JP2008277425A - コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】誘電体の高温成膜に耐える基板で、かつ誘電体が一軸配向及び面内配向し、圧縮応力がかかった膜とし、高誘電率化、低漏れ電流化を可能とするコンデンサを提供すること。
【解決手段】結晶の方位が所定方向に配向した金属基板と、前記金属基板上に設けられ、前記金属基板を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる下部電極と、前記下部電極上に設けられ、前記下部電極を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる誘電体と、前記誘電体上に設けられた上部電極と、を備えるコンデンサである。
【選択図】図1
【解決手段】結晶の方位が所定方向に配向した金属基板と、前記金属基板上に設けられ、前記金属基板を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる下部電極と、前記下部電極上に設けられ、前記下部電極を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる誘電体と、前記誘電体上に設けられた上部電極と、を備えるコンデンサである。
【選択図】図1
Description
本発明は、半導体集積回路の電源デカップリングなどに用いられるコンデンサに関し、配向金属基板上に誘電体層を配向形成せしめたコンデンサに関するものである。
コンデンサは、電源付近でのノイズ除去機能、コイルや抵抗成分との組み合わせによるフィルタ機能等を有し、電子部品を構成する配線基板上に数多く実装されている。 コンデンサを構成する誘電膜としては、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸バリウムストロンチウム(BaxSr1−xTiyO3、以下BST),五酸化タンタル(Ta2O5),SrBi2Ta2O9などが挙げられる。特に、SrTiO3やBST等のペロブスカイト型酸化物は、室温付近で高い誘電率を示し、常誘電相である。このため、メモリ用,高い電圧依存性を利用した可変コンデンサ用,小型化や大きな静電容量が要求される半導体集積回路の電源デカップリング用等様々な用途に向けて開発されてきた。
特開平7−97296号公報
このようなコンデンサには、高誘電率を有し、漏れ電流が少ないことが求められている。
高誘電率なコンデンサを得るためには、誘電膜が高い結晶性を有することが必要である。一方、漏れ電流を少なくするためには、誘電膜の表面が粗いことによる電界の集中を防いだり、グレインバウンダリ(粒界)が広いことによって生じる漏れ電流経路を防いだりすることが必要である。
そのためには、誘電膜を一軸に配向させることが有効と考えられる。なぜならば、誘電膜が多結晶膜の場合、一軸配向膜に比べて誘電率が低いだけではなく、漏れ電流が発生する要因を多く含むからである。例えば、配向面によって表面粗さが異なるため、多結晶膜の場合には様々な方向に成長した結晶が表面にあるので表面が粗くなり、その凹部に電界が集中して漏れ電流が増大する。また、多結晶膜、すなわち異なる面に配向した異種グレインバウンダリの粗密は、一軸配向膜のそれと比べて大きいため、漏れ電流経路となり漏れ電流が増大する。これは、例えば(111)面のグレインと(100)面のグレインを比べたとき、(111)面は三角錐状にグレイン成長するのに対して、(100)面は平面で成長することに関わり、混在した膜の場合、表面粗さとグレインバウンダリが大きくなり、漏れ電流が増大する。
具体的には、誘電体膜を一軸配向させる手法としては、下地に一軸配向した膜を用いればよい。例えば、特許文献1には、例えば石英等からなる基板上に(100)面配向したMgOの配向性酸化物下地膜を形成し、その上に<100>軸に配向したNiO等の電極膜を形成する方法が記載されている。
しかしながら、このようにして一軸配向させても漏れ電流は発生し、さらに漏れ電流を少なくすることが求められていた。
そこで、本発明は従来のこのような諸事情を鑑みて案出されたもので、その目的とするところは、高誘電率化、低漏れ電流化を実現することのできるコンデンサを提供することである。
