以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、ノートブック型のパーソナルコンピュータ(携帯型情報処理装置)10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12には、LCD(Liquid Crystal Display)17から構成される表示装置が組み込まれており、LCD17の表示画面は、ディスプレイユニット12の略中央に位置されている。
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対して開放位置と閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。コンピュータ本体11は、薄い箱型の筐体を有しており、その上面には、キーボード13、パーソナルコンピュータ10の電源をON/OFFするためのパワーボタン14、入力操作パネル15、およびタッチパッド16等が配置されている。
次に、パーソナルコンピュータ10のシステム構成について説明する。
図2に示されるように、パーソナルコンピュータ10は、CPU111、ノースブリッジ112、主メモリ113、ビデオコントローラ114、オーディオコントローラ115、サウスブリッジ119、BIOS120、ハードディスクドライブ(HDD)121、光ディスクドライブ(ODD)122、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)124およびネットワークコントローラ125等を備えている。
CPU111は、パーソナルコンピュータ10の動作を制御するために設けられたプロセッサであり、HDD121から主メモリ113にロードされるオペレーティングシステム(OS)、および各種アプリケーションプログラムを実行する。また、CPU111は、不揮発性メモリであるBIOS120に格納されたシステムBIOS(Basic Input Output System)も実行する。システムBIOSは、ハードウェア制御のためのプログラムである。
ノースブリッジ112は、CPU111のローカルバスとサウスブリッジ119との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ112には、主メモリ113をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。また、ノースブリッジ112は、AGP(Accelerated Graphics Port)バス等を介してビデオコントローラ114との通信、およびオーディオコントローラ115との通信を実行する機能も有している。
ビデオコントローラ114は、パーソナルコンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD17を制御するビデオ再生コントローラである。ビデオコントローラ114は、デコードされた映像データからLCD17に送出すべき再生信号を生成する。
オーディオコントローラ115は、パーソナルコンピュータ10のスピーカ18を制御するオーディオ再生コントローラである。オーディオコントローラ115は、デコードされた音声データからスピーカ18に送出すべき再生信号を生成する。
サウスブリッジ119は、LPC(Low Pin Count)バス上の各デバイス、およびPCI(Peripheral Component Interconnect)バス上の各デバイスを制御する。また、サウスブリッジ119は、HDD121、ODD122を制御するためのIDE(Integrated Drive Electronics)コントローラを内蔵している。更に、サウスブリッジ119は、BIOS120をアクセス制御するための機能も有している。
HDD121は、各種ソフトウェアおよびデータを格納する記憶装置である。ODD122は、ビデオコンテンツが格納されたDVD等の記憶メディアを駆動するためのドライブユニットである。
EC/KBC124は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード(KB)13およびタッチパッド16を制御するためのキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。このEC/KBC124は、ユーザによるパワーボタン14の操作に応じてパーソナルコンピュータ10の電源をON/OFFする機能を有している。ネットワークコントローラ125は、例えばインターネット等の外部ネットワークとの通信を実行する通信装置である。
