JP2008269969A - 燃料電池、燃料電池用接合体及び燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発生したラジカルによる燃料電池性能の低下を抑制し、その効果の持続時間を向上することができる燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜を挟んで対向するように触媒層が形成された燃料電池用接合体を含む燃料電池において、触媒層のうち少なくとも一方が、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、電解質膜側から分解触媒含有触媒層の表面側へラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるようにラジカル分解触媒が含まれていることにより、発生したラジカルによる燃料電池性能の低下を抑制し、その効果の持続時間を向上することができ、高効率の燃料電池を得ることができる。
【選択図】図1
【解決手段】電解質膜を挟んで対向するように触媒層が形成された燃料電池用接合体を含む燃料電池において、触媒層のうち少なくとも一方が、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、電解質膜側から分解触媒含有触媒層の表面側へラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるようにラジカル分解触媒が含まれていることにより、発生したラジカルによる燃料電池性能の低下を抑制し、その効果の持続時間を向上することができ、高効率の燃料電池を得ることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池、燃料電池用接合体及び燃料電池の製造方法に関する。
環境問題や資源問題への対策の一つとして、酸素や空気等の酸化性ガスと、水素やメタン等の還元性ガス(燃料ガス)あるいはメタノール等の液体燃料等とを原料として電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する燃料電池が注目されている。燃料電池は、電解質膜の一方の面に燃料極(アノード触媒層)と、もう一方の面に空気極(カソード触媒層)とを電解質膜を挟んで対向するように設け、電解質膜を挟持した各触媒層の外側に拡散層をさらに設け、これらを原料供給用の通路を設けたセパレータで挟んで電池が構成され、各触媒層に水素、酸素等の原料を供給して発電する。
燃料電池の発電時には、燃料極に供給する原料を水素ガス、空気極に供給する原料を空気とした場合、燃料極において、水素ガスから水素イオンと電子とが発生する。電子は外部端子から外部回路を通じて空気極に到達する。空気極において、供給される空気中の酸素と、電解質膜を通過した水素イオンと、外部回路を通じて空気極に到達した電子により、水が生成する。このように燃料極及び空気極において化学反応が起こり、電荷が発生して電池として機能することになる。この燃料電池は、発電に使用される原料のガスや液体燃料が豊富に存在すること、また、その発電原理より排出される物質が水であること等より、クリーンなエネルギー源として様々な検討がされている。
燃料電池の触媒層は、通常、白金(Pt)等を担持した触媒担持カーボン等の触媒担持粒子と、固体高分子電解質等の樹脂とを含んで構成される。
このような燃料電池において、発電中に過酸化水素等の発生に起因するラジカルが発生し、電解質膜に穴が空き、膜が劣化することがある。電解質膜が劣化すると燃料ガスのクロスリークのため直接燃焼が起こり、燃費が悪化したり、絶縁できなくなることにより発電ができなくなったりすることがあった。
そこで、例えば特許文献1には、電解質膜と該電解質膜の両側に配設されるアノード電極層及びカソード電極層とを備え、電解質膜、アノード電極層、カソード電極層、電解質膜とアノード電極層との間、及び、電解質膜とカソード電極層との間、からなる領域の少なくともいずれか一の部位に、過酸化水素分解性能を有する金属のイオンが予め備えられている燃料電池が記載されている。
また、特許文献2には、高分子電解質膜と、該高分子電解質膜の両面にそれぞれアノードとカソードとを具備する固体高分子形燃料電池であって、カソードが、白金または白金系合金を含む触媒を含む第1触媒層と、白金または白金系合金および金属酸化物を含む触媒を含む第2触媒層とを重ねて形成された電極であり、第2触媒層が過酸化物を接触分解する金属酸化物触媒を含む固体高分子形燃料電池が記載されている。
