JP2008516220A - 抗体ライブラリーをスクリーニングする方法 - Google Patents

抗体ライブラリーをスクリーニングする方法 Download PDF

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Abstract

本願発明は、一つまたは一つ以上の目標物に関する結合パートナー候補である一つまたは一つ以上のメンバーを同定および/または選択するために、分子ライブラリーをスクリーニングする方法であって、以下の工程、すなわち;(a)発現ライブラリーと、一つまたは一つ以上の目標物とを接触させ、(b)少なくとも一つの洗浄工程に当該目標物を供し、および(c)有機相を介した分離によって、当該発現ライブラリーでの未結合メンバーと、当該発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーに結合した標的物とを分離し、それにより、その他のライブラリーのメンバーから当該標的物に関する結合パートナー候補を分離する、工程を含む、分子ライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。

Description

本発明は、分子のライブラリー、特に、ファージディスプレイライブラリーを、一つまたは一つ以上の目標物の結合パートナー候補、特に、細胞表面分子の結合パートナー候補であるその一つまたは一つ以上のメンバーを、同定または選択するためにスクリーニングする方法に関する。 さらに、本願発明は、前記目標物の結合パートナー候補を、その他のライブラリーのメンバーから分離するための改善された方法に関する。
ファージ抗体ディスプレイ技術は、所定の標的抗原への抗体のスクリーニングおよび選択において非常に好適な技術であることが立証されている(概説に関しては、Hoogenboom et al., 1998, Immunotechnol., 4:1-20を参照されたい)。 ほとんどの方法において、固相支持体上に固定を行った後に、スクリーニングを実施して得られた精製抗原および/または組換え抗原が利用されている。
細胞表面の多様性を探索し、そして、ある特定のタイプの細胞または疾患関連状態に特異的な細胞表面分子の結合パートナーを同定することは、標的治療の開発において、最も確実な方法である。 しかしながら、このようにして結合パートナーを同定するに際して、たいていの場合、難題に直面する実験を行うこととなる。
細胞表面分子の結合パートナーを同定するための従来の方法は、懸濁液中で細胞をインキュベーションするか、あるいは複合ファージディスプレイ単鎖Fv(scFv)ライブラリーと共に培養をした後に、数回(通常は、5回またはそれ以上)の洗浄を行い、結合したファージを、酸またはアルカリで溶出する(例えば、Hoogenboom et al., 1999, Eur. J. Biochem., 260: 774-784; Ridgeway et al., 1999, Cancer Research, 59: 2718-2723; Wong et al., 2001, Cancer Immunol. Immunother., 50: 93-101を参照されたい)。 たいていの場合、この作業を行う以前に、無関連の結合パートナーを、無関連のタイプの細胞に対するネガティブパンニング処理によって除去する。 ごく最近に開発されたさらに高性能の方法では、ニトロセルロース膜へ細胞を固定した後に、ファージディスプレイライブラリーに対する細胞のスクリーニングを行っている(Radosevic et al., 2003, J. Immunol. Methods, 272:219-233)。
ファージディスプレイライブラリーを用いる細胞表面結合ペプチドのスクリーニング、選択および分取のための方法、すなわち、従来法よりも迅速な方法が、Giordano et al.,に記載されており、この方法は、BRASIL法と称されている(Biopanning and Rapid Analysis of Selective Interactive Ligands, 2001, Nature Med., 11; 1249-1253)。 この方法は、遊離ファージと細胞結合ファージに関する単一工程の有機相分離を基本とするものであって、労力を要するのみならず、非効率で、細胞や潜在的なリガンドを損失してしまう従来法において必須とされていた洗浄工程(すなわち、遊離ファージを細胞から洗浄除去する工程)を省略できる、という利点を有する。
驚くべきことに、BRASIL法の教示とは対照的に、細胞表面分子の結合パートナーのスクリーニング、選択および同定のための有意に改善された方法では、有機相分離を行う以前に、細胞を少なくとも1回の洗浄工程に関与させている。 また、本明細書に記載の方法は、前掲の従来の洗浄方法や溶出方法と比べて、有意な改善を示す。
したがって、一般的には、本願発明は、以下の工程、すなわち;
(a) 発現ライブラリーと、一つまたは一つ以上の目標物とを接触させ、
(b) 少なくとも一つの洗浄工程に当該目標物を供し、および
(c) 有機相を介した分離によって、当該発現ライブラリーでの未結合メンバーと、当該発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーに結合した標的物とを分離し、それにより、その他のライブラリーのメンバーから当該標的物に関する結合パートナー候補を分離する、工程を含む、一つまたは一つ以上の目標物に関する結合パートナー候補である一つまたは一つ以上のメンバーを同定または選択するために、分子ライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。
見方を変えれば、本願発明は、本明細書に記載の工程(a)〜(c)を含む、発現ライブラリーから目標物に結合した状態の結合パートナー候補を、その他の非結合ライブラリーメンバーから分離する改善された方法を提供するのである。
本願発明に従ってスクリーニングされる分子のライブラリーとして、任意のタンパク質発現ライブラリー、すなわち、任意のペプチドまたはポリペプチドの発現ライブラリーがある。 好適な発現ライブラリーとは、当該技術分野で周知のものであり、例えば、ファージディスプレイライブラリー(例えば、Winter et al., WO90/05144; McCafferty et al., WO92/01047)、細菌(例えば、Samuelson et al., 2002, J. Biotechnol. 96, 129-154)、コバレントまたは非コバレントディスプレイライブラリー、例えば、リボソームディスプレイライブラリー(例えば、The Regents of the University of ColoradoによるWO92/02536、University Research CorporationによるWO93/03172、およびKawasakiによるWO91/05058に記載のもの)などのディスプレイライブラリーや、発現タンパク質をコードするmRNAに結合しているPRO融合ライブラリー(Phylo社)、あるいは(例えば、Actinova LtdのWO98/37186に記載の系による共有結合、または、WO04/022746に記載のシスディスプレイシステムのシス作用性タンパク質を介して)発現タンパク質をコードするDNAに結合しているコバレントまたは非コバレントディスプレイシステム、または、酵母ディスプレイシステム(例えば、Wittrap, K.D. et al., WO 99/36569; Wittrup, K.D.(2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12, 395-399; Lee, S. Y et al., (2003) Trends in Biotechnol. 21, 45-52に記載されたもの)、そして、細菌のツーハブリッド系(例えば、Chien et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578)などがある。 また、その他のタイプの発現ライブラリー(例えば、細菌の発現ライブラリー)、またはタンパク質が発現され、可溶性断片として分泌されるその他のライブラリーも容易に使用することができる。 また、化学物質ライブラリー、例えば、合成ペプチドライブラリーをスクリーニングすることもできる。
本願発明での使用に好適なライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーである。
発現ライブラリーによって発現されるタンパク質は、その長さが、当該タンパク質が、目標物の結合パートナーとして作用する(または潜在的に作用する)ことを可能にする上で十分である限りは、任意の適切な長さのものを利用することができる。 したがって、このタンパク質は、短い直鎖のペプチド(例えば、5〜50個または7〜30個程度のアミノ酸長)であってもよく、直鎖ではなく、折り畳まれたものよりも長鎖のペプチドまたはポリペプチドであってもよい。 Giordano et al., (前掲)に記載の従来のBRASEL方法とは対照的に、本願発明の方法は、好都合なことに、短鎖ペプチドライブラリーではなく、より長鎖のポリペプチド、具体的には、抗体発現ライブラリーを含む発現ライブラリーをスクリーニングする上で有用である。
したがって、発現ライブラリーのタンパク質は、完全体の遺伝子またはその断片でコードされるものとすることができ、例えば、発現ライブラリーメンバーをコードする核酸は、例えば、ある特定のタイプの細胞から調製したcDNAまたはmRNAライブラリーまたはその断片でもよく、あるいは、ゲノムDNAライブラリーまたはその断片でもよい。
好ましい発現ライブラリーは、候補リガンド、レセプター、酵素、基質、抗原など、あるいはそれらの断片であるポリペプチド結合パートナーを発現し、特に好ましい発現ライブラリーは、抗体分子または抗体断片を発現するものであり、次いで、これらを、一つまたは一つ以上の公知または未知の標的抗原に結合する候補に関してスクリーニングすることができる。 このような抗体発現ライブラリーは、任意の適切な形態の抗体を発現するものであって、完全体の抗体分子または抗体断片、例えば、単鎖抗体(例えば、scFv)、Fab、Fv、Fab'2、ダイアボディ、二重特異性抗体、ミニボディ、重鎖または軽鎖、カメロイド抗体、テトラボディ、単一ドメイン抗体、トリアボディなどを含む。 好ましい抗体断片は、scFv断片である。
抗体分子または断片として、任意のIgアイソタイプ、例えば、IgG、IgMまたはIgAなどがあり、発現ライブラリーは、これらのサブタイプの一つまたは一つ以上の抗体を含むことができる。
多くの抗体ライブラリーは、当該技術分野において公知であり、また文献に記載されており、これらの内の任意のものが、本願発明の方法を用いてスクリーニングすることができる。
本明細書において発現ライブラリーに言及する場合、この用語は、このようなライブラリーを核酸またはタンパク質レベル(すなわち、コードされたタンパク質の発現が起こる以前または以後)で言及する際に使用することがある。 しかしながら、明確には、これら発現ライブラリーは、目標物との間で相互作用が生じるため、タンパク質レベルで存在しなければならない。
これら発現ライブラリーおよびそれをコードする核酸を構築する方法は、当該技術分野で公知であり、また文献に記載されており、任意の既知の発現ライブラリーまたは新たに開発された発現ライブラリーが、本願発明において使用することができる。 例えば、これらライブラリーは、天然のポリペプチドまたはその断片で構成されていてもよく、全部または一部が任意のものでも、合成されたものであってもよい。 例えば、抗体発現ライブラリーの場合、このライブラリーは、健常者由来の天然リンパ球から(例えば、欧州公開特許公報第368684号に記載のもの)、または処理済のリンパ球、例えば、抗原に曝露されたか、またはワクチンまたは、例えば、腫瘍細胞で免疫処置された患者由来のリンパ球から(例えば、Affitech AS社のWO03/095491に記載されたもの)、または特定の抗原に対するパンニング処理して得られたリンパ球集団から、核酸をクローンニングして誘導したものが利用できる。
発現ライブラリー、特に、抗体発現ライブラリーは、任意の適切な供給源、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトから誘導したものでも利用可能である。 キメラ発現ライブラリーまたはヒト化発現ライブラリーも使用することができる。 また、ライブラリーは、天然に存在する構造骨格を選択し、無作為化した配列を適切な場所に含めることによって調製することができる。 あるいは、この構造骨格は、天然に存在する多種多様な骨格に由来する一つまたは一つ以上のコンセンサス配列を主体とするものとすることができる。
一般的に、ライブラリー構築物を調製するための方法は、公知の遺伝子工学技術に基づくものである。 これに関連して、発現ライブラリー内で発現される実際のタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列(この配列は、通常、ライブラリーメンバーが異なることで相違しており、それにより、ライブラリーに多様性をもたらす)を、利用する発現系のタイプに適した発現ベクター内に組み込む。 ファージディスプレイ、コバレントおよび非コバレントディスプレイ、細菌系発現などでの使用に適した発現ベクターは、当該技術分野で公知であり、また文献に記載されている(例えば、前出の発現ライブラリーに関する文献を参照されたい)。 ファージディスプレイが、選択した発現ライブラリーである場合、ファージベクターまたはファージミドベクターのいずれかを使用できるが、ファージミドベクターが好ましい。
また、種々のライブラリーメンバーをコードする(すなわち、ライブラリーメンバー間で異なるペプチドをコードする)核酸分子が一旦調製できると、スクリーニングを行う以前に、標準的な方法を用いて、例えば、制御された(例えば、部位特異的変異誘発)または一つまたは一つ以上のヌクレオチドの無作為な付加、欠失および/または置換を伴う変異によって、あるいはドメインスワッピング、カセット変異誘発、鎖シャッフルなどによって、さらに多様化することができる。 多様な核酸配列を調製するために、合成ヌクレオチドを用いてもよい。 したがって、発現ペプチドをコードする核酸の全部または一部が、化学的に合成されるか、あるいは、種々の生物体または種々のタイプの細胞から誘導される。
ライブラリー構築物は、任意のその他の適切な成分、例えば、複製開始点、転写を開始するための誘導または非誘導プロモーター、エンハンサー、抗生物質耐性遺伝子およびマーカー、一般的なタグまたはレポーター分子、例えば、PCRまたはその他の所望の配列要素による構築物の増幅を可能にするプライマー結合部位をさらに含有することができる。
適切な供給源や、これらの任意成分を、ライブラリー構築物内に、その所望の機能が発揮されるように配置することは、当業者が通常実施している事項の範囲内である。
マーカーまたはレポーター分子を含めることは、本願発明で使用される発現ライブラリーにおいて特に有用である。 このようなマーカーまたはレポーター分子として、直接または間接的に検出可能でき、例えば、抗体によって認識される短い配列タグ、放射能標識、蛍光標識または酵素的に検出される標識がある。 使用可能なその他のマーカーとして、結合ペア(例えば、ストレプトアビジン:ビオチン)の一方のパートナーが挙げられる。
このようなマーカーは、通常は、ライブラリー構築物すべてに存在させる一般的なマーカーであり、これらライブラリーメンバーの存在を検出するために使用される。 また、検出されるシグナルの強度を用いて、ライブラリー内のある特定のメンバーの量を定量することもできる。 ライブラリー内のある特定のメンバーの定量は、ライブラリーメンバーに対する目標物の親和性の測定において極めて有用であると考えられる。 あるいは、例えば、ライブラリー分子を構成する一つまたはそれ以上の核酸が異なる標識で標識されているか、または種々の大きさ、または種々に標識されたビーズ上に固定化されておれば、内容物、例えば、核酸分子の配列に関する情報を引き出すことができる。
本願発明の方法を、AffiSelect法(下記参照)と組み合わせる本願発明の実施態様では、一般的なタグまたはマーカーを、ライブラリー構築物および発現されたライブラリーメンバー(結合パートナー候補)に含めることは特に重要であり、このようなタグは、固相へのライブラリーメンバー(結合パートナー候補)の結合を促すために使用される。 適切なタグおよびマーカーは、以下に、AffiSelect法の説明において記載する。
「目標物」の用語は、本明細書で用いる場合、発現ライブラリーからその結合パートナーが同定されることが望ましい対象となる物質または分子であって、適切な分離条件(好ましくは、遠心力)が適用された時に、有機相を介する分離に供することができる部分(例えば、通過して有機相の下部で回収される部分)に結合されているか、またはこの部分に何らかの形態で会合している対象となる物質または分子を指す。 これら目標物は、その結合パートナー候補が同定されることが望ましい公知または未知の分子としてもよい。
また、この目標物は、スクリーニングされるタンパク質発現ライブラリーのメンバーと結合、あるいは相互作用できるものでなければならない。 したがって、前記した目標物は、タンパク質またはペプチドと結合可能であって、有機相を介する分離に供することができる適切な部分、例えば、細胞または固相(特に、ビーズなどの微粒状の固相)などに結合しているか、または何らかの形態で当該部分と会合している(例えば、その表面上に存在する)タンパク質/ペプチド、グリコペプチド、炭水化物、脂質、糖脂質、小分子化学物質、核酸などとすることができる。 したがって、このような目標物は、完全体の細胞に結合しているか、またはその成分である細胞表面分子、または細胞の膜画分、または、例えば、遊離している裸出して単離された分子または固相に結合された精製された分子、または固相に結合された細胞膜画分などとすることができる。 好ましい目標物は、タンパク質またはペプチド、例えば、抗原である。 より好ましい目標物は、細胞表面分子(すなわち、細胞または細胞の膜画分の表面上にin situで存在する分子)、特に、細胞表面タンパク質またはペプチド、例えば、細胞表面抗原である。
