JP2005229851A - 穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用 - Google Patents

穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 オオムギ等のイネ科植物のゲノムDNA中に存在し、穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーとその利用法を提供する。
【解決手段】 オオムギの詳細な連鎖地図を作成し、連鎖解析を行なうことにより、オオムギ1H染色体上に座乗する穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する一組の遺伝マーカーを見出した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規遺伝マーカーおよびその利用法に関するものであり、特に、オオムギ等のイネ科植物における穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーと、その利用に関するものである。
イネ科植物の穂のロウ質を支配する遺伝子は、その対立遺伝子により穂に光沢がある表現型(ロウ質欠如)、または穂に光沢がない表現型(ロウ質)を表す。例えば、オオムギではロウ質が欠如していると、ウイルス病を媒介するアブラムシの寄生が多いことが知られている。また、ロウ質が少ないと農薬が付着しやすい傾向がある。したがって、栽培品種においては、穂にロウ質を有していることが好ましい。
従来、作物の育種は目標形質を有する栽培品種や野生種等を交配し、多数の個体を実際に栽培して目標形質を有する個体を選抜し、当該目標形質を遺伝的に固定化しなければならず、広大な圃場や多大な人力、相当の年月が必要であった。例えば、穂のロウ質を目標形質とした場合には、選抜対象集団を栽培し、各個体が出穂した後に穂のロウ質の有無を実際に調査することにより、選抜すべき個体を特定しなければならなかった。
そこで、近年は育種期間の短縮、労働力および圃場面積の縮減を図るため、遺伝マーカーを指標とした選抜による育種法が用いられるようになってきた。このような遺伝マーカーによる育種では、マーカーの遺伝子型により目標形質の有無の推定が容易となるため、幼苗段階で選抜が可能となる。したがって、遺伝マーカーを利用すれば効率的な育種が実現可能である。そして、遺伝マーカーを利用した育種を実現するためには、目標形質に強く連鎖した遺伝マーカーの開発が必須となる。
ところで、穂のロウ質は、単一の主働遺伝子が支配する形質である。このような単一主働遺伝子の遺伝子座を推定する方法としては、連鎖解析が知られている。連鎖解析は、遺伝法則を利用して複数の遺伝子座の位置(座位)を解析する方法であり、複数の座位のうち1つを目的形質を支配する遺伝子座位、他を遺伝マーカー座位とすると、遺伝マーカー座位のデータから目的形質を支配する遺伝子座位を特定することが可能である。
遺伝マーカーは、1980年代後半にDNAマーカーが登場し、DNAマーカー利用による詳細な連鎖地図作成が大きく進んだ。その結果、そのような高密度連鎖地図に基づいて多くの生物で連鎖解析が行われるようになった。
以上のように、目標形質に連鎖する遺伝マーカーの開発は、染色体全体をカバーできる詳細な連鎖地図に基づいた精度の高い連鎖解析により可能となり、得られた遺伝マーカーを利用することにより、効率的な育種が実現できるといえる。
上記遺伝マーカーに関する技術としては、オオムギを例に挙げると、1)オオムギにアルミニウム耐性を付与する遺伝子に連鎖する遺伝マーカーとその利用に関する技術(特許文献1参照)や、2)オオムギ染色体由来の核酸マーカーをコムギの背景で検出するための新規なプライマーセット(特許文献2参照)とその利用に関する技術等が、本発明者らによって提案されている。
特開2002−291474号公報(2002(平成14)年10月8日公開) 特開2003−111593号公報(2003(平成15)年4月15日公開)
上述のように、イネ科植物、特にオオムギ、コムギ、イネ等の作物においては、穂にロウ質を有するほうが、ウイルス病を媒介するアブラムシの寄生を減少でき、農薬が付着しにくいという利点がある。しかし、穂にロウ質を有するか否かは、実際に対象とする植物個体が出穂した後に観察しなければ判定できなかった。そこで穂のロウ質を改変した植物の育種には遺伝マーカーを利用することが非常に有効である。穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーが開発され、利用可能となれば、穂のロウ質改変植物の育種の大幅な効率化を実現することが可能となる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、イネ科植物、特にオオムギにおける穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーと、その代表的な利用法とを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、発明者らが有するオオムギEST配列に基づいてプライマーセットを設計し、当該プライマーセットにより増幅されるオオムギゲノム断片の多型の有無により遺伝マーカー(DNAマーカー)を開発した。さらに、醸造用オオムギ「はるな二条」と野生オオムギ「H602」の交雑F1から作出した倍加半数体(doubled haploid、以下「DH」と略記する。)集団を材料として、上記遺伝マーカー間の連鎖を検出して、当該DH系統の連鎖地図を作成し、この連鎖地図に基づいて穂のロウ質を支配する遺伝子座の連鎖解析を行なった。その結果、穂のロウ質を支配する遺伝子座を1H染色体上に検出した。本発明者らはさらに解析を進め、穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーを見いだした。すなわち本発明は、上記新規知見により完成されたものであり、以下の発明を包含する。
