以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1はこの発明の一実施例に係るX線断層撮影装置の概略構成図である。なお、以下の実施例では説明を簡単にするために、X線管2を水平移動させるとともに、X線管2からのX線の照射角度を変更して、被検体M内の撮影対象断層面Maに対するX線管2からのX線の入射方向を変更させ、それに追従させて、撮像部3の受像面3aを水平移動させて撮影対象断層面MaのX線断層撮影画像を得る装置を例に採り説明する。また、実施例において、従来技術の説明に用いた符号と同一の符号を付した部分は従来技術と基本的に同一であるので、不要な重複説明は省略する。
この実施例に係るX線断層撮影装置の撮影駆動系は、基本的に、第2従来例のものと同じである。すなわち、X線管駆動機構11によって、例えば、天井に敷設されたレール21に沿って水平移動されるX線管保持部材22にX線管2が保持され、X線管2が水平移動されるようになっている。X線管2には高電圧発生器などを含むX線照射駆動部12が接続され、このX線照射駆動部12によってX線管2からのX線の照射駆動が行われる。また、モーターなどの照射角度駆動機構13によって、例えば、X線管保持部材22に対してX線管2が回転されてX線管2から照射されるX線の照射角度が変更されるように構成されている。
一方、被検体Mを載置支持する天板1を挟んでX線管2と反対側に配置された撮像部3の受像面3aは、撮像部駆動機構14によって水平移動されるようになっている。
なお、この実施例では、天板1が支持手段に、X線管2がX線照射手段に、撮像部3が撮像手段に、X線管駆動機構11と照射角度駆動機構13がX線入射方向変更駆動手段に、X線照射駆動部12がX線照射駆動手段に、撮像部駆動機構14が受像位置変更駆動手段に、X線管駆動機構11やX線照射駆動部12、照射角度駆動機構13、撮像部駆動機構14を含む撮影駆動系が撮影駆動手段にそれぞれ相当する。
X線管駆動機構11やX線照射駆動部12、照射角度駆動機構13、撮像部駆動機構14を含む撮影駆動系の駆動制御は、制御手段に相当する制御部10によって行われる。制御部10は、不揮発性のメモリ30に記憶されている駆動データに従って撮影駆動系11、12、13、14を駆動制御して被検体M内の撮影対象断層面MaのX線断層撮影画像の撮影を行う。
メモリ30には、後述するような決定方法によって決められた種々の深さ位置の撮影対象断層面Maに応じた複数の駆動データが予め記憶されている。術者によって設定盤31から、これから撮影しようとする撮影対象断層面Maの深さ位置が設定されると、制御部10は、設定された撮影対象断層面Maの深さ位置に応じた駆動データをメモリ30から読み出し、その駆動データに従って、撮影駆動系11〜14を駆動制御して設定された深さ位置の撮影対象断層面Maに対するX線断層撮影画像の撮影を行う。
従って、この実施例の構成によれば、第1従来例のようにX線管2と撮像部3とを連結した連結部材100の支点101を変更したり、あるいは、第2従来例のように天板1を昇降させたりすることなく、撮影駆動系11〜14の駆動を変更させるだけで、撮影対象断層面Maの深さ位置を変更したX線断層撮影画像の撮影を行うことができる。よって、手間や術者への負担をかけず、また、撮影中の被検体Mの体動を低減して、種々の深さ位置の撮影対象断層面に対する各X線断層撮影画像を正確に得られるとともに、撮影中の被検体Mへの心理的な不安を軽減することができるなど、第1、第2従来例の欠点を解消することができる。
また、装置の撮影駆動系は、第2従来例と基本的に同じであり、その撮影駆動系の駆動制御の内容を変更しているだけであるので、制御部10を構成するマイクロコンピューターのプログラムやデータを記憶するPROMの内容を、種々の深さ位置の撮影対象断層面Maに応じた駆動データを含めるとともに、その駆動データを使い分けて撮影駆動系を駆動制御するように書き換えるだけで、大幅な改造を行わずに第2従来例の装置資産を利用することができる。従って、医療機関などに既に第2従来例の装置が設置されている場合には、その資産を無駄にすることなく有効利用することができる。
