JP2008303482A - 炭素繊維 - Google Patents

炭素繊維 Download PDF

Info

Publication number
JP2008303482A
JP2008303482A JP2007150128A JP2007150128A JP2008303482A JP 2008303482 A JP2008303482 A JP 2008303482A JP 2007150128 A JP2007150128 A JP 2007150128A JP 2007150128 A JP2007150128 A JP 2007150128A JP 2008303482 A JP2008303482 A JP 2008303482A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pitch
carbon fiber
based carbon
fiber filler
filler
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007150128A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroki Sano
弘樹 佐野
Hiroshi Hara
寛 原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Teijin Ltd filed Critical Teijin Ltd
Priority to JP2007150128A priority Critical patent/JP2008303482A/ja
Publication of JP2008303482A publication Critical patent/JP2008303482A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】高い放熱性を呈する放熱材料の素材となり得る炭素繊維を開発すること。
【解決手段】メソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径が5〜20μm、平均繊維長が5〜6000μmであり、しかもNMPに浸漬させたときの炭素繊維への吸着量が0.5〜20.0wt%であるものは、好ましい放熱性を呈するピッチ系炭素繊維フィラーとなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、Nーメチルピロリドン(以下、NMPと略記する)の吸液量を制御したピッチ系炭素繊維フィラーに関わるものである。更には、メルトブロー法によって作製した炭素繊維の物理性状や結晶サイズを制御することにより、放熱特性に優れる放熱材料の作製に適するピッチ系炭素繊維フィラーに関わる。
高性能の炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、一連のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できる。そして炭素繊維は機械的強度・弾性率が通常の合成高分子に比較して著しく高いという特徴を利用し、航空・宇宙用途、建築・土木用途、スポーツ・レジャー用途などに広く用いられている。
炭素繊維は、通常の合成高分子に比較して熱伝導率が高く、放熱性に優れていると言われている。炭素繊維など炭素材料は、フォノンの移動により高い熱伝導率を達成すると言われている。フォノンは、結晶格子が発達している材料において良く伝達する。市販のPAN系炭素繊維は微結晶からなるゆえ、結晶格子が充分に発達しているとは言えず、その熱伝導率は通常200W/(m・K)よりも低く、サーマルマネジメントの観点からは必ずしも好適であるとは言えない。これに対して、ピッチ系炭素繊維は黒鉛化率が高いために結晶格子が良く発達し、PAN系炭素繊維に比べて高熱伝導率を達成しやすいと認識されている。
近年、発熱性電子部品の高密度化や、携帯用パーソナルコンピュータをはじめとする電子機器の小型化、薄型化、軽量化に伴い、それらに用いられる放熱部材の低熱抵抗化の要求が益々高まっており、放熱特性の更なる向上が要求されている。放熱部材の熱伝導率を向上させるには、マトリクスに熱伝導材を高充填させることが多い。その他には、マトリクスと熱伝導剤の界面の密着性を高めることや、熱伝導材をマトリクス内で分散させ伝熱パスを放熱部材内に形成することで、熱伝導率を向上させることができる(特許文献1)。
放熱部材、特に低い熱抵抗を目的とした膜厚の薄い放熱シート等を作製する場合、キャスト法などが使用される。この様な場合、放熱シート用ドープの粘度を低下させるため、溶剤を使用することがある。しかし、表面に官能基の少ない炭素繊維を用いた場合、溶剤との親和性が低く、放熱シート用ドープドープの中での分散性が悪く、炭素繊維が凝集し効率的な伝熱パスが形成できず、良好な放熱特性を示しにくい。
特開2003−64266号公報
上記のように、熱伝導性に優れる放熱材料が求められているという観点から、マトリクス内における熱伝導材の分散性が向上するのが望ましい。また、膜厚の薄いサンプルを得るために、放熱シート用ドープドープに溶剤を加えるが、炭素繊維と溶剤の相性が悪いと炭素繊維が凝集してしまい、高い熱伝導性を発揮できない。
本願発明者らは、熱伝導性・放熱性に優れた放熱部材を創製するための、優れた熱伝導材を開発することに鑑み鋭意研究した結果、Nーメチルピロリドン(以下、NMPと略記する)の吸液性を制御したピッチ系炭素繊維フィラーが、放熱シート用ドープの中でNMPとの親和性が高く、良好な分散性を示すため、高い熱伝導性を有する放熱部材となることを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明の課題は、メソフェーズピッチを原料とし平均繊維径が5〜20μm、平均繊維長が5〜6000μmのピッチ系炭素繊維フィラーであって、該ピッチ系炭素繊維フィラー10.0gをNMP100g中で1時間攪拌した後、濾過し、更に150℃おいて1時間真空乾燥したピッチ系炭素繊維フィラーを窒素雰囲気下において示差熱天秤により150℃(又は室温〜150℃の温度域)から800℃まで加熱したときの質量の差異(変化量、すなわちNMPの脱離量)が、ピッチ系炭素繊維フィラーの質量に対して0.5〜20.0wt%の範囲であるピッチ系炭素繊維フィラーを得ることにより解決できる。
