JP2008260403A - 操舵システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベース信号演算部51と、ダンパ補償信号演算部52と、イナーシャ補償信号演算部53とを備え、ダンパ補償信号およびイナーシャ補償信前記ベース信号を補償して定められた目標信号IM1によって前記電動機が駆動され、操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置110の操舵制御装置である。目標トー角演算部71は、自己診断部72からEPS失陥の異常状態検知信号を受信したとき、通常時に用いる第1のトー角テーブル71aから第2のトー角テーブル71bに切り換えて、所定の低速の範囲を超えた車速では、旋回安定性が高まるように、後輪のトー角をトーアウトにさせない制御とする。
【選択図】図5
Description
本発明の実施形態に係る操舵システムを図1から図7を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る操舵システムを適用した4輪車両の全体概念図である。本実施形態に係る操舵システムの説明においては、パワーステアリング装置のアクチュエータとして、例えば、電動機を用いた電動パワーステアリング装置を例に説明する。図2は電動パワーステアリング装置の構成図である。
電動パワーステアリング装置110は、図2に示すように操向ハンドル3が設けられたメインステアリングシャフト3aと、シャフト3cと、ピニオン軸7とが、2つのユニバーサルジョイント(自在継手)3bによって連結され、また、ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。この構成により、電動パワーステアリング装置110は、操向ハンドル3の操作時に車両の進行方向を変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9、9は転舵機構を構成する。また、ラック軸8の車幅方向の移動量から前輪1L、1Rの向きを検出する前輪転舵角センサSSが転舵機構に設けられている。
なお、ピニオン軸7はその上部、中間部、下部を軸受3d、3e、3fを介してステアリングギアボックス6に支持されている。
すなわち、ウォームギア5aとウォームホイールギア5bとで減速機構が構成されている。また、電動機4の回転子と電動機4に連結されてているウォームギア5aとウォームホイールギア5bとピニオン軸7とラック軸8とラック歯8aとタイロッド9、9などにより、ステアリング系が構成されている。
ここで、ωは電動機4の角速度であり、TMは電動機4の発生トルクである。また、発生トルクTMと実際に出力として取り出すことができる出力トルクTM *との関係は、次式(1)によって表現される。
TM *=TM−(cmdθm/dt+Jmd2θm/dt2)i2 ・・・・(1)
ここで、iはウォームギア5aとウォームホイールギア5bとの減速比である。
(1)式より、出力トルクTM *と電動機回転角θmとの関係は、電動機4の回転子の慣性モーメントJmと粘性係数cmとによって規定され、車両特性や車両状態に無関係である。
Tp=Ts+AH
=Ts+kA(VS)×Ts ・・・・・・・(2)
これより、操舵トルクTsは、次式(3)のように表現される。
Ts=Tp/(1+kA(VS)) ・・・・・・・(3)
そして、操舵システム100の操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110の機能部である電動機4を駆動制御する後記する電動パワーステアリング制御部130a(図5参照)を有している。
また、電動機駆動回路23は図示しないホール素子を用いて3相の電動機電流I(IU、IV、IW)を検出する機能を備えている。
レゾルバ25は、電動機4の電動機回転角θmを検出し、角度信号θを出力するものであり、例えば、磁気抵抗変化を検出するセンサを周方向に等間隔の複数の凹凸部を設けた磁性回転体に近接させたものがある。
差動増幅回路21は、検出コイルがインダクタンス変化として検出した2つの磁歪膜の透磁率変化の差分を増幅し、トルク信号Tを出力するものである。
操舵制御ECU130の機能構成については、電動パワーステアリング装置110の制御とトー角変更装置120L、120Rの制御とまとめて後記する。
次に、図3、図4を参照しながらトー角変更装置の構成を説明する。