固相の表面に結合された分子を目標物とする本願発明の実施態様では、この分子は、任意の適切な供給源に由来のものとすることができ、すなわち、その天然環境から単離または精製された天然に存在するタンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質などの他にも、組換え分子または合成分子、例えば、組換えタンパク質またはペプチドあるいは合成化学物質分子とすることができる。 これに関連して、単離および精製された抗原または組換え抗原が、特に好ましい目標物である。
「細胞」の用語は、本明細書で用いる場合、有機相を介して分離される対象とする任意のタイプの生物学的粒子を指す。 例えば、この用語は、原核生物細胞、例えば、細菌、ウィルスなど(特に、凝集ウィルス粒子、例えば、抗体または化学的修飾によって凝集した粒子、または水相とは対照的に有機相に対して優先性を示すコートウィルス粒子)、真核生物細胞(例えば、酵母細胞などの下等真核生物細胞および哺乳動物細胞などの高等真核生物細胞、特に、ヒト細胞)を含む。 有機相を介して分離を行う上で、通常は、充分な密度ではない生物学的粒子は、一般的に、本明細書で用いる「細胞」の用語から除外される。 細胞の断片、例えば、膜画分、細胞壁画分、細胞壁タンパク質、膜タンパク質などもまた、これらが、有機相を介して分離される能力を保持しているか、そのような能力が付与されている限りは、この用語の範囲に含まれる(例えば、細胞壁タンパク質および膜タンパク質の場合は、これらは、有機相を介する分離を促すために凝集させる必要がある)。
細胞として、天然の細胞または細胞の混合物(例えば、生検材料または被験哺乳動物由来のある種のその他の試料に由来する細胞)、または細胞株(例えば、不死化細胞および遺伝子操作された細胞株、例えば、特定の目標物をコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトされた細胞または目標物のライブラリー、例えばcDNAライブラリーで形質転換またはトランスフェクトされた複数の細胞(この目標物は、次いで、これら細胞の表面において発現される))などがある。 目標物の好ましいライブラリーは、疾患関連物、例えば、疾患関連細胞または病原性因子(例えば、ウィルスまたは細菌など)から調製されるライブラリーである。 特に好ましいライブラリーは、腫瘍またはウィルス関連タンパク質に対する結合パートナー候補の同定を可能にする腫瘍細胞ライブラリーまたはウィルス細胞ライブラリー(例えば、cDNAライブラリー)である。 例えば、COS細胞などのトランスフェクションに適した真核生物細胞(およびその他のタイプの細胞)は、当該技術分野で公知であり、また文献にも記載されており、それらの任意のものを使用することができる。
また、前述した目標物を過剰発現する細胞も使用できる。
本願発明での使用において好ましい「細胞」として、真核生物細胞またはその膜画分がある。 特に好ましい細胞は、疾患状態と関連するもの、例えば、癌の細胞または細胞株(例えば、乳癌または肺癌の細胞または細胞株)、または疾患患者由来のリンパ球(例えば、末梢血リンパ球)、またはウィルスに感染し、それにより、その表面上にウィルスタンパク質が出現する細胞である。
本願発明の方法において使用される細胞は、任意の適切な供給源に由来するものであって、例えば、これら細胞は、被験哺乳動物から直接誘導したり、あるいは、in vitro培養物から得ることもできる。 In vitro培養物を用いる場合、細胞は、懸濁液中または単層として培養したものとすることができ、本願発明の方法にあっては、天然の活性細胞または固定した状態の細胞を使用することができる。 一般的に、活性細胞を用いることが好ましく、これはすなわち、その場合、細胞表面上の目標物が活性細胞の形態で存在し、選択された結合パートナー候補が、次いで、活性状態の目標物を認識することを意味するものであって、それにより、このような結合パートナー候補が治療上または診断上有用となる機会が増大するからである。 一般的に、凍結または保存細胞よりも新たに単離された細胞を本願発明の方法に用いることが好ましい。 しかしながら、組織スライドおよび凍結材料をパンニング処理することも可能である。
固相表面に目標物を結合する本願発明の実施態様では、有機相を介して分離することができる限りは、任意の適切な固相を使用することができる。 これらを実現する上で適切な密度、大きさおよび形状の固相は、当業者であれば、容易に選択することができる。 しかしながら、微粒状の固相支持体が、これらを実現する上で特に好ましいことであることは理解できるであろう。 特に好ましい支持体は、磁性または少なくとも磁化可能なことができる任意のビーズであり、例えば、超常磁性粒子を担持するポリマービーズを使用することができる。 このような支持体は、当該技術分野で公知であり、文献にも記載されており、本願発明の方法における使用に最も適切な支持体を選択することは、当業者が日常的に行っている作業の範囲内の事項である。
微粒状の支持体(例えば、ビーズ)は、in vitroでの操作が容易であり、自動化を促すこともあって、特に好ましい。 例えば、ビーズが磁性である場合、これは試料から、磁場によって分離することができ、次いで、洗浄される。 あるいは、ビーズが、例えば、蛍光タグで標識されている場合、ビーズは、フローサイトメトリーによって分離することができる。 適当な標識、非標識の磁気ビーズは、ノルウェー、リレストロームのDyno Specialty Polymers AS社や、Dynal Biotech ASA社から市販されている。 本明細書に記載の方法において使用可能な磁気ビーズの例として、ノルウェーのDynal Biotech ASA社のM-450、M-270またはM280ビーズがある。 本明細書に記載の方法において使用可能な非磁気ビーズの例として、5μmのグリシジルメタクリレートマイクロビーズ(Bangs Laboratories社、カーメル、インディアナ州)がある。 生体分子目標物を固相に結合させる方法もまた、当該技術分野で公知であり、文献にも記載されている。
「一つまたは一つ以上の」とは、「目標物」の用語との関連で本明細書で用いる場合、一つまたは一つ以上の明白に異なるタイプの目標物、例えば、一つまたは一つ以上の異なる細胞表面分子またはポリペプチドを指す。 換言すると、本願発明の方法は、一種類の目標物または複数の目標物または目標物のライブラリーに対する結合パートナー候補をスクリーニングするために使用することができる(例えば、ライブラリー対ライブラリースクリーニングに使用することができ、このようなものは、特に好適である)。 一種類よりも多くの目標物がスクリーニングに関与する場合、これらは、有機相を介する分離に供することができる同じ部分または異なる部分に結合することができるか、またはこれら部分と会合することができる。 例えば、目標物が完全体の細胞またはその膜画分に結合された細胞表面分子である場合、おそらくは、幾つかの異なる細胞表面分子に対する結合パートナー候補が同定されることは理解できよう(換言すると、これは、目標物のライブラリーに対する結合パートナー候補のスクリーニングを行う場合の一例、すなわち、ライブラリー対ライブラリースクリーニングの形態である)。 当然ながら、必要に応じて、この手順は、例えば、免疫優性目標物を有する細胞の場合、または、目的とする目標物を過剰発現することが予め判っていたか、または過剰発現するように選択したか、またはこれら目標物を過剰発現するように遺伝子操作された細胞を選択することによって、特定の一つの細胞表面分子に対する結合パートナー候補の選択に特化させることができる。 目標物のライブラリーのさらにその他の例として、細胞内にトランスフェクトされて、発現されたcDNAライブラリーまたはその他の遺伝子ライブラリー、例えば、真核生物細胞内にトランスフェクトされて発現された控除処理を終えた腫瘍cDNAライブラリーがある。
各目標物は、当然のことながら、スクリーニング反応において、複数のコピー数で存在することができ(実際、これは、一般的に好ましい)、例えば、目標物が細胞表面分子である場合、この複数のコピー数が、好ましくは、同じ細胞上および/または同じタイプまたは異なるタイプの多数の細胞上のいずれかに存在する。
本願発明の特に好ましい実施態様では、発現ライブラリーが、抗体ライブラリー(より好ましくは、ファージディスプレイ抗体ライブラリー)であり、目標物が細胞表面分子(細胞表面抗原)である。 このようなスクリーニング方法は、Cell Based Antibody Selection(CBAS)と称されている。
目標物を発現ライブラリーと接触させる工程、またはその逆の態様の工程は、任意の適切な形態で、発現ライブラリー内の適切な結合パートナーが、存在する目標物と相互作用するか、または、これと結合することができるような条件下で行うことができる。 このような条件は、一般的に、発現ライブラリー、目標物および目標物が会合する部分の性質に応じて異なる。 しかしながら、結合を促すための適切な条件は、当業者であれば、容易に決定することができる。 このような「接触」工程は、一般的に、溶液中または水性媒体中で、あるいは、発現ライブラリー-目標物の混合物が、有機相と非混和性であるその他の条件下において行われる(これにより、後続の有機相分離工程が促される)。 したがって、目標物が、単層として培養された細胞、または、被験哺乳動物(例えば、哺乳動物の器官または組織)から得られた細胞の表面に存在する場合は、これらは、一般的に、発現ライブラリーと接触させる以前に、適切な方法によって回収されて、水性媒体中に再懸濁される。 しかしながら、発現ライブラリーを単層の細胞と接触させ、その後に、これらの細胞を、適切な方法によって水性媒体中で回収し、再懸濁させることも可能である。
「接触」条件の例として、氷上または4℃で、30分間〜4時間のインキュベーションを含む条件がある。 あるいは、接触工程を、室温または37℃で行うことが可能であり、このことは、場合によっては好ましい。 発現ライブラリー-目標物の混合物は、任意に、穏やかな震盪、混合または回転に供することができる。 また、非特異的結合を低減するためのブロッキング剤などのその他の適切な試薬を添加してもよい。 例えば、1〜4%のBSAまたはその他の適当なブロッキング剤(例えば、ミルク)が使用することができる。
しかしながら、接触条件は、スクリーニング方法の目的に応じて変えることができ、当業者によって変更することができることは、容易に理解できるであろう。 例えば、インキュベーション温度を、例えば、室温にまで上げた場合、そうすることで、異なるサブセットの目標物に対する結合体、例えば、容易に取り込まれる細胞表面タンパク質に対する結合体が同定される可能性を増大させることができる。 この場合も、諸々の条件を決定することは、当業者が通常実施している事項の範囲内である。
本願発明の方法で用いる発現ライブラリーの大きさおよび複雑度は異なっていてもよく、また、同様に、接触工程に含まれる目標物のコピー総数が異なっていてもよい。 例えば、発現ライブラリーがファージディスプレイライブラリーである本願発明の好ましい実施態様では、好ましくは、108〜1013の領域のファージ力価、より好ましくは、1011の領域のファージが使用される。
従来より、目標物のコピー数は、目標物が会合する部分の数を変更することにより変化させることが可能であった。 例えば、目標物が、細胞表面分子、または固相支持体に結合させたポリペプチドなどである場合、目標物の数は、接触させる混合物中に存在する細胞または固相支持体の数を加減させたり、あるいは、個々の固相支持体に結合させたポリペプチドなどの数を加減させることによって調整することができる。 この場合も、必要とされる目標物の数は、試行錯誤によって容易に決定することができるが、例えば、目標物が、細胞表面分子である場合、105〜107個の細胞が好都合に使用することができる。
また、目標物の適切な濃度も、試行錯誤によって容易に決定することができるが、例えば、目標物が細胞表面分子である場合、1×105〜2×106細胞/mlの濃度が好都合に使用することができる。
洗浄工程(b)は、目標物を発現ライブラリーと適切な条件下で接触させ、その結果、目標物と適切なライブラリーメンバー間の結合/相互作用が起こった後でも、有機相分離の前に行われる。 特許請求の範囲に記載のスクリーニング方法は、この手順におけるその他の時点、例えば、工程(a)の前(例えば、発現ライブラリーと接触させるための目標物の調製時)、または、工程(c)の後(例えば、目標物または発現ライブラリーメンバーをさらに解析する時)で行われる別の洗浄工程を除外しないことに留意することが重要である。しかしながら、発現ライブラリーを目標物と接触させる工程の後および有機相分離の前に洗浄工程を伴わない方法(例えば、Giordano et al.,(前掲)のBRASIL法)は除外される。
洗浄工程は、目標物およびこれが結合される部分の性質に応じて、任意の適切な形態で行われる。 例えば、目標物が細胞または細胞の膜画分に結合されている場合、好ましくは、この洗浄は、発現ライブラリー-目標物の混合物を、細胞がペレットを形成するような条件下で遠心分離し、上清を除去し、次いで、このペレットを適切な水性媒体(例えば、接触工程を行った時と同じ培地)中に再懸濁して行われる。 これら細胞のペレット化および再懸濁の工程が、一回の洗浄を構成することができる。 また、このような条件は、一般的に、微粒状の固相と会合した目標物の洗浄において好適である。 しかしながら、目標物が、例えば、磁性の固相と会合している場合、洗浄工程(b)は、好ましくは、接触工程が行われた容器に磁場を印加し、上清を除去し、固相を適切な水性媒体中に再懸濁して行うことができる。 微粒状の固相を洗浄する適切な方法は、当業者に公知である。
この場合も、このような磁気分離および再懸濁の工程が、一回の洗浄を構成することができる。
本願発明の方法では、少なくとも一回の洗浄工程(b)が行われ、例えば、少なくとも一回、少なくとも二回、少なくとも三回、または、少なくとも四回の洗浄工程が行われる。
好ましくは、五回未満の洗浄工程が行われ、すなわち、好ましくは、一回、二回、三回または四回の洗浄工程が、工程(b)で行われる。 最も好ましくは、一回または二回または三回、特に好ましくは、二回の洗浄工程がこの方法の工程(b)で行われる。 この好ましい洗浄工程の回数は、この方法が、少なくとも五回の洗浄工程を伴う従来法よりも、さらに有意に迅速に行え、さらに煩雑さを緩和するという利点も有する。
このような洗浄工程は、ある割合の非結合発現ライブラリーメンバー(すなわち、目標物と相互作用していないか、または非特異的に相互作用したメンバー)を除去する。 さらなる割合の非結合発現ライブラリーメンバーが、次いで、この方法の工程(c)、すなわち、有機相分離工程で除去される。
有機相分離を促すために、洗浄工程(b)の後に、適切な極性媒体(例えば、水性媒体)に含まれる目標物を有機相に接触させる。 この水性媒体を、有機相の上面に重層してもよく、あるいは、有機相を水性媒体の上面に重層してもよい。 前者の場合、遠心分離すると、結合された目標物は有機相内で回収され、好ましくは、ペレット化されるが、非結合ライブラリーメンバーは、水性媒体中に残留する。 後者の場合、遠心分離すると、非結合発現ライブラリーメンバーを含有する水性媒体は、有機相を通って上方に通過するが、結合された目標物は、有機相の下方で回収され、好ましくは、ペレット化される。 あるいは、この二つの相を混合し、次いで、これを遠心分離中に分離することも可能であり、これにより、同じ結果が得られる。
「有機相」の用語は、本明細書で用いる場合、水またはその他の極性媒体または水性媒体と非混和性である流体相を指す。 本願発明での使用に適した有機相は、適切な条件(例えば、遠心分離)に供した時に、結合された目標物-発現ライブラリーメンバーが、複合体を非結合発現ライブラリーメンバーから分離することを可能にし、例えば、結合された目標物-発現ライブラリーメンバー複合体が、発現ライブラリーの非結合メンバー間を通過するが排除する、すなわち、発現ライブラリーの非複合体形成メンバーまたは遊離メンバーの排除を可能にする。 明らかに、これら任意の実験系は、100%完璧ではない。 したがって、適切な有機相は、発現ライブラリーの非結合メンバーの大部分または有意な割合を排除するか、あるいは実質的に排除する。
また、適切な有機相は、混合物中の目標物、これが結合する部分、発現ライブラリーメンバーおよび目標物とライブラリーメンバー間の結合反応に対して引き起こされる破壊または損傷が最小限となるように選択される。 これは、特に、目標物、発現ライブラリーメンバーおよび両者間の結合反応の場合にそうである。 例えば、有機相は、このような成分が有機相から一旦回収されると、任意の適切な下流の解析工程での使用に適するように選択されなければならない。 しかしながら、一般に、混合物中で有機相が生体分子に対して奏する任意の有害な効果を最小限に抑えるため、生体分子が有機相と接触している時間は、一般的に最小限に維持する。
