JP2008277271A - 燃料電池セル及び燃料電池スタック - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成でアノード電極における水分不足を好適に抑制し、優れた発電性能を発揮させ得る燃料電池セル及び燃料電池スタックを提供すること。
【解決手段】本発明の燃料電池セルによれば、第1の触媒層における固体高分子電解質膜と反対側には、導電性を有する燃料ガス流通部が当接されており、この燃料ガス流路部に形成されている多数の孔が燃料ガスの流路となり、燃料ガスはこれらの孔を流通して第1の触媒層へ供給される。ここで、燃料ガス流通部は親水性を有するように構成されており、その親水性によって燃料ガスと共に供給される液体水を効率的に第1の触媒層へ供給することができる。特に、デッドエンド方式の燃料電池システムにおいて有用である。
【選択図】図7

Description

本発明は、固体高分子型の燃料電池セル及び燃料電池スタックに関し、特に、簡易な構成でアノード電極における水分不足を好適に抑制し、優れた発電性能を発揮させ得る燃料電池セル及び燃料電池スタックに関するものである。
固体高分子型燃料電池の単位セル(以下、単に「燃料電池セル」と称する)は、アノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)との間に固体高分子電解質膜を挟持した構成を有し、アノード電極へ供給される燃料ガス(例えば、水素)とカソード電極へ供給される酸化剤ガス(例えば、空気)とを電気化学的に反応させることにより発電を行う。
具体的には、燃料電池セルでは、アノード電極において、水素がプロトン(H)化され(式(1))、生じたプロトンが、固体高分子電解質膜を介してカソード電極へ移動し、カソード電極において酸素と反応し、水を生成する(式(2))。これらのアノード電極及びカソード電極で生じる反応の結果として起電力を得る。
アノード電極: H→2H+2e …(1)
カソード電極: (1/2)O+2H+2e→HO …(2)
燃料電池セルでは、カソード電極において水が生成する上に、アノード電極における反応によって生じたプロトンがカソード電極へ移動する際に、水を水和した状態で移動するので、カソード電極側では水分量が多くアノード電極側では水分量が少ないという水分の濃度勾配が生じる傾向にある。
かかる水分の濃度勾配により、一部の水はカソード電極からアノード電極へ逆拡散する。その一方で、アノード電極からカソード電極へのプロトン移動に伴う水の移動量は、プロトン移動量(即ち、電流密度の上昇)に比例して増加する。よって、運転時の電流密度が高くなる程、アノード電極側の水分量は減少し、その結果、高電流密度での運転時には、アノード電極側の水分不足によって、固体高分子電解質膜の抵抗が増加し発電の継続が困難となるドライアップ現象が生じるという問題があった。
かかる問題を解決する技術の1つとして、例えば、特許文献1において、電解質膜(固体高分子電解質膜)に隣接するアノード側触媒反応層(触媒層)に密着するアノード(アノード電極)が、セパレータ側に架橋ポリアクリル酸塩の含浸物を有する構成とされた燃料電池のセルが提案されている。具体的には、特許文献1に記載されるセルのアノードは、セパレータ側にガス流路を有する形状にポーラスカーボンを成形した後、この成形ポーラスカーボンをセパレータ側(流路が形成された側)において架橋ポリアクリル酸塩溶液に浸漬することで、セパレータ側に架橋ポリアクリル酸塩の含浸物を有する構成とされている。
この特許文献1に記載されるセルは、アノードが、セパレータ側に架橋ポリアクリル酸塩の含浸物を有しているので、この架橋ポリアクリル酸塩の含浸物の吸水性によってその周辺を湿潤状態とすることができ、アノード側における多少の水の過不足を架橋ポリアクリル酸塩の含浸物により補うことが可能となる。
また、アノード電極への水分供給を、水蒸気だけでなく液体水を利用して行うことが検討されており、特許文献1にも、セパレータ側に架橋ポリアクリル酸塩の含浸物を有するアノードへ、直に水分を供給する水分供給装置が記載されている
さらに、アノード電極側の水分不足を解消する手法として、固体高分子電解質膜の膜厚を薄くしたり、イオン交換容量を増大させたりすることによって、カソード電極からアノード電極への水分の逆拡散を促進する手法もある。
特開平7−326361号公報(例えば、段落[0048]〜[0053]や図4など)
しかしながら、特許文献1に記載されるセルであってもなお、高電流密度での運転時におけるアノード電極側の水分不足を解消し、優れた発電性能を発揮させるには不十分であるという問題点があった。
また、一般的には、燃料電池セルには、ガス拡散層や細孔層(MPL:Micro Porous Layer)のような撥水性を要求される層が、触媒層及び固体高分子電解質層より燃料電池セルの厚み方向外側に配置されているので、液体水をアノード電極へ供給したとしても、撥水性を有するガス拡散層や細孔層が障害となって、アノード電極として機能する触媒層や固体高分子電解質膜への水の供給は困難であるという問題点があった。
さらに、特許文献1に記載されるような水分供給装置を用いて液体水をアノード電極へ供給するとなると、ポンプなどを駆動する電気エネルギーが必要になると共に、装置の複雑化に伴い発電システム全体の大型化を招いたり、製造コストが増大するなどの問題点を生じるという問題点があった。
また、固体高分子電解質膜の膜厚を薄くしたり、イオン交換容量を増大させたりなどにより、アノード電極側の水分不足を解消しようと試みた場合もまた、高電流密度での運転時においてアノード電極側の水分不足を解消するには不十分である上に、機械的強度の低下などの問題点が生じる。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、簡易な構成でアノード電極における水分不足を好適に抑制し、優れた発電性能を発揮させ得る燃料電池セル及び燃料電池スタックを提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載の燃料電池セルは、固体高分子電解質膜と、その固体高分子電解質膜の一方の面に当接し、アノード電極として機能する第1の触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に当接し、カソード電極として機能する第2の触媒層とを備え、前記第1の触媒層へ供給される燃料ガスと前記第2の触媒層へ供給される酸化剤ガスとから水を生成する電気化学反応を利用して発電を行うものであって、前記第1の触媒層における前記固体高分子電解質膜と反対側に当接され、前記第1の触媒層へ供給する燃料ガスの流路となる多数の孔が形成され、燃料ガスと共に供給される液体水を前記第1の触媒層へ供給すべく親水性を有する燃料ガス流通部を備えていることを特徴とする燃料電池セル。
請求項2記載の燃料電池セルは、請求項1記載の燃料電池セルにおいて、前記燃料ガスと共に液体水を前記燃料ガス流通部へ供給する水供給手段を備え、前記水供給手段は、前記アノード電極の下方に設けられ、前記アノード電極から排出された水を貯蔵する水溜め部と、前記燃料ガス流通部に供給される燃料ガス流に臨んで配設され、前記水溜め部に貯蔵されている水を噴射する小孔と、を有している。
請求項3記載の燃料電池セルは、請求項2記載の燃料電池セルにおいて、少なくとも、前記小孔の内周面は撥水性を有する。
請求項4記載の燃料電池セルは、固体高分子電解質膜と、その固体高分子電解質膜の一方の面に当接し、アノード電極として機能する第1の触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に当接し、カソード電極として機能する第2の触媒層とを備え、前記第1の触媒層へ供給される燃料ガスと前記第2の触媒層へ供給される酸化剤ガスとから水を生成する電気化学反応を利用して発電を行うものであって、前記第1の触媒層における前記固体高分子電解質膜と反対側に当接され、前記第1の触媒層へ供給する燃料ガスの流路となる多数の孔が形成された燃料ガス流通部と、前記燃料ガスの流れを前記燃料ガス流通部へ供給する燃料ガス供給部と、前記アノード電極の下方に設けられ、前記アノード電極から排出された水を貯蔵する水溜め部と、前記水溜め部と前記燃料ガス供給部との間を連通し、前記水溜め部に貯蔵されている液体水を、前記連通部における前記燃料ガス供給部を流通する前記燃料ガス流を臨む側の端部から、前記燃料ガス供給部における前記燃料ガス流を利用して噴射する小径の連通部と、を備え、前記燃料ガスの排出経路を閉じた状態で運転するデッドエンド方式の燃料電池システムにて使用されることを特徴とする燃料電池セル。
請求項5記載の燃料電池セルは、請求項4記載の燃料電池セルにおいて、前記連通部は、一端側が前記燃料ガス供給部の壁から突出し、他端側が前記水溜め部の深さ方向に延伸する管状体である。
請求項6記載の燃料電池セルは、請求項5記載の燃料電池セルにおいて、前記管状体における前記燃料ガス供給部側の端部が、前記燃料ガス供給部の相当直径に対し、略1/3以上、かつ、略1/2以下の突き出し長さで前記燃料ガス供給部の壁から前記燃料ガス流側に突出する。
請求項7記載の燃料電池セルは、請求項4から6のいずれかに記載の燃料電池セルにおいて、前記燃料ガス流通部は、前記燃料ガスと共に供給される液体水を前記第1の触媒層へ供給すべく親水性を有する。
請求項8記載の燃料電池セルは、請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池セルにおいて、前記ガス流通部の内部から前記第1の触媒層まで連続した親水性領域が前記燃料ガスの流路に形成されている。
請求項9記載の燃料電池セルは、請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池セルにおいて、前記燃料ガス流通部は、前記第1の触媒層に当接し、前記第1の触媒層と相互に連通する多数の細孔を有する細孔層を含み、前記細孔層は、導電性粒子とバインダーとを少なくとも含む材料から構成されるものであると共に、前記材料における一部が親水性を有し、残りが撥水性を有する。
請求項10記載の燃料電池セルは、請求項9記載の燃料電池セルにおいて、燃料ガス流通部は、前記細孔層と、その細孔層に当接する導電性多孔体とから構成され、前記導電性多孔体は、その表面が親水性を有する。
請求項11記載の燃料電池セルは、請求項10記載の燃料電池セルにおいて、前記導電性多孔体は、その表面が固体高分子電解質により被覆されている。
