JP2008502743A - 重合体の添加剤を用いる自由流動性コーク製造用のディレードコーキング方法 - Google Patents

重合体の添加剤を用いる自由流動性コーク製造用のディレードコーキング方法 Download PDF

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Abstract

実質的に自由流動性のコーク、好ましくはショットコークを製造するディレードコーキング方法。減圧残留物などのコーカー原料油を、加熱ゾーンにおいてコーキング温度に加熱し、続いてコーキングゾーンに送り込み、そのコーキングゾーンにおいて、揮発性物質をオーバーヘッドに集めると共にコークを形成させる。原料油を加熱ゾーンにおいて加熱する前またはコーキングゾーンに送り込む前に、或いはその両方において、原料油に、少なくとも1種の重合体の添加剤を添加する。
【選択図】なし

Description

本発明は、実質的に自由流動性のコーク、好ましくは自由流動性のショットコークを製造するディレードコーキング方法に関する。減圧残留物などのコーカー原料油を加熱ゾーンにおいてコーキング温度に加熱し、続いてコーキングゾーンに送り込み、そのコーキングゾーンにおいて揮発性物質をオーバーヘッドに集めると共にコークを形成させる。自由流動性コークの形成を高めるために、原料油を加熱ゾーンにおいて加熱する前またはコーキングゾーンに送り込む前に、或いはその両方において、適切な重合体の添加剤を原料油に添加する。
ディレードコーキングは、石油の残留物(残油)を熱分解して、ガスと、種々の沸点範囲の液体ストリームと、コークとを製造することを含んでいる。重質およびヘビーサワー(高硫黄)原油からの残油のディレードコーキングは、主として、これらの低価値原料油の廃棄手段として、残油の一部をより価値のある液体およびガス生成物に転化することによって行われる。得られるコークは一般的には低価値の副生物と見なされるが、燃料(燃料グレードのコーク)として、アルミニウム製造用の電極(陽極グレードのコーク)として、その品位に応じていくらかの価値を有する場合がある。
ディレードコーキング法においては、原料油は、燃焼加熱器または管状炉で急速に加熱される。加熱された原料油は続いて、コーキングが生じる条件、即ち一般的に400℃を超える温度および超大気圧に保持されるコーキングドラムに送られる。コーカードラム内の加熱された残留物原料は揮発性の成分をも形成し、その揮発成分はオーバーヘッドから除去されて分留装置に送られ、コークが後に残される。コーカードラムがコークで一杯になると、加熱された原料は他のドラムに切り換えられ、炭化水素の蒸気がスチームによってコークドラムから排除される。次いで、ドラムは水で急冷されて、300°F(149℃)未満の温度に下げられ、その後水は排出される。冷却および排水の工程が完了すると、ドラムは開放され、高速ウォータージェットを用いる穿孔および/または切断の後、コークが除去される。
典型的には、穿孔工具に配置されたノズルからの高圧ウォータージェットによってコーク床の中心を貫通する孔が穿孔される。続いて、切断工具の先端に水平に向けられたノズルによって、ドラムからコークが切り出される。コークの除去工程は、全工程の処理時間および費用を大幅に増大させる。このため、コーカードラムにおいて、従来のコーク除去に伴う費用および時間を要しないような自由流動性のコークの製造を可能にすることが望まれる。
コーカードラムは、たとえ完全に冷却されたように見えても、ドラムの一部の領域は完全には冷却していない。時に「ホットドラム」と呼称されるこの現象は、ドラム内にコークの複数の形態が組み合わされて存在する結果である場合がある。ドラム内には、2種類以上の固体コーク生成物、即ちニードルコーク、スポンジコークおよびショットコークの組合せが含まれることがある。集塊化していないショットコークは、大きなショットコーク塊またはスポンジコークなどの他の形態のコークよりも速く冷却し得るので、ホットドラムを回避しまたは最小化するためには、ディレードコーカーにおいて実質的に自由流動性のコーク、好ましくはショットコークを主として製造することが望ましい。
本発明の1つの実施形態においては、
(a)石油の残油を、第1加熱ゾーンにおいて、コーキング温度未満ではあるが、前記残油がポンプ輸送可能な液体になる温度まで加熱する工程;
