JP2008291718A - 予混合圧縮着火エンジンの制御装置 - Google Patents

予混合圧縮着火エンジンの制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】予混合圧縮着火エンジン(HCCIエンジン)の過渡運転状態における混合気の燃焼時期を、複雑な機構を必要とすることなく適切な燃焼時期に安定に制御する。
【解決手段】HCCIエンジン1は、燃料供給装置17,18により各気筒3にオクタン価が相違する2種類の燃料を供給可能である。制御装置2は、加減速補正処理部56によって、HCCIエンジン1の将来の運転状態の現在の運転状態の変化を予測し、その予測した運転状態の変化に応じて、各種類の燃料の供給量を規定する制御用操作量群のうちの少なくとも1つの操作量を調整して、2種類の燃料の供給量の相互の割合を調整する。
【選択図】図5

Description

本発明は、燃料と空気との混合気を圧縮して自然着火させる予混合圧縮着火エンジンの制御装置に関する。
予混合圧縮着火エンジン(所謂HCCIエンジン)は、高効率で窒素酸化物などの排出が少ないエンジンとして、近年、注目されている。この予混合圧縮着火エンジン(以下、HCCIエンジンということがある)は、気筒の燃焼室内の燃料と空気との混合気を圧縮して高温に昇温し、それによって、該混合気の自然着火を発生させて該混合気を燃焼させるものである。
この種のHCCIエンジンでは、気筒内の温度状態や、混合気の空燃比、燃料のオクタン価などの種々様々の要因によって混合気の化学反応(酸化反応)の進み方が変化する。従って、混合気の燃焼時期(着火時期)を如何にして適切なタイミングに制御するかが重要な課題となっている。
そして、この種のHCCIエンジンの制御技術として、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3に見られるものが知られている。特許文献1、2の技術では、吸気系に還流させる排ガス(EGRガス)の量を制御することによって、気筒内の酸素濃度や温度を調整する。これにより、混合気の燃焼が適切なタイミングで行なわれるようにしている。そして、特許文献2に見られる技術では、さらに、HCCIエンジンの各気筒の2つの吸気バルブを各々独立に制御し得るようにして、HCCIエンジンの負荷が変化する過渡期において、それらの吸気バルブのリフト量や閉弁時期を個別に制御することによって、各気筒に還流させるEGRガスの量を調整する。これにより、HCCIエンジンの運転状態の過渡期においても、混合気の着火時期が適切なタイミングになるようにしている。
また、特許文献3の技術では、オクタン価が異なる2種類の燃料をそれぞれ独立にエンジンの気筒に供給し得るようにして、それらの燃料の供給割合を、エンジンの負荷に応じて調整する。これにより、低負荷域から高負荷域まで幅広い運転域で混合気の着火・燃焼を安定させるようにしている。
特開2004−346796号公報 特開2004−353485号公報 特開2000−179368号公報
ところで、HCCIエンジンの回転数や出力トルクの変化速度が比較的大きなものとなる過渡運転状態では、HCCIエンジンの運転制御の遅れによって、混合気の燃焼時期が適切な燃焼時期に対してずれを生じやすい。これは、過渡運転状態では、HCCIエンジンの運転に関する操作量(制御入力)を決定する時と、その操作量に応じたHCCIエンジンの実際の運転が行なわれる時との間でHCCIエンジンの運転状態が変化してしまうためである。
従って、HCCIエンジンの過渡運転状態において、混合気の燃焼時期を適切な燃焼時期に制御するためには、上記した運転制御の遅れの影響を補償することが望ましい。
しかるに、前記特許文献1、3に見られる技術では、HCCIエンジンの過渡運転状態における運転制御の遅れの影響を補償する技術を持たないため、該過渡運転状態において、混合気の実際の燃焼時期が、その燃焼時期におけるHCCIエンジンの運転状態に適合しないものとなりやすい。このため、混合気の実際の燃焼時期が早すぎて、エンジンのノッキングや大きな燃焼音が発生したり、あるいは、実際の燃焼時期が遅すぎて、失火が生じるなどの不都合を生じやすい。
一方、前記特許文献2に見られる技術では、HCCIエンジンの過渡運転状態を考慮している。しかるに、この技術では、過渡運転状態における吸気弁のリフト量や閉弁時期を定常運転状態における該リフト量や閉弁時期から変化させ、それよって、気筒の燃焼室に供給するEGRガス量を調整するものである。このため、吸気弁の複雑な駆動機構を必要とし、HCCIエンジンの機構的な構造が複雑となると共に該エンジンのコストが高価なものとなるという不都合がある。
また、一般に、吸気弁の動作制御による吸気の制御においては、応答遅れが生じやすいと共に、環境条件の違いなどに起因する吸気特性のばらつきを生じやすい。このため、特許文献2に見られる技術では、気筒の燃焼室に供給するEGRガス量やその供給タイミングを高精度に所望の量やタイミングに制御することが困難である。ひいては、混合気の燃焼時期を適切な燃焼時期に安定に制御することが困難であった。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、HCCIエンジンの過渡運転状態における燃焼室での混合気の燃焼時期を、複雑な機構を必要とすることなく適切な燃焼時期に安定に制御することができる制御装置を提供することを目的とする。
本発明の予混合圧縮着火エンジンの制御装置は、かかる目的を達成するために、オクタン価が互いに異なる複数種類の燃料のそれぞれを燃焼室に供給可能であり、且つ該複数種類の燃料のそれぞれの供給量を調整可能な燃料供給装置を備え、該燃料供給装置により燃焼室に供給された燃料と該燃焼室に吸入された空気との混合気の圧縮によって該混合気を着火して燃焼させる予混合圧縮着火エンジンの制御装置であって、前記予混合圧縮着火エンジンの運転中の所定のタイミングで、前記燃焼室への前記複数種類の燃料のそれぞれの供給量を規定する操作量の、該複数種類の燃料についての組である制御用操作量群を少なくとも該予混合圧縮着火エンジンの現在の運転状態に応じて決定し、その決定した制御用操作量群に応じて前記燃料供給装置を制御する燃料供給制御手段を備えると共に、該燃料供給制御手段は、少なくとも予混合圧縮着火エンジンの現在の運転状態と過去の運転状態とに基づいて、該予混合圧縮着火エンジンの将来の運転状態の現在の運転状態からの変化を予測する運転状態変化予測手段を備え、その予測した運転状態の変化に応じて前記制御用操作量群のうちの少なくとも1つの操作量を調整して該制御用操作量群を決定する手段であることを特徴とする(第1発明)。
この第1発明によれば、前記燃料供給制御手段は、前記運転状態変化予測手段で予測された運転状態の変化に応じて、前記制御用操作量群(燃料の種類数と同数の操作量の組)のうちの少なくとも1つの操作量を調整して該制御用操作量群を決定する。このため、予混合圧縮着火エンジンの過渡運転状態において、該制御用操作量群を、該制御用操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料を実際に前記燃焼室に供給して該燃料を含む混合気を燃焼させる将来の時点における予混合圧縮着火エンジンの運転状態に適合させるように決定することが可能となる。なお、前記定常運転状態は、予混合圧縮着火エンジンの回転数(出力軸の回転速度)や出力トルクなど、該エンジンの運転状態が一定に維持される運転状態を意味する。また、過渡運転状態は、該エンジンの回転数や出力トルクなどが時間的に変化する運転状態を意味する。
ここで、燃料のオクタン価が高いほど、該燃料の着火性が低くなる。このため、各気筒に供給する前記複数種類の燃料のうち、オクタン価がより高い燃料の供給量を、オクタン価がより低い燃料の供給量よりも相対的に多くするようにすれば、それらの複数種類の燃料から成る複合燃料の着火性が低下して、該複合燃料を含む混合気の着火時期を遅角側にずらすことができる。また、オクタン価がより低い燃料の供給量を、オクタン価がより高い燃料の供給量よりも相対的に多くするようにすれば、それらの複数種類の燃料から成る複合燃料の着火性が高まって、該複合燃料を含む混合気の着火時期を進角側にずらすことができる。そして、前記複数種類の燃料の実際の供給量の相互の割合は、前記制御用操作量群により規定されるので、その割合は、該制御用操作量群の少なくともいずれか1つの操作量を調整することによって変化する。
従って、前記予測された運転状態の変化に応じて調整した制御用操作量に応じて前記燃料供給装置を制御することによって、その制御によって前記燃焼室に供給される前記複数種類の燃料を含む混合気の燃焼時期を、その燃焼時における予混合圧縮着火エンジンの運転状態に適した時期に制御することができることとなる。
また、第1発明によれば、燃料供給装置の制御によって混合気の燃焼時期を制御するので、その制御の高い応答性を安定に確保できると共に、複雑な吸排気系を必要としない。
よって、第1発明によれば、予混合圧縮着火エンジンの定常運転状態はもちろん、過渡運転状態においても燃焼室での混合気の燃焼時期を、複雑な機構を必要とすることなく適切な燃焼時期に安定に制御することができる。
かかる第1発明では、より具体的には、前記燃料供給制御手段は、前記予混合圧縮着火エンジンの定常運転状態での各種類の燃料の供給量を規定する基本操作量の、前記複数種類の燃料についての組である基本操作量群を該予混合圧縮着火エンジンの現在の運転状態に応じて決定する基本操作量群決定手段と、前記基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を前記予測された運転状態の変化に応じて補正する予測変化応動補正手段とを備え、前記基本操作量群を少なくとも前記予測変化応動補正手段により補正することによって前記制御用操作量群を決定するように構成される(第2発明)。
この第2発明によれば、前記定常運転状態における各種類の燃料の供給量を規定する基本操作量(燃料の種類数と同数の基本操作量)の組である基本操作量群を、少なくとも前記予測変化応動補正手段により補正することによって、前記制御用操作量群が決定される。そして、該制御用操作量群に応じて前記燃料供給装置が制御される。この場合、予測変化応動補正手段が、前記予測された運転状態の変化に応じて基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を補正することによって、前記燃焼室への前記複数種類の燃料のそれぞれの供給量の相互の割合を基本操作量群により規定される割合から変化させることができる。これにより、該割合を前記予測された運転状態の変化に応じて調整し、ひいては、前記燃焼室に実際に供給される複数種類の燃料を含む混合気の実際の燃焼時期を適切な燃焼時期に制御することができる。
なお、第2発明において、前記基本操作量群決定手段は、より具体的には、例えば予混合圧縮着火エンジンの回転数(出力軸の回転速度)と目標トルク(負荷)とに応じて前記基本操作量群を決定するようにすればよい。
この第2発明ではさらに、前記予測変化応動補正手段は、該予測変化応動補正手段により前記基本操作量群を補正したときに得られる操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量を、前記基本操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量に維持しつつ、前記操作量群により規定される前記複数種類の燃料の供給量の相互の割合を前記基本操作量群により規定される前記複数種類の燃料の供給量の相互の割合から前記予測された運転状態の変化に応じて変化させるように、該予測された運転状態の変化に応じて前記基本操作量群のうちの2つ以上の基本操作量の補正を行なうことが好適である(第3発明)。
なお、前記複合燃料の総発熱量は、該複合燃料を構成する前記複数種類の燃料のそれぞれの発熱量(これは、燃焼室への各種類の燃料の供給量にほぼ比例する)の総和を意味する。
この第3発明によれば、前記予測変化応動補正手段による基本操作量群の補正にあっては、該予測変化応動補正手段により前記基本操作量群を補正したときに得られる操作量群により規定される前記複数種類の燃料の供給量の相互の割合を前記基本操作量群により規定される前記複数種類の燃料の供給量の相互の割合から前記予測された運転状態の変化に応じて変化させるだけでなく、該予測変化応動補正手段によつ補正後の操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量を、前記基本操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量に維持するように、前記基本操作量群のうちの2つ以上の基本操作量が補正される。
このため、前記予測変化応動補正手段による基本操作量群の補正が、予混合圧縮着火エンジンの出力トルクに及ぼす影響を補償しつつ(当該補正に伴う出力トルクの変化を抑制しつつ)、前記燃焼室における混合気の実際の燃焼時期を適切な燃焼時期に制御することができる。従って、予混合圧縮着火エンジンの運転状態の安定性を高めることができる。
補足すると、前記基本操作量群を予測変化応動補正手段により補正したときに得られる操作量群は、それをそのまま前記制御用操作量群として使用してもよいが、必ずしもそうする必要はない。すなわち、前記基本操作量群を予測変化応動補正手段により補正したときに得られる操作量群にさらに他の補正を施して制御用操作量群を決定するようにしてもよい。
以上説明した第1〜第3発明では、前記複数種類の燃料は、3種類以上でもよいが、実用的には、低オクタン価燃料と高オクタン価燃料との2種類の燃料でよい。この場合、前記第2発明では、前記複数種類の燃料は低オクタン価燃料と高オクタン価燃料との2種類の燃料であり、前記予測変化応動補正手段は、少なくとも前記予測された運転状態の変化が、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが増加していく加速変化である場合には、前記高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合を前記基本操作量群により規定される割合よりも増加させるように前記基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を補正することが好ましい(第4発明)。
