JP2008307888A - 熱可塑性フイルム、熱可塑性フイルムの製造方法、熱可塑性フイルムの製造装置、並びに、偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム及び液晶表示装置 - Google Patents

熱可塑性フイルム、熱可塑性フイルムの製造方法、熱可塑性フイルムの製造装置、並びに、偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】表面の品質を向上させると共に、例えば液晶表示素子の位相差膜等に使用した場合に、縦すじがなく、液晶の表示むらも低減させる。
【解決手段】第1ニップロール37と第2ニップロール39を用いて、0.01を超え、0.3未満の縦横比で未延伸フイルムFaを縦延伸する際に、第1ニップロール37と第2ニップロール39の直径をRとしたとき、ニップロール37及び39間を搬送される熱可塑性フイルムFa’が、いずれかのニップロールと接触する際のラップ角度が1°以上、60°以下にして行う。また、いずれかのニップロールと熱可塑性フイルムFa’との接触距離が0.01R以上、0.5R以下にする。
【選択図】図3

Description

本発明は、溶融した熱可塑性樹脂をキャスティングロールとタッチロールとによって押し付けて押出し成形して得られる熱可塑性フイルム、熱可塑性フイルムの製造方法及び熱可塑性フイルムの製造装置に関する。また、本発明は、光学特性に熱可塑性フイルムを用いた偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム及び液晶表示装置に関する。
従来、熱可塑性フイルムを延伸し、面内のレターデーションRe(Re=|Nx―Ny|×d:Nx、Nyはそれぞれ遅相軸、進相軸方向の屈折率、dはフイルム厚み)、厚み方向のレターデーションRth(Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d:Nx、Ny,Nzはそれぞれ遅相軸、進相軸方向、厚み方向の屈折率、dはフイルム厚み)を発現させ、液晶表示素子の位相差膜として使用し、視野角拡大を図ることが実施されている。
このような技術として、特許文献1〜3が知られている。特許文献1には、縦横比(L/W)が0.3以上、2以下の短スパン間に設置した二対のニップロールでセルロースエステルを縦延伸する方法が記載されている。特許文献2及び3には、縦横比(L/W)が0.01を超え、0.3未満の条件でセルロースアシレートシート及びノルボルネンを縦延伸し、Re、Rthの経時変化を改良する方法が記載されている。
特開2003−315551号公報 特開2005−330411号公報 特開2005−330412号公報
ところで、フイルムは延伸により厚みが減少するが、断面方向に着眼すると、厚みの減少は均一に起こっておらず、厚み方向内部(内層)より表面(表層)の方が厚みの減少が発生し易い。内層が厚みを減少しようとしても、両側の表層の厚みの減少と綱引きとなり、十分な厚みの減少が生じないからである。一方、表層は、一方の片面が内層と接触しているが、他方の片面が空気層であり、内層に比べて厚みが減少し易い。この結果、内層よりも表層のほうが延伸の効果を受け易い。
そして、表層に凹凸があると、表層が延伸される効果に不均一が生じ、引いては延伸むらに起因する厚みむらが発生する。さらに凹凸に併せた延伸むらは、局部的に強く配向した所が生じる。このような高配向部分は緩和し易く、Re、Rthの変動、光弾性の分布(場所によるばらつき)を引き起こす。
表面の凹凸は必ずしも小さければよいわけではない。これが小さすぎると、表面が平滑になりすぎ、未延伸フイルム(原反)を横延伸部まで搬送する途中でロール等との間で軋みが発生し、横延伸直前の表面凹凸は却って大きくなってしまうためである。
特許文献1〜3等に示す方法は、上述した不都合点を十分に解決しておらず、延伸したフイルムを例えば液晶表示素子の位相差膜として使用すると、縦すじが発生しやすく、面状不良による液晶の表示むらが生じるという問題がある。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、表面の品質を向上させると共に、例えば液晶表示素子の位相差膜等に使用した場合に、縦すじがなく、液晶の表示むらも低減することができる熱可塑性フイルム、熱可塑性フイルムの製造方法及び熱可塑性フイルムの製造装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明においては、前記熱可塑性フイルムを用いた偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
第1の本発明に係る熱可塑性フイルムの製造方法は、第1ニップロールと第2ニップロールを用いて、0.01を超え、0.3未満の縦横比で熱可塑性フイルムを縦延伸する際に、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールの直径をRとしたとき、ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムが、いずれかのニップロールと接触のラップ角度が1°以上、60°以下にして行うことを特徴とする。ラップ角度が1°以上、50°以下が好ましく、さらに好ましくは1°以上、45°以下である。
これにより、延伸後の熱可塑性フイルムの表面の品質を向上させることができ、例えば液晶表示素子の位相差膜等に使用した場合に、縦すじがなく、フイルム表面の欠陥を低減し、液晶の表示むらも低減することができる。
そして、第1の本発明において、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、いずれかのニップロールと前記熱可塑性フイルムとの接触距離が0.01R以上、0.5R以下であることを特徴とする。より好ましくは、0.05R以上、0.45R以下、さらに好ましくは0.1R以上、0.4R以下である。この場合、熱可塑性フイルムとニップロールとの接触面積が増え、延伸時のフイルム体積収縮が均一化し、また延伸圧力が均一にかけられることから、延伸後の熱可塑性フイルムの平面性が改良されると共に、熱可塑性フイルムの縦すじ、突起物の欠陥を大幅に低減することができる。
また、前記第1ニップロールと前記第2ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムの水平方向とのなす角度が0.1°以上、60°以下であることが好ましい。より好ましくは、3°以上、50°以下、さらに好ましくは5°以上、45°以下である。
また、第1の本発明において、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、最後部のニップロールの回転数に0.01%〜0.1%の変動を与えることが好ましい。つまり、最終部のニップロールを構成する2つのロールの回転数の間に0.01%〜0.1%の変動を与える。
また、第1の本発明において、前記縦延伸した後の前記熱可塑性フイルムの下記式で特定されるネックイン量が0.1%以上、5%以下であってもよい。
ネックイン量(Nin)={(W0−W1)/W0}×100(%)
ここで、式中、W0は縦延伸前の熱可塑性フイルムの幅、W1は縦延伸後の熱可塑性フイルムの幅を示す。
また、第1の本発明において、前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの幅方向の温度分布(Ts−Tc)が0.1℃以上、5℃以下であることが好ましい。ここで、Tsは、熱可塑性フイルムの全幅の20%以内の両端平均温度、Tcは、熱可塑性フイルムの全幅の60%以内の中央部平均温度を示す。
また、第1の本発明において、前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの押し込む圧力が0.5MPa以上、15MPa以下であることが好ましい。
また、第1の本発明において、前記縦延伸の後に、横方向に1.0倍〜3.0倍で横延伸を行うことが好ましい。この場合、前記横延伸が予熱ゾーン、延伸ゾーン及び緩和固定ゾーンを経て行う際に、各ゾーンの温度分布が
予熱ゾーン>延伸ゾーン>熱固定ゾーン
となるように横延伸することが好ましい。
熱固定後に、(ガラス転移温度Tg−20)℃以上、(Tg+20)℃以下で熱緩和処理することが好ましい。
また、第1の本発明において、前記縦延伸前の前記熱可塑性フイルムをタッチロール法により製膜するようにしてもよい。
また、第1の本発明において、前記熱可塑性フイルムは、セルロースアシレートから成ることが好ましい。この場合、前記セルロースアシレートは、プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、置換あるいは無置換の芳香族アシル基の少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、前記セルロースアシレートが、下記(1)及び(2)式、あるいは、(3)及び(4)式を満たすことが好ましい。
(1)式:2.5≦A+B<3.0
(2)式:0.1≦B<3.0
(式中、Aは、アセテート基の置換度を示し、Bは、プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基の置換度の総和を示す。)
(3)式:2.5≦A+C≦3.0
(4)式:0.1≦C<2
(式中、Aは、アセテート基の置換度を示し、Cは置換もしくは無置換の芳香族アシル基を示す。)
また、第1の本発明において、前記熱可塑性フイルムは、シクロオレフィン系樹脂、ラクトン環含有重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂から成ることが好ましい。
さらに、第1の本発明の熱可塑性フイルムはニップロール表面への密着し易いため、フイルムの比抵抗が5×108〜5×1013オーム・cmであることが好ましく、より好ましくは1×109〜1×1013オーム・cm、さらに好ましくは5×109〜5×1012オーム・cmである。これにより、熱可塑性フイルムはニップロールと密着し易くなり、縦延伸時のフイルムの体積収縮を均一化になり、縦ジスや凹凸状の欠陥物を低減する効果が得られる。また、本発明の熱可塑性フイルムはニップロール表面への密着し易いため、Tg−10℃の温度における熱可塑性樹脂フイルムの弾性率が200MPa〜1000MPaであることが好ましい(Tgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度である)。より好ましくはTg−10℃の温度における熱可塑性樹脂フイルムの弾性率が250MPa〜800MPaであり、300MPa〜700MPaである。これにより、熱可塑性樹脂フイルムとニップロールと接触延伸する際に、より均一に延伸することができ、縦すじや凹凸状の欠陥物を低減する相乗効果が得られる。
次に、第2の本発明に係る熱可塑性フイルムの製造装置は、第1ニップロールと第2ニップロールを用いて、0.01を超え、0.3未満の縦横比で熱可塑性フイルムを縦延伸する際に、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールの直径をRとしたとき、ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムが、いずれかのニップロールと接触のラップ角度が1°以上、60°以下にして行うことを特徴とする。好ましいラップ角度が1°以上、50°以下、さらに好ましくは1°以上、45°以下の熱可塑性の製造装置である。
これにより、延伸後の熱可塑性フイルムの表面の品質を向上させることができ、例えば液晶表示素子の位相差膜等に使用した場合に、縦すじがなく、液晶の表示むらも低減することができる。
そして、第2の本発明において、請求項1記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、いずれかのニップロールと前記熱可塑性フイルムとの接触距離が0.01R以上、0.75R以下であることが好ましい。
また、第2の本発明において、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、いずれかのニップロールと前記熱可塑性フイルムとの接触距離が0.1R以上、10R以下であることが好ましい。
また、第2の本発明において、前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、最後部のニップロールの回転数に0.01%〜0.1%の変動を与える手段を有することが好ましい。
また、第2の本発明において、前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの幅方向の温度分布(Ts−Tc)が0.1℃以上、5℃以下に制御する手段を有するようにしてもよい。ここで、Tsは、熱可塑性フイルムの全幅の20%以内の両端平均温度を示し、Tcは、熱可塑性フイルムの全幅の60%以内の中央部平均温度を示す。
また、第2の本発明において、前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの押し込む圧力が0.5MPa以上、15MPa以下であることが好ましい。
また、第2の本発明において、前記縦延伸の後に、横方向に1.0倍〜3.0倍で横延伸を行う手段を有するようにしてもよい。この場合、前記横延伸を行う手段は、前記熱可塑性フイルムの搬送方向に沿って順番に予熱ゾーン、延伸ゾーン及び緩和固定ゾーンが配置され、各ゾーンの温度分布が
予熱ゾーン>延伸ゾーン>熱固定ゾーン
となるように制御することが好ましい。
次に、第3の本発明に係る熱可塑性フイルムは、上述した第1の本発明に係る熱可塑性フイルムの製造方法で作製され、表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、1.0μm以下であることを特徴とする。
次に、第4の本発明に係る熱可塑性フイルムは、上述した第1の本発明に係る熱可塑性フイルムの製造方法で作製され、表面突起高さが0.5μm以上、8.0μm以下の微小異物が0.1個/100cm2以上、50個/100cm2以下であることを特徴とする。
次に、第5の本発明に係る偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルムは、第3又は第4の本発明に係る熱可塑性フイルムを用いたことを特徴とする。
次に、第6の本発明に係る液晶表示装置は、上述した第3又は第4の本発明に係る熱可塑性フイルム、第5の本発明に係る偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルムの少なくとも1つを用いたことを特徴とする。
以上説明したように、本発明に係る熱可塑性フイルム、熱可塑性フイルムの製造方法及び熱可塑性フイルムの製造装置によれば、表面の品質を向上させると共に、例えば液晶表示素子の位相差膜等に使用した場合に、縦すじがなく、液晶の表示むらも低減することができる。
また、本発明によれば、偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム及び液晶表示装置を提供することができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明は、そのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
以下に本発明について順を追って説明する。
1.熱可塑性樹脂
本発明の熱可塑性フイルムは、セルロースアシレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ラクトン環含有重合体樹脂を含有する熱可塑性フイルムが好ましい例として挙げられる。該フイルムを形成する熱可塑性樹脂としては、セルロースアシレート樹脂、シクロオレフィン樹脂が好ましい。
1−1.セルロースアシレート樹脂
1−1−1.プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基を含むセルロースアシレート樹脂
(置換度)
先ず、本発明で用いられるセルロースアシレートについて説明する。本発明で用いるセルロースアシレートは下記式(S−1)〜(S−2)を満足する。
式(S−1):2.5≦X+Y≦3.0
式(S−2):1.25≦Y≦3.0
式(S−1)〜(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位及び6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位及び6位の全ての水酸基の水素原子がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。セルロースアシレートの置換基Yで表される炭素数3〜22のアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよい。本発明のセルロースアシレートのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数は3〜7であることが好ましく、炭素数は3〜6であることがさらに好ましく、炭素数は3〜5であることが特に好ましい。また、これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基等を挙げることができる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基である。もっとも好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基である。
本発明で用いるセルロースアシレートは、以下の式を満足することがより好ましい。
2.6≦X+Y≦2.95
2.0≦Y≦2.95
本発明で用いるセルロースアシレートは、以下の式を満足することがさらに好ましい。
2.7≦X+Y≦2.95
2.3≦Y≦2.9
式(S−1)〜(S−2)を満足するセルロースアシレートを用いることによって、融解温度を低下させ、融解性を改善することができる。このため、式(S−1)〜(S−2)を満足するセルロースアシレートを用いれば、より均一に製膜することができる。
式(S−1)〜(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の7〜12頁の記載も適用することができる。なお、ここでいう添加量はセルロースアシレートに対する質量%である。
(原料)
セルロースアシレートを合成する際のセルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。
(活性化)
セルロース原料はアシル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行っておくことが好ましい。活性化剤として好ましくは、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸であり、特に好ましくは酢酸である。活性化剤の添加量は好ましくは5%〜10000%であり、より好ましくは10%〜2000%、さらに好ましくは30%〜1000%である。添加方法は噴霧、滴下、浸漬等の方法から選択できる。活性化時間は20分〜72時間が好ましく、特に好ましくは20分〜12時間である。活性化温度は0℃〜90℃が好ましく、20℃〜60℃が特に好ましい。さらに活性化剤に硫酸等のアシル化の触媒を0.1質量%〜10質量%加えることもできる。
(アシル化)
セルロースとカルボン酸の酸無水物とをブレンステッド酸又はルイス酸(「理化学辞典」第五版(2000年)参照)を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をアシル化することが好ましい。
セルロース混合アシレートを得る方法は、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合又は逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を形成させてセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロースアシレートを一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基をさらにアシル化する方法等を用いることができる。
6位置換度の大きいセルロースアシレートの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号、特開2002−338601号等の各公報に記載がある。
(1)酸無水物
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜7のものを用いることができる。具体的には、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物である。酸無水物はセルロースの水酸基に対して1.1〜50当量添加することが好ましく、1.2〜30当量添加することがより好ましく、1.5〜10当量添加することが特に好ましい。
(2)触媒
アシル化触媒には、ブレンステッド酸又はルイス酸を使用することが好ましく、硫酸又は過塩素酸がより好ましく、好ましい添加量は0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
(3)溶媒
アシル化溶媒としては、好ましくはカルボン酸であり、さらに好ましくは炭素数2〜7のカルボン酸であり、特に好ましくは酢酸、プロピオン酸又は酪酸である。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
(4)アシル化条件
アシル化の反応熱による温度上昇を制御するために、アシル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。アシル化温度は−50℃〜50℃が好ましく、より好ましくは−30℃〜40℃、特に好ましく−20℃〜35℃である。反応の最低温度は−50℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上が特に好ましい。アシル化時間は0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましく、1.5時間〜10時間が特に好ましい。
(5)反応停止剤
アシル化反応の後に、反応停止剤を加えることが好ましい。反応停止剤は酸無水物を分解するものであればよく、水、アルコール(炭素数1〜3のもの)、カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)が挙げられ、中でも水とカルボン酸(酢酸)との混合物がさらに好ましい。水とカルボン酸との組成は、水が好ましくは5質量%〜80質量%、さらに好ましくは10質量%〜60質量%、特に好ましくは15質量%〜50質量%である。
(6)中和剤
アシル化反応停止後に中和剤を添加してもよい。中和剤の好ましい例としては、アンモニウム、有機4級アンモニウム、アルカリ金属、2族の金属、3〜12族金属、又は13〜15族元素の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩、水酸化物又は酸化物等を挙げることができる。特に好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウムの、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩又は水酸化物である。
(部分加水分解)