特許請求の範囲に記載の方法での使用に適した有機相は、上記の機能上の要件に基づいて当業者によって容易に決定することができる。 特許請求の範囲に記載の方法において使用することができる有機相の例として、フタレート系有機相、例えば、Giordano et al.,(前掲)に記載されているもの、例えば、フタル酸ジブチル:シクロヘキサン(9:1[v:v])またはフタル酸ジブチル:ジイソオクチルフタレート(4:6[v:v])など、または、水非混和性油、例えば、Versilube F50油(Alfa Chemicals社、ウォーリンハム)などがある。 実際、発現ライブラリー-目標物複合体(および、特に、ファージ-目標物複合体)を、非結合発現ライブラリーメンバー(および、特に、非結合ファージ粒子)から分離するための水非混和性油の使用は、本願発明のさらに他の態様を構成する。
有機相を介する分離は、一般的に、有機相中の発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーに結合した状態の目標物(結合された目標物)は、ペレット化されるか、あるいは少なくとも回収されるが、非結合発現ライブラリーメンバーの全部または有意な割合、または大部分が水相中に残留するのに適切な速度での遠心分離によって行われる。 この分離が行われるのに適切な遠心分離条件は、目標物(およびこれが結合する部分)、およびそこで用いる具体的な有機相の性質に依存する。 しかしながら、細胞が使用され、そして、細胞表面分子が目標物である場合の条件として、10000〜11000gで、5〜10分間、室温または4℃での遠心分離がある。
分離工程(c)の後に、結合された目標物は有機相から回収され、任意に、さらに解析することができる。 この回収工程は、所望により、有機相を凍結乾燥し、結合された目標物を含有するペレットを取り出す(例えば、適切な時点で遠心チューブを切断する)ことによって促すことができる。 この凍結乾燥工程、そして、その後の解凍工程(結合された目標物が回収された後のある時点)は、一般的に、結合された目標物-発現ライブラリーメンバー複合体の下流の解析に対して不都合な効果を示さない。 しかしながら、実際の実験において、この工程を任意の実験手順に含める以前に、このことを予め確認しておくことが望ましい。
本願発明の方法には、さらに別の工程を付加することができる。 例えば、本願発明の方法の工程(a)で発現ライブラリーを目標物と接触させる以前に、発現ライブラリーを一つまたは一つ以上の非関連(非標的)物質(例えば、非標的生体分子)、または、対象でない細胞と接触させることにより、発現ライブラリーを予備的にパンニング処理して、一部の不要な発現ライブラリーメンバーを除去するか、または、ライブラリーの複雑度を低減することができる。 このような予備的なパンニング処理は、「ネガティブパンニング処理」とも称されている。 例えば、発現ライブラリーを、対象でない(例えば、目的の所望の目標物を発現しないか、または目標物を低レベルで発現する)細胞またはその膜画分によって予備的にパンニング処理することができる。 例えば、この方法が、ある特定のタイプの癌細胞に結合する発現ライブラリーメンバーを同定するために設計されたものである場合、予備的なパンニング処理は、発現ライブラリーのメンバーを、異なるタイプの細胞または無関係のタイプの細胞、例えば、異なるタイプの腫瘍細胞または非腫瘍タイプの細胞(例えば、リンパ球または内皮細胞など)、または、その他の対象でない細胞と接触させることにより行われる。 予備的なパンニング処理工程の目的は、目的とする目標物に結合しない発現ライブラリーメンバーの一部を除去することにある。 予備的なパンニング処理工程は、本願発明の方法の工程(a)、(b)および(c)に対する付加的な工程であり、したがって、特許請求の範囲に記載の方法の工程(a)、(b)および(c)は、このような予備的なパンニング処理工程を包含していない。 予備的なパンニング処理工程は、任意の適切な方法、例えば、従来法によって行うことができ、また、前述したBRASIL法によっても行うことができる。 しかしながら、好ましくは、予備的なパンニング処理工程は、先に概説した工程(a)、(b)および(c)を用いて行うことができるが、工程(a)において、発現ライブラリーを非関連(非標的)物質と接触させ、保持される予定のものが、非結合発現ライブラリーメンバーである事例は除外される。 したがって、洗浄工程(b)のいずれかの上清は、廃棄されるのではなく保持されているはずであり、分離工程(c)で、有機相を介して分離された非結合ライブラリーメンバーが保持される。 枯渇した発現ライブラリーが、次いで、本願発明の方法に供することができる。
一回またはそれより多い回数の予備的なパンニング処理が、同じ非関連物質または異なる非関連物質に対して行われる。
本願発明の方法の工程(a)〜(c)は、発現ライブラリーメンバーに対する目標物の一回のパンニング処理を構成するとみなすることができる。 分離工程(c)の後に、一回目のパンニング処理で、結合された目標物を有機相から回収し、任意でさらに別の解析に供することができるが、一般的に、発現ライブラリーの複雑度をさらに低減し、前述した目標物の結合パートナー候補の好適な集団を調製して、生産的で迅速な解析を可能にするために、一回またはそれより多い回数のパンニング処理をさらに行う。
さらにパンニング処理の回数を重ねると、一般的には、結合された目標物を、本願発明の方法の工程(c)から採取すること、発現ライブラリーメンバーを(任意に発現ライブラリーメンバーを拡張または増幅する)目標物から分離、離脱、溶出または単離すること、そして、これら発現ライブラリーのメンバーを、本願発明の方法の工程(a)〜(c)にさらに供することとなる。 このことを行うための最良の方法は、用いる発現ライブラリーに応じて異なる。 例えば、ファージディスプレイライブラリーでは、目標物結合ファージ複合体を、細菌と共にインキュベーションすることが可能である。 これにより、ファージが、目標物から溶出され、細菌に感染し、その結果、例えば、特許請求の範囲に記載の方法の工程(a)における使用のために、ファージ粒子が容易に増幅することができる。
当業者は、パンニング処理を実施するにあたって、その処理回数を容易に決定することができる。 例えば、発現ライブラリーが、ファージディスプレイライブラリー(または、実際には非ファージライブラリー)であれば、目標物に対する本願発明の方法の工程(c)での結合パートナー候補に関する簡単なポリクローナルELISAアッセイによって、存在する陽性候補の割合および追加のパンニング処理の必要性が明らかとなる。 これに関連して、(例えば、対象の細胞上に提供される)目標物に結合するが、(例えば、対象でない細胞によって提供される)非目標物(比較対象として使用される)には結合しないライブラリーメンバー(例えば、ファージ)結合の増大は、必要な回数のパンニング処理が行われていたことを示唆するものである。 パンニング処理(すなわち、本願発明の方法の工程(a)〜(c))を反復することで、所望の発現ライブラリーメンバーが損失されてしまうため、パンニングの回数は、一般的に、なるべく最小限にする。 実際には、洗浄工程だけに基づくBRASIL法や従来法と比べて、数回のパンニング処理を行うことで、適切な富化処理が行われていることは、比較試験から明らかであり、また、このことは、本明細書に記載している改善された方法が奏するその他の利点でもある。 例えば、本明細書に記載している試験にあっては、改善された本願発明の方法は、三回(従来法)または四回(BRASIL)の処理を要する事例とは対照的に、二回目のパンニング処理を終えた後に、適当な富化処理物が認められた。
したがって、本願発明の方法の工程(a)〜(c)は、一回またはそれより多い回数、例えば、四回または五回まで反復することができる。 しかしながら、本願発明の好ましい実施態様によれば、結合パートナー候補および/または目標物をさらなる解析に供する以前に、一回、二回または三回のパンニング処理(すなわち、一回、二回または三回の工程(a)〜(c))が行われる。
また、比較試験によれば、本明細書に記載の改良方法では、前記した目標物の結合パートナーの同定数が増加しており、すなわち、陽性クローンの同定数が増加したことが示されている。 例えば、三回のパンニング処理後に、BRASIL法では12%、および従来法では28%であるのに比べ、本願発明の方法によって選択された結合パートナー候補の41%が目標物に対して陽性であることが示された。
したがって、別の観点からすれば、本願発明は、本明細書に記載の工程(a)〜(c)を一回またはそれより多い回数で行うことを含む、目標物に対する結合パートナーの同定のための改善された方法を提供する。
当然ながら、最初にスクリーニングされた発現ライブラリーが、比較的少ないメンバーを含む場合、または、例えば、富化処理されたライブラリー(例えば、WO03/095491(前掲)に記載のような免疫攻撃に曝された患者から単離された抗体ライブラリー)である場合、パンニング処理の回数を重ねることができないことがある。 この場合も、当業者であれば、例えば、上記した方法を用いて、このことは容易に確認することができる。
任意の適切なパンニング処理の回数を一旦増やせば、結合された目標物を、工程(c)の有機相から回収し、別の解析または使用に供することができる。 このような解析または使用は、一般的に、目標物から離脱、除去、単離または溶出されるべき結合パートナー候補を必要とし、好ましくは、結合パートナー候補は、前記した目標物由来の単離物内で発現または産生される。 したがって、本願発明の方法は、任意選択的な工程(d)を含むことができる。 前記した結合パートナー候補は、前記した目標物から離脱、除去、溶出されるか、または、好ましくは単離され、または、前記した目標物由来の単離物内で発現または産生される。 例えば、発現ライブラリーが、ファージライブラリーであり、目標物が、細胞表面分子である場合、前記した別の解析または使用は、一般的に、細菌の感染による結合パートナー候補の単離および結合パートナー候補をコードするDNAに関する適当な発現ベクター内でのクローニングを伴う。 また、このような感染工程は、結合パートナー候補の増幅を可能にする。 非ファージライブラリーでは、結合パートナー候補が、この段階で、適切な方法、例えば、前記した結合パートナー候補をコードする核酸のPCR、または前記した核酸による適切な宿主細胞の(適当な発現ベクターと関連させた)形質転換によって増幅することができる。
前記した別の解析は、目標物に結合した発現ライブラリーのメンバー(すなわち、結合パートナー候補)または目標物それ自体のいずれか、またはそれらの双方についての追加の解析を行うこともできる。 したがって、本願発明の方法によって、新規な発現ライブラリーメンバー(新規な結合パートナー)および新規な目標物(例えば、新規な抗原などの新規な細胞表面分子またはタンパク質)の双方に関するスクリーニングおよび同定が可能になる。
発現ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)の解析に適した方法は、当業者に周知である。 一般的に、追加の解析の第一工程は、選択された発現ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)が、実際に目的とする目標物に結合したことを確認するためのアッセイまたは試験を伴う。 任意の適切なアッセイが、この工程において使用できる。 しかしながら、一般に、上記したように、ポリクローナルELISAアッセイが、この工程において使用できる。 上記したように、この確認工程は、選択されたライブラリーメンバーが目的とする目標物に対する結合体に関して充分に富化処理されたことを表示することができるので、スクリーニングを終了してもよく、あるいは、選択されクローンのより詳細な解析を開始してもよい。
したがって、確認工程が一旦完了すれば、その後に、一般的には、単一のクローンの解析が行われる。 この解析は、標準的な方法によって行うことができる。 例えば、ファージ発現ライブラリーでは、この解析は、ファージが示したポリペプチドを可溶性形式にクローニングすること(例えば、ファージが示したscFvを、可溶性scFvまたはFab形式にクローニングすること)、ならびに、可溶性形式ポリペプチドを用いて細胞(Hoogenboom et al., 1999, 前掲)または精製抗原(可溶性断片を用いる)に対するELISA、フィルタースクリーニングアッセイ(Radosevic et al., 前掲)、FACS(Ridgway et al., 前掲)、グアバ(Guava)アッセイ(Gillis and Fishwild, Application note: Monoclonal Antibody Specificity using the Guava CellPaint Assay, Guava Technologies,Inc, 2004)や免疫蛍光アッセイ(Wong et al., 前掲)、組織スライドまたは細胞の染色、およびその他の免疫組織化学方法の実施を含む。 これらの方法はすべて、文献において充分に確立されており、これらの内の一つまたはそれ以上のものを用いて、クローンを解析することができる。 あるいは、直接スクリーニング方法(例えば、WO03/095491に記載されているものなど)、またはFMAT解析装置(8200 Detection System-Applied Biosystems社)が、クローンをさらに同定するために使用することができる。 最後に、AffiSelect法と称する方法が、結合パートナー候補をさらに解析するために使用することができる。 この方法の詳細は、本明細書において後に詳述する。
非ファージ発現ライブラリーでは、ディスプレイライブラリーを用いる場合、結合パートナー候補(これは、発現されるポリペプチドと共に選択されることになる)をコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングすることができる(必要であれば、PCRを行った後に、RNAライブラリーメンバーをDNAに変換する)。 発現されたポリペプチドは、上記したようにして解析することができる。 可溶性ペプチドまたはポリペプチドライブラリーでは、候補結合ペプチド上に会合させたタグを、選択されたペプチドの配列を同定するために使用することができる。 これは、in vitroで合成され、上記したようにして解析することができ、あるいは、このペプチドをコードするDNA配列が決定され、適当な発現ベクター内に挿入され、そして、発現されたペプチドは、上記したようにして解析することができる。 したがって、前記したような結合パートナー候補に関する追加の解析は、好ましくは、結合パートナー候補(好ましくは、可溶性形式のもの)の発現または産生、そして、目的とする目標物に対するこれら候補物質の結合活性のアッセイまたは試験を伴う。 任意の適切な結合アッセイを使用することができる。 好ましいアッセイとして、ELISA、フィルタースクリーニングアッセイ、FACS、免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、グアバアッセイ、8200細胞検出アッセイ、またはAffiSelectアッセイ(下記参照)の内の一つまたはそれらの組み合わせがある。
ネガティブコントロールとして、結合パートナー候補は、好ましくは、非目標物、例えば、無関連のタイプの細胞または目標物をその表面上に適宜発現しないか、または目標物を低レベルでしか発現しないタイプの細胞、または無関連の裸出または精製した分子に対してスクリーニングされる。
これらのすべての方法(AffiSelect法(以下に詳述する)を除く)において、結合された結合パートナー候補の検出は、ある種のタグまたは標識を認識する試薬を発現ライブラリーメンバー上に対して用いることで促される。 例えば、発現ライブラリーが、ファージライブラリーである場合、検出は、ファージコートタンパク質に対する抗体(例えば、抗Fd抗体)の使用によって行われる。 その他のタイプのディスプレイライブラリーまたは可溶性ライブラリーが使用される場合も、検出は、ライブラリーメンバー内に組み込まれたタグに対する抗体(例えば、mycタグに対する抗体)の使用によって行われる。 適切なタグ方法および検出系は、当該技術分野で公知であり、また、文献にも記載されている。
任意の段階で、コードDNAの制限消化をした後に、結合パートナー候補の多様性が、配列決定またはPAGE解析することで試験される。 この場合も、これら方法は、当該技術分野で公知であり、また、文献にも記載されている(Hoogenboom et al., 前掲、Ridgway et al.,前掲)。
目標物が、未知の分子、例えば、未知の細胞表面分子、特に、未知の腫瘍表面分子である本願発明の実施態様では、この性質もまた、容易に解析することができ、目標物は、発現ライブラリーから同定された特異的結合パートナーをツールとして用いて同定することができる。 このことは、結合パートナーが、抗体分子(例えば、scFv分子)である場合において、特に好都合である。 例えば、上記したように、発現ライブラリー由来のそれら結合パートナーは、一般的に、検出を促すことができ、かつ、例えば、未知の分子の組織分布を(例えば、組織切片に対する結合によって)解析するために使用することができるタグまたは標識を含むように操作される(Pereira et al., J. Immunol. Methods, 1997, 203:11-24)。 あるいは、結合パートナーは、固相上に固定化し、未知の分子を、例えば、親和性クロマトグラフィーによって精製するために使用することができる。 一旦精製が行われると、未知の分子が何であるかは、その分子の性質に応じた適切な試験によって確認することができる。 例えば、未知の分子がタンパク質である場合、精製されたタンパク質が同定され、そのコードDNA配列は、当該技術分野で公知であり、また、文献に記載された方法を用いて、ペプチドシーケンシングおよびクローニングによって決定することができる。 あるいは、未知のタンパク質をコードするDNAは、同定された結合パートナーを用いて、cDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、容易に決定することができる。 このことに関連して、適切な供給源に由来する非常に多様なcDNAライブラリーを、使用することができる。 しかしながら、より小さい限定的なcDNAライブラリーを使用するのが好ましい。 例えば、未知のタンパク質が、ある特定のタイプの細胞の表面上に発現された場合、cDNAライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリーのようなcDNAディスプレイライブラリー)は、これら細胞から好都合に調製することができ、例えば、結合パートナーを用いて(同定された結合パートナーを結合させた固相支持体上でディスプレイライブラリーをパンニング処理することによって)スクリーニングすることができる(例えば、Ridgway et al., 前掲を参照されたい)。 また、発現ライブラリーから同定された結合パートナーが抗体である場合、目標物を単離または同定するために、その他の抗体系アッセイ、例えば、免疫沈降、ウエスタンブロット、発現プロファイリングまたは免疫組織化学などが行われる。