図3は左後輪側のトー角変更装置を示す平面図、図4はトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
トー角変更装置120L、120Rは、車両の左右の後輪2L、2Rにそれぞれ取り付けられるものであり、図3では、左後輪2Lを例にとりトー角変更装置120Lを示している。トー角変更装置120Lは、アクチュエータ30、トー角変更制御装置(以下、トー角変更制御ECUと称する)37を備えている。
なお、図3は、左側の後輪2Lのみを示しているが、右側の後輪2Rについても同様(対称)にして取り付けられている。ちなみに、操舵制御ECU130とトー角変更制御ECU37、37は本発明の操舵制御装置を構成している。
トレーリングアーム13は、クロスメンバ12に装着される車体側アーム13aと、後輪2Lに固定される車輪側アーム13bとが、ほぼ鉛直方向の回動軸13cを介して連結されて構成されている。これにより、トレーリングアーム13が車幅方向へ変位することが可能となっている。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータなどで構成されている。そして、コイルの巻線温度を検出する温度センサ31aを有し、トー角変更制御ECU37の後記する自己診断部81d(図7参照)に検出温度信号を入力する。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)などが組み合わされて構成されている。
送りねじ部35は、減速機構33および電動機31とともに細長形状のほぼ円筒形状のケース本体34内に収容されている。また、ケース本体34の送りねじ部35側にはブーツ36がケース本体34の端部とロッド35aの端部との間を蓋うように取り付けられており、ケース本体34の端部から露出したロッド35aの外周面に埃や異物が付着したり、ケース本体34の内部に外部から埃や異物や水が侵入しないようになっている。
例えば、ダブルウイッシュボーン式サスペンションのサイドロッドや、ストラット式サスペンションのサイドロッドに前記アクチュエータ30を組み込むことによっても実現できる。
トー角変更制御ECU37には、車両に搭載された図示しないバッテリなどの電源から電力が供給される。また、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23にも前記とは別系統でバッテリなどの電源から電力が供給される(図示せず)。
次に、図5、図6を参照しながら操舵制御ECUの機能を説明する。
図5は操舵システムの操舵制御ECUとトー角変更装置の概略制御機能構成図である。図6はベース信号演算部およびダンパ補償信号演算部の特性を示す図である。
図5に示すように操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110(図1および図2参照)を制御する電動パワーステアリング制御部130aと、後輪2L、2Rの目標トー角を演算する後輪トー角制御部130bを備えている。
まず、図5、図6を参照しながら適宜図2を参照して電動パワーステアリング制御部130aについて説明する。
電動パワーステアリング制御部130aは、ベース信号演算部(補助トルク算出手段)51と、ダンパ補償信号演算部(補助トルク算出手段)52と、イナーシャ補償信号演算部(補助トルク算出手段)53と、Q軸(トルク軸)PI制御部54と、D軸(磁極軸)PI制御部55と、2軸3相変換部56と、PWM変換部57と、3相2軸変換部58と、電動機速度算出部67と、励磁電流生成部59とを備えている。
また、一般に車両は、走行速度に応じて路面の負荷(路面反力)が異なるため、車速信号VSによりゲインが調整される。車速ゼロの据え切り操作時が最も負荷が重く中低速では比較的負荷が軽くなる。このため、ベース信号演算部51は、車速VSが大きく高速になるにしたがってゲイン(G1、G2)を低く、かつ、不感帯N1を大きく設定して、マニュアルステアリング領域を大きくとって路面情報を運転者に与える。すなわち、車速VSの増大に応じてしっかりとした操舵トルクTsの手応え感が付与される。このとき、マニュアルステアリング領域においてもイナーシャ補償がなされることが必要である。
図6(b)は、ダンパテーブル52aの特性関数を示す図であり、電動機4の角速度ωが増加するほど補償値Iが直線的に増加し、所定速度で補償値Iが急激に増加する特性を備えている。また、車速信号VSの値が高いほど、ゲイン(G3、G5)を大きくして電動機4の角速度、すなわち、転舵速度に応じて電動機4の出力トルクTM *を減衰させている。言い換えれば、電動機4に大きな電流が供給されて角速度ωが速くなると、電動機4の慣性によって直ぐには角速度ωが低下しない。この現象を回避するために、ダンパ補償信号演算部52は、電動機4の角速度を抑制制御している。このステアリングダンパ効果により、操向ハンドル3の収斂性を向上させ、車両特性を安定化させることができる。
