JP2008260403A - 操舵システム - Google Patents

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Abstract

【課題】パワーステアリング装置の補助トルク失陥時に旋回安定性の高い後輪のトー角変更制御をできるパワーステアリング装置とトー角変更装置の組み合わせ。
【解決手段】ベース信号演算部51と、ダンパ補償信号演算部52と、イナーシャ補償信号演算部53とを備え、ダンパ補償信号およびイナーシャ補償信前記ベース信号を補償して定められた目標信号IMによって前記電動機が駆動され、操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置110の操舵制御装置である。目標トー角演算部71は、自己診断部72からEPS失陥の異常状態検知信号を受信したとき、通常時に用いる第1のトー角テーブル71aから第2のトー角テーブル71bに切り換えて、所定の低速の範囲を超えた車速では、旋回安定性が高まるように、後輪のトー角をトーアウトにさせない制御とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、前輪の転舵角と車速にもとづいて、後輪のトー角を作動制御する操舵システムに関し、特に前輪の転舵を補助するパワーステアリング装置を組合わせた操舵システムに関する。
パワーステアリング装置は、アクチュエータが操舵トルクの大きさに応じた補助トルクを発生し、この補助トルクをステアリング系に伝達して、運転者が操舵する操舵力を軽減するものである。特許文献1には、操向ハンドルの操作角と車速にもとづいて、全走行輪を独立して作動制御する全輪独立操舵装置の技術が開示されている。
特公平6−47388号公報(図2)
しかしながら、パワーステアリング装置から補助トルクが出力されないようなパワーステアリング装置の失陥の場合に、操向ハンドルに掛かる操作反力が通常状態時よりも大きく、運転者の操向ハンドルの操作が遅れることになる。そのようなときにもトー角変更装置が正常に作動していると、運転者にとって操舵性が低下しているのに、旋回性が余り低下しないという違和感を与えることになる。
本発明は、前記問題を解決する操舵システムを提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、少なくとも操舵トルクに応じて、アクチュエータが補助トルクを発生し、補助トルクを前輪のステアリング系に伝達するパワーステアリング装置と、少なくとも前輪の転舵角および車速にもとづいて左右の後輪のトー角を変更可能とするトー角変更装置と、パワーステアリング装置およびトー角変更装置を制御する操舵制御装置とを備える操舵システムにおいて、補助トルクの目標値を算出する補助トルク算出手段と、パワーステアリング装置の異常を検知する異常検知手段を有し、異常検知手段が異常状態を検知した場合、少なくともトーアウトの制御をしないようにトー角変更装置を制御することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、異常検知手段がパワーステアリング装置の異常状態を検知した場合、少なくとも旋回性が向上するトーアウトの制御をしないようにトー角変更装置を制御することができる。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、さらに、異常検知手段が異常状態を検知した場合、車速が所定値を超えるときに少なくともトーアウトの制御をしないようにトー角変更装置を制御することを特徴とする。
請求項2に係る発明によれば、異常検知手段がパワーステアリング装置の異常状態を検知した場合、車速が所定値を超えるときに操舵制御装置は、少なくともトーアウトの制御をしないように前記トー角変更装置を制御することができる。
請求項1に記載の発明によれば、パワーステアリング装置が異常状態となり、例えば、補助トルクが出力できない場合に、トー角変更装置に後輪を少なくとも旋回性が向上するトーアウトの制御をさせないように制御するので、運転者にとって操舵性が低下しているときに、旋回性が余り低下しないという違和感を与えることを防止できる。
また、請求項2に記載の発明によれば、パワーステアリング装置が異常状態となり、例えば、補助トルクが出力できない場合に、車速が所定値を超えるときに後輪を少なくともトーアウトさせない制御とするので、車両走行中の操舵感が重いにもかかわらず旋回性が余り低下しないという違和感を防止できる。そして、車速が所定値以下の十分低速のときには、操舵感が重くても良好な旋回性を維持でき、例えば、駐車時には小回りをすることができる。
《実施形態》
本発明の実施形態に係る操舵システムを図1から図7を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る操舵システムを適用した4輪車両の全体概念図である。本実施形態に係る操舵システムの説明においては、パワーステアリング装置のアクチュエータとして、例えば、電動機を用いた電動パワーステアリング装置を例に説明する。図2は電動パワーステアリング装置の構成図である。
図1に示すように、操舵システム100は、前輪1L、1Rを転舵させる操向ハンドル3による操舵を電動機(アクチュエータ)4で補助する電動パワーステアリング装置(パワーステアリング装置)110、電動パワーステアリング装置110による前輪1L、1Rの転舵角と車速とに応じて後輪2L、2Rのトー角をそれぞれ独立にアクチュエータ30によって変更させるトー角変更装置120L、120R、電動パワーステアリング装置110およびトー角変更装置120L、120Rを制御する操舵制御装置130(以下、操舵制御ECUと称する)、前輪転舵角センサS、車速センサSなど各種センサを含んで構成されている。
(電動パワーステアリング装置)
電動パワーステアリング装置110は、図2に示すように操向ハンドル3が設けられたメインステアリングシャフト3aと、シャフト3cと、ピニオン軸7とが、2つのユニバーサルジョイント(自在継手)3bによって連結され、また、ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。この構成により、電動パワーステアリング装置110は、操向ハンドル3の操作時に車両の進行方向を変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9、9は転舵機構を構成する。また、ラック軸8の車幅方向の移動量から前輪1L、1Rの向きを検出する前輪転舵角センサSが転舵機構に設けられている。
なお、ピニオン軸7はその上部、中間部、下部を軸受3d、3e、3fを介してステアリングギアボックス6に支持されている。
また、電動パワーステアリング装置110は、操向ハンドル3による操舵力を軽減するための補助操舵力を供給する電動機4を備えており、この電動機4の出力軸に設けられたウォームギア5aが、ピニオン軸7に設けられたウォームホイールギア5bに噛合している。
すなわち、ウォームギア5aとウォームホイールギア5bとで減速機構が構成されている。また、電動機4の回転子と電動機4に連結されてているウォームギア5aとウォームホイールギア5bとピニオン軸7とラック軸8とラック歯8aとタイロッド9、9などにより、ステアリング系が構成されている。
電動機4は、複数の界磁コイルを備えた固定子(図示せず)とこの固定子の内部で回動する回転子(図示せず)からなる3相ブラシレスモータであり、電気エネルギーを機械的エネルギー(P=ωT)に変換するものである。
ここで、ωは電動機4の角速度であり、Tは電動機4の発生トルクである。また、発生トルクTと実際に出力として取り出すことができる出力トルクT との関係は、次式(1)によって表現される。
=T−(cdθ/dt+Jθ/dt)i ・・・・(1)
ここで、iはウォームギア5aとウォームホイールギア5bとの減速比である。