請求項12記載の燃料電池セルは、請求項1から11のいずれかに記載の燃料電池セルにおいて、前記第2の触媒層における前記固体高分子電解質膜の反対側に該第2の触媒層と電気的に接続された状態で配設され、前記第2の触媒層へ供給する酸化剤ガスの流路となる多数の孔が形成された第2の導電性多孔体を備え、前記第2の導電性多孔体は、前記固体高分子電解質膜の側の表面に、該導電性多孔体における他の部分より前記酸化剤ガスの透過性が高いガス透過促進部が形成されている。
請求項13記載の燃料電池スタックは、請求項1から12のいずれかに記載の燃料電池セルを複数備え、前記複数のセルを電気的に直列接続することによって構成される。
請求項1又は4記載の燃料電池セルによれば、第1の触媒層における固体高分子電解質膜と反対側には、導電性を有する燃料ガス流通部が当接されており、この燃料ガス流路部に形成されている多数の孔が燃料ガスの流路となり、燃料ガスはこれらの孔を流通して第1の触媒層へ供給される。
このように第1の触媒層へ燃料ガスを供給する一方で、固体高分子電解質膜における該第1の触媒層とは反対側の面に当接する第2の触媒層へ酸化剤ガスを供給することによって、第1の触媒層がアノード電極として機能し、第2の触媒層がカソード電極として機能し、燃料ガスと酸化剤ガスとから水を生成する電気化学反応(起電反応)が生じ、その結果として、電力を得ることができる。
ここで、請求項1記載の燃料電池セルによれば、燃料ガス流通部は親水性を有するように構成されており、その親水性によって燃料ガスと共に供給される液体水を効率的に第1の触媒層へ供給することができる。よって、水分を乾燥し易いアノード電極側の第1の触媒層及び固体高分子電解質へ効率的に供給し、アノード電極側の水分不足による発電性能の劣化を有効に抑制できるという効果がある。
一方、請求項4記載の燃料電池セルによれば、アノード電極から排出された水は、該アノード電極の下方に設けられている水溜め部に貯蔵されるように構成されている。この水溜め部と、燃料ガス流通部へ燃料ガスの流れを供給する燃料ガス供給部との間は、小径の連通部により連通されており、水溜め部に貯蔵されている液体水は、燃料ガス供給部を流通する燃料ガス流を利用することにより、該燃料ガス流を臨む側の端部から噴射される。
よって、請求項4記載の燃料電池セルによれば、発電に必要な燃料ガスの流れを利用し、電気化学反応(起電反応)の結果としてアノード電極側に存在する余剰水をアノード電極側の加湿に再利用することができる。そのため、動力を要する水分供給装置を別途設けることなくアノード電極側へ水分を供給することができるので、発電システム全体の大型化や製造コストの増大などを招くことなく発電性能を向上させることができる上に、発電したエネルギーが駆動源として消費されることも回避できるという効果がある。
さらに、請求項4記載の燃料電池セルによれば、燃料ガスの排出経路を閉じた状態で運転するデッドエンド方式の燃料電池システムにて使用されるものである。デッドエンド方式の燃料電池システムでは、燃料電池セル内部における燃料ガスの流路の圧力は、燃料ガスが起電反応に消費されたことに伴い減圧される。
そのため、燃料電池セル(アノード電極)への燃料ガスの間欠的な供給タイミングにおいて、燃料ガスは、燃料電池セル内部における減圧された燃料ガスの流路との圧力差によって高速気流としてアノード電極へ供給される。よって、かかる高速気流を利用することにより、連通部からの液体水の噴射能力(スプレー能力)を高めることができる。その結果、液体水をアノード電極側へ好適に供給することができるので、アノード電極側を好適に加湿することができるという効果がある。
また、複数の燃料電池セルを電気的に直接接続して燃料電池スタックを構成した場合に、各燃料電池セルにおいてアノード電極側が好適に加湿されるので、一部の燃料電池セルにおけるドライアップ現象に起因する発電不能の発生を防止できるという効果がある。
請求項2記載の燃料電池セルは、請求項1記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。液体水は、水溜め部と小孔とを有する水供給手段によって燃料ガスと共に燃料ガス流通部へと供給される。
ここで、水供給手段における水溜め部は、アノード電極の下方に設けられており、アノード電極から排出された水を該水溜め部に貯蔵することができる。また、水供給手段における小孔は、燃料ガス流通部に供給される燃料ガス流に臨んで配設されており、燃料ガス流を利用して、水溜め部に貯蔵されている液体水を、小孔から燃料ガス流通部へ向けて噴出させることができる。
よって、請求項2記載の燃料電池セルによれば、発電に必要な燃料ガスの流れを利用し、電気化学反応(起電反応)の結果としてアノード電極側に存在する余剰水をアノード電極側の加湿に再利用して、第1の触媒層及び固体高分子電解質膜へ供給することができる。
そのため、動力を要する水分供給装置を別途設けることなくアノード電極側へ水分を供給することができるので、発電システム全体の大型化や製造コストの増大などを招くことなく発電性能を向上させることができる上に、発電したエネルギーが駆動源として消費されることも回避できるという効果がある。
また、複数の燃料電池セルを電気的に直接接続して燃料電池スタックを構成した場合に、各燃料電池セルにおいてアノード電極側が好適に加湿されるので、一部の燃料電池セルにおけるドライアップ現象に起因する発電不能の発生を防止できるという効果がある。
また、アノード電極側の水分が不足しがちな高電流密度での運転時には、燃料ガスの流量(流速)も増加するので、その結果として、小孔からの水の噴出量も増大し、アノード電極側へのより多くの水分を供給することができるという効果がある。また、インピーダンス計測などのフィードバック制御機構を要することなく、アノード電極側(第1の触媒層及び固体高分子電解質)の水分を制御することができるという効果がある。
請求項3記載の燃料電池セルによれば、請求項2記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて次の効果を奏する。少なくとも、小孔の内周面が撥水性を有するので、運転が停止された場合、即ち、燃料ガスの流量(流速)がゼロとなる場合に、水溜り部に貯蔵されている液体水が流れ出すことを防止することができるという効果がある。
請求項5記載の燃料電池セルによれば、請求項4記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。水溜め部と燃料ガス供給部との間を連通する連通部が、一端側が燃料ガス供給部の壁から突出し、他端側が水溜め部の深さ方向に延伸する管状体として構成されるので、水溜め部の深さ方向に延びる端部を該水溜め部に貯蔵される液体水に埋没させることにより、その液体水を燃料ガス供給部側の端部へと導き、該端部から噴射させることができるという効果がある。
また、管状体の端部が水溜め部の深さ方向に延伸する構成により、1回あたりの液体水の噴射量を、管状体における水溜め部の深さ方向に延びる側と水溜め部に貯蔵される液体水との接触長さ(埋没長さ)に応じて調整することが可能になるという効果がある。
また、管状体の端部が燃料ガス供給部の壁から突出されるので、管状体の開口部を、燃料ガス供給部を流通する燃料ガス流に十分に接触させることができ、管状体(連通部)から液体水を好適に噴射させることができるという効果がある。
請求項6記載の燃料電池セルによれば、請求項5記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。管状体の端部が、燃料ガス供給部の相当直径に対し、略1/3以上の突き出し長さで該燃料ガス供給部の壁から突出されるので、管状体の開口部を、燃料ガス供給部を流通する燃料ガス流に十分に接触させることができ、管状体(連通部)から液体水を好適に噴射させることができるという効果がある。
一方で、管状体の端部が、燃料ガス供給部の相当直径に対し、略1/2以下の突き出し長さで該燃料ガス供給部の壁から突出されるので、管状体によって燃料ガス供給部を流通する燃料ガスの流れを妨害することを抑制できるという効果がある。
請求項7記載の燃料電池セルによれば、請求項4から6のいずれかに記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。燃料ガス流通部は親水性を有するように構成されており、その親水性によって燃料ガスと共に供給される液体水を効率的に第1の触媒層へ供給することができる。よって、水分を乾燥し易いアノード電極側の第1の触媒層及び固体高分子電解質へ効率的に供給し、アノード電極側の水分不足による発電性能の劣化を有効に抑制できるという効果がある。
請求項8記載の燃料電池セルによれば、請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。燃料ガスの流路には、ガス流通部の内部から第1の触媒層まで連続した親水性領域が形成されているので、燃料ガスと共に供給されて燃料ガスの流路を通過する液体水を、この連続する親水性領域により第1の触媒層へと誘導させることができる。よって、アノード電極側へ水分供給をより効率的に行い得るという効果がある。
請求項9記載の燃料電池セルによれば、請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。燃料ガス流通部は、第1の触媒層に当接し、第1の触媒層と相互に連通する多数の細孔を有する細孔層を含んでいる。ここで、この細孔層は、導電性粒子とバインダーとを含む材料から構成されるので、導電性粒子に起因する導電性を有している。
また、導電性粒子とバインダーとを含む材料の一部が親水性を有し、残りが撥水性を有しているので、親水性の材料(例えば、親水性の導電性粒子及び/又は親水性のバインダー)に起因する親水性領域と、撥水性の材料(例えば、撥水性の導電性粒子及び/又は撥水性のバインダー)に起因する撥水性領域とを、細孔層の内部に形成することができる。
なお、「親水性の導電性粒子」としては、例えば、種々の処理によって表面に親水性が付与された導電性粒子(例えば、親水性材料が表面に被覆された導電性粒子や、親水性処理が表面に施されている導電性粒子など)や、親水性材料から形成されていることによりその表面が予め親水性を有する導電性粒子などが含まれる。
よって、燃料ガスと共に供給される水(小孔又は管状体を介して水溜め部から供給される水)を、親水性領域を経由させて第1の触媒層及び固体高分子電解質膜へ供給し易くすることができるので、発電性能を向上させることができるという効果がある。
また、細孔層内の水は、撥水性領域に比べて親水性領域を優先的に通過するので、水の流路と燃料ガスの流路とを分離し易く、水による燃料ガス流路の閉塞を防止できるという効果がある。