本発明のコンデンサは、(1)結晶の方位が所定方向に配向した金属基板と、前記金属基板上に設けられ、前記金属基板を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる下部電極と、前記下部電極上に設けられ、前記下部電極を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる誘電体と、前記誘電体上に設けられた上部電極と、を備えるものである。
また、本発明のコンデンサは、上記構成において、前記金属基板は、Ni,Ni合金またはCuのいずれかからなり、前記下部電極は、IrまたはPtからなり、前記誘電体は、Ba,Sr及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなるものである。
また、本発明のコンデンサは、(2)結晶の方位が所定方向に配向した金属基板と、前記金属基板上に設けられ、前記金属基板を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる誘電体と、前記誘電体上に設けられた上部電極と、を備えるものである。
また、本発明のコンデンサは、上記構成において、前記金属基板は、Ni,Ni合金またはCuのいずれかからなり、前記誘電体は、Ba,Sr及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなるものである。
また、本発明のコンデンサは、上記(1),(2)のいずれかの構成において、前記金属基板は、[100]に配向しているものである。
また、本発明のコンデンサは、上記(1),(2)のいずれかの構成において、前記金属基板は、可撓性を有するシート部材であるものである。
本発明の(1)のコンデンサによれば、金属基板を用いることから、実質的に下部電極の厚みを厚くしたこととなり、抵抗が少なくなり、Q値の優れたコンデンサとすることができる。
また、結晶の方位が所定方向に配向した金属基板を用いることから、その上に形成される下部電極,誘電体も金属基板と同一の方位に配向した一軸配向の誘電体を得ることができる。また、この金属基板上に下部電極,誘電体を、下地と成る層の結晶格子に即した結晶格子となるように、擬似的にエピタキシャル成長させることで、面内配向のある誘電体を得ることができる。ここで、基板、下部電極、誘電体の各材料の格子定数の関係が、次第に大きくなっている((配向基板)<(下部電極)<(誘電体))ので、誘電体に圧縮応力が働き、グレイン同士が密に配置されグレインバウンダリを少なくすることができ、結果として漏れ電流を少なくすることができる。
さらに、誘電体に圧縮応力が働くため、表面が平滑になり、局所的な電界集中を防ぐことができるため漏れ電流を低減することができる。
また、金属基板が例えばNi等の高温における耐熱性を有する材料からなる場合には、基板および下部電極を500〜600度以上の高温に保持して誘電体を形成することができるので、高い誘電率を有する誘電体を設けることができる。
また、本発明のコンデンサによれば、金属基板が、NiあるいはNi合金またはCuからなり、下部電極は、IrやPtからなり、誘電体は、Ba,Sr及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶であることから、従来用いられていたSi基板や高融点材料と比べて低コストの基板を用いて高い誘電率を有するコンデンサを得ることができる。ここで、金属基板,下部電極,誘電体の格子定数の差が大きすぎると、下地となる組織の結晶構造を反映させることができず(面内配向させることができず)、一方で差が小さすぎると上に形成される膜(誘電体)に圧縮応力が働かなくなる。これに対して、上述のような材料の組み合わせとすることで、面内配向させることができ(擬似的にエピタキシャル成長させることができ)、かつ誘電体に圧縮応力をかけることができるものとなる。
また、本発明の(2)のコンデンサによれば、金属基板を用いることから、実質的に下部電極の厚みを厚くしたこととなり、抵抗が少なくなり、Q値の優れたコンデンサとすることができる。