このようにして得られたセルロースアシレートは、全置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸等のアシル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、セルロースアシレートのアシル置換度を所望の程度まで減少させる。この後、残存触媒を前記の中和剤を用いて、部分加水分解を停止させる。
(ろ過)
セルロースアシレート中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物等を除去又は削減する目的として、アシル化工程から再沈殿工程の間のいずれかにおいて、セルロースアシレートを含む反応溶液をろ過することが好ましい。ろ過に用いるフィルタの保留粒子径は、好ましくは0.1μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは、0.5μm以上40μm以下であり、特に好ましくは、1μm以上30μm以下である。フィルタの保留粒子径が0.1μmより小さいと、ろ過圧の上昇が著しく、実質的に工業的な生産が困難である。また、保留粒子径が40μmより大きいと、異物の除去が十分にできない場合がある。また、濾過は2回以上繰り返してもよい。
フィルタの材質は溶媒によって悪影響を受けないものであれば特に限定されないが、好ましい例としては、セルロース系フィルタ、金属フィルタ、金属焼結フィルタ、セラミック焼結フィルタ、テフロン(登録商標)フィルタ(PTFEフィルタ)、ポリエーテルサルホンフィルタ、ポリプロピレンフィルタ、ポリエチレンフィルタ、ガラス繊維性フィルタ等を挙げることができ、これらを組み合わせて使用してもよい。中でもステンレス製の金属フィルタ、金属焼結フィルタが好ましい。
フィルタの材質として、電荷的捕捉機能を有するフィルタもまた、好ましく用いることができる。電荷的捕捉機能を有するフィルタとは、電気的に荷電異物を捕捉除去する機能を有するフィルタであり、通常、濾材に電荷を付与したものが用いられる。このようなフィルタの例としては、特表平4−504379号公報、特開2000−212226号公報等に記載されたものを選択することができる。
また、濾過助剤として、セライト、層状粘土鉱物(好ましくは、タルク、マイカ、カオリナイト等)等をセルロースアシレート溶液に混合し、これを濾過するいわゆるケーク濾過を行う方法も好ましく用いることができる。
ろ過圧や取り扱い性の制御の目的から、ろ過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。
(再沈殿)
セルロースアシレート溶液を、水もしくはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸等)水溶液と混合し再沈殿させる。再沈殿は連続式、バッチ式のいずれでもよい。
(洗浄)
再沈殿後、洗浄処理することが好ましい。洗浄は水又は温水を用い、pH、イオン濃度、電気伝導度、元素分析等で洗浄終了を確認することができる。
(安定化)
洗浄後のセルロースアシレートは、安定化のために、弱アルカリ(Na、K、Ca、Mg等の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物)を添加するのが好ましく、特にCa、Mgが好ましい。また、その添加量は、残留した硫酸触媒に対して、0.3〜5当量であることが好ましく、より好ましくは0.4〜4当量、さらに好ましくは0.5〜3当量である。
(乾燥)
50〜160℃でセルロースアシレートの含水率を2質量%以下にまで乾燥することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの質量平均重合度は100〜700であり、好ましくは150〜600、さらに好ましくは200〜500である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による分子量分布測定等の方法により測定できる。さらに、平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが用いられ、好ましくは1.5〜5.0であり、さらに好ましくは2.0〜4.5であり、特に好ましくは2.0〜4.5である。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの数平均重合度は100〜260、好ましくは100〜230、さらに好ましくは110〜200である。数平均重合度は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いた方法で測定される。
本実施の形態においては、セルロースアシレートのGPCによる重量平均重合度/数平均重合度が1.6〜3.6であることが好ましく、1.7〜3.3であることがさらに好ましく、1.8〜3.2であることが特に好ましい。
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合してもよい。また、セルロースアシレート以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フイルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上である。
1−1−2.置換又は無置換の芳香族アシル基を少なくとも1種を含むセルロースアシレート樹脂
本発明で用いられるセルロースアシレート樹脂としては、置換又は無置換の芳香族アシル基を少なくとも1種を含み、下記(S−3)式〜(S−4)式を満たすセルロースアシレート樹脂も好ましい。
(S−3)式:2.5≦A+C≦3.0
(S−4)式:0.1≦C<2
上記(S−3)式〜(S−4)式は、より好ましくは、
2.6≦A+C≦3.0
0.1≦C<1.5
さらに好ましくは、
2.7≦A+C≦3.0
0.1≦C<1.0
である。なお、上記式中、Aはアセテート基の置換度を示し、Cは置換又は無置換の芳香族アシル基を示す。
ここで、置換又は無置換の芳香族アシル基としては下記一般式(I)で表される芳香族アシル基があげられる。
Figure 2008307888
先ず、一般式(I)について説明する。Xは置換基で、置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基である。置換基Xの数nは、1〜5個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましく、1〜3個であることがさらに好ましく、1又は2個であることが最も好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。
上記アルキル基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基が置換基を有する場合は、該置換基の炭素原子数も含めた数が、前記炭素原子数であることが好ましい(以下、他の基についても同じ)。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が含まれる。
上記アルコキシ基は、環状構造又は分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。アリール基の例には、フェニル基及びナフチル基が含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アリールオキシ基の例には、フェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記アシル基の例には、ホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド基及びベンズアミド基が含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
上記スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミド基が含まれる。
上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイド基が含まれる。
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。
上記アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基が含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがより好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニル基が含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル基及びN−メチルカルバモイル基が含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル基及びN−メチルスルファモイル基が含まれる。
上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。
上記アルキニル基の例には、チエニル基が含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
このような化合物は、セルロースやセルロースアシレートの水酸基への芳香族アシル基の置換によって得られ、一般的には芳香族カルボン酸クラロイドあるいは芳香族カルボン酸から誘導される対称酸無水物及び混合酸無水物を用いる方法等が挙げられる。特に好ましいのは芳香族カルボン酸から誘導した酸無水物を用いる方法(Journal of Applied Polymer Science、Vol.29、3981−3990(1984)記載)が挙げられる。上記の方法として本発明の置換又は無置換の芳香族アシル基を含むセルロース化合物の製造方法としては、(1)セルロース脂肪酸モノエステル又はジエステルを一旦製造したのち、残りの水酸基に前記一般式(I)で表される芳香族アシル基を導入する方法、(2)セルロースに直接に、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の混合酸無水物を反応させる方法等が挙げられる。前記(1)の方法では、セルロース脂肪酸エステル又はジエステルの製造方法自体は周知の方法や,上記(1)のプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基を含むセルロースアシレート樹脂の製造方法等を採用でき、これにさらに芳香族アシル基を導入する後段の反応は、該芳香族アシル基の種類によって適宜定めることができるが、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃で、反応時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは30〜300分で行われる。また、前記(2)の混合酸無水物を用いる方法も、反応条件は混合酸無水物の種類によって適宜定めることができるが、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃、反応時間は、好ましくは30〜300分、より好ましくは60〜200分である。上記のいずれの反応も、反応を無溶媒又は溶媒中のいずれで行ってもよいが、好ましくは溶媒を用いて行われる。溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサン等を用いることができる。
以下に一般式(I)で表わされる芳香族アシル基の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2008307888
Figure 2008307888
Figure 2008307888
Figure 2008307888
これらの置換基の中でも、1〜9、18〜19、27〜28の置換基が好ましく、より好ましく1〜3の置換基であり、最も好ましいのが1の置換基である。
1−1−3.セルロースアシレート樹脂用添加剤
(安定剤添加剤)
本発明において、フイルム構成材料中に、安定剤の少なくとも一種を前記セルロースアシレートの加熱溶融前又は加熱溶融時に添加することが好ましい。これらは、フイルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光又は熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制又は禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。その時、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。これらの安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
安定剤の代表的な素材としては、フェノール系安定剤、亜リン酸系安定剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定剤、アミン系安定剤、エポキシ系安定剤、ラクトン系安定剤、アミン系安定剤、金属不活性化剤(スズ系安定剤)等が挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報等に記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定剤の少なくとも一つを用いることが好ましい。
安定剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、セルロース樹脂の質量に対して安定化剤の添加量は0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上0.8質量%以下である。
(フェノール系安定剤)
本発明において、フイルム構成材料の熱溶融時における安定化のために用いる化合物として有用なヒンダードフェノール系安定剤は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているもの等の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。
中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定剤を添加することが好ましい態様である。好ましいフェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。特に、ヒドロキシフェニル基に隣接する部位に置換基を有することが好ましく、その場合の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。本発明で用いることができるフェノール系安定剤はこれらに限定されるものではない。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox1076、Irganox1010、Irganox3113、Irganox245、Irganox1135、Irganox1330、Irganox259、Irganox565、Irganox1035、Irganox1098、Irganox1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
(亜リン酸系安定剤)
上記の亜リン酸系安定剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
本発明の亜リン酸エステル系安定剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物等を挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例を示すが本発明で用いることができる安定化剤はこれらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPを挙げることができる。
(チオエーテル系安定剤)
安定剤としてさらに使用されるチオエーテル系安定剤について記述する。本発明においてセルロースアシレートに添加することができるチオエーテル系安定剤も分子量500以上が好ましく、公知の任意のチオエーテル系安定剤を用いることができる。本発明で用いることができる好ましいチオエーテル系安定剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、住友化学株式会社からスミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
(エポキシ系安定剤)
エポキシ系安定剤は、酸捕捉剤として作用し、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(すなわち、4,4'−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子を有する脂肪酸と、4〜2個の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油等の組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及びエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
本発明のエポキシ系安定剤としては、脂肪族、芳香族、脂環族、芳香族脂肪族又はヘテロ環式構造を有し、側鎖としてエポキシ基を有する化合物も有用である。エポキシ基は好ましくは、グリシジル基としてエーテル又はエステル結合により分子の残基に結合するか、あるいはヘテロ環式アミン、アミド又はイミドのN−グリシジル誘導体である。これらのタイプのエポキシ化合物は広く公知であり、市販品として容易に入手可能である。これらの素材は特開平11−189706号の[0096]〜[0112]に詳細に記載されている。
以上の中でもより好ましくは、ET−4) エポキシ化リノール酸オクチル、ET−6) エポキシ化リシノール酸オクチル、ET−7) エポキシ化大豆油脂肪酸オクチル、ET−8) エポキシ化大豆油、ET−9) エポキシ化アマニ油であり、特に好ましくはET−8) エポキシ化大豆油、ET−9) エポキシ化アマニ油である。これらのエポキシ系素材は、アデカスタブ O−130P、アデカスタブ O−180A(旭電化工業株式会社)から、市販品として入手できる。
(スズ系安定剤)
上記スズ系安定剤としては、公知の任意のスズ系安定剤を用いることができる。好ましいスズ系安定剤の具体例としては、オクチル錫マレエートポリマー、モノステアリル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ジラウレートが挙げられる。
(酸捕捉剤)
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の光学フイルムにおいては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(すなわち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油等)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cも好ましく用いることができる。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、あるいはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落[0068]〜[0105]に記載されているものが含まれる。
なお、酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャ等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
本発明に用いられるフイルム形成材料中の酸捕捉剤は、少なくとも上記の1種以上選択でき、添加する量は、セルロースアシレートの質量に対して、光安定化剤の添加量は0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上2質量%以下である。
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートには、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースアシレートに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。その添加量は、調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーは制限なく使用できる。紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマーの重量平均分子量が2000以上30000以下であることが好ましく、より好ましくは5000以上20000以下である。
紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマー中の紫外線吸収性モノマーの含有量が1〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜60質量%である。
本発明に用いることのできる市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼン又はこの類似化合物がある。これらを単独又は共重合したポリマー又はコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
これらの紫外線吸収剤として、以下の市販品も利用できる。ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミソーブ340(住友化学社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業社製)等がある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成社製)、シーソーブ101(シプロ化成社製)、シーソーブ101S(シプロ化成社製)、シーソーブ102(シプロ化成社製)、シーソーブ103(シプロ化成社製)、アデカスタブLA−51(旭電化工業社製)、ケミソープ111(ケミプロ化成社製)、UVINUL D−49(BASF社製)等を挙げられる。また、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。さらにサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成社製)やシーソーブ202(シプロ化成社製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成社製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。これらの中でも、特にアデカスタブLA−31が好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤及び紫外線吸収性ポリマーの使用量は、化合物の種類、使用条件等により一様ではないが、紫外線吸収剤である場合には、光学フイルム1m2当たり0.2〜3.0gが好ましく、0.4〜2.0がさらに好ましく、0.5〜1.5が特に好ましい。また、紫外線吸収ポリマーである場合には、光学フイルム1m2当たり0.6〜9.0gが好ましく、1.2〜6.0がさらに好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
