JP2008283902A - イネおよびその作出方法 - Google Patents

イネおよびその作出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008283902A
JP2008283902A JP2007131987A JP2007131987A JP2008283902A JP 2008283902 A JP2008283902 A JP 2008283902A JP 2007131987 A JP2007131987 A JP 2007131987A JP 2007131987 A JP2007131987 A JP 2007131987A JP 2008283902 A JP2008283902 A JP 2008283902A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
snp
rice
koshihikari
chromosome
base sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007131987A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4368391B2 (ja
Inventor
Tomonori Takashi
師 知 紀 高
Asuka Nishimura
村 明日香 西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2007131987A priority Critical patent/JP4368391B2/ja
Priority to US12/122,389 priority patent/US8030561B2/en
Publication of JP2008283902A publication Critical patent/JP2008283902A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4368391B2 publication Critical patent/JP4368391B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H5/00Angiosperms, i.e. flowering plants, characterised by their plant parts; Angiosperms characterised otherwise than by their botanic taxonomy
    • A01H5/10Seeds
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H1/00Processes for modifying genotypes ; Plants characterised by associated natural traits
    • A01H1/02Methods or apparatus for hybridisation; Artificial pollination ; Fertility
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H6/00Angiosperms, i.e. flowering plants, characterised by their botanic taxonomy
    • A01H6/46Gramineae or Poaceae, e.g. ryegrass, rice, wheat or maize
    • A01H6/4636Oryza sp. [rice]

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Developmental Biology & Embryology (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Physiology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Natural Medicines & Medicinal Plants (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】コシヒカリの特徴である良食味という性質を保持しつつ、耐倒伏性に優れ、かつ粒の大きい新規イネ植物を提供する。
【解決手段】イネは、イネ品種である「コシヒカリ」と「カサラス」の交配により得られる、耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善されたイネであって、 染色体上に、下記(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなることを特徴とする: (i)特定の塩基配列;(ii)前記(i)の塩基配列と少なくとも80%の同一性を有する塩基配列;および、(iii)前記(i)の塩基配列において1もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列。
【選択図】なし

