JP2008295415A - 1細胞レベルでの抗体遺伝子の解析・同定方法 - Google Patents

1細胞レベルでの抗体遺伝子の解析・同定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1個の免疫細胞由来のmRNAの遺伝子解析を将来的な研究開発の目的と位置づけ、特定の免疫関連遺伝子の配列を効率よく解析・同定する技術や、1個のB細胞由来の抗体を製造する技術等を提供すること。
【解決手段】がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取し、標識化がん特異的抗原ペプチド及びヒト抗体により、末梢血単核球中のB細胞を標識化して、抗体を細胞膜上に発現するB細胞を1細胞ずつ分取し、全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成し、合成したcDNAを鋳型としたPCR反応により遺伝子断片を増幅して、増幅された遺伝子断片の塩基配列を解析・決定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、1細胞レベルでの抗体遺伝子の解析・同定方法や、1個のB細胞由来の抗体を製造する方法や、1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法に関する。
人間などの高等脊椎動物の体には、体外から侵入する細菌・ウイルスなどの病原体や、危険物質、がん細胞などの異物から生命を守るために獲得免疫系が存在する。抗体はタンパク質等の相互に類似した物質を特異的に識別できる免疫グロブリンというタンパク質であり、生体内では抗原特異的液性免疫に関与している。抗体は、無数の異物を認識するために、抗体の一部(可変領域)をコードする遺伝子では、DNAレベルでの再編成が起き、多様な抗体遺伝子配列を持つBリンパ球の集団が生じている。このDNA再編成を通じた遺伝子多様化の仕組みは、生物が子孫の遺伝子を多様化しつつ、環境変動に適応して生き残ろうとする性の過程にも見られる。また、それぞれのBリンパ球細胞1個からは必ず一種類の抗体遺伝子がコードする一種類の免疫グロブリンが産生されることが知られている。
従来、抗体遺伝子を取得する方法等としては、ヒト末梢血リンパ球を分離後、CD11c特異的抗体及びマグネチックビーズを用いCD11c陽性細胞を除去し、体外免疫を行い、抗原特異的ヒト抗体産生応答を誘導し、抗原特異的抗体の産生応答が誘導された末梢血リンパ球細胞を、エプスタインバールウィルスにより不死化し、抗原特異的B細胞を単離し、この抗原特異的抗体産生B細胞からRNAを抽出し、抽出されたRNAからcDNAを合成し、合成したcDNAを鋳型とし、VH及びVLのそれぞれに特異的なプライマーを用いたPCRにより抗体可変領域遺伝子の増幅を行う抗原特異的抗体遺伝子の取得方法(例えば、特許文献1参照)や、目的の抗体が認識する抗原を標識化してなる標識化抗原を、前記抗体を産生するターゲット細胞を含む細胞集団に接触させ、前記標識化抗原を前記ターゲット細胞に結合させ、得られる標識化ターゲット細胞を分離し、分離した標識化ターゲット細胞を用いて、それが保有する抗体遺伝子を調製し、調製した抗体遺伝子を、発現ベクターを用いて発現させる抗体作製方法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
特開2004−121237号公報 特開2006−180708号公報
近年、がんや自己免疫疾患という病態での免疫細胞の異常クローンが注目されているが、免疫のダイナミックな順応メカニズムを考えれば、個々の細胞の機能的性格が異なることは容易に想像できる。免疫応答の観点からしてもT細胞受容体や抗体遺伝子の変異も最初は1個の細胞から始まる現象であり、免疫細胞の機能研究においては、1細胞レベルでの研究はもはや避けては通れない時代である。特に、がんという病態下での個々の免疫細胞の動態については、未だ詳細な検討はなされておらず、新しい治療を考える上で重要な研究課題となりうる。本発明の課題は、1個の免疫細胞由来のmRNAの遺伝子解析を将来的な研究開発の目的と位置づけ、特定の免疫関連遺伝子の配列を効率よく解析・同定する技術や、1個のB細胞由来の抗体を製造する技術等を提供することにある。
本発明者らは、転移性メラノーマの症例を対象にHLA−A2又はA24ペプチドカクテルにて処理をした樹状細胞ワクチンの臨床試験を実施している。今回、HLA−A24拘束性をもつMAGE1ペプチドにて処理した樹状細胞ワクチン投与を受けたメラノーマ患者由来の不死化B細胞を用いて1細胞レベルでのメラノーマペプチド特異的な抗体遺伝子について解析・同定を行った。すなわち、樹状細胞ワクチンの投与を受けたメラノーマ患者において増幅されているMAGE1A24ペプチドに対するIgG抗体を産生すると考えられるB細胞を、FITC標識MAGE1ペプチド及びPE標識抗ヒトIgG抗体による染色にて同定する方法を開発した。この方法でEB−ウイルスを用いて不死化したB細胞やプライマリーB細胞でもペプチド特異的なB細胞を検出することができることを見い出し、さらに1個のB細胞を分離し、全RNAを抽出後、特異的な抗体遺伝子をクローニングする実用化技術を確立し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、[1]以下の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子の解析・同定方法
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
(G)増幅された遺伝子断片の塩基配列を解析・決定する工程;
や、[2]以下の(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子の解析・同定方法
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
(G)増幅された遺伝子断片の塩基配列を解析・決定する工程;
に関する。
また本発明は、[3]がん特異的抗原ペプチドが、HLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドであることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の解析・同定方法や、[4]以下の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(H)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体を製造する方法
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
(H)増幅された遺伝子断片を、発現ベクターを用いて発現させる工程;