上述したパーソナルコンピュータ10はデータ記録装置としてHDD121を搭載したモデルであり、製造工程にてパーソナルコンピュータ10にHDD121が組み込まれている。HDD121は、ヘッドを移動させつつディスク状の記憶媒体からデータを読み出すデータ記録装置である。よって、HDD121は、衝撃を受けると故障しやすく、ヘッドを保護するための対衝撃機能を必要とする。そこで、パーソナルコンピュータ10は、パーソナルコンピュータ10が衝撃を受けることを事前に検知する衝撃検知センサ130を備えている。ここで、衝撃検知センサ130は、加速度が予め設定された閾値を超えたことを検知するものである。衝撃検知センサ130により加速度が閾値を超えたことが検知されると、CPU111はHDDプロテクションソフトウェア(衝撃対処用ソフトウェア)を実行して、HDD121のヘッドを衝撃を受けても故障しない安全な領域に退避させる。
パーソナルコンピュータ10は、HDD121に代えてソリッドステートドライブ(SSD:SolidState Drive)123を搭載する場合もある。パーソナルコンピュータ10がデータ記録装置としてSSD123を搭載したモデルである場合には、製造工程にてパーソナルコンピュータ10にSSD123が組み込まれる。SSD123は、半導体メモリにデータを記録するデータ記録装置であり、NANDフラッシュメモリを使用して構成される。よって、SSD123は、衝撃を受けても故障しにくく、HDD121とは異なり対衝撃機能を必要としない。なお、パーソナルコンピュータ10をHDD搭載モデルとするかまたはSSD搭載モデルとするかはパーソナルコンピュータ10の製造前に決定され、パーソナルコンピュータ10の製造工程においてHDD121またはSSD123のいずれか一方がパーソナルコンピュータ10に組み込まれる。
パーソナルコンピュータ10は、製造工程で搭載されたデータ記録装置がHDD121である場合だけでなくSSD123である場合にも対処できるように構成されている。図3は、パーソナルコンピュータ10においてHDD121およびSSD123に対処可能とするための機能を示す機能ブロック図である。パーソナルコンピュータ10は、判別処理部21と、対衝撃機能有効化処理部22とを備えている。判別処理部21は、パーソナルコンピュータ10に搭載されたデータ記録装置がHDD121またはSSD123のいずれであるかを判別する。対衝撃機能有効化処理部22は、判別処理部21がHDD121が搭載されていることを判別した場合には、対衝撃機能を有効化するための処理を実行する。その一方で、対衝撃機能有効化処理部22は、SSD123が搭載されていることを判別した場合には、対衝撃機能を有効化するための処理を実行しない。これにより、パーソナルコンピュータ10は、HDD121が搭載された場合にのみ対衝撃機能を有効化し、SSD123が搭載された場合には対衝撃機能を無効化することができる。なお、以下に説明するとおり、判別処理部21は、CPU111がBIOS120に格納されたシステムBIOS120を実行することにより主に実現される機能である。また、対衝撃機能有効化処理部22は、HDDプロテクションソフトウェアをインストールするためのインストールプログラムをCPU111が実行することにより主に実現される機能である。
次に、対衝撃機能を有効化または無効化するためにパーソナルコンピュータ10により実行される処理の概要について説明する。図4は、対衝撃機能の有効化処理を概略的に示すフローチャートである。パーソナルコンピュータ10は、製造工程で搭載されたデータ記憶装置がHDD121またはSSD123のいずれであるかを判別する(S401,S402)。ここで、パーソナルコンピュータ10は、製造工程で搭載されたデータ記憶装置がHDD121であることを判別した場合には、対衝撃機能を有効化するために加速度センサに電力を供給する。また、パーソナルコンピュータ10は、HDDプロテクションソフトウェアをHDDにインストールする(S403,S404)。一方、パーソナルコンピュータ10は、製造工程で搭載されたデータ記憶装置がSSD123であることを判別した場合には、加速度センサへの電力の供給を禁止する。また、パーソナルコンピュータ10は、HDDプロテクションソフトウェアをインストールすることなく、処理を終了する(S405,S406)
次に、対衝撃機能を有効化または無効化するための処理についてより詳細に説明する。図5は、CPU111がシステムBIOS120を実行する時の一連の処理のフローチャートである。図6は、CPU111がオペレーションシステムおよびHDDプロテクションソフトウェアのインストールを実行する時の一連の処理のフローチャートである。