また、結晶の方位が所定方向に配向した金属基板を用いることから、その上に形成される誘電体も金属基板と同一の方位に配向した一軸配向の誘電体を得ることができる。また、この金属基板上に誘電体を、下地と成る層の結晶格子に即した結晶格子となるように、擬似的にエピタキシャル成長させることで、面内配向のある誘電体を得ることができる。ここで、基板、誘電体の各材料の格子定数の関係が、次第に大きくなっている((配向基板)<(誘電体))ので、誘電体に圧縮応力が働き、グレイン同士が密に配置されグレインバウンダリを少なくすることができ、結果として漏れ電流を少なくすることができる。
さらに、誘電体に圧縮応力が働くため、表面が平滑になり、局所的な電界集中を防ぐことができるため漏れ電流を低減することができる。
また、下部電極が不要なので、層構造を簡略化させることができ、生産性の高いものとすることができる。
また、金属基板が例えばNi等の高温における耐熱性を有する材料からなる場合には、基板および下部電極を500〜600度以上の高温に保持して誘電体を形成することができるので、高い誘電率を有する誘電体を設けることができる。
また、本発明のコンデンサによれば、金属基板が、NiあるいはNi合金またはCuからなり、誘電体は、Ba,Sr及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶であることから、従来用いられていたSi基板や高融点材料と比べて低コストの基板を用いて高い誘電率を有するコンデンサを得ることができる。ここで、金属基板と誘電体との格子定数の差が大きすぎると、下地となる組織の結晶構造を反映させることができず(面内配向させることができず)、一方で差が小さすぎると上に形成される膜(誘電体)に圧縮応力が働かなくなる。これに対して、上述のような材料の組み合わせとすることで、面内配向させることができ(擬似的にエピタキシャル成長させることができ)、かつ誘電体に圧縮応力をかけることができるものとなる。
また、本発明の(1),(2)のコンデンサによれば、金属基板が[100]に配向していることから、立方体状に成長するグレインの平らな表面上に同様の立方体状に成長する下部電極,誘電体を成長させることができるので、Cube−on−Cubeの配置(立方体の上に立方体が重なって配置している状態)とすることで誘電体を(100)面に配向させることができる。これにより、より確実に誘電体に圧縮応力をかけることができるので漏れ電流を小さくすることができる。また、(111)面等に配向している誘電体と比べて表面が平滑になり、局所的な電界集中を低減することができ、漏れ電流をさらに低減することができる。
また、本発明のコンデンサによれば、金属基板が可撓性を有したシート部材であることから、通常0.1mm以上の厚みを有するSi等からなる基板を削ることなく、厚み数十μm〜数百μmの低背なものを提供することができる。なお、ここで、厚み100μm以下のコンデンサをシートコンデンサと呼ぶこととする。
また、可撓性を有することから、有機基板に埋め込んで(内蔵して)使用することができる。近年、通信機器の小型化・高機能化を図るため、L,C,R受動部品の高密度化を目的として、これら受動部品が基板表面への実装から有機基板内に埋め込まれ、3次元的に部品が配置された有機基板が実用化され始めている。ここで、有機基板に埋め込むためにはコンデンサ自身の低背化や可撓性も求められている。このような要求に対しても、本発明のコンデンサは応えることができるものとなる。さらに、従来は可撓性を持つ基板として、有機高分子を用いていたため高温処理することができず、その上に高誘電率を有する誘電体を成長させることはできなかった。これに対して、本発明によれば、金属基板(金属シート部材)を用いることから、有機高分子材料に比べて十分に耐熱性を有するのでその上に高誘電率な誘電体を形成することができる。
以下、本発明のコンデンサについて、図1,図2を参照して説明する。図1は、本発明のコンデンサの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は、図1の金属基板,下部電極,誘電体を構成する単一結晶格子を抜き出した断面図であり、格子定数の関係を説明するものである。図1,2において、1は金属基板であり、2は下部電極であり、3は誘電体であり、4は上部電極であり、5は絶縁体であり、6は引出し電極である。
