JP2008266420A - 軽油の水素化処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽油中の硫黄分及び窒素分を極めて低い濃度まで低減できるとともに、色相の悪化を抑制して色相に優れた軽油を製造し得る軽油の水素化処理方法を提供すること。
【解決手段】触媒として、無機酸化物担体上に、触媒基準、酸化物換算で、第6族金属の少なくとも1種を10〜40質量%、ニッケルを必須として第8族金属の少なくとも1種を1〜15質量%、リンを1.5〜6質量%、及び触媒基準、炭素元素換算で、有機酸を2〜14質量%担持し、かつ、第8族金属1モル当たりの有機酸担持量が0.2〜1.2モルで、第8族金属中のニッケルのモル比率が60モル%以上である触媒を用い、水素分圧8〜20MPa、温度300〜420℃、液空間速度0.3〜5hr−1の反応条件で軽油を水素化処理する軽油の水素化処理方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、軽油の水素化処理方法に関する。更に詳しくは、硫黄分及び窒素分が極めて低減され、色相も優れた軽油を製造することができる軽油の水素化処理方法に関する。
大気環境改善のため、ディーゼル自動車から排出される窒素酸化物や浮遊粒子状物質等を低減することは重要な課題である。これらの汚染物質を低減する方法として、ディーゼル自動車への排ガス処理装置の搭載が有効であると考えられている。しかしながら、これらの排ガス処理装置は耐硫黄性が低いものが多いことから、この装置を効果的に機能させるためには、燃料油(軽油)中に含まれる硫黄分を大幅に低減することが望ましい。そこで、これらの要求に対応するため、優れた脱硫性能を有する各種脱硫触媒技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、従来の技術により、軽油留分の硫黄を大幅に低減しようとすると、着色しやすくなる傾向にあり、これまでの製品のイメージを保持するという観点から色相は、無色透明が好ましい。即ち、セーボルトカラーで+25以上であることが望ましい。
また、従来の技術では、脱窒素反応性は、脱硫反応性と比較して、反応性が悪いことが知られており、水素化脱硫触媒を用いて水素化脱窒素反応を十分に行うためには、例えば、高い温度が必要となる。そのような条件下で炭化水素油を水素化処理した場合には、水素化脱窒素に関しては満足する結果が得られているが、生成油の軽質化や、色相の悪化が過度に進むという不都合が生じる。
国際公開第2004/054712号パンフレット
本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、軽油中の硫黄分及び窒素分を極めて低い濃度まで低減できるとともに、色相の悪化を抑制して色相に優れた軽油を製造することができる軽油の水素化処理方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、一定の性状の触媒を用い、一定の条件下で軽油の水素化処理を行うことによって、上記目的を達成することができ、硫黄分及び窒素分が極めて低減され、色相も優れた軽油を製造し得ることを見出して、本発明を完成した。
即ち、本発明は、上記目的を達成するために、次の軽油の水素化処理方法を提供するものである。
(1)触媒として、無機酸化物担体上に、周期律表第6族金属から選ばれた少なくとも1種を10〜40質量%(触媒基準、酸化物換算)、ニッケルを必須として周期律表第8族金属から選ばれた少なくとも1種を1〜15質量%(触媒基準、酸化物換算)、リンを1.5〜6質量%(触媒基準、酸化物換算)、及び有機酸を2〜14質量%(触媒基準、炭素元素換算)担持し、かつ、周期律表第8族金属1モル当たりの有機酸担持量が0.2〜1.2モルで、周期律表第8族金属中のニッケルのモル比率が60モル%以上である触媒を用い、水素分圧8〜20MPa、温度300〜420℃、液空間速度0.3〜5hr−1の反応条件で軽油を水素化処理することを特徴とする軽油の水素化処理方法。
(2)硫黄分が10質量ppm以下、窒素分が1質量ppm以下、かつセーボルトカラーが+25以上の軽油を製造することを特徴とする上記(1)記載の軽油の水素化処理方法。
本発明によれば、上記所定の性状の触媒を用い、上記所定の条件下で軽油の水素化処理を行うことによって、軽油中の硫黄分及び窒素分を極めて低い濃度まで低減できるとともに、色相の悪化を抑制して色相に優れた軽油を製造することができる。
<触媒>
