JP2008267859A - 圧電効果の測定方法、圧電効果の測定装置、圧電体素子、及び流体噴射ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】誤差を低減して、電場と垂直方向の圧電効果を測定できる圧電効果の測定方法と、圧電効果の測定装置とを提供すること。
【解決手段】圧電体層11と、圧電体層11を挟持する上電極12及び下電極13とを備えた圧電体素子10の圧電効果を測定する方法であって、一方の端部は固定され、他方の端部に探針を有するカンチレバー20と、カンチレバー20の変位を検出する測定系30とを備えた測定装置を用い、カンチレバー20の探針を上電極12上に形成された凹部又は突起に係止した状態で上電極12と下電極13との間に電圧を印加し、測定系30によりカンチレバー20の変位を測定することを特徴とする圧電効果の測定方法とした。
【選択図】図1
【解決手段】圧電体層11と、圧電体層11を挟持する上電極12及び下電極13とを備えた圧電体素子10の圧電効果を測定する方法であって、一方の端部は固定され、他方の端部に探針を有するカンチレバー20と、カンチレバー20の変位を検出する測定系30とを備えた測定装置を用い、カンチレバー20の探針を上電極12上に形成された凹部又は突起に係止した状態で上電極12と下電極13との間に電圧を印加し、測定系30によりカンチレバー20の変位を測定することを特徴とする圧電効果の測定方法とした。
【選択図】図1
Description
本発明は、圧電効果の測定方法、圧電効果の測定装置、圧電体素子、及び流体噴射ヘッドに関する。
圧電効果の測定には原子間力顕微鏡(以下AFMと略記する)が用いられている。測定方法としては、カンチレバーの探針を圧電体素子の電極に接触させた状態で、両電極間に電場を与えて圧電体層の変位を測定するコンタクトモードが広く用いられている。(非特許文献1)
Japanese Journal of Applied Physics, 第41巻、6735頁(2002年)
Japanese Journal of Applied Physics, 第41巻、6735頁(2002年)
従来のAFMでは、両電極間の電場方向の変位の測定には有効であったが、両電極の電場と垂直方向(電極面方向)の変位の測定には、誤差が大きく実用的に利用することができなかった。
本発明は、誤差を低減して、電場と垂直方向の圧電効果を測定できる圧電効果の測定方法と、圧電効果の測定装置とを提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を特徴とする圧電効果の測定方法、圧電効果の測定装置、圧電体素子、及び流体噴射ヘッドである。
圧電体層と、前記圧電体層を挟持する第1の電極及び第2の電極とを備えた圧電体素子の圧電効果を測定する方法であって、一方の端部は固定され、他方の端部に探針を有するカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を検出する測定系とを備えた測定装置を用い、前記カンチレバーの探針を前記第1の電極上に形成された凹部又は突起に係止した状態で前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加し、前記測定系により前記カンチレバーの変位を測定することを特徴とする圧電効果の測定方法である。この方法によれば、
前記凹部又は前記突起により、圧電効果の測定中、前記カンチレバーが前記第1の電極上に固定されて滑らないので、変位量を正確に測定することができ、誤差を低減して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる。
前記凹部又は前記突起により、圧電効果の測定中、前記カンチレバーが前記第1の電極上に固定されて滑らないので、変位量を正確に測定することができ、誤差を低減して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる。
前記凹部又は前記突起が、前記第1の電極上に形成された溝又は突条であることが好ましい。この方法によれば、前記カンチレバーの前記探針を確実に係止できるので、前記探針のすべりによる誤差の発生を抑え、正確に測定できるようになる。
複数の前記凹部又は前記突起が、前記第1の電極上に略直線状に配列されていることが好ましい。この方法によれば、一軸方向に複数箇所の変位を測定できるので、圧電定数を容易に導出できる。
前記溝又は前記突条の前記延在方向と前記配列方向とが直交することが好ましい。この方法によれば、すべての前記溝又は前記突条の延在方向の側面は、同じ方向からの圧電効果を受けるので、より誤差を低減して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる。
