以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示している。第1実施形態の通信用半導体装置100は、無線受信回路内に設けられる低雑音増幅器(LNA)101、ミキサ102、103、発振器104、局部発振信号生成回路105およびローパスフィルタ106、107を備えて構成されている。ミキサ102は、低雑音増幅器101を介して供給される高周波信号と局部発振信号生成回路105から供給される局部発振信号の一方とを混合してローパスフィルタ106に出力する。ミキサ103は、低雑音増幅器101を介して供給される高周波信号と局部発振信号生成回路105から供給される局部発振信号の他方とを混合してローパスフィルタ107に出力する。局部発振信号生成回路105は、発振器104から供給される発振信号に基づいて、互いに位相が90°ずれた一対の局部発振信号を生成する。ローパスフィルタ106は、ミキサ102の出力信号における不要な周波数成分を除去して出力する。ローパスフィルタ107は、ミキサ103の出力信号における不要な周波数成分を除去して出力する。また、ローパスフィルタ106、107には、周波数特性をキャリブレーションするためのキャリブレーション機能(CAL)が設けられている。
図2は、図1のローパスフィルタの詳細を示している。ローパスフィルタ106、107は、切換回路151、フィルタ152、コンパレータ(CMP)153、バッファ(BUF)154、カウンタ155およびフィルタ特性制御回路156を備えて構成されている。切換回路151は、フィルタ特性制御回路156から供給される切換制御信号SWCが低レベルに設定されている場合に入力信号INP、INNを選択してフィルタ入力信号INPS、INNSとしてフィルタ152に出力する。また、切換回路151は、切換制御信号SWCが高レベルに設定されている場合にバッファ154から供給される帰還信号FBP、FBNを選択してフィルタ入力信号INPS、INNSとしてフィルタ152に出力する。
フィルタ152は、切換回路151から供給されるフィルタ入力信号INPS、INNSにおける不要な周波数成分を除去してフィルタ出力信号OUTP、OUTNとして出力する。フィルタ152は、フィルタ特性制御回路156から供給されるフィルタ特性制御信号FLCにより周波数特性を可変設定される。また、フィルタ152は、Q値が内部素子(抵抗素子や容量素子)の素子比(素子値の比率)により規定されるように構成されている。コンパレータ153は、フィルタ152から供給されるフィルタ出力信号OUTP、OUTNの電圧を比較し、これらの大小関係が入れ替わるのに伴ってディジタル出力信号CMPOUTを反転させる。バッファ154は、コンパレータ153のディジタル出力信号CMPOUTから帰還信号FBP、FBNを生成して切換回路151に出力する。
切換制御信号SWCが高レベルに設定されている場合、切換回路151、フィルタ152、コンパレータ153およびバッファ154によるループ回路が形成される。コンパレータ153およびバッファ154はフィルタ152に対して負帰還を与えるように接続され、バッファ154の出力部はループ回路の利得が1より大きくなるように構成されており、フィルタ入力信号INPS、INNSとフィルタ出力信号OUTP、OUTNとで位相が180°ずれる周波数でループ回路が発振する。なお、ループ回路は、フィルタ152のQ値に依存することなく発振する。ループ回路の発振周波数はフィルタ152の周波数特性により決まるため、ループ回路の発振周波数が一定になるように(ループ回路の発振周波数が所定範囲内に収まるように)フィルタ152の周波数特性を調整することで、フィルタ152の周波数特性をキャリブレーションすることができる。なお、例えば、フィルタ152は4次バタワースフィルタであり、ループ回路の発振周波数はフィルタ152の遮断周波数である。
カウンタ155は、フィルタ特性制御回路156から供給されるカウンタ制御信号CSTの立ち上がり遷移(低レベルから高レベルへの遷移)に応答して、コンパレータ153のディジタル出力信号CMPOUTの周期(ループ回路の発振周期)に基づく所定期間中に基準クロック信号CKRに同期したカウント動作を実施する。カウンタ155は、カウント動作の完了に伴ってカウント値COUNTをフィルタ特性制御回路156に出力する。また、カウンタ155は、カウンタ制御信号CSTの立ち下がり遷移(高レベルから低レベルへの遷移)に応答して、カウント値COUNTを0に初期化する。