請求項10記載の燃料電池セルによれば、請求項9記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。燃料ガス流通部は、細孔層に加え、その細孔層に当接し、その表面に親水性を有する導電性多孔体を含むので、燃料ガスと共に供給された液体水を、導電性多孔体から細孔層へ好適に移動させることができ、その結果として、水が触媒層及び固体高分子電解質へ好適に供給されることとなる。よって、発電性能を向上させることができるという効果がある。
なお、請求項10において、「表面が親水性を有する導電性多孔体」としては、例えば、親水性材料から形成されていることによりその表面に親水性が付与されている導電性多孔体や、表面が親水性材料(例えば、固体高分子電解質)によって被覆された導電性多孔体や、親水性処理(酸化処理やアルカリ処理など)が表面に施されている導電性多孔体などが含まれる。
請求項11記載の燃料電池セルによれば、請求項10記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。導電性多孔体の表面は、固体高分子電解質により被覆されているので、導電性多孔体の表面にさらなる親水性が付与されることとなり、燃料ガスと共に供給された液体水を、より好適に第1の触媒層へ移動させることができ、その結果として、発電性能を好適に向上させ得るという効果がある。
請求項12記載の燃料電池セルによれば、請求項1から11のいずれかに記載の燃料電池セルの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。第2の触媒層に電気的に接続された状態で配設され、該第2の触媒層へ供給する酸化剤ガスの流路となる多数の孔が形成された第2導電性多孔体における固体高分子電解質膜側の表面には、該第2の導電性多孔体における他の部分より酸化剤ガスの透過性が高いガス透過促進部が形成されているので、カソード電極における水の排出性を向上することができる。
よって、水溜め部に貯留される液体水を管状体によってアノード電極へ噴射した場合に、その一部を電気浸透水として、カソード電極の閉塞を招くことなく、カソード電極側から排出させることができるという効果がある。
請求項13記載の燃料電池スタックによれば、請求項1から12のいずれかに記載の燃料電池セルが電気的に直列接続されて構成されているので、請求項1から12のいずれかに記載の燃料電池セルが奏する効果と同様の効果を奏する。
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における燃料電池セル10を有する燃料電池スタック50を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、燃料電池スタック50は、後述する燃料電池セル10の複数個が矢印X−X方向に積層された積層体である。
燃料電池スタック50において、隣接する燃料電池セル10は、一方の燃料電池セル10における導電性のカソード側セパレータ11(図2参照)と、他方の燃料電池セル10における導電性のアノード側セパレータ12(図2参照)との接触によって、電気的に直列接続されている。
本実施形態の燃料電池スタック50において、図1における最も手前側に位置する燃料電池セル10の露出表面には、アノード側セパレータ12(図2参照)の酸化剤ガス流路12c(図2参照)に連通する酸化剤ガス供給口50aが開口されており、各燃料電池セル10のカソード電極13(図4(b)参照)へ供給される酸化剤ガスは、この酸化剤ガス供給口50aから燃料電池スタック50内部へ供給される。
また、図1に示す燃料電池スタック50における最も手前側に位置する燃料電池セル10の露出表面には、アノード側セパレータ12(図2参照)の燃料ガス流路12a(図2参照)に連通する燃料ガス供給口50bが開口されており、各燃料電池セル10のアノード電極14(図4(b)参照)へ供給される燃料ガスは、この燃料ガス供給口50bから燃料電池スタック50内部へ供給される。
一方で、図1に示す燃料電池スタック50における最も奥側に位置する燃料電池セル10の露出表面には、カソード側セパレータ11(図2参照)の燃料ガス流路11b(図2参照)に連通する燃料ガス排出口50c(図1では燃料電池スタック50の裏面側となるため、手前側に隠れ線により図示)が開口されている。燃料ガス供給口50bから燃料電池スタック50の内部へ供給された燃料ガスは、最終的に、この燃料ガス排出口50cから排出される。
よって、酸化剤ガス供給口50a及び燃料ガス供給口50bから、それぞれ、酸化剤ガス及び燃料ガスを燃料電池スタック50の内部へ供給することにより、各燃料電池セル10を発電させることができ、その結果として、燃料電池スタック50から直流電流を取り出すことができる。燃料電池スタック50には、上部に集電端子50d,50eが設けられており、各燃料電池セル10の発電の結果生じた電流は、これらの集電端子50d,50eから直流電流として取り出すことができる。
次に、図2から図5を参照して、燃料電池スタック50を構成する本実施形態の燃料電池セル10について具体的に説明する。図2は、燃料電池セル10の分解斜視図である。なお、図2を説明する上で、矢印U側を「上」、矢印D側を「下」、矢印R側を「右」、矢印L側を「左」として説明する。
図2に示すように、燃料電池セル10は、アノード側セパレータ12と、インナーマニホールド21と、インナーマニホールド21に装着される支持板18と、後述する多孔体流路付き電極アセンブリ(以下、「多孔体流路付きMEA」と称する)30と、カソード側セパレータ11とが、この順で積層された積層体である。
アノード側セパレータ12及びカソード側セパレータ11は、いずれも、導電性のプレートとして構成される。ここで、カソード側セパレータ11の上側には、酸化剤ガスを流入し、カソード電極13(図4(b)参照)へ供給する酸化剤ガス流路11aが断面略矩形に貫通形成されている。
また、カソード側セパレータ11の右下側には、アノード電極14(図4(b)参照)へ供給する燃料ガスを流入する燃料ガス流路11bが穿孔されており、カソード側セパレータ11の左上側には、隣接する燃料電池セル10から排出された燃料ガスの排出経路となる燃料ガス流路11cが穿孔されている。
一方、アノード側セパレータ12の上側には、酸化剤ガスを隣接する燃料電池セル10へ供給する酸化剤ガス流路12cが酸化剤ガス流路11aより小さい断面略矩形に貫通形成されている。
また、アノード側セパレータ12の左上側には、アノード電極14(図4(b)参照)から排出された燃料ガスの排出経路となる燃料ガス流路12bが穿孔されており、アノード側セパレータ12の右下側には、燃料ガスを隣接する燃料電池セル10へ供給する燃料ガス流路12aが穿孔されている。
インナーマニホールド21は、燃料電池セル10の内部を流通する燃料ガスの流路が形成された樹脂製の部材であり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの撥水性を有する樹脂から構成されることが好ましい。ここで、図2と合わせて図3を参照しつつ、インナーマニホールド21の構成について説明する。図3(a)は、図2に示すインナーマニホールド21のZ−Z線における断面を矢印IIIa方向から見た場合の断面図であり、図3(b)は、図2に示すインナーマニホールド21における裏面側の斜視図である。
なお、図3(a)において、インナーマニホールド21における一方の燃料ガス流路21bを仮想線によって図示し、他方の燃料ガス流路21cを隠れ線によって図示している。なお、図3に示す矢印は、図2に対応する方向を示す。即ち、矢印U側は「上」、矢印D側は「下」、矢印R側は「右」、矢印L側は「左」を示す。
このインナーマニホールド21は、凹部21kと窓部21gとを有しており、これらの凹部21k及び窓部21gに多孔体流路付きMEA30を収容可能に構成されている。具体的には、図3(a)及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21には、その片面側における酸化剤ガス流路21a及び燃料ガス流路21b,21cより面方向内側に、多孔体流路付きMEA30におけるカソード電極13及び固体高分子電解質15に対応する形状の凹部21kが厚さ方向に凹設されている。なお、凹部21kは、図3(a)及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21の下側端面(図3(b)における矢印D側の端面)の側が開放された凹部として形成されている。また、インナーマニホールド21には、凹部21kの底面から厚さ方向に多孔体流路付きMEA30におけるアノード電極14に対応する形状の窓部21gが貫通形成されている。
また、図2、図3(a)及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21には、カソード側セパレータ11の酸化剤ガス流路11a及びアノード側セパレータ12の酸化剤ガス流路12cに対応する位置に、これらの流路11a,12cと連通する酸化剤ガス流路21aが貫通形成されている。なお、この酸化剤ガス経路21aは、酸化剤ガス流路11aより小さく、酸化剤ガス流路12cと略同一の断面矩形状とされている。
また、図2及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21には、カソード側セパレータ11の燃料ガス流路11b及びアノード側セパレータ12の燃料ガス流路12aに対応する位置に、これらの流路11b,12aと連通する燃料ガス流路21bが穿孔されている。
さらに、図2及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21には、カソード側セパレータ11の燃料ガス流路11c及びアノード側セパレータ12の燃料ガス流路12bに対応する位置に、これらの流路11c,12bと連通する燃料ガス流路21cが穿孔されている。
また、図2及び図3(a)に示すように、インナーマニホールド21における凹部21kと反対側の面には、燃料ガス流路21bに連通する溝部21dと、その溝部21dから窓部21gの下側の開口端面まで延びる溝部21eとが形成されている。詳細は後述するが、燃料電池セル10において、燃料ガス流路21bから流入された燃料ガスは、これらの溝部21d,21eを流通し、アノード電極14へ供給される。
一方で、図2及び図3(a)に示すように、インナーマニホールド21における凹部21kと反対側の面には、燃料ガス流路21cに連通すると共に、窓部21gの上側の開口端面に重なりつつ延びる溝部21hが形成されている。詳細は後述するが、燃料電池セル10において、アノード電極14から排出する燃料ガスは、窓部21gの上側の端面の側から溝部21hへ流入し、溝部21h及び燃料ガス流路21c,11cを経て、最終的に燃料ガス排出口50cから排出される。
