JP2008273129A - 感熱孔版印刷用マスター - Google Patents

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Abstract

【課題】サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質を提供し、裏移りの発生が少なく、しかも経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能な感熱孔版印刷用マスターの提供。
【解決手段】感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルム1と、該熱可塑性樹脂フィルム1の一方の面上に積層された多孔性支持体2、3とからなる積層体4における、前記多孔性支持体2、3とは反対側に位置する面に、下記式Aを充たすシリコーンオイルを含むスティック防止層5を有してなり、前記スティック防止層5が、更に下記式Bを充たすシリコーンオイルを含む。y>−0.00003x+1.48・・・式Ay<−0.00003x+1.46・・・式Bただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s)を表す。
【選択図】図1C

Description

本発明は、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック(貼り付き)及びカス固着の発生を抑制可能な感熱孔版印刷用マスターに関する。
従来より、熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」と称することがある。)上に、インキ透過性支持体(以下、単に「支持体」と称することがある。)としての多孔性薄葉紙などを接着剤で貼り合わせた感熱孔版印刷用マスターが知られている。また、前記多孔性薄葉紙としては、麻繊維又は麻繊維及び合成繊維と、木材繊維とを混抄したものが広く用いられている。
しかし、従来の感熱孔版印刷用マスターには、以下のような問題がある。
(1)繊維の重なった部分とフィルムが接する部分に接着剤が大量に(鳥の水掻き状に)集積し、その部分のサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなり、インキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(2)繊維自体がインキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(3)多孔性薄葉紙などが高価であり、また、ラミネート加工によるロスも大きく、マスターが高価となる。
(4)印刷された紙が重なると、インキが、その重なった紙の裏面に付着する、いわゆる裏移りが発生する。
そこで、前記問題を解決すべく、熱可塑性樹脂フィルム上に繊維からなるインキ透過性支持体を貼り合わせてなる感熱孔版印刷用マスターについて、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、繊度1デニール以下の極細繊維を用いた支持体が提案されている。この提案によれば、前記(2)及び前記(4)の問題は解決することができるが、前記(1)及び前記(3)の問題は依然として残されている。
また、特許文献2には、フィルム上に実質的に閉じた形状の放射線硬化型耐熱性樹脂パターンをグラビア、オフセット、フレキソなどの印刷法により形成する方法が提案されている。しかし、前記方法ではインキ透過性支持体としての樹脂層の厚みを50μm以下とすることが困難であり、たとえ樹脂層の厚さを30μm程度に形成することができたとしてもその厚さでは、耐熱性樹脂層がサーマルヘッドによる穿孔を妨げてしまい、樹脂層をきれいに穿孔できず、にじみ、かすれなどの印刷ムラが発生してしまうという問題がある。
また、特許文献3には、水分散性ポリマーとコロイダルシリカなどの微粒子との混合液をフィルム表面に塗布し、乾燥してなる多孔質層を有する感熱孔版印刷用マスターが提案されている。該感熱孔版印刷用マスターは、例えば、理想科学工業社製の孔版印刷機(プリントゴッコ製版機)を用いて製版し、例えば、EPSON社製のインクジェット記録用インク(HG−4800インク)を用いて印刷される。しかし、この方法により得られる多孔質層は印刷インクの通りが悪く、従来の感熱孔版印刷用インクでは印刷時に充分な濃度が得られないという問題がある。
また、特許文献4には、支持体を用いず、実質的にフィルムのみからなる感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案によれば、前記(1)、(2)、及び(3)の問題は解決することができる。しかし、(i)フィルムが10μm以下の厚さの場合、該フィルムのコシ(stiffness)が弱く、搬送が困難になる。また、(ii)フィルムが5μm以上の厚さの場合、該フィルムの熱感度が小さくなってサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなる、という問題がある。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献5では、孔版印刷機の版胴周壁部にフィルムが切断されることなく長尺状のまま巻装され、印刷時には版胴の回転と共にフィルム全体も回転させる方法が提案されている。しかし、この方法では、フィルム及び着排版ユニットが印刷時には版胴の回転と共に回転するため、回転のモーメントが大きくなる。また、重力中心の回転軸からの変異が大きく、これらを解決するため、印刷機は重く、大きくなってしまうという問題がある。
前記問題を解決するため、例えば、特許文献6には、樹脂、その樹脂に対する良溶媒(樹脂を溶解可能な溶媒を言う)、及び貧溶媒(実質的に樹脂を溶解せず、蒸発速度が前記良溶媒の蒸発速度より遅い溶媒を言う)を含む流動体を熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成した感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案における流動体は、乾燥過程において良溶媒の蒸発による相対的な貧溶媒の増加、液の濃縮などにより樹脂が析出し、乾燥して三次元の網状構造体からなる多孔性樹脂膜がフィルム上に形成される。
また、特許文献7には、W/O(油中水滴)型エマルションを主体とした流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成した感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案における流動体は、乾燥過程において水滴の部分が乾燥して孔を形成し、多孔性樹脂膜が熱可塑性樹脂フィルム上に形成される。
しかし、前記特許文献6及び7の感熱孔版印刷用マスターは、和紙タイプの多孔性支持体を用いたマスターに比べると、曲げ剛度が弱く、印刷機内での搬送やドラムヘの巻装に不利である。この問題を解決するため、特許文献8には、マスター強度を向上させることを目的として、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜を有し、更に該多孔性樹脂膜における前記フィルムと反対側に位置する面に、多孔性繊維膜を積層してなる感熱孔版印刷用マスターが提案されており、この感熱孔版印刷用マスターによれば、印刷機内での搬送性やドラムへの巻装性が改善される。
なお、以上の特許文献6、7及び8に記載の感熱孔版印刷用マスターは、それまでに知られているマスターに比べて優れており、普通の使用状態では、殆ど問題は生じない。
ところで、前記感熱孔版印刷用マスターにおいては、サーマルヘッドによる穿孔の際の該サーマルヘッドへのスティック(貼り付き)や、溶融したフィルムカスの前記サーマルヘッドへの固着を防止するために、前記熱可塑性樹脂フィルムの表面に、スティック防止層が設けられることが多い。
従来より、前記スティック防止層としては、数多くの提案がなされており、例えば、脂肪酸金属塩を主成分とした層(特許文献9参照)、リン酸エステル系界面活性剤を含むオーバーコート層(特許文献10〜14参照)、室温硬化シリコーンワニスを含むオーバーコート層(特許文献15参照)、紫外線硬化シリコーンワニスを含むオーバーコート層(特許文献16参照)、などが知られている。これらの層は、いずれも結晶化ポリエステルフィルム(厚み約2μm、融点245〜260℃)と、多孔性支持体とを貼り合わせて形成された感熱孔版印刷用マスターに用いられている。
しかし、これらのスティック防止層が設けられた感熱孔版印刷用マスターにおいては、スティック防止能が、経時的に劣化し、特に、ベタ画像を製版した場合、スティッキングが発生し、フィルム剥がれが生じたり、画像が縮んで製版画像の寸法再現性が悪かったり、プラテンローラの位置にて、原紙にシワが入ったりするという問題がある。
また、高速製版、低エネルギー化などを目的として、感熱性孔版原紙用の高感度フィルムが提案されているが(特許文献17参照)、この様な高感度フィルムは、結晶化ポリエステルフィルムに比べて、スティッキングが発生し易い傾向にある。
また、この様な高感度フィルムは、前記多孔性支持体と貼り合わせず、厚物(厚み5μ以上)の単独フィルムで、印刷原版として使用されることが知られている。この高感度フィルムに用いるスティック防止剤としては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル(特許文献18参照)、エステル変性シリコーンオイル(特許文献19参照)、メルカプト変性シリコーンオイル(特許文献20参照)、などが提案されているが、これらは、経時的にスティック防止能が低下しやすいという問題があった。
これに対し、特許文献21には、熱可塑性フィルムの表面に、アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルを含む層を設ける方法が開示されている。この方法によれば、経時的に安定なスティック防止性能が得られ、従来のフィルムと多孔性繊維膜とを積層したマスターを、サーマルヘッドで穿孔する際には、殆ど問題が生じない。
しかしながら、前記特許文献6、7及び8に記載の感熱孔版印刷用マスターは、従来の和紙タイプの多孔性支持体を用いたマスターに比べて、サーマルヘッドでフィルムを製版する際、サーマルヘッドの熱で融解したフィルムの一部が、該サーマルヘッドの表面に固着する現象(カス固着)が発生し易く、製版を繰り返すと、サーマルヘッドの表面にカスが堆積してしまう。また、カスが堆積すると、サーマルヘッドの熱が、フィルムに充分に伝わらなくなり、穿孔不良が発生し、更にはそれに起因する画像白抜けの発生につながるおそれがある。
