JP2013075983A - アクリル樹脂組成物の製造方法およびアクリル樹脂組成物 - Google Patents

アクリル樹脂組成物の製造方法およびアクリル樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物の長時間連続生産を可能とする方法を提供する。
【解決手段】上記アクリル樹脂組成物の製造方法であって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行う環化工程と、触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量の塩基性物質または酸性物質によって触媒を中和する中和工程と、を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル樹脂組成物の製造方法およびアクリル樹脂組成物に関する。具体的には、触媒を中和する酸性物質または塩基性物質の使用量を、触媒の金属塩の粒子が成長しない量に調整することによって、ポリマーフィルタによりろ過を行う場合の圧力損失の増加を大幅に抑制することができるアクリル樹脂組成物の新規な製造方法およびアクリル樹脂組成物に関する。
透明性と耐熱性とを兼ね備えたアクリル樹脂として、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂が知られている。該アクリル樹脂は、主鎖に環構造を有さないアクリル樹脂に比べてガラス転移温度(Tg)が高いため、高い成形温度を必要とする。
一方、アクリル樹脂は、紫外線を含む光に曝されると、黄変して透明度が低下することがあり、これを防止する方法として紫外線吸収剤を添加する方法が知られている。よって主鎖に環構造を有するアクリル樹脂についても紫外線吸収剤を添加することが好ましいが、該アクリル樹脂は上述のように成形温度が高いため、紫外線吸収剤を添加すると発泡やブリードアウト等が生じやすいという問題があった。
この問題を解決するために、熱可塑性アクリル樹脂と分子量が700以上の紫外線吸収剤とを含み、Tgが110℃以上である熱可塑性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
特許文献1において、該樹脂組成物は、環化触媒(リン酸2−エチルヘキシル)を用いて重合体の環化縮合反応を行うことにより、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得た後、上記環化触媒の使用量に対して1モル当量である塩基性物質(オクチル酸亜鉛)を使用して上記環化触媒を中和する工程を含む方法によって製造されている。
また、特許文献1には、樹脂組成物中に存在する異物を除去し、フィルムの外観を改善するために樹脂組成物をポリマーフィルタによってろ過してもよい旨が記載されている。
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の製造に用いる環化触媒を中和する方法としては、その他に、有機酸である環化触媒を典型金属元素の金属塩等を用いて中和する方法が開示されている(特許文献2)。
特開2009−052021号公報(2009年3月12日公開) 特開2007−262396号公報(2007年3月12日公開)
しかしながら、本発明者は、上記環化触媒の使用量に対して1モル当量である塩基性物質を用いる特許文献1に記載の方法によって熱可塑性樹脂組成物を生産すると、短時間の生産では問題がないものの、長時間連続的に生産を行った場合、樹脂組成物中に粒子状異物が増加することを見出した。これは、紫外線吸収剤が、環化触媒と塩基性物質との反応によって生じる塩の結晶成長を促進することによると推測された。
そして、本発明者は、上記粒子状異物がポリマーフィルタを詰まらせる結果、圧力損失が大きくなり、連続生産可能な時間が短くなるという問題が生じることを初めて見出した。
また、本発明者は、上記塩の結晶成長は、樹脂組成物が紫外線吸収剤を含まない場合には生じず、その場合にはポリマーフィルタにおける圧力損失が大きくなることはないことも見出した。一方、特許文献2には、そもそも紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物が開示されておらず、ポリマーフィルタの使用についても言及されていない。そのため、特許文献2に記載の方法では、上記問題を解決することはできない。
このように、本発明は、本発明者が、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と紫外線吸収剤とを含有する熱可塑性アクリル樹脂を従来公知の方法に従って製造すると長時間の連続生産ができなくなるという新たな課題を見出したことに基づいてなされたものであり、その主たる目的は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物の所望の特性を維持しつつ、触媒と、塩基性物質または酸性物質との反応(以下、「中和反応」ともいう)によって生じる塩の結晶成長を防止し、上記アクリル樹脂組成物の長時間連続生産を可能とする方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物の製造方法であって、触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成して、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得る環化工程と、上記触媒として酸性物質を用いた場合は塩基性物質によって触媒を中和し、上記触媒として塩基性物質を用いた場合は酸性物質によって触媒を中和する中和工程と、を含み、上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量は、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量であることを特徴としている。
上記構成によれば、上記塩基性物質または酸性物質の上記触媒に対する使用量が適正化されているため、上記塩基性物質または酸性物質が上記触媒を中和する効果を維持し、アクリル樹脂組成物の耐熱性を保った上で、中和反応で生じる塩の結晶の成長を防ぎ、粒子状異物の形成を抑えることができる。
したがって、得られたアクリル樹脂組成物をろ過する際、ポリマーフィルタにおける圧力損失を抑制することができるため、上記アクリル樹脂組成物の長時間連続生産を可能とすることができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法では、上記紫外線吸収剤の分子量が600以上であることが好ましい。
上記構成によれば、高温での成形時においても、発泡、ブリードアウトなどの発生が抑制され、紫外線吸収剤の蒸散による問題の発生を低減できる。しかも、上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の上記触媒に対する使用量が適正化されているため、上記アクリル樹脂組成物をより安定的に長時間、連続生産することができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法では、上記紫外線吸収剤が、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物であることが好ましい。
上記化合物は、ブリードアウトを起こしにくく、かつ、上記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体との相溶性が良好である。したがって、上記アクリル樹脂組成物をより安定的に長時間、連続生産することができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法では、上記アクリル樹脂組成物は、上記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を50重量%以上100重量%未満含有することが好ましい。
上記構成によれば、上記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の含有量が、透明性と耐熱性とを兼ね備えるという、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の特徴をアクリル樹脂組成物にも十分付与できる含有量となっている。したがって、優れた透明性や耐熱性に加えて、機械的強度、成形加工性などの所望の特性を有する上記アクリル樹脂組成物を提供することができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法では、上記アクリル樹脂組成物は、上記紫外線吸収剤を0.01重量%以上5重量%以下含有することが好ましい。
上記構成によれば、上記アクリル樹脂組成物が適量の紫外線吸収剤を含有しているため、黄変を防止し、透明度が保たれた上記アクリル樹脂組成物を提供することができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法では、上記アクリル樹脂組成物は、上記アクリル樹脂組成物の15%クロロホルム溶液をASTM E313によって測定した黄色度(YI)が0以上15以下であることが好ましい。
上記方法は、上述のように、触媒の中和による効果(耐熱性の維持、環化触媒に起因する発泡の防止)を維持しながら、中和反応において紫外線吸収剤に起因する塩の結晶成長を防ぐことができる。
このように、上記アクリル樹脂組成物中に含まれる紫外線吸収剤は、上記塩の結晶成長に用いられることがない。そのため、上記紫外線吸収剤が黄変(透明度低下)の防止という本来の役割を十分に果たすことができる結果、得られるアクリル樹脂組成物の黄色度が上記構成のように低く抑制されたものとなると考えられる。したがって、上記構成によれば、透明度の高い光学フィルム等を提供することができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法では、上記中和工程を経たアクリル樹脂組成物を、ポリマーフィルタを用いてろ過するろ過工程を有することが好ましい。
上記方法によれば、中和反応における塩の結晶成長が顕著に抑制されるため、上記中和工程を経たアクリル樹脂組成物を、ポリマーフィルタを用いてろ過することによって、外観上の欠点が極めて少ないアクリル樹脂組成物を、安定的に、長時間連続して生産することができる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有する熱可塑性アクリル酸樹脂組成物であって、上記アクリル樹脂組成物の15%クロロホルム溶液をASTM E313によって測定した黄色度(YI)が0以上15以下であることを特徴としている。
上記構成によれば、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体に基づく高い耐熱性、機械的強度および成形加工性などの特性を有し、かつ、極めて低い黄色度を有することができる。それゆえ、光学フィルム等の材料として極めて有用な材料を提供することができる。
本発明は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物の製造方法であって、触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成して、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得る環化工程と、上記触媒として酸性物質を用いた場合は塩基性物質によって触媒を中和し、上記触媒として塩基性物質を用いた場合は酸性物質によって触媒を中和する中和工程と、を含み、上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量は、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量であるという構成である。