さらに、図3(a)及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21には、凹部21kの底面には、窓部21gより下方側(図3(b)における矢印D側)に、窓部21gの開口端面側が開放された凹部21iと、凹部21iより浅い凹部21mとがそれぞれ厚さ方向に凹設されている。なお、凹部21mは、支持板18に対応する形状に凹設されている。燃料電池セル10の構成時には、支持板18が凹部21mに装着され、凹部21iと支持板18とから、窓部21iの開口端面側に開口を有する水溜め部40が形成される。
また、図2、図3(a)及び図3(b)に示すように、インナーマニホールド21の溝部21eには、凹部21iの下方位置にて連通するピンホール21fが穿孔されている。かかるピンホール21fは、溝部21eを燃料ガスが流通すると、その流れによって内部の圧力が低下するので、水溜め部40に液体水W(図4及び図5参照)が貯留(貯蔵)されている場合には、その液体水Wをピンホール21fから吸い上げて、燃料ガスの流れによってアノード電極14へ向けて噴出(噴射)させることができる。
上述したように、インナーマニホールド21は、撥水性を有する樹脂から構成されているので、ピンホール21fの内周面もまた撥水性に構成されている。よって、溝部21eを流通する燃料ガスの流量が減じた場合(特に、流量がゼロになった場合)であっても、水溜め部40に貯留されている液体水の流出が毛管排除圧によって防止される。
なお、このピンホール21fの直径は、溝部21eを流通する燃料ガスの流量が減じた場合(特に、流量がゼロになった場合)であっても、水溜め部40に貯留された液体水Wがピンホール21fから流出しない径とされている。
ここで、毛管圧hと毛管半径rとの関係を示す以下の式(I)を用いて、溝部21eを流通する燃料ガスの流量が減じた場合であっても液体水Wが流出しないピンホール21fの直径を考慮する。
h=2Tcosθ/(ρgr) …(I)
h:毛管圧[mAq],T:液体の表面張力[N/m],θ:接触角[度],
ρ:液体の密度[kg/m],g:重力加速度[m/s],
r:毛管の内径(半径)[m]
水溜め部40に貯留される液体水Wによってピンホール21fが受ける水圧(即ち、ピンホール21fの中心から、液体水Wの水面までの高さ)hが0.01〜0.05[mAq]程度である場合に、ピンホール21fの内周壁の接触角θが、ポリエチレンやポリプロピレンのような撥水性樹脂が示す95〜105[度]程度であり、表面張力T及び密度ρに影響する環境温度を10〜80[℃]であるという条件下では、ピンホール21fから液体水Wが流出しないためのピンホール21fの直径(2r)は、0.04〜0.8[mm]程度が必要であると算出される。
また、図2に示すように、多孔体流路付きMEA30は、固体高分子電解質膜15と、その固体高分子電解質膜15の片面に配設され、固体高分子電解質膜15と略同一の形状を有するカソード電極13と、固体高分子電解質膜15におけるカソード電極13とは反対側の面に配設され、固体高分子電解質膜15及びカソード電極13より小さく構成されるアノード電極14とから構成される積層体である。
この多孔体流路付きMEA30は、インナーマニホールド21の凹部21mに支持板18を装着した上で、多孔体流路付きMEA30のアノード電極14を窓部21gに緩挿して、固体高分子電解質膜15を凹部21kの底面に当接させ、この当接部を接着(シール)することによって、インナーマニホールド21に収容される。
そして、多孔体流路付きMEA30が収容されたインナーマニホールド21におけるカソード電極13側にカソード側セパレータ11を配置し、他方の側にアノード側セパレータ12を配置し、これらのセパレータ11,12でインナーマニホールド21を挟持することによって、燃料電池セル10が構成される。
図4(a)は、図2の矢印IVa方向から見た、即ち、アノード側セパレータ12の側から見た燃料電池セル10の平面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるIVb−IVb線における燃料電池セル10の断面図である。また、図5は、図4(b)におけるE部の拡大図である。
なお、理解を容易にするために、図4(a)において、アノード側セパレータ12の裏面側(紙面裏側)に隠れた構造の一部(酸化剤ガス流路11a,溝部21d,21e,21h、窓部21g、ピンホール21f)を隠れ線によって図示すると共に、図4(b)において、カソード側セパレータ11の燃料ガス流路11bとアノード側セパレータ12の燃料ガス流路12aとを仮想線によって図示し、カソード側セパレータ11の燃料ガス流路11cを隠れ線によって図示している。
多孔体流路付きMEA30は、上述の通り、固体高分子電解質膜15と、その固体高分子電解質15の片面に配設され、固体高分子電解質カソード電極13及びアノード電極14とから構成される積層体である。ここで、固体高分子電解質膜15としては、例えば、Nafion(登録商標:デュポン社製)やAciplex(登録商標:旭化成(株)製)など、固体高分子型燃料電池に適用可能な固体高分子電解質膜を使用することができる。
カソード電極13は、図4(b)に示すように、板状の多孔体13aと、その多孔体13aの片面に配設された細孔層(MPL)13bと、その細孔層13bにおける多孔体13aとは反対側の面に配設された触媒層13cとが一体的に形成されたものである。
また、アノード電極14は、大きさ(面積)以外、上述したカソード電極13と同様に構成されている。即ち、アノード電極14もまた、図4(b)に示すように、板状の多孔体14aと、その多孔体14aの片面に配設された細孔層(MPL)14bと、その細孔層14bにおける多孔体14aとは反対側の面に配設された触媒層14cとが一体的に形成されたものである。
触媒層13c,14cは、例えば、カーボン粒子にプラチナなどの触媒が担持された触媒担持カーボンと電解質とを含んで構成された触媒層を採用することができる。図4(b)に示すように、カソード電極13は、触媒層13cを固体高分子電解質膜15に当接させて配置され、その一方で、アノード電極14は、触媒層14cを固体高分子電解質膜15に当接させて配置されており、これらの触媒層13c,14cが、酸素と水素との電気化学反応(起電反応)を促進する。
多孔体13a,14aは、導電性を有すると共に、相互に連通する多くの空孔(例えば、最小内径が10μm〜500μm程度の空孔)を有する。かかる多孔体13a,14aは、三次元の網目状に形成された網材や、連続気泡が形成された発泡材から構成することができる。ここで、例えば、繊維からなる網材を多孔体として採用する場合には、網材が導電性を有する必要性から導電性の繊維が使用される。導電性の繊維としては、例えば、チタン、SUS、タンタル、ハステロイなどの耐食性及び導電性を有する金属繊維や、ニッケル、カーボンなどの繊維を使用することができる。なお、網材は織布であっても不織布であってもよい。
このように、本実施形態では、相互の連通する多くの空孔を有する多孔体13a,14aが電極13,14に採用されているので、かかる空孔が、酸化剤ガス(本実施形態では、空気)や燃料ガス(本実施形態では、水素)の流路の一部として機能する。即ち、本実施形態のカソード電極13は、カソード電極としての機能と、気体流路(酸化剤ガス流路)としての機能との両方を兼ね備えている。同様に、本実施形態のアノード電極14は、アノード電極としての機能と、気体流路(燃料ガス流路)としての機能との両方を兼ね備えている。
また、多孔体13a,14aとしては、導電性と共に親水性を有することが、反応により生成した水を多孔体13a,14aの厚さ方向に拡散させることができるので、液体水によって孔が閉塞されることを防止できるので好ましい。なお、本実施形態では、多孔体13a,14aとして、親水的なチタン繊維からなる網材(チタン繊維焼結板)を採用する。
特に、アノード電極14の多孔体14aは、その表面を親水的に構成することにより、加湿目的で供給された水(水蒸気,液体水)が、厚さ方向へ容易に拡散されて、触媒層14c及び固体高分子電解質膜15側へ移動し易くなる、即ち、加湿目的で供給された水を容易に触媒層14c及び固体高分子電解質膜15側へ到達させることができるという利点も有する。
また、アノード電極14の多孔体14aは、固体高分子電解質(例えば、Nafion(登録商標)など)の溶液に浸漬後、乾燥させ、親水性である固体高分子電解質膜を被覆することができる。また、その他にも、金属酸化物などの親水性材料を表面に被覆したりか、又は、表面酸化処理などの親水性処理を表面に施すことにより、その表面にさらに親水性を付与することができる。アノード電極14の多孔体14aの表面にさらなる親水性を付与することにより、加湿目的で供給された水をより確実に触媒層14c及び固体高分子電解質膜15側へ到達させ得る。なお、多孔体14aの表面を親水性材料により被覆する場合には、多孔体14aの導電性が保持されるよう、薄膜で被覆することが好ましい。
本実施形態では、アノード電極14の多孔体14aとして、表面が固体高分子電解質(Nafion(登録商標))によって4〜5mg/cm程度の塗布量で被覆され、さらに親水性を向上させたチタン繊維焼結板を使用した。
細孔層13b,14bは、導電性を有すると共に、相互に連通する多くの空孔を有する。なお、細孔層13b,14bにおける空孔は、上述した多孔体13a,14aの空孔より小さい細孔(例えば、最小内径が0.01μm〜数μm程度であり、ピークが2μm程度より小さい空孔)である。また、細孔層13b,14bには、触媒は含まれていない。また、かかる細孔層13b,14bは、例えば、200μm以下の厚さで形成される。
細孔層13b,14bは、多孔体13a,14aを流通するガス(酸化剤ガス、燃料ガス)を触媒層13c,14cへ供給する気体流路としての機能と、触媒層13c、14cと多孔体13a,14aとの間における電子伝達を容易にする機能と、触媒層13c,14c内の水を細孔層13b,14bへ移動させて、適度に触媒層を保水しつつ余剰水を系外に排出し、水によって触媒層13c,14cでの電気化学反応が阻害されることを抑制する機能とを担う。
細孔層13b,14bは、カーボン粒子などの導電性粒子とバインダーとを含んで構成されるが、バインダーとして、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene))や、ポリエチレンや、ポリプロピレンなどの撥水性材料を用いることにより、細孔層13b,14bに撥水性を付与することができる。細孔層13b,14bが撥水性を有することにより、細孔層13b,14b内に移動した水を細孔層13b,14bから排出し易くなるので、発電密度が向上するので好ましい。
本実施形態では、細孔層13b,14bとして、例えば、導電性粒子(例えば、カーボンブラックなどのカーボン粒子)と、バインダーであるPTFEとから構成される細孔層を採用した。
