以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の表面検査装置1は、図1に示すように、被検基板である半導体ウェハ10を支持するアライメントステージ20と、照明光学系30と、撮像光学系40と、画像処理装置50とを主体に構成される。表面検査装置1は、半導体回路素子の製造工程において、ウェハ10の表面の検査を自動的に行う装置である。ウェハ10は、最上層のレジスト膜への露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置から運ばれ、アライメントステージ20に吸着保持される。
ウェハ10の表面には、図2に示すように、複数のチップ領域11がXY方向に配列され、各チップ領域の中に所定の繰り返しパターン12が形成されている。繰り返しパターン12は、図3に示すように、複数のライン部2Aがその短手方向(X方向)に沿って一定のピッチPで配列されたレジストパターン(例えば、配線パターン)である。隣り合うライン部2A同士の間は、スペース部2Bである。なお、ライン部2Aの配列方向(X方向)を「繰り返しパターン12の繰り返し方向」と称する。
ここで、繰り返しパターン12におけるライン部2Aの線幅DAの設計値をピッチPの1/2とする。設計値の通りに繰り返しパターン12が形成された場合、ライン部2Aの線幅DAとスペース部2Bの線幅DBは等しくなり、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比は略1:1になる。これに対して、繰り返しパターン12を形成する際の露光フォーカスが適正値から外れると、ピッチPは変わらないが、ライン部2Aの線幅DAが設計値と異なってしまうとともに、スペース部2Bの線幅DBとも異なってしまい、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が略1:1から外れる。
本実施形態の表面検査装置1は、上記のような繰り返しパターン12におけるライン部2Aとスペース部2Bとの体積比の変化を利用して、繰り返しパターン12の欠陥検査を行うものである。説明を簡単にするため、理想的な体積比(設計値)を1:1とする。体積比の変化は、露光フォーカスの適正状態からの外れに起因し、ウェハ10のショット領域ごとに現れる。なお、体積比を断面形状の面積比と言い換えることもできる。
また、本実施形態においては、繰り返しパターン12に対する照明光(後述)の波長と比較して繰り返しパターン12のピッチPが十分小さいものとする。このため、繰り返しパターン12から回折光が発生することはなく、繰り返しパターン12の欠陥検査を回折光により行うことはできない。本実施形態における欠陥検査の原理は、以降、表面検査装置の構成(図1)とともに順に説明する。
アライメントステージ20は、ウェハ10を上面で支持して、例えば真空吸着により固定保持する。さらに、アライメントステージ20は、上面の中心における法線A1を中心軸として回転可能である。この回転機構によって、ウェハ10における繰り返しパターン12の繰り返し方向(図2および図3におけるX方向)を、ウェハ10の表面内で回転させることができる。なお、アライメントステージ20は、上面が水平面であり、ウェハ10を常に水平な状態に保つ。
また、上述のように回転するアライメントステージ20は、所定の位置で停止し、その結果、ウェハ10における繰り返しパターン12の繰り返し方向(図2および図3におけるX方向)を、後述の照明光の入射面(照明光の進行方向)に対して、45度の角度に傾けて設定することができるようになっている。
照明光学系30は、ランプハウス31と、第1偏光板32と、第1位相板33と、第1楕円鏡34とを有して構成され、アライメントステージ20上のウェハ10の繰り返しパターン12を直線偏光L1(第1の直線偏光)により照明するようになっている。この直線偏光L1が、繰り返しパターン12に対する照明光である。直線偏光L1は、ウェハ10の表面全体に照射される。
