以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1から図14は本発明の第1の実施の形態を示したものであり、図1は超音波診断装置のシステム全体の構成を示すブロック図である。なお、この図1やその他の図面、あるいは以下の説明において、超音波内視鏡及び超音波診断装置に必要な一般的な構成の内の本発明に関連しない部分については、図示や説明を適宜省略する。
<構成>
この超音波診断装置は、超音波内視鏡1と、光学観察装置2と、超音波断層像生成手段たる超音波観測装置3と、位置検出手段たる位置配向算出装置4と、位置検出手段たる送信アンテナ5と、標本点指定手段たる姿勢検出プレート6と、標本点指定手段たるマーカスティック7と、特徴点指定手段たるマウス8と、キーボード9と、超音波画像処理装置10と、表示装置11と、を備えている。
超音波内視鏡1は、体腔内に挿入するための細長の挿入部21と、超音波内視鏡1を把持して操作を行うための操作部22と、各機器に接続するための図示しない接続コネクタと、を備えている。この超音波内視鏡1の挿入部21の先端部には、超音波振動子24が設けられており、この超音波振動子24は、超音波観測装置3に電気的に接続されている。挿入部21の先端部におけるこの超音波振動子24の近傍には、位置検出手段であり標本点指定手段を兼ねた受信コイル25が設けられており、この受信コイル25は、位置配向算出装置4に電気的に接続されている。さらに、挿入部21の先端部には、光学的な被検体像を撮像するための撮像装置として例えばCCDカメラ23が設けられており、このCCDカメラ23は、光学観察装置2に電気的に接続されている。
位置配向算出装置4には、上述した超音波内視鏡1の他に、標本点指定手段である姿勢検出プレート6と、標本点指定手段であるマーカスティック7と、磁場を発生する送信アンテナ5と、が接続されている。
送信アンテナ5は、巻線軸の配向が互いに異なる複数の図示しない送信コイルを、円筒形の筐体の中に一体に収納して構成されたものである。この送信アンテナ5内に収納された複数の送信コイルは、位置配向算出装置4にそれぞれ電気的に接続されている。
図2は、超音波内視鏡1の挿入部21の先端部に配設された受信コイル25の様子を示す図である。この図2は、受信コイル25の構造と方向単位ベクトルとを説明するための図であるために、超音波内視鏡1を構成するその他の要素については図示を省略している。
超音波内視鏡1の挿入部21の先端部の内部には、受信コイル25が固定されている。この受信コイル25は、互いに直交する3つの方向単位ベクトルVa,Vb,Vcを巻線軸とする3個のコイルを一体にした構成のものとなっている。これら3個のコイルは、それぞれ両極から信号線を各延出しており、つまり1個のコイルに対して2本の信号線が延出されていることになるために、受信コイル25からは合計6本の信号線が延出されている。従って、図示しないコネクタには、これら6本の信号線に各対応する6個の電極が設けられている。これら6個の電極は、図示しないケーブルを介して、位置配向算出装置4と接続されている。
図3は、姿勢検出プレート6の構成を示す斜視図である。
姿勢検出プレート6は、巻線軸が単軸のコイルからなる3個のプレートコイル6a,6b,6cをプレート筐体6dに内蔵している。ここで、姿勢検出プレート6に固定した直交座標軸O”-x”y”z”とその正規直交基底(各軸方向の単位ベクトル)i”,j”,k”(表記上の理由から、明細書中においては、ベクトルおよび行列を、肉太文字を用いて表す代わりに、通常の文字を用いることにする。以下同様。)とを図3に示すように定義する。これら3個のプレートコイル6a,6b,6cの内、2個のプレートコイル6a,6bは巻線軸がi”の方向を向くように、1個のプレートコイル6cは巻線軸がj”の方向を向くように、姿勢検出プレート6に対してそれぞれ固定されている。ここで、姿勢検出プレート6の基準位置Lを3個のプレートコイル6a,6b,6cの重心に定義することにする。
図4は、マーカスティック7の構成を示す斜視図である。
マーカスティック7は、巻線軸が単軸のコイルからなるマーカコイル7aを1個内蔵している。このマーカコイル7aは、巻線軸がマーカスティック7の長軸方向を向くように該マーカスティック7に対して固定されている。ここで、マーカスティック7の基準位置Mをマーカスティック7の先端に定義することにする。
図1の説明に戻って、光学観察装置2と超音波観測装置3と位置配向算出装置4とは、超音波画像処理装置10にそれぞれ接続されていて、超音波画像処理装置10はさらに表示装置11に接続されている。
超音波画像処理装置10は、参照画像データ保持手段である参照画像記憶部31と、特徴点指定手段であり抽出手段たる抽出回路32と、ガイド画像作成手段である3次元ガイド画像作成回路33と、ボリュームメモリ34と、特徴点を指定するための特徴点指定3次元画像を作成する画像処理手段である特徴点指定3次元画像作成回路35と、混合回路36と、表示回路37と、制御回路38と、を有して構成されている。
制御回路38は、超音波画像処理装置10内の各部や各回路に指令を出力することができるように、各部や各回路と図示しない信号線を介して接続されている。また、制御回路38は、超音波観測装置3、マウス8、及びキーボード9と、それぞれ制御線を介して直接に接続されている。
参照画像記憶部31は、大容量のデータを保存することができるハードディスクドライブ等の記録媒体として構成されている。この参照画像記憶部31は、解剖学的な画像情報として、複数の参照画像データ31aを記憶している。図5は参照画像記憶部31に記憶されている参照画像データ31aの様子を模式的に示す図である。この図5に示すように、参照画像データ31aは、例えば人体を1mmピッチで平行にスライスする方向に撮影された一辺60cmの正方形の写真データを、さらに画素毎に器官別に分類した後に、分類毎に色分けして属性を変えて得た画像データである。ここで、写真データの一辺を60cmにしたのは、頭部から足にかけての体軸に垂直な人体の横断面全体がほぼ入る大きさであるためである。図5に示す参照画像記憶部31内の参照画像データ31aには、説明の都合上、1番からN番までの番号が付されている。ここで、複数の参照画像データ31aに対して固定した直交座標軸O’-x'y'z'とその正規直交基底(各軸方向の単位ベクトル)i’,j’,k’とを、図5に示すように、参照画像データ31a上に定義する。ここに、直交座標軸O’-x'y'z'の原点O’は、1番の参照画像データ31aの最も左下(左下角)に定義する。また、x’軸は1番の参照画像データ31aの下辺に定義し、y’軸は1番の参照画像データ31aの左辺に定義し、z’軸は参照画像データ31aの厚み方向に定義する。
ボリュームメモリ34は、大容量のデータを格納することができるように構成されている。このボリュームメモリ34の一部の記憶領域には、ボクセル空間が割り当てられている。図6は、ボクセル空間の様子を模式的に示す図である。この図6に示すように、ボクセル空間は、直交座標軸O’-x’y’z’に対応したアドレスをもつメモリセル(以下、ボクセル)から構成されている。
キーボード9は、操作を行うための入力キーとして、特徴点指定手段たる関心器官指定キー9aと、特徴点指定手段たる特徴点指定キー9bと、標本点指定手段たる体表標本点指定キー9cと、標本点指定手段たる体内標本点指定キー9dと、走査制御キー9eと、を備えている。
<作用>
次に、このような超音波診断装置の作用について説明する。
超音波観測装置3を操作することにより、超音波内視鏡1の挿入部21の先端部に設けられた超音波振動子24によって超音波を送受する走査を行う。ここに、超音波の走査方法としては種々の方法があるが、例えば超音波内視鏡1の挿入方向に垂直な平面内を放射状に走査するラジアル走査が一般的な走査方法として知られている。
超音波内視鏡1は、ラジアル走査を行うことによって受波したエコーを電気信号(以下、エコー信号)に変換して、超音波観測装置3に送信する。
超音波観測装置3は、超音波内視鏡1から受信したエコー信号に、包絡線検波、対数増幅、A/D変換、そして極座標系から直交座標系への変換等の処理を行い、一回のラジアル走査に対して一枚の超音波断層像データを作成する。なお、超音波断層像データの作成に関する詳細は公知であるために、ここでは説明を省略する。
位置配向算出装置4は、送信アンテナ5の図示しない送信コイルを時分割で複数回励磁する。これにより送信アンテナ5は、受信コイル25を構成する巻線軸の異なる3個のコイルと、姿勢検出プレート6の3個のプレートコイル6a,6b,6cと、マーカスティック7のマーカコイル7aと、の分の計7回に分けて、空間に交番磁場を張る。