なお、上記実施例に、天板1を前後や左右などの水平方向への移動と、昇降移動などを行う天板駆動機構を備えて、撮影対象断層面Maの深さ位置を変更して撮影する以外の目的、例えば、被検体Mを天板1に乗降させる位置と、X線管2と撮像部3との間の撮影位置との間で天板1(被検体M)を移動させるなどのために、天板1を移動可能に構成してもよい。
また、後述する駆動データの決定方法でも詳述するが、ある1つの深さ位置の撮影対象断層面Maを基準の撮影対象断層面MaSとし、その基準の撮影対象断層面MaSに応じた撮影駆動系11〜14の駆動データを基準の駆動データとすれば、基準の撮影対象断層面MaSの深さ位置と異なる深さ位置の撮影対象断層面MaNに応じた駆動データは、その深さ位置の撮影対象断層面MaNに応じた係数を基準の駆動データに掛け合わせるだけでよい場合がある。そのような場合には、各々の深さ位置の撮影対象断層面Maに応じた駆動データを全てメモリ30に記憶しておかずに、基準の駆動データと、各深さ位置の撮影対象断層面MaNに応じた係数とをメモリ30に記憶し、各深さ位置の撮影対象断層面MaNのX線断層撮影画像の撮影を行うときに、基準の駆動データにその深さ位置の撮影対象断層面MaNに応じた係数を掛け合わせてその深さ位置の撮影対象断層面MaNに応じた駆動データを得るようにしてもよい。このように構成すれば、メモリ30への記憶量を低減させることができる。
また、各々の深さ位置の撮影対象断層面Maに応じた駆動データや、基準の駆動データと、各深さ位置の撮影対象断層面MaNに応じた係数となどをメモリ30に記憶しておくのではなく、後述する駆動データの決定方法をプログラム化しておき、設定盤31から、これから撮影しようとする撮影対象断層面Maの深さ位置が設定されるごとに、制御部10は、設定された撮影対象断層面Maの深さ位置に応じた駆動データを撮影前に算出し、その演算の結果得られた駆動データに従って、撮影駆動系11〜14を駆動制御して設定された深さ位置の撮影対象断層面Maに対するX線断層撮影画像の撮影を行うように構成してもよい。
次に、異なる深さ位置の撮影対象断層面Maに応じた駆動データを決定する方法を説明する。
<第1の決定方法>図2を参照する。図2に示すように、撮影対象断層面MaS、MaNとX線管2との位置関係や、撮影対象断層面MaS、MaNと撮像部3の受像面3aとの位置関係は、幾何学的な位置関係に置き換えることができる。
図2では、予め決めておいた1つの撮影対象断層面を基準の撮影対象断層面MaSとし、撮影対象断層面MaNは、その基準の撮影対象断層面MaSの深さ位置と異なる深さ位置の撮影対象断層面を示している。図2中の点GCSは基準の撮影対象断層面MaSの中のX線断層撮影画像を撮影する際の撮影中心、GCNは撮影対象断層面MaNの中のX線断層撮影画像を撮影する際の撮影中心と示す。
ここで、撮影対象断層面の深さ位置を変更した撮影とは、基本的に、ある撮影対象断層面MaSの中の点GCSを撮影中心としてX線断層撮影画像を撮影したとき、別の深さ位置の撮影対象断層面MaNの中において、水平方向(図2の左右方向および図2の紙面に垂直な方向)の位置を変更せずに、撮影対象断層面MaSの撮影中心GCSを深さ方向(図2の上下方向)にずらせた点GCNを撮影中心としてX線断層撮影画像を撮影することを意味する。すなわち、図2において、各撮影中心GNS、GCNは、深さ方向に延ばした撮影中心軸CJ上にプロットされる。
また、図2において、点XFはX線管2の焦点の位置を示し、点IFは撮像部3の受像面3aの中心位置を示す。点XCはX線管2の焦点XFの基準位置であり、一方、点ICは受像面3aの基準位置である。上述した撮影中心軸CJは、これら基準位置XC、ICを結んだ軸線とする。
すなわち、点GCSやGCNを撮影中心として撮影対象断層面MaS、MaNのX線断層撮影画像を撮影する場合には、各撮影中心GCS、GCNが、撮影中心軸CJ上に一致するように天板1及び被検体Mを位置させる。
