JP2008274876A - 内燃機関の燃料制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の気筒間の燃焼のばらつきを良好に平滑化する。
【解決手段】複数の気筒を備える内燃機関において、各気筒の燃焼のばらつきを平滑化するための燃料制御装置は、内燃機関の運転状態を表す出力信号(dωact)を検出し、複数の気筒のそれぞれについて、基準信号(Fcr#i)を設定し、複数の気筒のそれぞれについて、出力信号と、対応する基準信号との相関を取り、相関関数(Cr#i)の値を算出する。複数の気筒についての目標値(Cr_trg)を算出し、複数の気筒のそれぞれについて、相関関数の値を目標値に収束させるよう、該気筒への燃料噴射量(Kin#i)を補正するための補正値(Kcom#i)を算出する。ここで、複数の気筒のうちの1つの気筒を基準気筒とし、複数の気筒のそれぞれについて設定される基準信号を、該基準気筒に該当する部分を出力信号から抽出することにより得た信号に基づいて生成する。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関の複数の気筒間の燃焼のばらつきを平滑化するための制御装置に関する。
複数の気筒を備える内燃機関において、気筒間に燃焼のばらつきが生じると、トルクのみでなく排出ガス成分についても気筒間にばらつきが生じ、ドライバビリティ低下を生じさせるだけでなく、エミッションが悪化するおそれがある。したがって、このような気筒間のばらつきを補償する手法が提案されている。
下記の特許文献1の手法によると、気筒間の空燃比のばらつきを抑制するために、各気筒について、空燃比を表すセンサ検出値と、所定の基準信号との間の相関を表す相関関数の値を演算する。目標値として、全気筒について該相関関数の値を平滑した値を用いる。各気筒について、該気筒の相関関数の値が目標値に収束するように、該気筒への制御入力を算出する。
特開2006−161577号公報
上記の手法によると、基準信号は、予め決められた信号であり、通常の運転状態においてセンサ検出値が該基準信号に対して高い類似度を持つ前提で設定されている。このような基準信号との相関をとることにより、センサ検出値を基準信号に近づけるよう制御することができる。
しかしながら、内燃機関によっては、またセンサが検出する運転状態パラメータの種類によっては、上記前提が満たされない場合がある。たとえば、センサ検出値と基準信号の波形の大きさ(後述するように、波形の大きさの類似度は、振幅方向の類似度を示し、波形の面積がどの程度近いかを示す)は同様であるにもかかわらず、センサ検出値と基準信号の波形形状(後述するように、波形形状の類似度は、時間方向の類似度を示し、波形の時間ステップ毎の値の大きさの関係が時間的にどの程度近いかを示す)が異なると、相関関数の値が低くなり、よって、気筒間ばらつきを補償するための制御入力の算出精度が低くなるおそれがある。
多様な燃焼形態を持たない内燃機関や、空燃比(LAF)センサのように燃焼形態やクランク軸に加わる外力の影響を受けにくい運転状態パラメータのセンサ検出値に基づく場合には、センサ検出値の波形形状のずれも小さく、よって基準信号を固定してもよい。しかしながら、ディーゼルエンジンや燃料の多段噴射を行うような多様な燃焼形態を実現する内燃機関や、クランク角センサのように、燃焼形態やクランク軸に加わる外力の影響を受けやすいセンサの検出値を用いる場合には、センサ検出値の波形形状が運転状態によって大きく変化するため、上記のような問題が生じうる。このような問題を回避するためには、燃焼形態ごとに基準信号を設定したり、用いるセンサの種類ごとに基準信号を設定する必要があるが、これは困難であり、また、演算を複雑にする。
したがって、多様な燃焼状態や運転状態を実現する内燃機関においても複数の気筒間の燃焼のばらつきを平滑化することができる内燃機関の制御装置が望まれている。また、センサにより検出する運転状態パラメータの種類に依存することなく、複数の気筒間の燃焼のばらつきを平滑化することができる内燃機関の制御装置が望まれている。
本願発明の一つの側面によると、複数の気筒を備える内燃機関において、各気筒の燃焼のばらつきを平滑化するための燃料制御装置は、内燃機関の運転状態を表す出力信号(dωact)を検出する検出手段と、複数の気筒のそれぞれについて、基準信号(Fcr#i)を設定する手段と、複数の気筒のそれぞれについて、出力信号と、対応する基準信号との相関を取り、相関関数(Cr#i)の値を算出する手段と、複数の気筒についての目標値(Cr_trg)を算出する手段と、複数の気筒のそれぞれについて、相関関数の値を目標値に収束させるよう、該気筒への燃料噴射量(Kin#i)を補正するための補正値(Kcom#i)を算出する手段と、を備える。ここで、複数の気筒のうちの1つの気筒を基準気筒とし、複数の気筒のそれぞれについて設定される基準信号を、該基準気筒に該当する部分を出力信号から抽出することにより得た信号に基づいて生成する。
この発明によれば、基準気筒に該当する部分を出力信号から抽出することにより得た信号に基づいて各気筒の基準信号を生成し、該基準信号を、各気筒の相関関数値の算出に用いる。したがって、内燃機関の燃焼状態や出力信号として検出される運転状態パラメータの種類が変化した場合でも、相関関数値から、出力信号の基準信号に対する波形形状の違いに起因する不一致成分を除去することができる。結果として、相関関数値は、出力信号と基準信号との間の波形の大きさに関する類似度を表すものとなる。波形の大きさに関する類似度は、気筒間の燃焼のばらつきを表しており、よって、相関関数値に基づいて燃料噴射量を補正することにより、良好な精度で気筒間の燃焼のばらつきを平滑化することができる。このような燃焼ばらつきの平滑化により、出力トルクおよび排出ガス成分等のような出力特性についての気筒間バラツキを平滑化することができる。また、このような基準信号の設定により、燃焼状態ごとに基準信号を設定したり、検出する運転状態パラメータの種類ごとに基準信号を設定する必要がなくなる。
