JP2008308604A - 非晶性樹脂組成物および樹脂フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】UVAモノマーの共重合による紫外線吸収能を有する重合体を含みながら、ガラス転移温度および紫外線吸収能が過度に低下することなく、耐熱性および色調の劣化が抑制された非晶性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ASTM−D−3418の規定に基づき測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、かつ、紫外線吸収能を有する構成単位を含む重合体(A)を85〜95重量%と、重合体(A)と相溶する、スチレン単位を含むスチレン系重合体(B)を15〜5重量%とを含む非晶性樹脂組成物とする。
【選択図】なし
【解決手段】ASTM−D−3418の規定に基づき測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、かつ、紫外線吸収能を有する構成単位を含む重合体(A)を85〜95重量%と、重合体(A)と相溶する、スチレン単位を含むスチレン系重合体(B)を15〜5重量%とを含む非晶性樹脂組成物とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐熱性透明材料として好適な非晶性樹脂組成物と、当該樹脂組成物からなる樹脂フィルムとに関する。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂は、その優れた光学的特性から、光学材料として幅広く用いられている。このようなアクリル系樹脂の一種に、分子内にラクトン環を有する樹脂がある。この樹脂は、上記環構造を分子内に有さないアクリル系樹脂に比べて、ガラス転移温度(Tg)が高いことが知られており(特許文献1参照)、例えば、光源に近接した配置が容易となるなど、実用上の様々な利点を有する。
一方、用途によっては、樹脂組成物に紫外線吸収能が要求されることがある。この場合、樹脂組成物への紫外線吸収剤(UVA)の添加により、紫外線吸収能を賦与することが一般的である。しかし、UVAは一般に低分子材料であり、樹脂組成物に対してUVAを単に添加するだけでは、組成物の成形時にUVAが揮散して紫外線吸収能が低下したり、組成物を成形体としたときにUVAのブリードアウトが生じたりすることがある。
これに対して特許文献2では、紫外線吸収能を有する単量体(UVAモノマー)の共重合により、ラクトン環、グルタルイミド、無水グルタル酸を始めとする環構造を有し、Tgが120℃以上の非晶性の樹脂に紫外線吸収能を賦与することにより、このような問題の解決を図っている。
特開2000−230016号公報
国際公開第WO2007/040182号パンフレット
UVAモノマーを共重合させると、樹脂の組成によっては、耐熱性(典型的には耐熱分解温度)が低下したり、色調が黄色みを帯びることがある。上述した、分子内に環構造を有する樹脂においても、この傾向は同様であるが、光学材料としての用途など、当該樹脂の用途によっては、UVAモノマーの共重合による紫外線吸収能を有しながらも、耐熱性が低下することなく、かつ、色調が黄色みを帯びないことが望まれる。
そこで本発明は、UVAモノマーの共重合による紫外線吸収能を有する重合体を含みながら、Tgおよび紫外線吸収能が過度に低下することなく、耐熱性および色調の劣化が抑制された非晶性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の非晶性樹脂組成物は、ASTM−D−3418の規定に基づき測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、かつ、紫外線吸収能を有する構成単位を含む重合体(A)を85〜95重量%と、重合体(A)と相溶する、スチレン単位を含むスチレン系重合体(B)を15〜5重量%と、を含む。
本発明の樹脂組成物では、上記重合体(A)、(B)を所定の含有率で含むことにより、高いTgと、UVAモノマーの共重合による紫外線吸収能の賦与とを実現しながらも、その耐熱性および色調の劣化を抑制できる。
本発明の樹脂組成物において、耐熱性および色調の劣化を抑制できる理由は明確ではないが、以下に示すような理由が推定される。
重合体(A)は、UVAモノマーに由来する、紫外線吸収能を有する構成単位(UVA単位)を含むが、このUVA単位の存在により、重合体(A)の側鎖に嵩高い紫外線吸収基が位置することになる。このため、重合体(A)の歪みは大きく、重合体(A)は、熱開裂によるラジカルを発生しやすい。ラジカルが発生すると、重合体の解重合が起こりやすくなって、樹脂組成物の耐熱性が低下し、かつ、その色調が黄色みがかかる原因となる。一方、本発明の樹脂組成物のように、スチレン由来の構成単位(スチレン単位)を含むスチレン系の重合体(B)が存在すると、発生したラジカルが重合体(B)のα水素を引き抜いて、重合体(B)にラジカルが移行する反応が起こる。スチレン系重合体(B)に移行したラジカルは安定であり、重合体(B)自身は解重合を起こさないため、樹脂組成物としての耐熱性および色調の劣化が抑制されると考えられる。
また、重合体(A)と重合体(B)とは互いに相溶であるため、本発明の樹脂組成物は透明性に優れ、本発明の樹脂組成物から、透明性、耐熱性に優れる樹脂フィルムを形成できる。
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
[重合体(A)]