図1に示すように、本発明のコンデンサは、結晶の方位が所定方向に配向した金属基板1上に、薄膜の下部電極2、誘電体3および上部電極4がこの順に積層された構造である。下部電極2および上部電極4はそれぞれスパッタリング法や真空蒸着法等で形成し、誘電体3はスパッタリング法やゾルゲル法等で形成する。各層のパターニング方法は、通常、フォトリソグラフィの手法が用いられる。すなわち、必要部のみをフォトリソグラフィによってパターニングしたフォトレジストで覆い、その後、ウェットエッチングまたはECR(Electron Cyclotron Resonance)装置等によりドライエッチングし、不要部を除去して、所定形状のパターンを形成する。
具体的には、まず金属基板1の上面全体に金属基板1の材料の常温における格子定数よりも大きい格子定数を有する材料を用いて下部電極2を形成した後、所定のパターンに加工する。ここで、金属基板1は、Ni,Cu,Agおよびそれらを主成分とする合金などが上げられ、この上に形成する下部電極2,誘電体3を結晶性よく成長させるために十分な平滑性を保有していることが好ましい。具体的には、算術平均粗さが10nm以下であることが好ましい。本発明では、金属基板1の上面における結晶の方位が所定方向に配向しているものを用いる。ここで、所定方向に配向しているとは、所定方位面が90%以上となっている、例えば[100]に配向している場合、上面において(100)面が90%以上であることをいう。ここで、所定結晶方位面の占める割合は、例えばEBSD(Electron Backscatter Diffraction)で測定することができる。また、面内の配向度は、X線回折におけるφスキャンの半値幅であるΔφが5°以下であることで高配向であるとする。例えば、上面が(100)面であり、立方晶の面内配向として(100)を見るときは、ξの角度を0°と90°として、(110)を見るときには、ξの角度を45°と90°として、(111)を見るときには、ξの角度を54.7°として対称点のピークを確認し、このピークのΔφを確認すればよい。このような配向基板は、例えば、特開2006−286212号公報、特開2001−110255号公報、特開2004−171841号公報等を参照して作製すればよい。
下部電極2の材料としては、金属基板1の材料の常温における格子定数よりも大きい格子定数を有する導体材料であれば特に限定されないが、金属基板1としてNi,Ni合金,Cuからなるものを用いる場合には、Ir、Ptを用いることが好ましい。なお、金属基板1として用いられるNiの格子定数は3.524Åであり、Cuの格子定数は3.615Åであり、下部電極2として用いられるIrの格子定数は3.84Åであり、Ptの格子定数は3.921Åである。
ここで、下部電極2は下地となる金属基板1の表面の結晶格子に即した結晶格子を有するように成長させる。このように下部電極2を擬似的にエピタキシャル成長させることで、c軸方向の配向(一軸配向)のみでなく、a軸方向にも配向(面内配向)したものとなる。
次に、この下部電極2上に下部電極の材料の常温における格子定数よりも大きな格子定数を有する材料からなる誘電体3を全面に形成し、下部電極2と同様に、不要部を除去して所定形状の誘電体3を形成する。
誘電体3の材料としては、高い誘電率を持つものが好ましく、例えばTa2O5やSrTiO3、(Ba,Sr)TiO3などの酸化物が挙げられる。これらは、ゾルゲル法等の溶液法やスパッタ法やレーザーアブレーション法などの気相合成法等薄膜作製手法により形成することができる。なお、高い結晶性を有する誘電体3を成長させるために、例えば500℃以上の高い成膜温度で成膜するか成膜後に例えば500℃以上の高温アニールを施す必要がある。このような高温の処理に対しても、基板として十分に耐熱性を有する例えばNiからなる金属基板1を用いることで対応することができる。
ここで、誘電体3は下地となる下部電極2の表面の結晶格子に即した結晶格子を有するように成長させる。このように誘電体3を擬似的にエピタキシャル成長させることで、c軸方向の配向(一軸配向)のみでなく、a軸方向にも配向(面内配向)したものとなる。このように成長させるためには、下部電極2としてIr,Ptを用いる場合であれば、誘電体3としてBi,Sr,Tiを含むペロブスカイト型酸化物結晶を用いることが好ましい。なお、誘電体3として用いられるSrTiO3の格子定数は3.905Åであり、(Ba0.5,Sr0.5)TiO3の格子定数は3.947である。