本願発明の一実施形態によると、基準信号は、燃焼サイクルごとに算出される。こうして、各燃焼サイクルにおいて、燃焼状態および運転状態の変化に速やかに対応するよう基準信号を更新することができる。
本願発明の一実施形態によると、出力信号は、内燃機関の出力(dωraw)の変動成分のみを表す信号である。気筒間ばらつきは、内燃機関の出力の変動成分によってもたらされるので、変動成分のみを表した信号を用いることにより、相関関数値の演算負荷を低減することができると共に、補正値の算出精度を向上させることができる。
本願発明の一実施形態によると、目標値(Cr_trg)は、基準気筒について算出された相関関数の値である。これにより、各気筒の出力トルクおよび排出ガス成分等のような出力特性を、基準気筒の出力特性に収束させることができる。
本願発明の一実施形態によると、基準信号(Fcr#i)の標準偏差(SFCR#i)の2乗により相関関数(Cr#i)を正規化することにより、正規化済み相関関数(CrH#i)を算出する。このような正規化により、算出される相関関数値が定量的に得られるので、気筒間ばらつきを定量的に取り扱うことができる。また、基準信号の標準偏差で正規化することにより、基準気筒の相関関数値に対する他の気筒の相関関数値の大きさの差を良好な精度で抽出することができる。
本願発明の一実施形態によると、所定の条件を満たしたとき、相関関数値の算出および補正値の算出を所定期間停止する。所定の条件は、一実施形態では、エンジン回転数が所定値以上となった時、を含む。出力信号は、エンジン回転の角速度を示す信号である。エンジン回転数が高いときには角速度の変動量が小さくなり、よって出力信号の精度が低下するおそれがあるからである。他の実施形態では、所定の条件は、燃料噴射量が所定値以下となった時である。燃料噴射量が小さいときには、内燃機関の出力に与える影響も小さくなり、よって気筒間ばらつきの検出精度が低下するおそれがあるからである。また、上記停止の所定期間は、基準信号が算出される周期に基づいて設定されることができる。こうして、適切な相関関数値を算出することができない期間については、相関関数値および補正値の算出を停止することができる。
本願発明の一実施形態によると、基準信号(Fcr#i)の標準偏差(SFcr#i)および出力信号の標準偏差(Sdωdiv#i)で相関関数(Cr#i)を正規化することにより算出される第2の相関関数(CrS#i)が所定値以下の時には、補正値の算出を停止する。基準信号と出力信号の波形形状が一致しないとき、相関関数値にその影響が含まれ、よって補正値の算出精度が低下するおそれがある。したがって、このような場合には、補正値の算出を停止する。
本願発明の一実施形態によると、複数の気筒のそれぞれについて、出力信号(dωact)から、該気筒に対応するクランク角領域における値を切り出すと共に、他の気筒に対応するクランク角領域における値をゼロに設定した信号が、気筒毎出力信号(dωdiv#i)として生成される。上記第2の相関関数を算出するのに用いられる出力信号の標準偏差は、該気筒毎出力信号の標準偏差である。こうして、他の気筒の影響を除去することにより、第2の相関関数の算出精度が向上する。
本願発明の一実施形態によると、内燃機関はディーゼルエンジンであり、出力信号は、エンジン回転の角速度を表す。こうして、多様な燃焼形態を持つディーゼルエンジンについても、相関関数値を随時適切に算出することができ、よって気筒間ばらつきを良好な精度で平滑化することができる。
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に従う、内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ)およびその制御装置の全体的な構成図である。
電子制御ユニット(以下、「ECU」)という)1は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである。メモリには、車両の様々な制御を実現するためのコンピュータ・プログラムおよび該プログラムの実施に必要なデータを格納することができる。ECU1は、車両の各部から送られてくるデータを受け取って演算を行い、車両の各部を制御するための制御信号を生成する。
エンジン2は、この実施例ではディーゼルエンジンであり、4つの気筒3a〜3dを備えている。これらの気筒には、それぞれ、第1〜第4(#1〜#4)の識別番号が割り振られている。図では、これらの気筒が直列に配列されているが、このような配列に本願発明は限定されない。
エンジン2の各気筒3a〜3dには、吸気通路4から分岐した吸気管4a〜4dがそれぞれ連結されると共に、排気管5a〜5dがそれぞれ連結され、該排気管5aから5dは、集合部において排気通路5に接続されている。それぞれの気筒3a〜3dには、燃料噴射弁7a〜7dが、該気筒の燃焼室に臨むように取り付けられている。
燃料噴射弁7a〜7dは、コモンレール(図示せず)を介して、高圧ポンプおよび燃料タンク(図示せず)に接続されている。高圧ポンプは、燃料タンク内の燃料を昇圧した後、コモンレールを介して燃料噴射弁7a〜7dに送り、燃料噴射弁7a〜7dは、受取った燃料を対応する燃焼室内に噴射する。燃料噴射弁7a〜7dにより噴射される燃料の量は、ECU1からの制御信号に従って制御される。この実施例では、4つの気筒3a〜3dについて、#1→#3→#4→#2の順で燃料噴射が実行される。