や、[5]以下の(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(H)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体を製造する方法
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
(H)増幅された遺伝子断片を、発現ベクターを用いて発現させる工程;
や[6]がん特異的抗原ペプチドが、HLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドであることを特徴とする上記[4]又は[5]記載の抗体を製造する方法に関する。
さらに本発明は、[7]以下の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
や、[8]以下の(A)、(C)、(D)、(E)及び(F)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
や、[9]がん特異的抗原ペプチドが、HLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドであることを特徴とする上記[7]又は[8]記載の抗体遺伝子を調製する方法に関する。
本発明によると、腫瘍免疫学的観点から見ると従来不可能とされてきた1個のB細胞レベルでの機能的な抗体遺伝子を解析・同定することができ、免疫応答のモニタリングが可能となるため、画期的な基盤技術の開発につながる可能性が高い。その上、特異的な免疫エピトープや腫瘍抗原に対する抗体遺伝子を網羅的に解析・同定することが可能となるため、今後のがんのテーラーメイド医療や診断も可能となる。
本発明の1個のB細胞由来の抗体遺伝子の解析・同定方法としては、以下に示す工程(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)や、工程(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)を順次備えた方法であれば特に制限されるものではなく、本発明の1個のB細胞由来の抗体を製造する方法としては、以下に示す工程(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(H)や、工程(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(H)を順次備えた方法であれば特に制限されるものではなく、本発明の1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法としては、以下に示す工程(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)や、工程(A)、(C)、(D)、(E)及び(F)を順次備えた方法であれば特に制限されるものではない。
(A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
(B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
(C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
(D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
(E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
(F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
(G)増幅された遺伝子断片の塩基配列を解析・決定する工程;
(H)増幅された遺伝子断片を、発現ベクターを用いて発現させる工程;
上記工程(A)において、がん特異的抗原ペプチドを特異的に認識する抗体産生B細胞を増やしておくことが特に重要であり、がん特異的抗原ペプチド、好ましくはHLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血を用いることにより、がん特異的抗原ペプチドを特異的に認識する抗体産生B細胞を増やしておくことができる。かかるHLA−A24拘束性のがん特異的抗原ペプチドとして、メラノーマ細胞特異的抗原ペプチドMAGE1由来のHLA−A24拘束性MAGE1135−143を挙げることができる。通常がん患者より樹状細胞を製造する場合には、末梢血より成分採血装置にて採取した単球細胞をサイトカインとともに7日間培養し、その後MAGEを含むペプチドカクテル(各ペプチドあたり25μg/ml)とKLH(25μg/ml)にて処理を行い、最終的に樹状細胞が得られる。現在進行中の第II相試験では、1〜5×10個の樹状細胞を4回投与し、明らかな有害事象がなければ最大10回まで樹状細胞の投与を行うものである。この結果ペプチドカクテルに含まれる複数のペプチドに対する患者体内の抗体価の上昇が見込まれる。この工程(A)において、目的とする抗体産生B細胞を、全B細胞中の1%以上、好ましくは2%、より好ましくは2.5%以上とすることがきわめて重要である。すなわち、この工程(A)を、がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られ、目的とする抗体産生B細胞を、全B細胞中の1%以上、好ましくは2%、より好ましくは2.5%以上含む末梢血単核球を採取する工程とすることがきわめて重要である。
上記工程(B)における末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製するには、末梢血単核球とEBVをフィーダー細胞の共存下で培養し、末梢血単核球を不死化すればよく、Bリンパ球マーカーである抗CD19抗体、抗ヒトIgG抗体に加えて、標識化したがん特異的抗原ペプチドを用いて、目的とするがん抗原特異的抗体産生EBV−B細胞株の存在を確認することが好ましい。また、この工程(B)を省略した本発明の態様においても、Bリンパ球マーカーである抗CD19抗体、抗ヒトIgG抗体に加えて、標識化したがん特異的抗原ペプチドを用いて、目的とするがん抗原特異的抗体産生プライマリーB細胞の存在を確認することが好ましい。前記のように、目的とする抗体産生B細胞が、全細胞中の1%以上、好ましくは2%、より好ましくは2.5%以上存在しない場合、目的とする1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製することが困難になる可能性がある。
