAS登録番号79−14−1の他のすべての同義語である。本方法によって製造されるグリコール酸は、プロトン化したカルボン酸および/または対応するアンモニウム塩の形でありうる。
本明細書で使用される「グリコール酸アンモニウム」という語は、「NH4GLA」と略される。
本明細書で使用される「グリコールアミド」という語は、アンモニアのグリコール酸との反応由来のアミドであり、CAS登録番号598−42−5を有する化合物の他のすべての同義語を指す。
本明細書で使用される「グリコリド」という語は、CAS登録番号502−97−6の化合物を指す。
本明細書で使用される「ホルムアルデヒド」という語は「FA」と略され、ギ酸アルデヒド、メチルアルデヒド、オキソメタンと同義であり、CAS登録番号50−00−0の他のすべての同義語である。市販のホルムアルデヒドは一般的にモノマーホルムアルデヒド(「遊離ホルムアルデヒド」)および一部のメタノール(一般的に約1wt%〜約15wt%)とともにホルムアルデヒドのさまざまなオリゴマーからなる。
本明細書で使用される「シアン化水素」という語は、青酸、シアン化水素酸、およびCAS登録番号200−821−6の他のすべての同義語である。
本明細書で使用される「ホルムアルデヒド熱処理」、「加熱処理ホルムアルデヒド」、「ホルムアルデヒド供給流れの加熱」、「予熱ホルムアルデヒド」、および「加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れ」という語は、ホルムアルデヒド水溶液をシアン化水素と反応させる前に特定可能時間、所定温度にかける方法を記載するために使用される。本明細書で使用される「特定可能な時間」という語は、ホルムアルデヒド供給流れが規定温度に過熱される時間の量を指示するために使用される。ホルムアルデヒドが加熱処理される時間の最適な長さは容易に決定されうるとともに、熱処理システムおよび反応器の特定のデザインと組合せて選択温度によって調節されうる。熱処理の長さは、加熱供給流れにおけるモノマーホルムアルデヒドの量を最大限にするように選択される。モノマーホルムアルデヒドはシアン化水素と反応し、実質的により少ない不純物(すなわち、未反応ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドのポリマー形態と関連した不純物)を有するグリコロニトリル溶液を生成する。一般的に、熱処理期間は、約10秒〜約24時間、好ましくは、約10秒〜約6時間、より好ましくは、約10秒〜約20分、かつ最も好ましくは、約2分〜約10分でありうる。1つの実施形態において、熱処理時間は、塩基触媒の存在下に約2分〜約10分である。次いで、加熱ホルムアルデヒドは、直ちに反応室に供給される。加熱ホルムアルデヒドは直ちに反応器へ供給され、シアン化水素、それによって「グリコロニトリル合成に適切な温度」でグリコロニトリルと接触する。
本明細書で使用される「グリコロニトリル合成に適切な温度」という語は、シアン化水素および加熱処理ホルムアルデヒドを反応させるために適切な範囲の反応温度を記載するために使用される。1つの実施形態において、反応温度は、一般的にグリコロニトリルの分解を最小限に抑えるために約70℃以下である。別の実施形態において、反応温度は、約−20℃〜約70℃、好ましくは、約0℃〜約70℃、より好ましくは、約0℃〜約55℃、さらにより好ましくは、約10℃〜約30℃、かつ最も好ましくは、約20℃〜約25℃である。
本明細書で使用される「直ちに反応器に供給される」および「加熱ホルムアルデヒドを直ちに添加する」という語は、熱処理期間の終了とシアン化水素との反応の開始との時間、一般的に約24時間未満、好ましくは、約1時間未満、より好ましくは、約15分未満、最も好ましくは、約5分未満を記載するために使用される。
本明細書で使用される「アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)」および「A.ファシリス(facilis)」という語は、置き換え可能に使用され、登録番号55746を有するアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(国際寄託機関)に寄託されたアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wを指す(「ATCC55746」)。改善されたニトリラーゼ活性を有する本変異ニトリラーゼは、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを変異性PCRおよび/または標的飽和突然変異誘発にかけることによって改変された。
本明細書で使用される「大腸菌(Escherichia coli)」および「E.coli」という語は置き換え可能に使用される。組換え発現に適切な大腸菌(E.coli)の一部の株は、国際寄託番号ATCC47076を有する大腸菌(E.coli)MG1655、国際寄託番号ATCC53911を有する大腸菌(E.coli)FM5、国際寄託番号ATCC27325を有する大腸菌(E.coli)W3110、国際寄託番号ATCC35695を有する大腸菌(E.coli)MC4100、および国際寄託番号ATCC12435を有する大腸菌(E.coli)W1485を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、適切な大腸菌(Escherichia coli)株は、大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)および大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)を含む。
本明細書で使用される「大腸菌(E.coli)SS1001」または「SS1001」という語は、ATCC登録番号PTA−1177を有するアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wニトリラーゼを発現する形質転換大腸菌(E.coli)株を指す(米国特許公報(特許文献27)、本明細書で全体として参照により援用される)。組換え発現大腸菌(E.coli)SS1001ニトリラーゼ(配列番号38)は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号6)と比べ2つの小さな配列変化を含有する。開始コドンはGTGからATGに変化して組換え発現を促進し、アーチファクトがクローニング中に導入され、結果としてC末端近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
本明細書で使用される「安定化剤」という語は、触媒活性の安定化の一助となりうる酵素触媒反応混合物に添加されうる材料を記載するために使用される。安定化剤としては、チオ硫酸(例えば、カリウムチオ硫酸、K223)、亜ジチオン酸(例えば、ナトリウム亜ジチオン酸、Na224)、およびシアン化物化合物(例えば、HCN、NaCN、KCN等)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「適切な水性グリコロニトリル反応混合物」および「適切な水性反応混合物」という語は、グリコロニトリルおよび酵素触媒が接触することになる材料および水を指す。適切な水性反応混合物の成分はここで提供され、当業者はこの方法に適切な成分変動の範囲を理解する。
本明細書で使用される「水性アンモニウムグリコール酸溶液」、「グリコール酸アンモニウムを含む水溶液」、および「グリコール酸アンモニウムの水溶液」という語は、典型的な酵素反応条件(すなわち、約6〜約8のpH範囲)下にグリコロニトリルの酵素加水分解によって製造されるグリコール酸アンモニウムを含む水溶液を記載するために使用される。グリコール酸アンモニウムの水溶液は、少なくとも約0.1重量パーセント(wt%)〜約99wt%グリコール酸アンモニウムの濃度でグリコール酸アンモニウムを含む。別の実施形態において、グリコール酸アンモニウムの水溶液は、少なくとも約10wt%〜約75wt%グリコール酸アンモニウムからなる。さらなる実施形態において、グリコール酸アンモニウムの水溶液は、少なくとも約20wt%〜約50wt%グリコール酸アンモニウムからなる。グリコール酸アンモニウムの水溶液のpHは、約2〜約12、好ましくは、5〜約10、より好ましくは、6〜約8でありうる。pHは、グリコール酸アンモニウム水溶液からグリコール酸(酸または塩の形で)の回収に関する方法のステップを開始する前に必要に応じて調節されうる。
本明細書で使用される「水性グリコール酸アンモニウム供給流れ」という語は、グリコール酸アンモニウムの水溶液からグリコール酸を獲得および/または回収するために使用される方法のステップにおける供給流れとして使用される場合にグリコール酸アンモニウムを含む水溶液を記載するために使用される。1つの実施形態において、水性グリコール酸アンモニウム供給流れは、本発明における最終グリコール酸生成物の単離前に(一般的にH2SO4などの鉱酸を使用して)濃縮および/または酸性化もされうる。周知のさまざまな加工法および本明細書に記載された技術を使用し、本方法によって製造されるグリコール酸アンモニウムの水溶液からグリコール酸を獲得および/または回収することができる。
本明細書で使用される「酵素触媒」または「ニトリラーゼ触媒」という語は、ニトリラーゼ活性(EC3.5.5.7)によって特徴づけられる触媒を指す。酵素触媒は、グリコロニトリルをグリコール酸およびアンモニアに変換するためのニトリラーゼ活性を有するポリペプチド(「ニトリラーゼ」)を含む。ニトリラーゼ酵素は、中間体として対応するアミドを形成することなく、脂肪族ニトリルを対応するカルボン酸に直接変換する(式1を参照)。ニトリラーゼは、本明細書で「触媒ドメイン」または「触媒領域」と呼ばれる署名ドメインを含む当技術分野で周知のいくつかの保存署名ドメインを共有する。この領域は、必須システイン残基(例えば、配列番号6のCys164)を含む。かかるものとして、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、触媒ドメインアミノ酸配列の存在によって同定されうる(G−Xaa−L−Xaa−C−Xaa−E−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−L、Xaaが非保存アミノ酸である配列番号39)。
酵素触媒は、全微生物細胞、透過性微生物細胞、微生物細胞抽出部の1つまたは複数の細胞成分、部分的精製酵素、または精製酵素の形でありうる。本明細書で使用される「リサイクル酵素触媒」という語は、バッチ反応で酵素触媒として再利用される酵素触媒を指す。
本明細書で使用される「改善されたニトリラーゼ」、「変異ニトリラーゼ」、「アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W変異ニトリラーゼ」、および「タンパク質改変ニトリラーゼ」という語は、同一の反応条件下でA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)と比べグリコロニトリルのグリコール酸への変換に向けたニトリラーゼ活性における大幅な改善を提供するポリペプチドを含む本酵素触媒を指すために置き換え可能に使用される。1つの実施形態において、ニトリラーゼ活性の改善は、組換え発現され(同一の発現系を使用)、本質的に同一の反応条件下で分析される場合、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対する本ニトリラーゼのニトリラーゼ活性を比較することによって判定されうる。SDS−PAGE分析は、本変異とそのそれぞれの対照(配列番号6)との間のタンパク質発現レベルが本質的に同一であることを示した。かかるものとして、ニトリラーゼ活性の改善は、天然A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼに対する構造的改良の結果と考えられる。
本明細書で使用される「触媒生産性」および「酵素触媒生産性」という語は、触媒のグラム当りの製造される生成物の総量を指す。本発明において、触媒はニトリラーゼ酵素(EC3.5.5.7)であり、形成される生成物はグリコール酸および/またはグリコール酸アンモニウムである(反応のpHに依存)。一般に、本方法は、製造されるグリコール酸が主にグリコール酸の対応する塩の形であるように(すなわち、グリコール酸アンモニウム)本質的にpHが中性条件下で行われる。一般に、触媒リサイクルとのバッチ反応において、触媒活性は各々のリサイクル反応とともに減少する(酵素不活性化)。
「ニトリラーゼ活性」という語は、グリコロニトリルをグリコール酸(または対応するグリコール酸アンモニウム)に変換する場合のタンパク質の単位質量(例えば、ミリグラム)、乾燥細胞重量、またはビーズ重量(固定化触媒)当りの酵素活性を指す。ニトリラーゼ活性の比較は、乾燥細胞重量またはビーズ重量に比例して測定された。A.ファシリス(facilis)72W対照(配列番号6のアミノ酸配列を有するA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを発現する形質転換微生物細胞)と改善された変異(本ニトリラーゼを発現する形質転換微生物細胞)との間のニトリラーゼ発現レベルは、SDS−PAGEゲルのレーザー濃度分析を使用して数量的に区別できないため、ニトリラーゼ活性の比較および報告された改善は、乾燥細胞重量(dcw)またはビーズ重量(bw)に対して測定された。
本明細書で使用される「酵素活性の1単位」または「ニトリラーゼ活性の1単位」または「U」という語は、規定温度(例えば、25℃)で毎分1μmolのグリコール酸生成物(GLA U/g乾燥細胞重量またはビーズ重量)の製造に必要とされる酵素活性の量と定義される。
本明細書で使用される「相対ニトリラーゼ活性」、「改善されたニトリラーゼ活性」、および「ニトリラーゼ活性の相対改善」という語は、基準(対照)ニトリラーゼ活性の倍数(または分数)として表現されるニトリラーゼ活性を指す。本変異ニトリラーゼは、天然アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼで確認されるニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の大幅な改善を示す。本発明において、相対ニトリラーゼ活性における「大幅な改善」は、同一の反応条件下で対照(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ、配列番号6)のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも1.5倍高いニトリラーゼ活性の改善である。別の実施形態において、この改善は、同一の反応条件下で対照のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも2倍高いニトリラーゼ活性である。さらなる実施形態において、この改善は、同一の反応条件下で対照のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも4倍高いニトリラーゼ活性である。
本明細書で使用される「初期反応速度」という語は、指定反応条件下でのグリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度の測定であり、反応速度の測定はグリコロニトリルの反応混合物への初期添加とともに開始し、ここで反応速度はある期間にわたって測定され、グリコロニトリルの濃度は反応の経過中、約50ミリモル(mM)を上回ったままである。反応速度は単位時間当りに製造されるグリコール酸の濃度の変化として測定される(例えば、モルグリコール酸/L/分またはmMグルコール酸/時)。
本明細書で使用される「組換え生物」、「形質転換宿主」、「形質転換体」、トランスジェニック生物」、および「形質転換微生物宿主」という語は、異種または外来DNAで形質転換されている宿主生物を指す。本発明の組換え生物は、活性ニトリラーゼ酵素をコードする外来コード配列または遺伝子を発現する。「形質転換」は、DNA断片の宿主生物への移動を指す。移動DNA断片は、染色体または染色体外に宿主生物へ(すなわち、ベクターによって)組込まれうる。本明細書で使用される「形質転換カセット」という語は、通常、プラスミドの一部として宿主細胞への挿入のための便利に配置された一連の遺伝要素を含有するDNAの特定の断片を指す。本明細書で使用される「発現カセット」という語は、宿主における遺伝子発現の増強も可能にする、通常、プラスミドの一部として宿主細胞への挿入のために便利に配置される一連の遺伝要素を含有するDNAの特定の断片を指す。
本明細書で使用される「核酸断片」および「核酸分子」という語は、コード配列に先行する(5’、上流)またはこれに続く(3’、下流)全遺伝子、コード配列、および/または調節塩基配列をコードしうるDNA分子を指す。1つの態様において、本核酸分子は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコード化する。
本明細書で使用される「遺伝子」という語は、特定のタンパク質を発現する核酸分子を指す。本明細書で使用される通り、これはコード配列に先行する(5’非コード配列)およびこれに続く(3’非コード配列)調節配列を含むことも含まないこともありうる。「キメラ遺伝子」は、自然にはいっしょに存在しない調節およびコード配列を含む天然遺伝子ではない遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源由来である調節配列およびコード配列、または同一の起源由来であるが、自然に存在するものと異なる形で配置された調節配列およびコード配列を含んで成りうる。「内在性遺伝子」は、生物のゲノムにおけるその自然の位置における天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物には通常存在しないが、遺伝子導入によって宿主生物へ導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物、またはキメラ遺伝子へ挿入される天然遺伝子を含んで成りうる。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノムへ導入されている遺伝子である。
本明細書で使用される「コード配列」という語は、特定のアミノ酸配列をコード化するDNA配列を指す。本明細書で使用される通り、「適切な調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、範囲内、または下流(3’非コード配列)に位置し、かつ関連コード配列の転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位、およびステムループ構造を含みうる。
「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’に位置している。プロモーターは、全体として、天然遺伝子由来であり、自然に存在する異なるプロモーター由来の異なる要素から成り、または合成DNA断片を含んでなりうる。ほとんどの細胞型でほとんどの時間にまたはほとんどの環境条件下で遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の化合物または環境条件の存在下のみに遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「誘導的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は完全に規定されていないため、異なる長さのDNA断片は同一のプロモーター活性を有しうる。
本明細書で使用される「機能しうるように連結」という語は、1つの配列の機能がその他によって影響されるような単一核酸分子での核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を与えることが可能である場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)コード配列と機能しうるように連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンスの配向で調節配列に機能しうるように連結されうる。
本明細書で使用される「3’非コード配列」という語は、コード配列の下流に位置したDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列(通常、真核生物に限定)、およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことが可能な調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナル(通常、真核生物に限定)は通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸断片の付加に影響を及ぼすことによって特徴づけられる。
当業者は、所定のアミノ酸を特定するヌクレオチドコドンの使用における特定の宿主細胞によって示される「コドン−バイアス」を十分に知っている。したがって、宿主における改善された発現のための遺伝子を合成する場合、そのコドンの用法が宿主細胞の好ましいコドンバイアスを反映するように遺伝子をデザインすることが望ましい。配列情報が入手可能である宿主細胞由来の遺伝子の調査によりそのコドンバイアスが決定されうる。コドン最適化が当技術分野で公知であり、酵母(非特許文献7)および大腸菌(E.coli)(非特許文献8)を含むがこれらに限定されないさまざまな系について記載されている。
反応性溶媒抽出に適用する定義
本明細書で使用される「反応性抽出法」という語は、グリコール酸(すなわち、第2の相)を含む水溶液を水非混合性有機溶媒(すなわち、第1の相)と接触(すなわち、混合)し、それによってグリコール酸が第3トリアルキルアミンと反応してグルコール酸、すなわち、トリアルキルアミン錯体を形成する方法を指す。錯体は有機相において可溶性であり、グリコール酸を水相(すなわち、実質的な量の不純物を含む第2の相)から有機相へ抽出し、「グリコール酸充填第1の相」を形成する。グリコール酸充填第1の相は、その後に水性の第2の相から単離される。次いで、逆抽出法を使用し、グリコール酸を有機相から元の水相(すなわち、「第3の相」)に抽出する。反応性抽出法に使用される時間の長さおよび温度は、抽出効率を最適化するために調節されうる。1つの実施形態において、第1および第2の相の混合時間は約5分〜約8時間、好ましくは、約5分〜約1時間、より好ましくは、約10分〜約30分である。温度は、約5℃〜約90℃、より好ましくは、約25℃〜約75℃、かつ最も好ましくは、約25℃〜約50℃でありうる。
本明細書で使用される「逆抽出法」という語は、グリコール酸を含む水非混合性有機溶媒(すなわち、「グリコール酸充填第1の相」)を水(すなわち、「第3の相」)と接触させ、グリコール酸を有機相から水相へ抽出する方法を指す。1つの実施形態において、第3の相は脱イオン化水である。逆抽出後、第3の相はグリコール酸の実質的に精製形態(実質的に鉱塩および他の不純物を含まない)を含む。第3の相におけるグリコール酸は、当技術分野で周知のさまざまな方法を使用して場合により単離されうる。逆抽出法に使用される時間の長さおよび温度は、抽出効率を最適化するために調節されうる。1つの実施形態において、「グリコール酸充填の第1の相」および水相(すなわち、第3の相)の混合時間は約10分〜約8時間、好ましくは、約30分〜約4時間、より好ましくは、約30分〜約60分である。一般的に、逆抽出法は、非反応性ガス(すなわち、窒素)ブランケット下、加圧条件下で行われる。逆抽出室における圧力は変動しうるが、一般的に約100psi未満(約690kPa未満)である。温度は約5℃〜約150℃、好ましくは、約100℃〜約150℃、かつ最も好ましくは、約125℃〜約140℃でありうる。
本明細書で使用される「水非混合性有機溶媒」および「第1の相」という語は、式
Figure 0004928467
[式中、R1、R2、およびR3は、独立してC8〜C12アルキル基である]を有する少なくとも1つの第3トリアルキルアミンと、
メチルイソブチルケトン、1−オクタノール、1−デカノール、塩化メチレン、1−クロロブタン、クロロベンゼン、クロロホルム、ケロシン、トルエン、混合キシレン、トリブチルリン酸、およびそれの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの希釈剤と
を含む有機溶媒混合物を記載するために使用される。
本明細書で使用される「第2の相」という語は、約4以下、好ましくは、約3以下、かつ最も好ましくは、約1〜約2のpHを有するグリコール酸を含む水溶液を指す。「第2の相」は、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液のpHをH2SO4など強鉱酸で調節することによって調製される。しかし、強酸の添加は第2の相における鉱塩(望ましくない不純物)の量を増大させる。グリコール酸の第2の相から有機相(一般的にトリアルキルアミンとの錯体としての)への抽出(すなわち、反応性溶媒抽出)は、グリコール酸を鉱塩不純物から分離する。
(熱塩クラッキングに適用する定義)
本明細書で使用される「直接脱アンモニア」、「熱塩クラッキング」、「熱塩分解」、「熱分解」および「塩クラッキング」は、酸のアンモニウム塩を遊離有機酸およびアンモニアへ分解する期間、熱処理が有機酸のアンモニウム塩(すなわち、グリコール酸アンモニウム)に適用される方法を指す。本発明において、熱分解は主にグリコール酸およびアンモニアを製造するために使用される。グリコールアミドおよびグリコール酸のオリゴマーなどさまざまな副産物が、生成物混合物においても形成されうる。
本明細書で使用される「グリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩」という語は、水性グリコール酸アンモニウム供給流れから自由水の少なくとも約90wt%、好ましくは、少なくとも約95wt%、より好ましくは、少なくとも約99%、かつ最も好ましくは、少なくとも約99.5wt%の除去後に形成されるグリコール酸アンモニウム(室温下での液体)の結果として生じる塩を指す。一般的に、「グリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩」は、直接脱アンモニア(「熱塩クラッキング」、同時係属中の米国仮特許出願第60/638,148号明細書)を使用すると初期ステップで形成され、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を得る。
本明細書で使用される「自由水」という語は、熱塩クラッキング前に供給流れから容易に除去される水を指し、ここで一部の小さいが特定可能な量の水は熱塩クラッキング前に供給流れから除去されない(例えば、グリコール酸アンモニウム塩の水和の水)。本明細書で使用される「グリコール酸アンモニウムの融解塩」という語は、強真空の存在下に熱分解されるグリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩を指す。
本明細書で使用される「第1の液体生成物混合物」または「グリコール酸を含む第1の液体生成物混合物」という語は、本方法で記載されている通りグリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩の熱分解後に得られる生成物を指す。第1の液体生成物混合物は、グリコール酸、グリコール酸のオリゴマー、グリコールアミド、グリコール酸のオリゴマーのアンモニウム塩、および未反応グリコール酸アンモニウムを含む。
本明細書で使用される「第2の液体生成物混合物」という語は、1)水を前記第1の生成物混合物に添加し、第1の再水和生成物混合物を形成し、かつ2)前記再水和第1の生成物混合物を加熱し、それによってグリコール酸オリゴマーの部分が遊離グリコール酸へ加水分解される方法によって得られる生成物を指す。部分脱アンモニア生成物(すなわち、第1の生成物混合物または第2の生成物混合物)からグリコール酸を得るその後の加工により、加工前に熱分解されなかったグリコール酸アンモニウムと比べ大幅に少ない廃棄物が生じる。
本明細書で使用される「再水和第1の液体生成物混合物」は、水が本方法によって製造される第1の液体生成物混合物に添加されると得られる水性生成物を指す。
(アルコール分解に適用する定義)
本明細書で使用される「アルコール分解」は、エステル化剤およびストリッピング気体として作用する加熱アルコール蒸気とグリコール酸アンモニウムの水溶液を反応させ、グリコール酸エステルを含む蒸気生成物流れをもたらす方法を指す(同時係属中の米国仮特許出願第60/638,126号明細書を参照)。本明細書で使用される「メタノリシス」は、アルコールがメタノールであり、対応するエステルがグリコール酸メチルであるアルコール分解の方法を指す。
本明細書で使用される「加熱アルコール蒸気」および「アルコール蒸気供給流れ」という語は、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液と接触され、それによってグリコール酸エステル生成される加熱アルコール蒸気を指し、ここでカルボン酸エステル生成物は蒸気生成物相である(「アルコール分解」)。1つの実施形態において、加熱アルコール蒸気は加熱メタノール蒸気であり、結果として生じるエステル蒸気はグリコール酸メチル蒸気である。
本明細書で使用される「第1の蒸気生成物流れ」、「蒸気生成物流れ」、および「アルコール蒸気生成物流れ」は、アルコール分解によって生成される加熱アルコール蒸気およびグリコール酸エステル(蒸気)を含む。グリコール酸エステル(例えば、グリコール酸メチル)を第1の蒸気生成物流れから回収/単離する方法は当技術分野で公知であり、膜分離、吸着、直接または間接接触凝縮(例えば、部分コンデンサ)、蒸留カラムの使用、および組合せを含むが、これらに限定されない。回収グリコール酸エステル(液体)は、「第1の液体生成物流れ」において収集される。本明細書で使用される「第1の液体生成物流れ」という語は、第1の蒸気生成物流れ(アルコール分解の方法中に生成)から回収されるグリコール酸エステルを含む液体生成物を指す。1つの実施形態において、部分コンデンサは、第1の蒸気生成物流れからグリコール酸エステルを回収するために使用されるが、ここで加熱アルコール蒸気の大部分は部分コンデンサ(「熱コンデンサ」)を通過し、その後に総コンデンサ(「冷コンデンサ」)を使用して回収される。回収アルコールは、加熱蒸気供給流れのための開始材料でリサイクルされ、再使用されうる。アンモニアまたは水回収は、場合により、リサイクルされる前に回収アルコールから除去されうる。
(ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からのグリコロニトリルの合成)
ホルムアルデヒドおよびシアン化水素の水溶液を反応させることによるグリコロニトリルを合成する方法は以前に報告されている(米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)、式3)。
ホルムアルデヒドの濃縮水溶液(例えば、ホルマリンとして商業的に周知の37wt%溶液)は一般的に遊離ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドのさまざまなオリゴマー(例えば、パラホルムアルデヒドおよびトリオキシメチレン)からなる。ホルムアルデヒドオリゴマーの存在は、グリコロニトリルへの全体的な変換に影響しうる。したがって、シアン化水素と反応させる前に供給流れにおいてホルムアルデヒドオリゴマーをより自由なホルムアルデヒドに変換するホルムアルデヒドを前処理する方法は、グリコロニトリルの収量を増大させ、オリゴマーから生成される望ましくない二次生成物の変換を減少させる。