なお、ベース信号演算部51とダンパ補償信号演算部52と加算器61とでアシスト制御が行われる。
また、イナーシャ補償信号演算部53は、電動機4の回転子の慣性による応答性の低下を補償している。言い換えれば、電動機4は正回転から逆回転に、または、逆回転から正回転に回転方向を切り替える際、慣性によってその状態を持続させようとするので直ぐには回転方向が切り替わらない。そこで、イナーシャ補償信号演算部53は、電動機4の回転方向の切り替わりが操向ハンドル3の回転方向が切り替わるタイミングに一致するように制御している。このようにして、イナーシャ補償信号演算部53は、ステアリング系の慣性や粘性による操舵の応答遅れを改善してすっきりした操舵フィーリングを付与している。
また、FF(Front engine Front wheel drive)やFR(Front engine Rear wheel drive)車、RV(Recreation Vehicle)やセダンなどの車両特性や車速、路面などの車両状態によって異なる操舵特性に対して、実用上十分な特性が付与される。
異常時補助トルク制限部63は、後記する自己診断部72から、後記する巻線温度高モードの異常状態検出信号を受けたときは、入力信号IM1が所定値を超える場合は、所定値を超えないように抑制する。
また、異常時補助トルク制限部63は、入力された加算器62の出力信号IM1に対して、後記するトー角変更制御診断部73から補正指令信号が入力されたとき、そのときの入力されている信号IM1に対して時間的に変化させて所定の補正量だけ信号IM1を低下させ、加算器64に出力信号IM2を出力する。
この所定の補正量は、信号IM1の一定割合、例えば、80%とする。もともと信号IM1は、左右転舵時で電流が正負となるので、入力される信号IM1の正負に限らず入力された値の80%に減じることで補助トルクを運転者に分かるように低下させる。
異常時補助トルク制限部63は、トー角変更制御診断部73から補正指令信号が入力されていない場合は、入力された信号IM1をそのまま出力信号IM2として加算器64に出力する。
加算器65は、励磁電流生成部59の出力信号からD軸電流IDを減算するものである。D軸(磁極軸)PI制御部55は、加算器65の出力信号が減少するようにPI帰還制御を行う。
なお、2軸3相変換部56およびPWM変換部57は、電動機4の角度信号θが入力され、回転子の磁極位置に応じた信号が出力される。
次に、図5を参照しながら後輪トー角制御部130bについて説明する。図5に示すように後輪トー角制御部130bは、目標トー角演算部71、自己診断部72、トー角変更制御診断部73を有する。
目標トー角演算部71は、車速信号VSと、転舵角δと転舵角速度δ’(これは転舵角δを時間微分して容易に求めることができる)とから後輪2L、2Rのそれぞれの目標トー角αTL、αTRを生成し、左右の後輪2L、2Rのそれぞれのトー角変更を制御するトー角変更制御ECU37、37に目標トー角αTL、αTRを入力する(図7参照)。この目標トー角αTL、αTR生成は、予め左右の後輪2L、2Rごとに設定された第1のトー角テーブル71aと第2のトー角テーブル71bを、転舵角δ、転舵角速度δ’、車速VSにもとづいて参照することによって行なわれる。
第1のトー角テーブル71aは、電動パワーステアリング装置110が正常に機能している場合に用いられるテーブルである。第2のトー角テーブル71bは、電動パワーステアリング装置110の補助トルク機能が失陥した場合に、後記する自己診断部72からの失陥モードの異常状態検出信号を受信したときに用いられるテーブルである。
第1のトー角テーブル71aでは、例えば、次式(4)、(5)のように設定される。
αTL=KL(VS,δ’,δ)・δ ・・・・(4)
αTR=KR(VS,δ’,δ)・δ ・・・・(5)
ここで、KL(VS)、KR(VS)は車速VS、転舵角δおよび転舵角速度δ’に依存する前後輪操舵比であり、後輪の目標トー角αTL、αTRが、以下のように設定される。
(a)車速が所定の低速の範囲では、転舵角δに応じて後輪2L、2Rが逆相に、小回りがしやすいように各後輪の目標トー角αTL、αTRが生成される。