(b)加熱された前記残油を第2加熱ゾーンに送り込み、そこでそれをコーキング温度に加熱する工程;
(c)加熱された前記残油を、前記第2加熱ゾーンからコーキングゾーンに送り込み、そこで揮発性の生成物をオーバーヘッドに集め、固形コーク生成物を形成させる工程;および
(d)前記残油に、実質的に自由流動性のコークの形成に有効な少なくとも1種の重合体の添加剤を導入する工程であって、前記重合体の添加剤を、前記第2加熱ゾーンの上流の点、前記第2加熱ゾーンと前記コーキングゾーンとの間の点またはその両方において前記残油に導入する工程
を含むディレードコーキング方法が提供される。
1つの好ましい実施形態においては、コーキングゾーンがディレードコーカードラムの中にあり、実質的に自由流動性のショットコーク生成物が形成される。
別の実施形態においては、
(a)減圧残油を、少なくとも1種の有効量の重合体の添加剤と、70℃〜370℃の温度において、前記添加剤を原料中に一様に分散させるに十分な時間接触させる工程;
(b)接触させた前記残油を、前記原料のコーキングに有効な温度に加熱する工程;
(c)加熱された前記減圧残油を、15〜80psig(103.42〜551.58kPa)の圧力で、その少なくとも一部が自由流動性であるホットコーク床を形成するのに有効な時間、コーキングゾーンに装入する工程;および
(d)前記ホットコーク床の少なくとも一部を水で急冷する工程
を含むディレードコーキング方法が提供される。
別の実施形態においては、重合体の添加剤を、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、ポリオキシプロピレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択する。重合体の添加剤は、好ましくは1,000〜30,000の範囲の分子量、更に好ましくは1,000〜10,000の範囲の分子量を有するであろう。共重合体はブロック共重合体であることが好ましい。重合体の表現例を図1および図2に示す。
別の実施形態においては、実質的に自由流動性のショットコーク生成物が形成され、コーキングゾーンから除去される。コーキングゾーンは、好ましくはディレードコーカードラムである。添加剤は、コーカー炉である加熱ゾーンに原料を導入する前或いはコーカー炉とコーカードラムとの間のいずれかで、原料に投入しかつ結合させることができる。また、添加剤をこの両方の位置で原料に導入することも、本発明の範囲内である。各位置において独立に、同じ1つまたは複数の添加剤を加えることが可能であり、或いは、各位置において異なる1つまたは複数の添加剤を加えることも可能である。
「結合させる」および「接触させる」という用語は、その広義の意味に用いられる。即ち、いくつかの場合には、添加剤が原料中に存在する場合、添加剤、原料、或いはその両方において、添加剤および/または原料中における物理的および/または化学的変化が生起し得るということである。換言すれば、本発明は、添加剤および/または原料が、接触および/または結合に続いて或いはその過程において化学的および/または物理的変化を受けないという場合に限定されない。添加剤の「有効量」とは、原料と接触させた時に、コーキングゾーンにおいてショットコークを形成する、好ましくは実質的に自由流動性のコークを形成する結果をもたらす添加剤の量である。有効量は一般的に100〜100,000ppm(原料の全重量に基づいて)の範囲である。もちろん、使用される量は、使用される特定の添加剤の種類とその化学的および物理的な形態とに応じて変化するであろう。その有効量は、原料中における良好な分散をもたらす物理的および化学的形態の添加剤の化学種の場合の方が、分散がより困難な添加剤の化学種の場合よりも一般的には少ないであろう。ゆえに、有機物質中、更に好ましくは残油原料中において少なくとも部分的に可溶な添加剤が最も好ましい。
添加剤を残油原料中に一様に分散させることは、コークの形態形成の異質な部分を避けるために望ましい。即ち、コークドラム内において、ある箇所ではコークが実質的に自由流動性であり、他の領域ではコークが実質的に非自由流動性であるような状況は好ましくないのである。添加剤の分散は、任意の適切な方法で実行され、好ましくは添加剤のサイドストリームを原料油に所要の位置で導入することによって実行される。添加剤の添加は、添加剤を残油原料に可溶化することによって行うことができる。添加剤混入の前に、加熱、溶剤添加等によって残油の粘度を低下させることによって添加剤の残油原料への可溶化を容易に行うことができるであろう。高エネルギー混合またはスタチックミキサー装置を添加剤、特に原料ストリームへの溶解度が比較的低い添加剤の分散を助けるために用いることができる。