本発明で用いる触媒は、無機酸化物担体上に、周期律表第6族金属から選ばれた少なくとも1種が10〜40質量%(触媒基準、酸化物換算)、ニッケルを必須として周期律表第8族金属から選ばれた少なくとも1種が1〜15質量%(触媒基準、酸化物換算)、リンが1.5〜6質量%(触媒基準、酸化物換算)、及び有機酸が2〜14質量%(触媒基準、炭素元素換算)担持された触媒であり、特に周期律表第8族金属としてはニッケルを必須とし、周期律表8族金属中のニッケルのモル比率が60モル%以上であり、周期律表第8族金属1モル当たりの有機酸担持量が0.2〜1.2モルである点に特徴がある。この本発明で用いる触媒にあっては、上記のように、ニッケルが周期律表第8族金属の必須成分であって、周期律表第8族金属を1種用いる場合は、ニッケルが用いられ、周期律表第8族金属を2種以上用いる場合は、周期律表第8族金属中のニッケルのモル比率が60モル%以上になるように、ニッケルが周期律表第8族金属の主成分となるように用いられる。また、この本発明で用いる触媒にあっては、平均細孔直径が65〜130Åであることが好ましい。
(無機酸化物担体)
本発明で用いる触媒の無機酸化物担体は、脱硫活性を向上させるために、主成分がアルミナである無機酸化物担体が好ましい。
上記アルミナとしては、α-アルミナ、γ-アルミナ、δ−アルミナ、アルミナ水和物等の種々のアルミナを使用することができるが、多孔質で高比表面積であるアルミナが好ましく、中でもγ-アルミナが適している。アルミナの純度は、約98質量%以上、好ましくは約99質量%以上のものが適している。アルミナ中の不純物としては、SO 2−、Cl、Fe、NaO等が挙げられるが、これらの不純物はできるだけ少ないことが望ましく、不純物全量で2質量%以下、好ましくは1質量%以下であることが好ましい。
アルミナ以外の無機酸化物担体の成分としては、ゼオライト、ボリア、シリカ、リン及びジルコニアから選ばれる1種以上が好ましい。これらはそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組合せて使用できる。
上記ゼオライトとしては、フォージャサイトX型ゼオライト、フォージャサイトY型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM系ゼオライト(ZSM-4、5、8、11、12、20、21、23、34、35、38、46等がある)、MCM−41、MCM-22、MCM−48、SSZ−33、UTD−1、CIT−5、VPI−6、TS−1、TS−2等が使用でき、特にY型ゼオライト、安定化Yゼオライト、βゼオライトが好ましい。また、ゼオライトは、プロトン型が好ましい。
上記のボリア、シリカ、ジルコニア、リンは、一般に、この種の触媒担体の成分として使用されるものを使用することができる。
上記のゼオライト、ボリア、シリカ、ジルコニア及びリンの添加量は、酸化物担体中に0.5質量%から20質量%未満であり、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%であることが望ましい。これらの成分の添加量が上記範囲であれば、これらの成分の過不足により細孔直径の制御が難しくなることを回避でき、また、これらの成分の不足によりブレンステッド酸点やルイス酸点の付与が不十分となることや、これらの成分の過多により周期律表第6族金属、特にモリブデンが高分散しにくい傾向になることを回避できる。
本発明で用いる触媒の無機酸化物担体は、580℃〜700℃で1.5〜3時間焼成して調製したものが好ましい。本発明で用いる触媒は、後述するように、無機酸化物担体に活性成分を担持させた後は、200℃以下での乾燥だけで調製することが好ましいため、触媒の機械強度や物性は、一般に、無機酸化物担体の焼成で得ることとなる。無機酸化物担体の焼成が、580℃以上で1.5時間以上であれば、十分な触媒の機械強度を得ることができ、また、700℃以下で3時間以下であれば、無機酸化物担体の比表面積、細孔容積、平均細孔直径の好ましからざる低下を回避することができて、好ましい。
また、無機酸化物担体の比表面積、細孔容積、平均細孔直径は、炭化水素油に対する水素化脱硫活性の高い触媒にするために、比表面積270〜550m/g、細孔容積0.55〜0.90ml/g、平均細孔直径5〜12nmであることが好ましい。
(活性金属)
本発明で用いる触媒に含有させる周期律表第6族金属(以下、「6族金属」と略す)は、モリブデン、タングステンが好ましく、モリブデンがより好ましい。6族金属の原料としては、特に限定はなく、例えば三酸化モリブデンやモリブドリン酸などが好ましく用いられる。