したがって、本願発明の方法は、適切な発現ライブラリー由来の目標物に対する結合パートナーを選択および同定するために使用することができるだけでなく、新規な目標物および未知の目標物を同定するためにも使用することができることは理解できよう。 このことは、治療または診断用の新規な細胞標的、ならびに治療または診断における使用に供することができる新規な薬剤(すなわち、結合パートナー)の同定に至るため、重要である。
したがって、本願発明は、本明細書に記載の工程(a)〜(c)(および任意に付加できる工程)、(d)前記した未知の目標物に結合する一つまたは一つ以上の発現ライブラリーメンバーを単離する工程、および(e)結合対象の目標物を単離および/または同定するために前記したライブラリーメンバーを用いる工程を含む、未知の目標物の単離および/または同定のための方法を提供する。
したがって、本願発明の方法は、目標物の結合パートナー、または新規な目標物それ自体(このものは、以後の種々の用途のために単離、産生または製造することができる)を選択、同定または単離するために使用することができる。 そのため、本願発明の方法を用いて同定または選択される結合パートナー/タンパク質または目標物は、本願発明のその他の実施態様を構成する。 したがって、本願発明のその他の実施態様は、特異的目標物の結合パートナーであるライブラリーメンバーを選択、同定および/または単離する方法、または発現ライブラリーから目標物それ自体を選択、同定および/または単離する方法を提供し、これら方法は、上記した工程(a)〜(c)(および任意に付加できる工程)を用いて発現ライブラリーをスクリーニングし、ある特定の性質を示す分子を選択する工程、そして、任意に、(e)目標物の特異的結合パートナーである一つまたは複数の関連ライブラリーメンバーを同定および/または単離する工程、および任意に、(f)結合対象の目標物を同定するために前記したライブラリーメンバーを用いる工程を含む。
特定の性質を有する結合パートナーまたは目標物をコードする適切な核酸断片が一旦同定されると、例えば、さらに改善された性質を有する結合パートナーを試しに同定するために、これらポリペプチドをコードする核酸を、所望により、親和性成熟に供することができる。 この親和性成熟は、スクリーニングサイクルを反復する前に、任意の従来の形態の変異誘発、例えば、制御された様式(例えば、部位特異的変異誘発)またはランダム様式での一つまたは一つ以上のヌクレオチドの付加、欠失および/または置換、エラープローンPCR、ドメインスワッピング、カセット変異誘発および鎖シャッフルなどを行うことにより行われるが、これらに限定されない。 この親和性成熟は、所望により、上記した確認工程の後に、単一のクローン解析を行う以前に実施される。
一つまたは一つ以上の結合パートナーまたは目標物が、本願発明の方法を用いて選択、同定、単離されおよび/または精製されると、これらの候補またはその成分、断片、変異体または誘導体を製造してもよく、所望により、少なくとも一種類の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に製剤化することができる。 このようにして製造された分子、またはその成分、断片、変異体または誘導体もまた、本願発明に包含される。 あるいは、これらの分子は、前記したタンパク質分子をコードする核酸の形態をとる場合がある。 この核酸を、今度は、適切な発現ベクター内に組み込むか、および/または、適当な宿主細胞内に含める。 したがって、前記した結合パートナーまたは目標物をコードする核酸分子、または前記した核酸分子を含有する発現ベクターは、本願発明のその他の実施態様を構成する。
ある特定の結合パートナーまたは目標物、またはその成分、断片、変異体または誘導体が、本願発明に従って、一旦選択や同定などがされると、選択された結合パートナーまたは目標物をコードする発現ベクターは、適切な宿主細胞または系内で発現され、そして、結合分子を宿主細胞または系、または、成長培地またはその上清から単離することによって、充分な量の分子を生成させるために容易に使用(または使用のために改変)することができる。 あるいは、前記した結合分子または目標物は、その他の適切な方法によって、例えば、結合分子をコードする核酸の化学合成および適当な宿主内またはin vitro転写系内での発現によって生成させることができる。
したがって、本願発明のその他の実施態様は、上記した本願発明の方法に従って特異的目標物の結合パートナーまたは目標物それ自体を同定または選択する工程、前記したような同定された結合パートナーまたは目標物、またはその成分、断片、変異体または誘導体を製造する工程、および、任意に、前記したような製造された結合パートナーまたは目標物を、少なくとも一種類の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に製剤化する工程を含む、特異的結合パートナーまたは目標物を製造する方法を提供する。
結合パートナーまたは目標物に関する前記した変異体または誘導体としては、ペプトイド等価物、非ペプチド合成主鎖を有する分子、および起源となる同定ポリペプチドと関連するか、これに由来するものであって、そのアミノ酸配列が、単一または多数のアミノ酸の置換、付加および/または欠失によって修飾されたポリペプチド(あるいは、これらは、さらに、例えば、脱グリコシル化またはグリコシル化によって化学的に修飾されたアミノ酸との置換または該アミノ酸の付加を含むことができる)が挙げられる。 好ましくは、このような誘導体または変異体は、このものを誘導した起源のポリペプチドに対して少なくとも60、70、80、90、95または99%の配列同一性を有する。
結合パートナーが抗体分子である場合、前記した変異体または誘導体は、抗体分子のある形式からその他の形式への変換(例えば、FabからscFvへの変換(またはその逆)、または本明細書に記載している抗体分子の任意の形式間での変換)、または、ある特定のクラスの抗体分子への抗体分子の変換、例えば、IgGまたはそのサブクラス、例えば、IgG1またはIgG3(これらは治療用抗体に特に好適である)への抗体分子の変換をさらに含む。
前記変異体または誘導体は、結合パートナー分子または目標物と、例えば、前記結合パートナーまたは目標物のその後の適用において有用であるその他の機能的成分との会合をさらに含む。 例えば、結合パートナーまたは目標物は、これを身体内のある特定の部位に標的化する成分、または、例えば、イメージングまたはその他の診断用途に有用な検出可能な部分と会合することができる。
明らかに、これら成分、断片、変異体または誘導体結合パートナー分子または目標物としての主たる要件は、これらが、結合能力に関して、その本来の機能的活性を保持しているか、または改善された機能的活性を有していることである。
本願発明の方法を用いて単離、検出、選択、同定または製造される結合パートナー分子(好ましくは、抗体分子)または目標物は、目標物に特異的な結合パートナー(例えば、ある特定の抗原に特異的な抗体)が必要とする任意の方法において使用することができる。
したがって、結合パートナー(好ましくは、抗体分子)または目標物は、分子ツールとして使用することができ、本願発明のその他の実施態様は、本明細書に記載のそれら結合パートナー分子または目標物分子を含む試薬を提供する。 また、このような分子は、in vivoでの治療的または予防的適用、in vivoまたはin vitro診断用途、またはin vitroアッセイに使用することができる。
結合パートナーは、発現ライブラリーから単離された形態、または、操作または変換された形態のいずれかで治療的用途に適用することができ、例えば、scFv分子をIgGまたは多量体ペプチドに変換することが望ましい。 治療効果は、目標物/リガンドに対して作用薬的または拮抗薬的結合を示す治療的分子に対して生物学的活性を誘導させること、例えば、アポトーシス(例えば、癌またはウィルス感染細胞のアポトーシス)を誘導すること、天然リガンドの結合をブロックする(それにより、腫瘍の成長および/または播種を阻害する)ことによって成長を阻害したり、またはマトリックスからの離脱を刺激することにより奏することができる。 このような治療効果は、目標物/リガンド自体、または、その多量体(これが架橋することにより、一部のレセプターが活性化される)の性質によって達成することができる。
選択または同定された結合パートナーが、抗体ポリペプチドである場合には、これらは、in vivoでの治療的および予防的用途に供することができ、例えば、特に、易罹患性の個体(例えば、免疫力の無い患者、小児、妊娠女性の胎児、疾患が流行している地域の人々など)に、受動免疫を付与するために使用することができる。 例えば、抗体が、感染性因子または疾患関連因子を中和できる場合、このものは、疾患に対処するために適切な被験体に投与することができる。 あるいは、抗体(またはその他の形態の結合パートナー)を、その他の治療上有効な分子、例えば、細胞傷害性因子(小分子またはタンパク質)、プレトキシンまたはその他の薬物に結合させ、疾患組織または特異的細胞型(例えば、腫瘍細胞またはウィルス感染細胞)に標的化させることもできる。 さらに他の治療効果は、投与される因子に、操作されたその他の機能(例えば、scFvのIgへの変更、二重特異性分子(例えば、腫瘍細胞およびキラー細胞に結合する機能)を調製後に付与するマクロファージ、補体または細胞傷害性T細胞を活性化する能力など)によって達成することができる。
あるいは、それら抗体(または、実際には、特定の組織または身体部位、または細胞のタイプ、例えば、腫瘍細胞またはウィルス感染細胞と関連する目標物と相互作用するその他のタイプのポリペプチド)は、標識、例えば、色素、蛍光または放射能標識または酵素的に検出可能な標識にコンジュゲートさせて、in vitroまたはin vivoでの診断において、例えば、イメージングまたは標準的な免疫組織化学的手順に従って用いることができる。その他の好ましい用途として、テラノスティック的使用形態(すなわち、診断および治療の双方において使用される抗体または結合パートナー)が挙げられる。 また、このような抗体分子またはその他の結合パートナーは、目標物を単離するためにアフィニティークロマトグラフィーで使用することができる。
特に、細胞表面発現タンパク質に対する抗体は、新規の診断用薬物および治療用薬物を成功裏に開発するための出発点を提供する。 これは、特異的細胞表面マーカーならびにこれに対する抗体結合の知識が、薬物開発の明確な障害となっている癌の分野で、特にそうであり、本願発明の方法は、新規な細胞表面マーカー(目標物)および抗体(結合パートナー)の双方を同定および選択するために使用することができる。 現在、細胞表面に発現される腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープは、非常に僅かな数しか知られていない。したがって、このようなタイプの新たなエピトープのいずれも(および、当然ながら、これに対する特異的抗体結合も)癌の処置において新たな可能性を提示する。 考えられる用途は、ADCC系治療用の裸出した完全体のIgG抗体産物から、組換えオリゴ特異的/オリゴ価構築物や、組織特異的および標的治療用の融合タンパク質免疫毒素および放射能標識抗体断片や、in vitroおよびin vivo診断用色素/放射能カップリング抗体にも至る。
目標物またはその断片は、ワクチン、特に、(当然ながら、問題の目標物に応じた)癌および感染性疾患の処置のための用途のためのワクチンとして使用することができる。 目標物は、作用薬および拮抗薬の標的として、ペプチド、タンパク質または小分子薬物の形態で使用することができ、これらは、例えば、アポトーシスまたは細胞成長の調節などの機能をブロックまたは誘導することができる。 また、目標物は、別のスクリーニングのための標的として使用することができ、上記した内の幾つかを行うことが可能なその他の多くの分子を同定することができる。 場合によっては、目標物またはその断片は、それ自体が、天然状態でそれらに結合する分子に対して競合的に結合するなどの効果を奏することができる。
必要であれば、そのような抗体分子の用途での適切な利用、例えば、治療用のIgG1またはIgG3クラスへの変換、イメージングのための適切な標識の組込みまたは付加などは、当業者に周知のものである。
上記したような種々の用途において最も好適な抗体は、当業者が設計可能な適切な試験を用いて容易に同定することができる。 例えば、抗体または結合パートナーの高い親和性または親和力が重要となる用途では、これらの基準は、候補抗体に関して、標準的なアッセイ方法(例えば、Biacoreアッセイ)を用いて容易に検証することができる。 また、ある特定の感染因子(例えば、細菌、ウィルスなど)に対する抗体が同定された場合、どの抗体が感染因子を中和する上で最も有効であるかを評価するための適切な試験を行うことができる。 例えば、細菌の場合、問題の細菌に対する殺菌活性およびオプソニン化食作用活性が評価することができる。 同様に、ウィルスの場合は、ウィルス中和試験を行って、最良の候補を同定することができる。
したがって、本願発明のさらに他の実施態様では、一つまたは一つ以上の標的抗原(例えば、特定の疾患、細胞、組織または外来因子と関連する一つまたは一つ以上の標的抗原)に特異的に結合する一つまたは一つ以上の抗体分子を単離、検出、同定、選択または製造するための、本明細書に記載の抗体発現ライブラリーの使用を提供する。 このことは、例えば、標的抗原を用いて抗体発現ライブラリーをスクリーニングすることによって実施される。
本願発明のさらに別の実施態様では、治療またはin vivo診断での用途、または、上記した任意のその他の用途での利用に供される上記の単離、検出、同定、選択または製造される抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物が提供される。 また、治療(特に、癌または感染性疾患の治療)またはin vivo診断での用途、または、上記した任意のその他の用途での利用に供される医薬または組成物の製造に供される上記の抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物の使用も含まれる。 適切な用量のそれら抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物を投与することを含む、患者の処置方法も提供される。
前記した抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物が、上記した用途および方法で利用される場合、これらは、任意の適切な様式で投与することができる。 例えば、これら抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物は、作用が必要とされている部位に局所的に投与することができ、または、抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物を、身体内の適切な位置への標的化を促す物質に対して結合または会合させることができる。
本明細書に記載の抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物を、一つまたは一つ以上の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に含む医薬組成物は、本願発明のさらに他の実施態様を構成する。
また、さらにその他の実施態様によれば、適切な量の本明細書に記載の抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物を患者に投与すること、および、患者内の抗体分子の存在、位置および/または量を検出することを含む、患者の診断またはイメージング方法が提供される。
本願発明の発現ライブラリーから同定、選択などされた抗体分子(またはその他の結合パートナー)または目標物は、in vitroで行われる診断方法、例えば、組織試料または幾つかのその他の種類の試料(例えば、患者から採取または誘導した血液)に関して適切に行われる診断方法において、同様に使用することができる。
処置または診断される疾患は、好ましくは、癌、感染因子によって引き起こされる感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患または変性疾患である。
「治療」または「処置」の用語は、本明細書で用いる場合、予防的治療を含む。 「治療」および「処置」の用語は、疾患または感染の対処または治癒を含むだけでなく、疾患または感染またはこれらと関連する症状の抑制または軽減も含む。
