JP2008260870A - 脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油脂類とアルコール類とのエステル交換反応において用いる固体触媒の活性の低下を抑制することができる脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法は、油脂類とアルコール類とを固体触媒の存在下において反応させる反応工程の前に、油脂類および/またはアルコール類の溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程を含むことを特徴としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法に関するものである。より詳細には、燃料、食品、化粧品、医薬品などの用途に好適に用いることができる脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法に関する。
脂肪酸アルキルエステルは、動植物油脂から得られるものが食用として使用されているほかにも、化粧品または医薬品などの分野において広く用いられている。また、近年では、軽油などに添加する燃料用としての用途も注目されている。これはすなわち、二酸化炭素の排出削減の目的から開発が進められている動植物油脂由来のバイオディーゼル燃料であり、軽油などの代替として直接使用する燃料として、または軽油などに一定の比率で添加した燃料として使用する。また、グリセリンは、主として、ニトログリセリンの製造原料として用いられているほか、アルキド樹脂の原料、医薬品、食料品、印刷インキおよび化粧品などの幅広い分野において用いられている。
このような脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの製造方法としては、油脂の主成分であるトリグリセリドをアルコール類とエステル交換して製造する方法が知られている。油脂類とアルコール類とのエステル交換反応による製造方法においては、一般的に、均一系アルカリ触媒を用いる方法が工業的に用いられているが、煩雑な触媒の分離除去工程が必要となる。また、油脂に含まれる遊離の脂肪酸がアルカリ触媒によってけん化されることにより石鹸が副生することになり、多量の水で洗浄する洗浄工程が必要であるばかりでなく、石鹸の乳化作用によって脂肪酸アルキルエステルの収率が低下する。また、グリセリンを精製するための精製処理も煩雑となる。
上記の問題を解決するために、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの製造における触媒として用いることができる固体触媒が開発されている(例えば、特許文献1〜6参照)。また、特許文献7には、固体触媒を用いた脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法について開示されている。
特開2005−200398号公報(平成17年7月28日公開) 特開2006−225352号公報(平成18年8月31日公開) 特開2006−225353号公報(平成18年8月31日公開) 特開2006−225578号公報(平成18年8月31日公開) 特開2005−177722号公報(平成17年7月7日公開) 仏国特許出願公開第2752242号 特開2005−206575号公報(平成17年8月4日公開) 米国特許第6878837号
しかしながら、上記のように、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造における触媒として固体触媒を用いる場合、触媒の活性が低下してしまうことがあり、煩雑な作業である触媒の交換を頻繁に行う必要がある。
固体触媒の活性の低下を抑制するための一例として、特許文献8には、油脂およびアルコール中の水分濃度を規定することによりエステル交換反応系における遊離脂肪酸の生成を抑制する方法が開示されている。
しかし、特許文献8に記載の方法であっても、固体触媒の劣化を十分に抑制することができないため、固体触媒が触媒作用を有する時間を十分に確保できない。
このように、固体触媒の劣化は、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生産性および製造コストの低減を妨げる一因となり、固体触媒の劣化を抑制し得る製造方法の開発が求められていた。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、固体触媒の活性の低下を十分に抑制する、すなわち固体触媒を長寿命化することができる脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、固体触媒の劣化要因の一つが、反応系中において生じる過酸化物などの酸化生成物が固体触媒に吸着する可能性があることを明らかにした。そして、固体触媒を用いた油脂類とアルコール類とのエステル交換反応において、原料中の溶存酸素量を低減させることによって、固体触媒の劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法(以下、単に製造方法とも称する)は、上記課題を解決するために、油脂類とアルコール類とを固体触媒の存在下において反応させる反応工程を含む脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの少なくともいずれか1つを製造する製造方法であって、上記反応工程の前に、上記油脂類および上記アルコール類の少なくともいずれか1つの溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程をさらに含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る製造方法は、上記反応工程の前に、油脂類およびアルコール類の少なくともいずれか1つの溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程を含んでいる。
溶存酸素濃度低減工程を含むことによって、油脂類が酸化されることにより生じる過酸化物などの酸化生成物が固体触媒に吸着することを防ぐことができる。これによって、固体触媒の活性の低下を抑制することができる効果を奏する。すなわち、固体触媒を長寿命化することができる効果を奏する。