ここで、前記フィルム上に多孔性樹脂膜を設けた感熱孔版印刷用マスターにおいて、サーマルヘッド上にフィルムのカスが堆積し易い原因は定かではないが、以下の理由が考えられる。
(1)従来の多孔性繊維膜をフィルム上に積層したマスターであれば、サーマルヘッドの熱で融けたフィルムが前記多孔性繊維膜の間に入ることができたが、前記多孔性樹脂膜は、構造が密であるため、フィルムのカスが入り込み難く、サーマルヘッド上に残り易い。
(2)従来の多孔性繊維膜をフィルム上に積層したマスターでは、該多孔性繊維膜の繊維によるサーマルヘッド表面のカスの掻き取り効果があったが、前記多孔性樹脂膜は柔らかく、前記該掻き取り効果が弱いため、サーマルヘッド上にカスが残り易い。
したがって、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質を提供し、裏移りの発生が少なく、しかも経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能な感熱孔版印刷用マスターは未だ提供されておらず、その速やかな開発が望まれているのが現状である。
特開平3−193445号公報 特開昭62−198459号公報 特開平4−7198号公報 特開昭54−33117号公報 特公平5−70595号公報 特開平10−24667号公報 特開平11−235885号公報 特開平10−147075号公報 特開昭60−19592号公報 特開昭61−102294号公報 特開昭61−102295号公報 特開昭61−114893号公報 特開昭61−114894号公報 特開昭61−125897号公報 特開昭58−153697号公報 特開昭61−295098号公報 特開昭62−282983号公報 特開平1−238992号公報 特開平1−237196号公報 特開平2−89694号公報 特許第2986931号公報
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質を提供し、裏移りの発生が少なく、しかも経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能な感熱孔版印刷用マスターを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に積層された多孔性支持体とからなる積層体における、前記多孔性支持体とは反対側に位置する面に、下記式Aを充たすシリコーンオイルを含むスティック防止層を有してなり、
前記スティック防止層が、更に下記式Bを充たすシリコーンオイルを含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。
y>−0.00003x+1.48・・・式A
y<−0.00003x+1.46・・・式B
ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s)を表す。
該<1>に記載の感熱孔版印刷用マスター(以下、単に「マスター」と称することがある。)においては、前記スティック防止層が、前記式Aを充たすシリコーンオイル(以下、「シリコーンオイルA」と称することがある。)及び前記式Bを充たすシリコーンオイル(以下、「シリコーンオイルB」と称することがある。)を含むので、サーマルヘッドで前記熱可塑性樹脂フィルムを製版する際、前記サーマルヘッドに前記フィルムが貼り付く現象(スティック)の発生と、前記サーマルヘッドの熱で融解したフィルムの一部が、前記サーマルヘッドの表面に固着する現象(カス固着)の発生とが抑制される。
ここで、屈折率の高いシリコーンオイルは、極性が高く、前記フィルムとの親和性が高いため、ブリード(前記マスターをロール状に巻き取った際、前記フィルムに接触する面に転移する現象)が少なく、経時安定性に優れる。また、粘度が高いシリコーンオイルは、スティック防止に有利である。
前記シリコーンオイルAは、屈折率及び粘度が高いため、経時安定性が高く、スティック防止能に優れる。しかしながら、粘度が高く、極性が高いために、サーマルヘッドの表面で拡がり難く、結果的に、サーマルヘッドへのカス固着を発生させ易い。
これに対し、前記シリコーンオイルBは、屈折率が低いため、極性が低く、しかも粘度も低いので、前記サーマルヘッドの表面に馴染み、拡がり易く、前記サーマルヘッドへのカス固着を有効に抑制することができる。
したがって、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記スティック防止層の成分として、前記シリコーンオイルAと前記シリコーンオイルBとを併用しているので、経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能である。
<2> スティック防止層における式Bを充たすシリコーンオイルの含有量が、式Aを充たすシリコーンオイルと式Bを充たすシリコーンオイルとの総量の5〜30質量%である前記<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<2>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記スティック防止層中の前記式Bを充たすシリコーンオイルの含有量が、前記数値範囲内であるので、前記シリコーンオイルAによる、優れたスティック防止能及び経時安定性と、前記シリコーンオイルBによる、優れたカス固着防止能とが、バランスよく発揮される。
<3> 熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に積層された多孔性支持体とからなる積層体における、前記多孔性支持体とは反対側に位置する面に、下記式Aを充たすシリコーンオイルAを含むスティック防止層を有してなり、
前記積層体における前記多孔性支持体側に位置する面に、下記式Bを充たすシリコーンオイルを含むシリコーン含有層を更に有してなり、
ロール状に巻かれてなることを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。
y>−0.00003x+1.48・・・式A
y<−0.00003x+1.46・・・式B
ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s)を表す。
該<3>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、スティック防止層が、前記式Aを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルA)を含むので、経時的に安定して優れたスティック防止能が得られる。また、前記シリコーン含有層が、極性が低く前記ブリードが生じ易い、前記式Bを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルB)を含んでおり、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターが、ロール状に巻かれてなるので、前記シリコーン含有層と、前記スティック防止層とが接触して保管され、前記シリコーン含有層における前記シリコーンオイルBの一部が、前記スティック防止層に転移する。その結果、サーマルヘッドで前記熱可塑性樹脂フィルムを製版する際、前記サーマルヘッドの熱で融解したフィルムの一部が、前記サーマルヘッドの表面に固着する現象(カス固着)の発生をも抑制することができる。
<4> 式Aを充たすシリコーンオイルが、アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルである前記<1>から<3>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<4>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記式Aを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルA)が、前記アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルであり、優れた境界潤滑性を付与するアルキル高級アルコールエステル基を有するので、前記サーマルヘッドと前記スティック防止層との滑りが良好で、スティック防止能に優れる。また、ポリエステル系の熱可塑性樹脂フィルムとの親和性が高く、ブリードが少ないため、経時的に安定してスティック防止効果が発揮される。
<5> アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルが、下記構造式(1)で表される前記<4>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
ただし、前記構造式(1)中、R’は、炭素数3以上のアルキル基を表し、R’’は、炭素数5以上のアルキル基を表す。X及びYは、それぞれ3以上の整数を表す。
<5> 式Bを充たすシリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルである前記<1>から<4>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<5>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記式Bを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルB)が、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルであるので、カス固着防止能とブリードとのバランスが良好であり、マスターの帯電特性への影響も少ない。即ち、変性のないストレートタイプのシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)は、表面張力が低く、サーマルヘッド上での拡がりがよいので、カス固着防止効果は高いものの、ブリードが多く、経時安定性が低いという問題がある。また、親水性が低いため、マスターが帯電し易く、印刷機内での搬送性に悪影響を及ぼし易い。しかし、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルを用いるので、これらの問題の発生が抑制される。
<6> ポリエーテル変性シリコーンオイルが、下記構造式(2)で表される前記<5>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
ただし、前記構造式(2)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。mは、1〜100の整数を表し、nは、1〜50の整数を表す。POAは、ポリアルキレンオキシドを表す。
