JP2008290391A - 金属被覆用意匠性積層シートおよび意匠性積層シート被覆金属板 - Google Patents

金属被覆用意匠性積層シートおよび意匠性積層シート被覆金属板 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂被覆金属板とした場合の二次加工性と表面硬度とがそれぞれ良好であり、かつ、低コストで生産することができる、金属板被覆用意匠性積層シートおよび意匠性積層シート被覆金属板を提供する。
【解決手段】表面側から順にA層、B層の2層を備えた金属板被覆用積層シートにおいて、積層シートの総厚みを65μm以上320μm以下とし、A層を二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなる透明な樹脂層とし、B層をカレンダー製膜法により製膜することが可能であるポリプロピレン系樹脂組成物からなる層であって、B層の全樹脂成分を100質量%として、所定割合のポリプロピレン系樹脂とビニル芳香族化合物および共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体とのブレンド組成物を85質量%以上含有し、顔料成分が添加されることにより着色された、厚みが45μm以上300μm以下である樹脂層とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーテンレール用部材や、家電製品筐体、建築内装材として好適に用いることができる、安価に製造することが可能で、ロールフォーミングや折り曲げ加工などの2次加工性と表面硬度のバランスに優れる意匠性積層シート被覆金属板、および、該金属板を被覆するための金属被覆用意匠性積層シートに関する。
従来、カーテンレール用部材等の原板として用いる意匠性を有する樹脂被覆金属板としては、ロールフォーミング性等の2次加工性、価格等の点から軟質塩化ビニル系樹脂シートをラミネートした金属板が最も一般的に使用されてきた。軟質塩化ビニル系樹脂シートは、カレンダー製膜が可能であることから小ロットで各種色味のシートを効率良く製膜することが可能である。また、このシートで被覆した樹脂被覆金属板は、2次加工性に優れると共に、一般的に背反要素である表面の耐傷入り性も優れるという性質を有するものであった。
しかし、塩化ビニル系樹脂は、燃焼時に塩化水素ガスが発生し、焼却等の廃棄処理をする際に焼却炉を傷め易い等の問題がある。また、一部の安定剤に起因する重金属化合物の問題、一部の可塑剤や安定剤に起因する有害揮発成分の問題や内分泌撹乱作用への嫌疑などもあり、近年、その使用に制限を受けるようになって来た。そのため、樹脂被覆金属板のユーザーからも軟質塩化ビニル系樹脂を使用しないことが求められる場合が増えていた。
このような状況の中、比較的安価であり、燃焼時に発生するガスによる問題が比較的少ないなど、前述の軟質塩化ビニル系樹脂に由来する問題点を解消できる、ポリオレフィン系樹脂シートをラミネートした金属板が種々検討されている。ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物は、軟質塩化ビニル系樹脂シートの製膜に用いられて来たカレンダー製膜設備で、条件を多少変更するだけで製膜することが可能であるため、小ロット対応性に優れている。また、原料単価が軟質塩化ビニル系樹脂の単価に比べても優位であることから、樹脂被覆金属板の軟質塩化ビニル系樹脂代替材料として期待され、各社において金属板被覆用の各種のポリオレフィン系樹脂シートが製膜されるに至った。
しかしながら、現在、工業的に使用されているポリオレフィン系樹脂シート被覆金属板は、ロールフォーミングや、折り曲げ加工等の二次加工を行うと、被覆した樹脂シートに割れやクラックが生じたり、加工部位が白化するという問題があった。これは、寒冷地等の低温条件下での加工で特に顕著となるものであった。
また、このような条件下でも、被覆した樹脂シートに割れやクラック、白化が生じ難いようにポリオレフィン系樹脂を改質することが行われているが、これによって二次加工性に関する問題を解決した場合は、通常シートの柔軟性が過剰となり、表面硬度の低下により樹脂被覆金属板の表面に傷が入り易いと言う問題が発生する。結果として、軟質塩化ビニル系樹脂シートで被覆した金属板に比較して、二次加工性が悪いか、表面の耐傷入り性が悪いか、いずれかの欠点を有するものしか得ることができない状況であった。
特許文献1には、樹脂被覆用途のポリプロピレン系のシートにおいて、特定のエラストマー成分を特定量配合することにより、低温条件下でのロールフォーミング性や折り曲げ加工性等の二次加工性と、白化し難い性能である難白化性、およびシート表面に傷が入り難い性能である耐擦傷性をバランスさせたポリプロピレン系樹脂被覆金属板を得ることが記載されている。
また、特許文献2では、下層にポリエチレン系樹脂等から成る着色シートを用い、その上に透明なポリカーボネート系樹脂から成るシートを積層すると言う構成の工夫により、表面硬度の低さに起因する耐傷入り性の悪さを改善することが提案されている。
これら以外にも、ポリオレフィン系樹脂から成る着色基材シートに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを代表とする延伸ポリエステル系樹脂フィルム、無延伸の非晶性ポリエステル系フィルム、架橋ゴム成分を含むアクリル系樹脂フィルム等を被覆することにより、表面硬度と二次加工性をバランスさせることを主目的とした提案、あるいは、副次的に表面硬度と二次加工性のバランスが図られる提案が数多くなされている。
特許第3138240号公報 特開2003−145702号公報
