JP2008266050A - 表面修飾酸化亜鉛超微粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】純度が高く粒子径サイズの揃った数平均粒子径0.5〜20nmの酸化亜鉛超微粒子を安価に提供すること、このような酸化亜鉛超微粒子を高収率で簡便に製造する方法を提供すること、およびこのような酸化亜鉛超微粒子が凝集することなく均一分散した合成樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】酸化亜鉛100重量部あたりその表面が、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上である炭素数8以上のカルボン酸化合物10〜100重量部で修飾された、数平均粒子径0.5〜20nmの表面修飾酸化亜鉛超微粒子。該表面修飾酸化亜鉛超微粒子を合成樹脂に配合した合成樹脂組成物。
【選択図】 図1
【解決手段】酸化亜鉛100重量部あたりその表面が、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上である炭素数8以上のカルボン酸化合物10〜100重量部で修飾された、数平均粒子径0.5〜20nmの表面修飾酸化亜鉛超微粒子。該表面修飾酸化亜鉛超微粒子を合成樹脂に配合した合成樹脂組成物。
【選択図】 図1
Description
本発明は表面修飾酸化亜鉛超微粒子およびその製造方法、表面修飾酸化亜鉛超微粒子を含有する合成樹脂組成物およびその製造方法に関する。
数平均粒子径20nm以下の酸化亜鉛超微粒子は、表面積の大きさと量子効果に由来する様々な特徴を有しており、エレクトロニクス、オプトエレクトロニクス、バイオサイエンスなど広い分野において用途開発が進んでいる。ところが酸化亜鉛超微粒子は表面活性が高いため容易に凝集してしまうという問題があった。粒子同士が凝集するとナノサイズに由来する特徴が失われてしまうため、如何に凝集を防いで一次粒子のまま保存したり樹脂中に分散させるかが重要である。
またこのような酸化亜鉛超微粒子は合成時の副生成物との分離が困難であり、純度の高い酸化亜鉛超微粒子を凝集しない状態で単離することが課題となっている。
酸化亜鉛超微粒子の凝集を防ぐ目的で、様々な表面修飾方法が考案されている。例えば特許文献1にはヘキサメタリン酸やメルカプトプロピオン酸で半導体ナノ粒子を修飾する技術が記載されている。しかしこの方法では得られる半導体ナノ粒子と合成時の不純物とを分離する操作の効率が悪く、収率が低いという問題があった。また得られる半導体ナノ粒子は高分子化合物との相溶性に欠け、樹脂中に分散させることが困難であった。
また特許文献2には表面に電子供与性基が配列した半導体ナノ粒子が記載されているが、得られる半導体ナノ粒子が水溶性となるために合成樹脂中に分散させることが困難であった。また長期保存した場合に空気中の水分の影響で粒子が溶解したり溶着したりするために、安定性に問題があった。
特許文献3には表面を0.2〜10重量%のシランカップリング剤で被覆した酸化亜鉛粒子が記載されている。しかし酸化亜鉛粒子の表面をこのような無機系カップリング剤で処理した場合、粒子表面が酸化亜鉛と異なる性質を示すようになるため、本来酸化亜鉛超微粒子が有している特徴が失われてしまう。例えば非特許文献1には酸化亜鉛粒子によるポリオレフィンの熱安定化効果が記載されているが、表面をシランカップリング処理した酸化亜鉛粒子ではこのような効果が弱められる恐れがある。
特開2004−51863号公報
特開2004−243507号公報
特許第3485643号公報
K.S.Choら、Polymer Engineering and Science,2004,44,1702.