<7> ポリエーテル変性シリコーンオイルが、下記構造式(3)で表される前記<5>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
ただし、前記構造式(3)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。mは、1〜100の整数を表す。POAは、ポリアルキレンオキシドを表す。
<8> ポリエーテル変性シリコーンオイルが、下記構造式(4)で表される前記<5>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
ただし、前記構造式(4)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。mは、1〜100の整数を表す。POAは、ポリアルキレンオキシドを表す。
<9> 多孔性支持体が、多孔性繊維膜である前記<1>から<8>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<9>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記多孔性支持体が、前記多孔性繊維膜であるので、該多孔性繊維膜を、前記熱可塑性樹脂フィルムに貼り合わせて形成したマスターは、コシが高められ、スティッキングによる製版画像の寸法再現性の低下が容易に抑制される。また、前記多孔性繊維膜の隙間に前記熱可塑性樹脂フィルムのカスが入り込む余地があるので、該カスが前記サーマルヘッド上に残り難い。
<10> 多孔性支持体が、多孔性樹脂膜である前記<1>から<8>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<10>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記多孔性樹脂膜によりインキ通過量が均一化されるため、印刷画像品質に優れる。また、前記多孔性樹脂膜による断熱効果により、前記サーマルヘッドの熱が有効に前記熱可塑性樹脂フィルム穿孔に使用され、穿孔性にも優れる。
<11> 多孔性支持体が、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなる前記<1>から<8>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<11>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記多孔性樹脂膜によりインキが均一に分散されるので、印刷画像品質に優れるとともに、前記多孔性繊維膜によりコシが高められ、スティッキングによる製版画像の寸法再現性の低下が容易に抑制される。
<12> 多孔性樹脂膜が、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し乾燥してなる前記<10>から<11>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<12>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記多孔性樹脂膜が、前記熱可塑性樹脂フィルム上に、前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布及び乾燥することにより形成されているので、前記多孔性樹脂膜の孔径均一性が高く、しかも前記サーマルヘッドによる穿孔性が高く、画質に優れ、裏移りが少ない点で優れる。
<13> 多孔性樹脂膜が、溶解した合成樹脂を含む油中水型乳化液を、熱可塑性樹脂フィルム上に一定厚みで塗布し乾燥させることにより形成された前記<12>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。
該<13>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記多孔性樹脂膜が、溶解した合成樹脂を含む油中水型乳化液(前記多孔性樹脂膜形成用塗布液に相当)を、前記熱可塑性樹脂フィルム上に一定厚みで塗布及び乾燥することにより形成されているので、前記前記多孔性樹脂膜の孔径均一性が高く、しかも前記サーマルヘッドによる穿孔性が高く、画質に優れ、裏移りが少ない。また、得られる多孔性樹脂膜の形状が、樹脂の溶解度に依存しないので、製造時の温度や湿度の影響を受け難く、形成される膜形状の再現性が高い点で優れる。更に、処方の自由度が高く、多孔性樹脂膜の形成できる範囲が広いので、油相及び水相の比率や樹脂濃度、樹脂分子量などで塗布液の粘度を調整できる範囲が大きい点で優れる。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質を提供し、裏移りの発生が少なく、しかも経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能な感熱孔版印刷用マスターを提供することができる。
(感熱孔版印刷用マスター)
本発明の感熱孔版印刷用マスター(以下、単に「マスター」と称することがある。)は、熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に積層された多孔性支持体とからなる積層体における、前記多孔性支持体とは反対側に位置する面に、下記式Aを充たすシリコーンオイルを少なくとも含むスティック防止層を有してなり、好ましくは、前記積層体における前記多孔性支持体側に位置する面に、シリコーン含有層を有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の層を有してなる。
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第1の態様では、前記スティック防止層が、下記式Aを充たすシリコーンオイルに加えて、更に下記式Bを充たすシリコーンオイルを含んでなる。
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第2の態様では、前記積層体における前記多孔性支持体側に位置する面に、シリコーン含有層を更に有してなり、該シリコーン含有層が、下記式Bを充たすシリコーンオイルを含んでなる。また、該感熱孔版印刷用マスターは、ロール状に巻かれてなる。
y>−0.00003x+1.48・・・式A
y<−0.00003x+1.46・・・式B
ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s)を表す。
ここで、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの一例を、図面を用いて説明する。
図1A〜図1Cは、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第1の態様を示す模式断面図である。
図1Aに示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、前記多孔性支持体としての多孔性繊維膜2が積層されて、積層体4が構成されており、該積層体4における多孔性繊維膜2とは反対側に位置する面(熱可塑性樹脂フィルム1の表面)には、スティック防止層5を有している。
図1Bに示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、前記多孔性支持体としての多孔性樹脂膜3が積層されて、積層体4が構成されており、該積層体4における多孔性樹脂膜3とは反対側に位置する面(熱可塑性樹脂フィルム1の表面)には、スティック防止層5を有している。
図1Cに示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、前記多孔性支持体として、多孔性樹脂膜3及び多孔性繊維膜2がこの順に積層されて、積層体4が構成されており、該積層体4における前記多孔性支持体とは反対側に位置する面(熱可塑性樹脂フィルム1の表面)には、スティック防止層5を有している。
図2A〜図2Cは、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第2の態様を示す模式断面図である。
図2Aに示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、前記多孔性支持体としての多孔性繊維膜2が積層されて、積層体4が構成されている。また、積層体4における多孔性繊維膜2とは反対側に位置する面(熱可塑性樹脂フィルム1の表面)には、スティック防止層5を、多孔性繊維膜2側に位置する面には、シリコーン含有層6を、それぞれ有している。
図1Bに示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、前記多孔性支持体としての多孔性樹脂膜3が積層されて、積層体4が構成されている。また。積層体4における多孔性樹脂膜3とは反対側に位置する面(熱可塑性樹脂フィルム1の表面)には、スティック防止層5を、多孔性樹脂膜3側に位置する面には、シリコーン含有層6を、それぞれ有している。
図1Cに示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、前記多孔性支持体として、多孔性樹脂膜3及び多孔性繊維膜2がこの順に積層されて、積層体4が構成されている。また、積層体4における前記多孔性支持体とは反対側に位置する面(熱可塑性樹脂フィルム1の表面)には、スティック防止層5を、前記多孔性支持体側に位置する面(多孔性繊維膜2の表面)には、シリコーン含有層6を、それぞれ有している。
なお、以上の図2A〜図2Cに示す感熱孔版印刷用マスターは、ロール状に巻かれてなり、スティック防止層5の表面が、シリコーン含有層6の表面と接した状態で保管される。
−熱可塑性樹脂フィルム−
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、その材料、形状、厚み、大きさ、などについては、特に制限はなく、感熱孔版印刷用マスターに通常使用されている公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
前記材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などが好適に挙げられる。
前記形状としては、二軸延伸した樹脂フィルムが特に好ましく、例えば、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムなどが好適に挙げられる。
前記厚さとしては、0.5〜10μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。