また、前記予測変化応動補正手段は、少なくとも前記予測された運転状態の変化が、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが低下していく減速変化である場合には、前記低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合を前記基本操作量群により規定される割合よりも増加させるように前記基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を補正することが好ましい(第5発明)。
すなわち、前記第4発明に関し、前記予測された運転状態の変化が、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが増加していく加速変化である場合には、前記燃焼室における混合気の実際の燃焼時には、前記基本操作量群を決定した時(現在)よりも、予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが増加しているため、混合気の適切な燃焼時期が、現在の燃焼時期よりも早くなる傾向がある。そして、第4発明では、前記予測された運転状態の変化が加速変化である場合には、前記高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合を前記基本操作量群により規定される割合よりも増加させるので、前記2種類の燃料からなる複合燃料の着火性がより高まる。その結果、混合気の実際の燃焼時期を、その時の予混合圧縮着火エンジンの運転状態に適した時期に制御できる。
また、前記第5発明に関し、前記予測された運転状態の変化が、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが低下していく減速変化である場合には、前記燃焼室における混合気の実際の燃焼時には、前記基本操作量群を決定した時(現在)よりも、予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが低下しているため、混合気の適切な燃焼時期が、現在の燃焼時期よりも遅くなる傾向がある。そして、第5発明では、前記予測された運転状態の変化が減速変化である場合には、前記低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合を前記基本操作量群により規定される割合よりも増加させるので、前記2種類の燃料からなる複合燃料の着火性がより低下する。その結果、混合気の実際の燃焼時期を、その時の予混合圧縮着火エンジンの運転状態に適した時期に制御できる。
なお、第4発明と第5発明は複合してもよい。
また、前記複数種類の燃料が低オクタン価燃料と高オクタン価燃料との2種類の燃料である場合において、前記第3発明の如く燃焼室に供給される燃料の総発熱量をも制御する場合には、前記予測変化応動補正手段は、前記低オクタン価燃料および高オクタン価燃料のうちのいずれか一方の燃料に関する前記基本操作量を補正するための第1補正操作量を決定する第1補正操作量決定手段と、他方の燃料に関する前記基本操作量を補正するための第2補正操作量を決定する第2補正操作量決定手段とを備える。そして、前記第1補正操作量決定手段を、前記予測された運転状態の変化に応じて前記第1補正操作量を決定する手段とする。また、前記第2補正操作量決定手段を、前記基本操作量群を前記第1補正操作量および第2補正操作量により補正したときに得られる操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記2種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量を、前記基本操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記2種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量に維持するように、前記第1補正操作量に応じて前記第2補正操作量を決定する手段とする(第6発明)。
この第6発明によれば、前記基本操作量群(2種類の燃料にそれぞれ対応する基本操作量の組)は、前記第1補正操作量および第2補正操作量により補正されることなる。この場合、第1補正操作量は前記予測された運転状態の変化に応じて決定される。そして、第2補正操作量は、前記基本操作量群を前記第1補正操作量および第2補正操作量により補正したときに得られる操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記2種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量(以下、補正後総発熱量ということがある)を、前記基本操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記2種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量(以下、基本総発熱量ということがある)に維持するように、前記第1補正操作量に応じて決定されるので、前記他方の燃料の供給量が前記補正後総発熱量を基本総発熱量に維持するように補正される。
これにより、前記予測変化応動補正手段による補正後の総発熱量を基本総発熱量に維持するようにしつつ、前記予測された運転状態の変化に応じて前記2種類の燃料の供給量の割合を適切に調整できる。
なお、この第6発明は、前記第4発明または第5発明と複合させてもよい。
また、前記第2〜第6発明においては、前記燃焼室における混合気の燃焼時期と一定の相関性を有する所定種類の状態量である燃焼時期対応状態量を検出する燃焼時期対応状態量検出手段と、前記燃焼時期対応状態量の目標値を前記予混合圧縮着火エンジンの運転状態に応じて設定する目標状態量設定手段と、前記検出された燃焼時期対応状態量と前記設定された目標値との偏差に応じて、該偏差を0に近づけるように前記基本操作量群を補正する偏差応動補正手段とをさらに備え、前記燃料供給制御手段は、前記基本操作量群を少なくとも前記予測変化応動補正手段と前記偏差応動補正手段とにより補正することによって前記制御用操作量群を決定することがより好ましい(第7発明)。
この第7発明によれば、前記予測変化応動補正手段によって前記基準操作量群が補正されるだけなく、前記偏差応動補正手段による補正も行なわれる。この場合、前記偏差応動補正手段は、前記燃焼時期対応状態量検出手段によって検出された前記燃焼時期対応状態量とこれに対する目標値との偏差に応じて、該偏差を0に近づけるように、前記基本操作量群を補正する。従って、前記制御用操作量群により規定される前記複数種類の燃料の相互の割合が、前記偏差を0に近づけるように、換言すれば、前記検出された燃焼時期対応状態量に対応する実際の燃焼時期が該燃焼時期の目標値に近づくように調整されることとなる。換言すれば、該割合が前記偏差に応じてフィードバック制御される。
この結果、予混合圧縮着火エンジンが定常運転状態であるか過渡運転状態であるかによらずに、実際の燃焼時期を適切な燃焼時期に安定に制御することが可能となる。
なお、前記燃焼時期対応状態量は、種々様々のものがある。例えば、前記燃焼室のイオン電流を検出するイオン電流センサを備えた場合には、前記燃焼時期対応状態量検出手段が検出する前記燃焼時期対応状態量として、該イオン電流センサにより検出されるイオン電流が所定の状態となる時期を使用することができる。この場合、上記所定の状態は、より具体的には、例えば、各気筒における混合気の燃焼時に、前記検出されるイオン電流が、最大値(ピーク値)となる状態、あるいは、該イオン電流が所定値を超える状態などが挙げられる。また、前記燃焼室内の圧力を検出する圧力センサ(筒内圧センサ)を備えた場合には、それにより検出される圧力が最大値(ピーク値)となる状態、あるいは、該圧力が所定値を超える状態などを、前記燃焼時期対応状態量検出手段が検出する前記燃焼時期対応状態量として使用することもできる。
以上説明した第1〜第7発明では、前記運転状態変化予測手段が予測する運転状態の変化は、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数の変化量と、目標トルクの変化量とを含むことが好ましい(第8発明)。すなわち、予混合圧縮着火エンジンの燃焼室での混合気の燃焼時期は、該エンジンの回転数や目標トルク(負荷)に対する依存度が高い。従って、前記運転状態変化予測手段が予測する運転状態の変化として、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数の変化量と、目標トルクの変化量とを含むことで、それらの変化量に応じて、前記制御用操作量群を好適に調整することが可能となる。
また、前記第1〜第8発明において、前記複数種類の燃料は、種々様々な組み合わせが可能であるが、実用的には、前記複数種類の燃料は、例えば、ガソリンとエタノールとをそれぞれ低オクタン価燃料、高オクタン価燃料とする2種類の燃料であることが好ましい(第9発明)。
あるいは、前記複数の燃料は、ジエチルエーテルとエタノールとをそれぞれ低オクタン価燃料、高オクタン価燃料とする2種類の燃料であることが好ましい(第10発明)。
補足すると、予混合圧縮着火エンジンが複数気筒を有するエンジンである場合には、前記燃料供給装置と燃料供給制御手段とを各気筒毎に備えればよい。
本発明の一実施形態を図1〜図23を参照して説明する。まず、図1を参照して本実施形態の予混合圧縮着火エンジンの制御装置の全体的なシステム構成を説明する。図1はそのシステム構成の概略を示す図である。
図1中、1は予混合圧縮着火エンジン、2は制御装置である。予混合圧縮着火エンジン1(以下、HCCIエンジン1という)は、複数の気筒3を有するエンジン、例えば4気筒エンジンである。なお、図1では、HCCIエンジン1の1気筒分の概略構造だけを代表的に図示している。
各気筒3は、シリンダブロックおよびシリンダヘッドなどから構成されるエンジン基体4内に形成されている。各気筒3には、その内部を該気筒3の軸心方向に往復動自在なピストン5が収容され、このピストン5の上側(シリンダヘッド側)の空間が燃焼室6として形成されている。各ピストン5は、コンロッド7を介してHCCIエンジン1の出力軸であるクランク軸8に連結され、各気筒3のピストン5の往復動に伴いクランク軸8が回転するようになっている。
各気筒3の燃焼室6は、吸気バルブ9により開閉される吸気ポート10を介して吸気マニホールド11に連通していると共に、排気バルブ12により開閉される排気ポート13を介して排気マニホールド14に連通している。本実施形態では、吸気バルブ9および排気バルブ12は、クランク軸8の回転に連動するカムシャフトを有するバルブ駆動機構(図示省略)を介して開閉駆動される。
各気筒3に対応する吸気マニホールド11は、全ての気筒3について共通の吸気路15に合流している。そして、この吸気路15には、電動式のスロットル弁16が設けられ、このスロットル弁16の開度を制御することによって、各気筒3への空気の吸気量が操作されるようになっている。なお、図示は省略するが、排気マニホールド14は、全ての気筒3について共通の排気路に合流しており、各気筒3で生成される排ガスは、該排気路に設けられた浄化触媒を介して排出されるようになっている。
また、HCCIエンジン1には、各気筒3毎に、2つの燃料噴射装置17,18が備えれられている。本実施形態では、これらの燃料噴射装置17,18により、本発明における燃料供給装置が構成される。本実施形態では、各気筒3の燃焼室7で燃焼させる燃料は、オクタン価が互いに異なる(ひいては着火性が互いに異なる)2種類の燃料、すなわち、低オクタン価燃料及び高オクタン価燃料からなる複合燃料である。そして、燃料噴射装置17は、低オクタン価燃料用の噴射装置、燃料噴射装置18は、高オクタン価燃料用の噴射装置である。この場合、燃料噴射装置17は、ポート噴射型のものであり、各気筒3に対応する吸気ポート10に向かって低オクタン価燃料を噴射するように、吸気マニホールド11に装着されている。また、燃料噴射装置18は、直噴型のものであり、各気筒3の燃焼室6に直接的に高オクタン価燃料を噴射するように、エンジン基体4(シリンダヘッドの部分)に装着されている。
これらの燃料噴射装置17,18にはそれぞれ図示を省略する燃料タンクから、低オクタン価燃料、高オクタン価燃料が圧送されるようになっている。そして、これらの燃料噴射装置17,18は、それぞれの燃料の噴射時間(噴射弁の開弁時間)を制御可能であり、その噴射時間の制御によって、各気筒3に対する各種類の燃料の供給量(1燃焼サイクル当たりの供給量)を調整することが可能となっている。従って、各気筒3毎の燃料噴射装置17,18によって、各気筒3の燃焼室6にオクタン価が異なる2種類の燃料(低オクタン価燃料および高オクタン価燃料)を各気筒3毎且つ各種類の燃料毎に供給可能となっていると共に、それらの2種類の燃料の供給量を、各気筒3毎に且つ各種類の燃料毎に調整可能となっている。なお、燃料噴射装置17,18は、各種類の燃料の噴射時期も制御可能である。
以上のように構成されているHCCIエンジン1では、各気筒3の各燃焼サイクルの所要のタイミングで、該気筒3に対応する燃料噴射装置17,18からそれぞれ低オクタン価燃料および高オクタン価燃料を噴射することによって、それらの2種類の燃料が各気筒3の燃焼室6に供給される。そして、それらの2種類の燃料から成る複合燃料と該気筒3の吸気行程で燃焼室6内に充填される空気との混合気が該気筒3の圧縮行程で圧縮される。その圧縮により、該混合気が高温になって複合燃料の自着火燃焼が行なわれる。
この場合、低オクタン価燃料は、高オクタン価燃料に比べて着火性が高いので、各気筒3に供給する両燃料の総量に対して、低オクタン価燃料の供給量(噴射量)の割合をより多くすることで、該気筒3における混合気の着火性が高まることとなる。また、高オクタン価燃料は、低オクタン価燃料に比べて着火性が低いので、各気筒3に供給する両燃料の総量に対して、高オクタン価燃料の供給量(噴射量)の割合をより多くすることで、該気筒3における混合気の着火性が低下することとなる。従って、各気筒3の燃焼室6への高オクタン価燃料の供給量と低オクタン価燃料の供給量との割合を調整することによって、該気筒3における混合気の燃焼時期を各気筒3毎に調整することが可能である。
なお、本実施形態では、高オクタン価燃料として例えばエタノールが使用される。また、低オクタン価燃料として、例えばガソリン、またはジエチルエーテルが使用される。
また、HCCIエンジン1には、上記した構成のほか、クランク軸8の回転角度に応じたパルス信号を出力するクランク角センサ19と、HCCIエンジン1の吸気圧PBA(絶対圧)を検出する吸気圧センサ20と、各気筒3の燃焼室6での混合気の燃焼時に流れるイオン電流を検出するイオン電流センサ21とが備えらている。