好ましいことに、本発明の方法で形成されるすべてのコーク、或いは実質的にすべてのコークは、実質的に自由流動性のコーク、更に好ましくは実質的に自由流動性のショットコークである。また、コーカードラム内に存在する揮発性の化学種の少なくとも一部を、コーク形成の間およびその後に、分離して工程から取り出す、好ましくはコーカードラムのオーバーヘッドから取り出すことが好ましい。
石油の減圧残留物(残油)原料油はディレードコーキングに適している。このような石油残留物は、多くの場合、減圧下で原油原料から留出分を除去した後に得られ、大きな分子サイズおよび分子量の成分からなる特性を有しており、一般的に、(a)水素化処理/水素化分解の速度を抑制し、触媒失活の原因となることがあるアスファルテンおよび他の高分子量芳香族構造体と、(b)原油中に天然に含有されるか或いは原油の前処理から生じる金属汚染物質であって、水素化処理/水素化分解の触媒を失活させると共に触媒の再生を妨げる傾向を有する金属汚染物質と、(c)石油残留物を燃焼した際に、好ましからざる量のSO、SOおよびNOを発生させる比較的高濃度の硫黄化合物および窒素化合物と、を含んでいる。残油中に存在する窒素化合物は、接触分解の触媒を失活させる傾向をも有する。
1つの実施形態においては、残油原料油には、石油原油の常圧および減圧蒸留の残留物、或いは、重質油、ビスブレーキングされた残油、液化石炭、シェール油、脱歴装置からのタールまたはこれらの材料の組合せの常圧および減圧蒸留の残留物が含まれるが、これに限定されるわけではない。常圧および減圧蒸留で塔頂生成される重質ビチューメンも用いることができる。このような原料油は、一般的に、538℃以上の公称初期沸点、20°以下のAPI比重および0〜40重量%のコンラドソン残留炭素分濃度を有する高沸点炭化水素材料である。
残油原料は典型的にはディレードコーキングにかけられる。一般的に、ディレードコーキングにおいては、石油残留物の原料油などの残留留分が、50〜550psig(344.74〜3792.12kPa)の圧力で加熱器にポンプ輸送され、その加熱器において480℃〜520℃の温度に加熱される。続いて、この残油原料は、コーキングゾーン、通例垂直方位の断熱コーカードラムの中に、ドラムの基部の流入口を通して排出される。ドラム内の圧力は、揮発性物質をオーバーヘッドから除去し得るようにするために、通常比較的低く、例えば15〜80psig(103.42〜551.58kPa)に設定される。ドラムの典型的な運転温度は410℃〜475℃であろう。高温の原料油は、コーカードラム内で、ある時間(「コーキング時間」)熱分解され、主として炭化水素生成物からなる揮発性物質を放散する。この揮発性物質生成物は、コーク塊(床)を通り抜けて連続的に上昇し、オーバーヘッドに集められる。揮発性生成物は、コーカーガス、ナフサ、軽質ガスオイルおよび重質ガスオイル留分を蒸留して回収するためのコーカー分留器に送られる。1つの実施形態においては、コーカー分留器に導入される生成物ストリームに存在する重質コーカーガスオイルの少ない部分を、リサイクル用として捕捉して新鮮原料(コーカー原料成分)と結合させることができる。これによって、コーカー加熱器またはコーカー炉の装入物が形成される。ディレードコーキングは、揮発性の生成物に加えて、固体のコーク生成物をも形成する。
一般的に、ディレードコーカーの固体生成物には、異なる価値、外観および特性を有する3つの異なる種類がある。即ち、ニードルコーク、スポンジコークおよびショットコークである。ニードルコークはこの3つの変形態の内で最も高品質である。ニードルコークは、更に熱処理すると高い電気伝導度(および低い熱膨張係数)を有し、電気アーク製鋼に用いられる。それは、硫黄および金属が比較的少なく、多くの場合、接触分解装置からのスラリーおよびデカント油、並びに熱分解タールなどの、より芳香族性の原料油を含むいくつかの高品質コーカー原料油から製造される。一般的に、それは残油原料のディレードコーキングによっては形成されない。