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、イネ品種である「コシヒカリ」と「カサラス」の交配により得られる、耐倒伏性と粒の大きさが改善された新規品種のイネ、およびその作出方法に関する。
背景技術
コシヒカリは、我が国で開発された代表的なジャポニカ種のイネ品種であり、良食味品種として、半世紀に渡り、多くの人に指示されててきている。栽培技術の改良と消費者の良食味志向により作付け面積は年々拡大し、日本国内で最も多く栽培されている品種である。また、品種の改良のさらなる進展により、栽培の北限も北上してきており、今後も栽培面積が拡大することが予想される。
一方で、コシヒカリは長稈であるため、台風などにより倒伏しやすく、また早生になると粒が小さくなる傾向がある。このため、コシヒカリの特徴である良食味という性質を維持しつつ、耐倒伏性に優れた、改良品種が望まれている。
コシヒカリをはじめとするイネ品種を短稈化(すなわち、稈を矮化)する試みは、従来より行われている。このような試みのための一手法として、従来より、一方の親にそのF1雑種(雑種第一代)をもう一度交配する、戻し交配(または、戻し交雑)が利用されてきた。特に、連続的に戻し交配を行う連続戻し交配によれば、ある特定の遺伝子(その遺伝子を保有している親を供与親という)を、一方の親(反復親)の遺伝的背景のなかに取り込ませることによって、コンジェニック系統を作出することが可能である。
しかしながら、このような従来の戻し交配技術は、伝統的な育種技術に基づくため、染色体上の遺伝子の置換を行うには、非常に多くの時間と労力を必要とする。また、その過程では、表現型に基づいて選抜を繰り返す必要があるが、選抜には経験が必要であり、また選抜する者によって選抜結果に差異が生ずる可能性も否定できない。一方で、遺伝子工学的技術に基づいて、特定の遺伝子を取り出して、これを目的とする品種に導入することも考えられるが、近時の遺伝子組み換え作物(GMO)を忌避する消費傾向の観点からは、このような遺伝子工学的技術(特に遺伝子組み換え技術)に基づかない手段を検討すべきである。
このため、遺伝子組み換え技術によらない伝統的な育種技術を利用しつつ、育種期間の短縮と、作出手法に関して再現性の高い、効率的な方法が検討されてきた。このような効率化は、目的とする遺伝子以外の供与親に由来する他の遺伝子が、染色体上の他の領域に混入・残存することをできるだけ回避することにも役立つと考えられる。そこで、このような問題を解決する方法として、所謂マーカー育種技術が注目されている。マーカー育種技術は、従来の育種技術を基本とするものの、その選抜過程において、DNAマーカーなどの遺伝子情報・技術に基づいて選抜を行う技術である。特に、イネに関しては、イネゲノムの解読が既に行われており、イネゲノム解析技術を育種や品種識別に役立てる研究が進められている。
例えば、量的形質(QTL)に関連する遺伝子座の解析によって出穂期に関連する複数の遺伝子が報告されており、さらにそれらに基づいて得られたDNAマーカーを利用して様々な出穂期を示すイネを作出できたことが報告されている(Plant Physiol.,127,1425-,2001)。育種法の開発が検討されているDNAマーカーとしては、例えば、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)、RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)、AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)、SSR(Simple Sequence Repeat)、CAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequences)などのマーカーがある。
コシヒカリを含むイネの品種識別技術に関しては、例えば、特開2004−65251号公報(特許文献1)に、マイクロサテライトマーカーと、それを用いた品種識別法が開示されている。
また、国際公開WO2004−066719号(特許文献2)には、一塩基多型(SNP(s))(Single Nucleotide Polymorphism)の探索を行ってマーカーを作成し、これを利用してイネ植物の耐倒伏性を改善したことが開示されている。しかしながら、ここで供与親として使用されて品種は、半矮性を示す一方で、収量形質には影響を及ぼさないものであり、実際に得られている改良品種では、玄米粒の大きさの改善は見られない。すなわち、ここでの改良品種では、実際の育種の結果、収量は一見増えているものの、それは短稈化と、穂数の増大に伴うものであり、玄米の大きさはコシヒカリ等と同じであることから、粒の大きさの増大を伴わないものであった(同文献25頁(v)欄および表8)。
一般的に、品種改良において、矮性化または半矮性化というと、正常型より稈長を短縮させ、穂長や種子の粒径を矮化すること、あるいは、稈長を短縮させる一方で、穂長や、種子の粒径等の収量形質には影響を与えないようにすることをいう。品種改良の結果、稈長が短縮されて、倒伏が回避され安定して育つ結果、収量が増大することはしばしば見られることであるが、このような矮性化は、粒の大きさの増大を必ずしも保証するものではない。炊飯や調理などの過程などを考慮すると、粒の大きさが大きいことは有利であるといえ、また米は、我が国の主食でもあることから、良食味に加えて、粒の大きいことは、商品価値も高いと言える。
したがって、コシヒカリの特徴である良食味という性質を保持しつつ、耐倒伏性に優れ、かつ粒の大きい、さらなる改良品種であって、遺伝子組み換え作物ではないものが依然として望まれている。
特開2004−65251号公報 国際公開WO2004/066719号パンフレット
発明の概要
本発明者は今般、「コシヒカリ」を反復親とし、インディカ種の「カサラス」を供与親として、マーカー育種技術を利用した連続戻し交配を行うことによって、予想外にも、コシヒカリの特徴である良食味という性質を保持しつつ、耐倒伏性に優れ、さらに、粒の大きい新たな品種を作出することに成功した。このとき育種の過程では、特定の一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、染色体の遺伝子型をタイピングし、それに基づいて選抜を行った。これらマーカーに関与する染色体領域および遺伝子が、イネの粒の大きさの増大と関与することは、本発明者の知る限りこれまで報告されていない。本発明はかかる知見に基づくものである。
よって本発明は、コシヒカリの特徴である良食味という性質を保持しつつ、耐倒伏性に優れ、かつ粒の大きい新規イネ植物を提供することをその目的とする。また本発明はそのようなイネ植物を作出する方法の提供もその目的とする。
本発明によるイネ(イネ植物)は、
イネ品種である「コシヒカリ」と「カサラス」の交配により得られる、耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善されたイネであって、
染色体上に、下記(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなることを特徴とするものである:
(i) 配列番号1に示される塩基配列、
(ii) 前記(i)の塩基配列と少なくとも80%の同一性を有する塩基配列、および
(iii) 前記(i)の塩基配列において1もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列。
このイネは、換言すると、非遺伝子組み換え作物(非GMO)である。
本発明の好ましい態様によれば、前記イネは、
(a) コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として交配を行ってF1雑種を得、