(ヒンダードアミン光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、又はそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系耐光安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、またこれらヒンダードアミン系耐光安定剤と可塑剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用しても、添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。これらを添加する時期は、溶融物(メルト)作製工程の何れの段階であってもよく、また、溶融物作製工程(メルト調製工程)の最後に添加剤を添加する工程を加えてもよい。
(可塑剤)
本発明の光学フイルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフイルムの改質の観点において好ましい。また本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロースアシレート単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフイルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、又は同じ加熱温度においてセルロースアシレートよりも可塑剤を含むフイルム構成材料の粘度が低下できる目的を含んでいる。
本発明に用いる可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマー又はシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマー等も好ましく用いられる。
可塑剤は液体であっても固体であってもよく、組成物の制約上無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が150℃以上、さらに200℃以上が好ましい。添加量は光学物性・機械物性に悪影響がなければよく、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択され、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜50質量部、より好ましくは0.01〜30質量部である。特に0.1〜15質量%が好ましい。以下、本発明に用いられる可塑剤について、その具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
(リン酸エステル系の可塑剤)
具体的には、リン酸シクロアルキルエステル、リン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。また、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また、置換基同士が共有結合で結合していてもよい。また、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。また、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また、置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
さらに、リン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。また、特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることも好ましい。さらに、リン酸エステル系可塑剤としては、特開2002−363423号公報の[0027]〜[0034]、特開2002−265800号公報の[0027]〜[0034]、特開2003−155292号公報の[0014]〜[0040]等に記載の揮発性し難いリン酸エステル化合物を好ましい例として挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤の具体例を以下に挙げるが、本発明で用いることができるリン酸エステル系可塑剤はこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、旭電化工業株式会社から、アデカスタブFP−500、アデカスタブFP−600、アデカスタブFP−700、アデカスタブFP−2100、アデカスタブPFR等として市販され、入手することができる。また、味の素化学株式会社から、レオフォースBAPPとして入手することができる。
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類、アジピン酸エステル類、芳香族多価カルボン酸エステル類、肪族多価カルボン酸エステル類、ジグリセリンテトラアセテート等の多価アルコールの脂肪酸エステル類等を挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、等を単独あるいは併用するのが好ましい。
本発明ではさらに糖類系可塑剤個の好ましく、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であるが、これらの単糖又は多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等)が置換されていることを特徴とする。置換基の例としては、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基等を挙げることができる。
単糖又は2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
ポリマー可塑剤も好ましく利用され、具体的には脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は、1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5,000〜200,000である。1,000以下では揮発性に問題が生じ、500,000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースアシレート誘導体組成物の機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよく、他の可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤、滑り剤及びマット剤等を含有させてもよい。
これらの化合物の添加量は、可塑剤がフイルムを構成する樹脂に対して、0.5〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜30質量%の範囲、さらに好ましくは1〜15質量%の範囲にある。これらの化合物の添加量は、上記目的の観点から調整することができる。
(微粒子)
本発明では、セルロースアシレートに微粒子を混合してもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明におけるセルロースアシレートに含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、セルロースアシレートフイルムを透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、セルロースアシレートに対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
また、本発明の製造方法により最終的に得られたセルロースアシレートフイルム中での微粒子の平均二次粒子サイズは0.01〜5μmであることが好ましく、0.02〜3μmであることがより好ましく、0.02〜1μmであることが特に好ましい。ここで、前記微粒子の平均二次粒子サイズは、セルロースアシレートフイルムを透過型電子顕微鏡(倍率10万〜100万倍)で観察し、粒子100個の二次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。前記無機化合物としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、V25、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましくは、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2及びV25の少なくとも1種であり、さらに好ましくはSiO2、TiO2、SnO2、Al23及びZrO2の少なくとも1種である。
前記SiO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品を使用することができる。また、前記ZrO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品を使用することができる。またシーホスターKE−E10、同E30、同E40、同E50、同E70、同E150、同W10、同W30、同W50、同P10、同P30、同P50、同P100、同P150、同P250(日本触媒)等も使用することができる。さらに、シリカマイクロビーズP−400、700(触媒化成工業株式会社製品)も使用することができる。また、SO−G1、SO−G2、SO−G3、SO−G4、SO−G5、SO−G6、SO−E1、SO−E2、SO−E3、SO−E4、SO−E5、SO−E6、SO−C1、SO−C2、SO−C3、SO−C4、SO−C5、SO−C6、(株式会社アドマテックス製)も使用することができる。さらに、シリカ粒子8050、同8070、同8100、同8150(株式会社モリテックス 製、水分散物を粉体化)も使用することができる。
なお、本発明では、予めセルロースアシレートに所望量よりも高濃度の安定剤を有する微粒子含有マスターペレットを作製しておいてもよい。これにより、微粒子の分散性のよいセルロースアシレートペレットが作製可能となり、優れた面状と表面の滑り性(キシミ防止)を備えたセルロースアシレートフイルムをハンドリング性よく製造することが可能になる。
この時、別途微粒子を含まないセルロースアシレートのマスターペレット(セルロースアシレートマスターペレット)を作製しておくことが必要である。その場合、微粒子含有マスターペレットには、同時に上記の安定剤を含有させておくことが好ましい。また、微粒子含有マスターペレット中の微粒子の添加量は特に制限されないが、好ましくはセルロースアシレートフイルム中の微粒子最終濃度の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2〜30倍であり、さらに好ましくは3〜25倍であり、特に好ましくは4〜20倍である。セルロースアシレートマスターペレットと微粒子含有マスターペレットの混合には、前記した混合機を利用することができる。なお、微粒子含有マスターペレットを作製する段階で、微粒子以外の添加剤(安定剤、可塑剤、その他の添加剤等)を一緒に添加してもよく、その場合も微粒子以外の添加剤の濃度は、好ましくはセルロースアシレートフイルム中の所望添加剤最終濃度の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2〜30倍であり、さらに好ましくは3〜25倍であり、特に好ましくは4〜20倍である。
(光学調整剤)
本発明におけるセルロースアシレートには、光学調整剤を添加することができる。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
1−2.シクロオレフィン樹脂
本発明は、本発明における熱可塑性樹脂として、シクロオレフィン樹脂を用いることも好ましい。シクロオレフィン樹脂として、後述するシクロオレフィン樹脂−A、及びシクロオレフィン樹脂−Bのいずれも好ましく用いることができる。
1−2−1.シクロオレフィン樹脂−A
本発明で使用するシクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィン樹脂−A)としては、例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィン等のオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂等が挙げることができる。重合方法及び水素添加方法は、常法により行なうことができる。
前記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、及びそのアルキル及び/又はアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキル及び/又はアルキリデン置換体、及びハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン;等が挙げられる。
1−2−2.シクロオレフィン系樹脂−B
また、シクロオレフィン系樹脂として、下記一般式(1)〜(4)で表わされるものを挙げることができ、これらのうち、下記一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
Figure 2008307888
一般式(1)〜(4)中、A、B、C及びDは、水素原子又は1価の有機基を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基である。
これらのシクロオレフィン樹脂の重量平均分子量としては、通常5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは8,000〜200,000である。
本発明におけるシクロオレフィン樹脂としては、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報等に記載されている樹脂等を挙げることができる。
これらの樹脂の中でも、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られる水添重合体が特に好ましい。
これらのシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は120℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは140℃以上であり、飽和吸水率は1質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8質量%以下とされる。前記一般式(1)〜(4)で表わされるシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)及び飽和吸水率は、置換基A、B、C、Dの種類を選択することにより制御することができる。
本発明におけるシクロオレフィン樹脂としては、下記一般式(5)で表わされる少なくとも1種のテトラシクロドデセン誘導体を単独で、あるいは、当該テトラシクロドデセン誘導体と、これと共重合体可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体を用いてもよい。
Figure 2008307888
式中、A、B、C及びDは、水素原子又は1価の有機基を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基である。
前記一般式(5)で表わされるテトラシクロドデセン誘導体において、A、B、C及びDのうち少なくとも1つが極性基であることにより、他の材料との密着性、耐熱性等に優れた偏光フイルムを得ることができる。さらに、この極性基が−(CH2nCOOR(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数を示す。)で表わされる基であることが、最終的に得られる水添重合体(偏光フイルムの基材)が高いガラス転移温度を有するものとなるので好ましい。特に、この−(CH2nCOORで表わされる極性置換基は、一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体の1分子あたりに1個含有されることが吸水率を低下させる点から好ましい。前記極性置換基において、Rで示される炭化水素基の炭素数が多くなるほど得られる水添重合体の吸湿性が小さくなる点では好ましいが、得られる水添重合体のガラス転移温度とのバランスの点から、当該炭化水素基は、炭素数1〜4の鎖状アルキル基又は炭素数5以上の(多)環状アルキル基であることが好ましく、特にメチル基、エチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。
さらに、−(CH2nCOORで表わされる基が結合した炭素原子に、炭素数1〜10の炭化水素基が置換基として結合されている一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、得られる水添重合体の吸湿性が低いものとなるので好ましい。特に、この置換基がメチル基又はエチル基である一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、その合成が容易な点で好ましい。具体的には、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エンが好ましい。これらのテトラシクロドデセン誘導体、及びこれと共重合可能な不飽和環状化合物の混合物は、例えば特開平4−77520号公報第4頁右上欄12行〜第6頁右下欄第6行に記載された方法によってメタセシス重合、水素添加することができる。
これらのシクロオレフィン系樹脂は、クロロホルム中、30℃で測定される固有粘度(ηinh)が、0.1〜1.5dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.2dl/gである。また、水添重合体の水素添加率としては、60MHz、1H−NMRで測定した値が50%以上とされ、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上である。水素添加率が高いほど、得られる飽和ノルボルネンフイルムは、熱や光に対する安定性が優れたものとなる。該水添重合体中に含まれるゲル含有量が5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下である。
さらに、下記構造のシクロオレフィン樹脂を本発明のフイルムに使用することができる。本発明では、シクロオレフィン樹脂として、[A−1]:炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと下記式(I)で表される環状オレフィンとのランダム共重合体の水素添加物、[A−2]:下記式(I)で表される環状オレフィンの開環重合体又は共重合体の水素添加物等を挙げることができる。
Figure 2008307888
これらのシクロオレフィン樹脂は、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)が、70℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは70〜250℃であり、特に120〜180℃が好ましい。
また、これらのシクロオレフィン樹脂は、非晶性又は低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは2%以下である。
また、本発明のシクロオレフィンは、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜20dl/gであり、好ましくは0.03〜10dl/g、さらに好ましくは0.05〜5dl/gであり、ASTM D1238に準じ260℃荷重2.16kgで測定した溶融流れ指数(MFR)は、通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは1〜100g/10分、さらに好ましく5〜50g/10分である。
さらに、シクロオレフィン樹脂の軟化点は、サーマルメカニカルアナライザー(TMA)で測定した軟化点として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80〜260℃である。
上記式(I)で表わされるシクロオレフィン樹脂の構造の詳細について述べる。
上記式(I)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1である。なお、qが1の場合には、Ra及びRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子又は炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
1〜R18並びにRa及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。さらに上記式(I)において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環又は多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環又は多環は二重結合を有していてもよい。
上記式(I)で示される環状オレフィンを、より具体的に次に例示する。一例として、
Figure 2008307888
で示されるビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(=ノルボルネン)(上記一般式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)及び該化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等を例示することができる。
さらに他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン等のビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン誘導体を例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン等のトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン等のトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン誘導体、
Figure 2008307888
で示されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、及びこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
その炭化水素基として、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等を例示することができる。
さらには、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物等のテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン及びその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン及びその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン及びその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセン及びその誘導体等が挙げられる。