しかし、特許文献1の配合組成物より成るポリプロピレン系シートを用いた樹脂被覆金属板においても、加工性と表面硬度のバランスは軟質塩化ビニル系樹脂シートをラミネートした樹脂被覆金属板と同等とは言えず、二次加工性を問題ないものとした場合、必ずしも良好な表面硬度を得ることができるというものではなかった。
また、特許文献2では、積層構成とすることによる機能分化により表面硬度はポリカーボネート系樹脂層に分担させるというものであるが、ポリカーボネート系樹脂シートは、ポリオレフィン系樹脂シートに比べると高価であり、コスト上の制約から広汎に使用できるものではなかった。また、延伸ポリエステル系樹脂フィルム、無延伸の非晶性ポリエステル系フィルム、架橋ゴム成分を含むアクリル系樹脂フィルム等を積層した場合も同様に、コスト上の制約があった。
すなわち、本発明の課題は、樹脂被覆金属板とした場合の二次加工性と表面硬度とがそれぞれ良好であり、かつ、低コストで生産することができる、金属板被覆用意匠性積層シートおよび意匠性積層シート被覆金属板を提供することである。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第1の本発明は、表面側から順に以下に示すA層(10)、B層(20)の2層を備えた積層シートであって、該積層シートの総厚みが65μm以上320μm以下の範囲である金属被覆用意匠性積層シート(100)である(符号100は、図示の100a、100b、100cを含む上位概念として用いている。)。
A層(10):二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなる透明な樹脂層。
B層(20):カレンダー製膜法により製膜することが可能であるポリプロピレン系樹脂組成物からなる層であって、B層(20)の全樹脂成分を100質量%として、ポリプロピレン系樹脂とビニル芳香族化合物および共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体とのブレンド組成物を85質量%以上含有し、該ブレンド組成物の組成が、ブレンド組成物全体を100質量%として、65質量%以上90質量%以下のポリプロピレン系樹脂、10質量%以上35質量%以下のビニル芳香族化合物および共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体であり、顔料成分が添加されることにより着色された、厚みが45μm以上300μm以下である樹脂層。
第1の本発明において、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなる透明なA層(10)が積層シートの最表面に位置していることにより、本発明の金属被覆用意匠性積層シート(100)(以下、「本発明の積層シート(100)」と省略する場合がある。)を表面硬度に優れ、耐傷入り性の良好なものとすることができる。
また、本発明の積層シート(100)においては、A層(10)の下に位置する着色顔料が添加されたB層(20)は、カレンダー製膜可能な熱可塑性樹脂組成物により形成されているので、小ロットで、多種の色味の意匠を有するB層(20)を容易に得ることができる。
さらに、所定のブレンド組成物を所定量含有するB層(20)を用いることで、二次加工で割れ、クラックの発生、加工部の白化等を生じ難い意匠性積層シート被覆金属板を得ることが容易となる。
また、上記のA層(10)およびB層(20)からなる積層シートは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とするものであるので、低コストで製造することができる。
第1の本発明において、A層(10)におけるB層(20)と積層する側の表面に加熱接着性を有する易接着層(以下、該層を「ヒートシール層」ということがある。)(30)が付与されていることが好ましい。この場合、A層(10)とB層(20)とを熱融着積層で積層一体化することができ、接着剤の塗布や溶剤の揮散・乾燥等の工程を省略することが可能となる。また、ヒートシール層(30)がある場合は、比較的低温での加熱で積層一体化が可能となるので、積層の際における過度な加熱によりA層(10)の結晶配向を消失させてしまう危険を防止することができる。
第1の本発明において、A層(10)とB層(20)との間に印刷柄(40)を付与することができる。これによって、B層(20)によって得られる着色意匠に併せて、印刷意匠も備えた積層シートとすることができる。
第1の本発明において、A層(10)の外表面にエンボスによる凹凸意匠が付与されていてもよい。これにより、着色による意匠、印刷による意匠、に加えて、エンボス意匠をも有する積層シートとすることができる。
第2の本発明は、第1の本発明の金属被覆用意匠性積層シート(100)、および、積層シート(100)のB層(20)側に接着剤(50)を介してラミネートされた金属板(60)を備えて構成される意匠性積層シート被覆金属板(200)である。第2の本発明の意匠性積層シート被覆金属板(200)は、色味に関して小ロット対応が可能であり、着色による意匠、さらには、要望により印刷意匠および/またはエンボス意匠を備えることが可能である。また、ロールフォーミング性等の二次加工性が良好であると共に、表面の耐傷入り性にも優れている。また、比較的安価であり、効率的に生産することができる。
第3の本発明は、上記の意匠性積層シート被覆金属板(200)を用いたカーテンレールである。第4の本発明は、上記の意匠性積層シート被覆金属板(200)を用いた家電製品筐体である。第5の本発明は、上記の意匠性積層シート被覆金属板(200)を用いた建築内装材である。