(b) 得られたF1雑種に、コシヒカリを戻し交配し、この戻し交配を少なくとも2回繰り返し、
(c) 一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、得られた世代の染色体の遺伝子型をタイピングし、
(d) 染色体1上の一塩基多型であるSNP−4、SNP−5および/またはそれらの近傍がカサラス型であって、他がコシヒカリ型である個体を選抜する
工程を含んでなる方法によって得られるものである。
より好ましくは、この方法は、工程(d)の後に、
(e) 一塩基多型SNP−4とSNP−5との間に見出される複数のSNP部位について、後代をタイピングして、それらの遺伝子型に基づいて個体を選抜する工程
をさらに含む。
本発明の別の態様によれば、前記した本発明によるイネを交配親の一方とすることを特徴とする交雑育種方法が提供される。
また本発明による前記した耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善されたイネの作出方法は、下記工程:
(a) コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として交配を行ってF1雑種を得、
(b) 得られたF1雑種に、コシヒカリを戻し交配し、この戻し交配を少なくとも2回繰り返し、
(c) 一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、得られた世代の染色体の遺伝子型をタイピングし、
(d) 染色体1上の一塩基多型であるSNP−4、SNP−5および/またはそれらの近傍がカサラス型であって、他がコシヒカリ型である個体を選抜する
を含んでなることを特徴とする。
好ましくは、この方法は、工程(d)の後に、前記した(e)工程をさらに含む。
本発明によれば、コシヒカリと同等の良食味という性質を有し、かつ耐倒伏性に優れたイネであって、さらに、玄米の粒の大きいイネが提供される。また本発明による作出方法は、今回検出された特定のSNPに基づくマーカーを利用するため、当業者であれば容易に再現可能であり、前記したイネを短期間に容易かつ確実に作出することを可能とするものである。本発明により得られる新規品種のイネは、遺伝子組み換え技術によらず作出されたものであり、安全性が高く、GMOを忌避する傾向のある消費者にも安心して受け入れられるものである。
発明の具体的説明
本発明によるイネ
前記したように、本発明によるイネは、
イネ品種である「コシヒカリ」と「カサラス」の交配により得られる、耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善されたイネであって、
染色体上に、下記(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなることを特徴とするものである:
(i) 配列番号1に示される塩基配列、
(ii) 前記(i)の塩基配列と少なくとも80%(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列、および
(iii) 前記(i)の塩基配列において1もしくは複数個(好ましくは1または数個)の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列。
ここで、「染色体上に、・・から選択されるいずれかの塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなる」とは、(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列が、コシヒカリの染色体(好ましくは染色体1)上の、カサラス染色体上の配列番号1の塩基配列に対応する領域(好ましくは、コシヒカリの染色体上の配列番号2に示される配列領域)と置き換えられており、同時に、それ以外の領域については、コシヒカリの染色体が維持されている状態をいう。換言すると、(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列によりコシヒカリの染色体の一部が置き換えられている以外は、染色体上の領域は基本的にはコシヒカリ由来のものであることをいう。好ましくは、配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子はカサラス由来である。
なお、本発明によるイネの染色体1は図1に模式的に示したような状態になっていると考えられる。
前記した(ii)または(iii)の塩基配列である場合とは、配列番号1の塩基配列に遺伝子組み換え技術等の人為的操作によらずに、何らかの理由により変異を生じている場合や、供与親として使用したカサラスに変異が生じていた場合、さらには、カサラス近縁種を使用した場合を包含する主旨である。
ここで、(ii)または(iii)の塩基配列は、イネの所定の染色体領域に存在すると、前記(i)の塩基配列と実質的に同じ活性を示すものである。すなわち、本発明においては、(ii)または(iii)の塩基配列は、イネの所定の染色体領域に存在することにより、イネに、所望の耐倒伏性と玄米粒の大きさの改善を付与しうるものである。
前記(ii)の塩基配列は、(i)の塩基配列と、80%以上の同一性を有する配列からなる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、(i)の塩基配列に対して、同一性が85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列である。ここで、「同一性」の数値は、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。
前記した(iii)において、欠失、置換、挿入もしくは付加されてもよい塩基の数は例えば、1〜2400個、好ましくは1〜1200個、より好ましくは1〜600個、さらに好ましくは1〜200個、さらにより好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜50個、よりさらに好ましくは1〜10個、さらにもっと好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個である。
本発明の好ましい態様によれば、前記(iii)の塩基配列は、その塩基配列がコードしうるアミノ酸配列が、保存的置換されうる条件に従って、その塩基が置換されてもよい。ここで「保存的置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
本発明によるイネの表現型としての特徴は下記の通りである:
草型は中間型、稈長は中程度、稈の細太はやや太、稈の剛柔はやや柔、止葉の直立の程度は中程度である。穂長はやや短、穂数は中程度、粒着密度はやや密である。頴色は黄白、ふ先色は黄白〜黄、芒の有無と多少は極多、芒長は中である。玄米の形は中、玄米の大小は中、玄米の見かけの品質は中の下、光沢はやや大である。出穂期および成熟期は早生の晩、穂発芽性は難、耐倒伏性は極弱である。なおここでの指標は、コシヒカリを比較対象とし、必要により、農林水産省で公開されている水稲の特性表および審査基準に従って評価したものである。
本発明の別の態様によれば、前記したように、本発明によるイネを交配親の一方とすることを特徴とする交雑育種方法が提供される。交配親の他方のものとしては、ジャポニカ種やインディカ種のイネ品種のいずれであってもよく、特に限定されない。したがって、例えば、コシヒカリ、ササニシキ、あきたこまち、日本晴、はえぬき、ひとめぼれ、ミルキークイーン、山田錦、ヒノヒカリ、キヌヒカリ、きらら397、ハバタキ等のような公知の品種を他方の交配親として使用できる。本発明による交雑育種方法によって、本発明によるイネと同等の耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善された交雑種を得ることができる。