フィルタ特性制御回路156は、モード信号MDが高レベルに設定されている場合に切換制御信号SWCを高レベルに設定し、モード信号MDが低レベルに設定されている場合に切換制御信号SWCを低レベルに設定する。なお、モード信号MDは、ローパスフィルタ106、107の通常モード時に低レベルに設定され、ローパスフィルタ106、107のキャリブレーションモード時に高レベルに設定される。また、フィルタ特性制御回路156は、モード信号MDが高レベルに設定されている場合、カウンタ制御信号CSTを介してカウンタ155にカウント動作を実施させてカウント値COUNTを取得し、カウント値COUNTが第1基準値COUNT1から第2基準値COUNT2(COUNT2>COUNT1)までの範囲内に収まるようにフィルタ特性制御信号FLCを介してフィルタ152の周波数特性を調整する。なお、カウンタ155におけるカウント動作の実施期間をコンパレータ153のディジタル出力信号CMPOUTの複数周期に設定することで、ループ回路の発振周波数の分解能を向上させることが可能である。
図3は、図2のカウンタのカウント値とループ回路の発振周波数との関係を示している。図3において、縦軸はカウンタ155のカウント値COUNTを示し、横軸はループ回路の発振周波数fを示している。図3に示すように、カウンタ155のカウント値COUNTは、ループ回路の発振周波数fが高くなるほど小さくなる。例えば、ローパスフィルタ106、107では、ループ回路の発振周波数fが目標値ftを中心とする下限値flから上限値fhまでの範囲内に収まるようにフィルタ152の周波数特性が調整される。従って、フィルタ特性制御回路156の第1基準値COUNT1は、ループ回路の発振周波数fが上限値fhである場合のカウンタ155のカウント値COUNTに対応している。フィルタ特性制御回路156の第2基準値COUNT2は、ループ回路の発振周波数fが下限値flである場合のカウンタ155のカウント値COUNTに対応している。
図4は、図2のローパスフィルタのキャリブレーションシーケンスを示している。
ステップS101において、フィルタ特性制御回路156は、モード信号MDが低レベルから高レベルに遷移するのに伴って、切換制御信号SWを低レベルから高レベルに遷移させる。これに伴って、切換回路151は、帰還信号FBP、FBNを選択してフィルタ入力信号INPS、INNSとして出力する。この結果、切換回路151、フィルタ152、コンパレータ153およびバッファ154によるループ回路が形成され、ループ回路の発振動作が実施される。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS102に移行する。
ステップS102において、フィルタ特性制御回路156は、ループ回数LOOPを1に初期化する。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS103に移行する。
ステップS103において、フィルタ特性制御回路156は、ループ回数LOOPが所定値Nより大きいか否かを判定する。ループ回数LOOPが所定値N以下である場合、キャリブレーションシーケンスはステップS104に移行する。一方、ループ回数LOOPが所定値Nより大きい場合、キャリブレーションシーケンスはステップS111に移行する。
ステップS104において、フィルタ特性制御回路156は、カウンタ制御信号CSTを低レベルから高レベルに遷移させる。これに伴って、カウンタ155は、コンパレータ153のディジタル出力信号CMPOUTの周期に基づく所定期間中に基準クロック信号CKRに同期したカウント動作を実施する。そして、フィルタ特性制御回路156は、カウンタ155のカウント動作の完了に伴ってカウント値COUNTを取得する。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS105に移行する。
ステップS105において、フィルタ特性制御回路156は、カウンタ制御信号CSTを高レベルから低レベルに遷移させる。これに伴って、カウンタ155は、カウント値COUNTを0に初期化する。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS106に移行する。