重合体(A)は、ASTM−D−3418の規定に基づき測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、かつ、UVA単位を構成単位として含む。なお、本明細書におけるTgとは、示差走査熱量計(DSC)を用い、上記規定に基づき、始点法により求めた値とする。
重合体(A)は、ASTM−D−3418の規定に基づき測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、かつ、UVA単位を構成単位として含む。なお、本明細書におけるTgとは、示差走査熱量計(DSC)を用い、上記規定に基づき、始点法により求めた値とする。
重合体(A)の構造は特に限定されないが、重合体(A)は環構造を有していてもよく、例えば、ラクトン環、グルタルイミドおよび無水グルタル酸から選ばれる少なくとも1種の環構造を有していてもよい。上記少なくとも1種の環構造により、重合体(A)のTgをより確実に120℃以上とすることができる。
重合体(A)は、上記環構造としてラクトン環を有することが好ましい。重合体(A)がラクトン環を有する場合、後述するように、重合体(A)を、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位((メタ)アクリル酸エステル単位)を含むアクリル系重合体とすることができ、アクリル樹脂由来の優れた光学的特性を有する非晶性樹脂組成物を実現できる。
重合体(A)が有するラクトン環の具体的な構造は特に限定されないが、例えば、以下の式(1)に示される構造であってもよい。
上記式(1)において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基であり、当該有機残基は酸素を含んでいてもよい。
このようなラクトン環は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)との共重合体を形成した後、当該共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させることで形成できる。このとき、R1はH、R2はCH3、R3はCH3である。
式(1)における有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;であってもよい。
重合体(A)がラクトン環を有する場合、当該重合体におけるラクトン環の含有率は特に限定されないが、通常、5〜90重量%であり、10〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、10〜50重量%がさらに好ましい。上記含有率が過度に小さくなると、樹脂組成物としてのTgが低下したり、当該組成物の耐溶剤性、表面硬度が不十分となる。一方、上記含有率が過度に大きくなると、樹脂組成物としてのTgが不必要に高くなり、当該組成物の成形性、ハンドリング性が低下する。
重合体(A)が環構造として有していてもよいグルタルイミド(グルタルイミド構造)は、以下の式(2)により示される環構造である。この環構造は、一般に、グルタルイミド単位とも呼ばれ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化して形成できる。
上記式(2)において、R9、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子または式(1)における有機残基として例示した基である。
重合体(A)が環構造として有していてもよい無水グルタル酸(無水グルタル酸構造)は、以下の式(3)により示される環構造である。この環構造は、無水グルタル酸由来の環構造であるともいえ、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とを共重合した後、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
上記式(3)において、R12およびR13は、互いに独立して、水素原子または式(1)における有機残基として例示した基である。
重合体(A)が含むUVA単位の起源となるUVAモノマーは特に限定されず、例えば、重合性基を導入したベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、またはベンゾフェノン誘導体を用いてもよい。導入する重合性基は適宜選択でき、ラクトン環を有する重合体(A)とする場合、例えば、後述する式(9)により示される単量体と重合可能な基であればよい。
UVAモノマーの具体例としては、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ〕エチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(商品名RUVA−93、大塚化学社製)、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ〕フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−プチル−5’−メタクリロイルオキシ〕フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、が挙げられる。
UVAモノマーの上記とは別の具体例としては、以下の式(4)、(5)、(6)により示されるトリアジン誘導体(それぞれ、UVA−2、UVA−3、UVA−4とする)、あるいは、以下の式(7)により示されるベンゾトリアゾール誘導体(UVA−5とする)も挙げられる。