上記工程(C)における標識物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)などの蛍光物質、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム誘導体などの化学発光物質、ビオチン、マグネットビーズを挙げることができる。標識物質による標識化は常法で行うことができ、例えばMolecular Cloning, Third Edition,ColdSpring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照することができる。また、工程(C)におけるヒト抗体を認識しうる抗体としては、抗ヒト抗ヒトIgG抗体を好適に例示することができる。例えば、工程(C)において、標識物質により標識されたがん特異的抗原ペプチドとして、FITC標識がん特異的抗原ペプチドを用い、異なる標識物質により標識されたヒト抗体を認識しうる抗体として、PE標識抗ヒト抗ヒトIgG抗体を用いる場合など、がん抗原特異的抗体産生B細胞の細胞膜結合型抗体が脱落しない条件で標識化を行うことが好ましい。さらに、この工程(C)の前に、Bリンパ球マーカーである抗CD19抗体、抗ヒトIgG抗体、がん特異的抗原ペプチドを用いて、がん抗原特異的抗体産生B細胞の比率を高めておくこともできる。
なお、これまでの検討でヒト末梢血に含まれるB細胞は、全細胞の約10%、細胞膜上に抗体(IgG)を発現するB細胞は、その内の約2%と考えられ、細胞膜表面抗体陽性のB細胞は、全細胞の0.2%しか存在せず、この中でさらにMAGE1ペプチド陽性細胞はさらに少数であり、通常の方法では検出することが困難と考えられる。しかし、本発明では、前記工程(A)において、がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンにより免疫され、すでに抗体価の増加したがん患者のB細胞を用いるため、微少の細胞の検出が可能となる。このように、本発明においては、あらかじめがん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンを投与する工程(A)が、きわめて重要である。
上記工程(D)において、がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するEBV−B細胞やプライマリーB細胞を、1細胞ずつ分取する。B細胞を1細胞ずつ分取するには、使用した標識物質の種類に応じて適切な手法が用いられる。例えば、標識物質として蛍光物質を使用した場合には、蛍光を指標としたフローサイトメトリー(シングルセルソーター)によって、1細胞ずつ分取することが好ましい。フローサイトメトリーによれば効率的かつ高精度の細胞分離が可能となる。また、標識物質としてビオチンを採用した場合においてもアビジンとの結合反応を利用して1細胞ずつ分取することができる。マグネットビーズを採用した場合にも同様に、磁石を用いた良好な分離が可能である。さらに、マイクロマニピュレーターやマイクロメッシュフィルターを用いて1細胞ずつ分取することもできる。
上記工程(E)においては、1細胞ずつ分取した1個のがん抗原特異的抗体産生B細胞から、全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する。全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニングなどはいずれも常法(例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989.参照)に従って実施することができる。
上記工程(F)においては、合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する。ヒト抗体重鎖領域遺伝子、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対としては、それぞれの領域遺伝子配列に特異的なプライマー対であれば特に制限されないが、例えば、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対としては配列番号1〜24に示される塩基配列の1種又は2種以上の配列と、配列番号25又は26に示される塩基配列とからなるプライマー対を挙げることができ、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対としては配列番号27〜37に示される塩基配列の1種又は2種以上の配列と、配列番号38に示される塩基配列とからなるプライマー対を挙げることができ、また、ヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対としては配列番号39〜61に示される塩基配列の1種又は2種以上の配列と、配列番号62及び63に示される塩基配列の1種又は2種の配列とからなるプライマー対を挙げることができる。増幅された遺伝子断片の塩基配列が、上記工程(G)において常法により解析・決定される。抗体のタイプとしては、IgGの他、IgA、IgD、IgE,IgMを挙げることができる。
上記工程(F)で増幅された遺伝子断片を用いて、1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製することができる。すなわち、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応により、ヒト抗体重鎖遺伝子を調製することができる。また、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒトIgG軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応により、ヒト抗体軽鎖遺伝子を調製することができる。さらに、ヒト抗体重鎖可変部領域遺伝子断片に特異的なプライマー対を用いたPCR反応により、ヒト抗体重鎖可変部領域遺伝子断片を調製することができる。また、ヒト抗体軽鎖κ可変部領域遺伝子断片に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒトIgG軽鎖λ可変部領域遺伝子断片に特異的なプライマー対を用いたPCR反応により、ヒト軽鎖可変部領域遺伝子断片を調製することができる。これら調製されたヒト抗体遺伝子をサブクローニングして増幅させることもできる。なお、ゲノムDNAを鋳型にする場合、エクソンが離れているためいるため効果的な増幅が期待できない。
また、ヒト抗体重鎖可変部領域遺伝子断片(重鎖断片)及びヒト軽鎖可変部領域遺伝子断片(軽鎖断片)をPCR法により増幅し、これら重鎖断片と軽鎖断片をPCR法によりそれぞれ重鎖断片−重鎖リンカー配列−制限酵素XbaI認識配列を含む重鎖複合断片と、制限酵素NheI認識配列−軽鎖リンカー配列−軽鎖断片を含む軽鎖複合断片として増幅し、重鎖複合断片を制限酵素XbaIで、前記軽鎖複合断片を制限酵素NheIで、それぞれ消化した後に、ライゲーションにより連結させ、ライゲーション産物を制限酵素XbaIと制限酵素NheIで消化した後、重鎖断片−リンカー配列−軽鎖断片からなるヒト一本鎖抗体遺伝子(ScFv)断片としてPCR法により増幅する本発明者らによる方法(特願2007−92968)を用いると、ヒトScFv断片を大量かつ効率よく製造することができる。