6族金属の含有量は、触媒基準、酸化物換算で、10〜40質量%である。10質量%以上であれば、6族金属に起因する効果を発現させるのに十分であり、好ましい。また、40質量%以下であれば、6族金属の含浸(担持)工程で6族金属化合物の凝集が生じず、6族金属の分散性が良くなり、また、効率的に分散する6族金属含有量の限度を超えず、触媒表面積が大幅に低下しない等により、触媒活性の向上がみられ、好ましい。
本発明で用いる触媒に含有させる周期律表第8族金属(以下、「8族金属」と略す)は、ニッケルを必須成分とする。ニッケルは、単独で使用しても、ニッケル以外の8族金属、例えばコバルト等と複合化して使用してもよいが、8族金属としてニッケルとニッケル以外の8族金属を複合化して使用するときは、8族金属中のニッケルのモル比率、即ちNi/(Ni+Ni以外の8族金属)のモル比が60モル%以上、好ましくは70モル%以上になるように使用することが肝要である。使用8族金属中のニッケルのモル比率を60〜100モル%とすると、生成油のセーボルトカラーを+25以上とすることが可能となる。
8族金属の原料としては、特に限定はないが、クエン酸コバルト、クエン酸ニッケル化合物等が好ましく用いられる。
8族金属の含有量は、触媒基準、酸化物換算で、1〜15質量%、好ましくは、3〜8質量%である。1質量%以上であれば、8族金属に帰属する活性点が十分に得られるため好ましい。また、15質量%以下であれば、8族金属の含有(担持)工程で凝集物を生じることなく、8族金属の担体上での分散性を維持することができるため好ましい。
また、本発明で用いる触媒では、8族金属と6族金属は、酸化物換算で、[8族金属]/[8族金属+6族金属]の値で、0.1〜0.25であることが好ましい。この[8族金属]/[8族金属+6族金属]を0.1以上とすることで、脱硫性能に深く関係する活性点(例えば、CoMoS相、NiMoS相など)の生成を効率的に得ることができ、6族金属と8族金属の相乗効果をより高めることができる。また、0.25以下とすることで、不活性な8族金属種が生成するのを抑制することができる。
(有機酸)
本発明で用いる触媒に含有させる有機酸としては、カルボン酸が挙げられ、好ましくは多価カルボン酸、更に好ましくは脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、グルコン酸等が挙げられるが、この内最も好ましいのはクエン酸である。また、8族金属として、例えば、クエン酸ニッケルやクエン酸コバルト等の有機酸と8族金属との化合物を用いた場合には、これを有機酸源とすることもできる。これらの有機酸を用いる場合、1種単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、有機酸と8族金属との化合物中の有機酸を有機酸源とした場合で、これだけでは有機酸の量が十分でない場合には、更に他の有機酸原料を併用することもできる。
有機酸の含有量は、触媒基準、炭素元素換算で2〜14質量%、好ましくは2〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%である。有機酸は、触媒製造時に担体上に8族金属との錯体化合物を形成し、この状態で担持されることで、その後の活性化処理(硫化処理)により高活性を有するようになると考えられる活性点構造を生成する効果を有する。有機酸がこのような効果を十分に発揮するためには、炭素元素換算で少なくとも2質量%用いることが必要となる。一方、過剰に有機酸を用いた場合には、有機酸由来の炭素分が触媒上に堆積し、触媒活性点の被覆等による活性低下が懸念される。そのため、有機酸は、炭素元素換算で14質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明で用いる触媒における有機酸の含有量は、8族金属量に対するモル比(有機酸/8族金属)が0.2〜1.2、好ましくは0.6〜1である。有機酸/8族金属モル比を0.2以上とすることで、8族金属に帰属する活性点がより得やすくなる。一方、有機酸/8族金属モル比を1.2以下とすることで、金属含浸液の粘度が高くなりすぎるのを抑制でき、含浸液が担体内部まで浸透しやすくなり、また活性金属を高分散に担持しやすくなる。
更に、有機酸の含有量は、6族金属と8族金属の総量に対するモル比[有機酸/(6族金属+8属金属)]が0.35以下、好ましくは0.28以下、更に好ましくは0.25以下であることが望ましい。モル比[有機酸/(6族金属+8属金属)]を0.35以下とすることで、金属と錯体化しない過剰の有機酸による触媒のコーク劣化を抑制できる。
(リン)
本発明で用いる触媒には、活性金属の分散性を向上させるために、リン酸化物を含有させる。本発明で用いる触媒で使用するリン酸化物の原料としては、特に限定はないが、オルトリン酸等が好ましく用いられる。