直線偏光L1の進行方向(ウェハ10表面上の任意の点に到達する直線偏光L1の主光線の方向)は、第1楕円鏡34からの光軸O1に略平行である。光軸O1は、アライメントステージ20の中心を通り、アライメントステージ20の法線A1に対して所定の角度αだけ傾けられている。ちなみに、直線偏光L1の進行方向を含み、アライメントステージ20の法線A1に平行な平面が、直線偏光L1の入射面である。図4の入射面A2は、ウェハ10の中心における入射面である。
また、本実施形態では、直線偏光L1がp偏光である。つまり、図5(a)に示すように、直線偏光L1の進行方向と電気(または磁気)ベクトルの振動方向とを含む平面(直線偏光L1の振動面)が、直線偏光L1の入射面A2内に含まれる。直線偏光L1の振動面は、ランプハウス31と第1楕円鏡34との間に配設された第1偏光板32の透過軸により規定される。
ところで、ランプハウス31は、不図示の超高圧水銀灯光源と波長選択フィルタを内蔵し、所定波長の光を出射する。なお、光源として、水銀灯に限らずメタルハライドランプを用いるようにしてもよい。また、波長選択フィルタは、水銀灯光源からの光のうち所定波長の輝線スペクトルを選択的に透過させる。
第1偏光板32は、ランプハウス31と第1楕円鏡34との間に配設されるとともに、その透過軸が所定の方位に設定され、透過軸に応じてランプハウス31からの光を直線偏光にする。第1位相板33は、第1偏光板32と第1楕円鏡34との間の空間に挿抜可能に配設されており、第1楕円鏡34で反射する光が乱れるのを補正するために用いられる。第1楕円鏡34は、第1楕円鏡34で反射するランプハウス31からの光を平行光束にして、被検基板であるウェハ10を照明する。
上記の照明光学系30において、ランプハウス31からの光は、第1偏光板32および第1楕円鏡34を介しp偏光の直線偏光L1となって、ウェハ10の表面全体に入射する。ウェハ10の各点における直線偏光L1の入射角度は、平行光束のため互いに同じであり、光軸O1と法線A1とのなす角度αに相当する。
本実施形態では、ウェハ10に入射する直線偏光L1がp偏光であるため、図4に示すように、繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1の入射面A2(ウェハ10の表面における直線偏光L1の進行方向)に対して45度の角度に設定された場合、ウェハ10の表面における直線偏光L1の振動面の方向と繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)とのなす角度も、45度に設定される。
言い換えると、直線偏光L1は、ウェハ10の表面における直線偏光L1の振動面の方向(図6におけるVの方向)が繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)に対して45度傾いた状態で、繰り返しパターン12を斜めに横切るようにして繰り返しパターン12に入射する。
このような直線偏光L1と繰り返しパターン12との角度状態は、ウェハ10の表面全体において均一である。なお、45度を135度,225度,315度のいずれかに言い換えても、直線偏光L1と繰り返しパターン12との角度状態は同じである。また、図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)とのなす角度を45度に設定するのは、繰り返しパターン12の欠陥検査の感度を最も高くするためである。
そして、上記の直線偏光L1を用いて繰り返しパターン12を照明すると、繰り返しパターン12から正反射方向に楕円偏光L2が発生する(図1および図5(b)を参照)。この場合、楕円偏光L2の進行方向が正反射方向に一致する。正反射方向とは、直線偏光L1の入射面A2内に含まれ、アライメントステージ20の法線A1に対して角度α(直線偏光L1の入射角度αに等しい角度)だけ傾いた方向である。なお、上述の通り、繰り返しパターン12のピッチPが照明波長と比較して十分短いため、繰り返しパターン12から回折光が発生することはない。