上記工程(H)において、工程(F)において増幅された遺伝子断片である、ヒト抗体重鎖遺伝子やヒト抗体軽鎖遺伝子を、発現ベクターを用いて発現させ、1個のB細胞由来の抗体を製造することができる。発現ベクターとしては、抗体遺伝子の発現に適したものであれば特に限定されず、例えば、非分列細胞を含む全ての細胞(血球系以外)での一過性発現に用いられるアデノウイルスベクター(Science, 252, 431-434, 1991)や、分裂細胞での長期発現に用いられるレトロウイルスベクター(Microbiology and Immunology, 158, 1-23, 1992)や、非病原性、非分裂細胞にも導入可能で、長期発現に用いられるアデノ随伴ウイルスベクター(Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158, 97-129, 1992)の他、SV40ウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクターを挙げることができる。これらのウイルスベクターには、発現効率を高めるためにプロモータ配列、エンハンサー配列などの制御配列の他、選択マーカー遺伝子を導入しておくこともできる。発現ベクターへの抗体遺伝子の導入は、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた周知の方法(例えば、Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照できる)により行うことができる。
上記ヒト抗体重鎖遺伝子やヒト抗体軽鎖遺伝子は、通常、それぞれ別の発現ベクターに挿入され、これら2つの組換えベクターで宿主を共形質転換し、同一細胞内で重鎖及び軽鎖を発現させることが好ましい。上記宿主としては、組換えベクターで形質転換されることにより、導入された抗体遺伝子を発現可能な状態に保有できるものであれば特に制限されず、例えば、Vero細胞、Hela細胞、CHO細胞、WI38細胞、BHK細胞、COS−7細胞、MDCK細胞等を挙げることができる。組換えベクターにより宿主を形質転換する方法としては、リポフェクチン法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等を例示することができる。このようにして、ハイブリドーマを用いることなく、1個のB細胞から、モノクローナル抗体を製造することができる。また、上記ヒトScFv断片が組み込まれたファージミドベクター又はファージベクターにより大腸菌を形質転換し、この形質転換大腸菌を用いてファージディスプレイヒト一本鎖抗体を作製することもできる。
本発明の1個のB細胞由来の抗体遺伝子の解析・同定方法によって、がん患者のがん特異的抗体の遺伝子を解析・同定することにより、患者個人の体内で産生されているがん抗原特異的抗体の種類の全体像に関する情報を得ることができる。また、本発明の1個のB細胞由来の抗体を製造する方法によって、がん抗原特異的抗体を大量に得ることができ、テイラーメイド的な患者個人の診断や治療が可能となる。また、本発明の1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法によって得られる抗体遺伝子は、がん抗原特異的抗体を大量に製造する場合に有利に用いられる他、テイラーメイド的な患者個人の診断にも利用することができる。特に、従来マウスで免疫してハイブリドーマを作製して得られていた部分的なヒトの抗体を、実際にヒトの体内で増幅した形で、100%ヒトの抗体として獲ることができるという大きな利点がある。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[末梢血単核球の採取]
メラノーマ細胞特異的抗原ペプチドMAGE1を用いたワクチン治療を受けた転移性メラノーマ患者由来の末梢血単核球を以下のようにして採取した。
転移性メラノーマ患者(症例:MEL−018)に、HLA−A24拘束性MAGE1135−143(MAGE1−A24)により処理された樹状細胞ワクチンを投与し、MAGE1−A24に対する免疫応答を確認した。MAGE1135−143のアミノ酸配列は配列番号70に示す。このMEL−018患者由来の末梢血から、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell; PBMC)を採取し、以下の実験に用いた。
[不死化B細胞株の作製]
エプスタインバールウイルス(EBV)による不死化B細胞株(EBV−B細胞株)を以下のようにして作製した。
フィーダーであるヒト繊維芽細胞株(MRC−5;ATCC cat.CCL−171)を、25cmフラスコにて90%confluencyまで増殖させ(培地:MEM+10%FBS)、30−40Gyのirradiationを実施した。24時間後、実施例1で採取したMEL−018症例由来PBMCを1〜2×10cells/4mlとなるように培地(IMDM+20%FBS)に懸濁し、上記の培養MRC−5に加えた。その後、EBV溶液(EBV strain B95−8, ATCC cat.VR−1492)1mlを25mlフラスコに添加し、37℃、5%COの気相条件下で培養した。48時間後に培地を交換した後、4日ごとに培地交換を行った。3〜4週間後に、B細胞の増殖を確認し、EBウイルスにより不死化したB細胞(EBV−B細胞)を回収した。株化した細胞を、Bリンパ球マーカーである抗CD19抗体、抗ヒトIgG抗体、及びFITC標識MAGE1−A24ペプチドにて染色し、EBV−B細胞株の特性を検討した。
[EBV−B細胞株の特性]
EBV−B細胞を抗CD19抗体、抗ヒトIgG抗体、及びFITC標識MAGE1−A24ペプチドにより染色した。結果を図7に示す。抗CD19抗体よる染色の結果、EBV−B細胞株は、ほとんどすべての細胞がCD19+(98.4%)であった。また、EBV−B細胞株の抗原特異性を検討する目的で、FITC標識MAGE1−A24により細胞を染色した。ネガティブコントロールとしてA24拘束性HIVペプチド(HIV−A24)を、ポジティブコントロールとしてA24拘束性CMVペプチド(CMV−A24)を合成・精製し、染色に用いた。CD19+細胞のうち、ヒトIgG、MAGE1−A24陽性細胞は、それぞれ約20%、6%(ペプチド濃度10μg/mlでの染色結果)であり、ヒトIgG+/MAGE1−A24ともに陽性細胞は、約2.5%であった(図7)。このFITC標識MAGE1+/PE標識抗ヒトIgG+ のEBV−B細胞は、シングルセルソーティングにより1細胞として選別・分離することができる。
以上の結果から、EBV−B細胞は、ほとんどすべてがCD19陽性であったため、FITC標識A24ペプチドとPE標識抗ヒトIgG抗体にてEBV−B細胞を染色し、フローサイトメトリー法にてFITC標識A24+/PE標識抗ヒトIgG+の細胞群を同定した。
[EBV−B細胞のシングルセルソーティング]