それゆえ、得られたアクリル樹脂組成物をろ過する際、ポリマーフィルタにおける圧力損失を抑制することができるため、上記アクリル樹脂組成物を長時間連続生産することができるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、なお、本明細書において、「A〜B」なる記載は、A以上B以下であることを意味する。
〔1.アクリル樹脂組成物の製造方法〕
(a.主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の構造等)
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物の製造方法であって、触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成して、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得る環化工程と、上記触媒として酸性物質を用いた場合は塩基性物質によって触媒を中和し、上記触媒として塩基性物質を用いた場合は酸性物質によって触媒を中和する中和工程と、を含み、上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量は、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量である。
また、上記製造方法は、上記アクリル系重合体を得るための重合工程、環化工程で副生するアルコールを脱揮する脱揮工程、中和工程で得られる樹脂組成物をポリマーフィルタでろ過処理するろ過工程などを含んでいてもよい。
本明細書において「アクリル系重合体」とは、主鎖に(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」と称する)を有する重合体をいい、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」とは、主鎖に(メタ)アクリル酸エステル単位と、環構造とを含む重合体をいう。
環構造とは、(メタ)アクリル酸エステル単位の分子鎖内にある水酸基またはカルボキシル基と、同じく分子鎖内にあるエステル基との間に脱アルコール環化縮合反応(以下、環化反応ともいう)を進行させることによって形成される構造をいう。環構造としては、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド構造、無水マレイン酸構造などを挙げることができる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率と、環構造の含有率との合計は、主鎖中に好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上である。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」における環構造(ラクトン環構造を除く)の含有率は特に限定されないが、例えば5〜90重量%であり、10〜70重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましく、10〜50重量%であることがさらに好ましい。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」が主鎖にラクトン環構造を有する場合、当該重合体におけるラクトン環構造の含有率は特に限定されないが、例えば5〜90重量%であり、以下、20〜90重量%、30〜90重量%、35〜90重量%、40〜80重量%、45〜75重量%の順により好ましくなる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」における環構造の含有率が過度に小さくなると、樹脂組成物ならびに当該組成物を成形して得た樹脂成形品の耐熱性が低下したり、耐溶剤性および表面硬度が不十分となることがある。一方、上記含有率が過度に大きくなると、樹脂組成物の成形性、ハンドリング性が低下することがある。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペン
タニル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(
メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸
2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの単量体に由来する構成単位である。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、(メタ)アクリル酸エステル単位を2種類以上含有していてもよい。また、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、(メタ)アクリル酸メチルを含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸メチルを含有することにより、本発明にかかる製造方法によって得られるアクリル樹脂組成物、および当該組成物を成形して得た樹脂成形品の熱安定性を向上させることができる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位をも含有していてもよい。当該構成単位としては、水酸基を含有する単量体に由来する構成単位、カルボン酸基を含有する単量体に由来する構成単位などを挙げることができる。本発明にかかる製造方法では、環化反応によって主鎖に環構造を導入するため、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」を重合する際に、上記単量体を共重合することが好ましい。
水酸基を含有する単量体としては、例えば2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等を挙げることができる。
カルボン酸基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸等の単量体を挙げることができる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」には、これらの単量体が2種類以上共重合されていてもよい。水酸基を含有する単量体およびカルボン酸基を含有する単量体は、環化反応によって環構造へと変化するが、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」には、水酸基を含有する未反応の単量体由来の構成単位および/またはカルボン酸基を含有する未反応の単量体由来の構成単位が含まれていてもよい。
また、「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」には、その他の構成単位が含有されていてもよい。該その他の構成単位としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどの単量体に由来する構成単位を挙げることができる。上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、該その他の構成単位を2種以上含有していてもよい。
上記「環構造」について、その種類は特に限定されるものではない。例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」および本発明にかかる製造方法によって製造されるアクリル樹脂組成物のTgをより向上させることができるため、上記環構造は、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造およびラクトン環構造から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
以下の式(1)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。
Figure 2013075983
上記式(1)におけるRおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは、酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子のときRは存在せず、Xが窒素原子のとき、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
が窒素原子のとき、式(1)により示される環構造はグルタルイミド構造となる。
グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤を用いてイミド化することによって形成できる。
が酸素原子のとき、式(1)により示される環構造は無水グルタル酸構造となる。
無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させることによって形成できる。
以下の式(2)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。
Figure 2013075983
上記式(2)におけるRおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは、酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子のときRは存在せず、Xが窒素原子のとき、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
が窒素原子のとき、式(2)により示される環構造はN−置換マレイミド構造となる。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、N−置換マレイミ
ドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
が酸素原子のとき、式(2)により示される環構造は無水マレイン酸構造となる。
無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)
アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
なお、式(1)、(2)の説明において例示した、環構造を形成する各方法では、各々
の環構造の形成に用いる重合体が全て(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有するため、当該方法により得た樹脂はアクリル樹脂となる。
上記環構造としては、環構造内に窒素原子を含まないため着色(黄変)が生じにくく、樹脂成形品としたときの光学特性に優れるため、ラクトン環構造であることがより好ましい。すなわち、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル系重合体であることがより好ましい。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば4〜8員環であってもよいが、環構造としての安定性に優れるため、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
6員環であるラクトン環構造は、例えば、
Figure 2013075983
上記式(3)において、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
上記式(3)における有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位以外の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、などの単量体に由来する構成単位である。上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、紫外線吸収能を有する構成単位(UVA単位)を有していてもよい。この場合、樹脂組成物ならびに当該組成物を成形して得た樹脂成形品の紫外線吸収能がさらに向上する。また、UVA単位の構造によっては、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と、上記紫外線吸収剤との相容性が向上する。