これらのなかでも、ベンゾトリアゾール誘導体およびトリアジン誘導体がUVAモノマーとして好ましく、商品名RUVA93として販売されているUVAモノマー、またはUVA−2、UVA−3、UVA−4、UVA−5が、重合体(A)の全構成単位に占めるUVA単位の割合が少ない場合でも高い紫外線吸収能を発現できることから、特に好ましい。
上記割合を少なくすることができれば、重合体(A)におけるUVA単位以外の構成単位に基づく特性、例えば光学的特性、がより確実に得られる他、UVA単位の存在によるラジカルの発生量を低減でき、本発明の樹脂組成物における耐熱性および色調の劣化をさらに抑制できる。
重合体(A)におけるUVA単位の含有率は、通常、15重量%以下であり、1〜10重量%が好ましく、2〜7重量%がより好ましく、3〜5重量%がさらに好ましい。上記含有率がこの範囲であれば、樹脂組成物として十分な紫外線吸収能を得ることができ、また、ラジカルの発生量が過度に大きくなることがないため、本発明の樹脂組成物における耐熱性および色調の劣化を効果的に抑制できる。
重合体(A)は、UVA単位以外の任意の構成単位を含んでいてもよく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を含む各種の単量体、不飽和カルボン酸、および、以下の式(8)により示される単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
上記式(8)において、R4は水素原子またはメチル基であり、Xは、水素原子、炭素数1〜20の範囲のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−C−O−R6基であり、ここで、Acはアセチル基、R5およびR6は、水素原子または式(1)と同様の有機残基である。
[重合体(B)]
重合体(B)は、スチレンモノマーに由来する構成単位(スチレン単位)を含むスチレン系重合体、例えば、スチレンと他の単量体との共重合体であり、重合体(A)と相容性を有する。
重合体(B)は、スチレンモノマーに由来する構成単位(スチレン単位)を含むスチレン系重合体、例えば、スチレンと他の単量体との共重合体であり、重合体(A)と相容性を有する。
重合体(B)の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などであってもよく、特に、ラクトン環を有する重合体(A)との相容性に優れることから、アクリロニトリル−スチレン共重合体が好ましい。
なお、重合体(B)が、重合体(A)と相容性を有するか否かは、両者を混合して得た樹脂組成物のTgを上記方法によって測定することにより確認できる。具体的には、当該組成物のTgが1点のみ確認されれば、重合体(B)は重合体(A)と相容性を有しているといえる。
重合体(B)が、アクリロニトリル−スチレン共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、60〜80重量%程度の範囲であればよい。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、重合体(A)85〜95重量%と、重合体(B)15〜5重量(%)とを含む。本発明の樹脂組成物における重合体(B)の含有率が上記範囲よりも小さい場合、樹脂組成物としての耐熱性および色調の劣化を抑制する効果が十分に得られない。一方、本発明の樹脂組成物における重合体(B)の含有率が上記範囲よりも大きい場合、樹脂組成物のTgが大きく低下する。
本発明の樹脂組成物は、重合体(A)85〜95重量%と、重合体(B)15〜5重量(%)とを含む。本発明の樹脂組成物における重合体(B)の含有率が上記範囲よりも小さい場合、樹脂組成物としての耐熱性および色調の劣化を抑制する効果が十分に得られない。一方、本発明の樹脂組成物における重合体(B)の含有率が上記範囲よりも大きい場合、樹脂組成物のTgが大きく低下する。
本発明の樹脂組成物における重合体(A)の含有率は、90〜95重量%が好ましく、重合体(B)の含有率は、10〜5重量%が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、重合体(A)に基づく高いTgを有し、例えば、その値を120℃以上とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、重合体(A)が含むUVA単位に基づく紫外線吸収能を有し、例えば、厚さ100μmのフィルムとしたときに、波長380nmの光に対する透過率を30%未満、場合によっては26%以下、さらには24%以下とすることができる。この透過率は、JIS K7361:1997の規定に基づいて測定すればよい。厚さ100μmのフィルムを得ることが難しい場合などには、例えば、樹脂組成物を適当な溶媒に溶解し、得られた溶液を石英セルに収容して、厚さ100μmのフィルムを光が透過するときに相当する光路長を確保することにより、測定してもよい。光路長は、溶液濃度および/または石英セルの容積を変化させることにより、調整できる。
本発明の樹脂組成物は、重合体(A)と重合体(B)との相溶性に基づく、高い可視光透過率を有し、例えば、厚さ100μmのフィルムとしたときに、波長500nmの光に対する透過率を80%以上、場合によっては85%以上、さらには95%以上とすることができる。この透過率は、上述した波長380nmの光に対する透過率と同様に測定できる。
本発明の樹脂組成物は、高い耐熱性(特に耐熱分解特性)を有し、例えば、成形時における、熱分解に伴う発泡を抑制できる。