ここまでの構成に関して、図2の単一結晶格子の図を用いて、誘電体3に圧縮応力が生じるメカニズムについて説明する。図2において、金属基板1が[100]に配向しているものとする。すなわち、(100)面が金属基板1の垂直方向にあり、立方体状の結晶格子の上に立方体状の結晶格子が重なる配置を示している。また、図2において、結晶格子の寸法の違いを分かり易くするために、結晶格子の寸法の差を誇張して示している。
図2に示すように、金属基板1の立方体状の結晶格子上に下部電極2の立方体状の結晶格子を成長させると、面内の配向がとれていることから、下部電極2の立方体状の結晶格子は金属基板1の立方体状の結晶格子と同じサイズの結晶格子で成長しようとする。ここで金属基板1の格子定数に比べて下部電極2の格子定数が大きいので、下部電極2の結晶格子には圧縮応力がかかることとなる。同様に、この下部電極2の立方体状の結晶格子の上に誘電体3の立方体状の結晶格子を成長させると、面内の配向がとれていることから、下部電極2の材料よりも格子定数の大きい誘電体3の立方体状の結晶格子は下部電極2の立方体状の結晶格子と同じサイズの結晶格子で成長しようとするので、誘電体3の結晶格子に圧縮応力がかかることとなる。このように、格子定数の関係によって下部電極2に圧縮応力が働き、同様に誘電体3に圧縮応力が働く。なお、金属基板1と誘電体3との間に下部電極2を有するので、金属基板1と誘電体3との格子定数に違いがあっても、段階的に擬似的なエピ成長をさせることができる。
誘電体3は、上述のような圧縮応力が働いている結晶格子が並んでいることとなり、その結晶格子間のグレインバウンダリは、隣り合う双方の結晶格子から押されて、通常に比べて狭くなり、非常に密に結晶格子が並んだものとなる。
なお、金属基板1,下部電極2,誘電体3を、互いに面内配向させた状態とさせるためには、互いの格子定数の違いが10%以内、特に3%以内であることが好ましい。例えば、金属基板1としてNiを用いた場合、立方晶の格子定数は3.5238Åであり、下部電極2としてIrを用いた場合、立方晶の格子定数は3.84Åであるので、両者の格子定数の違いは8.2%となり、下部電極2を面内配向させることができる。同様に、このIrからなる下部電極2上に、誘電体3として(Bi0.5Sr0.5)TiO3を用いた場合、立方晶の格子定数は3.9471Åであるので、両者の格子定数の違いは約2.7%となり、誘電体2を面内配向させることができる。このように、金属基板1から誘電体3まで無理なく面内配向を実現することができる。
このように、面内配向した下部電極2,誘電体3を形成するためには、例えば、物理的成膜の場合は、粒子のエネルギーを高めることと付着してからの成長が促進される環境を整えることが必要になる。例えば、金属基板1の温度を高く設定し、成膜時の圧力を下げて成長速度を低くすればよい。
次に、この誘電体3の上に上部電極4を形成する。上部電極4を構成する材料は、電極の抵抗や密着性、耐還元性などを考慮し、Au、Cu、Ag、Ptなどの金属やIrO2やRuO2などの導電性酸化物が挙げられる。また、上部電極4を含めた下部電極2、誘電体3を同一バッチで、大気に曝すことなく形成すれば、各界面における異物や油脂などの余分な付着を防ぐことができ、密着性が改善され、水分の侵入などを防止することができ、耐湿性を大幅に改善することができ、安定した特性を生み出すことが可能となる。
なお、下部電極2,上部電極4の厚みは、電極自身の抵抗成分や連続性を考慮すると厚い方が好ましいが、下地となる層(金属基板1,誘電体3)との密着性を考慮すると薄い方が好ましく、両方を考慮して決定される。具体的には0.1μm〜10μm以下である。なお、下部電極2については、金属基板1との格子定数の違いを緩和し、その上に更に大きい格子定数を有する誘電体3を擬似的なエピ成長させるような厚みが必要である。
誘電体3の厚みは、コンデンサの所望の容量により決められるが、例えば0.1μm〜10μmとすればよい。