シングルセルソーティング用モジュールを装着した、BD FACSAriaTMセルソーター(BD Science社製)により、MAGE1−A24+/ヒトIgG+のEBV−B細胞のシングルセルソーティングを行った。ソーティングの結果を図8に示す。ソーティングは、100μmのノズルを用い、sort setup: low , flow rate 5000 events/sec, Drop delay 25.73で行い、96ウェルプレート(MicroAmp(R) Optical 96-ウェル Reaction Plate;Applied Biosystem社製)に一細胞ずつ分取した。
[EBV−B細胞からのRNA抽出及び逆転写反応]
分取された一細胞からのRNA抽出及び逆転写反応によるcDNAの合成は、SuperScriptTMIII CellsDirect cDNASynthesis System cell (cat.18080−300, Invitrogen社製)を用いて行った。まず、10μlのResuspensinBuffer 及び1μlのLysis Enhancer solutionを加え、サーマルサイクラーを用いて75℃で10分間処理した。続いて、5μlのDNaseI(1U/μl)及び1.6μlの10xDNaseIBufferを加え、ピペッティングにより混和し、室温で5分間インキュベートした。プレートを軽く遠心し、1.2μlの25mM EDTAを加え、サーマルサイクラーを用いて70℃で5分間インキュベートした。その後、プレートを軽く遠心し、氷上で、各ウェルに2μlの50mM Oligo(dT)20及び1μlの10mM dNTP Mixを加えた。ピペッティングによる混和の後、サーマルサイクラーを用いて70℃で5分間処理し、氷上で2分間インキュベートした。プレートを軽く遠心し、再び氷上で、6μlの5xRT Buffer、1μlのRNaseOUTTM(40U/μl)、1μlのSuperScriptTMIII RT(200U/μl)、及び1μlの0.1M DTTを加え、ピペッティングにより混和した。プレートを軽く遠心し、サーマルサイクラーを用いて50℃で50分間、85℃で5分間インキュベートし、cDNAを合成した。
[ヒトIgG遺伝子特異的なプライマーの設計]
ヒトIgG重鎖遺伝子、ヒトIgG軽鎖κ遺伝子、又はヒトIgG軽鎖λ遺伝子の各領域に特異的なPCR用プライマーを設計した。ヒトIgG重鎖遺伝子に特異的なプライマー塩基配列を図4及び配列番号1〜26に、ヒトIgG軽鎖κ遺伝子に特異的なプライマー塩基配列を図5及び配列番号27〜38に、ヒトIgG軽鎖λ遺伝子に特異的なプライマー塩基配列を図6及び配列番号39〜63にそれぞれ示す。また、各プライマーミックスにより増幅される遺伝子断片の大きさは、ヒトIgG重鎖遺伝子が1400bp、ヒトIgG軽鎖κ遺伝子が700bp、ヒトIgG軽鎖λ遺伝子が700bpである。
[PCR反応によるヒトIgG遺伝子断片の増幅]
実施例5で調製したcDNAを、1サンプルにつき4本のPCR用0.2mlチューブ(#1〜#4)に1μlずつ分注し、各チューブに、1μlの10x PCR bufferII(Mg)、1μlの2.5mM dNTP Mix、5.9μlのdHO、0.1μlのLA−Taqポリメラーゼ(TaKaRa LA-Taq(R) Hot Start version;タカラバイオ社製)、0.5μlのフォワードプライマー(10μM)、及び0.5μlのリバースプライマー(10μM)を加え、サーマルサイクラー(GeneAmp(R) PCR System9700;Applied Biosystems社製)を用いてPCR反応を行った。チューブ#1は内部標準であるβ−アクチン遺伝子、チューブ#2はヒトIgG重鎖領域遺伝子、チューブ#3はヒトIgG軽鎖κ領域遺伝子、チューブ#4はヒトIgG軽鎖λ領域遺伝子のPCR反応に用いた。
各チューブのPCR反応条件は以下の通りである:
チューブ#1のPCR反応は、94℃で5分間の熱変性の後、94℃で15秒及び68℃で2分間の反応を55サイクル、72℃で5分間の伸長反応、
チューブ#2及び#3のPCR反応は、94℃で5分間の熱変性の後、94℃で15秒及び68℃で1分間の反応を55、72℃で5分間の伸長反応、
チューブ#4のPCR反応は、94℃で5分間の熱変性の後、94℃で15秒及び60℃で30分間の反応を55サイクル、72℃で5分間の伸長反応。
[PCR産物の抽出・精製]
得られたPCR反応液を、1.5%のアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチヂウムブロマイド染色によりバンドを確認した。図9に示すように、用いた6細胞のうち5個において、β−アクチン遺伝子の増幅が確認された。また、ヒトIgG領域遺伝子領域増幅用プライマーセットにより増幅されたPCR産物のバンドの大きさを確認し、各プライマーセットにつき2サンプルずつのバンドを切り出した。選択されたバンドは図中に星印で示される。PCR反応物は、DNA抽出用カラム(QIAEXII(R) Gel Extraction Kit;QIAGEN社製)を用いてゲルから抽出・精製した。
まず、メスでPCR反応チューブ#2、#3、及び#4の増幅バンド部分のゲルを切り出し、1.5mlサンプルチューブに移し、切り出したゲルを秤量した。1mg=1μlと換算し、3倍量のBufferQX1及び17.2μlのQIAEXIISuspensionを加えた。Vortexにてよく混和してから、予め50℃に設定しておいたヒートブロック上に置き、2分ごとにVortexにかけ、合計10分間処理した。次いで、室温・10000×gで1分間遠心を行い、上清を取り除いた。再度、沈殿に500μlのBufferQX1を加えた後、vortexにて混和し、室温・10000×gで1分間遠心を行った。上清を取り除き、予めエタノールを加えておいた500μlのBufferPEを沈殿に加えてからvortexにて混和し、室温・10000×gで1分間遠心後、上清を取り除いた。再度、10000×gを沈殿に加えてからvortexにて混和し、室温・10000×gで1分間遠心を行い、上清を取り除いた。サンプルチューブをクリーンベンチ内で蓋を開けたまま15分間置き、沈殿を乾燥させた。沈殿に20μlのBufferPE(MinEluteTM Reaction Cleanup Kit;QIAGEN社製)を加えてvortexにて混和し、室温に5分間置いた。室温・10000×gで1分間遠心を行い、上清を別の1.5mlサンプルチューブに回収し、沈殿に再び20μlのBufferPEを加えた。Vortexにて混和した後、室温に5分間置き、室温・10000×gで1分間遠心を行い、先に回収した上清に加えた。