第1の本発明において、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなる透明なA層(10)が積層シートの最表面に位置していることにより、本発明の金属被覆用意匠性積層シート(100)を表面硬度に優れ、耐傷入り性の良好なものとすることができる。また、本発明の積層シート(100)においては、A層(10)の下に位置する着色顔料が添加されたB層(20)は、カレンダー製膜可能な熱可塑性樹脂組成物により形成されているので、小ロットで、多種の色味の意匠を有するB層(20)を容易に得ることができる。さらに、所定のブレンド組成物を所定量含有するB層(20)を用いることで、二次加工で割れ、クラックの発生、加工部の白化等を生じ難い意匠性積層シート被覆金属板を得ることが容易となる。また、上記のA層(10)およびB層(20)からなる積層シートは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とするものであるので、低コストで製造することができる。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。なお、本発明の積層シートを構成するB層は、その厚みに関して、一般的に「シート」と呼称される厚み範囲のものと、「フィルム」と呼称される厚み範囲のものを含んでいるが、ここでは一般的には「フィルム」と呼称する範囲に関しても便宜上「シート」という単一呼称を用いた。A層に関しては、一般的に「フィルム」と呼ばれる厚み範囲のものであるため、「フィルム」という単一呼称を用いている。
<金属被覆用意匠性積層シート100>
図1は、本発明の金属被覆用意匠性積層シート100の層構成を示す模式図である。図1(a)では、A層10、B層20を備えた基本的な構成である本発明の積層シート100aを示した。図1(b)では、さらにA層10とB層20との間に加熱接着性を有する易接着剤層(ヒートシール層)30を付与した形態を示した。図1(c)では、図1(b)の構成に加えて、B層(20)の表面に印刷柄40を有する形態を示した。図1(d)では、図1(c)に示した形態の積層シート100cを、接着剤50を介して金属板60にラミネートして形成した本発明の意匠性積層シート被覆金属板200を示した。
<A層10>
A層10は、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムから成る透明な樹脂層である。該二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、例えば、特公昭41−21790号公報、特公昭45−37879号公報、特公昭49−18628号公報等に記されている公知の方法を用いて製造することができる。汎用の縦−横逐次二軸延伸法で製造される二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、一般的には、縦方向に4〜7倍程度、横方向に8〜12倍程度延伸することにより得られ、面積延伸倍率は30〜80倍程度である。また、本発明に用いられる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、包装体用積層シートの剛性向上のために、上記範囲内で延伸された、できるだけ高剛性の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを用いることが好ましい。例えば、本発明に用いられる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、JIS K7127に準拠して測定した引張り破断強度が、MD、TDの各方向に関して100MPa以上であるものが好ましく、120MPa以上であるものがさらに好ましい。
本発明においては、A層10とB層20とを熱融着積層で一体化できることが、生産コストの点から特に好ましいのであるが、その観点からは、上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなるA層10は、B層20と積層する側の表面に加熱接着性を有する易接着層(ヒートシール層)30が付与されたものであることが好ましい。ヒートシール層30があることにより、A層10とB層20との積層一体化を容易に行うことが可能となり、また、このようなヒートシール層30を有する二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、一般的に市販されており、該層を有しないものと比較してもそれほど高価格なものではない。
ヒートシール層30を付与する方法としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのB層20と積層する側の表面に低融点のプロピレン・エチレン共重合体を積層したり( 特公昭49−14343号公報)、特定のプロピレン系ランダム共重合体を積層したり( 特公平8−5174号公報)、特定のプロピレン・1−ブテンランダム共重合体と結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体との組成物を積層したり(特公昭61−42626号公報)等のポリプロピレンに比べ低融点の樹脂を積層させる方法等、多数提案されている公知の方法を適宜使用することができる。
また、A層10にヒートシール層を付与しない場合は、B層20との間に接着剤層を設けることにより、積層一体化を行ってもよい。
A層10の厚みは、20μm以上60μm以下であることが好ましく、30μm以上50μm以下であることがより好ましい。ここで、A層10の厚みが薄すぎると、本発明で所望する意匠性積層シート被覆金属板200の表面硬度の改善効果が十分とならない場合があり、また、積層一体化前のA層10単体での取り扱い(ハンドリング)性に問題が生じ易い。一方、A層10の厚みが厚すぎると、良好な厚み精度のフィルムを得ることが困難となり、また、表面硬度の改善効果は飽和する一方で、被覆金属板の二次加工性が低下し、コストが上昇することとなる。