受信コイル25に設けられた巻線軸が互いに直交する3個のコイルと、姿勢検出プレート6に設けられた3個のプレートコイル6a,6b,6cと、マーカスティック7に設けられたマーカコイル7aとは、送信アンテナ5から発生された交番磁場をそれぞれ検出して、検出した磁場を位置電気信号に変換し位置配向算出装置4へ出力する。
位置配向算出装置4は、時分割に入力される各位置電気信号を基にして、受信コイル25の3個のコイルの位置と巻線軸の方向とを算出し、これらの算出値に基づいて受信コイル25の位置と配向とを算出する。ここで算出される受信コイル25の位置と配向とについては、後で詳細に説明する。
位置配向算出装置4は、時分割に入力される各位置電気信号を基にして、姿勢検出プレート6の3個のプレートコイル6a,6b,6cの位置と巻線軸の方向とを算出する。そして、位置配向算出装置4は、3個のプレートコイル6a,6b,6cの位置の算出値から、3個のプレートコイル6a,6b,6cの重心、すなわち姿勢検出プレート6の基準位置Lを算出する。さらに、位置配向算出装置4は、3個のプレートコイル6a,6b,6cの巻線軸の方向の算出値から姿勢検出プレート6の配向を算出する。ここで算出される姿勢検出プレート6の基準位置Lと配向については、後で詳細に説明する。
位置配向算出装置4は、入力される各位置電気信号を基にして、マーカスティック7のマーカコイル7aの位置と巻線軸の方向とを算出する。マーカコイル7aとマーカスティック7先端との距離は予め設計値として決められており、位置配向算出装置4に記憶されている。そして、位置配向算出装置4は、算出したマーカコイル7aの位置および巻線軸の方向と、予め設計値として決められた前記距離とから、マーカコイル7aの基準位置Mを算出する。ここで算出されるマーカコイル7aの基準位置Mについては、後で詳細に説明する。
位置配向算出装置4は、上述したように算出した、受信コイル25の位置及び配向と、姿勢検出プレート6の基準位置L及び配向と、マーカコイル7aの基準位置Mと、を位置・配向データとして超音波画像処理装置10の3次元ガイド画像作成回路33へ出力する。
ここで、本実施の形態においては、原点Oを送信アンテナ5上に定義して、術者が被検者を検査する実際の空間上に、直交座標軸O-xyzとその正規直交基底(各軸方向の単位ベクトル)i,j,kとを図7に示すように定義する。ここに、図7は送信アンテナ5上に定義された直交座標軸O-xyzとその正規直交基底とを示す図である。そして、位置・配向データの内容を時間tの関数として以下に説明するように定義する。ここで、位置・配向データを時間tの関数として定義したのは、受信コイル25、姿勢検出プレート6、マーカスティック7は、時間の経過と共に空間上を動き、その位置と配向の内容も時間tにより変化するためである。
位置・配向データの内容は、以下の通りである。
・受信コイル25の位置C(t)の位置ベクトルOC(t)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・受信コイル25の第1の巻線軸方向を示す方向単位ベクトルVc(t)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・受信コイル25の第2の巻線軸方向を示す方向単位ベクトルVb(t)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・姿勢検出プレート6の基準位置L(t)の位置ベクトルOL(t)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・姿勢検出プレート6の配向を示す3×3(3行3列)の回転行列T(t)
・マーカスティック7の基準位置M(t)の位置ベクトルOM(t)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
なお、位置配向算出装置4は、ベクトルVc(t)の長さとベクトルVb(t)の長さとを予め単位長に規格化してから(単位ベクトルにしてから)出力するようになっている。
また、回転行列T(t)は、図7に示す直交座標軸O-xyzに対する姿勢検出プレート6の配向を示す行列である。この3×3の回転行列T(t)の(m,n)成分tmn(t)は、厳密には以下の数式1〜数式3に基づき定義される。なお、数式2に現れるベクトルi”,j”,k”は、図3に示すように、姿勢検出プレート6に固定された直交座標軸O”-x”y”z”の正規直交基底(各軸方向の単位ベクトル)である。また、原点O”は姿勢検出プレート6との位置関係が固定されていればどこに取っても構わないが、本実施の形態においては姿勢検出プレート6の基準位置L(t)に取っている。ただし、図3においては、図示の都合上、わかり易いように直交座標軸O”-x”y”z”とその正規直交基底i”,j”,k”とを、姿勢検出プレート6とは離して図示している。数式3およびそれ以降の数式における記号「・」は、内積を意味している。
[数式1]
[数式2]
[数式3]
これら数式1〜数式3に示したように回転行列T(t)を定義すると、次の数式4が成り立つ。
[数式4]
また、一般に、回転行列T(t)は、所謂オイラー角θ,φ,ψを用いて、z軸の周りの角度ψの回転、y軸の周りの角度φの回転、x軸の周りの角度θの回転をこの順序で直交座標軸O-xyzに対して施したときに、姿勢検出プレート6上に仮想的に固定された直交座標軸O”-x”y”z”と一致する(ただし、完全に一致するのは原点Oと原点O”が同一点となるときであり、空間の並進についてはここでは考えていない)ことを想定した行列であり、次の数式5によっても表現される。なお、被検者は時間とともに体位を変えるために、オイラー角θ,φ,ψは何れも時間tの関数である。
[数式5]
混合回路36は、超音波観測装置3からの超音波断層像データと、3次元ガイド画像作成回路33からの3次元ガイド画像データと、を並べて表示用の混合データを作成する。
表示回路37は、この混合データまたは光学観察装置2からの光学像データまたは特徴点指定3次元画像作成回路35からの特徴点指定3次元画像データをアナログビデオ信号に変換して、何れかの画像データのアナログビデオ信号を表示装置11に出力する。
表示装置11は、このアナログビデオ信号を基に表示を行うものであり、例えばモニタ等で構成されている。
超音波画像処理装置10内の参照画像記憶部31、抽出回路32、3次元ガイド画像作成回路33、特徴点指定3次元画像作成回路35、混合回路36、および表示回路37は、制御回路38からの指令に基づき制御されるようになっている。
次に、超音波内視鏡1を操作する際に3次元ガイド画像によるガイドを受けるためには、被検体と3次元ガイド画像との位置合わせを行う必要がある。この位置合わせは、3次元ガイド画像を構成する元となる参照画像データ31aに特徴点を指定し、被検体に対してこの特徴点に解剖学的に対応する標本点を指定して、3次元ガイド画像上の点と被検体上の点とを対応付けられるようにすることにより行われる。
まず、前者の特徴点を指定するのに先立って、術者は、特徴点を指定する器官を選択する。この選択は、以下のように行われる。
制御回路38は、表示回路37に参照画像記憶部31から参照画像データ31aを読み出させる。表示回路37は、参照画像データ31aをアナログビデオ信号に変換して、参照画像を表示装置11に出力する。これにより表示装置11は、参照画像を表示する。
術者は、表示装置11の表示画面上において、参照画像に特徴点を指定しようとしている器官(特徴点指定器官)が表示されているか否かを確認する。
ここで、特徴点指定器官が表示されていない場合には、術者は、次の参照画像データ31aを選択するようにキーボード9あるいはマウス8を用いて指示を行う。このような術者の操作によって、制御回路38は、1番目からN番目の参照画像データ31aを、順次に表示装置11に表示させる。
また、表示装置11の表示画面上に特徴点指定器官が表示されている場合には、術者は、その特徴点指定器官を表示画面上で指定する。この様子を図8に示す。図8は、参照画像記憶部31から参照画像データ31aを読み出して、表示装置11に表示し、マウスカーソル11bを用いて特徴点指定器官を選択するときの様子を示す図である。この図8に示す例では、表示装置11の表示画面11aに、n番目の参照画像データ31aに対応する参照画像が表示されている。参照画像は、体軸に垂直な人体の横断面全体がほぼ入る大きさで、かつ画素毎に器官別に色分けされて、表示画面11a上に表示される。