リン含有量は、触媒を基準として酸化物換算で表示して、1.5〜6質量%、好ましくは2.5〜6質量%である。リンは、活性金属を有効活用させ、高脱硫活性を有すると考えられる硫化構造の生成を促進する効果を有する。このような効果を十分に発揮させるためには、リン含有量を1.5質量%以上とすることが好ましい。一方、リン含有量が多すぎると、触媒細孔の縮小を起こす原因となり、その結果、活性金属化合物の拡散性の低下や活性金属の過度の凝集が生じ、触媒性能の低下する場合がある。したがって、リンの含有量は6質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明で用いる触媒におけるリン含有量と8族金属含有量の好ましいモル比は、P/MoOの値で0.07〜0.3、更に好ましくは0.09〜0.25である。リン含有量と8族金属含有量のモル比を0.07以上とすることで、脱硫活性が高いと考えられる硫化構造をより効率的に形成することができる。また、0.3以下とすることで、触媒の細孔容積や比表面積の低下を抑制し、触媒性能の低下を抑制することができる。
(物理性状)
本発明で用いる触媒の平均細孔直径は、水銀圧入法にて測定した値で6.5〜13.5nmであることが好ましく、7〜13.5nmであることがより好ましく、更に好ましくは8〜13.5nmである。平均細孔直径が6.5nm以上であれば、反応対象化合物が触媒細孔内に拡散しやすいため好ましく、13.5nm以下であれば、比表面積が極端に小さくならず、活性金属の高分散性を維持しやすいため好ましい。
更に、本発明の触媒は、窒素吸着法(BET法)にて測定した比表面積が100〜500m/g、水銀圧入法にて測定した細孔容積が0.2〜0.9ml/gであることが好ましい。
なお、上記の平均細孔直径および細孔容積は、触媒を400℃で1時間真空脱気した後、水銀圧入法により測定を行ったときの数値である。また、比表面積は、触媒を400℃で1時間真空脱気した後、BET法にて測定を行ったときの数値である。
(製造方法)
本発明で用いる触媒の製造方法としては、6族金属から選択された少なくとも1種、8族金属から選択された少なくとも1種、リン酸、有機酸を含有する溶液を用いて、所定の含有量となるように上記無機酸化物担体に担持後、乾燥処理のみで仕上げ、高温焼成は行わずに乾燥することで製造する方法が好ましい。
上記成分の担体への担持方法は、通常の方法を用いることができ、所定量の活性金属を偏りなく担持することができれば良い。このような方法としては、例えば含浸法等が挙げられる。
乾燥方法は、特に制限されないが、一般に、室温にて風乾した後、空気気流中、窒素気流中あるいは真空中で、乾燥温度200℃以下で、5〜20時間乾燥する。乾燥温度を200℃以下とすることで、錯体化していると考えられる活性金属と有機酸を触媒上に維持することができ、その結果、活性化処理をすることで高活性な触媒を得ることができる。
ただし、真空中で乾燥を行う場合は、圧力760mmHg換算で上記の温度範囲になるように乾燥することが好ましい。
<水素化処理方法>
本発明の水素化処理は、水素分圧8〜20MPa、温度300〜420℃、液空間速度0.3〜5hr−1の条件下で、前記の触媒と硫黄化合物を含む軽油留分とを接触させることによって行う。この条件で水素化処理を行うことにより、軽油留分中の難脱硫物質を含む硫黄化合物及び窒素化合物を減少させ、かつ優れた色相を持つ軽油を生産することができる。
本発明の水素化処理における水素分圧は8〜20MPaであり、好ましくは9〜18MPa、更に好ましくは10〜16MPaである。水素分圧が8MPa未満であると、生成油が着色するので好ましくない。一方、水素分圧20MPa以上であると、水素消費量が増加してしまうため、経済的ではない。
本発明の水素化処理方法を商業規模で行うには、本発明で用いる上記所定の性状の触媒により固定床、移動床あるいは流動床式の触媒層を反応装置内に形成し、この反応装置内に原料油を導入し、上記の条件で水素化処理を行えばよい。一般的には、固定床式触媒床を反応装置内に形成し、原料油を反応装置の上部より導入し、固定床を上から下に通過させ、反応装置の下部から生成物を流出させるものである。また、本発明の方法は、上記所定の性状の触媒を、単独の反応装置に充填して行う一段の水素化処理方法であってもよいし、いくつかの反応装置に充填して行う多段連続水素化処理方法であってもよい。
また、本発明の方法では、使用触媒は、使用前(即ち、水素化処理を開始する前)に、反応装置中で硫化処理して活性化する。この硫化処理は、一般に、200〜400℃、好ましくは、250〜350℃、常圧あるいはそれ以上の圧の水素雰囲気下で、硫黄化合物を含む石油蒸留物、それにジメチルジスルフィドや二硫化炭素等の硫化剤を加えたもの、あるいは硫化水素を用いて行うことができる。