ヤコブソン(Jacobson)(米国特許公報(特許文献2))は、酸性化合物の存在下にシアン化水素およびホルムアルデヒドを反応させた後、減圧下の蒸留(約125℃下に行われる真空蒸留ステップ)によって純粋なグリコロニトリルを得る方法を開示している。反応物質は、好ましくは、「低温で」(すなわち、液体の形でシアン化水素を維持する26℃以下)で混合される。また、米国特許公報(特許文献2)には1)グリコロニトリルが周囲温度下に分解し、かつ2)塩基と接触したグリコロニトリルは周囲温度下に数時間以内に激しく分解する。ヤコブソンは、シアン化水素と反応させる前に濃縮水性ホルムアルデヒド供給の前処理を開示していない。
セクストン(Sexton)(米国特許公報(特許文献3))は、ホルムアルデヒドがHCNの水溶液に供給されるグリコロニトリルを調製する方法を開示している。反応は「有効な還流または閉鎖圧力系により、100℃の高温を可能にする反応により」実行される。しかし、ヤコブソン(Jacobson)に記載されている通り、グリコロニトリルは室温下に分解する。100℃という高温で実行される反応は、結果としてグリコロニトリルの分解の増大をもたらすことが予想される。ヤコブソン(Jacobson)と同様、セクストン(Sexton)は、シアン化水素と反応させる前にホルムアルデヒドを前処理する方法を記載していない。
クレン(Cullen)ら(米国特許公報(特許文献4))は、グリコロニトリルからイミノジアセトニトリルを製造する方法を開示している。本引例は、適切な酸および塩基により、ホルムアルデヒドのpHを約3以上、好ましくは、約5−7、最も好ましくは、約5.5に維持することによって方法(バッチまたは連続的のいずれか)においてグリコロニトリルがいかに形成されうるかを記載している。次いで、ホルムアルデヒドは、約20〜80℃の温度範囲、好ましくは、約30℃下にシアン化水素と反応させ、グリコロニトリルを形成する。しかし、本実施例において示されている通り、クレン(Cullen)らで規定された条件内で実行される反応は、結果として反応時間の2時間後に大量の未反応ホルムアルデヒドをもたらす。
上記の方法のすべてにより、二次生成物(不純物)の一部を除去する蒸留精製など一般的に大規模な加工ステップを必要とするグリコロニトリルの純度が得られる。未反応ホルムアルデヒドなどグリコロニトリルに存在する不純物の多くは、酵素触媒を不活性化することによるグリコール酸への酵素変換を阻害することが報告されている(米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献20)、および米国特許公報(特許文献23)、本明細書で全体として参照により援用される)。
濃縮ホルムアルデヒド水溶液は一般的にモノマーホルムアルデヒド(「遊離ホルムアルデヒド」、反応に対する所望の基質)およびホルムアルデヒドのオリゴマーからなる。シアン化水素と反応させる前にホルムアルデヒド供給流れに熱処理を加えることにより、結果として生じるグリコロニトリル生成物の純度が改善される(本出願の「比較例A」および実施例1−10、および米国仮特許出願第60/638,127号明細書を参照、参照により本明細書で援用される)。シアン化水素とのホルムアルデヒドの反応は温度制御され、グリコロニトリル分解を最小限に抑える。形成される反応生成物は、水性ホルムアルデヒド供給流れの予熱なしに得られる反応生成物と比べ大幅に少ない未反応ホルムアルデヒドを含むグリコロニトリルの水溶液である。
結果として生じるグリコロニトリル水溶液(実施例4−8、グリコロニトリル純度が99.9%を上回った表1を参照)は、たとえあったとしても、より少ない(蒸留精製など)反応後精製ステップを必要として、それによってグリコール酸の酵素合成に適切であるグリコロニトリルを製造する費用を削減する。1つの実施形態において、本方法で生成されるグリコロニトリルは、ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒と接触される前に反応後精製ステップを必要としない。また、グリコール酸の酵素合成に使用されるグリコロニトリル水溶液における未反応ホルムアルデヒドの量の削減により酵素触媒の寿命(すなわち、リサイクル反応の数)が拡大される。これは触媒の生産性を改善し、グリコール酸を調製する費用を削減する。1つの実施形態において、本発明は、精製なしに酵素変換のために直接使用されうるグリコロニトリル生成物をもたらし、グリコール酸を製造する費用を削減する。
(改善された純度のグリコロニトリルを製造するための適切な反応条件)
グリコール酸を製造する本方法は、グリコロニトリル合成に適切な反応温度で加熱処理ホルムアルデヒドおよびシアン化水素を接触させることによって水性グリコロニトリルを製造する方法を含む(比較例Aおよび実施例1−10を参照)。ホルムアルデヒドはシアン化水素と反応させる前に加熱され、グリコロニトリルを製造する。ホルムアルデヒドの開始濃度は一般的に約5wt%〜約70wt%ホルムアルデヒドの水溶液である。1つの実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約20wt%〜約55wt%ホルムアルデヒドからなる。別の実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約37wt%ホルムアルデヒド(例えば、ホルマリン)からなる。ホルムアルデヒド供給流れは、場合により、約0.1wt%〜約15wt%(一般的に6−8wt%)メタノール(一般的に約37wt%溶液に存在する添加剤)から成りうる。
塩基触媒(KOH、NaOH等)は、水性ホルムアルデヒド供給流れを加熱する前にホルムアルデヒド水溶液に添加されうる。本明細書で例示される通り、水酸化ナトリウムは、ホルムアルデヒド供給流れを加熱する前に水性ホルムアルデヒド供給流れに添加されうる。1つの実施形態において、加熱水性ホルムアルデヒド供給流れにおけるNaOH:ホルムアルデヒドのモル比は約1:50〜約1:2000である。別の実施形態において、加熱水性ホルムアルデヒド供給流れにおけるNaOH:HCHOのモル比は約1:100〜約1:2000である。
ホルムアルデヒド供給流れは約35℃〜約200℃の温度に加熱されうる。1つの実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約90℃〜約150℃の温度に加熱される。別の実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約100℃〜約125℃の温度に加熱される。
ホルムアルデヒドが加熱処理される時間の最適な長さは、熱処理システムおよび反応器の特定のデザインと組合せた選択温度によって容易に決定されうるとともに調節されうる。熱処理の長さは、加熱供給流れにおけるモノマーホルムアルデヒドの量を最大限にするように選択される。したがって、ホルムアルデヒドが所望の温度に加熱された時間の量は容易に決定されうる。本明細書で使用される「特定可能な時間」という語は、ホルムアルデヒド供給流れが規定温度に加熱された時間の量を記載するために使用される。一般的に、熱処理期間は約10秒〜約24時間、好ましくは、約10秒〜約6時間、より好ましくは、約10秒〜約20分、かつ最も好ましくは、約2分〜約10分でありうる。1つの実施形態において、熱処理時間は塩基触媒の存在下に約2分〜約10分である。次いで、加熱ホルムアルデヒドは直ちに反応室に供給される。
シアン化水素供給流れは一般的に反応室へのホルムアルデヒド添加量に対してシアン化水素のわずかなモル過剰を維持するのに十分な速度で添加される。1つの実施形態において、ホルムアルデヒドに対するシアン化水素のモル比は、少なくとも約1.01:1、好ましくは、約10:1以下である。別の実施形態において、ホルムアルデヒドに対するHCNのモル比は、約1.01:1、より好ましくは、約2:1以下である。さらなる実施形態において、ホルムアルデヒドに対するHCNのモル比は約1.05:1〜約1.15:1である。
反応室は、場合により、ホルムアルデヒドが反応室への添加とともにシアン化水素と直接接触するようにシアン化水素を前充填されうる。反応室にシアン化水素を前充填することは、反応中のシアン化水素のわずかな過剰の維持に役立つ。当業者は、HCNの前充填が使用されると、ホルムアルデヒドに対するHCNのモル比が、迅速に無限から10:1以下、好ましくは、2:1以下、より好ましくは、約1.01:1〜約1.15:1、かつ最も好ましくは、約1.01:1〜約1.05:1のより持続可能な比に移行する。
反応室の温度(すなわち、グリコロニトリルを生成するために適切な温度)は一般的にグリコロニトリル分解を最小限に抑えるために約70℃以下に維持される。1つの実施形態において、反応温度は約−20℃〜約70℃である。別の実施形態において、反応温度は約0℃〜約70℃である。さらに別の実施形態において、反応室温度は約0℃〜約55℃である。さらなる実施形態において、反応温度は約10℃〜約30℃である。さらに別の実施形態において、反応温度は約20℃〜約25℃である。
大気圧はホルムアルデヒドおよびシアン化水素の反応を行うために十分であり、したがって約0.5〜約10大気圧(50.7kPa〜1013kPa)が好ましい。20,000kPa以上の高い圧力は必要に応じて使用されうるが、それによって得られる利点はおそらくかかる操作の費用増大を正当化しないであろう。
グリコロニトリル合成反応室におけるpHは一般的に約3〜約10、好ましくは、約5〜約8である。
本グリコロニトリル合成反応は連続的、バッチ、またはフェドバッチ様式で実行されうる。フェドバッチ反応は一般的に約10秒〜約24時間、好ましくは、約30分〜約8時間、より好ましくは、約0.5時間〜約4時間実行される。
(酸性条件下のグリコロニトリルの安定化)
本方法のステップによって製造されるグリコロニトリルは、その後に本酵素触媒と接触し、グリコール酸へ変換される(一般的にグリコール酸のアンモニウム塩の形で)。1つの実施形態において、本方法のステップによって製造されるグリコロニトリルは、鉱酸(例えば、HCl、H2SO4、またはH3PO4)により安定化され(一般的にグリコロニトリルが酵素変換前の一定期間、保存されることになる場合)、7以下のグリコロニトリルのpHを維持する(グリコロニトリルは塩基条件下で分解することが報告されている)。グリコロニトリルを安定化する必要は、保存時間および条件を含むさまざまな因子で決定される。当業者は、本方法のステップを使用して製造されるグリコロニトリルが酸安定化されるべきかどうか容易に判定することができる。別の好ましい実施形態において、グリコール酸は本方法によって得られるグリコロニトリル混合物に添加され、7以下のグリコロニトリルのpHを維持する。さらなる実施形態において、グリコール酸添加の量は、約6以下、好ましくは、約5以下、より好ましくは、約4以下、かつ最も好ましくは、約3.5以下のグリコロニトリルのpHを維持するために十分である。グリコール酸による安定化は、グリコロニトリルがその後に酵素触媒を使用してグリコール酸に変換される場合に好ましい実施形態である。この場合にpHを調節するグリコール酸の使用は、鉱酸の添加を回避し、ここで、グリコロニトリルのグリコール酸への変換とともに、鉱酸の存在および/または対応する鉱酸塩の製造は、グリコール酸生成物から鉱酸および/または対応する塩を除去する精製ステップを必要としうる。酸安定化グリコロニトリル溶液のpHは一般的に、グリコロニトリルのグリコール酸への酵素変換(一般的にグリコール酸のアンモニウム塩の形で)前に塩基でより中性のpH範囲(すなわち、約6〜約8のpH)に調節される。
(アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼ)
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(EC3.5.5.1)は脂肪族または芳香族ニトリルからカルボン酸を製造するための強固な触媒である((特許文献28)、米国特許公報(特許文献27)、およびチャーハン(Chauhan)ら、上記)。これはα−ヒドロキシニトリル(すなわち、グリコロニトリル)のα−ヒドロキシカルボン酸(すなわち、グリコール酸)の変換を触媒することも証明されている(米国特許公報(特許文献30)および米国特許公報(特許文献29)を参照)。しかし、改善されたニトリラーゼ活性および/または安定性(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼに対して)を有するニトリラーゼ触媒は、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合、グリコール酸を製造する費用を削減することになる。かかるものとして、改善されたニトリラーゼ触媒を使用するグリコール酸を製造する方法が、グリコール酸を製造する費用を削減するために必要である。
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを含む既知のニトリラーゼすべては、酵素活性部位において求核システインを有し((非特許文献9)、(非特許文献10)、およびチャーハン(Chauhan)ら、上記)、かつすべてはチオール試薬(1.0mM濃度の塩化銅、硝酸銀、酢酸第二水銀、塩化第二鉄の各々がA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ酵素活性の主な減少をもたらした)によって不活性化の影響を受けやすい。システイン残基は、非可逆的にスルフィン酸に酸化されることも可能であり、結果として酵素活性の喪失をもたらす。さまざまな不活性化機序に対するニトリラーゼ酵素の感度にもかかわらず、固定化A.ファシリス(facilis)72W細胞は強固であり、多くのリサイクル反応後にそのニトリラーゼ活性の多くを保持することが可能である(米国特許公報(特許文献27))。
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの他の細菌ニトリラーゼとの配列比較が報告されている(米国特許公報(特許文献27)、チャーハン(Chauhan)ら、上記)。72Wニトリラーゼは、アミノ末端近くの16アミノ酸領域(配列番号6のアミノ酸残基40−55)および必須システイン残基を含有する触媒領域(配列番号39;配列番号6のアミノ酸残基160−173を参照)を含むいくつかの保存署名ドメインを有する。このシステイン残基(配列番号6のCys164)は、保存グルタミン酸(配列番号6のGlu48)およびリシン残渣(配列番号6のLys130)とともに、すべてのニトリラーゼに存在する触媒トリアドモチーフを形成する(ペース(Pace),H.およびブレナー(Brenner),C.、上記)。
(改善されたニトリラーゼ活性を提供するニトリラーゼ酵素)
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ由来のいくつかの変異ニトリラーゼ(ニトリラーゼ活性を有するポリペプチド)は以前に報告されている(米国特許公報(特許文献31)、参照により本明細書で援用される)。米国特許公報(特許文献31)において、さまざまな変異ニトリラーゼが選択され、3−ヒドロキシルニトリルを3−ヒドロキシ酸に変換するためのニトリラーゼ活性における相対的改善(組換え発現された天然72Wニトリラーゼの活性に対して)についてスクリーニングした。
米国特許公報(特許文献31)に記載されたニトリラーゼ変異とともに使用される発現系は、プラスミドpTrcHis2−TOPO(登録商標)および大腸菌(E.coli)宿主TOP10(いずれもインビトロジェン(Invitorogen)製、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA)に基づく。ニトリラーゼ変異F168L(配列番号6においてPheからLeuに変化した残基168)、F168V(PheからValに変化した残基168、配列番号32)、F168K(PheからLysに変化した残基168、配列番号26)、T210A(ThrからAlaに変化した残基210、配列番号34)、およびT210C(ThrからCysに変化した残基210、配列番号36)の活性を、実施例12に記載された方法を使用する同一の発現システムにおける天然酵素(「対照」、配列番号6)と比較した。おそらくGLNをGLAに変換する場合に大幅に改善されたニトリラーゼ活性を有するとして最初に同定された突然変異F168L、T210A、およびT210Cは、その後に72Wニトリラーゼ対照と同様のニトリラーゼ活性を有することがわかった。意外にも、米国特許公報(特許文献31)に記載された変異ニトリラーゼの2つ(F168K、Phe168→Lys;F168V、Phe168→Val)(本明細書では、それぞれ、配列番号26および32によって示される)はグリコロニトリル(2−ヒドロキシニトリル)をグリコール酸に変換する場合にニトリラーゼ活性の大幅な改善も示した。しかし、米国特許公報(特許文献31)に記載された他の変異ニトリラーゼ(例えば、T210A、配列番号34、T210C、配列番号36)は、グリコロニトリルをグリコール酸に変換してもニトリラーゼ活性の大幅な改善を示さなかった。
本出願および同時係属中の米国仮特許出願第60/638176号明細書(参照により本明細書で援用される)の実施例13−17に記載されている通り、変異性PCRおよび標的飽和突然変異誘発を使用し、天然72Wニトリラーゼコード配列(配列番号5)をランダムに突然変異させた。結果として、アミノ酸残基位置168(野生型配列におけるフェニルアラニン)および201(野生型配列におけるロイシン)でのアミノ酸置換をもたらした突然変異は、ニトリラーゼ活性を大幅に増大させると思われた(実施例15−17)。本明細書で使用される「アミノ酸残基位置)という語は、N末端メチオニン残基から測定されるとき基準配列(配列番号6)に対して特定の位置に存在するアミノ酸を指す。標的飽和突然変異誘発を行い、両方の残基位置(168および201)でのすべてのアミノ酸置換を評価した。グリコロニトリルをグリコール酸(すなわち、本反応条件下でグリコール酸アンモニウム塩の形で)に変換する大幅に改善されたニトリラーゼ活性を有するいくつかの追加の変異が同定された。1つの実施形態において、本方法において有用な適切なニトリラーゼは、結果として、
a)アミノ酸位置168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンの置換、および
b)アミノ酸位置201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンの置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの突然変異を伴う配列番号6のアミノ酸を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列含んで成り、前記変異は、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合にニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の改善を有する。
別の実施形態において、本方法において有用な適切な変異ニトリラーゼは、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。さらに別の実施形態において、本方法において有用な適切な変異ニトリラーゼは、配列番号7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、および31からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
測定された活性の単位(U)を触媒重量で割ることによってニトリラーゼ活性を計算した。触媒重量は、精製タンパク質重量、湿細胞重量、乾燥細胞重量、または固定化触媒の重量に関して測定されうる(すなわち、カラギナンおよび/またはGA/PEI架橋触媒/アルギン酸ビーズを使用)。本発明において、ニトリラーゼ活性は、乾燥細胞重量のグラム当りの活性の単位(U/g DCW)または触媒ビーズのグラム当りの活性の単位として報告された(固定化触媒比較)。単位触媒重量としての乾燥細胞重量に基づくニトリラーゼ活性比較により、ニトリラーゼタンパク質生成のレベルを考慮しなければならない。さまざまな形質転換体とそのそれぞれの対照との間のニトリラーゼ酵素の発現レベルを測定し、本質的に同一であることを確認した(すなわち、同一の遺伝背景において比較した場合)。したがって、さまざまな変異の報告されたニトリラーゼ活性における改善は、酵素の構造的変更の結果であると考えられた。
変異ニトリラーゼの(およびA.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼ対照の)コード配列を同一のベクター背景(pTrcHis2−TOPO(登録商標)またはpUC19)および宿主において発現させた。すなわち、大腸菌(E.coli)TOP10(インビトロジェン)、大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)、または大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)。相対的改善は、同一のベクターおよび宿主背景を使用して適切な対照との比較に基づいた。SDS−PAGE分析(レーザー密度計を使用した量化)は、各変異(および対照)におけるニトリラーゼタンパク質発現レベルが本質的に等しいことを明らかに示した(使用された同一の発現システムおよび宿主により予想通り)。相対的酵素活性は、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)を発現するそれぞれの大腸菌(E.coli)対照形質転換体において測定されるニトリラーゼ活性に対してさまざまな変異触媒について測定されたニトリラーゼ活性の倍増として報告された。
非固定化触媒について、変異ニトリラーゼのニトリラーゼ活性(U/g乾燥細胞重量)を、乾燥細胞重量のグラム当り25℃下、グリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度(μmol GLA/分)を測定することによって判定した。固定化触媒比較のために、25℃下、グリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度(μmol GLA/分)を測定することによって活性を判定し、固定化細胞触媒ビーズのグラム当りのニトリラーゼ活性の単位(U/gビーズ)として報告した。ニトリラーゼ活性の1単位(U)は、25℃下、1マイクロモルグリコール酸/分の生産と同等である。
特定の変異ニトリラーゼについて、DNAコード領域内の点置換突然変異および結果として生じるアミノ酸変化は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72Wアミノ酸配列(配列番号6)を参照して、以下のフォーマットの1つを使用して規定される。すなわち
1.拡張フォーマット:野生型アミノ酸は(標準3文字略号を使用して)配列番号6内の対応するアミノ酸残基位置の後、同一の残基位置での変異内に存在する新しいアミノ酸ととともに提供される。例えば、「Phe168からLys」または「Phe168→Lys」により、フェニルアラニンが突然変異の結果としてリシンに変化したアミノ酸残基位置168での配列番号6における突然変異が記載される。
2.短略フォーマット:野生型アミノ酸(標準単一文字略号によって表示)には配列番号6のアミノ酸残基位置が続いた後、変異アミノ酸(やはり標準単一文字略号によって表示)が続く。例えば、「F168K」により、フェニルアラニンが突然変異の結果としてリシンに変化したアミノ酸残基位置168での配列番号6における突然変異が記載される。
(ニトリラーゼ触媒を使用するグリコロニトリルのグリコール酸への加水分解)
グリコロニトリルのグリコール酸(酸および/または対応するアンモニウム塩の形で)への酵素変換を、以下に記載した適切な一連の酵素反応条件(pH範囲、温度、濃度等)を使用するグリコロニトリルを含む適切な水性反応混合物と(ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む)酵素触媒を接触させることによって実行した。1つの実施形態において、全組換え微生物細胞がいかなる前処置もなしに酵素触媒として使用される。別の実施形態において、微生物細胞触媒は反応混合物に直接添加され、または中空繊維膜カートリッジもしくは限外ろ過膜を使用してバルク反応混合物から別々に維持されうる。さらなる実施形態において、微生物細胞はポリマーマトリックス(例えば、カラゲナンまたはポリアクリルアミドゲル(PAG)粒子)または不溶性固体支持体(例えば、セリット)に固定化され、酵素触媒の回収および再利用を促進する(米国特許公報(特許文献27)、参照により本明細書で援用される))。さらに別の実施形態において、精製酵素または部分的精製酵素も全細胞から単離し、触媒として直接使用することができ、または触媒は、ポリマーマトリックスもしくは不溶性支持体に固定化されうる。細胞の固定化または単離酵素のための方法は広く報告されており、当業者に公知である(非特許文献11)。A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ触媒の固定化は以前に報告されている(米国特許公報(特許文献27))。
水性反応混合物における酵素触媒の濃度は酵素触媒の特定の活性に依存し、反応の所望の速度を得るために選択される。加水分解反応における触媒として使用される微生物細胞の湿細胞重量は一般的に総反応体積のmL当り0.001グラム〜0.250グラムの湿細胞、好ましくは、mL当り0.002グラム〜0.050グラムの湿細胞である。
グリコロニトリル加水分解反応の温度は、反応速度および酵素触媒活性の安定性を制御するために選択される。反応の温度は、反応混合物の凝固点よりわずかに上(およそ0℃)〜約65℃でありうるが、好ましい反応温度の範囲は約5℃〜約35℃である。微生物細胞触媒懸濁液は、蒸留水中、または約5.0〜約10.0、好ましくは、約5.5〜約8.0、より好ましくは、約5.5〜約7.7、かつ最も好ましくは、約6.0〜約7.7の反応の初期pHを維持する緩衝液の水溶液中で細胞を懸濁することによって調製されうる。反応の進行とともに、反応混合物のpHは、対応するニトリル官能性からカルボン酸のアンモニウム塩の形成により変化しうる。反応は、pH制御なしにグリコロニトリルの変換を完了するために実行することができ、または適切な酸または塩基を反応の経過中に添加し、所望のpHを維持することができる。
グリコロニトリルは25℃下にすべての部分において水と完全に混和性であることがわかった。基質(すなわち、α−ヒドロキシニトリル)の可溶性も水相において溶液の温度および/または塩濃度(緩衝液またはグリコール酸アンモニウムとしても周知の生成物グリコール酸アンモニウム塩)に依存するよう反応条件が選ばれる場合、反応混合物は最初に2相から成りうる。すなわち、酵素触媒および溶解α−ヒドロキシニトリルを含有する水相、および有機相(非溶解α−ヒドロキシニトリル)。反応が進行すると、α−ヒドロキシニトリルは水相に溶解し、最終的に単一相の生成物混合物が得られる。反応は、酵素加水分解反応速度とほぼ同等の速度で反応混合物にα−ヒドロキシニトリルを添加することによって実行し、それによって単一相の水性反応混合物を維持し、高い開始材料濃度で酵素の基質阻害という潜在的な問題を回避することができる。
グリコール酸はプロトン化したカルボン酸および/またはその対応するアンモニウム塩の混合物として生成物混合物において存在し(生成物混合物のpHに依存し、グリコール酸のpKaは約3.83である)、また生成物混合物に存在しうる緩衝液とともにカルボン酸の塩として存在しうる。一般的に、生成されるグリコール酸は主にアンモニウム塩の形である(グリコロニトリル加水分解反応のpHは一般的に約5.5〜約7.7である)。グリコール酸生成物は、プロトン化したカルボン酸として、または、必要に応じて、カルボン酸の塩として、反応混合物から単離されうる。
グリコロニトリルの完全変換時の生成物混合物におけるグリコール酸の最終濃度は、0.001Mからグリコール酸生成物の可溶性限界までの範囲でありうる。1つの実施形態において、グリコール酸の濃度は、約0.10M〜約5.0Mである。別の実施形態において、グリコール酸の濃度は約0.2M〜約3.0Mである。
グリコール酸は、イオン交換(実施例38)、電気透析、反応性溶媒抽出(実施例39−61)、重合、熱分解(実施例62−66)、アルコール分解(実施例67−74)、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されないさまざまな方法を使用することにより、酸または対応する塩の形で回収されうる
(微生物発現)
本ニトリラーゼ変異は、異種宿主細胞、好ましくは、微生物宿主において製造されうる。本発明において特に有用となるのは、大規模な発酵方法に容易に適合される細胞である。かかる微生物は工業的バイオプロセスの当技術分野で公知であり、その例は、(非特許文献12)において確認することができ、発酵性細菌のほか酵母および糸状菌を含む。宿主細胞としては、コマモナス(Comamonas)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、アゾトバクター(Azotobacter)種、シトロバクター(Citrobacter)種、エンテロバクター(Enterobacter)種、クロストリジウム(Clostridium)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、サルモネラ(Salmonella)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、サッカロミセス(Saccharomyces)種、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)種、ピチア(Pichia)種、クルイベロミセス(Kluyveromyces)種、カンジダ(Candida)種、ハンセニュウラ(Hansenula)種、デュナリエラ(Dunaliella)種、デバリオミセス(Debaryomyces)種、ケカビ(Mucor)種、トルロプシス(Torulopsis)種、メチロバクテリア(Methylobacteria)種、バチルス(Bacillus)種、エシェリキア(Escherichia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、リゾビウム(Rhizobium)種、およびストレプトミセス(Streptomyces)種が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいのは、大腸菌(E.coli)である。変異ニトリラーゼ遺伝子が発現されうる適切な大腸菌(E.coli)宿主細胞の例としては、本明細書に規定されている宿主細胞、およびMG1655(ATCC47076)、FM5(ATCC53911)、W3110(ATCC27325)、MC4100(ATCC35695)、W1485(ATCC12435)、およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。別の態様において、好ましい大腸菌(E.coli)宿主株は、MG1655(ATCC47076)またはFM5(ATCC53911)である。
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼの異種発現は以前に報告されている(チャーハン(Chauhan)ら、上記、および米国特許公報(特許文献27))。チャーハン(Chauhan)らは、活性A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号38)を発現する大腸菌(E.coli)株(大腸菌(E.coli) SS1001(ATCCPTA−1177))を報告している。組換え発現(大腸菌(E.coli)SS1001)ニトリラーゼのコード配列は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号5および6)と比べ2つの小さな配列変化を含んだ。開始コドンはGTGからATGに変化し、組換え発現を促進し、クローニング中にアーチファクトが導入され、結果としてC末端の近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