より低品質のコークであるスポンジコークは、ほとんどの場合製油所で形成される。相当量のアスファルテン、ヘテロ原子および金属を有する低品質の製油所コーカー原料が、この低品質のコークを製造する。硫黄および金属含有量が十分に低ければ、スポンジコークは、アルミニウム工業用の電極の製造に使用することができる。硫黄および金属含有量が非常に高い場合は、コークは燃料として使用することができる。「スポンジコーク」という名称は、その多孔質のスポンジ状の外観に由来する。従来のディレードコーキング方法は、本発明の好ましい減圧残油の原料油を用いると一般的にはスポンジコークを製造するであろう。このスポンジコークは、穿孔およびウォータージェット技術を含む大規模な除去工程を必要とする集塊として生成される。既に述べたように、これは、サイクル時間を増大することによって処理工程を大幅に複雑化する。
ショットコークは最も低品質のコークと考えられる。「ショットコーク」という用語はBBサイズ[1/16インチ〜3/8インチ(0.16cm〜0.95cm)]の球に類似したその形状に由来する。ショットコークは他の種類のコークと同様に、特にスポンジコークとの混合物において、大きな集塊、時には1フィートよりも大きな直径に集塊化する傾向がある。これは、製油所設備および処理工程に問題を生じさせる可能性を有する。ショットコークは、通常、最も低品質の高レジン−アスファルテン原料から製造され、特にセメントキルンおよび製鋼における用途に対して良好な高硫黄燃料源となる。更にまた「遷移コーク」と呼称されるコークもある。これは、スポンジコークとショットコークとの間の中間形態を有するコーク、或いは、スポンジコークに結合されたショットコークの混合物からなるコークを指している。例えば、ほとんどスポンジ状の物理的外観を有しているが、小さいショット球が、分離した形状として形成し始めている様相を備えたコークである。
残留物の原料油を、1種類以上の重合体の添加剤で処理することによって、実質的に自由流動性のショットコークを本発明に従い製造し得る。この添加剤は、ディレードコーキングの間ショットコークの生成を強化する添加剤である。残油原料を、有効温度、即ち原料油中への添加剤の分散を促進する温度において、1つ以上の添加剤によって処理する。このような温度は、一般的に、70℃〜500℃、好ましくは150℃〜370℃、更に好ましくは185℃〜350℃である。
本発明の重合体の添加剤の非限定的な例として、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、ポリオキシプロピレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤がある。
重合体の添加剤は有効量で使用することになろう。即ち、少なくとも所要の程度の自由流動性コークを結果的に得るであろう量である。この量は、重質油原料の重量に基づいて、一般的に300〜5000wppm、好ましくは300〜3000wppm、更に好ましくは300〜2000wppmであろう。
第2の種類の添加剤を、重合体の添加剤と組み合わせて使用することが本発明の範囲内である。この第2の種類の添加剤は、液体または固体形態で使用し得る金属含有添加剤となるであろうが、液体形態の方が好ましい。本発明を実施する場合に使用し得る金属含有添加剤の非限定的な例として、金属の水酸化物、ナフテネートおよび/またはカルボキシレート、金属アセチルアセトネート、ルイス酸、金属硫化物、金属アセテート、金属炭酸塩、高表面積金属含有固体、無機酸化物、および酸化物の塩がある。水酸化物の好ましい金属はアルカリ金属およびアルカリ土類金属であり、カリウムおよびナトリウムが一層好ましい。塩基性の塩が好ましい。重合体の添加剤と組み合わせて金属含有添加剤を使用すると、両添加剤の合計量が、重合体の添加剤用として示した5000wppmまでの最大量を超えないであろう。
標準沸点(atmospheric equivalent boiling point:AEBP)が900°F(482.22℃)〜1040°F(560℃)の留分の材料を10重量%未満に保持することが好ましい。これによってコークの形態が、結合程度がより低くかつ自立程度がより低いコーク形態に押し戻されるであろう。