本発明のさらに別の態様によれば、本発明によるイネを交配親の一方として交雑育種することによって得られるイネが提供される。ここでいうイネは、F1雑種のことであることができる。あるいは、ここでいうイネが、該交雑育種のF1より後代を意味する場合には、少なくとも該イネは、前述した本発明によるイネと同等の耐倒伏性と玄米粒の大きさの改善が見られるものである。
イネの作出
本発明による新規イネは、品種「コシヒカリ」と「カサラス」との交配により得られるものである。好ましくは、前記したように、下記工程(a)〜(d)を含んでなる方法により得られるものである:
(a) コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として交配を行ってF1雑種を得、
(b) 得られたF1雑種に、コシヒカリを戻し交配し、この戻し交配を少なくとも2回繰り返し、
(c) 一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、得られた世代の染色体の遺伝子型をタイピングし、
(d) 染色体1上の一塩基多型であるSNP−4、SNP−5および/またはそれらの近傍がカサラス型であって、他がコシヒカリ型である個体を選抜する。
ここで、「戻し交配」とは、反復親と供与親とを交配することによって得られた交配後代(F1雑種)から次の世代の交配に用いる個体を、所定の条件にて選抜し、反復親を再びその選抜した個体に交配させ、この操作を繰り返すことをいう。このような交配によって、最終的に目的の遺伝子座が供与親型のホモ接合で、それ以外の染色体領域が反復親由来の染色体で構成されたコンジェニック系統の植物体を得ることができる。
本発明においては、交配後代の選抜の際に、その染色体の遺伝子型を、SNPマーカーを用いてタイピングし、染色体の遺伝子型に基づいて次世代の交配に用いる個体を選択する。選抜は、典型的には、胚〜発芽期の形態から成体への移行過程において行う。
またここで、一塩基多型(SNP)とは、塩基配列において1個の塩基が変異した多型をいい、本発明においては反復親である「コシヒカリ」と供与親である「カサラス」との間の点変異を意味する。なお本発明における一塩基多型(SNP)は、一塩基の置換による多型を意味することに加えて、塩基の挿入、欠失または付加も包含しうる意味である。
本発明よるイネの作出方法の概要は、図2に模式的に示したとおりである。以下、さらに具体的に説明する。
工程(a)および(b):
コシヒカリ(反復親)とカサラス(供与親)の種子を用意し、これらをまず数日間(例えば2日間)、水に浸して約30℃に保温して催芽を施す。これらを温室にて栽培を進め、出穂させ交配させる。交配は、コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として行い、通常、母本の除雄を行った後、授粉を行う。交配処理後、約3〜4週間で登熟した段階、F1雑種の種子を得ることができる。
次いで得られたF1雑種の種子を前記親の場合と同様に、催芽を施し、栽培して出穂させる。ここに、同様にして出穂させたコシヒカリを交配させ、第1回目の戻し交配を行う。ここで交配は、F1雑種を母本とし、コシヒカリを夫本とし、これにより、BC1F1世代が得られる。得られたBC1F1世代の種子を前記と同様に処理し、BC1F1世代を母本とし、コシヒカリを夫本として次の交配を行い、戻し交配を繰り返す。
この戻し交配を前記場合も含め少なくとも2回(好ましくは少なくとも3回)繰り返す。得られる世代が、BC2F1世代かそれより後代(好ましくはBC3F1世代)となった段階で、SNPマーカーを用いて、得られた世代の染色体の遺伝子型をタイピングする。
遺伝子型をタイピングするために、コシヒカリ(反復親)とカサラス(供与親)の間で使用可能なSNPマーカーを全染色体上に予め設定しておくことが望ましい。
ここで、「コシヒカリ」と「カサラス」からのゲノムDNA抽出は、例えば、CTAB法(Murray,M.G,et al.,Nucleic.Acids.Res.,8,4321-4325,1980等)を用いて行うことができる。
SNPマーカーの設定は、Rice Genome Research Program(RGP)により公開されているイネEST,BAC等の塩基配列データベース(http://rgp.dna.affrc.go.jp/Publicdata.html)や、公知のマーカーの情報、例えば、株式会社インプランタイノベーションズのwebホームページ(http://www.inplanta.jp/service/marker.html)に公開されている、コシヒカリとカサラス間のマーカー設定用のBAC情報(図3)を利用して行うことが出来る。
SNP検出は、例えば、AcycloPrime-FP法(Genome Research,9,492-498,1999)、PCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism)法(Genomics,Jan 1,12(1),139-146,1992;Oncogene,Aug 1,6(8),1313-1318,1991;PCR Methods Appl.,Apr 1,4(5),275-282,1995)、TaqMan PCR法(SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、pp.94-105)、Invader法(SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、pp.94-105)、Pyrosequencing法(Anal.Biochem.,10,103-110,2000)、MALDI-TOF MS法(Trends Biotechnol.,18,77-84,2000)、DNAアレイ法(SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、pp.128-135)等によって行うことができる。
本発明においては、上記情報に基づいて、一染色体当たり、複数個のSNPマーカーが存在するように設定する。本発明おいて、ゲノム全体について検出され、利用可能なSNPは、表1に示される89個のものが挙げられる。なおここで、SNPポジションはTIGR(The Institute for Genomic Research)(http://www.tigr.org/(TIGR Genome Annotation))のデータベース上の位置(TIGR RICE Pseudomolecules)を表す。
また、SNPマーカーに対応するゲノムPCRプライマーセット(5’側プライマー、3’側プライマー)およびSNPプライマーの配列は表2に示されるとおりである。
工程(c)および(d):
遺伝子型のタイピングに際しては、タイピングを行う世代の種子を播種し、播種日より約7〜14日後に幼苗の葉を採取し、ここから、ゲノムDNAを簡易ゲノム抽出法(Lisa Monna,et al.,DNA Research,9,11-17,2002)により抽出する。
まず、両系統それぞれのゲノムDNAを鋳型としてSNPを含む領域をPCRにより増幅し、アガロースゲル電気泳動で増幅を確認した後、増幅産物を酵素処理して残存プライマーの分解、モノヌクレオチドの脱リン酸化を行う。次いで、SNPの一塩基手前に作成したSNPプライマーとそれぞれのSNPに対応する2種類の蛍光標識ジデオキシヌクレオチド(ddATP,ddCTP,ddGTP,ddCTPのうちいずれか2種類)を用いて、PCR産物を鋳型とし一塩基伸長反応させる(AcycloPrime反応)。反応産物はそれぞれのSNPに対応した蛍光偏光度を示すため(Chen,X.et al.,Genome Res.,9,492-498,1999)、この蛍光偏光度を測定し、遺伝子型をタイピングする。なおここで、遺伝子型の「タイピング」とは、SNP部位の塩基種がコシヒカリ型か、カサラス型かを決定・判定することをいう。