また、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%であること、六角網面の成長方向に由来する結晶サイズが5nm以上であること、真密度が1.5〜2.3g/ccの範囲であり、繊維軸方向の熱伝導率が300W/(m・K)以上であること、また、溶融したメソフェーズピッチをメルトブロー法により繊維化(製糸)することにより、上述のピッチ系炭素繊維フィラーを得ること、更に、上述のピッチ系炭素繊維フィラーを使用する熱伝導性成形体も本発明に包含される。
本発明のピッチ系炭素繊維フィラーは、NMPの吸液性を調製し、炭素繊維の形状を一定形状に制御することにより、放熱シート用ドープの溶剤に使用するNMPと炭素繊維との親和性を高め、放熱材料の高性能化を発現せしめている。
以下に、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明で用いられるピッチ系炭素繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げられる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特に光学的異方性ピッチ、すなわちメソフェーズピッチが好ましい。メソフェーズピッチは、黒鉛化処理を行った際に黒鉛化度が向上しやすため、炭素繊維の熱伝導性を向上させる上で特に好ましいためである。
原料ピッチとなる光学異方性ピッチの軟化点はメトラー法により求めることができ、250℃以上350℃以下が好ましい。軟化点が250℃より低いと、不融化の際に繊維同士の融着や大きな熱収縮が発生する。また、350℃より高いとピッチの熱分解が生じ糸状になりにくくなる。
光学異方性ピッチは溶融後、ノズルより吐出しこれを冷却することによる溶融紡糸によって繊維化できる。紡糸方法としては、具体的には口金から吐出したピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用してピッチを引き取る遠心紡糸法などが挙げられる。中でも、曲率半径の制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いるのが好ましい。
光学異方性ピッチは溶融紡糸された後、不融化、焼成、必要に応じて粉砕を経て最後に黒鉛化することによってピッチ系炭素繊維フィラーとする。以下、メルトブロー法を例にとって、各工程について説明する。
本発明においては、紡糸時の温度は、光学異方性ピッチの粘度が30〜250ポイズの範囲にある温度であることが望ましい。更に好ましくは50〜200ポイズの範囲にある温度である。紡糸ノズルは、導入角αが10〜55°であり、吐出口長さLと吐出口の径Dの比L/Dが6〜20の範囲にあるノズルが好ましく用いられる。紡糸条件がこの範囲にあるとき、光学異方性ピッチに加わる剪断力が、芳香環を構成する分子をある程度配列させることが可能となる。紡糸条件がこの条件から外れるとき、例えば、粘度がより大きい、又は導入角がより小さい、又はL/Dがより大きいときなど剪断力がより強く加わる条件では、配向が進みすぎて、黒鉛化(結晶化)に伴いフィブリル化が生じ、炭素繊維が割れやすくなる。逆に、粘度がより小さい、もしくは導入角がより大きい、もしくはL/Dがより小さいなど剪断力がより小さいなど剪断力が低くなる条件では、芳香環構成分子があまり配列しないため、黒鉛化処理しても黒鉛化度(結晶化度)がそれほど向上せず、高い熱伝導性が得られない。
ノズル孔から吐出されたピッチ繊維は、100〜350℃に加温された毎分100〜10000mの線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって短繊維化される。吹き付けるガスは空気、窒素又はアルゴンを用いることができるが、コストパフォーマンスの点から空気が好ましい。
ピッチ繊維は、金網ベルト上に捕集され連続的なマット状になり、さらにクロスラップされることで三次元ランダムマットとなる。
三次元ランダムマットとは、クロスラップされていることに加え、ピッチ繊維が三次元的に交絡しているマットをいう。この交絡は、ノズルから、金網ベルトに到達する間にチムニと呼ばれる筒において達成される。線状の繊維が立体的に交絡するために、通常一次元的な挙動しか示さない繊維の特性が立体においても反映されるようになる。
このようにして得られたピッチ繊維よりなる三次元ランダムマットは、公知の方法で不融化する。ピッチ繊維の不融化処理は、空気又はオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、沃素若しくは臭素を空気に添加したガスを用いて200〜350℃で達成される。安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが好ましい。また、不融化処理されたピッチ繊維は、真空中又は窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガス中で600〜1500℃で焼成され、次いで2000〜3500℃で黒鉛化される。焼成処理は常圧条件で、コストの安い窒素中で実施される場合が多い。黒鉛化処理は使用する炉の形式に応じて、不活性ガスの種類を変更することが一般的である。不融化処理後或いは焼成処理後、必要に応じ得られた繊維を粉砕する。粉砕は公知の方法によって行うことができる。具体的には、カッター、ボールミル、ジェットミル、クラッシャーなどを用いることができる。粉砕された炭素繊維を、必要に応じて、更に焼成し、次いで黒鉛化する。黒鉛化温度は、炭素繊維としての熱伝導率を高くするためには、2000〜3500℃にすることが好ましい。より好ましくは2300〜3500℃である。黒鉛化処理の際に黒鉛性のルツボに入れ処理すると、外部からの物理的、化学的作用を遮断でき好ましい。黒鉛製のルツボは上記の炭素繊維を、所望の量入れることが出来るものであるならば大きさ、形状に制約はないが、黒鉛化処理中または冷却中に炉内の酸化性のガス、または水蒸気との反応による当該炭素繊維の損傷を防ぐために、フタ付きの気密性の高いものが好適に利用できる。