産業上適切な宿主における組換え発現はいくつかの利点を有する。第一に、一般的に使用される生産宿主の多くのための遺伝子ツールボックスは通常、目的の遺伝子が得られた微生物の多くのために利用可能な遺伝子ツールボックスと比べ十分に開発されている。これらの宿主における組換え発現は通常、天然宿主における発現よりも費用効果がある。例えば、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ細胞は、発酵によって増殖される場合、比較的高価な炭素基質であるグリセロール上で増殖し、安価なグルコースを使用して有効に増殖しないことが証明されている。対照的に、大腸菌(E.coli)形質転換体は、約半分の時間でA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ細胞と同一の細胞密度にグルコース上で増殖し、バイオ触媒製造費用を大幅に削減しうる(米国特許公報(特許文献27))。
外来タンパク質の高レベルの発現を方向づける調節塩基配列を含有する微生物発現システムおよび発現ベクターが当業者に公知である。これらを使用し、本変異ニトリラーゼの遺伝子産物の生成ためのキメラ遺伝子を構成しうる。次いで、これらのキメラ遺伝子は、形質転換によって適切な微生物へ導入され、変異ニトリラーゼ酵素の高レベルの発現を提供しうる。本発明の核酸分子は、天然A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼのものに対して増強または変化したニトリラーゼ活性レベルを有する遺伝子産物を生成するために使用される。1つの態様において、本変異遺伝子によってコード化されるポリペプチドは、グリコロニトリルをグリコール酸に変換するためにニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の改善(配列番号6によって表されるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ「対照」の活性と比べ)を提供する。
キメラ遺伝子は宿主細胞の特性の変更において有効となる。例えば、適切なプロモーターの制御下に本ニトリラーゼをコードするキメラ遺伝子の少なくとも1つのコピーを宿主細胞に導入することにより、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する改善された能力が宿主細胞に与えられる。キメラ遺伝子は、本変異ニトリラーゼ配列の遺伝子発現を推進するために有用な適切な調節塩基配列を含む。適切な調節塩基配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、およびリボソーム結合部位を含みうるが、これらに限定されない。これらの配列が宿主生物由来であれば好ましく、しかし、当業者は、異種調節塩基配列も使用されうることを理解するであろう。
キメラ遺伝子は、それを適切な発現ベクターにクローニングすることによって適切な宿主へ導入されうる。適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットが当技術分野で公知である。一般的に、ベクターまたはカセットは関連遺伝子の転写および翻訳を方向づける配列、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体の組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始制御を有するコード配列の領域5’および転写終結を制御するDNA断片の領域3’を含む。両方の制御領域が宿主細胞と同種の遺伝子由来であることが最も好ましいが、かかる制御領域が生産宿主として選択される特定の種原産の遺伝子由来である必要はない。
1つの実施形態において、調節塩基配列はプロモーターを含む。プロモーターは構成的または誘導的でありうる。誘導的プロモーターは一般に特定の刺激物(例えば、lacプロモーターを含むIPTGまたは乳糖)に反応される。誘導的プロモーターは、2−3例を挙げると、化学薬品、増殖サイクル、温度の変化、pHの変化、およびオスモル濃度の変化を含む、さまざまな刺激物に反応しうる。
所望の宿主細胞における本変異ニトリラーゼの発現を推進するために有用である開始制御領域またはプロモーターは無数であり、当業者に周知であるが、それらには、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス(Saccharomyces)の発現に有用)、AOX1(ピチア(Pichia)の発現に有用)、およびlac、trp、lPL、lPR、T7、tac、PBAD、npr、およびtrc(特に大腸菌(Escherichia coli)の発現に有用)が含まれるが、これらに限定されない。大腸菌(E.coli)における発現を推進するために特に有用なプロモーターの追加の例としては、大腸菌(E.coli)のトリプトファンオペロンプロモーターPtrp、大腸菌(E.coli)の乳糖オペロンプロモーターPlac、大腸菌(E.coli)のPtacプロモーター、ラムダファージライトプロモーターPR、ラムダファージレフトプロモーターPL、T7プロモーター、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)からのGAP遺伝子のプロモーター、またはコマモナス(Comamonas)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、アゾトバクター(Azotobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アスペルギルス(Aspergillus)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、チゴミセス(Zygosaccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンセニュウラ(Hansenula)、デュナリエラ(Dunaliella)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ケカビ(Mucor)、トルロプシス(Torulopsis)、メチロバクテリア(Methylobacteria)、バチルス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、リゾビウム(Rhizobium)、およびストレプトミセス(Streptomyces)からなる群から選択される微生物の群から単離される少なくとも1つのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
終結制御領域は、好ましい宿主原産のさまざまな遺伝子由来でもありうる。場合により、終結部位は不必要でありうるが、しかし、含まれることが最も好ましい。
また、挿入遺伝物質は、リボソーム結合部位(RBS)を含みうる。リボソーム結合部位はラムダファージCII遺伝子由来でよく、またはコマモナス(Comamonas)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、アゾトバクター(Azotobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アスペルギルス(Aspergillus)、サッカロミセス(Saccharomyces)、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、ピチア(Pichia)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンセニュウラ(Hansenula)、デュナリエラ(Dunaliella)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ケカビ(Mucor)、トルロプシス(Torulopsis)、メチロバクテリア(Methylobacteria)、バチルス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、リゾビウム(Rhizobium)、およびストレプトミセス(Streptomyces)の遺伝子由来のリボソーム結合部位からなる群から選択される。
場合により、遺伝子産物は、好ましくは、形質転換宿主の分泌生成物でありうる。所望のタンパク質の増殖培地への分泌は、精製手順を簡易化し、費用を削減する。分泌シグナル配列はしばしば細胞膜上の発現可能なタンパク質の活性輸送の促進に有用である。分泌が可能な形質転換宿主は、分泌シグナルをコードするDNA配列の宿主に組込むことによってもたらされうる。適切なシグナル配列を選択する方法が当技術分野で公知である(例えば、(特許文献32)、(特許文献33)を参照)。分泌シグナルDNAは発現制御DNAとそのコード配列またはコード配列断片との間、および後者を有するリーディングフレームに位置しうる。
(グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合にニトリラーゼ安全性および生産性を改善する方法)
(安定化剤)
グリコロニトリルはホルムアルデヒドをシアン化水素と反応させることによって合成されうる(米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)、および米国仮特許出願第60/638,127号明細書)。反応物質の純度およびグリコロニトリルを製造するために使用される反応条件によって、さまざまな不純物が最終生成物に存在しうる。これらの不純物は、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する効率を阻害しうる。1つの実施形態において、グリコロニトリル水溶液は、場合により、酵素的にグリコール酸に変換される前に望ましくない不純物を除去するために処理されうる。好ましい実施形態において、本方法において製造されるグリコロニトリルは、本酵素触媒と接触する前に追加の精製ステップを必要としない。
酵素触媒の安定性/生産性を増大させる別の方法が、触媒安定性および/または生産性を阻害しうるグリコロニトリル溶液における望ましくない化合物と反応される1つまたは複数の化合物の添加である(同時係属中の米国仮特許出願第60/638176号明細書を参照、参照により本明細書で援用される)。望ましくない化合物としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド由来不純物、ホルムアルデヒド由来オリゴマーおよびポリマー、グリコールアミド、グリコールアミド由来不純物、シアン化水素由来不純物、シアン化水素由来オリゴマーおよびポリマー、グリコロニトリル由来不純物、グリコロニトリル由来オリゴマーおよびポリマー、グリコリド、グリコール酸の線状オリゴマー、およびたぶん酸素(実質的に酸素を含まない条件下で行われた反応は触媒安定性を改善した)が挙げられるが、これらに限定されない。望ましくない化合物は、1)ニトリラーゼ触媒と反応し、これを不活性化し、2)反応においてグリコロニトリルと競合し、3)グリコロニトリルまたはグリコール酸と反応し、望ましくない副産物を形成し、または4)組換え宿主細胞に有害な影響を及ぼす(すなわち、細胞溶解を促進する)ものも含まれうる。グリコロニトリル反応混合物に添加されうる適切な化合物の例は、チオ硫酸(例えば、カリウムチオ硫酸、K223)、亜ジチオン酸(例えば、ナトリウム亜ジチオン酸、Na224)、およびシアン化物化合物(例えば、HCN、NaCN、KCN等)を含みうるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、化合物は、酵素触媒の添加前、添加中、または添加後にグリコロニトリル反応混合物に添加される。別の実施形態において、反応混合物における最終濃度が反応混合物の少なくとも約0.001M〜約5wt%未満になるように化合物が反応混合物に添加される。さらなる実施形態において、最終濃度が少なくとも約0.01Mになるように化合物は反応混合物に添加される。さらに別の実施形態において、化合物の最終濃度が約0.01M〜約1Mになるように化合物は反応混合物に添加される。
本発明のさらなる態様において、本方法は実質的に酸素を含まない条件下で行われる。本明細書で使用される「酸素を含まない条件」、「酸素を含まない雰囲気」、および「実質的に酸素を含まない条件」という語は、窒素などの非反応性気体を使用し、反応管をパージおよび/またはブランケットし、酸素分子(O2)が本方法中に存在しないようにすることを指す。当業者は、微量の酸素分子が実質的に酸素を含まない条件下で存在しうることを認める。1つの態様において、「実質的に酸素を含まない」という語は、酸素分子濃度が反応管における気体の約5%未満、好ましくは、2%未満、より好ましくは、1%未満、かつ最も好ましくは、0.1%未満である反応条件である。別の態様において、本方法は、窒素(N2)を使用し、反応管における水性反応混合物をブランケットする実質的に酸素を含まない条件下で行われる。
(グリコロニトリルの濃度の制御)
ニトリラーゼ安定性を増大させる別の方法は、水性反応混合物におけるグリコロニトリルの最大濃度の制御である(米国仮特許出願第60/638176号明細書)。以前に記載された通り、グリコロニトリルは極性溶媒で分解し、ホルムアルデヒドおよびシアン化水素を放出する。反応混合物におけるホルムアルデヒドは酵素触媒と反応し、早すぎる不活性化、および触媒生産性の減少をもたらす。溶液中のグリコロニトリルの濃度の制御は、触媒安定性および触媒の生産性(触媒のグラム当りで製造されるグリコール酸のグラム)を増大させうる。実施例22−25に示されているように(表10)、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W由来のニトリラーゼ触媒は、わずか3つのリサイクル反応後に3Mグリコロニトリルを含有する反応におけるその活性を迅速に喪失する。濃度を1Mに減少させ、および/または1M増分で3Mグリコロニトリルの段階的な添加(以前のグリコロニトリルの添加がグリコール酸アンモニウムに変換された後添加される)は、触媒生産性を大幅に増加させる(表10)。1つの実施形態において、グリコロニトリルの水性反応混合物への段階的な添加(アリコート)が触媒の生産性を増加させる。別の実施形態において、グリコロニトリルは段階的に水性反応混合物に添加され、グリコロニトリルの総濃度は反応中に約1M以下のままである。
実施例25に示されているように、グリコロニトリルの連続的添加によっても数リサイクルの反応にわたって触媒生産性が増加する。1つの実施形態において、グリコロニトリルからグリコール酸アンモニウムを製造する方法ではグリコロニトリルの連続的添加が使用される。別の実施形態において、グリコロニトリルの添加速度は、触媒のKmの少なくとも5倍である。本触媒は一般的におよそ1mM(野生型A.ファシリス(facilis)72W、配列番号6)〜約2.7mMのグリコロニトリルに対するKmを有する。当技術分野で周知の通り、Km値のおよそ5倍の基質濃度(すなわち、5×2.7mM=13.5mM)は結果として、最大反応速度(Vmax)のおよそ97%である反応速度をもたらす。さらに別の実施形態において、グリコロニトリル供給速度は、反応混合物におけるグリコロニトリル濃度が約5mM〜約1M、好ましくは、約100mM〜約1M、より好ましくは、約100mM〜約500mMを維持するように制御される。
(pHの制御)
本方法のニトリラーゼ触媒を使用する反応は一般的に約5〜約10、好ましくは、5.5〜約8、より好ましくは、約5.5〜約7.7、かつ最も好ましくは、約6〜約7.7のpHで実行される。
(微生物触媒の工業的製造)
本変異ニトリラーゼ遺伝子を使用する本ニトリラーゼの商業的製造が望ましい場合、さまざまな培養方法が使用されうる。一連の発酵は、バッチ、フェドバッチ、または連続的様式、当技術分野で公知の方法で実行されうる((非特許文献13)、(非特許文献14))。
代表的なバッチ培養方法は、培地の組成物が培養の開始時に設定され、培養方法中に人工的な変更にさらされない閉鎖システムである。したがって、培養方法の開始時に、培地には所望の微生物を接種し、増殖および代謝活性がシステムに何も添加せずに起こることを可能にする。しかし、一般的に、「バッチ」培養は炭素源の添加に関してバッチであり、しばしばpHおよび酸素濃度などの因子を制御する試みが行われる。バッチシステムにおいて、システムの代謝産物およびバイオマス組成物は培養が終了するまで一定に変化する。バッチ内では培養細胞は静止遅滞期から高い増殖対数期に、かつ最終的に静止期に抑制し、ここで増殖速度は減少または停止する。未処置の場合、静止期の細胞は最終的に死滅する。対数期における細胞はしばしば最終生成物の製造のバルクに関与し、一部のシステムにおいて介在する。静止または後対数期生産は他のシステムで得ることができる。
標準バッチシステムでの変形物はフェドバッチシステムである。フェドバッチ培養方法も本発明において適切であり、基質が培養の進行とともに除々に添加されることを除き典型的なバッチシステムを含む。フェドバッチシステムは、カタボライトリプレッションが細胞の代謝を阻害する傾向があり、かつ培地において限定された量の基質を有することが望ましい場合に有用である。フェドバッチシステムにおける実際の基質濃度の測定は困難であり、したがって、pH、溶解酸素、およびCO2など排ガスの分圧など測定可能な因子の変化に基づき推定される。バッチおよびフェドバッチ培養方法が一般的であり、かつ当技術分野では周知であり、例はブロック(Brock)(上記)およびデスパンデ(Deshpande)(上記)で確認されうる。
本ニトリラーゼ触媒の商業的製造は連続的培養によっても達成されうる。連続的培養は開放システムであり、ここでは規定の培養培地が連続的にバイオ反応器に供給され、等量の馴化培地がプロセッシングのため同時に除去される。連続的培養は一般に一定の高い液相密度で細胞を維持するが、ここで細胞は主に対数期増殖にある。あるいは、連続的培養は、固定化細胞で実施されうるが、ここで炭素および栄養は連続的に添加され、有益な生成物、副産物、または廃棄物が連続的に細胞塊から除去される。細胞固定化は、天然および/または合成材料からなる広範囲の固体支持体を使用して実行されうる。
連続的または半連続的培養は、細胞増殖または最終細胞濃度に影響を及ぼす1つの因子または多くの因子の調節を可能にする。例えば、1つの方法は、炭素源また窒素レベルなど制限栄養を固定速度で維持し、他のすべてのパラメータの抑制を可能にする。他のシステムにおいて、増殖に影響を及ぼす多くの因子が連続的変更されうると同時に、培地濁度によって測定される細胞濃度が一定に保持される。連続的システムは、定常増殖条件の維持をめざし、したがって除去される培地による細胞消失は培養における細胞増殖速度に対してバランスをとる必要がある。連続的培養方法のために栄養および増殖因子を調節する方法、および細胞形成の速度を最大限にするための方法は、工業微生物学の当技術分野で公知であり、さまざまな方法がブロック(Brock)(上記)によって詳述されている。
本発明における発酵培地は適切な炭素基質を含有していなければならない。適切な基質は、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類、乳糖またはショ糖などの二糖類、でんぷんもしくはセルロースまたはそれの混合物などの多糖類、およびチーズホエー液、コーンスティープリカー、ビート糖蜜、および大麦モルトなど再生可能な原料からの非精製混合物を含みうるが、これらに限定されない。したがって、本発明において使用される炭素源は基質を含有する幅広い炭素を包含し、微生物の選択によってのみ限定されることが意図されている。
(グリコール酸およびグリコニトリルの分析)
グリコール酸の製造を分析するために適切な分析方法は、1HNMR、13C NMR、HPLC、CE、GC、およびMSを含むが、これらに限定されず、当技術分野で公知である。例えば、HPLC分析を使用し、屈折率検出器およびBio−Rad HPX−87Hカラム(30cm×7.8mm直径)および50℃下に移動相として1.0mL/分(等張)で0.01N硫酸を使用してグリコール酸生産量を測定した。HPLC方法は基質(グリコロニトリル)および生成物(グリコール酸)の定量化に適切であった。
(グリコール酸アンモニウムからグリコール酸を回収する方法)
イオン交換(陰イオンおよび/または陽イオン)、電気透析、反応性溶媒抽出、アルコール分解(エステル化後にグリコール酸エステルのグリコール酸への加水分解陰)、熱塩クラッキング、およびそれらの組合せを含むがこれらに限定されない、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液からα−ヒドロキシ酸(すなわち、グリコール酸)を回収/単離することができる多くの方法がある。
(イオン交換(陽イオン))
陽イオン交換は、溶解イオン種が化学量論的に固体によって吸収される可逆性の方法である。陽イオン交換は当技術分野で公知である。本方法において、グリコール酸アンモニウムは陽イオン交換樹脂に供給されるが、そこでアンモニウムイオンは陽子と交換され、グリコール酸を形成する(実施例38を参照)。グリコール酸はカラムを通過し、収集される。
樹脂がアンモニウムイオンで飽和されると、酸、例えば、硫酸による再生により副産物である硫酸アンモニウム塩が生じる。陽イオン交換は、刺激移動床またはカルーセルを使用してバッチ中に実行されうる((非特許文献15)、以後「Perry’s」を参照)。樹脂の選択は供給濃度に影響を及ぼしうるが、これは約0.02wt%〜約50wt%グリコール酸アンモニウム、好ましくは、約0.02wt%〜約40wt%でありうる。使用される再生酸は一般的に約0.5wt%〜約20wt%である。
(イオン交換(陰イオン))
陰イオン交換も当技術分野で公知である。陰イオン交換は、弱陰イオン樹脂が使用されることを除き陽イオン交換と同様である((非特許文献15)を参照)。前と同様、樹脂の選択は供給濃度に影響を及ぼしうるが、これは約0.02wt%〜約90wt%グリコール酸アンモニウム、好ましくは、約0.02wt%〜約40wt%でありうる。樹脂の再生では一般的に弱酸が使用される。
(溶媒抽出(反応性))
カルボン酸を単離するために使用されている1つの方法が反応性抽出である。この方法は、乳酸アンモニウムから乳酸を抽出するために有用であることが報告されている((非特許文献16))。反応性抽出は、水相で酸と複合体を形成する反応性有機溶媒(すなわち、アミン)の使用を含む。この方法における第1のステップは一般的に所望の酸の塩を含有する水溶液の酸性化を含む。次いで、酸性化水溶液は、一般的に反応性第3アミンおよび1つまたは複数の希釈剤からなる有機溶媒と接触する。反応性アミン(一般的に、Alamine(登録商標)336、コグニス社(Cognis Corp)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati、OH)など第3C8−C10トリアルキルアミン)は、有機相で優先的に可溶性である酸/アミン錯体を形成するカルボン酸と反応される((非特許文献17)、(非特許文献18))。第3アルキルアミンの使用は一般的に、通常の溶媒抽出物で得られるであろうものより高い分配係数を提供する。次いで、逆抽出を使用し、有機相から酸を回収する。
((非特許文献19)、(非特許文献20))は、グリコール酸の抽出のために反応性アミン溶媒の使用を報告している。しかし、これらの実験では、純水中に溶解した純粋なグリコール酸の抽出係数が報告された。インシ(Inci)は、濃縮水性グリコール酸アンモニウムなど、複合水性マトリックス(例えば、大量の鉱塩および他の不純物を含むグリコール酸の水溶液)からグリコール酸を得る方法を説明または教示していない。
反応性溶媒抽出を使用し、グリコール酸アンモニウムの水溶液からグリコール酸を得ることもできる(例えば、本実施例39−61、および同時係属中の米国仮特許出願第60/638,128号明細書、参照により本明細書で援用される、を参照)。より具体的には、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を単離する方法が提供されるが、この方法は、
a)第1の相を提供するステップであって、前記第1の相が、
i)前記第1の相の約30体積パーセント〜約99体積パーセントが、式
Figure 0004928467
[式中、R1、R2、およびR3は独立してC8〜C12アルキル基である。]を有する少なくとも1つの第3アルキルアミンであり、かつ
ii)前記第1の相の約1体積パーセント〜約70体積パーセントが、メチルイソブチルケトン、1−オクタノール、1−デカノール、塩化メチレン、1−クロロブタン、クロロベンゼン、クロロホルム、ケロシン、トルエン、混合キシレン、トリブチルリン酸、およびそれの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの希釈剤である
を含む水不混和有機混合物であるステップと、
b)第2の相を提供するステップであって、前記第2の相が、約3以下のpHを有するグリコール酸を含む水溶液であり、前記第2の相が、
i)グリコール酸アンモニウムの水溶液を提供する方法であって、前記グリコール酸アンモニウムの水溶液が約5重量%〜約40重量%の濃度のグリコール酸アンモニウムを有する方法と、
ii)(b)(i)のグリコール酸アンモニウム水溶液のpHを約3以下に低下させるのに十分な量の鉱酸を添加し、それによってグリコール酸を含む水溶液が形成される方法と
によって形成されるステップと、
c)前記第1の相を反応性抽出方法で前記第2の相と接触させ、それによってグリコール酸充填第1の相を形成するステップと、
d)前記グリコール酸充填第1の相を単離するステップと、
e)前記グリコール酸充填第1の相を逆抽出方法で第3の相と接触させ、それによってグリコール酸充填第1の相のグリコール酸が前記第3の相へ抽出されるステップであって、前記第3の相が前記グリコール酸充填第1の相で非混合性であるステップと、
f)前記第3の相からグリコール酸を回収するステップと
を含む。
1つの実施形態において、第3トリアルキルアミンは、トリ−n−オクチルアミン、トリ−イソオクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、およびトリ−n−ドデシルアミンからなる群から選択される。別の実施形態において、第3トリアルキルアミンは、Alamine(登録商標)308(CAS#2757−28−0)、Alamine(登録商標)300(CAS#1116−76−3)、Alamine(登録商標)304−1(CAS#102−87−4)、およびAlamine(登録商標)336(CAS#68814−95−9)(コグニス社(Cognis Corp.)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati、OH)からなる群から選択される。さらなる実施形態において、希釈剤は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ケロシン、トルエン、混合キシレン、1−オクタノール、およびそれの混合物からなる群から選択される。さらに別の実施形態において、水非混合性有機溶媒は、90%(vol/vol)Alamine(登録商標)336:10%(vol/vol)MIBK、90%Alamine(登録商標)336:10%1−オクタノール、90%Alamine(登録商標)336:10%トルエン、および90%Alamine(登録商標)336:10%混合キシレンからなる群から選択される。
第1の相の第3トリアルキルアミンの濃度は、約30パーセント(vol/vol)〜約99パーセント(vol/vol)、好ましくは、約50パーセント(vol/vol)〜約90パーセント(vol/vol)、かつ最も好ましくは、約70パーセント(vol/vol)〜約90パーセント(vol/vol)でありうる。第1の相の希釈剤の量は、約1パーセント(vol/vol)〜約70パーセント(vol/vol)、好ましくは、約10パーセント〜約50パーセント、かつ最も好ましくは、約10〜約30パーセントでありうる。
グリコール酸を抽出するための適切な有機抽出混合物は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、1−オクタノール、1−デカノール、塩化メチレン、1−クロロブタン、クロロベンゼン、クロロホルム、ケロシン、トルエン、混合キシレン、およびトリブチルリン酸からなる群から選択される1つまたは複数の希釈剤とAlamine(登録商標)336との混合物からなる。1つの実施形態において、有機相抽出物は、MIBK、1−オクタノール、トルエン、キシレン、およびケロシンからなる群から選択される1つまたは複数の希釈剤と組合せたAlamine336からなる。別の実施形態において、反応性有機溶媒は、約50%〜約95%Alamine(登録商標)336、好ましくは、約65%〜約95%oの有機溶媒混合物からなる。有機溶媒は、約50%〜約5%希釈剤、好ましくは、35%〜約5%の有機溶媒混合物での1つまたは複数の希釈剤からなる。1つの実施形態において、混合有機溶媒は、約70%Alamine(登録商標)336、約10%MIBK、および約20%ケロシンからなる。別の実施形態において、混合有機溶媒は、約90%アラミン(Alamine)(登録商標)336、およびMIBK、1−オクタノール、トルエン、およびキシレンからなる群から選択される約10%希釈剤からなる。
当業者は、有機相の好ましい温度を決定することができる。1つの実施形態において、抽出反応は、約10℃〜約90℃、より好ましくは、約20℃〜約75℃、かつ最も好ましくは、約25℃〜約75℃の温度下に行われる。
酸性化水相からグリコール酸を抽出するために必要とされる混合有機溶媒の量は溶媒充填の程度に依存する。当業者は、水相に存在するグリコール酸の量に依存するグリコール酸を抽出するために使用される混合有機溶媒の体積を調節することができる。グリコール酸は逆抽出によって有機相から回収されうる。
グリコール酸アンモニウムからグリコール酸を得る別の方法が、エステル化剤の存在下での熱分解である。溶媒は、反応性アンモニアからグリコール酸を保護する(それによってアミド形成を阻止する)ことによって作用し、または有機反応性抽出溶媒として作用し、それによって酸の分離に役立ちうる(米国特許公報(特許文献34)、参照により全体として本明細書で援用される)。場合により、この方法は、アルコールをも含みうるが、それによってエステル(有機溶媒中でより可溶性でありうる)をもたらす。有機溶媒は、第3アルキルアミン、アルコール、アミド、エーテル、ケトン、リンエステル、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、アルキルスルフィド、およびそれらの組合せからなる群から選択されうる。次いで、グリコール酸(または対応するエステル)は、逆抽出ステップ中に有機溶媒(液相)から回収される。回収溶媒は塩分割反応ステップにリサイクルされうる。残念ながら、溶媒抽出/逆抽出は、さまざまな非混合性液体が分離することが困難である複雑な物理的混合物を形成するため問題が生じうる。
(アルコール分解(エステル化))
コックレム(Cockrem)(米国特許公報(特許文献35))は、酸、エステル、および未反応アンモニウム塩を含有する液体流れを製造するアルコールとの有機酸のアンモニウム塩の混合物の迅速な加熱を開示している。コックレム(Cockrem)は、酸およびエステルからの未反応塩の分離に対処できない。しかし、この課題に対処する、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液から(蒸気として)グリコール酸エステルを分離するアルコール分解(エステル化剤およびストリッピング気体として作用する加熱アルコール蒸気)を使用する方法が記載されている(本実施例67−74、および米国特許仮出願第60/638,126号明細書、参照により本明細書で援用される)。