計40μlの回収液に対して、300μlのBufferERC(MinEluteTM Reaction Cleanup Kit;QIAGE社製)を加え、vortexにて混和した。混和溶液が黄色であることを確認し、2mlcollection tube(MinEluteTM Reaction Cleanup Kit;QIAGE社製) にセットしたMinElute column(MinEluteTM Reaction Cleanup Kit;QIAGE社製)の中に全量をアプライし、室温・10000×gで1分間遠心を行った。流出液を廃棄してから、カラムを再びcollection tubeに戻し、予めエタノールを加えておい750μlのBufferPEを加え、室温・10000×gで1分間遠心を行った。流出液を廃棄してから、カラムを再度collection tubeに戻し、室温・22000×gで1分間遠心を行った。カラムの淵についている液滴をマイクロピペットで取り除き、カラムを新しい1.5mlサンプルチューブにセットした。10μlのBuffer EB(MinEluteTM Reaction Cleanup Kit;QIAGEN社製)を加え、室温で1分間静置した後、室温・10000×gで1分間遠心を行い、精製されたDNA断片を回収した。
[pCR2.1-TA Plasmid vectorへの挿入]
実施例8で得られたPCR断片を、pCR2.1-TA Plasmid vectorに挿入することによりプラスミドDNAを作製した。DNA断片1μlのSalt Solution(TOPO TA Cloning(R) Kit pCR2.1(R)TOPO (R) Vector;Invitrogen社製)及び1μlのTOPO(R)Vector(TOPO TA Cloning(R) Kit pCR2.1(R)TOPO (R) Vector;Invitrogen社製)を氷上で混和した。室温で5分間反応させた後、再び氷上に戻しTransformationに使用した。
[DH5αコンピテントセルへのプラスミドDNAの導入]
DH5αコンピテントセル(Competent high DH5α;TOYOBO社製)を氷上で融解し、20μlずつ別のサンプルチューブに分注した。実施例8で調製した反応液を2μlずつ加え、チップの先で穏やかに混和した。氷上に30分間置いた後、ヒートブロックを用いて42℃で30秒間処理をした。再び、氷上に2分間置き冷却した後、250μlのSOC培地を加え、37℃で1時間振盪培養を行った。振盪培養を行っている間に、50μg/mlのカナマイシンを含む2×YT固形培地に0.1M IPTG(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside;SIGMA社製)及び0.1MX−Gal(5-Bromo-4-chloro-3-indolyl β-D-galactopyranoside;SIGMA社製)を50μlずつ塗付した。作製した固形培地に培養したサンプル100μlを播き、37℃で一晩培養した。
[青白選択及びコロニーPCR法によるスクリーニング]
実施例9で作製したプレートにコロニーが出現していることを確認した後、4℃に5時間静置した。白いコロニーをマークしてからチップの先を使って軽くつつき、50μlの滅菌水の入った96ウェルプレートに入れて軽くゆすいだ。サーマルサイクラーを用いて95℃で5分間処理をした後に、軽く遠心を行い、2μlを新しいプレートのウェルに入れた。続いて、1μlの10x PCR bufferII(Mg)、0.8μlの2.5mM dNTP Mix、6.11μlのdHO、0.05μlのLA−Taqポリメラーゼ(TaKaRa LA-Taq(R) Hot Start version;タカラバイオ社製)、0.02μlの100μM M13 フォワードプライマー、及び0.02μlの100μM M13 リバースプライマーを加え、プレートを軽く遠心した。サーマルサイクラーGeneAmp(R) PCR System9700を用いて、94℃で1分間の熱変性の後、94℃で10秒、50℃で10秒、及び68℃で2分間の反応を35サイクル繰り返す反応条件でのPCR反応を行った。1.5%アガロースゲルを用いた電気泳動により、各PCR反応液のPCR産物(チューブ#2:1.6Kbp、チューブ#3:0.9Kbp、チューブ#4:0.9Kbp)を確認した。
[ポジティブクローンの液体培養と、プラスミドDNAの抽出]
実施例11により、ベクターへのPCR増幅断片の挿入が確認されたコロニーを選び、3.5mlの50μg/mlのカナマイシンを含む2×YT液体培地中で、37℃で一晩振盪培養を行った。培養したサンプル1.8mlを2mlサンプルチューブに入れ、1000×gで10分間遠心した。上清を廃棄し、沈殿に対して250μlのBuffer A1(NucleoSpin(R) Multi-8 Plasmid;MACHEREY-NAGEL社製)を加えvortexして混和した。続いて、250μlのBuffer A2を加え転倒混和してから室温で5分間置き、細胞を溶解させた。350μlのBuffer A3を加え転倒混和し、4℃・14000×gで10分間遠心をした。上清をNucleoVac vacuum manifoldにセットしたNucleoSipn(R) Plasmid Binding Stripsに移した。400mbarで1分間吸引して溶液をsilica membraneを透過させ、DNAを結合させた。600mlのBuffer AWを加え400mbarで1分間吸引して溶液を透過させた後、900mlのBuffer A4を加えて、400mbarで1分間吸引して溶液を透過させ、silica membraneを洗浄した。再度、900mlのBuffer A4を加えて、400mbarで1分間吸引して溶液を透過させ、silica membraneを洗浄した。600mbarで15分間吸引し、silica membraneを乾燥させた。NucleoVac vcuum manifoldに回収用のNucleoSipn(R) MN Tube Stripsを付け替え、membraneに120μlのBuffer AEを加え1分間置き、400mbarで1分間吸引してプラスミドDNAを回収した。回収したプラスミドDNA液3μlに、1μlの10×H Buffer、5μlのdHO、及び1μlのEcoRI(TOYOBO社製)加え、37℃で1時間処理した。1.5%アガロースゲルを用いた電気泳動により、酵素反応液中のDNA消化断片(チューブ#2:1.4Kbp、チューブ#3:0.7Kbp、チューブ#4:0.7Kbp)を確認し、各プラスミドサンプルについて吸光度を測定してDNA濃度を算出し、100μg/μlのプラスミドDNA希釈液を調製した。
[Cycle Sequencing法による塩基配列の決定]
氷上に置いた96ウェルプレートに実施例11で調製したDNA希釈液をチューブ#2については3ウェル(#2−1、#2−2、#2−3)に、チューブ#3及び#4については2ウェル (#3−1、#3−2及び#4−1、#4−2) にそれぞれ6μlずつ加えた。続いて、各ウェルに、3μlの5×Sequencing Buffer (BigDye(R)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;Applied Biosystem社製)、2μlのBigDye(R) Terminator Pre mix(BigDye(R)Terminatorv3.1 Cycle Sequencing Kit;Applied Biosystem社製)、8μlのdHO、1μlの3.2μM プライマーを加え、軽く遠心した。