これらのシクロオレフィン樹脂の具体例は、上記した通りであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7-145213号公報明細書の段落[0032]〜[0054]に示されている。
また、これらのシクロオレフィン樹脂の合成法については、特開2001−114836号公報明細書の段落[0039]〜[0068]を参考に実施することができる。
また、本発明のシクロオレフィン樹脂として下記のものも使用可能である。
下式I,II,II',III,IV,V又はVI
Figure 2008307888
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7及びR8は、同じか又は異なっていて、水素、例えば線状又は枝分れC1〜C8−アルキル基、C6〜C18−アリール基、C7〜C20−アルキレンアリール基、環式又は非環式C2〜C20−アルケニル基のようなC1〜C20−炭化水素基であり、もしくは飽和、不飽和又は芳香族の環を形成し、また同じ基R1〜R8は、異なる式I〜VIにおいて異なっていてもよく、また、nは、0〜5である。)で表される少なくとも一種類の環式オレフィンの重合単位、及び、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0〜99モル%の、下式VII
Figure 2008307888
(式中、R9,R10,R11及びR12は、同じか又は異なっていて、水素、例えばC1〜C8−アルキル基又はC6〜C18−アリール基のような線状又は枝分れ、飽和又は不飽和のC1〜C20−炭化水素基である。)で表される一種類以上の非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むポリマーから成る組から選択される少なくとも一種類のシクロオレフィンコポリマーであってもよい。
また、シクロオレフィンポリマーは、式I〜VIを有するモノマーの少なくとも一種類を開環重合し、次に得られた生成物を水素化することによって得ることもできる。
また、さらに、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として0〜45モル%の、下式VIII
Figure 2008307888
(式中、nは2〜10の数である。)
で表される一種類以上の単環式オレフィンから誘導される重合単位を含むことができる。
環式、特に多環式オレフィンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、好ましくは3〜75モル%である。非環式オレフィンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、好ましくは5〜80モル%である。
シクロオレフィンコポリマーは、好ましくは、一種類以上の多環式オレフィン、特に式I又は式IIIで表される多環式オレフィンから誘導される重合単位、及び、式VIIで表される一種類以上の非環式オレフィン、特に2〜20個の炭素原子を有するα-オレフィンから誘導される重合単位から成っている。好ましくは、特に、式I又は式IIIで表される多環式オレフィンから誘導される重合単位、及び式VIIで表される非環式オレフィンから誘導される重合単位から成るシクロオレフィンコポリマーである。好ましくは、さらに、式I又は式IIIで表される多環式モノオレフィンから誘導される重合単位、式VIIで表される非環式モノオレフィンから誘導される重合単位、及び少なくとも二つの二重結合を含む環式又は非環式オレフィン(ポリエン)、例えばノルボルナジエンのような特に環式、好ましくは多環式のジエン、特に好ましくは例えばC2〜C20−アルケニル基を運ぶビニルノルボルネンのような多環式アルケンから誘導される重合単位から成るターポリマーである。
本発明に従うシクロオレフィンポリマーは、好ましくはノルボルネン構造をベースとするオレフィン、特に好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、所望ならば、ビニルノルボルネン又はノルボルナジエンを含む。また、好ましくは、例えば2〜20個の炭素原子を有するα−オレフィン、特に好ましくはエチレン又はプロピレンのような末端二重結合を有する非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むシクロオレフィンコポリマーである。特に好ましくは、ノルボルネン・エチレンコポリマー及びテトラシクロドデセン・エチレンコポリマーである。
ターポリマーの中では、特に好ましくは、ノルボルネン・ビニルノルボルネン・エチレンターポリマー、ノルボルネン・ノルボルナジエン・エチレンターポリマー、テトラシクロドデセン・ビニルノルボルネン・エチレンターポリマー、及びテトラシクロドデセン・ビニルテトラシクロドデセン・エチレンターポリマーである。ポリエン、好ましくはビニルノルボルネン又はノルボルナジエンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0.1〜50モル%、特に好ましくは0.1〜20モル%であり、式VIIで表される非環式モノオレフィンの割合は、0〜99モル%、好ましくは5〜80モル%である。上記ターポリマーでは、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0.1〜99モル%、好ましくは3〜75モル%である。
好ましくは、本発明に従うシクロオレフィンコポリマーは、式Iで表される多環式オレフィンから誘導することができる重合単位及び式VIIで表される非環式オレフィンから誘導することができる重合単位を含む少なくとも一種類のシクロオレフィンコポリマーを含む。
このようなシクロオレフィンコポリマーは特開平10−168201の段落[0019]〜[0020]に従い合成することができる。
1−2−3.シクロオレフィン系樹脂用添加剤
本発明におけるシクロオレフィン系樹脂には、安定剤の少なくとも一種を前記シクロオレフィン系樹脂の加熱溶融前又は加熱溶融時に添加することが好ましい。これらは、フイルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光又は熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制又は禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。その時、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。これらの安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
安定剤の代表的な素材としては、フェノール系安定剤、亜リン酸系安定剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定剤、アミン系安定剤、エポキシ系安定剤、ラクトン系安定剤、アミン系安定剤、金属不活性化剤(スズ系安定剤)等が挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報等に記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定剤の少なくとも一つを用いることが好ましい。
安定剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、シクロオレフィン系樹脂の質量に対して安定化剤の添加量は0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上0.8質量%以下である。
本発明で用いることができるフェノール系安定剤はヒンダードフェノール系安定剤が好ましい。例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているもの等の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定剤を添加することが好ましい態様である。特に、ヒドロキシフェニル基に隣接する部位に置換基を有することが好ましく、その場合の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。本発明で用いることができるフェノール系安定剤はこれらに限定されるものではない。これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox1076、Irganox1010、Irganox3113、Irganox245、Irganox1135、Irganox1330、Irganox259、Irganox565、Irganox1035、Irganox1098、Irganox1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
さらに、シクロオレフィン系樹脂には、所望により、亜リン酸系安定剤、チオエーテル系安定剤、エポキシ系安定剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤等の老化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、微粒子等の各種添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は前述セルロースアシレート樹脂用の亜リン酸系安定剤、チオエーテル系安定剤、エポキシ系安定剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、微粒子と同様なものを用いることができる。これらの添加剤の添加量は、シクロオレフィン系樹脂の質量に対して0.001質量%以上3質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下である。
1−3.ラクトン環含有重合体
下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有するものを指す。
Figure 2008307888
一般式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
一般式(1)のラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
一般式(1)で表されるラクトン環構造以外に、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2a)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
Figure 2008307888
一般式(2a)中、R4は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、又は−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5及びR6は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
例えば、国際公開第2006/025445号パンフレット、特開2007−70607号公報、特開2007−63541号公報、特開2006−171464号公報、特開2005−162835号公報記載のものを用いることができる。
ラクトン環含有重合体樹脂用の添加剤は前述セルロースアシレート樹脂またはシクロオレフィン系樹脂用の各種添加剤(安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、微粒子、光学調整剤など各種添加剤)を用いることが出来る。これらの添加剤の添加量は、ラクトン環含有重合体樹脂の質量に対して0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上5.0質量%以下である。
1−4.ポリカーボネート系樹脂
ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法又は溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報に記載のものや特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。ポリカーボネート系樹脂用の添加剤は前述セルロースアシレート樹脂用の添加剤(安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、微粒子、光学調整剤など各種添加剤)を用いることができる。
2.熱可塑性フイルムの製造方法
2−1.溶融製膜
以下に、本発明の熱可塑性フイルムの製造方法について、詳細に記述する。なお、本発明の熱可塑性フイルムは、これらの方法により製造されたものに限定されるものではない。
2−1−1.ペレット化
上記熱可塑性樹脂と添加物は溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化前に熱可塑性樹脂及び添加物は事前に乾燥を行うことが好ましい。ベント式押出機を用いることで、これを代用することもできる。
ペレット化は上記熱可塑性樹脂と添加物を2軸あるいは1軸混練押出機を用い、セルロースアシレート樹脂の場合150℃〜250℃で溶融後、シクロオレフィン系樹脂の場合150℃〜280℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作成することができる。水中に直接押出ながらカットするアンダーウオーターカット法でペレット化を行ってよい。
好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmであり、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは30rpm〜500rpm以下である。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜30分、好ましくは30秒〜3分である。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは30rpm〜500rpm以下である。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜30分、好ましくは30秒〜3分である。
2−1−2.乾燥
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を乾燥して含水率を0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下にすることが好ましい。ペレット状の樹脂乾燥は通常用いられる何れの乾燥方法も用いることができる。例えば除湿エアーを循環する乾燥機、熱風乾燥機、真空乾燥機、超音波乾燥機、高周波乾燥機、赤外線乾燥機等が上げられる。このための乾燥温度は40〜180℃が好ましく、さらに好ましくは60〜160℃、特に好ましくは80〜140℃である。乾燥風量は多いほど乾燥効率は上がるが、水分除去効率と経済性を考慮すると1時間あたりに樹脂100kgを乾燥させるのに必要な風量としては好ましくは10〜200m3/時間で有り、特に好ましくは50〜125m3/時間である。乾燥風の露点は好ましくは−60℃〜0℃で有り、乾燥効率と経済性を考慮するとより好ましくは−40℃〜−20℃である。
2−1−3.溶融押出し
乾燥した熱可塑性樹脂を押出機の供給口からシリンダ内に供給する。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、より好ましくは2.5〜4.0である。L(スクリュー長)/D(スクリュー径)は20〜70が好ましく、より好ましくは24〜50である。セルロースアシレート樹脂の押出温度は190〜240℃が好ましく、特に好ましくは195〜230℃である。また,シクロオレフィン系樹脂の押出温度は、210℃〜280℃が好ましく、より好ましくは、220℃〜260℃、特に好ましくは240℃〜260℃である。また、押出機のバレルは3〜20に分割したヒータで加熱し溶融することが好ましい。
スクリューは、フルフライト、マドック、ダルメージ等何れのタイプを用いることが可能であるが、均一な可塑化と、滞留部分の発生防止及びせん断発熱による熱劣化を考慮し、適宜組み合わせて適正なスクリュー設計を行うことが必要である。
樹脂の酸化防止のために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。
2−1−4.濾過
ギアポンプ保護の点から、押し出し機出口にブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。用いるフィルタのサイズは20〜600メッシュが好ましく、さらに好ましくは40〜400メッシュ、特に好ましくは50〜300メッシュである。
高精度濾過のために、ギアポンプの後段にリーフ型ディスクフィルタ型の濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、単段で行っても、多段で行ってもよい。濾材の濾過精度は3μmm〜15μmmが好ましく、さらに好ましくは3μmm〜10μmmである。濾材はステンレス鋼,スチールを用いることが好ましく、中でもステンレス鋼が望ましい。濾材は線材を編んだもの、金属焼結濾材が使用でき、特に後者が好ましい。
2−1−5.ギアポンプ
厚み精度向上(吐出量の変動減少)のために、押出機とダイスの間にギアポンプを設置するのが好ましい。これにより、ダイ部分の樹脂圧変動巾を±1%以内にできる。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も好ましい。3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。ギアポンプ内の滞留部分が樹脂劣化の原因となるため、滞留の少ない構造が好ましい。また、軸受け部分に滞留して熱劣化した樹脂を軸のクリアランスから放出することにより、熱劣化ポリマーの混入を防止することも有効である。
押出機とギアポンプ、ギアポンプとダイ等をつなぐアダプタの温度変動を小さくすることが押出圧力安定のために好ましい。このためにアルミ鋳込みヒータを用いることがより好ましい。
2−1−6.ダイ
ダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。又、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサを入れることも問題ない。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフイルム厚みの1.0〜20.0倍がよく、さらに好ましくは3.0〜15倍である。特に好ましくは5.0〜10倍である。
ダイのクリアランスは40〜50mm間隔で調整可能であることが好ましく、より好ましくは25mm間隔以下である。また、下流のフイルム厚みを計測してダイの厚み調整にフィードバックさせる方法も厚み変動の低減に有効である。
機能層を外層に設けるため、多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフイルムの製造も可能である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分以上60分以下であり、好ましくは2分30秒以上30分以下である。
2−1−7.キャスティングロール
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングロール上で冷却固化し、フイルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバ法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い密着を上げることが好ましい。タッチロール法ではキャスティングロールにタッチロールを押し当てて製膜する。またエッジピニング(フイルムの両端部のみを密着させる方法)も好ましい。
キャスティングロールは1〜8本、より好ましくは2〜5本用い、徐冷する方法が好ましい。ロール直径は50mm〜5000mmが好ましく、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングロールは60℃〜160℃が好ましく、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
この後、キャスティングロールから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。このようにして得た未延伸フイルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは50μm〜200μmである。
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでもよい。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。この厚みは0.1mm以上7mm以下が好ましく、より好ましくは0.2mm以上5.5mm以下、さらに好ましくは0.2mm以上4mm以下である。タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは80℃〜140℃である。タッチロールの抑え圧は0.1〜10MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜8MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaである。ここでいう押さえ圧とは、タッチロールを押付ける力を、タッチロールとキャスティングロールの接触面積で割った値を指す。タッチロールを用いた製膜法は、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報に記載のものを利用できる。
静電印加を行うことでも本発明を実施することができる。静電印加は、メルトに静電気を与え、これによりキャスティングロールとの密着を改良するものである。静電印加はメルト全面に付与してもよく、両端あるいは片端に付与してもよい。具体的には、例えば、特開平7−52232号公報、特開平8−111347号公報、特開平10−315306号公報、特開平10−323881号公報等に記載の方法を使用することができる。
本発明では、両端に静電印加するエッジピニンング法を用いる方法が、全幅に渡り静電印加する方法より好ましい。静電印加する幅は一端あたり全幅の1%〜20%が好ましく、より好ましくは2%〜15%、さらに好ましくは3%〜12%である。すなわち、全面に渡って静電印加を行うと幅全面に渡り急冷され、大きな熱収縮応力が発生するため、縦すじが発生し易いが、両端のみをを静電印加する方法では、必要な端部のみを効率的に冷却するため熱収縮応力も小さく、縦すじが発生し難くより好ましい。幅静電印加はメルトが接触する直上1cm〜30cmのところに3kV〜20kV、より好ましくは4kV〜15kV、さらに好ましくは5kV〜12kVの電圧を電極に加えることが好ましい。電極は針状のものを使用することができ、この本数を増やすことで静電印加の幅を調整できる。このようなエッジピニングの方法は例えば特開2003−94509号公報、特開2004−91619号公報、特開2003−160819号公報、特開2005−14522号公報等に記載の方法を用いることができる。
2−1−8.巻取り