AffiSelect法
AffiSelect法は、ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)の検出とは対照的に、そのリガンドを検出することによって(または、少なくともリガンドが会合する物質を検出することによって)、ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)を間接的に同定するための新規な方法を提供する。 これは、生体細胞などの複雑なリガンドに対して小さなライブラリーをスクリーニングする際に特に有用であるが、この方法の適用可能性は、これら用途に限定されない。
したがって、最も一般的には、AffiSelect法とは、一つまたは一つ以上のリガンド(目標物)に関する結合パートナー候補である一つまたは一つ以上のメンバーを同定および/または選択するために、分子ライブラリー(この場合、その他の解析に供される結合パートナー候補)をスクリーニングする方法であって、以下の工程、すなわち;
(a) 溶液中の結合パートナー候補の発現ライブラリーと、一つまたは一つ以上のリガンドとを接触させ、
(b) 固相上の発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーに結合した状態のリガンドを捕捉し、および
(c) リガンドの存在を検出し、それにより、リガンドの結合パートナー候補である発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーの存在を検出する、工程を含む方法を提供する。
したがって、同定された結合パートナー候補をさらに解析するために、本願発明のスクリーニング方法と組合せて使用する場合、AffiSelect法は;
(i) 溶液中の一つまたは一つ以上の前記結合パートナー候補を、一つまたは一つ以上の目標物と接触させる工程;
(ii) 固相上の一つまたは一つ以上の結合パートナー候補に結合した状態の目標物を捕捉する工程;および
(iii) 目標物の存在を検出し、それにより、目標物に関する一つまたは一つ以上の結合パートナー候補の存在を検出する工程を含む。
したがって、本願発明のスクリーニング方法に関して使用する専門用語を、後述するAffiSelect法に当てはめた場合、発現ライブラリーに対する任意の言及は、別の解析に供される一つまたは一つ以上の結合パートナー候補に対する言及とみなすることができ、リガンドに対する任意の言及は、目標物に対する言及とみなすることができる。
AffiSelect法で使用される発現ライブラリー(この場合、別の解析に供される結合パートナー候補)に対する主な要件の一つとして、これらライブラリーが、スクリーニングされる対象のリガンド(目標物)と最初に接触する際に、溶液中で接触させなければならないことが挙げられる。 「溶液中」とは、発現ライブラリーがスクリーニングされる対象のリガンドと最初に接触させる際に、発現ライブラリーが、固相に結合されていないこと、すなわち、最初の発現ライブラリーは、非固定化発現ライブラリーであることを意図するものである。
AffiSelect法に供される発現ライブラリー(結合パートナー候補)構築物(すなわち、本願発明の方法の工程(a)でスクリーニングされる発現ライブラリーを構成する結合パートナー候補構築物もまた)は、任意に、他の適切な成分、例えば、複製開始点、転写開始のための誘導または非誘導プロモーター、エンハンサー、抗生物質耐性遺伝子およびマーカー、一般的なタグまたはレポーター分子、例えば、PCRまたはその他の所望の配列要素による構築物の増幅を可能にするプライマー結合部位をさらに含むことができる。 適切な供給源、および、このような追加成分をライブラリー構築物内に、その所望の機能が発揮されるように配置することは、当業者が通常実施している事項の範囲内である。
一般的なタグまたはマーカーを、ライブラリー構築物内および発現されたライブラリーメンバー(結合パートナー候補)に含めることは、AffiSelect法における使用のための発現ライブラリーにおいて特に重要であり、このようなタグは、本願発明の方法の捕捉工程で固相へのライブラリーメンバー(結合パートナー候補)の結合を促すために、すなわち、捕捉工程を促すために使用される。 固相へのライブラリーメンバー(結合パートナー候補)の結合を促すことができるものであれば、任意の適切なタグがこれに関連して使用することができる。 しかしながら、これらタグとしては、固相上に直接的または間接的に固定化されたパートナー親和性分子に結合することで、固相への結合を促すことができる親和性分子が好ましい。 タグの例として、c-mycタグ(例えば、抗c-myc抗体によって捕捉できるタグ)またはHisタグ(例えば、ニッケル表面に捕捉できるタグ)またはビオチン(例えば、ストレプトアビジン分子によって捕捉できるタグ)、または、ファージ表面タンパク質、例えば、gp8(例えば、抗gp8抗体によって捕捉できるタグ)、または、抗原ペプチドタグ、例えば、抗体によって認識することができるFLAGまたはHAなどがある。 また、これらタグまたはマーカーは、好ましくは、直接的または間接的に検出することができる。これらタグまたはマーカーは、通常は、すべてのライブラリー構築物に存在する一般的なタグまたはマーカーであって、固相上にライブラリーメンバーを捕捉するために使用することができる。 これらタグまたはマーカーは、AffiSelect法の検出工程では不要である(検出は、ライブラリーメンバーではなく、リガンドの検出によって行われる。 詳細は下記参照)。 しかしながら、必要に応じて、これらタグを、ライブラリーメンバーの存在を検出するために使用することができる。 その存在は、ライブラリーメンバーに対するリガンドの親和性の測定において、極めて有用であることを証明するものである。
適切な発現ライブラリー(結合パートナー候補)構築物が、核酸レベルで一旦得られたら、次いで、これらを、スクリーニングおよび本願発明の方法の工程(i)での使用のために、適切な発現系で発現させることもできる。 適切な発現条件および発現方法は、当該技術分野で公知であり、また、文献にも記載されている。
AffiSelect法で使用する目標物は、本願発明のスクリーニング方法のために、上記したような任意の形態をとり得る。 したがって、例えば、目標物は、例えば、完全体の細胞の成分または細胞の膜画分として提供することができる細胞表面分子とすることができ、または、適切な固相に結合させた単離された目的とする目標物とすることができる。 好ましくは、前記した目標物は、細胞表面分子である。 好ましくは、本明細書に記載の有機相分離スクリーニング方法によって同定される最初の結合パートナー候補をさらに解析するためにAffiSelect法が使用されるため、目標物は、これらの方法の工程(a)で使用されるものと同じものとすることができる。
リガンド(目標物)が細胞表面分子であっても、また、適切な固相に結合させた目的の分子であっても、AffiSelect法での使用では、リガンドは、このリガンドの検出を可能にするレポーター部分を含有しているか、または、この部分と会合している。 これらレポーター部分は、好ましくは、核酸分子であり、より好ましくは、DNA分子であり、これらは、次いで、核酸に基づく方法によって検出することができる。 好ましい検出方法は、PCRによるものであるが、任意の適切な方法、例えば、標識されたプローブを用いたハイブリダイゼーションを使用することができる。 あるいは、リガンドを、蛍光非磁気ビーズまたは識別可能な大きさの別のビーズ集団に結合させると、これらは、顕微鏡検査において、またはCoulter Counter ZM(Coulter Electronics社)によって計測/検出することができる。 したがって、このようなレポーター部分は、前記したレポーター部分の検出が可能である限り、非常に多種多様の形態をとりうるであろうことが理解される。
このようなレポーター部分は、内在的にリガンド(目標物)と会合したものであってもよい。 例えば、リガンド(目標物)が、細胞表面分子である場合、検出される好ましいレポーター部分は、リガンドが発現/出現する細胞内に存在するDNA分子、例えば、遺伝子(すなわち、レポーター遺伝子)とすることができる。 したがって、適切で好ましいレポーター部分として、あらゆるタイプの細胞に存在する部分、例えば、β-アクチンなどのハウスキーピング遺伝子がある。
あるいは、外来のレポーター部分を、リガンド(目標物)と会合させてもよい。 例えば、細胞の場合、外来のレポーター部分(例えば、レポーター遺伝子)を、標準的な方法、例えば、トランスフェクション、例えば、リポフェクション、レトロウィルス系ならびにエレクトロポレーションなどによって細胞内に導入することができるが、これらに限定されない。
リガンド(目標物)が裸出した分子、例えば、裸出したポリペプチドである場合、これは、当該技術分野で公知で、文献にも記載されている方法を用いて、適切なレポーター部分を標識付けまたは会合させることができ、例えば、リガンドを、そのコード核酸またはその他の核酸系タグ(例えば、上記したようなもの)と会合させる場合、レポーター部分は、好ましくは、この核酸分子内に提供することができる。 リガンドが、微粒状の固相に結合させた分子、例えば、ポリペプチドである場合、前記したレポーター部分は、例えば、上記したものと同様の方法を用いて、これらポリペプチドの個々の固相に結合させることもできる。 特に、ストレプトアビジンビーズを用いる場合、レポーター部分は、好ましくは、レポーター部分の検出を促すことができる部位または領域、例えば、レポーター遺伝子の断片のPCR増幅を可能にするプライマー部位またはプローブ結合部位を含むビオチン化DNA断片とする。 次いで、各ビーズに、ビオチン化レポーター部分とビオチン化ポリペプチド(またはその他のリガンド)との混合物を担持することができる。
したがって、レポーター部分とリガンド(目標物)間のこのような「会合」は、レポーター部分とリガンドとの間の直接相互作用を含み得ること、すなわち、レポーター部分とリガンドは、同じ分子の一部であること、例えば、リガンドタンパク質とレポーター部分は、同じ分子の一部として互いにコンジュゲートされていることが理解できる。 あるいは、このような「会合」は、間接的なものとすることができ、例えば、レポーター部分は、リガンドが結合される部分に結合されるか、または、その部分内に含有され、例えば、その上面にリガンドが発現または出現する細胞内に含有させるか、またはリガンドが結合される固相上に固定化させる。
このようなレポーター部分は、好ましくは、ディスプレイされるあらゆるリガンド(目標物)と会合する一般的なレポーター部分であり、したがって、任意のあらゆる標的リガンドの存在を検出する(それにより、結合パートナー候補の存在を検出する)ための一般的な試薬として使用することができる。
AffiSelect法においてリガンド(目標物)を発現ライブラリー(結合パートナー候補)と接触させる工程(またはその逆の工程)は、任意の適切な形態で、適切な結合パートナー候補が、存在するリガンド(目標物)と相互作用またはこれに結合することができるような条件下で行われる。 このような条件は、一般的に、発現ライブラリー(結合パートナー候補)、リガンド(目標物)およびリガンド(目標物)と会合する部分の性質に応じて異なる。 しかしながら、結合を促すための適切な条件は、当業者が容易に決定することができる。 このような「接触」工程は、一般的には、適切な溶液または水性媒体中で行われる。 したがって、リガンドが単層として培養された細胞上、または被験哺乳動物(例えば、哺乳動物の器官または組織)から得られた細胞上に存在する場合、これらは、一般的に、発現ライブラリーと接触させる以前に、適切な方法によって回収され、そして、水性媒体中に再懸濁される。
重要なことに、AffiSelect法では、接触工程は、細菌発現培地、例えば、L-ブロス、および標準的な水性媒体、例えば、PBSなどで行うことができることが判明した。 このことは、ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)が、(例えば、L-ブロスなどの細菌発現培地内で培養することによって)細菌内で発現することができ、AffiSelectスクリーニング方法で使用するために、クローンを発現プレートから直接採取することができることを意味するため、重要であり、驚くべきことである。 好ましくは、このような細菌発現培地は、リガンド(目標物)を添加する以前であって、ライブラリーメンバーの発現が誘導された後に、等張性(例えば、約140mM NaCl(LBは、通常、約171mM NaClである))に調製する。 この細菌培地を等張性にする工程は、リガンド(目標物)が、ビーズ上ではなく生体細胞上の細胞表面分子である場合において、特に好ましい。
「接触」条件の例として、氷上または4℃で、30分〜4時間のインキュベーション含むことができる。 しかしながら、これは、リガンド、発現ライブラリーなどの性質に応じて、変化させることができる。 発現ライブラリー/リガンドの混合物は、好ましくは、任意に、穏やかな震盪、混合または回転に供することができる。 また、非特異的結合を低減するためのブロッキング剤などのその他の適切な試薬を添加してもよい。 例えば、1〜4%のBSAまたはその他の適当なブロッキング剤(例えば、ミルク)を使用することができる。 しかしながら、接触条件は、スクリーニング方法の目的に応じて変化させることができ、当業者であれば容易に調整できるであろう。 例えば、インキュベーション温度を、例えば、室温にまで上げた場合、これによって、異なるサブセットのリガンドに対する結合体、例えば、容易に取り込まれる細胞表面タンパク質に対する結合体が同定される可能性を増大させることができる。 この場合も、好適な条件への調製は、当業者が、日常的に実施している事項の範囲内である。
従来、リガンド(目標物)のコピー数は、リガンドが会合する箇所の数を変更することによって変化させることができていた。 例えば、リガンドが、細胞表面分子または固相支持体に結合させた分子である場合、標的リガンドの数は、接触させる混合物中に存在する細胞または固相支持体の数を加減させることによって調整することができる。 必要とされるリガンドの数は、試行錯誤によって容易に決定することができるが、例えば、リガンドが、細胞表面分子である場合、5000〜200000個の細胞が好適に使用することができる。
実際のところ、5000個または1000個の細胞という少ない細胞数(または、さらに少ない細胞数、例えば、検出方法であるPCRは、潜在的にわずか一つの細胞の検出をも可能にする)に対しても作用できるほどに充分な感度を備えていることが、AffiSelect法の利点である。 これに関連して、特に、被験哺乳動物、例えば、ヒト患者由来の生体細胞を用いるスクリーニングの場合、このような細胞は、たいていの場合、稀少な供給源であり、大量に入手することができない。 したがって、スクリーニングを、このような稀少な細胞で行うことができることは、重要な利点である。 検出をPCRによって行い、結合パートナー候補が抗体である場合は、検出を可能にするためには、40pgの抗体しか必要でないことが示された。 これは、AffiSelect法が、非常に低レベルで発現される(例えば、1000分子未満が発現される)リガンド分子の結合パートナー候補の解析に適していることを意味している。
AffiSelect法の接触工程(i)(すなわち、この方法のそれ以降の工程)では、一つまたは一つ以上のタイプの結合パートナー候補(すなわち、一種類または一種類以上の結合パートナー候補)が、同じ反応容器またはアッセイ区画(例えば、アッセイウェル)内に存在することができる。 しかしながら、好ましくは、一種類のみのタイプの結合パートナー候補が、接触工程(i)での反応容器またはアッセイ区画内に存在する。
発現ライブラリー(結合パートナー候補)とリガンド(目標物)とが、発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーと結合した状態になり得るような条件下で、一旦接触させ、次いで、このようにして結合した状態に至ったリガンドを固相上に捕捉して、未結合リガンドなどの反応混合物のその他の成分からの単離または除去または精製を促す。 換言すれば、捕捉工程において、発現ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)に結合されたリガンド(目標物)のみが固相上に捕捉される。
これに関連して、取り扱いが容易で、洗浄を促す微粒状の固相が好ましい。 磁気固相、特に、磁気粒子/ビーズが特に好ましい。 これらの固相を、リガンド(目標物)が結合することができる(上記したようにして)固相と区別するため、このような固相を「捕捉固相」と称することがある。 適当な磁気ビーズは、ノルウェーのリルレストレムに所在のDyno Specialty Polymers ASおよびDynal Biotech ASAから市販されている。 本明細書に記載の方法において使用することができる磁気ビーズの例として、ノルウェーのDynal Biotech ASA製のM-450、M-270またはM-280ビーズがある。
リガンド(目標物)-ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)複合体は、固相上に任意の適切な方法によって捕捉することができる。 AffiSelect法による好ましい方法は、固相上の捕捉分子と、発現ライブラリーのメンバー(結合パートナー候補)と会合させたパートナー分子またはタグとの相互作用を伴うものである。 すなわち、捕捉工程は、結合パートナー候補上の分子またはタグによって促される。 このようにして、発現ライブラリーのメンバーに結合したリガンドのみが、固相上に捕捉される。 発現ライブラリーのメンバーに結合していないすべてのリガンドは、所望により、捕捉が行われた後、一回または一回以上の固相洗浄工程によって、または、単に固相を反応混合物から分離することによって除去することができる。 したがって、捕捉工程は、リガンドではなく、発現ライブラリーメンバーによって促されるため、混合物の残余からの固相の単離によって、ライブラリーメンバーに結合しなかったリガンドの除去が可能になることは理解できるであろう。