エンジン2のクランク軸(図示せず)には、クランク角センサ9が取り付けられている。クランク角センサ9は、クランク軸の回転に従い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。CRK(クランク)信号は、所定のクランク角(例えば30度)ごとに1パルスが出力される信号である。ECU1は、このクランクパルス信号に応じ、エンジン2の回転数NEを算出する。TDC信号は、各気筒のピストン(図示せず)の上死点(TDC)位置に関連したクランク角度で出力される。4気筒タイプの本例では、クランク角180度ごとに1パルスが出力される。
この実施例においては、ECU1は、クランク角センサ9からの信号に応じて、メモリに記憶されたプログラムおよびデータ(マップを含む)を用い、各気筒への燃料噴射量を算出する。算出された燃料噴射量に従う制御信号が各気筒の燃料噴射弁7a〜7dに送られ、該燃料噴射弁7a〜7dを駆動する。これにより、気筒間において、燃焼の平滑化が図られ、よって出力トルクおよび排出ガス成分等の出力特性を平滑化することができる。
ここで、図2〜図5を参照して、本願発明の理解を深めるため、本願発明の目的および原理を説明する。図2は、前述した従来の手法に従い、4つの気筒#1〜#4について、(a)内燃機関の運転状態を各気筒について検出する所定のセンサ(たとえば、クランク角センサ)の出力に基づく信号(出力信号)Sと、(b)所定の基準信号Fと、(c)両者の相関関数Cの挙動の一例を示す。
この実施例では、1燃焼サイクルT1(クランク角度720度)の間に、#1、#3、#4および#2の順番で燃焼が実施されるので、出力信号Sの波形は、#1、#3、#4および#2の順番にピークが生成されるような形状をしている。各気筒の燃焼に割り当てられる周期T2は、この実施例では気筒が4つであるので、クランク角度180度である。たとえば、クランク角センサの出力からエンジン回転の角速度を算出すると、各気筒の燃焼に応じて、一旦上昇した後に下降するような挙動を呈し、(a)のような波形が得られる。
(b)に示す基準信号Fは、予め決められた信号であり、上記センサから得られる出力信号Sの特徴を表すよう予め生成される。(c)には、出力信号Sと基準信号Fとが重ねて表示されており、さらに、両者の相関関数Cの値が示されている。ここで、相関関数Cは、以下の式(1)で算出されることができ、各気筒#i(i=1〜4)について、基準信号Fと出力信号Sの積を、1燃焼サイクルに相当する期間にわたって積分した値を平滑化することにより算出される。Nは、1燃焼サイクルあたりのクランクパルス数を示し、この例では24である。kは、時間ステップを示し、相関関数Cの値は逐次的に算出される。図では、4つの気筒の相関関数Cの値が重ねて表示されている。
Figure 2008274876
時間t0〜t1の第1の燃焼サイクルにおいて、出力信号Sと基準信号Fは一致しており、波形の大きさおよび波形形状の類似度は高い。ここで、波形の大きさの類似度は、両者の波形が振幅方向にどの程度類似しているかを示し、波形形状の類似度は、波形が時間方向にどの程度類似しているかを示す。より具体的には、前者は、両者の波形の面積がどの程度近いかを示しており、後者は、両者の波形の時間ステップ毎の値の大きさの関係が時間的にどの程度近いかを示している。相関関数Cの値は、波形の大きさの類似度だけでなく、波形形状の類似度をも反映している。したがって、第1の燃焼サイクルにおける相関関数Cの値は、比較的高い値c1を保持している。
時間t1〜t2の第2の燃焼サイクルでは、第1の燃焼サイクルと比較して、出力信号Sが、たとえば燃焼形態の変化等に起因して変化している。出力信号Sの波形の面積は、基準信号Fの波形の面積とほぼ同じであり、よって、波形の大きさの類似度は高い。しかしながら、符号11に示すように、出力信号Sの立ち上がりに時間的遅延が生じており、結果として、出力信号Sのピークは、基準信号Fのピークに対し、時間的にずれている。両者の波形形状の類似度が低下するので、(c)に示すように、第2の燃焼サイクルにおける相関関数Cの値c2は、第1の燃焼サイクルにおける相関関数Cの値c1に比べて低下する。
時間t2〜t3の第3の燃焼サイクルでは、出力信号Sがさらに変化する。出力信号Sの波形の面積は、基準信号Fの波形の面積とほぼ同じであるが、符号12に示すように、出力信号Sの立ち上がりにさらなる時間的遅延が生じており、結果として、出力信号Sのピークは、基準信号Fのピークに対し、時間的にずれている。(c)に示すように、両者の波形形状の類似度がさらに低下するので、第3の燃焼サイクルにおける相関関数Cの値c3は、第2の燃焼サイクルにおける相関関数Cの値c2に比べてさらに低下する。
このように、出力信号Sと基準信号Fの波形の大きさの類似度が高くても、波形形状の類似度が低下するにつれ、相関関数Cの値は低くなる。しかしながら、気筒間のばらつきは、主に、波形の大きさの類似度に基づいて判断すべきである。波形の面積が、その気筒の出力の大きさを表しているからである。符号11および12のような時間的遅延が波形に生じたとしても、各気筒の出力信号Sの面積は気筒間で同じであり、よって気筒間の燃焼は平滑されているといえる。したがって、波形形状の不一致に主に起因して低い値となった相関関数Cに基づいて気筒間のバラツキを算出すると、該算出精度が低下するおそれがある。相関関数Cの値は、波形形状の類似度ではなく、波形の大きさの類似度を主に反映した値となるよう算出するのが好ましい。