このように、金属基板1,下部電極2と、上部電極4との間に誘電体3を挟む構造により、コンデンサ素子が形成される。ここで、金属基板1と下部電極2とでコンデンサ素子として誘電体3を挟む一方の電極を構成することとなるので、電極の厚みを厚くすることができ、損失の少ないコンデンサ素子とすることができる。例えば、従来の薄膜コンデンサの場合であれば、高品質の誘電体3を作製するためには下部電極2をサブミクロンの厚さに薄くする要望があったが、その場合には下部電極2の抵抗が大きくなりコンデンサとしての特性が落ちるために、下部電極2の厚みをワンオーダー上げる必要があった。これに対して、本発明では金属基板1と下部電極2とで一方の電極を構成するので、誘電体3の特性を犠牲にして下部電極2の厚みを厚くしなくても十分に抵抗を小さくすることができる。具体的には、下部電極2の厚みが薄い場合には、同じ厚みの下部電極2を用いても抵抗値をワンオーダー以上下げることができる。特に、図1においては、2つのコンデンサ素子が、下部電極2を共有することで直列接続されたものとなっており、コンデンサ素子同士を抵抗の少ない状態で接続することができるので好ましい。
次に、絶縁層5は、上部電極4、誘電体3、下部電極2の構造を全て覆うように成膜され、上部電極4と下部電極2との絶縁の確保およびそこに発生する寄生容量を小さくするために必要である。また、コンデンサ素子を保護する働きもある。このような絶縁層5は、絶縁性を有し、かつ誘電率が低い材料であれば特に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素や窒化ケイ素を用いれば耐湿性の向上にも寄与するので好ましい。絶縁層5の成膜方法は、立体的に複雑な形状を持つ下地構造に対しても比較的均一な膜厚が得られるとともに被覆性の良好なCVD(Chemical Vapor Deposition)法が好ましい。また、この絶縁層5には、上部電極4と後述する引出し電極6とを電気的に接続して、上部電極4を外部回路と接続するために、上部電極4直上に開口部を形成する。
次いで、引出し電極層6を形成する。引出し電極層6は、上部電極4を絶縁層5の上側に引き出すものであり、絶縁層5の開口部に露出する上部電極4と電気的に接続させるとともに、この開口部を充填して絶縁層5の上面に露出するように形成される。この絶縁層5の上面に露出した引出し電極6は外部回路と接続するための端子としての機能を有する。材料としては、Au,Cuなどの低抵抗な金属を用いることが望ましい。また、引出し電極層6と絶縁層5との密着性を考慮して、Ti、Niなどの密着層を使用することは、上部電極層4の抵抗を大きく増大させない範囲内で差し支えない。
以上のようにして、図1に示す本発明のコンデンサが形成できる。
図1において、平面視で、下部電極2の内側に誘電体3が形成され、誘電体3の内側に上部電極4が設けられている。このような構成にすることにより、下部電極2,誘電体3,上部電極4を同一バッチで積層してから、上に位置する層から順にパターニングしてコンデンサを形成することができるので、層間に異物等が紛れることなく信頼性の高いコンデンサとすることができる。また、このような構成にすることで、誘電体3に段差がなくなり、誘電体3の全域において下部電極2に面内配向した密な結晶とすることができる。このため、結晶の並びに不均一な部分ができず、グレインバウンダリの広い部分がなくなるので、漏れ電流を抑制することができる。特に、電界が集中する上部電極4の周縁部において誘電体3の結晶の並びが密であることが好ましい。
次に、図1に示す本発明のコンデンサの変形例について説明する。
図3は、本発明のコンデンサの変形例を示す断面図である。図1に示すコンデンサでは、金属基板1と下部電極2とで、コンデンサ素子の一方の電極としていたが、図3では、金属基板1のみでコンデンサ素子の一方の電極を構成している。すなわち、図1に示す構成から、下部電極2を省略した構成となっている。
このような構成としても、金属基板1と誘電体3とを面内配向させるように、両者の材料の格子定数を調整する(金属基板1の材料の格子定数に比べて誘電体3の材料の格子定数が大きく、かつその違いが10%以内、特に好ましくは3%以内であることが望ましい)ことで圧縮応力のかかった誘電体3を得ることができる。