本発明で用いるピッチ系炭素繊維フィラーは、1時間NMPに浸漬させた後のNMPの吸着量が0.5〜20.0wt%の範囲に保たれていることが必要である。具体的にはピッチ系炭素繊維フィラー10.0gをNMP100g中で1時間攪拌した後、濾過し、更に150℃おいて1時間真空乾燥したピッチ系炭素繊維フィラーを、そのままの加温状態又は一旦室温(若しくは室温近傍)まで冷却した後、窒素雰囲気下において示差熱天秤により150℃(又は室温〜150℃の温度域)から800℃まで加熱したときの質量の差(変化量、すなわちNMP脱離量)を測定することによって吸着量が求められる。NMPの吸着量がこの範囲にある場合、NMPに放熱シート用ドープを作成したとき、溶剤となるNMPとの親和性が良好であり、ピッチ系炭素繊維フィラーの分散性が良好となり、このような炭素繊維フィラーを用いて作製した放熱シートは高い放熱特性を呈する。
これに対し、NMPの吸着量が20.0wt%より高い場合は、放熱シート成形時において、成形体からNMPを除去することが困難になり、良質の放熱シートが得られず、炭素繊維フィラーとして好ましくない。また、吸着量が0.5wt%を下回る場合は、放熱シート用ドープ中におけるピッチ系炭素繊維フィラーの分散性が悪くなり、得られる放熱シートの熱伝導性が低下する。
ピッチ系炭素繊維フィラーのNMPの吸着量を制御するには、黒鉛化処理後に表面処理を行い表面官能基量を制御すること、黒鉛化温度を低くして表面官能基量を制御することなどにより実施できる。表面処理はその手段に特に限定はされないが、具体的には、酸処理、オゾン処理又はプラズマ処理などを適用することによりNMP吸着量の調整をすることが可能である。
ピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維径は5〜20μmであることが必要である。5μm未満の場合には、原料となるマットの形状が保持できなくなることがあり生産性が低い。繊維径が20μmを超えると、不融化工程でのムラが大きくなり部分的に融着が起きる。炭素繊維フィラーの平均繊維径は、より好ましくは5〜15μmであり、さらに好ましくは7〜12μmである。
これに対して、ピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維長は5〜6000μmであることが要件となる。一方、5μmを下回ると繊維としての特徴が失われ、充分な熱伝導性を発揮できない。他方、6000μmを超えると繊維の交絡が著しく増大し、マトリクス樹脂と混合した際に粘度が非常に大きくなり、ハンドリングが困難になる。平均繊維長は、より好ましくは10〜3000μm、さらに好ましくは20〜1000μmである。
なお、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率として求められるCV値は、5〜20%であることが好ましい。CV値が5%を下回ることは工程上あり得ない。また、CV値が20%を超えると不融化工程でトラブルを起こす原因となる直径20μm以上の繊維が増える蓋然性が高くなり、生産性の観点から好ましくない。
本発明で用いるピッチ系炭素繊維フィラーは、六角網面の成長方向に由来する結晶粒サイズが5nm以上であることが必要である。六角網面の成長方向に由来する結晶粒サイズは公知の方法によって求めることができ、X線回折法にて得られる炭素結晶の(110)面からの回折線によって求めることができる。結晶粒サイズが重要になるのは、熱伝導が主としてフォノンによって担われており、フォノンを発生する部位が結晶であることに由来している。結晶粒のサイズは、より好ましくは、20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上である。
ピッチ系炭素繊維フィラーの真密度は1.5〜2.3g/ccであることが要件となる。1.5g/ccを下回ると黒鉛化度が低いために、充分な熱伝導性を発揮できない。また2.3g/ccを上回る高密度化には、炭素繊維の製造に非常に大きなエネルギーを必要とするため、コストの観点から望ましくない。
本発明のピッチ系炭素繊維フィラーは、マトリクスと複合してコンパウンド、シート、グリース、接着剤等の熱伝導性成形体を得ることができる。マトリクスとして特に限定されないが、具体的には、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルケトン系、ポリエーテル・エーテルケトン系、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シリコーン系、フッ素系の樹脂などを用いることができる。なかでも、その部材を形成する好ましいマトリクスとしては、無機高分子としてシリコーン樹脂、また有機高分子として芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル(ポリアリレート)、ポリサルフォン及びポリエーテル・エーテルケトン、フッ素系樹脂が例示でき、有機溶剤であるNMP等を吸着した状態の炭素繊維フィラーと配合され、スラリー状と為すことが好ましい実施態様の具体例となる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)ピッチ系炭素繊維フィラーの1時間浸漬後のNMPの吸着量は、ピッチ系炭素繊維フィラー10.0gとNMP100.0gとを混合して、1時間攪拌し、ピッチ系炭素繊維フィラーを濾過し、150℃で1時間真空乾燥したものを、示差熱天秤(リガク製)を用い、窒素雰囲気下において更に800℃まで加熱したときの、脱離したNMPの質量から計算して求めた。
(2)ピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維径は、黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維フィラーをJIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(3)ピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維長は、黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維フィラーを抜き取り、光学顕微鏡下で測長器を用い2000本測定し、その平均値から求めた。
(4)ピッチ系炭素繊維フィラーの結晶サイズは、X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。
