JP2008297138A - Iii族窒化物系化合物半導体製造用基板とその製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物系化合物半導体製造用基板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】III族窒化物系化合物半導体の製造を低コストで簡便に行うことを可能とするIII族窒化物系化合物半導体製造用基板とその製造方法を提供する。
【解決手段】III族窒化物系化合物半導体製造用基板の製法は、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、この窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してAl窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を生成した後、この金属窒化物層を有するサファイア基材を熱処理することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、III族窒化物系化合物半導体の製造に用いられるIII族窒化物系化合物半導体製造用基板に係り、特に、III族窒化物系化合物半導体の製造を低コストでかつ簡便に行うことを可能とするIII族窒化物系化合物半導体製造用基板とその製造方法に関するものである。
窒化ガリウム(GaN)に代表されるIII族窒化物系化合物半導体は、青〜紫外光を発する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)およびレーザー等の発光デバイスとして近年特に注目されている物質である。青色LEDの積層構造に見られるように、融点が高いIII族窒化物はサファイア等の基板上にエピタキシャル成長させなければならないが、基板材料との格子不整合が大きいため未だに欠陥の少ないIII族窒化物薄膜を直接基板表面に得ることは極めて難しい。例えば、サファイア基板上に形成したGaN薄膜の場合には、転位密度が高く、サファイア基板から膜表面まで貫いた貫通転移が109〜10個/cmも存在している。これが発光デバイスの発光効率を劣化させる要因になっており、従来の青色LEDの発光効率は22%、紫外発光LEDの発光効率は7.5%に過ぎない。III族窒化物系化合物半導体デバイスの発光効率を決定するのは基板上での初期結晶成長によるところが大きいため、整合性が良い基板材料の開発は、この分野に大きなブレークスルーをもたらすものと期待され最重要課題となっている。
これを解決する一つの方法として、AlN、GaN等でいわゆる緩衝層(バッファー層)をサファイア基板とIII族窒化物膜との間に設け、目的とするIII族窒化物とサファイアとの格子不整合を緩和する方法が提案され、工業化されている。このような技術として、例えば、特開昭63−188938号公報や特公平8−8217号公報に開示されている方法が知られており、これらの技術を使用することで、GaN系化合物半導体層の結晶性およびモフォロジーを改善できるとされている。因みに、特公平8−8217号公報には、一般式GaAl1−XN(但し、Xは0<X≦1の範囲である)で表される厚さ0.002μm以上のバッファー層をサファイア基板上に設けることが開示されている。尚、バッファー層を形成せずに、サファイア基板上にIII族窒化物を直接成長させた場合、島状の成長しか起こらず、高品質のIII族窒化物が得られないことが一般的に知られている。
ところで、上記バッファー層の役割は、それに引き続くデバイス層(すなわちIII族窒化物系化合物半導体デバイス層)とサファイア基板の橋渡しであり、上記デバイス層であるIII族窒化物とサファイア基板の格子定数の差による歪みを緩和するところにある。
従って、バッファー層の形成は、デバイス層となるIII族窒化物を成長させる条件とは異なり、いわゆる低温成長法が適用されている。すなわち、基板温度を500℃〜600℃に保持した状態で、III族窒化物をサファイア基板上に堆積させ、その後に基板温度を1000℃〜1200℃に上昇させ、熱処理を施すことでサファイア基板全面をIII族窒化物で覆う方法が採られている。
特開昭63−188938号公報 特公平08−008217号公報
このようにバッファー層形成の成長条件はデバイス層形成のための成長条件と大きく異なっており、デバイス製造工程は、バッファー層形成工程とデバイス層形成工程の2工程により概略構成されている。
そして、例えば、一般式GaAl1−XNで表される上記バッファー層の形成も、デバイス層の形成と同様にアンモニアや有機金属ガスの流量、圧力を精度良く制御する必要があるため、デバイス層を形成する時と同様の高価なMOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)装置が用いられており、この結果、III族窒化物系化合物半導体を用いたデバイス製造はコストが高くなるという問題を抱えている。この場合、簡便な方法により、サファイア基板(基材)表面に金属窒化物層を設けたIII族窒化物系化合物半導体製造用基板が仮にできるとすれば、このIII族窒化物系化合物半導体製造用基板をデバイス層形成工程に投入し、デバイスの製造工程を極めて単純化することが可能となり、引いてはデバイス製造コストの低減も図れる。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、表面に金属窒化物層を有するIII族窒化物系化合物半導体製造用基板とその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者等が鋭意実験を試みたところ、基板材料として表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材(基板)を適用し、かつ、このサファイア基材表面に対し、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを照射してAl窒化物層から成る金属窒化物層を生成するか、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスにSi若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを照射してSi窒化物層若しくはGa窒化物層の少なくとも1種から成る金属窒化物層を成膜し、かつ、この金属窒化物層を有するサファイア基材を熱処理することにより、上述したIII族窒化物系化合物半導体製造用基板が得られることを発見するに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