前記したBC2F1世代かそれより後代(好ましくはBC3F1世代)となった段階での染色体の遺伝子型をタイピングし、それに基づいて、染色体上のSNP−4、SNP−5および/またはそれらの近傍がカサラス型であって、他がコシヒカリ型である個体を選抜する。ここで近傍とは、SNP−4およびSNP−5に隣接する、SNP−3、および/またはSNP−6である。
上記で選抜された個体(選抜されたBC2F1世代かそれより後代(好ましくはBC3F1世代))をさらに戻し交配し、この世代(BC3F1世代かそれより後代(好ましくはBC4F1世代))において染色体の遺伝子型をタイピングし、染色体上のSNP−4およびSNP−5のみがカサラス型であるもの、または、SNP−4およびSNP−5と、近傍であるSNP−3および/またはSNP−6とのみがカサラス型であるものを選抜する。
工程(e):
本発明の好ましい態様によれば、前記工程の後に、一塩基多型SNP−4とSNP−5との間に見出される複数のSNP部位について、後代をタイピングして、それらの遺伝子型に基づいて個体を選抜する工程をさらに行う。
本発明で設定されたSNPの内、SNP−4とSNP−5との間には、さらに、SNP−101、SNP−102、SNP−103、SNP−104、およびSNP−105が検出される。したがって、上記の「SNP−4とSNP−5との間に見出される複数のSNP部位」とは、好ましくは、SNP−101、SNP−102、SNP−103、SNP−104、およびSNP−105である。
上記において得られた世代(BC3F1世代かそれより後代(好ましくはBC4F1世代))から次世代(好ましくはBC4F2世代)を得、これを1000個体程度育苗し、タイピングにより、この中から、SNP−101、SNP−102、SNP−104、およびSNP−105がそれぞれ、コシヒカリホモ型、ヘテロ型、ヘテロ型、およびヘテロ型、または、ヘテロ型、ヘテロ型、ヘテロ型、およびコシヒカリホモ型の遺伝子型を示す個体を選抜する。
次いで、選抜した世代のさらに後代(好ましくはBC4F3世代)を得、これを1000個体程度育苗し、タイピングにより、この中から、SNP−101、SNP−102、SNP−104、およびSNP−105がそれぞれ、コシヒカリホモ型、ヘテロ型、ヘテロ型、およびコシヒカリホモ型の遺伝子型を示す個体を選抜する。
さらにこの選抜した世代のさらに後代(好ましくはBC4F4世代)を得、これを20個体程度育苗し、タイピングにより、この中から、SNP−101、SNP−102、SNP−103、SNP−104、およびSNP−105がそれぞれ、コシヒカリホモ型、カサラスホモ型、カサラスホモ型、およびコシヒカリホモ型の遺伝子型を示す個体を選抜する。
この選択により、目的とするイネを得ることができる。得られた固定系統を圃場で栽培し、詳細な形質調査を行ことによって、粒が大きいのみでなく稈長も低くなることが確認できる。
本発明によるイネが、染色体上に、(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなることを特徴とすることは前記したところであるが、本発明に従い育成されたイネが、かかる塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなることについては、例えば、後述する実施例で提示したSNP情報に基づくマーカーによりタイピングを行うことによって、当業者であれば容易に確認することができる。また、必要であれば、染色体1上の所定の遺伝子領域をシークエンスし、該SNPマーカーを用いてタイピングを行うことによって、確認してもよい。あるいは、染色体1上の所定の遺伝子領域をシークエンスし、AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)等のようなゲノム全体をサーチできるマーカーを利用して、確認してもよい。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1: SNPマーカーの検出・設定
本発明において、反復親である品種「コシヒカリ」と供与親である品種「カサラス」との間で使用可能なSNPを全ゲノム上に下記のようにして89個検出して(表1)、SNPマーカーを設定した(表2)。
コシヒカリとカサラスとを用意し、これらの成葉から、例えば、CTAB法を用いてゲノムDNA抽出を行った。次いで、公開データベースに基づいて、まずジャポニカ種(「日本晴れ」)とインディカ種(「9311」、BGI(Beijing Genomics Institute))を比較し、SNP部位を探し、これらSNPを検出できるようにプライマーを設計した(約300種)。得られたプライマーより、SNPマーカーに対するゲノムPCRプライマーセット(5’側プライマー、3’側プライマー)を作成し、これを用いて、上記で抽出した「コシヒカリ」、「カサラス」のそれぞれのゲノムDNAを鋳型としてSNPを含む領域を増幅した。増幅産物をアルカリフォスファターゼとエクソヌクレアーゼIで処理して残存プライマーの分解、モノヌクレオチドの脱リン酸化を行った。それぞれのSNPに対応するSNPプライマーと2種類の蛍光標識ジデオキシヌクレオチド(ddATP,ddCTP,ddGTP,ddCTPのうちいずれか2種類)を用いて、PCR産物を鋳型とし一塩基伸長反応(AcycloPrime反応)をAcycloPrime-FP SNPs Detection Kit(PerkinElmer Life Sciences社製)を用いて行った。反応産物の蛍光偏光度をマルチラベルカウンターARVO 1420-043(PerkinElmer Life Science社製)で読みとり、SNP部位の塩基種(遺伝子型)を判定した。この探索と、公知のイネ塩基配列データベース(例えば、http://rgp.dna.affrc.go.jp/Publicdata.html)を利用して新規に作成した1個を合わせ、「コシヒカリ」と「カサラス」間で多型を示す89個のSNPマーカーを設定した。
さらに、「日本晴れ」の公開情報に基づき、「コシヒカリ」および「カサラス」を実際にシークエンスし、SNPを検出し、それに基づきプライマーを設計し、マーカー(SNP−101、SNP−102、SNP−103、SNP−104、およびSNP−105)を作製した。
例2: 本発明のイネの育成
コシヒカリ(反復親)とカサラス(供与親)の種子を用意し、これらにまず催芽処理を施した後、温室にて栽培を進め、出穂させ、交配させた。交配は、コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として行い、母本の除雄を行った後、授粉を行った。交配処理後、登熟させた後、F1雑種の種子を得た。
得られたF1雑種の種子を栽培して出穂させ、ここに、コシヒカリを交配させ、戻し交配を行い、BC1F1世代を得た。ここでの交配は、F1雑種を母本とし、コシヒカリを夫本とした。
得られたBC1F1世代の種子を、BC1F1世代を母本とし、コシヒカリを夫本として、戻し交配をさらに2回繰り返し、BC3F1世代を得た。
次いで得られたBC3F1世代の染色体の遺伝子型をSNPマーカーを用いてタイピングした。
遺伝子型のタイピングに際しては、タイピングを行う世代の種子を播種し、播種日より約7〜14日後に幼苗の葉を採取し、ここから、ゲノムDNAを簡易ゲノム抽出法(Lisa Monna,et al.,DNA Research,9,11-17,2002)により抽した。