UVA単位の起源となる単量体は特に限定されず、例えば、重合性基を導入したベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体またはベンゾフェノン誘導体である。導入する重合性基は、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」が有する構成単位に応じて、適宜選択できる。
上記単量体の具体例は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ)エチルフェニル−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学製、商品名RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ)フェニル−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メタクリロイルオキシ)フェニル−2H−ベンゾトリアゾールである。
上記単量体のその他の具体例としては、以下の式(4)、(5)、(6)により示されるトリアジン誘導体、あるいは以下の式(7)により示されるベンゾトリアゾール誘導体を挙げることができる。
Figure 2013075983
Figure 2013075983
Figure 2013075983
Figure 2013075983
紫外線吸収能が高いことから、上記単量体としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ)エチルフェニル−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。高い紫外線吸収能を有するUVA単位によれば、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」におけるUVA単位の含有率が低い場合においても所望の紫外線吸収効果が得られる。
すなわち、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」がUVA単位を含む場合においても、UVA単位以外の構成単位の含有率を相対的に大きくでき、光学部材などの様々な用途に好適な特性(例えば熱可塑性、耐熱性)を有する樹脂組成物が得やすくなる。
また、UVA単位の含有率が大きくなると樹脂組成物の成形時に着色が生じやすくなるため、高い紫外線吸収能を有するUVA単位によれば、最終的に得られる樹脂成形品の着色を抑制でき、当該成形品は光学部材の用途に好適となる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」がUVA単位を含む場合、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」における当該単位の含有率は20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。上記含有率が20重量%を超えると、樹脂組成物としての耐熱性が低下する。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」の重量平均分子量は、例えば1,000〜300,000の範囲であり、5,000〜250,000の範囲が好ましく、10,000〜200,000の範囲がより好ましく、50,000〜200,000の範囲がさらに好ましい。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成して、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得る環化工程によって得ることができる。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は、触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成する工程(環化工程)によって得ることができる。
上記アクリル系重合体は、分子鎖内に有する水酸基とエステル基との間の環化縮合反応によってラクトン環構造を形成することができる。
以下、ラクトン環構造形成の原料となる上記アクリル系重合体について説明する。上記アクリル系重合体は、下記式(8)で示されるビニル単量体の重合体であることが好ましい。
Figure 2013075983
式(8)において、R10,R11は互いに独立して、水素原子または式(3)における有機残基として例示した基である。
式(8)により示される単量体の具体例としては、2−(ヒドロキシメチル)アクリル
酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アク
リル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒド
ロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、ラクトン環の形成による耐熱性向上効果が高いことから、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)が特に好ましい。上記アクリル系重合体は、2種以上のこれらの単量体を共重合させた重合体であってもよい。
上記アクリル系重合体は、上記式(8)により示される単量体と、エステル基を有する単量体(式(8)により示される単量体を除く)との共重合体であってもよい。
エステル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、式(8)により示される単量体以外の単量体であって、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられる。
これらの中でも、環化縮合反応によって、優れた耐熱性、透明性を有する樹脂が得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が特に好ましい。
上記アクリル系重合体が、上記式(8)により示される単量体と、上記エステル基を有する単量体との共重合体である場合、当該アクリル系重合体を得るための単量体群における、各単量体の含有率の好ましい範囲は以下のとおりである。
すなわち、上記式(8)により示される単量体の含有率については、5〜90重量%の範囲が好ましく、10〜70重量%の範囲がより好ましく、10〜60重量%の範囲、10〜50重量%の範囲の順にさらに好ましい。
上記含有率が5重量%未満であると、上記アクリル系重合体を環化縮合反応させたときに形成されるラクトン環の量が少なくなり、得られた樹脂の耐熱性、耐溶剤性、表面
硬度などが不十分となることがある。
一方、上記含有率が90重量%を超えると、上記アクリル系重合体を環化縮合反応させる際に、ゲルが生じ、得られた樹脂の透明性および成形性が低下することがある。
上記アクリル系重合体は、上記例示した各単量体と、その他の単量体、例えば水酸基を含む各種の単量体、不飽和カルボン酸、以下の式(9)により示される単量体など、との共重合体であってもよい。
Figure 2013075983
上記式(9)において、R12は水素原子またはメチル基であり、Xは、水素原子、炭素数1〜20の範囲のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R13基、または−C−O−R14基であり、ここで、Acはアセチル基、R13およびR14は、水素原子または式(3)における有機残基として例示した基である。
ここで、水酸基を含む各種の単量体としては、式(8)により示される単量体以外の単
量体であって、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン
、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリ
ル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)
アクリル酸;などが挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置
換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸
およびメタクリル酸が特に好ましい。
式(9)により示される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メ
チルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビ
ニルなどが挙げられる。これらの中でも本発明の効果を発揮させる上で、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記アクリル系重合体が、上記例示した単量体と、上記その他の単量体との共重合体である場合、当該アクリル系重合体を得るための単量体群における、上記その他の単量体の含有率は、合計で、0〜30重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、0〜15重量%、0〜10重量%の順にさらに好ましい。
上記アクリル系重合体は、上記その他の単量体を含む上記例示した単量体と、上述したUVA単量体との共重合体であってもよい。このようなアクリル系重合体を環化縮合反応させることにより、紫外線吸収能をさらに有するアクリル樹脂を得ることができる。
上記アクリル系重合体は、分子鎖内に有するカルボキシル基とエステル基との間の環化縮合反応によって無水グルタル酸構造を形成することができる。無水グルタル酸構造を形成するアクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、上述したメタクリル酸メチル(MMA)等を用いることができる。(メタ)アクリル酸としては、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を用いることができる。
無水グルタル酸構造を形成する上記アクリル系重合体は、当該重合体の形成に用いた単量体に由来する構成単位を有する。当該アクリル系重合体における各構成単位の含有率は、当該アクリル系重合体を得るために重合した単量体群に含まれる各単量体の含有量に応じて決定される。
アクリル系重合体を得るための重合方法としては、従来公知の方法、例えば特許文献2に記載の方法を用いることができる。本明細書では、アクリル系重合体を得るための重合を行う工程を「重合工程」とも称する。重合方法としては、アクリル系重合体を得た後に、続いて該アクリル系重合体の環化縮合反応を行うことができるため、溶液重合によって該アクリル系重合体を得ることが好ましい。また、反応を効率的に行うため窒素雰囲気下で重合を行うことが好ましい。
重合温度や重合時間は、使用する単量体の種類や割合などに応じて変化するが、重合温度については、好ましくは、0〜150℃、より好ましくは、80〜140℃であり、重合時間については、好ましくは、0.5〜20時間、より好ましくは、1〜10時間である。
溶液重合により上記アクリル系重合体を形成する場合、用いる重合溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;クロロホルム、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、テトラヒドロフランなど、が挙げられる。中でも、重合溶媒として芳香族炭化水素、ケトン類を用いることが好ましく、特に、トルエン、メチルイソブチルケトンを用いることが好ましい。
上記アクリル系重合体の重合時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤は特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;を挙げることができる。
これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、重合開始剤の使用量は、単量体の組み合わせ、あるいは、重合条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
溶液重合により上記アクリル系重合体を形成した場合、重合生成物には、上記アクリル系重合体以外に、重合に用いた重合溶媒が含まれるが、必ずしも当該溶媒を除去して上記アクリル系重合体を固体として取り出さなくてもよい。
上述したように、溶媒を含んだ状態のまま、重合生成物を、続く環化工程に導入することができる。もちろん、上記アクリル系重合体を固体として取り出した後、重合時に用いた溶媒よりも環化工程の実施に好適な溶媒を改めて加えて、環化工程に導入してもよい。
上記環化工程の実施に好適な溶媒としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
また、上記アクリル系重合体としては、必ずしも重合反応を行って調製したものではなく、市販のものを用いてもよい。
(b.環化工程)
本発明にかかる製造方法における環化工程とは、触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成して、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得る工程である。本明細書では、アクリル系重合体の環化縮合反応に用いられる触媒を、環化触媒とも称する。
環化縮合反応によって主鎖に環構造が形成されることにより、耐熱性に優れる樹脂を得ることができる。また、アクリル系重合体に環化触媒を添加することにより、単量体と触媒との副反応や重合中の分岐や架橋が抑制され、アクリル系重合体に優れた熱安定性および機械的強度を付与することができる。
上記触媒としては、酸性物質または塩基性物質を用いることができる。酸性物質としては、上記環化縮合反応の触媒として機能しうるものであれば、無機物であっても有機物であってもよい。
無機物としては例えば硫酸、塩酸などを用いることができる。上記無機物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
有機物である酸性物質としては、例えば、有機リン化合物、環化縮合反応の触媒として一般に使用されるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸などの有機カルボン酸類を挙げることができる。
中でも、上記有機物としては有機リン化合物を用いることが好ましい。有機リン化合物を環化触媒として用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができると共に、得られるラクトン環を有するアクリル系重合体の着色を大幅に低減することができるためである。さらに、有機リン化合物を環化触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができるという利点もあるためである。
本発明において使用可能な有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸などのアルキル(アリール)亜ホスホン酸(ただし、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのモノエステルまたはジエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸などのジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル; メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などのアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのモノエステルまたはジエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸などのアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニルなどのリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル; メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのモノ−、ジ− またはトリ−アルキル(アリール) ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィンなどのアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィンなどの酸化モノ−、ジ−またはトリ− アルキル(アリール)ホスフィン; 塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウムなどのハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。
これらの有機リン化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機リン化合物のうち、触媒活性が高くて着色性が低いことから、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸モノエステルまたはジエステルが特に好ましい。
このように、上記酸性物質としては有機物であっても無機物であってもよいが、有機溶媒に溶解または分散可能であるという操作性の観点と、反応生成物の着色抑制の観点とから、有機物を用いることが好ましい。
上述のように、環化触媒として塩基性物質の使用も可能である。塩基性物質としては、上記環化縮合反応の触媒として機能しうるものであれば特に限定されるものではない。例えば、金属カルボン酸塩、金属錯体、金属酸化物などが挙げられ、金属カルボン酸塩と金属酸化物が好ましく、金属カルボン酸塩が特に好ましい。
上記金属としては、樹脂組成物の物性を阻害せず、廃棄時に環境汚染を招くことがない限り、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛;ジルコニウム;などが挙げられる。
金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などが挙げられる。
金属錯体における有機成分としては、特に限定されるものではないが、アセチルアセトンなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられ、酸化亜鉛が好ましい。
また、特開2009−144112号公報(2009年7月2日公開)に記載された12族元素の化合物も、塩基性物質として好適に用いることができる。中でも、環化反応を促進させる作用が大きいため、亜鉛化合物が好ましく用いられる。
上記亜鉛化合物の具体的な種類は特に限定されず、例えば、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などの有機亜鉛化合物;酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などの無機亜鉛化合物、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛などのフッ素を含む有機亜鉛化合物を好適に用いることができる。
環化縮合反応を行う際の環化触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば主鎖に環構造を有するアクリル系重合体に対して、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
上記触媒の使用量が0.001重量%未満であると、環化縮合反応の反応率が充分に向上しないことがある。逆に、触媒の使用量が5重量%を超えると、得られた樹脂が着色することや、樹脂が架橋して、溶融成形が困難になることがある。
触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、例えば、重合工程途中に添加してもよいし、重合工程後に添加してもよいし、それらの両方で添加してもよい。重合中あるいは重合後に加熱しながら触媒を添加してもよいし、環化触媒の添加後に高温で熱処理してもよい。
環化縮合反応において加熱する方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用すればよい。例えば、重合工程によって得られた、重合溶媒を含む重合溶液をそのまま加熱処理してもよいし、溶媒を脱揮後に加熱処理してもよい。溶液状態でオートクレーブなどの耐圧装置中で200℃以上の温度で環化反応を行い、高温で環化反応を促進させるのも好ましい実施形態のひとつである。
あるいは、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を備えた加熱炉や反応装置、脱揮装置を備えた押出機などを用いて脱揮処理を行うこともできる。本発明では、触媒を含んだ重合溶液を加圧下に熱処理することが好ましい実施形態のひとつである。
重合溶媒と環化触媒とを含んだ状態で加熱した後、さらに耐圧装置中加圧下で200℃以上に加熱して環化することにより、後述する脱揮工程での劣化なしに、環化度が高くて耐熱性に優れた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を溶液状態で得ることができる。
環化縮合反応の際に採用できる反応器は、特に限定されるものではないが、例えば、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置などが挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化反応に好適なベント付き押出機も使用可能である。
加熱温度および加熱時間は特に限定されるものではないが、例えばオートクレーブを用いた場合、加熱温度は、好ましくは40〜300℃であり、加熱時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。このような加熱温度および加熱時間を取ることにより、環化反応率の低下、樹脂の着色または分解等の問題を生じるおそれを低減できるため好ましい。
このように、上記酸性物質または塩基性物質を環化触媒として用いて環化縮合反応を行うことにより、アクリル系重合体の分子鎖中に存在する水酸基またはカルボキシル基とエステル基とを環化反応させ、主鎖にラクトン環構造または無水グルタル酸構造を有するアクリル系重合体を得ることができる。
また、アクリル系重合体とN−置換マレイミドまたは無水マレイン酸とを共重合させることにより、主鎖にN−置換マレイミド構造または無水マレイン酸構造を有するアクリル系重合体が得られる。
さらに、上記アクリル系重合体にイミド化剤を添加することによってグルタルイミド構造を有するアクリル系重合体を得ることもできる。イミド化剤としては例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族アミン;アニリン、トルイジン、トリクロロアニリンなどの芳香族アミン;尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素などの加熱によりアミンを発生する尿素化合物;などを用いることができる。
(c.脱揮工程)
本発明においては、環化反応に特開2000-230016や特開2007−262396、特開2007−262399などに記載された脱揮工程を併用することも可能である。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、上記環化工程により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。当該工程により、生成した樹脂中の残存揮発分に基づく成形時の変質等による着色、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こるといった問題が生じる可能性を低減することができる。