圧電体層と、前記圧電体層を挟持する第1の電極及び第2の電極とを備えた圧電体素子の圧電効果を測定する装置であって、一方の端部は固定され、他方の端部に探針を有するカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を検出する測定系とを有し、前記探針の先端部が、前記探針の先端側から見て略矩形状に形成されていることを特徴とする圧電効果の測定装置である。
従来、電場と垂直方向の圧電効果を測定するためには、測定中に前記探針が前記第1の電極上で固定されなければならないので、前記探針の先端部は鋭利な形状に加工されていた。前記探針の先端部がこのような形状であると、前記探針の先端部の表面積が小さいため、前記圧電体素子が持つ熱的揺らぎや分子構造による影響を受けやすい。そのため、測定結果に大きな誤差が生じ、実用的な測定結果を得ることができなかった。また、このような形状の前記探針の先端部は破損しやすかった。
そこで、本発明の構成を備えると、圧電効果の測定中、前記カンチレバーが前記第1の電極上に固定されて滑らないので、変位量を正確に測定することができ、誤差を低減して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる測定装置とすることができる。また、前記探針の先端部が、前記探針の先端側から見て略矩形状に形成されることで、前記探針の先端部の表面積を大きくできるので、圧電効果の測定中における前記探針の破損を抑えた測定装置とすることができる。
前記探針の先端部は、前記矩形の長手方向に4μm以上の長さを有していることが好ましい。この構成を備えることで、前記先端部と前記圧電体素子との接触面積を増大させることができる。
これにより、測定中前記カンチレバーが前記第1の電極上で固定させ、滑らないようにできるので、変位量を正確に測定することができ、誤差を低減して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる測定装置とすることができる。また、前記探針の先端部が、前記探針の先端側から見て略矩形状に形成されることで、前記探針の先端部の表面積を大きくできるので、圧電効果の測定中における前記探針の破損を抑えた測定装置とすることができる。
圧電体層と、前記圧電体層を挟持する第1の電極及び第2の電極とを備えた圧電体素子であって、前記第1の電極の前記圧電体層と反対側の面に配列された複数の凹部又は突起を有することを特徴とする圧電体素子である。この構成を備えることで、圧電効果の測定装置のカンチレバーを、前記凹部又は前記突起に係止して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を測定できるので、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる圧電体素子とすることができる。
前記凹部又は前記突起が、前記第1の電極上に形成された溝又は突条であることが好ましい。この構成を備えることで、前記溝又は前記突条の側壁で圧電効果を受けることができるので、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる圧電体素子とすることができる。
前記溝又は前記突条の前記延在方向と前記配列方向とが直交することが好ましい。この構成を備えることで、すべての前記溝又は前記突条の延在方向の側面は、同じ方向からの圧電効果を受けるので、より誤差を低減して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電場と垂直方向の圧電効果を実用的に測定できる圧電体素子とすることができる。
本発明の圧電体素子を備えた流体噴射ヘッドである。この圧電体素子を前記流体噴射ヘッドの回路基板に備えることで、複数の位置で圧電効果を測定して、回路基板を選別することができるので、より製品歩留りを向上させて流体噴射ヘッドを製造することができる。
以下に、本発明におけるAFM(圧電効果の測定装置)1について、図面を用いながら説明する。図1は本発明の実施形態に係るAFM1の構成図である。AFM1は、圧電体素子設置台19、カンチレバー20、測定系30を備えて構成されている。測定系30は、交流電源31、レーザー光源32、検出器33、検出回路34、ロックインアンプ35、及び解析回路36を有している。
カンチレバー20は、カンチレバー設置台18に設置されている。カンチレバー設置台18は、カンチレバー20を圧電体素子10上に設置するときに位置を微調整できるようになっている。
図2は、(a)本実施形態に係るカンチレバー20の短手方向(Y軸方向)視の断面図、(b)長手方向(X軸方向)視の側面図、及び(c)探針22の先端側から(Z軸方向)見た平面図である。