本発明の樹脂組成物は、優れた色調を有し、例えば、JIS K7103の規定に基づき測定した、濃度15重量%のクロロホルム溶液としたときの黄色度(YI)を15以下、場合によっては13以下、さらには11以下とすることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、重合体(A)単独の場合よりも、その成形性に優れる。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じ、重合体(A)、(B)以外の任意の材料を含んでいてもよく、例えば、重合体(A)および(B)以外の重合体、あるいは、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、フィラー、繊維、着色剤、可塑剤、滑剤、耐電防止剤、難燃剤などが挙げられる。本発明の樹脂組成物が添加剤を含む場合、当該組成物における添加剤の含有率は、5重量%以下が好ましく、2重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。酸化防止剤を含むことは特に好ましい形態であり、酸化防止剤としては、同一分子内にアクリレート基とフェノール性OH基とを有する構造のものが好ましい。このような構造を有する酸化防止剤には、一例としてスミライザーGS(住友化学工業社製)があり、その添加量は、例えば、0.01〜2重量%である。
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、上記本発明の樹脂組成物からなる。本発明の樹脂フィルムは、上述した本発明の樹脂組成物が有する特性に基づく、各種の特性を有する。例えば、本発明の樹脂フィルムは、紫外線吸収能を有し、透明度が高く、色調に優れる(黄色みが少ない)。また例えば、表面の硬度、耐溶剤性に優れる他、その高いTgにより、光学材料として用いる場合に、光源に近接して配置することができる。
本発明の樹脂フィルムは、上記本発明の樹脂組成物からなる。本発明の樹脂フィルムは、上述した本発明の樹脂組成物が有する特性に基づく、各種の特性を有する。例えば、本発明の樹脂フィルムは、紫外線吸収能を有し、透明度が高く、色調に優れる(黄色みが少ない)。また例えば、表面の硬度、耐溶剤性に優れる他、その高いTgにより、光学材料として用いる場合に、光源に近接して配置することができる。
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、例えば、重合体(A)と重合体(B)とを、溶融混練などの公知の方法により混合して製造できる。必要に応じて、ペレタイザーなどによりペレット化してもよい。
本発明の樹脂組成物は、例えば、重合体(A)と重合体(B)とを、溶融混練などの公知の方法により混合して製造できる。必要に応じて、ペレタイザーなどによりペレット化してもよい。
重合体(A)は、公知の方法により製造できる。
重合体(A)がラクトン環を有する重合体である場合、当該重合体の製造方法は特に限定されないが、例えば、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得た後に、得られた重合体(a)を加熱処理して、脱アルコールを伴うラクトン環化縮合を行う方法により製造できる。
重合体(a)は、例えば、以下の式(9)により示される単量体と、上述したUVAモノマーとを含む単量体群の重合反応により形成できる。
上記式(9)において、R7およびR8は、互いに独立して、水素原子または式(1)における有機残基と同様の基である。
式(9)により示される単量体の具体的な例としては、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。これらのなかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、ラクトン環を形成した際に、より高いTgが得られることから、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)が特に好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上記式(9)により示される単量体を2種以上含んでいてもよい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上記式(9)により示される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。このような単量体は、式(9)により示される単量体およびUVAモノマーと共重合できる単量体である限り特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、式(9)により示される単量体以外の単量体であって、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられる。これらのなかでも、優れた耐熱性、透明性を有する樹脂組成物が得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が特に好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群における、上述した各単量体の含有率の好ましい範囲は以下の通りである。
上記式(9)により示される単量体について、5〜90重量%の範囲が好ましく、10〜70重量%の範囲がより好ましく、10〜60重量%の範囲、10〜50重量%の範囲の順にさらに好ましい。上記含有率が過度に小さいと、形成されるラクトン環の量が少なくなり、最終的に得られた樹脂組成物のTg、耐溶剤性、表面硬度などが不十分となることがある。一方、上記含有率が過度に大きくなると、重合体(A)の製造時に、環化縮合反応以外に不必要なゲル化反応が進行し、最終的に得られた樹脂組成物の成形性が低下することがある。