また、基準の撮影対象断層面MaSの深さ位置は、例えば、X線管2の焦点XFの基準位置XCからの距離XHSで決められる。すなわち、点GCS、GCNを撮影中心として撮影対象断層面MaS、MaNのX線断層撮影画像を撮影する場合の撮影位置は、基準の撮影対象断層面MaSが、X線管2の焦点XFの基準位置XCから距離XHSだけ離れた位置に位置されるとともに、各撮影中心CGS、CGNが、撮影中心軸CJ上に一致する位置であり、そのような撮影位置に天板1及び被検体Mを位置させた状態で撮影断層面の深さ位置を変更した撮影が行われる。
さて、従来例2の制御部10P2が持っていた撮影駆動系11〜14の駆動データによって撮影される1つの撮影対象断層面Maを基準の撮影対象断層面MaSとし、その駆動データを用いて、基準の撮影対象断層面MaSの撮影を行うものとする。
この撮影データでは、X線管2の焦点XFの基準位置XCを撮影の際のX線管2の焦点XFの移動範囲の中心としている。すなわち、基準の撮影対象断層面MaSの撮影は、基準位置XCから、図2の左方向に所定の距離XWS離れた位置をX線管2の焦点XFの移動開始位置XSSとし、基準位置XCから、図2の右方向に同じ距離XWS離れた位置をX線管2の焦点XFの移動終了位置XESとして、この移動開始位置XSSと移動終了位置XESとの間の移動範囲(2×XWS)を、X線管2の焦点XFが図2の左から右に水平移動するようにX線管2を水平移動させている。
上記移動範囲内のX線管2の移動中のX線管2からのX線の照射角度は、X線管2の水平移動中の各位置において、X線管2から照射されるX線束の中心軸XJが常に、基準の撮影対象断層面MaS中の撮影中心GCSを通過するように変更させる。すなわち、深さ方向に対して右方向に角度をθS傾けた状態から、深さ方向に対して左方向に角度をθS傾けた状態までの回転範囲内を、X線管2の水平移動に合わせて、X線管保持部材22に対してX線管2を水平方向の軸芯周りで時計周りに回転させる。
以上のようにX線管2の水平移動及びX線の照射角度の変更を行うことで、天板1に載置支持された被検体M内の基準の撮影対象断層面MaS(中の撮影中心GCS)に対するX線の入射方向を種々の方向に変更させている。
一方、撮像部3の受像面3aは、X線管2の水平移動中の各位置において、X線管2から照射されるX線束の中心軸XJが常に、受像面3aの中心IFに入射するようにX線管2と反対方向(図2の右から左に)に水平移動させる。これにより、基準の撮像対象断層面MaSの透過X線像が常に、撮像部3の受像面3aの同じ位置に投影されるように基準の撮影対象断層面MaS(中の撮影中心GCS)に対するX線の入射方向の変更(X線管2側の動作)と連動して撮像部3の受像面3aの位置を変更させることができる。
なお、図2では、上記撮像部3の受像面3aの水平移動の移動開始位置をISS、移動終了位置をIES、受像面3aの基準位置ICと移動開始位置ISSとの間の距離及び受像面3aの基準位置ICと移動終了位置IESとの間の距離をIWSで示している。また、X線管2の焦点XFの基準位置XCと受像面3aの基準位置ICとの間の距離XIHは、X線管2と撮像部3を設置したときに決まるので、X線管2の焦点XFの基準位置XCと基準の撮影対象断層面MaSとの間の距離XHSが決まれば、受像面3aの基準位置ICと基準の撮影対象断層面MaSとの間の距離IHSは決まる。
X線管2を水平移動させるX線管駆動機構11の駆動データには、X線管2の移動範囲の他にX線管2の移動速度が含まれる。また、X線の照射角度を変更駆動する照射角度駆動機構13の駆動データには、上述したX線管2の回転範囲の他にX線管2を回転させる際の回転速度が含まれる。さらに、撮像部3の受像面3aを水平移動させる撮像部駆動機構14の駆動データには、撮像部3の受像面3aの移動範囲の他に撮像部3の受像面3aの移動速度が含まれる。