(1)式より、出力トルクT と電動機回転角θとの関係は、電動機4の回転子の慣性モーメントJと粘性係数cとによって規定され、車両特性や車両状態に無関係である。
ここで、操向ハンドル3に加えられる操舵トルクをTs、減速機構を介して倍力された電動機4の発生トルクによりアシストするアシスト量Aの係数を、例えば、車速VSの関数として変化するk(VS)とする。この場合、A=k(VS)×Tsであるから、路面負荷であるピニオントルクTpは、次式(2)のように表される。
Tp=Ts+A
=Ts+k(VS)×Ts ・・・・・・・(2)
これより、操舵トルクTsは、次式(3)のように表現される。
Ts=Tp/(1+k(VS)) ・・・・・・・(3)
したがって、操舵トルクTsは、ピニオントルクTp(負荷)の1/{1+k(VS)}倍に軽減される。例えば、車速VS=0のときにk(0)=2ならば、操舵トルクTsは、ピニオントルクTpの1/3の軽さに制御され、車速VS=100km/hのときに、k(100)=0ならば、操舵トルクTsは、ピニオントルクTpと等しくなり、マニュアルステアリングと同等のしっかりとした重さの操舵トルクの手応え感に制御される。すなわち、車速VSに応じて操舵トルクTsを制御することにより、低速走行時には軽やかに、高速走行時にはしっかりとした安定な操舵トルクの手応え感が付与される。
また、電動パワーステアリング装置110は、電動機4を駆動する電動機駆動回路23と、レゾルバ25と、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTを検出するトルクセンサSと、トルクセンサSの出力を増幅する差動増幅回路21と、車両の速度(車速)を検出する車速センサSとを備えている。
そして、操舵システム100の操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110の機能部である電動機4を駆動制御する後記する電動パワーステアリング制御部130a(図5参照)を有している。
電動機駆動回路23は、例えば、3相のFETブリッジ回路のような複数のスイッチング素子を備え、電動パワーステアリング制御部130a(図5参照)からのDUTY(DU、DV、DW)信号を用いて、矩形波電圧を生成し、電動機4を駆動するものである。
また、電動機駆動回路23は図示しないホール素子を用いて3相の電動機電流I(IU、IV、IW)を検出する機能を備えている。
レゾルバ25は、電動機4の電動機回転角θを検出し、角度信号θを出力するものであり、例えば、磁気抵抗変化を検出するセンサを周方向に等間隔の複数の凹凸部を設けた磁性回転体に近接させたものがある。
トルクセンサSは、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTを検出するものであり、ピニオン軸7の軸方向2箇所に逆方向の異方性となるように磁性膜が被着され、各磁性膜の表面に検出コイルがピニオン軸7に離間して挿入されている。
差動増幅回路21は、検出コイルがインダクタンス変化として検出した2つの磁歪膜の透磁率変化の差分を増幅し、トルク信号Tを出力するものである。
車速センサSは、車速VSを単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号VSを出力する。
操舵制御ECU130の機能構成については、電動パワーステアリング装置110の制御とトー角変更装置120L、120Rの制御とまとめて後記する。
(トー角変更装置)
次に、図3、図4を参照しながらトー角変更装置の構成を説明する。
図3は左後輪側のトー角変更装置を示す平面図、図4はトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
トー角変更装置120L、120Rは、車両の左右の後輪2L、2Rにそれぞれ取り付けられるものであり、図3では、左後輪2Lを例にとりトー角変更装置120Lを示している。トー角変更装置120Lは、アクチュエータ30、トー角変更制御装置(以下、トー角変更制御ECUと称する)37を備えている。
なお、図3は、左側の後輪2Lのみを示しているが、右側の後輪2Rについても同様(対称)にして取り付けられている。ちなみに、操舵制御ECU130とトー角変更制御ECU37、37は本発明の操舵制御装置を構成している。
車体のリアサイドフレーム11にほぼ車幅方向に延びるクロスメンバ12の車幅方向端部が弾性支持されている。そして、ほぼ車体前後方向に延びるトレーリングアーム13の前端がクロスメンバ12車幅方向端部近くで支持されている。トレーリングアーム13の後端に後輪2Lが固定されている。
トレーリングアーム13は、クロスメンバ12に装着される車体側アーム13aと、後輪2Lに固定される車輪側アーム13bとが、ほぼ鉛直方向の回動軸13cを介して連結されて構成されている。これにより、トレーリングアーム13が車幅方向へ変位することが可能となっている。
前記アクチュエータ30は、その一端が車輪側アーム13bの回動軸13cより前方側の前端部にボールジョイント16を介して取り付けられ、他端がクロスメンバ12にボールジョイント17を介して取り付けられている。
図4に示すように、アクチュエータ30は、電動機31、減速機構33、送りねじ部35などを備えて構成されている。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータなどで構成されている。そして、コイルの巻線温度を検出する温度センサ31aを有し、トー角変更制御ECU37の後記する自己診断部81d(図7参照)に検出温度信号を入力する。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)などが組み合わされて構成されている。
送りねじ部35は、円筒形状に形成されたロッド35aと、このロッド35aの内部に挿入されて円筒形状をし、内周側にスクリュー溝35bが形成されたナット35cと、スクリュー溝35bと噛合してロッド35aを軸方向に移動可能に支持するスクリュー軸35dとを備えて構成されている。
送りねじ部35は、減速機構33および電動機31とともに細長形状のほぼ円筒形状のケース本体34内に収容されている。また、ケース本体34の送りねじ部35側にはブーツ36がケース本体34の端部とロッド35aの端部との間を蓋うように取り付けられており、ケース本体34の端部から露出したロッド35aの外周面に埃や異物が付着したり、ケース本体34の内部に外部から埃や異物や水が侵入しないようになっている。
減速機構33の一端が電動機31の出力軸と連結され、他端がスクリュー軸35dと連結されている。電動機31からの動力が、減速機構33を介してスクリュー軸35dに伝達されてスクリュー軸35dが回転することで、ロッド35aがケース本体34に対して図示左右方向(軸方向)に伸縮自在に動作するようになっている。スクリュー軸35dとナット35cのスクリュー溝35bとの噛合の摩擦力により、電動機31が通電されて駆動されていない状態においても、後輪のトー角が一定に保持される。
また、アクチュエータ30には、ロッド35aの位置(伸縮量)を検出するストロークセンサ38が設けられている。このストロークセンサ38は、例えば、マグネットが内蔵され、磁気を利用して位置を検出できるようになっている。このように、ストロークセンサ38を用いて位置を検出することにより、後輪2L、2Rのトーイン、トーアウトの舵角(トー角)を個別に高精度に検出できるようになっている。
このように構成されたアクチュエータ30は、ロッド35aの先端に設けられたボールジョイント16がトレーリングアーム13の車輪側アーム13b(図3参照)に回動自在に連結され、ケース本体34の基端(図4において右側の端)に設けられたボールジョイント17がクロスメンバ12(図3参照)に回動自在に連結されている。電動機31の動力によってスクリュー軸35dが回転してロッド35aが伸びる(図4の左方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向外側(図3の左方向)に押圧されて、後輪2Lが左方向に旋回し、またロッド35aが縮む(図4の右方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向内側(図3の右方向)に引かれて、後輪2Lが右方向に旋回する。