液体マトリックスにおける未反応グリコール酸アンモニウムからのエステルの分離と関係した課題を克服するために、アルコール分解が使用されうる(米国仮特許出願第60/638,126号明細書)。カルボン酸のアンモニウム塩(すなわち、グリコール酸アンモニウム)はアルコールと反応し、アルコールおよび酸のエステルを形成すると同時に、式4に示されている通り水とアンモニアを遊離する。
(4)HOCH2CO2 -NH4 ++R2OH → HOCH2CO22+NH3+H2
米国仮特許出願第60/638,126号明細書は、
(a)(i)グリコール酸アンモニウムを含む水溶液と、
(ii)式
2−OH
[式中、R2はC1〜C4直鎖または分岐アルキル基である。]を有するアルコールを含む加熱アルコール蒸気供給流れと、
(iii)反応管と、を提供するステップと、
(b)グリコール酸アンモニウムを含む前記水溶液を前記反応管における前記加熱アルコール蒸気供給流れと接触させ、それによってグリコール酸エステルを含む第1の蒸気生成物流れが生成されるステップと、
(c)前記第1の蒸気生成物流れからグリコール酸エステルを回収するステップと、
(d)(c)のグリコール酸エステルをグリコール酸へ加水分解するステップと、
(e)ステップ(d)で生成されたグリコール酸を回収するステップと
を含むグリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を得る方法を提供する。
1つの実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、およびt−ブタノールからなる群から選択される。好ましい実施形態において、アルコールはメタノールである(すなわち、蒸気生成物流れにおいてグリコール酸メチルを形成する)。
カルボン酸アンモニウム塩と接触した加熱アルコール蒸気の量は、一般的に水性供給流れにおいてカルボン酸塩アンモニウムに対してモル過剰にある。加熱アルコール蒸気に対するカルボン酸アンモニウム塩のモル比は変動しうるが、一般的にカルボン酸アンモニウム塩のモル当り約5〜約300モル(少なくとも約5:1〜約300:1のモル比)、好ましくは、カルボン酸アンモニウム塩のモル当り約5〜約200モル、最も好ましくは、カルボン酸アンモニウム塩のモル当り約20〜約100モルである。モル過剰のアルコール蒸気はアミド形成を阻害する傾向がある。
アルコール蒸気供給流れ(例えば、メタノール)温度は一般的に、アルコールが一般にその蒸気相にとどまり、それがエステル化剤およびストリッピング/担体ガスとして確実に作用するように選択される。反応室に入る加熱アルコール蒸気供給流れの温度は、選択アルコールおよび特定の器具の形状に従って変動しうる。供給された加熱アルコール蒸気は、反応の熱源、エステル化剤、および本方法によって形成されるカルボン酸エステルのストリッピング/担体ガスとして作用する。
本実施例ではグリコール酸メチル(その後にグリコール酸に加水分解される)を形成する加熱メタノール蒸気の使用が例示される。一般的に、加熱メタノール蒸気の温度は約140℃〜約350℃である。1つの実施形態において、メタノール蒸気供給流れの温度は約170℃〜約300℃である。別の実施形態において、メタノール蒸気供給流れの温度は約230℃〜約250℃である。
反応器圧力および温度は、所望の生成物の製造を最適化するために調節されうる。反応のために適切な作業温度および圧力の選択では、アルコールおよび対応するカルボン酸エステルの蒸気圧力を考慮しなければならない。選択作業圧力では、反応温度はカルボン酸エステルの蒸気圧力が一般的にシステムの作業圧力の少なくとも約4分の1(1/4)であるように選択される。この温度では、アルコールの蒸気圧力は作業圧力の少なくとも4倍(4×)である。典型的な作業圧力は約0psig(約0キロパスカル(kPa))〜約80psig(約550kPa)、好ましくは、約0pig(0kPa)〜約50psig(345kPa)、かつ最も好ましくは、約10psig(69kPa)〜約50psig(345kPa)である。
アルコール分解反応器の典型的な作業温度は、約140℃〜約300℃、好ましくは約170℃〜約200℃である。1つの態様において、カルボン酸アンモニウム塩はグリコール酸アンモニウムであり、アルコールはメタノールである。特定の組合せが使用される反応器温度は、一般的に約100℃〜約300℃、好ましくは、約150℃〜約250℃、より好ましくは、約170℃〜約225℃、かつ最も好ましくは、約170℃〜約200℃である。
反応器は、場合により、所望のカルボン酸エステルの収量を改善するパッキング材料または高沸点流体/液体を含む。パッキングまたは高沸点流体の利点は、塩水溶液とアルコール蒸気との間の接触を改善することである。パッキングはランダムパッキング、工学的パッキング、またはさまざまな蒸留プレートデザインでありうる。ペリー(Perry)の第7版第14.23〜14.61章(非特許文献15)を参照。気液反応システムの商業的デザインがペリー(Perry)の図23−25、23−26、および13−79に示されている。高沸点流体は、選択作業条件で低い蒸気圧力を有するように選択され、回収エステルから容易に分離されなければならない。流体は、エステル化化学(鉱油など)に不活性またはポリオールなどエステル化化学に潜在的に関与しうる。ポリオールは分子量が150を上回り、デカノールおよびドデカノールなどアルコールを含む少なくとも1つのヒドロキシル基を有する材料である。典型的なポリオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)およびポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)のほか、これらのポリアルキレンエーテルグリコールのコポリマーが挙げられる。
液体としてのエステルの第1の蒸気生成物からの回収は、蒸気の温度を低減し、凝縮物を形成することによって達成されうる。冷却は直接または間接接触型コンデンサで達成されうる(ペリーの(Perry’s)第11章参照、上記)。コンデンサ(「熱コンデンサ」)温度は一般的にそれぞれのカルボン酸エステルの沸点以下であるが、加熱アルコール蒸気の正常沸点以上で維持される。一般的に、部分コンデンサ温度は、エステルの正常沸点以下の少なくとも約10℃〜約100℃で維持される。アルコール蒸気温度、反応器圧力、および部分コンデンサ温度の制御は、対応するエステル化剤(すなわち、アルコール)、水、およびアンモニウム蒸気から所望のカルボン酸エステルを選択的に凝縮するように使用されなければならない。
蒸留を使用し、カルボン酸エステルを蒸気生成物流れから得ることもできる。蒸留デザイン(例えば、一般に還流コラム、オーバーヘッドコンデンサ、および還流制御からなる)は公知である。蒸留システムの市販のデザインは、ペリーの(Perry’s)第13章で確認されうる。多重生成物除去を有するデザインはエステル回収に特に適している(ペリーの図13−6を参照))。
1つの実施形態において、気液接触操作および第1の蒸気生成物からのエステル回収が単一デバイスで達成されうる。
対応するカルボン酸はその後に第1の液体生成物流れで収集される(すなわち、部分コンデンサから)カルボン酸エステルを加水分解することによって得られうる。エステルを酸に加水分解する方法は当業者に周知である。回収エステルは水と混合され、短い分留カラムおよび総コンデンサを含有する短経路バッチ蒸留装置へ配置されうる。混合物の加熱はメタノールオーバーヘッドおよび水の一部を推進し、カルボン酸を加熱混合物中に残す。
(電気透析)
双極膜による電気透析(EDBM)が対応するアンモニウム塩からの有機酸の回収に提案されている。EDBMを作動するために、溶液は導電性でなければならない。弱酸のアンモニウム塩のために、EDBMの生成物(有機酸および水酸化アンモニウム)はきわめて弱い導体であり、結果として溶液の高い抵抗および低い生産速度が生じる。これを弱めるために、導電性塩(すなわち、塩化アンモニウム)が塩基ループ(水酸化アンモニウム流れ)に添加される。塩基濃度が増加するとともに、アンモニアは溶液から除去され、アンモニウム塩はリサイクルされ、導電性を維持しうる。
有機酸のアンモニウム塩の組成物は、カルシウムなどの多価陽イオンについて注意深くモニタリングする必要がある。これらの陽イオンはヒドロキシル基と結合させることによって沈殿し、膜を破壊しうる。多価陽イオンの濃度は、好ましくは、約5ppm以下、最も好ましくは、約1ppm以下である。
例えば、典型的なラボスケールのEDBMシステムは、アンモニウム塩に適切な膜で構成されうる。まず、約5wt%塩化アンモニウムを含有する再循環塩基ループが確立される。約3Mのグリコール酸アンモニウム再循環ループもまた確立される。典型的なバッチテストランが約0.5〜約1.0kA/m2の一定の電流で行われる。循環ループは約1時間〜約5時間維持される。EDBMの続行とともに、グリコール酸アンモニウムループにおける導電性およびpHは減少する。一般的に、かかる条件下で実行されるEDBMは少なくとも約80%のグリコール酸アンモニウムをグリコール酸へ変換することが予想される。結果として生じるグリコール酸/グリコール酸アンモニウム溶液はその後に強陽イオン交換樹脂または他の方法で処理され、変換を完了しうる。
(重合)
ヒドロキシル基からなるカルボン酸のアンモニウム塩は、凝縮重合を受け、二量体、オリゴマー、およびポリマーを形成すると同時に、アンモニアを遊離しうる。結果として生じるポリマーは、任意の数の方法を使用する反応混合物から分離されうる。反応混合物から分離されると、脱重合を使用して遊離酸を得ることができる。
(実質的に無水グリコール酸アンモニウム塩の熱塩クラッキング)
熱分解(「塩クラッキング」)を使用し、グリコール酸を含む生成物を得ることができる(本実施例62−66、および同時係属中の米国仮特許出願第60/638,148号明細書、参照により全体として本明細書で援用される、を参照)。この方法は、実質的に無水グリコール酸アンモニウム塩を熱分解する前に1つまたは複数の化学薬品を添加する必要がない。
米国仮特許出願第60/638,148号明細書は、グリコール酸アンモニウムを含む水溶液からグリコール酸を得る方法を記載しているが、これは
a)グリコール酸アンモニウムの水溶液を含む供給流れを提供するステップと、
b)自由水を供給流れから除去し、グリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩を製造するステップと、
c)ステップb)の生成物をアンモニアを除去するのに十分な真空下に約140℃未満の温度に加熱し、それによってグリコール酸からなる第1の液体生成物混合物が製造されるステップと
を含む。
1つの実施形態において、この方法は、
d)ステップ(c)の第1の液体生成物混合物に水を添加し、第1の再水和液体生成物混合物を形成し、前記再水和液体生成物混合物がグリコール酸、グリコール酸オリゴマー、グリコールアミド、グリコール酸オリゴマーアンモニウム塩、および未反応グリコール酸アンモニウムを含むステップと、
e)ステップ(d)の再水和液体生成物混合物を、グリコール酸オリゴマーの一部が遊離グリコール酸ヘ加水分解される条件下で加熱し、グリコール酸を含む第2の液体生成物混合物が形成されるステップと
をも含みうる。
熱塩クラッキングは一般的にグリコール酸を含む生成物混合物をもたらす。熱塩クラッキングは、生成されるグリコール酸を単離するために本明細書に記載された方法の1つまたは複数と結合されうる。1つの実施形態において、熱塩クラッキングが使用され、部分的に脱アンモニア化生成物を調製するが、これはその後に本明細書に記載された1つまたは複数の追加の回収方法の開始材料として使用される。
この方法における第1のステップは、グリコール酸アンモニウムの水溶液を含む供給流れからの自由水の除去であり、これにより実質的無水のグリコール酸アンモニウム塩が形成される(実質的に無水の塩は室温(約25℃)では粘性の液体である)。水性反応混合物から自由水を除去する、蒸留、真空蒸留、凍結乾燥、および蒸発を含むが、これらに限定されない方法が当技術分野で公知である。1つの実施形態において、自由水は真空蒸留を使用して除去される。一般的に、グリコール酸アンモニウムの水溶液は約40℃〜約90℃、好ましくは、約40℃〜約80℃の温度に真空下に加熱される。真空圧力は変動しうるが、一般的に約0.5mmHg〜約700mmHg絶対圧力、好ましくは、約0.5mmHg〜約635mmHg絶対圧力、より好ましくは、約0.5mmHg〜約50mmHg絶対圧力である。自由水を除去するために必要とされる時間の長さは変動しうるが、除去される自由水の量を測定することによって決定されうる。一般的に、実質的に無水塩を形成するために必要とされる時間の量は約5分〜約24時間、好ましくは、約5分〜約8時間、より好ましくは、約1時間〜約6時間である。
1つの実施形態において、供給流れは約5〜約25mmHg絶対圧力の真空を使用して約40℃〜約80℃に加熱される。別の実施形態において、適用される真空は約10mmHg絶対圧力であり、温度は約40℃〜約80℃である。さらに別の実施形態において、供給流れは、約40℃〜約70℃、好ましくは、約40℃〜約60℃に、約0.5〜5mmHg絶対圧力、好ましくは(少なくとも)約1mmHg〜約5mmHgの絶対圧力の真空で実質的に無水塩が形成されるまで加熱される。場合により、非反応性ガス(例えば、窒素)が、無水グリコール酸アンモニウム塩を製造する場合に水の除去を助けるために使用される。除去される水の量は、重量喪失(すなわち、25wt%グリコール酸アンモニウム溶液はその重量の約75%まで失うはずである)、沸点の変化、除去される蒸気の直接分析を含むが、これらに限定されないさまざまな当技術分野で公知の方法を使用して測定されうる。一部の水は、副反応(例えば、凝縮重合)が若干の追加の水を生成すると反応混合物から変化し続ける。
この方法における次のステップは、式5に示されている通りグリコール酸およびアンモニアへアンモニウム塩を熱分解するのに十分な温度に真空下で実質的に無水塩を加熱するステップを含む。
(5)HOCH2CO2 -NH4 + → NH3 + HOCH2CO2
使用される温度は、塩の熱分解が起こると同時に酸の分解を最小限に抑え、および/またはグルコールアミドなど望ましくない副産物を生成しうる望ましくない副反応を最小限に抑えるように選択されなければならない。適切な真空圧力は当業者によって決定されうる。典型的な真空範囲の例が、約0.5〜約385mmHg絶対圧力である。1つの実施形態において、真空範囲は約0.5〜約80mmHg絶対圧力であり、温度は約140℃未満である。別の実施形態において、無水塩は約0.5〜約1.5mmHg絶対圧力下に約100℃〜約140℃の温度に加熱される。さらに別の実施形態において、実質的に無水塩は、約0.5〜約5mmHg絶対圧力の真空下に約120℃〜約140℃の温度に加熱される。さらに別の実施形態において、無水塩は、約0.5〜約1.5mmHg絶対圧力の真空下に約120℃〜約140℃の温度で熱分解される。融解アンモニウム塩の熱分解中の絶対圧力は部分的にアンモニアガスの発生の速度に依存し、熱分解中にかけられる真空の絶対圧力よりも大きくなりうる。融解アンモニウム塩の熱分解では任意の蒸発器デザインが使用できるが、ワイプフィルム蒸発器が好ましい。
本方法は、グリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩を加熱するステップを含む。本明細書で使用される「グリコール酸アンモニウムの実質的に無水塩を加熱する」または「塩加熱期間」という語は、時間および温度の要素を含む熱処理ステップを指す。融解グリコール酸アンモニウム塩をグリコール酸を含む(第1の(fir))生成物混合物(第1の「脱アンモニア」生成物混合物)に熱分解するために使用される加熱期間は、使用される温度および圧力によって調節されうる。反応の生成物はモニタリングされ(すなわち、熱分解中のアンモニウム生成)、所望の生成物を得るために必要な時間の量を決定しうる。1つの実施形態において、放出されるアンモニアの量はモニタリングされ、所望の脱アンモニア生成物を製造するために使用される加熱期間は、約10分〜約24時間、好ましくは約30分〜約8時間、より好ましくは約1時間〜約8時間、かつ最も好ましくは約1時間〜約6時間である。
グリコール酸アンモニウムの無水塩の熱分解によって製造される液体生成物混合物(第1の液体生成物混合物)は一般にグリコール酸、グリコール酸のオリゴマー(いずれもグリコリドなどの線状および環状種)、グリコールアミド、グリコール酸のオリゴマーのアンモニウム塩、および未反応グリコール酸アンモニウムからなる。1つの態様において、第1の液体生成物混合物はさらに加工され、グリコール酸のオリゴマーを遊離グリコール酸へ化学的に加水分解する(実施例63を参照)。これは最初に水を液体生成物混合物に添加し、再水和液体生成物混合物を生成することによって達成されうる。再水和液体生成物混合物は、その後にグリコール酸オリゴマーの少なくとも一部を遊離グリコール酸(モノマー)へ加水分解するために十分な期間、加熱され、それによって第2の液体生成物混合物を形成する。第1の液体生成物混合物に添加される水の量は変動しうるが、一般的に、結果として生じる再水和液体生成物混合物の総重量に基づき約5wt%〜約95wt%、好ましくは約20wt%〜約80wt%、より好ましくは約40wt%〜約60wt%、かつより好ましくは約50wt%である。本明細書で使用される「再水和液体生成物混合物を過熱する」は、再水和液体生成物混合物が、グリコール酸オリゴマーの少なくとも一部分を遊離グリコール酸へ加水分解するために十分な温度に加熱された方法を記載するために使用される。1つの実施形態において、加熱(還流)条件としては、約10分〜約6時間、好ましくは、約30分〜約6時間、より好ましくは、約1時間〜約4時間、かつ最も好ましくは、約1.5〜約3時間、約90℃〜約110℃、好ましくは、約100℃〜約105℃の温度が挙げられる。
規定条件下で塩を熱分解することにより、融解グリコール酸アンモニウムの相当な部分がグリコール酸およびグリコリド(グリコール酸の環状二量体)、グリコール酸の線状ポリマー形態(一般的に二量体で五量体までの)、グリコール酸の線状ポリマー形態のアンモニウム塩(一般的に二量体で五量体までの)、およびグリコールアミドなど一部の追加の副産物へ変換される。当業者は、グリコール酸アンモニウムを熱分解するために使用される条件を調節し、遊離グリコール酸生成を最適化すると同時に、グリコールアミドの生成など望ましくない副反応を最小限に抑えることができる。熱分解中に生成されるアンモニアは回収され、リサイクルされうる。場合により、水性グリコール酸アンモニウム溶液は部分的に脱アンモニア化され、大幅に少ないアンモニウムイオンを含有する脱アンモニア生成物を生成する。この脱アンモニア生成物は、それほど廃棄物(鉱塩)が発生しないためその後の加工に特に魅力である。
グリコール酸アンモニウムを含む溶液からのグリコール酸の回収に加えて、グリコール酸アンモニウムを含む溶液は、傾斜法またはろ過を含むが、これらに限定されない既知の方法によるニトリラーゼ触媒からの分離、およびその後に場合によりろ過物からの水の蒸留による濃縮によって直接回収されうる。
(グリコールアミド副産物アミド分解)
グリコールアミドの形成は、グリコール酸アンモニウムからグリコール酸を製造する場合に(使用される回収方法によって)ときに発生する望ましくない副産物である。グリコールアミドは、アンモニアのグリコール酸との反応によって形成される。式6。
(6)HOCH2CO2H + NH3 → HOCH2CONH2+H2
しかし、グリコール酸は、この反応(化学的加水分解)を逆転させることによってグリコールアミドから製造されうる。これ(The)は還流条件下で水でグリコールアミドを加水分解することによって達成されうる(式7)。場合により、水性還流は、酸もしくは塩基、または酸性もしくは塩基性触媒をも含有しうる。
(7)HOCH2CONH2+H2O → HOCH2CO2H+NH3
あるいは、グリコールアミドはアルコールまたはポリオールと反応し、式8に示されている通り対応するエステルおよびアンモニアを遊離することもできる。
(8)HOCH2CONH2+R2OH → HOCH2CO22+NH3
あるいは、製造されるグリコールアミドをアミダーゼ(適切な条件下)で処理し、グリコールアミドをグリコール酸へ変換することができる。適切な条件下でアミダーゼを使用してアミドを対応する酸に変換する方法が当技術分野で周知である。アミダーゼ活性を有する酵素をコード化する遺伝子はまた、クローン化され、配列決定され、組換え生物で発現されている。例えば、(非特許文献21)は、天然プロモーターの制御下、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種R312からアミダーゼ遺伝子の大腸菌(E.coli)におけるクローニングおよび過剰発現を開示している。同様に、(非特許文献22)は、R.ロドコッカス(rhodococcus)J1からのニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ遺伝子のクローニング、および大腸菌(E.coli)におけるその同時発現を開示している。(非特許文献23)、米国特許公報(特許文献36)は、大腸菌(E.coli)におけるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)5Bからのアミダーゼに対する遺伝子のクローニングおよび過剰発現を報告している。
1つの実施形態において、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)5−MGAM−4Dのアミダーゼ活性は、グリコールアミドをグリコール酸に変換するために使用される(ATCC55744、米国特許公報(特許文献37)、米国特許公報(特許文献38)、および米国特許公報(特許文献39)、すべてが参照により全体として本明細書で援用される)。コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)5−MGAM−4Dは、さまざまなニトリルをその対応するアミドおよびカルボン酸への変換において有用な熱安定性、領域特異的ニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1.84)およびアミダーゼ(EC3.5.1.4)活性を含有することが証明されている(式2)。
出願人は、具体的に、本開示においてすべての引例の全内容を援用する。さらに、量、濃度、もしくは他の値、またはパラメータが範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値として示されている場合、これは具体的には、範囲が個別に開示されているかどうかに関係なく、一対の上限範囲または好ましい値および下限範囲または好ましい値から形成されるすべての範囲を開示していると理解すべきである。数値の範囲が本明細書で開示されている場合、特に明記しない限り、範囲はそれの端点のほか、範囲内のすべての整数、および分数を含むことが意図されている。本発明の範囲が、範囲を規定する場合に挙げられた特定の値に限定されることは意図されていない。
(一般方法)
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために提供されている。当業者によって評価されるように、以下の実施例で開示された方法は、本発明の実施において十分に機能するために発明者によって発見された方法を表し、したがって、その実施のための好ましい様態であるとみなされうる。しかし、当業者は、本開示を踏まえて、開示され、かつ本発明の精神および範囲を逸脱せずに類似または同様の結果をさらに得る特定の実施形態において多くの変更がなされうることを評価する。
細菌培養の維持および増殖に適切な材料および方法は当技術分野で公知である。以下の実施例における使用に適切な方法は、Manual of Methods for General Bacteriology(1994年)フィリップ・ゲルハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マリー(Murray)、ラルフ(Ralph)N.コスティロウ(Costilow)、ユージン(Eugene)W.ネスター(Nester)、ウィリス(Willis)A.ウッド(Wood)、ノエル(Noel) R.クリーク(Krieg)、およびG.ブリッグス フィリップス(Briggs Phillips)編、米国微生物学会(American Society for Microbiology)、Washington,DC.)または(非特許文献13)における記載で確認されうる。
ゲノムDNA調製、PCR増幅、DNAのクローニングの所望の目標を生成するためのエンドおよびエキソヌクレアーゼによるDNA修飾、ライゲーション、および細菌形質転換のために必要な手順は当技術分野で公知である。ここで使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング法は当技術分野で公知であり、マニアチス(Maniatis)、上記、および(非特許文献24)、(非特許文献25)によって記載されている。
すべての試薬および材料は、特に明記しない限り、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))、DIFCOラボラトリーズ(Laboratories)(ミシガン州デトロイト(Detroit,MI))、GIBCO/BRL(メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg,MD))、またはシグマ/アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma/Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis,MO))から入手した。
明細書における略語は、測定単位、方法、特性、または化合物に以下の通り対応する。すなわち、「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「d」はg/mLでの密度を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、HPLC」は高性能液体クロマトグラフィーを意味し、「O.D.」は指定波長での光学密度を意味し、「dcw」は乾燥細胞重量を意味し、「U」はニトリラーゼ活性の単位を意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味し、および「DTT」はジチオスレイトールを意味する。
(分析方法)
(HPLC分析)
反応生成物混合物を以下のHPLC法によって分析した。反応混合物のアリコート(0.01mL)を水1.50mLに添加し、HPLC(HPX 87Xカラム、30cm×7.8mm、0.01 NH2SO4移動相、50℃下、流量1.0mL/分、10μL注入体積、RI検出器、分析時間20分)によって分析した。アルドリッチ(Aldrich)から購入した市販のグリコロニトリルを使用して一連の濃度でのグリコロニトリルについて方法を較正した。
(量的13C NMR 分析)
量的13C NMRスペクトルを400MHzで作動するバリアン・ユニティー・イノバ(Varian Unity Inova)分光計(バリアン社(Varian Inc.))、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto、CA))を使用して得た。D2O 0.5mLとともに反応生成物3.0mLを10mmNMR管に取ることによって試料を調製した。13C NMRスペクトルは一般的に100ppm、128Kポイント、および90度パルス(pw90=56dbのトランスミッタ出力で10.7マイクロ秒)で配置したトランスミッタで26kHzのスペクトル幅を使用して獲得された。最長の13C T1(23秒)は、GLNニトリル炭素と関連し、総リサイクル時間はこの値の10倍以上にセットされた(リサイクル遅延d1=240秒、捕捉時間=2.52秒)。360スキャンの信号加算平均は26.3時間の総実験時間を示した。核オーバーハウザー効果(NOE)は、捕捉時間(at)中のみ切断するワルツ(Waltz)変調1Hで開閉することによって抑制された。
(比較例A)
(予熱0%のホルムアルデヒド連続的供給)
52wt%のホルムアルデヒド水溶液(<1%メタノール、本願特許出願人、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))およそ10.18gを水12.81gと混合し、混合物が透明な均一の液体溶液になるまで約40分間約76℃にスラリーを加熱した。溶液を周囲温度に冷却させ、均一の液体を残した。次いで、16.7wt%水性NaOH溶液0.14mLをホルムアルデヒド溶液に添加した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)1.56gを反応管に配置し、残りを連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
攪拌器を備えた反応管を55℃で維持した油槽内に配置した。次いで、反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.41mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.00mL/時。
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.07mL付加して急冷した。
図1は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。13C NMRスペクトルは、δ48および119ppm前後で主なグリコロニトリル13C共鳴を示す。未反応ホルムアルデヒドにはδ80−90ppm前後、および未反応ホルムアルデヒド由来の他の副産物種にはδ60ppm前後の実質的な共鳴も認められる。
(実施例1)
(予熱90%のホルムアルデヒド連続的供給)
52wt%のホルムアルデヒド水溶液(<1%メタノール、本願特許出願人)およそ10.18gを水12.81gと混合し、混合物が透明な均一の液体溶液になるまで約40分間約76℃にスラリーを加熱した。溶液を周囲温度に冷却させ、均一の液体を残した。次いで、16.7wt%水性NaOH溶液0.16mLをホルムアルデヒド溶液に添加した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)1.56gを反応管に配置し、残りを連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
攪拌器を備えた反応管を55℃で維持した油槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/16’’OD(約1.6mm)×0.040’’ID(約1.02mm))を120℃に加熱し、次いで反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.41mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.00mL/時。
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.08mL付加して急冷した。
図2は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。再度、δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。しかし、未反応ホルムアルデヒドに対する図1で明らかなδ80−90ppm前後の共鳴は図2において著しく低下している。しかし、未反応ホルムアルデヒド由来の副産物に対するδ60ppm前後の共鳴が残存しているが、それはおそらく初期ホルムアルデヒド反応器装填による。