この場合には、構成を簡易にすることができるので生産性が高くなる。また、予め配向した金属基板1上に直接誘電体3を設けるので、より欠陥や結晶配列の乱れが少ない面内配向を有する誘電体3を得ることができ、漏れ電流の少なくコンデンサとすることができる。
次に、図1に示す本発明のコンデンサのさらに他の変形例について説明する。
図1においては、金属基板1として、結晶の方位が所定方向に配向していれば特に限定はなかったが、金属基板1としてシート部材を用いてもよい。シート部材は、0.3mm以下の厚みを有するものであり、シート部材としては、例えば(100)配向Niシートを用いることができる。
シート部材を用いることで、金属基板1の、ひいてはコンデンサ全体の低背化を実現できるので好ましい。また、従来の堅く可撓性のない基板上に形成された場合には、コンデンサを有機基板、例えば多層配線基板の製造工程にある熱圧着により堅い基板が破損する恐れがあったが、シート部材が可撓性を有することから、有機基板内に内蔵させることもできるので、電子部品の高密度配線にも対応することができるものとなる。
以上のように、本発明のコンデンサによれば、高誘電率で漏れ電流が少なく、低背なコンデンサを提供することができる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。
例えば、図1において、外部回路と接続するために、上部電極4のみを絶縁層5の上面に引き出して端子としていたが、金属基板1も導電性を有しているので、金属基板1を外部回路と接続するための端子としてもよい。
また、図1では、上部電極4のみを絶縁層5の上面に引き出して端子としていたが、下部電極2も絶縁層5の上面に引き出して端子とすることができる。その場合には、絶縁層5に、下部電極2のうち、誘電体3が形成されていない領域の上面が露出するような開口部を設ければよい。
さらに、図1においては、絶縁層5の上面に露出する引出し電極層6が外部回路と接続するための端子としていたが、この露出部分に外部端子として半田端子部を設けてもよい。また、絶縁層5の上から更に保護層を設けてもよい。保護層や半田端子部を形成することにより、表面実装が可能なコンデンサになる。保護層は、上部電極4を外部回路と接続するために、上部電極4の一部または上部電極4に電気的に接続された引出し電極層6を露出する開口部を有するように形成される。
保護層は、コンデンサ素子を外部から機械的に保護するほか、湿度や酸素との化学反応によるコンデンサ素子材料の劣化や、ゴミなどの異物の付着による汚染、実装時の破損による劣化、薬品等による汚染、酸化等を防止し保護する。材料としては、耐熱性が高く、段差に対する被覆性に優れたものが良い。具体的には、ポリイミドやBCB(ベンゾシクロブテン)樹脂など有機系の熱硬化材料もしくは光硬化材料を用いることができる。半田端子を形成する場合は、まず、絶縁層5から露出する引出し電極層6の上面に半田拡散防止層を形成する。これは、半田端子を形成する際のリフローや実装の際に、半田の引出し電極層6,上部電極4への拡散を防止するために形成する。材料としては、Niが好適である。また、半田拡散防止層の表面には、半田濡れ性を向上させるために、半田濡れ性の高いAu,Cuなどを0.1μm程度形成する場合もある。最後に、この上に半田端子を形成する。これは、実装を容易にするために形成する。具体的には、半田ペーストを印刷後、リフローを行い形成すればよい。
次に、図1を例に、本発明をより具体化した例について説明する。
まず、金属基板1としてNi合金の(100)基板を用い、この上に下部電極2の材料として用いるPtを、金属基板1温度を約700℃にしてスパッタリング法により0.2μmの厚みに面内配向させて成膜した。
次に、下部電極2の上に誘電体3を、(Ba0.5Sr0.5)TiO3からなるターゲットを用い、基板温度を約800℃として、厚み200nmにスパッタリング法によりに面内配向させて成膜した。
さらにこの誘電体3の上に、Auからなる上部電極4をスパッタリング法により基板温度を250℃として0.6μmの厚みに面内配向させて成膜した。これらは、同一チャンバー内で大気開放せずに順次成膜した。