各サンプルに用いたプライマーは、サンプル#2−1:M13 リバースプライマー、サンプル#2−2:M13 フォワードプライマー、サンプル#2−3:HuIGCH−seq001、サンプル#3−1:M13 リバースプライマー、サンプル#3−2:M13 フォワードプライマー、サンプル#4−1:M13 リバースプライマー、サンプル#4−2:M13 フォワードプライマーである。サーマルサイクラーGeneAmp(R) PCR System9700を用いて、94℃で1分間の熱変性の後、94℃で10秒、50℃で5秒、及び68℃で4分間の反応を25サイクル繰り返す反応条件でのPCR反応を行った。反応が終わるまでに、MultiScreenTMHV-plate(MultiScreen(R) HV-plate;MILLIPORE社製)のウェルにSephadex G-50(SephadexTMG-50 Superfine;GE Healthcar社製)、及び滅菌水300μlを加え、室温で2時間静置した。十分に水和させた後、室温・1100×gで5分間遠心して、流出液を廃棄した。MultiscreenTMHV-plateに新しい96ウェルプレート(ASSAY PLATE 96 well round bottom;IWAKI社製)を付け替え、反応液全量を各ウェルにアプライし、室温・1100×gで5分間遠心してサンプルを回収した。
精製されたサンプルを全量シークエンサー用の96ウェルプレート(MicroAmp(R) Optical 96- well Reaction Plate;Applied Biosystem社製)に移し、さらに元のウェルに滅菌水17.2μlを加え、ウェルを洗いながら全量を同一のサンプルに加えた。x3130/Genetic Analyzer(Applied Biosystem社製)を用いて、各サンプルに付いて6〜8クローンずつ配列を読み、得られた配列のMultiple alignment解析を行った。クローン間で差があった塩基については、その塩基を有するクローンが多いほうを正しい配列であるとし、各サンプルの塩基配列を決定した。
[1細胞のEBV−B由来抗体遺伝子配列の解析結果]
EBV−B1細胞由来の抗体遺伝子レパトワ解析結果を表1に示す。ヒトIgG重鎖領域(IGH)は1クローンが、ヒトIgG軽鎖領域はそれぞれ2つの配列が得られた。
また、ヒトIgG重鎖領域(IGH)の塩基配列は図10及び配列番号64に、ヒトIgG軽鎖κ領域(IGK)の塩基配列は図11及び配列番号65、66に、ヒトIgG軽鎖λ領域(IGL)の塩基配列は図12及び配列番号67、68にそれぞれ示す。図10〜12では、配列中のV、D、J、D領域をそれぞれ黄、赤、青、緑で色分けして示している。
[不死化処理をしていないBリンパ球細胞におけるレパトワ解析]
実施例14で決定した、不死化したEBV−B細胞のレパトワが、不死化処理をしていないBリンパ球(集団)においても発現しているかを以下の実験により確認した。
まず、MEL−018患者から採取したリンパ球(PBMC)をPE標識抗CD19抗体と反応させ、抗PE-マイクロビーズを用いたCD19陽性B細胞のマグネティックソーティング(純度98.5%)よりB細胞を単離した(以下、MEL018−B細胞と記載する)。実施例3の方法に従い、FITC標識A24ペプチド及びPE標識抗ヒトIgG抗体による染色を行うことで、このMEL018−B細胞集団の性質を確認した。結果を図8(II.CD19+ Bcells)に示す。CD19陽性のMEL018−B細胞のうちMAGE1−A24ペプチド陽性細胞は2.2%、細胞表面のヒトIgG陽性細胞は、9.8%であった。
続いて、MEL018−B細胞(集団)の抗体遺伝子レパトワの解析を行った。実施例7〜13の方法に従って、MEL018−B細胞(集団)より全RNAを抽出した。1μgのRNAより、cDNAを合成し、1/100量のcDNA溶液を鋳型としたPCRを行った。PCR反応は実施例14で決定されたEBV−B細胞のレパトワに対応するプライマーにより行った。重鎖領域(IGH)特異的プライマーとしてHV_8(対応レパトワ:IGHV2−26)、IgG重鎖領域(IGH)特異的プライマーとしてKV_8(対応レパトワ:IGKV3−20)及びKV_1(対応レパトワ:IGKV1−5)、IgG軽鎖λ領域(IGL)特異的プライマーとしてLV_5(対応レパトワ:IGLV2-14)を用いた。PCR産物の電気泳動結果は図13に示す。
得られたPCR反応産物を、ゲルから抽出精製し、ヒトIgG重鎖領域(IGH)の塩基配列を解析決定した。MLA018−B細胞由来の10クローンのIGHV(ヒト抗体重鎖遺伝子V領域)のレパトワ解析とCDR3の配列を検討した結果を図14及び配列番号69に示す。すべてのクローンは、EBV−B細胞から得られたレパトワIGHV2−26*01と同一であり、CDR3も全く同じ配列であった。これらの結果よりEBV−BにてクローニングされたIGHV2−26*01の抗体遺伝子は不死化前のMLA018−B細胞集団にすでに発現しているものと考えられる。
本発明の、実行操作のフローを示す図である。 本発明のRT−PCRの方法を示す図である。 本発明のRT−PCRに用いたプライマーにより、増幅されるヒトIgG遺伝子領域を示す図である。 本発明に用いた、ヒトIgG重鎖遺伝子領域特異的なプライマーの塩基配列を示す図である。 本発明に用いた、ヒトIgG軽鎖κ遺伝子領域特異的なプライマーの塩基配列を示す図である。 本発明に用いた、ヒトIgG軽鎖λ遺伝子領域特異的なプライマーの塩基配列を示す図である。 本発明の不死化B細胞株(EBV−B細胞株)を、PE標識抗CD19抗体と、FITC標識抗原ペプチド(MAGE1−A24、HIV−A24又は、CMV−A24)とにより二重染色した結果を示す図である。 EBV−B細胞(I.EB−Bcell)及びMEL018−B細胞(II.CD19+Bcell)をPE標識抗CD19抗体及びFITC標識MAGE1−A24により染色した結果を示す図である。 EBV−B細胞株のRT−PCRの結果を示す図である。 EBV−B細胞からRT−PCRにより増幅されたヒト抗体重鎖遺伝子領域断片の遺伝子配列を示す図である。 EBV−B細胞からRT−PCRにより増幅されたヒト抗体軽鎖κ遺伝子領域断片の遺伝子配列を示す図である。 EBV−B細胞からRT−PCRにより増幅されたヒト抗体軽鎖λ遺伝子領域断片の遺伝子配列を示す図である。 MEL018−B細胞のRT−PCRの結果を示す図である。 MEL018−B細胞(Primary Bcell)及びEBV−B細胞(EB−virus transformed Bcell)からRT−PCRにより増幅された抗体遺伝子配列を比較した結果を示す図である。

Claims (9)

  1. 以下の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子の解析・同定方法。
    (A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