ただし、アノード電極14の細孔層14bは、カーボン粒子として、親水性が付与された導電性粒子を使用した。親水性が付与された導電性粒子としては、例えば、固体高分子電解質であるNafion(登録商標)によって表面が被覆されたカーボンブラックや、表面酸化処理を施したカーボンブラックなどを採用できる。
このように、アノード電極14の細孔層14bは、親水性が付与された導電性粒子とPTFEとを含んで構成されるので、かかる細孔層14b内には、親水性が付与された導電性粒子に起因する厚さ方向に実質的に連続する親水性領域と、PTFEに起因する撥水性領域とが形成される。
よって、アノード電極14の細孔層14bは、加湿目的で多孔体14a側から供給された水(水蒸気,液体水)を、触媒層14c及び固体高分子電解質膜15へ容易に移動させて、触媒層14c及び固体高分子電解質膜15における水分不足の状態発生を抑制する機能も有する。
また、細孔層14bは、その内部に、撥水性であるPTFEに起因して形成される撥水性領域が形成されている。細孔層14b内の水は、撥水性領域に比べて親水性領域を優先的に通過するので、水の流路と燃料ガスの流路とが分離され易く、水による撥水性領域の閉塞が防止され、その結果として、ガス流路の閉塞が防止される。
なお、アノード電極14の細孔層14bが、親水性が付与された導電性粒子と撥水性のバインダー(例えば、PTFE)とに加え、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネートなどの親水性のバインダーを含んで構成されていてもよい。親水性のバインダーを用いることにより、親水性バインダーによって親水性領域を形成できると共に、親水性が付与された導電性粒子の分散が補助される。
図4(a)及び(b)に示すように、酸化剤ガスは、アノード側セパレータ12の酸化剤ガス流路12cから燃料電池セル10内へ流入する。酸化剤ガス流路12cから流入した酸化剤ガスは、その一部が、酸化剤ガス流路21a及び酸化剤ガス流路11aを経て、隣接する燃料電池セル10に供給されると共に、残りが、カソード電極13の多孔体13aに供給される。
一方で、カソード電極13の多孔体13aに供給された酸化剤ガスは、多孔体13aの空孔を矢印Aの方向に流通し、一部が触媒層13cにて反応に使用されると共に、反応に使用されなかった残りの酸化剤ガスがカソード電極13における下端から排出される。また、反応時にカソード電極13で生成した水もまた、カソード電極13における下端から排出される。
また、図4(a)及び(b)に示すように、燃料ガスは、アノード側セパレータ12の燃料ガス流路12aから燃料電池セル10内へ流入する。燃料ガス流路12aから流入した燃料ガスは、その一部が、ガス流路21b(図2参照)及び燃料ガス流路11bを経て、隣接する燃料電池セル10に供給される。
燃料ガス流路12aから流入した燃料ガスの残りは、燃料ガス流路21b及び溝部21dを経て、溝部21eを矢印B1の方向に流通し、窓部21gの下側の開口端面に形成された開口から、アノード電極14の多孔体14aに供給される。
一方で、アノード電極14の多孔体14aに供給された燃料ガスは、多孔体14aの空孔を矢印B2の方向に流通し、一部が触媒層14cにて反応に使用されると共に、反応に使用されなかった残りの燃料ガスが、溝部21h及び燃料ガス流路21c(図2参照)を経て、燃料ガス流路11cから排出される。
また、アノード電極14に存在する余剰の液体水は、アノード電極14の下端から排出され、アノード電極14の下方に開口された水溜め部40が受け、水溜め部40の内部空間に液体水Wとして貯留することができる。
図5に示すように、水溜め部40に液体水Wが貯留された状態で、燃料ガスが溝部21eを矢印B1の方向に流通すると、その流れによって、水溜め部40に貯留されている液体水Wがピンホール21fから吸い出され、燃料ガスの流れ(矢印B1)によって上方へ噴出される。このように、本実施形態の燃料電池セル10の構成によれば、水溜め部40に貯留された液体水Wを、発電に利用する燃料ガスの流れを利用して、アノード電極14に供給することができるのである。
ここで、以下の式(II)を用いて、ピンホール21fから液体水Wを流出させるのに必要な燃料ガスの流速Uについて考慮する。なお、式(II)は、溝部21eを通過する燃料ガスの流速がUであるときにピンホール21fが受ける圧力をPa[N/m]とし、水溜め部40内の流速がゼロであると仮定したとき、水溜め部40内のガス圧力(水溜め部40の気相圧力)をPb[N/m]とするモデルに対し、ベルヌーイの定理を展開したものである。
=√{2(Pb−Pa)/ρ} …(II)
:燃料ガス流速[m/s]
ρ:燃料ガス密度[kg/m
ここで、(Pb−Pa)は、N/m単位の毛管圧に相当するので、式(II)は、以下の式(III)として取り扱うことができる。
=√{2(h’)/ρ} …(III)
h’:毛管圧[N/m
毛管圧が0.01〜0.05[mAq]程度であり、燃料ガスとして水素ガスを使用した場合に、水素密度ρに影響する環境温度を10〜80[℃]であるという条件下では、ピンホール21fから液体水Wを流出させるのに必要な燃料ガス(水素ガス)の流速Uとして、40〜120[m/s]程度が必要であると算出される。
なお、10〜80[℃]の環境温度において、燃料電池セル10を1[A/cm]の電流密度で運転するのに必要な消費水素量Vは、ファラデーの法則より、1.0112〜1.2614[L/min]程度であるので、上述した必要燃料ガス流速Uが40〜120[m/s]を流通させるための流路断面積は、0.1〜0.4mm程度であると算出される。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池セル10によれば、アノード電極14の下方には、アノード電極14の下端に対向する開口を有する水溜め部40が形成されており、アノード電極14の下端から重力によって落下する余剰水を水溜め部40に貯留することができる。
水溜め部40には、燃料ガスの流路となる溝部21eに連通するピンホール21fが形成されているので、溝部21eに十分な流速で燃料ガスを流通させることによって、水溜め部40の内部に貯留されている液体水Wがピンホール21fから吸い出され、燃料ガスの流れによって、アノード電極14へ向けて噴出される。
このように、本実施形態の燃料電池セル10の構成によれば、水溜め部40に貯留された液体水Wを、発電に利用する燃料ガスの流れを利用して、アノード電極14に供給することができる。
また、本実施形態の燃料電池セル10によれば、アノード電極14における多孔体14aが、親水性のチタン繊維から構成されている上に、表面に固体高分子電解質による薄膜が被覆されたことにより、表面にさらなる親水性が付与されている。よって、かかる多孔体14aは、ピンホール21fから噴出された液体水を、その厚さ方向に容易に拡散することができ、その結果として、かかる液体水を細孔層14bへ確実に移動させ得る。
さらに、本実施形態の燃料電池セル10によれば、アノード電極14における細孔層14bが、親水性が付与された導電性粒子と撥水性のバインダーであるPTFEとを含んで構成されるので、かかる細孔層14b内には、親水性が付与された導電性粒子に起因する親水性領域が形成され、多孔体14aから移動してきた液体水を、かかる親水性領域を経由させて触媒層14c及び固体高分子電解質15へ容易に供給することができる。
その一方で、細孔層14b内には、撥水性のバインダーに起因して形成される撥水性領域も形成されている。細孔層14b内の水は、撥水性領域に比べて親水性領域を優先的に通過するので、水の流路と燃料ガスの流路とが分離され易い。よって、撥水性領域が水によって閉塞されてガス流路が閉塞されることを防止できると共に、触媒層14cへのガス供給性も確保される。
このように、本実施形態の燃料電池セル10によれば、アノード電極14の多孔体14a及び細孔層14bは、いずれも、その表面(少なくとも一部の表面)に付与された親水性によって、厚さ方向に触媒層14cへ実質的に連続する親水性領域(親水性経路)が形成されている。
そのため、かかる親水性領域の存在によって、ピンホール21fからアノード電極14(特に、多孔体14a)へ向けて噴出された液体水を、触媒層14c及び固体高分子電解質15へ効率的に供給することができる。従って、本実施形態の燃料電池セル10によれば、水分不足に陥り易い触媒層14c及び電解質15を確実に湿潤させることができ、優れた発電性能を発揮させることができるのである。
ここで、本実施形態の燃料電池セル10における触媒層14c及び固体高分子電解質15の加湿は、上述したように発電に必要な燃料ガスの流れを利用し、電気化学反応の結果としてアノード電極14側に生じた余剰水を再利用するものである。即ち、本実施形態の燃料電池セル10によれば、動力を要する水分供給装置を別途設けることなく触媒層14c及び固体高分子電解質15を加湿することができるので、発電システム全体の大型化や製造コストの増大などを招くことなく発電性能を向上させることができる上に、発電したエネルギーが駆動源として消費されることも回避できる。
特に、アノード電極14側の水分が不足しがちな高電流密度での運転時には、必然的に、燃料ガスの流量(流速)も増加するので、その結果として、ピンホール21fからの水の噴出量も増大することとなり、アノード電極14側へのより多くの水分を供給することができる。従って、高電流密度での運転時においても、触媒層14c及び固体高分子電解質15を確実に湿潤させることができ、発電性能の劣化を抑制することができる。また、インピーダンス計測などのフィードバック制御機構を要することなく、固体高分子電解質膜15中の水分を制御することができる。
なお、本実施形態の燃料電池セル10によれば、アノード電極14における多孔体は、導電性を有する多孔体として構成されており、かかる導電性多孔体は、相互に連通する空孔によって水が厚さ方向及び面方向全体に拡散されるので、従来において一般的であるリブ付きのセパレータを用いるタイプの燃料電池セルに比べ、触媒層14c及び固体高分子電解質膜15への水分の供給領域を広くすることができる。よって、触媒層14c及び固体高分子電解質膜15への水分の供給をより効率的に行うことができ、その結果として、発電性能をより有効に向上させることができるという点においても好ましい。