巻取り前に両端をトリミングすることが好ましい。トリミングされた部分はフイルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等何れを用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼、セラミックを用いることができる。
好ましい巻取り張力は1kg/m幅〜50kg/m幅、より好ましくは3kg/m幅〜20kg/m幅である。巻取り張力は、一定の巻取り張力で巻き取ってもよいが、巻取り径に応じてテーパーをつけ巻取ることがより好ましい。
また、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフイルムに規定以上の張力がかからないようにすることが必要である。
巻取り前に、少なくとも片面にラミフイルムを付けてもよい。また、両端あるいは片端にローレットを付与することも好ましい。
2−1−9.回収
製膜した未延伸フイルムや延伸フイルムを製品サイズに合わせるためのトリミング工程や、製膜条件調整時には屑フイルムが発生する。発生量は投入原料の5〜30%程度に達するため、屑フイルムを粉砕し、新原料と混合あるいは単独で再利用することは、コスト面及び環境面から極めて重要である。
(フイルムの粉砕)
発生した屑フイルムは、製膜時のオンライン上で、連続した短冊状のままピンチロール又は送風機で粉砕機へ送って細片状に粉砕する方法が好ましく、一旦巻取り機で巻き取った後、にオフラインの粉砕機で粉砕する方法でも構わない。フイルム端部の熱劣化が激しいフイルムの場合には、フイルムの端部のみをスリットして除去して用いてもよい。
粉砕機、固定刃と回転刃との接触により粉砕(切断・せん断)するものやシュレッダーの様な短冊状に細切り状に切断するもの、あるいはカッターミルのようなせん断力を利用する粉砕機(細断機)やブロワーカッターやハンマーミル等を利用できる。粉砕刃は、平刃、くし刃、ロータリー刃等を用いることができる。
粉砕するフイルムのサイズは、通常0.1〜30mmであり、好ましくは0.5〜15mm、さらに好ましくは1〜10mm程度である。粉砕サイズが大き過ぎると配管に詰まり易く、一方、粉砕サイズが小さ過ぎても、配管内部に付着し易く好ましくない。粉砕サイズは、通過させるメッシュの穴径で調整することができる。
また、一次破砕機ではやや大きいサイズに粉砕し、二次粉砕機で目標サイズに粉砕するような、多段粉砕も有効である。さらに粉砕時に剪断発熱し粉砕フイルムがブロッキングすることを防止するため、発熱し難い構造、冷却機能を有する粉砕機の利用が有効である。
粉砕時に金属部同士が接触し金属粉が発生するのを防止するため、磁力を有した金属除去装置により取り除くことが有効である。また、フイルム屑に付着したゴミを洗浄、乾燥で除去してもよい。
粉砕フイルムは、加圧あるいは減圧よる気体搬送が好ましく、コンベアやロータリーフィーダによる輸送等でもよい。また、粉砕フイルムはかさ比重が小さいため、圧縮機を用いたり、単軸あるいは二軸押出機を用いたリペレット化を行なっても問題ない。
(粉砕原料の乾燥)
粉砕フイルムは、吸湿を防止した粉砕機を用いて、インラインで直ちに原料に戻す場合は乾燥が不要だが、通常は所定の水分率にするため乾燥が必要であり、熱風乾燥機、ドライエアー乾燥機、真空乾燥機、超音波乾燥機、赤外線乾燥機等を使用できる。
(粉砕原料輸送・供給)
粉砕、乾燥処理したフイルムは気送配管により原料タンクに供給され、バージン原料と混合し、ホッパーへ供給してもよい。また、粉砕フイルムとバージン原料を別々に計量し、押出機機に供給してもよい。粉砕フイルム原料とバージン原料の混合割合は重量比で1:99〜70:30が好ましく、さらに好ましくは5:95〜50:50である。これにより、粉砕フイルムとバージン原料の嵩密度が異なっても押出機への供給安定性が良好で好ましい。但し、リペレット化した場合は、フイルム物性に問題がなければ、上記範囲である必要はなく、任意の配合比率で混合することが可能である。
2−3.延伸工程
溶融製膜、溶液製膜した熱可塑性フイルムは横延伸されるが、これと合わせて縦延伸、緩和処理をおこなってもよい。これらは例えば以下の組合せで実施できる。
(a)横延伸
(b)横延伸→緩和処理
(c)縦延伸→横延伸
(d)縦延伸→横延伸→緩和処理
(e)縦延伸→緩和処理→横延伸→緩和処理
(f)横延伸→縦延伸→緩和処理
(g)横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
(h)縦延伸→横延伸→縦延伸
(i)縦延伸→横延伸→縦延伸→緩和処理
これらの中でより好ましいのが、(a)〜(d)であり、さらに好ましいのが(b)、(d)である。
2−3−1.縦延伸
縦延伸は2対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで達成できる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフイルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、縦横比が0.01以上0.3以下(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
好ましい縦延伸倍率は1.01倍〜3倍が好ましく、1.03倍〜2.2倍がより好ましく、さらに好ましくは1.05倍〜1.5倍である。ここでいう延伸倍率とは、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率=(延伸後の長さ)/(延伸前の長さ)
2−3−1−a.長スパン延伸
延伸に伴いフイルムは伸張されるが、この時フイルムは体積変化を小さくしようと厚み、幅を減少させる。このときニップロールとフイルム間の摩擦により幅方向の収縮が制限される。このためニップロール間隔を大きくすると幅方向収縮しやすくなり厚み減少を抑制できる。厚み減少が大きいとフイルムが厚み方向に圧縮されたことと同じ効果があり、フイルム面内に分子配向が進みRthが大きくなり易い。縦横比が大きく厚み減少が少ないとこの逆でRthは発現し難く低いRthを実現できる。
さらに縦横比が長いと幅方向の均一性を向上することができる。これは以下の理由による。
(a)縦延伸に伴いフイルムは幅方向に収縮しようとする。幅方向中央部では、その両側も幅方向に収縮しようとするため、綱引き状態となり自由に収縮できない。
(b)一方フイルム幅方向端部は片側としか綱引き状態とならず、比較的自由に収縮できる。
(c)この両端と中央部の延伸に伴う収縮挙動の差が幅方向の延伸むらとなる。
このような両端と中央部の不均一性により、幅方向のレターデーションむら、軸ずれ(遅相軸の配向角分布)が発生する。これに対し、長スパン延伸は長い2本のニップロール間でゆっくり延伸されるため、延伸中にこれらの不均一性の均一化(分子配向が均一になる)が進行する。これに対し、通常の縦延伸(縦横比=0.3を超え2未満)では、このような均一化は発生しない。
縦横比は2を越え50以下が好ましく、より好ましくは3〜40、さらに好ましくは4〜20である。好ましい延伸温度は(Tg−5)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃である。好ましい延伸倍率は1.05〜3倍であり、より好ましくは1.05〜1.7倍、さらに好ましくは1.05〜1.4倍である。このような長スパン延伸は3対以上ニップロールで多段延伸延伸してもよく、多段のうち最も長い縦横比が上記範囲に入っていればよい。
このような長スパン延伸は所定の距離離した2対のニップロールの間でフイルムを加熱して延伸すればよく、加熱方法はヒータ加熱法(赤外線ヒータ、ハロゲンヒータ、パネルヒータ等をフイルム上や下に設置し輻射熱で加熱)でもよく、ゾーン加熱法(熱風等を吹き込み所定の温度に調温したゾーン内で加熱)でもよい。本発明では延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。このとき、ニップロールは延伸ゾーン内に設置してもよく、ゾーンの外に出してもよいが、フイルムとニップロールの粘着を防止するためにはゾーンの外に出すのが好ましい。このような延伸の前にフイルムを予熱することも好ましく、予熱温度はTg−80℃以上、Tg+100℃以下である。
このような延伸により、Re値が、0〜200nm、より好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは15nm〜100nm、Rth値が30〜500nm、より好ましくは50〜400nm、さらに好ましくは70〜350nmである。この延伸法により、RthとReの比(Rth/Re)を0.4〜0.6、より好ましくは0.45〜0.55とすることができる。さらに本延伸により、Re値及びRth値のばらつきがいずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にすることができる。
このような延伸に伴い、延伸前後のフイルム幅の比(延伸後のフイルム幅/延伸前のフイルム幅)は0.5〜0.9、より好ましくは0.6〜0.85、さらに好ましくは0.65〜0.83となる。
2−3−1−b.短スパン延伸
縦横比(L/W)を0.01を越え0.3未満、より好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2で縦延伸(短スパン延伸)を行う。このような範囲の縦横比(L/W)で延伸を行うことで、ネックイン(延伸に伴う延伸と直行する方向の収縮)を小さくすることができる。延伸方向の伸張を補うため幅、厚みが減少するが、このような短スパン延伸では幅収縮が抑制され厚み減少が優先的に進む。この結果、厚み方向に圧縮されたようになり、厚み方向の配向(面配向)が進む。この結果厚み方向の異方性の尺度であるRthが増大し易い。一方、従来は縦横比(L/W)が1前後(0.7〜1.5)で行われるのが一般的であった。これは、通常ニップロール間に加熱用ヒータを設置して延伸するが、L/Wが大きくなりすぎるとヒータでフイルムを均一に加熱できず延伸むらが発生し易く、L/Wが小さすぎるとヒータが設置しにくく加熱が十分に行えないためである。
上述の短スパン延伸は2対以上のニップロール間で搬送速度を変えることにより実施できるが、通常のロール配置(図1参照)と異なり、2対のニップロールを斜めに(前後のニップロールの回転軸を上下にずらす)配置することで達成できる(図3参照)。これに伴い、ニップロール間に加熱用ヒータは設置できないため、ニップロール中に熱媒を流しフイルムを昇温することが好ましい。さらに入口側ニップロールの前に内部に熱媒を流した予熱ロールを設け、フイルムを延伸前に加熱することも好ましい。
好ましい延伸温度は(Tg−5)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃であり、好ましい予熱温度はTg−80℃以上、Tg+100℃以下である。
2−3−2.横延伸
横延伸はテンターを用い実施することができる。すなわち、フイルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。このとき、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg−5℃以上Tg+45℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+30℃以下がさらに好ましい。好ましい延伸倍率は1.01倍以上4倍以下、より好ましく1.03倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは1.05倍以上2.5倍以下である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、すなわち、延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃以上50℃以下、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以下高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フイルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃以上50℃以下、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以上低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下で、且つ、Tg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フイルム中に残留歪が発生しやすくRe、Rthの経時変動を増大し易く好ましくない。
このような予熱、熱固定により配向角やRe,Rthのばらつきを小さくできるのは下記理由による。
フイルムは幅方向に延伸され、直行方向(長手方向)に細くなろうとする(ネックイン)。このため横延伸前後のフイルムが引っ張られ応力が発生する。しかし幅方向両端はチャックで固定されており応力により変形を受けにくく、幅方向の中央部は変形を受け易い。この結果、ネックインによる応力は弓(bow)状に変形しボーイングが発生する。これにより面内のRe,Rthむらや配向軸の分布が発生する。
これを抑制するために、予熱側(延伸前)の温度を高くし、熱処理(延伸後)の温度を低くすると、ネックインはより弾性率の低い高温側(予熱)で発生し、熱処理(延伸後)では発生しにくくなる。この結果、延伸後のボーイングを抑制できる。
このような延伸により、さらに、Re、Rthの幅方向、長手方向のばらつきを、いずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にできる。さらに配向角を90°±5°以下又は0°±5°以下とすることができ、より好ましくは90°±3°以下又は0°±3°以下、さらに好ましくは90°±1°以下又は0°±1°以下とすることができる。
本発明では、このような効果が高速延伸でも達成できることが特徴であり、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分以上、さらに好ましくは30m/分以上でも顕著に効果が現れる。
2−4.緩和処理
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良することができる。熱緩和は縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましく、より好ましく横延伸後である。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和はTg−30℃以上Tg+30℃以下、より好ましくTg−30℃以上Tg+20℃以下、さらに好ましくはTg−15℃以上Tg+10℃以下で、1秒以上10分以下、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下、0.1kg/m以上20kg/m以下、より好ましく1kg/m以上16kg/m以下、さらに好ましくは2kg/m以上12kg/m以下の張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
3.熱可塑性フイルムの物性
3−1.未延伸フイルムの物性
(セルロースアシレートフイルム)
このようにして得た未延伸セルロースアシレートフイルムはRe=0〜20nm,Rth=0〜80nmが好ましく、より好ましくはRe=0〜10nm,Rth=0〜60nm、さらに好ましくはRe=0〜10nm,Rth=0〜30nmである。Re、Rthは各々面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で光をフイルム法線方向に入射させて測定される。Rthはセルロースアシレートフイルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フイルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフイルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定する。その測定されたレタデーション値(Re)と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRで算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値がゼロとなる方向をもつフイルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRで算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
Figure 2008307888
注記:上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値をあらわす。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d ・・・・式(2)
測定されるフイルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフイルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフイルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRで算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フイルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フイルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRでnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
また、製膜方向(長手方向)と、フイルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。
Reの湿度変化((25℃10%rhで測定したRe)−(25℃80%rhで測定したRe))は0nm以上8nm以下が好ましく、より好ましくは0nm以上5nm以下である。Rthの湿度変化((25℃10%rhで測定したRth)−(25℃80%rhで測定したRth))は0nm以上20nm以下が好ましく、より好ましくは0nm以上10nm以下である。
光弾性係数はMD(長手方向)、TD(幅方向)とも13×10-13(cm2/dyn)以上25×10-13(cm2/dyn)以下が好ましく、より好ましくは14×10-13(cm2/dyn)以上20×10-13(cm2/dyn)以下である。
全光透過率は90%〜100%が好ましい。ヘイズは0〜1%であり、好ましくは0〜0.6%である。
厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%以上3%以下が好ましく、さらに好ましくは0%以上2%以下である。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。破断伸度は3%以上300%以下が好ましい。
Tgは、95℃以上145℃以下が好ましい。80℃1日での熱寸法変化は縦、横両方向とも0%〜±1%が好ましく、さらに好ましくは0%〜±0.3%である。
40℃90%rhでの透水率は300g/m2・日〜1500g/m2・日が好ましく、さらに好ましくは500g/m2・日〜1300g/m2・日である。25℃80%rhでの平衡含水率は1wt%〜4wt%が好ましく、さらに好ましくは1.5wt%〜2.5wt%である。
熱膨張係数はMD、TDとも50ppm/℃以上180ppm/℃以下が好ましく、より好ましくは100ppm/℃以上160ppm/℃以下である。湿度熱膨張係数はMD、TDとも40ppm/℃以上90ppm/℃以下が好ましく、より好ましくは50ppm/℃以上80ppm/℃以下である。
(シクロオレフィンフイルム)
本発明の未延伸シクロオレフィンフイルムはRe=0〜20nm,Rth=0〜80nmが好ましく、より好ましくはRe=0〜10nm,Rth=0〜60nm、さらに好ましくはRe=0〜10nm,Rth=0〜30nmである。
また、製膜方向(長手方向)と、フイルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。
Reの湿度変化((25℃10%rhで測定したRe)−(25℃80%rhで測定したRe))は0nm以上3nm以下が好ましく、より好ましくは0nm以上1nm以下である。Rthの湿度変化((25℃10%rhで測定したRth)−(25℃80%rhで測定したRth))は0nm以上10nm以下が好ましく、より好ましくは0nm以上5nm以下である。
光弾性係数は、MD、TDとも0.5×10-13(cm2/dyn)以上10×10-13(cm2/dyn)以下が好ましく、より好ましくは1×10-13(cm2/dyn)以上5×10-13(cm2/dyn)以下である。
全光透過率は、90%〜100%が好ましい。ヘイズは0〜1%であり、好ましくは0〜0.6%である。
厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%以上3%以下が好ましく、さらに好ましくは0%以上2%以下である。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.8kN/mm2〜3.0kN/mm2である。破断伸度は1%以上300%以下が好ましい。
Tgは、95℃以上145℃以下が好ましい。80℃1日での熱寸法変化は縦、横両方向とも0%〜±1%が好ましく、さらに好ましくは0%〜±0.3%である。
40℃90%rhでの透水率は1g/m2・日〜800g/m2・日が好ましく、さらに好ましくは1g/m2・日〜500g/m2・日である。25℃80%rhでの平衡含水率は0.01wt%〜5wt%が好ましく、さらに好ましくは0.01wt%〜2.5wt%である。
熱膨張係数は、MD、TDとも50ppm/℃以上180ppm/℃以下が好ましく、より好ましくは100ppm/℃以上160ppm/℃以下である。湿度熱膨張係数はMD、TDとも0.01ppm/℃以上10ppm/℃以下が好ましく、より好ましくは0.01ppm/℃以上5ppm/℃以下である。
3−2.延伸フイルムの物性
このようにして縦延伸、横延伸、縦横延伸した熱可塑性フイルムのRe、Rthは下式(R−1)及び(R−2)を満足することが好ましい。
式(R−1):0nm≦Re≦200nm
式(R−2):0nm≦Rth≦600nm
(式中、Reは、熱可塑性フイルムの面内のレターデーションを示し、Rthは、熱可塑性フイルムの厚み方向レターデーションを示す。)
より好ましくは
20nm≦Re≦180nm
10nm≦Rth≦400nm
であり、さらに好ましくは
30nm≦Re≦150nm
20nm≦Rth≦300nm
である。
また、製膜方向(長手方向)と、フイルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。すなわち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
Re,Rthのばらつきは0%から8%が好ましく、より好ましく0%から5%、さらに好ましくは0%〜3%である。
また、Re,Rthの経時保存下の変動(80℃で500時間経時前後のRe,Rthの変化:詳細後述)は0%以上8%以下が好ましく、より好ましくは0%以上6%以下、さらに好ましくは0%以上4%以下である。