また、固体触媒が長寿命化することによって、活性の低下した固体触媒を交換する煩雑な作業の頻度を減らすだけでなく、さらには、同量の固体触媒あたりの脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生成量を増加させることができる。これによって、生成物あたりの固体触媒のコストを低減することができ、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生産性を向上することができる効果も併せて奏する。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記溶存酸素濃度低減工程は、上記油脂類および上記アルコール類の少なくともいずれか1つにおける溶存酸素濃度を30mg/L以下とする工程であることが好ましい。
上記油脂類および上記アルコール類の少なくともいずれか1つにおける溶存酸素濃度を30mg/L以下とすることによって、油脂類が酸化されることにより生じる過酸化物などの生成を十分に抑制することができる。これによって、固体触媒の劣化要因となる過酸化物などの表面吸着量を十分に低減できる効果を奏する。すなわち、固体触媒を長寿命化することができる効果を奏する。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記溶存酸素濃度低減工程は、上記油脂類および上記アルコール類の混合溶液における溶存酸素濃度を30mg/L以下とする工程であることが好ましい。
上記油脂類および上記アルコール類の混合溶液における溶存酸素濃度を30mg/L以下とすることによって、油脂類が酸化されることにより生じる過酸化物などの生成を十分に抑制することができる。これによって、過酸化物などが固体触媒表面に付着することによって、固体触媒の活性が低下することを十分に抑制することができる効果を奏する。すなわち、固体触媒を長寿命化することができる効果を奏する。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記溶存酸素濃度低減工程が、上記油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素を除去する工程であることが好ましい。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記溶存酸素濃度低減工程が、不活性ガスの注入または真空ポンプを用いた脱気であることが好ましい。
溶存酸素濃度低減工程を不活性ガスの注入または真空ポンプを用いた脱気によって行うことによって、容易に、かつ十分に油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素を低減することができる効果を奏する。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記固体触媒の活性成分が、上記反応工程後の反応液において、1000ppm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記固体触媒は、金属化合物またはイオン交換樹脂であることが好ましい。
上記の構成によれば、溶出した活性成分を反応液から除去する工程を省略することができる効果を奏する。また、反応後の精製操作を行う際に、溶出した活性成分によって脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンが反応して、収率が低下してしまうことを十分に抑制することができる効果を奏する。
また、本発明に係る製造方法では、さらに、上記固体触媒は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物、バナジウム含有化合物、クロム含有化合物、マンガン含有化合物、鉄含有化合物、コバルト含有化合物、ニッケル含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物、ジルコニウム含有化合物、ニオブ含有化合物、モリブデン含有化合物、スズ含有化合物、希土類含有化合物、タングステン含有化合物、鉛含有化合物、ビスマス含有化合物、またはイオン交換樹脂であることが好ましい。
本発明に係る製造方法は、以上のように、油脂類とアルコール類とを固体触媒の存在下において反応させる反応工程の前に、油脂類およびアルコール類の少なくともいずれか1つの溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程を含んでいる。
油脂類およびアルコール類の少なくともいずれか1つの溶存酸素濃度を低減させることによって、油脂類が酸化されることにより生じる過酸化物などの生成を抑制することができるため、生成された過酸化物などにより固体触媒表面が覆われることを防ぐことができる。これによって、固体触媒の活性の低下を抑制することができる効果を奏する。すなわち、固体触媒を長寿命化することができる効果を奏する。
また、固体触媒の活性の低下を抑制することができるため、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造において、活性の低下した固体触媒を交換する煩雑な作業の頻度を減らすことができる。
さらには、固体触媒の長寿命化によって、同量の固体触媒あたりの脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生成量を増加することができるため、生成物あたりの固体触媒のコストを低減することができ、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生産性を向上することができる効果も併せて奏する。
〔実施形態1〕
本実施の形態では、本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法について説明する。なお、本明細書等における「脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリン」とは、「脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの少なくともいずれか1つ」と同義である。