A層10には、その性質を損なわない範囲において、各種添加剤が適宜な量添加されているものを用いても良い。一般的な添加剤としては、燐系、フェノール系他の各種酸化防止剤、フェノールアクリレート系他のプロセス安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル補足剤、衝撃改良剤、加工助剤、金属不活化剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、難燃剤、艶消し剤、ブルーイング剤等を挙げることができる。これらの添加剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されず、実質的に透明な熱可塑性樹脂製品を得る場合に通常添加される量でよく、ポリオレフィン系樹脂への添加で、製膜時や製品としての使用中に著しい吹き出しを生じない量の添加とすることが望ましい。
<B層20>
B層(20)は、本発明の積層シート100に色味の意匠を付与すると同時に、被覆する金属等の下地の色の違いの影響で、積層シート100の色味や意匠感が変化しないような隠蔽性を有する層である。
B層20は、カレンダー製膜法により製膜することが可能であるポリオレフィン系樹脂組成物からなる層であって、顔料成分が添加されることにより着色された、厚みが45μm以上300μm以下である樹脂層である。
基本的に熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度以上、あるいは融点以上で、弾性率が十分に低下する温度まで加熱することで、オープンロールによる成形は可能となるが、その中でも、ここでいう、カレンダー製膜が可能というのは、軟質PVCシートの製膜に用いられてきたようなカレンダー設備や、それに温度条件や剪断トルク等に関し多少の能力向上を施した程度のカレンダー設備で、容易に製膜が可能であることを意味する。
さらに具体的にいうと、B層20を構成する、カレンダー製膜法により製膜することが可能であるポリオレフィン系樹脂組成物は、ロール加熱温度の上限が200℃程度のカレンダー設備で熔融混練が可能で、かつ、カレンダーロールからの良好な離型性を示し、圧延工程では十分な熔融張力を示し、均一な厚みの薄物シートを得易い樹脂組成物をいう。
色味を付与する層であるB層20が、カレンダー製膜可能であることが好ましい理由は、意匠性積層シート被覆金属板200は小ロットで極めて多種類の色味に対応する必要があるからである。押出し製膜とした場合は、色替えロスが多量に発生し、コスト面や環境問題の点で問題を生じるおそれがある。
ポリオレフィン系樹脂組成物としては、ポリエチレン(PE)系樹脂や、ポリプロピレン(PP)系樹脂等の汎用ポリオレフィン樹脂を主体として、滑剤、熔融張力付与のための添加剤等に工夫することで、あるいは、組成物全体としての結晶性をある程度低下させるような配合成分を添加することで、従来から軟質PVCシートの製膜に用いられて来たカレンダー加工機によるシート製膜が可能であることが知られている。
中でも、ポリオレフィン系樹脂組成物としては、耐熱性の点からポリプロピレン系樹脂を主体とするものを用いることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィンとのブロック共重合体またはランダム共重合体、あるいは、これら重合体の混合物を用いることができ、また、一般に汎用ポリプロピレン樹脂と呼称される範囲の価格帯にあるものを任意に用いることができる。以下、ポリオレフィン系樹脂の一実施形態として、ポリプロピレン系樹脂を用いた場合について、説明する。
B層20の樹脂組成を構成するために、上記ポリプロピレン系樹脂とブレンドして用いるビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体は、樹脂被覆用途のポリプロピレン系シートの加工性を改善するために好ましく用いられ、折り曲げ等の二次加工部分の割れやクラックの発生を防止すると同時に、折り曲げ部分が白化することを防止することができる。
該ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体は、ポリプロピレン系樹脂のマトリクス中に極微細に分散される。これによって、折り曲げ加工等におけるB層20の変形時に、クレーズや球晶を可視光の波長以上のサイズに成長させないため、折り曲げ部分の白化防止に顕著な効果を示すと考えられる。
ビニル芳香族化合物としては、スチレンが代表的なものであるが、α−メチルスチレン等のスチレン同族体も用いることができる。また、共役ジエンとしては、1、3−ブタジエン、イソプレン、1、3−ペンタジエン等が挙げられる。また、第三成分として、ビニル芳香族化合物および共役ジエン以外の成分を少量含んでいても良い。
ただし、共重合体中にこの共役ジエン部分のビニル結合を主とした二重結合が存在している場合、ポリプロピレン系樹脂とのブレンド組成物の熱安定性や耐候性が悪化してしまう。よって、二重結合の80%以上が水素添加されたものを用いることが好ましい。
さらに、これらの共重合体は、単独でも、二種以上を混合して用いても良い。このような共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体や、スチレン−イソプレンブロック共重合体、および、それらの水素添加誘導体等が挙げられる。具体例としては、日本合成ゴム社製の商品名「ダイナロン」、クラレ社製の商品名「ハイブラー」、旭化成工業社製の商品名「タフテック」が市販されており、これらを好ましく用いることができる。