延伸後の熱可塑性フイルムの厚みはいずれも15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは20μm〜120μm、さらに好ましくは30μm〜80μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。薄手フイルムを用いることでより延伸後にフイルム内に残留歪が残りにくく、経時でのレターデーション変化が発生しにくい。これは、延伸後に冷却する際、厚みが厚いと表面に比べ内部の冷却が遅れ、熱収縮量の差に起因する残留歪が発生し易いためである。
熱寸法変化率は0%以上0.5%以下が好ましく、より好ましく0%以上0.3%以下、さらに好ましくは0%以上0.2%以下である。なお、熱寸法変化率とは80℃で5時間熱処理した際の寸法変化をさす。
4.熱可塑性フイルムの加工
このようにして得た本発明の熱可塑性フイルム単独で使用してもよく、これらと偏光板と組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。これらは以下の工程により達成できる。
4−1.表面処理
4−1−1.セルロースアシレートフイルム
セルロースアシレートフイルムは、場合により表面処理を行なうことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物等があげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフイルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液に浸漬してもよく、鹸化液を塗布してもよい。浸漬法の場合は、NaOHやKOH等のpH10〜14の水溶液を20℃〜80℃に加温した槽を0.1分から10分通過させたあと、中和、水洗、乾燥することで達成できる。塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。
鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行なうことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
4−1−2.セルロースアシレート以外の本発明の熱可塑性フイルム
シクロオレフィン系樹脂、ラクトン環含有重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の本発明の熱可塑性フイルムは、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。
プラズマ励起性気体とは前記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物等が挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。
これらの中でも特に好ましくは、グロー放電処理、コロナ処理、火炎処理である。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は前記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
4−2.機能層の付与
本発明の熱可塑性フイルムに、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フイルム)である。
4−2−1.偏光層の付与(偏光板の作製)
現在、市販の偏光層は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
詳細な偏光板の作製方法及び偏光板特性は、特開2005−128520号公報の段落[0008]〜[0020]、特開2005−266222号公報の段落[0007]〜[0013]、特開2005−138375号公報の段落[0083]〜[0113]、特開2006−2026の段落[0138]〜[0145]、特開2006−45500の段落[0105]〜[0111]に記載するものが好ましく用いることができる。
4−2−2. 光学補償層の付与(光学補償シートの作成)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、熱可塑性フイルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
4−2−3.反射防止層の付与(反射防止フイルム)
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(すなわち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報参照、プラズマ処理:特開2002−327310号公報参照)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フイルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フイルムも挙げられる。本発明の熱可塑性フイルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
5.液晶表示装置
本発明の熱可塑性フイルム、並びに、本発明の熱可塑性フイルムを用いた本発明の偏光板、光学補償フイルム、反射防止フイルムは、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフイルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明の熱可塑性フイルム、偏光板及び光学補償フイルムは特にTN、STN、VA、IPSモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型及び半透過型のいずれでもよい。
5−1.TNモード液晶表示装置
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。本発明の熱可塑性フイルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の位相差板の支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号及び特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
5−2.STN型液晶表示装置
本発明の熱可塑性フイルムは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の位相差板の支持体として用いてもよい。一般に、STN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360°の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
5−3.OCBモード液晶表示装置
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
5−4.VAモード液晶表示装置
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
本発明の熱可塑性フイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償板や光学補償板の支持体として用いてもよい。又は偏光板の保護フイルムとして特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
5−5.IPSモード液晶表示装置
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号公報、特開2004−12731号、特開2004−215620号公報、特開2002−221726号公報、特開2002−55341号公報、特開2003−195333号公報に記載のもの等を使用できる。
本発明の熱可塑性フイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償板や光学補償板の支持体として用いてもよい。又は偏光板の保護フイルムとして特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の熱可塑性フイルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
5−6.反射型液晶表示装置
本発明の熱可塑性フイルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の位相差板としても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
5−7.その他の液晶表示装置
本発明の熱可塑性フイルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置とについては、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
次に、本実施の形態で使用した測定法について記載する。
(1)ニップロールと接触のラップ角度α及び接触距離Ld
静止した一対のニップロール間に、樹脂フイルムがニップロールと接触開始点と離れる点をマーカーし、接触距離Ldを求める。得られた接触距離と、ニップロールの直径Rを用いて、下式でニップロールとのラップ角度αを算出することができる。
ラップ角度α=ニップロールとの接触距離Ld
×(360/πR) (単位:°)
(2)縦すじの評価
熱可塑性樹脂フイルムを全幅×流れ方向30cmに切り出して、縦すじの数は、該フイルムを白色スクリーンの前に10mmの間隔を空け平行に設置し、このフイルムの中央部から32.5度の方向に1m離して設置したスライド投影機(例えばキャビン工業(株)製Color CabinIII)から投光し、スクリーンに投影された製膜方向(MD)に平行なすじ(光の明暗)の内、3mm幅以下のものの本数を全幅にわたって数え、幅10cmあたりの本数を求めた。評価基準は、以下のとおりとした。
◎: 縦すじが0本/10cm以下であった。
○: 縦すじが2本/10cm以下であった。
△: 縦すじが2本/10cm以上5本/10cm以下であった。
×: 縦すじが5本/10cmより多かった。
(3)表面粗さRa
フイルムの幅方向(TD)及び長手方向(MD)にサンプリングし、小坂研究所製の三次元表面粗さ計SEF−3500を用い、JIS B0601−1982に準拠して中心線平均粗さRaを測定し、その10箇所の測定値の平均値をRaとして求めた。また、フイルムおもて面と反対側面の表面粗さは前記と同様に測定算出し、その両面粗さRaの比を求めた。
測定条件は以下の通りである。
触針先端半径:2μm
触針荷重 :0.07g
触針速度 :20μm/分
測定長 :100mm
(4)表面突起欠陥の評価
製膜した熱可塑性樹脂フイルムの製膜方向に500m毎に、全幅×流れ方向2m長でサンプリングし、反射光源のもとでフイルム中の表面突起欠陥物を目視にて検出した後、非接触式三次元構造解析顕微鏡(Zygo社製NewView6000型)を用いその突起物の高さを測定する。突起物の高さ0.5μm〜8μmの欠陥物数をカウントし、各測定サンプルの1m2に当りの平均値を求める。
(5)ガラス転移温度(Tg)
走査型示差熱量計(DSC)の測定パンにサンプルを20mg入れる。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st−run)、30℃まで−10℃/分で冷却する。この後、再度30℃から250℃まで昇温する(2nd−run)。2nd−runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とする。
(6)Re、Rth、遅相軸の角度
サンプルフイルムを相対湿度25℃・60%に5時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測器(株)製)を用いて、相対湿度25℃・60%において、Reは光をフイルム法線方向に入射させて測定される。Rthは、フイルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフイルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の値及び入力された膜厚値を基に算出する。
(7)Re、Rthばらつき、配向角
下記のように、長手方向に100点、幅方向50点サンプリングし、上記の方法でRe、Rth、遅相軸の角度を測定する。Re、Rthばらつきは、MD方向100点、TD方向50点の各最大値と最小値の差を、各平均値で割り、百分率で示したものをRe、Rthばらつきとした。配向角については、各測定点の遅相軸の角度の最大値と最小値の差を示した。
(a) MD方向(長手方向)サンプリング:幅方向に下記5点を、長手方向に0.5m間隔で20点、合計100点を、1cm角の大きさに切り出した。
幅方向中央部(1点)
幅方向中央から左右に、全幅×0.2だけ離れたところ(2点)
幅方向中央から左右に、全幅×0.4だけ離れたところ(2点)
(b) TD方向(幅方向)サンプリング:製膜全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分した点)を1cm角の大きさに50点切り出した。
(8)光弾性分布
(a) 1cm幅×10cm長のサンプル片を、サンプルの長手方向がそれぞれMD方向になるように2種類切り出した。
(b) これをエリプソ測定装置(日本分光製 M−150)にセットし、応力(荷重をフイルム断面積(厚さ×幅(1cm))が100g/mm2、200g/mm2、300g/mm2、400g/mm2、500g/mm2となるように長手方向(10cm長)に順次荷重を加えていった。この時のレターデーション(Re)を25℃・相対湿度60%において632.8nmで測定した。
(c) 横軸を応力(荷重をフイルム断面積で割った値(kgf/cm2))、縦軸をRe(nm)とし、これらのプロットの最小自乗法による直線の傾きを光弾性とする。
(d) この測定を製膜した全幅について10等分した点について測定する。MD、TD各々で下記式から分布を求め、その平均値を光弾性分布とした。
分布(%)=100×{(光弾性の最大値)−(光弾性の最小値)}/(光弾性10点の平均値)
(9)厚みむら
上記(4)のサンプル(長手方向に100点、幅方向50点)の厚みを測定する。これら150点の中から最大厚み、最小厚み、平均厚みをもとめ、下記式で厚みむらを求める。
厚みむら(%)=100×(最大厚み−最小厚み)/平均厚み
(10)熱寸法変化
(a) サンプルをMD、TD方向に5cm×25cmに裁断し、20cm間隔の孔をあける。
(b) これを25℃60%rhで2時間調湿後、この環境下でピンゲージを用い2つの孔の間を測長する(これをL1とする)。
(c) サンプルを80℃の空気恒温槽に5時間入れる。
(d) これを取り出し25℃60%rh中に3時間調湿後、この環境下でピンゲージを用い2つの孔の間を測長する(これをL2とする)。
(e) 100×|L1−L2|/L1を寸法変化率(%)とする。
(11)セルロースアシレートの置換度
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
(12)残留溶剤
サンプルフイルム300mgを溶剤30mlに溶解する。溶剤はそのサンプルフイルムを溶解するものであれば特に制限は無く、例えば、セルロースアシレート系フイルム、ポリカーボネイト系フイルムであれば酢酸メチル、ジクロロメタン、アセトン等が使用でき、シクロオレフィン系フイルムであれば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が使用できる。
このフイルム溶解液をガスクロマトグラフィ(GC)を用い、下記条件で測定する。
カラム:DB−WAX(0.25mmφ×30m、膜厚0.25μm)
カラム温度:50℃
キャリアーガス:窒素
分析時間:15分間
サンプル注入量:1μml
予め測定しておいた検量線から溶剤量をもとめ、サンプル量で割り残留溶剤量を求める。
以下に、本発明についての具体的な実施態様を記述するが、これらに限定されるものではない。
図1は、本発明に係る熱可塑性フイルムを溶融製膜で製造するフイルム製造装置の実施の形態例(以下、フイルム製造装置10と記す)の概略構成図である。
このフイルム製造装置10は、図1に示すように、液晶表示装置等に使用できる熱可塑性フイルムFを製造する装置である。熱可塑性フイルムFの原材料であるペレット状のセルロースアシレート樹脂又はシクロオレフィン樹脂を乾燥機12に導入して乾燥させた後、このペレットを押出機14によって押し出し、ギアポンプ16によりフィルタ18に供給する。次いで、フィルタ18により異物がろ過され、ダイ20から溶融樹脂90(溶融した熱可塑性樹脂)が押し出される。溶融樹脂90は、第1キャスティングロール28とタッチロール24で挟まれて押圧成形された後、第1キャスティングロール28にて冷却固化されて所定の表面粗さのフイルム状とされ、さらに、第2キャスティングロール26、第3キャスティングロール27によって搬送されることで未延伸フイルムFaが得られる。この未延伸フイルムFaは、この段階で巻き取られてもよいし、連続的に長スパン延伸を行う縦延伸部30に供給されてもよい。また、一度巻き取られた未延伸フイルムFaを再度縦延伸部30に供給しても、同様の効果が得られる。
縦延伸部30では、未延伸フイルムFaが第1予熱ロール33及び第2予熱ロール35によって所定の温度まで予熱された後、二組のニップロール(入口側の第1ニップロール37及び出口側の第2ニップロール39)間に供給されて縦延伸が行われる。この場合、第1ニップロール37及び第2ニップロール39は、未延伸フイルムFaの搬送方向に近接して配置されると共に、上下方向に所定距離だけ高さが異なるように配置されている。
具体的には、先ず、縦延伸部30での縦延伸の縦/横比(L/W)は、図2及び図3に示すように、第1ニップロール37及び第2ニップロール39間の距離Lと、第1ニップロール37及び第2ニップロール39の長さ方向の幅Wとによって規定される。
そして、この実施の形態では、第1ニップロール37と第2ニップロール39を用いて、0.01を超え、0.3未満の縦横比で未延伸フイルムFaを縦延伸する。
また、第1ニップロール37と第2ニップロール39の直径をRとしたとき、図3に示すように、第1ニップロール37と第2ニップロール39間を搬送される熱可塑性フイルム(縦延伸中のフイルムFa’)は、いずれかのニップロールと接触する際のラップ角度αが1°以上、60°以下である。
これにより、延伸後の熱可塑性フイルム(縦延伸フイルムFb)の表面の品質を向上させることができ、例えば液晶表示素子の位相差膜等に使用した場合に、縦すじがなく、液晶の表示むらも低減することができる。
好ましい態様としては以下の通りである。先ず、第1ニップロール37の配置高さと第2ニップロール39の配置高さの差Hは、0.1R以上、10R以下にして行うことが好ましい。
縦延伸中のフイルムFa’の水平方向とのなす角度θは0.1°以上、60°以下であることが好ましい。
第1ニップロール37と第2ニップロール39のうち、いずれかのニップロールとフイルムFa’との接触距離Ldは0.1R以上、1R以下であることが好ましい。この場合、フイルムFa’と第1ニップロール37及び第2ニップロール39との接触面積が増え、延伸圧力が均一にかけられることから、縦延伸フイルムFbの平面性が改良されると共に、熱可塑性フイルムFの縦すじ、突起物の欠陥を大幅に低減することができる。
第1ニップロール37と第2ニップロール39のうち、出力側の第2ニップロール39の回転数に0.01%〜0.1%の変動を与えることが好ましい。つまり、第2ニップロール39を構成する2つのロール39a及び39bの回転数の間に0.01%〜0.1%の変動を与える。
また、図4に示すように、縦延伸した後の熱可塑性フイルム(縦延伸フイルムFb)の下記式で特定されるネックイン量Ninが0.1%以上、5%以下であることが好ましい。
ネックイン量Nin={(W0−W1)/W0}×100(%)
ここで、式中、W0は未延伸フイルムFaの幅、W1は縦延伸フイルムFbの幅を示す。
第1ニップロール37及び第2ニップロール39の幅方向の温度分布(Ts−Tc)が0.1℃以上、5℃以下であることが好ましい。なお、Tsは、第1ニップロール37における未延伸フイルムFaの全幅の20%以内の両端に対応する平均温度並びに第2ニップロール39における縦延伸フイルムFbの全幅の20%以内の両端に対応する平均温度を示す。Tcは、第1ニップロール37における未延伸フイルムFaの全幅の60%以内の中央部に対応する平均温度並びに第2ニップロール39における縦延伸フイルムFbの全幅の60%以内の中央部に対応する平均温度を示す。
この温度分布を実現するためには、第1ニップロール37及び第2ニップロール39に温風を吹きかけてもよいし、ヒータが内蔵された第1ニップロール37及び第2ニップロール39の各両端部分を別のヒータで加熱するようにしてもよい。
また、第1ニップロール37及び第2ニップロール39の押し込む圧力(押圧力)が0.5MPa以上、15MPa以下であることが好ましい。
この縦延伸部30においては、未延伸フイルムFaの搬送距離を確保できると共に、縦延伸部30の前後に配置される機構間の距離を短縮して、フイルム製造装置10の小型化を図ることができる。
ここで、本実施の形態に係る熱可塑性フイルムFの達成方法のポイントを以下に示す。
先ず、表面凹凸や突起は、製膜工程で固化する段階で生じる。すなわち、溶融製膜では溶融樹脂90がダイ20から第1キャスティングロール28上に達する間に発生する。溶融樹脂90の表層が内層に比べ冷却されやすく、収縮応力が発生し易い。この収縮応力のため表層が縮められ表面凹凸が発生し易い。従って、ダイ20から第1キャスティングロール28までの溶融樹脂90の温度変化(冷却)勾配を緩くすることが好ましい。好ましい温度変化は10℃/秒〜200℃/秒、より好ましく20℃/秒〜120℃/秒、さらに好ましくは30℃/秒〜80℃/秒である。このような冷却温度の調整は、ダイ20−第1キャスティングロール28間をケーシングで囲い保温することでも達成でき、ヒータでダイ20−第1キャスティングロール28間を加熱してもよい。さらに好ましくはダイ20−第1キャスティングロール28間の風速を0.1m/秒以下、より好ましく0.05m/秒以下にするのが好ましい。
一方、溶液製膜であればドープ(樹脂を溶剤に高濃度で溶解した水飴状のもの)をダイからドラムやバンド上に流延後乾燥するまでの工程で発生する。すなわち、急速に乾燥させると、表層が先に乾燥し、収縮応力が発生し凹凸が発生し易い。このため流延から残留溶剤が200質量%(対樹脂)になるまでの間を1質量%/秒〜30質量%/秒、より好ましく2質量%/秒〜22質量%/秒、さらに好ましくは3質量%〜15質量%である。このような乾燥速度は、ドラムやバンド上をケーシングで囲ったり、ドラムやバンドの温度を調整することで達成できる。
さらに本実施の形態では、タッチロール24は、通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。これにより過剰な面圧により未延伸フイルムFaへの表面凹凸を抑制できる。このためには、タッチロール24の外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mmである。さらに好ましくは0.3mm〜3.5mmである。タッチロール24は、金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通してもよく、外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。