前記厚さが、0.5μm未満であると、薄すぎて後述する多孔性樹脂層塗布液の塗布が困難となることがあり、10μmを超えると、サーマルヘッドでの穿孔が困難となることがある。
−多孔性支持体−
前記多孔性支持体は、前記熱可塑性樹脂フィルム単体では不足する強度を補って、マスターの搬送性や耐刷性を向上させたり、印刷時にマスターを通過するインキを均一に分散させ、画像品質を向上させたりする効果を有する。
前記熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に積層される前記多孔性支持体としては、多孔性樹脂膜であってもよいし、多孔性繊維膜であってもよい。また、前記熱可塑性樹脂フィルム上に、前記多孔性樹脂膜及び前記多孔性繊維膜をこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなるものであってもよい。
前記多孔性支持体は、前記熱可塑性樹脂フィルム上に単層で積層されていてもよいし、複数積層されていてもよい。
−−多孔性樹脂膜−−
前記多孔性樹脂膜の構造としては、不定形の棒状、球状、又は枝状に連結した(和紙のような短い構成単位が絡み合っているものではなく、印刷などで形成される単純な形状の組み合わせでもない)複雑な三次元構造を有するもの、いわゆる糸瓜に似た構造、ハニカム状構造、蜂の巣状構造などが好適に挙げられる。
前記多孔性樹脂膜は、前記熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し乾燥してなるのが好ましい。即ち、前記構造を有する多孔性樹脂膜の第1の形成方法としては、例えば、特開平10−24667号公報に開示されているように、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の良溶媒(樹脂を溶解可能な溶媒を言う)と貧溶媒(実質的に樹脂を溶解せず、蒸発速度が前記良溶媒の蒸発速度より遅い溶媒を言う)とが互いによく溶ける場合に用いられ、樹脂とその樹脂に対する良溶媒と貧溶媒とを含む流動体(前記多孔性樹脂膜形成用塗布液)を、熱可塑性樹脂フィルム上に半析出状態で塗布し、乾燥して形成する方法が挙げられる。この樹脂、その良溶媒、及び貧溶媒を含む流動体は、乾燥過程において、良溶媒が先に蒸発し、相対的に貧溶媒が増加し、樹脂の濃縮などにより樹脂が析出して、三次元網状構造を形成する。この第1の形成方法では、一般的に糸瓜状構造の多孔性樹脂膜が形成され、エーテルやアセトンなど、蒸発の速い溶剤を選択することにより生産性を高めることができる。
前記多孔性樹脂膜の形成に用いられる樹脂材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー等のビニル系樹脂;ポリブチレン樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のポリカーボネート樹脂;アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセルロース等のセルロース誘導体;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、インキ通過性に優れる多孔性樹脂膜を形成するためには、熱可塑性樹脂が好適に使用可能である。
前記多孔性樹脂膜には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、例えば、フィラー、帯電防止剤、スティック防止剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤などを添加することができる。
前記フィラーは、前記多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、コシなどを調整するために添加される。ここで、前記フィラーとは、顔料、紛体や繊維状物質も含まれる概念であり、これらの中でも、特に、針状、板状、又は繊維状のフィラーが好ましい。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノライト、石膏繊維等の鉱物系針状フィラー;非酸化物系針状ウイスカ、複酸化物系ウイスカ等の人工鉱物系針状フィラー;マイカ、ガラスフレーク、タルク等の板状フィラー;カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の天然又は合成の繊維状フィラー;などが挙げられる。
前記顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等からなる有機ポリマー粒子;カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フィラーの添加量としては、前記樹脂100質量部に対し5〜200質量部が好ましい。
前記フィラーの添加量が、5質量部未満であると、カールが発生し易くなることがあり、200質量部を超えると、前記多孔性樹脂膜の強度が低下することがある。
また、前記多孔性樹脂膜は、溶解した合成樹脂を含む油中水型乳化液(多孔性樹脂膜形成用塗布液)を、前記熱可塑性樹脂フィルム上に一定厚みで塗布し乾燥させることにより形成されてもよい。この場合、前記多孔性樹脂膜の孔径均一性が高く、サーマルヘッドによる穿孔性が高いので、画質に優れ、裏移りが少なく、印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生が無いという特徴を併せ持つマスターが効率よく得られる。また、得られる多孔性樹脂膜の形状が、樹脂の溶解度に依存しないので、温度や湿度の影響を受け難く、形成される膜形状の再現性が高い点で優れる。更に、処方の自由度が高く、多孔性樹脂膜の形成できる範囲が広いので、油相水相の比率や樹脂濃度、樹脂分子量などで塗布液の粘度を調整できる範囲が大きい点で優れる。
即ち、前記多孔性樹脂膜の第2の形成方法としては、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の良溶媒と貧溶媒とが互いに混ざり合わない場合に用いられ、例えば、特開平11−235885号公報に開示されているように、W/O型(油中水型)エマルションを主体とした流動体(前記多孔性樹脂膜形成用塗布液)を、熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成する方法が挙げられる。このW/O型エマルションから形成される多孔性樹脂膜は一般的にハニカム状構造、蜂の巣状の三次元的網状構造を有している。この第2の形成方法により形成される多孔性樹脂膜は、W/O型エマルションを主体とする流動体を、熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して形成されるものであり、主として水の部分が乾燥後、インクが通過する孔となり、溶剤中の樹脂(フィラー、乳化剤などの添加物が含まれていてもよい)が構造体となる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系誘導体、これらの変性物、又はこれらの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ビニルブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂が特に好ましい。
前記W/O型エマルションの形成には、比較的親油性の強い、HLBが2.5〜6の界面活性剤が有効であるが、水相にもHLBが8〜20の界面活性剤を使用すると、より安定で均一なW/O型エマルションが得られる。高分子界面活性剤の使用も、より安定で均一なエマルションを得る方法の一つである。また、水系にはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの増粘剤の添加がエマルションの安定化に有効である。
前記多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、及びコシなどを調整するために、前記多孔性樹脂膜中には、更に必要に応じて、フィラーなどの添加剤を添加することができる。これらの中でも、針状、板状、又は繊維状のフィラーが特に好ましい。なお、該フィラーとしては、前記第1の形成方法で使用したものと同様のもの中から適宜選択することができる。
前記第1及び第2形成方法における多孔性樹脂膜の乾燥後付着量としては、0.5〜20g/mが好ましく、1〜10g/mがより好ましい。
前記付着量が、0.5g/m未満であると、インキ付着量が制御されずに印刷物の裏移りが多くなることがあり、20g/mを超えると、インクの通過を阻害して画像が悪くなることがある。
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターにおける、前記熱可塑性樹脂フィルムと前記多孔性樹脂膜との接着強度としては、1.4N/m以上が好ましく、2.8N/m以上がより好ましい。
前記接着強度が、1.4N/m未満であると、ハンドリング及び搬送時に、前記熱可塑性樹脂フィルムと前記多孔性樹脂膜との剥離が発生し、シワの原因となるだけでなく、耐刷時にマスターの伸び、ハガレ、破れといった問題を引起こすことがある。
なお、前記接着強度の上限は、インキの通過が阻害されない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−多孔性繊維膜−−
前記多孔性繊維膜としては、その材料、大きさ、構造などについては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
前記材料としては、例えば、ガラス、セピオライト、各種金属等の鉱物繊維;羊毛、絹等の動物繊維;綿、マニラ麻、コウゾ、ミツマタ、パルプ等の天然繊維;スフ、レーヨン等の再生繊維;ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成繊維;カーボンファイバー等の半合成繊維;ウィスカ構造を有する無機繊維等の薄葉紙;などが挙げられる。これらの中でも、天然繊維と合成繊維との混抄の多孔性繊維膜、合成繊維のみからなる多孔性繊維膜が好適に挙げられる。
前記天然繊維と合成繊維との混抄の多孔性繊維膜は、比較的安価で、良好なインキ通過性や曲げ剛度が得られる。前記合成繊維のみからなる多孔性繊維膜は、機械的強度や帯電特性などの環境依存性が小さく好ましい上に、天然繊維よりも細い繊維が入手可能で、インキの均一通過性に有利である。
前記多孔性繊維膜を構成する繊維状物質の太さ(例えば、直径)、長さ、形状については、特に制限はなく、前記熱可塑性樹脂フィルムの穿孔直径、フィルムの厚さなどに応じて適宜選択することができる。
前記繊維状物質の直径(太さ)としては、20μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。