また、特許文献3には、空気極側は電解質膜に触媒層及び拡散層を積層してなり、触媒層は電解質膜側の第1の触媒層と拡散層側の第2の触媒層とを備え、第1の触媒層は第2の触媒層よりも気体移動抵抗が大きい燃料電池が記載されている。また、特許文献4には、第1の触媒層は第2の触媒層よりも触媒濃度が低い燃料電池が記載されている。特許文献3,4のような構成により電解質膜を透過した水素に起因するラジカルによる電解質高分子材料の分解を抑制することができるとしている。
しかし、特許文献1,2のような、過酸化物を分解する過酸化水素分解触媒は親水性の傾向が高いため、過酸化水素分解触媒を添加していない場合に比べて、生成水により酸素や水素等の原料の供給が妨げられてしまうフラッディング現象による燃料電池性能の低下が起こりやすい。また、過酸化水素分解触媒のほとんどが早期に触媒層から溶出してしまい、分解効果が失われる。効果を持続させるために、過酸化水素分解触媒の含有量を増やすと親水性が高くなり、フラッディング現象による燃料電池性能の低下がより起こりやすくなってしまう。
また、特許文献3,4の方法では、ラジカルによる電解質材料の分解を十分に抑制することができない。
本発明は、発生したラジカルによる燃料電池性能の低下を抑制し、その効果の持続時間を向上することができる燃料電池、燃料電池用接合体及びそのような燃料電池の製造方法である。
本発明は、電解質膜を挟んで対向するように触媒層としてカソード触媒層及びアノード触媒層が形成された燃料電池用接合体を含む燃料電池であって、前記触媒層のうち少なくとも一方は、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記ラジカル分解触媒が含まれている。
また、前記燃料電池において、前記分解触媒含有触媒層が複数の層から構成され、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記複数の層が配置されていることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記複数の層の各層に含まれる前記ラジカル分解触媒の含有量は実質的に同じであることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記電解質膜側から前記触媒層の表面側へ空隙率が高くなるように前記複数の層が配置されていることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記分解触媒含有触媒層の表面に前記分解触媒含有触媒層よりも空隙率が高い高空隙率触媒層が配置されていることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記カソード触媒層が前記ラジカル分解触媒を含有することが好ましい。
また、本発明は、電解質膜を挟んで対向するように触媒層としてカソード触媒層及びアノード触媒層が形成された燃料電池用接合体であって、前記触媒層のうち少なくとも一方は、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記ラジカル分解触媒が含まれている。
また、前記燃料電池用接合体において、前記分解触媒含有触媒層が複数の層から構成され、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記複数の層が配置されていることが好ましい。
また、本発明は、電解質膜を挟んで対向するように触媒層としてカソード触媒層及びアノード触媒層が形成された燃料電池用接合体を含む燃料電池の製造方法であって、前記電解質膜の少なくとも一方の面に触媒と第1ラジカル分解触媒とを含有する第1触媒層を形成する第1触媒層形成工程と、前記第1触媒層の表面に触媒と前記第1ラジカル分解触媒よりもイオン化傾向の小さい第2ラジカル分解触媒とを含む第2触媒層を形成する第2触媒層形成工程と、を含む。
また、前記燃料電池の製造方法において、前記第1触媒層形成工程が転写法により、前記第2触媒層形成工程がスプレー法により行われることが好ましい。
本発明では、電解質膜を挟んで対向するように触媒層が形成された燃料電池用接合体及びそのような燃料電池用接合体を含む燃料電池において、触媒層のうち少なくとも一方が、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、電解質膜側から分解触媒含有触媒層の表面側へラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるようにラジカル分解触媒が含まれていることにより、発生したラジカルによる燃料電池性能の低下を抑制し、その効果の持続時間を向上することができ、高効率の燃料電池を得ることができる。
また、本発明では、そのような燃料電池用接合体及び燃料電池を製造することができる。
本発明の実施の形態について以下説明する。
<燃料電池用接合体及び燃料電池>