前述したように、多様な燃焼形態を持たない内燃機関や、LAFセンサの出力のように、燃焼形態やクランク軸に加わる外力の影響を受けにくいセンサの出力を用いる場合には、出力信号Sの波形形状がほぼ一定となり、基準信号を固定してもよい。しかしながら、ディーゼルエンジンや燃料の多段噴射を行うような多様な燃焼形態を実現する内燃機関や、クランク角センサのように、燃焼形態やクランク軸に加わる外力の影響を受けやすいセンサを用いる場合には、波形形状が運転状態によって大きく変化するため、上記のような問題が生じうる。
したがって、本願発明では、基準信号を、予め決められた信号として生成するのではなく、センサの出力(すなわち、実値)から生成する。図3の例を参照すると、気筒#1を基準気筒とし、各燃焼サイクルにおける気筒#1の出力信号Sの波形を、すべての気筒の基準信号に用いる。より具体的には、各燃焼サイクルにおいて、符号13に示される気筒#1の波形を時間方向にシフトすることにより、#3、#4および#2の気筒の基準信号Fを生成する。
各気筒について、こうして生成された基準信号Fと出力信号Sとの相関関数Cの値を算出する。実値を用いて基準信号Fを生成するので、(c)に示されるように、第1〜第3の燃焼サイクルにわたって出力信号Sの波形形状が変化した場合でも、相関関数Cの値はc1に維持されており、相関関数値の低下が防止されている。
この実施例では、式(1)に示されるように、相関関数Cが、出力信号Sと基準信号Fの積を1燃焼サイクルに相当する期間にわたって積分した値に基づくので、符号15に示されるように、波形形状が切り替わったタイミング(第1から第2の燃焼サイクルに切り替わるタイミング、および第2から第3の燃焼サイクルに切り替わるタイミング)では、相関関数Cの値に一時的な乱れが生じているが(これは、後述するように除去可能である)、相関関数Cの値は一定に維持されている点に注意されたい。たとえば、現時点がtx3で示される時点であるとすると、1燃焼サイクル前の時点tx1で演算された気筒#1の相関関数Cの値と、現時点tx3で演算された気筒#1の相関関数Cの値とは、第1および第2の燃焼サイクルの間で波形形状が変化しているので、異なる値となる。すなわち、tx3で演算された相関関数Cの値は、tx1で演算された相関関数Cの値より低くなっている。しかしながら、波形16および波形17の面積が同じであるので、時点tx4で計算された相関関数Cの値c1は、時点tx2で計算された相関関数Cの値c1と等しくなる。このように、各気筒の周期T2の終わりでは、相関関数Cの値が一定値c1に収束している。
図4の(a)は、燃焼形態の変化等により、出力信号Sの波形の大きさが変化する場合を示す。基準信号Fは、図3を参照して説明したように、基準気筒#1の出力信号Sに基づいて生成される。出力信号Sと基準信号Fは一致しており、簡略のため、両者は重ねて示されている。
出力信号Sの面積が増大するにつれ、相関関数Cの値もc1〜c3と増大している。このように相関関数Cの値が大きくなると、気筒間にバラツキが無くても、相関関数Cが、第1〜第3燃焼サイクルにわたって異なる値となる。これは、気筒間のバラツキの算出精度を低下させるおそれがある。このような問題は、LAFセンサ等のように、出力信号の大きさがほとんど変化しない場合には問題とならないが、クランク角センサのように、運転状態によって出力信号の大きさが随時変化する場合には問題となりうる。相関関数Cの値は、定量的に得るのが好ましい。
したがって、より好ましい実施形態では、基準信号Fの標準偏差の2乗により相関関数Cを正規化する。相関関数Cは、式(1)に示すように、基準信号Fと出力信号Sの共分散と考えることができるので、基準信号Fの標準偏差の2乗で正規化することにより、相関関数Cを定量的に算出することができる。図4の(b)は、このような正規化済み相関関数C’の値を示しており、出力信号Sの大きさが変化しても、正規化済み相関関数C’の値は一定となっている。
さらに、図5は、出力信号Sの波形の大きさおよび波形形状が同時に変化した場合を示す。(a)は、正規化されていない相関関数Cの値を示し、(b)は、図4を参照して述べたような正規化済み相関関数C’の値を示す。基準信号Fは、図3を参照して説明したように、各燃焼サイクルにおいて気筒#1の出力信号Sから生成されている。また、出力信号Sと基準信号Fは一致しており、簡略のため、両者は重ねて示されている。
(a)に示すように、相関関数を正規化していない場合には、図3を参照して述べたような相関関数Cの乱れが、出力信号Sの波形形状が切り替わったタイミングで生じている。しかしながら、この乱れは、出力信号Sの基準信号Fに対する波形形状の不一致に基づくものではなく、出力信号Sと基準信号Fの波形は一致している。したがって、このような乱れは、(b)に示すように、相関関数を正規化することにより解消されることができる。
次に、図3〜図5を参照して述べたことを実現するための具体的な実施形態を説明する。図6は、本発明の一実施形態による、燃料制御装置のブロック図を示す。各機能ブロックは、ECU1において実現される。
クランク角センサ9からのクランクパルスは、クランク角度30度ごとに変動量抽出部51により受け取られる。変動量抽出部51は、受け取ったクランクパルスに基づいて、エンジンの角速度dωraw(rad/秒)を算出する。クランク角センサ9のクランクパルスの発生時間間隔から角速度dωraw(rad/秒)を算出することができる。
ここで、図7の(a)を参照すると、角速度信号dωrawの一例が示されている。kは、時間ステップを示し、典型的には、クランク角度で表される。この実施形態では、前述したように、1燃焼サイクル(クランク角度720度)の間に、#1=>#3=>#4=>#2の気筒の順番で燃焼が行われる。角速度dωrawは、各気筒において、燃料と空気の混合気の燃焼により一旦上昇した後、減少する。