また、本実施形態の燃料電池セル10によれば、インナーマニホールド21が、撥水性を有する樹脂から構成されているので、ピンホール21fの内周面を撥水性に構成することができる。ピンホール21fの内周面が撥水性に構成されていることにより、運転が停止された場合、即ち、燃料ガスの流量(流速)がゼロとなる場合に、水溜り部50に貯留されている液体水の流出を毛管排除圧によって防止することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック50によれば、アノード電極14側が好適に加湿される上述した本実施形態の燃料電池セル10が電気的に直接接続して構成されるので、一部の燃料電池セル10におけるドライアップ現象に起因する発電不能の発生を防止できる。
次に、図6及び図7を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、アノード電極に存在する余剰の液体水を貯留する水溜め部を有し、かかる水溜め部に貯留されている液体水を燃料ガスの流れを利用してアノード電極へ供給する第1実施形態と同様の燃料電池セルを、デッドエンド方式の燃料電池システムに適用する。なお、上記した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図6は、第2実施形態の燃料電池セル100(図7(a)参照)を適用する燃料電池システム200を模式的に示すブロック図である。
図6に示すように、燃料電池システム200は、燃料電池スタック150と、燃料ガスとしての水素ガスを、燃料電池スタック150を構成する各単位セル100(図7(a)参照)のアノード電極14へ供給するための水素ガス供給系160と、酸化剤ガスとしての空気を、燃料電池スタック150を構成する各単位セル100のカソード電極13へ供給するための空気供給系170と、燃料電池スタック150を構成する各単位セル100の空気極12へ霧状の液体水を供給して単位セル100を冷却し加湿する水供給系190とを備えている。
なお、図6に示す燃料電池システム200では、空気(供給空気、排気)の流通経路を最も太い実線により表しており、水素ガスの流通経路を次に太い実線で表しており、水の流通経路を点線で表している。
燃料電池スタック40は、図7を参照して後述する単位セル100と、隣接する単位セル100の間に介装されて隣接する単位セル10を電気的に接続する導電性のプレートであるセパレータ110,120とを、単位セル10及びセパレータ110,120の厚み方向に積層した構成とされている。
水素ガス供給系160は、燃料電池スタック150(各単位セル100のアノード電極14)へ水素ガスを供給する水素供給流路161と、燃料電池スタック150から燃料オフガスをパージするための燃料オフガス流路164を有している。なお、燃料オフガスとは、各単位セル100において空気との反応(起電反応)に供されたことにより、水分や窒素などの不純物を含む水素ガスである。
燃料オフガス流路164には、パージ弁165が設けられている。このパージ弁165を開放することにより、燃料電池スタック150(各単位セル10)の内部が大気と連通される一方で、パージ弁165を閉鎖することにより、燃料電池スタック150(各単位セル10)の内部は、大気から遮断される。
本実施形態の燃料電池システム200は、デッドエンド方式のシステムとして構成されている。即ち、パージ弁165を閉じ、燃料オフガス流路164を閉じた状態とし、燃料オフガスを内部に止めた状態で運転を行うシステムとして構成される。
一方、デッドエンド方式のシステムである燃料電池システム200において、パージ弁165を開放することにより、燃料電池スタック150(各単位セル100)の内部に滞留する不純物を燃料オフガスと共に系外へ排出することができる。
また、水素供給流路161は、その一端側が、水素源となる水素ボンベ162に接続され、他端側が、燃料電池スタック150における供給管130(図7(a)参照)などの水素ガス流路の上流側となるガス取入口151に接続される流路である。
水素供給流路161には、水素ボンベ162の側から水素ガスの流通方向に向かって、水素ガスの流量を調整する水素供給電磁弁163と、水素供給流路161における水素ガスの圧力を検出する圧力センサSE1とが設けられている。
本実施形態の燃料電池システム200は、上述した通り、デッドエンド方式のシステムとして構成されるので、燃料電池スタック150への水素ガスの供給は、間欠的に行われる。即ち、水素供給電磁弁163の開閉は間欠的に行われる。
水素供給電磁弁163の開閉は、制御装置180による制御によって行われる。具体的には、制御装置180は、圧力センサSE1の検出値を監視し、圧力センサSE1による検出値に応じて水素供給電磁弁163を開閉する。
より具体的には、圧力センサSE1による検出値が、水素供給流路161における水素ガスの圧力が、所定の閾値より低いことを示した場合に、制御装置180は、前回供給した水素ガスが起電反応に消費されたと判定し、水素供給電磁弁163を開放する。一方で、水素供給電磁弁163の開放後、圧力センサSE1による検出値が所定の圧力に到達したことを示した場合に、水素供給電磁弁163を閉鎖する。
空気供給系170は、空気ファン(図示せず)と、その空気ファンにより取り込まれた空気(外気)を燃料電池スタック150(各単位セル100のカソード電極13)へ供給する空気供給路171と、燃料電池スタック150から排気を排出する空気排出路172とを有している。
また、空気供給系170は、燃料電池スタック170における図示されない空気流路の上流側に設けられた空気マニホールド173を有しており、空気供給路171の出口側の端部が、この空気マニホールド173に接続されている。
一方、空気排出路172上には、凝縮器174が設けられており、燃料電池スタック150から排出された排気は、凝縮器174において外気との熱交換によって冷却され、それに伴って水分を凝縮して分離させた後、系外へ排出される。
水供給系190は、水タンク(図示せず)と、その水タンクに一端側が接続され、その水タンクに貯留されている水を直噴水として燃料電池スタック150へ供給するための給水路191とを含んで構成される。
給水路191には、水タンク(図示せず)の側から水の流通方向に向かって、水を圧送するための給水ポンプ(図示せず)と、水供給電磁弁(図示せず)と、給水路191からの水の出口となるノズル192とが順に設けられている。
ノズル192の先端は、空気マニホールド173に向けられており、給水路191を介して水タンクから導かれた水は、ノズル192の先端から直噴水として噴射される。ノズル192から空気マニホールド173へ向けて噴射された水は、空気供給路171及び空気マニホールド173を流通する空気の流れによって霧状となって燃料電池スタック150へ送り込まれる。この霧状に噴射された水は、各単位セル100(図7(a)参照)のカソード電極13へと流れ込み、燃料電池スタック150に対する冷却水及び加湿水として作用する。
図7(a)は、第2実施形態の燃料電池セル100を示す模式的な断面図である。なお、この図7(a)に示す断面図は、燃料電池セル100へ水素ガスを供給する水素ガス流路である供給管130を含む断面図である。また、図7(b)は、図7(a)におけるEx部の拡大図である。
図7(a)に示すように、第2実施形態の燃料電池セル100は、第1実施形態と同様の多孔体流路付きMEA30(即ち、固体高分子電解質膜15と、その両面に各々配設されるカソード電極13及びアノード電極14とから構成される積層体)と、多孔体流路付きMEA30におけるカソード電極13側に配設される導電性のプレートであるカソード側セパレータ110と、多孔体流路付きMEA30におけるアノード電極14側に配設され、カソード側セパレータ110と共に多孔体流路付きMEA30を挟持する導電性のプレートであるアノード側セパレータ120と、シール材140とから構成されている。
カソード電極13における多孔体13aの上端側(矢印U側)は開放されており、系外から取り込まれた空気及びノズル192から霧状に噴射された液体水(直噴水)が空気マニホールド173(図6参照)を介してカソード電極13(多孔体13a)に供給される。
カソード電極13に供給された空気は、多孔体13aの空孔を矢印Aの方向に流通し、一部が触媒層13cにて反応に使用され、下端側(矢印D側)から排出される。なお、カソード電極13における開放された下端側からは、反応時にカソード電極13によって生成した水も排出される。また、カソード電極13に供給された液体水(直噴水)は、蒸発潜熱によって燃料電池セル100を冷却すると共に、固体高分子電解質膜15を加湿する。
一方で、アノード電極14の下端側(矢印D側)には、供給管130が挿入されている。水素ボンベ162(図6参照)から、ガス取入口151を介して燃料電池スタック150に供給された水素ガスが、供給管130の出口から、アノード電極14(多孔体14a)へ供給される。アノード電極14に供給された水素ガスは、多孔体14aの空孔を矢印Bの方向に流通し、一部が触媒層14cにて反応に使用される。
また、図7(a)に示すように、アノード電極14の下端側(矢印D側)には、シール材140の構成により、アノード電極14の下方が開口された水溜め部142が形成されている。かかる水溜め部142は、アノード電極14の下端から排出された余剰の液体水を受けて内部空間に液体水Wとして貯留する。なお、水溜め部142を、上記した第1実施形態と同様に、インナーマニホールドの構造によって形成してもよい。
上述した供給管130は、水溜め部142の空間内に配設されている。なお、供給管130の突き出し長さが、水溜め部142の内部に貯留される水によって先端が埋没しない長さとなるように設計されている。
この第2実施形態の燃料電池セル100は、供給管130を流通する水素ガスの流れを利用して水溜め部142の内部に貯留される液体水をアノード電極14へ向けて噴出できるように構成されている。
ここで、水溜め部142の内部に貯留される液体水をアノード電極14へ向けて噴出する構成について具体的に説明する。図7(b)に示すように、第2実施形態の燃料電池セル100には、水溜め部142と供給管130との間を連通するスプレーバー131が設けられている。
このスプレーバー131は、一端側(端部131a側)が供給管130の壁から突出する管状体であり、その他端側(端部131b側)が水溜め部142の深さ方向に延伸するように屈曲されている。
かかるスプレーバー131は、水溜め部142の深さ方向に延びる端部131bを、水溜め部142に貯蔵される液体水Wに埋没させることによって、その液体水を端部131aへと導くことができる。この端部131aの開口部には、供給管130を流通する水素ガスが接触するので、この水素ガスの流れを利用することにより、水溜め部142の内部に貯留される液体水Wを吸い出して、端部131aから噴射させることができる。
上述した通り、本実施形態の燃料電池セル100は、デッドエンド方式の燃料電池システム200に適用される。デッドエンド方式の燃料電池システム200では、燃料オフガスを燃料電池セル100の内部に止めた状態で運転を行うので、アノード電極14における水素ガスの流路(多孔体13aの空孔など)を流通する水素ガスの圧力は、かかる水素ガスが起電反応に消費されたことに伴い減圧される。