<原料油>
本発明の処理対象油は、例えば、直留軽油、接触分解軽油、熱分解軽油、水素化処理軽油、脱硫処理軽油、減圧蒸留軽油(VGO)等の軽油留分である。これらの原料油の代表的な性状例として、沸点範囲が150〜450℃、硫黄化合物濃度が5質量%以下のものが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
〔触媒の製造〕
触媒製造例1
SiO/Alモル比6のSHYゼオライト粉末(平均粒子径3.5μm、かつ87質量%が粒子径6μm以下のもの)とアルミナ水和物を混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1.6mmの柱状成形物のゼオライト−アルミナ複合担体(ゼオライト/アルミナ質量比:5/95、細孔容積:0.79ml/g、比表面積:311m/g、平均細孔径9.3nm)を得た。
イオン交換水22.3gに、クエン酸第一ニッケル8.2g、クエン酸第一コバルト1.2g、リン酸(85%水溶液)2.2gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.6gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、上記のゼオライト−アルミナ複合担体30gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。この後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させ、触媒Aを得た。この触媒Aの化学性状を表1に示す。
触媒製造例2
イオン交換水22.3gに、クエン酸第一ニッケル10.3g、リン酸(85%水溶液)2.2gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.6gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、実施例1で得たものと同様のゼオライト−アルミナ複合担体30gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。この後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させ、触媒Bを得た。この触媒Bの化学性状を表1に示す。
触媒製造例3
イオン交換水22.3gに、クエン酸第一ニッケル4.1g、クエン酸第一コバルト6.2g、リン酸(85%水溶液)2.2gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.6gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、実施例1で得たものと同様のゼオライト−アルミナ複合担体30gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。この後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させ、触媒aを得た。この触媒aの化学性状を表1に示す。
触媒製造例4
イオン交換水22.3gに、クエン酸第一コバルト10.3g、リン酸(85%水溶液)2.3gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.6gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、実施例1で得たものと同様のゼオライト−アルミナ複合担体30gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。この後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させ、触媒bを得た。この触媒bの化学性状を表1に示す。
触媒製造例5
イオン交換水21.6gに、炭酸コバルト3.3g、モリブドリン酸11.4gとオルトリン酸1.2gを溶解させた含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、γ−アルミナ担体(細孔容積0.69ml/g、比表面積364m/g、平均細孔径6.4nm)30gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で1時間浸漬した。この後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約4間乾燥させ、500℃で4時間焼成し、触媒cを得た。この触媒cの化学性状を表1に示す。