本発明が解決しようとする課題は、純度が高く粒子径サイズの揃った粒子径20nm以下の表面修飾酸化亜鉛超微粒子を安価に提供することであり、このような表面修飾酸化亜鉛超微粒子を高収率で簡便に製造する方法を提供することであり、さらにこのような表面修飾酸化亜鉛超微粒子が凝集することなく均一分散した合成樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、酸化亜鉛超微粒子を特定のカルボン酸化合物で修飾することにより凝集を防止し、副生物からの分離を容易とし、簡便かつ安価に表面修飾酸化亜鉛超微粒子を得ることができることを発明した。
すなわち、
1).酸化亜鉛100重量部あたりその表面が、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上である炭素数8以上のカルボン酸化合物10〜100重量部で修飾された、酸化亜鉛の数平均粒子径が0.5〜20nmの表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
1).酸化亜鉛100重量部あたりその表面が、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上である炭素数8以上のカルボン酸化合物10〜100重量部で修飾された、酸化亜鉛の数平均粒子径が0.5〜20nmの表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
2).酸化亜鉛の数平均粒子径が1〜10nmである、1)に記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
3).カルボン酸化合物の量が15〜50重量部である、1)または2)のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
4).沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が1w/w%以下である、1)〜3)のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
5).カルボン酸化合物が、カルボキシル基以外の官能基を有しないことを特徴とする、1)〜4)のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
6).カルボン酸化合物が、イソノナン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、1)〜5)のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
7).1)〜6)のいずれかに記載表面修飾の酸化亜鉛超微粒子と合成樹脂とを含有する合成樹脂組成物。
8).表面修飾酸化亜鉛超微粒子の含有量が、酸化亜鉛成分として0.01〜20wt%であることを特徴とする、7)に記載の合成樹脂組成物。
7).合成樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする、7)または8)のいずれかに記載の合成樹脂組成物。
10).表面修飾酸化亜鉛超微粒子と熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られる、9)に記載の合成樹脂組成物。
11).以下の工程からなる、1)〜6)のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子の製造方法:
(1)アルカリ金属水酸化物を沸点100℃以下の脂肪族アルコールに溶解させた溶液に亜鉛のカルボン酸塩を添加し、酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液に、炭素数8以上のカルボン酸化合物を添加し、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を行う工程、
(3)工程(2)を経たアルコール分散液から表面修飾酸化亜鉛超微粒子を分離し、乾燥する工程。
(1)アルカリ金属水酸化物を沸点100℃以下の脂肪族アルコールに溶解させた溶液に亜鉛のカルボン酸塩を添加し、酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液に、炭素数8以上のカルボン酸化合物を添加し、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を行う工程、
(3)工程(2)を経たアルコール分散液から表面修飾酸化亜鉛超微粒子を分離し、乾燥する工程。
12).工程(1)において、亜鉛のカルボン酸塩を脂肪族アルコール1Lあたり0.01〜0.3mol用いることを特徴とする、11)に記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
13).工程(1)において、アルカリ金属水酸化物の使用量が亜鉛のカルボン酸塩1molに対して1.5〜4molであることを特徴とする、11)または12)のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