(実施例2)
(予熱100%のホルムアルデヒド連続的供給)
52wt%のホルムアルデヒド水溶液(<1%メタノール、本願特許出願人)およそ10.18gを水12.81gと混合し、混合物が透明な均一の液体溶液になるまで約40分間約76℃にスラリーを加熱した。溶液を周囲温度に冷却させ、均一の液体を残した。次いで、16.7wt%水性NaOH溶液0.14mLをホルムアルデヒド溶液に添加した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)を連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
攪拌器を備えた反応管に水3.4g中HCN0.18gの混合物を充填し、次いで55℃で維持した油槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/16’’OD×0.040’’ID)を120℃に加熱し、次いで反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.41mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.67mL/時。
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.07mL付加して急冷した。
図3は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が図3で明らかであるが、不純物のレベルは実質的に図1および図2で確認されるレベルから削減されている。
(実施例3)
(予熱100%のホルムアルデヒド連続的供給)
37wt%のホルムアルデヒド水溶液(10−15%メタノール、アクロス・オルガニクス(Acros Organics)、ニュージャージー州モリスプレーンズ(Morris Plains,NJ))およそ14.20gを水8.78gおよび16.7wt%の水性NaOH 0.14mLと混合した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)を連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
攪拌器を備えた反応管に水3.4g中HCN0.18gの混合物を充填し、次いで55℃で維持した油槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/16’’OD×0.040’’ID)sを120℃に加熱し、次いで反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.21mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.67mL/時。
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.07mL付加して急冷した。
図4は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。再び、δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が図4で明らかであるが、不純物のレベルは実質的に図1および図2で確認されるレベルから削減されている。図4は、実施例3において使用されたホルマリン供給からメタノールに対してδ49ppmでの共鳴も明らかに示す。
(実施例4−8)
(予熱100%のホルムアルデヒド連続的供給)
実施例4−8において、以下のグリコロニトリル合成手順を別々に5回反復した。
16.7wt%の水性NaOH溶液およそ0.56mLを(7wt%〜8wt%のメタノールを含有する)37wt%のホルムアルデヒド水溶液218.0gに添加した。結果として生じる溶液を連続的ホルムアルデヒド供給ために使用した。
磁気攪拌バーを備えた反応管に最初、水35.5g中HCN3.3gの混合物を充填し、より低い位置の攪拌プレートおよびラボジャックアセンブリの上部の20℃前後で維持した水槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ36インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/8’’OD(約3.18mm)×0.085’’ID(約2.16mm))をホルムアルデヒド供給ラインの充填後に120℃に加熱し、加熱ホルムアルデヒド供給の流れを最初にホルムアルデヒド供給ラインの出口からの2相の流れを観察することによって確立した。ホルムアルデヒド供給ラインからの2相の流れの確立後、反応管を上げてホルムアルデヒド供給を直接、液体反応混合物へ導入した。次いで、攪拌プレート、水槽、およびラボジャックアセンブリを適宜に上げて反応混合物を提供し、反応温度を20−25℃前後に維持したが、これは氷および/またはドライアイスを外部水槽に定期的に添加することによって達成された。
反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を82.4mL/時
37wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.09g/mL)を92.7mL/時。
2.0時間後、供給を停止し、反応管、水槽、攪拌プレート、およびラボジャックアセンブリを下げてホルムアルデヒド供給ラインを反応生成物から除去した。反応混合物を反応管から除去し、次いで70%グリコール酸(70%Glypure(登録商標))、本願特許出願人、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))の水溶液1.3mLの添加によって急冷し、結果としてpH3でのグリコロニトリル生成物溶液が生じた。
各々のグリコロニトリル反応生成物溶液を個別に濃縮し、過剰な未反応HCNおよびメタノールをホルムアルデヒドの市販供給源から除去した。濃縮ステップを60−70℃で外部油槽を使用して軽い加熱で真空下に実行した。
各々の濃縮グリコロニトリル生成物溶液の重量を記録し、グリコロニトリル濃度をHPLCによって測定した。
実施例4−8で使用した条件、および結果として生じるGLN収量が表1に報告されている。
Figure 0004928467
実施例4−8で製造された5つの濃縮グリコロニトリル生成物溶液を複合生成物試料へ複合し、量的13CNMR分析を複合試料で実行し、製造されたグリコロニトリルの純度を測定した。図5は、複合試料の13CNMRスペクトルを示す。量的13CNMR分析は、グリコロニトリル生成物の純度が複合試料において99.9%を上回ることを示した。
(実施例9)
(予熱100%のホルムアルデヒド連続的供給)
16.7wt%の水性NaOH溶液およそ0.27mLを(7%〜8wt%のメタノールを含有する)37wt%のホルムアルデヒド水溶液54.5gに添加した。結果として生じる溶液を連続的ホルムアルデヒド供給ために使用した。
磁気攪拌バーを備えた反応管に最初、水10.3g中HCN0.29gの混合物を充填し、攪拌プレートの上部の25℃前後で維持した水槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/8’’OD×0.085’’ID)をホルムアルデヒド供給ラインの充填後に150℃に加熱し、加熱ホルムアルデヒド供給の流れを最初にホルムアルデヒド供給ラインの出口からの2相の流れを観察することによって確立した。ホルムアルデヒド供給ラインからの2相の流れの確立後、ホルムアルデヒド供給ラインの末端を液体反応混合物へ直接配置した。反応温度を20−25℃前後に維持したが、これは氷および/またはドライアイスを外部水槽に定期的に添加することによって達成された。反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を7.02mL/時
37wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.09g/mL)を7.67mL/時。
2.0時間後、供給を停止し、ホルムアルデヒド供給ラインを反応生成物から除去した。反応混合物を反応管から除去し、次いで70%Glypure(登録商標)グリコール酸0.060mLの添加によって急冷し、結果としてpH3でのグリコロニトリル生成物溶液が生じた。
図6は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。
(実施例10)
(予熱100%のホルムアルデヒド連続的供給)
16.7wt%の水性NaOH溶液およそ0.40mLを(7%〜8%のメタノールを含有する)37wt%のホルムアルデヒド水溶液58.0gに添加した。結果として生じる溶液を連続的ホルムアルデヒド供給のために使用した。
磁気攪拌バーを備えた反応管に最初、水10.3g中HCN0.29gの混合物を充填し、攪拌プレートの上部の25℃前後で維持した水槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ24インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/8’’OD×0.085’’ID)をホルムアルデヒド供給ラインの充填後に90℃に加熱した。反応管の外側で加熱ホルムアルデヒド供給の確立後、ホルムアルデヒド供給ラインの末端を液体反応混合物へ直接配置した。反応温度を20−25℃前後に維持したが、これは氷および/またはドライアイスを外部水槽に定期的に添加することによって達成された。反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を7.02mL/時
37wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.09g/mL)を7.67mL/時。
2.0時間後、供給を停止し、ホルムアルデヒド供給ラインを反応生成物から除去した。反応混合物を反応管から除去し、次いで70%Glypure(登録商標)グリコール酸0.10mLの添加によって急冷し、結果としてpH3−4でのグリコロニトリル生成物溶液が生じた。図7は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。
(実施例11)
(高複製ニトリラーゼ発現プラスミドの構成)
合成オリゴヌクレオチドプライマー165(5’−CGACTGCAGTAAGGAGGAATAGGACATGGTTTCGTATAACAGCAAGTTC−3’、配列番号1)および
166(5’−TGATCTAGAGCTTGGAGAATAAAGGGGAAGACCAGAGATG−3’、配列番号2)
(これらは、それぞれ、PstlおよびXbal制限部位(下線)を組込む)を使用し、A.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)ゲノムDNA(配列番号5)からのニトリラーゼ遺伝子をPCR増幅した。
典型的なPCRパラメータは以下の通りである。
ステップ1:95℃で5分
ステップ2:95℃で0.5分(変性)
ステップ3:55℃で0.5分(アニーリング)
ステップ4:74℃で1分(伸長)
ステップ2−4は25サイクル反復される
PCR試薬は、ロシュ・ディアグノスティックス社(Roche Diagnostics Corporation)(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis,IN)によって供給され、かつ同社によって推奨されている通り使用される。
天然アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis))72W配列からの唯一の変化は、大腸菌(E.coli)における発現を促進するGからAへの第1のヌクレオチドへの変化である。その際、ニトリラーゼ遺伝子の開始コドンは天然GTGからATGへ変化した。したがって、対応するニトリラーゼタンパク質の第1のアミノ酸は天然バリンからメチオニン(配列番号6)ヘ変化する。オリゴヌクレオチドプライマー165は、リボゾーム結合部位(太字)およびコドン(TAG)をニトリラーゼの翻訳の開始前にlacZの翻訳を止めるためにも導入する。PCR生成物をPstlおよびXbalで消化し、PstlおよびXbalで消化したpUC19へクローン化し(GenBank(商標)L09137、ニュー・イングランド・バイオラボス(New England Biolabs)、マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,Mass.))、pSW138として同定されたプラスミドを生成した。
(実施例12)
(大腸菌(E.coli)における活性ニトルラーゼの発現)
プラスミドpSW138を使用し、大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC47076)および大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)を変換し、それぞれ、(1)MG1655/pSW138および(2)FM5/pSW138で識別された2つの株を生成した。各々の株を以下に記載した通り、ニトリラーゼ活性(グリコロニトリルのグリコール酸への変換)のために増殖、誘発、および分析した。6つの複製を各々の株について実行する。
1.細菌増殖
株接種材料をアンピシリン(50mg/L)を補充したLB培地で37℃下、振盪させて(200rpm)16−18時間、増殖させた。
2.ニトリラーゼ発現の誘導
十分な接種材料をアンピシリン(50mg/L)およびIPTG(1mM)を補充した新鮮LB培地に添加し、およそ0.1の初期OD(600nm)を得た。培養物を37℃下、振盪させて(200rpm)およそ6−8時間インキュベートした。
3.細菌回収
細菌細胞を遠心分離によって回収し、できる限り多くの液体を除去し、細胞ペレットを−70℃下に凍結した。
4.ニトリラーゼ活性のアッセイ
マイクロ攪拌バーを備えた温度調節された(25℃)20mLガラス製シンチレーションバイアルへ基質溶液(0.667Mグリコロニトリル、TCI)3.0mLおよび細胞懸濁液(100mMピロリン酸ナトリウムpH6.0中400mg湿細胞重量/mL、0.1μg/mL DNAse)1.0mLを添加した。最終グリコロニトリル濃度は500mMであり、最終細胞濃度は100mg/mLであった。試料(100μL)を5、10、15、30、45、および60分の時点で除去し、アッセイ混合物(脱イオン水100μL、6.0N HCl 3μL、200mM n−プロパノール200μL)に添加した後、ボルテックスし、遠心分離した。結果として生じる上清をHPLC(HPX 87Hカラム、30cm×7.8mm、0.01N H2SO4移動相、50℃で1.0mL/分の流れ、10μL注入体積、20分分析時間)によってグリコロニトリル(GLN)およびグリコール酸(GLA)について分析した。乾燥細胞重量(dcw)をマイクロ波乾燥によって複製サンプルで測定した。ニトリラーゼ活性をU/g dcwとして報告したが、ここで1単位(U)は25℃下1分での1μmolのGLNをGLAへ変換する(表2)。
Figure 0004928467
(実施例13)
(変異性ポリメラーゼ連鎖反応によるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼランダム突然変異誘発ライブラリの構成)
Puregene(登録商標)DNA単離キットをメーカーの指示(ジーントラ・システムズ(Gentra Systems)、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN)に従って使用することによりA.ファシリス(facilis)72W(ATCC55746)からゲノムDNAを調製した。GeneMorph(登録商標)PCR突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA))により供給された指示に従って配列番号3(5’−GCGCATATG GTTTCGTATAACAGCAAGTTCC3’)および配列番号4(5’−ATAGGATCCTTATGGCTACTTTGCTGGGACCG−3’)として識別されたプライマーを使用することにより、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ遺伝子(コード配列、配列番号5)で変異性PCRを実行した。低い突然変異頻度(0−3突然変異/kb)および中間の突然変異頻度(3−7突然変異/kb)を誘発するために推奨される反応条件を使用した。10パーセントの1.1kb PCR生成物をpTrcHis2 TOPO(登録商標)TA発現キット(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(CA,Carlsbad))により供給された指示に従って発現ベクターpTrcHis2 TOPO(登録商標)へライゲートした。ライゲーション混合物の半分を供給元の勧告(インビトロジェン(Invitrogen)に従って大腸菌(E.coli)TOP10ヘ形質転換した。1パーセントの形質転換混合物を50mg/Lアンピシリンで補充したLBプレートへプレーティングした。結果として生じる形質転換体は合計200−400コロニーとなり、生成された総PCR生成物が、改善された酵素活性をスクリーニングにするのに必要な十分すぎる400,000−800,000コロニーをもたらすことが可能であることを示した。突然変異の頻度はクローンのランダム選択試料のヌクレオチド配列解析によって確認された。配列解析では、およそ50%の挿入が、予想通り順方向の配向にあったことも確認された。SDS−PAGE分析では、順方向の配向の挿入を有する本質的にすべてのクローンが、勧告通り(インビトロジェン(Invitrogen))増殖および誘発されると、約41kDaのニトリラーゼタンパク質を発現することが確認された。
また、天然A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ遺伝子は、配列番号3および配列番号4で識別されたプライマーを使用する標準PCRによって増幅され、結果として生じるDNA生成物をメーカーの勧告に従ってpTrcHis2 TOPO(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen))へクローン化し、プラスミドpNM18を生成した。pNM18による大腸菌(E.coli)TOP10または大腸菌(E.coli)FM5(ATCC53911)の形質転換は、それぞれの対照として有用な株をもたらした。pNM18(配列番号5)におけるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ「対照」配列は、大腸菌(E.coli)における発現を促進する、GTGからATGへの開始コドンにおける変化を除き、野生型A.ファシリス(facilis)72Wのコード配列と同一である。
(実施例14)
(ニトリラーゼ活性の増大に対するA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼランダム突然変異誘発ライブラリのスクリーニング)
低い突然変異頻度の変異性PCRライブラリ(実施例13に記載された通り構成)からおよそ10,000コロニーを50mg/Lアンピシリンを補充したLB寒天上にプレーティングした。高い処理量のスクリーニングをロボットを使用する96ウェルマイクロタイタープレートにおいて実行した。37℃下、200rpm振盪で18時間、50mg/Lアンピシリンおよび1mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラニシド)を補充した液体LB中で個々のコロニーの増殖後、培養物には37℃下、80Hz線形振盪で1時間50mMグリコロニトリル(GLN)を供給した。細菌細胞をろ過して除去することによって反応を停止し、分析すべき上清をマイクロタイタープレートに密閉し、分析まで4℃下に保存した。
グリコール酸(GLA)の生成を単一イオンモードでM−Hイオン、m/z75をモニタリングする陰イオンモードで大気圧化学イオン化(APCI)質量分析によって測定した。使用した質量分析計は、マイクロマス(Micromass)(ウォーターズ(Waters))クァットロ・ウルティマ(Quattro Ultima)トリプル・クワッドであり、設定は以下の通りであった。すなわち、ソース温度=150℃、プローブ温度=300℃、コーンガス=80L/時、脱溶媒和ガス=700−800L/時。コーン電圧=35V、コロナ電圧=20mA。増倍=600V、ドウェル=0.1秒、チャンネル間遅延=0.02秒。移動相は、1針当たり3.5mL/分で50/50MeOH/H2Oであり、LCパッキングス・アキュレート(Packings Acurate)スプリッタを使用する質量分析計への導入前の溶離剤のスプリットが1:5であった。試料30mLを5mL試料ループに注入する889連続注入8弁バンクを備えたギルソン(Gilson)215自動試料採取器によって試料を送達した。ハドソン・プレート・クレーン(Hudson Plate Crane)XTプレートハンドリングロボットが、プレートをギルソン(Gilson)自動試料採取器のデッキに送達した。5mL/分での同じ溶媒による針および注入ポートの洗浄を各々一連の8回の注入間に行った。この方法によって、ニトリラーゼ活性が増大した7つの株を識別して単離した。
(実施例15)
(ニトリラーゼ活性の増大を与えるA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼにおける突然変異の識別)
ヌクレオチド配列解析を使用し、実施例14に記載された通り単離された7つのTOP10変異株のニトリラーゼ遺伝子に存在する突然変異を識別し、対応するアミノ酸変化を推定した。7つの株すべては同一のニトリラーゼ配列(配列番号8)を示し、pNM18−201Qとして識別されるプラスミドにおけるGLNに変化した位置201で単一のアミノ酸変化、Leu(L201Q)を有した。この変化は、SDS−PAGE分析によって測定される通り、ニトリラーゼタンパク質生成に対する検出可能な効果を(天然酵素と比べ)示さなかった。
(実施例16)
(アミノ酸残基位置201でのニトリラーゼの飽和突然変異誘発)
A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ酵素のアミノ酸位置201での飽和突然変異誘発ライブラリを縮重オリゴヌクレオチドおよびQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA))をメーカーの指示に従って使用することにより構成した。このライブラリのおよそ500のメンバーを以前に記載した通り(実施例14)ニトリラーゼ活性の増大ついてスクリーニングした。ヌクレオチド配列解析を使用し、ニトリラーゼ活性の増大を与える位置201でのアミノ酸変化を判定した。L201Q(配列番号8)に加えて、ニトリラーゼ活性の増大を与える以下の突然変異をスクリーニングから識別した。すなわち、それぞれ、pNM18−201G、pNM18−201H、pNM18−201K、pNM18−201N、pNM18−201S、pNM18−201A、pNM18−201C、およびpNM18−201Tとして識別されたプラスミドにおけるL201G(配列番号16)、L201H(配列番号18)、L201K(配列番号20)、L201N(配列番号22)、L201S(配列番号24)、L201A(配列番号10)、L201C(配列番号12)、およびL201T(配列番号14)。
(実施例17)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ触媒ドメインの標的飽和突然変異誘発)
われわれは、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)内の触媒ドメインが、2−ヒドロキシニトリル、すなわちグリコール酸へのニトリラーゼ活性を増大させる試みにおいて突然変異する適切な部位であると仮定した。
既知の細菌ニトリラーゼの中で一般に保存されていない残渣(下線)のA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)触媒ドメイン(160G 161 162L 163 164C 165 166E 167 168 169 170 171L 172 173)内の飽和突然変異誘発を縮重オリゴヌクレオチドおよびQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla,CA))をメーカーの指示に従って使用することにより達成した。具体的には、9つのミニライブラリ(500−1000コロニー)を、標的された活性部位残渣(上記の下線)の各々について構成した。これらのライブラリを以前に記載した通りニトリラーゼ活性の増大についてスクリーニングした。ヌクレオチド配列解析を使用し、ニトリラーゼ活性の増大を与えるアミノ酸変化を判定した。ニトリラーゼ活性の増大を与える以下の変化を識別した。すなわち、それぞれ、pNM18−168K、pNM18−168M、pNM18−168T、およびpNM18−168Vとして識別されたプラスミドにおけるF168K(配列番号26)、F168M(配列番号28)、F168T(配列番号30)、およびF168V(配列番号32)。
(実施例18)
(MG1655/pSW138−168K、MG1655/pSW138−168M、MG1655/pSW138−168T、MG1655/pSW138−168V、MG1655/pSW138−201Q、MG1655/pSW138−201G、MG1655/pSW138−201H、MG1655/pSW138−201K、MG1655/pSW138−201N、およびMG1655/pSW138−201Sの構成)
プラスミドpNM18−168K、pNM18−168M、pNM18−168T、pNM18−168V、pNM18−201Q、pNM18−201G、pNM18−201H、pNM18−201K、pNM18−201N、およびpNM18−201Sの各々をEcoRIで切断し、より小さなEcoRl断片(907bp)をプラスミドpSW138にサブクローン化し(実施例11に記載)、これもEcoRlで切断されていたが、それぞれ、プラスミドpSW138−168K、pSW138−168M、pSW138−168T、pSW138−168V、pSW138−201Q、pSW138−201G、pSW138−201H、pSW138−201K、pSW138−201N、およびpSW138−201Sを生成した。プラスミドpSW138−168K、pSW138−168M、pSW138−168T、pSW138−168V、pSW138−201Q、pSW138−201G、pSW138−201H、pSW138−201K、pSW138−201N、およびpSW138−201Sの各々を使用し、大腸菌(E.coli)MG1655を変換し、それぞれ、株MG1655/pSW138−168K、MG1655/pSW138−168M、MG1655/pSW138−168T、MG1655/pSW138−168V、MG1655/pSW138−201Q、MG1655/pSW138−201G、MG1655/pSW138−201H、MG1655/pSW138−201K、MG1655/pSW138−201N、およびMG1655/pSW138−201Sを生成した。
(実施例19)
(10リットル発酵によって生成される突然変異のニトリラーゼ活性)
大腸菌(E.coli)種培養を発酵槽の接種前に30℃下、振盪して(300rpm6−10時間(OD550=1−2)mL当り0.1mgのアンピシリンを補充したLB培地500mL中で増殖させた。
ニトリラーゼ株の増殖は、グルコース、アンモニア、および塩を有する無機培地を使用する14−Lブラウン・バイオスタット(Braun Biostat)C発酵槽(B.ブラウン・バイオスタット・インターナショナルGmbh、ドイツ、メルズンゲン(Melsungen))において行われた。IPTG(FM5/pNM18ベース株用)または乳糖(MG1655/pSW138ベース株用)を誘導のために使用した。
滅菌前発酵槽培地(7.5L)が表3に示されている。滅菌後付加としては、フィルタ滅菌化微量元素(表4)、mL当り0.1mgのアンピシリン、L当り2gのカザミノ酸(ジフコ(Difco)、L当り4gのグルコース、および500mL種培養物が挙げられる。
発酵設定値は表5に示されている。NH4OH(40%w/v)およびH2PO4(20%w/v)をpH調節用に使用した。溶解酸素濃度は攪拌により25%の空気飽和で調節され、最初に酸素需要の増大および後に続く曝気とともに上昇した。IPTG誘導および乳糖誘導とともに使用される発酵供給プロトコールは、それぞれ、表6および7に示されている。グルコース供給速度は、グルコースが5g/L以上に蓄積した場合は削減された。FM5/pNM18ベース株については、IPTGがOD550=20−30で0.5mMに添加された。40−56時間後、細胞を5−10℃に冷却し、遠心分離によって回収した。ニトリラーゼ活性を記載した通り(実施例12)測定し、結果は表8に示されている。
Figure 0004928467
Figure 0004928467
Figure 0004928467
Figure 0004928467
Figure 0004928467
Figure 0004928467
(実施例20)
(大腸菌(E.coli)TOP10/pNM18、大腸菌TOP10/pNM18−201A、大腸菌TOP10/pNM18−201C、および大腸菌TOP10/pNM128−201Tのニトリラーゼ活性の測定(振盪フラスコ))
複製で、一夜培養物(LB+50μg/mLアンピシリン、振盪により37℃)10mLを200mL(LB+50μg/mlアンピシリン+1mM IPTG)に添加し、37℃下、振盪して4−5時間インキュベートした(最終OD600およそ2.0)。細胞を4℃下に遠心分離によって収集し、80℃下に保存した。
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラスバイアルに水中1.0Mグリコロニトリル1.0mLを添加し、バイアルとその内容物を温度調節水槽中25℃に平衡化した。攪拌とともに、25℃に前平衡化した湿細胞ペースト40−100mgを含有する0.100Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1.0mLをバイアルに添加した(最終[GLN]=0.5M)。試料(0.100mL)を所定の時間で取り、水0.100mL、6.0N酢酸0.020mL、および水中0.2M酪酸ナトリウム0.200mLからなる溶液(HPLC外部標準)と混合した。結果として生じる混合物を遠心分離し、結果として生じる上清をグリコール酸についてSupelco(登録商標)(シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich Corp.)LC−18−DBカラム(15cm×4.6mm):移動相:水性10mM酢酸ナトリウム(NaOAc)、10mM酢酸(AcOH)、7.5%(v/v)メタノールを使用するHPLCによって分析した。各々の細胞ペーストの乾燥細胞重量(dcw)を測定し、これを使用して細胞特異的ニトリラーゼ活性を計算した。表9は、天然ニトリラーゼと比較したニトリラーゼ変異のニトリラーゼ活性の増加の概要を示す。
Figure 0004928467
(実施例21)
(固定化大腸菌(E.coli)SS1001(ATCC PTA−1177)の調製)
大腸菌(E.coli)株SS1001(ATCCPTA−1177)は、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼを発現する形質転換大腸菌(E.coli)株である(米国特許公報(特許文献27)、参照により本明細書で援用される)。組換え発現(大腸菌(E.coli))SS1001)ニトリラーゼのコード配列(配列番号37−38)は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号5)と比較して2つの小さな配列変化を含有する。開始コドンはGTGからATGに変化して組換え発現を促進し、アーチファクトがクローニング中に導入され、これは結果としてC末端の近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