初期形成された液体の中間相を急速乾燥/コーキング/破裂させると、結果的にショットコークを形成する液体球が形成される。中間相を緩速乾燥すると、液体の初期中間相を散開させて、その場でコーク化させ、拡大したスポンジコーク網を形成する結果をもたらす。中間速度で乾燥するとスポンジコークとショットコークとの混合物である遷移コークが生成されるが、このコークにおいてはショットコークがスポンジコークに埋め込まれている。この最後の状況は、スポンジコークがショットコークと過熱蒸気とを閉じ込める密封材となるので、ディレードコーカーのコークドラムを切断/穿孔によって開いた時に、コークの噴出または“ホットドラム”をもたらすことがある。ドリルがこのような密封材を穿孔する時は、それは蒸気とショットコークのBBとを対象にしていることになる。ショットコーク或いはスポンジコークを制御された態様で生成することができ、遷移コークの形成を回避し得ることが強く望まれる。このようにすると、石油精製業者は、穿孔の必要なく、スポンジコークを切り出し或いはショットコークを排出することができる。本発明の重合体の添加剤を加えると、その添加剤が中間相の層間の熱架橋反応を遅らせ、それが、速やかなコークの乾燥とショットコーク球の形成とを可能にするので、更に高温でのコーキングが可能になる。この更なる高温に加えて、コークドラムをより低圧、例えば15〜45psi(103.42〜310.26kPa)で運転すると、揮発性の分解生成物の脱出を可能にして、その分解生成物が液体として中間相に滞留する時間を最小化することができる。ポリエーテル添加剤はコークドラム(一般的に425℃)においてコークの乾燥速度よりも遅い速度で分解するので、この添加剤も重質油中間相の形成と架橋とを撹乱させるのに有効である。
残油の原料油を添加剤で処理する精密な条件は原料および添加剤に応じて変化する。即ち、原料を添加剤で処理する条件は、コーキング処理する原料と使用する添加剤との組成および特性に依存している。これらの条件は従来の方法で決定することができる。例えば、添加剤を含む特定の原料によって、異なる時間および温度で数回の試行を行い、続いて、ミクロ残留炭素分試験機(Microcarbon Residue Test Unit:MCRTU)などのベンチスケールの反応器においてコーキングすることができる。その後、得られたコークを、本明細書で言及するような光学偏光顕微鏡を用いて分析する。好ましいコークの形態(即ち、実質的に自由流動性のコークを生成するであろう形態)は、0.5〜10μmの平均サイズ、好ましくは1〜5μmの平均サイズを有する分離した微細ドメインのコーク微細構造であり、本明細書の図2および3のモザイク模様にやや類似した構造である。自由流動性でないショットコークを表すコークの微細構造は図1に示されるが、それは、60μm以上のサイズまでの、典型的には10〜60μmのサイズの、実質的に分離していない或いはかなり大きな流動ドメインからなるコークの微細構造を示している。
泡止め剤を含む伝統的なコーク処理助剤を本発明の方法において使用することができる。従来の方法によってショットコークが製造されてきたが、このショットコークは、通常は、その除去にウォータージェット技術がなお必要な程度まで集塊化する。
本発明の1つの実施形態においては、残油の原料油を、最初に、実質的に自由流動性のコークの形成を促進する本発明の重合体の添加剤で処理する。コーカードラムを比較的低圧に保持することによって、放出される揮発性物質の多くをオーバーヘッドに集めることができ、それによって、得られるショットコークの好ましくない集塊化が防止される。混合原料比(「CFR」)は、連続ディレードコーカー運転への新鮮原料量に対する炉への装入量(新鮮原料+リサイクル油)の容積比である。ディレードコーキング運転は、一般的に5容積%〜25容積%のリサイクル(1.05〜1.25のCFR)を用いる。いくつかの例においては0リサイクルが用いられ、特別な適用例では、場合によって200%までのリサイクルがある。自由流動性のショットコークの形成を助長するには、CFRは低くするべきであり、好ましくはリサイクルなしを用いるべきである。