(b)前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲では、転舵角速度δ’の絶対値が所定の値以下で、かつ、転舵角δが左右の所定の範囲以内の場合は、転舵角δに応じて同相に各後輪2L、2Rの目標トー角αTL、αTRが設定される。つまり、レーンチェンジにおける横すべり角βを小さくするように各後輪2L、2Rの目標トー角αTL、αTRが設定される。
(c)しかし、前記所定の低速の範囲を超える高速の範囲で、転舵角速度δ’の絶対値が所定の値を超えるか、または、転舵角δが左右の所定の範囲を超える大きな転舵角δの場合は、転舵角δに応じた逆相に各後輪の目標トー角αTL、αTRが設定される。
なお、目標トー角演算部71で生成される目標トー角αTL、αTRは、旋回安定性の観点から必ずしもアッカーマン・ジャントのジオメトリに従う必要はない。また、転舵角δが0°のとき目標トー角αTL、αTRが、それぞれ、例えば、2°のトーインの設定になっていても良い。
なお、所定の低速の範囲とは、ここでは停止状態から、例えば、最徐行速度10km/hrまでの範囲である。
例えば、自己診断部72は、温度センサ4aの信号が所定値を超える場合は、電動機4の巻線温度異常(巻線温度高モード)と判断し、異常時補助トルク制限部63に目標電流を抑制させるように巻線温度高モードの異常状態検出信号を出力する。
次に、図7を参照しながらトー角変更制御ECUの詳細な構成を説明する。図7はトー角変更装置のトー角変更制御ECUの制御機能のブロック構成図である。
図7に示すように、トー角変更制御ECU37はアクチュエータ30を駆動制御する機能を有し、制御部81と電動機駆動回路83とで構成されている。また、各トー角変更制御ECU37は、操舵制御ECU130と通信線を介して接続され、他方のトー角変更制御ECU37とも通信線を介して接続されている。
一方(右後輪2R側)のトー角変更制御ECU37の目標電流算出部81aは、操舵制御ECU130から通信線を介して入力される後輪2Rの目標トー角αTRと、ストロークセンサ38から得られる現在の後輪2Rのトー角αRとにもとづいて、目標電流信号を算出して、電動機制御信号生成部81cに出力する。
他方(左後輪2L側)のトー角変更制御ECU37の目標電流算出部81aは、操舵制御ECU130から通信線を介して入力される後輪2Lの目標トー角αTLと、ストロークセンサ38から得られる現在の後輪2Lのトー角αLとにもとづいて、目標電流信号を算出して、電動機制御信号生成部81cに出力する。
このように目標電流算出部81aにおいて目標トー角αTL、αTRに対して現在のトー角αL、αRをフィードバックして、目標電流信号を補正することにより、後輪2L(または後輪2R)の転舵に要する電流値が車速VS、路面環境、車両の運動状態、タイヤの磨耗状態などによって変化するのをフィードバックして、目標のトー角αTL、αTRに速やかに設定することができる。
なお、目標電流算出部81aにおいて、フィードフォワード制御も加えて、応答性を高めても良い。
例えば、自己診断部81dは、温度センサ31aの信号が所定値を超える場合は、電動機31の巻線温度異常(巻線温度高モード)と判断し、所定の実トー角αSL(または実トー角αSR)、例えば、0°を目標電流算出部81aに入力する。ここで、実トー角αSLは異常検知時の左後輪2Lに対して入力されて実現した実トー角であり、実トー角αSRは異常検知時の右後輪2Rに対して入力されて実現した実トー角である。
つまり、自身のトー角変更制御ECU37に対応するトー角変更装置120L(またはトー角変更装置120R)が健全に作動しているか否かを示す信号を受信して監視しているとともに、他方のトー角変更制御ECU37に対応するトー角変更装置120R(またはトー角変更装置120L)が健全に作動しているか否かを示す信号を監視し、いずれかの側が異常である場合は、両方のトー角変更制御ECU37、37は所定の同一モードの対処をする。
そして、各自己診断部81dは、異常状態検知信号と、異常を検知して前記対処したモードの信号と、所定の実トー角αSL(または所定の実トー角αSR)をトー角変更制御診断部73に送る。
ステップS1では、操舵制御ECU130が起動した直後に、初期設定として通常状態を示すIFLAG=0をセットする(ステップS1)。次いで、電動パワーステアリング装置110の補助トルク失陥機能が失陥(EPS(Electric Power Steering)失陥)か否かを、自己診断部72から前記した失陥モードの異常状態検出信号を受信しているか否かで判定する。EPS失陥でない場合(No)はステップS3へ進み、EPS失陥の場合(Yes)はステップS4へ進む。