術者は、特徴点を指定する器官の上にマウスカーソル11bを移動させて、関心器官指定キー9aを押し、関心器官としての特徴点指定器官を選択する。そして術者は、対象となる全ての特徴点指定器官を選択するまで、上述したような操作を繰り返して行う。
こうして、特徴点指定器官が選択されたら、次に、特徴点指定3次元画像を作成して表示する処理を以下のように行う。
抽出回路32は、1番からN番までの全ての参照画像データ31aから、指定された特徴点指定器官に対応する画素を抽出する。例えば、特徴点指定器官として骨格を指定した場合には、全ての参照画像データ31aから骨格を示す画素が抽出されることになる。
その後、抽出回路32は、ボクセル空間の全てのボクセルにデータを割り当てるように、参照画像データ31a毎に抽出されたデータの補間を行う。この補間されたデータをまとめて、抽出データとする。
そして、抽出回路32は、抽出データをボリュームメモリ34内のボクセル空間へ書き出す。この際に、抽出回路32は、抽出データを各々の画素の直交座標O’-x'y'z'上の座標に対応したアドレスを持つボクセル空間のボクセルへ書き出す。ここで、抽出回路32は、特徴点指定器官として抽出した画素に対応するボクセルにはその画素に応じた着色となる色データ(色を指定し得るデータであり、例えばカラーコード等。)を、また、特徴点指定器官として抽出した画素の間に相当するボクセルにはその画素を補間する際に得られた色データを、それ以外のボクセルには0(透明)を、それぞれ割り当てる。こうして抽出回路32は、ボリューム空間の全てのボクセルにデータを割り当てて、稠密なデータを構築する。
特徴点指定3次元画像作成回路35は、ボリュームメモリ34内のボクセル空間からデータを読み出す。そして、特徴点指定3次元画像作成回路35は、読み出したデータを基に、陰影消去、陰影付加、視線変換に伴う座標変換等の公知の3次元画像処理を行い、特徴点指定3次元画像データを作成する。作成された特徴点指定3次元画像データは、特徴点指定3次元画像作成回路35から表示回路37へ転送される。
表示回路37は、この特徴点指定3次元画像データをアナログビデオ信号に変換して、表示装置11に出力する。
このようにして特徴点指定3次元画像が表示装置11に表示されたら、この特徴点指定3次元画像上において、特徴点の指定を行う。ここでは、特徴点指定器官として骨格を選択し、特徴点を上前腸骨棘とした場合の特徴点指定方法を説明する。
図9は、表示装置11の表示画面11aに特徴点指定3次元画像が表示され、マウスカーソル11bを用いて特徴点を指定するときの様子を示す図である。
図9に示す例では、表示装置11に特徴点指定3次元画像が表示されている。ただし、必要に応じて、光学観察装置2からの光学像や、混合データに含まれる超音波観測装置3からの超音波断層像の表示に切り替えるようにしても良い。
特徴点指定3次元画像として表示されている特徴点指定器官である骨格は、術者がキーボード9やマウス8を操作することにより、自由に回転、拡大、縮小することができるようになっている。従って、上前腸骨棘がどの方向を向いているとしても、術者は上前腸骨棘を正確に指定することが可能である。ここに、上前腸骨棘は、下方大腿骨に由来する湾曲と上方から来る湾曲との骨盤上における頂点である。
術者は、マウス8等を用いて、特徴点指定3次元画像上の上前腸骨棘にマウスカーソル11bを合わせる。上前腸骨棘にマウスカーソル11bが合ったところで、術者は、キーボード9の特徴点指定キー9bを押して、特徴点指定3次元画像上の上前腸骨棘を指定する。内視鏡検査では、被検者を左側臥位(左側を下にした体位)にすることが多いために、例えば、右骨盤の上前腸骨棘を指定する。
同様にして、全部で4つの特徴点を指定する。他の特徴点としては、例えば特徴点指定器官を骨格として、特徴点を剣状突起に指定することが挙げられる。また、例えば特徴点指定器官を十二指腸等の消化器官に指定して、特徴点を幽門と十二指腸乳頭とに指定することが挙げられる。
このようにして術者が指定した特徴点を、特徴点P0’,P1’,P2’,P3’とする。本実施の形態においては、説明の都合上、特徴点P0’が剣状突起、P1’が上前腸骨棘、P2’が幽門、P3’が十二指腸乳頭であるものとする。
抽出回路32は、特徴点が指定されるたびに、各々の特徴点毎に、位置ベクトルO’P0’の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分xP0’,yP0’,zP0’、位置ベクトルO’P1’の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分xP1’,yP1’,zP1’、位置ベクトルO’P2’の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分xP2’,yP2’,zP2’、位置ベクトルO’P3’の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分xP3’,yP3’,zP3’をボリュームメモリ34に書き出す。各参照画像データ31aは、上述したように一辺60cmの正方形であって一定の大きさであり、かつ一定の1mmピッチで平行であるために、抽出回路32は各方向成分を演算することができる。
直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分を上述した通りに定義することができたために、以下の数式6〜数式9が成り立つ。
[数式6]
[数式7]
[数式8]
[数式9]
このようにして参照画像に係る特徴点が指定されたら、次に、被検者の標本点の位置を指定する処理を、以下に説明するように行う。
ここに、以下に説明する標本点P0,P1,P2,P3は、特徴点P0’,P1’,P2’,P3’に解剖学的に対応する、被検者の体表もしくは体内の点である。本実施の形態においては、標本点として、上述した特徴点に対応して、剣状突起、上前腸骨棘、幽門、十二指腸乳頭を指定する処理を例に挙げて説明する。
特徴点P0’と標本点P0は剣状突起、特徴点P1’と標本点P1は上前腸骨棘、特徴点P2’と標本点P2は幽門、特徴点P3’と標本点P3は十二指腸乳頭であるから、標本点P0,P1は被検者の体表上の点であり、標本点P2,P3は被検者の体内の点である。
術者は、先ず、被検者を左側を臥せた体位、所謂、左側臥位にする。そして、術者は、姿勢検出プレート6の基準位置Lが被検者の肋骨の剣状突起の位置に重なるように、姿勢検出プレート6を付属のベルトを用いて被検者に貼る。さらに、術者は、触診により被験体の右骨盤にある上前腸骨棘にマーカスティック7を置く。
ここで、術者は体表標本点指定キー9cを押す。術者が上前腸骨棘にマーカスティック7を置いてから体表標本点指定キー9cを押した時刻を、時刻t1と定義する。
このとき同時に(時刻t1に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から位置・配向データを取り込む。
3次元ガイド画像作成回路33は、取り込んだ位置・配向データから、姿勢検出プレート6の基準位置L(t1)の位置ベクトルOL(t1)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、マーカスティック7の基準位置M(t1)の位置ベクトルOM(t1)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、を取得する。
剣状突起の位置P0の位置ベクトルOP0(t1)(その直交座標軸O-xyzにおける各方向成分はxP0(t1),yP0(t1),zP0(t1))は、位置ベクトルOL(t1)と同じであるために、次の数式10により表現することができる。
[数式10]
上前腸骨棘の位置P1の位置ベクトルOP1(t1)(その直交座標軸O-xyzにおける各方向成分はxP1(t1),yP1(t1),zP1(t1))は、位置ベクトルOM(t1)と同じであるために、次の数式11により表現することができる。
[数式11]
さらに、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から位置・配向データを取り込むと同時に(時刻t1に)、位置配向算出装置4から姿勢検出プレート6の配向を示す回転行列T(t1)を取得する。この回転行列Tは、被検者の体位の変化による、各標本点P0,P1,P2,P3の位置の変化を補正するときに用いるために取得するものである。なお、補正の方法については後述する。
3次元ガイド画像作成回路33は、ここまでの処理を行うことにより、この時刻t1における、位置ベクトルOP0(t1),OP1(t1)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、回転行列T(t1)と、を取得できたことになる。