すなわち本発明にかかる遺伝マーカーは、イネ科植物のゲノムDNA中に存在し、穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、上記穂のロウ質を支配する遺伝子座から0ないし19センチモルガンの範囲内の距離に位置することを特徴としている。上記遺伝マーカーは、穂のロウ質を支配する遺伝子座に強連鎖するため、当該遺伝マーカーと穂のロウ質を支配する遺伝子座間で分離して組み換えが起こる確率は低い。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、例えば穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の取得、穂のロウ質改変イネ科植物の生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
さらに本発明にかかる遺伝マーカーは、上記イネ科植物がムギ類であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギ・コムギ等のムギ類において穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の取得、穂のロウ質改変ムギ類の生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
さらに本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ムギ類がオオムギであることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギにおいて穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の取得、穂のロウ質改変オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
さらに本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ゲノムDNAが1H染色体であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギの1H染色体上に存在する穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の取得、穂のロウ質改変オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
さらに本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号1に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号2に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第一プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、穂のロウ質改変イネ科植物の判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号3に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号4に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第二プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、穂のロウ質改変イネ科植物の判別を容易に行なうことができる。
本発明にかかるDNA断片の単離方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを用いて穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離することを特徴としている。本発明にかかる遺伝マーカーは穂のロウ質を支配する遺伝子座に強連鎖するものであり、上記遺伝マーカーを目標にクローニングを行なえば、穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を容易に単離することが可能となる。
また本発明にかかる穂のロウ質改変イネ科植物の生産方法は、上記本発明にかかるDNA断片の単離方法により得られた上記穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を、イネ科植物のゲノムDNAに導入することを特徴としている。上記イネ科植物はムギ類であることが好ましく、オオムギであることがより好ましい。当該生産方法により、穂のロウ質改変イネ科植物を生産することが可能となる。また、当該生産方法により得られた穂のロウ質改変イネ科植物も、本発明に含まれる。
本発明にかかる穂のロウ質改変イネ科植物を選抜する方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを指標として、穂のロウ質改変イネ科植物を選抜する方法である。上記本発明にかかる遺伝マーカーは、穂のロウ質を支配する遺伝子座に強連鎖するため、当該遺伝マーカーと穂のロウ質を支配する遺伝子座間で分離して組み換えが起こる確率が非常に低い。それゆえ上記遺伝マーカーを検出することによって、試験対象植物における穂のロウ質を支配する遺伝子座の遺伝子型を容易に判別することができ、選抜すべき個体を容易に見出すことが可能となる。
本発明にかかる遺伝マーカーは、穂のロウ質を支配する遺伝子座と連鎖するため、当該遺伝マーカーを指標として穂のロウ質を改変したイネ科植物の育種を可能とする。したがって、穂のロウ質改変植物の効率的な育種が実現できるという効果を奏する。より具体的には、幼苗段階で目的個体を選抜できるため、実際に植物個体の穂のロウ質の有無を観察した後に目的の個体を選抜する必要がなくなり、育種期間を短縮できるという効果を奏する。また、労働力および圃場面積を縮減できるという効果を奏する。