(メタ)アクリル酸エステル(上記式(9)により示される単量体を除く)について、10〜95重量%の範囲が好ましく、10〜90重量%の範囲がより好ましく、40〜90重量%の範囲、50〜90重量%の範囲の順にさらに好ましい。
UVAモノマーについて、15〜0.1重量%の範囲が好ましく、10〜1重量%の範囲がより好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上述した単量体の他に、水酸基を含む各種の単量体、不飽和カルボン酸、以下の式(10)により示される単量体などを含んでいてもよい。
上記式(10)において、R4は水素原子またはメチル基であり、Xは、水素原子、炭素数1〜20の範囲のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−C−O−R6基であり、ここで、Acはアセチル基、R5およびR6は、水素原子または式(1)と同様の有機残基である。
ここで、水酸基を含む各種の単量体としては、式(9)により示される単量体以外の単量体であって、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸およびメタクリル酸が特に好ましい。
式(10)により示される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群が、これらの単量体を含む場合、当該単量体群におけるこれらの単量体の含有率は、その合計で、0〜30重量%の範囲が好ましく、0〜20重量%の範囲がより好ましく、0〜15重量%の範囲、0〜10重量%の範囲の順にさらに好ましい。
重合体(a)を形成する具体的な重合方法、ならびに、形成した重合体(a)をラクトン環化重合する具体的な方法は、例えば、特許文献1(特開2006−171464号公報)、または特許文献2(国際公開WO2007/040182号パンフレット)に開示の方法に従えばよい。
重合体(B)は、公知の方法により製造できる。
重合体(B)がアクリロニトリル−スチレン共重合体である場合、当該共重合体は、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、バルク重合法などの各種の重合方法により製造が可能であるが、得られる樹脂組成物の光学的特性をより向上できることから、溶液重合法またはバルク重合法により製造することが好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、例えば、本発明の樹脂組成物を押出成形することで製造でき、その方法は公知の方法に従えばよい。このとき、本発明の樹脂組成物、典型的には、本発明の樹脂組成物のペレット、を押出成形してもよいし、重合体(A)と重合体(B)とを押出機、あるいは混練機内において混合しながら、あるいは混合した後に、得られた混合物を押出成形してもよい。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
最初に、本実施例において作製した各樹脂組成物サンプルの評価方法を示す。
[色調]
サンプルの色調は、JIS K7103に規定する黄色度(YI)により評価した。YIは、サンプルをクロロホルムに濃度15重量%となるように溶解し、得られた溶液を石英セルに収容した後、JIS K7103の規定に従い、色差計(日本電色工業社製、SZ−Σ90)を用いて透過光により評価した。
サンプルの色調は、JIS K7103に規定する黄色度(YI)により評価した。YIは、サンプルをクロロホルムに濃度15重量%となるように溶解し、得られた溶液を石英セルに収容した後、JIS K7103の規定に従い、色差計(日本電色工業社製、SZ−Σ90)を用いて透過光により評価した。
[耐熱性]
サンプルの耐熱性は、サンプルの熱分解温度、および成形時の発泡量を測定することにより評価した。
サンプルの耐熱性は、サンプルの熱分解温度、および成形時の発泡量を測定することにより評価した。
熱分解温度は、JIS K7120の規定に従い、示差熱重量同時測定装置(島津製作所社製、DTG−50)を用いて、昇温速度10℃/分、流入ガスである窒素フロー50mL/分の条件で測定した。
成形時の発泡量は、サンプルを乾燥処理した後、JIS K7210に規定のシリンダ内に装填し、260℃で20分間保持した後にストランド状に押出し、得られたストランドの上部標線と下部標線との間に存在する泡の個数を目視により計測し、成形体1gあたりの個数に換算して評価した。
[Tg]
サンプルのガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418の規定に従い、示差走査熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用いて、サンプル質量が約10mg、昇温速度10℃/分、流入ガスである窒素フロー50mL/分の条件で、始点法により評価した。
サンプルのガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418の規定に従い、示差走査熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用いて、サンプル質量が約10mg、昇温速度10℃/分、流入ガスである窒素フロー50mL/分の条件で、始点法により評価した。
[紫外線吸収能]