固相上の捕捉分子と発現ライブラリーメンバー上のパートナー分子またはタグ間の相互作用は、好ましくは、親和性相互作用に基づくものであるが、任意のその他の適切な反応を使用することもできる。 例えば、発現ライブラリーのメンバーは、親和性相互作用の一方の成分を発現するように操作されたものとすることができ、他方の成分は、任意の適切な手段によって固相に結合させることができる。 このような親和性相互作用の好ましい例として、抗体-抗原相互作用、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用がある。
ストレプトアビジン被覆ビーズは市販されており、これを用いて、リガンド-ライブラリーメンバーコンジュゲートが、このコンジュゲートのライブラリーメンバー内のビオチン分子の存在によって捕捉することができる。 あるいは、発現ライブラリーが、ファージライブラリーである場合、ファージ表面タンパク質に対する抗体、例えば、抗gp8を結合させた固相を用いて容易に捕捉することができる。 あるいは、ライブラリーメンバーは、固相への結合を促す親和性パートナーによって認識されるタグを発現するように操作することができる。 適切なタグの例として、抗c-myc抗体(またはその他の適切な抗体)によって認識することができるc-mycタグ(またはその他の抗原ペプチドタグ)またはHisタグおよび金属イオン(例えば、ニッケルイオン(Ni2+))であり、これらの各々が固相への捕捉を促す。 捕捉を促す抗体が使用される場合、これらを、直接的方法、または、例えば、適切な二次抗体または三次抗体(例えば、抗IgG抗体など)による間接的方法のいずれかで固相に結合させることもできる。 使用する試薬に応じて、任意の適切な形態で捕捉をすることができる。 したがって、これら抗体は、固相に結合させ、次いで、これをリガンド(目標物)-ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)複合体を含有する混合物と接触させることもできる。 あるいは、この抗体を、リガンド-ライブラリーメンバーの捕捉を促すために(例えば、二次抗体によって)固相に結合する以前に、反応混合物中のライブラリーメンバーとの結合を許容させることもできる。 実際、この態様は、AffiSelect方法の好ましい実施態様である。 温度および時間に関する適切な捕捉条件は、当業者であれば容易に決定することができる。 このような条件の例として、室温または4℃で、(リガンドのライブラリーメンバーの安定性に応じて)10分〜2時間のインキュベーションを含むことができ、好ましくは、穏やかな震盪、混合または回転を伴う条件がある。 リガンド-ライブラリーメンバー複合体の捕捉を促すために使用する固相の量、または使用すべきリガンドに対する固相の比は、当業者であれば容易に決定することができる。
一回または一回以上の洗浄工程が、AffiSelect法の任意の適切な段階で行うことができる。 例えば、上記したように、洗浄工程(または、少なくとも分離工程)は、発現ライブラリーメンバー(結合パートナー候補)に結合しなかったリガンド(目標物)を除去するために、工程(ii)の後に行われる。 また、リガンドに結合した状態になっていない発現ライブラリーメンバーを除去するために、工程(i)の後に、リガンドと会合した部分を洗浄する(例えば、リガンドと会合した細胞または固相を洗浄する)工程もまた、一回または一回以上行うことができる。 実際、このような洗浄工程は、好ましい。 また、一回または一回以上の洗浄工程が、リガンドと会合した部分において、または固相上で、この方法の過程でのその他の適切な時点で、例えば、非結合存在物を除去するために行うことができる。 実施すべき洗浄工程の回数は、当業者であれば、容易に決定することができる。
リガンド(目標物)の存在を検出する工程は、リガンドを直接検出することにより、または、リガンドと会合した物質(非ライブラリーメンバー)を少なくとも検出することによって行われる。 この工程は、一般的にリガンドの検出ではなく、リガンドに結合したライブラリーメンバーを検出する先行技術の方法とは一線を画するものである。 リガンド-目標物の存在の検出(すなわち、非複合体形成リガンドとしてのリガンド/ライブラリーメンバー複合体の存在は、そのものが固相に結合した状態にならないため、捕捉工程によって除去されているはずである)は、好ましくは、リガンド上またはリガンドと会合しているレポーター部分の存在を検出することによって行われる。 適切なレポーター部分としては、上記のものがある。 上記したように、前記したレポーター部分は、通常、あらゆるリガンド上に存在または会合しているもの、すなわち、あらゆるリガンドに対する一般的な標識である。 したがって、同じレポーター部分が各リガンド上に存在(または会合)しているため、陽性シグナルの存在は、リガンド-ライブラリーメンバーコンジュゲートの存在、つまり、リガンドの結合パートナー候補であるライブラリーメンバーの存在を示す。 しかしながら、レポーター部分が細胞内に存在する場合、すなわち、リガンドが細胞表面分子である実施態様では、検出される以前に、例えば、細胞溶解またはその他の細胞破壊手段による露出が必要となることに留意されたい。 したがって、AffiSelect法を、結合パートナー候補に関する別の解析に使用する本願発明の実施態様では、陽性シグナルの存在は、潜在的に関連目標物に結合する結合パートナー候補の存在に関するその他の表示態様を提供する。 一つまたは一つ以上の結合パートナー候補が検出反応物中に存在する場合、どの結合パートナー候補が目標物に結合するかを調べるために、さらに別の解析を行うことができる。 しかしながら、好ましくは、上記したように、一種類のタイプの結合パートナー候補だけが検出反応物において存在しており、つまり、陽性シグナルの存在が、潜在的に関連目標物に結合する結合パートナー候補の存在を示すことになる。
細胞を溶解/破壊して、例えば、その細胞が保有している核酸内に存在するレポーター部分を露出させる適切な方法は、当該技術分野で公知であり、文献にも記載されている。真核生物細胞が関与するAffiSelect法での使用に好適な溶解バッファーは、検出工程前にタンパク質を消化し、ヒストンをDNAから除去することができるプロテイナーゼKを含有している。 その他のプロテアーゼも、AffiSelect法に用いる溶解バッファーに含めることができる。
上記したように、PCRは、AffiSelect法において好ましい検出方法である。 しかしながら、レポーター部分の検出のためのその他の適切な方法は、例えば、プローブハイブリダイゼーション、蛍光ビーズ、異なる大きさのビーズなども使用することができる(上記参照)。 PCRは、高感度の方法であり(一つのリガンド(または細胞)であってもPCRを用いて検出することができ)、また、リガンドに関する情報、例えば、配列情報の入手が可能になり(例えば、リガンドが、それをコードしている核酸と会合する場合)、または、例えば、リガンドの同定を可能にするDNA分子でそのリガンドが標識付けされている場合、例えば、異なる大きさのDNA分子で標識付けされている場合、または、リガンドを特異的に同定するために使用することができる特異的配列タグを有するDNA分子でリガンドが標識付けされている場合などは、リガンドの同定が可能になるなどの理由で好ましい。
従来、PCR反応は、溶液中で行われていたが(固相上でも行うことができるが)、PCR産物の存在または不存在は、標準的な形態、例えば、アガロースゲル(例えば、E-ゲル96系、Invitrogen社、20〜30分間で96個の試料の解析が可能)などにおいて検出される。 一般的に、PCR(またはその他の検出工程)を行う以前に、入念に試料を混合する。
全部または一部のレポーター部分を増幅するための適切なPCRプライマーは、レポーター部分の配列に応じて、当該技術分野で公知で、文献にも記載されている方法に従って選択される。 アッセイウェルの核酸含量が適切である場合、例えば、リガンドが(適切なレポーター部分を含有する)適切な発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクトした核酸にコードされている場合、または、リガンドをコードしているDNAとリガンドが会合している場合、これらリガンドの配列ならびにレポーター部分をコードする核酸を増幅するPCRプライマーが選択することができる。 これらプライマーは、PCR産物が、配列決定のために適切なベクターに直接にクローニングされ、それにより、リガンドの配列が同定できるという点で、好都合である。
PCRまたはその他の方法によって行う陽性シグナルの検出は、固相について、さらに調査が必要であることを示している。 例えば、PCRが、アッセイプレートのウェル内の溶液中で行われる場合、陽性シグナルは、問題の一個または複数のウェルが、リガンド(目標物)に関する少なくとも一種類の潜在的な結合パートナーを含有することを示し、次いで、これを、さらに別の解析および調査に供することができる。 例えば、それらウェル内に存在する細菌のコロニー(または、その他のライブラリーメンバー)を、例えば、細胞-ELISAによってスクリーニングを行って、リガンドの結合パートナー候補を発現したコロニー(ライブラリーメンバー)を同定することができる。 次いで、遺伝子およびタンパク質レベルで結合パートナーをさらに同定および特徴決定するために、適切な解析を行うことができる。
PCRあるいはその他の方法によって生成した陽性シグナルは、好ましくは、バックグラウンドシグナルまたは既知のネガティブシグナルとの比較によって測定される。 前記したポジティブ、バックグラウンドおよび/またはネガティブシグナルを測定および比較する手段および方法は、当業者に公知のものである。 細胞表面分子を目標物とする実施態様では、比較用の好ましいネガティブシグナルは、無関連の細胞またはネガティブの細胞、例えば、目標物をその表面上に発現しないか、または目標物を低レベルでしか発現しない細胞に対してスクリーニングを行うことによって得られる。
本願発明を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本願発明は、これら開示によって限定されるものではない。
材料および方法
細 胞
二種類のヒト乳癌細胞株(PM-1およびMT-1、Department of Tumorbiology, Norwegian Radium Hospital(DNR)、オスロ、ノルウェー)から提供された腎臓)、肺癌細胞株(A-549、ATCC CCL-185、Viventia Biotech社から提供された腎臓;SW900、ATCC HTB-59、Department of Tumorbiology, DNRから提供された腎臓)、および、内皮細胞株(HUVEC、ATCC CRL-1730、Viventia Biotech社から提供された腎臓)を、パンニング実験に用いた。 双方の乳癌細胞株は、10%のFCS(Gibco BRL)、2mMのL-グルタミン(Cambrex)および10mMのHEPES(Cambrex)を加えたRPMI-1640培地(Cambrex)中で培養した。 A-549は、10%のFCSおよび2mMのグルタミンを加えたHamのF12(BioWhittaker)中で培養した。 内皮細胞株は、10%のFCS、15mg/Lの内皮成長補助剤(Sigma)および50mg/Lのヘパリン(Sigma)を加えたRPMI-1640培地中で培養した。 細胞を、37℃で、5%の二酸化炭素および加湿雰囲気で培養した。各実験では、細胞をPBSで洗浄し、1mMのEDTA含有PBSによって回収し、PBSで一回洗浄し、そして、計測した。 パンニング実験では、細胞を、PBS/3%BSA(Sigma)またはPBS/4%スキムミルク(Merck)のいずれかに再懸濁した。
末梢血リンパ球(PBL)を新鮮なヒト血液または軟膜から、リンホプレップ(Axis-Shield社;詳細については製造業者のプロトコルを参照されたい)を用いて単離した。 細胞を、PBSで一回洗浄し、計測し、PBS/3%BSAまたはPBS/4%スキムミルク中に再懸濁した。
レクチンで被覆した磁気ビーズ
M-450エポキシビーズ(Dynal)を、レクチン(WGA:小麦胚芽、Triticum vulgaris:Calbiochem)と、製造業者のプロトコルに従ってとカップリングさせた。 要約すれば、エポキシビーズを洗浄し、続いて、0.1Mのホウ酸塩バッファー(pH 8.5)中で10μgのレクチン/107個のビーズと共に、一晩室温で回転させながらインキュベーションした。 ビーズをPBS/0.1%BSAで洗浄を三回行い、4℃で、PBS/0.1%BSA/0.02%アジ化ナトリウム中で、4×108個のビーズ/mlで保存した。
ファージscFvディスプレイライブラリー
六名の健常者のPBLから構築し、そして、パンニング実験では、リンカーのHindIII部位をN-末端移動して21個のアミノ酸リンカー配列を生成させた後に、pSEX 81系(Welschof et al., 1997, PNAS, 94:1902-1907, Loeset et al., 2005, J. Immunol. Methods 299:47-62)のファージミドディスプレイシステムにクローニングしたIgM scFvライブラリーを使用した。
パンニング処理/接触工程
一般的な細胞タンパク質に対するファージ結合を除去するため、3.75×1012個のファージ(約2.5×1013cfu/mlのライブラリー150μl)を、2×105〜2×106/ml細胞の非腫瘍起源物と共に、ブロックしたチューブ内で、1時間、4℃で、回転させながらインキュベーションした(=ネガティブな予備的パンニング処理)。 ブロッキング試薬として、PBS/3%BSAまたはPBS/4%ミルクのいずれかを用いた。 あるプロジェクトにおいて、PBLを、ネガティブな予備的パンニング処理工程に使用した。 ネガティブな予備的パンニング処理の後に、PBLをブロック溶液で二回洗浄し、その後、減縮されたファージライブラリー+二回の洗浄液上清を、乳腫瘍細胞と共に、上記したようにして、インキュベーション(パンニング処理)した。
その他のプロジェクトでは、二回のネガティブな予備的パンニング処理工程を順に行った。 最初の予備的なパンニング処理工程では、ライブラリーをPBLと共に上記したようにしてインキュベーションした。 最初の予備的パンニング処理の後、PBLをブロック溶液で二回洗浄し、その後、減縮されたファージライブラリー+二回の洗浄液上清を、HUVECと共にブロックしたチューブ内で回転させながら、1〜2時間、4℃で、第二のネガティブな予備的パンニング処理工程として、インキュベーションを行った。 第二のネガティブな予備的パンニング処理工程での二回の洗浄後、上清+洗浄液上清を、肺腫瘍細胞と共に、上記したようにしてインキュベーション(パンニング処理)した。
洗浄/分離
細胞結合ファージから遊離ファージを分離するための四つの方法を試験した。
1) BRASIL法(Giordano et al., 2001, 前掲)による単一工程の有機相分離:
パンニング処理した後、2×l50μlの腫瘍細胞懸濁液を、2×300μlの有機相溶液(フタル酸ジブチル:シクロヘキサン 9:1[v:v];d=1.03g ml-1)の上面に直接重層した。 10.000gで、10分間、室温(RT)で、遠心分離した後、チューブを、液体窒素中でスナップ凍結し、チューブの底部を薄く切り取り、細胞ペレットを別の(ブロックした)チューブに移した。
2) 300μlのPBS/0.4%BSAでの再懸濁および有機相遠心分離を行う以前に、1mlのPBS/0.4%BSAでの一回または二回の洗浄工程を伴う以外は、方法1に準じる。
3) 古典的な方法:
パンニング処理した後、腫瘍細胞を遠沈させ(500g、5分間、4℃)、ペレットを、1mlのPBS/0.4%BSAで五回洗浄した。
4) 磁気ビーズの使用
パンニング処理した後、腫瘍細胞を遠沈させ(500g、5分間、4℃)、PBS/0.1%BSAに、5×106細胞/mlで再懸濁し、レクチンで被覆したビーズ(1:4 細胞:ビーズ比)と共に、回転させながら、20分間、4℃でインキュベーションした。 ビーズを、磁石を用いて、1mlのPBS/0.1%BSAで10回洗浄し、200μlのPBS/0.1%BSAに再懸濁した。
感 染
細胞ペレットまたはビーズを、10mlの対数増殖期の大腸菌XL1ブルーに添加し、37℃にて、15分間、60rpmで、次いで、45分間、200rpmで、インキュベーションした。 評価を行うために、異なる濃度の細菌を、LBTAGプレート(LBに30μg/mlのテトラサイクリン(T)、100μg/mlのアンピシリン(A)および100mMグルコース(G)添加)に、そして、以後のパッケージングのために二つの大きな長方形のプレート(243×243×18mm;Nunc社)に接種した。 すべてのプレートは、一晩、37℃で、インキュベーションした。
パッケージング
二つの大きなプレートの細菌を、掻き取って回収した。 細菌を、液体培地中で増殖させ、その菌体中のファージミドを、M13ヘルパーファージ(Stratagene)と共にファージ粒子内に、一晩、30℃で、パッケージングさせた。 翌日、ファージを、PEG/NaClで沈殿させ、1mlのPBS中に再懸濁し、その内の100μlのファージ(約1013cfu)を、次回のパンニング処理に用いた。
