JP2008266029A - セメント系空洞充填材とその混練方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメントと水とフライアッシュとを含み、単位水量が380〜480kg/m3で、水セメント比が150〜350%であるセメント系空洞充填材に、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた増粘性混和剤を、上記第1及び第2の水溶性低分子化合物が単位水量に対して、それぞれ1.0〜2.5重量%の割合になるように配合するとともに、アルミン酸ソーダから成る凝集剤を10〜20kg/m3配合した。
【選択図】なし
Description
ところで、従来、空洞充填に使用されてきたエアモルタルは流動性が大きいため、覆工のひび割れや目地から漏れ出しやすいだけでなく、地盤条件、特に地下水に対する材料分離抵抗性が低いといった欠点があったが、近年は、この欠点を解消するために、エアモルタルにベントナイトあるいはフライアッシュ等を加えた可塑性注入材の開発が行われてきている(例えば、特許文献1参照)。
一方、セメントと水と骨材とに、カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物とを組み合わせた増粘性混和材を配合した、流動性に優れるとともに、材料分離抵抗性や水中不分離性にも優れたコンクリート組成物とその混練方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
そこで、上記可塑性注入材に、上記コンクリート組成物に用いられた増粘性混和材を添加することも考えられるが、上記増粘性混和材を添加すると非収縮性、材料分離抵抗性、水中不分離性、及び、充填性については向上するものの、練り上げ直後と所定時間(例えば、60分)後のフロー値の差が小さくなってしまうため、初期フローを確保すると所定時間後のフロー値も大きくなり、その結果、十分な非漏出性を得ることが困難であった。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセメント系空洞充填材であって、単位水量が380〜480kg/m3であり、水セメント比が150〜350%であり、上記第1及び第2の水溶性低分子化合物が単位水量に対して、それぞれ1.0〜2.5重量%の割合で配合されており、かつ、上記凝集剤が10〜20kg/m3配合されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のセメント系空洞充填材において、上記凝集剤をアルミン酸ソーダとしたものである。
また、請求項4に記載の発明は、セメントとフライアッシュとカチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた増粘性混和剤と凝集剤と水とを混練して成るセメント系空洞充填材の混練方法であって、セメント、水、フライアッシュに上記第1の水溶性低分子化合物を添加して混練した後、上記混練物に上記第2の水溶性低分子化合と上記凝集剤とを添加して再度混練することを特徴とする。
また、上記セメント系空洞充填材において、単位水量を380〜480kg/m3とし、水セメント比を150〜350%とし、上記第1及び第2の水溶性低分子化合物が単位水量に対して、それぞれ1.0〜2.5重量%の割合で配合するとともに、更に、上記凝集剤を10〜20kg/m3配合すれば、上記特性を確実に発揮させることができる。
また、上記凝集剤を上記増粘性混和剤との相溶性に優れたアルミン酸ソーダとすれば、上記増粘性混和剤の効果による初期流動性と上記凝集剤による非漏出性とを適度に発揮させることができる。
また、上記セメント系空洞充填材を混練する際に、セメント、水、フライアッシュに上記第1の水溶性低分子化合物を添加して混練した後、上記混練物に上記第2の水溶性低分子化合と上記凝集剤とを添加して再度混練するようにすれば、最初の混練時に泡が発生してこれが混練物中に取り込まれるので、起泡剤を用いることなく充填材中の空気量を確保することができる。
本発明の最良の形態に係るセメント系空洞充填材は、セメント、水、フライアッシュに、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物と、アニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを含有する増粘性混和剤を配合するとともに、更に、凝集剤を配合したものである。
上記セメントとしては、石灰石・粘土・酸化鉄などを原料とした普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメントや、高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントなどの混合セメントを用いることができる。
また、本発明の増粘性混和剤に用いられる第1の水溶性低分子化合物としては、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤が好ましい。また、第2の水溶性低分子化合物としては、芳香環を有するスルホン酸塩が好ましく、特に、アルキルアリルスルホン酸塩を主成分とする添加剤が好ましい。
一方、凝集剤としては硫酸アルミニウムや硫酸鉄、アルミン酸ソーダ、消石灰などの他、高分子凝集剤が挙げられるが、上記増粘性混和剤との相溶性に優れたアルミン酸ソーダを用いることが好ましい。
(1)不均質な空洞の隅々まで充填できること(流動性・充填性)
(2)充填中や充填後に覆工コンクリートのひび割れや目地(コンクリートの継ぎ目)から充填材が漏れないこと