クランク角センサ19は、クランク軸8が所定角度、回転する毎に、パルス信号を制御装置2に出力するセンサである。該パルス信号は、制御装置2において、クランク軸8の回転角度(ある基準位置からの回転角度。以下、クランク角という)や該クランク軸8の回転数(回転速度)を検出するために使用される。
吸気圧センサ20は、前記スロットル弁16の下流側(前記吸気マニホールド11の合流箇所の近傍)で吸気路15に装着されており、その箇所での吸気路15内の圧力をHCCIエンジン1の吸気圧として検出し、その検出信号を制御装置2に出力する。なお、吸気圧センサ20の代わりに、エアフローセンサを使用してもよい。
イオン電流センサ21は、各気筒3毎に備えられ、エンジン基体4と電気的に絶縁した状態で各気筒3の燃焼室6に先端部を突出させた導電性のプローブ22とこのプローブ22に接続された信号生成部23とから構成される。
図2は、イオン電流センサ21の信号生成部23の回路構成を示している。なお、図2ではプローブ22の周辺の構造に関しては、要部のみを記載している。
図2に示すように、信号生成部23は、プローブ22とエンジン基体4(これは接地されている)との間に、直列に接続されたダイオード24、直流電圧源25、および検出用抵抗26を備え、直流電圧源25から正極性の一定値(固定値)の直流電圧をダイオード24を介してプローブ22に印加するようにしている。ここで、燃焼室6内において、混合気が燃焼すると、陰イオン(電子)が放出され、それが、プローブ22に引き寄せられる。これによりプローブ22とエンジン基体4との間で検出用抵抗26を介して電流が流れる。その電流は、燃焼室6内での陰イオンの発生量(単位時間当たりの発生量)に応じたイオン電流であり、そのイオン電流に応じた電圧Vionが検出用抵抗26に発生する。そして、信号生成部23は、該検出用抵抗26に発生する電圧Vionをイオン電流の検出信号として、制御装置2に出力するようにしている。
ここで、各気筒3に対応するイオン電流センサ21で検出されるイオン電流と該気筒3での混合気の燃焼時期との関係について図3および図4を参照して説明しておく。図3はイオン電流センサ21で検出されるイオン電流の波形の一例を示すグラフ、図4はそのイオン電流に関する特性を示すグラフである。
各気筒3における混合気の燃焼時に、熱発生率(単位クランク角あたりの発生熱量)が最大となるクランク角をCA_dQmaxとおくと、そのクランク角CA_dQmaxは、該気筒3における混合気の燃焼時期の代表値としての意味を持つ。そして、該混合気の燃焼時において前記イオン電流センサ21で検出されるイオン電流は、一般に、図3に例示する如くクランク角がある値CA_ionmaxでピーク値(最大値)を持つようなパターン(波形)で増減する。この場合、イオン電流が最大値となるクランク角CA_ionmaxは、熱発生率が最大となる上記クランク角CA_dQmaxと強い相関性を有し、CA_dQmaxとの差がほぼ一定に保たれる。従って、CA_ionmaxと、CA_dQmaxとの間には、図4に示す如く線形関係が成立する。ひいては、各気筒3に関するCA_ionmaxは、該気筒3における混合気の燃焼時期と強い相関性を有することとなる。
そこで、本実施形態では、イオン電流センサ21で検出されるイオン電流が最大値となるクランク角CA_ionmax(以下、イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxという)を燃焼時期と一定の相関性を有する燃焼時期対応状態量として用いる。そして、該イオン電流センサ21の出力は、制御装置2において、上記イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxを検出するために使用される。
補足すると、燃焼時期対応状態量として使用し得る状態量は、イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxに限られるものではない。例えば、イオン電流がある所定値を超えるクランク角もしくは時刻、あるいは気筒3内の圧力(筒内圧)がピーク値となるようなクランク角もしくは時刻、あるいは該筒内圧が所定値を越えるクランク角もしくは時刻を燃焼時期対応状態量として使用してもよい。また、燃焼時期を例えばレーザを使用して推定することも可能であり、その推定値を燃焼時期対応状態量として使用するようにしてもよい。
図1に戻って、制御装置2は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路を含む電子回路ユニットである。この制御装置2には、前記クランク角センサ19、吸気圧センサ20およびイオン電流センサ21の出力が入力される他、図示を省略する種々のセンサから、HCCIエンジン1の機関温度(冷却水温もしくは油温)や、吸気温度(前記吸気路15に導入される空気温度)、大気圧などの検出信号が入力されるようになっている。さらに、制御装置2には、外部からHCCIエンジン1の出力トルクの目標値である目標トルクTdが入力されるようになっている。
なお、本実施形態では、HCCIエンジン1は、例えば自動車などの車両(図示省略)の推進力発生源として該車両に搭載される。この場合、HCCIエンジン1の目標トルクTdは、車両のアクセルペダルの操作量(踏み込み量)や車速などに応じて決定される。
制御装置2は、上記の入力データと、あらかじめROMに記憶保持されたプログラムや参照データ(マップ、テーブルなど)に基づいて、各気筒3毎の燃料噴射装置17,18の動作(燃料噴射量と燃料噴射時期とに関する動作)、並びに、スロットル弁16の動作(スロットル弁16の開度に関する動作)を規定する操作量(制御入力)を決定する。そして、制御装置2は、その操作量に応じて各燃料噴射装置17,18の動作とスロットル弁16の動作を制御するようにしている。なお、制御装置2は、その制御処理のために、前記クランク角センサ19の出力(パルス信号)を基に、クランク角を逐次検出する処理と、クランク軸8の回転数NEを検出する処理も実行する。また、制御装置2は、検出したクランク角と、前記イオン電流センサ21の出力とを基に、各気筒3毎の前記イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxを検出する処理も実行する。該イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxを検出する処理によって、本発明における燃焼時期対応状態量検出手段が構成されることとなる。換言すれば、制御装置2は、燃焼時期対応状態量検出手段としての機能を含む。この場合、例えば、次のような処理によりCA_ionmaxを検出すればよい。すなわち、各気筒3での混合気の燃焼時に、前記クランク角センサ19の出力から検出されるクランク角の値と、イオン電流センサ21の出力から検出されるイオン電流の値との組を逐次取り込んで、時系列的に記憶保持する。そして、その時系列から、イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxを検出する。
次に、図5〜図19を参照して、制御装置2の制御処理機能を詳細に説明する。
図5は該制御装置2の制御処理機能を示すブロック図である。同図を参照して、本実施形態では、制御装置2は、各気筒3毎の低オクタン価燃料用の燃料噴射装置17および高オクタン価燃料用の燃料噴射装置18のそれぞれの燃料噴射時間Ti_Lo,Ti_Hiを決定する燃料噴射時間制御処理部50と、各気筒3毎の低オクタン価燃料用の燃料噴射装置17および高オクタン価燃料用の燃料噴射装置18のそれぞれの燃料噴射時期CA_inj_Lo,CA_inj_Hi(クランク角)を決定する燃料噴射時期制御処理部51と、スロットル弁16の目標開度TH_objを決定するスロットル弁制御処理部52とを主たる制御処理部として備える。なお、燃料噴射時間制御処理部50および燃料噴射時期制御処理部51は、各気筒3毎に各別に備えられるが、図3では、1つの気筒3に関するものだけを代表的に図示している。
補足すると、燃料噴射時間制御処理部50は、本発明における燃料供給制御手段としての機能を有するものである。
ここで、燃料噴射時間Ti_Lo,Ti_Hiは、各気筒3毎の燃料噴射装置17,18による各気筒3の燃焼室6への2種類の燃料のそれぞれの供給量(噴射量)を規定する操作量(制御入力)としての意味を持つ。また、燃料噴射時期CA_inj_Lo,CA_inj_Hiは、各気筒3毎の燃料噴射装置17,18による各気筒3の燃焼室6への2種類の燃料のそれぞれの供給タイミング(噴射時期)を規定する操作量(制御入力)としての意味を持つ。そして、これらの燃料噴射時間Ti_Lo,Ti_Hiおよび燃料噴射時期CA_inj_Lo,CA_inj_Hiは、各気筒3毎の燃料噴射装置17,18の動作を規定する操作量としての意味を持つ。また、目標開度TH_objは、スロットル弁16の動作(開度)を規定する操作量(制御入力)としての意味を持つ。なお、燃料噴射時間Ti_Lo,Ti_Hiの代わりに、燃料供給量(噴射量)を決定するようにしてもよい。また、燃料噴射時期CA_inj_Lo,CA_inj_Hiは、必ずしもクランク角の次元で決定する必要は無く、時間(時刻)の次元で決定するようにしてもよい。
そして、制御装置2は、各気筒毎3に、燃料噴射時間制御処理部50で決定した燃料噴射時間Ti_Loと、燃料噴射時期制御処理部51で決定した燃料噴射時期CA_inj_Loとを低オクタン価燃料量の燃料噴射装置17の駆動制御部(図示せず)に出力すると共に、燃料噴射時間制御処理部50で決定した燃料噴射時間Ti_Hiと、燃料噴射時期制御処理部51で決定した燃料噴射時期CA_inj_Hiとを高オクタン価燃料用の燃料噴射装置18の駆動制御部(図示せず)に出力する。このとき、各気筒3毎の燃料噴射装置17は、入力された燃料噴射時間Ti_Loおよび燃料噴射時期CA_inj_Loに従って噴射弁の開弁動作を行なう。また、各気筒3毎の燃料噴射装置18は、入力された燃料噴射時間Ti_Hiおよび燃料噴射時期CA_inj_Hiに従って噴射弁の開弁動作を行なう。これにより、各気筒3の燃焼室6には、CA_inj_Loにより規定されるタイミングで、Ti_Loにより規定される量の低オクタン価燃料が燃料噴射装置17から供給(噴射)されると共に、CA_inj_Hiにより規定されるタイミングで、Ti_Hiにより規定される量の低オクタン価燃料が燃料噴射装置18から供給(噴射)される。
また、制御装置2は、スロットル弁制御処理部52で決定した目標開度TH_objを逐次、スロットル弁16の駆動制御部(図示せず)に出力する。このとき、スロットル弁16の駆動制御部は、入力された目標開度TH_objに、スロットル弁16の開度を制御する。
各気筒3毎の前記燃料噴射時間制御処理部50の制御処理は、該燃料噴射時間制御処理部50に対応する気筒3の燃焼サイクル(クランク軸8の2回転)に同期した所定のタイミングで次のように行なわれる。なお、以降、HCCIエンジン1が有する複数の気筒3のうちの任意の1つの気筒3に着目し、その気筒3を参照符号3xを用いて表記する。そして、以降の燃料噴射時間制御処理部50の説明は、特にことわらない限り、その着目している任意の1つの気筒3xに関する説明であるとする。このことは、後述する燃料噴射時期制御処理部51の説明においても同様である。
燃料噴射時間制御処理部50は、高オクタン価燃料の基本噴射時間Ti_Hi_mapを決定する処理部53と、低オクタン価燃料の基本噴射時間Ti_Lo_mapを決定する処理部54と、これらの基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapをそれぞれ補正するための第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Lo、第2補正操作量K_acc_Hi,K_acc_Lo、第3補正操作量K_fc_Hi,K_fc_Loおよび第4補正操作量Kx_Hi,Kx_Loをそれぞれ決定するイオン電流F/B処理部55、加減速補正処理部56、FC補正処理部57、付加的補正処理部58を備える。
そして、燃料噴射時間制御処理部50は、高オクタン価燃料の基本噴射時間Ti_Hi_mapを、該高オクタン価燃料に対応する各補正操作量K_ion_Hi,K_acc_Hi,K_fc_Hi,Kx_Hiにより補正することによって気筒3xの1燃焼サイクル毎の燃料噴射時間Ti_Hiを決定する。この場合、本実施形態では、基本噴射時間Ti_Hi_mapの補正は、Ti_Hi_mapに、K_ion_Hi,K_acc_Hi,K_fc_Hi,Kx_Hiを乗じることで行なわれる。同様に、燃料噴射時間制御処理部50は、低オクタン価燃料の基本噴射時間Ti_Lo_mapを、該低オクタン価燃料に対応する各補正操作量K_ion_Lo,K_acc_Lo,K_fc_Lo,Kx_Loにより補正することによって気筒3xの1燃焼サイクル毎の燃料噴射時間Ti_Loを決定する。この場合、本実施形態では、基本噴射時間Ti_Lo_mapの補正は、Ti_Lo_mapに、K_ion_Lo,K_acc_Lo,K_fc_Lo,Kx_Loを乗じることで行なわれる。
なお、高オクタン価燃料に対応する各補正操作量K_ion_Hi,K_acc_Hi,K_fc_Hi,Kx_Hiは、その値が「1」よりも大きいときに、高オクタン価燃料の燃料噴射時間Ti_Hiを基本噴射時間Ti_Hi_mapよりも増加させる(ひいては気筒3xへの高オクタン価燃料の供給量をより増加させる)ように機能する。逆に、各補正操作量K_ion_Hi,K_acc_Hi,K_fc_Hi,Kx_Hiは、その値が「1」よりも小さいときに、高オクタン価燃料の燃料噴射時間Ti_Hiを基本噴射時間Ti_Hi_mapよりも減少させる(ひいては気筒3xへの高オクタン価燃料の供給量をより減少させる)ように機能する。同様に、低オクタン価燃料に対応する各補正操作量K_ion_Lo,K_acc_Lo,K_fc_Lo,Kx_Loは、その値が「1」よりも大きいときに、低オクタン価燃料の燃料噴射時間Ti_Loを基本噴射時間Ti_Lo_mapよりも増加させる(ひいては気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量をより増加させる)ように機能する。逆に、各補正操作量K_ion_Lo,K_acc_Lo,K_fc_Lo,Kx_Loは、その値が「1」よりも小さいときに、低オクタン価燃料の燃料噴射時間Ti_Loを基本噴射時間Ti_Lo_mapよりも減少させる(ひいては気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量をより減少させる)ように機能する。