前記直径が、1μm未満であると、引張り強度が弱くなることがあり、20μmを超えると、インキの通過が妨げられて繊維による白抜け画像が生じることがある。
前記繊維状物質の長さとしては、0.1〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましい。
前記長さが、0.1mm未満であると、引張り強度が弱くなることがあり、10mmを超えると、繊維の分散を均一に行うのが困難になることがある。
前記多孔性繊維膜の坪量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3〜20g/mが好ましく、5〜10g/mがより好ましい。
前記坪量が、3g/m未満であると、インキ透過性支持体として充分な強度が得られないことがあり、20g/mを超えると、インキの通過性が低下して画像鮮明性が低下することがある。
前記多孔性繊維膜としては、市販品であってもよいし、適宜形成したものであってもよい。なお、前記多孔性繊維膜を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記多孔性繊維膜としては、例えば、短繊維を湿式抄紙した抄造紙であってもよいし、不織布及び織物のいずれかであってもよいし、スクリーン紗などであってもよく、これらの中でも、生産性、コスト面などの観点から、抄造紙が好適に挙げられる。
また、前記多孔性繊維膜は、特公昭49−18728号公報、特公昭49−8809号公報などに記載の方法により形成してもよい。
前記熱可塑性樹脂フィルムと前記多孔性支持体(前記多孔性樹脂膜若しくは前記多孔性繊維膜)、又は、前記多孔性繊維膜と多孔性樹脂膜とを貼り合わせる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記多孔性樹脂膜と前記多孔性繊維膜とを貼り合わせる場合には、多孔質体どうしの接着となるため、接着剤などで孔を閉塞させないようにすることが特に必要である。例えば、前記熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に、多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥により多孔性樹脂膜を形成させる場合、少なくとも該多孔性樹脂膜の最外表層が乾燥し、皮膜化した後に、前記多孔性繊維膜を積層するのが好ましい。前記多孔性樹脂膜が形成される前に前記多孔性繊維膜を積層すると、前記多孔性樹脂膜の形成を阻害して所望の多孔性樹脂膜が得られないことがある。また、接着に接着剤を用いる場合には、前記多孔性樹脂膜の孔を閉塞させないように、前記接着剤は、前記多孔性繊維膜に塗布するのが好ましい。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多孔性繊維膜と、前記多孔性樹脂膜とを貼り合わせる(ラミネートする)場合に用いる接着剤としては、インキ通過性を良好に保つために、前記多孔性樹脂膜の孔を塞がないような高粘度の状態のものが好ましい。
前記接着剤が、完全に硬化するまでの粘度としては、25℃において100cP以上が好ましく、300cP以上がより好ましい。
この場合、前記接着剤として溶剤型接着剤を使用すると、前記多孔性樹脂膜が侵され、孔を閉塞してしまうため、少なくとも前記多孔性樹脂膜と前記多孔性繊維膜とが積層される時点において、溶剤は存在しないのが好ましく、この点から、無溶剤型接着剤、水性又はエマルション型接着剤が好適に用いられる。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)酢酸エチルなどの有機溶剤で希釈された塗工液を多孔性繊維層に塗布し、乾燥した後、多孔性樹脂膜と貼り合せる方法、(2)無溶剤のまま塗布する方法、などが挙げられ。これらの中でも、環境面及び残留溶剤が発生しない点で、前記(2)無溶剤のまま塗布する方法が好ましい。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、オフセットグラビアコーティング法、キスコーティング法、バーコーティング法などが好適に挙げられる。
前記接着剤を塗布する面としては、前記多孔性樹脂膜、及び前記多孔性繊維膜のいずれに塗布してもよいが、前記多孔性樹脂膜の開口部を閉塞しないためには、前記多孔性繊維膜に塗工するのが好ましい。
前記接着剤としては、所定の接着強度を得るため及び上記条件を充たす点で、ポリウレタン系接着剤が特に好適に挙げられる。該ポリウレタン系接着剤としては、低付着量にて所望の接着強度が得られる、無溶剤型ポリウレタン接着剤が好ましい。また、前述の通り、前記多孔性繊維膜としては、安価な天然繊維を含むものが好適に用いられるが、この場合、水性又はエマルション型ポリウレタン接着剤を使用すると、塗工時に前記多孔性繊維膜の伸縮が発生し、カールなどを悪化させることがあるという面からも、前記無溶剤型ポリウレタン接着剤が好適に用いられる。
前記無溶剤型ポリウレタン接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)ポリオール成分とイソシアネート成分との反応により得られる一液湿気硬化型のウレタンプレポリマー、(2)ポリオール成分とイソシアネート成分とに分かれた二液硬化型の接着剤、などが挙げられる。
前記ポリオール成分としては、両末端に水酸基を有し、液体であれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両末端に水酸基を有する、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、などが挙げられる。
前記イソシアネート成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,4−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、2,6−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−,m−及びp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサヒドロメタキシリデンジイソシアネート(HXDI)、リジンジイソシアネートアルキルエステル(該アルキルエステルのアルキル部分は、1〜6個の炭素原子を有するのが好ましい)等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;トルイレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、及びこれらの混合物;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多孔性繊維膜に、前記無溶剤型ポリウレタン接着剤を塗布する場合、粘度が高すぎると繊維が脱落して塗工不良が発生するので、ロールを加熱することにより、前記接着剤の粘度を下げて塗工するのが好ましい。
前記無溶剤型ポリウレタン接着剤の粘度としては、25℃において3,000cP以下が好ましく、300〜1,500cPがより好ましい。
前記粘度が、3,000cP未満であると、前記多孔性樹脂膜との貼り合せ後に、開口部を閉塞して、インキ通過性を阻害するおそれがあるほか、繊維層の繊維脱落が起こり易くなる。
前記無溶剤型接着剤を用いた場合には、ロール状に巻かれた感熱孔版印刷用マスターの反応を促進させる目的で、キュアを行うのが好ましい。
前記キュアの温度としては、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
前記キュアの温度が、50℃を超えると、前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮が発生してカールの問題が生じることがある。なお、前記キュアの時間としては、目的とする接着力が得られることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記接着剤の付着量としては、従来の感熱孔版印刷用マスター(熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜との積層品)とは異なり、穿孔阻害の影響を考慮する必要はないので、所望の接着強度が得られ、前記多孔性樹脂膜及び前記多孔性繊維膜の孔を閉塞しない範囲であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜4.0g/mが好ましく、0.1〜2.0g/mがより好ましい。
本発明の感熱孔版印刷用マスターにおける、前記熱可塑性樹脂フィルム及び前記多孔性繊維膜間の接着強度、並びに、前記多孔性繊維膜及び前記多孔性樹脂膜間の接着強度としては、1.4N/m以上が好ましく、2.8N/m以上がより好ましい。
前記接着強度が、1.4N/m未満であると、ハンドリング及び搬送時に、前記熱可塑性樹脂フィルムと前記多孔性繊維膜、あるいは、前記多孔性樹脂膜と前記多孔性繊維膜との膜剥離が発生し、シワの原因となるばかりでなく、耐刷時にマスターの伸び、ハガレ、破れといった問題を引き起こすことがある。なお、前記接着強度の上限はインキの通過が阻害されなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−スティック防止層−
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターにおいては、前記積層体における前記多孔性支持体とは反対側に位置する面(前記熱可塑性樹脂フィルムの表面)に、スティック防止層を有してなる。
前記スティック防止層は、下記式Aを充たすシリコーンオイル(以下、「シリコーンオイルA」と称することがある。)を少なくとも含み、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第1の態様では、下記式Bを充たすシリコーンオイル(以下、「シリコーンオイルB」と称することがある。)を更に含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の添加剤を含んでなる。
y>−0.00003x+1.48・・・式A
y<−0.00003x+1.46・・・式B
ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s(cSt))を表す。
−−シリコーンオイルA−−
前記シリコーンオイルAは、前記式Aを充たしており、屈折率が高いため、極性が高く(表面張力が大きく)、前記熱可塑性樹脂フィルムとの親和性が高い。このため、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターを、ロール状に巻き取って保管しても、前記熱可塑性樹脂フィルムにおける前記スティック防止層と接触する面に、前記シリコーンオイルAが転移する現象(ブリード)が生じ難く、経時安定性に優れる点で、有利である。