本項では、まず本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの一般的な生成反応について説明し、次に脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造に好適に用いることができる固体触媒および原料について説明する。最後に、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法の詳細について、図面を参照しつつ、説明する。
(脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの生成反応について)
本発明において、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンは、油脂類とアルコール類とを触媒存在下においてエステル交換反応させることによって生成させる。エステル交換反応とは、具体的には、下記反応式に示すように、油脂類とアルコール類(反応式においてはメタノール)とを触媒存在下において反応させることによって、油脂類とアルコール類との間にエステル交換を生じさせる反応である。
Figure 2008260870
なお、上記反応式中、Rは、炭素数6〜22のアルキル基または1つ以上の不飽和結合を有する炭素数6〜22のアルケニル基を指す。
また、油脂類とアルコール類とのエステル交換反応に用いることができる触媒は、多数存在するが、本発明では、触媒として固体触媒を用いる。固体触媒の詳細については下記に詳述する。
上記反応式に示すように、エステル交換反応では、脂肪酸アルキルエステルと共にグリセリンを得ることができる。すなわち、化学原料として各種の用途に有用である精製されたグリセリンを工業的に簡便に得ることができる。
(固体触媒)
本発明において用いることができる固体触媒について、以下に説明する。なお、本明細書等における「固体触媒」とは、エステル交換反応において、原料および生成物などが含まれる反応液にほとんど溶解することなく、触媒作用を有する化合物を意味する。
本発明に好適に用いることができる固体触媒は、原料である油脂類およびアルコール類ならびに生成物である脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンなどが含まれる反応液に不溶である不溶性固体触媒であることが好ましい(以下、本発明に用いる固体触媒を不溶性固体触媒とも称する)。本明細書等における固体触媒の「不溶性」とは、エステル交換反応後の反応液において、活性成分(例えば、活性金属成分)が1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、最も好ましくは分析装置で検出されないことを意味している。
反応液における不溶性固体触媒の活性成分が、1000ppm以下であれば、アルコール類と油脂類とのエステル交換反応における逆反応を十分に抑制することができる。また、溶出した活性成分を反応液から除去する工程を省略することができる。
なお、反応液における不溶性固体触媒の活性成分の濃度(溶出量)は、蛍光X線分析法(XRF)を用いて測定することができる。蛍光X線分析法では、反応後の反応液を、溶液状態のまま用いることができる。また、より微小量の溶出量を測定する場合には、高周波誘導プラズマ(ICP)発光分析法により測定してもよい。
本発明において好適に用いることができる不溶性固体触媒としては、原料である油脂類およびアルコール類、ならびに生成物(脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリン)などに不溶性のものであれば、特に限定されるものではないが、油脂類とアルコール類とのエステル交換反応後に反応系から容易に除去できることが好ましい。
また、不溶性固体触媒は、油脂類中に含まれる遊離脂肪酸のエステル化反応に対して活性を持つ触媒、すなわち油脂類中に含まれるグリセリドのエステル交換反応と遊離脂肪酸のエステル化反応の両反応に対して活性を持つ触媒であることが好ましい。これによって、原料である油脂類が遊離脂肪酸を含んでいても、エステル交換反応とエステル化反応とを同時に行うことができる。これによって、エステル交換反応とは別にエステル化反応を行うことなく、脂肪酸アルキルエステルの収率を向上させることができる。
上述したような不溶性固体触媒として、具体的には、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物、バナジウム含有化合物、クロム含有化合物、マンガン含有化合物、鉄含有化合物、コバルト含有化合物、ニッケル含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物、ジルコニウム含有化合物、ニオブ含有化合物、モリブデン含有化合物、スズ含有化合物、希土類含有化合物、タングステン含有化合物、鉛含有化合物、ビスマス含有化合物、またはイオン交換樹脂であることが好ましい。
上記化合物としては、上記必須成分を有する限り特に限定されないが、例えば、単一、混合または複合酸化物、硫酸塩、リン酸塩、シアン化物、ハロゲン化物、錯体などの形態であること好ましい。これらの中でも、単一、混合または複合酸化物もしくはシアン化物であることがより好ましく、具体的には、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、マンガン酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、およびこれらもしくは他の金属との混合および/または複合酸化物、シアン化亜鉛、シアン化鉄、シアン化コバルト、およびこれらもしくは他の金属との混合および/または複合シアン化物などを挙げることができる。なお、これらの形態のものを担体上に坦持または固定化した形態であってもよく、担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、各種ゼオライト、活性炭、珪藻土、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化すず、酸化鉛などを挙げることができる。
また、イオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂などを挙げることができる。アニオン交換樹脂の具体例としては、強塩基性アニオン樹脂、弱塩基性アニオン樹脂などを挙げることができ、アニオン交換樹脂を架橋度または多孔度から分類した場合には、ゲル型、ポーラス型およびハイポーラス型などを挙げることができる。
(油脂類)
次に、本発明に用いることができる油脂類について、以下に説明する。