変動量抽出部51は、図7の(a)のような角速度信号dωrawにおいて、符号61に示すように、各気筒の燃焼の開始点(この例では、各気筒の燃料噴射タイミングに着火遅れを考慮したタイミングに相当する)における角速度をゼロに設定し、角速度信号dωrawの該ゼロに対する差分(変動量)を抽出する。すなわち、該ゼロのラインで角速度dωrawの変動成分を抽出し、図7の(b)に示すような角速度信号dωactを得る。
代替的に、変動量抽出部51は、各燃焼サイクルにおいて、符号62に示すように、角速度dωrawの全気筒についての平均値を算出し、これをゼロに設定してもよい。該ゼロに対する角速度dωrawの変動成分を抽出すると、図7の(c)のような角速度信号dωactが得られる。
変動量抽出部51の目的は、各気筒について、エンジンの運転状態、より具体的にはエンジンの出力(燃料量と相関のある出力を示し、例えば、トルク、空燃比、筒内圧等を含む)を表す信号を得ることである。上記のように、気筒間のばらつきは、該出力の変動成分に現れるので、定常成分は不要である。変動成分のみを抽出することにより、後述する相関関数の値の絶対値のうち気筒間のばらつき量が占める割合が大きくなり、演算精度を向上させることができる。
図6に戻り、気筒別信号抽出部52は、各燃焼サイクルにおいて、角速度信号dωactを気筒毎に切り分ける。この実施例では、4つの気筒を備えるので、クランク角度180度ごとに、#1=>#3=>#4=>#2の気筒の順番で燃焼が行われる。したがって、角速度信号dωactを180度ごとに切り出せばよい。
ここで図8を参照すると、角速度信号dωactから、気筒#1の角速度信号dωdiv#1、気筒#3の角速度信号dωdiv#3、気筒#4の角速度信号dωdiv#4、気筒#2の角速度信号dωdiv#2が切り出される。図に示されるように、各気筒の角速度信号dωdiv#iは、他の気筒のクランク角度領域においてはゼロの値を持つよう生成される。たとえば、気筒#1の角速度信号dωdiv#1は、クランク角度0〜180度の間のみ値を持ち、クランク角度180〜720度の間ではゼロである。
図6に戻り、基準信号生成部53は、任意の気筒(この実施例では、気筒#1)を基準気筒とする。ここで図9を参照すると、各燃焼サイクル中の気筒#1の角速度信号dωdiv#1を、気筒#1に対応する基準信号Fcr#1とする。
基準信号Fcr#1を、遅延回路53b(図6)によってクランク角度540度遅らせることにより、気筒#2に対応する基準信号Fcr#2を生成する(遅延回路53bのZ−18は、クランクパルスがクランク角度30ごとに得られるので、これに同期して18回シフトすることを示している)。
また、基準信号Fcr#1を、遅延回路53cによってクランク角度180度遅らせることにより、気筒#3に対応する基準信号Fcr#3を生成する。また、基準信号Fcr#1を、遅延回路53dによってクランク角360度遅らせることにより、気筒#4に対応する基準信号Fcr#4を生成する。こうして、各燃焼サイクルにおいて、基準気筒の角速度信号dωdiv#1に基づき、それぞれの気筒の基準信号が生成される。
Fcr#2〜Fcr#4は、他の遅延手法で生成してもよい。たとえば、Fcr#2は、Fcr#3を360度遅らせることにより生成することができる。
図6に戻り、相関関数算出部54は、式(2)に従い、各気筒について、該気筒について得られた角速度信号dωdiv#iと、該気筒について生成された基準信号Fcr#iとの間の相関を表す相関関数Cr#iを算出する。ここで、iは気筒番号であり、この実施例ではi=1〜4である。Nは、1燃焼サイクル(クランク角度720度)あたりのクランクパルスの数であり、この実施例では30度ごとにクランクパルスを得るので、N=24である。kは、前述したように時間ステップを示す。
Figure 2008274876
このように、各気筒の相関関数Cr#iは、該気筒について生成された基準信号Fcr#iの値と、該気筒について抽出された角速度信号dωdiv#iの値との積を、1燃焼サイクルの長さに相当する期間にわたって積分した値を平均したものを表している。基準信号Fcr#iの波形と角速度信号dωdiv#iの波形との間の類似度が高いほど、相関関数Cr#iは高い値をとる。
さらに、相関関数算出部54は、各気筒について、式(3)に従って基準信号Fcr#iの標準偏差SFCR#iを算出し、式(4)に従って該標準偏差SFCR#iの2乗で相関関数Cr#iを正規化して、正規化済み相関関数CrH#iを算出する。この正規化により、図4および図5を参照して説明したように、出力信号(この実施例では、角速度信号dωact)の大きさの変化にかかわらず、相関関数の値を定量的に得ることができる。
Figure 2008274876
制御部55は、式(5)に示すように、基準気筒#1について正規化された相関関数CrH#1を、目標値Cr_trgに設定する。基準気筒については、角速度信号の波形と基準信号の波形とが一致しているので、適切な相関関数値が算出される。したがって、この相関関数値を目標値とすることにより、他の気筒について、該他の気筒の出力特性が基準気筒の出力特性に収束するよう、燃料噴射量を適切に補正することができる。
Figure 2008274876
所定の制御手法を用いて、各気筒について、正規化済み相関関数CrH#iを目標値Cr_trgに収束させるための補正係数Kcom#iを算出する。この実施例では、応答指定型制御を用いる。応答指定型制御によれば、収束速度を指定することができる。より好ましくは、2自由度応答指定型制御を用いる。2自由度応答指定型制御は、制御量の目標値に対する収束速度と、外乱が印加された時に生じる偏差の収束速度を個別に指定可能な制御である。この制御を実施するため、以下の式に従い、目標値Cr_trgをフィルタリングする。ここで、Rは、上記の制御量の目標値に対する収束速度を表すパラメータであり、好ましくは−1<R<0を満たすように設定される。このフィルタリングにより、目標値の波形が、漸近特性を有する波形に変換され、よって制御量をスムーズに目標値に収束させることができる。