さらに、上記遺伝マーカーを指標として選択的に育種された穂のロウ質を有する植物は、ウイルス病を媒介するアブラムシの寄生を減少させる効果を奏し、また、穂に農薬が付着し難くなるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明は、イネ科植物における穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーとその利用の一例とに関するものである。以下、本発明にかかる遺伝マーカー、本発明の利用の一例について説明する。
(1)本発明にかかる遺伝マーカー
本発明にかかる遺伝マーカーは、イネ科植物のゲノムDNA中に存在し、穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖しているものであればよい。イネ科植物としてはムギ類であることが好ましく、オオムギであることが特に好ましい。イネ科植物とは、オオムギ属、コムギ属、イネ等の植物であればよく、特に限定されるものではない。また、ムギ類とは、例えばオオムギ、コムギ、ライムギ、ライコムギ、エンバク等を意味する。
穂のロウ質は、穂を目視することにより光沢の有無で判断することができる。すなわち、穂に光沢があればロウ質欠如と判断でき、穂に光沢がなければロウ質を有すると判断できる。例えば、オオムギではロウ質が欠如していると、ウイルス病を媒介するアブラムシの寄生が多いことが知られている。また、ロウ質が少ないと農薬が付着しやすい傾向がある。
穂のロウ質は、単一の主働遺伝子が支配する形質であり、メンデルの法則にしたがって遺伝する。穂のロウ質を支配する遺伝子座にはロウ質を有する穂を発現する遺伝子とロウ質が欠如した穂を発現する遺伝子との2つの対立遺伝子があり、穂のロウ質欠如が劣性である。上述のように栽培品種では穂にロウ質があるほうが好ましい。例えば、穂にロウ質を有する品種に、穂のロウ質が欠如している野生種等から有用形質を交雑育種により選抜しようとする場合に、目的とする形質が穂のロウ質を支配する遺伝子が座乗している染色体上にあれば、目的とする形質のみでなく穂のロウ質欠如を支配する遺伝子も同時に導入されてしまう場合があり得る。このような場合に、本発明にかかる穂のロウ質を支配する遺伝子座と連鎖する遺伝マーカーを利用すれば効率的な選抜が可能となる。以下、本発明者らがオオムギにおいて開発した穂のロウ質を支配する遺伝子座と連鎖する遺伝マーカーについて詳細に説明する。なお、本発明に係る遺伝マーカーはこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、醸造用オオムギ「はるな二条」と野生オオムギ「H602」との交雑F1から作出した倍加半数体(DH)集団を用いて、高密度連鎖地図を作成した。すなわち、本発明者らが有するオオムギEST(expressed sequence tag)配列に基づいて設計されたプライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを増幅し、「はるな二条」と「H602」との間に増幅断片長の多型を有するものや、増幅断片長の制限酵素による消化のパターンが異なる多型を有するものを特定し、これらのDNAマーカーを含む約500遺伝子座からなる連鎖地図を構築した。この連鎖地図および本発明者らが観察した上記DH集団93個体についての穂のロウ質の表現型のデータに基づいて、穂のロウ質を支配する遺伝子座の連鎖解析を行った。その結果、穂のロウ質を支配する遺伝子座を1H染色体上に検出した。本発明に係る遺伝マーカーは1H染色体上に座乗する穂のロウ質を支配する遺伝子座を挟み、最も近傍に位置する2つの遺伝マーカーである。発明者らはこれらの遺伝マーカーを「k04435」および「k00440」と命名した。
k04435は、
TTTCCGGGATAAGAGTGTGC(配列番号1)に示される塩基配列を有するプライマー、および
CGACTCGGTTGTTTGCTACA(配列番号2)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅されるDNAマーカーであり、上記1H染色体上に検出された穂のロウ質を支配する遺伝子座から短腕側に約12.5センチモルガン(以下cMと表示する)の距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:bah55e06、配列番号5)に基づいて設計されている。図1に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号1)および上記プライマー配列(配列番号2)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間に断片長多型があり、はるな二条のゲノムDNAを鋳型として増幅される断片のサイズは約470bp、H602のゲノムDNAを鋳型として増幅される断片のサイズは約500bpと異なる。図2に第一プライマーセットを用いてPCRにより増幅した断片の電気泳動像を示した。図2(a)、(b)とも両端は分子量マーカーである。図2(a)は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、はるな二条、H602、はるな二条とH602の交雑F1、DH集団の1〜45の増幅断片である。図2(b)は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、DH集団の46〜93の増幅断片である。図2から明らかなように、増幅産物のサイズを確認することにより、対象個体が1H染色体に座乗する穂のロウ質を支配する遺伝子座の対立遺伝子について、はるな二条型の遺伝子型を有するか、H602型の遺伝子型を有するかを判別できる。