ここで、直線偏光L1が繰り返しパターン12での反射により楕円化し、繰り返しパターン12から楕円偏光L2が発生する理由について簡単に説明する。直線偏光L1は、繰り返しパターン12に入射すると、振動面の方向(図6のV方向)が、図7に示す2つの偏光成分VX,VYに分かれる。一方の偏光成分VXは、繰り返し方向(X方向)に平行な成分である。他方の偏光成分VYは、繰り返し方向(X方向)に垂直な成分である。そして、2つの偏光成分VX,VYは、それぞれ独立に、異なる振幅変化と位相変化とを受ける。振幅変化と位相変化が異なるのは、繰り返しパターン12の異方性に起因して複素反射率(すなわち複素数の振幅反射率)が異なるからであり、構造性複屈折(form birefringence)と呼ばれる。その結果、2つの偏光成分VX,VYの反射光は互いに振幅と位相が異なり、これらの合成による反射光は楕円偏光L2となる(図5(b)を参照)。
また、繰り返しパターン12の異方性に起因する楕円化の程度は、図5(b)で示す楕円偏光L2のうち、図5(a)で示す直線偏光L1の振動面に垂直な偏光成分L3(図5(c)を参照)と考えることができる。そして、この偏光成分L3の大きさは、繰り返しパターン12の材質および形状と、図6の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)とのなす角度に依存する。このため、V方向とX方向とのなす角度を一定の値(本実施形態では45度)に保つ場合、繰り返しパターン12の材質が一定であっても、繰り返しパターン12の形状が変化すると、楕円化の程度(偏光成分L3の大きさ)が変化することになる。
繰り返しパターン12の形状と偏光成分L3の大きさとの関係について説明する。図3に示すように、繰り返しパターン12は、ライン部2Aとスペース部2BとをX方向に沿って交互に配列した凹凸形状を有し、適正な露光フォーカスで設計値通りに形成されると、ライン部2Aの線幅DAとスペース部2Bの線幅DBが等しくなるが、露光フォーカスが適正から外れると、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が略1:1から外れる。このとき、偏光成分L3の大きさは理想的な場合と比較して小さくなる。偏光成分L3の大きさの変化を図示すると、図8のようになる。図8の横軸は、ライン部2Aの線幅DAである。
このように、直線偏光L1を用いて、図6の振動面の方向(V方向)が繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)に対して45度だけ傾いた状態で、繰り返しパターン12を照明すると、正反射方向に反射して生じた楕円偏光L2は、その楕円化の程度(図5(c)における偏光成分L3の大きさ)が、繰り返しパターン12の形状(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比)に応じたものとなる。楕円偏光L2の進行方向は、直線偏光L1の入射面A2内に含まれ、アライメントステージ20の法線A1に対して角度αだけ傾いている。
さて、撮像光学系40は、図1に示すように、第2楕円鏡41と、第2位相板42と、第2偏光板43と、回転駆動装置44と、撮像カメラ45とを有して構成される。第2楕円鏡41は、照明光学系30の第1楕円鏡34と同様の反射鏡であり、その光軸O2が、アライメントステージ20の中心を通り、かつ、アライメントステージ20の法線A1に対して角度αだけ傾くように配設されている。したがって、繰り返しパターン12からの反射光である楕円偏光L2は、第2楕円鏡41の光軸O2に沿って進むことになる。第2楕円鏡41は、楕円偏光L2を反射させて撮像カメラ45の撮像面に集光する。
第2楕円鏡41と撮像カメラ45との間には、第2偏光板43が配設される。第2偏光板43は、回転駆動装置44を用いて光軸O2を中心に透過軸の方位(偏光方向)を回転可能に構成されており、第2偏光板43の透過軸の方位は、上述した照明光学系30の第1偏光板32の透過軸に対して、45度以上135度以下の傾斜角度で傾けることができるように設定されている。したがって、楕円偏光L2が第2偏光板43を透過するとその偏光成分、すなわち第2偏光板43からの直線偏光L4(第2の直線偏光)が撮像カメラ45の撮像面に集光される。その結果、撮像カメラ45の撮像面には、直線偏光L4によるウェハ10の反射像が形成される。また、第2位相板42は、第2楕円鏡41と第2偏光板43との間の空間に挿抜可能に配設されており、第2楕円鏡41で反射する光が乱れるのを補正するために用いられる。