その面上にIII族窒化物系化合物半導体が形成されるIII族窒化物系化合物半導体製造用基板を前提とし、
表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材と、サファイア基材の表面に設けられた厚さ10nm以下の金属窒化物層とで構成され、かつ、上記金属窒化物層が、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを上記サファイア基材表面に照射して生成されたAl窒化物層、または、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスにSi若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを上記サファイア基材表面に照射して成膜されたSi窒化物層若しくはGa窒化物層の少なくとも1種であることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
III族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法を前提とし、
窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、この窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してAl窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を生成した後、この金属窒化物層を有する上記サファイア基材を熱処理することを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
III族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法を前提とし、
窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスに、Si若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してSi窒化物層、Ga窒化物層、上記Si窒化物とGa窒化物との混合窒化物層、上記Si窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、上記Ga窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、または、上記Si窒化物とGa窒化物とAl窒化物との混合窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を成膜した後、この金属窒化物層を有する上記サファイア基材を熱処理することを特徴とする。
次に、請求項4に係る発明は、
請求項2または3に記載の発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法を前提とし、
上記金属窒化物層を有するサファイア基材を、窒素、一酸化炭素、水素の少なくとも一種のガス雰囲気中にて、1000℃以上の温度で10分間以上熱処理することを特徴とする。
本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板によれば、
バッファー層として作用する金属窒化物層が、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマをサファイア基材表面に照射するか、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスにSi若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマをサファイア基材表面に照射して設けられている。
従って、条件設定が煩雑でかつ高価なMOCVD装置等を用いることなくIII族窒化物系化合物半導体製造用基板が得られ、かつ、得られたIII族窒化物系化合物半導体製造用基板をIII族窒化物系化合物半導体デバイス製造工程のデバイス層形成工程に直接投入することができると共に、投入したIII族窒化物系化合物半導体製造用基板上に従来法により得られたものと比較して遜色のないIII族窒化物エピタキシャル層を形成することが可能となるため、簡便かつ低コストによりIII族窒化物系化合物半導体デバイスを得ることができる効果を有している。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、その面上にIII族窒化物系化合物半導体が形成される本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板は、表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材とサファイア基材の表面に設けられた厚さ10nm以下の金属窒化物層とで構成され、かつ、上記金属窒化物層が、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを上記サファイア基材表面に照射して生成されたAl窒化物層、または、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスにSi若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを上記サファイア基材表面に照射して成膜されたSi窒化物層若しくはGa窒化物層の少なくとも1種であることを特徴とするものである。
ここで、本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の基材としてその表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材を用いることと、この基材表面に設けられる金属窒化物層の厚さを10nm以下にすることに関しては、従来技術に見当たらない構成である。