(5)ピッチ系炭素繊維フィラーの密度は、JIS R7212に記載のブタノール法にて測定した。
(6)ピッチ系炭素繊維フィラーの熱伝導率は、フィラーの電気抵抗を測定し、熱伝導率と電気抵抗の下記の関係式(特許第3648865号参考)から計算により求めた。
K=1272.4/ER−49.4
(Kは炭素繊維の熱伝導率、ERは炭素繊維の電気比抵抗)
(7)ピッチ系炭素繊維フィラー/テクノーラ複合物の熱伝導率は、京都電子社製QTM−500を用いプローブ法で求めた。
[実施例1]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径14.5μmのピッチ系短繊維を作製した。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付320g/mのピッチ系短繊維からなる三次元ランダムマットとした。
この三次元ランダムマットを空気中で170℃から285℃まで平均昇温速度2℃/分で昇温して不融化し、更に800℃で焼成を行った。この三次元ランダムマットをカッター(ターボ工業製)により800rpmで粉砕し、3000℃で黒鉛化した。この後、10%硫酸溶液に30℃の温度において10時間浸漬させて粉砕処理炭素繊維フィラーの酸処理を施した。
黒鉛化後のピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維径は9.8μm、平均繊維径に対する繊維直径分散の比は12%であった。また平均繊維長は300μmであった。六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは70nmであった。真密度は2.18g/ccで、熱伝導率は350W/(m・K)であった。NMPの吸着量は8.0wt%であった。
上述のピッチ系炭素繊維フィラー70重量部とテクノーラ(帝人社製アラミド樹脂)30重量部とNMP1900重量部とを混合し、得られたドープをドクターブレードで塗工し、厚さ200μmのフィルムを得た。作製したピッチ系炭素繊維フィラー/テクノーラ複合物の熱伝導率を測定したところ、12.0W/(m・K)であった。
[実施例2]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔のスピナレットを使用し、スリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径14.5μmのピッチ系短繊維を作製した。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付320g/mのピッチ系短繊維からなる三次元ランダムマットとした。
この三次元ランダムマットを空気中で170℃から285℃まで平均昇温速度2℃/分で昇温して不融化、更に800℃で焼成を行った。この三次元ランダムマットをカッター(ターボ工業製)により800rpmで粉砕し、2800℃で黒鉛化処理した。
黒鉛化後のピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維径で10.2μm、平均繊維径に対する繊維直径分散の比は13%であった。平均繊維長は300μmであった。六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは50nmであった。真密度は2.16g/ccで、熱伝導率は300W/(m・K)であった。NMPの吸着量は4.8wt%であった。
上述のピッチ系炭素繊維フィラー70重量部とテクノーラ(帝人社製、前掲)30重量部とNMP1900重量部とを混合し、得られたドープをドクターブレードで塗工し、厚さ200μmのフィルムを得た。作製したピッチ系炭素繊維フィラー/テクノーラ複合物の熱伝導率を測定したところ、10.5W/(m・K)であった。
[比較例1]
実施例1と同様の方法でピッチ系炭素繊維フィラーを作成した。得られたピッチ系炭素繊維を3600℃で追加の熱処理を行った。熱処理後のピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維径で9.7μm、平均繊維径に対する繊維直径分散の比は12%であった。平均繊維長は300μmであった。六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは90nmであった。真密度は2.21g/ccで、熱伝導率は420W/(m・K)であった。NMPの吸着量は0.3%であった。
上述のピッチ系炭素繊維フィラー70重量部と、テクノーラ(帝人社製)30重量部と、NMP1900重量部とを混合し、得られたドープをドクターブレードで塗工し、厚さ200μmのフィルムを得た。作製したピッチ系炭素繊維フィラー/テクノーラ複合物の熱伝導率を測定したところ、4.5W/(m・K)であった。
[比較例2]
実施例1と同様の方法でピッチ系炭素繊維フィラーを作成した。得られたピッチ系炭素繊維を30%硫酸溶液に30℃で10時間浸漬させ酸処理を行った。酸処理後のピッチ系炭素繊維フィラーの平均繊維径で9.3μm、平均繊維径に対する繊維直径分散の比は12%であった。平均繊維長は300μmであった。六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは50nmであった。真密度は2.16g/ccで、熱伝導率は310W/(m・K)であった。NMPの吸着量は25.0%であった。
上述のピッチ系炭素繊維フィラー70重量部と、コーネックス(アラミド樹脂)30重量部と、NMP1900重量部とを混合しドープと為し、得られたスラリーをドクターブレードで塗工し、厚さ200μmのフィルムを得た。しかしながら、得られたフィルムからNMPが脱離せず(充分抜けきらず)ウェットな状態であった。作製したピッチ系炭素繊維フィラー/コーネックス複合物の熱伝導率を測定したところ、12.7W/(m・K)であった。
本発明のピッチ系炭素繊維フィラーは、炭素繊維のNMPの吸着量を制御することによってNMPを用いてマトリクスと混合したときのNMPとの親和性を高め、ピッチ系炭素繊維フィラーの分散性を高め、これを用いた複合材は高い熱伝導性を示す。この事実から、高い放熱特性が要求される場所に放熱性部材として用いることが可能となり、放熱を要する装置・施設におけるサーマルマネージメントを確実なものと為し得る。