14).7)〜10)のいずれかに記載の合成樹脂組成物を製造する方法において、11)〜13)のいずれかに記載の製造方法で得られた表面修飾酸化亜鉛超微粒子を合成樹脂に配合することを特徴とする、合成樹脂組成物の製造方法。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は、数平均粒子径が0.5〜20nmの範囲にあり、粒子径分布もシャープであるため量子効果に由来する特徴が顕著に現れる。したがって紫外線吸収能、フォトルミネッセンスに優れる。また液体や樹脂中に分散させた場合、凝集せず均一分散が可能であるため透明性に優れ、さらに耐熱性向上、耐候性向上、光安定性向上などの効果を付与できる。しかも本発明の酸化亜鉛超微粒子は収率高く安価に製造可能であるため経済的である。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は表面をカルボン酸化合物で修飾されているため、酸化亜鉛超微粒子が有する光触媒活性を損なうことがない。これらの特徴から本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子および合成樹脂組成物は、抗菌性素材、防汚性素材、化粧品、光学材料、電子材料、自動車部品、ガラス代替樹脂、塗料、コーティング剤、接着剤、容器、建築材料などに幅広く適用可能である。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は、炭素数8以上のカルボン酸化合物が表面に結合してなる、数平均粒子径が0.5〜20nmの表面修飾酸化亜鉛超微粒子であり、該カルボン酸化合物は、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上であり、かつ該カルボン酸化合物の量は酸化亜鉛100重量部に対して10〜100重量部の範囲にある。
本発明の酸化亜鉛超微粒子を表面修飾するカルボン酸化合物について以下に詳細に説明する。まず炭素数8以上に限定する理由は以下の通りである。湿式法による酸化亜鉛超微粒子の製造は、アルコール溶媒中で実施されることが一般的であるが、炭素数8未満のカルボン酸化合物で修飾した場合安定性が不十分であり、凝集が起こりやすい。また合成時の副生物(アルカリ金属塩など)と分離するために、酸化亜鉛超微粒子を溶液から単離することが望ましいが、炭素数8未満のカルボン酸化合物で修飾した場合、アルコールに対する溶解度が高いため、得られる酸化亜鉛超微粒子の収率が低くなったり、純度が低くなったりする。炭素数8以上のカルボン酸化合物で表面修飾することにより、粒子同士の凝集を防ぐことができる。またアルコールに対する溶解度を低くできるため、酸化亜鉛超微粒子を反応液から簡便に高収率で単離することができる。
カルボン酸化合物の要件として、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上であることが挙げられる。これはアルコールに難溶なカルボン酸化合物を用いた場合、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を効率的に行うことができず、酸化亜鉛超微粒子の凝集が起こってしまうためである。酸化亜鉛超微粒子を湿式法で合成する場合、溶媒として沸点100℃以下の脂肪族アルコールを用いることが好ましいことから、該アルコールに対する溶解度が重要となる。
カルボン酸化合物としては、表面修飾がより効率的に行える点で沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が10w/w%以上であることが好ましく、炭素数3以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が10w/w%以上であることがさらに好ましい。また表面修飾の操作を簡便に実施できる点で、25℃において液体であることがより好ましい。なおカルボン酸化合物の溶解度に関しては、溶媒100g中に溶解するカルボン酸化合物の量をxgとして、xw/w%と表す。
カルボン酸化合物の量は酸化亜鉛100重量部に対して10〜100重量部の範囲にあることが必要である。10重量部より少ない場合には酸化亜鉛超微粒子の表面を被覆して安定化させる効果が不十分で、粒子同士が凝集したり、アルコール分散液から単離する際の収率が低くなったりする。100重量部を超えると経済的でない上、酸化亜鉛超微粒子の表面に由来する特性(触媒能や熱安定化効果など)が損なわれてしまう。なお酸化亜鉛超微粒子表面を修飾する際に使用するカルボン酸化合物の量としては上記範囲を外れていても問題はなく、単離後の表面修飾酸化亜鉛超微粒子において表面被覆量が10〜100重量部の範囲にあればよい。
酸化亜鉛超微粒子に対するカルボン酸化合物による表面被覆量を見積もる方法としては、灰分測定、すなわち一定量の表面修飾酸化亜鉛超微粒子を焼成し、残渣の重量と焼失した重量とを比較して計算する方法が挙げられる。焼成によって有機成分が消失するため、残存分が酸化亜鉛成分に相当し、消失分がカルボン酸化合物成分に相当する。なお、酸化亜鉛超微粒子を安定化する効果と経済性との兼ね合いから、カルボン酸化合物の量は酸化亜鉛100重量部に対して15〜50重量部の範囲にあることが好ましい。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は単独で、あるいは樹脂中に分散された形で熱安定化剤、紫外線吸収剤、触媒、抗菌剤などとして作用する。このような効果に優れる点、および透明性に優れる点で、酸化亜鉛の数平均粒子径は1〜10nmの範囲にあることが好ましい。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は、上記カルボン酸が表面に結合することにより表面極性が低下し、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する溶解度が低くなるとともに疎水性有機溶媒や合成樹脂に対する相溶性が高くなる。沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する溶解度が低くなると、該アルコール中で酸化亜鉛超微粒子を表面修飾した後に表面修飾酸化亜鉛超微粒子が難溶性となり、アルコールからの分離精製が容易となる。収率および純度が高くなる点で、表面修飾酸化亜鉛超微粒子の沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が1w/w%以下であることが好ましく、0.5w/w%以下であることがより好ましい。
