JP2005229853A - 小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用 - Google Patents
小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】 オオムギの詳細な連鎖地図を作成し、連鎖解析を行なうことにより、オオムギ3H染色体上に座乗する小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖する一組の遺伝マーカーを見出した。
【選択図】 なし
Description
本発明にかかる遺伝マーカーは、イネ科植物のゲノムDNA中に存在し、小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖しているものであればよい。イネ科植物としてはムギ類であることが好ましく、オオムギであることが特に好ましい。イネ科植物とは、オオムギ属、コムギ属、イネ等の植物であればよく、特に限定されるものではない。また、ムギ類とは、例えばオオムギ、コムギ、ライムギ、ライコムギ、エンバク等を意味する。
AAATCACGACGAGTTGGCAT(配列番号1)に示される塩基配列を有するプライマー、および
CAAGTCGTTGGAGGAGAAGC(配列番号2)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅されるDNAマーカーであり、上記3H染色体上に検出された小穂脱落性を支配する遺伝子座から短腕側に約3.1センチモルガン(以下cMと表示する)の距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:BaGS4J14、配列番号5)に基づいて設計されている。図1に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号1)および上記プライマー配列(配列番号2)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間にSNP(single nucleotide polymorphisms;一塩基多型)がある。図2に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上がH602の塩基配列(配列番号6)であり、下がはるな二条の塩基配列(配列番号7)である。□で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素HhaIの認識配列(GCGC)を示す。図2から明らかなように、H602の増幅産物は制限酵素HhaIの認識配列(GCGC)を有しているためHhaIで切断されるが、はるな二条の増幅産物は上記認識配列部分のCがTに変異しているため(GTGC)制限酵素HhaIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk08490は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーであり、上記第一プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素HhaI切断により、対象個体が3H染色体に座乗する小穂脱落性を支配する遺伝子座の対立遺伝子について、はるな二条型の遺伝子型を有するか、H602型の遺伝子型を有するかを判別できる。
AAGCCTGTGGGACTCCATAA(配列番号3)に示される塩基配列を有するプライマー、および
TTGCAAGGACTCATTGGGTA(配列番号4)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記3H染色体上に検出された小穂脱落性を支配する遺伝子座から長腕側に約5.8cMの距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:BaH32J06、配列番号8)に基づいて設計されている。図3に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号3)および上記プライマー配列(配列番号4)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間にSNPがある。図4に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上がH602の塩基配列(配列番号9)であり、下がはるな二条の塩基配列(配列番号10)である。□で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素BanIIの認識配列(G[GA]GC[CT]C)を示す。図4から明らかなように、はるな二条の増幅産物は制限酵素BanIIの認識配列(GAGCTC)を有しているためBanIIで切断されるが、H602の増幅産物は上記認識配列部分のCがTに変異しているため(GAGTTC)制限酵素BanIIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk09337は、CAPSマーカーであり、上記第二プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素BanII切断により、対象個体が3H染色体に座乗する小穂脱落性を支配する遺伝子座の対立遺伝子について、はるな二条型の遺伝子型を有するか、H602型の遺伝子型を有するかを判別できる。
〔小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片の単離方法〕
上述のとおり本発明にかかる遺伝マーカー(k08490、k09337)は、オオムギ3H染色体上に検出された小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖するものである。よって、k08490、k09337の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ3H染色体上に検出された小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができる。