Figure 2008274876
制御部55は、さらに、各気筒について、式(7)に示すように切り換え関数σ#iを定義する。ここで、Sは、上記の外乱が印加された時の偏差の収束速度を表すパラメータであり、好ましくは−1<S<0を満たすように設定される。E#iは、式(8)に示すように、正規化済み相関関数CrH#iとフィルタ済み目標値Cr_trg_fとの偏差である。
Figure 2008274876
切換関数σ#i(k)=0とした式は等価入力系と呼ばれ、制御量(ここでは、偏差E#i)の収束特性を規定する。σ#i(k)=0とすると、式(7)は次のように表される。
E#i(k)=−S・E#i(k−1) (9)
縦軸がE#i(k)および横軸がE#i(k−1)の位相平面上に、上記式(9)を直線(切り換え線と呼ぶ)で表すことができる。応答指定型制御は、E#i(k−1)およびE#i(k)の組合せからなる状態量(E#i(k−1), E#i(k))を、該切り換え線上に載せるよう動作する。これにより、該状態量を、外乱等の影響されることなく、極めて安定的に位相平面上の原点0に収束させることができる。パラメータSの絶対値が小さくなるほど、収束速度は速くなる。
偏差E#iを収束させるための制御入力すなわち補正係数Kcom#iは、式(10)に従って算出される。ここで、第1項は、切換関数σの比例項により表される到達則入力であり、これは、状態量を切り換え線上に載せるための入力である。第2項は、切換関数σの積算項で表される適応則入力であり、定常偏差を抑制しつつ、状態量を切換線に載せるための入力である。KrchおよびKadpは、フィードバックゲインであり、それぞれ、シミュレーション等によって予め定められる。到達則入力と適応則入力とを加算することにより、補正係数Kcom#iが算出される。なお、図6に示すように、気筒#1については偏差Eが生じないので、補正係数Kcomは算出されない。
Figure 2008274876
補正部56は、各気筒について、算出された補正係数Kcom#iで、燃料噴射量の基準値を補正する。基準値は、運転状態に従って決められる値であり、所望のエンジン出力を得るよう算出されている。たとえば、要求トルク(たとえば、アクセルペダルの開度に基づいて求めることができる)およびエンジン回転数に基づいて所定のマップ(ECU1のメモリに記憶されることができる)を参照することにより、基準値を求めることができる。補正部56は、式(11)に示すように、各気筒について、基準値に、該気筒について算出された補正係数Kcom#iを乗算することにより該基準値を補正し、燃料噴射量Kin#iを算出する。なお、基準気筒#1については、補正係数Kcomが算出されていないので、基準値の補正は行われず、該基準値がそのまま用いられる。
Kin#i(k)=基準値(k)×Kcom#i(k) (11)
各気筒について、該気筒について算出された燃料噴射量Kin#iが燃料噴射弁から噴射されるように、燃料噴射弁を駆動する制御信号がエンジン2に送出される。こうして、気筒間の燃焼が平滑化されるよう燃料噴射量が制御される。
好ましくは、実行条件判断部57が設けられる。実行条件判断部57は、相関関数算出部54による相関関数算出の実行条件と、制御部55による補正係数算出の実行条件とを判断する。
実行条件判断部57は、各気筒について相関関数を算出するに先立ち、以下の条件1)〜3)のいずれかでも満たされたとき、該気筒についての相関関数の算出および補正係数の算出の両方を所定期間停止する。所定期間は、基準信号が算出(更新)される周期が好ましく、この実施例では1燃焼サイクルに相当する期間(この実施例では、クランク角度720度)である。停止している間、該気筒の補正係数Kcomの値は保持されたままであり、更新されない。
1)基準気筒の角速度信号が得られていない
2)エンジン回転数NEが所定値より大きいとき
3)燃料噴射量の基準値が所定値より小さいとき
上記1)は、基準気筒の角速度信号が得られないと、基準信号を生成することができないためである。上記2)は、エンジン回転数NEが高いときには角速度の変動量の値が小さくなり、よって角速度の変動量の検出精度が低下するおそれがあるからである。上記3)は、燃料噴射量の基準値が小さいと、燃料噴射量がエンジン回転の変動に与える影響が小さくなり、よって角速度の変動量の検出精度が低下するおそれがあるからである。
好ましくは、実行条件判断部57は、さらに、各気筒について補正係数を算出するに先立ち、以下の条件4)および5)のいずれかが満たされたとき、該気筒についての補正係数の算出を、所定期間(たとえば、10秒)停止し、運転状態が安定するのを待つ。代替的に、所定期間を、1燃焼サイクルに相当する期間としてもよい。停止している間、該気筒の補正係数Kcomは保持されたままであり、更新されない。
4)正規化済み相関関数CrH#i(k)の変化量が所定値より大きいとき
5)CrS#i(k)が所定値より小さいとき
ここで、正規化済み相関関数CrH#i(k)の変化量は、たとえば、各気筒について、正規化済み相関関数の今回値CrH#i(k)と、正規化済み相関関数の前回値CrH#i(k―1)の差により表されることができる。