Claims (6)

  1. メソフェーズピッチを原料とし平均繊維径が5〜20μm、平均繊維長が5〜6000μmのピッチ系炭素繊維フィラーであって、該ピッチ系炭素繊維フィラー10.0gをNMP100g中で1時間攪拌した後、濾過し、更に150℃おいて1時間真空乾燥したピッチ系炭素繊維フィラーを、窒素雰囲気下において示差熱天秤により150℃から800℃まで加熱したときの質量の変化が、ピッチ系炭素繊維フィラーの質量に対して0.5〜20.0wt%の範囲であることを特徴とするピッチ系炭素繊維フィラー。
  2. 平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%である請求項1に記載のピッチ系炭素繊維フィラー。
  3. 六角網面の成長方向に由来する結晶サイズが少なくとも5nmである請求項1又は請求項2に記載のピッチ系炭素繊維フィラー。
  4. 真密度が1.5〜2.3g/ccの範囲であり、繊維軸方向の熱伝導率が300W/(m・K)以上である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維フィラー。
  5. 溶融したメソフェーズピッチをメルトブロー法により繊維化することを含み、得られた炭素繊維の平均繊維径が5〜20μm、平均繊維長が5〜6000μmであり、NMPに浸漬させたときのNMPの吸着量が0.5〜20.0wt%であるピッチ系炭素繊維フィラーの製造方法。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維フィラーを用いてなる熱伝導性成形体。
JP2007150128A 2007-06-06 2007-06-06 炭素繊維 Pending JP2008303482A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007150128A JP2008303482A (ja) 2007-06-06 2007-06-06 炭素繊維