本実施形態に係る燃料電池用接合体及び燃料電池について説明する。本実施形態に係る燃料電池用接合体は、燃料極(アノード触媒層)と、電解質層と、空気極(カソード触媒層)とを有する。また、本実施形態に係る燃料電池は、この燃料電池用接合体を有する。
本実施形態に係る燃料電池用接合体及び燃料電池について説明する。本実施形態に係る燃料電池用接合体は、燃料極(アノード触媒層)と、電解質層と、空気極(カソード触媒層)とを有する。また、本実施形態に係る燃料電池は、この燃料電池用接合体を有する。
図1に、本実施形態に係る燃料電池の構成の一例の概略断面図を示す。燃料電池1は、電解質膜10と、燃料極(アノード触媒層)12と、空気極(カソード触媒層)14と、拡散層16と、セパレータ18とにより構成される。空気極14は、第1カソード触媒層14aと第2カソード触媒層14bとを備える。
図1に示すように、燃料電池1は、電解質膜10の一方の表面に燃料極12が、もう一方の表面に空気極14が電解質膜10を挟んでそれぞれ対向するように形成された燃料電池用接合体である膜電極複合体20(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、膜電極複合体20を挟んで両面に設けられた拡散層16と、拡散層16の両外側を挟持するセパレータ18とを備える。セパレータ18には、燃料極12及び空気極14にそれぞれ水素ガス、空気等の原料を供給するための原料供給路22,24が設けられている。
燃料電池1において、例えば、燃料極12に供給する原料を水素ガス、空気極14に供給する原料を空気として運転した場合、燃料極12において、
2H2 → 4H++4e−
で示される反応式(水素酸化反応)を経て、水素ガス(H2)から水素イオン(H+)と電子(e−)とが発生する。電子(e−)は拡散層16から外部回路を通り、拡散層16から空気極14に到達する。空気極14において、供給される空気中の酸素(O2)と、電解質膜10を通過した水素イオン(H+)と、外部回路を通じて空気極14に到達した電子(e−)により、
4H++O2+4e− → 2H2O
で示される反応式(酸素還元反応)を経て、水が生成する。このように燃料極12及び空気極14において化学反応が起こり、電荷が発生して電池として機能することになる。そして、一連の反応において排出される成分は水であるので、クリーンな電池が構成されることになる。
2H2 → 4H++4e−
で示される反応式(水素酸化反応)を経て、水素ガス(H2)から水素イオン(H+)と電子(e−)とが発生する。電子(e−)は拡散層16から外部回路を通り、拡散層16から空気極14に到達する。空気極14において、供給される空気中の酸素(O2)と、電解質膜10を通過した水素イオン(H+)と、外部回路を通じて空気極14に到達した電子(e−)により、
4H++O2+4e− → 2H2O
で示される反応式(酸素還元反応)を経て、水が生成する。このように燃料極12及び空気極14において化学反応が起こり、電荷が発生して電池として機能することになる。そして、一連の反応において排出される成分は水であるので、クリーンな電池が構成されることになる。
本実施形態において、空気極14の第1カソード触媒層14a及び第2カソード触媒層14bは、それぞれ触媒、電解質及びラジカル分解触媒を含有する分解触媒含有触媒層である。そして、電解質膜10側の第1カソード触媒層14aから分解触媒含有触媒層の表面側の第2カソード触媒層14bへラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるようにラジカル分解触媒が含まれている。本構成では、電解質膜10側の第1カソード触媒層14aに含まれるラジカル分解触媒よりも分解触媒含有触媒層の表面側の第2カソード触媒層14bに含まれるラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さい。
このように、空気極14がラジカル分解触媒を含有し、電解質膜10側から空気極14の表面側へラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるようにラジカル分解触媒を配置すると、発電時にまず電解質膜10に近い第1カソード触媒層14aに含まれるイオン化傾向のより大きいラジカル分解触媒がイオンとなり溶出して早期に電解質膜10に到達し、発電により発生したラジカルを分解する。第1カソード触媒層14aに含まれるイオン化傾向のより大きいラジカル分解触媒が消費されると、次に、第2カソード触媒層14bに含まれるイオン化傾向のより小さいラジカル分解触媒がイオンとなり溶出して電解質膜10に到達し、発電により発生したラジカルを分解する。これにより、時間差を持ってラジカル分解触媒が触媒層から溶出し、早期に分解効果が失われることなく、その効果を持続させることができる。また、過酸化水素分解触媒の含有量を増やす必要もなく、フラッディング現象による燃料電池性能の低下を抑制することができる。したがって、発生したラジカルによる燃料電池性能の低下を抑制し、その効果の持続時間を向上することができ、高効率の燃料電池を得ることができる。