補足すると、本実施形態では、前記基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapは、それぞれ本発明における基本操作量に相当し、これらの基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapの組が、本発明における基本操作量群に相当するものである。従って、前記処理部53,54は、それらを併せて、本発明における基本操作量群決定手段を構成するものである。また、燃料噴射時間制御処理部50で最終的に決定される燃料噴射時間Ti_HiおよびTi_Loの組が、本発明における制御用操作量群に相当する。
以下に、処理部53〜58の処理を具体的に説明する。まず、処理部53,54でそれぞれ決定する基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapは、HCCIエンジン1の回転数NEや目標トルクTdなどの運転状態が一定に維持される定常運転状態における気筒3xへの燃料の供給量(噴射量)を規定する基本操作量である。本実施形態では、基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapはそれぞれHCCIエンジン1の回転速度NEと目標トルクTdとからあらかじめ設定されたマップにより求められるフィードフォワード操作量である。
より具体的には、処理部53,54には、それぞれHCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)と目標トルクTd(最新値)とが入力される。なお、回転数NEの検出値は、前記クランク角センサ19の出力(パルス信号)を基に制御装置2で検出したものである。そして、処理部53,54は、入力された回転数NEと目標トルクTdとから、それぞれ、図6、図7に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapを決定する。これらのマップは、回転数NEと目標トルクTdとを一定に維持した定常運転状態(より正確には、HCCIエンジン1の機関温度、吸気温、大気圧などの運転環境条件がある既定の標準条件である場合の定常運転状態)で、HCCIエンジン1の運転状態が最適な運転状態(気筒3xでの混合気の燃焼が高い安定性で且つ高効率で行なわれるような運転状態)となるように、実験的に設定されたものである。これらのマップは、本実施形態では、全ての気筒3について同一である。但し、これらのマップを各気筒3毎に各別に備えるようにしてもよい。なお、図6、図7のマップは、一例であり、これらのマップは、低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の種類、HCCIエンジン1の仕様などに依存して一般には、異なるものとなる。
イオン電流F/B処理部55で決定する第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loは、気筒3xにおける混合気の燃焼時期を所要の目標値に一致させるように、気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量と高オクタン価燃料の供給量との割合を調整するためのフィードバック操作量である。本実施形態では、イオン電流F/B処理部55の処理では、気筒3xにおける前記イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxを、目標とする燃焼時期に相当する目標値(以下、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objという)に一致させるように(CA_ionmax_objとCA_ionmaxとの偏差を0に近づけるように)、第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loが決定される。この場合、さらに、これらの第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loは、それによる基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapの補正によって、高オクタン価および低オクタン価の燃料(気筒3xに噴射される燃料)の総発熱量が変化しないように決定される。
このような処理を行なうイオン電流F/B処理部55は、偏差応動補正手段としての機能を有するものである。
図8は、イオン電流F/B処理部55の具体的な処理機能を示す機能ブロック図である。イオン電流F/B処理部55には、HCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)と、目標トルクTdと、前記イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxの検出値(最新値)とが入力される。なお、イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxは、前記したようにクランク角の検出値と、前記イオン電流センサ21の出力とから制御装置2で検出される。そして、イオン電流F/B処理部55は、まず、入力された回転速度NEと、目標トルクTdとから、目標イオン電決定部59にて、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objを決定する。この場合、目標イオン電流決定部59は、入力されたNE,Tdから、例えば図9に例示する如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、CA_ionmax_objを決定する。このマップは、前記図6および図7のマップと同様に、回転数NEと目標トルクTdとを一定に維持した定常運転状態で、HCCIエンジン1の最適な運転が行なわれるように、実験的に設定されたものである。このマップは、全ての気筒3について同一でよいが、各気筒3毎に各別に備えるようにしてもよい。なお、CA_ionmax_objを決定するということは、燃焼時期の目標値を決定することと実質的に等価である。また、図9のマップは、一例であり、このマップは、低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の種類、HCCIエンジン1の仕様などに依存して一般には、異なるものとなる。
補足すると、前記目標イオン電流決定部59は、本発明における目標状態量設定手段に相当するものである。
次いで、イオン電流F/B処理部55は、上記の如く決定したCA_ionmax_objと、入力されたイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxの検出値との偏差ΔCA_ionmax(=CA_ionmax_obj−CA_ionmax)を演算部60で算出する。さらに、イオン電流F/B処理部55は、この偏差ΔCA_ionmaxから、この偏差ΔCA_ionmaxを0に近づけるためのフィードバック要求操作量K_ionをF/B演算部61により算出する。この場合、本実施形態では、制御則によりK_ionを求めるためのフィードバック制御則として、例えば比例則を用いる。すなわち、F/B演算部61は、ΔCA_ionmaxに所定のゲイン(比例ゲイン)を乗じ、これに「1」を加えることでK_ionを求める。なお、ΔCA_ionmaxに所定のゲイン(比例ゲイン)を乗じたものに「1」を加えるのは、ΔCA_ionmaxが0であるときにK_ionの値を「1」にするためである。また、フィードバック制御則は、比例則に限られるものではなく、PID則などの他の制御則を使用してもよい。
本実施形態では、第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loのうちの一方、例えば低オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Loを、ΔCA_ionmaxを0に近づけるための主たるフィードバック操作量とする。そこで、イオン電流F/B処理部55は、上記のようにして求めたフィードバック要求操作量K_ionをそのまま低オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Loとして決定する。この場合、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに対してイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxの検出値が遅角しているとき(実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも遅いとき)に、第1補正操作量K_ion_Loが「1」よりも大きくなり、且つ、CA_ionmax_objに対してCA_ionmaxの検出値が進角しているとき(実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも早いとき)に、第1補正操作量K_ion_Loが「1」よりも小さくなるように、F/B演算部61のゲインが設定されている。
従って、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも遅い場合に、着火性がより高い低オクタン価燃料の気筒3xへの供給量を基本噴射時間Ti_Lo_mapに応じて規定される低オクタン価燃料の供給量よりも増加させるように第1補正操作量K_ion_Loが決定されることとなる。逆に、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも早い場合に、着火性がより高い低オクタン価燃料の気筒3xへの供給量を基本噴射時間Ti_Lo_mapに応じて規定される低オクタン価燃料の供給量よりも減少させるように第1補正操作量K_ion_Loが決定されることとなる。
ここで、低オクタン価燃料に関する基本噴射時間Ti_Lo_mapだけを第1補正操作量K_ion_Loにより補正すると、その補正後の噴射時間に応じて規定される量の低オクタン価燃料と、基本噴射時間Ti_Hi_mapに応じて規定される供給量の高オクタン価燃料とを燃焼させたときの総発熱量は、基本噴射時間Ti_Lo_map,Ti_Hi_mapに応じてそれぞれ規定される供給量の低オクタン価燃料および高オクタン価燃料を燃焼させたときの総発熱量(本来予定されていた総発熱量)から変化してしまう。そこで、本実施形態では、イオン電流F/B処理部54は、第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loによりそれぞれ基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapを補正した場合と補正しない場合とで、気筒3xにおける低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の燃焼時の総発熱量を変化させないように、高オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Hiを決定する。
具体的には、イオン電流F/B処理部55は、上記のように第1補正係数K_ion_L0(=K_ion)を決定した後、このK_ion_Loと「1」との差(K_ion_Lo−1)を演算部62で求める。そして、イオン電流F/B処理部55は、基本噴射時間Ti_Lo_mapに対応して算出される低オクタン価燃料の発熱量Calo_Lo(基本噴射時間Ti_Lo_mapに応じて気筒3xに供給される低オクタン価燃料の燃焼時の発熱量)と基本噴射時間Ti_Hi_mapに対応して算出される高オクタン価燃料の発熱量Calo_Hi(基本噴射時間Ti_Hi_mapに応じて気筒3xに供給される高オクタン価燃料の燃焼時の発熱量)との比(Calo_Lo/Calo_Hi)を演算部63で上記差(K_ion_Lo−1)に乗じる。この場合、Calo_Loは、低オクタン価燃料の特性値(低位発熱量および密度)と、基本噴射時間Ti_Lo_mapにより規定される低オクタン価燃料の噴射量(気筒3xへの供給量)とから算出されるものであり、Ti_Lo_mapに比例する値である。同様に、Calo_Hiは、高オクタン価燃料の特性値(低位発熱量および密度)と、基本噴射時間Ti_Hi_mapにより規定される高オクタン価燃料の噴射量(気筒3xへの供給量)とから算出されるものであり、Ti_Hi_mapに比例する値である。
次いで、イオン電流F/B処理部55は、上記演算部63の演算結果を「1」から減じてなる値を演算部64で求め、その求めた値を高オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Hiとして決定する。
補足すると、演算部62〜64の演算処理の全体は、K_ion_Hi=1−(K_ion_Lo−1)・Calo_Lo/Calo_Hiという演算を行なうものである。
このようにして決定されるK_ion_Hiは、K_ion_Lo>1である場合に、「1」よりも小さい値に決定され、K_ion_Lo<1である場合に、「1」よりも大きい値に決定されることとなる。従って、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも遅い場合に、着火性がより低い高オクタン価燃料の気筒3xへの供給量を基本噴射時間Ti_Hi_mapに応じて規定される高オクタン価燃料の供給量よりも減少させるように第1補正操作量K_ion_Hiが決定されることとなる。逆に、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも早い場合に、着火性がより低い高オクタン価燃料の気筒3xへの供給量を基本噴射時間Ti_Hi_mapに応じて規定される高オクタン価燃料の供給量よりも減少させるように第1補正操作量K_ion_Hiが決定されることとなる。