3次元ガイド画像作成回路33は、こうして取得した、時刻t1におけるOP0(t1),OP1(t1)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と回転行列T(t1)とを、ボリュームメモリ34に書き出す。
次に、術者は、超音波内視鏡1の挿入部21を体腔へ挿入して、光学像を観察しながら標本点(例えば幽門)を探索する。そして、術者は、光学像を観察しながら、超音波内視鏡1の先端を標本点(幽門)に接触させる。
その後、術者は、体内標本点指定キー9dを押す。術者が超音波内視鏡1の先端を標本点(幽門)に接触させてから体内標本点指定キー9dを押した時刻を、時刻t2と定義する。
このとき同時に(時刻t2に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から位置・配向データを取り込む。
3次元ガイド画像作成回路33は、取り込んだ位置・配向データから、超音波内視鏡1の先端部の受信コイル25の位置C(t2)の位置ベクトルOC(t2)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分を取得する。
幽門の位置P2の位置ベクトルOP2(t2)(その直交座標軸O-xyzにおける各方向成分はxP2(t2),yP2(t2),zP2(t2))は、位置ベクトルOC(t2)と同じであるために、次の数式12により表現することができる。
[数式12]
このとき同時に(時刻t2に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から再び姿勢検出プレート6の基準位置L(t2)の位置ベクトルOL(t2)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分を取得する。姿勢検出プレート6の基準位置Lは、剣状突起に固定されていて、剣状突起の位置P0(t2)の位置ベクトルOP0(t2)(その直交座標軸O-xyzにおける各方向成分はxP0(t2),yP0(t2),zP0(t2))は、位置ベクトルOL(t2)と同じであるために、次の数式13により表現することができる。
[数式13]
さらに同時に(時刻t2に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から姿勢検出プレート6の配向を示す回転行列T(t2)を取得する。この回転行列Tは、上述したように、被検者の体位の変化による、各標本点P0,P1,P2,P3の位置の変化を補正するときに用いるために取得するものであり、その補正の方法については後述する。
3次元ガイド画像作成回路33は、このような処理を行うことにより、この時刻t2における、位置ベクトルOP0(t2),OP2(t2)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、回転行列T(t2)と、を取得できたことになる。
3次元ガイド画像作成回路33は、こうして取得した、時刻t2におけるOP0(t2),OP2(t2)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と回転行列T(t2)とを、ボリュームメモリ34に書き出す。
以上では、体内の標本点が幽門である場合を説明したが、本実施の形態においては、さらに十二指腸乳頭についても同様の作用を実施する。
すなわち、術者は、超音波内視鏡1の挿入部21を体腔へ挿入して、光学像を観察しながら標本点(例えば十二指腸乳頭)を探索する。そして、術者は、光学像を観察しながら、超音波内視鏡1の先端を標本点(十二指腸乳頭)に接触させる。
その後、術者は、体内標本点指定キー9dを押す。術者が超音波内視鏡1の先端を標本点(十二指腸乳頭)に接触させてから体内標本点指定キー9dを押した時刻を、時刻t3と定義する。
このとき同時に(時刻t3に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から位置・配向データを取り込む。
3次元ガイド画像作成回路33は、取り込んだ位置・配向データから、超音波内視鏡1の先端部の受信コイル25の位置C(t3)の位置ベクトルOC(t3)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分を取得する。
十二指腸乳頭の位置P3の位置ベクトルOP3(t3)(その直交座標軸O-xyzにおける各方向成分はxP3(t3),yP3(t3),zP3(t3))は、位置ベクトルOC(t3)と同じであるために、次の数式14により表現することができる。
[数式14]
このとき同時に(時刻t3に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から再び姿勢検出プレート6の基準位置L(t3)の位置ベクトルOL(t3)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分を取得する。姿勢検出プレート6の基準位置Lは、剣状突起に固定されていて、剣状突起の位置P0(t3)の位置ベクトルOP0(t3)(その直交座標軸O-xyzにおける各方向成分はxP0(t3),yP0(t3),zP0(t3))は、OL(t3)と同じであるために、次の数式15により表現することができる。
[数式15]
さらに同時に(時刻t3に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から姿勢検出プレート6の配向を示す回転行列T(t3)を取得する。この回転行列Tは、上述したように、被検者の体位の変化による、各標本点P0,P1,P2,P3の位置の変化を補正するときに用いるために取得するものであり、その補正の方法については後述する。
3次元ガイド画像作成回路33は、このような処理を行うことにより、この時刻t3における、位置ベクトルOP0(t3),OP3(t3)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、回転行列T(t3)と、を取得できたことになる。
3次元ガイド画像作成回路33は、こうして取得した、時刻t3におけるOP0(t3),OP3(t3)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と回転行列T(t3)とを、ボリュームメモリ34に書き出す。
次に、3次元ガイド画像作成・表示処理の詳細を説明する。
超音波内視鏡1の先端部に配設された受信コイル25は、超音波振動子24のラジアル走査の回転中心のごく近傍に位置していると考えることができる。つまり、受信コイル25は超音波振動子24の近傍に固定されるために、受信コイル25の位置ベクトルOC(t)は、超音波振動子24の回転中心位置の位置ベクトルであると考えて、実使用上差し支えない。
そして、受信コイル25の第1の巻線軸方向を示す方向単位ベクトルVcが図1のベクトルVと一致するために、方向単位ベクトルVc(t)は、超音波振動子24のラジアル走査面の法線方向、すなわち超音波断層像データの法線方向を示すベクトルVと同一視することができる。そこで、方向単位ベクトルVc(t)を、方向単位ベクトルV(t)と書き換えることにする。
また、受信コイル25の第2の巻線軸方向を示す方向単位ベクトルVb(t)が図1のベクトルV12と一致するために、方向単位ベクトルVb(t)は、超音波振動子24のラジアル走査面の12時方向を示すベクトルV12と同一視することができる。そこで、方向単位ベクトルVb(t)を、方向単位ベクトルV12(t)と書き換えることにする。
こうして、以下では、ベクトルV,V12を、時間の関数V(t),V12(t)として、Vc(t)をV(t)に、Vb(t)をV12(t)に、それぞれ書き換えて説明する。
3次元ガイド画像作成回路33は、ボリュームメモリ34から4つの特徴点P0’,P1’,P2’,P3’の位置ベクトルの直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分を読み出す。また、3次元ガイド画像作成回路33は、ボリュームメモリ34から4つの標本点P0,P1,P2,P3の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、回転行列とを読み出す。
そして、術者が走査制御キー9eを押すと、超音波振動子24はラジアル走査を開始する。このラジアル走査に応じて、混合回路36には、超音波観測装置3から超音波断層像データが逐次入力される。