図5に示されるように、パーソナルコンピュータ10に電源が投入されると、CPU111はBIOS120からシステムBIOSを読み出して実行する。パーソナルコンピュータ10に搭載されているHDD121またはSSD123には、HDD121であるかまたはSSD123であるかを識別するためのIdentify情報(識別情報)が格納されている。CPU111は、HDD121またはSSD123からIdentify情報を読み取って、このIdentify情報に基づいてデータ記憶装置がHDD121であるかまたはSSD123であるかを判別する(S501,S502,503)。
CPU111は、パーソナルコンピュータ10に搭載されているデータ記憶装置がHDD121であることを判別した場合には、衝撃検知センサ130に電力を供給するための処理を行う(S504)。これにより、衝撃検知センサ130は、パーソナルコンピュータ10に対する衝撃を検知可能な状態となる。また、CPU111は、衝撃検知センサ130やヘッド駆動用モータなどのHDD121を保護するために用いられるデバイスのステータスを「動作可能」に設定する(S505)。
一方、CPU111は、パーソナルコンピュータ10に搭載されているデータ記憶装置がSSD123であることを判別した場合には、衝撃検知センサ130への電力供給を禁止する(S506)。これにより、衝撃検知センサ130が不要な電力を消費することがないため、バッテリからの電力供給のみでパーソナルコンピュータ10を長時間使用することができる。また、CPU111は、衝撃検知センサ130やヘッド駆動用モータなどのHDD121を保護するために用いられるデバイスのステータスを「動作不能」に設定する(S507)。
なお、CPU111がシステムBIOSを実行することによる上記の処理において、HDD121またはSSD123を判別する処理は、図3の判別処理部21に相当する。また、上記の処理において、衝撃検知センサ130の有効化または無効化する処理は、図3の対衝撃機能有効化処理部22に相当する。
本実施形態ではBIOS120を上記に説明したように構成しているため、パーソナルコンピュータ10にHDD121が搭載されているかまたはSSD123が搭載されているかに拘らず、BIOS120を共通化することを実現している。BIOS120の共通化に関して従来技術と対比して説明する。
従来技術では、HDD121を備えるパーソナルコンピュータ10に搭載されるBIOS120では、HDD121を保護するために用いられるデバイスのステータスが「動作可能」に設定されている必要がある。一方、SSD123を備えるパーソナルコンピュータ10に搭載されるBIOS120は、HDD121を保護するために用いられるデバイスのステータスが「動作不能」に設定されている必要がある。よって、従来技術では、パーソナルコンピュータ10に搭載されるデータ記録装置の種別(HDD/SSD)に応じて、パーソナルコンピュータ10に異なるBIOS120を搭載する必要がある。
これに対して、本実施形態のBIOS120は、パーソナルコンピュータ10に搭載されるデータ記録装置の種別を判別し、その判別結果に応じてHDD121を保護するために用いられるデバイスのステータスを切り換える。よって、HDD121を備えるパーソナルコンピュータ10に搭載されるBIOS120と、SSD123を備えるパーソナルコンピュータ10に搭載されるBIOS120とを共通化することができる。このようにBIOS120を共通化したことにより、パーソナルコンピュータ10の開発および製造に要するコストを低減できると共に、パーソナルコンピュータ10を製造する際におけるBIOS120の管理を容易にすることができる。
次に、CPU111がソフトウェアのインストールを実行する時の一連の処理について説明する。図6に示されるように、パーソナルコンピュータ10の製造工程が終了すると、パーソナルコンピュータ10が市場に出荷される前にソフトウェアのプレインストール処理が行われる。ここで、S601は、オペレーティングシステム(OS)をプレインストールする処理である。S602〜S605は、パーソナルコンピュータ10の一度目の再起動後に、HDDプロテクションソフトウェアをプレインストールする処理である。S606〜S610は、パーソナルコンピュータ10の二度目の再起動後の処理である。