一般的に、添加剤はコーキング工程に連続モードで送り込まれる。必要であれば、添加剤を適切な輸送液に溶解させるか、または混入してスラリーにすることができる。この輸送液は、一般的に残油に適合する溶剤であり、添加剤がその中に実質的に溶解し得るようなものとする。この後、流体混合物またはスラリーを、原料中における添加剤の所要濃度を実現する流量でコーキング工程にポンプ注入する。添加剤の導入点は、例えば、炉原料装入ポンプの吐出側、或いは、コーカー輸送ラインの出口近傍とすることができる。添加剤をコーキング工程に連続導入するように運転される1対の混合容器を設けることもできる。
添加剤の導入流量は、コーカーへの残油原料の性質に従って調整することができる。ショットコーク生成の限界値にある原料は、その限界値から大きく離れた原料よりも少ない添加剤しか必要としないであろう。
残油原料への溶解または分散が困難な添加剤の場合は、添加剤を混合/スラリー化容器に送入して、原料と適合するスラリー媒体と混合する。適切なスラリー媒体の非限定的な例として、コーカー重質ガスオイル、水等がある。添加剤を分散させるため、例えばミキサーによって容器にエネルギーを供給するとよい。
残油原料に容易に分解または分散させることができる添加剤の場合は、添加剤を混合容器に送入して、原料油と適合する流体の輸送媒体と混合する。適切な流体輸送媒体の非限定的な例として、加熱残油(温度150℃〜300℃)、コーカー重質ガスオイル、ライトサイクルオイル、重質改質油、およびこれらの混合物がある。接触分解スラリーオイル(Cat slurry oil:CSO)も使用することができるが、これは、ある条件の下では、密でないショットコークを生成する添加剤の能力を抑制する可能性がある。添加剤を流体輸送媒体中に分散させるため、例えばミキサーによって容器にエネルギーを供給するとよい。
例示目的用として提示する次の非限定的な例を参照することによって、本発明が更によく理解されるであろう
本発明を例証するために、BASF社から販売されているTetronicおよびPluronic重合体を使用した。これらの重合体化合物は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共重合体であり、各重合体添加剤の平均分子量は1500であった。
この実施例においては、以下に示す重合体の添加剤化合物を使用した。これらの重合体化合物は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共重合体であり、商業的に入手可能である。左側の添加剤がBASF社から入手し得るTetronic共重合体であり、右側の添加剤が同じくBASF社から入手し得るPluronic共重合体である。各重合体添加剤の平均分子量は1500であった。
バトンルージュ製油所(Baton Rouge Refinery)の減圧塔の塔底油2グラムをミクロ残留炭素分試験装置(MCR)に装入した。残油を400℃に加熱して、400℃に2時間保持し、残留物を重量分析した。残油は、また上記の2つの重合体の添加剤を3000wppm添加したものについても試験した。残留物について偏光光学顕微鏡試験を実施した。次の表は、この試験の結果を示している。
Figure 2008502743
顕微鏡試験の結果を図1、図2および図3の顕微鏡写真に示すが、これらは、本発明の重合体の添加剤の効果を明確に示している。図1は添加剤なしの結果であり、かなりの量の異方性コークの存在を示す多くの明るい光沢のある球を観察することができる。図2は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(Pluronic)を用いて行った試験を表しており、図1に比べると微小球の存在が相対的に少ないことが観察される。これは、異方性のコークが抑制されたことを示している。図3は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール(Tetronic)を用いて行った試験を表しており、等方性の相の存在が観察される。これは、異方性のコークの形成が実質的に完全に抑制されたことを示している。従って、本発明の重合体の添加剤は、異方性のコークの生成を抑制し、コークの形態を変化させる。