まず、両系統それぞれのゲノムDNAを鋳型としてSNPを含む領域をPCRにより増幅し、アガロースゲル電気泳動で増幅を確認した後、増幅産物を酵素処理して残存プライマーの分解、モノヌクレオチドの脱リン酸化を行った。次いで、SNPの一塩基手前に作成したSNPプライマーとそれぞれのSNPに対応する2種類の蛍光標識ジデオキシヌクレオチド(ddATP,ddCTP,ddGTP,ddCTPのうちいずれか2種類)を用いて、PCR産物を鋳型とし一塩基伸長反応させた(AcycloPrime反応)。反応産物はそれぞれのSNPに対応した蛍光偏光度を示すため(Chen,X.et al.,Genome Res.,9,492-498,1999)、この蛍光偏光度をマルチラベルカウンターで測定し、遺伝子型をタイピングした。
タイピングの結果に基づき、染色体上のSNP−4およびSNP−5がカサラス型であって、他のSNP部位の80%以上がコシヒカリ型である個体を選抜した。
選抜されたBC3F1世代を自植して、BC4F1世代を得、このBC4F1世代の染色体の遺伝子型をタイピングし、染色体上のSNP−4およびSNP−5のみがカサラス型であるもの、または、SNP−4およびSNP−5と、近傍であるSNP−3および/またはSNP−6とのみがカサラス型であるものを選抜した。
選抜されたBC4F1世代を自植して、BC4F2世代を得、これを1000個体育苗した。タイピングにより、この中から、SNP−101、SNP−102、SNP−104、およびSNP−105がそれぞれ、コシヒカリホモ型、ヘテロ型、ヘテロ型、およびヘテロ型、または、ヘテロ型、ヘテロ型、ヘテロ型、およびコシヒカリホモ型の遺伝子型を示す個体を選抜した。
次いで、選抜されたBC4F2世代を自植して、BC4F3世代を得、これを1000個体育苗した、タイピングにより、この中から、SNP−101、SNP−102、SNP−104、およびSNP−105がそれぞれ、コシヒカリホモ型、ヘテロ型、ヘテロ型、およびコシヒカリホモ型の遺伝子型を示す個体を選抜した。
さらに選抜されたBC4F3世代を自植して、BC4F4世代を得、これを20個体育苗した。タイピングにより、この中から、SNP−101、SNP−102、SNP−103、SNP−104、およびSNP−105がそれぞれ、コシヒカリホモ型、カサラスホモ型、カサラスホモ型、およびコシヒカリホモ型の遺伝子型を示す個体を選抜した。
この選抜により、目的とするイネ植物を得た。なお、得られた本発明によるイネは、コシヒカリ型への置換率を計算したところ、99.9%であった。
例3: 栽培試験
例2に従って得られた固定系統を、圃場(愛知県愛知郡東郷町内の農場)において、2005年と2006年の2年間に渡り2回栽培し、詳細な形質調査(特性調査)を行った。
形質調査にあたっては、比較例として、コシヒカリと、日本晴の各品種を同条件にて栽培した。
栽培規模は、各品種について0.06aであり、耕種方法は愛知県における標準的な水稲の耕種方法によった。本発明によるイネはコシヒカリと同様に病抵抗性を有さないため、適期に必要な薬剤散布を行い防除に努めた。
例4: 本発明によるイネの特性
例3に従って栽培した本発明によるイネと、比較例であるコシヒカリおよび日本晴について、稈長、穂長、穂数、籾1000粒重、玄米1000粒重、および種子の再分化能などについて、測定し比較を行った。測定および評価にあたっては、農林水産省の品種登録ホームページ(http://hinsyu.maff.go.jp/)で公開されている水稲の特性表および審査基準に従った。結果は下記の通りであった。
なお図9は出穂期の本発明によるイネとコシヒカリの形態を撮影した写真である。図10は、収穫された本発明によるイネとコシヒカリを撮影した写真である。また図11は、本発明によるイネと比較例としてのコシヒカリ、日本晴およびアキヒカリの玄米を比較して撮影した写真である。
出穂期:
各品種の出穂期(出穂日)を調査した。出穂日は、2005年栽培時および2006年栽培時共に、本発明によるイネ(両年とも8月8日)とコシヒカリ(2005年は8月8日、2006年は8月9日)とでは、殆ど差がないことが確認された。
稈長:
成熟期を迎えたイネを採取し、穂の長さを除いて、それぞれの稈長を測定し、各裁判条件ごとに平均値を求めた。
結果は図4に示されるとおりであった。
結果から明らかなように、成熟期における本発明によるイネの稈長は、コシヒカリよりも平均して6cm程短かった。
穂長および穂数:
穂長および穂数についての結果はそれぞれ図5および図6に示されるとおりであった。
籾1000粒重:
結果は図7に示されるとおりであった。
籾1000粒重については、本発明によるイネの重量がコシヒカリに比べて大きい傾向が観察された。
玄米1000粒重:
結果は図8に示されるとおりであった。
玄米1000粒重についても、本発明によるイネの重量がコシヒカリに比べて大きい傾向が観察された。
玄米の長さ、幅、形、色、および香り:
玄米の長さは、2005年および2006年の測定値の平均をとると、本発明によるイネでは5.06mmであり、コシヒカリでは、5.01mmであった。
玄米の幅は、2005年および2006年の測定値の平均をとると、本発明によるイネでは2.99mmであり、コシヒカリでは、2.91mmであった。
玄米の側面からの形は、本発明によるイネおよびコシヒカリの共に半円形であり、色は共に淡い褐色で、香りも共に殆ど無いといえるものであった。
上記のように本発明によるイネは、コシヒカリに比べて稈長が短く、穂長等については大きな差異の見られないものであった。このため、本発明によるイネは、コシヒカリに比べて耐倒伏性に優れているといえる。
食味官能試験:
例3の圃場にて、同条件にて、本発明によるイネ(系統1および3)と、コシヒカリ(比較例)(系統2および4)とを慣行法にしたがって栽培し、各系統のイネを10個体収穫し、これを財団法人日本穀物検定協会に送り、協会で定める食味官能試験に供した。
なお、系統1(本発明)と系統2(比較例)、および系統3(本発明)および系統4(比較例)はそれぞれ隣接した試験区で栽培したものである。
食味官能試験は、供試米と、協会の定める基準米(コシヒカリと日本晴れとのブレンド米)とを、それぞれ同条件にて炊飯し、供試米について専門のパネリスト20名が外観、香り、味、粘り、および、硬さの5項目について、基準米と比較して、良い場合は+、悪い場合は−のスコアを付けることによって評価した。各スコアの値については、次のような基準に従った:
・スコア基準: 5:極端に、4:たいそう、3:かなり、2:少し、1:わずかに
これらに従い、各項目について−5〜+5までの11段階(粘り、硬さについては7段階)で評価した。さらに、5項目の結果から、協会の所定の方法に従い、総合評価を算出した。
結果は下記表3に示されるとおりであった。
結果から明らかなように、隣接した試験区で栽培した本発明によるイネと、コシヒカリとの比較において、食味の総合評価において有意な差異は認められなかった。他の評価項目においても、その差はいずれも僅かであり、本発明によるイネは、コシヒカリと同等の食味特性を有すると考えられた。
本発明によるイネの染色体1の模式的な図である。 本発明によるイネの作出過程のスキームの例を示した図である。 コシヒカリとカサラスとの間のマーカー設定用のBAC情報を示す。 コシヒカリとカサラスとの間のマーカー設定用のBAC情報を示す。 栽培した品種の稈長の測定結果を示す図である。 栽培した品種の穂長の測定結果を示す図である。 栽培した品種の穂数の測定結果を示す図である。 栽培した品種の籾1000粒重の測定結果を示す図である。 栽培した品種の玄米1000粒重の測定結果を示す図である。 出穂期の本発明によるイネとコシヒカリの形態を撮影した写真である。 収穫された本発明によるイネとコシヒカリを撮影した写真である。 本発明によるイネと比較例としてのコシヒカリ、日本晴およびアキヒカリの玄米を比較して撮影した写真である。