ラジカル分解触媒は燃料極12及び空気極14の少なくともいずれかに含まれればよい。電解質膜10の劣化を防止する観点からは、燃料極12及び空気極14の両方に含まれても良い。しかし、アノード側である燃料極12にラジカル分解触媒が含まれると、発電停止時にカソード側からアノード側へ生成水等が逆拡散したときに、アノード側の親水性傾向がより高くなり、再起動時にアノード側でフラッディング現象がより顕著になってしまうことがある。また、発電中にラジカルが主に発生するのは、カソード側である。したがって、ラジカル分解触媒は図1の構成のようにカソード側である空気極14に含まれ、アノード側である燃料極12には含まれないことが好ましい。
ラジカル分解触媒としては、ラジカルを分解することができるものであれば良く特に制限はないが、コバルト等の金属、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロム、酸化イリジウム、酸化鉛、酸化鉄、酸化バナジウム等の金属酸化物等を用いることができる。このうち、第1カソード触媒層14aに含まれるイオン化傾向のより大きいラジカル分解触媒としては、例えば酸化セリウム等を、第2カソード触媒層14bに含まれるイオン化傾向のより小さいラジカル分解触媒としては、例えばコバルト金属等を用いることができる。具体的には、イオン化傾向のより大きいラジカル分解触媒として酸化セリウム、イオン化傾向のより小さいラジカル分解触媒としてコバルト金属を用いることができる。
用いるラジカル分解触媒のイオン化傾向の差は大きい方が好ましい。イオン化傾向の差が大きい方が時間差を持ってラジカル分解触媒が触媒層から溶出し、早期に分解効果が失われることなく、より効果を持続させることができる。
なお、一般に、イオン化傾向の大きさは以下の順序である。
Li>K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Cr(III)>Fe(II)>Cd>Co(II)>Ni>Sn(II)>Pb>Fe(III)>(H)>Cu(II)>Hg(I)>Ag>Pd>Pt>Au
Li>K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Cr(III)>Fe(II)>Cd>Co(II)>Ni>Sn(II)>Pb>Fe(III)>(H)>Cu(II)>Hg(I)>Ag>Pd>Pt>Au
ラジカル分解触媒の粒径は特に制限はないが、通常、一次粒径で5μm以下、二次粒径で15μm以下である。ラジカル分解触媒の粒度分布が大きい場合には、ふるい等により分級することが好ましい。
第1カソード触媒層14a及び第2カソード触媒層14bの各層中のラジカル分解触媒の含有量は、各層に含まれる触媒のカーボンの量に対して、5重量%〜20重量%の範囲が好ましい。ラジカル分解触媒の含有量が、触媒層の全カーボンの量に対して5重量%未満であると、ラジカル発生抑制効果が低減することがあり、20重量%を超えると、フラッディング現象が発生しやすくなる。
また、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層の各層に含まれるラジカル分解触媒の含有量は実質的に同じであることが好ましい。例えば図1の構成では、第1カソード触媒層14aと第2カソード触媒層14bとにそれぞれ含まれるラジカル分解触媒の含有量は実質的に同じであることが好ましい。これにより、ラジカル分解触媒が溶出した後の触媒層の性能のばらつき発生を抑制することができる。
空気極14の膜厚、すなわち分解触媒含有触媒層の膜厚は、合計で5μm〜15μmの範囲が好ましい。
また、電解質膜10側から分解触媒含有触媒層の表面側へ空隙率が高くなるように第1カソード触媒層14a及び第2カソード触媒層14bが配置されていることが好ましい。すなわち、電解質膜10側の第1カソード触媒層14aに比べて、分解触媒含有触媒層の表面側の第2カソード触媒層14bの空隙率が高いことが好ましい。これにより、触媒層において発電時等に発生する生成水等の排水性を高め、フラッディング現象の発生を抑制することができる。
なお、図1の例では、分解触媒含有触媒層は2層で構成されており、3層以上で構成されても良いが、通常は2層で十分である。また、本構成では、分解触媒含有触媒層が複数の層から構成されているが、分解触媒含有触媒層が単層であり、その層中でラジカル分解触媒が電解質膜10側から分解触媒含有触媒層の表面側へラジカル分解触媒のイオン化傾向が段階的あるいは傾斜的に小さくなるように分布されていても良い。