この株を以前に記載した通り(米国特許公報(特許文献31)の実施例8を参照)10−L発酵において増殖させ、細胞ペースト(グリコロニトリル(GLN)を以下の通りGLNをグリコール酸(GLA)に変換する方法で使用した)。
大腸菌(E.coli)SS1001細胞を最初に以下の手順に従ってカラギナンビーズ(固定化大腸菌(E.coli)SS1001)に固定化した。迅速な攪拌とともに、カラギナン(FMC GP911、FMC社(Corp.)、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA)9gをゆっくりと50℃下、脱イオン化蒸留水231gに添加し、結果として生じる混合物をカラギナンが完全に溶解するまで80℃に加熱し、結果として生じる溶液を攪拌して47℃に冷却した。攪拌バーを備えた分離ビーカーにおいて、凍結大腸菌(E.coli)SS1001細胞(39.53%dcw)75.9gを約25℃下0.35M Na2HPO4(pH7.3)84.1gに添加し、細胞が完全に懸濁するまで混合し、次いでデオキシリボヌクレアーゼI溶液(12,500U/mL DNase(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)、ミズーリ州セントルイス(St. Louis,MO)10μL/細胞懸濁液100mL)を添加した。細胞懸濁液を攪拌してカラギナン溶液に添加する直前に45−46℃に加熱した。攪拌とともに、47℃下の大腸菌(E.coli)SS1001細胞懸濁液160.0gを47℃下のカラギナン溶液に添加し、結果として生じる細胞/カラギナン懸濁液を電気加熱20ゲージ針を通じて47℃下に注入し、攪拌して室温(約21−22℃)下に0.25M KHCO3(pH=7.3)に滴下し、針を通じる流速は5−8mL/分に設定した。結果として生じるビーズを1時間、攪拌して固化させ、0.25M KHCO3(pH7.3)に保存した。ビーズの化学架橋を水中25%グルタルアルデヒド(GA)(シグマ(Sigma)M752−07)0.5gを0.25M KHCO3(pH7.3)48mL中に懸濁したビーズ20gに添加し、室温下に1時間攪拌することによって実行した。次いで、ビーズの懸濁液に水中12.5wt%ポリエチレンイミン(PEI、BASF LUPASOL PS、BASF株式会社(Aktiengesellschaft)、ドイツ、ルードビヒスハーフェン(Ludwigshafen)2.0gを添加した後、さらに1時間、室温下に混合した。GA/PEI架橋ビーズを5℃下に1.0M NH4HCO3(pH7.3)に保存した。
GLNのGLAへのバイオ触媒変換後にHPLCを行った。反応混合物のアリコート(0.2mL)を水中6M HCl 0.01mLおよび0.25M n−プロパノール0.8mL(HPLC外部標準)に添加し、HPLC(HPX 87Hカラム(バイオ・ラッド(Bio−Rad)、カリフォルニア州ヘラクレス(Hercules,CA))、30cm×7.8mm、0.01N H2SO4移動相、50℃下に1.0mL/分流、10μL注入体積、屈折率(RI)検出器、20分分析時間)によってGLNおよびGLAについて分析した。GA/PEI架橋カラギナン/7.5%(dcw)大腸菌(E.coli)SS1001ビーズのニトリラーゼ活性は、約12U/gビーズであったが、ここで1単位(U)は25℃下1分での1μmolのGLNをGLAへ変換する。
(実施例22)
(1Mグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例21)4g、脱イオン化水13.73mL、5M NH4GLA 0.4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))1.87mL、0.89M GLN最終濃度、pH7.6に調節したpHを充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水14.13mLおよびGLN 1.87mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、かつバイオ触媒リサイクルを反復した。最初のバイオ触媒リサイクルでのNH4GLA合成の初速度は143mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表10に示されている(「1M」)。
(実施例23)
(およそ3Mグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例11)4g、脱イオン化水6.39mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))5.61mL、2.68M GLN最終濃度、pH7.6に調節したpHを充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水6.39mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN 5.61mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、かつバイオ触媒リサイクルを反復した。最初のバイオ触媒リサイクルでのNH4GLA合成の初速度は207mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表10に示されている(「3M」)。
(実施例24)
(グリコール酸アンモニウム(NH4GLA)を得るおよそ1M増分(1M+1M+1M)でのおよそ3Mグリコロニトリルの添加)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例21)4g、脱イオン化水8.13mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))1.87mL、0.89M GLN最終濃度、pH7.6に調節したpHを充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.87mLの第2の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.87mLの第3の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、反応を完了し、およそ3M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水8.13mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN 1.87mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLN、水、および緩衝剤の添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つのおよそ1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。最初のリサイクル(リサイクル当りGLNの3つの約1M部分)における最初の1M GLN溶液でのNH4GLA合成の初速度は155mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表10に示されている(「1M+1M+1M)=3M」)。
(実施例25)
(グリコール酸アンモニウム(NH4GLA)を得るグリコロニトリルの0.2M GLNへの連続的添加)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管に大腸菌(E.coli)SS1001ビーズ(実施例21)4g、脱イオン化水8mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN(水中約52wt%(TCI))0.4mLを充填し、pHをpH7.6に調節し、混合物を25℃下に撹拌し、GLN溶液を連続的に0.2M前後のGLN濃度を維持するために消費されるGLN消費の速度で3MまでGLNを添加し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水8mL、1M KHCO3 4mL、およびGLN 0.4mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、かつ新しいバイオ触媒リサイクルをGLN消費の速度で3M GLNまでのGLNの添加により反復した。最初のバイオ触媒リサイクル(リサイクル総当り3M GLN)のNH4GLA合成の初速度は144mM/時であった。NH4GLA合成対リサイクル回数の初速度の減少率は表10に示されている(「0.2M連続」)。
Figure 0004928467
(実施例26)
(さまざまなレベルの架橋からなるGA/PEI架橋カラギナン/大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210Aビーズの調製)
プラスミドpTrcHis2−TOPO(登録商標)からニトリラーゼ変異210Ala(配列番号34)を発現するプラスミドpNM18−210Aを使用し、大腸菌(E.coli)FM5を変換し、FM5/pNM18−21として識別される株を生成した。この株を以前に記載した通り(米国特許公報(特許文献31)の実施例8を参照、参照により本明細書で援用される)10−L発酵で増殖させ、細胞ペーストを以下の通りGLNをグリコール酸(GLA)に変換する方法で使用した。
大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210A細胞を最初に以下の手順に従ってカラギナンビーズに固定化した。迅速な攪拌により、カラギナン(FMC GP911)12gをゆっくりと50℃下に脱イオン化蒸留水228gに添加し、結果として生じる混合物をカラギナンが完全に溶解するまで80℃に加熱し、結果として生じる溶液を攪拌して52℃に冷却した。攪拌バーを備えた分離ビーカーにおいて、凍結大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210A細胞(26.7%dcw)74.9gを約25℃下0.35M Na2HPO4(pH7.3)85.1gに添加し、細胞が完全に懸濁するまで混合し、次いでデオキシリボヌクレアーゼI溶液(12,500U/mL DNase(シグマ(Sigma))10μL/細胞懸濁液100mL)を添加した。細胞懸濁液を230ミクロンおよび140ミクロンNupro TFろ過エレメントフィルタを通じて連続的にろ過し、カラギナン溶液への添加直前に50℃に攪拌しながら加熱した。攪拌とともに、50℃下の大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210A細胞懸濁液160.0gを52℃下のカラギナン溶液に添加し、結果として生じる細胞/カラギナン懸濁液を電気加熱20ゲージ針を通じて47℃下に注入し、攪拌して室温(約21−22℃)下に0.25M KHCO3(pH=7.3)に滴下し、針を通じる流速は5−8mL/分に設定した。結果として生じるビーズを1時間、攪拌して固化させ、0.25M KHCO3(pH7.3)に保存した。ビーズの化学架橋を水中25%グルタルアルデヒド(GA)(シグマ(Sigma)M752−07)0.5g(以後「バイオ触媒1」と呼ぶ)または2.0g(以後「バイオ触媒2」と呼ぶ)のいずれかの0.25M KHCO3(pH7.3)48mL中に懸濁したビーズ20gへの添加、および室温下に1時間攪拌することによって実行した。次いで、ビーズの懸濁液に水中12.5wt%ポリエチレンイミン(PEI、BASF LUPASOL PS)2.0g(バイオ触媒1)または4.0g(バイオ触媒2)のいずれかを添加し、さらに18時間、室温下に混合した。GA/PEI架橋ビーズを5℃下に1.0M NH4HCO3(pH7.3)に保存した。
GLNのGLAへのバイオ触媒変換後にHPLCを行った。反応混合物のアリコート(0.2mL)を水中6M HCl 0.01mLおよび0.25M n−プロパノール0.8mL(HPLC外部標準)に添加し、HPLC(HPX 87Hカラム、30cm×7.8mm、0.01N H2SO4移動相、50℃下に1.0mL/分流、10μL注入体積、屈折率(RI)検出器、20分分析時間)によってGLNおよびGLAについて分析した。GA/PEI架橋カラギナン/5%(dcw)大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−210Aビーズのニトリラーゼ活性は、約13U/gビーズであったが、ここで1単位(U)は25℃下1分での1μmolのGLNをGLAへ変換する。
(実施例27(比較))
(空気中の添加剤なしのグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管にバイオ触媒1 4g、脱イオン化水12.42mL、4M NH4GLA 0.5mL、およびGLN(水中約52wt%(フルカ(Fluka))1.78mL、1M GLN最終濃度、pH7.6を充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.78mLの第2の部分を添加し、pHを水酸化アンモニウムでpH7.6に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.78mLの第3の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、反応を完了し、3.1M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水12.42mL、およびGLN 1.78mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLNの添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つの1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。リサイクル対リサイクル回数における最初の1M FLN溶液の変換の初速度の減少率は表11に示されている(リサイクル反応は反応2〜8である)。
(実施例28)
(酸素を含まない環境下に添加剤なしのグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
窒素下オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管にバイオ触媒1 4g、脱イオン化水12.42mL、4M NH4GLA 0.5mL、およびGLN(水中約52wt%(フルカ(Fluka))1.78mL、1M GLN最終濃度、pH7.6を充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.78mLおよび水0.2mLを添加し、pHを水酸化アンモニウムでpH7.6に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.78mLの第3の部分を添加し、pHをpH7.6に調節し、反応を完了し、3.1M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水12.46mL、およびGLN 1.78mLをpH7.6にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLN 1.78mL、脱イオン水 0.2mL、および緩衝剤の添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つの1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。リサイクル対リサイクル回数における最初の1M GLN溶液の変換の初速度の減少率は表11に示されている(リサイクル反応は反応2〜8である)。
(実施例29)
(酸素を含まない環境下チオ硫酸または亜ジオチン酸の存在下のグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換))
バイオ触媒リサイクルを脱イオン水12.42mLの代わりに、脱イオン水12.22mLおよび水中添加剤(チオ硫酸カリウム、K223または亜ジオチン酸ナトリウム、K224)の1M溶液を添加してリサイクルを開始し、かつ水0.2mLの代わりに、水中添加剤の1M溶液0.2mLをGLN 1.78mLの各々の添加とともに反応管に添加することを除き、実施例28に記載された通りに実行した。リサイクル対リサイクル回数における最初の1M GLN溶液の変換の初速度の減少率は表11に示されている(リサイクル反応は反応2〜8である)。
Figure 0004928467
(実施例30)
(pH6.0での空気中添加剤なしのグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換))
オーバーヘッド攪拌器を備えた50−mLジャケット付き反応管にバイオ触媒1 4g、脱イオン化水12.42mL、4M NH4GLA 0.5mL、およびGLN(水中約52wt%(フルカ(Fluka))1.78mL、1M GLN最終濃度、pH6.0を充填し、混合物を25℃下に攪拌し、アリコート0.2mLを取出し、HPLCによる反応経過に従った。すべてのGLNがNH4GLAに変換された場合、GLN 1.78mLの第2の部分を添加し、pHを水酸化アンモニウムでpH6.0に調節し、すべてのGLNが消費された場合、GLN 1.78mLの第3の部分を添加し、pHをpH6.0に調節し、反応を完了し、3.1M NH4GLA溶液を得た。生成物溶液を静かに注ぎ、脱イオン水12.42mL、およびGLN 1.78mLをpH6.0にpH調節したバイオ触媒に添加し、GLN変換を完了に進め、GLNの添加、pH調節、かつGLN変換の完了をさらに2回反復し、リサイクル(3つの1M増分でのGLNの段階的変換)を終了し、バイオ触媒リサイクルを反復した。バイオ触媒1についてのリサイクル対リサイクル回数における最初の1M GLN溶液の変換の初速度の減少は表12に示されている(リサイクル反応は反応2〜4である)。
Figure 0004928467
(実施例31)
(さまざまな反応pHでA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138細胞を使用するグリコロニトリル(GLN)のグリコール酸アンモニウム(NH4GLA)への変換)
オーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた50−mLジャケット付き反応管にGA/PEI架橋カラギナンビーズ(実施例21に記載された方法を使用して調製)4gを充填し、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)を発現する5%(dcw)大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138を含有する0.1M NH4GLA(pH7.0)の72mL)で15分間2回洗浄した。次いで管には蒸留水10.88gおよび4.0M NH4GLA(pH7.5)2.98mL、70wt%グリコール酸(GLA)(アルドリッチ(Aldrich)または水中1:4希釈の水酸化アンモニウム(28−30wt%)のいずれかの適量を添加し(表13)、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌し、水中49.88wt%グリコロニトリル(GLN)2.15mL(2.25g、19.6mmol(フルカ(Fluka))を添加し、pH4.0、4.7、5.5、6.7、または7.5で1M GLNを得た(表14)。
4つの0.100−mL反応試料をGLN添加後の所定の時間に除去し、HPLCによって分析し、初期反応速度を測定した。各々のpHで実行される複製での速度の平均としての初期反応速度は表14に示されている。
Figure 0004928467
Figure 0004928467
(実施例32)
(シアン化水素(HCN)の存在または非存在下にA.ファシリス(facilis)72ニトリラーゼを発現する固定化大腸菌(E.coli)FM5/pNM18を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
オーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた50−mLジャケット付き反応管にGA/PEI架橋カラギナンビーズ(実施例21に記載された方法を使用して調製)4gを充填し、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)を発現する5%(dcw)大腸菌(E.coli)FM5/pNM18を含有する0.1M NH4GLA(pH7.5)72mL)で15分間2回洗浄した。次いで管には蒸留水10.9gおよび4.0M NH4GLA(pH7.5)3.0mLを添加し、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌し、水中50wt%HCN0.063mL(0.054g、1mmol)の有無による水中60.51wt%グリコロニトリル(GLN)の1.777mLのアリコート(1.885g、20.0mmol(フルカ(Fluka)、再蒸留))を最初に添加した直後に水中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:16希釈0.320mLを添加した。4つの0.100−mL反応試料を最初のGLN添加後の所定の時間に除去し、HPLCによって分析し、初期反応速度を測定した。GLN変換の完了時、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々の第2のアリコートを添加してGLNの濃度を<1MおよびpHを7.0−7.5の範囲内に維持し、GLN変換が完了した後、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々の第3のアリコートを添加した。反応の完了時、>99%の収量でグリコール酸(アンモニウム塩として)を生成するGLNの100%変換が認められ、添加GLNから生成されたグリコール酸アンモニウムの濃度はおよそ2.5Mであった(約23.7mLの最終反応体積で初期グリコール酸アンモニウム緩衝液を含む、3.0M総グリコール酸アンモニウム)。
第1の反応の終了時、水性生成物混合物を触媒から静かに注ぎ(窒素下)、次いで反応管には蒸留、脱イオン化水13.9mLを添加し、真上に記載した通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムのアリコートの添加によって25℃下に第2の反応を実行した。触媒リサイクルによる連続バッチ反応の初期反応速度は表15に示されている(リサイクル反応は反応2〜9である)。
Figure 0004928467
(実施例33)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼを発現する固定化大腸菌(E.coli)FM5/pNM18を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムの加水分解の連続バッチ反応におけるホルムアルデヒドまたはシアン化水素のいずれかの添加の影響)
反応を実行し、特徴づけ、かつ水中60.51wt%グリコロニトリル(GLN)1.777mL(1.885g、20.0mmol(フルカ(Fluka)、再蒸留))の各々のアリコートが、水中37wt%HCHO 0.074mL(0.081g、1mmol)(リサイクル1、2、3、および6)または水中50wt%HCN 0.063mL(0.054g、1mmol)(リサイクル4、5、およ7)のいずれかを含むことを除き、HCNの添加なしの反応のために実施例32に記載された通りバイオ触媒をリサイクルした(表16)。HCHOまたはHCNの添加なしの反応のデータは比較のために表15から反復されている。
Figure 0004928467
(実施例34)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ突然変異L201Qを発現する大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−L201Q細胞を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
50−mL遠心分離管にA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異L201Q(配列番号8)を発現する大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−L201Q 6gおよび0.35M Na2HPO4(pH7.5)7.54mL、0.35M Na2HPO4(pH7.5)35mLを添加し、管を5000rpmで20分間遠心分離し、上清を注意深く、かつ完全に細胞ペーストから除去し、遠心分離細胞ペースト935mgをオーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた150−mLジャケット付き反応管に移した。次いで管には0.3M NH4GLA(pH7.5)52.54mL、4.0M NH4GLA(pH7.5)7.88mL、および蒸留水9.63mLを添加し、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌し、水中54.61wt%グリコロニトリル(GLN)7.82mL(8.18g、78.3mmol(フルカ(Fluka))を添加し、pHを水中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:4希釈によってpH7.5に調節した。初期反応速度を測定するために、4つの0.050−mL反応試料を第1のGLNの添加後の所定の時間に除去し、アッセイ混合物(6.0N HCl 0.025mLおよび0.18M n−プロパノール0.800mL)に添加し、ボルテックスし、12,000rpmで6分間、遠心分離し、上清を実施例12に記載されている通りHPLCによって分析した。GLN変換の完了時、GLNの第2のアリコートを添加し、pHを水酸化アンモニウムで7.5に調節し、GLN変換が完了した後、第3のGLNアリコートを添加し、pHをpH7.5に調節した。反応の完了時、>99%収量でグリコール酸(アンモニウム塩として)を生成するGLNの100%変換が認められ、添加GLNから生成されたグリコール酸アンモニウムの濃度はおよそ2.5Mであった(約94.05mLの最終反応体積で初期グリコール酸アンモニウム緩衝液を含む、2.9M総グリコール酸アンモニウム)。
第1の反応の終了時、水性生成物混合物を細胞ペーストから遠心分離した(5000rpm、20分)。細胞ペーストを秤量し、元の反応管に移した。次いで管には0.3M NH4GLA(pH7.5)52.54mL、4.0M NH4GLA(pH7.5)7.88mL、および蒸留水9.63mLを添加し、反応管を窒素で洗い流し、第2の反応を真上に記載されている通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムのアリコートの添加によって25℃下に実行した。上記の反応溶液の遠心分離による反応4後に回収された細胞ペーストの重量は964mgであった。
触媒リサイクルとの連続バッチ反応の初期反応速度は表17に示されている(リサイクル反応は反応2〜4である)。
Figure 0004928467
(実施例35)
(A.ファシリス(facilis)72WニトリラーゼまたはA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ突然変異を発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を使用するグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
オーバーヘッド攪拌器および温度調節器を備えた50−mLジャケット付き反応管にGA/PEI架橋カラギナンビーズ(実施例21に記載された方法を使用して調製)8gを充填し、A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ(配列番号6)、またはA.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異F168V(配列番号32)、F168M(配列番号28)、F168K(配列番号26)、F168T(配列番号30)、およびL201Q(配列番号8)を発現する5%(dcw)大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を含有する0.1M NH4GLA(pH7.0)72mL)で15分間2回洗浄した。次いで管には蒸留水14.632gおよび4.0M NH4GLA(pH7.0)6.0mLを添加し、反応管を窒素で洗い流した。混合物を25℃下に攪拌すると同時にプログラム可能な注射器ポンプを使用し、水中59wt%グリコロニトリル(GLN)(1.14g、12.0mmol(フルカ(Fluka)、再蒸留)1.08mLおよび水(合計2.304mL)中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:16希釈0.288mLの8つのアリコートを添加し、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々1つのアリコートを2時間毎に同時に添加し、GLNの濃度を<400mMおよびpHを6.5−7.5の範囲内に維持した。4つの0.050−mL反応試料をGLN添加後の所定の時間に除去し、HPLCによって分析し、初期反応速度を測定した。反応の完了時、>99%の収量でグリコール酸(アンモニウム塩として)を生成するGLNの100%変換が認められ、添加GLNから生成されたグリコール酸アンモニウムの濃度はおよそ2.4Mであった(約39.5mLの最終反応体積で初期グリコール酸アンモニウム緩衝液を含む、3.0M総グリコール酸アンモニウム)。
第1の反応の終了時、水性生成物混合物を触媒から静かに注ぎ(窒素下)、固定化細胞触媒(8.0g)と残りの生成物混合物(約2.3g)の混合物約10.3gを残した。次いで、反応管には蒸留、脱イオン化水18.3mLを添加し、真上に記載した通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムのアリコートの添加によって25℃下に第2の反応を実行した。触媒リサイクルによる連続バッチ反応の初期反応速度は表18に示されている(リサイクル反応は反応2〜55である)。
触媒生産性(生成された総グラムGLA/グラム乾燥細胞重量(dcw)酵素触媒)を結果としてグリコロニトリルの100%変換をもたらした触媒リサイクルとの連続バッチ反応の総数から各々のニトリラーゼについて計算した。各々の酵素触媒についての触媒生産性は以下の通りであった。すなわち、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168V、GLA/g dcw(55連続バッチ反応)1001g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168M、GLA/g dcw(26連続バッチ反応)473g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168K、GLA/g dcw(26連続バッチ反応)473g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−F168T、GLA/g dcw(20連続バッチ反応)364g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138−L201Q、GLA/g dcw(19連続バッチ反応)346g、大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138、GLA/g dcw(10連続バッチ反応)182g。