なお、アクチュエータ30のボールジョイント16が取り付けられる場所は、ナックルなど後輪2Lのトー角を変更できる位置であれば、車輪側アーム13bに限定されるものではない。また、本実施形態においてトー角変更装置120L、120Rはセミトレーリングアーム型独立懸架方式のサスペンションに対して適用した場合の例で示したがそれに限定されるものではなく、他の懸架方式のサスペンションにも適用できる。
例えば、ダブルウイッシュボーン式サスペンションのサイドロッドや、ストラット式サスペンションのサイドロッドに前記アクチュエータ30を組み込むことによっても実現できる。
また、アクチュエータ30には、トー角変更制御ECU37が一体に構成されている。トー角変更制御ECU37は、アクチュエータ30のケース本体34に固定され、ストロークセンサ38と、温度センサ31aとコネクタなどを介して接続されて構成されている。また、トー角変更制御ECU37、37同士の間と、トー角変更制御ECU37と操舵制御ECU130との間は通信回線で接続されている。
トー角変更制御ECU37には、車両に搭載された図示しないバッテリなどの電源から電力が供給される。また、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23にも前記とは別系統でバッテリなどの電源から電力が供給される(図示せず)。
(操舵制御ECU)
次に、図5、図6を参照しながら操舵制御ECUの機能を説明する。
図5は操舵システムの操舵制御ECUとトー角変更装置の概略制御機能構成図である。図6はベース信号演算部およびダンパ補償信号演算部の特性を示す図である。
操舵制御ECU130は、図示しないCPU、ROM、RAMなどを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成されている。
図5に示すように操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110(図1および図2参照)を制御する電動パワーステアリング制御部130aと、後輪2L、2Rの目標トー角を演算する後輪トー角制御部130bを備えている。
(電動パワーステアリング制御部)
まず、図5、図6を参照しながら適宜図2を参照して電動パワーステアリング制御部130aについて説明する。
電動パワーステアリング制御部130aは、ベース信号演算部(補助トルク算出手段)51と、ダンパ補償信号演算部(補助トルク算出手段)52と、イナーシャ補償信号演算部(補助トルク算出手段)53と、Q軸(トルク軸)PI制御部54と、D軸(磁極軸)PI制御部55と、2軸3相変換部56と、PWM変換部57と、3相2軸変換部58と、電動機速度算出部67と、励磁電流生成部59とを備えている。
3相2軸変換部58は、電動機駆動回路23が検出する電動機4の3相電流IU、IV、IWを、電動機4の回転子の磁極軸であるD軸と、このD軸に対して電気的に90度回転した軸であるQ軸との2軸に変換するものであり、Q軸電流IQは電動機4の発生トルクTに比例し、D軸電流IDは励磁電流に比例する。電動機速度算出部67は、電動機4の角度信号θを微分演算して角速度信号ωを生成する。励磁電流生成部59は、電動機4の励磁電流の目標信号を生成するが、必要に応じD軸電流とQ軸電流とをほぼ等しくすることにより、弱め界磁制御を行うことができる。
ベース信号演算部51は、トルク信号Tと車速信号VSとから出力トルクT の目標信号IMの基準となるベース信号Dを生成する。この信号生成は、予め本実施形態と同じタイプで操舵機能が前輪操舵機能の車両に対する実験測定などによって設定されたべーステーブル51aをトルク信号Tと車速信号VSとにもとづいて参照することによって行われる。図6(a)にべーステーブル51aに格納されているベース信号Dの関数を示す。ベース信号演算部51は、トルク信号Tの値が小さいときはベース信号Dがゼロに設定される不感帯N1が設けられ、トルク信号Tの値がこの不感帯N1よりも大きくなるとゲインG1で直線的に増加する特性を備えている。また、ベース信号演算部51は、所定のトルク値で出力はゲインG2で増加し、さらにトルク値が増加すると出力が飽和する特性を備えている。
また、一般に車両は、走行速度に応じて路面の負荷(路面反力)が異なるため、車速信号VSによりゲインが調整される。車速ゼロの据え切り操作時が最も負荷が重く中低速では比較的負荷が軽くなる。このため、ベース信号演算部51は、車速VSが大きく高速になるにしたがってゲイン(G1、G2)を低く、かつ、不感帯N1を大きく設定して、マニュアルステアリング領域を大きくとって路面情報を運転者に与える。すなわち、車速VSの増大に応じてしっかりとした操舵トルクTsの手応え感が付与される。このとき、マニュアルステアリング領域においてもイナーシャ補償がなされることが必要である。
図5に戻り、ダンパ補償信号演算部52は、ステアリング系が備える粘性を補償するため、また車両が高速走行時に収斂性が低下する際にこれを補償するステアリングダンパ機能を有するために設けられるものであり、角速度信号ωがダンパテーブル52aを参照することによって行われる。
図6(b)は、ダンパテーブル52aの特性関数を示す図であり、電動機4の角速度ωが増加するほど補償値Iが直線的に増加し、所定速度で補償値Iが急激に増加する特性を備えている。また、車速信号VSの値が高いほど、ゲイン(G3、G5)を大きくして電動機4の角速度、すなわち、転舵速度に応じて電動機4の出力トルクT を減衰させている。言い換えれば、電動機4に大きな電流が供給されて角速度ωが速くなると、電動機4の慣性によって直ぐには角速度ωが低下しない。この現象を回避するために、ダンパ補償信号演算部52は、電動機4の角速度を抑制制御している。このステアリングダンパ効果により、操向ハンドル3の収斂性を向上させ、車両特性を安定化させることができる。
再び図5に戻り、加算器61は、ベース信号演算部51の出力信号Dからダンパ補償信号演算部52の出力信号Iを減算するものであり、加算器62は、加算器61の出力信号とイナーシャ補償信号演算部52の出力信号とを加算して出力信号IMとするものである。
なお、ベース信号演算部51とダンパ補償信号演算部52と加算器61とでアシスト制御が行われる。
イナーシャ補償信号演算部53は、ステアリング系の慣性による影響を補償するものであり、トルク信号Tがイナーシャテーブル53aを参照することによって演算さる。
また、イナーシャ補償信号演算部53は、電動機4の回転子の慣性による応答性の低下を補償している。言い換えれば、電動機4は正回転から逆回転に、または、逆回転から正回転に回転方向を切り替える際、慣性によってその状態を持続させようとするので直ぐには回転方向が切り替わらない。そこで、イナーシャ補償信号演算部53は、電動機4の回転方向の切り替わりが操向ハンドル3の回転方向が切り替わるタイミングに一致するように制御している。このようにして、イナーシャ補償信号演算部53は、ステアリング系の慣性や粘性による操舵の応答遅れを改善してすっきりした操舵フィーリングを付与している。
また、FF(Front engine Front wheel drive)やFR(Front engine Rear wheel drive)車、RV(Recreation Vehicle)やセダンなどの車両特性や車速、路面などの車両状態によって異なる操舵特性に対して、実用上十分な特性が付与される。
加算器62の出力信号IMは、電動機4のトルクを規定するQ軸電流の目標信号であり、異常時補助トルク制限部63に入力される。
異常時補助トルク制限部63は、後記する自己診断部72から、後記する巻線温度高モードの異常状態検出信号を受けたときは、入力信号IMが所定値を超える場合は、所定値を超えないように抑制する。