次に、図2に、本実施形態に係る燃料電池の構成の他の例の断面図を示す。燃料電池2は、電解質膜10と、燃料極(アノード触媒層)12と、空気極(カソード触媒層)14と、拡散層16と、セパレータ18とにより構成される。空気極14は、第1カソード触媒層14aと第2カソード触媒層14bと第3カソード触媒層14cとを備える。
図2の空気極14の第1カソード触媒層14a及び第2カソード触媒層14bは、それぞれ触媒、電解質及びラジカル分解触媒を含有する分解触媒含有触媒層である。また、第3カソード触媒層14cは、触媒及び電解質を含有する触媒層であって、分解触媒含有触媒層よりも空隙率が高い高空隙率触媒層であり、ラジカル分解触媒を含まない。そして、電解質膜10側の第1カソード触媒層14aから分解触媒含有触媒層の表面側の第2カソード触媒層14bへラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるようにラジカル分解触媒が含まれている。本構成でも、電解質膜10側の第1カソード触媒層14aに含まれるラジカル分解触媒よりも分解触媒含有触媒層の表面側の第2カソード触媒層14bに含まれるラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さい。また、第2カソード触媒層14bの表面側には第3カソード触媒層14cが形成され、第3カソード触媒層14cの空隙率は、分解触媒含有触媒層である第1カソード触媒層14a及び第2カソード触媒層14bよりも空隙率が高く、好ましくは、第1カソード触媒層14a、第2カソード触媒層14b、第3カソード触媒層14cの順に層の空隙率が高くなっている。高空隙率触媒層は1層でも2層以上でもかまわない。また、図2の例では、分解触媒含有触媒層は2層で構成されており、3層以上で構成されても良いが、通常は2層で十分である。
これにより、触媒層において発電時等に発生する生成水等の排水性をより高め、フラッディング現象の発生をより抑制することができる。また、触媒層の表面側である第3カソード触媒層14cがラジカル分解触媒を含まないことにより、排水性をより高めることができるという利点がある。
空気極14の膜厚は、ラジカル分解触媒を含まない層を含めて合計で200〜300μmの範囲が好ましい。
分解触媒含有触媒層及び触媒層に含まれる触媒としては、白金(Pt)等を担持したカーボン、白金(Pt)等をルテニウム(Ru)等の他の金属と共に担持したカーボン、PtFe・PtCo等を用いることができる。
分解触媒含有触媒層及び触媒層には通常固体高分子電解質が含まれる。固体高分子電解質としては、プロトン(H+)等のイオン伝導性の高い材料であれば特に制限はなく、例えば、パーフルオロスルホン酸系等の固体高分子電解質が用いられる。具体的には、ジャパンゴアテックス(株)のゴアセレクト(Goreselect、登録商標)、デュポン社(Du Pont社)のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(Aciplex、登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(Flemion、登録商標)等のパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質を使用することができる。
電解質膜10としては、プロトン(H+)等のイオン伝導性の高い材料であれば特に制限はなく、パーフルオロスルホン酸系や炭化水素系等の固体高分子電解質膜が用いられる。具体的には、ジャパンゴアテックス(株)のゴアセレクト(Goreselect、登録商標)、デュポン社(Du Pont社)のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(Aciplex、登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(Flemion、登録商標)等のパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質膜を使用することができる。電解質膜10の膜厚は例えば、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜50μmの範囲である。
また、電解質膜10には、必要に応じて補強膜として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン、ポリイミド等の、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の延伸多孔質膜を設けてもよい。この場合、溶液キャスト法等の方法により補強膜の表裏面に電解質膜10を形成する。補強膜の表裏面に電解質膜10が形成された3層構造であってもよいが、5層構造、あるいはそれ以上の層構造であってもよい。補強膜の膜厚は通常、5μm〜100μmである。