k00440は、
CGGACAATTTGGTTGTTTCC(配列番号3)に示される塩基配列を有するプライマー、および
GGAAGACACGGTGCAAAAAT(配列番号4)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記1H染色体上に検出された穂のロウ質を支配する遺伝子座から長腕側に約5.9cMの距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:baak2l03、配列番号6)に基づいて設計されている。図3に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号3)および上記プライマー配列(配列番号4)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間にSNP(single nucleotide polymorphisms;一塩基多型)がある。図4に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上がH602の塩基配列(配列番号7)であり、下がはるな二条の塩基配列(配列番号8)である。□で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素MvaIの認識配列(CC[AT]GG)を示す。図4から明らかなように、H602の増幅産物は制限酵素MvaIの認識配列(CCTGG)を有しているためMvaIで切断されるが、はるな二条の増幅産物は上記認識配列部分のCがGに変異しているため(CGTGG)制限酵素MvaIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk00440は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーであり、上記第二プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素MvaI切断により、対象個体が1H染色体に座乗する穂のロウ質を支配する遺伝子座の対立遺伝子について、はるな二条型の遺伝子型を有するか、H602型の遺伝子型を有するかを判別できる。
ここで、1センチモルガン(1cM)とは、2つの遺伝子座の間に1%の頻度で交叉が起きるときの、両遺伝子座間の距離を表す単位である。
ところで、増幅に際して鋳型として用いられるゲノムDNAは、植物体より従来公知の方法で抽出可能である。具体的には、植物体からゲノムDNAを抽出するための一般法(Murray,M.G. and W.F.Thompson(1980) Nucleic Acids Res.8:4321-4325. など参照)が好適な例として挙げられる。また、上記のゲノムDNAは、根、茎、葉、生殖器官など、オオムギの植物体を構成するいずれの組織を用いても抽出可能である。また、場合によってはオオムギのカルスから抽出してもよい。なお、上記生殖器官には、花器官(雄性・雌性生殖器官を含む)や種子も含まれる。ゲノムDNAの抽出は、例えば、オオムギの幼苗期の葉を用いて行われる。この理由としては、組織の摩砕が比較的容易であり、多糖類などの不純物の混合割合が比較的少なく、また、種子から短期間で育成可能である点が挙げられる。さらに、幼苗段階で個体の選抜が可能となり、育種期間を大幅に短縮できる点が挙げられる。
またオオムギのゲノムDNAを鋳型とし、上記プライマーの組み合わせを用いて増幅する方法は、従来公知のDNA増幅法を採用することができる。一般には、PCR法(ポリメラ−ゼ連鎖反応法)や、その改変法が用いられる。PCR法や、その改変法を用いる際の反応条件は特に限定されるものではなく、通常と同様の条件下で増幅することができる。
(2)本発明の利用
〔穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の単離方法〕
上述のとおり本発明にかかる遺伝マーカー(k04435、k00440)は、オオムギ1H染色体上に検出された穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖するものである。よって、k04435、k00440の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ1H染色体上に検出された穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができる。
単離とは、目的のDNA断片、すなわち穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片をクローニングすることを意味することはいうまでもないが、広義には交雑F1集団から戻し交配等により、両親のうち一方の穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を有する個体を選抜し、その遺伝子座領域のみを目的品種に導入する同質遺伝子系統の作成も単離に含まれる。
本発明にかかる遺伝マーカーを用いて穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離する方法としては特に限定されるものではないが、例えば次のような方法を挙げることができる。
オオムギでは本発明者らが開発を進めている「はるな二条」を含めて、ゲノムDNAのBACライブラリーが2種類作成されており、現在複数のBACライブラリーが開発中である。そこで、このようなBACライブラリーを用いて、従来公知のマップベースクローニングの手法にしたがって、穂のロウ質を支配する遺伝子座と当該遺伝子座に連鎖する本発明の遺伝マーカーとで当該マーカーを含むBACクローンを同定し、そこからBACのコンティグを作成して塩基配列を確定することにより、最終的に穂のロウ質を支配する遺伝子座に到達することができる。