ステップS3では、第1のトー角テーブル71aを用いて、車速VS、転舵角δ、転舵角速度δ’に応じて目標トー角αTL、αTRを算出して、それぞれトー角変更装置120L、120Rのトー角変更制御ECU37へ出力する(通常時RTC(Rea toe Control)制御)。そして、ステップS2へ戻り、一連の制御を繰り返す。
通常時RTC制御は、車速VS、転舵角δ、転舵角速度δ’に応じて後輪2L、2Rのトー角を同相、逆相に制御するので、低速時の小回りや、高速時の機敏なレーンチェンジ、高速時の危険回避のため急旋回を許容する。
ステップS7では、第2のトー角テーブル71aを用いて、車速VS、転舵角δ、転舵角速度δ’に応じて目標トー角αTL、αTRを算出して、それぞれトー角変更装置120L、120Rのトー角変更制御ECU37へ出力する(異常時RTC制御)。そして、ステップS2へ戻り、一連の制御を繰り返す。
異常時RTC制御では、十分な低速時には、小回りができるように後輪2L、2Rのトー角を逆相にさせることは許容する。しかし、高速時はEPS失陥により操舵性が落ちているので、それに合せて安定な旋回性を確保することを優先させ、後輪2L、2Rのトーアウト制御を許容しない。
ステップS11では、車速VS、左右のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dからの異常状態検知信号および所定の実トー角αSL、αSRを随時読み込む。
ステップS13では、ステップS11で読み込んだ所定の実トー角αSL、αSRをチェックし、左右両方の後輪2L、2Rが共にトーイン状態またはαSL=αSR=0かを判定する。後輪2L、2Rが共にトーイン状態またはαSL=αSR=0の場合(Yes)は、一つの周期内の処理を終了する。後輪2L、2Rが共にトーイン状態でないか、またはαSL=αSR=0でない場合(No)は、ステップS14へ進み、車速VSが所定の車速Vlow以下かどうかをチェックする。車速VSが所定の車速Vlowより大きい場合(No)は、一つの周期内の処理を終了する。車速VSが所定の車速Vlow以下の場合(Yes)は、補正指令信号を異常時補助トルク制限部63に出力する、つまり、補助トルクを低下させ、一連の制御を終了する。
ちなみに、車速Vlowは、十分低速な車速であり、補助トルクの急激な、例えば、80%カットのような低下に対して、車両走行中に運転者が操舵力の急変に戸惑っても車両の走行に影響を与えない車速である。例えば、最徐行時の時速10km/hrのような車速である。
その結果、電動パワーステアリング装置110の補助トルクがなくなったのに、高速走行時に後輪2L、2Rの同相制御を生じて違和感を感じることを防止できる。
したがって、走行中の急な補助トルクの急激な低減による運転者の戸惑いを防止できる。
このとき、時間的な遅れを持って補助トルクを低減させるので、急激な補助トルクの低減に運転者が驚かないようにすることができる。
次に実施形態の第1の変形例の操舵システム100を図1、図10および図11を参照しながら説明する。図10は第1の変形例の操舵システムにおける操舵制御ECUとトー角変更装置の概略制御機能構成図であり、図11は操舵制御ECUの目標トー角演算部の詳細な制御機能構成図である。実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本変形例の操舵システム100は、図1に示すようにヨーレートセンサSyを備え、車体の実ヨーレートを検出して、操舵制御ECU130Aに入力する。
操舵制御ECU130Aは、図10に示すように目標トー角演算部71の代わりに目標トー角演算部71Aを有している。図11は目標トー角演算部71Aの詳細な機能構成図である。
転舵角F/F部91は通常状態時には第1のゲインテーブル91aを参照して、車速VSと転舵角δにもとづいてフィードフォワードのレシオ制御を行ない、転舵角δが大きいほど目標トー角のフィードフォワード出力値α1L、α1Rの絶対値を大きく設定する。
転舵角F/F部91は、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、第1のゲインテーブル91aから第2のゲインテーブル91bへとテーブルを切り替え、第2のゲインテーブル91bを参照してフィードフォワード出力値α1L、α1Rを算出する。
第2のゲインテーブル91bは第1のゲインテーブル91bと異なり、フィードフォワード出力値α1L、α1Rがトーイン制御となるように設定されている。
転舵角速度F/F部93には、転舵角速度δ’および車速VSの信号と自己診断部72からの異常状態検出信号が入力され、第1のゲインテーブル93aまたは第2のゲインテーブル93bを参照してフィードフォワード出力値α2L、α2Rを算出する。これら第1および第2のゲインテーブル93a、93bは、転舵角速度δ’と車速VSをパラメータにしてフィードフォワード出力値α2L、α2Rを算出できるように前もってメモリに記憶されたルックアップテーブルである。
転舵角速度F/F部93は通常状態時には第1のゲインテーブル93aを参照して、車速VSと転舵角速度δ’にもとづいてフィードフォワードのレシオの制御を行ない、転舵角速度δ’が大きいほどフィードフォワード出力値α2L、α2Rの絶対値を大きく設定する。
転舵角速度F/F部93は、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、第1のゲインテーブル93aから第2のゲインテーブル93bへとテーブルを切り替え、第2のゲインテーブル93bを参照してフィードフォワード出力値α2L、α2Rを算出する。第2のゲインテーブル93bは第1のゲインテーブル93bと比較して、フィードフォワード出力値α2L、α2Rが小さくなるようにゲインが設定されている。
この結果、転舵角速度F/F部93は通常状態時は、転舵角速度δ’に応じて車両の軽快な旋回運動を実現するようにフィードフォワード出力値α2L、α2Rを設定し、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したときは、転舵角速度δ’に対して車両の旋回運動が敏感に応答しないようにフィードフォワード出力値α2L、α2Rを設定する。
図11に示すように自己診断部72から異常状態検出信号が入力され、前記失陥モードの異常状態検出信号を受信したとき、規範ヨーレート演算部95は、第1の規範ヨーレートテーブル95aから第2の規範ヨーレートテーブル95bへとテーブルを切り替える。第2の規範ヨーレートテーブル95bは、転舵角δを重視した安定な旋回性能を期待する規範ヨーレートγmを算出するように前もって設定されている。
規範ヨーレート演算部95で算出された規範ヨーレートγmは減算器96に入力され、ヨーレートセンサSyからの実ヨーレートγとの偏差Δγが得られて、ヨーレートF/B部97に入力される。
第1のゲインテーブル97aは、ヨーレートの偏差Δγに対してフィードバックが大きいようにゲインが設定されており、それに対し第2のゲインテーブル97bは、第1のゲインテーブル97aに比してヨーレートの偏差Δγに対してフィードバックが小さいようにゲインが設定されている。
そして、加算器98において目標トー角のフィードフォワード出力値α3L、α3Rと、目標トー角のフィードバック出力値α4L、α4Rとが加算されて、目標トー角αTL(=α3L+α4L)、αTR(=α3L+α4L)が左右の後輪2L、2Rのトー角変更制御ECU37、37にそれぞれ入力される。
目標トー角演算部71Aにおける通常状態時の規範車両モデルから失陥モードの異常状態時の規範車両モデルへの切替は、前記実施形態における図7に示した目標トー角演算部71における制御のフローチャート(図8)の説明と同様に実行される。ただし、操舵制御ECU130は操舵制御ECU130Aに読み直し、目標トー角演算部71は目標トー角演算部71Aに読み直し、第1のトー角テーブル71aおよび第2のトー角テーブル71bはそれぞれ前記した通常状態時の規範車両モデルおよび前記した失陥モードの異常状態時の規範車両モデルに読み直す。そして、図8のフローチャートにおけるステップS5の「テーブル切替」は、「規範車両モデル切替」と読み直す。
本第1の変形例の前記規範車両モデル(通常状態時)は、図12の(a)に破線で示すように、一点鎖線線で示すコンベンショナル車両と比較して、共振周波数を右矢印の方向に高くし、共振ゲインを下矢印の方向に下げ、減衰率を増加することを目標に、また、図12の(b)に破線で示すように、一点鎖線線で示すコンベンショナル車両と比較して、上矢印の方向にヨーレートの位相の遅れを低減することを目標に設定される。
これにより、通常状態時には運転者の速い操舵にも追従する高レスポンスの車両応答を実現できる。
これにより、電動パワーステアリング装置110が補助トルク失陥時に、規範車両モデルを切り替えて低レスポンスの車両とすることで車両の安定性を確保できる。
本発明は前記実施形態やその第1の変形例に限定されるものではなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記実施形態およびその第1の変形例における電動パワーステアリング制御部130aは、目標電流を設定して電動機4に流す電流を制御したが、電動機4に印加される電圧を目標電圧に設定することもでき、電動機4が出力するトルクを目標トルクに設定して、電動機4に流す電流を制御することもできる。この目標電圧あるいは目標トルクも目標信号に含まれる。
(2)本実施形態およびその第1の変形例では、図6の(a)に示すように、ベース信号演算部51において車速VSをパラメータとしてトルク信号Tから出力トルクTM *の目標信号IM1の基準となるベース信号DTを算出することとしていたがそれに限定されるものではない。操舵制御ECU130または操舵制御ECU130Aに操向ハンドル3に設けられた操作角センサからの操作角信号と、ヨーレートセンサSyからのヨーレート信号とを入力し、車速VSと操作角にもとづいてあらかじめ決められた規範ヨーレートを算出し、規範ヨーレートと実際のヨーレートの差分にもとづいて、操向ハンドル3への反力をフィードバック制御する電動パワーステアリング装置にも適用可能である。
また、操舵制御ECU130または操舵制御ECU130AにヨーレートセンサSyからのヨーレート信号を入力し、車速VSとヨーレートにもとづいて算出されるヨーレートフィードバック反力トルクを操向ハンドル3への反力としてフィードバックする電動パワーステアリング装置にも適用可能である。
2L、2R 後輪
3 操向ハンドル
4 電動機(アクチュエータ)
4a 温度センサ(異常検知手段)
25 レゾルバ
30 アクチュエータ
31 電動機
31a 温度センサ
33 減速機構
35 送りねじ部
37 トー角変更制御ECU(操舵制御装置)
38 ストロークセンサ
51 ベース信号演算部(補助トルク算出手段)
51a ベーステーブル
51b バックアップテーブル
52 ダンパ補償信号演算部(補助トルク算出手段)
53 イナーシャ補償信号演算部(補助トルク算出手段)
54 Q軸(トルク軸)PI制御部
60 リレースイッチ
61、62 加算器
63 異常時補助トルク制限部
67 電動機速度算出部
71、71A 目標トー角演算部
71a 第1のトー角テーブル
71b 第2のトー角テーブル
72 自己診断部(異常検知手段)
73 トー角変更制御診断部
81 制御部
81a 目標電流算出部
81c 電動機制御信号生成部
81d 自己診断部
83 電動機駆動回路
90a フィードフォワード制御部
90b フィードバック制御部
91 転舵角F/F部
91a、93a、97a 第1のゲインテーブル
91b、93b、97b 第2のゲインテーブル
92 転舵角速度演算部
93 転舵角速度F/F部
94、98 加算器
95 規範ヨーレート演算部
95a 第1の規範ヨーレートテーブル
95b 第2の規範ヨーレートテーブル
96 減算器
97 ヨーレートF/B部
100 操舵システム
110 電動パワーステアリング装置(パワーステアリング装置)
120L、120R トー角変更装置
130、130A 操舵制御ECU(操舵制御装置)
130a 電動パワーステアリング制御部
130b 後輪トー角制御部
SS 前輪転舵角センサ
ST トルクセンサ
SV 車速センサ
Sy ヨーレートセンサ
Claims (2)
- 少なくとも操舵トルクに応じて、アクチュエータが補助トルクを発生し、該補助トルクを前輪のステアリング系に伝達するパワーステアリング装置と、少なくとも前輪の転舵角および車速にもとづいて左右の後輪のトー角を変更可能とするトー角変更装置と、前記パワーステアリング装置および前記トー角変更装置を制御する操舵制御装置とを備える操舵システムにおいて、
前記補助トルクの目標値を算出する補助トルク算出手段と、
前記パワーステアリング装置の異常を検知する異常検知手段を有し、
前記異常検知手段が異常状態を検知した場合、少なくともトーアウトの制御をしないように前記トー角変更装置を制御することを特徴とする操舵システム。 - 前記異常検知手段が前記異常状態を検知した場合、車速が所定値を超えるときに、少なくともトーアウトの制御をしないように前記トー角変更装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の操舵システム。
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