アルコールに対して難溶性あるいは不溶性とする役割は、酸化亜鉛超微粒子の表面を修飾するカルボン酸化合物が担っている。よって、カルボン酸化合物は炭素数8以上のカルボン酸化合物であることが必要である。カルボン酸化合物が酸化亜鉛超微粒子を修飾する際、カルボキシル基が酸化亜鉛表面の電子欠乏部分(亜鉛元素)に結合する。その際カルボキシル基以外の官能基があると該官能基のアルコールとの相互作用により、得られた表面修飾酸化亜鉛超微粒子の溶解度が高くなり、難溶性あるいは不溶性を付与することが困難になる。したがってカルボン酸化合物としてはカルボキシル基以外の官能基を有しないことが好ましい。
炭素数8以上のカルボン酸化合物としては、炭素数8以上のアルキル基を有するカルボン酸化合物が好ましく、具体的には、入手性、経済性の点でイソノナン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸がさらに好ましく、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸が特に好ましい。これらのカルボン酸は酸化亜鉛超微粒子を中心にちょうどミセルのような構造を形成しやすく、それによってアルコールに対する溶解度が低くなる。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は、簡便かつ安価である点で好ましくは以下の工程により得られる。すなわち、
(1)アルカリ金属水酸化物を沸点100℃以下の脂肪族アルコールに溶解させた溶液に亜鉛のカルボン酸塩を添加し、酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液に、炭素数8以上のカルボン酸化合物を添加し、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を行う工程、
(3)工程(2)を経たアルコール分散液から表面修飾酸化亜鉛超微粒子を分離し、乾燥する工程、である。
(1)アルカリ金属水酸化物を沸点100℃以下の脂肪族アルコールに溶解させた溶液に亜鉛のカルボン酸塩を添加し、酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液に、炭素数8以上のカルボン酸化合物を添加し、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を行う工程、
(3)工程(2)を経たアルコール分散液から表面修飾酸化亜鉛超微粒子を分離し、乾燥する工程、である。
上記工程(1)において使用するアルカリ金属水酸化物としては特に限定されず、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOHなどを使用可能であるが、得られる酸化亜鉛超微粒子の品質の点でNaOHあるいはKOHが好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
亜鉛のカルボン酸塩としては特に限定されず、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、アジピン酸亜鉛、ヒドロキシ酢酸亜鉛などを挙げることができる。これらは水和物であってもよく、無水物であってもよい。入手性および経済性の点で酢酸亜鉛および酢酸亜鉛二水和物が好ましい。
脂肪族アルコールとしては特に限定されないが、入手性および経済性の点でメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数3以下の脂肪族アルコールが好ましい。
工程(1)では、まずアルカリ金属水酸化物の脂肪族アルコール溶液を調製しておき、そこに亜鉛のカルボン酸塩を添加する。亜鉛のカルボン酸塩は単体で加えてもよく、脂肪族アルコール溶液として加えてもよい。反応がスムーズに進行する点で脂肪族アルコール溶液として加えることが好ましい。亜鉛のカルボン酸塩の濃度については特に限定されないが、脂肪族アルコール1Lあたり0.01〜0.3molであることが好ましく、0.02〜0.25molであることがより好ましい。濃度が低すぎると得られる酸化亜鉛超微粒子の量が少ないため経済的でなく、濃度が高すぎると酸化亜鉛超微粒子同士の凝集が起こりやすくなる。アルカリ金属水酸化物の使用量としては特に限定されないが、酸化亜鉛超微粒子の収率および純度の点で、亜鉛のカルボン酸塩1molに対して1.5〜4molが好ましく、1.8〜3molがより好ましい。
工程(1)の反応温度は特に限定されないが、経済性と酸化亜鉛超微粒子の品質の点で0〜80℃が好ましく、20〜60℃の範囲がより好ましい。反応時間については特に限定されないが、以下に示すように反応液の見かけ上の変化から決定することができる。アルカリ金属水酸化物の脂肪族アルコール溶液に亜鉛のカルボン酸塩を添加すると、最初は白色の濁りが生じるがしばらくすると無色透明となる。そのまま攪拌を続けると再び濁りが生じる。この無色透明段階の後に表れる濁りは酸化亜鉛超微粒子同士の凝集に起因するものであるため、反応液が無色透明の状態で次の工程(2)に移るのが好ましい。濃度や反応温度に左右されるため一概に言うことはできないが、一般的に3分〜5時間の範囲が好ましく、5分から3時間の範囲がより好ましい。