カンチレバー20は、レバー部21、及び探針部22を有している。レバー部21の端部21aはカンチレバー設置台18に固定されている。一方、固定されていない端部21bの下面には探針22が形成されている(図2(a))。
カンチレバー20の探針22は、側面視略対称な形状に形成されている。短手方向(Y軸方向)視では、探針22の幅は先端に向かって細くなっている。また同時に、探針22の先端部23の幅は4μm以上になるように形成されている(図2(a))。長手方向(X軸方向)視では、同じく先端に向かって幅が細くなっている。探針22の先端部23の幅は、短手方向(Y軸方向)視の幅よりも細くなるように形成されている(図2(b))。また、先端側から(Z軸方向)見ると、探針22の先端部23は略矩形状になっている(図2(c))。
図示のレバー部21は略矩形の平板形状であるが、十分な感度をもつものであれば、その形状は問わない。
図示のカンチレバー20では、レバー部21の長手方向、及び探針22の先端部23の長手方向がX軸方向で一致しているが、必ずしもこれらの方向が一致している必要はない。
カンチレバー20は、例えばシリコンウェハなどをエッチング法によりパターニングして形成される。
図1に戻り、圧電体素子設置台19上には、圧電体素子10が設置される。
図3は、(a)溝12a又は突条12bを備えた圧電体素子10の平面図、(b)溝12aを有するときの圧電体素子10のA−A’断面図、及び(c)突条12bを有するときの圧電体素子10のA−A’断面図である。圧電体素子10は、圧電体層11と、圧電体層11の上面に形成された上電極12と、圧電体層11の下面に形成された下電極13とを有して構成されている(図3(b)、図3(c))。
圧電体層11は、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3),マグネシウム酸ニオブ酸鉛(Pb(Mg,Nb)O3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)などの薄膜が用いられる。
上電極12は、通常の電極として用いることができる導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、Pt、RuO2、Ir、IrO2等の単層膜又はPt/Ti、Pt/Ti/TiN、Pt/TiN/Pt、Ti/Pt/Ti、TiN/Pt/TiN、Pt/Ti/TiN/Ti、RuO2/TiN、IrO2/Ir、IrO2/TiN等の2層以上の積層膜であってもよい。上電極12は、スパッタ法、蒸着法などにより形成される。
下電極13は、イリジウムの単層膜、イリジウム層/白金層、白金層/イリジウム層、イリジウム層/白金層/イリジウム層といった積層構造を有するもの、イリジウムと白金の合金からなる膜などを用いることができる。下電極13は、スパッタ法、蒸着法などにより形成される。
上電極12の形状は、少なくとも直径20μmの円形の表面領域を覆いつつ、一辺の長さが200μmの正方形の表面領域内で形成されていれば任意の形状でよいが、直径20μm以上200μm以下の略円形、または一辺の長さが20μm以上200μm以下の略正方形に形成されていることが好ましい。
上電極12の少なくとも直径20μmの円形の表面領域がなければ、十分な測定精度を得られるだけの測定点を確保することができない。また、一辺の長さが200μmの正方形の表面領域より広く上電極12が形成されていると、上電極12面内での圧電効果のばらつきが発生する可能性がある。以上の理由から、上電極12の大きさを以上のように規定している。
上電極12の上面には溝12aが複数形成されている。溝12aは、円形の上電極12の中心付近からX軸方向に一定の間隔をもって配列されており、この配列方向は、溝12aの延在方向(Y軸方向)と直交している(図3(a))。
溝12aは、FIB(Focused Ion Beam)によるイオンミリング法、フォトリソグラフィー法、ドライエッチング法などで上電極12を部分的に除去する方法、あるいは溝12aになる部分をマスクなどで覆った状態で、蒸着法、スパッタ法などにより薄膜を形成し、その後マスクを除去することで周辺を盛り上げる方法により形成することができる。形成された溝12aは、平面視略矩形状である(図3(a))。
本実施形態の場合、溝12aは圧電体層11に向かってV字型に切り込まれた形状になっている(図3(b))。圧電効果の測定中、探針22の先端部23は溝12a内に配置される。
なお、本実施形態では上電極12上に溝12aが形成されているが、溝12aに代えて、突条12bが形成されてもよい(図3(c))。突条12bは、FIBによるデポジション、蒸着法、スパッタ法などで突条12bになる位置に薄膜を形成し盛り上げる方法、あるいは突条12bになる部分をマスクなどで覆い、上電極12をミリング法、エッチング法などで上電極12を部分的に除去し突条12bを浮かびあがらせる方法で形成することができる。