以上説明したイオン電流F/B処理部55の処理によって、前記偏差ΔCA_ionmaxを0に近づけるためのフィードバック操作量としての第1補正操作量K_ion_Lo,K_ion_Hiが決定される。この場合、これらの第1補正操作量K_ion_Lo,K_ion_Hiは、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも遅い場合(CA_ionmax_objに対してCA_ionmaxの検出値が遅角している場合)に、第1補正操作量K_ion_Lo,K_ion_Hiによる補正後の高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合を、基本噴射時間Ti_Lo_map,Ti_Hi_mapに応じた高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合よりも増加させるように決定されることとなる。また、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも早い場合(CA_ionmax_objに対してCA_ionmaxの検出値が進角している場合)に、第1補正操作量K_ion_Lo,K_ion_Hiによる補正後の低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合を、基本噴射時間Ti_Lo_map,Ti_Hi_mapに応じた低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合よりも増加させるように決定されることとなる。
また、基本噴射時間Ti_Lo_mapを第1補正操作量K_ion_Loにより補正してなる噴射時間に応じた供給量の低オクタン価燃料の発熱量(=Calo_Lo×K_ion_Lo)と、基本噴射時間Ti_Hi_mapを第1補正操作量K_ion_Hiにより補正してなる噴射時間に応じた供給量の高オクタン価燃料の発熱量(=Calo_Hi×K_ion_Hi)との総和(総発熱量)が、Calo_LoとCalo_Hiとの総和(総発熱量)に維持されるように第1補正操作量K_ion_Lo,K_ion_Hiが決定されることとなる。
なお、本実施形態では、フィードバック要求操作量K_ionをそのまま低オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Loとして決定したが、K_ionをそのまま高オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Hiとして決定するようにしてもよい。この場合には、CA_ionmax_objに対してCA_ionmaxの検出値が遅角しているとき(実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも遅いとき)に、第1補正操作量K_ion_Hiが「1」よりも小さくなり、且つ、CA_ionmax_objに対してCA_ionmaxの検出値が進角しているとき(実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期よりも早いとき)に、第1補正操作量K_ion_Hiが「1」よりも大きくなるように、F/B演算部61のゲインを設定する。さらに、低オクタン価燃料に関する第1補正操作量K_ion_Loは、K_ion_Lo=1−(K_ion_Hi−1)・Calo_Hi/Calo_Loという演算により決定すればよい。
また、K_ionが十分に「1」に近い場合には、K_ionをそのまま第1補正操作量K_ion_Lo,K_ion_Hiのいずれかの値として決定し、他方の値を「1」にするようにしてもよい。換言すれば、フィードバック要求操作量K_ionに応じて低オクタン価燃料および高オクタン価燃料のいずれか一方の燃料についてのみ、基本噴射時間を補正するようにしてもよい。
前記加減速補正処理部56で決定する第2補正操作量K_acc_Hi,K_axcc_Loは、HCCIエンジン1を搭載した車両の加速時や減速時のように、HCCIエンジン1の運転状態(具体的には回転速度NEや目標トルクTd)が変化する過渡運転状態における気筒3xでの混合気の燃焼時期を調整するために、気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量と高オクタン価燃料の供給量の割合を調整する操作量である。ここで、前記基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapは、HCCIエンジン1の回転数NEおよび目標トルクTdが一定に維持される定常運転状態においてHCCIエンジン1の最適な運転を行なわれるように決定されるものである。また、前記処理部53,54の処理を含めて燃料噴射時間制御処理部50の処理が実行される時刻と、該燃料噴射時間制御処理部50の処理によって最終的に決定される燃料噴射時間Ti_Hi,Ti_Loに応じて気筒3xへの実際の燃料噴射が行なわれる時刻との間には1燃焼サイクル分のずれを生じる。このため、HCCIエンジン1の過渡運転状態では、気筒3xへの実際の燃料噴射が行なわれる時刻におけるHCCIエンジン1の回転数NEまたは目標トルクTdは、その実際の燃料噴射に係わる基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapを決定した時の回転数NEまたは目標トルクTdと完全には一致しないものとなる。ひいては、気筒3xに実際に供給される各種類の燃料の量が、その燃料の燃焼時におけるHCCIエンジン1の運転状態に整合せず、実際の燃焼時期が適切な時期に対してずれを生じることとなる。その結果、HCCIエンジン1を搭載した車両の加速時や減速時に該エンジン1の出力トルクが大きく変動したり、ノッキングや過大な燃焼音が発生する恐れがある。
そこで、本実施形態では、前記第2補正操作量K_acc_Hi,K_acc_Loによって、気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量と高オクタン価燃料の供給量の割合を調整し、HCCIエンジン1の過渡運転状態における気筒3xでの燃焼時期のずれを補償する。この場合、本実施形態では、加減速補正処理部56は、イオン電流F/B処理部55の処理の場合と同様に、第2補正操作量K_acc_Hi,K_axcc_Loによる基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapの補正によって、高オクタン価燃料および低オクタン価燃料の総発熱量が変化しないように、第2補正操作量K_acc_Hi,K_acc_Loを決定する。
このような処理を行なう加減速補正処理部56は、本発明における予測変化応動補正手段としての機能を有するものである。
図10は、加減速補正処理部56の具体的な処理機能を示す機能ブロック図である。加減速補正処理部56には、HCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)と、該回転数NEの過去値NE_pと、目標トルクTdの最新値と、該目標トルクTdの過去値Td_pとが入力される。この場合、回転数NEの過去値NE_pは、例えば前回の燃焼サイクルの所定時点における値、あるいは、前回の燃焼サイクルにおける平均値などである。同様に、目標トルクTdの過去値Td_pは、例えば前回の燃焼サイクルの所定時点における値、あるいは、前回の燃焼サイクルにおける平均値などである。これらの過去値Ne_p,Td_pは、図示しないメモリに記憶保持され、気筒3xの燃焼サイクル毎に更新される。
そして、加減速補正処理部56は、HCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)と、過去値NE_pとの差(NE−NE_p)を、気筒3xの現在の燃焼サイクルにおける混合気の燃焼時から次回の燃焼サイクルにおける混合気の燃焼時にかけて期間での回転数NEの予測変化量dNE(以下、回転数予測変化量dNEという)として演算部66で算出する。また、加減速補正処理部56は、目標トルクTdの最新値と、過去値Td_pとの差(Td−Td_p)を気筒3xの現在の燃焼サイクルにおける混合気の燃焼時から次回の燃焼サイクルにおける混合気の燃焼時にかけて期間での目標トルクTdの予測変化量dTd(以下、トルク予測変化量dTdという)として演算部67で算出する。
上記のように求められる回転数予測変化量dNeおよびトルク予測変化量dTdは、HCCIエンジン1の将来の運転状態(次回の燃焼サイクルにおける混合気の燃焼時における運転状態)の現在の運転状態からの変化を表す指標としての意味を持つ。従って、演算部66,67は、本発明における運転状態変化予測手段としての機能を有するものである。
なお、回転数予測変化量dNeは、回転数NEの過去の時系列から補間演算などによって求めるようにしてもよい。同様にトルク予測変化量dTdは、目標トルクTdの過去の時系列から補間演算などによって求めるようにしてもよい。
次いで、加減速補正処理部56は、上記の如く求めた回転数予測変化量dNeおよびトルク予測変化量dTdから、加減速補正操作量決定部68にて、第2補正操作量K_acc_Hi,K_acc_Loのうちのいずれか一方、例えば低オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Loを決定する。この場合、加減速補正操作量決定部68は、入力されたdNe,dTdから、例えば図11に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、K_acc_Loを決定する。このマップは、実験的に決定されたものである。この場合、このマップでは、低オクタン価燃料に関する基本噴射時間Ti_Lo_mapをK_acc_Loで補正してなる噴射時間が、HCCIエンジン1の回転数および目標トルクがそれぞれNE+dNE,Td+dTdであるときに前記図7のマップにより求められる基本噴射時間の値に近い値になるように、dNe,dTdに応じてK_acc_Loの値が設定されている。また、dNE=dTd=0であるときには、K_acc_Loの値は、「1」に設定される。また、dNE>0且つdTd>0であるときには、K_acc_Loの値は、「1」よりも大きな値に設定される。また、dNE<0且つdTd≦0であるときには、K_acc_Loの値は、「1」よりも小さな値に設定される。
なお、図11のマップは、一例であり、このマップは、低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の種類、HCCIエンジン1の仕様などに依存して一般には、異なるものとなる。
加減速補正処理部56は、上記のように低オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Loを決定した後、さらに、気筒3xに供給しようとしている高オクタン価燃料および低オクタン価燃料の総発熱量が変化しないように高オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Hiを求める処理を実行する。この処理は、前記イオン電流F/B処理部55における処理と同様である。具体的には、加減速補正処理部56は、上記の如く決定した低オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Loと「1」との差(K_acc_Lo−1)を演算部69で求める。そして、加減速補正処理部56は、基本噴射時間Ti_Lo_mapに対応して算出される低オクタン価燃料の発熱量Calo_Loと基本噴射時間Ti_Hi_mapに対応して算出される高オクタン価燃料の発熱量Calo_Hiとの比(Calo_Lo/Calo_Hi)を演算部70で上記差(K_acc_Lo−1)に乗じる。次いで、加減速補正処理部56は、上記演算部70の演算結果を「1」から減じてなる値を演算部71で求め、その求めた値を高オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Hiとして決定する。従って、加減速補正処理部55は、K_acc_Hi=1−(K_acc_Lo−1)・Calo_Lo/Calo_Hiという演算によって、K_acc_Hiを決定する。このようにして決定されるK_acc_Hiは、K_acc_Lo>1である場合に、「1」よりも小さい値に決定され、K_acc_Lo<1である場合に、「1」よりも大きい値に決定されることとなる。
以上説明した加減速補正処理部56の処理によって、HCCIエンジン1の過渡運転状態における回転数NEまたは目標トルクTdの変化が気筒3xにおける混合気の燃焼時期に及ぼす影響を補償するように、第2補正操作量K_acc_Lo,K_acc_Hiが決定される。この場合、基本噴射時間Ti_Lo_mapを第2補正操作量K_acc_Loにより補正してなる噴射時間に応じた低オクタン価燃料の発熱量(=Calo_Lo×K_acc_Lo)と、基本噴射時間Ti_Hi_mapを第2補正操作量K_acc_Hiにより補正してなる噴射時間に応じた高オクタン価燃料の発熱量(=Calo_Hi×K_acc_Hi)との総和が、Calo_LoとCalo_Hiとの総和に維持されるように決定されることとなる。そして、これらの第2補正操作量K_acc_Lo,K_acc_Hiにより基本噴射時間Ti_Lo_map,Ti_Hi_mapを補正することで、上記の補償がなされるように、気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量と高オクタン価燃料の供給量との割合が調整されることとなる。
この場合、これらの第2補正操作量K_acc_Lo,K_acc_Hiは、dNE>0且つdTd>0となる状況、すなわち、HCCIエンジン1の回転数NEおよび目標トルクTdが増加していく加速運転状態では、第2補正操作量K_acc_Lo,K_acc_Hiによる補正後の高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合を、基本噴射時間Ti_Lo_map,Ti_Hi_mapに応じた高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合よりも増加させるように決定されることとなる。また、dNE<0且つdTd≦0となる状況、すなわち、HCCIエンジン1の目標トルクTdが減少したり0に維持され、回転数NEが減少していく減速運転状態では、第2補正操作量K_acc_Lo,K_acc_Hiによる補正後の低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合を、基本噴射時間Ti_Lo_map,Ti_Hi_mapに応じた低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合よりも増加させるように決定されることとなる。