前記式Aにおけるxは、25℃における動粘度(mm/s(cSt))を表し、該xとしては、0以上であり、3,000(mm/s)以下が好ましい。例えば、前記xが、0〜3,000(mm/s)である場合、優れたスティック防止性及び安定性を得るためには、図3に示すA領域(前記式Aを充たす領域)に含まれるシリコーンオイルを使用することが必要である。
前記シリコーンオイルAとしては、前記式Aを充たす限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、優れた境界潤滑性を付与するアルキル高級アルコールエステル基を有する点で、アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルが好ましい。この場合、前記サーマルヘッドと前記スティック防止層との滑りが良好で、スティック防止能に優れる。また、ポリエステル系の熱可塑性樹脂フィルムとの親和性が高く、ブリードが少ないため、経時的に安定してスティック防止効果が発揮される。
前記アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルの具体例としては、例えば、下記構造式(1)で表されるシリコーンオイルが好適に挙げられる。
ただし、前記構造式(1)中、R’は、炭素数3以上のアルキル基を表し、R’’は、炭素数5以上のアルキル基を表す。X及びYは、それぞれ3以上の整数を表す。
前記スティック防止層における前記シリコーンオイルAの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記スティック防止層中に前記シリコーンオイルA及び前記シリコーンオイルBを含む場合には、これらのシリコーンオイルの総量の70〜95質量%が好ましく、80〜90質量%がより好ましい。
前記含有量が、70質量%未満であると、前記スティック防止層中の前記シリコーンオイルAの含有量が少なくなり、経時的に安定してスティック防止効果が発揮されないことがあり、95質量%を超えると、前記シリコーンオイルBの含有量が少なくなり、カス固着防止効果が充分に発揮されないことがある。
−−シリコーンオイルB−−
前記シリコーンオイルBは、前記式Bを充たしており、屈折率が低いため、極性が低く(表面張力が小さく)、また、粘度も低い。このため、前記サーマルヘッド表面で拡がり易く、前記サーマルヘッドへのカス固着を有効に抑制することができる。
前記シリコーンオイルAは、極性が高く、粘度が高いために、カス固着が発生することがあるが、前記シリコーンオイルBを更に含有させることにより、前記スティック防止層に、カス固着防止効果をも付与することができ、経時的に安定して、スティックの発生とカス固着の発生とを抑制可能なスティック防止層を得ることができる。
前記式Bにおけるxは、25℃における動粘度(mm/s(cSt))を表し、該xとしては、0以上であり、3,000(mm/s)以下が好ましい。例えば、前記xが、0〜3,000(mm/s)である場合、優れたカス固着防止効果を得るためには、図3に示すB領域(前記式Bを充たす領域)に含まれるシリコーンオイルを使用することが必要である。
前記シリコーンオイルBとしては、前記式Bを充たす限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カス固着防止能とブリードとのバランスが良好であり、前記マスターの帯電特性への影響も少ない点で、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。変性のないストレートタイプのシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)は、表面張力が低く、サーマルヘッド上での拡がりがよいので、カス固着防止効果は高いものの、ブリードが多く、経時安定性が低いという問題がある。また、親水性が低いため、マスターが帯電し易く、印刷機内での搬送性に悪影響を及ぼし易い。しかし、前記シリコーンオイルBとして、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルを用いると、これらの問題の発生が抑制される。
前記ポリエーテル変性シリコーンオイルの具体例としては、例えば、下記構造式(2)から(4)で表されるシリコーンオイルが好適に挙げられる。
ただし、前記構造式(2)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。mは、1〜100の整数を表し、nは、1〜50の整数を表す。POAは、ポリアルキレンオキシドを表す。
ただし、前記構造式(3)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。mは、1〜100の整数を表す。POAは、ポリアルキレンオキシドを表す。
ただし、前記構造式(4)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。mは、1〜100の整数を表す。POAは、ポリアルキレンオキシドを表す。
前記スティック防止層における前記シリコーンオイルBの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記シリコーンオイルAと前記シリコーンオイルBとの総量の5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
前記含有量が、5〜30質量%であると、経時的に安定して、スティック防止効果とカス固着防止効果とが、バランスよく発揮されるが、前記含有量が、5質量%未満であると、カス固着防止効果が充分に発揮されないことがあり、前記含有量が、30質量%を超えると、前記スティック防止層中の前記シリコーンオイルAの含有量が少なくなり、経時安定性及びスティック防止効果が充分に発揮されないことがある。
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、従来の感熱孔版印刷用マスターで一般に使用されているものの中から目的に応じて適宜選択することができ、シリコーン系離型剤のほかに、例えば、フッ素系離型剤、リン酸エステル系界面活性剤などを併用してもよい。なお、前記スティック防止層には、静電気の発生を防止するため、帯電防止剤を添加することもできる。
前記スティック防止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、溶剤などに希釈した溶液を、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーターなどを用いて塗布し、乾燥することにより形成することができる。
前記熱可塑性樹脂フィルム上の前記スティック防止層の乾燥付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.005〜0.5g/mが好ましい。
前記乾燥付着量が、0.005g/m未満であると、スティック防止性能が若干劣ることがあり、0.5g/mを超えると、前記サーマルヘッドによる穿孔性を阻害することがある。
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第2の態様では、前記積層体における前記多孔性支持体側に位置する面に、シリコーン含有層を更に有してなり、前記感熱孔版印刷用マスターは、ロール状に巻かれてなる。
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第2の態様においては、前記スティック防止層が、前記式Aを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルA)を含み、前記シリコーン含有層が、前記式Bを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルB)を含む。そして、前記感熱孔版印刷用マスターが、ロール状に巻かれてなるので、前記シリコーン含有層と、前記スティック防止層とが接触して保管され、前記シリコーン含有層における前記シリコーンオイルBの一部が、前記スティック防止層に転移する。その結果、前記スティック防止層が、カス固着防止効果をも発揮する。
−シリコーン含有層−
前記シリコーン含有層は、前記式Bを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルB)を含む。なお、前記シリコーンオイルBの詳細については、上述した通りである。
前記シリコーン含有層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記スティック防止層の形成方法と同様にして行うことができる。
前記多孔性支持体上の前記シリコーン含有層の乾燥付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜1g/mが好ましい。
前記乾燥付着量が、0.01g/m未満であると、前記スティック防止層への前記シリコーンオイルBのブリード量が不足し、カス固着防止効果が得られ難くなることがあり、1g/mを超えると、前記熱可塑性樹脂フィルム上の前記スティック防止層におけるシリコーンオイルを、前記多孔性支持体側にブリードさせ易くなることがある。
本発明の前記感熱孔版印刷用マスターは、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質を提供し、裏移りの発生が少なく、しかも経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能であり、高品質である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
<多孔性繊維膜の作製>
繊度0.2デニール、繊維長3mmの未延伸ポリエステル繊維(テイジン株式会社製、テピルスTK08PN)40質量部と、繊度1.5デニール、繊維長5mmのポリエステルバインダー繊維(鞘成分:低融点PET、熱溶融温度110℃、芯成分:PET/ユニチカ株式会社製、メルティ4080)60質量部とを混合し、円網抄紙機により多孔性繊維膜を作製した。
得られた多孔性繊維膜の坪量は、8.0g/mであり、厚みは30μmであった。
<多孔性樹脂膜形成用塗布液の調製>