X線管2の移動速度VXS(t)及び回転速度WXS(t)と、撮像部3の受像面3aの移動速度VIS(t)の一例を図3(a)〜(c)に実線で示す。この例では、X線管2の移動速度VXS(t)を、撮影開始t0からt1までは加速させ、所定速度VX1に達するとt1からt2まで一定速度VX1とし、t2から減速させてt3でX線管2の移動を停止させて、tSの時間で撮影を行うようにしている。なお、t0〜t1間の時間とt2〜t3間の時間は、例えば、同じに設定される。X線管2の回転速度WXS(t)と撮像部3の受像面3aの移動速度XIS(t)とは、X線管2の移動速度VXS(t)に合わせて、撮影開始t0からt1までは加速させ、t1からt2まで一定速度とし、t2から減速させてt3でX線管2の回転及び撮像部3の受像面3aの移動を停止させて、tSの時間で撮影が終了するようにしている。
また、X線照射駆動部2は、例えば、図3(d)や(e)に示すように、t0〜t3の間(必要に応じてt1〜t2の間でもよい)X線管2からのX線を常時照射させたり、一定周期ごとにパルス状に照射させるように駆動制御される。
次に、基準の撮影対象断層面MaSの深さ位置と異なる深さ位置の撮影対象断層面MaNを撮影する場合を考える。
ここでは、X線の照射角度の変更範囲(撮影対象断層面MaS、MaNに対するX線入射方向の変更範囲)である、X線管2の回転範囲を基準の撮影対象断層面MaSの撮影時と同じ(2×θS)にする場合について考える。
X線管2の回転範囲を撮影対象断層面MaSの撮影と同じ(2×θS)にして、撮影対象断層面MaNを撮影するためには、図2に示すように、X線管2の移動開始位置をXSN、移動終了位置をXENとする(2×XWN)の範囲をX線管2の移動範囲とし、一方で、撮像部3の受像面3aの移動開始位置をISN、移動終了位置をIENとする(2×IWN)の範囲を撮像部3の受像面3aの移動範囲としなければならないことが幾何学的に導ける。また、図2中の距離XHS、IHS及びSNH(いずれも既知)により、X線管2の焦点XFの基準位置XCと撮影対象断層面MaNの深さ位置との間の距離XHNと、撮像部3の受像面3aの基準位置ICと撮影対象断層面MaNの深さ位置との間の距離IHNとが求められる。
X線管2の焦点XFが基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の移動開始位置XSSに位置した点と、X線管2の焦点XFが基準位置XCに位置した点と、基準の撮影対象断層面MaSの撮影中心GCSとの3点を頂点とする三角形と、X線管2の焦点XFが撮影対象断層面MaNの撮影時の移動開始位置XSNに位置した点と、X線管2の焦点XFが基準位置XCに位置した点と、撮影対象断層面MaNの撮影中心GCNとの3点を頂点とする三角形とは相似形である。また、撮像部3の受像面3aが基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の移動開始位置ISSに位置した点と、撮像部3の受像面3aが基準位置ICに位置した点と、基準の撮影対象断層面MaSの撮影中心GCSNの3点を頂点とする三角形と、撮像部3の受像面3aが撮影対象断層面MaNの撮影時の移動開始位置ISNに位置した点と、撮像部3の受像面3aが基準位置ICに位置した点と、撮影対象断層面MaNの撮影中心GCNとの3点を頂点とする三角形とは相似形である。
従って、撮影対象断層面MaNの撮影時のX線管2の移動範囲を決める距離XWNと、撮影対象断層面MaNの撮影時の受像面3aの移動範囲を決める距離IWNとは、既知の値であるXWS、XHS、XHNと、IWS、IHS、IHNを用いて、以下の式(1)、(2)で求めることができる。
XWN=KXN×XWS … (1)
但し、KXN=XHN/XHSIWN=KIN×XIS … (2)
但し、KIN=IHN/IHS
また、相似の関係から、以下の式(3)、(4)及び、図3(a)、(b)の二点鎖線で示すように、撮影対象断層面MaNの撮影時のX線管2の移動速度VXN(t)を、基準の撮影対象断層面MaSの撮影時のX線管2の移動速度VXS(t)に、上記(1)式の係数KXNを掛け合わせた速度とするとともに、撮影対象断層面MaNの撮影時の撮像部3の受像面3aの移動速度VIN(t)を、基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の撮像部3の受像面3aの移動速度VIS(t)に、上記(2)式の係数KINを掛け合わせた速度として駆動させると、撮影対象断層面MaNの撮影において、基準の撮影対象断層面MaSの撮影中の同じ時間tにおけるX線の照射角度(撮影対象断層面MaS、MaNに対するX線入射方向の角度)を常に同じにすることができる。従って、X線管2の回転速度を基準の撮影対象断層面MaSの撮影時のX線管2の回転速度WXS(t)(図3(c))と同じ駆動データで駆動することができる。