脱揮工程の好ましい形態としては、環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、かつ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用する方法を挙げることができる。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、前記脱揮装置と前記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置またはベント付き押出機を用いることがより好ましい。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。反応処理温度が150℃より低いと、環化反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
前記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。前記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。上記温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
前記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内がより好ましい。
上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
なお、環化反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、厳しい熱処理条件では得られる主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の物性が悪化するおそれがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
脱揮工程は、環化反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態であってもよい。例えば、重合体を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体を、二軸押出し機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化反応が起こる前に一部分解等が生じ、得られる主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の物性が悪くなるおそれがある。
そこで、脱揮工程を同時に併用した環化反応を行う前に、予め環化反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られる環構造を有するアクリル系重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。
特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基をあらかじめ環化縮合反応させて環化反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。
具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置のついた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等で、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化触媒が存在していることがより好ましい。
上述のように、重合工程で得られた重合体を予め環化縮合反応させて環化反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、環構造を有するアクリル系重合体を得る上で好ましい形態である。
この形態により、環化反応率もより高まり、ガラス転移温度がより高く、耐熱性に優れた環構造を有するアクリル系重合体が得られる。この場合、環化反応率の目安としては、実施例に示すダイナッミクTG測定における、150〜300℃間での重量減少率が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化反応に好適なベント付き押出機も使用できる。
(d.中和工程)
上述のように酸性物質または塩基性物質を環化触媒として用いて環化縮合反応を行った場合、触媒が残存していると得られるアクリル樹脂組成物の耐熱性に悪影響を与えるため、上記触媒を中和する必要がある。中和反応であるから、触媒が酸性物質である場合、塩基性物質を用いて触媒を中和すればよく、逆に触媒が塩基性物質である場合、酸性物質を用いて触媒を中和すればよい。
中和工程に用いる上記塩基性物質および酸性物質としては、(b.環化工程)に記載したものを用いることができる。中和工程では、上記塩基性物質または酸性物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、上記塩基性物質または酸性物質は固形物、粉末状、分散体、懸濁液、水溶液など、いずれの形態で添加しても良く、特に限定されるものではない。
上述のように、従来、本発明者らは、上記環化触媒の使用量に対して1モル当量である塩基性物質を用いる特許文献1に記載の方法によって熱可塑性樹脂組成物を生産していた。しかしながら、短時間の生産では問題がないものの、長時間連続的に生産を行った場合、粒子状異物が増加し、ポリマーフィルタにおける圧力損失が大きくなるため、長時間連続的に生産することができなくなるという問題点が生じた。このことは、樹脂組成物中に含有される紫外線吸収剤が、環化触媒と塩基性物質との反応によって生じる塩の結晶成長を促進し、この塩が粒子状異物となることによると推測される。
そこで、本発明者は、上記環化触媒を塩基性物質または酸性物質を用いて中和する際の上記環化触媒の使用量と上記塩基性物質または酸性物質の使用量との関係について詳細に検討し、上記塩基性物質または酸性物質の使用量を、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量とすることにより、上記触媒を中和する機能を保持した上で、得られる樹脂組成物の耐熱性を保ち、かつ、粒子状異物の発生を抑制でき、上記問題点を解決することができることを見出した。
上記「モル当量」とは、上記触媒1.0モルに対する上記塩基性物質または酸性物質のモル数のことをいう。
例えば、後述する実施例1では、環化触媒としてステアリルアシッドホスフェートを、環化触媒を中和するための塩基性物質としてオクチル酸亜鉛を用いている。実施例1で用いたステアリルアシッドホスフェートは堺化学工業製、商品名:Phoslex A−18であり、分子量602の1価の酸と、分子量350の2価の酸とを当量混合した混合物である。
ここで、酸1価あたりの分子量を602÷3+350×2÷3=434とする。実施例1ではモノマー(MMAとMHMAの合計)50重量部に対して上記リン酸2−エチルヘキシルを0.05重量部添加しており、環化触媒の添加量は対モノマー(対樹脂)で1000ppmとなる。
また、実施例1では、環化工程を経た重合溶液を、ベントタイプスクリュー二軸押出機に樹脂換算で24重量部/時で押し出しており、このうちの環化触媒は24×1000÷100万=0.024重量部/時である。
一方、上記オクチル酸亜鉛は、亜鉛の原子量を65.4とすると、分子量は65.4÷0.18=363となる。よって、1モル当量用いて記リン酸2−エチルヘキシルを中和するには、0.024×363÷434=0.020重量部/時のオクチル酸亜鉛が必要である。
実施例1では、酸化防止剤/環化触媒を中和するための塩基性物質/紫外線吸収剤の混合溶液を0.724重量部/時で投入している。このうち、上記塩基性物質(オクチル酸亜鉛)の10%トルエン溶液は0.724×9.1÷100=0.0659重量部/時で投入している。したがって、上記塩基性物質(オクチル酸亜鉛)はその1/10の0.00659重量部/時で投入していることになる。
よって、上記塩基性物質(オクチル酸亜鉛)の使用量は、上記環化触媒の使用量に対して0.3モル当量となる。
上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量が、上記触媒の使用量に対して0.1モル当量未満であると、上記触媒を中和する作用が不十分になり、成形時に発泡やポリマー間の架橋での増粘が起こることがあり、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度、成形加工性が低下する可能性がある。
また、上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量が、上記触媒の使用量に対して0.7モル当量を超えると、紫外線吸収剤が、中和反応により生じる塩の結晶成長を促進し、粒子状異物の量が多くなるため、外観や光学特性上の問題が生じる可能性があり、ポリマーフィルタによるろ過処理(下記で説明するろ過工程)を行う場合、粒子状異物がフィルタを詰まらせて圧力損失が大きくなる可能性が高くなる。それゆえ、ポリマーフィルタの破損、連続生産可能な時間の短縮化などの問題が生じ、生産効率低下を招く可能性がある。
このように、本発明者は、上記触媒の使用量と、上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量との比が、粒子状異物の増加、ひいては樹脂組成物を連続生産可能な時間に大きな影響を与えることを初めて見出し、これに対して、上記塩基性物質または酸性物質の使用量を、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量とすることにより課題を解決できることを初めて見出したものである。
後述する実施例では、中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量を、上記触媒の使用量に対して0.1モル当量、0.3モル当量、0.5モル当量とした場合、ポリマーフィルタにおける圧力損失増加、およびペレット中の粒子状異物の量が顕著に抑制されていることが分かる。
後述する実施例および比較例に示すように、上記オクチル酸亜鉛を、環化触媒に対して0.3モル当量使用した場合、0.5モル当量使用した場合、1.0モル当量使用した場合の1時間当たりにおけるポリマーフィルタの圧力損失増加の程度と、ペレット中の粒子状異物の発生状況を検討したところ、0.5モル当量使用した場合、20μm四方の粒子状異物の数が、実施例において「○」と判定している15個未満に近い17個であった。そして、1.0モル当量使用した場合は59個であった。
そのため、上記塩基性物質または酸性物質の使用量が、上記触媒の使用量に対して0.5モル当量超0.7モル当量以下である場合は、ポリマーフィルタによるろ過の処理効率には影響を与えないレベルであると考えられる。
中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質を混合するタイミングは、アクリル系重合体の製造にあたり、触媒を添加し環化反応を十分行った後であり、後述するろ過工程を行う前であれば特に限定されるものではない。
例えば、アクリル系重合体を製造中に所定の段階で上記塩基性物質または酸性物質を添加するか、アクリル系重合体に環化触媒を添加し熱処理して環化反応を進行させてから上記塩基性物質または酸性物質を添加するか、あるいは、アクリル系重合体を製造した後、アクリル系重合体、上記塩基性物質または酸性物質、その他の成分などを同時に加熱溶融させて混練する方法;アクリル系重合体を製造した後、アクリル系重合体、上記塩基性物質または酸性物質、その他の成分などを溶剤に溶解する方法;アクリル系重合体、その他の成分などを加熱溶融させておき、そこに上記塩基性物質または酸性物質を添加して混練する方法;アクリル系重合体を加熱溶融させておき、そこに上記塩基性物質または酸性物質、その他の成分などを添加して混練する方法;などが挙げられる。
(e.紫外線吸収剤)