タルク(日本タルク株式会社製、ミクロエースL−G)1質量部を、酢酸エチル30質量部中に撹拌分散した後、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、エスレックKS1)3質量部を溶解した。該溶液にソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ株式会社製、SO−15)0.1質量部、変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF6012)0.1質量部、及びアクリル系ポリマーO/W型エマルション(ジョンソンポリマー株式会社製、Joncryl−711)0.2質量部を撹拌して溶解した。この溶液を撹拌しながらヒドロキシエチルセルロース(HEC)1質量%水溶液(和光純薬工業株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース使用)25質量部を滴下して、油中水型エマルションを調製した。この油中水型エマルションを、多孔性樹脂膜形成用塗布液とした。
(実施例1)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
<スティック防止層形成用塗布液の調製>
下記処方に従って、スティック防止層形成用塗布液を調製した。
・下記式Aを充たすシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422;25℃液粘度=1,100mm/s(1,100cSt)、25℃屈折率=1.454)・・・4質量部
・下記式Bを充たすシリコーンオイル(信越化学工業製、KF6017;25℃液粘度=600mm/s(600cSt)、25℃屈折率=1.42)・・・1質量部
・トルエン・・・95質量部
〔式A〕
y>−0.00003x+1.48
〔式B〕
y<−0.00003x+1.46
ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s(cSt))を表す。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしての2軸延伸ポリエステルフィルム(厚み2μm)上に、グラビアロールを用いて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が、5g/mの多孔性樹脂膜を形成した。
次に、ロールコーターを用いてポリウレタン系無溶剤接着剤を、付着量が0.5g/mとなるように、上記多孔性繊維膜に塗布した。該多孔性繊維膜における接着剤塗布面を、上記多孔性樹脂膜における前記熱可塑性樹脂フィルムとは反対側に位置する面に積層し、ラミネートした後、接着剤をキュア(硬化)させるために、30℃、60%RH環境にて2日間保存した。
続いて、前記スティック防止層形成用塗布液を、前記熱可塑性樹脂フィルム面(前記多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)に、バーコーターを用いて、乾燥後の付着量が、0.05g/mとなるように塗布し、乾燥して、スティック防止層を形成した。
以上により、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、得られた感熱孔版印刷用マスターは、図1Cに示す構造を有する。また、感熱孔版印刷用マスターは、ロール状に巻き取った。
(実施例2)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、スティック防止層形成用塗布液の処方を、下記処方に変えた以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<スティック防止層形成用塗布液の調製>
下記処方に従って、スティック防止層形成用塗布液を調製した。
・前記式Aを充たすシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422;25℃液粘度=1,100mm/s(1,100cSt)、25℃屈折率=1.454)・・・3.4質量部
・前記式Bを充たすシリコーンオイル(信越化学工業製、KF6017;25℃液粘度=600mm/s(600cSt)、25℃屈折率=1.42)・・・1.6質量部
・トルエン・・・95質量部
(実施例3)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、スティック防止層形成用塗布液の処方を、下記処方に変えた以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<スティック防止層形成用塗布液の調製>
下記処方に従って、スティック防止層形成用塗布液を調製した。
・前記式Aを充たすシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422;25℃液粘度=1,100mm/s(1,100cSt)、25℃屈折率=1.454)・・・4.85質量部
・前記式Bを充たすシリコーンオイル(信越化学工業製、KF6017;25℃液粘度=600mm/s(600cSt)、25℃屈折率=1.42)・・・0.15質量部
・トルエン・・・95質量部
(比較例1)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、スティック防止層形成用塗布液の処方を、下記処方に変えた以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<スティック防止層形成用塗布液の調製>
下記処方に従って、スティック防止層形成用塗布液を調製した。
・前記式Aを充たすシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422;25℃液粘度=1,100mm/s(1,100cSt)、25℃屈折率=1.454)・・・4質量部
・前記式Aを充たすシリコーンオイル(信越化学工業製、KF6012;25℃液粘度=1,600mm/s(1,600cSt)、25℃屈折率=1.446)・・・1質量部
・トルエン・・・95質量部
(比較例2)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、スティック防止層形成用塗布液の処方を、下記処方に変えた以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<スティック防止層形成用塗布液の調製>
下記処方に従って、スティック防止層形成用塗布液を調製した。
・前記式Bを充たすシリコーンオイル(信越化学工業製、KF6017;25℃液粘度=600mm/s(600cSt)、25℃屈折率=1.42)・・・5質量部
・トルエン・・・95質量部
(実施例4)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
前記熱可塑性樹脂フィルムとしての2軸延伸ポリエステルフィルム(厚み2μm)上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が5g/mの多孔性樹脂膜を形成した。
<シリコーン含有層の作製>
上記多孔性繊維膜に、前記式Bを充たすシリコーンオイル(信越化学工業製、KF6017;25℃液粘度=600mm/s(600cSt)、25℃屈折率=1.42)の5質量%トルエン溶液を、乾燥後の付着量が0.1g/mとなるようにバーコーターを用いて塗布し、乾燥して、シリコーン含有層を形成した。
次に、前記多孔性繊維膜における前記シリコーン含有層とは反対側に位置する面に、ロールコーターを用いてポリウレタン系無溶剤接着剤を、付着量が0.5g/mとなるように塗布した。該多孔性繊維膜における接着剤塗布面を、上記多孔性樹脂膜における前記熱可塑性樹脂フィルムとは反対側に位置する面に積層し、ラミネートした後、接着剤をキュア(硬化)させるために、30℃、60%RH環境にて2日間保存した。
<スティック防止層形成用塗布液の調製>
下記処方に従って、スティック防止層形成用塗布液を調製した。
・下記式Aを充たすシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422;25℃液粘度=1,100mm/s(1,100cSt)、25℃屈折率=1.454)・・・5質量部
・トルエン・・・95質量部
続いて、得られたスティック防止層形成用塗布液を、前記熱可塑性樹脂フィルム面(前記多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)に、バーコーターを用いて、乾燥後の付着量が、0.05g/mとなるように塗布し、乾燥して、スティック防止層を形成した。
以上により、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、得られた感熱孔版印刷用マスターは、図2Cに示す構造を有する。また、感熱孔版印刷用マスターは、ロール状に巻き取った。
(実施例5)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記熱可塑性樹脂フィルムとしての2軸延伸ポリエステルフィルム上に、前記多孔性樹脂膜を形成することなく、前記多孔性繊維膜を直接積層してラミネートした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、得られた感熱孔版印刷用マスターは、図1Aに示す構造を有する。
(実施例6)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記多孔性樹脂膜上に、前記多孔性繊維膜を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、得られた感熱孔版印刷用マスターは、図1Bに示す構造を有する。
(実施例7)
実施例4において、前記熱可塑性樹脂フィルムとしての2軸延伸ポリエステルフィルム上に、前記多孔性樹脂膜を形成することなく、前記多孔性繊維膜を直接積層してラミネートし、該多孔性繊維膜上に前記シリコーン含有層を形成した以外は、実施例4と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、得られた感熱孔版印刷用マスターは、図2Aに示す構造を有する。
(実施例8)
実施例4において、前記多孔性樹脂膜上に、前記多孔性繊維膜を積層しないで、前記多孔性樹脂膜上に前記シリコーン含有層を形成した以外は、実施例4と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、得られた感熱孔版印刷用マスターは、図2Bに示す構造を有する。
−評価−
次に、得られた実施例1〜8及び比較例1〜2の各感熱孔版印刷用マスターについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、各感熱孔版印刷用マスターは、直径約6cmの紙管にロール状に巻いた状態で、50℃にて3週間保管した後、評価した。