工程(2)において、反応液が無色透明になった段階で表面修飾剤としてのカルボン酸化合物を添加する。カルボン酸化合物は単体で加えてもよく、溶液として添加してもよいが、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾が効率よく進行する点で液体として加えることが好ましく、固体の場合は溶液として加えることが好ましい。固体のカルボン酸化合物を溶液とする際の溶媒としては特に限定されないが、工程(1)で使用する脂肪族アルコールに可溶な溶媒が好ましく、工程(1)で使用する脂肪族アルコールがより好ましい。液体のカルボン酸化合物の場合は単体で添加してもよい。
工程(2)の反応温度は特に限定されないが、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾が効率よく進行する点で0〜80℃の範囲が好ましく、20〜60℃の範囲がより好ましい。また工程間の移行がスムーズである点で工程(1)と同じ温度で実施することが好ましい。
工程(2)において酸化亜鉛超微粒子をカルボン酸化合物で表面修飾することにより、表面修飾酸化亜鉛超微粒子が脂肪族アルコールに対して難溶性または不溶性になり、沈殿として析出させることができる。工程(3)においてはこの表面修飾酸化亜鉛超微粒子を溶媒から分離し、乾燥させる。溶媒から分離する方法としては特に限定されず、ろ過、遠心分離、溶媒留去などが挙げられるが、不純物を効率的に除去できる点でろ過または遠心分離が好ましい。得られた酸化亜鉛超微粒子は乾燥前にアルコールなどの溶媒で洗浄することが好ましい。乾燥の方法としては特に限定されず、熱風乾燥、気流乾燥、減圧乾燥などを採用できる。
本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は、合成樹脂に添加して熱安定化剤、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、触媒、抗菌剤などとして使用することができる。合成樹脂としては特に限定されないが、溶融混練により容易に添加・分散できる点で熱可塑性樹脂が好ましい。また本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子は表面の極性が比較的低いという性質を有することから、合成樹脂も低極性のものが分散性の点で好ましく、ポリオレフィンがより好ましく、ポリプロピレンおよびポリエチレンが特に好ましい。ポリオレフィンは一般的に紫外線に対して弱く、耐候性が悪いという問題を有するが、本発明の表面修飾酸化亜鉛超微粒子を添加することにより透明性を損なうことなく耐候性を向上させることが可能である。
上記合成樹脂組成物において、表面修飾酸化亜鉛超微粒子の含有量については特に限定されないが、耐候性向上などの酸化亜鉛超微粒子に由来する効果と経済性の点で、合成樹脂組成物中酸化亜鉛成分として0.01〜20wt%であることが好ましく、0.1〜10wt%であることがより好ましい。表面修飾酸化亜鉛超微粒子を合成樹脂に添加する方法としては特に限定されず、溶液として混合する方法や溶融混練する方法が挙げられるが、経済性の点で溶融混練する方法が好ましい。溶融混練の際、二軸押出機、一軸押出機、プラストミル、バンバリーミキサー、ニーダーなど任意の装置を使用することができる。
以下に本発明の実施例を記載する。
カルボン酸で修飾された表面修飾酸化亜鉛超微粒子における酸化亜鉛の含有量は、灰分測定、すなわち一定量のサンプルを秤取してるつぼで焼成し、残渣の重量を測定することにより求めた。標準処方としては、0.2−0.3g程度の酸化亜鉛超微粒子をるつぼに秤取し、500℃で6時間焼成した後に残渣の重量を測定し、残渣が全て酸化亜鉛であると仮定して含有量を計算した。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察は、JEM−1200EX(日本電子(株)製)を用いて実施した。酸化亜鉛超微粒子の数平均粒子径は、TEM写真において100個の粒子径を測定し、粒子径の和を粒子数で除することにより計算した。なお表面修飾酸化亜鉛超微粒子をTEM観察した場合においても、表面修飾部分はコントラストが薄いために像として得られず、TEM写真から得られる数平均粒子径は酸化亜鉛部分の粒子径である。
X線結晶回折分析(XRD)は回転対陰極型X線回折装置RAD−RB((株)リガク製)を用いて実施した。
熱重量分析は、DTG−50((株)島津製作所製)を用いて、10mgの試料を空気気流下25℃から10℃/minで昇温し、初期の重量に対して20wt%減少したときの温度をTd20として、耐熱性の指標とした。
合成樹脂組成物の透明性は、合成樹脂組成物を平板またはフィルムにした後、JIS K7105−1981記載の方法により、濁度計NDH−300A(日本電色工業(株)製)を用いて、23℃、湿度50%の条件にてヘイズを測定して評価した。
上記フィルムの厚みは、ピーコック直読デジタルリニアゲージD−20S((株)尾崎製作所製)を用いて測定した。厚み測定の際、ダイヤルゲージスタンドとしてはSIS−6(同社製)を、デジタルカウンタとしてはC−5S(同社製)を用いた。
平板およびフィルムの耐光性評価は、スーパーキセノンウェザーメーターSX75(スガ試験機(株)製)を用いて、照度150W/m2、ブラックパネル温度83℃、湿度50%、フィルタ(内側)石英、フィルタ(外側)#320、試料枠回転数12rpmの条件でキセノンランプ照射し、照射前とヘイズを比較して実施した。
(実施例1)
温度計、攪拌装置、窒素導入管付き還流冷却管を備えた5L反応容器にKOH67gとメタノール1Lを入れ、窒素雰囲気で攪拌して溶解させた。このKOH溶液の温度が35℃になるように調節した。酢酸亜鉛二水和物133gをメタノール2Lに溶解させ、攪拌しながら上記KOH溶液に添加した。添加直後は白濁した不透明な懸濁液であったが、30分後には透明分散液となった。さらに30分間攪拌した後、オレイン酸35gをメタノール100mLに溶解させた溶液を反応容器に加え、1時間攪拌して酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を実施した。