また、異常時補助トルク制限部63は、入力された加算器62の出力信号IMに対して、後記するトー角変更制御診断部73から補正指令信号が入力されたとき、そのときの入力されている信号IMに対して時間的に変化させて所定の補正量だけ信号IMを低下させ、加算器64に出力信号IMを出力する。
この所定の補正量は、信号IMの一定割合、例えば、80%とする。もともと信号IMは、左右転舵時で電流が正負となるので、入力される信号IMの正負に限らず入力された値の80%に減じることで補助トルクを運転者に分かるように低下させる。
異常時補助トルク制限部63は、トー角変更制御診断部73から補正指令信号が入力されていない場合は、入力された信号IMをそのまま出力信号IMとして加算器64に出力する。
加算器64は出力信号IMからQ軸電流IQを減算し、偏差信号IEを生成する。Q軸(トルク軸)PI制御部54は、偏差信号IEが減少するように、P(比例)制御およびI(積分)制御を行う。
加算器65は、励磁電流生成部59の出力信号からD軸電流IDを減算するものである。D軸(磁極軸)PI制御部55は、加算器65の出力信号が減少するようにPI帰還制御を行う。
2軸3相変換部56は、Q軸(トルク軸)PI制御部54の出力信号VQとD軸(磁極軸)PI制御部55の出力信号VDとの2軸信号を3相信号UU、UV、UWに変換する。PWM変換部57は、3相信号UU、UV、UWの大きさに比例したパルス幅のON/OFF信号[PWM(Pulse Width Modulation)信号]であるデューティ信号(DU、DV、DW)を生成する。
なお、2軸3相変換部56およびPWM変換部57は、電動機4の角度信号θが入力され、回転子の磁極位置に応じた信号が出力される。
(後輪トー角制御部)
次に、図5を参照しながら後輪トー角制御部130bについて説明する。図5に示すように後輪トー角制御部130bは、目標トー角演算部71、自己診断部72、トー角変更制御診断部73を有する。
前輪転舵角センサSは、前輪1L、1Rの転舵角δを検出し、目標トー角演算部71に入力する。
目標トー角演算部71は、車速信号VSと、転舵角δと転舵角速度δ’(これは転舵角δを時間微分して容易に求めることができる)とから後輪2L、2Rのそれぞれの目標トー角αTL、αTRを生成し、左右の後輪2L、2Rのそれぞれのトー角変更を制御するトー角変更制御ECU37、37に目標トー角αTL、αTRを入力する(図7参照)。この目標トー角αTL、αTR生成は、予め左右の後輪2L、2Rごとに設定された第1のトー角テーブル71aと第2のトー角テーブル71bを、転舵角δ、転舵角速度δ’、車速VSにもとづいて参照することによって行なわれる。
第1のトー角テーブル71aは、電動パワーステアリング装置110が正常に機能している場合に用いられるテーブルである。第2のトー角テーブル71bは、電動パワーステアリング装置110の補助トルク機能が失陥した場合に、後記する自己診断部72からの失陥モードの異常状態検出信号を受信したときに用いられるテーブルである。
第1のトー角テーブル71aでは、例えば、次式(4)、(5)のように設定される。
αTL=K(VS,δ’,δ)・δ ・・・・(4)
αTR=K(VS,δ’,δ)・δ ・・・・(5)
ここで、K(VS)、K(VS)は車速VS、転舵角δおよび転舵角速度δ’に依存する前後輪操舵比であり、後輪の目標トー角αTL、αTRが、以下のように設定される。
(a)車速が所定の低速の範囲では、転舵角δに応じて後輪2L、2Rが逆相に、小回りがしやすいように各後輪の目標トー角αTL、αTRが生成される。
(b)前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲では、転舵角速度δ’の絶対値が所定の値以下で、かつ、転舵角δが左右の所定の範囲以内の場合は、転舵角δに応じて同相に各後輪2L、2Rの目標トー角αTL、αTRが設定される。つまり、レーンチェンジにおける横すべり角βを小さくするように各後輪2L、2Rの目標トー角αTL、αTRが設定される。
(c)しかし、前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲で、転舵角速度δ’の絶対値が所定の値を超えるか、または、転舵角δが左右の所定の範囲を超える大きな転舵角δの場合は、転舵角δに応じた逆相に各後輪の目標トー角αTL、αTRが設定される。
なお、目標トー角演算部71で生成される目標トー角αTL、αTRは、旋回安定性の観点から必ずしもアッカーマン・ジャントのジオメトリに従う必要はない。また、転舵角δが0°のとき目標トー角αTL、αTRが、それぞれ、例えば、2°のトーインの設定になっていても良い。
第2のトー角テーブル71bにおいても式(4)、(5)のような形式で設定されるが、電動パワーステアリング装置110の補助トルク機能が失陥して操舵性が低下している場合の、運転者に与える操舵感と車両の旋回特性がミスマッチして違和感を与えないように、第1のトー角テーブル71aでは許容した、(b)の前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲では、転舵角速度δ’の絶対値が所定の値以下で、かつ、転舵角δが左右の所定の範囲以内の場合は、転舵角δに応じて同相に各後輪2L、2Rの目標トー角αTL、αTRが設定される目標トー角制御と、(c)の前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲で、転舵角速度δ’の絶対値が所定の値を超えるか、または、転舵角δが左右の所定の範囲を超える大きな転舵角δの場合は、転舵角δに応じた逆相に各後輪の目標トー角αTL、αTRが設定される目標トー角制御を禁じている。要約すると、左右の後輪2L、2Rは、前記所定の低速の範囲を超えた高速の範囲の車速VSでは、いかなる転舵角δ、転舵角速度δ’の場合でも、少なくともαTLおよびαTRが0°を超えてトーアウトとならないように第2のトー角テーブル71bのデータはあらかじめ設定されている。
なお、所定の低速の範囲とは、ここでは停止状態から、例えば、最徐行速度10km/hrまでの範囲である。
次に、図5を参照しながら自己診断部(異常検知手段)72について説明する。自己診断部72は、レゾルバ25からの角度信号θや電動機駆動回路23の図示しないホール素子からの検出信号、温度センサ4aからの温度信号、加算器64からの出力信号の状態監視にもとづき、電動パワステアリング装置110の異常状態を検出したか否かを判定する。
例えば、自己診断部72は、温度センサ4aの信号が所定値を超える場合は、電動機4の巻線温度異常(巻線温度高モード)と判断し、異常時補助トルク制限部63に目標電流を抑制させるように巻線温度高モードの異常状態検出信号を出力する。
また、自己診断部72は、加算器64からの出力信号IEと電動機駆動回路23のホール素子からの実電流の検出信号を監視するとともに、レゾルバ25からの角度信号θにより、電動パワーステアリング装置110の補助トルク機能の失陥を判定し、失陥と判定した場合(失陥モード)は、電動機駆動回路23に電動機4への給電停止を指令し、目標トー角演算部71に、失陥モードの異常状態検出信号を出力し、目標トー角演算部71が左右のトー角変更装置120L、120Rのトー角変更制御ECU37に出力する目標トー角αTL、αTRの演算をするに当たって用いるテーブルを、第1のトー角テーブル71aから第2のトー角テーブル71bを使うように切り替えさせる。