マトリクスを形成するポリプロピレン系樹脂に対する、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体のブレンド比率は、ポリプロピレン系樹脂および共重合体またはその水素添加誘導体の合計量を基準(100質量%)として、ポリプロピレン系樹脂を65質量%以上90質量%以下、共重合体またはその水素添加誘導体を10質量%以上35質量%以下とすることが好ましい。共重合体またはその水素添加誘導体がこれより少ない場合は、折り曲げ加工部の白化防止効果を得ることが難しく、これより多い場合は、白化防止効果が飽和する上、過剰に柔軟な物性を有することとなり、カレンダー製膜性、得られたカレンダーシートの外観物性、シートの取り扱い性等に問題を生じ易く好ましくない。また、いかに表層としてA層10が存在するとは言え、実用上十分な表面硬度を有する意匠性積層シート被覆金属板200を得ることが難しくなる。さらに原料コストが上昇することも問題となる。
B層20を構成する樹脂組成物には、上記したポリプロピレン系樹脂とビニル芳香族化合物および共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体とのブレンド組成物以外のその他の樹脂成分が含まれていても良いが、B層20を構成する全樹脂組成物を基準(100質量%)とした場合に、上記のブレンド組成物が85質量%以上であることが好ましい。
その他の樹脂成分としては、オレフィン系エラストマー等、積層シート被覆金属板200とした場合における二次加工性、耐久性、意匠性等に悪影響を及ぼさないものを適宜用いることができる。
B層20の厚みは、好ましくは45μm以上で300μm以下、より好ましくは65μm以上250μm以下、さらに好ましくは75μm以上200μm以下である。これより厚みが薄いと、B層20に必要な隠蔽性や色意匠を付与することが困難となりやすい。また、逆に厚みが厚すぎるとB層20に求められる機能が飽和すると同時に、意匠性積層シート被覆金属板200とした場合に、厚みが過剰となることから、従来の軟質PVCを被覆した金属板の二次加工に用いていた金型類の使用が困難となるおそれがある。
B層20の隠蔽性は、JIS K5600・4−1(塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第1節)に準拠して測定した隠蔽率が0.98以上であることが好ましい。隠蔽率がこれより低い場合は、異なった種類の金属板60に同一の積層シート100を被覆した場合、金属板60表面の色味の違いにより、意匠性積層シート被覆金属板200の意匠感が異なってくるおそれがある。
B層20に着色意匠と隠蔽性を付与する方法としては、通常の着色顔料の添加による方法を採用できる。一例としては、淡色の場合は、白系の顔料の中では比較的隠蔽性の高い酸化チタン顔料をベースとして、色味の意匠を得るための有彩色の有機・無機の顔料を併用する等の方法を挙げることができる。また、有機染料を用いてもよいが、これのみでは隠蔽性が得られないため、やはり隠蔽性の高い顔料との併用で用いることになる。
着色含量の添加量は、上記目的に一般的に添加される量で良く、例えば、B層20の樹脂成分の量を100質量部として、0.2質量部以上60質量部以下である。一般的に濃色の場合のほうが必要な隠蔽性の確保は容易である。また、B層20の厚みが薄くなるほど、隠蔽性確保のために必要な顔料添加量は多くなる。
着色顔料は、ポリオレフィン系樹脂の着色に用いられる一般的なものでよく、ポリオレフィン系樹脂中に顔料粒子を予備分散させた加工顔料や、マスターバッチ類が各種市販されており、これらを好ましく用いることができる。
B層20には、その性質を損なわない範囲において、A層10に用いることができる各種添加剤を適宜な量添加しても良い。B層20をカレンダー製膜法で得る場合は、カレンダー製膜性を良好なものとする目的で、各種滑剤を添加しても良い。
滑剤としては、従来より用いられているもので良く、ステアリン酸、モンダン酸等の脂肪酸系滑剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、ポリオレフィン系ワックス、酸変性ポリオレフィン系ワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系滑剤、アクリル系滑剤等各種のものを挙げることができる。滑剤の添加量は、B層20を形成する全樹脂成分を基準(100質量部)として、0.2質量部以上3質量部以下程度の一般的な量でよい。また、従来から行われているように、カレンダー装置での製膜時の樹脂温度や、B層20の設定厚み等により適宜添加量を調整することができる。
さらに、B層20には、カレンダー製膜時の熔融張力を向上させるための添加剤として、線状超高分子量アクリル系樹脂(一例として、三菱レイヨン社製の「メタブレンP−531」等がある。)や、フィブリル状に展開する易分散処理を施したポリテトラフルオロエチレン等の加工助剤(一例として、三菱レイヨン社製の「メタブレンA−3000」等がある。)、ゲル化促進剤、バンク形状改善またはフローマーク改善の目的で添加される添加剤等を添加しても良い。
B層20は前述の通り、各種色味の切り替えが容易であるカレンダー製膜法により製膜することが特に好ましいが、Tダイ製膜法、インフレーション法等の押出製膜法により製膜しても良い。単一の色味を大量に製膜する必要が生じた場合は、押出製膜法による方がトータルでの製膜コストが安価になる場合もあり、色味の切り替え頻度やロットの大きさ等により適宜製膜法を選択すれば良い。
(印刷柄40)
本発明の積層シート100においては、A層10とB層20との間に印刷柄40が付与されている構成とすることもできる。印刷柄40は、グラビア印刷、オフセット印刷、平版スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、インクジェットプリンターによる印刷、その他の公知の印刷方法で施される。印刷柄40の絵柄は石目調、タイル調、あるいは幾何学模様、木目調、抽象模様等任意である。部分印刷でも全面ベタ印刷でも良く、部分印刷層とベタ印刷層の両方が施されていても良い。