上電極12上に突条12bを形成した場合には、カンチレバー20の探針22を隣り合う突条12bの間に配置し、探針22の先端部23を突条12bに係止して測定を行う。
図3に示す本実施形態の圧電体素子10では、圧電体層11として膜厚1.1μmのジルコン酸チタン酸鉛の薄膜を用いている。上電極12は直径30μmの略円形状に形成されており、幅(X軸方向)0.5μm、長さ(Y軸方向)3.0μmの溝12aが、上電極12の中心からX軸に沿って両側に、2.5μm、5.0μm、7.5μm、10μmの位置に形成されている。
ここで、図1のAFM1の説明に戻る。交流電源31は、圧電体層11に電位を与えるために用いられる。また、交流電源31の電流は、ロックインアンプ35の参照信号としても用いられる。
レーザー光源32は、反射板24にレーザー光を照射するために用いられる。検出器33は、複数の受光素子が配列されており、図示は省略しているが平面視略円形に形成されており、受光素子が配列された面を反射板24側に向けて設置されている。検出器33は、反射板24からの反射光を受光できるものであれば任意の形状のものを用いることができる。
検出回路34は検出器33に入射されたレーザー光の入射位置を検出する回路である。検出回路34で求められた入射位置データはロックインアンプ35に入力される。
ロックインアンプ35は、検出回路34から送られた入射位置データのノイズを低減すために用いられる。ロックインアンプ35には、入射位置データのノイズを低減するための参照信号として、交流電源31の交流信号が入力されている。
解析回路36では、ロックインアンプ35から送られた、ノイズが低減された入射位置データの解析を行う。まず始めに、入力された入射位置データを、電極12、13間の電場方向の入射位置の成分と、電極12、13間の電場と垂直方向の入射位置の成分とに分離する。次に、これらの成分を解析して、電場方向の変位と、電場と垂直方向の変位とが得られる。
次に、以上で説明した図1のAFM1による圧電効果の測定方法について説明する。圧電効果の測定は、圧電体素子10の設置、カンチレバー20の設置、位置調整、圧電効果の測定、データ解析の順で行われる。
初めに、圧電体素子10の設置について説明する。上電極13に形成された溝12aを上にして、圧電体素子10を図1の圧電体素子設置台19に設置する。このとき、溝12aの長手方向(図2のX軸方向)が検出器33を向くようにする。
次にカンチレバー20をカンチレバー設置台18に取り付ける。
引き続いて位置合わせを行う。図4は、上電極12上にカンチレバー20を配置したときの平面図である。図2のカンチレバー20の探針22の先端部23が溝12aにはめ込まれるように、カンチレバー設置台18及び圧電体素子設置台19を用いて位置合わせを行う。このとき、反射板24からの反射光は、検出器33の中心に入射するようになっている。
以上で測定に係る準備を終え、圧電効果の測定を行う。図5は、圧電効果の測定中における圧電体素子10の断面図である。交流電源31からカンチレバー20を介して、上電極12と下電極13との間に電位差を与え、圧電体層11に電場をかける。交流電源31から供給される電流として、例えば振幅25V、周波数1000Hzの交流電流を用いることができる。
この電場により、圧電体層11が変形して、上電極12及び探針22の先端部23が変位することで、カンチレバー20の姿勢が変化する。これにより、反射板24で反射されるレーザー光の角度が変化して、検出器33への入射位置が変化する。入射位置の変化は、検出回路34で検出される。
この測定は複数回実施され、入射位置データはロックインアンプ35に逐次入力されるようになっている。ロックインアンプ35では、これらの測定データと参照信号として入力された交流電源31の交流電流とを比較することで、測定データに含まれるノイズ成分を低減させる。ノイズが低減された入射位置データは、解析回路36に送られる。
ノイズが低減された入射位置データは、解析回路36によって圧電効果による変位のデータに変換される。なお、変位のデータは、電極12、13間の電場方向の変位と、電極12、13間の電場と垂直方向の変位に分けて計算される。
このような圧電効果の測定を、すべての溝12aに対して行う。測定データは、上電極12の中心ではほとんど変位せず、上電極12の中心からの距離に応じて変位量が大きくなっている。また、その変位の方向は、上電極12の中心方向である。
次に、測定データの解析を行う。図6は、上電極12の中心からの距離と、電場と垂直方向における変位との関係を表す図である。本図では、図5において、図示左側に変位したときを正の変位としている。測定データから、電場と垂直方向の変位のデータを取り出し、上電極12の中心からの距離と、変位の関係をグラフであらわすと、概ね測定データを通るある1つの直線を引くことができる。この直線の傾きをSAverageとする。