補足すると、本実施形態では、第2補正操作量K_acc_Loと、第2補正操作量K_acc_Hiとがそれぞれ本発明における第1補正操作量、第2補正操作量に相当するものである。この場合、前記加減速補正操作量決定部68により本発明における第1補正操作量決定手段が構成され、前記演算部69〜71により本発明における第2補正操作量決定手段が構成されることとなる。
なお、本実施形態では、回転数予測変化量dNEおよびトルク予測変化量dTdから低オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Loを決定したが、高オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_HiをdNE,dTdから決定するようにしてもよい。この場合には、低オクタン価燃料に関する第2補正操作量K_acc_Loは、K_acc_Lo=1−(K_acc_Hi−1)・Calo_Hi/Calo_Loという演算により決定すればよい。また、dNE,dTdから決定した第2補正操作量K_acc_LoまたはK_acc_Hiが十分に「1」に近い場合には、他方の第2補正操作量K_acc_HiまたはK_acc_Loを「1」にするようにしてもよい。換言すれば、HCCIエンジン1の過渡運転状態における回転数NEおよび目標トルクTdの変化の影響を補償するための基本噴射時間の補正は、低オクタン価燃料および高オクタン価燃料のいずれか一方の燃料についてのみ行なうようにしてもよい。
前記FC補正処理部57で決定する第3補正操作量K_fc_Hi,K_fc_Loは、HCCIエンジン1の気筒3xのフューエルカットを行なった後の燃焼時期を調整するための操作量である。
本実施形態では、HCCIエンジン1の燃料消費量を低減するために、該HCCIエンジン1の運転モードとして、該HCCIエンジン1の目標トルクTdが0となる状況(該エンジン1を搭載した車両の減速時)において、所定の条件下で各気筒3に対する低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の燃料供給を遮断するフューエルカットモードを有する。なお、各気筒3に低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の燃料を供給して、混合気を燃焼させる運転モードを以下、通常モードという。このフューエルカットモードでは、制御装置2は、各気筒3の燃料噴射装置17,18の噴射弁を強制的に閉弁状態に維持させる。この場合、フューエルカットモードでの運転中は、各気筒3での混合気の燃焼が行われないため、該フューエルカットモードから通常モードへの復帰時には、各気筒3の内部や筒壁の温度が低下している(後述する図15の上段のグラフを参照)。このため、フューエルカットモードからの復帰直後は、各気筒3における混合気の燃焼時期が目標とする燃焼時期に対して遅れやすく、失火が生じる恐れもある。
そこで、本実施形態では、フューエルカットモードから通常モードへの復帰直後の所定期間において、前記第3補正操作量K_fc_Hi,K_fc_Loによって、気筒3xへの低オクタン価燃料の供給量と高オクタン価燃料の供給量の割合を調整し、フューエルカットモードからの復帰直後における混合気の燃焼が円滑に行なわれるようにして、該燃焼の安定性を確保する。
図12は、FC補正処理部57の具体的な処理機能を示す機能ブロック図である。FC補正処理部56には、各回のフューエルカットモードでの気筒3xの燃焼サイクル数fc_cycが該フューエルカットモードでの運転時間を示すものとして入力される。該燃焼サイクル数fc_cycは、フューエルカットモードでの運転中に、制御装置2により各気筒3毎にカウントされる。なお、燃焼サイクル数fc_cycの代わりに、フューエルカットモードでの運転時間(計時値)を用いてもよい。
そして、FC補正処理部57は、入力された燃焼サイクル数fc_cycから、低オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Loの初期調整量K_fc_ret_Loを低オクタン価側初期調整量決定部73にて決定すると共に、高オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Hiの初期調整量K_fc_ret_Hiを高オクタン価側初期調整量決定部74にて決定する。
ここで、本実施形態では、低オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Loは、ある調整量ΔKfc_Lo(>0)を「1」に加えることにより決定される。同様に、高オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Hiは、ある調整量ΔKfc_Hi(>0)を「1」から減じることにより決定される。上記初期調整量K_fc_ret_Lo,K_fc_ret_Hiは、それぞれ、フューエルカットモードからの復帰時における(復帰直後の初回の燃焼サイクルにおける)調整量ΔKfc_Lo、ΔKfc_Hiの値を意味する。
これらの初期調整量K_fc_ret_Lo,K_fc_ret_Hiは、本実施形態では、それぞれ、燃焼サイクル数fc_cycから、図13および図14に示す如くあらかじめ設定されたテーブルに基づいて決定される。この場合、これらのテーブルにおいては、初期値K_fc_ret_Lo,K_fc_ret_Hiは、いずれも「1」よりも小さい正の値(または0)に設定される。また、初期調整量K_fc_ret_Lo,K_fc_ret_Hiは、基本的には、燃焼サイクル数fc_cycが大きいほど(フューエルカットモードでの運転時間が長いほど)、値が大きくなるように設定される。
次いで、FC補正処理部57は、上記の如く決定された初期調整量K_fc_ret_Loを基に、低オクタン価燃料に関する前記調整量ΔKfc_Loを低オクタン価側調整量決定部75にて決定すると共に、初期調整量K_fc_ret_Hiを基に、高オクタン価燃料に関する前記調整量ΔKfc_Hiを高オクタン価側調整量決定部76にて決定する。この場合、各調整量ΔKfc_Lo,ΔKfc_Hiは、フューエルカットモードからの復帰後、所定の復帰時間が経過するまで(復帰後、所定数の燃焼サイクル分の復帰時間が経過するまで)の所定期間において、初期調整量K_fc_ret_Lo,K_fc_ret_Hiから0まで所定のパターンで徐々に減少していく(漸減していく)ように、気筒3xの各燃焼サイクル毎に決定される。そのパターンは例えば指数関数状のパターンである。
なお、上記復帰時間は、時間内で、気筒3x内の温度や筒壁の温度が、混合気の燃焼に伴う定常的な温度まで上昇するのに要する時間である。該復帰時間は、一定値でもよいが、フューエルカットモードでの運転時間や、その運転時間を表す前記燃焼サイクル数fc_cycに応じて設定してもよい。また、調整量ΔKfc_Lo,ΔKfc_Hiは、0まで減少した後は、次回のフューエルカットモードから通常モードへの復帰時まで0に保持される。
次いで、FC補正処理部57は、上記の如く決定した、低オクタン価燃料に関する調整量ΔKfc_Loを演算部77にて「1」に加算することで低オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Loを決定すると共に、高オクタン価燃料に関する調整量ΔKfc_Hiを演算部78にて「1」から減じることで高オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Hiを決定する。
図15の下段のグラフは、以上説明したFC補正処理部56の処理によって決定される第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiの値の変化の例を示すグラフである。実線のグラフがK_fc_Loのグラフであり、破線のグラフがK_fc_Hiのグラフである。なお、図15の上段のグラフは、気筒3x内の温度(筒内温度)の変化の例を示している。
図示の如く、HCCIエンジン1の運転モードがフューエルカットモードから通常モードに復帰した直後の所定期間においては、低オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Loが「1」よりも大きい値に決定されると同時に、高オクタン価燃料に関する第3補正操作量K_fc_Hiが「1」よりも小さい値に決定される。すなわち、第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiによる補正後の高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合を、K_fc_Lo=K_fc_Hi=1とした場合(第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiによる補正を省略した場合)における高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合よりも増加させるように第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiが決定される。そして、該第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiは、前記復帰時間の時間内で徐々に「1」に近づけられる。この場合、気筒3x内の温度が、ほぼ定常的な温度まで上昇した後には、第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiは、「1」に保持されることとなる。なお、図15の例では、フューエルカットモードでの第3補正操作量K_fc_Lo,K_fc_Hiの値を0にしているが、該フューエルカットモードでは、強制的に気筒3xへの燃料供給を遮断するので、それらの値を0にする必要はない。
図5に戻って、前記付加的補正処理部58で決定する第4補正操作量Kx_Hi,Kx_Loは、図示しないセンサで検出されたHCCIエンジン1の機関温度(冷却水温または油温)、吸気温度、大気圧などの運転環境条件に応じて基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapを補正するものである。すなわち、本実施形態では、基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapは、前記した如く、HCCIエンジン1の機関温度、吸気温、大気圧などの運転環境条件がある既定の標準条件である場合を前提としている。そして、HCCIエンジン1の最適な運転を行なうための燃料噴射時間は、これらの運転環境条件に応じて若干変化する。
そこで、本実施形態では、第4補正操作量Kx_Hi,Kx_Loによって、基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapを補正する。この場合、付加的補正処理部58には、機関温度(冷却水温または油温)、吸気温度、大気圧などの検出値が図示しないセンサから入力される。そして、付加的補正処理部58は、それらの入力値からあらかじめ設定されたマップあるいはテーブルあるいは演算式により第4補正操作量Kx_Hi,Kx_Loを決定する。なお、第4補正操作量Kx_Hi,Kx_Loは、運転環境条件が同じであっても、一般には互いに相違する。
なお、前記処理部53,54において、例えば多次元マップを使用し、HCCIエンジン1の回転数NEおよび目標トルクTdだけでなく、機関温度、吸気温度、大気圧の検出値をも使用して、基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapを決定するようにしてもよい。この場合には、付加的補正処理部58は不要である。
以上が燃料噴射時間制御処理部50の制御処理の詳細である。
次に、前記燃料噴射時期制御処理部51の制御処理を図5を参照して説明する。その制御処理は、気筒3xの燃焼サイクルに同期して(クランク軸8の2回転毎に)次のように行なわれる。燃料噴射時期制御処理部51は、高オクタン価燃料用の燃料噴射装置18に関する燃料噴射時期CA_inj_Hiを決定する処理部80と、低オクタン価燃料用の燃料噴射装置17に関する燃料噴射時期CA_inj_Loを決定する処理部81とから構成される。
この場合、処理部80で決定するCA_inj_Hiはフィードフォワード操作量であり、該処理部80には、HCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)と目標トルクTd(最新値)とが入力される。そして、処理部80は、入力されたNE,Tdから、図16に示す如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、CA_inj_Hiを決定する。
また、処理部81で決定するCA_inj_Loもフィードフォワード操作量であり、該処理部81には、HCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)が入力される。そして処理部81は、入力されたNEから、図17に示す如くあらかじめ設定されたテーブルに基づいて、CA_inj_Loを決定する。この場合、該テーブルでは、CA_inj_Loは、目標トルクTd(HCCIエンジン1の負荷)に依存しない。これは、本実施形態では、低オクタン価燃料用の燃料噴射装置17が気筒3xの吸気ポート10に燃料を噴射するものであるため、低オクタン価燃料の適切な噴射時期がHCCIエンジン1の目標トルクTdの影響をほとんど受けないためである。
上記図16のマップおよび図17のテーブルは、前記図6のマップなどと同様に、回転数NEと目標トルクTdとを一定に維持した定常運転状態で、HCCIエンジン1の運転状態が最適な運転状態となるように、実験的に設定されたものである。なお、図16のマップ、図17のテーブルは、一例であり、これらのマップやテーブルは、低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の種類、HCCIエンジン1の仕様などに依存して一般には、異なるものとなる。
以上が、前記燃料噴射時期制御処理部51の具体的な制御処理である。
次に、前記スロットル弁制御処理部52の制御処理を図5を参照して説明する。その制御処理は、クランク軸8の所定の回転角度毎に逐次実行される。スロットル弁制御処理部52には、HCCIエンジン1の回転数NEの検出値(最新値)と、目標トルクTd(最新値)と、前記吸気圧センサ20で検出された吸気圧PBA(最新値)とが入力される。