VXN(t)=KXN×VXS(t) … (3)
VIN(t)=KIN×VIS(t) … (4)
さらに、X線管2の水平移動やX線の照射角度、撮像部3の受像面3aの水平移動を上述した駆動データで駆動制御すると、撮影対象断層面MaNの撮影は、tSの時間で完了することになる。従って、X線の照射駆動は、基準の撮影対象断層面MaSの撮影時と同じ駆動データ(図3(d)や(e))で行うことができる。
なお、上記係数KXN、KINは、撮影対象断層面MaNが、図2に示すように、基準の撮影対象断層面MaSよりもX線管2から遠ざかる(撮像部3の受像面3aに近づく)とKXN>1、0<KIN<1となり、逆に、撮影対象断層面MaNが、基準の撮影対象断層面MaSよりもX線管2に近づく(撮像部3の受像面3aから遠ざかる)と0<KXN<1、KIN>1となる係数である。
また、基準の撮影対象断層面MaSの撮影時と撮影対象断層面MaNの撮影時とにおける受像面3aの移動状態をわかり易くするために、図2では、基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の受像面3aと撮影対象断層面MaNの撮影時の受像面3aとを上下に若干ずらせて描いているが実際は同一軸上を移動する。また、図4以下の図やグラフにおいても、同様に、実際は重なる部分であっても基準の撮影対象断層面MaSの撮影時のものと撮影対象断層面MaNの撮影時のものとを区分するために若干ずらせて描いている場合もある。
<第2の決定方法>まず、X線管2の移動範囲と撮像部3の受像面3aの移動範囲は、上記第1の決定方法と同じ決定方法で決定する(図2参照)。すなわち、撮影対象断層面MaNの撮影時のX線管2の移動範囲を、移動開始位置XSN〜移動終了位置XENの(2×XWN)の範囲とし、撮像部3の受像面3aの移動範囲を、移動開始位置ISN〜移動終了位置IENの(2×IWN)の範囲とする。
次に、X線管2の移動速度VXN(t)を、一定速度で移動させる際の速度が基準の撮影対象断層面MaSの撮影時と同じVX1になるように決定する。すなわち、図4(a)の二点鎖線に示すように、撮影開始t0からt1までは加速させ、所定速度VX1に達するとt1からt4まで一定速度VX1とし、t4から減速させてt5でX線管2の移動を停止させて、tNの時間で撮影を行うようにする。なお、t4〜t5間の時間は、例えば、t2〜t3間の時間と同じとする。基準の撮影対象断層面MaSの撮影時のX線管2の移動速度VXS(t)を図4(a)に実線で示す。
上記X線管2の移動速度VXN(t)に合わせるためには、撮像部3の受像面3aの移動速度VIN(t)は、図4(b)の二点鎖線に示すようになる。基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の撮像部3の受像面3aの移動速度VIS(t)を図4(b)に実線で示す。
図4(a)、(b)に示すように、この場合には、撮影対象断層面MaNの撮影に要する時間tNは、基準の撮影対象断層面MaSの撮影に要する時間tSより長くなる。なお、図2と逆に、撮影対象断層面MaNが、基準の撮影対象断層面MaSよりもX線管2に近づく(撮像部3の受像面3aから遠ざかる)場合には、撮影対象断層面MaNの撮影に要する時間tNは、基準の撮影対象断層面MaSの撮影に要する時間tSより短くなる。
いずれにしても、撮影時間が変動することにより、それに応じて、X線の照射角度の変更速度(X線管2の回転速度)を新たに決める必要がある。すなわち、X線管2の移動速度に合わせるためには、X線管2の回転速度WXN(t)は、図4(c)の二点鎖線に示すようになる。基準の撮影対象断層面MaSの撮影時のX線管2の回転速度WXS(t)を図4(c)に実線で示す。