添加剤を用いない実施例の残留物を示す光学顕微鏡写真である。この図の顕微鏡写真は交差偏光光学顕微鏡技法を用いており、その視界領域は170×136μmである。 ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(Pluronic)添加剤を用いた実施例の残留物を示す光学顕微鏡写真である。この図の顕微鏡写真も交差偏光光学顕微鏡技法を用いており、その視界領域は170×136μmである。 ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラ酢酸エステル(Tetronic)添加剤を用いた実施例の残留物を示す光学顕微鏡写真である。この図の顕微鏡写真も交差偏光光学顕微鏡技法を用いており、その視界領域は170×136μmである。

Claims (10)

  1. (a)石油の残油を、第1加熱ゾーンにおいて、コーキング温度未満ではあるが、前記残油がポンプ輸送可能な液体になる温度まで加熱する工程;
    (b)加熱された前記残油を第2加熱ゾーンに送り込み、そこでそれをコーキング温度に加熱する工程;
    (c)加熱された前記残油を、前記第2加熱ゾーンからコーキングゾーンに送り込み、そこで揮発性の生成物をオーバーヘッドに集め、コーク生成物を形成させる工程;および
    (d)前記残油に、実質的に自由流動性のコークの形成に有効な少なくとも1種の重合体の添加剤を導入する工程であって、前記重合体の添加剤を、前記第2加熱ゾーンの上流の点、前記第2加熱ゾーンと前記コーキングゾーンとの間の点またはその両方において前記残油に導入する工程
    を含むことを特徴とするディレードコーキング方法。
  2. (a)減圧残油を、少なくとも1種の有効量の重合体の添加剤と、70℃〜370℃の温度において、前記添加剤を原料中に一様に分散させるに十分な時間接触させる工程;
    (b)前記残油を、前記原料のコーキングに有効な温度に加熱する工程;
    (c)加熱された前記減圧残油を、15〜80psig(103.42〜551.58kPa)の圧力で、その少なくとも一部が自由流動性であるホットコーク床を形成することができるコーキング時間の間、コーキングゾーンに装入する工程;および
    (d)前記ホットコーク床の少なくとも一部を水で急冷する工程
    を含むことを特徴とするディレードコーキング方法。
  3. 前記残留物の原料油は、減圧残油であることを特徴とする請求項1または2に記載のディレードコーキング方法。
  4. 前記添加剤の少なくとも一部は、前記原料油に可溶性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディレードコーキング方法。
  5. 前記添加剤の有効量は、300〜5,000wppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディレードコーキング方法。
  6. 前記重合体の添加剤は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、ポリオキシプロピレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンアルコールのエチレンジアミンテトラアルコキシレート化アルコールおよびこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディレードコーキング方法。
  7. 前記重合体の添加剤の分子量は、1,000〜30,000であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のディレードコーキング方法。
  8. 生成されるコークは、実質的にショットコークであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のディレードコーキング方法。
  9. 有効量の第2添加剤をも使用し、前記第2添加剤は、金属ナフテネート、金属アセチルアセトネート、ルイス酸、高表面積金属含有材料、無機酸化物および無機酸化物の塩よりなる群から選択される1つ以上の金属含有添加剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のディレードコーキング方法。
  10. 前記第2添加剤は、KOH、NaOH、カルボキシレートおよびアセチルアセトネートよりなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項9に記載のディレードコーキング方法。
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