超音波振動子24が1回のラジアル走査をして超音波観測装置3が超音波断層像データを作成し、作成された超音波断層像データが超音波観測装置3から混合回路36に入力されるたびに、制御回路38は、3次元ガイド画像作成回路33に指令を出す。
3次元ガイド画像作成回路33は、この指令を受けると、位置配向算出装置4から位置・配向データを取り込む。位置配向算出装置4が位置・配向データを取り込んだときの時刻を、時刻tsと定義する。
3次元ガイド画像作成回路33は、取り込んだ位置・配向データから、以下の各データを取得する。
・受信コイル25の位置C(ts)の位置ベクトルOC(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・受信コイル25の第1の巻線軸方向を示す方向ベクトルV(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・受信コイル25の第2の巻線軸方向を示す方向ベクトルV12(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・姿勢検出プレート6の基準位置L(ts)の位置ベクトルOL(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
・姿勢検出プレート6の配向を示す3×3の回転行列T(ts)
ここで、受信コイル25の位置および方向に係る各ベクトルOC(ts),V(ts),V12(ts)を取得するのは、後述するように、3次元ガイド画像作成回路33がラジアル走査面の位置と方向との現在位置を常に正しく補正するためである。
また、姿勢検出プレート6に係る位置ベクトルOL(ts)および回転行列T(ts)を取得するのは、後述するように、3次元ガイド画像作成回路33が被検者の体位変化により移動する標本点P0,P1,P2,P3の現在位置を常に正しく補正するためである。
3次元ガイド画像作成回路33は、時刻tsにおける被検者の体位変化により移動する標本点P0,P1,P2,P3の現在位置を正しく補正する。ここに、被検者の体は伸縮したり歪んだりすることがなく、つまりP0,P1,P2,P3の互いの位置関係は時間的に不変であると仮定すると、添字のkを1,2,3の何れかであるとし、taをts以前の任意の時刻であるとして、次の数式16に示すような補正式が成立する。なお、回転行列T(ts)の左肩の添え字「t」は、T(ts)の転置行列であることを意味している。また、この数式16の導出については省略する。
[数式16]
3次元ガイド画像作成回路33は、数式16を用いて、ボリュームメモリ34から読み出した4つの標本点P0,P1,P2,P3の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、回転行列とから、時刻tsにおける標本点P0,P1,P2,P3の位置ベクトルとその直交座標軸O-xyzにおける各方向成分とを以下の数式17〜数式23に示すように正しく補正することができる。
すなわち、3次元ガイド画像作成回路33は、被検者の体位変化があっても、位置配向算出装置4から取得する姿勢検出プレート6の基準位置Lの位置ベクトルOLの直交座標軸O-xyzにおける各方向成分と、姿勢検出プレート6の配向を示す3×3の回転行列Tとを用いて、時刻tsにおける標本点P0,P1,P2,P3の位置ベクトルOP0,OP1,OP2,OP3とその直交座標軸O-xyzにおける各方向成分とを正しく演算することができることになる。
標本点P0,P1,P2,P3の補正は、以下のようになる。
(1)標本点P0(剣状突起)の補正
[数式17]
(2)標本点P1(上前腸骨棘)の補正
[数式18]
[数式19]
(3)標本点P2(幽門)の補正
[数式20]
[数式21]
(4)標本点P3(十二指腸乳頭)の補正
[数式22]
[数式23]
以下では、図10および図11を参照しながら説明する。図10は標本点とラジアル走査面との位置関係を示す図、図11は特徴点と超音波断層像マーカとの位置関係を示す図である。
3次元ガイド画像作成回路33は、ボクセル空間の中で抽出データとともに超音波断層像を示すべき指標(以下では、超音波断層像マーカという。)の位置と配向とを算出する。ここに、図12は超音波断層像マーカ41を示す図である。超音波断層像マーカ41は、超音波振動子24の1回転のラジアル走査に対して超音波観測装置3が出力する超音波断層像データと解剖学的に位置と配向とが一致する、ボクセル空間の中における指標である。
図11に示すように、超音波断層像マーカ41の中心位置を点C’(ts)、超音波断層像マーカ41の法線方向ベクトルをV’(ts)、12時方向ベクトルをV12’(ts)と定義する。すると、3時方向ベクトルはV’12(ts)×V’(ts)(ここに、V’12(ts)×V’(ts)はV’12(ts)とV’(ts)との外積)となるために、超音波断層像マーカ41は、図11に示すように、位置ベクトルが次の数式24を満足する点R’(ts)の集合となる。なお、数式24において、X’は点R’(ts)と点C’(ts)との間の3時方向の距離、Y’は点R’(ts)と点C’(ts)との間の12時方向の距離である。
[数式24]
以下では、
(1)超音波断層像データの平面上の任意点と超音波断層像マーカ41上の点との対応関係
(2)超音波断層像マーカ41の位置と配向としての、その中心位置、法線方向、12時方向の算出方法
の原理について説明する。
3次元ガイド画像作成回路33は、この原理の説明において最終的に得られる数式41と数式42とから中心位置C’(ts)の位置ベクトルO’C’(ts)とその直交座標軸O’-x’y‘z‘における各方向成分とを算出するとともに、同様に最終的に得られる数式48または数式52と数式53とから超音波断層像マーカ41の12時方向ベクトルV12’(ts)とその直交座標軸O’-x’y‘z‘における各方向成分とを算出し、さらに最終的に得られる数式65と数式66とから超音波断層像マーカ41の法線方向ベクトルV’(ts)とその直交座標軸O’-x’y‘z‘における各方向成分とを算出する。
(1)超音波断層像データの平面上の任意点と超音波断層像マーカ41上の点との対応関係
図10に示すように、点R(ts)を直交座標軸O-xyzにあるラジアル走査面上の任意点とする。姿勢検出プレート6の基準位置Lすなわち点P0と、点R(ts)と、の間の位置ベクトルP0R(ts)は、適当な実数a,b,cをとることにより以下の数式25に示すように表現することができる。なお、この数式25においては、全てのベクトルを時間の関数として扱っている。
[数式25]
一方、参照画像データ31a上の特徴点P0’,P1’,P2’,P3’は、各々標本点P0,P1,P2,P3に解剖学的に同じ位置として対応付けられている。さらに、人体の解剖学的な構造は、人によらずおおよそ同じであると考えられる。このために、点R(ts)が標本点を頂点とする三角錘P0P1P2P3に対して特定の位置にあるとすると、参照画像データ31a上の特徴点を頂点とする三角錘P0’P1’P2’P3’に対して同等の位置にある点R’(ts)は点R(ts)と解剖学的に同じ器官、もしくは同じ組織上の点に相当すると仮定することができる。この仮定の下では、数式25のa,b,cを用いて次の数式26に示すように表現することができる直交座標軸O’-x'y'z'の点R’(ts)こそが、点R(ts)の解剖学的な対応点であると言える。
[数式26]
ここで、点R(ts)の位置ベクトルOR(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxR(ts),yR(ts),zR(ts)と定義して、さらに点R’(ts)の位置ベクトルO’R’(ts)の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分をxR’(ts),yR’(ts),zR’(ts)と定義すると、次の数式27および数式28が成り立つ。
[数式27]
[数式28]
以下では、これまでに出てきた数式を基に、直交座標軸O-xyzにより記述されるラジアル走査面上の任意点R(ts)の解剖学的な対応点R’(ts)の位置ベクトルO’R’と、その直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分をxR’(ts),yR’(ts),zR’(ts)と、を求める。
まず、数式25から、次の数式29が成り立つ。
[数式29]
次に、数式27、数式29、及び数式17〜数式23から、次の数式30が成り立つ。
[数式30]