また、上述のように、交雑F1に一方の親を戻し交配することにより、他方の親の穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を目的品種に導入して(広義の)単離をすることができる。
なお、上記方法をはじめとする穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離する際には、目的とする穂のロウ質を支配する遺伝子座に対してなるべく近傍に座乗する遺伝マーカーを選択して用いることが好ましい。目的とする穂のロウ質を支配する遺伝子座と遺伝マーカーの間で組み換えが起こる確率がより低くなり、より確実に穂のロウ質を支配する遺伝子座を含む断片を単離することができるからである。
〔穂のロウ質改変植物の生産方法、および当該生産方法によって得られた穂のロウ質改変植物〕
上記本発明にかかる穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の単離方法によって得られた穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片をイネ科植物のゲノムDNAに導入することによって、穂のロウ質改変イネ科植物を生産することが可能である。イネ科植物としてはムギ類であることが好ましく、オオムギであることが特に好ましい。また、例えば、オオムギから単離された穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片をオオムギ以外のイネ科植物に導入することも可能であり、同一属間のみでの単離、導入に限定されるものではない。
上記DNA断片を導入する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して用いることができる。より具体的には、例えばアグロバクテリウムまたはパーティクルガンを用いてイネ科植物のゲノムDNAに導入することによって生産すればよく、これにより、穂のロウ質改変品種が得られることとなる。例えば、雑誌The Plant Journal(1997) 11(6),1369-1376 には、Sonia Tingay等により、Agrobacterium tumefaciens を用いてオオムギを形質転換する方法が開示されており、この方法を利用して形質転換オオムギを生産可能である。
また、目的とする穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を有する植物個体と、当該DNA断片を導入しようとする植物個体との交雑により、穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を、植物に導入することも可能である。この方法では、交雑が可能である限りにおいて、他の種や属の植物が有する穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片の導入が可能である。
本発明にかかる穂のロウ質改変植物は、上記本発明にかかる生産方法により得られるものである。当該穂のロウ質改変植物は、穂のロウ質が欠如している植物に穂のロウ質を有する表現型を表す対立遺伝子を含むDNA断片を導入した場合には、穂のロウ質を有する植物が得られる。逆に、穂のロウ質を有している植物に穂のロウ質が欠如する表現型を表す対立遺伝子を含むDNA断片を導入した場合には、穂のロウ質が欠如した植物が得られる。穂のロウ質が欠如すると、ウイルス病を媒介するアブラムシの寄生が多くなり、また、農薬が付着しやすくなるため、優良品種の育種においては、穂のロウ質があることが好ましい。したがって、穂のロウ質が欠如している植物に穂のロウ質を有する表現型を表す対立遺伝子を含むDNA断片を導入することにより、アブラムシ寄生が少なく、農薬が付着し難い植物を得ることが可能となる。
〔穂のロウ質改変イネ科植物の選抜方法〕
本発明にかかる穂のロウ質改変イネ科植物の選抜方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを指標として穂のロウ質改変イネ科植物を選抜する方法であればよく、その他の工程、条件、材料等は特に限定されるものではない。例えば、従来公知の作物育種法を利用することができる。
より具体的には、例えば、交配等により作出した植物のゲノムDNAを抽出し、本発明に係る遺伝マーカーの遺伝子型を指標として植物を選抜する方法が挙げられる。遺伝マーカーを検出する手段としては、例えば、対象とする植物から抽出したゲノムDNAを鋳型として上記第一または第二プライマーセットのいずれかを用いて増幅したDNA断片について、断片長または断片の制限酵素消化パターンの観察を挙げることができる。
なお本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔使用植物〕
醸造用オオムギ「はるな二条」(Hordeum vulgare ssp. vulgare variety Harunanijo)と野生オオムギ「H602」(Hordeum vulgare ssp. spontaneum H602)との交配から得られたF1の花粉を培養して半数体(haploid)を育成し、自然倍加した倍加半数体(doubled haploid)93個体からなる集団(DH集団)を使用した。
〔連鎖地図の作成〕