ステップS106において、フィルタ特性制御回路156は、ステップS104で取得したカウント値COUNTが第1基準値COUNT1より大きいか否かを判定する。カウント値COUNTが第1基準値COUNT1以下である場合、キャリブレーションシーケンスはステップS107に移行する。一方、カウント値COUNTが第1基準値COUNT1より大きい場合、キャリブレーションシーケンスはステップS108に移行する。
ステップS107において、フィルタ特性制御回路156は、フィルタ特性制御信号FLCを介してループ回路の発振周波数が下降する方向にフィルタ152の周波数特性を変更する。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS110に移行する。
ステップS108において、フィルタ特性制御回路156は、ステップS104で取得したカウント値COUNTが第2基準値COUNT2より小さいか否かを判定する。カウント値COUNTが第2基準値COUNT2以上である場合、キャリブレーションシーケンスはステップS109に移行する。一方、カウント値COUNTが第2基準値COUNT2より小さい場合、キャリブレーションシーケンスはステップS111に移行する。
ステップS109において、フィルタ特性制御回路156は、フィルタ特性制御信号FLCを介してループ回路の発振周波数が上昇する方向にフィルタ152の周波数特性を変更する。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS110に移行する。
ステップS110において、フィルタ特性制御回路156は、ループ回数LOOPをインクリメントする。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS103に移行する。
ステップS111において、フィルタ特性制御回路156は、モード信号MDが高レベルから低レベルに遷移するのに伴って、切換制御信号SWを高レベルから低レベルに遷移させる。これに伴って、切換回路151は、入力信号INP、INNを選択してフィルタ入力信号INPS、INNSとして出力する。この結果、フィルタ152のフィルタ動作が実施される。これにより、キャリブレーションシーケンスは完了する。
以上のような第1実施形態では、レプリカ回路を用いることなくフィルタ152の周波数特性がキャリブレーションされるため、キャリブレーション機能を具現する回路を小規模かつ低消費電力で構成することができ、半導体装置100のチップ面積および消費電力を低減できる。また、周波数測定を用いる方式が採用されているため、遅延時間測定を用いる方式が採用される場合に比べて、フィルタ152の周波数特性を高精度でキャリブレーションできる。このように、第1実施形態では、ローパスフィルタ106、107(フィルタ152)の周波数特性を簡易に精度よくキャリブレーションすることができる。更に、ループ回路はフィルタ152のQ値に依存することなく発振するため、フィルタ152のQ値を任意に設定可能であり、フィルタ152の遮断周波数と利得とを個別に設定できる。また、フィルタ152のQ値は内部素子の素子比により決まるため、フィルタ152のQ値のキャリブレーションを不要にできる。
図5は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態の通信用半導体装置200は、無線受信回路内に設けられる低雑音増幅器(LNA)201、ミキサ202、203、発振器204、局部発振信号生成回路205およびコンプレックスバンドパスフィルタ(Complex−BPF)206を備えて構成されている。低雑音増幅器201、ミキサ202、203、発振器204および局部発振信号生成回路205は、第1実施形態(図1)における低雑音増幅器101、ミキサ102、103、発振器104および局部発振信号生成回路105と同様の回路である。
コンプレックスバンドパスフィルタ206は、I側とQ側との間の位相差を利用してイメージ除去可能なフィルタであり、ローパスフィルタ207、208およびI側/Q側帰還回路209、210を備えて構成されている。ローパスフィルタ207、208は、第1実施形態(図2)におけるローパスフィルタ106、107と同様の内部構成を有している。I側/Q側帰還回路209、210は、コンプレックスバンドパスフィルタ206の中心周波数がローパスフィルタ207、208の遮断周波数に比例するように構成されている。また、I側/Q側帰還回路209、210は、モード信号MD(図示せず)が高レベルに設定されている場合にI側/Q側帰還信号を無効にする。即ち、コンプレックスバンドパスフィルタ206は、モード信号MDが低レベルに設定されている場合にコンプレックスバンドパスフィルタ動作を実施し、モード信号MDが高レベルに設定されている場合にローパスフィルタ動作を実施する。なお、コンプレックスバンドパスフィルタ206の周波数特性(中心周波数およびバンド幅)とローパスフィルタ207、208の周波数特性(遮断周波数)とは、内部素子の素子比により規定される。