ポリクローナルファージELISA
30分間、4℃で、PBS/3%BSAによるブロッキングを行った後、腫瘍細胞およびPBLを、1時間、4℃で、各回のパンニング処理で得た100μlのファージ(1:10〜1:106希釈物)と共にインキュベーションした。 PBSで三回の洗浄を行った後、菌体を、1時間、4℃で、100μlのウサギ抗Fd(Sigma;1:4000)抗体と共にインキュベーションした。 PBSでの三回の洗浄を行った後に、モノクローナルセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ-抗ウサギIg抗体(Dako;1:4000)と基質ABTS(Calbiochem)を利用するELISAを構築した。 吸光度を、405nmで測定した(ポリクローナルファージとは対照的に、単一のファージを用いるELISAアッセイが好適な事例での方法論と同様の方法論を用いた)。
大腸菌でのscFvの発現および精製
腫瘍特異的結合の増加を示した(ポリクローナルファージELISA)のパンニング処理によって得られたScFv DNAを、分泌ベクターpHOG21(Kipriyanov et al., 1997, J. Immunol. Methods, 200: 67-77)内にクローニングし、個々のscFvクローンを、前出の大腸菌XL-1-ブルー(Dorsam et al., 1997, FEBS Letters, 414: 7-13)または96ディープウェル(100〜200マイクロリットル体積)で発現させた。 ディープウェル発現は、一晩、30℃で、1mMのIPTG(Sigma)を用いて行った。 翌日、プレートを、10分間、4000rpmで、4℃で、遠心分離し、(発現されたscFvを含有する)上清を、さらに別の実験に用いた。 発現試料を、AffiSelectに用いる場合には、クローニングしたscFv DNAのポリクローナル回収物でコンピテントXL-1ブルー大腸菌を形質転換し、LB-TAG 22×22cmバイオアッセイトレイ(Corning)上に接種した。 個々のクローンを、QPix2ロボット(Genetix社、英国)を用いて、約4%のグリセロールを添加したLB-TAG成長培地[30μg/mlのテトラサイクリン(T)、100μg/mlのアンピシリン(A)、1%(w/v)グルコース(G)]を入れた384ウェルプレート内に採取し、一晩、37℃で、成長させた。 単一のscFvクローンを、LB-TAG培地を入れた384ウェルプレート内に再接種し、100μMのIPTGで発現させた。 翌日、プレートを遠心分離させる以前に、50μlのPBS/3%BSAを、(100μl発現物を含有する)各ウェルに添加した。
発現されたscFvの細胞に対する結合性を五つの異なる方法を用いて試験した。
1) ScFV ELISA
30分間、4℃で、PBS/3%BSAによるブロッキングを行った後、腫瘍細胞およびPBLを、1時間、4℃で、scFv(100μlのディープウェル発現物または10μg/mlの精製scFv)と共にインキュベーションした。 PBSで三回の洗浄を行った後、菌体を、1時間、4℃で、100μlのマウスモノクローナルHRPコンジュゲート抗c-myc(Invitrogen社;1:4000)抗体と共にインキュベーションした。 PBSで三回の洗浄を行った後、基質ABTSを用いるELISAを調製して、405nmでの光吸度を測定した。
2) 8200 Cellular Detection System(Applied Biosystems社)
5μlの96ディープウェルscFv発現物を、5×l0e4腫瘍細胞(PM-1)またはPBLおよび抗c-myc-FMAT Blue(AppliedBiosystems社)またはマウス抗c-myc抗体(Invitrogen社;1.25μg/ml)+ヤギ抗マウスIgG-Alexa Fluor R647(Molecular Probes社;2.5μg/ml)の組合せを入れた384ウェルプレート内で試験した。 2〜4時間かけてインキュベーションを行った後に、細胞に対するscFvの結合を、8200 Cellular Detection Systemを用いて測定し、二次抗体だけに関するシグナル強度および無関連のscFv結合をネガティブコントロールとした。
3) AffiSelect
5μlの96ディープウェルscFv発現物を、腫瘍細胞(A-549)、PBLおよびHUVECにおいて、AffiSelect法を用いて試験した。 この試験を行うために、2.2×104細胞を、ペレット化し(1600rpm、4℃、5分間)、1時間、4℃で、震盪しながら、5μlの発現試料および45μlのPBS/3%BSAと共にインキュベーションした。 細胞を、150μlのPBS/3%BSAで洗浄し、遠心分離した(1600rpm、4℃、5分間)。 50μlの抗c-myc抗体(Invitrogen社;1:500)をペレットに添加した後、プレートを、1時間、4℃で、震盪しながらインキュベーションした。
前述したようにして細胞を二回洗浄し、1時間、4℃で、震盪しながら5×106個のビーズ/ml(細胞:ビーズ比=1:5)の25μlのM-450パンマウスIgGビーズ(Dynal)懸濁液と共にインキュベーションした。 ビーズを、磁石を用いて、100μlのPBS/3%BSAで二回洗浄した後に、これらを、100μlのPBS/3%BSA中に再懸濁し、そして、PCRプレートに移した。
ビーズ試料を、一晩、55℃で、プロテイナーゼK(200μg/ml)、0.45% Tween 20および0.45%NP40を含有する30μlのPCRバッファー中でインキュベーションし、その後、−20℃で、用時まで保存した。 プロテイナーゼKを、30分間、95℃で、熱不活化した後、試料を磁石上に置き、上清の5μlをヒトβ-アクチン特異的プライマーを利用するPCRに適用した。 このアッセイにおける、ウェル内のβ-アクチンPCR産物の存在は、細胞に結合したscFv発現物クローンの存在の可能性を意味するものである。
4) FACS
1〜5×105細胞を、1時間、4℃で、50μlのscFvディープウェル発現物により染色した。 150μlのPBSを用いた三回の洗浄と遠心分離(1600rpm、5分間、4℃)を行った後に、細胞を、50μlのFITC-コンジュゲート抗c-myc抗体(Invitrogen社;1:30)と共に、1時間、4℃で、インキュベーションした。 細胞を上記したようにして三回洗浄し、200μlのPBS/1〜2%ホルマリン(Sigma)で固定し、FACS装置(Coulter)で測定を行うまで、4℃で保存した。
5) Guava
1×105細胞を、50μlのscFvディープウェル発現物によって、FACSに関して記載した手順に従って染色を行った。 取り込みを回避するため、場合によっては、scFv発現物と細胞とのインキュベーションを行う前に、細胞を、50μlのPBS/1〜2%ホルマリン(30分間、4℃)で固定し、PBS(1600rpm、5分間、4℃)で、三回、洗浄を行った。 結合したscFvの可視化を、FITC-コンジュゲート抗c-myc抗体を用いて、FACSに関して記載した手順に従って行うか、あるいは、抗c-myc抗体(1時間、4℃; 5μg/ml;Sigma)、その後に、FACSに関して記載した手順に従ってPBSで三回洗浄し、そして、FITC-コンジュゲート抗マウスIgG抗体(1時間、4℃;1:200;Dako)とのインキュベーションをして行った。 FACSに関して記載した手順に従ってPBSで三回洗浄し、そして、固定をした後に、試料を、Guava EasyCyte(Guava Technologies社)で測定を行うまで、4℃で保存した。
細胞フィルタースクリーニング実験
試 験 片
ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell)に固定する細胞の至適濃度を調べるために、試験片(約6×4cm)を、2時間、室温で、PBS中の異なる量の細胞(5×l04〜5×l06細胞/ml)により被覆した。 PBSで二回洗浄した後、膜を、マウスモノクローナル抗MHCクラスI抗体(Dako;1:600)と共に、1時間、室温で、インキュベーションした。 被覆細胞を、HRP-コンジュゲートウサギ-抗マウスIg抗体(Dako;1:10000)とのインキュベーションおよびECL検出(Amersham)によって可視化した。
テストアレイ
細胞ELISAで早期に陽性であることが判明したScFvクローンを、フィルタースクリーニングアッセイ(Stacy et al., 2003, J. Immunol. Methods, 283 :247-259)に供して試験した。 すなわち、まず、scFvクローンを、ニトロセルロースフィルター上にアレイ状に整列させた。 そして、IPTGを用いて一晩発現させた後に、scFvを、細胞コートフィルターに対する結合性について試験した。 フィルターを、マウスモノクローナル抗MHCクラスI抗体(1:600)と共にインキュベーションし、結合を、HRP-コンジュゲート抗c-myc抗体(1:10000)およびECL検出によって可視化した。 五つの異なるブロック(PBS/2%BSA、PBS/4%スキムミルク、SuperBlock(Pierce)、カゼインブロッキングバッファー(Sigma)、2%ブロットブロック(BDH))を、そのバックグラウンドシグナルの低減に関して試験を行った。
抗原の同定
腫瘍cDNAライブラリーの構築およびパンニング処理
cDNAファージディスプレイライブラリーを、すでに報告(Fossa et al., 2004, Cancer Immunol. Immunother., 53 :431-438)されている通りにして、腫瘍細胞株SW900から構築した。 目的のscFvに相当する抗原を見出すため、バイオパンニング処理を、scFvコートマキシソープチューブ(Nunc)において行った。 すなわち、マキシソープチューブを、一晩、4℃で、回転させながら、10μg/mlのscFv(PBS/3%BSAまたはPBS/4%ミルク中)で被覆した。 翌日、scFv被覆チューブ内に添加する以前に、cDNAファージディスプレイライブラリーを、PBS/3%BSAまたはPBS/4%ミルク中で、15分間、ブロックした。 2時間、室温で、回転させながらライブラリーをインキュベーションした後、チューブをPBS/0.05%tweenで、10回洗浄した後に、PBSで10回洗浄した。 チューブを、5分間回転させながら、500μlの100mM TEA(Sigma)と共にインキュベーションして、結合ファージを溶出した。 溶出されたファージを、500μlの1M Tris-HCl pH7.5で中和した後に、500μlを、10mlのXL1-ブルーの感染に(上記したようにして)用いた。 上記したようにしてパッケージング処理した後に、ファージを、scFv被覆チューブでの次回のパンニング処理に供した。 三回のパンニング処理を終えて回収されたファージを、scFv被覆マキシソーププレート(Nunc)で、ポリクローナルファージELISA(上記参照)によって試験した。
発現された腫瘍cDNAクローンのフィルタースクリーニング
scFv特異的結合の増加を示した試料(ポリクローナルファージELISA)をパンニング処理して得られた腫瘍cDNAを、PCRによって増幅し、HAタグを有する改良分泌ベクターpHOG21内にクローニングした。 腫瘍cDNAクローンを、ニトロセルロースフィルター上にアレイ状に整列させ、IPTGを用いて一晩発現させた後に、scFv被覆フィルター(de Wildt, RM, et al., Nat. Biotechnol. 2000, 18(9), 989-994)に対するその結合性を試験した。 フィルターを、マウスモノクローナル抗HA抗体(0.2μg/ml;Roche)と共にインキュベーションし、結合を、HRP-コンジュゲートウサギ抗マウス抗体(1:10000;Dako)およびECL検出によって可視化した。
実施例1:BRASIL法の試験
ファージライブラリーとの1〜2時間のインキュベーションの後に、二種類の乳癌細胞株およびPBLを有機相を介して遠心分離し、有機相遠心分離後の水層(上相)および有機層(ペレット)における回収に関して試験を行った。 ネガティブコントロールとして、1011個のファージを遠心分離し、有機相を通り抜けた遊離ファージの数を評価した。
ヒト腫瘍細胞株(PM-1およびMT-1)ならびにPBLに対してパンニング処理をした後の回収に関して試験を行った。 PBLは、新たに単離しなければならないことがわかった。 凍結アリコートから得た解凍PBLは、パンニング手順中に粘着性になる傾向がある。 遠心分離した後に、75%(PM-1)、97%(MT-1)および71%(PBL)が、有機相の細胞ペレット中に認められた。 これらのパーセンテージは、生物学的重要性を示すには高すぎる数値である。 わずか数パーセントの完全体の天然抗体ライブラリーが、現存するタイプの細胞の細胞表面タンパク質に結合するものと考えられる。 有機相を通り抜けた遊離ファージの数は、わずかに2×10-5%であって、将来的に無視することができる。
したがって、BRASIL法は、有機相遠心分離だけを分離工程として用いるに過ぎず、細胞ペレットに認められる(非特異的)結合体も多すぎるので、有用でないことが判明した。
実施例2:遊離ファージを細胞結合ファージから分離するための四つの方法の比較
1) BRASIL法(Giordano et al., 2001)に基づく単一工程の有機相分離:
パンニング処理した後に、2×l50μlの腫瘍細胞懸濁液を、2×300μlの有機相溶液(フタル酸ジブチル:シクロヘキサン 9:1[v:v];d=1.03g ml-1)の上面に直接重層した。 10,000gで、10分間、室温(RT)で、遠心分離した後に、チューブを液体窒素中でスナップ凍結し、チューブの底部を薄く切り取って、細胞ペレットを、別の(ブロックした)チューブに移した。
2) 300μlのPBS/0.4%BSAでの再懸濁および有機相遠心分離を行う以前に、1mlのPBS/0.4%BSAでの一回または二回の洗浄工程を伴う以外は、方法1に準じる。
3) 古典的な方法:
パンニング処理した後、腫瘍細胞を遠沈させ(500g、5分間、4℃)、ペレットを、1mlのPBS/0.4%BSAで五回洗浄した。
4) 磁気ビーズの使用:
パンニング処理した後に、腫瘍細胞を遠沈させ(500g、5分間、4℃)、PBS/0.1%BSAに再懸濁し、レクチンで被覆したビーズ(1:4 細胞:ビーズ比)と共に、回転させながら、20分間、4℃でインキュベーションした。 ビーズを、磁石を用いて、1mlのPBS/0.1%BSAで10回洗浄し、200μlのPBS/0.1%BSAに再懸濁した。
最初の実験では、新規の方法(2)を、BRASIL方法(1)および五回の洗浄工程を実施する古典的な方法(3)と比較した。 用いた腫瘍細胞は、PM-1乳癌細胞株であり、PBLを用いる予備的なネガティブパンニング処理を、材料および方法の説明において言及したようにして行った。
その他の実験では、方法(2)と、遊離ファージから細胞結合ファージから分離するためのレクチンで被覆した磁気ビーズの使用(方法4)との直接比較を行った。 用いた腫瘍細胞は、A-549肺癌細胞株であり、PBLおよびHUVECを用いる予備的なネガティブパンニング処理を、材料および方法の説明において言及したようにして行った。
方法1、2および3の比較:
四回のパンニング処理を行った後に、分離(適宜、方法1、2または3を用いる)、感染およびパッケージングを行った後に、ポリクローナルファージELISAを、四回の各パンニング処理から得られた各々のファージに関して個別に行い、腫瘍細胞に対しては結合するが、PBLには結合しないファージの増加を検出した。 パンニング処理を二回だけ行った後に、方法2では、ファージの増大が認められたが、方法1および3では、それぞれ、四回目および三回目の処理を行った後に増大が示された。 発現ベクターpHOG21へのサブクローニングを行った後に、各方法での第三回目の処理後に得られた95個のクローンを用いて、scFv ELISAを行った。 方法2は、増大(第二回)の時点だけでなく、そのscFv結合体の量(39/95)を、方法1(四回目、11/94)と方法3(三回目、27/95)での結果とも比較したところ、最良の方法であることが判明した。
方法2と4の比較:
ポリクローナルファージELISAの結果から、パンニング処理を二回だけ行った後に認められる腫瘍細胞に対するファージ結合の増加が、方法2および4の双方で認められることが明らかになった。 これとは対照的に、方法2では、三回目および四回目のパンニング処理を行った後に、方法4と比べて、(ファージを、10-2に希釈した後に、曲線が上方に向かっているなど)増大が認められた(図3)。
したがって、方法2(すなわち、本願発明の方法)は、先行技術の方法と比べて、特に、少ない回数のパンニング処理でもってして、より多くの陽性クローンを同定することができる、という有意な利点を有する。
実施例3:一回または二回の洗浄後に有機相分離を用いる好適なパンニング処理方法
二つのパンニングプロジェクトで、一回または二回の洗浄および有機相分離の組合せが効果的に使用された。
1) 乳癌プロジェクト
乳癌細胞株(PM-1)を、ファージscFvディスプレイライブラリーを用いるパンニング処理に供した。 予備的なネガティブパンニング処理を、新鮮なヒトPBLに関して、材料および方法の説明において言及したようにして行った。 これらの実験では、有機相遠心分離前の洗浄の効果、および古典的な方法との比較について検証した(上記参照)。