Figure 0004928467
Figure 0004928467
(実施例36)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ変異F168Vを発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を使用するGLNの変換によって得られるグリコール酸アンモニウムの特性化)
固定化MG1655/pSW138−F168Vバイオ触媒によるGLN(フルカ(Fluka)、再蒸留)加水分解(実施例35、表18を参照)によって得られる生成物溶液の組成物を評価するために、反応5、10、および38で生成された生成物溶液をHPLCおよび1H NMR分光法によって特性化した。HPLCによって測定されたグリコール酸の濃度は3.1Mであった。量的1H NMRスペクトルを500MHzで作動するバリアン・ユニティー・イノバ(Varian Unity Inova)分光計(バリアン(Varian)社(Inc.)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto、CA))を使用して得た。反応生成物150μLをD2O 400μLとともに5mmのNMR管に添加することによって試料を調製した。
1H NMRスペクトルを5ppm、および90度パルス(49dbのトランスミッタ出力で5.9マイクロ秒)で配置したトランスミッタにより6000Hzのスペクトル幅を使用して取得した。48,000点の総データサイズをもたらす4秒の取得時間を使用した。最長の1H T1(8秒)はメタノールCH3陽子と関連し、したがって、取得前の総遅延時間は50秒(すなわち、メタノールCH31の5倍超)に設定した。この前遅延時間は、単純遅延時間(「d1」)と−6dbのトランスミッタ出力での残留水の共鳴に適用される30秒の溶媒飽和パルスとの間で分割された。32スキャンの信号加算平均に先立ち、4つの定常状態(「ダミー」)スキャンがあり、およそ32分の総実験時間を示した。割当は1H NMR化学シフトを以前の二次元NMR相関実験で得られたものと比較することによって、かつスパイク実験によって得られた。
1H NMR分光法によってグリコール酸アンモニウム生成物溶液で得られた不純物は、その官能基に基づき、以下の官能基カテゴリーに分類された。すなわち、ホルムアルデヒド由来、ギ酸由来、メタノール由来、およびメチル由来。カテゴリーの各々の陽子信号の積分ピーク面積は以下の通り割当てられた。すなわち、2つの陽子はホルムアルデヒド官能性に割当てられ、1つの陽子はギ酸官能性に割当てられ、3つの陽子はメタノール官能性に割当てられ、かつ3つの陽子はメチル官能性に割当てられた。グリコール酸アンモニウムの集積ピーク面積は2(グリコール酸アンモニウム陽子の数)で割られ、100%の値が割当てられた。不純物官能基カテゴリーの各々で確認された集積ピーク面積を対応する電子の数で割り(上記参照)、結果として生じる集積ピーク面積を存在するグリコール酸アンモニウムの濃度に対して不純物のパーセント濃度を測定する試料に存在する1つのグリコール酸陽子の集積ピーク面積で割った。グリコール酸アンモニウムの収量(GLNの100%変換に基づく)およびグリコール酸アンモニウムの%純度(グリコール酸および総不純物の相対濃度に基づく)は表19に示されている。
Figure 0004928467
(実施例37)
(A.ファシリス(facilis)72Wニトリラーゼ突然変異F168Vを発現する固定化大腸菌(E.coli)MG1655/pSW138形質転換体を使用するシアン化水素およびホルムアルデヒドから得られるグリコロニトリルのグリコール酸アンモニウムへの加水分解)
以下の反応のために使用されるグリコロニトリルを、実験設定を変更し、反応器へのHCHO供給の開始時に反応フラスコおよび対応する槽/攪拌プレートアセンブリの上昇を回避するよう変更したことを除き、実施例4−8に記載された通り調製した。HCHO供給ラインの加熱部の出口を3方向ボール弁に直接接続したが、これはHCHO供給を分離ラインを通じて反応管または外部シンチレーションバイアルのいずれかへ方向づけることもできる。合成手順の開始時、HCHO供給を3方向弁によってシンチレーションバイアルに方向づけた。HCHO供給の2相流れの装置開始とともに、3方向弁はHCHO供給を反応フラスコへ方向づけ始めた。
生体内変化反応を、反応体積が実施例35における反応の半分であり、pHがpH7.5で維持されたことを除き、実施例35に記載された通り実行した。反応管にはバイオ触媒ビーズ4g、蒸留水7.32g、および4.0M NH4GLA(pH7.5)3mLを添加し、管を窒素で洗い流し、混合物を25℃下に撹拌し、かつプログラム可能な注射器ポンプを使用し、水中60wt%グリコロニトリル(GLN)(0.58g、6.0mmol(上記の通り調製されたGLN)0.54mLおよび水(合計1.2mL)中水酸化アンモニウム(28−30wt%)の1:16希釈0.15mLの8つのアリコートを添加し、GLNおよび水酸化アンモニウムの各々1つのアリコートを2時間毎に同時に添加した。第1の反応の終了時、水性生成物混合物を触媒から静かに注ぎ(窒素下)、脱イオン化水10.32mLを添加し、真上に記載した通り水性GLNおよび水酸化アンモニウムの添加によって新しいバイオ触媒リサイクルを開始した。触媒リサイクルとの連続バッチ反応の初期反応速度は表20に示されている(リサイクル反応は反応2〜24である)。すべての反応について、GLNのGLAへの変換は100%であり、GLAの収量は99%を上回った。
Figure 0004928467
(実施例38)
(固定床イオン交換クロマトグラフィーによるグリコール酸アンモニウムからのグリコール酸の単離)
実施例4−8に記載された通りシアン化水素およびホルムアルデヒドから合成されたGLN(高純度GLNの合成)を、添加剤(反応体積が18倍に拡大したことを除く)なしに実施例22に記載された通りグリコール酸アンモニウムに変換し、固定床イオン交換を使用し、グリコール酸アンモニウム生成物溶液をグリコール酸に変換した。
テフロン(Teflon)(登録商標)PTFEエンドキャプおよびH+形態でのDowex(登録商標)G−26強酸陽イオン樹脂(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co)を備えた5cm内径×60cmホウケイ酸ガラスカラム(スペクトル−クロマトグラフィー)を使用した。5ガロンポリプロピレン供給水差しを使用し、樹脂の前後洗浄のために超高純度水(Sybron−Barnstead Nanopure II unitによって製造された18+MΩ)をカラム供給ポンプ(オールテフロン(Teflon)(登録商標)ヘッド付のCole−Parmer可変速隔膜ポンプ)に供給した。水差しをつねに窒素パージし、大気CO2の吸収を阻止した。充填カラム(初期高=23”、床体積=1147mL)を>5MΩの流出物に超高純度水で前洗浄後、グリコール酸アンモニウム(1.3リットル(1428g)、pH=7.09)を40mLで床上向流にポンプで通し、グリコール酸が使い果たされるとユニットを同一の速度でポンピングする超高純度水に切替え、供給材料を床に押通し続けた。実行中、カラム流出物を前洗浄HDPP(高密度ポリプロピレン)試料瓶を使用して連続的に50mL増分で捕捉し、合計38の流出物の50−mL試料を連続的に採取し、pH(pH計)、グリコール酸濃度(HPLC)、およびアンモニウムイオン含有量(イオンクロマトグラフィーによる)について分析した。
アンモニウムイオン含有量の測定は、CD20導電性検出器を備えたDionex IP25ポンプおよびDionex CS17カラム(3−11mMスルホン酸メタン、1.0mL/分、100マイクロアンプに設定したDionex CSRSウルトラで抑制、1.0mL/分、100マイクロリットル試料ループ)を使用して行い、陽イオン3−11mM CS17法を分析に適用した。
フラクション12〜23を複合し(総600mL)、一夜、新鮮なDowex(登録商標)G−26樹脂(脱イオン化水45mLで20分間、3回前洗浄)5gで攪拌し、グリコール酸溶液651gをろ過によって収集した。溶液を回転蒸発によって濃縮し、70wt%グリコール酸(生成物140g)を生成した。不純物についての70wt%グリコール酸の分析は、グリコール酸の純度が99.9%を上回ることを示した。
(実施例39)
(25℃下に10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に70%(体積/体積)のトリアルキルアミン(アラミン(Alamine)(登録商標)336、コグニス社(Cognis Corp.)、オハイオ州シンシナティ(Cincinnati、OH))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)、および20%(体積/体積)ケロシンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸(H2SO4)で約pH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表21は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例40)
(50℃下に10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に70%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)、および20%(体積/体積)ケロシンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸で約pH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を50℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表22は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例41)
(75℃下に10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に70%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)、および20%(体積/体積)ケロシンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表23は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例42)
(25℃下に10%メチルイソブチルケトンと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)を含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表24は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例43)
(75℃下に10%メチルイソブチルケトンと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)を含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表25は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例44)
(25℃下に10%メチルイソブチルケトンおよび40%ケロシンと組合せておよそ50%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に50%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)、および40%(体積/体積)ケロシンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表26は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例45)
(75℃下に10%メチルイソブチルケトンおよび40%ケロシンと組合せておよそ50%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に50%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)、および40%(体積/体積)ケロシンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表27は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例46)
(25℃下に10%1−オクタノールと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)1−オクタノールを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表28は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例47)
(75℃下に10%1−オクタノールと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)1−オクタノールを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表29は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例48)
(25℃下に30%1−オクタノールと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に70%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、30%(体積/体積)1−オクタノールを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸で約pH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表30は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例49)
(75℃下に30%1−オクタノールと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に70%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、30%(体積/体積)1−オクタノールを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表31は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例50)
(25℃下に10%トルエンと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)トルエンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表32は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例51)
(75℃下に10%トルエンと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)トルエンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表33は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例52)
(25℃下に10%キシレンと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)キシレンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を25℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表34は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例53)
(75℃下に10%キシレンと組合せておよそ90%C8−C10トリアルキルアミンを使用する溶媒抽出)
磁気攪拌バーを備えた4−mLガラス反応器に90%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)キシレンを含有する混合溶媒1mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(5wt%〜40wt%)のpHを濃縮硫酸でpH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液1mLを反応器に添加した。結果として生じる混合物を75℃下に30分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。各々の初期グリコール酸濃度について、表35は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例54)
(10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの水を使用する逆抽出)
実施例1の手順に従い、抽出ミキサー(垂直に前後に回転させることによって混合)上の1−L円筒ガラス管に70%(体積/体積)のアラミン(Alamine)(登録商標)336(コグニス(Cognis))、10%(体積/体積)メチルイソブチルケトン(MIBK)、および20%(体積/体積)ケロシンを含有する混合溶媒100mLを配置した。グリコール酸アンモニウムの水溶液(10wt%〜50wt%)のpHを濃縮硫酸で約pH2〜3に調節し、次いで結果として生じる水溶液100mLを抽出ミキサーに添加した。結果として生じる混合物を室温下に60分間攪拌した。混合を停止し、2相を分離させ、次いで有機相および水相を各々サンプリングし、HPLCによってグリコール酸濃度について分析した。有機相を収集し、逆抽出において使用した。グリコール酸を含有するこの有機相を以下で「充填溶媒」と呼ぶ。
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)に脱イオン化水10mLおよび充填溶媒10mLを配置した。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、120℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を120℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒における各々の初期グリコール酸濃度について、表36は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例55)
(10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)にグリコール酸(20wt%または40wt%)の水溶液10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、120℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を120℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒および水溶液における各々の初期グリコール酸濃度について、表37は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例56)
(10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの水を使用する逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)に脱イオン化水10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54を参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、140℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を140℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒における各々の初期グリコール酸濃度について、表38は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例57)
(10%メチルイソブチルケトンおよび20%ケロシンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)にグリコール酸(20wt%または40wt%)の水溶液10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54を参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、140℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を140℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒および水溶液における各々の初期グリコール酸濃度について、表39は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例58)
(30%トルエンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの水を使用する逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)に脱イオン化水10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54を参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、120℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を120℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒における各々の初期グリコール酸濃度について、表40は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例59)
(30%トルエンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)にグリコール酸(20wt%または40wt%)の水溶液10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54を参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、120℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を120℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒および水溶液における各々の初期グリコール酸濃度について、表41は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例60)
(30%トルエンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの水を使用する逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)に脱イオン化水10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54を参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、140℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を140℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒における各々の初期グリコール酸濃度について、表42は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例61)
(30%トルエンと組合せておよそ70%C8−C10トリアルキルアミンの充填溶媒からの逆抽出)
磁気攪拌バーおよび二重浸漬管を備えた85−mL圧力反応ガラス管(圧力反応管、アンドリュース・ガラス社(Andrews Glass Co.)製)にグリコール酸(20wt%または40wt%)の水溶液10mLおよび充填溶媒10mLを配置した(実施例54を参照)。次いで管を閉鎖し、ヘッドスペースを窒素でパージした。結果として生じる混合物を40psig(約275.8kPa)窒素下、140℃下に60分間攪拌した。攪拌を停止し、2相を140℃下に分離させ、次いで有機相を上部浸漬管からホークシリンダへ加圧下にサンプリングし、水相を下部浸漬管から別のホークシリンダへ加圧下にサンプリングした。両相をHPLCによってグリコール酸濃度について分析した。
充填溶媒および水溶液における各々の初期グリコール酸濃度について、表43は、結果として生じる混合物の各々相におけるグリコール酸の最終濃度、および初期グリコール酸濃度の各々について計算された分配係数を示す。
Figure 0004928467
(実施例62)
(3.5時間約133℃まで加熱された融解グリコール酸アンモニウム塩の熱分解)
25wt%グリコール酸アンモニウム溶液およそ54.65gを100−mL3口フラスコに添加し、蒸留によって水を除去した。フラスコ中の液体の重量が13.63gに減少した場合、透明な粘性の液体を分析した。すなわち、12%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコールアミドに変換され、13%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)に変換され、グリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)およびアンモニウム回収は、それぞれ、70%(モル/モル)および73%(モル/モル)であった(グリコール酸アンモニウムおよび生成物の最終モル濃度に対して生成物の最終モル濃度に基づき計算された収量)。試料がHPLC、イオン電極、GC等によって分析のために除去された後(以後「サンプリング」と呼ぶ)、透明な粘性の液体12.06gがフラスコ中に残った。254mmHgの真空をかけ、加熱を3.5時間にわたって133度まで継続した。結果として生じる生成物の分析は、開始グリコール酸アンモニウムのグリコールアミドへの24%(モル/モル)変換、開始グリコールアミノ酸へのグリコール二量体への32%(モル/モル)の変換(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)、20%(モル/モル)のグリコール酸回収(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)、および27%(モル/モル)のアンモニウムイオンが残存していることを示した。グリコール酸およびグリコール酸二量体(存在するグリコール酸アンモニウムおよびグリコール酸アンモニウム二量体から分離)の複合収量は、少なくともおよそ9%であることが計算された。
(実施例63)
(およそ6時間約140−150℃まで加熱した後、グリコール酸オリゴマーの加水分解した融解グリコール酸アンモニウム塩の熱分解)
25wt%グリコール酸アンモニウム溶液およそ54.82gを100−mL3口フラスコに添加し、蒸留によって水を除去した。フラスコ中の液体の重量が21.15gに減少した場合、約8(モル/モル)%アンモニアが除去されていた。サンプリング後、透明な粘性の液体19.91gがフラスコ中に残った。74mmHgまでの真空をかけ、温度を5時間以内に140−150℃に上昇させ、1時間維持した。フラスコ中の残留液体の重量は10.33gであった。この生成物の分析では、24%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコールアミドに変換され、28%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)に変換され、グリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)およびアンモニウム回収は、それぞれ、20%および11%(モル/モル)であった。およそ7000ppmのグリコリドも生成された。サンプリング後、液体9gを水9gと混合した。結果として生じる溶液を約105℃に加熱し、2時間還流した。アンモニウムイオンのさらなる削減は確認されず、二量体およびオリゴマーはグリコール酸に変換された。グリコールアミド濃度は有意に変化することはなかった。グリコール酸二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)の収量は、24%(モル/モル)から4%(モル/モル)に低下した。最終グリコール酸回収(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)は56%(モル/モル)であった。グリコール酸の収量は少なくとも45%であった。
(実施例64)
(およそ1時間約140−150℃まで加熱した後、170℃下に加熱した融解グリコール酸アンモニウム塩の熱分解)
25wt%グリコール酸アンモニウム溶液およそ54.85gを100−mL3口フラスコに添加し、真空(633〜379mm−Hg)下に蒸留によって水を除去した。フラスコ中の液体の重量が13.33gに減少した場合、10%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコールアミドに変換され、かつ13%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)に変換され、グリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)およびアンモニウム回収は、それぞれ、72%および76%(モル/モル)であった。サンプリング後、透明な粘性の液体11.98gがフラスコ中に残った。127mmHgの真空をかけ、温度を1時間140−150℃に維持した。次いで、温度を170℃に上昇させた。液体の色は数分以内に褐色になった。この生成物の分析は、29%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコールアミドに変換され、16%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)に変換され、グリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)およびアンモニウムイオン回収は、それぞれ、30%および16%(モル/モル)であることを示した。グリコール酸およびグリコール酸二量体は、少なくともおよそ22%であった。