撮像カメラ45は、不図示のCCD撮像素子を有するCCDカメラであり、撮像面に形成されたウェハ10の反射像を光電変換して、画像信号を画像処理装置50の画像記憶部51に出力する。ウェハ10の反射像の明暗は、直線偏光L4の光強度に略比例し、繰り返しパターン12の形状に応じて変化する。ウェハ10の反射像が最も明るくなるのは、繰り返しパターン12が理想的な形状の場合である。なお、ウェハ10の反射像の明暗は、ショット領域ごとに現れる。
画像処理装置50は、画像記憶部51と、画像記憶部51と電気的に接続された画像処理部52と、画像処理部52と電気的に接続された処理結果出力部53と、撮像カメラ45における暗電流のノイズを検出するノイズ検出部54と、これらの作動を統括的に制御するシステム制御部55とを有して構成され、撮像カメラ45から出力される画像信号に基づいて、ウェハ10の反射画像を画像記憶部51に取り込む。なお、画像記憶部51には、比較のため、良品ウェハ(不図示)の反射画像も予め記憶されている。この良品ウェハの反射画像の輝度情報は、最も高い輝度値を示すものと考えられる。
画像処理部52は、画像記憶部51に被検基板であるウェハ10の反射画像が取り込まれると、その輝度情報を良品ウェハの反射画像の輝度情報と比較する。このとき、ウェハ10の反射画像における暗い箇所の輝度値の低下量(光量変化)に基づいて、繰り返しパターン12の欠陥を検出する。たとえば、輝度値の低下量が予め定められた閾値(許容値)より大きければ「欠陥」と判定し、閾値より小さければ「正常」と判断すればよい。そして、画像処理部52による輝度情報の比較結果およびそのときのウェハ10の反射画像が処理結果出力部53で出力表示される。
なお、画像処理装置50においては、上述のように、画像記憶部51に良品ウェハの反射画像を予め記憶しておく構成の他、ウェハ10のショット領域の配列データと輝度値の閾値を予め記憶しておく構成でもよい。この場合、ショット領域の配列データに基づいて、取り込まれたウェハ10の反射画像中における各ショット領域の位置が分かるので、各ショット領域の輝度値を求める。そして、その輝度値と記憶されている閾値とを比較することにより、パターンの欠陥を検出する。閾値より輝度値が小さいショット領域を「欠陥」と判断すればよい。
なお、本実施形態のように、ウェハ10の表面に対して直線偏光L1を斜めに入射させる場合、繰り返しパターン12から発生する楕円偏光L2は、厳密に言えば、この進行方向を軸として僅かに回転している。以下、図5(b)に示すように、このような楕円偏光L2の回転角をφとする。
ところで、従来の表面検査装置では、第2偏光板43の透過軸の方位が第1偏光板32の透過軸に対して90度だけ傾くように、すなわち、直線偏光L4の進行方向と垂直な面内における振動方向が、直線偏光L1の進行方向と垂直な面内における振動方向に対して90度だけ傾くように設定されていた。従来の表面検査装置を用いてウェハ10の表面検査を行った場合、ウェハ10での反射による楕円偏光L2の回転角をφ(図5(b)を参照)とすると、撮像カメラ45に到達する光の光量変化は、sin2φに比例する。このような回転は繰り返しパターン12によって生じるものであり、露光時のフォーカスまたはドーズにより敏感に変化する。しかしながら、本願発明の発明者は、撮像カメラ45におけるウェハ10のパターン欠陥に対する光強度変化の感度が最も大きくなる条件(第2偏光板43の角度)が撮像カメラ45(撮像素子)の暗電流のノイズに応じて変化することを発見した。
そこで、本実施形態の表面検査装置1では、第2偏光板43の透過軸の方位が第1偏光板32の透過軸に対して、45度以上90度未満、もしくは90度より大きく135度以下の傾斜角度でも傾斜できるように、すなわち、直線偏光L4の進行方向と垂直な面内における振動方向が、直線偏光L1の進行方向と垂直な面内における振動方向に対して、45度以上90度未満、もしくは90度より大きく135度以下の傾斜角度でも傾斜できるようになっている(45度の例について、図5(a)および(c)を参照)。このようにすれば、ノイズ検出部54により検出した(撮像カメラ45の)暗電流のノイズの大きさに応じて、撮像カメラ45におけるウェハ10のパターン欠陥に対する光強度変化の感度が最大となるように第2偏光板43の傾斜角度を上記範囲で設定することにより、常に感度が最も大きくなる条件でウェハ10の表面検査を行うことが可能になり、ウェハ10の表面検査の精度を向上させることができる。