ここで、図4(c)の一定時の速度WX2は未知数であるが、この速度WX2は、例えば、以下のようにして決定することができる。まず、図5に示すように、X線管2の焦点XFが基準位置XCから所定時間(例えば、1秒)後に到達する位置をXC1とすると、基準位置XCからその位置XC1までの距離(移動量)WC1は、X線管2の移動速度VXN(t)(VX1)によって求めることができる。この位置XC1をX線管2の焦点XFの移動軌跡上にプロットする。このとき、上記一定時の速度WX2におけるX線の照射角度の単位時間当たりの変更角は図5中のθ1となる。図5において、X線管2の焦点XFが基準位置XCに位置した点とX線管2の焦点XFが上記位置XC1に位置した点と撮影対象断層面MaNの撮影中心GCNとの3点を頂点とする三角形に注目すると、θ1は既知の距離XHNとXC1から三角関数によって求めることができる。従って、上記一定時の速度WX2におけるX線の照射角度の単位時間当たりの変更角θ1が求められれば、上記一定時の速度WX2が求められる。
また、上記一定時の速度WX2が求まれば、t0〜t1間の時間(既知)で速度を「0」〜WX2にするように加速すればよいので、WXN(t)のt0〜t1の加速時の速度の傾きが決まり、同様に、t4〜t5の減速時の速度の傾きも決まる。
以上により、撮影対象断層面MaNの撮影時のX線管2の回転速度WXN(t)が決定できる。なお、X線管2の回転範囲は、第1の決定方法の場合と同じ(2×θS)である。従って、照射角度駆動機構13の駆動データも決定できる。
また、撮影時間の変動に伴って、X線の照射は、図3(d)や(e)と同様の照射を上記t0〜t5の間(必要に応じてt1〜t4の間)行えばよい。
<第3の決定方法>ここでは、図6に示すように、X線管2の移動範囲を各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時で同じにする場合について考える。
このとき、X線管2の移動速度も、各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時で同じにすることができる。すなわち、X線管駆動機構11の駆動データは各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時で同じにすることができる。また、この結果、各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影に要する時間が全て同じであるからX線照射駆動部12の駆動データも各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時で同じにすることができる。
しかしながら、図6に示すように、この駆動制御では、X線の照射角度の変更範囲(撮影対象断層面MaS、MaNに対するX線入射方向の変更範囲)である、X線管2の回転範囲が、撮影対象断層面MaSの撮影時(2×θS)と、撮影対象断層面MaNの撮影時(2×θN)とで相違することになる。
このθNは、X線管2の焦点XFが各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時の移動開始位置XSSに位置した点と、X線管2の焦点XFが基準位置XCに位置した点と、撮影対象断層面MaNの撮影中心GCNとの3点を頂点とする三角形に注目すれば、既知の距離XWS、XHNから三角関数によって求めることができる。
また、各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影において、撮影時間が同じ(tS)であって、X線管2の回転範囲が変更されたことに伴って、X線の照射角度の変更速度(X線管2の回転速度)を新たに決める必要がある。X線管2の移動に合わせるためには、X線管2の回転速度WXN(t)は、図7(a)の二点鎖線に示すようになる。基準の撮影対象断層面MaSの撮影時のX線管2の回転速度WXS(t)を図7(a)に実線で示す。