(実施例65)
(およそ3時間80℃下に加熱した後、3時間130℃下に加熱した融解グリコール酸アンモニウム塩の熱分解)
25%グリコール酸アンモニウム溶液およそ29.1gを大腸菌(E.coli)FM5/pNM18−H9細胞を使用するグリコロニトリルの酵素加水分解から生成した(米国仮特許出願第60/638176号明細書を参照、参照により全体として本明細書で援用される)。固定化バイオ触媒を生成物溶液から静かに注いだ。次いで、溶液を100−mL3口フラスコに添加し、真空(635〜381mm−Hg)下に70−80℃で水を蒸留した。フラスコ中の液体の重量が7.02gに減少した場合、3%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコールアミドに変換され、かつ12%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)に変換され、グリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)およびアンモニウム回収は、それぞれ、85%および76%(モル/モル)であった。サンプリング後、透明な粘性の液体4.2gがフラスコ中に残った。127mmHgの真空をかけ、温度を3時間80℃に維持した。次いで、3時間130℃下に維持した。この生成物の分析は、グリコール酸からグリコールアミドの26(モル/モル)%の変換、グリコール酸からグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)への28%(モル/モル)の変換、44%(モル/モル)のグリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウム)回収、および27%(モル/モル)のアンモニウムイオンが残った。およそ1.7wt%のグリコリドも生成された。グリコール酸およびグリコール酸二量体の複合収量は、少なくともおよそ31%であった。
(実施例66)
(6時間およそ80−90℃に(凍結乾燥)加熱した融解グリコール酸アンモニウム塩の熱分解)
40wt%グリコール酸アンモニウム溶液およそ341.7gを凍結乾燥させ、水を除去した。次いで、凍結乾燥グリコール酸アンモニウム146.4gをフラスコに添加し、80−90℃に加熱し、次いで50mm−Hgの真空をかけた。6時間後、それより多くのアンモニアは放出されなかった。透明な粘性の液体の最終重量は104.4gであり、3%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコールアミドに変換され、6%(モル/モル)のグリコール酸アンモニウムがグリコール二量体(複合グリコール酸二量体およびグリコール酸アンモニウム二量体として)に変換され、グリコール酸(複合グリコール酸およびグリコール酸アンモニウムとして)およびアンモニウム回収は、それぞれ、66%(モル/モル)および62%(モル/モル)であった。およそ1.4wt%のグリコリドも生成された。グリコール酸およびグリコール酸二量体の複合収量は、少なくともおよそ6%であった。
(実施例67)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸のグリコール酸メチルへの変換)
実施例67の目的は、エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用する、グリコール酸の水溶液をグリコール酸メチルに変換する本方法の能力を例示することである。グリコール酸メチル生成物は、部分コンデンサを使用することにより反応室から除去し、蒸気生成物流れから選択的に単離された。
(実施例67−74で使用された1H NMR分析法)
試料(0.40mL)のアリコートを0.1%TMS(テトラメチルシラン)を含有する等体積のCDCl3と混合し、結果として生じる溶液を1H NMR分光法(500MHz)および13C NMR分光法(125MHz)によって分析した。試料は、メタノール、グリコール酸メチル、グリコール酸アンモニウム、およびグリコール酸を含有することがわかったが、これらの化合物のそれぞれのメチレンおよび/またはメトキシ水素原子のTMSに対する1H NMR化学シフトは表44(アンモニウムが試料中に存在していない場合)および表45(アンモニウムが試料中に存在している場合)に示されている。
Figure 0004928467
アンモニウムが試料中に存在しない場合、グリコール酸ピークは以下の通りシフトする。
Figure 0004928467
上記の表で識別された化合物の同一性は、個別にメタノール、グリコール酸メチル、グリコール酸アンモニウム、またはグリコール酸を基準試料の第2のアリコートに添加し、かつこれらの化合物のそれぞれのメチレンおよび/またはメトキシ水素原子の相対ピーク集積の増大を観察することによって確認された。各々試料の成分のモル比は、3つの化学成分のそれぞれのメチレンまたはメトキシH−原子を含有する1H NMRスペクトルの部分の集積によって測定された。
(実施例68)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸のグリコール酸メチルへの変換)
実施例68の目的は、エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用する、グリコール酸の水溶液をグリコール酸メチルに変換する本方法の能力を例示することである。グリコール酸メチル生成物は、部分コンデンサを使用することにより反応室から除去し、蒸気生成物流れから選択的に単離された。
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG、高沸点流体として使用、Lyondell PolyMeg(登録商標)1000、製品番号9707、ロット#PEZM30B−A、リオンデル・ケミカル社(Lyondell Chemical Company)、テキサス州ヒューストン(Houston、TX)、CAS#25190−06−1)およそ137gを反応室(300ccオートクレーブ)に充填した。圧力制御器(装荷背圧調整器)を25psig(約172.4kPa)に調節した。オートクレーブ攪拌機をスタートさせ、1000rpmにセットした。オートクレーブ内部温度を200℃にセットし、熱コンデンサ表面温度を130℃にセットした。温度が平衡化すると、メタノール(ブレンターグ・ノースイースト社(Brenntag Northeast Inc.)、ペンシルベニア州リーディングス(Readings,PA)、純度99.99%、製品コード838775)流を10mL/分で開始し、オートクレーブへのメタノール供給温度を250℃に維持した。これらの条件を45分間維持し、システムが平衡に達するようにさせた。次いで、グリコール酸供給(70wt%水溶液、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、カタログ#420581)を1.5mL/分で開始し、67mLの総供給のために45分間維持した。メタノール流をグリコール酸アンモニウム流の終了を過ぎてさらに20分継続した。総メタノール供給は1160mLであった。
メタノール供給中5分毎に熱コンデンサから試料を収集した。試料は陽子核磁気共鳴分光法(1H NMR)によって分析され、メタノール、グリコール酸メチル、およびわずかな量のグリコール酸を含有することがわかった。熱コンデンサ(2−3、2−5、および2−7)およびステンレス鋼収集ドラム(2−ドラム)からの試料の結果が表46に示されている。モル比は、グリコール酸メチルのピーク(すなわち、「CH3ピーク」)面積を1に標準化することによって報告された。
Figure 0004928467
システムを冷却し、試料をさまざまな管から回収し、物質収支を実行した。全質量は99%以内にバランスを保った。反応器は粘性の液体138gを含有した。メタノール回収ドラムは912gを含有し、すべての試料の総重量は99グラムであった。
(実施例69)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸アンモニウムのグリコール酸メチルへの変換)
(反応器温度約200℃、熱コンデンサ約130℃)
実施例69の目的は、エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用する、グリコール酸アンモニウムの水溶液のグリコール酸メチルへの直接変換を示すことである。
水性グリコール酸アンモニウム(NH4GLA)溶液(グリコール酸アンモニウム「溶液A」)を、70wt%水性グリコール酸溶液(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)659gを30wt%水酸化アンモニウム水溶液(EMDケミカルズ(Chemicals)、ドイツダルムシュタット(Darmstadt)、製品番号AX1303−6)と混合することによって調製した。
PTMEGおよそ138gを反応器(オートクレーブ)に充填した。圧力制御器を25psig(約172.4kPa)に調節した。オートクレーブ撹拌機をスタートさせ、1000rpmにセットした。オートクレーブ温度を200℃にセットし、熱コンデンサを130℃にセットした。温度が平衡化すると、メタノール流を10mL/分で開始し、オートクレーブへのメタノール供給温度を250℃に維持した。これらの条件を15分間維持し、システムが平衡に達するようにさせた。次いで、グリコール酸アンモニウムAを2.2mL/分の速度で反応器に送り込み、132mLの総供給のために60分間維持した。メタノール流をグリコール酸アンモニウム流供給の終了を過ぎてさらに35分継続した。総メタノール供給は1100mLであった。
グリコール酸アンモニウム供給中5分毎に熱コンデンサから試料を収集した。試料の最初の30分は「A」で指定される試料を作るために混合され、試料の次の30分は「B」で指定される試料を作るために混合された。試料(試料「5A」および「5B」)は1H NMRによって分析され、メタノール、グリコール酸メチル、およびグリコール酸アンモニウムを含有することがわかった。結果は表47に要約されている。
システムを冷却し、試料をさまざまな管から回収し、物質収支を実行した。オートクレーブはさまざまな液体140gを含有した。メタノール回収ドラムは913gを含有し、すべての試料の総重量は123グラムであった。
(実施例70)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸アンモニウムのグリコール酸メチルへの変換)
(反応器温度約170℃、熱コンデンサ約100℃)
器具および手順は、反応器(オートクレーブ)の温度を170℃に維持し、熱コンデンサを100℃に維持したことを除き、実施例69と同一であった。グリコール酸アンモニウム溶液Aを60分間供給し、試料が実施例68に記載されている通り混合され、試料「7A」および「7B」を調製した。結果は表47に要約されている。
(実施例71)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸アンモニウムのグリコール酸メチルへの変換)
(熱導電流体として鉱油、反応器温度約170℃、熱コンデンサ約100℃)
器具および手順は、別段の指示がない限り実施例70に記載されたものと同一であった。
鉱油(MultiTherm PG−1(登録商標)熱導電流体、MultiTherm(登録商標)LLC、ペンシルベニア州マルヴァーン(Malvern,PA))およそ131gを反応器に添加した。オートクレーブ温度を170℃に維持し、熱コンデンサを100℃に維持した。グリコール酸アンモニウム溶液Aを60分間供給し、試料を実施例69のように混合し、試料「8A」および「8B」を調製した。結果は表47に要約されている。
(実施例72)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸アンモニウムのグリコール酸メチルへの変換)
(熱導電流体として鉱油、反応器温度約200℃、熱コンデンサ約130℃)
器具および手順は、別段の指示がない限り実施例69に記載されたものと同一であった。
鉱油(MultiTherm PG−1(登録商標)熱導電流体、MultiTherm(登録商標)LLC、ペンシルベニア州マルヴァーン(Malvern,PA))およそ128gを反応器に添加した。オートクレーブ温度を200℃に維持し、熱コンデンサを130℃に維持した。グリコール酸アンモニウム溶液(グリコール酸アンモニウム「溶液B」)を、グリコール酸結晶(99%グリコール酸、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)カタログ#124737)を水酸化アンモニウム水溶液(30wt%、EMDケミカルズ(Chemicals)68.5gおよび脱イオン化水25gと混合することによって調製した。グリコール酸アンモニウム溶液Bを60分間供給し、試料を実施例69のように混合し、試料「9A」および「9B」を調製した。結果は表47に要約されている。
(実施例73)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸アンモニウムのグリコール酸メチルへの変換)
(高い沸点の流体なし、反応器温度約200℃、熱コンデンサ約130℃)
器具および手順は、高い沸点の流体を使用しなかったことを除き実施例69と同一であった。その代わり、攪拌機を除去し、パッキング材料(Hastelloy(登録商標)C276製の「ProPak」1/4インチ高効率包装、エース・ガラス社(Ace Glass Inc.))を反応器(オートクレーブ)に添加した。メタノール供給ラインをパッキングを通じて挿入し、メタノールの添加はオートクレーブの下部であった。グリコール酸アンモニウム溶液(グリコール酸アンモニウム「溶液C」)を、等質量の70wt%グリコール酸水溶液(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)および30wt%水酸化アンモニウム水溶液(EMDケミカルズ(Chemicals))を混合した後、GLAおよびアンモニウムで微調整し、7.0と7.5との間のpHを達成することによって調製した。グリコール酸アンモニウム供給を反応器のパッキングの上部に添加した。
反応器温度を200℃に維持し、熱コンデンサを130℃に維持した。グリコール酸アンモニウム溶液Cを2.2mL/分で60分間供給し、試料を実施例69のように混合し、試料「11A」および「11B」を調製した。結果は表47に要約されている。
(実施例74)
(エステル化剤およびストリッピングガスとして加熱メタノール蒸気を使用するグリコール酸アンモニウムのグリコール酸メチルへの変換)
(熱導電流体なし、反応器温度約170℃、熱コンデンサ約100℃)
器具および手順は、オートクレーブ温度が170℃に維持され、熱コンデンサが100℃に維持されたことを除き実施例73と同一であった。グリコール酸アンモニウム「溶液C」を60分間供給し、試料を実施例69のように混合し、試料「13A」および「13B」を調製した。結果は表47に要約されている。
Figure 0004928467
本出願は、特許請求に記載の発明を含め、以下の発明を包含する。
(1) ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法であって、
(a)特定可能な時間にわたって約90℃〜約150℃の温度に加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れを提供するステップと、
(b)(a)の加熱された水性供給流れをグリコロニトリル合成に適切な温度でシアン化水素と接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと、
(c)ステップ(b)のグリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させるステップであって、前記ポリペプチドが、
1)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
2)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
(d)塩または酸の形で(c)において製造されるグリコール酸を回収するステップを含み、前記酵素触媒が、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供することを特徴とする方法。
(2) 前記グリコール酸が、反応性溶媒抽出、イオン交換、電気透析、重合、熱分解、アルコール分解、およびそれらの組合せからなる群から選択される回収方法を使用して回収されることを特徴とする(1)に記載の方法。
(3) 前記回収方法がイオン交換および反応性溶媒抽出からなる群から選択されることを特徴とする(2)に記載の方法。
(4) ある量の水酸化ナトリウムが水性ホルムアルデヒド供給流れを加熱する前に水性ホルムアルデヒド供給流れに添加され、水酸化ナトリウムとホルムアルデヒドとのモル比が約1:50〜約1:2000であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(5) シアン化水素とホルムアルデヒドとのモル比が少なくとも1.01〜約1.15:1であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(6) 加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れが約0℃〜約70℃の反応温度でシアン化水素と反応されることを特徴とする(1)に記載の方法。
(7) 加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れが約10℃〜約30℃の反応温度でシアン化水素と反応されることを特徴とする(6)に記載の方法。
(8) 水性ホルムアルデヒド供給流れが約0.1wt%〜約15wt%メタノールを含むことを特徴とする(1)に記載の方法。
(9) 前記アミノ酸配列が配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および32からなる群から選択されることを特徴とする(1)に記載の方法。
(10) 前記酵素触媒が、同一の反応条件下でアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼの活性に対して、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合に、ニトリラーゼ活性の少なくとも約2倍の改善を提供することを特徴とする(1)に記載の方法。
(11) 前記酵素触媒が、同一の反応条件下でアシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72W(ATCC55746)ニトリラーゼの活性に対して、グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合に、ニトリラーゼ活性の少なくとも約4倍の改善を提供することを特徴とする(10)に記載の方法。
(12) 前記酵素触媒が全微生物細胞、透過性微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つまたは複数の成分、部分的に精製された酵素、または精製酵素の形であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(13) 前記全微生物細胞が前記ポリペプチドを組換え発現する形質転換微生物宿主細胞であることを特徴とする(12)に記載の方法。
(14) 前記形質転換微生物宿主細胞が、コマモナス(Comamonas)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、アゾトバクター(Azotobacter)種、シトロバクター(Citrobacter)種、エンテロバクター(Enterobacter)種、クロストリジウム(Clostridium)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、サルモネラ(Salmonella)種、ラクトバチルス(Latobacillus)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、サッカロミセス(Saccharomyces)種、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)種、ピチア(Pichia)種、クルイベロミセス(Kluyveromyces)種、カンジダ(Candida)種、ハンセニュウラ(Hansenula)種、デュナリエラ(Dunaliella)種、デバリオミセス(Debaryomyces)種、ケカビ(Mucor)種、トルロプシス(Torulopsis)種、メチロバクテリア(Methylobacteria)種、バチルス(Bacillus)種、エシェリキア(Escherichia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、リゾビウム(Rhizobium)種、およびストレプトミセス(Streptomyces)種からなる群から選択されることを特徴とする(13)に記載の方法。
(15) 前記形質転換微生物宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)であることを特徴とする(14)に記載の方法。
(16) 前記形質転換微生物宿主細胞が、国際寄託番号ATCC47076を有する大腸菌(E.coli)MG1655および国際寄託番号ATCC53911を有する大腸菌(E.coli)FM5からなる群から選択される大腸菌(Escherichia coli)株であることを特徴とする(15)に記載の方法。
(17) 前記酵素触媒が可溶性または不溶性支持体中にもしくはその上で固定化されることを特徴とする(12)から(16)のいずれか一項に記載の方法。
(18) 前記水性反応混合物において製造されるグリコール酸アンモニウムの濃度が約0.02wt%〜約90wt%であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(19) 前記水性反応混合物において製造されるグリコール酸アンモニウムの濃度が約0.02wt%〜約40wt%であることを特徴とする(18)に記載の方法。
(20) 前記水性反応混合物におけるグリコロニトリル濃度が約5mM〜約1Mの範囲であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(21) 前記水性反応混合物におけるグリコロニトリル濃度が連続的またはアリコート添加によって維持されることを特徴とする(20)に記載の方法。
(22) 前記水性反応混合物におけるpHが約5.5〜約7.7に維持されることを特徴とする(1)に記載の方法。
(23) グリコロニトリルのグリコール酸への酵素変換が実質的に酸素を含まない条件下で起こることを特徴とする(1)に記載の方法。
(24) 前記水性反応混合物が、5wt%未満の濃度でチオ硫酸カリウムおよび亜ジオチオン酸ナトリウムからなる群から選択される安定剤をさらに含むことを特徴とする(1)に記載の方法。
(25) 前記水性反応混合物が、5wt%未満の濃度でチオ硫酸カリウムおよび亜ジオチオン酸ナトリウムからなる群から選択される安定剤をさらに含むことを特徴とする(1)に記載の方法。
(26) 前記酵素触媒が、酵素触媒のグラム乾燥細胞重量当たり少なくとも300グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供することを特徴とする(1)に記載の方法。
(27) 前記酵素触媒が、酵素触媒のグラム乾燥細胞重量当たり少なくとも450グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供することを特徴とする(26)に記載の方法。
(28) 前記酵素触媒が、酵素触媒のグラム乾燥細胞重量当たり少なくとも1000グラムのグリコール酸の触媒生産性を提供することを特徴とする(27)に記載の方法。
(29) ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法であって、
(a)特定可能な時間にわたって約90℃〜約150℃の温度に加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れを提供するステップと、
(b)(a)の加熱された水性供給流れをグリコロニトリル合成に適切な温度でシアン化水素と接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと、
(c)ステップ(b)のグリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させ、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
(d)イオン交換によって(c)において製造されたグリコール酸を回収するステップを含み、前記グリコール酸が少なくとも99.9%の純度を有する方法。
(30) 前記ポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸配列を有する触媒部位を含むことを特徴とする(29)に記載の方法。
(31) ニトリラーゼ活性を有する前記酵素触媒が、
(a)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
(b)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むことを特徴とする(30)に記載の方法。
質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、比較例Aから結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。13C NMRスペクトルは、δ48および119ppm前後で主なグリコロニトリル13C共鳴を示す。未反応ホルムアルデヒドにはδ80−90ppm前後、および未反応ホルムアルデヒド由来の他の副産物種にはδ60ppm前後の実質的な共鳴も認められる。 質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例1から結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。δ48および119pm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。未反応ホルムアルデヒドに対する図1で明らかなδ80−90ppm前後の共鳴は図2において著しく低下している。しかし、未反応ホルムアルデヒド由来の副産物に対するδ60ppm前後の共鳴が残存しているが、それはたぶん初期ホルムアルデヒド反応器装填による。 質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例2から結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。δ48および119pm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴は図3において明らかであるが、不純物のレベルは図1および図2において確認されるレベルから実質的に削減される。 質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例3から結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。δ48および119pm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴は図4において明らかであるが、不純物のレベルは図1および図2において確認されるレベルから実質的に削減される。図4は、実施例3において使用されるホルマリン供給からのメタノールに対するδ49ppmでの共鳴をも明らかに示す。 量的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例4−8で調製された5つの濃縮グリコロニトリル試料を混合することによって製造される複合試料の13C NMRスペクトルを示す図である。量的13C NMR分析を複合試料で行い、製造されたグリコロニトリルの純度を測定した。 実施例9において製造されるグリコロニトリル生成物の純度を質的に示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。 実施例10において製造されるグリコロニトリル生成物の純度を質的に示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。

Claims (2)

  1. ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法であって、
    (a)10秒から24時間90℃〜150℃の温度に加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れを提供するステップと、
    (b)(a)の加熱された水性供給流れをグリコロニトリル合成に適切な70℃以下の温度でシアン化水素と接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと、
    (c)ステップ(b)のグリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させるステップであって、前記ポリペプチドが、
    1)アミノ酸残基168でのリシン、メチオニン、トレオニン、またはバリンによる置換、および
    2)アミノ酸残基201でのグルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、セリン、アラニン、システイン、またはトレオニンによる置換からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換された配列番号6のアミノ酸配列を有し、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
    (d)塩または酸の形で(c)において製造されるグリコール酸を回収するステップを含み、前記酵素触媒が、同一の反応条件下でグリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合、アシドボラックス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼのニトリラーゼ活性に対してニトリラーゼ活性の少なくとも1.5倍の増加を提供することを特徴とする方法。
  2. ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコール酸を製造するための方法であって、
    (a)10秒から24時間90℃〜150℃の温度に加熱された水性ホルムアルデヒド供給流れを提供するステップと、
    (b)(a)の加熱された水性供給流れをグリコロニトリル合成に適切な70℃以下の温度でシアン化水素と接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと、
    (c)ステップ(b)のグリコロニトリルを適切な水性反応混合物中でニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む酵素触媒と接触させ、それによってグリコール酸が製造されるステップと、
    (d)イオン交換によって(c)において製造されたグリコール酸を回収するステップを含み、前記グリコール酸が少なくとも99.9%の純度を有する方法。
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