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007150128A JP2008303482A (ja) 2007-06-06 2007-06-06 炭素繊維

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008303482A true JP2008303482A (ja) 2008-12-18

Family

ID=40232454

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007150128A Pending JP2008303482A (ja) 2007-06-06 2007-06-06 炭素繊維

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008303482A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4538502B2 (ja) ピッチ系炭素繊維、マットおよびそれらを含む樹脂成形体
JP4891011B2 (ja) 補強材・放熱材に適する炭素繊維集合体
KR101432541B1 (ko) 그라핀 탄소섬유 조성물 및 탄소섬유의 제조방법
JP2008303263A (ja) 熱伝導性塗料
JP2007291267A (ja) 熱伝導性成形材料及びこれを用いた成形シート
JP2009191392A (ja) ピッチ系炭素繊維フィラー及びそれを用いた成形体
JP2008208159A (ja) 耐熱性熱伝導複合材料、耐熱性熱伝導シート
JP6523070B2 (ja) 極細炭素繊維の製造方法及び極細炭素繊維並びにこの極細炭素繊維を含む炭素系導電助剤
JPWO2008108482A1 (ja) ピッチ系炭素繊維、その製造方法および成形体
JP2008248462A (ja) ピッチ系炭素繊維フィラー及びそれを用いた成形体
JP2008189867A (ja) 炭素繊維補強熱可塑性樹脂複合材料
JP6941215B2 (ja) 放熱シート
JP2008308543A (ja) 炭素繊維複合シート及びその製造方法
JP6738202B2 (ja) 極細炭素繊維の製造方法
JP2008189866A (ja) 炭素繊維補強熱硬化性樹脂放熱材
JP4971958B2 (ja) シート状熱伝導性成形体
JP2009030215A (ja) 炭素繊維及びそれを用いた成形体
JP2020033687A (ja) 極細炭素繊維混合物、その製造方法、及び炭素系導電助剤
JP2012077224A (ja) 熱伝導性組成物
JP2008297514A (ja) 熱伝導性接着剤
JP2009108423A (ja) 熱伝導性フィラー及びそれを用いた成形体
JP2008303482A (ja) 炭素繊維
JP2009215403A (ja) シート状熱伝導性成形体
JP2008208490A (ja) ピッチ系炭素繊維及び炭素繊維強化複合材料
JP7376230B2 (ja) メソフェーズピッチ含有繊維束、安定化メソフェーズピッチ含有繊維束、及びこれらの製造方法