ここで、本実施形態の光学原理について説明する。第1偏光板32の透過軸に対する第2偏光板43の透過軸の傾斜角度をθとし、照明偏光(直線偏光L1)に対する反射偏光(楕円偏光L2)の回転方位(すなわち、ウェハ10での反射による楕円偏光L2の回転角)をφとし、撮像カメラ45における暗電流のノイズの大きさをnとすると、ウェハ10での反射において回転を受けた光の光量を(1)式、回転を受けない光の光量を(2)式のように表すことができる。
回転を受けた光の光量=cos2(θ+φ)+n …(1)
回転を受けない光の光量=cos2(θ)+n …(2)
従って、回転を受けたときの光量変化は、(3)式のように表すことができる。
光量変化=cos2(θ+φ)−cos2(θ) …(3)
また、このときの(回転を受けない光に対する)光量変化率は、(4)式のように表すことができる。
光量変化率={cos2(θ+φ)−cos2(θ)}/{cos2(θ)+n} …(4)
φの変化に対する光量変化の大きさとして感度を求めると、(5)式のように表すことができる。
感度=d(光量変化率)/dφ
={2×cos(θ+φ)×sin(θ+φ)}/{cos2(θ)+n} …(5)
ここで、回転角φは微小量であるので、(5)式を(6)式のように表すことができる。
感度≒{−2×cos(θ)×sin(θ)}/{cos2(θ)+n} …(6)
従って、回転角φが小さい場合には、感度が最大となる傾斜角度θの条件が、暗電流のノイズの大きさnに応じて変化することがわかる。
感度を表す(6)式についてグラフ化すると、図9のようになる。図9から分かるように、例えば、n=0.01のとき、θ≒84度で感度が最大となり、n=0.05のとき、θ≒78度で感度が最大となることがわかる。なおこのとき、感度については、絶対値が最大のとき、感度が最大となる。また、n=0のとき、θ=90度で感度が最大(無限大)となることが分かる。
この結果、本実施形態の表面検査装置1によれば、第2偏光板43の透過軸の方位(直線偏光L4の振動方向)が第1偏光板32の透過軸(直線偏光L1の振動方向)に対して、45度以上90度未満、もしくは90度より大きく135度以下の傾斜角度で傾斜するように設定されるため、感度の大きい条件でウェハ10の表面検査を行うことが可能になり、表面検査の精度を向上させることができる。
具体的には、ノイズ検出部54により検出した(撮像カメラ45の)暗電流のノイズの大きさに応じて、撮像カメラ45におけるウェハ10のパターンの欠陥に対する光の光量変化の感度が最大となるように傾斜角度を設定することにより、常に感度が最も大きくなる条件でウェハ10の表面検査を行うことが可能になり、表面検査の精度をより向上させることができる。
また、図6における振動面の方向(直線偏光L1の進行方向)と繰り返しパターン12の繰り返し方向とのなす角度を45度に設定したことにより、ウェハ10の反射画像の光量変化(輝度値の低下量)を大きく捉えることができ、繰り返しパターン12の欠陥検査をより高感度で行うことができる。
なお、本実施形態では、理解しやすさのために、撮像カメラ45の暗電流ノイズを測定するノイズ検出部54を設けたが、暗電流ノイズは、一般的にカメラの種類によりほぼ一定値となるので、カメラの性能データシートから求めてもよいし、サンプルとして何台かを測定して標準の値を決定してもよい。また、厳密を期して、カメラの一台ごとに測定を行う場合でも、装置への組み込み時に一度測定すればよい。ノイズレベルは、一般的な画像処理により求めることができるので、特別なノイズ検出部を設けなくとも、画像処理部52において計測可能である。
なお、本実施形態の表面検査装置1では、照明波長と比較して繰り返しパターン12のピッチPが十分小さい場合に限らず、構造性複屈折が生じれば、繰り返しパターン12のピッチPが照明波長と同程度でも、照明波長より大きい場合でも、同様に繰り返しパターン12の欠陥検査を行うことができる。すなわち、繰り返しパターン12のピッチPに拘わらず、確実に欠陥検査を行うことができる。繰り返しパターン12による直線偏光L1の楕円化は、繰り返しパターン12のライン部2Aとスペース部2Bとの体積比に依存して起こるものであり、繰り返しパターン12のピッチPに依存しないからである。