温度計、攪拌装置、窒素導入管付き還流冷却管を備えた5L反応容器にKOH67gとメタノール1Lを入れ、窒素雰囲気で攪拌して溶解させた。このKOH溶液の温度が35℃になるように調節した。酢酸亜鉛二水和物133gをメタノール2Lに溶解させ、攪拌しながら上記KOH溶液に添加した。添加直後は白濁した不透明な懸濁液であったが、30分後には透明分散液となった。さらに30分間攪拌した後、オレイン酸35gをメタノール100mLに溶解させた溶液を反応容器に加え、1時間攪拌して酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を実施した。
得られた白色懸濁液をろ過し、沈殿をメタノールで洗浄後減圧乾燥することにより、オレイン酸で修飾された酸化亜鉛超微粒子54gをパウダーとして得た。灰分測定より酸化亜鉛は74wt%、オレイン酸は26wt%であった。したがって酸化亜鉛100重量部に対するオレイン酸の量は35重量部であり、酸化亜鉛の単離収率は81%である。得られた表面修飾酸化亜鉛超微粒子のTEM写真を図1に、XRDスペクトルを図2に示す。数平均粒子径5nmの単分散微粒子が得られており、しかも粒子同士が凝集せずに分散して存在していることを確認できた。XRDスペクトルにおいて酸化亜鉛以外のシグナルは認められないことから純度の高い結晶性の酸化亜鉛が得られたことがわかる。
(実施例2)
KOH897gをメタノール13.5Lに溶解させ、50L反応器に入れた。容器内を窒素置換し、溶液の温度を30℃に保ちながら攪拌した。酢酸亜鉛二水和物1773gを別の容器でメタノール24Lに溶解させ、上記KOH溶液に添加した。容器をメタノール2.5Lで洗い、定量的に移した。30℃で1時間攪拌することにより、透明な分散液を得た。表面修飾のためのカルボン酸としてステアリン酸456gをジメチルホルムアミド1Lに溶解させた溶液を、反応容器に添加した。1時間攪拌した後に懸濁液を払い出し、ろ過、メタノールで洗浄後減圧乾燥することによりステアリン酸で表面修飾された酸化亜鉛超微粒子928gを得た。
KOH897gをメタノール13.5Lに溶解させ、50L反応器に入れた。容器内を窒素置換し、溶液の温度を30℃に保ちながら攪拌した。酢酸亜鉛二水和物1773gを別の容器でメタノール24Lに溶解させ、上記KOH溶液に添加した。容器をメタノール2.5Lで洗い、定量的に移した。30℃で1時間攪拌することにより、透明な分散液を得た。表面修飾のためのカルボン酸としてステアリン酸456gをジメチルホルムアミド1Lに溶解させた溶液を、反応容器に添加した。1時間攪拌した後に懸濁液を払い出し、ろ過、メタノールで洗浄後減圧乾燥することによりステアリン酸で表面修飾された酸化亜鉛超微粒子928gを得た。
灰分測定より酸化亜鉛は56wt%、ステアリン酸は44wt%であった。したがって酸化亜鉛100重量部に対するステアリン酸の量は79重量部であり、酸化亜鉛の単離収率は79%である。得られた表面修飾酸化亜鉛超微粒子のTEM写真を図3に示す。数平均粒子径3nmの単分散微粒子が得られており、粒子同士の凝集がほとんど認められない。XRD分析では、実施例1と同様に酸化亜鉛以外のシグナルは認められなかった。
(実施例3)オレイン酸修飾酸化亜鉛超微粒子/ポリプロピレン組成物
実施例1で得られたオレイン酸修飾酸化亜鉛超微粒子78.1gと、市販ポリプロピレン(PP)4000g(F−794NV:(株)プライムポリマー製)を予めドライブレンドした後、シリンダー温度を210℃、スクリュ回転数100rpmに設定したベント付き同方向二軸押出し機TEX30HSS(33mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製)で溶融混練して表面修飾酸化亜鉛超微粒子の分散したPP組成物のストランドを得た。押出されたストランドは射出成形しやすいようにペレタイザーSCF−100(いすず化工機(株)製)でペレット化した後、80℃で5時間乾燥した。このペレットの熱重量分析の結果、Td20は318℃と高い耐熱性を示した。
実施例1で得られたオレイン酸修飾酸化亜鉛超微粒子78.1gと、市販ポリプロピレン(PP)4000g(F−794NV:(株)プライムポリマー製)を予めドライブレンドした後、シリンダー温度を210℃、スクリュ回転数100rpmに設定したベント付き同方向二軸押出し機TEX30HSS(33mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製)で溶融混練して表面修飾酸化亜鉛超微粒子の分散したPP組成物のストランドを得た。押出されたストランドは射出成形しやすいようにペレタイザーSCF−100(いすず化工機(株)製)でペレット化した後、80℃で5時間乾燥した。このペレットの熱重量分析の結果、Td20は318℃と高い耐熱性を示した。
得られた合成樹脂組成物のペレットを、型締め圧力80トンの射出成形機IS80EPN(東芝機械(株)製)にて、シリンダー温度170〜200℃、ノズル温度210℃、射出速度は最大速度の35%、射出圧力は最大圧力の90%、背圧1.0MPa、射出時間10秒、冷却時間30秒、金型温度35℃の条件で射出成形し、厚さ2.0mmの透明な平板を得た。灰分測定より求めた酸化亜鉛含有量は1.1%であった。この平板のヘイズ値は69%であった。この平板にキセノンランプ照射(50MJ/m2)を行ったところ、目視ではほとんど変化が認められず、ヘイズ値は75%であり、照射前との差が6%と小さかった。このことから酸化亜鉛微粒子による紫外線吸収効果により、PP樹脂の光劣化が抑制されたことがわかる。