Claims (7)

  1. イネ品種である「コシヒカリ」と「カサラス」の交配により得られる、耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善されたイネであって、
    染色体上に、下記(i)〜(iii)から選択されるいずれかの塩基配列を有し、かつ、残部の染色体領域がコシヒカリ由来の染色体で構成されてなることを特徴とする、イネ:
    (i) 配列番号1に示される塩基配列、
    (ii) 前記(i)の塩基配列と少なくとも80%の同一性を有する塩基配列、および
    (iii) 前記(i)の塩基配列において1もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列。
  2. 非遺伝子組み換え作物(非GMO)である、請求項1に記載のイネ。
  3. (a) コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として交配を行ってF1雑種を得、
    (b) 得られたF1雑種に、コシヒカリを戻し交配し、この戻し交配を少なくとも2回繰り返し、
    (c) 一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、得られた世代の染色体の遺伝子型をタイピングし、
    (d) 染色体1上の一塩基多型であるSNP−4、SNP−5および/またはそれらの近傍がカサラス型であって、他がコシヒカリ型である個体を選抜する
    工程を含んでなる方法によって得られるものである、請求項1または2に記載のイネ。
  4. 前記方法が、工程(d)の後に、
    (e) 一塩基多型SNP−4とSNP−5との間に見出される複数のSNP部位について、後代をタイピングして、それらの遺伝子型に基づいて個体を選抜する工程
    をさらに含む、請求項3に記載のイネ。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のイネを交配親の一方とすることを特徴とする、交雑育種方法。
  6. 請求項1に記載の耐倒伏性と玄米粒の大きさが改善されたイネの作出方法であって、
    下記工程:
    (a) コシヒカリを母本とし、カサラスを夫本として交配を行ってF1雑種を得、
    (b) 得られたF1雑種に、コシヒカリを戻し交配し、この戻し交配を少なくとも2回繰り返し、
    (c) 一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、得られた世代の染色体の遺伝子型をタイピングし、
    (d) 染色体1上の一塩基多型であるSNP−4、SNP−5および/またはそれらの近傍がカサラス型であって、他がコシヒカリ型である個体を選抜する
    を含んでなることを特徴とする、作出方法。
  7. 工程(d)の後に、
    (e) 一塩基多型SNP−4とSNP−5との間に見出される複数のSNP部位について、後代をタイピングして、それらの遺伝子型に基づいて個体を選抜する工程
    をさらに含む、請求項6に記載の作出方法。
JP2007131987A 2007-05-17 2007-05-17 イネおよびその作出方法 Expired - Fee Related JP4368391B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007131987A JP4368391B2 (ja) 2007-05-17 2007-05-17 イネおよびその作出方法
US12/122,389 US8030561B2 (en) 2007-05-17 2008-05-16 Rice plant and method for producing the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007131987A JP4368391B2 (ja) 2007-05-17 2007-05-17 イネおよびその作出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008283902A true JP2008283902A (ja) 2008-11-27
JP4368391B2 JP4368391B2 (ja) 2009-11-18