そのため、燃料電池セル100への水素ガスの間欠的な供給タイミングにおいて、水素ガスは、燃料電池セル100の内部における減圧された水素ガスの流路との圧力差によって高速気流として供給管130を流通し、アノード電極14へ供給される。
スプレーバー131からの噴射量は、端部131aの開口部に接する気流の速度が速い程、多くなる。従って、デッドエンド方式の燃料電池システム200における高速な水素ガスの流れを利用することにより、スプレーバー131は、好適な液体水の噴射能力を発揮する。よって、液体水をアノード電極14へ好適に供給することができ、アノード電極14のドライアップを防ぐことができる。
なお、スプレーバー131における供給管130の壁から突出する端部131aは、その突き出し長さSが、燃料ガス供給部としての供給管130の相当直径Rに対し、略1/2以下であることが好ましい。なお、「相当直径」とは、供給管130の周長(外周の長さ)を円周とみなし、その円周に対応する直径である。即ち、相当直径をRとし、供給管130の周長をLとした場合、R=L/πである。
端部131aの突き出し長さSを略1/2以下とすることにより、壁から突出するスプレーバー131が、供給管130を流通する水素ガスの流れを妨害することを抑制できる。
一方、端部131aの突き出し長さSは、ゼロ(即ち、端部131aの開口部の端面が供給管130の壁と同一平面上に位置する場合)以上の長さを適用できるが、供給管130の相当直径Rに対し、略1/3以上であることが好ましい。
端部131aの突き出し長さSを略1/3以上とすることにより、端部131aの開口部を、供給管130を流通する水素ガスの流れに十分に接触させることができ、スプレーバー131から液体水を好適に噴射させることができる。
また、スプレーバー131は、端部131bが水溜め部142の深さ方向に延伸するように構成されているので、1回あたりの液体水の噴射量を、スプレーバー131における水溜め部142の深さ方向に延びる側(即ち、端部131b側)と、水溜め部142に貯留される液体水Wとの接触長さ(埋没長さ)Hに応じて調整することが可能である。
よって、例えば、理論的な推測や実験データなどに基づき、かかる接触長さHが得られるようにスプレーバー131を合わせ込むことにより、1回あたりの液体水の噴射量を最適な噴射量とすることができる。
以上説明したように、第2実施形態の燃料電池セル100によれば、アノード電極14の下方には、アノード電極14の下端に対向する開口を有する水溜め部142が形成されており、アノード電極14の下端から重力によって落下する余剰水を水溜め部142の内部に貯留することができる。
この水溜め部142と、アノード電極14へ供給する水素ガスを流通する供給管130との間は、スプレーバー131により連通されている。供給管130の壁から突出する端部131aと水素ガスの流れとを接触させることによって、水溜め部142の内部に貯留される液体水Wが他端側の端部131bから吸い出され、端部131aから噴射させることができる。
このように、第2実施形態の燃料電池セル100の構成によれば、水溜め部142に貯留された液体水Wを、発電に利用する水素ガスの流れを利用して、アノード電極14に供給し、アノード電極14を加湿することができる。
特に、この第2実施形態では、かかる燃料電池セル100を、デッドエンド方式の燃料電池システム200に適用したことにより、スプレーバー131による液体水の噴射を、高速な水素ガスの流れによって行うことができるので、好適な噴射能力を得ることができる。
このように、第2実施形態の燃料電池セル100における触媒層14c及び固体高分子電解質15の加湿は、発電に必要な燃料ガスの流れを利用し、電気化学反応の結果としてアノード電極14側に生じた余剰水を再利用するものである。よって、動力を要する水分供給装置を別途設ける必要がないので、発電システム全体の大型化や製造コストの増大などを招くことなく発電性能を向上させることができる上に、発電したエネルギーが駆動源として消費されることも回避できる。
ところで、一般的には、アノード電極14のドライアップを防止するために、対向流構造を用いることが多い。しかし、本実施形態の燃料電池セル100は、上述したように、スプレーバー131からの液体水の噴射により、アノード電極14を直接的に加湿するので、より有効にアノード電極14のドライアップを防止することができる。また、ガスの流れとは無関係にアノード電極14を加湿することができるので、重力に逆向きの平行流構造に対しても有効な手法となる。
また、上記の第1実施形態と同様のアノード電極14を有するので、アノード電極14の多孔体14a及び細孔層14bは、いずれも、その表面(少なくとも一部の表面)に付与された親水性によって、厚さ方向に触媒層14cへ実質的に連続する親水性領域(親水性経路)が形成されている。
よって、かかる親水性領域の存在によって、スプレーバー131からアノード電極14(特に、多孔体14a)へ向けて噴出された液体水を、触媒層14c及び固体高分子電解質15へ効率的に供給することができる。従って、この第2実施形態の燃料電池セル100もまた、上記した第1実施形態の燃料電池セル10と同様に、水分不足に陥り易い触媒層14c及び電解質15を確実に湿潤させることができ、優れた発電性能を発揮させることができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック150によれば、アノード電極14側が好適に加湿される燃料電池セル100が電気的に直接接続して構成されるので、一部の燃料電池セル100におけるドライアップ現象に起因する発電不能の発生を防止できる。
次に、図8を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記した第2実施形態の燃料電池セル100におけるカソード電極13の多孔体13aに換え、その構造を改変した多孔体13dを使用する。なお、上記した第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図8(a)は、第3実施形態の燃料電池セル300を示す模式的な断面図である。なお、この図8(a)に示す断面図は、図7(a)と同様に、燃料電池セル100へ水素ガスを供給する水素ガス流路である供給管130を含む断面図である。また、図8(b)は、図8(a)におけるVIIIb方向から見た多孔体13dの側面図である。
図8(a)及び(b)に示すように、第3実施形態の燃料電池セル300に採用されるカソード電極13の多孔体13dは、固体高分子電解質膜15側の面に、空気の流通方向(即ち、矢印A方向)に沿って、所定の間隔で凹設された溝13d1を有する。なお、かかる溝13d1は、プレス成形や切削加工により作製することができる。
溝13d1の水力直径(即ち、溝13d1のガス流路断面と同じ断面積を有する円管の直径)は、0.15mm以下であることが好ましい。溝13d1の水力直径を0.15mm以下とすることにより、カソード電極13側に詰まった水滴を排除するための排除圧による圧力損失を好適に低く抑制することができる。
カソード電極13に、溝13d1を有する多孔体13dを採用することにより、カソード電極13における水の排出性を向上することができる。よって、スプレーバー131からアノード電極14へ噴射する液体水の量を過剰したとしても、カソード電極13の閉塞を招くことなく、カソード電極13側から排出させることができる。
このことは、換言すれば、スプレーバー131によるアノード電極14への液体水の噴射によって、燃料電池セル300内における滞留水(即ち、水溜め部142に貯留される余剰水)の一部を電気浸透水として、カソード電極13の閉塞を招くことなく、カソード電極13側から排出させることができる。
以上説明したように、第3実施形態の燃料電池セル300によれば、多孔体13dに溝13d1が設けられているので、燃料電池セル300内における滞留水を、スプレーバー131からの液体水の噴射によってカソード電極13側から排出させることができる。よって、かかる燃料電池セル300をデッドエンド方式の燃料電池システム200に使用することにより、パージ回数を減らすことができ、デッドエンド運転時間の延長を図ることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施形態では、カソード電極13を、多孔体13aと細孔層13bと触媒層13cとを有する構成としたが、固体高分子電解質15に当接する触媒層を有していれば、その構成は特に限定されない。例えば、固体高分子電解質15に当接する触媒層をカソード電極とし、従来において一般的であるリブ付きのセパレータを用いてリブ間に形成される酸化剤ガス流路から触媒層(カソード電極)へ酸化剤ガスを供給する構成などであってもよい。
また、上記各実施形態では、アノード電極14において、多孔体14a及び細孔層14bを、触媒層14cへ燃料ガスを供給する流路として利用する構成としたが、触媒層14cへ燃料ガスを供給する流路は、このような構成に限定されない。例えば、細孔層14bを用いることなく多孔体14aのみであってもよい。また、細孔層14bに換えて、従来において一般的に用いられていたガス拡散層のような層であってもよい。ただし、水を流通可能な親水性領域(親水性経路)を有していることが必須である。
また、上記各実施形態では、アノード電極14が多孔体14aを含み、かかる多孔体14aの空孔を燃料ガスの通路として機能させたが、多孔体14aに換えて、導電性を有するシート状の網状部材(例えば、エキスパンドメタルや金網など)や、多数の貫通孔が形成された導電性板を凹凸形状に成形して得られるセパレータを燃料ガスの通路として使用する構成としてもよい。その際には、これらのセパレータの表面に親水性を付与すること(例えば、親水性材料からの形成や、親水性材料の被覆や、表面の処理による親水性の付与)が好ましい。導電性を有するシート状の網状部材や、多数の貫通孔が形成された導電性板を凹凸形状に成形して得られるセパレータを用い、そのセパレータの表面に親水性を付与することにより、上記した燃料電池セル10,100と同様の、触媒層14c及び固体高分子電解質15の加湿作用を得ることができる。
また、上記各実施形態では、アノード電極14の多孔体14aとして、表面に固体高分子電解質による薄膜が被覆されたチタン繊維焼結板を用いたが、チタン繊維焼結板のように、親水性を有する材料で構成された多孔体(導電性多孔体)であれば、触媒層14c及び固体高分子電解質15の加湿作用を得ることは可能である。