Figure 2008266420
〔直留軽油の水素化処理〕
実施例1,2、比較例1〜5
上記の触媒製造例1〜5で得た触媒A、B、a、b、cを用いて、以下の要領にて、下記性状の直留軽油の水素化処理を行った。なお、これらの触媒中、触媒A,Bは本発明に規定する所定の性状の触媒であり、触媒a〜cは本発明の規定を逸脱した性状の比較触媒である。また、各実施例、比較例で用いた触媒は、実施例1が触媒A、実施例2が触媒B、比較例1が触媒A、比較例2,3が触媒a、比較例4が触媒b、比較例5が触媒cである。
先ず、触媒を高圧流通式反応装置に充填して固定床式触媒層を形成し、下記の条件で前処理した。
次に、反応温度に加熱した原料油と水素含有ガスとの混合流体を、反応装置の上部より導入して、下記の条件で水素化反応を進行させ、生成油とガスの混合流体を、反応装置の下部より流出させ、気液分離器で生成油を分離した。6日経過した時点の生成油を採取し、その性状を分析し、以下の方法で脱硫反応速度定数、比活性を解析した。比活性の解析結果を表2に示した。
前処理:下記条件下、原料油による液硫化を行った。
圧力(水素分圧);10MPa
雰囲気;水素及び原料油(液空間速度2.0hr−1、水素/オイル比200m(normal)/kl)
温度;常温(約22℃)で水素及び原料油を導入し、20℃/hrで昇温し、300℃にて24時間維持、次いで反応温度である350℃まで20℃/hrで昇温
水素化反応条件:
反応温度 ;350℃
圧力(水素分圧);7MPaまたは10MPa
液空間速度 ;1.3hr−1
水素/オイル比 ;200m(normal)/kl
原料油の性状:
油種 ;中東系直留軽油
密度(15/4℃);0.8570
蒸留性状 ;初留点が186.0℃、50%点が312.0℃、
90%点が355℃、終点が371.5℃
硫黄成分 ;1.41質量%
窒素成分 ;250質量ppm
動粘度(@30℃);7.026cSt
流動点 ;0.0℃
くもり点 ;4.0℃
セタン指数 ;55.4
生成油の性状分析:
硫黄分:JIS K 2541 原油及び石油製品 -硫黄分試験方法-
窒素分:JIS K 2609 原油及び石油製品 -窒素分析試験方法-
セ−ボルトカラー:JIS K 2580 石油製品 -色試験方法-
脱硫反応速度定数(ks):
生成油の硫黄分(Sp)の減少量に対して、1.2次の反応次数を得る反応速度式の定数を脱硫反応速度定数(ks)とする。反応速度定数が高い程、触媒活性が優れていることを示している。
脱硫反応速度定数=[1/(1.2−1)]×〔1/(Sp)(1.2−1)−1/(Sf)(1.2−1)〕×(LHSV)
式中、Sf:原料油中の硫黄分(質量%)
Sp:反応生成油中の硫黄分(質量%)
LHSV:液空間速度(hr−1
比活性(%)=(各脱硫反応速度定数/比較触媒bの脱硫反応速度定数)×100
Figure 2008266420
表2から明らかなように、本発明で規定する所定性状の触媒AまたはBを用いて本発明で規定する反応条件で水素化処理を行うと、硫黄分が10質量ppm以下、窒素分が1質量ppm以下で、かつセーボルトカラーが+25以上と色相が良好な軽油が得られることがわかる。
一方、実施例と同じ触媒を用いていても、水素分圧が本発明の規定から外れて低い場合には、比較例1のように硫黄分を十分に低減できず、窒素分や色相も十分ではない。また、実施例と同じ水素分圧であっても、使用する触媒の性状が本発明の規定から外れる場合には、比較例2〜5のように硫黄分や窒素分が十分低減できなかったり、色相が不十分であったりするなど、十分な効果を得ることができない。

Claims (2)

  1. 触媒として、無機酸化物担体上に、周期律表第6族金属から選ばれた少なくとも1種を10〜40質量%(触媒基準、酸化物換算)、ニッケルを必須として周期律表第8族金属から選ばれた少なくとも1種を1〜15質量%(触媒基準、酸化物換算)、リンを1.5〜6質量%(触媒基準、酸化物換算)、及び有機酸を2〜14質量%(触媒基準、炭素元素換算)担持し、かつ、周期律表第8族金属1モル当たりの有機酸担持量が0.2〜1.2モルで、周期律表第8族金属中のニッケルのモル比率が60モル%以上である触媒を用い、水素分圧8〜20MPa、温度300〜420℃、液空間速度0.3〜5hr−1の反応条件で軽油を水素化処理することを特徴とする軽油の水素化処理方法。
  2. 硫黄分が10質量ppm以下、窒素分が1質量ppm以下、かつセーボルトカラーが+25以上の軽油を製造することを特徴とする請求項1記載の軽油の水素化処理方法。
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