図7(a)中の一定時の速度WX3は、上述した第2の決定方法で説明したWX2の決定方法と同様の決定方法で求めることができる。従って、照射角度駆動機構13の駆動データを決定することができる。
また、図6に示すように、X線管2の移動範囲を各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時で同じ(X線管2の回転角度が変更された)ことに伴って、撮像部3の受像面3aの移動範囲が変更される。この撮影対象断層面MaNの撮影時の撮像部3の受像面3aの移動範囲を決める距離IWN2は次のように求めることができる。すなわち、図6において、撮像部3の受像面3aが撮影対象断層面MaNの撮影時の移動開始位置ISNに位置した点と、撮像部3の受像面3aが基準位置ICに位置した点と、撮影対象断層面MaNの撮影中心GCNとの3点を頂点とする三角形に注目すると、既知の値である距離IHNと角度θNとから三角関数によって距離IWN2が求められる。
また、各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影において、撮影時間が同じ(tS)であって、撮像部3の受像面3aの移動範囲が変更されたことに伴って、撮像部3の受像面3aの移動速度も新たに決める必要がある。X線管2の移動に合わせるためには、撮像部3の受像面3aの移動速度VIN(t)は、図7(b)の二点鎖線に示すようになる。基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の撮像部3の受像面3aの移動速度VIS(t)を図7(b)に実線で示す。
ここで、図7(b)の一定時の速度VI2は未知数であるが、この速度VI2は、例えば、次のようにして決定することができる。すなわち、上述した第2の決定方法で説明したX線管2の回転速度中の一定時の速度におけるX線の照射角度の単位時間当たりの変更角を求める場合と同様の手法で、この第3の決定方法の場合でのX線管2の回転速度中の一定時の速度WX3におけるX線の照射角度の単位時間当たりの変更角θ2を、撮像部3の受像面3aを含めて作図すると図8に示すようになる。なお、図8中の位置XC2は、この第3の決定方法において、X線管2の焦点XFが基準位置XCから所定時間(例えば、1秒)後に到達する位置を示し、距離WC2は、基準位置XCからその位置XC2までの移動量を示す。図8から明らかなように、撮像部3の受像面3の移動速度VIN(t)中の一定時の速度VI2における単位時間当たりの受像面3aの移動量WC3は、既知の距離IHNと角度θ2とから三角関数で求めることができ、撮像部3の受像面3の移動速度VIN(t)中の一定時の速度VI2が求められる。従って、撮像部3の受像面3の移動速度VIN(t)が決まり、撮像部駆動機構14の駆動データが決まる。
その他、撮像部3の受像面3aの移動範囲と移動速度とを各撮影対象断層面MaS、MaNの撮影時で同じにするように撮影駆動系11〜14の駆動データを決定することもできる。この場合には、撮影対象断層面MaNの撮影時のX線管2の移動範囲や移動速度、回転範囲、回転速度を新たに決めてやる必要があるが、これら駆動データも、上述したように幾何学的に求めることができる。
上記第1〜第3の決定方法では、撮影対象断層面MaNの撮影時の撮影駆動系11〜14の駆動データの決定を例に採り説明したが、それ以外の深さ位置の撮影対象断層面Maの撮影時の撮影駆動系11〜14の駆動データも同様の方法で決定することができる。
なお、上記第1〜第3の決定方法では、予め決められた1つの撮影対象断層面MaSを基準として、その基準の撮影対象断層面MaSの撮影時の撮影駆動系11〜14の駆動データを用いて、それ以外の深さ位置の撮影対象断層面MaNの撮影時の撮影駆動系11〜14の駆動データを決定したが、この発明はこれに限らず、任意の深さ位置の撮影対象断層面Maの撮影時の撮影駆動系11〜14の駆動データを個別に決定することもできる。