本発明にかかる製造方法によって得られるアクリル樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有する。特に限定はしないが、上記紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤としての役割を示す上で、波長300nmから380nmの範囲の光に対する最大吸収波長のモル吸光係数が、クロロホルム溶液中において10000(L・mol−1・cm−1)以上であることが好ましい。なお、上記紫外線吸収剤は、単量体に由来する繰り返し単位を含まない(すなわち、重合体ではない)ことが好ましい。
上記紫外線吸収剤は室温で固体であっても液体であってもよいが、固体の紫外線吸収剤は成形時の昇華が問題となりやすいため、室温で液体であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤は、分子量が600以上であることが好ましく、より好ましくは650以上であり、さらに好ましくは700以上である。
当該分子量が600未満の場合、紫外線吸収剤を添加したアクリル樹脂組成物を成形する際に発泡が生じたり、紫外線吸収剤がブリードアウトしたりすることがある。また、成形時に加えられる熱により紫外線吸収剤が蒸散して、得られた樹脂成形品の紫外線吸収能が低下したり、蒸散した紫外線吸収剤により成形装置が汚染されるなどの問題が生じることがある。
一方、紫外線吸収剤の分子量の上限は、10000以下であることが好ましく、8000以下がなお好ましく、5000以下がより好ましい。当該分子量が10000を超えると、アクリル系樹脂との相溶性が低下することで、最終的に得られる樹脂成形品の色相、濁度などの光学的特性が低下する。
紫外線吸収剤の構造は特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物等が挙げられる。その中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物が好ましい。
ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、トリアジンと、トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン骨格)である。ヒドロキシフェニル基における水酸基の水素原子は、トリアジンの窒素原子とともに水素結合を形成し、形成された水素結合は、フェニルトリアジンの発色団としての作用を増大させる。
分子量が600以上である紫外線吸収剤では、上記水素結合が3つ形成されるため、フェニルトリアジンが有する発色団としての作用をより増大でき、少ない添加量で高い紫外線吸収能を得ることができる。
なお、上記紫外線吸収剤が2種以上の化合物の混合物からなる場合、少なくとも主成分である化合物がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有することが好ましい。本明細書における主成分とは、最も含有量(含有率)が多い成分を意味し、その含有率は典型的には50%以上である。
ヒドロキシフェニルトリアジン骨格におけるヒドロキシフェニル基には、アルキル基、アルキルエステル基などの置換基が結合していてもよいが、当該置換基中に樹脂との架橋点となりうる構造を有さないことが好ましい。架橋点となりうる構造は、例えば、水酸基、チオール基、アミン基などの官能基あるいは二重結合である。
なお、ヒドロキシフェニル基には置換基として水酸基が存在するが、ベンゼン環に直接
結合した水酸基は樹脂と架橋構造を形成しないため、樹脂との架橋点となりうる構造とは扱わない。また、上記アルキルエステル基は、式「−CH(−R)C(=O)OR’」により示される基であることが好ましく、上記式において、Rは水素原子またはメチル基であり、R’は直鎖または分岐を有するアルキル基である。
ヒドロキシフェニルトリアジン骨格におけるヒドロキシフェニル基の置換基中にアクリル系樹脂との架橋点となりうる構造が存在すると、樹脂組成物の成形時にゲルが発生する可能性が増大する。
以下に使用可能な紫外線吸収剤を例示するが、紫外線吸収剤はこれらに限定されるものではない。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジーヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。
サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステル、2,2−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾ-ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノ-ル]が挙げられる。
さらに、トリアジン系化合物としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤が挙げられる。
市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(BASFジャパン製)、トリアゾール系紫外線吸収剤として「アデカスタブLA−31」(ADEKA製)等が挙げられる。
また、下記一般式(10)によって表される構造を有するトリアジン系化合物も、紫外線吸収剤として好適に利用できる。
Figure 2013075983
(式中、R13は炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基又はアルケニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基又はアリールアルキル基を表し、R14は炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数3〜8のアルケニル基を表す。)
上記式中、R13で表される炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基としては、
例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、
第三ブチル、アミル、第三アミル、ヘキシル、オクチル、第二オクチル、第三オクチル、
2−エチルヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙
げられる。炭素原子数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シ
クロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
上記式中、R14で表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、オクチル、第三オクチル等が挙げられる。
13およびR14で表される炭素原子数3〜8のアルケニル基としては、直鎖及び分岐のプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルが不飽和結合の位置によらず挙げられる。
13で表される炭素原子数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル等が挙げられ、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、オクチルフェニル等が挙げられ、炭素原子数7〜18のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、1−メチル−1−フェニルエチル等が挙げられる。また、置換基や中断を有するアリール基としては、4−メチルフェニル、3−クロロフェニル、4−ベンジルオキシフェニル、4−シアノフェニル、4−フェノキシフェニル、4−グリシジルオキシフェニル、4−イソシアヌレートフェニル等が挙げられる。
13で表される置換基及び中断を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基としては、2−ヒドロキシプロピル、2−メトキシエチル、3−スルホニル−2−ヒドロキシプロピル、4−メチルシクロヘキシル等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤は、単独で、または2種類以上の組み合わせて使用することができる。上記紫外線吸収剤のアクリル樹脂組成物中における含有量は特に限定されないが、アクリル樹脂組成物の黄変を防止して透明度を保つことができ、かつ、発泡やブリードアウトを起こさないという観点から、0.01重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法において、上記紫外線吸収剤は、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と、最終生成物であるアクリル樹脂組成物において混合されていればよい。
上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と上記紫外線吸収剤とを混合するタイミングは特に限定されるものではないが、本発明にかかるアクリル樹脂組成物をフィルム等の光学部材用途に使用する場合に、フィルム等の外観を良好に保つため、後述するろ過工程を経る前には、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と混合されていることが好ましい。
上記紫外線吸収剤は例えば、反応系に対して、上記重合工程において混合されてもよいし、上記環化工程において混合されてもよい。この場合は、紫外線吸収剤を反応系に混合した際にはまだ上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」は形成されていないが、環化工程の終了後には、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と上記紫外線吸収剤とが混合されていることになる。
また、上記紫外線吸収剤は、上記中和工程において上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と混合されてもよい。さらに、上記中和工程終了後、後述するろ過工程を経る前に上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と混合されてもよい。
なお、本発明では、上述のように、中和工程において用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量が、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量となっているため、ポリマーフィルタによるろ過を行う前に紫外線吸収剤が混合されていても、紫外線吸収剤の存在に起因すると考えられる粒子状異物の発生が問題になることはない。
(f.ろ過工程)
ろ過工程は、上記中和工程を経たアクリル樹脂組成物を、ポリマーフィルタを用いてろ過する工程である。ろ過工程により、アクリル樹脂組成物中に存在する異物を除去できるため、得られた樹脂組成物の外観上の欠点を低減できる。
本発明では、上述のように、中和工程において用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量が、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量となっているため、粒子状異物の形成が顕著に抑制される。そのため、ろ過工程においてポリマーフィルタの圧力損失の増加を抑制することができ、長時間連続的にろ過工程を行うことができる。
ポリマーフィルタの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルタを配したポリマーフィルタを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルタの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルタによるろ過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。ろ過精度が1μm以下になると、アクリル樹脂組成物の滞留時間が長くなることで当該組成物の熱劣化が大きくなり、生産性が低下する可能性がある。