上記本発明にかかる小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片の単離方法によって得られた小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片をイネ科植物のゲノムDNAに導入することによって、小穂脱落性改変イネ科植物を生産することが可能である。イネ科植物としてはムギ類であることが好ましく、オオムギであることが特に好ましい。また、例えば、オオムギから単離された小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片をオオムギ以外のイネ科植物に導入することも可能であり、同一属間のみでの単離、導入に限定されるものではない。
本発明にかかる小穂脱落性改変イネ科植物の選抜方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを指標として小穂脱落性改変イネ科植物を選抜する方法であればよく、その他の工程、条件、材料等は特に限定されるものではない。例えば、従来公知の作物育種法を利用することができる。
醸造用オオムギ「はるな二条」(Hordeum vulgare ssp. vulgare variety Harunanijo)と野生オオムギ「H602」(Hordeum vulgare ssp. spontaneum H602)との交配から得られたF1の花粉を培養して半数体(haploid)を育成し、自然倍加した倍加半数体(doubled haploid)93個体からなる集団(DH集団)を使用した。
本発明者らが有するオオムギEST配列約12万をphredによって再度ベースコールした後、quality score 20でトリミングし、ベクターマスキングを行って3’端約6万配列を得た。これらの配列からphrapによってcontig 8,753、 singlet 6,686からなるUnigeneを作成した。プライマー作成ソフトPrimer3によって、400bpを中心として150-500bpのcDNA配列を増幅するプライマーセット約11,000を作成した。このうち約5,100のプライマーセットについて、はるな二条とH602との間に増幅されるゲノム断片の多型の有無を検出するために、それぞれのゲノムDNAをPCR増幅し、アガロースゲル電気泳動によってバンドの有無、バンド数、バンドサイズを調査し、マーカーとなり得るものを選択した。さらに、バンドサイズに多型のない場合は、増幅断片をダイレクトシークエンスすることにより塩基配列の差異を検出し、39種類の制限酵素に対してCAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)化が可能なものをマーカーとして選択した。
DH集団各個体の遺伝子型の判定は、上記DH集団の連鎖地図にマッピングされたマーカーを用いて行った。すなわち、各個体の新鮮な葉の組織から分離したDNAを鋳型として、EST配列に基づいて設計したプライマーセットを用いてPCRを行った。断片長多型マーカーについてはPCR産物の電気泳動により遺伝子型を判定した。CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーについては、PCR産物を制限酵素で消化し、電気泳動により遺伝子型を判定した。
DH集団の各個体について、登熟後に小穂脱落性か小穂非脱落性かを調査し、記録した。
連鎖解析は、小穂脱落性の表現型と上記連鎖地図上のマーカーの遺伝子型との組換え頻度を調べ、最も組換え頻度の少ないマーカーを特定し、小穂脱落性を支配する遺伝子座の位置を推定した。
結果を表1に示した。表1から明らかなように、小穂脱落性を支配する遺伝子座は3H染色体上の、遺伝マーカーk08490とk09337とに挟まれる位置に検出された。小穂脱落性を支配する遺伝子座は、遺伝マーカーk08490から長腕側に3.1cM、遺伝マーカーk09337から短腕側に5.8cMの位置に座乗することが推定された。
Claims (12)
- イネ科植物のゲノムDNA中に存在し、小穂脱落性を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
上記小穂脱落性を支配する遺伝子座から0ないし9センチモルガンの範囲内の距離に位置することを特徴とする遺伝マーカー。 - 上記イネ科植物がムギ類であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝マーカー。
- 上記ムギ類がオオムギであることを特徴とする請求項2に記載の遺伝マーカー。
- 上記ゲノムDNAが3H染色体であることを特徴とする請求項3に記載の遺伝マーカー。
- 配列番号1に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号2に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遺伝マーカー。
- 配列番号3に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号4に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遺伝マーカー。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遺伝マーカーを用いて小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離することを特徴とするDNA断片の単離方法。
- 請求項7に記載の単離方法により得られた上記小穂脱落性を支配する遺伝子座を含むDNA断片を、イネ科植物のゲノムDNAに導入することを特徴とする小穂脱落性改変イネ科植物の生産方法。
- 上記イネ科植物がムギ類であることを特徴とする請求項8に記載の小穂脱落性改変イネ科植物の生産方法。
- 上記ムギ類がオオムギであることを特徴とする請求項9に記載の小穂脱落性改変イネ科植物の生産方法。
- 請求項8ないし10のいずれか1項に記載の小穂脱落性改変イネ科植物の生産方法によって得られた小穂脱落性改変イネ科植物。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遺伝マーカーを指標として小穂脱落性改変イネ科植物を選抜する方法。
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