油脂類は、グリセリンの脂肪酸エステルを含有するものであって、アルコールと共に脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの原料となるものであればよく、一般的に「油脂」と呼ばれる、グリセリンの脂肪酸エステルを含有するものであれば特に限定されるものではない。通常は、トリグリセリド(グリセリンと高級脂肪酸とのトリエステル)を主成分として、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸およびその他の副成分を少量含有する油脂を用いることが好ましいが、トリオレインまたはトリパルミチンなどのグリセリンの脂肪酸エステルを用いてもよい。
このような油脂の具体例としては、ココナツ油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ベニバナ油、アマニ油、綿実油、キリ油およびヒマシ油などの植物油脂、牛脂、豚油、魚油および鯨脂などの動物油脂、ならびに各種食用油の使用済み油(廃食油)などを挙げることができる。なお、これらの油脂は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、上述の油脂類が、不純物としてリン脂質やタンパク質などの不純物を含む場合、硫酸、硝酸、リン酸またはホウ酸などの鉱酸を添加して、不純物を除去することが好ましい。本発明の脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法では、鉱酸による反応阻害を受けにくいものを触媒として用いれば、油脂類に鉱酸が含まれていても、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンを効率よく製造することができるため、より好ましい。
(アルコール類)
次に、本発明に用いることができるアルコール類について、以下に説明する。本明細書等における「アルコール類」とは、炭化水素の水素原子をヒドロキシル基によって置換した形の化合物の総称を意味している。
バイオディーゼル燃料の製造を目的にする場合には、アルコール類として、炭素数1〜6のアルコール類を用いることが好ましく、炭素数1〜3のアルコール類を用いることがより好ましい。炭素数1〜6のアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノールおよび2−ヘキサノールなどを挙げることができる。これらの中でも、メタノールまたはエタノールであることが好ましい。また、これらのアルコール類は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、食用油、化粧品および医薬などに用いる材料の製造を目的とする場合には、アルコール類として、ポリオールを用いることが好ましい。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールおよびソルビトールなど挙げることができる。これらの中でも、グリセリンであることが好ましい。また、これらのアルコール類は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルコールとしてポリオールを用いる場合には、本発明の脂肪酸アルキルエステルの製造方法は、本発明の脂肪酸アルキルエステルの製造方法は、グリセリド類の製造方法と読み替えることができ、グリセリド類を得る方法において好適に用いることができることとなる。
また、本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法においては、油脂類、アルコール類および不溶性固体触媒以外のその他の微量成分が存在してもよい。
(脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法)
最後に、本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法の詳細について説明する。上記製造方法は、主として、溶存酸素濃度低減工程、および反応工程の2工程を含んでいる。また、反応工程において、生成した脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンを精製するために、第1の精製工程および第2の精製工程の2つの精製工程をさらに含んでいることが好ましい。
溶存酸素濃度低減工程は、油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素濃度を低減するための工程である。溶存酸素濃度低減工程は、溶存酸素除去工程と言い換えることもできる。この場合における「除去」とは、油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素濃度をわずかでも減少させることを意味し、必ずしも完全に取り除くことを意味するものではない。
反応工程は、溶存酸素濃度の低減された、油脂類およびアルコール類を混合し、不溶性固体触媒存在下において反応させることにより脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンを生成する工程である。
第1の精製工程は、反応液に含まれる未反応のアルコール類および水などの低沸点成分を除去するための工程である。
第2の精製工程は、第1の精製工程において精製した反応液から、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンを分離する工程である。
以下、図1を参照しつつ、上記4つの工程の詳細についてそれぞれ説明する。なお、図1は、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造工程の概略を模式的に示した模式図である。
(溶存酸素濃度低減工程)
まず、溶存酸素濃度低減工程について、図1を参照して説明する。溶存酸素濃度低減工程は、図1に示すように、アルコール類貯留槽1および/または油脂類貯留槽2に対して不活性ガスを注入し、油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素濃度を低減させる工程である。この溶存酸素濃度低減工程は、後述する反応工程の直前に行われることが好ましい。反応工程の直前に溶存酸素濃度低減工程を行うことによって、触媒と接触する油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素濃度をより一層低減することができる。
なお、本明細書等における「溶存酸素」とは、油脂類およびアルコール類中に溶解している酸素分子のことを指す。また、本明細書等における「溶存酸素濃度」とは、溶存酸素を除去したブタノール中に油脂類またはアルコール類を溶解させ、油脂類またはアルコール類を溶解したブタノールの溶存酸素濃度を測定することによって算出した濃度である。すなわち、油脂類および/またはアルコール類の溶存酸素濃度とは、「油脂類および/またはアルコール類をブタノールに溶解した際の混合溶液中の溶存酸素濃度から算出された溶存酸素濃度」と言い換えることができる。
不活性ガス注入後の油脂類および/またはアルコール類の溶存酸素濃度は、30mg/L以下であることが好ましく、20mg/L以下であることがより好ましく、10mg/L以下であることがさらに好ましく、5mg/Lであることが最も好ましい。油脂類および/またはアルコール類の溶存酸素濃度を30mg/L以下とすることによって、油脂類が酸化されることにより生じる過酸化物などの酸化生成物の生成を十分に抑制することができる。これによって、過酸化物などの酸化生成物が不溶性固体触媒の表面に吸着し、不溶性固体触媒の活性が低下することを十分に抑制することができる。すなわち、不溶性固体触媒を長寿命化することができる。
また、不溶性固体触媒が長寿命化することによって、活性の低下した不溶性固体触媒を交換する頻度が減少するため、煩雑な作業を減らすことができる。さらには、同量の不溶性固体触媒あたりの脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生成量を増加することができるため、生成物あたりの不溶性固体触媒のコストを低減することができ、脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの生産性を向上することもできる。
油脂類およびアルコール類の溶存酸素濃度は、下記式によって換算する。なお、下記式は油脂類の溶存酸素濃度を算出する式であるが、アルコール類の溶存酸素濃度を算出する場合は、油脂類の項をアルコール類と読み換えればよい。
油脂類の溶存酸素濃度(mg/L)=油脂類を溶解したブタノールの溶存酸素濃度(mg/L)×(ブタノールの溶液量(mL)+油脂類の溶液量(mL))/油脂類の溶液量(mL)。
また、「混合溶液における溶存酸素濃度」もまた、上述の測定方法によって算出したアルコール類および油脂類の溶存酸素濃度を、下記式に代入することにより算出した濃度である。
混合体の溶存酸素濃度(mg/L)=[アルコール類の溶存酸素濃度(mg/L)×アルコール類の溶液量(L)+油脂類の溶存酸素濃度(mg/L)×油脂類の溶液量(L)]/全溶液量(L)。
一般的に、アルコール類と油脂類とのエステル交換反応において、触媒の活性が低下すると、反応が完結しないため中間体であるグリセリド類が反応液中に残存する場合がある。これは、一般的にアルコール類と油脂類とのエステル交換反応は、平衡反応であり、反応が完結しても反応液中に反応中間体であるグリセリド類が少量残存する場合があるからである。触媒の活性が低下すると、反応が完結しないため、中間体であるグリセリド類の残存量がさらに増加し、目的とする脂肪酸アルキルエステルの純度(品質)がより低下する。したがって、目的とする脂肪酸アルキルエステルの純度の低下を抑制するためには、油脂類およびアルコール類が触媒と接触する時間を増加しなければならない。すなわち、触媒量を増加する必要がある。しかし、不溶性固体触媒を長寿命化することによって、不溶性固体触媒の使用量を増加することなく、目的とする脂肪酸アルキルエステルの純度(品質)の低下を抑制することができる。
溶存酸素濃度を低減させるための手段は、油脂類および/またはアルコール類の溶存酸素濃度を低減させることができる手段であれば、特に限定されるものではないが、容易に、かつ十分に溶存酸素を低減することができる観点から、不活性ガスの注入であることが好ましい。不活性ガスの注入以外には、例えば、真空ポンプまたは酸素透過膜を用いた除去方法などを挙げることができる。
なお、溶存酸素濃度低減工程を不活性ガスの注入とした場合、用いることができる不活性ガスは、特に限定されるものではないが、取り扱いが容易であること、および経済性に優れることから、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)またはアルゴン(Ar)であることが好ましい。
(反応工程)
次に、反応工程について、図1を参照して説明する。図1に示すように、溶存酸素濃度の低減されたアルコール類は、アルコール類貯留槽1からライン20およびライン22を通って反応器3に供給され、溶存酸素濃度の低減された油脂類は、油脂類貯留槽2からライン21およびライン22を通って反応器3に供給される。このとき、ライン20、21において油脂類およびアルコール類は、加熱および加圧され、ライン22において混合された後、不溶性固体触媒が充填された反応器3に供給される。
反応器3における油脂類およびアルコール類の混合溶液の温度、すなわち反応温度は、50〜300℃であることが好ましく、70〜290℃であることがより好ましく、100〜280℃であることがさらに好ましい。反応温度を上記範囲内とすることによって、反応速度を十分に向上し、かつアルコール類の分解を十分に抑制することができる。
反応器3における圧力、すなわち反応圧力は、0.1〜10MPaであることが好ましく、0.2〜9MPaであることがより好ましく、0.3〜8MPaであることがさらに好ましい。反応圧力を上記範囲内とすることによって、反応速度を十分に向上し、かつ副反応を十分に抑制することができる。また、反応圧力が10MPaを超える場合には、高圧に耐えうる特殊な装置が必要となるため、設備費などのコストが余分にかかることとなる。
また、反応器3に供給されるアルコール類および油脂類の供給量は、油脂類の供給量に対するアルコール類の供給量を理論必要量の1〜30倍とすることが好ましく、1.2〜20倍とすることがより好ましく、1.5〜15倍とすることがさらに好ましく、2〜10倍とすることがさらに一層好ましい。油脂類の供給量に対するアルコール類の供給量を上記範囲内とすることによって、油脂類とアルコール類とを十分に反応させることができ、油脂類の転化率を十分に向上させることができる。また、第1の精製工程におけるアルコール類の回収量および、アルコール類回収塔5にかかるユーティリティコストを低減することができるため、製造コストを低減することができる。
なお、本明細書等におけるアルコールの理論必要量とは、油脂類のけん化価に対応するアルコールのモル数を指しており、下記式によって算出することができる。
アルコールの理論必要量(g)=アルコールの分子量×[油脂の使用量(g)×けん化価(mg(KOH)/g(油脂))/56100]。
反応器3の形態は、バッチ式および固定床流通式のいずれであってもよいが、固定床流通式であることが好ましい。反応器3を不溶性固体触媒を充填した固定床反応装置とすることによって、触媒の分離工程を不要とすることができる。これによって、煩雑な作業工程を省くことができるため、工業的な製造を容易なものとすることができる。
反応器3を固定床反応装置とする場合、反応器3における混合溶液の平均滞留時間は、1分〜5時間であることが好ましく、15分〜4時間であることがより好ましく、30分〜2時間であることがさらに好ましい。平均滞留時間を上記範囲内とすることによって、アルコール類と油脂類とを十分に反応させることができる。また、平均滞留時間が長くなるほど反応器3の大きさを大きくする必要があるため、反応器3の大きさを常識的なもととするためにも上記範囲内とすることが好ましい。
なお、反応器3は、バッチ式の反応槽としてもよい。バッチ式とは、触媒を油脂類とアルコール類との混合溶液に投入する形態であり、反応時間としては、使用する触媒量により異なるが、通常、15分〜30時間であることが好ましく、30分〜20時間であることがより好ましい。
なお、油脂類が不純物としてリン脂質やタンパク質などの不純物を含む場合には、鉱酸を添加して、不純物を除去する脱ガム処理を行うための脱ガム用反応槽を設けてもよい。脱ガム用反応槽は、油脂類貯蔵タンクの手前またはライン21の途中に設けることが好ましい。
(第1の精製工程)
次に、第1の精製工程について、図1を参照して説明する。図1に示すように、反応器3を通過することによって得られた、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンを含む反応液は、ライン23を通って分離塔4に供給される。このとき、得られた反応液中には、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの他にも、グリセリド、遊離脂肪酸、未反応のアルコール類および水などが含まれている。なお、上記反応液における不溶性固体触媒の活性成分は、1000ppm以下であることが好ましい。
上記反応液が分離塔4に供給され、分離塔4の温度が適切な温度に調節されることによって、上記反応液中に含まれる沸点の比較的低いアルコール類および水が留去される。分離塔4における温度は、300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。分離塔4の温度を300℃以下とすることによって、アルコール類および水と共に、目的生成物が留去されることを抑制することができる。なお、分離塔4における温度の下限値としては、アルコール類および水の沸点であることが好ましい。具体的には65℃程度であることが好ましく、100℃程度であることがより好ましい。
なお、留去されたアルコール類は、アルコール類中に含まれる水分を分離し、原料として再利用することが好ましい。
留去されたアルコール類を原料として再利用する場合、図1に示すように、留去されたアルコール類および水は、ライン24を通ってアルコール類回収塔5に供給される。アルコール類回収塔5に供給されたアルコール類および水は、蒸留、膜分離または吸着分離などの従来公知の方法によって、アルコール類と水とに分離される。アルコール類回収塔5において分離されたアルコール類は、さらにライン25を通ってアルコール類貯留槽1に送られ、原料として再度利用することが好ましい。
なお、アルコール類回収塔5において分離されたアルコール類を原料として再利用する場合、アルコール類に含まれる水分濃度は、0.001〜5%であることが好ましく、0.005〜3%であることがより好ましく、0.01〜1.5%であることがさらに好ましい。これは、アルコール類中に水分が含まれていると、反応工程において脂肪酸アルキルエステルの加水分解反応が進行し、脂肪酸アルキルエステルの収率が低下するためである。
また、分離塔4とアルコール類回収塔5とを兼用し、アルコール類回収塔5を省略することもできる。この場合、水は、分離塔4のボトムにおいて回収される。また、分離塔4は、アルコール類回収塔5として機能する。この場合には、分離塔4は、より低温度での操作が可能である。この場合の温度としては、250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることがさらに好ましい。
(第2の精製工程)
最後に、第2の精製工程について、図1を参照して説明する。図1に示すように、分離塔4を通過することによって得られた低沸点溶媒を除去した反応液は、ライン26を通って分離器6に送られる。上記反応液は、分離器6において、上相と下相とに相分離される。
分離した上相は、ライン27を通って、脂肪酸アルキルエステルとして回収される。エステル交換反応は平衡反応であるため、1段反応ではライン27から回収された脂肪酸アルキルエステル中に、中間体であるグリセリド類などが残存する場合がある。グリセリド類が残存する場合には、これらのグリセリド類をさらに反応させ、除去することが好ましい。すなわち、ライン27から脂肪酸アルキルエステルを回収した後、再度原料として利用し、メタノール類とエステル交換させ、2段階の反応とすることが好ましい。2段階の反応とすることによって、中間体であるグリセリド類の残存量をより減少させることができ、目的とする脂肪酸アルキルエステルの純度(品質)をより向上できる。
また、分離した下相は、ライン28を通って、グリセリンとして回収される。
なお、ライン27およびライン28において得られた脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンは、用途に応じて蒸留または分留などによって、精製してもよい。脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンの精製方法は、従来公知の方法を用いることができる。