印刷柄40は、A層10としてヒートシール層30を有する構成のものを用いる場合は、A層10のヒートシール層30側と積層することになるB層20の表面に印刷を施すことにより形成するのが好ましい。また、A層10とB層20とを任意の接着手段により積層一体化する場合は、A層10におけるB層20と積層する側の表面に印刷を施すことにより形成しても良い。
ポリオレフィン系樹脂に印刷を施すに際しては、印刷インクの密着性を改善するために、ビヒクルを最適化することや、プライマー層を付与することなどが一般的に行われており、これら公知の手法を採用して密着性の良好な印刷柄40を付与することができる。また、B層20の表面にプライマー層を付与し、その上に印刷柄40を付与する印刷工程で、A層10との密着性を良好なものとするためのプライマー層を印刷柄40の上に設けても良い。
(積層シート100の厚み)
積層シート100全体の厚みは、下限が好ましくは65μm以上、より好ましくは120μm以上であり、上限が好ましくは320μm以下、より好ましくは220μm以下である。積層シート100の厚みが薄すぎる場合は、各層に必要な機能を十分に付与することが難しく、色味の意匠の発現効果や下地金属板の色の隠蔽効果の不足等を来たすおそれがある。一方、積層シート100の厚みが厚すぎる場合は、軟質PVC樹脂被覆金属板を折り曲げ加工等の成形加工するのに従来から用いてきた成形金型の使用が困難になるなど、2次加工性に問題を生じるおそれがある。
(積層シート100の製造方法)
本発明の積層シート100の製造方法は、特に限定はないが、前述の通り、易接着層30とA層10とを共押し出し製膜し、その後工程で延伸処理することで、易接着層付きの二軸延伸ポリプロピレン系フィルムとして、カレンダー製膜法により作成したB層20と熱融着積層することが、最も効率的で好ましい。
(積層シート100へのエンボス付与)
上記の方法により製造した積層シート100は、A層10側表面にエンボス版により凹凸形状を付与し、エンボス意匠シートとしても良い。エンボス版としては、エンボス意匠が形成された版であれば、その形状は特に限定されず、枚葉でエンボス処理するための板状のものであっても、連続でエンボス処理することのできるロール状のものであってもよい。従来の軟質PVCシートにエンボスを付与するために用いてきたエンボス加工装置を用いて、連続的にエンボスを付与することができる。ただし、エンボスを付与するために積層シートを加熱することで、A層10の結晶配向が消失してしまっては、本発明の目的である意匠性積層シート被覆金属板200としての二次加工性と表面硬度の両立が困難となるため、エンボス付与のためにあまり高温で長時間の加熱を行うことは好ましくない。
<意匠性積層シート被覆金属板200>
図1(d)に層構成を模式的に示したように、本発明の金属板200は、上記した積層シート100および金属板60を備え、積層シート100におけるB層20側表面が接着剤50を介して金属板60上にラミネートされた構成を有している。図1(d)に示した構成では、一実施形態として、積層シート100cにより被覆された構成を示したが、本発明の意匠性積層シート被覆金属板200は、この構成に限定されず、例えば、表面にエンボスによる凹凸を有する積層シート100により被覆された構成であってもよい。
本発明の意匠性積層シート被覆金属板200に用いる金属板60としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼鈑、アルミニウム・マグネシウム・亜鉛合金メッキ鋼鈑、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板、チタン系合金板等が使用できる。これらの金属板は、通常の化成処理を施した後に使用してもよい。金属板60の厚さは、意匠性積層シート被覆金属板200の用途等により異なるが、0.1mm以上、3mm以下の範囲で選ぶことができる。
積層シート100を金属板60にラミネートする方法としては、接着剤によるラミネートが一般的である。接着剤としては、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等を基本としてポリオレフィン系樹脂との接着性を改良したタイプの熱硬化型接着剤を挙げることができる。あるいは、積層シート100を積層一体化した後工程で、B層20の金属板60と積層される側の表面に、易接着性のプライマー層を付与しておいて、軟質PVC系樹脂シートを金属板に接着積層する際に一般的に用いられてきた、通常の熱硬化型エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系等の接着剤を用いて金属板60と接着させてもよい。
意匠性積層シート被覆金属板200を得る方法としては、金属板60にリバースコーター、キスコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用して、積層シート100を貼り合せる金属面に、乾燥後の接着剤膜厚が2μm以上10μm以下程度になるように上記の熱硬化型接着剤を塗布する。ついで、赤外線ヒーターおよび、または熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、金属板60の表面温度を、220℃以上250℃以下程度の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いて積層シート100のB層20側が接着面となるように被覆、冷却することにより意匠性積層シート被覆金属板200を得ることができる。