次にトー角変更制御診断部73について説明する。トー角変更制御診断部73はトー角変更装置120L、120Rのトー角変更制御ECU37の後記する自己診断部81d(図7参照)から後記する異常状態検知信号を受信し、異常状態検知信号と共に受信した後記する所定の実トー角αSL、αSRが後輪2L、2Rのトーイン状態、またはαSL=αSR=0を示さない(つまり、少なくとも一方の後輪がトーアウト状態であることを示し)で、かつ、車速が所定値Vlow以下であるかを判定し、この条件を満たすとき、異常時補助トルク制限部63に入力された信号IMを前記したように所定の補正量分だけ低下させて信号IMとして出力するように前記補正指令信号を異常時補助トルク制限部63に出力する。前記条件を満たさないとき、例えば、後輪トーイン状態で固着の場合、後記する所定の実トー角αSL=αSR=0の状態で固着の場合、両方のトー角変更装置120L、120Rが正常の場合は、前記補正指令信号を異常時補助トルク制限部63に出力しない。
(トー角変更制御ECU)
次に、図7を参照しながらトー角変更制御ECUの詳細な構成を説明する。図7はトー角変更装置のトー角変更制御ECUの制御機能のブロック構成図である。
図7に示すように、トー角変更制御ECU37はアクチュエータ30を駆動制御する機能を有し、制御部81と電動機駆動回路83とで構成されている。また、各トー角変更制御ECU37は、操舵制御ECU130と通信線を介して接続され、他方のトー角変更制御ECU37とも通信線を介して接続されている。
制御部81は、CPU、RAM、ROMなどを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成されており、目標電流算出部81a、電動機制御信号生成部81c、自己診断部81dを有している。
一方(右後輪2R側)のトー角変更制御ECU37の目標電流算出部81aは、操舵制御ECU130から通信線を介して入力される後輪2Rの目標トー角αTRと、ストロークセンサ38から得られる現在の後輪2Rのトー角αとにもとづいて、目標電流信号を算出して、電動機制御信号生成部81cに出力する。
他方(左後輪2L側)のトー角変更制御ECU37の目標電流算出部81aは、操舵制御ECU130から通信線を介して入力される後輪2Lの目標トー角αTLと、ストロークセンサ38から得られる現在の後輪2Lのトー角αとにもとづいて、目標電流信号を算出して、電動機制御信号生成部81cに出力する。
ここで、目標電流信号とは、アクチュエータ30を所望の速度で所望の作動量(後輪2L、2Rを所望のトー角αTL、αTRにする伸縮量)に設定するのに必要な電流信号である。
このように目標電流算出部81aにおいて目標トー角αTL、αTRに対して現在のトー角α、αをフィードバックして、目標電流信号を補正することにより、後輪2L(または後輪2R)の転舵に要する電流値が車速VS、路面環境、車両の運動状態、タイヤの磨耗状態などによって変化するのをフィードバックして、目標のトー角αTL、αTRに速やかに設定することができる。
なお、目標電流算出部81aにおいて、フィードフォワード制御も加えて、応答性を高めても良い。
電動機制御信号生成部81cは、目標電流算出部81aから目標電流信号が入力され、電動機駆動回路83に電動機制御信号を出力する。この電動機制御信号は、電動機31に供給する電流値と電流を流す方向を含む信号である。電動機駆動回路83は、FET(Field Effect Transistor)のブリッジ回路などで構成され、電動機制御信号にもとづいて電動機31に電動機電流を供給する。
また、図7に示すように自己診断部81dは、自身が属する側のトー角変更装置120Lまたはトー角変更装置120Rのストロークセンサ38の位置信号や電動機駆動回路83のホール素子からの検出信号、温度センサ31aからの温度信号、目標電流算出部81aの状態監視にもとづき、異常状態を検出したか否かを判定する。
例えば、自己診断部81dは、温度センサ31aの信号が所定値を超える場合は、電動機31の巻線温度異常(巻線温度高モード)と判断し、所定の実トー角αSL(または実トー角αSR)、例えば、0°を目標電流算出部81aに入力する。ここで、実トー角αSLは異常検知時の左後輪2Lに対して入力されて実現した実トー角であり、実トー角αSRは異常検知時の右後輪2Rに対して入力されて実現した実トー角である。
また、自己診断部81dは、目標電流算出部81aの目標電流値と電動機駆動回路83のホール素子からの実電流の検出信号を監視するとともに、ストロークセンサ38からの位置信号により、アクチュエータ30の固着の有無を判定し、固着と判定した場合(固着モード)は、電動機駆動回路83に電動機31への給電停止を指令し、目標電流算出部81aに現在のトー角α(またはトー角α)を実トー角αSL(または実トー角αSR)として入力する。そして、他方のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dに異常状態検知信号と、異常を検知して前記対処したモードの信号を送信する。
なお、トー角変更装置120L、120Rの異常を検知するために自己診断部81dだけでなく、ウォッチドッグ回路を周辺回路として設けて制御部81を監視し、制御部81の異常を検出したとき電動機駆動回路83に電動機31への給電停止を指令し、他方のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dに異常状態検知信号を出力させるようにしても良い。
さらに、自己診断部81dは、他方の側のトー角変更装置120R(またはトー角変更装置120L)のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dからの異常検知信号を受信をしていないかチェックし、異常検知信号を受信している場合は、その前記対処したモードの信号にもとづいて、目標電流算出部81aに実トー角αSL(または実トー角αSR)を入力する。
つまり、自身のトー角変更制御ECU37に対応するトー角変更装置120L(またはトー角変更装置120R)が健全に作動しているか否かを示す信号を受信して監視しているとともに、他方のトー角変更制御ECU37に対応するトー角変更装置120R(またはトー角変更装置120L)が健全に作動しているか否かを示す信号を監視し、いずれかの側が異常である場合は、両方のトー角変更制御ECU37、37は所定の同一モードの対処をする。
そして、各自己診断部81dは、異常状態検知信号と、異常を検知して前記対処したモードの信号と、所定の実トー角αSL(または所定の実トー角αSR)をトー角変更制御診断部73に送る。
次に図8を参照しながら電動パワーステアリング装置110の補助トルク失陥時の後輪のトー角変更制御の流れを説明する。図8は目標トー角演算部における制御の流れを示すフローチャートである。この処理は、一定の周期で行なわれる制御である。
ステップS1では、操舵制御ECU130が起動した直後に、初期設定として通常状態を示すIFLAG=0をセットする(ステップS1)。次いで、電動パワーステアリング装置110の補助トルク失陥機能が失陥(EPS(Electric Power Steering)失陥)か否かを、自己診断部72から前記した失陥モードの異常状態検出信号を受信しているか否かで判定する。EPS失陥でない場合(No)はステップS3へ進み、EPS失陥の場合(Yes)はステップS4へ進む。
ステップS3では、第1のトー角テーブル71aを用いて、車速VS、転舵角δ、転舵角速度δ’に応じて目標トー角αTL、αTRを算出して、それぞれトー角変更装置120L、120Rのトー角変更制御ECU37へ出力する(通常時RTC(Rea toe Control)制御)。そして、ステップS2へ戻り、一連の制御を繰り返す。
通常時RTC制御は、車速VS、転舵角δ、転舵角速度δ’に応じて後輪2L、2Rのトー角を同相、逆相に制御するので、低速時の小回りや、高速時の機敏なレーンチェンジ、高速時の危険回避のため急旋回を許容する。
ステップS4では、IFLAG=0か否かをチェックする。IFLAG=0の場合(Yes)はステップS5へ進み、IFLAG=0でない場合(No)はステップS7へ進む。ステップS5では、第1のトー角テーブルから第2のトー角テーブルに切り替える。そして、補助トルク失陥モードであることを示すIFLAG=1とセットする(ステップS6)し、ステップS7へ進む。