ここで、以降の数式の表現を簡単にするために、3×3の行列Q(ts)を次の数式31により定義する。
[数式31]
この数式31を数式30に代入すれば、以下の数式32が得られる。
[数式32]
数式32の両辺に、行列Q(ts)の逆行列(逆行列であることを、右肩の添え字「−1」により示している。)を左から行列演算することにより、次の数式33が得られる。
[数式33]
一方、数式26からも数式29と同様な次の数式34が導かれる。
[数式34]
数式29、数式27、及び数式17〜数式23から数式32が導かれたのと同様に、数式34、数式28、及び数式6〜数式9から次の数式35を導くことができる。
[数式35]
ここで、以降の数式の表現を簡単にするために、3×3の行列Q’を次の数式36により定義する。
[数式36]
この数式36を数式35に代入すれば、以下の数式37が得られる。
[数式37]
a,b,cは数式33により既に求められているために、これを数式37へ代入することにより、次の数式38が得られる。
[数式38]
こうして、数式28と数式39とにより、直交座標軸O-xyzにより記述されるラジアル走査面上の任意点R(ts)(図10参照)の解剖学的な対応点R’(ts)(図11参照)の位置ベクトルO’R’(ts)とその直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分xR’(ts),yR’(ts),zR’(ts)とを求めることができた。つまり、ラジアル走査面上の任意点R(ts)に対して、3次元ガイド画像作成回路33がボリュームメモリ34から読み出した4特徴点と4標本点の位置ベクトルの方向成分と回転行列とを用いて、数式28と数式39とにより計算することができる点R’(ts)の集合こそが、超音波断層像マーカ41なのである。
(2)超音波断層像マーカ41の中心位置、法線方向、12時方向の算出方法
数式39により、直交座標軸O-xyzにより記述されるラジアル走査面上の任意点R(ts)と、直交座標軸O’-x'y'z'により記述される解剖学的な対応点R’(ts)と、の対応関係を求めることができた。
以下では、超音波断層像マーカ41の、中心位置C’(ts)と、法線方向ベクトルV’(ts)と、12時方向ベクトルV12’(ts)と、の算出方法についてをそれぞれ述べる。
(2−1)超音波断層像マーカ41の中心位置C’(ts)の算出
受信コイル25の位置C(ts)の解剖学上の対応点をC’(ts)とする。点C(ts)は超音波振動子24の回転中心であるために、結局ラジアル走査面の中心である。故に、点C’(ts)は超音波断層像マーカ41の中心である。
OC(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxc(ts),yc(ts),zc(ts)とすれば、次の数式40が成り立つ。
[数式40]
また、O’C’(ts)の直交座標軸O’-x’y‘z‘における各方向成分をxc’(ts),yc’(ts),zc’(ts)とすれば、次の数式41が成り立つ。
[数式41]
数式39においては点R(ts)がラジアル走査面上の任意点であったために、点R(ts)を点C(ts)、点R’(ts)を点C’(ts)と考えれば、数式39から以下の数式42を得る。
[数式42]
これら数式41、数式42により、参照画像データ31a上における超音波断層像マーカ41の中心位置C’(ts)が求められた。
(2−2)超音波断層像マーカ41の12時方向ベクトルV12’(ts)の算出
ラジアル走査面上において、平面の中心C(ts)から12時方向へ単位距離にある点をR12(ts)とする(図10参照)。また、点R12(ts)の解剖学上の対応点をR12’(ts)とする(図11参照)。
OR12(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxR12(ts),yR12(ts),zR12(ts)とすれば、次の数式43が成り立つ。
[数式43]
また、O’R12’(ts)の直交座標軸O’-x’y‘z‘における各方向成分をxR12’(ts),yR12’(ts),zR12’(ts)とすれば、次の数式44が成り立つ。
[数式44]
数式39においては点R(ts)がラジアル走査面上の任意点であったために、点R(ts)を点R12(ts)、点R’(ts)を点R12’(ts)と考えれば、数式39から以下の数式45を得る。
[数式45]
これら数式44、数式45より、ラジアル走査面の中心C(ts)から12時方向へ単位距離にある点R12(ts)の解剖学上の対応点R12’(ts)が求められた。
このとき、点R12(ts)の位置ベクトルについて、超音波断層像の12時方向ベクトルV12(ts)を用いると、次の数式46すなわち数式47が成り立つ。
[数式46]
[数式47]
数式47から、O’R12’(ts)−O’C’(ts)の方向が超音波断層像マーカ41の12時方向ベクトルV12’(ts)の方向であり、12時方向ベクトルV12’(ts)を求めるにはこれを単位長に規格化すれば良いことがわかる。すなわち、次の数式48が成り立つ。
[数式48]
数式41と数式42とによりO’C’(ts)が、数式44と数式45とによりO’R12’(ts)が、それぞれ既に求められているために、この数式48により12時方向ベクトルV12’(ts)が求められたことになる。
ここで、より明快に12時方向ベクトルV12’(ts)を求める方法を述べておく。
因みに、数式42と数式45とを両辺それぞれ差し引くと、次の数式49が成り立つ。この数式49の左辺は、O’R12’(ts)−O’C’(ts)の直交座標軸O’-x’y‘z‘における各方向成分である。また、数式49の右辺の{}の中は、OR12(ts)−OC(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分である。
[数式49]
さらに数式49の右辺の{}の中は、数式47からV12(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分であることがわかり、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4からこの各方向成分を既に取得している。V12(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxV12(ts),yV12(ts),zV12(ts)とすれば、数式49から次の数式50、数式51を得る。
[数式50]
[数式51]
この数式51を上述した数式48と同様に規格化すれば、超音波断層像マーカ41の12時方向ベクトルV12’(ts)が、結局、次の数式53に示すように求められることになる。なお、ここで12時方向ベクトルV12’(ts)の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分を、次の数式52に示すように、xV12’(ts),yV12’(ts),zV12’(ts)とする。
[数式52]
[数式53]
(2−3)超音波断層像マーカ41の法線ベクトルV’(ts)の算出
超音波断層像マーカ41の法線方向ベクトルをV’(ts)とすると、V’(ts)は結局、超音波断層像マーカ41上のいかなるベクトルとも直交すれば良い。
ところで、点R1’(ts)と点R2’(ts)とを超音波断層像マーカ41上の任意点とする。さらに、これらの点R1’(ts)、点R2’(ts)には、もともと超音波断層像マーカ41上に解剖学上の対応点があったはずであるために、それらを点R1(ts)、点R2(ts)とする。
点R1(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxR1(ts),yR1(ts),zR1(ts)、点R2(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxR2(ts),yR2(ts),zR2(ts)とする。このとき次の数式54、数式55が成り立つ。
[数式54]
[数式55]
点R1’(ts)の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分をxR1’(ts),yR1’(ts),zR1’(ts)とし、点R2’(ts)の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分をxR2’(ts),yR2’(ts),zR2’(ts)とする。このとき次の数式56、数式57が成り立つ。
[数式56]
[数式57]
数式39から、点R1(ts)と点R1’(ts)には次の数式58に示す関係が、点R2(ts)と点R2’(ts)には次の数式59に示す関係が、それぞれある。