すなわち、これまでの説明から明らかなように、ある深さ位置の撮影対象断層面Maの撮影を行う場合、X線管2の移動範囲、X線管2の回転範囲、撮像部3の受像面3aの移動範囲のいずれか1つが決まれば残りも決まる。また、X線管2の移動速度、X線管2の回転速度、撮像部3の受像面3aの移動速度のいずれか1つが決まれば残りも決まる。従って、X線管駆動機構11、照射角度駆動機構13、撮像部駆動機構14の駆動データを決めることができる。また、X線管駆動機構11、照射角度駆動機構13、撮像部駆動機構14の駆動データが決まると、撮影時間が決まるので、X線照射をどのタイミングで行えばよいかも決まり、X線照射駆動部12の駆動データも決まる。このような撮影駆動系11〜14の駆動データの決定方法は、撮影対象断層面Maの深さ位置が変わっても同様であるので、任意の深さ位置の撮影対象断層面Maごとに、撮影時の撮影駆動系11〜14の駆動データを個別に決定することもできる。
ところで、撮影中、X線を常時照射させたり、常に同一周期でパルス状にX線を照射させる場合、撮影対象断層面Maの撮影ごとに撮影時間が変動すると、撮影対象断層面Maの撮影ごとに被検体MへのX線の曝射量が変動などして好ましくない。従って、撮影対象断層面Maの撮影ごとの撮影時間を常に同じにするように撮影駆動系11〜14の駆動データを決定することが好ましいが、撮影対象断層面Maの撮影ごとの撮影時間が変動するように撮影駆動系11〜14の駆動データを決定する場合でも、例えば、X線をパルス状に照射させるとともに、そのパルス周期を、撮影対象断層面Maの撮影ごとの撮影時間に応じて変化させるようにしてもよい。
また、同じ深さ位置の撮影対象断層面Ma内において撮影中心(撮影範囲)を変更する場合には、天板1上で被検体Mを水平方向に移動させたり、被検体Mを載置支持した天板1を水平方向に移動させたりしてもよいが、次のように構成してもよい。
X線管2と撮像部3の受像面3aとの各々の水平移動の移動可能最大範囲を十分に長くし、X線管2の焦点XFの基準位置XCと撮像部3の受像面3aの基準位置IC(撮影中心軸CJ)を天板1の長手方向(被検体Mの体軸方向)に移動させれば、同じ深さ位置の撮影対象断層面Ma内において撮影中心(撮影範囲)を天板1の長手方向(被検体Mの体軸方向)に変更させることができる。また、レール21などを含むX線管2の水平移動を行うためのユニット全体を天板1の短手方向(被検体Mの体軸方向に直交する水平方向)に移動させる駆動機構を設けるとともに、撮像部3の受像面3aの水平移動を行うためのユニット全体も同じ水平方向に移動させる駆動機構を設けて、各ユニット全体を天板1の短手方向に水平移動させれば、同じ深さ位置の撮影対象断層面Ma内において撮影中心(撮影範囲)を天板1の短手方向(被検体Mの体軸方向に直交する水平方向)に変更させることができる。このように構成すれば、天板1や被検体Mを移動させることなく、同じ深さ位置の撮影対象断層面Ma内において撮影中心(撮影範囲)を変更したX線断層撮影画像を撮影することもできる。
上記実施例では、X線管2と撮像部3の受像面3aとを水平1軸方向への移動だけを行わせて撮影対象断層面Maの撮影を行う場合について説明したが、X線管2と撮像部3の受像面3aとを、円弧状に移動させたり、水平面内で円軌道や楕円軌道、放射状の軌道、渦巻き状の軌道、ハイポサイクロ(登録商標)イド軌道などに沿って移動させたりする周知の移動形態をとって撮影対象断層面Maの撮影を行う構成のものであってもこの発明は同様に適用することができる。なお、例えば、X線管2や撮像部3の受像面3aを、水平面内で1つの円軌道に沿って移動させて撮影対象断層面Maの撮影を行う構成のものは、通常、X線の照射角度が固定されるので、そのような構成のものは、X線管2を水平面内で1つの円軌道に沿って移動させる駆動機構がこの発明におけるX線入射方向変更駆動手段に相当することになる。
また、被検体Mを寝かせた状態で撮影対象断層面MaのX線断層撮影画像を撮影する場合に限らず、被検体Mを斜め状態で支持したり、立たせて支持させたりした状態で、その被検体Mを挟んでX線管2と撮像部3の受像面3aを配置させて撮影対象断層面MaのX線断層撮影画像を撮影する場合にもこの発明は同様に適用することができる。