そして、サファイア基材の表面粗さRaが0.2nm以下にする理由は、このような構成にすることにより、得られる金属窒化物層を均質で良好な膜状のものとすることができるからである。尚、上記表面粗さRaが0.2nmを越えると、得られる金属窒化物層が島状となり良好な膜状のものを構成しなくなる。また、サファイア基材の表面粗さRaが0.2nm以下となるように研磨するに際しては、加工ダメージの少ないメカノケミカル研磨を用いることが好ましい。
また、本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板において、Al窒化物層、Si窒化物層若しくはGa窒化物層の少なくとも1種により構成される金属窒化物層が適用される理由は、上記金属窒化物層がIII族窒化物系化合物半導体デバイスを作製する際にバッファー層として機能するからである。また、金属窒化物層の厚さを10nm以下にする理由は、金属窒化物層の厚さが10nmを越えると、金属窒化物がサファイア基材との界面で剥離するケースが増加するためである。尚、サファイア基材表面の面方位は特に限定されず、一般的に多用される面は、c面若しくはa面である。
そして、サファイア基材表面に厚さ10nm以下の金属窒化物層を有する本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板は、LEDデバイス工程作製時のデバイス層形成工程に直接投入されることができ、従来必要とされているバッファー層形成工程を不要とすることができる。
次に、本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板は、以下に述べるような第一の方法により製造することができる。
すなわち、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、この窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してAl窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を生成した後、この金属窒化物層を有する上記サファイア基材を熱処理することにより得ることができる。
このIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法において、本質的には、窒素雰囲気中で窒素プラズマを発生させ、これをサファイア基材表面に照射すればよくArガスを介在させる必要はない。しかし、用いるプラズマ発生装置により、Arガスを共存させた方が窒素プラズマを安定して形成できることがある。このような場合には、窒素ガスと純度99.9%以上のArガスとの混合ガスを用いて窒素プラズマを形成することが好ましい。ここで、Arガスの純度を99.9%以上とするのは、得られるAl窒化物の純度を確保するためである。尚、窒素プラズマと反応せず、かつ、窒素プラズマを安定させることのできるもの、例えばAr以外の希ガスを共存させることも可能であるが、コストが高くなり好ましくない。
そして、窒素プラズマの照射により、サファイア基材表面にAl窒化物層から成る金属窒化物層、例えば、AlN層、AlON層等を生成できるが、この金属窒化物層の厚さを10nm以下とするのは、上述したように金属窒化物層がサファイア基材との界面で剥離するのを防止するためである。また、窒素プラズマのエネルギーを100eV以下とするのは、窒素プラズマのエネルギーが100eVを越えると窒素プラズマによるエッチング効果が増加し、Al窒化物層から成る金属窒化物層の生成が困難となるからである。尚、第一の方法に適用できる金属窒化物層の生成法としては、マイクロ波プラズマCVD法あるいは高周波イオンプレーティング法が挙げられる。
次に、本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法においては、サファイア基材表面にAl窒化物層から成る金属窒化物層を生成した後、上述したように金属窒化物層を有するサファイア基材を熱処理する。この熱処理の目的は生成されたAl窒化物層から成る金属窒化物層の安定化である。また、熱処理条件として、例えば、窒素雰囲気中、または、窒素、一酸化炭素若しくは窒素、水素の混合雰囲気中にて、1000℃、好ましくは1200℃以上の温度にて10分間以上保持する方法が挙げられる。雰囲気としては、生成されたばかりで表面が活性なAl窒化物層と反応し、Al窒化物層を変質させない雰囲気であれば問題はない。熱処理温度を1000℃以上とするのは、1000℃未満であるとAl窒化物層の安定化が不十分となり、緻密で均質なAl窒化物層が得られないからである。同様の理由で保持時間を10分間以上とするが、保持時間をあまり長くしても安定化等の効果はそれ以上増加しないので、経済性、作業効率等を考慮して上限を設定すればよい。
また、本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板は、以下に述べるような第二の方法でも製造することができる。
すなわち、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスに、Si若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してSi窒化物層、Ga窒化物層、上記Si窒化物とGa窒化物との混合窒化物層、上記Si窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、上記Ga窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、または、上記Si窒化物とGa窒化物とAl窒化物との混合窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を成膜した後、この金属窒化物層を有する上記サファイア基材を熱処理することによっても得ることができる。