ステップS7では、第2のトー角テーブル71aを用いて、車速VS、転舵角δ、転舵角速度δ’に応じて目標トー角αTL、αTRを算出して、それぞれトー角変更装置120L、120Rのトー角変更制御ECU37へ出力する(異常時RTC制御)。そして、ステップS2へ戻り、一連の制御を繰り返す。
異常時RTC制御では、十分な低速時には、小回りができるように後輪2L、2Rのトー角を逆相にさせることは許容する。しかし、高速時はEPS失陥により操舵性が落ちているので、それに合せて安定な旋回性を確保することを優先させ、後輪2L、2Rのトーアウト制御を許容しない。
次に図9を参照しながらトー角変更制御診断部73における制御を説明する。図9はトー角変更制御診断部における制御の流れを示すフローチャートである。この処理は、一定の周期で行なわれる制御である。
ステップS11では、車速VS、左右のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dからの異常状態検知信号および所定の実トー角αSL、αSRを随時読み込む。
ステップS12では、異常状態検知信号を受信したか否かをチェックする(異常検知?)。異常検知の場合(Yes)はステップS12へ進み、異常を検知していない場合(No)は一つの周期内の処理を終了する。
ステップS13では、ステップS11で読み込んだ所定の実トー角αSL、αSRをチェックし、左右両方の後輪2L、2Rが共にトーイン状態またはαSL=αSR=0かを判定する。後輪2L、2Rが共にトーイン状態またはαSL=αSR=0の場合(Yes)は、一つの周期内の処理を終了する。後輪2L、2Rが共にトーイン状態でないか、またはαSL=αSR=0でない場合(No)は、ステップS14へ進み、車速VSが所定の車速Vlow以下かどうかをチェックする。車速VSが所定の車速Vlowより大きい場合(No)は、一つの周期内の処理を終了する。車速VSが所定の車速Vlow以下の場合(Yes)は、補正指令信号を異常時補助トルク制限部63に出力する、つまり、補助トルクを低下させ、一連の制御を終了する。
そして、異常時補助トルク制限部63は入力される信号IMに対して、所定の時間遅れを持たせて緩やかに所定の割合の補助トルクまで低下させ、以後、入力される信号IMの所定の割合、この場合2割の出力信号IMを加算器64に出力する。
ちなみに、車速Vlowは、十分低速な車速であり、補助トルクの急激な、例えば、80%カットのような低下に対して、車両走行中に運転者が操舵力の急変に戸惑っても車両の走行に影響を与えない車速である。例えば、最徐行時の時速10km/hrのような車速である。
以上説明したように、本実施形態によれば、操舵制御ECU130は、目標トー角演算部71において、自己診断部72からの電動パワステアリング装置110の補助トルク機能の失陥と判定した失陥モードの異常状態検出信号を受けたとき、所定の低速の範囲を超えた高速の範囲、例えば、時速10km/hrより高速状態では、後輪2L、2Rをトーアウトとさせない制御に切り替えるので、補助トルクが無くなり操向ハンドル3を操作する時の反力が大きく操舵性が低下しているのに合せて、後輪操舵による軽快な旋回性を付与しないので、運転者にとって安定した旋回操作ができる。
その結果、電動パワーステアリング装置110の補助トルクがなくなったのに、高速走行時に後輪2L、2Rの同相制御を生じて違和感を感じることを防止できる。
また、トー角変更制御診断部73において、トー角変更制御ECU37からの後輪転舵機能の異常状態検知信号を受信したとき、後輪2L、2Rが共にトーイン状態でないかαSL=αSR=0でない場合に、車速が車速Vlow以下であることを確認して補助トルクを低下させるように加算器64に出力させるので、十分低速な状態で、補助トルクが小さくなり、運転者は操舵トルクの手応え感が大きくなるのを感じて、操舵機能に異常があることを感知しやすくなる。
したがって、走行中の急な補助トルクの急激な低減による運転者の戸惑いを防止できる。
もし、車速Vlowを超える車速で走行中の場合は、もともと速度の増加に応じて補助トルクが低下するようにゲインが設定されているので、トー角変更装置120L、120Rの異常は運転者に感じ取れ安く、運転者が操舵性に違和感を感じて車速を低減し、車速がVlow以下になったときに、補助トルクの低減を生じさせ、運転者にトー角変更装置120L、120Rの異常を明確に検知させることができる。
このとき、時間的な遅れを持って補助トルクを低減させるので、急激な補助トルクの低減に運転者が驚かないようにすることができる。
なお、トー角変更制御ECU37からの信号が後輪2L、2Rが共にトーイン状態またはαSL=αSR=0を示しているときは、補助トルクの低減をさせないのは、後輪2L、2Rが共にトーイン状態またはαSL=αSR=0で固着しているときは、操舵性、旋回性は、通常の前輪1L、1Rのみの操舵の車両と同じなので、コンソールに設けたトー角変更装置120L、120Rの異常を知らせる警報ランプを点灯させて、運転者に警報するだけでも十分であるからである。
ちなみに、一方のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dが異常状態を検知したとき、他方のトー角変更制御ECU37に対して異常状態検知信号を発信して、両方のトー角変更装置120L、120Rのトー角を固定するように制御するので、後輪2L、2Rのトー角のみの一方のみが変更制御され続けることが防止でき、トー角変更装置120L、120Rの異常状態時の走行性が安定に維持される。
(第1の変形例)
次に実施形態の第1の変形例の操舵システム100を図1、図10および図11を参照しながら説明する。図10は第1の変形例の操舵システムにおける操舵制御ECUとトー角変更装置の概略制御機能構成図であり、図11は操舵制御ECUの目標トー角演算部の詳細な制御機能構成図である。実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本変形例の操舵システム100は、図1に示すようにヨーレートセンサSを備え、車体の実ヨーレートを検出して、操舵制御ECU130Aに入力する。
操舵制御ECU130Aは、図10に示すように目標トー角演算部71の代わりに目標トー角演算部71Aを有している。図11は目標トー角演算部71Aの詳細な機能構成図である。
図11に示すように目標トー角演算部71Aは、転舵角フィードフォワード部(以下、転舵角F/F部と称する)91、転舵角速度演算部92、転舵角速度フィードフォワード部(以下、転舵角速度F/F部と称する)93、加算器94から構成されるフィードフォワード制御部90aと、規範ヨーレート演算部95、減算器96、ヨーレート・フィードバック部(以下、ヨーレートF/B部)97から構成されるフィードバック制御部90bと、加算器98とを有している。
転舵角はF/F部91には、転舵角δおよび車速VSの信号と自己診断部72からの異常状態検出信号が入力され、第1のゲインテーブル91aまたは第2のゲインテーブル91bを参照して目標トー角のフィードフォワード出力値α1L、α1Rを算出する。これら第1および第2のゲインテーブル91a、91bは、転舵角δと車速VSをパラメータにしてフィードフォワード出力値α1L、α1Rを算出できるように前もってメモリに記憶されたルックアップテーブルである。
転舵角F/F部91は通常状態時には第1のゲインテーブル91aを参照して、車速VSと転舵角δにもとづいてフィードフォワードのレシオ制御を行ない、転舵角δが大きいほど目標トー角のフィードフォワード出力値α1L、α1Rの絶対値を大きく設定する。
転舵角F/F部91は、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、第1のゲインテーブル91aから第2のゲインテーブル91bへとテーブルを切り替え、第2のゲインテーブル91bを参照してフィードフォワード出力値α1L、α1Rを算出する。