本発明の意匠性積層シート被覆金属板200の製造方法は、上記の方法に限定されるものではなく、意匠性積層シート被覆金属板200の用途によっては、熱可塑性の接着性樹脂やあるいは粘着剤等を用いて金属板60と接着させても構わない。
本発明の意匠性積層シート被覆金属板200は、JIS K5600−5−4「引っかき硬度(鉛筆法)」に従い実施した鉛筆硬度試験において、2Bの鉛筆で傷が入らないことが好ましく、さらには、Bの鉛筆でも傷が入らないことが好ましい。
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、以下に実施例および比較例を示すが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1〜6、および、比較例1〜4>
(B層のカレンダー製膜)
B層としては、汎用ポリプロピレン系樹脂として「FY6H」(日本ポリプロ社製、融点:165℃、結晶融解熱量:96.1J/g、MFR:1.9g/10分)を用い、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体の水素添加誘導体として「ダイナロン1320P」(JSR社製)を用いて、表1に示す配合比率の樹脂混合物として、前工程に予備混練ロールを有し、金属ロール4本からなるカレンダー製膜装置を用いて、ロール温度170℃以上180℃以下の条件下でシート圧延を行い、厚み120μm、幅1200mmの黒色シートを得た。
なお、上記樹脂混合物には、樹脂成分の全量を100質量部として、滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.5質量部、熔融張力を付与する目的で、「メタブレン A−3000」(三菱レイヨン社製、易分散化処理済みPTFEフィブリルを含むアクリル系加工助剤)を0.2質量部、酸化防止剤として「イルガノックス 1076」(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、フェノール系酸化防止剤)を0.1質量部、同じく「アデカスタブ HP−10」(旭電化工業社製、燐系酸化防止剤)を0.2質量部、および、カーボンブラック系の黒色着色顔料を1.0質量部含んでいる。
Figure 2008290391
(A層)
A層として片面にヒートシール層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルム「HC−OP」(東セロ社製)を用いた。厚みは、25μm、30μmおよび50μmである。
(A層とB層との積層一体化)
A層とB層との熱融着積層一体化を図2に示すエンボス加工装置を用いて行った。加熱ロールは100℃に設定し、A層と、B層を図2に示すように2本の巻き出し軸から供給し、加熱ロールへの接触部分で重ね合わせ、熱融着積層により一体化した。引き続き、積層一体化されたシートを非接触式の赤外ヒーターでシート表面温度が140℃になるまで加熱し、エンボスロールにより押圧することで、A層とB層との間の熱融着積層をより確実なものとした。エンボスロールは温調された水の循環により30℃に保持されており、エンボス版としては凹凸が彫刻されていない鏡面のものを用いた。実施例および比較例のA層およびB層の組み合わせを表2に示した。
(意匠性積層シート被覆金属板の作製)
上記で得られた積層シートのB層側の表面に、酸変性ポリオレフィンを含むプライマー処理液を乾燥厚み1μm以上2μm以下になるように塗布、乾燥した。一方、厚み0.55mmの亜鉛・アルミニウムメッキ鋼板をコイルから連続的に巻き出しながら、軟質PVCシート被覆金属板用として一般的に用いられているウレタン系熱硬化型接着剤を金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2μm以上4μm以下程度となるように塗布した。次いで、熱風加熱炉および赤外線ヒーターにより塗布面の加熱、および乾燥を行い、鋼板の表面温度がラミネートロール部分で215℃となるように炉の温度条件、および鋼板の送り速度を調整し、ロールラミネーターを用いて、上記でプライマー処理液を塗工した積層シートのB層20側が接着面となるように鋼板にラミネートした。そして、水冷にて冷却することにより意匠性積層シート被覆金属板200を作製した。すべての実施例および比較例において、ラミネート条件は同一である。
(意匠性積層シート被覆金属板の評価)
得られた意匠性積層シート被覆金属板については、以下の評価を実施した。
(1)表面硬度(鉛筆硬度)
B、2Bの鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4「引っかき硬度(鉛筆法)」に従い、80mm×60mmに切り出した積層シート被覆金属板の樹脂シート面に対し45°の角度を保ちつつ1kgの加重を掛けた状態で線引きをできる治具を使用して線引きを行い、該部分の樹脂シートの面状態を目視により以下の基準で判定した。
○:Bの鉛筆で全く傷が付かなかった、
△:Bでは傷が入るが、2Bの鉛筆では全く傷が付かなかった、
×:2Bの鉛筆でも傷が付いた、
(2)加工性試験:折り曲げ加工性
意匠性積層シート被覆金属板に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部の化粧シートの面状態を目視により以下の基準で判定した。
○:ほとんど変化がない、
△:割れや目視で確認できるクラックは発生しなかったが、折り曲げ部分に僅かに白化が生じた、
×:割れ、クラック等が発生したか、あるいは、著しい曲げ部分の白化が生じた、
なお、衝撃密着曲げ試験は次のようにして行った。意匠性積層シート被覆金属板の長さ方向および幅方向からそれぞれ50mm×150mmの試料を作製し、23℃で1時間以上保った後、折り曲げ試験機を用いて、積層シートを被覆した面が折り曲げ後に外表面となるように180°(内曲げ半径2mm)に折り曲げ、その試料に直径75mm、質量5Kgの円柱形の錘を50cmの高さから落下させた。