上記4)は、運転状態または燃焼状態が変化し、基準信号Fcr#iと角速度信号dωdiv#iとの間の波形形状に不一致が生じている可能性が高いためである。図4を参照して説明したように、相関関数を正規化することにより、角速度信号の波形の大きさが変化しても、相関関数の値を一定にすることができる。しかしながら、たとえば運転状態または燃焼状態が、基準気筒の燃焼と他の気筒の燃焼との間で急変すると、基準気筒以外の気筒について、角速度信号の波形形状が基準信号の波形形状に対して不一致を起こすことがあり、この不一致が大きいほど、正規化済み相関関数の値が低下する。このような場合には、図2を参照して説明したように、気筒間のバラツキを正確に判断できないおそれがあるので、補正係数の更新を行わないのが好ましい。
上記5)は、基準信号Fcr#iと角速度信号dωdiv#iの波形形状が不一致なことを表しているからである。ここで、CrSは、式(12)に従って、相関関数Crを、基準信号Fcrと角速度信号dωdivで正規化した値である(第2の相関関数と呼ぶ)。
Figure 2008274876
前述したように、相関関数Crは、基準信号Fcrと角速度信号dωdivの共分散を表していると考えることができるので、第2の相関関数CrS#iの値は、基準信号Fcr#iの大きさおよび角速度信号dωdiv#iの大きさの両方に影響されない相関関数値である。しかし、基準信号と角速度信号の間に波形形状の不一致が生じると、図2を参照して説明したように、相関関数CrS#iの値は低くなる。したがって、いずれかの気筒において、第2の相関関数CrS#iの値が所定値より小さいときには、すべての気筒について補正係数の更新を停止するのが好ましい。
図10は、本発明の一実施形態に従う、ECU1のCPUにより実行される、燃料制御プロセスを示すフローである。より具体的には、該プロセスは、図6に示す制御装置によって実行される。この実施例では、該プロセスは、所定のクランク角度(たとえば、30度)毎に実施される。
ステップS1において、クランク角センサ9からのクランクパルスを受け取り、エンジン回転の角速度信号dωrawを生成する。さらに、図7の(a)および(b)を参照して説明したように、各気筒の燃焼の開始時点の角速度信号dωrawの値をゼロに設定して、該角速度信号dωrawを該ゼロのラインで切り出す。または、図7の(c)のように、該燃焼サイクル中の角速度dωrawの平均をゼロとしてもよい。こうして、図7の(b)または(c)に示すような角速度信号dωactを抽出する。
ステップS2において、図8を参照して説明したように、角速度信号dωactから、気筒毎の角速度信号dωdiv#iを切り出す。ステップS3において、気筒毎に、基準信号Fcr#iを生成する。
ステップS4において、上記1)〜3)の実行条件を満たすかどうかを判断する。条件1)〜3)のいずれかでも満たさなければ、ステップS5において第1フラグをセットする。第1フラグにはカウンタ(図示せず)が関連づけられており、第1フラグがセットされるたびに、該カウンタは、所定期間(たとえば、クランク角度720度)をカウントし、該所定期間が経過した後、ゼロにリセットされる。
条件1)〜3)のすべてが満たされるならば、ステップS6において、第1フラグがゼロにリセットされているかどうかを判断する。この判断がNoならば、上記所定期間が経過していないことを示すので、ステップS13に進む。こうして、条件1)〜3)のいずれかでも満たされなければ、相関関数および補正係数の更新は所定期間にわたり停止される。
ステップS6の判断がYesならば、所定期間が経過したことを示す。ステップS7において、式(2)に従って、気筒毎に相関関数Cr#iを算出する。ステップS8において、式(4)に従って、気筒毎に正規化済み相関関数CrH#iを算出する。
ステップS9において、上記4)および5)の実行条件を満たすかどうか判断する。条件4)および5)のいずれかでも満たされなければ、ステップS10において第2フラグをセットする。第2フラグにはカウンタ(図示せず)が関連づけられており、第2フラグがセットされるたびに、該カウンタは、所定期間(たとえば、10秒)をカウントし、該所定期間が経過した後、ゼロにリセットされる。
条件4)および5)の両方が満たされるならば、ステップS11において、第2フラグがリセットされているかどうかを判断する。この判断がNoならば、該所定期間が経過していないことを示すので、ステップS13に進む。こうして、条件4)および5)のいずれかでも満たされなければ、補正係数の更新は所定期間にわたり停止される。
ステップS9の判断がYesならば、所定期間が経過したことを示す。ステップS12において、応答指定型制御を実施し、式(10)に従って、気筒毎に燃料補正係数Kcom#iを算出する。
ステップS13において、算出した燃料補正係数Kcom#iで燃料噴射量基準値を補正し、補正済み燃料噴射量Kin#iを算出する。こうして、各気筒の燃料噴射タイミングが到来したならば、該補正済み燃料噴射量Kin#iに従って燃料が噴射されるよう、該気筒の燃料噴射弁が駆動されることとなる。なお、燃料噴射すべき気筒が基準気筒ならば、燃料噴射量基準値の燃料が噴射されるよう、基準気筒の燃料噴射弁が駆動されることとなる。
上記実施形態では、相関関数Cr#iを算出するのに、気筒別角速度信号dωdiv#iを用いた。気筒別角速度信号dωdiv#iを算出することにより、第2の相関関数の算出精度を向上させることができる。しかしながら、代替的に、相関関数Cr#iを算出するのに、角速度信号dωactを用い、該角速度信号dωactと基準信号Fcr#iとの相関を取ってもよい。この場合、式(2)中のdωdiv#i(j)はdωact(j)に置き換えられる。この形態においても、各気筒について、角速度信号dωactの該気筒のクランク角領域における値と、該気筒の基準信号Fcr#iとの類似度が反映されるよう、相関関数Cr#iの値は算出される。