[数式58]
[数式59]
数式58と数式59とを両辺それぞれ差し引くと、次の数式60が得られる。
[数式60]
この数式60の両辺に[Q’{Q(ts)の逆行列}]の逆行列である、Q(ts){Q’の逆行列}を左から行列演算すると、次の数式61が得られる。
[数式61]
ここでラジアル走査面の法線方向ベクトルV(ts)の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分をxV(ts),yV(ts),zV(ts)とすれば、次の数式62が成り立つ。
[数式62]
ここで、V(ts)はラジアル走査面の法線方向ベクトルであるから、点R1(ts)を始点とし点R2(ts)を終点とするベクトルR2R1(ts)とは直交する。従って、次の数式63が成り立つ。
[数式63]
この数式63の右辺に数式61を適用すれば、次の数式64が得られる。
[数式64]
ここで、V’(ts)の直交座標軸O’-x'y'z'における各方向成分をxV’(ts),yV’(ts),zV’(ts)とすれば、次の数式65が成り立つ。
[数式65]
さらに、各方向成分を次の数式66に示すように定義する。
[数式66]
このような定義に基づけば、数式64は次の数式67のように書き換えられる。
[数式67]
この数式67は、すなわち、次の数式68である。
[数式68]
この数式68は、結局、V’(ts)が超音波断層像マーカ41上の任意の2点を結ぶベクトルに常に直交するということを意味しているために、数式65、数式66で与えられるV’(ts)は、超音波断層像マーカ41の法線方向ベクトルである。このようにして、数式65、数式66により超音波断層像マーカ41の法線方向ベクトルV’(ts)が求められた。
3次元ガイド画像作成回路33は、既に求めた超音波断層像マーカ41の位置と配向(中心位置、法線方向、12時方向)とを基に、図12に示すような12時方向マーカ41aを付した平行四辺形の超音波断層像マーカ41を作成する。そして、3次元ガイド画像作成回路33は、作成した超音波断層像マーカ41を、その位置と配向とを基にして、ボリュームメモリ34内のボクセル空間の対応するボクセルへ書き出す。ここで、術者は、マウス8やキーボード9の関心器官指定キー9aなどを用いて、特徴点及び標本点を指定する関心器官(特徴点指定器官)とは別に、超音波内視鏡1のガイドとして適した関心器官を3次元ガイド用器官として改めて指定する。なぜならば、関心器官(特徴点指定器官)として骨格を指定して特徴点及び標本点として指定した上前腸骨棘は、下半身にあって体表面にも近いために、上部消化管である胃周辺を診断する場合のガイドには適さないからである。関心器官は、特徴点及び標本点を指定する場合(特徴点指定器官)と、超音波内視鏡1のガイドとして表示する場合(3次元ガイド用器官)と、のそれぞれに適した器官を指定しておく。
術者が超音波内視鏡1のガイド用に関心器官(3次元ガイド用器官)を設定した後に、抽出回路32は、指定された関心器官を改めて抽出しておく。抽出回路32は、前記特徴点指定器官を抽出したときと同様に、抽出した3次元ガイド用器官をボリュームメモリ34内のボクセル空間に書き出しておく。ボクセル空間内には既に抽出回路32が抽出して補間した抽出データが書き出されているために、超音波断層像マーカ41と抽出データとは合成されたデータ(以下、合成データ)となる。図13は超音波断層像マーカと抽出データとの合成データを示す図である。ここに図13は、膵臓、大動脈、上腸間膜静脈、十二指腸が関心器官として指定された場合の例を示している。
3次元ガイド画像作成回路33は、ボリュームメモリ34内のボクセル空間から合成データを読み出す。そして、3次元ガイド画像作成回路33は、合成データを読み出した直後に、ボクセル空間から超音波断層像マーカ41を消去する。
次に、3次元ガイド画像作成回路33は、読み出した合成データを基に、陰面消去、陰影付加、視線変換に伴う座標変換等の公知の3次元画像処理を加えて、3次元ガイド画像データを作成する。その後に、3次元ガイド画像作成回路33は、3次元ガイド画像データを混合回路36へ出力する。
混合回路36は、超音波観測装置3から入力される超音波断層像データと、3次元ガイド画像作成回路33から入力される3次元ガイド画像データとを並べて、混合データとして表示回路37へ出力する。
表示回路37は、混合データをアナログビデオ信号に変換して、表示装置11に出力する。
表示装置11は、図14に示すように、3次元ガイド画像と超音波断層像とを並べて表示する。ここに図14は、表示装置11の表示画面11aに3次元ガイド画像11a1と超音波断層像11a2とが並べて表示されている様子を示す図である。
3次元ガイド画像11a1上で表現される各器官は、もともと参照画像データ31aにおいて器官別に色分けされている色により、表示される。この図14に示す例では、膵臓は水色、大動脈は赤、上腸間膜静脈は赤、十二指腸は黄で、それぞれ表示されている。
制御回路38は、術者が再び走査制御キー9eを押すか否かを確認している。
そして、術者が再び走査制御キー9eを押した場合には、ここで上述したような処理を終了させて、ラジアル走査の制御オフを指令するための走査制御信号を超音波観測装置3へ出力する。
超音波観測装置3は、走査制御信号を受けると、超音波振動子24を回転させるためのモータへ、回転をオフに制御する回転制御信号を出力する。モータは、この回転制御信号を受けると、超音波振動子24の回転を停止させる。
一方、術者が再び走査制御キー9eを押していなかった場合には、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から新たに位置・配向データを取り込む。
このようにして、位置・配向データ更新処理を繰り返すことにより、超音波振動子24が1回のラジアル走査をして超音波観測装置3が超音波断層像データを作成し、超音波断層像データが超音波観測装置3から混合回路36に入力するたびに、新たな3次元ガイド画像が作成され、新たな超音波断層像とともに表示装置11の表示画面11aにリアルタイムに更新されつつ表示される。すなわち、術者による挿入部21の用手的な操作に伴うラジアル走査面の移動とともに、3次元ガイド画像の超音波断層像マーカ41が図14の矢印43に示すように抽出データに対して移動していく。
<効果>
このような第1の実施の形態によれば、超音波断層像により観察している位置を案内するためのガイド画像が3次元ガイド画像である超音波診断装置において、2次元の参照画像上で特徴点を指定するのではなく、2次元の参照画像から構築した3次元の画像上で特徴点を指定することができるために、特徴点をより正確に指定することが可能となる。
例えば特徴点を骨格の骨盤にある上前腸骨棘にした場合には、下方大腿骨に由来する湾曲と上方から来る湾曲との骨盤上の頂点が3次元画像上で判別し易くなるために、正確に指定することができる。なお、この上前腸骨棘は、触診でもわかり易いために、被検体に直接マーカスティック7を接触させることにより被検者体表上の標本点として正確に指定することができる。よって、上前腸骨棘に係る特徴点と標本点とは解剖学的により正確に一致することになり、従来の超音波診断装置に比して、ガイド画像と超音波断層像との位置および配向の一致精度が向上する。
このように、ガイド画像により超音波断層像の位置を案内するこれまでの超音波診断装置に比して、本実施形態の超音波診断装置は、ガイド画像と超音波断層像との位置および配向の一致精度が向上する。このことは、病変部等の関心領域へのアプローチを早くすることにつながるために、検査時間の短縮に寄与することができる。
<変形例>
次に本実施の形態の変形例について説明する。
本実施の形態においては、超音波内視鏡1の先端部に受信コイル25を内蔵する構成であったが、このような構成に限るものではない。例えば、鉗子チャンネルを備えた超音波内視鏡1と、鉗子チャンネルに挿通可能であり先端部に受信コイル25を備えた位置検出プローブと、を組み合わせる構成であっても構わない。
また、本実施の形態においては、術者がマウス8、キーボード9からの指示を通じて特徴点を設定することができるように構成、作用させたが、これに限るものでもない。例えば、予め検査の関心領域やプロトコールが決まっている場合には、工場出荷時等に数種類の特徴点のセットをデフォルトで参照画像記憶部31に記憶させておき、術者からのマウス8、キーボード9を介した指示により、制御回路38が制御して、標本点取得前に参照画像記憶部31から適切な特徴点のセットを読み出すように構成、作用させても良い。