    (B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
    (C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
    (D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
    (E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
    (F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
    (G)増幅された遺伝子断片の塩基配列を解析・決定する工程;
  2. 以下の(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子の解析・同定方法。
    (A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
    (C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
    (D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
    (E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
    (F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
    (G)増幅された遺伝子断片の塩基配列を解析・決定する工程;
  3. がん特異的抗原ペプチドが、HLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドであることを特徴とする請求項1又は2記載の解析・同定方法。
  4. 以下の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(H)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体を製造する方法。
    (A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
    (B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
    (C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
    (D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
    (E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
    (F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
    (H)増幅された遺伝子断片を、発現ベクターを用いて発現させる工程;
  5. 以下の(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(H)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体を製造する方法。
    (A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
    (C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
    (D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
    (E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
    (F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
    (H)増幅された遺伝子断片を、発現ベクターを用いて発現させる工程;
  6. がん特異的抗原ペプチドが、HLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドであることを特徴とする請求項4又は5記載の抗体を製造する方法。
  7. 以下の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法。
    (A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
    (B)得られた末梢血単核球をエプスタインバールウイルス(EBV)を用いて、不死化B細胞(EBV−B細胞)株を作製する工程;
    (C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
    (D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
    (E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
    (F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
  8. 以下の(A)、(C)、(D)、(E)及び(F)の工程を順次備えたことを特徴とする、1個のB細胞由来の抗体遺伝子を調製する方法。
    (A)がん特異的抗原ペプチドで処理された樹状細胞ワクチンの投与により、該がん特異的抗原ペプチドに対する免疫応答が確認されているがん患者から得られる末梢血単核球を採取する工程;
    (C)標識物質により標識された前記がん特異的抗原ペプチドと、前記標識物質とは異なる標識物質により標識された、ヒト抗体を認識しうる抗体とにより、末梢血単核球中のB細胞を標識化する工程;
    (D)前記がん特異的抗原ペプチドを認識する抗体を細胞膜上に発現するB細胞を、1細胞ずつ分取する工程;
    (E)1細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成する工程;
    (F)合成したcDNAを鋳型として、ヒト抗体重鎖領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、ヒト抗体軽鎖κ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応、又はヒト抗体軽鎖λ領域遺伝子に特異的なプライマー対を用いたPCR反応とにより、それぞれの領域遺伝子断片を増幅する工程;
  9. がん特異的抗原ペプチドが、HLA−A24又はHLA−A2拘束性のがん特異的抗原ペプチドであることを特徴とする請求項7又は8記載の抗体遺伝子を調製する方法。
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