上記実施形態では、相関関数の算出に用いるセンサとしてクランク角センサを用いているが、本願発明は、このセンサに限定されることなく、内燃機関の運転状態(より具体的には、前述したように、燃料量と相関のある出力)を示す様々なセンサ(たとえば、空燃比センサ等)に適用可能である。また、上記実施形態では、ディーゼルエンジンの燃料制御装置として説明したが、他のエンジン(通常のガソリンエンジン)にも適用可能である。また、上記の実施形態では、4つの気筒を備える内燃機関を例に説明したが、他の任意の数の気筒を備える内燃機関に本願発明は適用可能である。
さらに、本願発明は、汎用の(例えば、船外機等の)内燃機関に適用可能である。
本発明の一実施形態に従う、内燃機関の制御装置の概略的な構成図である。 従来の相関関数の算出についての課題を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、相関関数の算出手法を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、相関関数の算出手法を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、相関関数の算出手法を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、制御装置のブロック図。 本発明の一実施形態に従う、角速度信号を抽出する手法を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、気筒別に角速度信号を切り分ける手法を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、基準信号を生成する手法を説明するための図。 本発明の一実施形態に従う、制御プロセスを示すフローチャート。
符号の説明
1 ECU
2 エンジン
3 気筒
7 燃料噴射弁
9 クランク角センサ

Claims (12)

  1. 複数の気筒を備える内燃機関において、各気筒の燃焼を平滑化するための燃料制御装置であって、
    前記内燃機関の運転状態を表す出力信号を検出する検出手段と、
    前記複数の気筒のそれぞれについて、基準信号を設定する基準信号設定手段と、
    前記複数の気筒のそれぞれについて、前記出力信号と、対応する前記基準信号との相関を取り、相関関数の値を算出する相関関数値算出手段と、
    前記複数の気筒についての目標値を算出する手段と、
    前記複数の気筒のそれぞれについて、前記相関関数の値を前記目標値に収束させるよう、該気筒への燃料噴射量を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、を備え、
    前記基準信号設定手段は、前記複数の気筒のうちの1つの気筒を基準気筒とし、該複数の気筒のそれぞれについて設定される前記基準信号を、該基準気筒に該当する部分を前記出力信号から抽出することにより得た信号に基づいて生成する、
    内燃機関の燃料制御装置。
  2. 前記基準信号設定手段は、前記基準信号を、燃焼サイクルごとに生成する、
    請求項1に記載の燃料制御装置。
  3. 前記出力信号は、前記内燃機関の出力の変動成分のみを表す信号である、
    請求項1または2に記載の燃料制御装置。
  4. 前記目標値は、前記基準気筒について算出された前記相関関数の値である、
    請求項1から3のいずれかに記載の燃料制御装置。
  5. 前記相関関数値算出手段は、さらに、前記基準信号の標準偏差の2乗により前記相関関数を正規化して、正規化済み相関関数を算出し、
    前記補正値算出手段は、前記複数の気筒のそれぞれについて、前記正規化済み相関関数の値を前記目標値に収束させるよう、該気筒への燃料噴射量を補正するための補正値を算出する、
    請求項1から4のいずれかに記載の燃料制御装置。
  6. 所定の条件を満たしたとき、前記相関関数値の算出および前記補正値の算出を所定期間停止する、
    請求項1から5のいずれかに記載の燃料制御装置。
  7. 前記所定の条件は、前記内燃機関の回転数が所定値以上となった時、を含み、
    前記出力信号は、該内燃機関の回転の角速度を示す信号である、
    請求項6に記載の燃料制御装置。
  8. 前記所定の条件は、前記燃料噴射量が所定値以下となった時、を含む、
    請求項6または7に記載の燃料制御装置。
  9. 前記所定期間は、前記基準信号が算出される周期に基づいて設定される、
    請求項6から8のいずれかに記載の燃料制御装置。
  10. 前記複数の気筒のそれぞれについて、前記基準信号の標準偏差および前記出力信号の標準偏差で前記相関関数を正規化することにより算出される第2の相関関数が所定値以下の時、前記補正値算出手段による補正値の算出を停止する、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料制御装置。
  11. 前記複数の気筒のそれぞれについて、前記出力信号から、該気筒に対応するクランク角領域における値を切り出すと共に、他の気筒に対応するクランク角領域における値をゼロに設定した信号を、気筒毎出力信号として生成する手段を備え、
    前記複数の気筒のそれぞれについて前記第2の相関関数を算出するのに用いられる前記出力信号の標準偏差は、該気筒毎出力信号の標準偏差である、
    請求項10に記載の燃料制御装置。
  12. 前記内燃機関はディーゼルエンジンであり、前記出力信号は、該エンジンのクランク軸に取り付けられたセンサの出力に基づく信号である、
    請求項1から11のいずれかに記載の燃料制御装置。
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