本発明者らが有するオオムギEST配列約12万をphredによって再度ベースコールした後、quality score 20でトリミングし、ベクターマスキングを行って3’端約6万配列を得た。これらの配列からphrapによってcontig 8,753、 singlet 6,686からなるUnigeneを作成した。プライマー作成ソフトPrimer3によって、400bpを中心として150-500bpのcDNA配列を増幅するプライマーセット約11,000を作成した。このうち約5,100のプライマーセットについて、はるな二条とH602との間に増幅されるゲノム断片の多型の有無を検出するために、それぞれのゲノムDNAをPCR増幅し、アガロースゲル電気泳動によってバンドの有無、バンド数、バンドサイズを調査し、マーカーとなり得るものを選択した。さらに、バンドサイズに多型のない場合は、増幅断片をダイレクトシークエンスすることにより塩基配列の差異を検出し、39種類の制限酵素に対してCAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)化が可能なものをマーカーとして選択した。
以上により、上記はるな二条とH602との交雑F1由来のDH集団について、合計499遺伝子座のマーカーからなる連鎖地図を構築した。この連鎖地図の平均マーカー密度は3.0cM/locus、全長は1,470cMである。
〔遺伝子型の判定〕
DH集団各個体の遺伝子型の判定は、上記DH集団の連鎖地図にマッピングされたマーカーを用いて行った。すなわち、各個体の新鮮な葉の組織から分離したDNAを鋳型として、EST配列に基づいて設計したプライマーセットを用いてPCRを行った。断片長多型マーカーについてはPCR産物の電気泳動により遺伝子型を判定した。CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーについては、PCR産物を制限酵素で消化し、電気泳動により遺伝子型を判定した。
〔穂のロウ質の観察〕
DH集団の各個体について、出穂後に穂のロウ質の有無を観察し、記録した。
〔連鎖解析〕
連鎖解析は、穂のロウ質の表現型と上記連鎖地図上のマーカーの遺伝子型との組換え頻度を調べ、最も組換え頻度の少ないマーカーを特定し、穂のロウ質を支配する遺伝子座の位置を推定した。
〔結果〕
結果を表1に示した。表1から明らかなように、穂のロウ質を支配する遺伝子座は1H染色体上の、遺伝マーカーk04435とk00440とに挟まれる位置に検出された。当該穂のロウ質を支配する遺伝子座は、遺伝マーカーk04435から長腕側に12.5cM、遺伝マーカーk00440から短腕側に5.9cMの位置に座乗することが推定された。
Figure 2005229851
本発明にかかる遺伝マーカーは、穂のロウ質改変植物の育種、穂のロウ質を支配する遺伝子の単離等に用いることができ、育種の効率化に大きく貢献することが期待される。したがって、広く農業全般に利用可能であり、さらには、オオムギ等を原料とする食品産業においても有効である。また、生物分野の基礎研究、特に植物ゲノム研究等にも利用可能である。
オオムギESTクローン:bah55e06の塩基配列、および当該配列に基づいて設計されたプライマー配列の位置を示す図である。 (a)、(b)は遺伝マーカーk04435における、H602とはるな二条との間の断片長多型を示す電気泳動画像である。(a)は、左から、はるな二条、H602、はるな二条とH602の交雑F1、DH集団1〜45の増幅断片の電気泳動画像であり、(b)は、左から、DH集団46〜93の増幅断片の電気泳動画像である。 オオムギESTクローン:baak2l03の塩基配列、および当該配列に基づいて設計されたプライマー配列の位置を示す図である。 遺伝マーカーk00440における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。

Claims (12)

  1. イネ科植物のゲノムDNA中に存在し、穂のロウ質を支配する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    上記穂のロウ質を支配する遺伝子座から0ないし19センチモルガンの範囲内の距離に位置することを特徴とする遺伝マーカー。
  2. 上記イネ科植物がムギ類であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝マーカー。
  3. 上記ムギ類がオオムギであることを特徴とする請求項2に記載の遺伝マーカー。
  4. 上記ゲノムDNAが1H染色体であることを特徴とする請求項3に記載の遺伝マーカー。
  5. 配列番号1に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号2に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遺伝マーカー。
  6. 配列番号3に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号4に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遺伝マーカー。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遺伝マーカーを用いて穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を単離することを特徴とするDNA断片の単離方法。
  8. 請求項7に記載の単離方法により得られた上記穂のロウ質を支配する遺伝子座を含むDNA断片を、イネ科植物のゲノムDNAに導入することを特徴とする穂のロウ質改変イネ科植物の生産方法。
  9. 上記イネ科植物がムギ類であることを特徴とする請求項8に記載の穂のロウ質改変イネ科植物の生産方法。
  10. 上記ムギ類がオオムギであることを特徴とする請求項9に記載の穂のロウ質改変イネ科植物の生産方法。
  11. 請求項8ないし10のいずれか1項に記載の穂のロウ質改変イネ科植物の生産方法によって得られた穂のロウ質改変イネ科植物。
  12. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遺伝マーカーを指標として穂のロウ質改変イネ科植物を選抜する方法。
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