そして、スロットル弁制御処理部52は、まず、入力されたNE,Tdから、処理部83にて、HCCIエンジン1の吸気圧の目標値である目標吸気圧PBA_objを決定する。この場合、処理部83は、入力されたNE,Tdから、図18に例示する如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、PBA_objを決定する。
さらに、スロットル弁制御処理部52は、入力された回転数NEの検出値と、上記の如く決定した目標吸気圧PBA_objとから、処理部84にて、スロットル弁16の開度の基本値である基本開度TH_obj_mapを決定する。この場合、処理部84は、入力されたNE,PBA_objから、図19に例示する如くあらかじめ設定されたマップに基づいて、TH_obj_mapを決定する。このマップでは、回転数NEが高くなるほど、あるいは、目標空気圧PBA_objが大きくなるほど、基本開度TH_obj_mapが大きな値に決定される。
上記処理部83のマップおよび処理部84のマップは、前記図6のマップなどと同様に、回転数NEと目標トルクTdとを一定に維持した定常運転状態で、HCCIエンジン1の運転状態が最適な運転状態となるように、実験的に設定されたものである。なお、図18、図19のマップは一例であり、それらのマップは、低オクタン価燃料および高オクタン価燃料の種類、HCCIエンジン1の仕様などに依存して一般には、異なるものとなる。
また、スロットル弁制御処理部52は、処理部83で決定した目標吸気圧PBA_objと、入力された吸気圧PBAの検出値との偏差ΔPBA(=PBA_obj−PB)を演算部85にて算出する。そして、スロットル弁制御処理部52は、この偏差ΔPBAから、この偏差ΔPBAを0に近づけるためのフィードバック要求操作量dTHをF/B演算部86にて算出する。該フィードバック要求操作量dTHは、偏差ΔPBAを0に近づけるように前記基本開度TH_obj_mapを補正するための補正操作量である。この場合、F/B演算部86は、比例則、PID則などのフィードバック制御則により偏差ΔPBAからフィードバック要求操作量dTHを算出する。
次いで、スロットル弁制御処理部52は、上記の如くF/B演算部86で求めたフィードバック要求操作量dTHを処理部84で決定された基本開度TH_obj_mapに、演算部87で加算することにより、スロットル弁16の目標開度TH_objを決定する。
以上説明したスロットル弁制御処理部52の処理により、スロットル弁16の開度操作に応じた吸気圧の応答遅れを補償し、HCCIエンジン1の実際の吸気圧PBAが該HCCIエンジン1の運転に適した目標吸気圧PBA_objになるように、スロットル弁16の目標開度TH_objが決定されることとなる。
以上が、制御装置2の制御処理の詳細である。
以上説明した本実施形態によれば、前記イオン電流F/B処理部55で決定される第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loにより基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapをそれぞれ補正することにより次のような効果がある。すなわち、前記偏差ΔCA_ionmaxを0に近づけるように、基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapが補正されるので、HCCIエンジン1の定常運転状態はもちろん、回転数NEや目標トルクTdが比較的ゆるやかに変化する過渡状態においても、各気筒3における混合気の実際の燃焼時期を目標とする燃焼時期に精度よく制御することができる。この結果、各気筒3の実際の燃焼時期の目標とする燃焼時期からのずれを抑制し、且つそのずれが各気筒3間でばらつくのを抑制しつつ、HCCIエンジン1の出力トルクが目標トルクTdに対して変動するのを効果的に抑制することができる。さらに、この場合、第1補正操作量K_ion_Hi,K_ion_Loによる補正は、低オクタン価燃料の発熱量と高オクタン価燃料の発熱量との総和(総発熱量)を変化させないように行なわれるので、HCCIエンジン1の出力トルクの目標トルクTdへの追従性をより高めることができる。
このことを図20(a),(b)を参照して説明する。図20(a)は、本実施形態の制御装置2から、前記イオン電流F/B処理部55、加減速補正処理部56、およびFC補正処理部57を除去した場合におけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmax、およびHCCIエンジン1の出力トルクの経時変化をそれぞれ例示するグラフである。また、図20(b)は、本実施形態の制御装置2から加減速補正処理部56、およびFC補正処理部57だけを除去した場合(イオン電流F/B処理部55を備える場合)におけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmax、およびHCCIエンジン1の出力トルクの経時変化をそれぞれ例示するグラフである。
この場合、図20(a)および図20(b)のそれぞれの上段側の実線グラフは、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objの変化を示し、図20(a)および図20(b)のそれぞれの下段側の実線グラフは目標トルクTdの変化を示している。それらのCA_ionmax_objおよびTdは、図20(a)および図20(b)の両者において同じである。この例でのHCCIエンジン1の運転状態は、目標トルクTdを直線的に緩やかに増加させていくような加速運転状態である。
また、図20(a)および図20(b)のそれぞれの上段側の2つの破線グラフは、HCCIエンジン1の4個の気筒3のうちの2つの気筒3(ここでは気筒3a,3bという)についての実際のイオン電流ピーククランク角CA_ionmax(検出値)の変化を示している。そして、図20(a)および図20(b)のそれぞれの下段側の2つの破線グラフは、上記2つの気筒3a,3bでの混合気の燃焼によって発生する実際の出力トルク(検出値)の変化を示している。
図20(a)に示されるように、イオン電流F/B処理部55を備えない場合には、気筒3a,3bとで、イオン電流ピーククランク角CA_ionmaxの検出値のばらつきが比較的大きくなると共に、それらのイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxの検出値が、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに対して比較的大きく変動する傾向がある。そして、これに起因して、各気筒3a,3bでの混合気の燃焼によって発生する出力トルクも目標トルクTdに対して比較的大きな変動を生じるものとなると共に、それらの出力トルクのばらつきも大きくなる。
これに対して、イオン電流F/B処理部55を備える場合には、図20(b)に示されるように、各気筒3a,3bにおけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxの検出値は、いずれも、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに精度よく追従し、それらのCA_ionmaxの検出値のばらつきも小さなものとなる。ひいては、各気筒3a,3bでの混合気の燃焼によって発生する出力トルクも目標トルクTdに精度よく追従し、それらの出力トルクのばらつきも小さなものとなる。
このようにイオン電流F/B処理部55を備えることによって、HCCIエンジン1の各気筒3の燃焼時期の、目標とする燃焼時期に対するばらつきを効果的に抑制し、ひいては、HCCIエンジン1の実際の出力トルクの目標トルクへの追従性を効果的に高めることができる。
また、各気筒3間での燃焼時期のばらつきを抑制できることから、HCCIエンジン1の疲労の進行を抑制できる。さらに、HCCIエンジン1の振動や燃焼音、ノッキングの発生を抑制できる。ひいては、該HCCIエンジン1を搭載する車両の運転者に不快な振動や燃焼音を与えるのを防止できる。
また、前記実施形態によれば、加減速補正処理部56で決定される第2補正操作量K_acc_Hi,K_acc_Loにより基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapをそれぞれ補正することにより次のような効果がある。すなわち、HCCIエンジン1の回転数NEや目標トルクTdが比較的大きな変化率で変化するような過渡状態において、各気筒3における混合気の燃焼時期を、その燃焼時におけるHCCIエンジン1の運転状態に適した燃焼時期に制御できる。その結果、HCCIエンジン1の目標トルクTdおよび回転数NEが増加していく加速運転時においては、HCCIエンジン1の出力トルクが目標トルクに対して変動するのを抑制し、該出力トルクの目標トルクへの追従性を高めることができる。また、HCCIエンジン1の回転数NEが減少していく減速運転時においては、各気筒3内の圧力(筒内圧力)の急激な変化に伴う燃焼音の発生やノッキングの発生を防止することができる。
このことを図21(a),(b)並び図22(a),(b)を参照して以下に説明する。まず、図21(a),(b)に関して、図21(a)は、本実施形態の制御装置2から、加減速補正処理部56およびFC補正処理部57を除去した場合におけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmax、HCCIエンジン1の出力トルク、および該エンジン1の回転数NEの経時変化を例示するグラフである。また、図21(b)は、本実施形態の制御装置2から前記FC補正処理部57だけを除去した場合(加減速補正処理部56を備える場合)におけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmax、HCCIエンジン1の出力トルク、および該エンジン1の回転数NEの経時変化を例示するグラフである。なお、いずれの場合でも、イオン電流F/B処理部55は備えられている。
この場合、図21(a)および図21(b)のそれぞれの上段側の実線グラフは、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objの変化を示し、図21(a)および図21(b)のそれぞれの下段側の実線グラフは目標トルクTdの変化を示している。それらのCA_ionmax_objおよびTdは、図21(a)および図21(b)の両者において同じである。この例でのHCCIエンジン1の運転状態は、目標トルクTdを比較的大きな増加率で直線的に増加させていくような加速運転状態である。なお、該加速運転状態では、目標トルクTdの増加に伴いHCCIエンジン1の回転数NEも増加していく。
また、図21(a)および図21(b)のそれぞれの上段側の破線グラフは、HCCIエンジン1の4個の気筒3のうちの1つの気筒3(ここでは気筒3cという)についての実際のイオン電流ピーククランク角CA_ionmax(検出値)の変化を示している。そして、図21(a)および図21(b)のそれぞれの下段側の2つの破線グラフは、上記気筒3cでの混合気の燃焼によって発生する実際の出力トルク(検出値)の変化と、HCCIエンジン1の実際の回転数NE(検出値)の変化とを示している。
図21(a)に示されるように、加減速補正処理部56を備えない場合には、HCCIエンジン1の加速運転時に、気筒3cにおけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxが目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに対して遅角する、換言すれば、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期に対して遅角する傾向となる。また、その遅角量が比較的大きなものとなることがある。これに起因して、気筒3cでの混合気の燃焼によって発生する実際の出力トルクは、目標トルクよりも低くなる傾向となると共に、該出力トルクの変動も大きくなる。さらに、HCCIエンジン1の実際の回転数NEも変動しながら、上昇していく。
これ対して、加減速補正処理部56を備える場合には、図21(b)に示されるように、HCCIエンジン1の加速運転時に、気筒3cにおけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxが目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに良好に追従する。このため、気筒3cでの混合気の燃焼によって発生する実際の出力トルクも、大きな変動を生じることなく、良好に目標トルクTdに追従する。さらに、HCCIエンジン1の実際の回転数NEも、滑らかに(直線的に)上昇していく。
このように、加減速補正処理部56を備えることによって、HCCIエンジン1の加速運転時において、各気筒3の燃焼時期を適切な燃焼時期に安定に制御し、ひいては、HCCIエンジン1の実際の出力トルクの目標トルクへの追従性を効果的に高めることができる。
次に、図22(a),(b)に関して、図22(a)は、本実施形態の制御装置2から、加減速補正処理部56およびFC補正処理部57を除去した場合におけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmax、HCCIエンジン1の回転数NE、およびHCCIエンジン1の1つの気筒3(ここでは、気筒3dという)の内圧の変化率である筒内圧変化率(単位クランク角当たりの変化率)の経時変化をそれぞれ例示するグラフである。また、図21(b)は、本実施形態の制御装置2から前記FC補正処理部57だけを除去した場合(加減速補正処理部56を備える場合)におけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmax、HCCIエンジン1の出力トルク、および上記気筒3の筒内圧変化率の経時変化をそれぞれ例示するグラフである。なお、各気筒3の内圧の変化率に応じて燃焼音が発生するので、筒内圧変化率は、燃焼音の発生度合いを表す指標としての意味を持つ。また、図22(a),(b)のいずれの場合でも、イオン電流F/B処理部55は備えられている。
この場合、図22(a)および図22(b)のそれぞれの上段側の実線グラフは、目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objの変化を示している。そのCA_ionmax_objは、図22(a)および図22(b)の両者において同じである。この例でのHCCIエンジン1の運転状態は、目標トルクTdを低下させて(もしくは低トルク値に維持して)、HCCIエンジン1の回転数NEを減少させていく減速運転状態である。