なお、上述の実施形態において、撮像カメラ45がウェハ10の表面全体の像を一括撮像するように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、図10に示すように、偏光顕微鏡72によるウェハ10表面の一部の拡大像を顕微鏡用撮像カメラ73により撮像し、撮像した顕微鏡画像10Aまたはそれらを合成したウェハ表面全体の合成画像74を表示するようにしてもよい。このようにすれば、上述の実施形態と同様の効果を得ることができるのに加え、時間がかかるが、より細かい場所毎の欠陥検査を行うことが可能になる。
なお、図10に示す第1の変形例に係る表面検査装置70では、ウェハ10が顕微鏡用アライメントステージ71に保持される。また、顕微鏡用撮像カメラ73による顕微鏡画像10Aは、顕微鏡用撮像カメラ73から画像処理装置50の画像記憶部51に取り込まれる。そして、上述の実施形態と同様にして、画像処理部52がウェハ10における繰り返しパターン12の欠陥を検出し、検出結果およびウェハ表面全体の合成画像74が処理結果出力部53で出力表示される。また、図10に示す表面検査装置70において、照明光学系は上述の実施形態と同じ構成であり、詳細な説明および図示を省略する。なおこのとき、ノイズ検出部54が撮像カメラにおける暗電流のノイズを検出するのは上述の実施形態と同様である。
また、上述の実施形態において、画像処理装置50を用いずに、図11に示すように、撮像カメラ45に撮像されたウェハ10の反射画像を画像表示部91で表示して、目視によりウェハ10における繰り返しパターン12の欠陥を検出するようにしてもよい。このようにしても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、図11に示す第2の変形例に係る表面検査装置90において、アライメントステージ20、照明光学系30、および撮像光学系40は上述の実施形態と同じ構成であり、同一番号を付して詳細な説明を省略する。なおこのとき、撮像カメラにおける暗電流のノイズを検出するノイズ検出部92が、画像表示部91と別体に設けられる。
また、上述の実施形態において、直線偏光L1がp偏光である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、p偏光ではなくs偏光にしてもよい。s偏光とは、振動面が入射面に垂直な直線偏光である。このため、図4に示すように、ウェハ10における繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)が、s偏光である直線偏光L1の入射面A2に対して45度の角度に設定された場合、ウェハ10の表面におけるs偏光の振動面の方向と繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)とのなす角度も、45度に設定される。なお、p偏光は、繰り返しパターン12のライン部2Aのエッジ形状に拘わる欠陥情報を取得するのに有利である。また、s偏光は、ウェハ10の表面の欠陥情報を効率よく捉えて、SN比を向上させるのに有利である。
さらに、p偏光やs偏光に限らず、振動面が入射面に対して任意の傾きを持つような直線偏光でも構わない。この場合、繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)を直線偏光L1の入射面に対して45度以外の角度に設定し、ウェハ10の表面における直線偏光L1の振動面の方向と繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)とのなす角度を、45度に設定することが好ましい。
また、上述の実施形態では、ランプハウス31に内蔵された超高圧水銀灯の光と第1偏光板32を利用して、直線偏光L1を作り出すように構成されているが、これに限られるものではなく、レーザを光源として使用すれば第1偏光板32は必要ない。
さらに、上述の実施形態において、第1および第2位相板33,42の効果について説明を省略したが、第1および第2楕円鏡34,41等における光の複屈折をキャンセルするために位相板を用いた方がよいことは言うまでもない。