(3)硬化後も地山と充填材が密着している状態を保つこと(非収縮性)
(4)覆工コンクリートに荷重負担を与えないこと(地山と同等の比重)
(5)地盤反力を均等に覆工コンクリートに伝達できること(地山と同等の強度)
(6)地山に湧水があった場合でも各種性能を発揮できること(水中分離抵抗性)
上記単位水量及び水セメント比の範囲は、流動性と充填性とをともに確保するのに必要な範囲である。このとき、上記第1及び第2の水溶性低分子化合物とを単位水量に対して、それぞれ1.0〜2.5重量%の割合で配合することが肝要で、配合の割合が1.0重量%未満である場合には、粘性が得られず、ブリーディングが増大するため材料分離抵抗性、水中不分離性が低下する。一方、2.5重量%を超えた場合には粘性が大きくなり、十分な初期流動性が得られないだけでなく、充填性も低下する。
一方、凝集剤としては、アルミン酸ソーダを10〜20kg/m3配合することが好ましく、これにより、上記増粘性混和剤の添加により得られた初期流動性を保持しつつ、練り上げ後の所定時間後にはそのフロー値が所定のフロー値以下になるように調整するようにしている。これにより、初期フロー値と所定時間後のフロー値との差が大きくなるので、優れた初期流動性と非漏出性とを備えたセメント系空洞充填材を得ることができる。上記凝集剤の配合量が10kg/m3に満たない場合には、所定時間後のフロー値の低下が十分でなく、覆工コンクリートのひび割れや目地から充填材が漏れる恐れがある。また、上記凝集剤の配合量が20kg/m3を超えた場合には、早期にフロー値が低下してしまうため、空洞を十分に充填できなくなるので、上記凝集剤の配合量としては10〜20kg/m3とすることが好ましい。
なお、強度についてセメントとフライアッシュの比により調整する。地山と同等の強度を確保するためには、セメントの単位粉体重量(セメントとフライアッシュとの総量に対するセメントの比;重量比)を10〜30重量%とすることが好ましい。
このように、セメント系空洞充填材の単位水量、水セメント比、セメントをフライアッシュとの配合比、第1及び第2の水溶性低分子化合物の単位水量に対する割合配合、及び、アルミン酸ソーダの配合量を調整することにより、上記セメント系空洞充填材を矢板工法で建設された既存のトンネルの空洞を充填するための充填材として好適に用いることができる。
また、上記セメント系空洞充填材を混練する際に、セメント、水、可塑化材に上記第1の水溶性低分子化合物を添加して混練した後、上記混練物に上記第2の水溶性低分子化合と上記凝集剤とを添加して再度混練するようにすれば、最初の混練時に泡が発生してこれが混練物中に取り込まれるので、起泡剤を用いることなく充填材中の空気量を確保することができる。
[実施例]
実施例1
普通ポルトランドセメント163kg/m3とフライアッシュ651kg/m3 と水488kg/m3に、アルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤(花王株式会社製、商品名「ビスコトップ100FB」;登録商標)7.32kg/m3を添加して練り混ぜた後、アルキルアリルスルホン酸塩を主成分とする添加剤(花王株式会社製、商品名「ビスコトップ100FA」;登録商標)と凝集剤(アルミン酸ソーダ)7.32kg/m3と凝集剤(アルミン酸ソーダ)10kg/m3を添加して再度混練して、セメント系空洞充填材を作製した。
このセメント系空洞充填材の水粉体比は60%、水セメント比は300%である。また、第1及び第2の水溶性低分子化合物(「ビスコトップ100FB」、「ビスコトップ100FA」)の添加率は単位水量に対してそれぞれ1.5%である。
なお、評価基準としては、矢板工法で建設された既存のトンネルの空洞を充填するための充填材として好適に用いる要求性能とした。
流動性については、フロー試験により評価する。
フロー試験は、内径80mm、高さ80mmの塩ビ管フローコーンに充填材を注入した後、上記コーンを取り除き、上記充填材の広がったときの縦横の広がりの平均をフロー値とする。なお、フロー試験は静置フローと15打フローの両方を行う。そして、静置フロー値が練り上げ直後で80〜155mm、60分後で100mm以下であることと、打撃フロー値が練り上げ直後で130〜205mm、60分後で170mm以下であることが要求されている。
また、強度については、材齢28日での一軸圧縮強度が1.5N/mm2以上、比重については、11〜15kN/m3であることが要求されている。
充填性については、図2に示すような、注入口11から吐出口12に向かって高さが高くなるモルタル製の床13が設けられた箱状の容器14に透明アクリル板15の蓋をし、この容器14内に上記注入口11から充填材を充填した場合、上記充填材が上記容器14内だけでなく、上記容器14内に予め設置された障害物であるコンクリートブロック16a、角材16b、及び、H型鋼16cの周囲にも隙間なく密着充填されていることが要求されている。
非漏出性については、図3に示すような、複数の幅(1,3,5,7,10mm)の隙間21〜25が設けられた試験容器20に充填材を注入して、上記充填材が流出した最小の隙間の幅で評価する。60分経過後において5mm以下の隙間(同図の隙間21〜23)に完全に流出があってはならないことが要求されている。
水中分離抵抗性については、透明水槽内に充填材を投入し、上記水槽内の水の濁度もしくはpHを測定して評価する。濁度の場合、分光光度計で水面から10cmの位置での上記水の光透過率を測定し、充填材投入後60分経過後の水の光透過率測定値増減率が±2%であることが要求されている。一方、pHの場合には、水面から10cmの位置にpHメータを取付けて水のpHを測定し、注入直後から60分経過後のpH測定比率が±10%であることが要求されている。