Family

ID=40137935

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007131987A Expired - Fee Related JP4368391B2 (ja) 2007-05-17 2007-05-17 イネおよびその作出方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US8030561B2 (ja)
JP (1) JP4368391B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4892648B1 (ja) * 2011-03-18 2012-03-07 本田技研工業株式会社 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
JP4892647B1 (ja) * 2011-03-18 2012-03-07 本田技研工業株式会社 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
JP4961504B1 (ja) * 2011-03-18 2012-06-27 本田技研工業株式会社 新品種
US9072230B2 (en) 2011-03-18 2015-07-07 Honda Motor Co., Ltd. Method for producing rice F1 seed, rice F1 seed, and rice male sterile line
US9943048B2 (en) 2011-03-18 2018-04-17 Honda Motor Co., Ltd. Method for producing rice F1 seed, rice F1 seed, and rice male sterile line
CN112609017A (zh) * 2020-12-08 2021-04-06 浙江大学 检测水稻籽粒小粒形的分子标记及对应的基因和应用

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021161216A (ja) 2020-03-31 2021-10-11 住友化学株式会社 オレフィン重合用固体触媒成分

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003000260A (ja) * 2001-06-19 2003-01-07 Honda Motor Co Ltd 植物の半矮性化に関与するsd1遺伝子、並びにその利用
JP5106743B2 (ja) 2002-06-13 2012-12-26 三菱化学メディエンス株式会社 マイクロサテライトマーカーを用いるイネ品種の識別法
WO2004066719A1 (ja) 2003-01-31 2004-08-12 Plant Genome Center Co., Ltd. 改良植物品種の迅速な育種方法
KR101192258B1 (ko) * 2003-07-31 2012-10-17 고쿠리츠 다이가쿠 호우징 나고야 다이가쿠 식물에 재분화능을 부여하는 유전자 및 그 이용

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4892648B1 (ja) * 2011-03-18 2012-03-07 本田技研工業株式会社 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
JP4892647B1 (ja) * 2011-03-18 2012-03-07 本田技研工業株式会社 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
JP4961504B1 (ja) * 2011-03-18 2012-06-27 本田技研工業株式会社 新品種
WO2012127558A1 (ja) * 2011-03-18 2012-09-27 本田技研工業株式会社 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
WO2012127559A1 (ja) * 2011-03-18 2012-09-27 本田技研工業株式会社 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
CN103429073A (zh) * 2011-03-18 2013-12-04 本田技研工业株式会社 新品种、植物品种的鉴别方法以及使水稻个体早熟的方法
CN103429074A (zh) * 2011-03-18 2013-12-04 本田技研工业株式会社 新品种、植物品种的鉴别方法以及使水稻个体早熟的方法
US8981193B2 (en) 2011-03-18 2015-03-17 Honda Motor Co., Ltd. Cultivar, method for differentiating plant cultivars, and method for causing earlier maturing of rice individual
US9029669B2 (en) 2011-03-18 2015-05-12 Honda Motor Co., Ltd. Cultivar, method for differentiating plant cultivars, and method for causing earlier maturing of rice individual
US9072230B2 (en) 2011-03-18 2015-07-07 Honda Motor Co., Ltd. Method for producing rice F1 seed, rice F1 seed, and rice male sterile line
CN103429073B (zh) * 2011-03-18 2015-08-12 本田技研工业株式会社 新品种的培育方法、植物品种的鉴别方法以及使水稻个体早熟的方法
US9943048B2 (en) 2011-03-18 2018-04-17 Honda Motor Co., Ltd. Method for producing rice F1 seed, rice F1 seed, and rice male sterile line
CN112609017A (zh) * 2020-12-08 2021-04-06 浙江大学 检测水稻籽粒小粒形的分子标记及对应的基因和应用

Also Published As

Publication number Publication date
US8030561B2 (en) 2011-10-04
JP4368391B2 (ja) 2009-11-18
US20080320611A1 (en) 2008-12-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2023153180A (ja) トバモウイルスであるトマト褐色縮葉フルーツウイルス(tbrfv)に対するソヌラム・リコペルシカム植物における耐性
ES2555379T3 (es) Planta de pimiento mejorada
AU2012287107B2 (en) Methods and compositions to produce rice resistant to ACCase inhibitors
JP4368391B2 (ja) イネおよびその作出方法
US9994862B2 (en) Rice resistant to HPPD and ACCase inhibiting herbicides
US20140059721A1 (en) Rice resistant/tolerant to hppd inhibiting herbicides
US20240043863A1 (en) Resistance to cucumber green mottle mosaic virus in cucumis sativus
US20230212601A1 (en) Mutant gene conferring a compact growth phenotype in watermelon
US20130191940A1 (en) Dominant earliness mutation and gene in sunflower (helianthus annuus)
JP4892647B1 (ja) 新品種、植物品種の鑑別方法、及びイネ個体を早生化する方法
CN110167339B (zh) 多产开花西瓜
KR102576009B1 (ko) 벼에서 제초제 저항성/내성과 연관된 돌연변이의 조합을 위한 방법 및 조성물
WO2015025031A1 (en) Rice resistant to hppd and accase inhibiting herbicides
JPWO2004066719A1 (ja) 改良植物品種の迅速な育種方法
US20220053731A1 (en) Solanaceous plant capable of stenospermocarpic fruit formation
EP4338585A1 (en) Spinach plant having novel downy mildew-resistant gene
WO2023074911A1 (ja) 新規べと病抵抗性遺伝子を有するホウレンソウ植物
RU2792674C2 (ru) Растение арбуза, характеризующееся продуктивным цветением
JP2005229849A (ja) 休眠性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用
JP2005229847A (ja) 穂長に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用
JP2005229848A (ja) 穂軸節間長に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用
JPH0856671A (ja) トマトの根こぶ線虫抵抗性の鑑別法
JP2005229853A (ja) 小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090407

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090608

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090710

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090714

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090814

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090825

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4368391

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120904

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120904

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130904

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140904

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees