JP2008260445A - 船舶 - Google Patents
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Abstract
【課題】プロペラの直前の下方の船体表面に沿う水流をプロペラの回転面の下半円に誘導して、下半円における伴流分布を改善するとともに、プロペラの回転方向と逆向きの旋回流を励起して、プロペラ効率を向上せしめて、船舶の燃料消費の改善を図る。
【解決手段】船体平行部の後端より後方のビルジ部の外板両舷にビルジフィン4を、船尾端のプロペラボッシング近傍の外板両舷に船尾端フィン3をそれぞれ備える船舶であって、ビルジフィン4のプロファイルは船尾方向に向かって上向きの傾斜をなし、船尾端フィンの後端部のプロファイルは、前記プロペラの前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなし、船尾端フィン3の後端部のプロファイルは、プロペラ2の前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなす。
【選択図】図1
【解決手段】船体平行部の後端より後方のビルジ部の外板両舷にビルジフィン4を、船尾端のプロペラボッシング近傍の外板両舷に船尾端フィン3をそれぞれ備える船舶であって、ビルジフィン4のプロファイルは船尾方向に向かって上向きの傾斜をなし、船尾端フィンの後端部のプロファイルは、前記プロペラの前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなし、船尾端フィン3の後端部のプロファイルは、プロペラ2の前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなす。
【選択図】図1
Description
本発明はプロペラの回転面における伴流分布を改善して伴流利得を得るとともに、プロペラ効率を向上させるフィンを備える船舶に関する。
一般に、船体横断面積は船体中央部(midship)付近で最大になり、船尾及び船首に近づくに従って、徐々に小さくなるが、タンカーやばら積貨物船のような低速船では、垂線間長(length between perpendiculars)の30%程度の範囲で船体横断面形が船体中央部の横断面形に等しくなるような肥大船形が選択される。また、横断面形が船体中央の横断面形に等しい船体の部分を船体平行部(parallel body)という。
なお、垂線間長は、船尾垂線(after perpendicular 以下、A.P.と略記する)と船首垂線(fore perpendiculars 以下、F.P.と略記する)の水平距離である。ここで、A.P.は、満載喫水線(load line)と舵頭材(rudder stock)の中心線の交点を通る鉛直線、F.P.は満載喫水線と船首材(stem)の前面との交点を通る鉛直線である。
また、スクェヤステーション(square station 以下、SSと略記する)は、A.P.を0、F.P.を10とする無次元座標であり、船形学の分野において、船体の前後方向の位置を表示するために用いられる。前述の肥大船形の場合、概ねSS3.5からSS6.5の間が船体平行部になる。
船体中央部の横断面形、つまり船体中央断面(midship section)は概ね矩形をなし、船側と船底の間を円弧で結んでいる。この円弧部をビルジ(bilge)と呼び、その半径をビルジ半径と呼ぶ。また、ビルジの上端つまり円弧と船側の垂直面との境界の高さをビルジ高さと呼ぶ。商船の場合、船体中央断面におけるビルジ半径は船体深さのせいぜい1割程度である。
ビルジ半径及びビルジ高さは一定であるが、船体平行部から離れるにしたがって徐々に大きくなり、船底の水平部や船側の垂直部が消滅し、やがて横断面形全体が曲線で構成されるようになる。また、船尾付近はプロペラと舵を装置するために船体の下部が切り欠かれてオーバーハング部を形成する。
さて、このような船舶が一定速度で直進するとき、船体平行部の周囲の海水は船側及び船底に沿って平行に流れる。しかし、船体平行部の後方では、船体平行部において船側に平行に流れていた水流がオーバーハング部に向かうので、下降流が発生する。また、船底の下方で船底に平行に流れていた水流はオーバーハング部に向かうので、上昇流が発生する。この下降流と上昇流は交差して渦(ビルジ渦)となり船体から剥離する。そのため、船体後方の圧力が低下して船体の抵抗が増加するという問題が生じる。
また、船体表面から剥離したビルジ渦はプロペラの回転面の上方を通って船体後方に流れ去り、プロペラの回転面に流入しない場合がある。そのため伴流利得が得られず、プロペラの推進効率が低下するという問題も生じる。
そこで、本願発明者の一人は、船体表面から剥離したビルジ渦をプロペラの回転面に誘導して、プロペラの回転面における伴流分布を改善するために、船体平行部の後方のビルジにフィン(以下、ビルジフィンと呼ぶ)を備えることを、特許文献1において提案している。以下、このビルジフィンについて簡単に説明する。
図6〜図8は、特許文献1に開示された船舶の船体後部の外形図であり、図6は斜視図、図7は側面図、図8は平面図である。
図6〜図8に示すように、船体11には、舵12、プロペラ13及びビルジフィン14が装置されている。船体11の船体平行部は船体平行部後端断面15で終わり、船体11は船尾端に向かって徐々に絞られている。なお、船体11の場合、船体平行部後端断面15はおおよそSS3.4に位置する。また、16は船側外板平行部境界線、つまり船側とビルジの境界線を示している(図7参照)。
ビルジフィン14はビルジ渦の発生点の後方に配置する必要があるので、ビルジフィン14の起点(前端)17は船体平行部後端断面15後方のSS1.5からSS2.5の範囲内に選ぶ。また、ビルジフィン14はビルジ渦の上方近傍に配置する必要があるので、ビルジフィン14の起点17の高さは、船体平行部におけるビルジの上端より低くなるようにする。また、ビルジフィン14の終点(後端)18は起点17より高くして、側面図においてビルジフィン14が船首から船尾に向けて3°〜30°の上向きの傾斜を持つようにする(図7参照)。
なお、ビルジフィン14の有効長さ19は船体平行部におけるビルジ半径以下に、ビルジフィン14の幅20は船体平行部におけるビルジ半径の20%〜50%とするのが望ましい(図8参照)。
図9は、船体11を船尾方向から見た図であり、図7でA−A線、B−B線で示した断面で切断した横断面(つまり、起点17及び終点18に於ける船体横断面)とビルジフィン14を示している。図9から判るように、ビルジフィン14はその整流面(水流を受ける面)が船体外板に直角になるように取り付けられている。
図10は、ビルジフィン14の作用を説明する説明図である。ビルジフィン14を備えない場合、ビルジ渦は流線21で示すように船体平行部の後端付近で船体から剥離して、プロペラ13の上方の領域22に向かって流れるので、ビルジ渦の上端はプロペラ13の回転面には流入しない。一方、ビルジフィン14を備えると、領域22に向かうビルジ渦の流れは下向きに偏向されて、ビルジ渦の全体が流線23で示すようにプロペラ13の回転面に流入する。
図11および図12は、プロペラ13の回転面における伴流分布図であり、図11はビルジフィン14を備えない場合、図12は、ビルジフィン14を備える場合を、それぞれ示している。なお、図11及び図12において、等高線に付した数値は伴流係数と呼ばれる無次元数であり、(V−Va)/Vで表される。ただし、Vは船速であり、Vaはプロペラ13の回転面に流入する水流の速度である。伴流係数が大きくなると、プロペラ13の回転面に流入する水流のプロペラ13から見た相対速度が小さくなるので、プロペラ13の推進効率は高くなる。
図11と図12を比較すると、ビルジフィン14が船体から剥離したビルジ渦をプロペラ13の回転面に誘導して、プロペラ13の回転面における伴流を大きくしていることが理解できる。
このように、特許文献1の発明は、プロペラ13の回転面における伴流を大きくするので、プロペラ13の推進効率を高くすることができる。
しかしながら、ビルジフィン14によってプロペラ13の回転面に誘導されるビルジ渦はプロペラ13の回転面の上半円に偏り、下半円にはビルジフィン14の効果が及ばないので、上半円に比べて下半円の伴流係数は小さい(図12参照)。そのため、プロペラ2の推進効率の改善はまだ十分でないという問題がある。
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、プロペラの直前の下方の船体表面に沿う水流をプロペラの回転面の下半円に誘導して、下半円における伴流分布を改善するとともに、プロペラの回転方向と逆向きの旋回流を励起して、プロペラ効率の向上をせしめて、船舶の燃料消費の改善を図ることを目的とするものである。
本発明の船舶の第1の構成は、船体平行部の後端より後方のビルジ部の外板両舷にビルジフィンを、船尾端のプロペラボッシング近傍の外板両舷に船尾端フィンをそれぞれ備える船舶であって、前記ビルジフィンのプロファイルは船尾方向に向かって上向きの傾斜をなし、前記船尾端フィンの後端部のプロファイルは、前記プロペラの前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなすことを特徴とする。
ここで、プロファイルとは側面図(フィンを船体の右舷又は左舷から見た正投影図)に現れるフィンの形状をいう。
また、プロペラの前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなすとは、右回りのプロペラ(船尾方向から見て時計周りに回転する時に前進推力を発生するプロペラ)を備えた船舶においては、右舷のフィンの後端部に船尾方向に向かって上向きの傾斜を、左舷のフィンの後端部側に船尾方向に向かって下向きの傾斜をそれぞれ与えることを意味する。また、左回りのプロペラを備えた船舶においては、右舷のフィンの後端部に船尾方向に向かって下向きの傾斜を、左舷のフィンの後端部に船尾方向に向かって上向きの傾斜をそれぞれ与えることを意味する。
この構成によれば、船尾端フィンとビルジフィンの両方を備えるので、プロペラの回転面の下半円の伴流分布は船尾端フィンによって改善され、上半円の伴流分布はビルジフィンによって改善されるので、プロペラの回転面の全域で伴流分布が改善され、その結果、船舶の燃料消費率が向上する。
また、船尾端フィンの後端に前記プロペラの回転方向と逆向きの傾斜を与えているので、プロペラの回転方向と逆向きの旋回流が励起される。そのため、水流に対するプロペラの翼の仰角が大きくなるとともに、プロペラの見かけ上のピッチが大きくなるので、プロペラ効率が改善される。
本発明の船舶の第2の構成は、前記第1の構成に加えて、前記船尾端フィンの前端部のプロファイルは、船尾方向に向かって上向きの緩傾斜をなすことを特徴とする。
この構成によれば、船尾端フィンの前端に、船尾方向に向かって上向きの緩傾斜を与えるので、船尾方向に向かって斜め上方に流れる船体表面の水流が浅い角度で船尾端フィンに当たる。そのため、フィンによる抵抗増加を抑制しつつ、効率よく水流の向きを変えることができる。なお、ここで、緩傾斜とはフィンの後端側に比べて傾斜が緩やかであるあることを意味する。
なお、船尾端フィンの前端部と後端部のプロファイルを滑らかな曲線で結べば、前端部と後端部の境界で水流が乱れないので、更に効率よく水流の向きを変えることができる。
本発明の船舶の第3の構成は、前記第1又は第2の構成に加えて、前記ビルジフィン及び船尾端フィンは単板フィンであることを特徴とする。
ここで、単板フィンとは、単一の板材から切り抜かれた部材のみからなるフィンをいい、複数の部材を組み立ててなるビルドアップ(build up)フィンと対立する概念である。
この構成によれば、切断と曲げ加工だけでフィンを製造できるので、フィンを安価に製造することができる。
以上のように、本発明によれば、船舶の推進性能を改善して、燃料消費率の改善を図ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施例に係る船舶の側面図であり、船体1の船体中央(SS5)より後方の部分を示している。図1に示すように、船体1は船尾にプロペラ2を備え、プロペラ2の直前に船尾端フィン3を、SS2.4付近のビルジ部にビルジフィン4を備えている。また、5は船側外板平行部境界線、6は船体平行部後端、7はオーバーハング部の最奥部をそれぞれ示している。なお、プロペラ2は船尾から見て時計回りに回転するときに、前進推力を発生する右回りのプロペラである。したがって、船体1が前進するときに、プロペラ2の回転面の(船尾から見て)右側ではプロペラ2の翼は上から下に移動し、左側では下から上に移動する。
船尾端フィン3は、プロペラ2の直前の船尾部の両側に配置された整流板であり、右舷の船尾端フィン3sの後端部は船尾に向かって上向きに傾斜し、図示しない左舷の船尾端フィン3pの後端部は船尾に向かって下向きに傾斜している。そのため、右舷側の船尾端フィン3sは、プロペラ2に向かう水流を上向きに誘導し、左舷側の船尾端フィン3pは、プロペラ2に向かう水流を下向きに誘導する。このようにして、船尾端フィン3はプロペラ2の回転方向と逆向きの旋回流を励起する。
また、左右舷ともに、船尾端フィン3の前端部は船首方向に向かって緩やかな下り勾配を備えている。この下り勾配を備えることによって、船底から船尾のオーバーハングに向けて流れる水流aに対する迎え角を小さくできるので、船尾端フィン3の表面での乱流の発生を抑制して、水流aをプロペラ2の回転面の下半円に効率よく誘導することができる。
ビルジフィン4は、船体1の左右舷に対称に配置された整流板である。なお、ビルジフィン4の作用及び効果については、すでに述べたので、ここでは説明を省略する。
図2は、船体1を船尾方向から見た図であり、図1でA−A線、B−B線及びC−C線で示した断面で切断した横断面形と船尾端フィン3及びビルジフィン4を示している。図2から判るように、船尾端フィン3及びビルジフィン4はその整流面が船体外板に直角になるように取り付けられている。なお、8はプロペラ2のボスの外径、Pはプロペラ2の回転方向、Fsは右舷の船尾端フィン3sが誘導する水流の方向、Fpは左舷の船尾端フィン3pが誘導する水流の方向を、それぞれ示している。
図3は、右舷の船尾端フィン3sの側面図であり、図4は左舷の船尾端フィン3pの側面図である。
船尾端フィン3は、プロペラ2の前方の船底部からオーバーハング部に向かって流れる水流a(図1参照)をプロペラ2の回転面の下半円に誘導する整流板であるから、プロペラ2の中心より下方であって、オーバーハング部の最奥部7(図1参照)に可能な限り接近させることが望ましい。そこで、船尾端フィン3の最後端が、プロペラ2のボッシングの下端の近傍になるように、船尾端フィン3の位置を選んだ。
船尾端フィン3の長さ及び幅は、プロペラ2の直径Dpを基準に適宜選択する。船尾端フィン3を必要以上に大きくすれば、船尾端フィン3自身が抵抗源となり、燃料消費削減効果を減殺するので、実験あるいは計算によって、最適値を求める。なお、船尾端フィン3の長さの最適値は概ね0.5Dpから1.0Dpの間にある。
また、船尾端フィン3の前端部には船首方向に向かって3°〜5°程度の下り勾配を与え、船尾端フィン3に流入する水流に対する迎角を小さくする。
右舷の船尾端フィン3sの後端部には、船尾方向に向かって15°〜25°の登り勾配を与え(図3参照)、右舷の船尾端フィン3pの後端部には、船尾方向に向かって15°〜25°の下り勾配を与える(図4参照)。なお、後端部の角度は、実験によって決定する。
また、船尾端フィン3の勾配は、前端部と後端部で異なるが、この勾配は連続的に変化させるのがよい。前端部と後端部の境界に折れ角があると、その部分で流れが乱れるからである。本実施例では、船尾端フィン3の前端部と後端部ではプロファイルが直線をなすようにするとともに、前端部と後端部の間を前記直線に接する円弧で結んだ。
なお、船尾端フィン3は、圧延鋼板を切り出して、図3及び図4に示すプロファイルをなすように曲げ加工を行って製作する。
図5は、ビルジフィン4の側面図である。図5に示すように、ビルジフィン4の前端はSS2.4の位置にある。また、ベースラインから測ったビルジフィン4の前端の高さは約1.3mであり、船体平行部におけるビルジ高さ1.5mより低い。また、ビルジフィン4のプロファイルは船尾方向に向けて登り勾配を備えている。
なお、船尾端フィン3と同様にビルジフィン4は、1枚の圧延鋼板を切り出して製作する。
1 船体
2 プロペラ
3 船尾端フィン
3p 左舷の船尾端フィン
3s 右舷の船尾端フィン
4 ビルジフィン
5 船側外板平行部境界線
6 船体平行部後端
7 オーバーハング部の最奥部
8 プロペラのボスの外径
9 船尾管
11 船体
12 舵
13 プロペラ
14 ビルジフィン
15 船体平行部後端断面
16 船側外板平行部境界線
17 起点
18 終点
19 有効長さ
20 幅
21 流線
22 領域
23 流線
2 プロペラ
3 船尾端フィン
3p 左舷の船尾端フィン
3s 右舷の船尾端フィン
4 ビルジフィン
5 船側外板平行部境界線
6 船体平行部後端
7 オーバーハング部の最奥部
8 プロペラのボスの外径
9 船尾管
11 船体
12 舵
13 プロペラ
14 ビルジフィン
15 船体平行部後端断面
16 船側外板平行部境界線
17 起点
18 終点
19 有効長さ
20 幅
21 流線
22 領域
23 流線
Claims (3)
- 船体平行部の後端より後方のビルジ部の外板両舷にビルジフィンを、船尾端のプロペラボッシング近傍の外板両舷に船尾端フィンをそれぞれ備える船舶であって、
前記ビルジフィンのプロファイルは船尾方向に向かって上向きの傾斜をなし、
前記船尾端フィンの後端部のプロファイルは、前記プロペラの前進時の回転方向と逆向きの傾斜をなす
ことを特徴とする船舶。 - 前記船尾端フィンの前端部のプロファイルは、船尾方向に向かって上向きの緩傾斜をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の船舶。 - 前記ビルジフィン及び船尾端フィンは単板フィンである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船舶。
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