また、上記各実施形態では、アノード電極14の細孔層14bを、親水性が付与された導電性粒子(カーボン粒子)とPTFEとから構成されるものとしたが、親水性が付与された導電性粒子だけでなく、未処理の導電性粒子を含んでいてもよい。
また、上記各実施形態では、アノード電極14の細孔層14bを、親水性が付与された導電性粒子(カーボン粒子)を含んで構成し、その細孔層14bに親水性を付与する(親水性領域を形成する)構成としたが、親水性が付与された導電性粒子に換えて未処理の導電性粒子を使用し、撥水性のバインダーに換えて親水性のバインダー(例えば、PMMAやポリカーボネートなど)を使用し、親水性のバインダーに起因する親水性領域を形成する構成としてもよい。
また、上記第1実施形態では、インナーマニホールド21を、撥水性を有する樹脂から構成したが、撥水性を有する樹脂からピンホール21f部分を含む一部材のみを形成し、金属などによって形成されたインナーマニホールドに装着するような構成であってもよい。また、水溜め部40のみを別部材から構成して装着するような構成であってもよい。なお、水溜め部40及びピンホール21fを含むインナーマニホールド21を、撥水性を有する樹脂から一体成形により製造することにより、部品点数や製造工程を増やすことなく容易に、水溜め部40及びピンホール21fを有する燃料電池セル10を製造することができる。
また、上記第1実施形態では、ピンホール21fを1つだけ有する構成としたが、かかるピンホールの数は1つに限定されず、複数形成されていていてもよい。例えば、図2に示したインナーマニホールド21において、略中央に形成されているピンホール21fの左右方向(図2における矢印L−R方向)に同様のピンホールを複数有し、各ピンホールに、溝部21dから延びる溝部21fと同様の溝部が形成される構成であってもよい。
また、上記第1実施形態では、燃料ガス供給方式をスルー方式として例示したが、第2実施形態と同様にデッドエンド方式を適用する構成であってもよい。デッドエンド方式を適用することにより、第2実施形態と同様に、燃料ガスの高速気流による小孔21fからの噴射能力を向上させることができる。
また、上記第2実施形態では、燃料ガス供給方式をデッドエンド方式として例示したが、第1実施形態と同様にスルー方式を適用する構成であってもよい。
また、上記第2実施形態では、供給管130が、水溜め部142の空間内に配設される構成としたが、供給管130が水溜め部142の外側に配設され、スプレーノズル131が、供給管130と水溜め部142の内部とを連通する構成としてもよい。
また、上記第3実施形態では、第2実施形態の燃料電池セル100におけるカソード電極13の多孔体13aに換え、溝13d1を有する多孔体13dを使用したが、このような多孔体13dを第1実施形態の燃料電池セル10に対して適用してもよい。
また、上記第3実施形態では、多孔体13dに溝13d1を設けることにより、カソード電極13における水の排出性を向上させたが、固体高分子電解質膜15におけるカソード電極13側に溝を凹設したり、多孔体における固体高分子電解質膜15側の面の空孔径を大きくするようにしたりする構成であってもよい。
また、上記第3実施形態では、カソード電極13の多孔体13dに溝13d1を設ける構成としたが、カソード電極13だけでなく、アノード電極14の多孔体14aにも、水素ガスの流れ方向に沿った溝を形成する構成としてもよい。
なお、上記各実施形態として例示した本発明の燃料電池セル及び燃料電池スタックは、電気自動車などの移動用電源、屋外据え置き用電源、ポータブル電源、携帯電子機器用電源などの各種電源として利用可能である。
本発明の一実施形態における燃料電池セルを有する燃料電池スタックを模式的に示す斜視図である。 燃料電池セルの分解斜視図である。 (a)は、図2に示すインナーマニホールドのZ−Z線における断面を矢印IIIa方向から見た場合の断面図であり、(b)は、図2に示すインナーマニホールド21における裏面側の斜視図である。 (a)は、図2の矢印IVa方向から見た燃料電池セルの平面図であり、(b)は、(a)におけるIVb−IVb線における燃料電池セルの断面図である。 図4(b)におけるE部の拡大図である。 第2実施形態の燃料電池セルを適用する燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。 (a)は、第2実施形態の燃料電池セルを示す模式的な断面図であり、(b)は、図7(a)におけるEx部の拡大図である。 (a)は、第3実施形態の燃料電池セルを示す模式的な断面図であり、(b)は、(a)におけるVIIIb方向から見た多孔体の側面図である。
符号の説明
10,100,300 燃料電池セル
13c 触媒層(第2の触媒層)
13d 多孔体(第2の導電性多孔体)
13d1 溝(ガス透過促進部)
14a 多孔体(ガス流通部の一部,導電性多孔体)
14b 細孔層(ガス流通部の一部,細孔層)
14c 触媒層(第1の触媒層)
15 固体高分子電解質膜
21f ピンホール(小孔,連通部)
40,142 水溜め部
50,150 燃料電池スタック
130 供給管(燃料ガス供給部)
131 スプレーバー(連通部,管状体)
131a 端部(管状体における燃料ガス供給部側の端部)

Claims (13)

  1. 固体高分子電解質膜と、その固体高分子電解質膜の一方の面に当接し、アノード電極として機能する第1の触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に当接し、カソード電極として機能する第2の触媒層とを備え、前記第1の触媒層へ供給される燃料ガスと前記第2の触媒層へ供給される酸化剤ガスとから水を生成する電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池セルであって、
    前記第1の触媒層における前記固体高分子電解質膜と反対側に当接され、前記第1の触媒層へ供給する燃料ガスの流路となる多数の孔が形成され、燃料ガスと共に供給される液体水を前記第1の触媒層へ供給すべく親水性を有する燃料ガス流通部を備えていることを特徴とする燃料電池セル。
  2. 前記燃料ガスと共に液体水を前記燃料ガス流通部へ供給する水供給手段を備え、
    前記水供給手段は、
    前記アノード電極の下方に設けられ、前記アノード電極から排出された水を貯蔵する水溜め部と、
    前記燃料ガス流通部に供給される燃料ガス流に臨んで配設され、前記水溜め部に貯蔵されている水を噴射する小孔と、を有していることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  3. 少なくとも、前記小孔の内周面は撥水性を有することを特徴とする請求項2記載の燃料電池セル。
  4. 固体高分子電解質膜と、その固体高分子電解質膜の一方の面に当接し、アノード電極として機能する第1の触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に当接し、カソード電極として機能する第2の触媒層とを備え、前記第1の触媒層へ供給される燃料ガスと前記第2の触媒層へ供給される酸化剤ガスとから水を生成する電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池セルであって、
    前記第1の触媒層における前記固体高分子電解質膜と反対側に当接され、前記第1の触媒層へ供給する燃料ガスの流路となる多数の孔が形成された燃料ガス流通部と、
    前記燃料ガスの流れを前記燃料ガス流通部へ供給する燃料ガス供給部と、
    前記アノード電極の下方に設けられ、前記アノード電極から排出された水を貯蔵する水溜め部と、
    前記水溜め部と前記燃料ガス供給部との間を連通し、前記水溜め部に貯蔵されている液体水を、前記連通部における前記燃料ガス供給部を流通する前記燃料ガス流を臨む側の端部から、前記燃料ガス供給部における前記燃料ガス流を利用して噴射する小径の連通部と、を備え、
    前記燃料ガスの排出経路を閉じた状態で運転するデッドエンド方式の燃料電池システムにて使用されることを特徴とする燃料電池セル。
  5. 前記連通部は、一端側が前記燃料ガス供給部の壁から突出し、他端側が前記水溜め部の深さ方向に延伸する管状体であることを特徴とする請求項4記載の燃料電池セル。
  6. 前記管状体における前記燃料ガス供給部側の端部が、前記燃料ガス供給部の相当直径に対し、略1/3以上、かつ、略1/2以下の突き出し長さで前記燃料ガス供給部の壁から前記燃料ガス流側に突出することを特徴とする請求項5記載の燃料電池セル。
  7. 前記燃料ガス流通部は、前記燃料ガスと共に供給される液体水を前記第1の触媒層へ供給すべく親水性を有することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の燃料電池セル。
  8. 前記ガス流通部の内部から前記第1の触媒層まで連続した親水性領域が前記燃料ガスの流路に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池セル。
  9. 前記燃料ガス流通部は、前記第1の触媒層に当接し、前記第1の触媒層と相互に連通する多数の細孔を有する細孔層を含み、
    前記細孔層は、導電性粒子とバインダーとを少なくとも含む材料から構成されるものであると共に、前記材料における一部が親水性を有し、残りが撥水性を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池セル。
  10. 燃料ガス流通部は、前記細孔層と、その細孔層に当接する導電性多孔体とから構成され、
    前記導電性多孔体は、その表面が親水性を有することを特徴とする請求項9記載の燃料電池セル。
  11. 前記導電性多孔体は、その表面が固体高分子電解質により被覆されていることを特徴とする請求項10記載の燃料電池セル。
  12. 前記第2の触媒層における前記固体高分子電解質膜の反対側に該第2の触媒層と電気的に接続された状態で配設され、前記第2の触媒層へ供給する酸化剤ガスの流路となる多数の孔が形成された第2の導電性多孔体を備え、
    前記第2の導電性多孔体は、前記固体高分子電解質膜の側の表面に、該導電性多孔体における他の部分より前記酸化剤ガスの透過性が高いガス透過促進部が形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の燃料電池セル。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載の燃料電池セルを複数備え、
    前記複数のセルを電気的に直列接続することによって構成される燃料電池スタック。






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