さらに、本実施の形態においては、姿勢検出プレート6やマーカスティック7を被検者の剣状突起や骨盤などの予め決まった複数の位置に取り付けて、被検者の体位の変化や、体格の差を補正した後に、1個の姿勢検出プレート6のみを残してマーカスティック7を取り外し、残した姿勢検出プレート6により検査中の被検者の体位の変化を補正するように構成している。しかしこれに限るものでもない。例えば、検査直前に被検者に麻酔をかけて、その後に被検者の体位の変化がなくなったのを見計らってから、1個のマーカスティック7のみを用いて複数点の位置を順次計測するようにしても良い。あるいは、姿勢検出プレート6の他にもマーカスティック7を検査中に常時被検者に取り付けておき、被検者の体位の変化を補正するようにしても良い。このようなマーカスティック7を適切な場所に取り付ける構成を採用すれば、より正確な3次元ガイド画像を構築することが可能となる。
そして、本実施の形態においては、位置検出手段として送信アンテナ5と受信コイル25とを用いて、磁場を介して位置と配向とを検出するように構成、作用させたが、送受はこの逆でも良い。さらに、磁場により検出を行うのではなく、加速度やその他の手段により位置と配向とを検出するように構成、作用させても構わない。
加えて、本実施の形態においては、原点Oを送信アンテナ5の特定の位置に設定するようにしたが、送信アンテナ5と位置関係の変わらないその他の場所に設定するようにしてももちろん構わない。
なお、本実施の形態においては、3次元ガイド画像作成回路33と特徴点指定3次元画像作成回路35とが別の回路であるものとして説明したが、これらは類似した画像処理を行うものであるために、同一の画像処理回路がこれら2つの回路の機能を兼用するように構成しても構わない。
また、本実施の形態においては、超音波内視鏡1の走査方式について特に言及していないが、機械式の走査方式であっても電子式の走査方式であっても構わず、走査方式の種類に限定されるものではない。さらに、走査方向に関しても、ラジアル走査であってもコンベックス走査であっても構わず、走査方向の種類に限定されるものでもない。
さらに、本実施の形態においては、参照画像データ31aを、画素毎に器官別に分類した後に色分けして属性を変えて得た画像データとしたが、属性としては色に限るものではなく、輝度値であっても良いし、その他の態様であっても構わない。
そして、本実施の形態においては、3次元ガイド画像上の各器官を、器官別に色分けして表示するように構成したが、色分けの態様に限らず、輝度、明度、彩度もしくはこれらの組み合わせ等の、他の態様であっても良い。
加えて、参照画像データ31aは、X線CT装置により得られた画像データ(複数の断層像データ)、MRI装置により得られた画像データ(複数の断層像データ)、超音波診断装置により得られた画像データ(複数の断層像データ)等の何れでも構わず、画像データの種類に限定されるものではない。
[第2の実施の形態]
図15は本発明の第2の実施の形態を示したものであり、表示装置の表示画面に3次元ガイド画像と超音波断層像とが並べて表示されている様子を示す図である。この第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
なお、この図15に示す例においては、超音波断層像とともに表示されている3次元ガイド画像は、腹腔動脈分岐を含んでいる。
<構成>
第2の実施の形態の構成は、第1の実施の形態の構成とほぼ同様となっている。ただし、この第2の実施の形態の参照画像データ31aは、例えば人体を1mmピッチで平行にスライスする方向に撮影された一辺60cmの正方形の写真データであって、かつ、造影剤によって特定の器官を造影した画像データである。ここでは特に、血管造影剤によって血管が造影された写真データであるものとする。
<作用>
次に、この第2の実施の形態の作用の内の、上述した第1の実施の形態の作用と異なる部分のみを説明する。
特徴点指定器官として血管を選択して、特徴点を腹腔動脈分岐部とした場合の、特徴点指定方法を説明する。ここに、腹腔動脈は、腹膜腔において大動脈から分岐して、その後に胃、肝臓、脾臓へと分岐する太い動脈血管である。そして、腹腔動脈分岐部とは、この腹腔動脈と大動脈との分岐部のことを指している。
まず、本実施の形態の特徴点指定3次元画像の構築の方法は、上述した第1の実施の形態と同様である。ただし、参照画像データが造影剤を用いて取得された画像データであるために、3次元の造影画像が生成される。そして、構築された特徴点指定3次元画像が、表示装置11の表示画面11aに表示される。
術者は、特徴点指定3次元画像上に3次元の造影画像として表示されている腹腔動脈分岐部にマウスカーソル(図15に示すマウスカーソル11b参照)を置いて、その後にキーボード9の特徴点指定キー9bを押す。これにより特徴点の一つの点に腹腔動脈分岐部が指定される。そして、同様の処理を行うことにより、他の全ての特徴点を指定する。
次に、腹腔動脈分岐部の標本点を指定する方法を説明する。
第1の実施の形態で説明した標本点は、全て体表部あるいは体腔内表面部であったので、肉眼あるいは内視鏡による光学観察により確認することができた。しかし、腹腔動脈分岐部は体腔内部であるために、超音波断層像で確認する必要がある。
そこで先ず、超音波内視鏡1の挿入部21を被検者に挿入して、超音波によるラジアル走査を行う。これにより、図15の右側に示すような超音波断層像11a2が表示される(なお、この時点では、標本点の幾つかがまだ指定されていないために、3次元ガイド画像11a1はまだ表示されないか、またはおおざっぱな位置を示す参考程度にしか表示されない。)。術者は、図15の右画面に表示される超音波断層像を観察しながら、腹腔動脈分岐部が描出されるようにする。この腹腔動脈分岐部は、太い動脈血管が分岐する部分であるために、特徴があって画面上で認識し易い。
超音波断層像11a2に腹腔動脈分岐部が描出されたら、この腹腔動脈分岐部にマウスカーソル11bを置いて、体内標本点指定キー9dを押す。この時刻を時刻t4と定義する。
これと同時に(時刻t4に)、3次元ガイド画像作成回路33は、位置配向算出装置4から位置・配向データを取り込む。
3次元ガイド画像作成回路33は、取り込んだ位置・配向データから、超音波内視鏡1の先端部の受信コイル25の位置ベクトルOC(t4)(つまり、超音波断層像上の中心位置の位置ベクトル)を取得する。
制御回路38は、超音波断層像上の中心位置からマウスカーソル11bが置かれた腹腔動脈分岐部までの距離と角度とを算出し、位置ベクトルをM(t4)とする。
すると、腹腔動脈分岐部の位置P4の時刻t4における位置ベクトルOP4(t4)は、次の数式69により表現することができる。
[数式69]
なお、その他の標本点に、体表部の標本点がある場合には、超音波内視鏡1の挿入部21を被検者に挿入する前に指定を行う。また、その他の標本点に体腔内表面部の標本点がある場合には、超音波内視鏡1の挿入部21を被検者に挿入した後の適宜の時点で指定を行う。このようにして、他の標本点についても全て指定する。
その後の作用は、上述した第1の実施の形態と同様である。
<効果>
このような第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、さらに以下のような効果を奏することができる。
例えば、X線造影剤を用いて撮影された参照画像データ31a、つまり、血管や、血管を多く含む器官が周囲組織よりも高輝度になる参照画像データ31aを用いることにより、血管等の器官を描出し易くなり、器官の境界が明瞭でわかり易くなって、体表または体腔表面のみならず、体内においても正確な特徴点を指定することが可能となる。従って、ガイド画像と超音波断層像との位置および配向の一致精度をさらに向上することができる。
<変形例>
次に本実施の形態の変形例について説明する。
本実施の形態においては、造影剤として血管造影剤を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。使用する造影剤としては、例えば、消化管造影剤等でも良い。このように、描出を強調する器官の部位に限定されるものではない。また、使用する造影剤としては、例えばX線CT装置を使用する際に用いられるX線造影剤、MRI装置を使用する際に用いられるMRI造影剤、超音波診断装置を使用する際に用いられる超音波造影剤等の何れでも良く、診断装置の種類に限定されるものでもない。
本実施の形態におけるその他の変形例は、上述した第1の実施の形態における変形例と同様である。
なお、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。