また、図22(a)および図22(b)のそれぞれの上段側の破線グラフは、HCCIエンジン1の上記気筒3dについての実際のイオン電流ピーククランク角CA_ionmax(検出値)の変化を示している。そして、図22(a)および図22(b)のそれぞれの下段側の2つの破線グラフは、上記気筒3cでの実際の筒内圧変化率(検出値)の変化と、HCCIエンジン1の実際の回転数NE(検出値)の変化とを示している。
図22(a)に示されるように、加減速補正処理部56を備えない場合には、HCCIエンジン1の減速運転時に、気筒3dにおけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxが目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに対して進角する、換言すれば、実際の燃焼時期が目標とする燃焼時期に対して進角する傾向となる。そして、これに起因して、気筒3dの筒内圧変化率、ひいては、燃焼音が比較的大きななものとなる。
これに対して、加減速補正処理部56を備えた場合には、HCCIエンジン1の減速運転時に、気筒3cにおけるイオン電流ピーククランク角CA_ionmaxが目標イオン電流ピーククランク角CA_ionmax_objに良好に追従する。このため、気筒3dの筒内圧変化率が小さなものとなり、ひいては、大きな燃焼音が発生するのが防止される。また、気筒3dの筒内圧変化率が小さいことから、ノッキングの発生も防止される。
このように、加減速補正処理部56を備えることによって、、HCCIエンジン1の減速運転時において、各気筒3の燃焼時期を適切な燃焼時期に安定に制御し、ひいては、燃焼音やノッキングの発生を防止することができる。
また、前記実施形態によれば、FC補正処理部57で決定される第3補正操作量K_fc_Hi,K_fc_Loにより基本噴射時間Ti_Hi_map,Ti_Lo_mapをそれぞれ補正することにより次のような効果がある。すなわち、HCCIエンジン1のフューエルカットモードから通常モードへの復帰直後において、各気筒3での混合気の燃焼を良好に行い、該エンジン1の出力トルクを目標トルクTdに円滑に追従させることができる。また、失火の発生や、それに伴うHC(炭化水素)の排出量の増加を防止できる。
このことを図23(a),(b)を参照して説明する。図23(a)は、本実施形態の制御装置2から、FC補正処理部57を除去した場合におけるHCCIエンジン1の出力トルク、およびHCの排出量の経時変化を例示している。また、図23(a)は、本実施形態の制御装置2をそのまま使用した場合におけるHCCIエンジンの出力トルク、およびHCの排出量の経時変化を例示している。これらの例では、HCCIエンジン1の運転状態は、図中の時刻t0でフューエルカットモードから通常モードに切り替わるような運転状態である。
この場合、図23(a)および図23(b)のそれぞれの上段側の実線グラフはHCCIエンジン1の目標トルクの変化を示し、上段側の破線のグラフは実際の出力トルク(検出値)を示している。また、図23(a)および図23(b)のそれぞれの上段側の実線グラフは、HCCIエンジン1のHCの排出量の変化を示している。
図23(a)に示されるように、FC補正処理部57を備えない場合には、フューエルカットモードから通常モードへの復帰直後に、HCCIエンジン1の実際の出力トルクが、目標トルクTdに対して遅れを生じると共に、変動を生じることがある。これは、フューエルカットモードから通常モードへの復帰直後は、各気筒3の内部や壁面の温度が低くなっていることから、各気筒3における混合気の燃焼時期が目標とする燃焼時期に対して遅れやすく、失火が生じることがあるからである。また、通常モードへの復帰直後は、出力トルクの場合と同じ理由によって、HCの排出量も多くなる傾向がある。
これに対して、FC補正処理部57を備えた場合には、図23(b)に示されるように、通常モードへの復帰直後であっても、実際の出力トルクの目標トルクTdへの追従性が高く、また、変動も生じにくいものとなる。さらに、各気筒3での混合気の燃焼が安定して行われることから、HCの排出量が十分に少ないものとなる。
このように、FC補正処理部57を備えることによって、フューエルカットモードから通常モードへの復帰直後においても、HCCIエンジン1の出力トルクを円滑に目標トルクTdに追従させることができると共に、HCの排出量を少ない排出量に抑制できる。
なお、以上説明した実施形態においては、イオン電流F/B補正処理部55およびFC補正処理部57を備えたが、それらのうちの一方、または両者を省略するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、HCCIエンジン1で使用する燃料の種類数を2種類としたが、オクタン価が相違する3種類以上の燃料を使用するようにしてもよい。
本発明の実施形態における予混合圧縮着火エンジンの制御装置のシスム構成の概略を示す図。 実施形態のエンジンに備えたイオン電流センサの信号生成部の回路構成を示す図。 イオン電流センサで検出されるイオン電流の波形の一例を示すグラフ。 イオン電流に関する特性を示すグラフ。 実施形態の制御装置の制御処理機能を示すブロック図。 図5に示す処理部53で使用するマップを示す図。 図5に示す処理部54で使用するマップを示す図。 図5に示すイオン電流F/B処理部55の処理機能を示す機能ブロック図。 イオン電流F/B処理部55の処理で使用するマップを示す図。 図5に示す加減速補正処理部56の処理機能を示す機能ブロック図。 加減速補正処理部56で使用するマップを示す図。 図5に示すFC補正処理部57の処理機能を示す機能ブロック図。 FC補正処理部57で使用するテーブルを示す図。 FC補正処理部57で使用するテーブルを示す図。 FC補正処理部57の補正処理を説明するためのグラフ。 図5に示す処理部80で使用するマップを示す図。 図5に示す処理部81で使用するマップを示す図。 図5に示す処理部83で使用するマップを示す図。 図5に示す処理部84で使用するマップを示す図。 図20(a),(b)は、イオン電流F/B処理部55の処理による効果を説明するためのグラフ。 図21(a),(b)は、加減速補正処理部56の処理による効果を説明するためのグラフ。 図22(a),(b)は、加減速補正処理部56の処理による効果を説明するためのグラフ。 図23(a),(b)は、FC補正処理部57の処理による効果を説明するためのグラフ。
符号の説明
1…HCCIエンジン(予混合圧縮着火エンジン)、2…制御装置、3…気筒、6…燃焼室、17,18…燃料噴射装置(燃料供給装置)、21…イオン電流センサ、50…燃料噴射時間制御処理部(燃料供給制御手段)、59…目標イオン電流決定部(目標状態量設定手段)、68…加減速補正操作量決定部(第1補正操作量決定手段)、69〜71…演算部(第2補正操作量決定手段)。

Claims (10)

  1. オクタン価が互いに異なる複数種類の燃料のそれぞれを燃焼室に供給可能であり、且つ該複数種類の燃料のそれぞれの供給量を調整可能な燃料供給装置を備え、該燃料供給装置により燃焼室に供給された燃料と該燃焼室に吸入された空気との混合気の圧縮によって該混合気を着火して燃焼させる予混合圧縮着火エンジンの制御装置であって、
    前記予混合圧縮着火エンジンの運転中の所定のタイミングで、前記燃焼室への前記複数種類の燃料のそれぞれの供給量を規定する操作量の、該複数種類の燃料についての組である制御用操作量群を少なくとも該予混合圧縮着火エンジンの現在の運転状態に応じて決定し、その決定した制御用操作量群に応じて前記燃料供給装置を制御する燃料供給制御手段を備えると共に、該燃料供給制御手段は、少なくとも予混合圧縮着火エンジンの現在の運転状態と過去の運転状態とに基づいて、該予混合圧縮着火エンジンの将来の運転状態の現在の運転状態からの変化を予測する運転状態変化予測手段を備え、その予測した運転状態の変化に応じて前記制御用操作量群のうちの少なくとも1つの操作量を調整して該制御用操作量群を決定する手段であることを特徴とする予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  2. 前記燃料供給制御手段は、前記予混合圧縮着火エンジンの定常運転状態での各種類の燃料の供給量を規定する基本操作量の、前記複数種類の燃料についての組である基本操作量群を該予混合圧縮着火エンジンの現在の運転状態に応じて決定する基本操作量群決定手段と、前記基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を前記予測された運転状態の変化に応じて補正する予測変化応動補正手段とを備え、前記基本操作量群を少なくとも前記予測変化応動補正手段により補正することによって前記制御用操作量群を決定することを特徴とする請求項1記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  3. 前記予測変化応動補正手段は、該予測変化応動補正手段により前記基本操作量群を補正したときに得られる操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量を、前記基本操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記複数種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量に維持しつつ、前記操作量群により規定される前記複数種類の燃料の供給量の相互の割合を前記基本操作量群により規定される前記複数種類の燃料の供給量の相互の割合から前記予測された運転状態の変化に応じて変化させるように、該予測された運転状態の変化に応じて前記基本操作量群のうちの2つ以上の基本操作量の補正を行なうことを特徴とする請求項2記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  4. 前記複数種類の燃料は低オクタン価燃料と高オクタン価燃料との2種類の燃料であり、前記予測変化応動補正手段は、少なくとも前記予測された運転状態の変化が、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが増加していく加速変化である場合には、前記高オクタン価燃料の供給量に対する低オクタン価燃料の供給量の割合を前記基本操作量群により規定される割合よりも増加させるように前記基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を補正することを特徴とする請求項2記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  5. 前記複数種類の燃料は低オクタン価燃料と高オクタン価燃料との2種類の燃料であり、前記予測変化応動補正手段は、少なくとも前記予測された運転状態の変化が、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数および出力トルクが低下していく減速変化である場合には、前記低オクタン価燃料の供給量に対する高オクタン価燃料の供給量の割合を前記基本操作量群により規定される割合よりも増加させるように前記基本操作量群のうちの少なくとも1つの基本操作量を補正することを特徴とする請求項2または4記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  6. 前記複数種類の燃料は低オクタン価燃料と高オクタン価燃料との2種類の燃料であり、
    前記予測変化応動補正手段は、前記低オクタン価燃料および高オクタン価燃料のうちのいずれか一方の燃料に関する前記基本操作量を補正するための第1補正操作量を決定する第1補正操作量決定手段と、他方の燃料に関する前記基本操作量を補正するための第2補正操作量を決定する第2補正操作量決定手段とを備え、
    前記第1補正操作量決定手段は、前記予測された運転状態の変化に応じて前記第1補正操作量を決定する手段であり、
    前記第2補正操作量決定手段は、前記基本操作量群を前記第1補正操作量および第2補正操作量により補正したときに得られる操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記2種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量を、前記基本操作量群によりそれぞれの供給量が規定される前記2種類の燃料からなる複合燃料の総発熱量に維持するように、前記第1補正操作量に応じて前記第2補正操作量を決定する手段であることを特徴とする請求項2記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  7. 前記燃焼室における混合気の燃焼時期と一定の相関性を有する所定種類の状態量である燃焼時期対応状態量を検出する燃焼時期対応状態量検出手段と、
    前記燃焼時期対応状態量の目標値を前記予混合圧縮着火エンジンの運転状態に応じて設定する目標状態量設定手段と、
    前記検出された燃焼時期対応状態量と前記設定された目標値との偏差に応じて、該偏差を0に近づけるように前記基本操作量群を補正する偏差応動補正手段とをさらに備え、
    前記燃料供給制御手段は、前記基本操作量群を少なくとも前記予測変化応動補正手段と前記偏差応動補正手段とにより補正することによって前記制御用操作量群を決定することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  8. 前記運転状態変化予測手段が予測する運転状態の変化は、前記予混合圧縮着火エンジンの回転数の変化量と、目標トルクの変化量とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  9. 前記複数種類の燃料は、ガソリンとエタノールとをそれぞれ低オクタン価燃料、高オクタン価燃料とする2種類の燃料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
  10. 前記複数の燃料は、ジエチルエーテルとエタノールとをそれぞれ低オクタン価燃料、高オクタン価燃料とする2種類の燃料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の予混合圧縮着火エンジンの制御装置。
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