一回の洗浄および有機相遠心分離を行った後に、単一のファージならびに第三回のパンニング処理を終えて得たscFvを、細胞ELISAならびにPBLおよび腫瘍細胞株に対するFACS測定によって、それらの特異性について試験した。 三つの特徴的な腫瘍細胞株特異的クローンが認められた(クローン1、2および3)。 単一のscFv発現物を、8200 Cellular Detection Systemおよびグアバ測定に従って試験すると、さらに五つの特徴的な腫瘍細胞株特異的クローンが認められた(データは示さず)。 Norwegian Radium Hospital(DNR、オスロ、ノルウェー)での、FACS実験における最初の三つのクローンについてさらに試験を行ったところ、(1)あるscFvクローンは、主に乳癌細胞株に結合するが、(2)別のscFvクローンは、異なる起源の腫瘍細胞株、例えば、前立腺、グリア芽腫、肺および結腸直腸の腫瘍細胞株に結合することが示された(図1および2)。 また、この結果は、腫瘍細胞でのこれら双方のクローンに対する標的抗原が、Her-2/neu、EGF-RおよびCEAのいずれでもでないことを示しており、それにより、これらが、新規な腫瘍抗原を認識していることが示されている。 FACSおよび共焦点顕微鏡検査のデータは、これらの事例の場合、scFvクローン1および2の双方が、取り込まれる抗原に結合することを示していた。
したがって、本願発明の方法が、細胞の表面上に発現される分子の特異的結合パートナー(この場合、scFv抗体断片)を同定するために使用できることが理解できる。
2) 肺癌プロジェクト
肺癌細胞株(A-549)を、ファージscFvディスプレイライブラリーを用いるパンニング処理に供した。 予備的なネガティブパンニング処理を、新鮮なヒトPBLおよび内皮細胞株(HUVEC)試料に関して、材料および方法の説明において言及したようにして行った。 これらの実験では、有機相遠心分離を行う以前に二回の洗浄を用いる方法(方法2)と、細胞結合ファージからの遊離体の分離のためにレクチンで被覆したした磁気ビーズを用いる方法(方法4)との直接比較を行った。
二回の洗浄および有機相遠心分離を行った後に、三回目のパンニング処理をして得たscFv発現物を、AffiSelectならびにPBL、HUVECおよび腫瘍細胞株A-549に対する細胞ELISAによって、それらの特異性について試験した(図4)。 図4に示したように、腫瘍細胞株に対して試験した8種類のscFv発現物試料は、β-アクチンDNAのPCR増幅を示したが、HUVECおよびPBLでは、このような産物は認められなかった。 このことは、この事例の場合、8種類の試験したscFv試料は、腫瘍細胞株に結合したが、HUVECまたはPBLには結合しなかったことを示す。 FACS(図5では、例示的なクローンを示している)、グアバ測定(データは示さず)によって腫瘍細胞株特異的結合を確認した後に、10個の特徴的な腫瘍細胞株特異的クローンが認められた。
したがって、本実施例にあっても、本願発明の方法が、細胞の表面上に発現される分子の特異的結合パートナー(この場合、scFv抗体断片)を同定するために使用できる、ことが理解できる。
実施例4:異なるブランドのPCRチューブの試験
異なるブランドの0.5ml容の薄壁PCRチューブについて、有機相遠心分離および凍結乾燥を行った後の切断工程での安定性について試験した。
0.5ml容の薄壁エッペンドルフPCRチューブ(#0030 124.502)およびAxygen PCR-05-C(#321-05-051)が、試験に供した内で最良のチューブであった。 有機相を凍結乾燥した後に、チューブの破断を回避するため、チューブを、V形状領域の直上で切断しなければならなかった。
実施例5:ファージに対する有機相の効果
108個および1011個のファージを、100および200μlの有機相と共に、10mlの対数増殖期の大腸菌XL1-ブルー(Stratagene)を感染させるために使用した。 菌体を、37℃で、15分間、60rpmで、次いで、45分間、200rpmで、インキュベーションし、異なる濃度でLBTAGプレート上に接種した。 37℃で、一晩、インキュベーションコロニーの数を計測した。
低いファージ力価(1011に対して108)での試験では、有機相の存在は、感染率に対してマイナスの効果を示した(約50%の低減)。 高いファージ力価では、このような効果は認められなかった。
本実施例の結果および本明細書の記載から明らかなように、細胞を用いて抗体発現ライブラリーをスクリーニングする方法では、抗体のスクリーニングは、精製抗原および/または組換え抗原の入手可能性に依存していないのみならず、新たな細胞型特異的抗原を発見することもできる。 本願発明の方法で用いる細胞のパンニング処理を、細胞のフィルタースクリーニングまたはその他の方法、例えば、AffiSelectまたは8200 Cellular Detection System(Applied Biosystems)と組み合わせることで、細胞表面抗原に対する抗体の高性能のスクリーニングおよび選択の技術基盤が提供される。
実施例6:一回または二回の洗浄後に有機相分離を用いる好適なパンニング処理によって得られた腫瘍特異的クローンの標的の同定
一回の洗浄後に有機相遠心分離を行う乳癌パンニング処理によって得られた二つのscFvクローン(クローン1および2、図1および2を参照)を、その目標物を同定するために使用した。
標的の同定にあっては、腫瘍cDNAファージディスプレイライブラリーを、陽性細胞株(SW900;scFv1および2の双方に対して高発現性の抗原)から構築した。 次いで、このライブラリーを、scFv1およびscFv2のいずれかで被覆したチューブを利用するパンニング処理に供した。 三回のパンニング処理を行った後に、単一の腫瘍cDNAクローンの発現を、scFv1およびscFv2で被覆したフィルターに対する結合に関するフィルタースクリーニングによって試験を行った。
scFv2抗原の同定の場合、scFv2で被覆したフィルターに結合する五つの腫瘍cDNAクローンが認められた(図6)。 配列解析によって、五つのクローンはすべて、同じヌクレオチド配列に対応することが判明した。
scFv1抗原の同定の場合、12個の腫瘍cDNAクローンが、scFv1で被覆したフィルターに対する結合を示した(データは示さず)。
scFvに対する腫瘍cDNAクローンの結合は、ELISAによって、scFvコートプレート上で確認した。 そして、今度は、scFvs1および2を、免疫沈降実験、一次元PAGEおよび二次元PAGE、ペプチド抽出および質量分析解析において使用する。
したがって、本願発明の方法は、本明細書に記載の改善された有機相分離方法によって同定された結合パートナーと相互作用する目標物(この場合、標的抗原)を同定するためにも使用できることが理解できる。
乳腺腫瘍細胞に関して本願発明の方法によって選択された候補抗体クローン1(scFv1)および2(scFv2)のFACS解析を示しており、これらのクローンは、双方ともに乳腺腫瘍細胞に結合することを示しており、それにより、これらの双方のクローンに対する標的抗原が、乳腺腫瘍細胞上に発現されることを示している。 異なる細胞株に対する候補抗体クローン1(第2欄)および2(第1欄)の結合を評価するFACS解析結果の表である。 結果は、クローン1が、試験した乳癌細胞株に特異的であるが、クローン2が、異なる起源の腫瘍細胞株に結合することを示している。 二回の洗浄および有機相遠心分離(org)およびレクチンで被覆した磁気ビーズ(ビーズ)を用いたパンニング処理を一回〜四回(R1〜R4)経た後での、ファージ希釈物を用いた肺癌細胞株A-549に対するポリクローナルファージELISAを示している。 AffiSelect PCR結果の一例を示しており、試験したscFvの発現が細胞(A-549、HUVECおよびPBL)に対する結合である場合でのβ-アクチンDNAの増幅を示している。 同じscFv発現試料の結果を、三つのタイプの細胞に対して(同じ順序で)示している。 腫瘍特異的DNA増幅を示したscFv発現試料に、矢印を付している。 二回の洗浄および有機相遠心分離を用いたパンニング処理を行った後に認められたscFvの内の一つのFACS結果を示している。 scFvは、パンニング処理および予備的なパンニング処理工程で使用したもの同じタイプの細胞において試験を行った(A-549、HUVECおよびPBL)。 scFv2を用いた抗原同定のためのフィルタースクリーニングの結果を示す。 scFv2で被覆したフィルターに対して強度の結合シグナルを発現した五つの腫瘍cDNA発現試料を示す(丸)。 これら試料は、PBS/3%BSAで被覆したフィルターに対して陰性であった(図示せず)。

Claims (41)

  1. 一つまたは一つ以上の目標物に関する結合パートナー候補である一つまたは一つ以上のメンバーを同定または選択するために、分子ライブラリーをスクリーニングする方法であって、以下の工程、すなわち;
    (a) 発現ライブラリーと、一つまたは一つ以上の目標物とを接触させ、
    (b) 少なくとも一つの洗浄工程に当該目標物を供し、および
    (c) 有機相を介した分離によって、当該発現ライブラリーでの未結合メンバーと、当該発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーに結合した標的物とを分離し、それにより、その他のライブラリーのメンバーから当該標的物に関する結合パートナー候補を分離する、工程を含む、分子ライブラリーをスクリーニングする方法。
  2. 前記発現ライブラリーが、ファージディスプレイライブラリーまたは細菌発現ライブラリーである請求項1に記載の方法。
  3. 前記発現ライブラリーが、抗体発現ライブラリーである請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記抗体発現ライブラリーが、scF-v抗体を含む請求項3に記載の方法。
  5. 前記目標物が、細胞表面分子であるか、または固相に付着している請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記細胞表面分子が、全細胞の成分または細胞の膜画分として提供される請求項5に記載の方法。
  7. 前記目標物が、抗原である請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記細胞が、前記目標物をコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトされているか、または、目標物のライブラリーをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトされているか、あるいは、前記目標物を過剰発現する細胞である請求項5乃至7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記細胞が、真核細胞である請求項5乃至8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記細胞が、疾患状態と関連している請求項5乃至9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記細胞が、癌細胞である請求項5乃至10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記固相が、微粒子固相である請求項5に記載の方法。
  13. 一つ以上の目標物が、工程(a)で供される請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
  14. 少なくとも二つ、少なくとも三つ、または、少なくとも四つの洗浄工程が、工程(b)で供される請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
  15. 一つ、二つ、三つ、または、四つの洗浄工程が、工程(b)で実施される請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
  16. 有機相を介した前記分離が、遠心分離によって実施される請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。
  17. 一つまたは一つ以上のプレパンニング工程、すなわち、前記発現ライブラリーと、一つまたは一つ以上の非関連物とを接触せしめる工程が、工程(a)に先駆けて実施される請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
  18. 工程(a)〜工程(c)が、一度または一度以上の回数で反復される請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
  19. 工程(a)〜工程(c)が、一度、二度または三度の回数で反復される請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
  20. 前記発現ライブラリーの一つまたは一つ以上のメンバーが結合した前記目標物を、さらに分析に供する請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
  21. 前記分析が、前記結合パートナー候補および/または目標物をさらに分析するためのものである請求項20に記載の方法。
  22. 前記目標物から前記結合パートナー候補を分離、除去、溶出または単離する工程、あるいは前記目標物から前記結合パートナー候補を単離して発現または生成させる工程をさらに含む請求項1乃至21のいずれかに記載の方法。
  23. 前記結合パートナー候補のための分析が、(i)溶液内の一つまたは一つ以上の前記発現ライブラリーと、一つまたは一つ以上の目標物とを接触させ、(ii)前記結合パートナー候補の一つまたは一つ以上のメンバーに結合した目標物を固相上に固定し、および(iii)目標物の存在を検出し、それにより、当該目標物に関する一つまたは一つ以上の結合パートナー候補の存在を検出する、工程を含む、請求項21または22に記載の方法。
  24. 前記目標物が、前出のいずれかの請求項に記載のものである請求項23に記載の方法。
  25. 前記結合パートナー候補が、固定工程(ii)の進行を促すタグまたはマーカーを含む請求項23または24に記載の方法。
  26. 前記目標物が、前記目標物の検出を可能にするレポーター部分を含んでいるか、または当該レポーター部分と関連している請求項23乃至25のいずれかに記載の方法。
  27. 前記レポーター部分が、DNA分子である請求項26に記載の方法。
  28. 前記目標物が、細胞表面分子であり、かつ前記レポーター部分が、前記目標物を発現している細胞内に存在するDNA分子である請求項26または請求項27に記載の方法。
  29. 前記DNA分子が、内因性ハウスキーピング遺伝子または外因性レポーター部分である請求項27または28に記載の方法。
  30. 工程(ii)の前記固相が、 磁性体であり、好ましくは、微粒子である請求項23乃至29のいずれかに記載の方法。
  31. 前記固定工程が、前記結合パートナー候補と関連するタグまたは分子と、固相での固定分子との間の相互作用によって進行が促される請求項23乃至30のいずれかに記載の方法。
  32. 前記検出工程が、目標物に対するレポーター部分または当該目標物が関連するレポーター部分の存在を検出することによって行われる請求項23乃至31のいずれかに記載の方法。
  33. 前記検出工程が、PCRによって行われる請求項32に記載の方法。
  34. 未確認目標物を単離および/または同定する方法であって、請求項1乃至33のいずれかに記載の工程を含み、かつ(d)当該未確認目標物に結合した一つまたは一つ以上の発現ライブラリーのメンバーを単離し、および(e)当該ライブラリーのメンバーを用いて、そこに結合している目標物を単離および/または同定する、ことを含む方法。
  35. 目標物に対して特異的な結合パートナーであるライブラリーのメンバーを選択、同定および/または単離する方法、または発現ライブラリーから目標物を選択、同定および/または単離する方法であって、当該方法が、特定の性状を示す分子を選択するための請求項1乃至33のいずれかに記載の工程を含み、かつ、(e)目標物に対して特異的な結合パートナーである関連するライブラリーのメンバーを同定および/または単離することを任意に含み、および、(f)当該ライブラリーのメンバーを用いて、そこに結合している目標物を同定することを任意に含む方法。
  36. 請求項34の工程(e)または請求項35の工程(f)が、未確認目標物を発現している細胞から調製したcDNAライブラリーをスクリーニングするための前記ライブラリーのメンバーを用いることを含む請求項34または35に記載の方法。
  37. 前記結合パートナーまたは目標物、またはその成分、断片、変異体または誘導体を製造または発現する工程をさらに含み、また、前記結合パートナーまたは目標物を、少なくとも一つの薬学的に許容される担体または賦形剤で製剤する工程を任意に含む請求項1乃至36のいずれかに記載の方法。
  38. 請求項1乃至37のいずれかに記載の方法を用いて同定、選択、単離、製造、発現または製剤した結合性タンパク質または目標物。
  39. In vitro検定またはin vivo診断検定のための請求項1乃至37のいずれかに記載の方法を用いて同定、選択、単離、製造、発現または製剤した結合性パートナーまたは目標物の使用。
  40. 治療またはin vivo診断に用いる薬物または組成物を製造するための請求項1乃至37のいずれかに記載の方法を用いて同定、選択、単離、製造、発現または製剤した結合性パートナーまたは目標物の使用。
  41. 請求項1乃至37のいずれかに記載の方法を用いて同定、選択、単離、製造、発現または製剤した結合性パートナーまたは目標物を適切な用量で投与することを含む、患者を処置する方法。
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