このように、タッチロール24は、低弾性であるため、第1キャスティングロール28に接触させると、その押圧で凹状に弾性変形する。従って、タッチロール24と第1キャスティングロール28とが面接触するため、押圧力が分散され、低い面圧を達成できる。好ましいタッチロール24の面圧は、0.1MPa〜10MPa、より好ましくは0.2MPa〜7MPa、さらに好ましくは0.3MPa〜5MPaである。ここでいう面圧とは、タッチロール24を押し付けている力をフイルムとタッチロール24の接触面積で割った値である。
タッチロール24の温度は60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定するのが好ましい。このような温度制御は、これらのロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成できる。このように内部に温調機構を有するものがより好ましい。
タッチロール24の材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面にメッキを行うことも好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールではゴム表面の凹凸が大きすぎ、上記の表面凹凸を持つ熱可塑性フイルムを製膜できず好ましくない。
タッチロール24、第1キャスティングロール28は、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には、例えば、特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
そして、上述の縦延伸部30にて、本発明の縦延伸方法を用いることによって、製膜工程中に生じる表面凹凸や突起物の等、欠陥を大幅に低減した縦延伸フイルムFbは、予熱部36を通過することで所定の予熱温度に調整された後、横延伸部42に供給される。
横延伸部42では、図1に示すように、縦延伸フイルムFbが搬送方向と直交する幅方向に延伸され、横延伸フイルムFcとされる。そして、横延伸フイルムFcは、熱固定部44に供給され、巻取部46によって巻き取られることで、配向角、レターデーションが調整された最終製品である熱可塑性フイルムFが製造される。なお、横延伸フイルムFcには熱固定部44を通過した後、さらに熱緩和処理を施してもよい。このように、予熱部36は、縦延伸フイルムFbに対して予熱処理を行う予熱ゾーンとして機能し、横延伸部42は、予熱処理を終えた縦延伸フイルムFbを横延伸する横延伸ゾーンとして機能し、熱固定部44は、横延伸フイルムFcに対して熱固定処理を行う熱固定ゾーンとして機能する。
図5は、上述のようにして製造された熱可塑性フイルムFが適用される液晶表示装置50の概略構成図である。
液晶表示装置50は、偏光板52、液晶セル54、偏光板56が順に積層されて構成されており、偏光板56には、拡散板58を介して導光板60が装着される。導光板60には、バックライト62からの照明光が導入される。
偏光板52は、偏光子66を反射防止フイルム64及び光学補償フイルム68で挟み込んで構成される。液晶セル54は、ガラス基板70に対して、R、G、Bの画素が形成されたカラーフィルタ72が装着され、次いで、液晶層74、TFT層76及びガラス基板78が順に配置される。偏光板56は、偏光子82を光学補償フイルム80及び保護フイルム84で挟み込んで構成される。
この場合、図1に示すフイルム製造装置10によって製造された熱可塑性フイルムFは、液晶表示装置50を構成する反射防止フイルム64、光学補償フイルム68、80、保護フイルム84として使用することができる。
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
1.セルロースアシレートの合成
1−1.セルロースアセテートプロピオネート(CAP)
セルロース(広葉樹パルプ)10質量部に酢酸0.1質量部、プロピオン酸2.7質量部を噴霧した後、1時間室温で保存した。別途、無水酢酸1.2質量部、プロピオン酸無水物61質量部、硫酸0.7質量部の混合物を調整し、−10℃に冷却後に、前処理を行ったセルロースと反応容器内で混合した。
30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、4時間反応させた。反応容器に25%含水酢酸46質量部を添加し、内温を60℃に上昇させて、2時間攪拌した。酢酸マグネシウム4水和物と酢酸と水とを等重量ずつ混合した溶液を6.2質量部添加し、30分間攪拌した(中和工程)。反応液を金属焼結フィルタ(保留粒子径40μm、10μm2段で実施)にて加圧ろ過して異物を除去した。75%含水酢酸に濾過後の反応液を混合してセルロース アセテートプロピオネートを沈殿させた後、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6−7になるまで洗浄を行った。さらに、0.001%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌する処理を行った後に濾過した。得られたセルロースアセテートプロピオネートは、70℃で乾燥させた。1H−NMRの測定から得られたセルロースアセテートプロピオネートはアセチル化度0.15、プロピオニル化度2.63、全アシル置換度2.78、数平均分子量55800(数平均重合度DPn=177)、質量平均分子量13900(質量平均重合度DPw=440)、残存硫酸量61ppm(S硫黄量21ppm)、マグネシウム含有量20ppm、カルシウム含有量7ppm、ナトリウム含有量1ppm、カリウム含有量1ppm、鉄含有量2ppmであった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフイルムを偏光顕微鏡で観察した結果、偏光子を直交させた場合も平行にした場合も、異物はほとんど認められなかった。
1−2.セルロースアセテートブチレート(CAB)
攪拌装置及び冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(リンター)200質量部、酢酸100質量部を取り、60℃で4時間処理することによりセルロースを活性化した。酢酸161質量部、無水酢酸449質量部、酪酸742質量部、酪酸無水物1349質量部、硫酸14質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が30℃になるようにエステル化を実施し、反応液の粘度が1050cPとなった時点を反応の終点とした。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。水297質量部、酢酸558質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を、反応混合物の温度が23℃を超えないように添加した。
反応混合物の温度を60℃とし、2時間30分攪拌して部分加水分解を行い、硫酸に対して2当量の酢酸マグネシウムを含有する酢酸・水混合溶液にて部分加水分解を停止した。加水分解後の反応溶液を、保留粒子径40μmのろ紙ならびに、保留粒子径10μmの金属焼結フィルタで順次ろ過した。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.002質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートブチレートを得た。
得られたセルロースアセテートブチレートは、アセチル置換度1.51、ブチリル置換度1.19、全アシル置換度2.70、数平均分子量55600(数平均重合度DPn=181)、質量平均分子量139000(質量平均重合度DPw=451)、残存硫酸量122ppm、マグネシウム含有量3ppm、カルシウム含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm、カリウム含有量は2ppm、鉄含有量2ppmであった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフイルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
1−3.その他のセルロースアシレート
アシル化剤の種類、量を変えることで置換度を変え、熟成時間を変えることで重合度を変え、下記表1に記載のCAP,CAB以外のセルロースアシレートを合成した。
また、置換もしくは無置換の芳香族アシル基を結合したセルロースアシレートとして、特開2002−32201の実施例1に準じて安息香酸と酢酸でエステル化したセルロースアシレートを合成した。但し原料のセルロースアシレートを2.0置換、2.45置換のセルロースアセテートを用いた。この結果、酢酸置換度=2.0、安息香酸置換度=1.0、及び酢酸置換度=2.45、安息香酸置換度=0.55の芳香族アシル基置換セルロースアシレートを得た。
2.製膜
2−1.溶融製膜
2−1−1.ペレット化
前記セルロースアシレート100質量部、安定剤(住友化学(株)製スミライザーGP)0.1質量部、安定剤アデカスタブAO−60(旭電化工業株式会社製)0.3質量部、紫外線吸収剤アデカスタブLA−31(旭電化工業株式会社製)1.1質量部を混合した。
これらを100℃で3時間乾燥し含水率を0.1質量%以下にした後、2軸混練機を用い210℃で溶融した後、80℃の温水中に押し出しストランドとした後裁断し、直径3mm長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。
2−1−2.製膜
前記方法で調製したセルロースアシレートペレットを、露点温度−40℃の脱湿風を用いて100℃で5時間乾燥し含水率を0.01質量%以下にした。これを80℃のホッパーに投入し、180℃(入口温度)から230℃(出口温度)に調整した押出機14で溶融した。なお、これに用いたスクリューの直径は60mm、L/D=50、圧縮比4であった。押出機14から押出された溶融樹脂90はギアポンプ16で一定量計量され送り出されるが、この時ギアポンプ前の樹脂圧力が10MPaの一定圧力で制御出来るように、押出機の回転数を変更させた。
ギアポンプ16から送り出されたメルト樹脂90は濾過精度5μmのフィルタ18(リーフディスクフィルタ)にて濾過し、スタティックミキサを経由してスリット間隔0.8mm、230℃のハンガーコートダイ20から、第1キャスティングロール28とタッチロール24との間に導入される。溶融樹脂90は、表1記載の条件で、第1キャスティングロール28とタッチロール24とによって押し付けられて押出し成形された。これをガラス転移温度(Tg)−5℃、Tg、Tg−10℃の設定した3連のキャスティングロール上に押し出し、タッチロール製膜法又は静電印加法(表1に記載)を用いて、未延伸フイルムを製膜した。なお、タッチロール24は特開平11−235747の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温した。薄肉金属外筒厚みは2mm、表1に記載の押さえ圧で行った。3連のキャスティングロール上の溶融樹脂90の冷却速度は80℃/秒である冷却した。また、表1に記載の静電印加法は、吐出されたメルト樹脂の両端に、タッチロールを用いる代わりに7kVで静電印加を行った。
固化したメルトをキャスティングドラムから剥ぎ取り、巻取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各水準とも、ラミネットフイルムと貼り合せ、30m/分で幅1.5m、長さ3000mの未延伸フイルムFaを巻き取った。
(2−1−3)延伸
(a)縦延伸
前記溶融製膜で得たセルロースアシレートは、各フイルムの(Tg+5)℃において、0.01を超え、0.3未満の縦横比で縦延伸した。ここで、実施例と、比較例における縦延伸の条件は、表1の通りである。なお、本発明No.1〜本発明No.22の熱可塑性セルロースアシレートフイルムの比抵抗が5×108〜5×1013オーム・cmであり、Tg−10℃の温度における熱可塑性樹脂フイルムの弾性率が200MPa〜1000MPaである。
すなわち、縦延伸の条件の内訳は、第1ニップロール37又は第2ニップロール39と熱可塑性フイルムFa’とのラップ角度α、第1ニップロール37又は第2ニップロール39と熱可塑性フイルムFa’との接触距離Ld、第1ニップロール37と第2ニップロール39間を搬送される熱可塑性フイルムFa’の水平方向とのなす角度θ、第1ニップロール37の配置高さと第2ニップロール39の配置高さの差H(R:第1ニップロール37と第2ニップロール39の直径)、第1ニップロール37及び第2ニップロール39の押し込む圧力(押圧力)である。また、実施例と、比較例の縦延伸によるネックイン量(Nin)も表1に示す。実施例No.1〜No.22のネックイン量は、いずれも0.1%以上、5%以下であったが、比較例No.1〜No.2では、これらの範囲から逸脱していた。
(b)横延伸
表1に示す縦及び横の延伸倍率で、Tg+10℃にて300%/分で下記倍率に延伸した。なお、予熱はTg+20℃、熱処理はTg−1℃にて、行った。得られた各延伸フイルムの特性を表1に示した。ここでいう延伸倍率は、下記式で定義される。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
(c)緩和処理
緩和はTg−5℃、張力5kgf/mで、横延伸倍率に対して、2%程度緩和を行った。
(d)延伸フイルムの物性評価
表1中のRe、Rth、Reバラツキ、Rthバラツキ、縦すじ、表面粗さRa、欠陥数は前述の評価方法を用いて測定し、表1に記載した。本発明の縦延伸方法を用いた実施例No.1〜No.22では、比較例No.1と比較例No.2と比べ、延伸フイルム物性は良好であり、本発明の範囲に満足するものであった。
Figure 2008307888
3.偏光板の作製
3−1.表面処理
前記横延伸したセルロースアシレートフイルムを、下記の浸漬法で鹸化を行った。なお下記塗布鹸化も実施したが浸漬鹸化と同様の結果を得た。
(浸漬鹸化)
鹸化液として60℃に調温したNaOHの2.0モル/L水溶液を用意し、その中にセルロースアシレートフイルムを2分間浸漬した。その後、0.05モル/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬して水洗浴を通した。
(塗布鹸化)
イソプロパノール80質量部に水20質量部を加え、これにKOHを1.5モル/Lとなるように溶解して60℃に調温したものを鹸化液として用いた。この鹸化液を60℃のセルロースアシレートフイルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。その後、スプレーを用いて50℃の温水を10L/m2・分で1分間吹きかけて洗浄した。
3−2.偏光層の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光層を調製した。
3−3.貼り合わせ
このようにして得た偏光層を、前記方法で鹸化処理したセルロースアシレートフイルムを用い、下記構成となるようにPVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤とし貼り合せ偏光板を作製した。なお、下記に記載したフジタック(富士フイルム製TD80)も前記の方法で鹸化処理を行った。
偏光板A:延伸セルロースアシレート/偏光層/フジタック
偏光板B:延伸セルロースアシレート/偏光層/未延伸セルロースアシレート(偏光板Bでは両面同じ組成のセルロースアシレートを用いた)
3−4.評価
〈表示視認性〉
このようにして得た偏光板の表示視認性の評価は、市販のVA型液晶表示装置に取り込んで評価した。市販のVA型液晶表示装置(42インチ型、直下型バックライト)の液晶セルのバックライト側偏光板、視認側偏光板、位相差フイルムを剥がし、本発明及び比較例の各フイルムを用いた作製した偏光板Aまたは偏光板Bは、それぞれ液晶セルの両面に貼合し、その際その偏光板の貼合の向きは上記作製したシクロオレフィン樹脂フイルムが貼合されている面が液晶セル側となるように、且つ、予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を作製した。なお、同じ評価対象は各5セットを作製し、液晶表示画面上に縦、横10mm間隔の升目を表示し、目視で虹状の色むらや画像のゆがみの発生面積を計測し、表示部全面積に対する割合を表1に示した。本発明を実施したものは、比較例と比べ、表示むら発生率が少なく、良好な性能が得られた。
4.光学補償フイルムの作製
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフイルムの代わりに、本発明におけるセルロースアシレートフイルムを使用した。これを前記と同様の方法で30℃から10℃に移した時のむら(光漏れ)を計測した(全体に占めるむらの発生領域を%で示した)。本発明を実施したものはむらの発生領域がいずれも0%〜9%以下であり、良好な性能が得られた。
特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフイルムに代わって、本発明におけるセルロースアシレートフイルムに変更し光学補償フイルムを作製したものでも同様に良好な光学補償フイルムを作製できた。
5.低反射フイルムの作製
本発明の延伸セルロースアシレートフイルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い本発明におけるセルロースアシレートフイルムを用いて低反射フイルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
6.液晶表示素子の作製
前記本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明の低反射フイルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、良好な液晶表示素子を得た。なかでも本発明のセルロースアシレートフイルムを使用したもののほうが良好であった。
1.飽和ノルボルネン樹脂、ラクトン環含有重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂
1−1.飽和ノルボルネン樹脂−A
6−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンに、重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサン溶液10部、トリエチルアミン5部、及び四塩化チタンの20%シクロヘキサン溶液10部を添加して、シクロヘキサン中で開環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添加してポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をイソプロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状の樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は40,000、水素添加率は99.8%以上であり、Tgは139℃であった。
1−2.飽和ノルボルネン樹脂−B
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5,17.10]−3−ドデセン(特定単量体B)100質量部と、5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)150質量部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン750質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62質量部と、t−ブタノール及びメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7質量部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.65dl/gであった。
このようにして得られた開環重合体溶液4,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C65330.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(特定の環状ポリオレフィン系樹脂)を得た。このようにして得られた水素添加重合体について400MHz、1H−NMRを用いてオレフィン性不飽和結合の水素添加率を測定したところ99.9%であった。GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は126,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.23であった。また、Tgは110℃であった。
1−3.飽和ノルボルネン樹脂−C
特開2005−330465号公報の実施例2に記載の飽和ノルボルネン化合物(Tg127℃)である。
1−4.飽和ノルボルネン樹脂−D
特表平8−507800号公報の実施例1に記載の飽和ノルボルネン化合物(Tg181℃)である。
1−5.飽和ノルボルネン樹脂−E
三井化学(株)製APL6015T(Tg145℃)である。
1−6.飽和ノルボルネン樹脂−F
ポリプラスチックス(株)製TOPAS6013(Tg130℃)である。
1−7. 飽和ノルボルネン樹脂−G
特許第3693803号公報の実施例1に記載の飽和ノルボルネン化合物(Tg140℃)である。
2.製膜
前記飽和ノルボルネン樹脂−A〜Gの100質量部に、安定剤アデカスタブ AO−60(旭電化工業株式会社製)1.3質量部を添加し、直径3mm長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。これを110℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.1%以下とした後、Tg−10℃になるように調整したホッパーに投入した。
混練押出機で260℃で溶融した後、ギアポンプから送り出されたメルトは濾過精度5μmのリーフディスクフィルタにて濾過し、スタティックミキサを経由してスリット間隔0.8mm、260℃のハンガーコートダイから、キャスティングロール(CD)上にメルト(溶融樹脂)を押出した。これを、ガラス転移温度(Tg)−5℃、Tg、Tg−10℃に設定した3連のキャスティングロール上に押し出し、最上流側のキャスティングロールに表1に記載の条件でタッチロールを接触させ、未延伸フイルムを製膜した。なお、タッチロールは特開平11−235747の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温した。但し、薄肉金属外筒厚みは2mm、押さえ圧は1MPaで行った。
この後、巻取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各水準とも、ラミネットフイルムと貼り合せ、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。
このようにして製膜したフイルムの物性を前記の方法で測定し、表1に記載した。
3.延伸
3−1.縦延伸
前記溶融製膜で得たシクロオレフィンフイルムの一部は、各フイルムのTg+5℃において、表1記載の縦横比で延伸した。
3−2.横延伸
未延伸フイルムあるいは縦延伸フイルムを表1に示す延伸倍率で、Tg+10℃にて300%/分で下記倍率に延伸した。なお、予熱はTg+20℃、熱処理はTg−1℃にて行った。
4.緩和処理
横延伸後に、Tg−5℃、張力5kgf/mで、横延伸倍率に対して、2%程度緩和を行った。これらの物性を上記の方法で測定し、表1に記載した。
5.偏光板の作製