拡散層16としては、導電性が高く、燃料及び空気等の原料の拡散性が高い材料であれば特に制限はないが、多孔質導電体材料であることが好ましい。導電性の高い材料としては、例えば、金属板、金属フィルム、導電性高分子、カーボン材料等が挙げられ、カーボンクロス、カーボンペーパ、ガラス状カーボン等のカーボン材料が好ましく、カーボンクロス、カーボンペーパ等の多孔質カーボン材料であることがより好ましい。拡散層16の膜厚は例えば、50μm〜1000μm、好ましくは100μm〜600μmの範囲である。
また、拡散層16は、拡散層16の撥水性の向上のために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂と、電子伝導性を有する、例えばカーボンブラック等との混合溶液である撥水ペーストにより撥水処理がされてもよい。
本実施形態において、電解質膜10及び拡散層16のうち少なくともいずれかにラジカル分解触媒を含有させても良い。
セパレータ18は、耐食処理が施された金属板または焼成カーボン等のカーボン系材料等で構成される。セパレータ18には、燃料極12及び空気極14にそれぞれ水素ガス、空気等の原料を供給するための原料供給路22,24が設けられている。
このようにして製造された燃料電池1において、燃料極12側の拡散層16と空気極14側の拡散層16とを外部回路に電気的に接続し、燃料極12及び空気極14にそれぞれ原料を供給して運転すれば、電池として機能させることができる。
燃料極12側に供給する原料としては、水素やメタン等の還元性ガス(燃料ガス)あるいはメタノール等の液体燃料等が挙げられる。空気極14側に供給する原料としては、酸素や空気等の酸化性ガス等が挙げられる。
<燃料電池用接合体及び燃料電池の製造方法>
本実施形態に係る燃料電池用接合体、燃料電池は、電解質膜の少なくとも一方の面に触媒と第1ラジカル分解触媒とを含有する第1触媒層を形成する第1触媒層形成工程と、第1触媒層の表面に触媒と第1ラジカル分解触媒よりもイオン化傾向の小さい第2ラジカル分解触媒とを含む第2触媒層を形成する第2触媒層形成工程と、を含む方法により製造されることが好ましい。
本実施形態に係る燃料電池用接合体、燃料電池は、電解質膜の少なくとも一方の面に触媒と第1ラジカル分解触媒とを含有する第1触媒層を形成する第1触媒層形成工程と、第1触媒層の表面に触媒と第1ラジカル分解触媒よりもイオン化傾向の小さい第2ラジカル分解触媒とを含む第2触媒層を形成する第2触媒層形成工程と、を含む方法により製造されることが好ましい。
例えば、触媒粒子と固体高分子電解質と第1ラジカル分解触媒と溶媒とを混合、分散してスラリー(インク)を作製する。同様にして、触媒粒子と固体高分子電解質と第1ラジカル分解触媒よりもイオン化傾向の小さい第2ラジカル分解触媒と溶媒とを混合、分散してスラリー(インク)を作製する(スラリー作製工程)。
次に、電解質膜の少なくとも一方の面に第1ラジカル分解触媒を含むスラリーを用いて、フィルム上に形成した触媒層を電解質膜上に転写する転写法、スプレーによりスラリーを吹き付けて湿式塗布するスプレー法等の公知の方法を用いて第1触媒層を形成する(第1触媒層形成工程)。さらに、第1触媒層の表面に第2ラジカル分解触媒を含むスラリーを用いて、転写法、スプレー法等の公知の方法を用いて第2触媒層を形成する(第2触媒層形成工程)。その後、必要に応じて第2触媒層の表面に第1触媒層及び第2触媒層よりも空隙率が高い高空隙率触媒層を形成しても良い(高空隙率触媒層形成工程)。
ここで、電解質膜10側の第1カソード触媒層14aに比べて、分解触媒含有触媒層の表面側の第2カソード触媒層14bの空隙率を高くするために、適切な触媒層の形成方法により空隙率を調整すればよいが、第1触媒層形成工程を転写法により、第2触媒層形成工程をスプレー法により行うことが好ましい。また、第1触媒層形成工程及び第2触媒層形成工程を転写法によって、高空隙率触媒層形成工程をスプレー法によって行ってもよい。また、空隙率の調整を造孔剤を利用して行ってもよい。
また、分解触媒含有触媒層が単層であり、その層中でラジカル分解触媒が電解質膜10側から分解触媒含有触媒層の表面側へラジカル分解触媒のイオン化傾向が段階的あるいは傾斜的に小さくなるように分布させるために、例えば、触媒粒子と固体高分子電解質と第1ラジカル分解触媒と第2ラジカル分解触媒と溶媒とを混合、分散してスラリーを作製し、湿式塗布のような公知の方法により成膜した後、表面を加熱乾燥させ、ラジカル分解触媒を拡散により移動させて、段階的あるいは傾斜的にイオン化傾向が小さくなるように分布させても良い。