<サーマルヘッドへのカス固着>
各感熱孔版印刷用マスターについて、印刷機(株式会社リコー製、RicohサテリオA450)を用いて10版連続でベタ製版を行った後、光学顕微鏡でサーマルヘッドの表面を観察し、下記基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:サーマルヘッド上にフィルムカスの付着が観られなかった。
△:サーマルヘッド上にフィルムカスの付着は観られるものの、実使用上問題のないレベルである。
×:サーマルヘッド上にフィルムカスの付着が観られ、将来的に穿孔阻害に発展する懸念がある。
<版縮み(スティック防止性)>
各感熱孔版印刷用マスターについて、印刷機(株式会社リコー製、RicohサテリオA450)を用いて10版連続でベタ製版を行った後、10版目の印刷画像長さを、原稿の画像長と比較し、下記基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:原稿の画像長に対する縮みが、0.1%未満である。
△:原稿の画像長に対する縮みが、0.1%以上かつ0.3%未満である。
×:原稿の画像長に対する縮みが、0.3%以上である。
前記表1及び表2中、積層体の構成は、以下の通りである。
*F+T:熱可塑性樹脂フィルム(F)上に多孔性繊維膜(T)を積層したもの
*F+P:熱可塑性樹脂フィルム(F)上に多孔性樹脂膜(P)を積層したもの
*F+P+T:熱可塑性樹脂フィルム(F)上に多孔性樹脂膜(P)及び多孔性繊維膜(T)を、この順に積層したもの
また、シリコーンオイルの属性における「A」は、前記式Aを充たすことを意味し、「B」は、前記式Bを充たすことを意味する。
なお、実施例1〜8及び比較例1〜2で用いた各シリコーンオイルの25℃における液粘度と屈折率との関係を、図3に示す。
表1〜2の結果より、前記式Aを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルA)と前記式Bを充たすシリコーンオイル(前記シリコーンオイルB)を含むスティック防止層とを有する、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第1の態様に相当する実施例1〜3及び5〜6、並びに、前記シリコーンオイルAを含むスティック防止層と前記シリコーンオイルBを含むシリコーン含有層とを有し、ロール状に巻かれてなる、本発明の前記感熱孔版印刷用マスターの第2の態様に相当する実施例4及び7〜8では、サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生が、共に抑制されていることが判った。
実施例1では、スティック防止層における前記シリコーンオイルBの含有量が、20質量%であり、良好なスティック防止性(版縮み防止性)及びカス固着防止性が得られることが判った。
一方、実施例2では、スティック防止層における前記シリコーンオイルBの含有量が高く、前記シリコーンオイルAの含有量が低いため、実施例1に比して、スティック防止性が、若干劣るものの、カス固着防止性については良好な結果が得られた。
また、実施例3では、スティック防止層における前記シリコーンオイルBの含有量が低く、前記シリコーンオイルAの含有量が高いため、実施例1に比して、カス固着防止性が、若干劣るものの、スティック防止性については良好な結果が得られた。
比較例1では、スティック防止層に、前記シリコーンオイルBが含まれておらず、また、前記シリコーン含有層が設けられていないため、カス固着防止性が不充分であることが判った。
比較例2では、スティック防止層に、前記シリコーンオイルAが含まれていないため、スティック防止性が不充分であることが判った。
また、実施例4では、スティック防止層には前記シリコーンオイルBが含まれていないものの、前記シリコーンオイルBを含む前記シリコーン含有層を、前記積層体における前記多孔性支持体側に位置する面に設けたので、ロール状に巻かれて保管された状態にて、前記シリコーン含有層における前記シリコーンオイルBが、前記スティック防止層にブリードし、良好なスティック防止性(版縮み防止性)及びカス固着防止性が得られることが判った。
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質を提供し、裏移りの発生が少なく、しかも経時的に安定して、前記サーマルヘッドへのフィルムのスティック及びカス固着の発生を抑制可能で、高品質であり、感熱孔版印刷用マスターとして好適に用いられる。
図1Aは、本発明の感熱孔版印刷用マスターの第1の態様の一例を示す模式断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性繊維膜を積層した積層体からなり、該積層体における前記熱可塑性樹脂フィルム側に位置する面に、スティック防止層を有するものである。 図1Bは、本発明の感熱孔版印刷用マスターの第1の態様の一例を示す模式断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜を積層した積層体からなり、該積層体における前記熱可塑性樹脂フィルム側に位置する面に、スティック防止層を有するものである。 図1Cは、本発明の感熱孔版印刷用マスターの第1の態様の一例を示す模式断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に積層した積層体からなり、該積層体における前記熱可塑性樹脂フィルム側に位置する面に、スティック防止層を有するものである。 図2Aは、本発明の感熱孔版印刷用マスターの第2の態様の一例を示す模式断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性繊維膜を積層した積層体からなり、該積層体における前記熱可塑性樹脂フィルム側に位置する面にスティック防止層を、前記多孔性繊維膜側に位置する面にシリコーン含有層を、それぞれ有するものである。 図2Bは、本発明の感熱孔版印刷用マスターの第2の態様の一例を示す模式断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜を積層した積層体からなり、該積層体における前記熱可塑性樹脂フィルム側に位置する面にスティック防止層を、前記多孔性樹脂膜側に位置する面にシリコーン含有層を、それぞれ有するものである。 図2Cは、本発明の感熱孔版印刷用マスターの第2の態様の一例を示す模式断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に積層した積層体からなり、該積層体における前記熱可塑性樹脂フィルム側に位置する面にスティック防止層を、前記多孔性繊維膜側に位置する面にシリコーン含有層を、それぞれ有するものである。 図3は、実施例及び比較例で用いたシリコーンオイルの25℃における液粘度と屈折率との関係を示すグラフ図である。
符号の説明
1 熱可塑性樹脂フィルム
2 多孔性繊維膜
3 多孔性樹脂膜
4 積層体
5 スティック防止層
6 シリコーン含有層

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に積層された多孔性支持体とからなる積層体における、前記多孔性支持体とは反対側に位置する面に、下記式Aを充たすシリコーンオイルを含むスティック防止層を有してなり、
    前記スティック防止層が、更に下記式Bを充たすシリコーンオイルを含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。
    y>−0.00003x+1.48・・・式A
    y<−0.00003x+1.46・・・式B
    ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s)を表す。
  2. スティック防止層における式Bを充たすシリコーンオイルの含有量が、式Aを充たすシリコーンオイルと式Bを充たすシリコーンオイルとの総量の5〜30質量%である請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスター。
  3. 熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に積層された多孔性支持体とからなる積層体における、前記多孔性支持体とは反対側に位置する面に、下記式Aを充たすシリコーンオイルを含むスティック防止層を有してなり、
    前記積層体における前記多孔性支持体側に位置する面に、下記式Bを充たすシリコーンオイルを含むシリコーン含有層を更に有してなり、
    ロール状に巻かれてなることを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。
    y>−0.00003x+1.48・・・式A
    y<−0.00003x+1.46・・・式B
    ただし、前記式A及びB中、yは、25℃における屈折率を表し、xは、25℃における動粘度(mm/s)を表す。
  4. 式Aを充たすシリコーンオイルが、アルキル高級アルコールエステル変性シリコーンオイルである請求項1から3のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  5. 式Bを充たすシリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルである請求項1から4のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  6. 多孔性支持体が、多孔性繊維膜である請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  7. 多孔性支持体が、多孔性樹脂膜である請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  8. 多孔性支持体が、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなる請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  9. 多孔性樹脂膜が、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し乾燥してなる請求項7から8のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
  10. 多孔性樹脂膜が、溶解した合成樹脂を含む油中水型乳化液を、熱可塑性樹脂フィルム上に一定厚みで塗布し乾燥させることにより形成された請求項9に記載の感熱孔版印刷用マスター。
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