そして、上述した第一の方法では、サファイア基材表面に存在するアルミナの酸素を窒素で置換することによりAl窒化物を生成するいわば置換であるのに対し、第二の方法は主としてサファイア基材表面にSi窒化物やGa窒化物等を堆積させる方法である。このため、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスにSi若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスを混合し、発生した窒素プラズマと反応させてこれ等の金属窒化物を成膜させる。成膜された金属窒化物はサファイア基材表面に堆積され、Si窒化物層、Ga窒化物層、上記Si窒化物とGa窒化物との混合窒化物層、上記Si窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、上記Ga窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、または、上記Si窒化物とGa窒化物とAl窒化物との混合窒化物層から成る金属窒化物層を形成する。こうしたことから、第二の方法においては、熱処理による金属窒化物層の安定化が更に重要となる。尚、Si若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスとしては、例えば、トリメチルガリウムや、トリメチルアルミニウム、シラン等を挙げることができる。
このようにしてサファイア基材表面にSi窒化物やGa窒化物あるいはこれ等とAl窒化物との混合窒化物層等から成る金属窒化物層を成膜するが、金属窒化物層の厚さを10nm以下とするのは、上述したように金属窒化物層がサファイア基材との界面で剥離するのを防止するためである。また、窒素プラズマのエネルギーを100eV以下とするのは、上述したのと同様、窒素プラズマのエネルギーが100eVを越えると窒素プラズマによるエッチング効果が増加し、上記金属窒化物層の生成が困難となるからである。尚、第二の方法に適用できる金属窒化物層の成膜法としては、マイクロ波プラズマCVD法あるいは高周波イオンプレーティング法が挙げられる。
次に、第二の方法においては、サファイア基材表面に金属窒化物層を成膜した後、金属窒化物層を有するサファイア基材を熱処理する。この熱処理の目的は成膜された金属窒化物層の安定化である。また、熱処理条件として、例えば、窒素雰囲気中、または、窒素、一酸化炭素若しくは窒素、水素の混合雰囲気中にて、1000℃、好ましくは1200℃以上の温度にて10分間以上保持する方法が挙げられる。雰囲気としては、成膜されたばかりで表面が活性な金属窒化物層と反応し、金属窒化物層を変質させない雰囲気であれば問題はない。熱処理温度を1000℃以上とするのは、1000℃未満であると金属窒化物層の安定化が不十分となり、緻密で均質な金属窒化物層が得られないからである。同様の理由で保持時間を10分間以上とするが、保持時間をあまり長くしても安定化等の効果はそれ以上増加しないので、経済性、作業効率等を考慮して上限を設定すればよい。例えば、他作業との兼ね合いより30分以下とする等任意である。
以下、第一の方法である表面改質(実施例1)および第二の方法(実施例2)によるIII族窒化物系化合物半導体製造用基板と、これ等基板を使用したIII族窒化物エピタキシャル成長の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
イオン照射を実施するためにECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)プラズマ装置を用いた。また、片面を鏡面に仕上げたc面サファイアウエハーを10mm×10mmにダイシングした基材試料を用いた。鏡面仕上げの平坦度はAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で評価し、Ra=0.1nmであった。
表1にECRプラズマ条件を示す。
Figure 2008297138
表面改質処理後、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)によりサファイア基材の表面状態を測定し、TEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)−EDX(Energy Depressive X-ray Analysis:エネルギー分散型X線分析)にて金属窒化物層の厚みを測定し、かつ、金属窒化物層の定性分析を行った。また、金属窒化物層の表面形状についてAFMにて測定した。尚、以下の表2にECRプラズマ処理を実施した後のサファイア基板表面のXPS測定結果を示す。また、発生した窒素プラズマのエネルギーは100eV以下であると推定される。
次に、プラズマ処理後、窒素雰囲気中にて、1200℃、10分の熱処理を行い、Al窒化物層から成る金属窒化物層の安定化を行った。
Figure 2008297138
また、図1にN1sスペクトルを示す。この結果、N1sピークが397eV付近と403〜404eV付近に検出された。397eV付近のスペクトルはAlN、Siに起因するピークで、両者はほとんど同じ場所にあるため区別はできないが、この実施例1においてはSiを導入していないため、AlNの状態を示していると考えられる。窒素濃度の半定量値を求めたところ、ECRプラズマ時間を長くするほど窒素濃度が高くなっていることが確認され、時間と共に表面改質が進行していることが分かる。
また、ECRプラズマ処理によるサファイア基材表面の状態を更に詳しく調べるため、TEM−EDXによる断面観察を行った。ECRプラズマ30min、60minのTEM写真図を図2に示す。
図2の写真図から、ECRプラズマ30min、60min共に3〜5nmの格子縞を伴った窒化物層が確認された。サファイア基材−窒化物層の界面は急峻に変化しており、格子縞がはっきりと確認できるが、表面に近づくにつれ格子縞が不鮮明になり、非晶質化していることが推測される。ECRプラズマ時間30min、60minでは30minによる方が格子縞が鮮明に見える。また、EDXからは窒化物層からNが検出され、窒化されていることが確認された。
次に、ECRプラズマして得られた実施例1に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板上に、HVPE(Halide Vapor Phase Epitaxy:塩化物気相成長)法によりAlNのエピタキシャル成長を実施した。サファイア基板上にAlNを成長させる場合、通常、低温で緩衝層(バッファー層)を成長させた後、高温にて目的とするAlNのエピタキシャル成長を行うが、上記緩衝層を設けずにAlNのエピタキシャル成長試験を行った。尚、ECRプラズマを60min行ったIII族窒化物系化合物半導体製造用基板を用いた。
比較試料として、本発明によるプラズマ処理が施されていない通常のサファイア基板と、予めAlN結晶を堆積させたテンプレートと呼ばれる基板(AlN template)を用いて同時にエピタキシャル成長を実施した。