転舵角F/F部91が第1のゲインテーブル91aを参照して目標トー角を算出する場合は、後輪2L、2Rが左側に向くときを正、右側を向くときを負とし、前記したように車速が所定の低速の範囲では、後輪2L、2Rが転舵角δに対して逆相に、小回りがしやすいように目標トー角のフィードフォワード出力値α1L、α1Rを設定する。また、前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲で、かつ、転舵角δが左右の所定の範囲以内の場合は、転舵角F/F部91は第1のゲインテーブル91aを参照して、後輪2L、2Rが転舵角δに対して同相になるように出力値α1L、α1Rを設定する。前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲で、かつ、転舵角δが左右の所定の範囲を超える場合は、転舵角F/F部91は第1のゲインテーブル91aを参照して、後輪2L、2Rが転舵角δに対して逆相になるように出力値α1L、α1Rを設定する。
第2のゲインテーブル91bは第1のゲインテーブル91bと異なり、フィードフォワード出力値α1L、α1Rがトーイン制御となるように設定されている。
転舵角速度演算部92は、転舵角δを時間微分し転舵角速度δ’を算出し、転舵角速度F/F部93に入力する。
転舵角速度F/F部93には、転舵角速度δ’および車速VSの信号と自己診断部72からの異常状態検出信号が入力され、第1のゲインテーブル93aまたは第2のゲインテーブル93bを参照してフィードフォワード出力値α2L、α2Rを算出する。これら第1および第2のゲインテーブル93a、93bは、転舵角速度δ’と車速VSをパラメータにしてフィードフォワード出力値α2L、α2Rを算出できるように前もってメモリに記憶されたルックアップテーブルである。
転舵角速度F/F部93は通常状態時には第1のゲインテーブル93aを参照して、車速VSと転舵角速度δ’にもとづいてフィードフォワードのレシオの制御を行ない、転舵角速度δ’が大きいほどフィードフォワード出力値α2L、α2Rの絶対値を大きく設定する。
転舵角速度F/F部93は、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、第1のゲインテーブル93aから第2のゲインテーブル93bへとテーブルを切り替え、第2のゲインテーブル93bを参照してフィードフォワード出力値α2L、α2Rを算出する。第2のゲインテーブル93bは第1のゲインテーブル93bと比較して、フィードフォワード出力値α2L、α2Rが小さくなるようにゲインが設定されている。
この結果、転舵角速度F/F部93は通常状態時は、転舵角速度δ’に応じて車両の軽快な旋回運動を実現するようにフィードフォワード出力値α2L、α2Rを設定し、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したときは、転舵角速度δ’に対して車両の旋回運動が敏感に応答しないようにフィードフォワード出力値α2L、α2Rを設定する。
転舵角F/F部91で算出された目標トー角のフィードフォワード出力値α1L、α1Rと、転舵角速度F/F部93で算出されたフィードフォワード出力値α2L、α2Rは加算器94で加算されて目標トー角のフィードフォワード出力値α3L(=α1L+α2L)、α3R(=α1R+α2R)となり、加算器98に入力されると共に規範ヨーレート演算部95に入力される。
規範ヨーレート演算部95には、転舵角δおよび車速VSの信号と、自己診断部72からの異常状態検出信号と、目標トー角のフィードフォワード出力値α3L、α3Rと、が入力され、第1の規範ヨーレートテーブル95aまたは第2の規範ヨーレートテーブル95bを参照して規範ヨーレートγを算出する。第1の規範ヨーレートテーブル95aは、電動パワステアリング装置110が通常状態のときに用いられ、第2の規範ヨーレートテーブル95bは、電動パワステアリング装置110の補助トルク機能が失陥した状態のときに用いられる。これら第1および第2の規範ヨーレートテーブル95a、95bは、例えば、速VS、転舵角δ、目標トー角の出力値α3L、α3Rをパラメータにして規範ヨーレートγを演算できるように前もってメモリに記憶されたルックアップテーブルである。
第1の規範ヨーレートテーブル95aは、規範ヨーレートγが、車速VS、転舵角δの組み合わせにもとづいて前記したように転舵角δに対して後輪のトー角を逆相または同相に設定して、期待する車両の軽快な旋回運動時の目標となる標準的なヨーレートを算出するように前もって設定されている。
図11に示すように自己診断部72から異常状態検出信号が入力され、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、規範ヨーレート演算部95は、第1の規範ヨーレートテーブル95aから第2の規範ヨーレートテーブル95bへとテーブルを切り替える。第2の規範ヨーレートテーブル95bは、転舵角δを重視した安定な旋回性能を期待する規範ヨーレートγを算出するように前もって設定されている。
規範ヨーレート演算部95で算出された規範ヨーレートγは減算器96に入力され、ヨーレートセンサSからの実ヨーレートγとの偏差Δγが得られて、ヨーレートF/B部97に入力される。
ヨーレートF/B部97は通常状態時は、実ヨーレートγと偏差Δγに応じて、第1のゲインテーブル97aを参照して、目標トー角のフィードバック出力値α4L、α4Rを加算器98に出力する。そして、図11に示すように、ヨーレートF/B部97には自己診断部72から異常状態検出信号が入力され、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、第1のゲインテーブル97aから第2のゲインテーブル97bへとテーブルを切り替える。ヨーレートF/B部97は前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したときは、実ヨーレートγと偏差Δγに応じて、第2のゲインテーブル97bを参照して、目標トー角のフィードバック出力値α4L、α4Rを加算器98に出力する。
これら第1および第2のゲインテーブル97a、97bは、ヨーレートと偏差Δγをパラメータにしてフィードバック出力値α4L、α4Rを算出できるように前もってメモリに記憶されたルックアップテーブルである。
第1のゲインテーブル97aは、ヨーレートの偏差Δγに対してフィードバックが大きいようにゲインが設定されており、それに対し第2のゲインテーブル97bは、第1のゲインテーブル97aに比してヨーレートの偏差Δγに対してフィードバックが小さいようにゲインが設定されている。
そして、加算器98において目標トー角のフィードフォワード出力値α3L、α3Rと、目標トー角のフィードバック出力値α4L、α4Rとが加算されて、目標トー角αTL(=α3L+α4L)、αTR(=α3L+α4L)が左右の後輪2L、2Rのトー角変更制御ECU37、37にそれぞれ入力される。
ここで、第1のゲインテーブル91a、93a、97aおよび第1の規範ヨーレートテーブル95aが通常状態時の規範車両モデルを構成し、第2のゲインテーブル91b、93b、97bおよび第2の規範ヨーレートテーブル95bが失陥モードの異常状態時の規範車両モデルを構成する。
目標トー角演算部71Aにおける通常状態時の規範車両モデルから失陥モードの異常状態時の規範車両モデルへの切替は、前記実施形態における図7に示した目標トー角演算部71における制御のフローチャート(図8)の説明と同様に実行される。ただし、操舵制御ECU130は操舵制御ECU130Aに読み直し、目標トー角演算部71は目標トー角演算部71Aに読み直し、第1のトー角テーブル71aおよび第2のトー角テーブル71bはそれぞれ前記した通常状態時の規範車両モデルおよび前記した失陥モードの異常状態時の規範車両モデルに読み直す。そして、図8のフローチャートにおけるステップS5の「テーブル切替」は、「規範車両モデル切替」と読み直す。