(比較例1)市販酸化亜鉛超微粒子/PP組成物
酸化亜鉛超微粒子として、市販の酸化亜鉛超微粒子57.8g(シグマアルドリッチジャパン(株)製、数平均粒子径50〜70nm)を用いた以外は実施例3と同様の方法によりペレット化した。ペレットの熱重量分析の結果Td20は310℃であり、実施例3の場合よりも耐熱性が低かった。このペレットを実施例3と同様に成形して厚さ2.0mmの平板を得た。灰分測定より求めた酸化亜鉛含有量は1.2%であった。得られた市販酸化亜鉛超微粒子を含有した平板は白色不透明であり、酸化亜鉛超微粒子が樹脂中で凝集していることが目視により確認できた。この平板は透明度が非常に低いため、ヘイズ測定を実施することができなかった。さらにキセノンランプ照射(50MJ/m2)を行ったところ、平板表面に多数のクラックが認められ、紫外線により劣化してしまったことを確認できた。
酸化亜鉛超微粒子として、市販の酸化亜鉛超微粒子57.8g(シグマアルドリッチジャパン(株)製、数平均粒子径50〜70nm)を用いた以外は実施例3と同様の方法によりペレット化した。ペレットの熱重量分析の結果Td20は310℃であり、実施例3の場合よりも耐熱性が低かった。このペレットを実施例3と同様に成形して厚さ2.0mmの平板を得た。灰分測定より求めた酸化亜鉛含有量は1.2%であった。得られた市販酸化亜鉛超微粒子を含有した平板は白色不透明であり、酸化亜鉛超微粒子が樹脂中で凝集していることが目視により確認できた。この平板は透明度が非常に低いため、ヘイズ測定を実施することができなかった。さらにキセノンランプ照射(50MJ/m2)を行ったところ、平板表面に多数のクラックが認められ、紫外線により劣化してしまったことを確認できた。
(比較例2)PP単独
実施例3で使用した市販PP4000gのみを用い、酸化亜鉛超微粒子を含有させずに実施例3と同様の方法によりペレット化した。ペレットの熱重量分析の結果Td20は298℃であり、実施例3と比較して耐熱性に著しく劣ることを確認した。このペレットを実施例3と同様に成形して厚さ2.0mmの透明な平板を得た。この平板のヘイズ値は60%であった。この平板にキセノンランプ照射(50MJ/m2)を行ったところ、表面に多数のクラックが入り、ヘイズが81%に上昇した。照射前とのヘイズの差は21%と大きく、酸化亜鉛超微粒子が入っていないためにPP樹脂が紫外線により劣化してしまったことを確認できた。
実施例3で使用した市販PP4000gのみを用い、酸化亜鉛超微粒子を含有させずに実施例3と同様の方法によりペレット化した。ペレットの熱重量分析の結果Td20は298℃であり、実施例3と比較して耐熱性に著しく劣ることを確認した。このペレットを実施例3と同様に成形して厚さ2.0mmの透明な平板を得た。この平板のヘイズ値は60%であった。この平板にキセノンランプ照射(50MJ/m2)を行ったところ、表面に多数のクラックが入り、ヘイズが81%に上昇した。照射前とのヘイズの差は21%と大きく、酸化亜鉛超微粒子が入っていないためにPP樹脂が紫外線により劣化してしまったことを確認できた。
(実施例4)ステアリン酸修飾酸化亜鉛超微粒子/PP組成物
実施例2で得られた、ステアリン酸修飾酸化亜鉛超微粒子0.77gと、市販PP40g(F−794NV:(株)プライムポリマー製)を予めドライブレンドした後、シリンダー温度を210℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き同方向二軸押出し機ULTnano05(15mmφ、L/D=15、(株)テクノベル製)で混練して表面修飾酸化亜鉛超微粒子の分散したPP組成物のストランドを得た。押出されたストランドはプレス成形しやすいようにペレタイザーSCF−100(いすず化工機(株)製)でペレット化した後、80℃で5時間乾燥した。得られたペレットを設定温度210℃、設定圧力20MPaでホットプレス成形し、厚さ41μmの透明なフィルムを得た。このフィルムのヘイズ値は14%であった。
実施例2で得られた、ステアリン酸修飾酸化亜鉛超微粒子0.77gと、市販PP40g(F−794NV:(株)プライムポリマー製)を予めドライブレンドした後、シリンダー温度を210℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き同方向二軸押出し機ULTnano05(15mmφ、L/D=15、(株)テクノベル製)で混練して表面修飾酸化亜鉛超微粒子の分散したPP組成物のストランドを得た。押出されたストランドはプレス成形しやすいようにペレタイザーSCF−100(いすず化工機(株)製)でペレット化した後、80℃で5時間乾燥した。得られたペレットを設定温度210℃、設定圧力20MPaでホットプレス成形し、厚さ41μmの透明なフィルムを得た。このフィルムのヘイズ値は14%であった。
灰分測定の結果、酸化亜鉛の含有量は1.0%であった。フィルムの一部を熱重量分析した結果、Td20は321℃であり耐熱性に優れることを確認した。
このフィルムにキセノンランプ照射(16MJ/m2)を行ったところ、目視ではほとんど変化が認められず、ヘイズ値は23%であり、照射前との差が9%と小さかった。このことから酸化亜鉛微粒子による紫外線吸収効果により、PP樹脂の光劣化が抑制されたことがわかる。
(比較例3)市販酸化亜鉛超微粒子/PP組成物
酸化亜鉛超微粒子として、市販の酸化亜鉛超微粒子0.40g(シグマアルドリッチジャパン(株)製、数平均粒子径50〜70nm)を用いた以外は実施例4と同様に厚さ40μmのフィルムを得た。このフィルムは白色不透明であり、酸化亜鉛超微粒子が樹脂中で凝集していることが目視により確認できた。ヘイズ値は69%であった。このフィルムの一部を熱重量分析した結果、Td20は305℃であり、実施例4と比較して耐熱性に劣ることを確認した。このフィルムにキセノンランプ照射(16MJ/m2)を行ったところ、フィルムの形状の保持ができないほどに劣化が生じていた。このことから市販酸化亜鉛超微粒子に紫外線吸収剤としての効果がないことを確認できた。