各基板上にエピタキシャル成長させたAlN層表面の顕微鏡観察結果を図3に、また、断面のSEM観察結果を図4に示す。
そして、図3と図4の写真図から、ECRプラズマして得られた実施例1に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板上のAlNにおいては、クラックは発生しているもののMOVPE−AlNテンプレート基板と遜色のない平坦なエピタキシャル成長表面が得られていることを確認できる。これに対して、本発明によるプラズマ処理が施されていない通常のサファイア基板上に成長させたAlNにおいては、柱状に成長し、平坦なエピタキシャル成長面にならないことが確認された。
[比較例1]
表面粗さRaが0.3nmのサファイア基材を用いた以外は実施例1と略同一の条件でIII族窒化物系化合物半導体製造用基板を製造し、かつ、実施例1と同様に評価を行った。この結果、HVPEしたAlNは島状に成長し、平坦なエピタキシャル成長面が得られないことが確認された。
ECRプラズマチャンバーにSiHを導入した以外は実施例1と略同一の条件でSiNのプラズマ窒化を行い、かつ、実施例1と同様に評価を行った。この結果、実施例1と同等な平坦なAlN面が成長していることが確認された。表3にECRプラズマ処理を実施した後のサファイア基板表面のXPS測定結果を示す。SiHを導入したことで、サファイア基板表面上にSiが存在することが確認できる。
Figure 2008297138
[比較例2]
窒化時間(プラズマ処理時間)を120minとして金属窒化物層の厚さを15μmとした以外は実施例1と略同一の条件でIII族窒化物系化合物半導体製造用基板を製造し、かつ、実施例1と同様に評価を行った。この結果、得られたAlN結晶はクラックが多数観察され、一部では剥離している部分が確認された。
[比較例3]
プラズマエネルギーを150eVとしてプラズマ窒化を行った以外は実施例1と略同一の条件でIII族窒化物系化合物半導体製造用基板を製造し、かつ、実施例1と同様に評価を行った。この結果、EPMA(Electron Probe Microanalyzer:電子線マイクロアナライザー)による窒素の定量結果が5%以下となり、サファイア基材表面の窒化よりエッチングが優先されていることが推測された。
本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体製造用基板を用いることにより、デバイス製造工程におけるバッファー層形成工程を経ることなく、あるいは、高価なテンプレート基板を用いることなく良質のIII族窒化物エピタキシャル層を上記基板上に形成することが可能となり、LED作製時のコストを低減できる産業上の利用可能性を有している。
窒化時間が30分、45分、60分であるサファイア基材のXPSによるN1sスペクトル図。 窒化時間が30分、60分であるサファイア基材表面層断面のTEM写真図。 通常のサファイア基板、AlNテンプレート、および、本発明に係るサファイア基板(III族窒化物系化合物半導体製造用基板)上にエピタキシャル成長させたAlN層表面の顕微鏡写真図。 各基板上にエピタキシャル成長させたAlN層断面のSEM写真図。

Claims (4)

  1. その面上にIII族窒化物系化合物半導体が形成されるIII族窒化物系化合物半導体製造用基板において、
    表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材と、サファイア基材の表面に設けられた厚さ10nm以下の金属窒化物層とで構成され、かつ、上記金属窒化物層が、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを上記サファイア基材表面に照射して生成されたAl窒化物層、または、窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスにSi若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用い形成された運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを上記サファイア基材表面に照射して成膜されたSi窒化物層若しくはGa窒化物層の少なくとも1種であることを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体製造用基板。
  2. 窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、この窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してAl窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を生成した後、この金属窒化物層を有する上記サファイア基材を熱処理することを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法。
  3. 窒素ガス単体若しくは純度99.9%以上のArガスを含む窒素ガスに、Si若しくはGaの有機金属ガスあるいは金属水素化物ガスが混合された混合ガスを用いて運動エネルギーが100eV以下の窒素プラズマを形成し、次いで、窒素プラズマを表面粗さRaが0.2nm以下のサファイア基材表面に照射してSi窒化物層、Ga窒化物層、上記Si窒化物とGa窒化物との混合窒化物層、上記Si窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、上記Ga窒化物とAl窒化物との混合窒化物層、または、上記Si窒化物とGa窒化物とAl窒化物との混合窒化物層から成る厚さ10nm以下の金属窒化物層を成膜した後、この金属窒化物層を有する上記サファイア基材を熱処理することを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法。
  4. 上記金属窒化物層を有するサファイア基材を、窒素、一酸化炭素、水素の少なくとも一種のガス雰囲気中にて、1000℃以上の温度で10分間以上熱処理することを特徴とする請求項2または3に記載のIII族窒化物系化合物半導体製造用基板の製造方法。
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