図12は本第1の変形例の規範車両モデルと前輪だけを操舵する車両(以下、コンベンショナル車両と称する)との旋回運動におけるヨーレートの応答特性を比較したものである。図12の(a)は横軸をハンドル操舵周波数とし、縦軸をヨーレートのゲインとしたヨーレートの応答特性である。図12の(b)は横軸をハンドル操舵周波数とし、縦軸をヨーレートの位相としたヨーレートの応答特性である。
本第1の変形例の前記規範車両モデル(通常状態時)は、図12の(a)に破線で示すように、一点鎖線線で示すコンベンショナル車両と比較して、共振周波数を右矢印の方向に高くし、共振ゲインを下矢印の方向に下げ、減衰率を増加することを目標に、また、図12の(b)に破線で示すように、一点鎖線線で示すコンベンショナル車両と比較して、上矢印の方向にヨーレートの位相の遅れを低減することを目標に設定される。
これにより、通常状態時には運転者の速い操舵にも追従する高レスポンスの車両応答を実現できる。
本第1の変形例の前記規範車両モデル(失陥モードの異常状態時)は、図12の(a)に実線で示すように、規範車両のヨーレートのゲインを通常状態時の規範車両モデルより下げ、図12の(b)に示すように、ヨーレートの位相の遅れは通常状態時の規範車両モデルと同じにすることを目標に設定される。
これにより、電動パワーステアリング装置110が補助トルク失陥時に、規範車両モデルを切り替えて低レスポンスの車両とすることで車両の安定性を確保できる。
なお、前記実施の形態およびその第1の変形例において、目標トー角の制御を通常状態から前記失陥モードの異常状態時への切り替えは、車両が旋回運動をしていないとき、または、車両が十分低速な走行状態のときにに行なうと、運転者が、例えば、旋回運動中の車両の応答特性の急変に戸惑わずに済み、好ましい。
(その他の変形例)
本発明は前記実施形態やその第1の変形例に限定されるものではなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記実施形態およびその第1の変形例における電動パワーステアリング制御部130aは、目標電流を設定して電動機4に流す電流を制御したが、電動機4に印加される電圧を目標電圧に設定することもでき、電動機4が出力するトルクを目標トルクに設定して、電動機4に流す電流を制御することもできる。この目標電圧あるいは目標トルクも目標信号に含まれる。
(2)本実施形態およびその第1の変形例では、図6の(a)に示すように、ベース信号演算部51において車速VSをパラメータとしてトルク信号Tから出力トルクT の目標信号IMの基準となるベース信号Dを算出することとしていたがそれに限定されるものではない。操舵制御ECU130または操舵制御ECU130Aに操向ハンドル3に設けられた操作角センサからの操作角信号と、ヨーレートセンサSからのヨーレート信号とを入力し、車速VSと操作角にもとづいてあらかじめ決められた規範ヨーレートを算出し、規範ヨーレートと実際のヨーレートの差分にもとづいて、操向ハンドル3への反力をフィードバック制御する電動パワーステアリング装置にも適用可能である。
また、操舵制御ECU130または操舵制御ECU130AにヨーレートセンサSからのヨーレート信号を入力し、車速VSとヨーレートにもとづいて算出されるヨーレートフィードバック反力トルクを操向ハンドル3への反力としてフィードバックする電動パワーステアリング装置にも適用可能である。
前記実施形態およびその変形例において、本操舵システムは、電動パワーステアリング装置の補助トルク失陥時には、後輪のトー角α、αをトーアウトにする制御を禁止しているが、これはヨーレートの発生を抑える方向に後輪のトー角を変更することを意味する。左右の後輪のトー角が同相に制御される操舵システムであれば、旋回外輪に当たる後輪がトーアウトになるいわゆる前輪の転舵角δに対する左右の後輪のトー角の逆相を禁止するものを含んでいる。
本発明の実施形態に係る操舵システムを備えた4輪車両の全体概念図である。 操舵システムの電動パワーステアリング装置の構成図である。 操舵システムの左後輪側のトー角変更装置の構成図である。 トー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。 操舵システムの操舵制御ECUとトー角変更装置の概略制御機能構成図である。 ベース信号演算部およびダンパ補償信号演算部の特性を示す図である。 トー角変更装置のトー角変更制御ECUの制御機能ブロック構成図である。 電動パワステアリング装置の補助トルク失陥時の後輪のトー角変更制御の流れを示すフローチャートである。 後輪転舵機能診断部の制御の流れを示すフローチャートである。 第1の変形例の操舵システムにおける操舵制御ECUとトー角変更装置の概略制御機能構成図である。 操舵制御ECUの目標トー角演算部の詳細な制御機能構成図である。 第1の変形例の規範車両モデルとコンベンショナル車両との旋回運動におけるヨーレートの応答特性を比較したものであり、(a)はヨーレートのゲイン特性図であり、(b)はヨーレートの位相遅れ特性図である。
符号の説明
1L、1R 前輪
2L、2R 後輪
3 操向ハンドル
4 電動機(アクチュエータ)
4a 温度センサ(異常検知手段)
25 レゾルバ
30 アクチュエータ
31 電動機
31a 温度センサ
33 減速機構
35 送りねじ部
37 トー角変更制御ECU(操舵制御装置)
38 ストロークセンサ
51 ベース信号演算部(補助トルク算出手段)
51a ベーステーブル
51b バックアップテーブル
52 ダンパ補償信号演算部(補助トルク算出手段)
53 イナーシャ補償信号演算部(補助トルク算出手段)
54 Q軸(トルク軸)PI制御部
60 リレースイッチ
61、62 加算器
63 異常時補助トルク制限部
67 電動機速度算出部
71、71A 目標トー角演算部
71a 第1のトー角テーブル
71b 第2のトー角テーブル
72 自己診断部(異常検知手段)
73 トー角変更制御診断部
81 制御部
81a 目標電流算出部
81c 電動機制御信号生成部
81d 自己診断部
83 電動機駆動回路
90a フィードフォワード制御部
90b フィードバック制御部
91 転舵角F/F部
91a、93a、97a 第1のゲインテーブル
91b、93b、97b 第2のゲインテーブル
92 転舵角速度演算部
93 転舵角速度F/F部
94、98 加算器
95 規範ヨーレート演算部
95a 第1の規範ヨーレートテーブル
95b 第2の規範ヨーレートテーブル
96 減算器
97 ヨーレートF/B部
100 操舵システム
110 電動パワーステアリング装置(パワーステアリング装置)
120L、120R トー角変更装置
130、130A 操舵制御ECU(操舵制御装置)
130a 電動パワーステアリング制御部
130b 後輪トー角制御部
前輪転舵角センサ
トルクセンサ
車速センサ
ヨーレートセンサ

Claims (2)

  1. 少なくとも操舵トルクに応じて、アクチュエータが補助トルクを発生し、該補助トルクを前輪のステアリング系に伝達するパワーステアリング装置と、少なくとも前輪の転舵角および車速にもとづいて左右の後輪のトー角を変更可能とするトー角変更装置と、前記パワーステアリング装置および前記トー角変更装置を制御する操舵制御装置とを備える操舵システムにおいて、
    前記補助トルクの目標値を算出する補助トルク算出手段と、
    前記パワーステアリング装置の異常を検知する異常検知手段を有し、
    前記異常検知手段が異常状態を検知した場合、少なくともトーアウトの制御をしないように前記トー角変更装置を制御することを特徴とする操舵システム。
  2. 前記異常検知手段が前記異常状態を検知した場合、車速が所定値を超えるときに、少なくともトーアウトの制御をしないように前記トー角変更装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の操舵システム。
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