圧電体層11の膜厚をL、交流電源31の電圧をV、上電極12の中心からの距離をL31、この位置における電場と垂直方向の変位量をΔL31、電場と垂直方向の圧電定数をd31とすると、以下の式が得られる。
SAverage=ΔL31/L31=d31×V/L
d31=SAverage×L/V
d31=SAverage×L/V
この式を用いることにより、電場と垂直方向の圧電定数d31を求めることができる。
電場と垂直方向の圧電定数には前述したd31、及びd51法の2種類が存在する。これは、圧電体層11の結晶方向に起因するもので、圧電体層11の材質によりそれぞれ異なる。圧電効果による変位は、これらの結晶方向に沿って起こるが、一般に結晶方向は直交しておらず、測定された変位のデータは、d31、d51が混在したものとなっている。そのため、測定により得られた圧電定数は、溝12aの配列方向に沿ったd31、d51の平均値とみなし、1つの圧電定数d31をSAverageと関連付けられている。
本発明に係るAFM1を用いることの作用効果について説明する。
カンチレバー20の探針22の先端部23の形状を、探針22の先端側から見て略矩形状に形成することで、溝12aに探針22の先端部23を設置することができるようになったので、圧電効果の測定中に、探針22の先端部23を溝12aで固定することができるようになった。これにより、測定誤差を少なく、実用的な方法で電場と垂直方向の圧電効果を測定できるようになった。
1つの溝12aに対して、ロックインアンプ35によりノイズを低減させた入射位置データを複数回測定することができるので、電場と垂直方向の圧電効果を測定誤差を低減させて測定できるようになった。
[インクジェットヘッド]
圧電体素子が組みこまれたものとして、インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)について説明する。図7はインクジェットヘッド250の分解斜視図であり、図8は、インクジェットヘッド250の概略構成を示す側断面図である。
圧電体素子が組みこまれたものとして、インクジェットヘッド(流体噴射ヘッド)について説明する。図7はインクジェットヘッド250の分解斜視図であり、図8は、インクジェットヘッド250の概略構成を示す側断面図である。
インクジェットヘッド250は、図7及び図8に示すようにノズル板251と、ヘッド本体257と、圧電体素子(振動源)254などで構成されている。ヘッド本体257は、インク流路(リザーバ等)やキャビティ231を区画形成するべく所定平面形状にパターン形成されたインク室基板252と、このインク室基板252と一体に形成された振動板255とを備えている。そして図2に示すように、ヘッド本体257が基体256に収納されている。
ノズル板251は、例えばステンレス板やニッケル板等で構成されたもので、インクを吐出するための多数のノズル211がライン状に貫設されたものである。ノズル211間のピッチは、印刷精度に応じて適宜に設定されている。ノズル板251には、インク室基板252が固着されている。インク室基板252は、側壁232と、ノズル板251および振動板255とにより、複数のキャビティ231と、インクカートリッジKから供給されるインクを一時的に貯留するリザーバ233と、リザーバ233から各キャビティ231に、それぞれインクを供給する供給口234とを区画形成したものである。
キャビティ231は、図2に示したように各ノズル211に対応して配設されたもので、後述する振動板255の弾性変形によってそれぞれ容積可変になっており、この容積変化によってキャビティ231内部を瞬間的に昇圧し、ノズル211からインクを吐出するよう構成されたものである。
一方、インク室基板252のノズル板251と反対の側には振動板255が設けられており、さらに振動板255のインク室基板252と反対側の面には複数の圧電体素子254が配設されている。また、この振動板255の所定位置には、図2に示したように振動板255の厚さ方向に貫通して連通孔235が形成されている。そして、連通孔235を介してインクカートリッジKからリザーバ233に対して、インクが供給される。
各圧電体素子254は、前述したように上電極206と下電極204との間で圧電体層205が挟持されたもので、図3に示すように、圧電体層205を各キャビティ231のほぼ中央部に対応して配設されたものである。