以上、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に、本発明に係る脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法の実施例を示す。なお、以下に示す実施例は、本発明を好適に説明する例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
〔実施例1〕
(触媒調製方法)
炭酸マンガン(239g)、アナターゼ型酸化チタン(152g)、およびアルキルセルロース(信越化学工業株式会社製メトローズ90SH−15000;8g)をよく混合した。混合した粉体に、150gの水を何度かに分けて、均一に加え、さらによく混合した後、湿式押出造粒機(不二パウダル株式会社製、ドームグランDG−L1)にて、直径0.4mmの孔から押出した。押出したものを、120℃で一昼夜乾燥させ、微粉砕装置(不二パウダル株式会社製、サンプルミル)にて、長さ5mm程度にせん断し、空気雰囲気下1000℃で5時間焼成して触媒MnTiOを得た。
得られた触媒(15mL)は、内径10mm、長さ210mmのSUS−316製直管反応管(反応器3)内に充填した。反応管の出口には、空冷式冷却管を介してフィルターと背圧弁を取り付け、圧力制御できるようにした。
(用いる油脂類およびアルコール類)
反応原料は、パーム油およびメタノールを使用した。パーム油は、精製パーム油を使用した。
(製造方法)
はじめに、パーム油およびメタノールを貯留するメタノール貯留槽およびパーム油貯留槽(アルコール類貯留槽1および油脂類貯留槽2)に対してアルゴンガスを24時間注入し、メタノール中の溶存酸素濃度を1.3mg/L、パーム油中の溶存酸素濃度を1.3mg/Lとした。
溶存酸素濃度は、以下の方法によって測定した。
(1)溶存酸素測定装置(セントラル科学株式会社UC−12−SOL型)を35℃のブタノールによってキャリブレーションした。
(2)容積213mLの容器に溶存酸素を除去したブタノール(180mL)と、油脂類またはアルコール類(33mL)とを加え、容器を液封した。
(3)35℃において十分に撹拌し、溶液の溶存酸素濃度(xmg/L)を測定した。
(4)測定した溶存酸素濃度(xmg/L)を下記式に代入して、油脂類またはアルコール類の溶存酸素濃度を算出した。
油脂類またはアルコール類の溶存酸素濃度=x×(180+33)/33。
次に、精密高圧定量ポンプを使用してパーム油(流量:6.3g/h)とメタノール(流量:6.3g/h)とをライン22内で混合させて反応管上部より下向きに連続的に流通させながら、背圧弁で反応管内の圧力を5MPaに設定した。パーム油に対するメタノールの供給量は、理論必要量の9倍とした。また、反応管の内部温度は、外部から加熱することによって、200℃とした。
(不溶性固体触媒の活性の測定)
MnTiOの活性の測定は、反応時間200時間、400時間、650時間、および950時間におけるパーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率を測定することにより行った。本実施例において、パーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率は、以下の式を用いて算出した。
パーム油の転化率(%)=(反応終了時のパーム油の消費モル数)/(パーム油の仕込みモル数)×100
脂肪酸メチルエステルの収率(%)=(反応終了時の脂肪酸メチルエステルの生成モル数)/(仕込み時の有効脂肪酸類のモル数)×100
なお、有効脂肪酸類とは、パーム油に含まれる脂肪酸のトリグリセリド類、ジグリセリド類、モノグリセリド類および遊離脂肪酸類のことを指す。すなわち、仕込み時の有効脂肪酸類のモル数は、下記式によって算出することができる。
仕込み時の有効脂肪酸類のモル数(mol)=[パーム油の仕込み量(g)×パーム油のけん化価(mg(KOH)/g(パーム油))/56100]
〔実施例2〕
アルゴンガスの代わりに窒素ガスを用いた以外は、実施例1と同様の材料および方法によって、グリセリンおよび脂肪酸メチルエステルを生成し、不溶性固体触媒の活性を測定した。実施例2におけるメタノール中の溶存酸素濃度およびパーム油中の溶存酸素濃度は、実施例1と同様に、いずれも1.3mg/Lとした。
〔比較例1〕
パーム油およびメタノール中にアルゴンガスを注入し、溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程を除いた以外は、実施例1と同様の材料および方法によって、脂肪酸メチルエステルおよびグリセリンを生成し、不溶性固体触媒の活性を測定した。なお、比較例1において、MnTiOの活性の測定は、反応時間200時間、400時間、650時間、および900時間である。
なお、比較例1におけるメタノール中の溶存酸素濃度は56mg/Lであり、パーム油中の溶存酸素濃度は41mg/Lであった。
(不溶性固体触媒の活性の測定結果)
不溶性固体触媒の活性の測定結果を図2に示した。図2は、反応時間を200〜1000時間まで変化したときのパーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率の変化を示したグラフである。なお、図2中における「◆」は実施例1および2におけるパーム油の転化率であり、「◇」は比較例1におけるパーム油の転化率であり、「■」は実施例1および2における脂肪酸メチルエステルの収率であり、「×」は比較例1における脂肪酸メチルエステルの収率である。
図2に示すように、アルゴンガスを注入し、パーム油およびメタノール中の溶存酸素濃度を低減させた実施例1および2では、反応時間200〜1000時間の間、パーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率の双方に、大きな変化は見られなかった。
一方、パーム油およびメタノール中の溶存酸素濃度を低減させていない比較例1では、反応時間の経過と共に、特に、脂肪酸メチルエステルの収率に大きな低下が見られた。具体的には、比較例1における脂肪酸メチルエステルの収率の低下が10%以上であるのに対し、実施例1および2における収率の低下は、2%以下であった。
図2に示した結果から、パーム油およびメタノール中の溶存酸素濃度を低減させることによって、MnTiOの活性の低下を抑制することができることが示された。
〔実施例3〕