サンプルの紫外線吸収能は、波長380nmの光に対する透過率により評価した。当該透過率は、サンプルをクロロホルムに濃度1重量%となるように溶解し、得られた溶液を石英セルに収容した後、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて評価した。このとき、光が溶液を通過する光路長を、厚さ100μmのフィルムを光が透過するときとほぼ同一となるように、石英セルの容積を調整した。
サンプルの紫外線吸収能は、波長380nmの光に対する透過率により評価した。当該透過率は、サンプルをクロロホルムに濃度1重量%となるように溶解し、得られた溶液を石英セルに収容した後、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて評価した。このとき、光が溶液を通過する光路長を、厚さ100μmのフィルムを光が透過するときとほぼ同一となるように、石英セルの容積を調整した。
[成形性]
サンプルの成形性は、MFR(メルトフローレート)により評価した。MFRは、JIS K7210の規定に基づき、試験温度240℃、荷重10kgとして評価した。
サンプルの成形性は、MFR(メルトフローレート)により評価した。MFRは、JIS K7210の規定に基づき、試験温度240℃、荷重10kgとして評価した。
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した容積30Lの反応釜に、39重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、7.5重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、UVAモノマーとして3.5重量部のRUVA−93(大塚化学社製)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、0.10重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間かけて熟成を行った。
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した容積30Lの反応釜に、39重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、7.5重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、UVAモノマーとして3.5重量部のRUVA−93(大塚化学社製)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、0.10重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間かけて熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として0.05重量部のリン酸ステアリル(堺化学社製、商品名Phoslex A−18)を加え、約90〜110℃の還流下で5時間、環化縮合反応を進行させた後、オートクレーブにより加熱して(240℃、30分間)、環化縮合反応の反応率を増大させた。
次に、上記のようにして得た重合溶液を、バレル温度260℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、重合溶媒などの揮発成分を脱揮させた。脱揮に際しては、別途準備していた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を、第1ベントの後から、高圧ポンプにより0.02kg/時間の投入速度で押出機内に投入した。また、脱揮の効率を向上させるために、第3ベントの後から、イオン交換水を高圧ポンプにより0.01kg/時間の投入速度で押出機内に投入した。
なお、酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液は、酸化防止剤として住友化学社製スミライザーGSを40重量部と、失活剤としてオクチル酸亜鉛(日本化学産業社製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)17.5重量部とを、トルエン200重量部に溶解して別途調製したものを用いた。
上記脱揮後、二軸押出機から内容物をストランド状に押出し、ウォーターバスを介した冷却の後、ペレタイザーによりペレット化して、式(1)に示すラクトン環構造(ただし、R1はH、R2はCH3、R3はCH3)を有し、UVAモノマーであるRUVA−93に由来する構成単位と、MMAに由来する構成単位とを含む重合体(A)のペレットを得た。重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、124.4℃であった。
このようにして得たペレット95重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体ペレット(旭化成ケミカルズ社製、スタイテックAS783)5重量部とをドライブレンドした後、20mmφのスクリューを有する二軸押出機を用いて、バレル温度260℃において溶融混練した。
次に、混練によって得られた樹脂組成物を、二軸押出機からストランド状に押出し、ウォーターバスを介した冷却の後、ペレタイザーによりペレット化して、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
(実施例2)