ポリマーフィルタにおける、時間あたりの樹脂処理量に対するろ過面積は特に限定されず、樹脂組成物の処理量に応じて適宜設定できる。上記ろ過面積は、例えば、0.001〜0.15m/(kg/h)である。
ポリマーフィルタの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルタにおける樹脂組成物の滞留時間に特に制限はないが、20分以下が好ましく、10分以下がより好ましく、5分以下がさらに好ましい。また、ろ過時におけるフィルタ入口圧およびフィルタ出口圧は、例えば、それぞれ、3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルタの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa未満になると、アクリル樹脂組成物がフィルタを通過する流路に偏りが生じやすく、得られたアクリル樹脂組成物の品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルタの破損が起こり易くなる。
本発明にかかる製造方法では、ポリマーフィルタの圧力損失の増加を抑制することができるため、ろ過工程の前後におけるポリマーフィルタの圧力損失の増加を0.06MPa/hr以下とすることができる。当該増加は、0.05MPa/hr以下であることがより好ましく、0.04MPa/hr以下であることがさらに好ましい。
ポリマーフィルタに導入されるアクリル樹脂組成物の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、255〜300℃が好ましく、260〜300℃がさらに好ましい。
ポリマーフィルタを用いたろ過処理により、異物、着色物の少ないアクリル樹脂組成物を得る具体的な工程は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下でアクリル樹脂組成物の形成およびろ過処理を行い、引き続いてクリーン環境下でアクリル樹脂組成物の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有するアクリル樹脂組成物を、クリーン環境下でろ過処理した後、引き続いてクリーン環境下でアクリル樹脂組成物の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有するアクリル樹脂組成物を、クリーン環境下でろ過処理すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルタによる樹脂組成物のろ過処理を行ってもよい。
上記成形としては、特に限定されるものではなく、任意の形状に成形して構わない。例えば、ペレタイザーを用いたペレット化や、オムニミキサーなど、従来公知の混合機でフィルム原料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練することによるフィルム化などが可能である。
押出混練に用いる混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機や加圧ニーダーなど、従来公知の混合機を用いることができる。
フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、従来公知のフィルム成形法が挙げられる。これらのフィルム成形法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が特に好適である。
なお、ポリマーフィルタによって樹脂組成物をろ過する際には、押出機とポリマーフィルタとの間にギアポンプを設置して、フィルタ内の樹脂組成物の圧力を安定化することが好ましい。
<アクリル樹脂組成物>
本発明にかかる製造方法によって得られたアクリル樹脂組成物は、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と紫外線吸収剤とを必須に含有する。上記アクリル樹脂組成物は、上記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を50重量%以上100重量%未満含有することが好ましい。これにより、上記アクリル樹脂組成物は優れた透明性や耐熱性に加えて、機械的強度、成形加工性などの所望の特性を得ることができる。
紫外線吸収剤の含有量は、上述のように0.01重量%以上5重量%以下であることが好ましい。そのため、上記アクリル樹脂組成物は、上記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を50重量%以上100重量%未満、紫外線吸収剤を0.01重量%以上5重量%以下、合計100重量%となるように含有することが好ましい。
ただし、これに限られるものではなく、上記アクリル樹脂組成物は、他の成分を含有していてもよい。例えば、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」以外の熱可塑性樹脂(以下、「その他の熱可塑性樹脂」と称する)を、上記アクリル樹脂組成物中に、50重量%未満含んでいてもよい。
つまり、上記アクリル樹脂組成物は、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」を50重量%以上100重量%未満、紫外線吸収剤を0.01重量%以上5重量%以下、上記その他の熱可塑性樹脂を50重量%未満、これらの合計が100重量%となるように含有していてもよい。
上記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィンポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレンポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴムあるいはアクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂などのゴム質重合体;などである。
ゴム質重合体は、その表面に、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」と相溶し得る組成のグラフト部を有することが好ましく、また、ゴム質重合体が粒子状である場合、その平均粒子径は、上記アクリル樹脂組成物を樹脂フィルムとしたときの透明性向上の観点から、300nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
上記例示した熱可塑性樹脂の中でも、上記「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」との相溶性、特に主鎖にラクトン環構造を有するアクリル重合体との相溶性に優れることから、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位と芳香族ビニル単量体に由来する構成単位とを含む共重合体が好ましい。当該共重合体は、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル樹脂である。
また、上記アクリル樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては例えば、フェノール系の酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤等を用いることができ、具体的には、特開2009−52021号公報に例示されている酸化防止剤を好適に用いることができる。
上記アクリル樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、例えば上記アクリル樹脂組成物を100重量%としたときに、例えば0〜10重量%であり、0〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%であることがより好ましく、0.05〜1重量%であることがさらに好ましい。
上記アクリル樹脂組成物は、その他の添加剤として、例えば、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;難燃剤などである。
上記アクリル樹脂組成物における、上記その他の添加剤の含有量は、上記アクリル樹脂組成物を100重量%としたときに、例えば0〜5重量%であり、0〜2重量%が好ましく、0〜0.5重量%がより好ましい。
紫外線吸収剤は、上述のように、例えば、反応系に対して、上記重合工程において混合されてもよいし、上記環化工程において混合されてもよいし、上記中和工程において混合されてもよい。これによって、上記「主鎖に環構造を有するアクリル重合体」と紫外線吸収剤とを含むアクリル樹脂組成物を得ることができる。
上記その他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、その他の添加剤は、例えば、上記アクリル樹脂組成物が得られた後に、従来公知の方法によって(例えば溶融混練)上記アクリル樹脂組成物中に含有させることができる。
上記アクリル樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、高い耐熱性を付与する観点から、110℃以上であることが好ましく、115℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。後述する実施例ではいずれも120℃以上のTgを有するアクリル樹脂組成物が得られている。なお、本明細書におけるTgは、JIS K7121の規定に基づき、示差走査熱量計(DSC)を用いて、始点法により求めた値とする。
上記アクリル樹脂組成物は、上記アクリル樹脂組成物の15%クロロホルム溶液をASTM E313によって測定した黄色度(YI)が0以上15以下であることが好ましく、5以上15以下であることがより好ましい。本発明にかかる方法では、上述のように、紫外線吸収剤に起因する発泡、中和反応における塩の結晶成長が抑制されるため、このように低いYIを持つアクリル樹脂組成物を得ることができる。アクリル樹脂組成物のYIは、実施例に記載の方法によって確認することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。まず、本実施例において作製したアクリル樹脂組成物の評価方法を説明する。
[ガラス転移温度(Tg)]
樹脂のTgは、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[熱分解温度]
重合体の熱分解温度は、差動型示差熱天秤装置(リガク製、Thermo Plus 2 TG-8120)を用いて、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から500℃まで昇温(昇温速度10℃/分)して求めた。このとき、150℃〜500℃の間で、重量減少速度値が0.05重量%/秒以下となるように階段状に等温制御した。
[重量平均分子量]
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の表1のとおりである。
Figure 2013075983
[YI]
アクリル樹脂組成物のYI(黄色度)は、ASTM E313によって測定した。すなわち、当該樹脂組成物3gをクロロホルム17gに溶解させたものを測色色差計(日本電色工業製、ZE6000)を用いて測定した。
[ペレット中の粒子状異物の観測]
後述するペレットを250℃でプレス成形して、厚さ90μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの内部状態を倍率50倍のレーザー顕微鏡(キーエンス製 VK−9700)を用いて観察し、任意の3箇所で20μm四方における粒子状異物の数をカウントした。その平均値が15個未満のものを○、15個以上30個未満のものを△、30個以上確認された場合を×とした。
なお、上記「粒子状異物」とは、上記観察によって観察領域内に見出される粒子状の 物質を指す。粒子の形状は問わない。