分解触媒含有触媒層の形成後あるいは分解触媒含有触媒層の形成に先立って、もう一方の面に触媒層を形成し、もしくはもう一方の面に同様にして分解触媒含有触媒層を形成し、以降、公知の方法に従い、拡散層16及びセパレータ18を形成し、両側の拡散層16を外部回路に電気的に接続し、セルを形成する。
本実施形態に係る燃料電池としては、図1,2のような平板状に限らず、チューブ状等であってもよい。また、本実施形態に係る燃料電池は、1つの燃料電池(単セル)を複数個集合させて、直列に接続することにより、必要とする電流、電圧を得ることができる。また、1つの燃料電池(単セル)を複数個集合させて、並列に接続してもよい。
本実施形態に係る燃料電池は、例えば、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源、自動車用電源、家庭用電源等として用いることができる。
1,2 燃料電池、10 電解質膜、12 燃料極(アノード触媒層)、14 空気極(カソード触媒層)、14a 第1カソード触媒層、14b 第2カソード触媒層、14c 第3カソード触媒層、16 拡散層、18 セパレータ、20 膜電極複合体(MEA)、22,24 原料供給路。
Claims (10)
- 電解質膜を挟んで対向するように触媒層としてカソード触媒層及びアノード触媒層が形成された燃料電池用接合体を含む燃料電池であって、
前記触媒層のうち少なくとも一方は、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記ラジカル分解触媒が含まれていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1に記載の燃料電池であって、
前記分解触媒含有触媒層が複数の層から構成され、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記複数の層が配置されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項2に記載の燃料電池であって、
前記複数の層の各層に含まれる前記ラジカル分解触媒の含有量は実質的に同じであることを特徴とする燃料電池。 - 請求項2に記載の燃料電池であって、
前記電解質膜側から前記触媒層の表面側へ空隙率が高くなるように前記複数の層が配置されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項4に記載の燃料電池であって、
前記分解触媒含有触媒層の表面に前記分解触媒含有触媒層よりも空隙率が高い高空隙率触媒層が配置されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1〜5に記載の燃料電池であって、
前記カソード触媒層が前記ラジカル分解触媒を含有することを特徴とする燃料電池。 - 電解質膜を挟んで対向するように触媒層としてカソード触媒層及びアノード触媒層が形成された燃料電池用接合体であって、
前記触媒層のうち少なくとも一方は、ラジカル分解触媒を含む分解触媒含有触媒層を含有し、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記ラジカル分解触媒が含まれていることを特徴とする燃料電池用接合体。 - 請求項7に記載の燃料電池用接合体であって、
前記分解触媒含有触媒層が複数の層から構成され、前記電解質膜側から前記分解触媒含有触媒層の表面側へ前記ラジカル分解触媒のイオン化傾向が小さくなるように前記複数の層が配置されていることを特徴とする燃料電池用接合体。 - 電解質膜を挟んで対向するように触媒層としてカソード触媒層及びアノード触媒層が形成された燃料電池用接合体を含む燃料電池の製造方法であって、
前記電解質膜の少なくとも一方の面に触媒と第1ラジカル分解触媒とを含有する第1触媒層を形成する第1触媒層形成工程と、
前記第1触媒層の表面に触媒と前記第1ラジカル分解触媒よりもイオン化傾向の小さい第2ラジカル分解触媒とを含む第2触媒層を形成する第2触媒層形成工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。 - 請求項9に記載の燃料電池の製造方法であって、
前記第1触媒層形成工程が転写法により、前記第2触媒層形成工程がスプレー法により行われることを特徴とする燃料電池の製造方法。
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JP2007111777A JP2008269969A (ja) | 2007-04-20 | 2007-04-20 | 燃料電池、燃料電池用接合体及び燃料電池の製造方法 |
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