図6は、図5のコンプレックスバンドパスフィルタの周波数特性を示している。図6において、横軸は周波数ωを示し、縦軸は伝達関数|H(jω)|を示している。コンプレックスバンドパスフィルタ(Complex−BPF)206の周波数特性曲線は、ローパスフィルタ(LPF)207、208の周波数特性曲線を周波数軸方向にシフトさせたものであり、中心周波数ωshiftおよびバンド幅BWにより表される。コンプレックスバンドパスフィルタ206のバンド幅BWは、ローパスフィルタ207、208の遮断周波数ωcの2倍になる。
コンプレックスバンドパスフィルタ206の中心周波数ωshiftとローパスフィルタ207、208の遮断周波数ωcとの周波数比は内部素子の素子比により決まるため、製造ばらつきの影響が小さい。このため、中心周波数ωshiftとバンド幅BWとの比が内部素子の素子比で決まるように構成されたコンプレックスバンドパスフィルタ206においては、ローパスフィルタ207、208の遮断周波数ωcがキャリブレーションされることで、自動的にコンプレックスバンドパスフィルタ206の中心周波数ωshiftおよびバンド幅BWもキャリブレーションされる。
図7は、図5のコンプレックスバンドパスフィルタのキャリブレーションシーケンスを示している。
ステップS201において、I側/Q側帰還回路209、210は、モード信号MDが低レベルから高レベルに遷移するのに伴って、I側/Q側帰還信号を無効にする。これ伴って、コンプレックスバンドパスフィルタ206は、ローパスフィルタ動作(LPF動作)を実施する。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS202に移行する。
ステップS202において、ローパスフィルタ207、208のキャリブレーションシーケンスが第1実施形態(図4)におけるローパスフィルタ106、107のキャリブレーションシーケンスと同様に実施される。この後、キャリブレーションシーケンスはステップS203に移行する。
ステップS203において、I側/Q側帰還回路209、210は、モード信号MDが高レベルから低レベルに遷移するのに伴って、I側/Q側帰還信号を有効にする。これ伴って、コンプレックスバンドパスフィルタ206は、コンプレックスバンドパスフィルタ動作(Complex−BPF動作)を実施する。これにより、キャリブレーションシーケンスは完了する。
以上のような第2実施形態では、第1実施形態におけるローパスフィルタ106、107のキャリブレーションシーケンスと同様に、ローパスフィルタ207、208の周波数特性(遮断周波数)がキャリブレーションされることで、自動的にコンプレックスバンドパスフィルタ206の周波数特性(中心周波数およびバンド幅)もキャリブレーションされる。従って、コンプレックスバンドパスフィルタ206の周波数特性を簡易に精度よくキャリブレーションすることができる。
なお、第1および第2実施形態では、通信用半導体装置におけるIFフィルタの周波数特性のキャリブレーションに本発明を適用した例について述べたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、通信用半導体装置以外の半導体装置におけるローパスフィルタの周波数特性のキャリブレーションに本発明を適用してもよい。
以上、本発明について詳細に説明してきたが、前述の実施形態およびその変形例は発明の一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明を逸脱しない範囲で変形可能であることは明らかである。
100、200‥通信用半導体装置;101、201‥低雑音増幅器;102、103、202、203‥ミキサ;104、204‥発振器;105、205‥局部発振信号生成回路;106、107、207、208‥ローパスフィルタ;151‥切換回路;152‥フィルタ;153‥コンパレータ;154‥バッファ;155‥カウンタ;156‥フィルタ特性制御回路;206‥コンプレックスバンドパスフィルタ;209‥I側帰還回路;210‥Q側帰還回路