いずれの水準も、表面の水との接触角が60°になるように、フイルム表面にコロナ処理を行った。これを実施例1と同様に偏光層を作製し貼り合せることで下記構成の偏光板を作製した。
偏光板C:飽和ノルボルネン/偏光層/フジタック
6.評価
このようにして得た偏光板を、実施例1と同様にしてVA型液晶表示装置液晶表示装置に取り付け、表示視認性を計測し表1に示した。本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
7.光学補償フイルムの作製
実施例1と同様にして光学補償フイルムを作製した。本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
8.低反射フイルムの作製
実施例1と同様にして低反射フイルムを作製したところ、本発明を実施したものは良好な光学性能が得られた。
9.液晶表示素子の作製
実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。本発明を実施したものは、良好な液晶表示素子を得た。
ラクトン環含有重合体樹脂
ラクトン環含有重合体樹脂は、国際公開第2006/025445号パンフレット記載の製造例2に従い、ペレットを作成した。得たラクトン環含有重合体樹脂ペレットの100質量部に、安定剤アデカスタブ AO−60(旭電化工業株式会社製)0.3質量部を添加し、250℃の溶融製膜温度で、本発明の実施例1と同様にして、未延伸のフイルム幅は1.5mで製膜した。得た未延伸フィルムを本発明の実施例1と同様にして、縦延伸、横延伸と緩和処理を行い、表1に記載の本発明No.26のフィルムを得た。得た延伸ラクトン環含有重合体樹脂フィルム表面をコロナ処理し、実施例1と同様に偏光層を作製し貼り合せことで下記構成の偏光板Dを作製した。また、実施例1と同様に物性を評価したところ、良好な液晶表示性能を得た。
偏光板D:延伸ラクトン環含有重合体樹脂フィルム/偏光層/フジタック
ポリカーボネート系樹脂
帝人化成(株)製の光学グレードのポリカーボネートペレット(商品名AD−5503)樹脂の100質量部に安定剤アデカスタブ AO−60(旭電化工業株式会社製)0.3質量部を添加し、290℃の溶融製膜温度で、本発明の実施例1と同様にして、未延伸のフイルム幅は1.5mで製膜した。得た未延伸フィルムを本発明の実施例1と同様にして、縦延伸、横延伸と緩和処理を行い、表1に記載の本発明No.27のフィルムを得た。得た延伸ポリカーボネート系樹脂フィルム表面をコロナ処理し、実施例1と同様に偏光層を作製し貼り合せことで下記構成の偏光板Eを作製した。また、実施例1と同様に物性を評価したところ、良好な液晶表示性能を得た。
偏光板E:延伸ポリカーボネート系樹脂フィルム/偏光層/フジタック
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明と下記公報やパンフレットに開示の技術を組合わせて使用することができる。
実開平3−110418号、特開平5−119216号、特開平5−162261号、特開平5−182518号、特開平5−19115号、特開平5−196819号、特開平5−264811号、特開平5−281411号、特開平5−281417号、特開平5−281537号、特開平5−288921号、特開平5−288923号、特開平5−311119号、特開平5−339395号、特開平5−40204号、特開平5−45512号、特開平6−109922号、特開平6−123805号、特開平6−160626号、特開平6−214107号、特開平6−214108号、特開平6−214109号、特開平6−222209号、特開平6−222353号、特開平6−234175号、特開平6−235810号、特開平6−258520号、特開平6−264030号、特開平6−305270号、特開平6−331826号、特開平6−347641号、特開平6−75110号、特開平6−75111号、特開平6−82779号、特開平6−93133号、特開平7−104126号、特開平7−134212号、特開平7−181322号、特開平7−188383号、特開平7−230086号、特開平7−290652号、特開平7−294903号、特開平7−294904号、特開平7−294905号、特開平7−325219号、特開平7−56014号、特開平7−56017号、特開平7−92321号、特開平8−122525号、特開平8−146220号、特開平8−171016号、特開平8−188661号、特開平8−21999号、特開平8−240712号、特開平8−25575号、特開平8−286179号、特開平8−292322号、特開平8−297211号、特開平8−304624号、特開平8−313881号、特開平8−43812号、特開平8−62419号、特開平8−62422号、特開平8−76112号、特開平8−94834号、特開平9−137143号、特開平9−197127号、特開平9−251110号、特開平9−258023号、特開平9−269413号、特開平9−269414号、特開平9−281483号、特開平9−288212号、特開平9−288213号、特開平9−292525号、特開平9−292526号、特開平9−294959号、特開平9−318817号、特開平9−80233号、特開平10−10320号、特開平10−104428号、特開平10−111403号、特開平10−111507号、特開平10−123302号、特開平10−123322号、特開平10−123323号、特開平10−176118号、特開平10−186133号、特開平10−264322号、特開平10−268133号、特開平10−268134号、特開平10−319408号、特開平10−332933号、特開平10−39137号、特開平10−39140号、特開平10−68821号、特開平10−68824号、特開平10−90517号、特開平11−116903号、特開平11−181131号、特開平11−211901号、特開平11−211914号、特開平11−242119号、特開平11−246693号、特開平11−246694号、特開平11−256117号、特開平11−258425号、特開平11−263861号、特開平11−287902号、特開平11−295525号、特開平11−295527号、特開平11−302423号、特開平11−309830号、特開平11−323552号、特開平11−335641号、特開平11−344700号、特開平11−349947号、特開平11−95011号、特開平11−95030号、特開平11−95208号、特開2000−109780号、特開2000−110070号、特開2000−119657号、特開2000−141556号、特開2000−147208号、特開2000−17099号、特開2000−171603号、特開2000−171618号、特開2000−180615号、特開2000−187102号、特開2000−187106号、特開2000−191819号、特開2000−191821号、特開2000−193804号、特開2000−204189号、特開2000−206306号、特開2000−214323号、特開2000−214329号、特開2000−230159号、特開2000−235107号、特開2000−241626号、特開2000−250038号、特開2000−267095号、特開2000−284122号、特開2000−304927号、特開2000−304928号、特開2000−304929号、特開2000−309195号、特開2000−309196号、特開2000−309198号、特開2000−309642号、特開2000−310704号、特開2000−310708号、特開2000−310709号、特開2000−310710号、特開2000−310711号、特開2000−310712号、特開2000−310713号、特開2000−310714号、特開2000−310715号、特開2000−310716号、特開2000−310717号、特開2000−321560号、特開2000−321567号、特開2000−338309号、特開2000−338329号、特開2000−344905号、特開2000−347016号、特開2000−347017号、特開2000−347026号、特開2000−347027号、特開2000−347029号、特開2000−347030号、特開2000−347031号、特開2000−347032号、特開2000−347033号、特開2000−347034号、特開2000−347035号、特開2000−347037号、特開2000−347038号、特開2000−86989号、特開2000−98392号、特開2001−100012号、特開2001−108805号、特開2001−108806号、特開2001−133627号、特開2001−133628号、特開2001−142062号、特開2001−142072号、特開2001−174630号、特開2001−174634号、特開2001−174637号、特開2001−179902号、特開2001−183526号、特開2001−188103号、特開2001−188124号、特開2001−188125号、特開2001−188225号、特開2001−188231号、特開2001−194505号、特開2001−228311号、特開2001−228333号、特開2001−242461号、特開2001−242546号、特開2001−247834号、特開2001−26061号、特開2001−264517号、特開2001−272535号、特開2001−278924号、特開2001−2797号、特開2001−287308号、特開2001−305345号、特開2001−311827号、特開2001−350005号、特開2001−356207号、特開2001−356213号、特開2001−42122号、特開2001−42323号、特開2001−42325号、特開2001−4819号、特開2001−4829号、特開2001−4830号、特開2001−4831号、特開2001−4832号、特開2001−4834号、特開2001−4835号、特開2001−4836号、特開2001−4838号、特開2001−4839号、特開2001−51118号、特開2001−51119号、特開2001−51120号、特開2001−51273号、特開2001−51274号、特開2001−55573号、特開2001−66431号、特開2001−66597号、特開2001−74920号、特開2001−81469号、特開2001−83329号、特開2001−83515号、特開2002−162628号、特開2002−169024号、特開2002−189421号、特開2002−201367号、特開2002−20410号、特開2002−258046号、特開2002−275391号、特開2002−294174号、特開2002−311214号、特開2002−311246号、特開2002−328233号、特開2002−338703号、特開2002−363266号、特開2002−365164号、特開2002−370303号、特開2002−40209号、特開2002−48917号、特開2002−6109号、特開2002−71950号、特開2003−105540号、特開2003−114331号、特開2003−131036号、特開2003−139952号、特開2003−172819号、特開2003−35819号、特開2003−43252号、特開2003−50318号、特開2003−96066号。
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また、本発明に係る熱可塑性フイルム、熱可塑性フイルムの製造方法、熱可塑性フイルムの製造装置、並びに、偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム及び液晶表示装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本実施の形態に係る熱可塑性フイルムを製造するフイルム製造装置を示す概略構成図である。 フイルム製造装置における縦延伸部を示す斜視図である。 フイルム製造装置における縦延伸部を示す側面図である。 縦延伸によるネックインを示す説明図である。 本実施の形態に係る熱可塑性フイルムが適用される液晶表示装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
10…フイルム製造装置 24…タッチロール
28…第1キャスティングロール 30…縦延伸部
33…第1予熱ロール 35…第2予熱ロール
37…第1ニップロール 39…第2ニップロール
50…液晶表示装置 52、56…偏光板
68、80…光学補償フイルム 84…保護フイルム
F…熱可塑性フイルム Fa…未延伸フイルム
Fb…縦延伸フイルム Fc…横延伸フイルム

Claims (29)

  1. 第1ニップロールと第2ニップロールを用いて、0.01を超え、0.3未満の縦横比で熱可塑性フイルムを縦延伸する際に、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールの直径をRとしたとき、ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムが、いずれかのニップロールと接触する際のラップ角度が1°以上、60°以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  2. 請求項1記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、いずれかのニップロールと前記熱可塑性フイルムとの接触距離が0.01R以上、0.5R以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムの水平方向とのなす角度が0.1°以上、60°以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールの直径をRとしたとき、前記第1ニップロールの配置高さと第2ニップロールの配置高さの差は、0.1R以上、10R以下にして行うことを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、最後部のニップロールの回転数に0.01%〜0.1%の変動を与えることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記縦延伸した後の前記熱可塑性フイルムの下記式で特定されるネックイン量が0.1%以上、5%以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
    ネックイン量={(W0−W1)/W0}×100(%)
    (式中、W0は縦延伸前の熱可塑性フイルムの幅、W1は縦延伸後の熱可塑性フイルムの幅を示す。)
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの幅方向の温度分布(Ts−Tc)が0.1℃以上、5℃以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
    (Tsは、熱可塑性フイルムの全幅の20%以内の両端平均温度、Tcは、熱可塑性フイルムの全幅の60%以内の中央部平均温度を示す。)
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの押し込む圧力が0.5MPa以上、15MPa以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記縦延伸の後に、横方向に1.0倍〜3.0倍で横延伸を行うことを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  10. 請求項9記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記横延伸が予熱ゾーン、延伸ゾーン及び緩和固定ゾーンを経て行う際に、各ゾーンの温度分布が
    予熱ゾーン>延伸ゾーン>熱固定ゾーン
    となるように横延伸することを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  11. 請求項10記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    熱固定後に、(ガラス転移温度Tg−20)℃以上、(Tg+20)℃以下で熱緩和処理することを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記縦延伸前の前記熱可塑性フイルムがタッチロール法により製膜されることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記熱可塑性フイルムが、セルロースアシレートから成ることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  14. 請求項13記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記セルロースアシレートが、プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基、置換あるいは無置換の芳香族アシル基の少なくとも1種を含むことを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  15. 請求項14記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記セルロースアシレートが、下記(1)及び(2)式、あるいは、(3)及び(4)式を満たすことを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
    (1)式:2.5≦A+B<3.0
    (2)式:0.1≦B<3.0
    (式中、Aは、アセテート基の置換度を示し、Bは、プロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基の置換度の総和を示す。)
    (3)式:2.5≦A+C≦3.0
    (4)式:0.1≦C<2
    (式中、Aは、アセテート基の置換度を示し、Cは置換もしくは無置換の芳香族アシル基を示す。)
  16. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法において、
    前記熱可塑性フイルムが、シクロオレフィン系樹脂、ラクトン環含有重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂から成ることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造方法。
  17. 第1ニップロールと第2ニップロールを有し、0.01を超え、0.3未満の縦横比で熱可塑性フイルムを縦延伸する熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールの直径をRとしたとき、ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムが、いずれかのニップロールと接触のラップ角度が1°以上、60°以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  18. 請求項17記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、いずれかのニップロールと前記熱可塑性フイルムとの接触距離が0.1R以上、0.75R以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  19. 請求項17又は18記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロール間を搬送される前記熱可塑性フイルムの水平方向とのなす角度が0.1°以上、60°以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  20. 請求項17〜19記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールの直径をRとしたとき、前記第1ニップロールの配置高さと第2ニップロールの配置高さの差は、0.1R以上、10R以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  21. 請求項17〜20のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロールと前記第2ニップロールのうち、最後部のニップロールの回転数に0.01%〜0.1%の変動を与える手段を有することを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  22. 請求項17〜21のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの幅方向の温度分布(Ts−Tc)が0.1℃以上、5℃以下に制御する手段を有することを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
    (Tsは、熱可塑性フイルムの全幅の20%以内の両端平均温度、Tcは、熱可塑性フイルムの全幅の60%以内の中央部平均温度を示す。)
  23. 請求項17〜22のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記第1ニップロール及び前記第2ニップロールの押し込む圧力が0.5MPa以上、15MPa以下であることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  24. 請求項17〜23のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記縦延伸の後に、横方向に1.0倍〜3.0倍で横延伸を行う手段を有することを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  25. 請求項24記載の熱可塑性フイルムの製造装置において、
    前記横延伸を行う手段は、前記熱可塑性フイルムの搬送方向に沿って順番に予熱ゾーン、延伸ゾーン及び緩和固定ゾーンが配置され、
    各ゾーンの温度分布が
    予熱ゾーン>延伸ゾーン>熱固定ゾーン
    となるように制御されていることを特徴とする熱可塑性フイルムの製造装置。
  26. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法で作製され、
    表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、1.0μm以下であることを特徴とする熱可塑性フイルム。
  27. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の熱可塑性フイルムの製造方法で作製され、
    表面突起高さが0.5μm以上、8.0μm以下の欠陥が0.1個/m2以上、30個/m2以下であることを特徴とする熱可塑性フイルム。
  28. 請求項26又は27記載の前記熱可塑性フイルムを用いた偏光板、液晶表示板用光学補償フイルム、反射防止フイルム。
  29. 請求項26又は27記載の前記熱可塑性フイルム、請求項28記載の前記偏光板、前記液晶表示板用光学補償フイルム、前記反射防止フイルムの少なくとも1つを用いた液晶表示装置。
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