次に、上部電極4の上面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィの手法により形成したフォトレジスト層を所定の形状にパターニング加工した後、ECR装置(電子サイクロトロン共鳴装置)により上部電極層4、誘電体層3および下部電極層2を所定形状に順次エッチングした。ここで、ECRエッチングの条件として、Arガス流量、Arガス圧、Arイオンの加速電圧をそれぞれ20sccm、1Pa、0.3kVとした。
次に、絶縁層5として、SiO2膜をTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを原料とするCVD装置により成膜した。この絶縁層5上にフォトレジスト層を加工した後、RIE(反応性イオンエッチング)により所定の形状にエッチングを行った。
次に、引出し電極層6として、NiおよびAuをスパッタリング法にて順次積層して成膜し、所定の形状にパターニング加工を施した。このようにして図1に示すような本発明のコンデンサを得ることができた。
このようにして作製したコンデンサは、Si基板やセラミック基板上に同様の形状を有する下部電極 ,誘電体,上部電極,絶縁層,引出し電極層を設けたコンデンサに比べて高い誘電率を有し、漏れ電流の小さなものとなった。
1・・・金属基板
2・・・下部電極
3・・・誘電体
4・・・上部電極
5・・・絶縁層
6・・・引出し電極層
2・・・下部電極
3・・・誘電体
4・・・上部電極
5・・・絶縁層
6・・・引出し電極層
Claims (6)
- 結晶の方位が所定方向に配向した金属基板と、
前記金属基板上に設けられ、前記金属基板を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる下部電極と、
前記下部電極上に設けられ、前記下部電極を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる誘電体と、
前記誘電体上に設けられた上部電極と、を備えるコンデンサ。 - 前記金属基板は、Ni,Ni合金またはCuのいずれかからなり、
前記下部電極は、IrまたはPtからなり、
前記誘電体は、Ba,Sr及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなる、請求項1に記載のコンデンサ。 - 結晶の方位が所定方向に配向した金属基板と、
前記金属基板上に設けられ、前記金属基板を構成する材料に比べて格子定数の大きい材料からなる誘電体と、
前記誘電体上に設けられた上部電極と、を備えるコンデンサ。 - 前記金属基板は、Ni,Ni合金またはCuのいずれかからなり、
前記誘電体は、Ba,Sr及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなる、請求項3に記載のコンデンサ。 - 前記金属基板は、[100]に配向している、請求項1乃至4のいずれかに記載のコンデンサ。
- 前記金属基板は、可撓性を有するシート部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のコンデンサ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2007117133A JP2008277425A (ja) | 2007-04-26 | 2007-04-26 | コンデンサ |
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JP2007117133A Pending JP2008277425A (ja) | 2007-04-26 | 2007-04-26 | コンデンサ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015008509A (ja) * | 2011-02-25 | 2015-01-15 | 株式会社村田製作所 | 可変容量素子及びチューナブルフィルタ |
CN109923630A (zh) * | 2016-11-02 | 2019-06-21 | 株式会社村田制作所 | 电容器 |
-
2007
- 2007-04-26 JP JP2007117133A patent/JP2008277425A/ja active Pending
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