酸化亜鉛超微粒子として、市販の酸化亜鉛超微粒子0.40g(シグマアルドリッチジャパン(株)製、数平均粒子径50〜70nm)を用いた以外は実施例4と同様に厚さ40μmのフィルムを得た。このフィルムは白色不透明であり、酸化亜鉛超微粒子が樹脂中で凝集していることが目視により確認できた。ヘイズ値は69%であった。このフィルムの一部を熱重量分析した結果、Td20は305℃であり、実施例4と比較して耐熱性に劣ることを確認した。このフィルムにキセノンランプ照射(16MJ/m2)を行ったところ、フィルムの形状の保持ができないほどに劣化が生じていた。このことから市販酸化亜鉛超微粒子に紫外線吸収剤としての効果がないことを確認できた。
(比較例4)PP単独
実施例4で使用した市販PP40gのみを用い、実施例4と同様に厚さ45μmの透明なフィルムを得た。このフィルムのヘイズ値は6.8%であった。このフィルムの一部を熱重量分析した結果、Td20は296℃であり、実施例4と比較して耐熱性に著しく劣ることを確認した。このフィルムにキセノンランプ照射(16MJ/m2)を行ったところ、フィルムの形状の保持ができないほどに劣化が生じていた。このことから本発明の酸化亜鉛超微粒子を含有させない場合は樹脂の光劣化が著しいことが確認できた。
実施例4で使用した市販PP40gのみを用い、実施例4と同様に厚さ45μmの透明なフィルムを得た。このフィルムのヘイズ値は6.8%であった。このフィルムの一部を熱重量分析した結果、Td20は296℃であり、実施例4と比較して耐熱性に著しく劣ることを確認した。このフィルムにキセノンランプ照射(16MJ/m2)を行ったところ、フィルムの形状の保持ができないほどに劣化が生じていた。このことから本発明の酸化亜鉛超微粒子を含有させない場合は樹脂の光劣化が著しいことが確認できた。
Claims (14)
- 酸化亜鉛100重量部あたりその表面が、沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が5w/w%以上である炭素数8以上のカルボン酸化合物10〜100重量部で修飾された、酸化亜鉛の数平均粒子径が0.5〜20nmの表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
- 酸化亜鉛の数平均粒子径が1〜10nmである、請求項1に記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
- カルボン酸化合物の量が15〜50重量部である、請求項1または2のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
- 沸点100℃以下の脂肪族アルコールに対する25℃における溶解度が1w/w%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
- カルボン酸化合物が、カルボキシル基以外の官能基を有しないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
- カルボン酸化合物が、イソノナン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子。
- 請求項1〜6のいずれかに記載表面修飾の酸化亜鉛超微粒子と合成樹脂とを含有する合成樹脂組成物。
- 表面修飾酸化亜鉛超微粒子の含有量が、酸化亜鉛成分として0.01〜20wt%であることを特徴とする、請求項7に記載の合成樹脂組成物。
- 合成樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項7または8のいずれかに記載の合成樹脂組成物。
- 表面修飾酸化亜鉛超微粒子と熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られる、請求項9に記載の合成樹脂組成物。
- 以下の工程からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子の製造方法:
(1)アルカリ金属水酸化物を沸点100℃以下の脂肪族アルコールに溶解させた溶液に亜鉛のカルボン酸塩を添加し、酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛超微粒子のアルコール分散液に、炭素数8以上のカルボン酸化合物を添加し、酸化亜鉛超微粒子の表面修飾を行う工程、
(3)工程(2)を経たアルコール分散液から表面修飾酸化亜鉛超微粒子を分離し、乾燥する工程。 - 工程(1)において、亜鉛のカルボン酸塩を脂肪族アルコール1Lあたり0.01〜0.3mol用いることを特徴とする、請求項11に記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
- 工程(1)において、アルカリ金属水酸化物の使用量が亜鉛のカルボン酸塩1molに対して1.5〜4molであることを特徴とする、請求項11または12のいずれかに記載の表面修飾酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
- 請求項7〜10のいずれかに記載の合成樹脂組成物を製造する方法において、請求項11〜13のいずれかに記載の製造方法で得られた表面修飾酸化亜鉛超微粒子を合成樹脂に配合することを特徴とする、合成樹脂組成物の製造方法。
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