(3)加工性試験:打ち抜き加工性
油圧プレス加工機で、300mm×300mmの意匠性積層シート被覆金属板の積層シート面側から、開口形状100mm×200mm(コーナー部半径=10mm)、曲げ代幅10mmとなるように打ち抜き曲げ加工を行い、加工部の積層シートの面状態を目視により以下の基準で観察した。
○:かじりやひげが発生せず良好に加工できていた、
△:若干かじりがあるか、若しくは僅かにひげが出ていた、
×:かじりやひげが著しかった、
これらの評価結果を表2に示す。
Figure 2008290391
<評価結果>
比較例1は、B層の樹脂組成として、ビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合体を含まず、ポリプロピレン系樹脂のみからなるものを用いた場合であるが、折り曲げ加工により著しいクラックと白化が発生する結果となった。比較例2は、本発明のB層20の好ましい樹脂組成よりも、ビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合体の水素添加誘導体の比率が多い場合であるが、B層の柔軟性が過剰となり、A層を被覆した状態でも十分な表面硬度を得ることができなかった。
比較例3は、B層20の樹脂組成は本発明の好ましい範囲にある場合であるが、A層を有していない構成である。この場合は、折り曲げ加工での白化は生じないものの、打ち抜き加工で、ひげが出易い傾向にあり、また、表面硬度に関しては実用上問題のある結果となった。比較例4は、B層の樹脂組成は本発明の範囲にあり、比較例3よりより柔軟なB層を用いた場合である。打ち抜き加工では樹脂層のかじりが生じ、表面硬度が不足していた。
これに対して、本発明の意匠性積層シート被覆金属板(実施例1〜6)においては、B層として十分な加工性を有する柔軟なものを用いた場合も、A層が存在することにより良好な表面硬度が得られており、耐傷入り性に優れた意匠性積層シート被覆金属板を得ることができた。また、A層を被覆することによって、意匠性積層シート被覆金属板の加工性は悪化していなかった。また、A層およびB層共に、ポリプロピレン樹脂を主成分とするものであり、低コストで作製することができた。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う金属被覆用意匠性積層シートおよび意匠性積層シート被覆金属板もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の金属被覆用意匠性積層シート100と、該積層シートを被覆した意匠性積層シート被覆金属板200の層構成を示す模式図である。 本発明の実施例および比較例において、A層10とB層20との熱融着積層一体化に用いたエンボス加工装置の模式図である。
符号の説明
10 A層
20 B層
30 ヒートシール層
40 印刷柄
50 接着剤
60 金属板
100(100a、100b、100c) 金属被覆用意匠性積層シート
200 意匠性積層シート被覆金属板
310 加熱ロール
320 テイクオフロール
330 赤外線ヒーター
340 ニップロール
350 エンボスロール
360 冷却ロール

Claims (9)

  1. 表面側から順に以下に示すA層、B層の2層を備えた積層シートであって、該積層シートの総厚みが65μm以上320μm以下の範囲である金属被覆用意匠性積層シート。
    A層:二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなる透明な樹脂層。
    B層:カレンダー製膜法により製膜することが可能であるポリプロピレン系樹脂組成物からなる層であって、B層の全樹脂成分を100質量%として、ポリプロピレン系樹脂とビニル芳香族化合物および共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体とのブレンド組成物を85質量%以上含有し、該ブレンド組成物の組成が、ブレンド組成物全体を100質量%として、65質量%以上90質量%以下のポリプロピレン系樹脂、10質量%以上35質量%以下のビニル芳香族化合物および共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体であり、顔料成分が添加されることにより着色された、厚みが45μm以上300μm以下である樹脂層。
  2. 前記A層におけるB層と積層する側の表面に加熱接着性を有する易接着層が付与されている、請求項1に記載の金属被覆用意匠性積層シート。
  3. 前記A層と前記B層との間に印刷柄が付与されている、請求項1または2に記載の金属被覆用意匠性積層シート。
  4. 前記A層の外表面にエンボスによる凹凸意匠が付与されている、請求項1〜3のいずれかに記載の金属被覆用意匠性積層シート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の金属被覆用意匠性積層シート、および、該積層シートのB層側に接着剤を介してラミネートされた金属板を備えて構成される意匠性積層シート被覆金属板。
  6. JIS K5600−5−4「引っかき硬度(鉛筆法)」に従い実施した鉛筆硬度試験において、2Bの鉛筆で表面に傷が入らないことを特徴とする、請求項5に記載の意匠性積層シート被覆金属板。
  7. 請求項5または6に記載の意匠性積層シート被覆金属板を用いた、カーテンレール。
  8. 請求項5または6に記載の意匠性積層シート被覆金属板を用いた、家電製品筐体。
  9. 請求項5または6に記載の意匠性積層シート被覆金属板を用いた、建築内装材。
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