非収縮性については、300φ×1000mmの容器に充填材を充填してその収縮量を測定し評価する。28日後の収縮量が20mm以下であることが要求されている。
なお、試験の詳細については、JHS313、JIS A1132等を参照されたい。
フロー試験結果
静置フローは、練り上がり直後が124mm、60分経過後が90mmであった。
また、打撃フロー(15打)は、練り上がり直後が197mm、60分経過後が139mmであった。これらの結果から、本発明によるセメント系空洞充填材は優れた初期流動性を示すとともに、60分経過後にはフロー値が下がって広がりにくくなることが確認された。したがって、覆工のひび割れや目地から漏れ出しを確実に防止することができる。なお、上記セメント系空洞充填材については、後述するように非漏出性の試験も行い、非漏出性にも優れていることを再度確認している。
水中分離抵抗性試験結果
濁度:光透過率の変化率を求めたところ、60分後で99.6%と規格(±2%)の約1/5であった。
pH;pHの変化率は−1.7%で、これも規格(±10%)の1/5以下であった。
充填性試験結果
容器内だけでなく、障害部分(角材やH型)にも隙間なく密着充填されていることが確認された。
非漏出試験結果
60分経過後において5mm以下の隙間の通過はなかった。
非収縮性試験験結果
材齢28日での収縮量は約0.5mm以下で、殆ど収縮していなかった。
以上の試験結果ら、本発明のセメント系空洞充填材は、既存のトンネルの空洞を充填するための充填材として好適に用いることができることが確認された。
図4の表に示すような、凝集剤の配合量が20kg/m3であるセメント系空洞充填材(試料No.1,2)と、10kg/m3であるセメント系空洞充填材(試料No.3,4)と、凝集剤を配合しなかったセメント系空洞充填材(試料No.5,6,7)を作製し、凝集剤の添加量による流動性の変化を調べた。
なお、表のWは水、Cはセメント、FAはフライアッシュ、VTAは第2の水溶性低分子化合物、VTBは第1の水溶性低分子化合物で、W/Cは水セメント比、W/Pは水粉体比である。ここで、粉体とは、セメントとフライアッシュとを指す。ここでは、上記実施例1と同様に、セメントとして普通ポルトランドセメントを用いた。
同図の表に示すように、凝集剤を配合したセメント系空洞充填材は全て、静置フローにおいても打撃フローにおいても、適度な初期流動性を確保することができるとともに、60分経過後のフロー値の減少が大きく、かつ、既存のトンネルの空洞を充填するための充填材の流動性の規格を十分に満足している。
これに対して、凝集剤が配合されていないセメント系空洞充填材は全て、静置フローにおいても打撃フローにおいても、60分経過後のフロー値が上記規格を満たしていないことがわかる。
なお、水中不分離性については、全ての試料が規格を満足している。
このように、凝集剤を10〜20kg/m3配合することにより、優れた材料分離抵抗性、水中不分離性に加えて、優れた初期流動性と非漏出性とを備えたセメント系空洞充填材を得ることができることが確認された。
図5の表及び図6の表に示すように、凝集剤の配合量を15kg/m3、第1及び第2の水溶性低分子化合物それぞれの水に対する配合量を1.5重量%と一定とし、水セメント比を変化させたセメント系空洞充填材(試料No.11〜17及び試料No.21〜27)を作製し、流動性の変化を調べた。ここで、セメントは、試料No.11〜17では上記実施例1,2と同様に、普通ポルトランドセメントを用い、試料No.21〜27では高炉セメントB種を用いた。
上記各表に示すように、上記セメント系空洞充填材は、水セメント比が160〜410%の広い範囲で、適度な初期流動性を確保することができるとともに、60分経過後のフロー値の減少が大きく、かつ、既存のトンネルの空洞を充填するための充填材の流動性の規格を十分に満足していることが確認された。なお、図6の表の強度は材齢14日(2week)での強度である。
なお、中には強度が低いものもあるが、これは水粉体比が大きいためと考えられる。
16a コンクリートブロック、16b 角材、16c H型鋼、
20 試験容器、21〜25 隙間。
Claims (4)
- セメントと水とフライアッシュとを混練して成るセメント系空洞充填材であって、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた増粘性混和剤と、凝集剤とが配合されていることを特徴とするセメント系空洞充填材。
- 上記セメント系空洞充填材は単位水量が380〜480kg/m3であり、水セメント比が150〜350%であり、上記第1及び第2の水溶性低分子化合物とが単位水量に対して、それぞれ1.0〜2.5重量%の割合で配合されており、かつ、上記凝集剤が10〜20kg/m3配合されていることを特徴とする請求項1に記載のセメント系空洞充填材。
- 上記凝集剤がアルミン酸ソーダであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセメント系空洞充填材。
- セメントとフライアッシュとカチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた増粘性混和剤と凝集剤と水とを混練して成るセメント系空洞充填材の混練方法であって、セメント、水、フライアッシュに上記第1の水溶性低分子化合物を添加して混練した後、上記混練物に上記第2の水溶性低分子化合と上記凝集剤とを添加して再度混練することを特徴とするセメント系空洞充填材の混練方法。
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