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、および重合溶媒としての50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。
昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、0.06重量部の上記t−アミルパーオキシイソノナノエートを2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、0.05重量部のステアリルアシッドホスフェート(堺化学工業製、商品名:Phoslex A−18)を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させ、重合溶液を得た。
一連の反応によって主鎖にラクトン環構造を有するアクリル系樹脂が形成されたことは、本実施例で最終的に形成した樹脂ペレットの組成を別途、核磁気共鳴(NMR)および赤外分光(IR)を用いて分析することにより、確認した。
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液をベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で24重量部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。
上記ベントタイプスクリュー二軸押出機は、1個のリアベントおよび4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)を備え、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、先端部にギアポンプとリーフディスク型のポリマーフィルタ(ろ過精度5μm)が配置されている。上記脱揮の条件は、バレル温度240℃、回転速度120rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)であった。
このとき、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒を中和するための塩基性物質/紫外線吸収剤の混合溶液を0.724重量部/時の投入速度で第1ベントの後ろから投入した。
上記酸化防止剤/環化触媒を中和するための塩基性物質/紫外線吸収剤の混合溶液としては、酸化防止剤として0.9重量部のイルガノックス1010(BASFジャパン製)および0.9重量部のアデカスタブAO−412S(ADEKA製)、紫外線吸収剤として68重量部のチヌビン477(BASFジャパン製)、並びに、環化触媒を中和するための塩基性物質として9.1重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、商品名:ニッカオクチクス亜鉛 亜鉛含有量18重量%)10重量%トルエン溶液を、トルエン21重量部に溶解させた溶液を用いた。
この時、投入した環化触媒を中和するための塩基性物質の量は、環化触媒の0.3モル当量であった。これに加えて、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの共重合比が73重量%/27重量%、重量平均分子量が22万)を、3重量部/時の投入速度でサイドフィーダーから投入した。
脱揮完了後、上記押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタ(長瀬産業株式会社製)によりろ過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレットを得た。上記ポリマーフィルタにおける、時間あたりの樹脂処理量に対するろ過面積は0.02m(kg/h)であった。
12時間溶融状態にある重合体のろ過を行い、ろ過の開始から終了時までのポリマーフィルタ前後における圧力差(圧力損失)の増加分を評価したところ、0.36MPaであった。当該アクリル樹脂のTgは123℃、熱分解温度は337℃、重量平均分子量は15.1万、YIは10.8であった。
(実施例2)
酸化防止剤/環化触媒を中和するための塩基性物質/紫外線吸収剤の混合溶液としては、酸化防止剤として0.9重量部のイルガノックス1010(BASFジャパン製)および0.9重量部のアデカスタブAO−412S(ADEKA製)、紫外線吸収剤として68重量部のチヌビン477(BASFジャパン製)、並びに、環化触媒を中和するための塩基性物質として3重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、商品名:ニッカオクチクス亜鉛 亜鉛含有量18重量%)10重量%トルエン溶液を、トルエン27.2重量部に溶解させた溶液を用いた。
用いる上記混合溶液をこのように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーフィルタにおける圧力損失の増加分を評価した。この時、投入した環化触媒を中和するための塩基性物質の量は環化触媒の0.1モル当量であった。圧力損失の増加分は0.31MPaであった。当該アクリル樹脂のTgは123℃、熱分解温度は334℃、重合平均分子量は14.9万、YIは10.6であった。
(実施例3)
酸化防止剤/環化触媒を中和するための塩基性物質/紫外線吸収剤の混合溶液としては、酸化防止剤として0.9重量部のイルガノックス1010(BASFジャパン製)および0.9重量部のアデカスタブAO−412S(ADEKA製)、紫外線吸収剤として68重量部のチヌビン477(BASFジャパン製)、並びに、環化触媒を中和するための塩基性物質として15.1重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、商品名:ニッカオクチクス亜鉛 亜鉛含有量18重量%)10重量%トルエン溶液を、トルエン15.1重量部に溶解させた溶液を用いた。
用いる上記混合溶液をこのように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーフィルタにおける圧力損失の増加分を評価した。この時、投入した環化触媒を中和するための塩基性物質の量は環化触媒の0.5モル当量であった。圧力損失の増加分は0.47MPaであった。当該アクリル樹脂のTgは123℃、熱分解温度は340℃、重合平均分子量は15.2万、YIは12.5であった。
(比較例)
酸化防止剤/環化触媒を中和するための塩基性物質/紫外線吸収剤の混合溶液としては、酸化防止剤として0.9重量部のイルガノックス1010(BASFジャパン製)および0.9重量部のアデカスタブAO−412S(ADEKA製)、紫外線吸収剤として68重量部のチヌビン477(BASFジャパン製)、並びに、環化触媒を中和するための塩基性物質として30重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、商品名:ニッカオクチクス亜鉛 亜鉛含有量18重量%)10重量%トルエン溶液を、トルエン21重量部に溶解させた溶液を用いた。実施例1で用いた上記混合溶液とは、環化触媒を中和するための塩基性物質の配合量が異なる。
用いる上記混合溶液をこのように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリマーフィルタにおける圧力損失の増加分を評価した。この時、投入した環化触媒を中和するための塩基性物質の量は環化触媒の1.0モル当量であった。圧力損失の増加分は0.96MPaであった。当該アクリル樹脂のTgは123℃、熱分解温度は339℃、重合平均分子量は15.4万、YIは22.6であった。
実施例1〜3および比較例の結果を以下の表2にまとめた。
Figure 2013075983
ここで、実施例3ではペレット中の粒子状異物の数は「△」(上述の測定法で15個以上30個未満)であるが、実使用上、この「△」に該当する個数であれば、本発明にかかる製造方法を長時間連続的に実施しても支障のないレベルである。
なお、計測された粒子状異物の数は、実施例1、2では0個、実施例3では17個、比較例では59個であった。
実施例1〜3および比較例の結果より、環化触媒に対するオクチル酸亜鉛のモル当量を減らし、0.1〜0.7モル当量用いることによって、圧力損失の増加を顕著に抑制することができ、かつ、耐熱性を維持できることが分かる。
一方、環化触媒に対するオクチル酸亜鉛のモル当量が0.7モル当量を超えている比較例では、圧力損失の増加が著しく、連続性生産性が大きく低下していることが分かる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明にかかるアクリル樹脂組成物の製造方法は、環化触媒を中和するための塩基性物質または酸性物質の使用量を、環化触媒の金属塩の粒子が成長しない量に調整しているため、ポリマーフィルタによりろ過を行う場合の圧力損失の増加を大幅に抑制することができ、アクリル樹脂組成物の長時間連続生産を可能とする。
したがって、本発明は、アクリル樹脂組成物の製造効率化に大きく貢献することができるため、アクリル樹脂組成物を用いる産業分野全般に広く用いることができる。例えば、偏光子保護フィルム、光学用保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどの分野で好適に利用することができる。

Claims (8)

  1. 主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物の製造方法であって、
    触媒として酸性物質または塩基性物質を用いることによって、アクリル系重合体の環化縮合反応を行い、上記重合体の主鎖に環構造を形成して、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を得る環化工程と、
    上記触媒として酸性物質を用いた場合は塩基性物質によって触媒を中和し、上記触媒として塩基性物質を用いた場合は酸性物質によって触媒を中和する中和工程と、を含み、
    上記中和工程に用いる上記塩基性物質または酸性物質の使用量は、上記触媒の使用量に対して0.1〜0.7モル当量であることを特徴とする、アクリル樹脂組成物の製造方法。
  2. 上記紫外線吸収剤の分子量が600以上であることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  3. 上記紫外線吸収剤が、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  4. 上記アクリル樹脂組成物は、上記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を50重量%以上100重量%未満含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  5. 上記アクリル樹脂組成物は、上記紫外線吸収剤を0.01重量%以上5重量%以下含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  6. 上記アクリル樹脂組成物は、上記アクリル樹脂組成物の15%クロロホルム溶液をASTM E313によって測定した黄色度(YI)が0以上15以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  7. 上記中和工程を経たアクリル樹脂組成物を、ポリマーフィルタを用いてろ過するろ過工程を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  8. 主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、紫外線吸収剤とを含有するアクリル樹脂組成物であって、上記アクリル樹脂組成物の15%クロロホルム溶液をASTM E313によって測定した黄色度(YI)が0以上15以下であることを特徴とする、アクリル樹脂組成物。
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