重合体(A)のペレット90重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレット10重量部とを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
重合体(A)のペレット90重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレット10重量部とを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
(比較例1)
アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレットを加えることなく、重合体(A)のペレットのみを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレットを加えることなく、重合体(A)のペレットのみを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
(比較例2)
重合体(A)のペレット99重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレット1重量部とを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
重合体(A)のペレット99重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレット1重量部とを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
(比較例3)
重合体(A)のペレット80重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレット20重量部とを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
重合体(A)のペレット80重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体のペレット20重量部とを溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物サンプルを得た。
実施例1、2および比較例1〜3の各サンプルに対して、上記特性を評価した結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、比較例1、2では、成形時の発泡量が1個/g以上であったが、実施例1、2では、発泡量を0.5個/g以下に抑制できた。また、比較例1、2では、YIの値が17以上であったが、実施例1、2では、YIをおよそ12以下に抑制できた。熱分解温度に関しても、実施例1、2では、比較例1、2に比べて5℃程度向上できた。
一方、比較例3は、成形時の発泡量およびYIの値は良好であったが、Tgが120℃未満となり、また、波長380nmの光に対する透過率が30%を超え、その紫外線吸収能が実施例1、2に比べて低下した。
本発明によれば、高いガラス転移温度および紫外線吸収能を有しながら、耐熱性および色調の劣化が抑制された非晶性樹脂組成物を提供できる。この樹脂組成物からは、上記特性を有する樹脂フィルムを得ることができ、当該フィルムは、特に光学部材としての用途に好適に用いることができる。
Claims (9)
- ASTM−D−3418の規定に基づき測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、かつ、紫外線吸収能を有する構成単位を含む重合体(A)を85〜95重量%と、
重合体(A)と相溶する、スチレン単位を含むスチレン系重合体(B)を15〜5重量%と、を含む非晶性樹脂組成物。 - 前記重合体(A)が、ラクトン環、グルタルイミドおよび無水グルタル酸から選ばれる少なくとも1種の環構造を有する請求項1に記載の非晶性樹脂組成物。
- 前記重合体(A)が、ラクトン環を有する請求項1に記載の非晶性樹脂組成物。
- 前記重合体(A)における前記紫外線吸収能を有する構成単位の含有率が、15重量%以下である請求項1に記載の非晶性樹脂組成物。
- 前記重合体(B)が、アクリロニトリル−スチレン共重合体である請求項1に記載の非晶性樹脂組成物。
- 前記重合体(A)を90〜95重量%と、前記重合体(B)を10〜5重量%と、を含む請求項1に記載の非晶性樹脂組成物。
- JIS K7103に規定に基づき測定した、濃度15重量%のクロロホルム溶液としたときの黄色度(YI)が、15以下である請求項1に記載の非晶性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の非晶性樹脂組成物からなる樹脂フィルム。
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JP2007158656A JP2008308604A (ja) | 2007-06-15 | 2007-06-15 | 非晶性樹脂組成物および樹脂フィルム |
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JP2013075983A (ja) * | 2011-09-30 | 2013-04-25 | Nippon Shokubai Co Ltd | アクリル樹脂組成物の製造方法およびアクリル樹脂組成物 |
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2007
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