上記に説明したBIOS120を用いてパーソナルコンピュータ10が起動されると、CPU111は、HDD121またはSSD123にオペレーティングシステムをプレインストールするためにインストールプログラムを実行する(S601)。次に、オペレーティングシステムを動作させるためにパーソナルコンピュータ10が再起動されると、CPU111は、HDD121またはSSD123にHDDプロテクションソフトウェアをプレインストールするためのインストールプログラムを実行する。
HDDプロテクションソフトウェアをプレインストールするために、CPU111は、先ず、BIOS120により設定されたステータスを読み込む(S602)。そして、CPU111は、読み込んだステータスに基づいて、HDD121を保護するために用いられるデバイスが「動作可能」であるかまたは「動作不能」であるかを判別する(S603)。ここで、CPU111は、HDD121を保護するために用いられるデバイスが「動作可能」であると判別した場合には、HDDプロテクションソフトウェアをインストールする(S604)。一方、CPU111は、HDD121を保護するために用いられるデバイスが「動作不能」であると判別した場合には、HDDプロテクションソフトウェアをインストールしない(S605)。
次に、HDDプロテクションソフトウェアを動作させるためにパーソナルコンピュータ10が再起動されると、CPU111は、HDDプロテクションソフトウェアを起動して、BIOS120により設定されたステータスを読み込む(S606,S607)。そして、CPU111は、読み込んだステータスに基づいて、HDD121を保護するために用いられるデバイスが「動作可能」であるかまたは「動作不能」であるかを判別する(S608)。ここで、CPU111は、HDD121を保護するために用いられるデバイスが「動作可能」であると判別した場合には、HDDプロテクションソフトウェアによる処理を動作可能とする(S609)。一方、CPU111は、HDD121を保護するために用いられるデバイスが「動作不能」であると判別した場合には、HDDプロテクションソフトウェアによる処理を動作不可能とする(S610)。S610は、パーソナルコンピュータ10に何らかのエラーが発生した場合に対処するための処理である。
なお、S605においてHDDプロテクションソフトウェアがインストールされなかった場合には、パーソナルコンピュータ10が再起動された後もHDDプロテクションソフトウェアは起動されないため、HDDプロテクションソフトウェアによる処理が行われることがない(S611)。
本実施形態のパーソナルコンピュータ10は、パーソナルコンピュータ10に搭載されているデータ記録装置を判別して、データ記録装置がHDD121である場合にはHDDプロテクションソフトウェアをインストールして、HDD121を保護するための対衝撃機能を有効化する。一方、パーソナルコンピュータ10は、データ記録装置がSSD123である場合にはHDDプロテクションソフトウェアをインストールせずに、HDD121を保護するための対衝撃機能を無効化する。このため、データ記録装置がSSD123である場合に、不要なHDDプロテクションソフトウェアがインストールされることを防止することができる。
また、本実施形態のパーソナルコンピュータ10では、HDDおよびSSDのためのプレインストールプログラムが共通化されていることにより、パーソナルコンピュータ10の開発および製造に要するコストを低減できると共に、パーソナルコンピュータ10を製造する際におけるプレインストールの管理を容易にすることができる。
なお、上記に説明した実施形態に係るパーソナルコンピュータ10では、HDD121が搭載されたモデルと、SSD123が搭載されたモデルを考慮してBIOS120やプレインストールプログラムが設計されたが、他の情報処理装置では、さらに別のモデルを考慮してBIOS120やプレインストール処理が設計されてもよい。例えば、パーソナルコンピュータ10にODDが搭載されるモデルとODDが搭載されないモデルがある場合には、ODDの有無を考慮してBIOS120やプレインストールプログラムが設計されてもよい。
10…パーソナルコンピュータ、11…コンピュータ本体、12…ディスプレイユニット、13…キーボード、14…パワーボタン、15…入力操作パネル、16…タッチパッド、17…LCD、18…スピーカ、21…判別処理部、22…対衝撃機能有効化処理部、111…CPU、112…ノースブリッジ、113…メモリ、114…ビデオコントローラ、115…オーディオコントローラ、119…サウスブリッジ、120…BIOS、121…HDD、122…ODD、123…SSD、124…EC/KBC、125…ネットワークコントローラ、130…衝撃検知センサ。