反応時間1000時間までは、パーム油およびメタノール中にアルゴンガスを注入し、溶存酸素濃度を低減させ、反応時間1000時間を過ぎてからは、アルゴンガスに換えて空気を注入した以外は、実施例1と同様の材料および方法によって、グリセリンおよび脂肪酸メチルエステルを生成し、不溶性固体触媒の活性を測定した。
パーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率は、反応時間200時間、400時間、650時間、950時間、1100時間、および1250時間の各時間において測定した。
実施例3において測定した、パーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率の変化を図3に示した。なお、図3中における「◆」は実施例3におけるパーム油の転化率であり、「■」は実施例3における脂肪酸メチルエステルの収率である。
図3に示すように、アルゴンの注入によって、パーム油およびメタノール中の溶存酸素濃度を低減させている間、パーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率は、ほとんど変化しなかった。それに対して、空気の注入を行った反応時間1000時間以降では、パーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率の双方が、大きく低下した。具体的には、パーム油の転化率は約10%低下し、脂肪酸メチルエステルの収率は約20%低下した。
図3に示した結果から、MnTiOの活性の低下は、パーム油およびメタノール中に溶存している空気によって引き起こされることが示された。言い換えれば、パーム油およびメタノール中に溶存している空気を除去(低減)することによって、MnTiOの活性の低下を抑制する、すなわちMnTiOを長寿命化することができることが示された。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明に係る製造方法を用いることにより製造される高品質の脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンは、燃料、食品、化粧品および医薬品などの用途に用いることができる。特に、脂肪酸アルキルエステルを利用した燃料は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を抑制した、新たな燃料として好適に用いることができる。
脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造工程を模式的に示した模式図である。 実施例1および2ならびに比較例1におけるパーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率の変化を示したグラフである。 実施例3におけるパーム油の転化率および脂肪酸メチルエステルの収率の変化を示したグラフである。
符号の説明
1 アルコール類貯留槽
2 油脂類貯留槽
3 反応器
4 分離塔
5 アルコール類回収塔
6 分離器

Claims (8)

  1. 油脂類とアルコール類とを固体触媒の存在下において反応させる反応工程を含む脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法であって、
    上記反応工程の前に、上記油脂類および/または上記アルコール類の溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程を含むことを特徴とする脂肪酸アルキルエステルおよび/またはグリセリンの製造方法。
  2. 上記溶存酸素濃度低減工程は、上記油脂類および上記アルコール類の少なくともいずれか1つにおける溶存酸素濃度を30mg/L以下とする工程であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記溶存酸素濃度低減工程は、上記油脂類および上記アルコール類の混合溶液における溶存酸素濃度を30mg/L以下とする工程であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 上記溶存酸素濃度低減工程が、上記油脂類および/またはアルコール類中の溶存酸素を除去する工程であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 上記溶存酸素濃度低減工程が、不活性ガスの注入、または真空ポンプを用いた脱気であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  6. 上記固体触媒の活性成分が、上記反応工程後の反応液において、1000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  7. 上記固体触媒は、金属化合物またはイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1または6に記載の製造方法。
  8. 上記固体触媒は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物、バナジウム含有化合物、クロム含有化合物、マンガン含有化合物、鉄含有化合物、コバルト含有化合物、ニッケル含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物、ジルコニウム含有化合物、ニオブ含有化合物、モリブデン含有化合物、スズ含有化合物、希土類含有化合物、タングステン含有化合物、鉛含有化合物、ビスマス含有化合物、またはイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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JP2011167677A (ja) * 2010-02-22 2011-09-01 Korea Inst Of Energy Research タングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法、その方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒及びその触媒を用いて遊離脂肪酸が含まれた廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法

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