これら各圧電体素子254は、例えば圧電体素子駆動回路に電気的に接続され、図示は省略の圧電体素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)する。すなわち、各圧電体素子254はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエータ)として機能するものとなっており、振動板255は、圧電体素子254の振動(撓み)によって振動し(撓み)、キャビティ231の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。これにより、ノズルからインクが吐出され、図示は省略の記録体に画像を形成することができる。
図9は、インクジェットヘッド250の回路基板300の概略平面図である。回路基板300の中央部には複数の圧電体素子254などが配列されたデバイス形成領域320が設けられている。デバイス形成領域320において、圧電体素子254は図示のX軸方向に延在し、Y軸方向に沿って一直線上に一定の間隔をもって形成されている。
そして、回路基板300の周縁部330には本発明のテスト用圧電体素子310が組み込まれている。周縁部330ではインクジェットヘッド用の駆動回路などは形成されておらず、テスト用圧電体素子310が形成されていても動作に支障はない。
このテスト用圧電体素子310の上電極312は略円形で、その直径はおよそ70μmに形成されている。上電極312上には、溝312aが形成されている。
テスト用圧電体素子310を備えることで、製造工程内において、圧電体素子254の圧電効果を測定できる。そして、測定結果に基づいて回路基板300の選別を行うことが可能となるので、不良品を除去し製造歩留りを向上させることができる。これに伴い、均一な画質を実現するインクジェットヘッド250を提供することができる。
10…圧電体素子、11…圧電体層、12…上電極、12a…溝、12b…突条、13…下電極、18…カンチレバー設置台、19…圧電体素子設置台、20…カンチレバー、21…レバー部、22…探針、23…先端部、24…反射板、30…測定系、31…交流電源、32…レーザー光源、33…検出器、34…検出回路、35…ロックインアンプ、36…解析回路、204…下電極、205…圧電体層、206…上電極、250…インクジェットヘッド、254…圧電体素子、300…回路基板、310…テスト用圧電体素子、312…上電極、312a…溝
Claims (10)
- 圧電体層と、前記圧電体層を挟持する第1の電極及び第2の電極とを備えた圧電体素子の圧電効果を測定する方法であって、
一方の端部は固定され、他方の端部に探針を有するカンチレバーと、
前記カンチレバーの変位を検出する測定系とを備えた測定装置を用い、
前記カンチレバーの探針を前記第1の電極上に形成された凹部又は突起に係止した状態で前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加し、
前記測定系により前記カンチレバーの変位を測定することを特徴とする圧電効果の測定方法。 - 請求項1に記載の圧電効果の測定方法であって、
前記凹部又は前記突起が、前記第1の電極上に形成された溝又は突条であることを特徴とする圧電効果の測定方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の圧電効果の測定方法であって、
複数の前記凹部又は前記突起が、前記第1の電極上に略直線状に配列されていることを特徴とする圧電効果の測定方法。 - 請求項3に記載の圧電効果の測定方法であって、
前記溝又は前記突条の延在方向と配列方向とが直交することを特徴とする圧電効果の測定方法。 - 圧電体層と、前記圧電体層を挟持する第1の電極及び第2の電極とを備えた圧電体素子の圧電効果を測定する装置であって、
一方の端部は固定され、他方の端部に探針を有するカンチレバーと、
前記カンチレバーの変位を検出する測定系とを有し、
前記探針の先端部が、前記探針の先端側から見て略矩形状に形成されていることを特徴とする圧電効果の測定装置。 - 請求項5に記載の圧電効果の測定装置において、
前記探針の先端部は、前記矩形の長手方向に4μm以上の長さを有していることを特徴とする圧電効果の測定装置。 - 圧電体層と、前記圧電体層を挟持する第1の電極及び第2の電極とを備えた圧電体素子であって、
前記第1の電極の前記圧電体層と反対側の面に配列された複数の凹部又は突起を有することを特徴とする圧電体素子。 - 請求項7に記載の圧電体素子であって、
前記凹部又は前記突起が、前記第1の電極上に形成された溝又は突条であることを特徴とする圧電体素子。 - 請求項8に記載の圧電体素子であって、
前記溝又は前記突条の前記延在方向と前記配列方向とが直交することを特徴とする圧電体素子。 - 請求項8又は請求項9に記載の圧電体素子を備えた流体噴射ヘッド。
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