JP2008260070A - ワイヤカット放電加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被加工物がグラファイトであるとき、セカンドカットでアウトコーナや切出し部分に欠損が発生する。
【解決手段】予め使用するワイヤ電極の材質と径および加工する被加工物の材質と板厚における所定の取り代毎に前記各取り代に対する被加工物に欠損が発生しない平均加工電流値を記録して加工データを準備しておく。少なくともアウトコーナや切出し部分において平均加工電流値を取り代Sに対応して初期の平均加工電流値よりも大きくして、薄く突出して残されている加工部分を吹き飛ばさないように加工する。取り代Sがセカンドカットにおける与えられ得る平均加工電流値で加工するときに被加工物に欠損が発生しない取り代よりも大きいときは、セカンドカットを複数の加工工程に分割して取り代を小さくするとともにその取り代に対応する被加工物に欠損が発生しない与えられ得る平均加工電流値にして加工する。
【選択図】図1

Description

本発明は、材質がグラファイトのような脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法に関する。特に、被加工物のアウトコーナや切出し部分に欠損が発生しないワイヤカット放電加工方法に関する。
上下一対のワイヤガイド間に張架されたワイヤ電極を走行させながらワイヤ電極と被加工物を所定の加工間隙をもって対向配置させ、加工間隙に所定の加工電圧を印加するとともにワイヤ電極と被加工物を相対移動させて、ワイヤ電極と被加工物との間に連続的に発生する放電によって糸鋸のように被加工物を所望の加工形状に切断加工するワイヤカット放電加工が知られている。
ワイヤカット放電加工では、要求される加工面粗さが小さく加工形状精度が高いほど放電一発毎の取り量を小さくする必要があるため加工速度が遅くなる。そこで、加工時間を短くするために、加工を複数の加工工程に分けて、大きな放電エネルギで荒加工してから放電エネルギを小さくして仕上げ加工するようにされている。被加工物を大まかに所望の加工形状に切断する荒加工工程をファーストカット、被加工物の切断された加工面を加工する仕上げ加工工程を、加工する工程順に、セカンドカット、サードカット、フォースカットのように称する。
セカンドカットは、ファーストカットで誤差として残された加工残部を除去する加工である。要求される加工面粗さと加工形状精度がより高い加工を行なう場合は、ファーストカットを行なってから、1、2回の中仕上げ加工工程で加工面粗さを小さくしていくとともに加工形状に近い加工面を得る、いわゆる形状出しを行なう。その後、1回以上の仕上げ加工工程で加工面を所望の加工面粗さに仕上げる。したがって、ファーストカットの加工残部は殆どセカンドカットで除去されて、セカンドカット以降で残される残し代は、加工面粗さよりも少し大きい程度である。そして、所望の加工面粗さに仕上げる加工工程では、概ね前の加工工程で形成された加工面粗さの山の部分を除去して凹凸を小さくしていくように加工される。このような加工方法は、所望の加工面粗さと加工形状精度を得る上で最も加工効率がよく、常識的に行なわれている。
ファーストカットにおける基本的な加工条件は、ワイヤ電極の直径と材質、被加工物の材質と板厚、要求される加工面粗さのようなパラメータに対応して選定される。セカンドカット以降の加工条件は、加工面粗さを小さくしていけるように段階的に放電エネルギが小さくなるように順次選定される。加工条件は、作業者の経験によって選定され設定されるが、多くの加工結果に基づいて集積された加工条件の組合せを記録したデータベースを使用して、基本的なパラメータを入力することによってデータベースから検索し抽出して設定することができる。加工条件の設定方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
図6に示されるように、加工プログラムにプログラムされるなどして定められる加工形状軌跡(プログラム軌跡)は、ワイヤ電極の中心の位置を基準にするものであるから、実際のワイヤ電極の相対移動軌跡(オフセット軌跡)は、基本的には、ワイヤ電極の半径Rに放電ギャップGを加えたオフセット値Hだけ離れた位置にある。厳密には、オフセット値Hは、オン時間やピーク電流値のような電気的加工条件によって求められる放電エネルギに基づいて得られるその加工工程における加工面粗さに誤差を考慮した安全代もしくは次の加工工程での形状出しに必要な取り代を加えた加工面粗さより少し大きい残し代Kが含まれる。最終仕上げ加工工程では、残し代Kは最終仕上げ加工工程の加工面粗さである。
したがって、一般に、放電ギャップGにワイヤ電極の半径Rを加えて加工面粗さか加工面粗さより少し大きい残し代Kを考慮してオフセット値Hが設定される。各加工工程における取り代Sは、前の加工工程の残し代からその加工工程における残し代Kを引いたものである。ファーストカットの残し代は、その殆どがセカンドカットで除去される。また、ファーストカットの加工面粗さがセカンドカットでおよそ半分程度まで小さくなるようにセカンドカットの加工条件が設定される。加工面粗さを小さくしていく仕上げ加工工程では、前の加工工程によって残されている残し代は、加工面粗さか、加工面粗さより少し大きい程度であるので、取り代は僅かである。
近年、特許文献2に開示されるように、荒加工工程であるファーストカットを、ウォータジェット加工、特に板厚の厚い材料や金属材料を切断することができる研磨材粒や砥粒を混入させた高圧水をジェットノズルから噴射させて被加工物を切断加工するアブレイシブウォータジェット加工で行ない、セカンドカット以降、1回以上の仕上げ加工工程をワイヤカット放電加工で行なうようにする新しい加工方法が考え出された。この加工方法によって、ワイヤカット放電加工でファーストカットを行なった場合に比べて、加工時間を大幅に短縮することができる。
特開昭59−129621号公報 特開2006−110697号公報
材質がグラファイトの被加工物の加工を行なう場合、セカンドカットを行なうときに、アウトコーナや切出し部分の頂点部分の端面で材料が被加工物の高さ方向に全体にわたって大きいところで数百μmの幅と深さで塊で剥離して欠け落ちてしまう欠損、いわゆるこば欠けが発生することが確認された。このような被加工物の欠損は、サードカット以降の加工工程で取り除くことができず、加工の失敗になってしまう。特に、ウォータジェット加工でファーストカットを行なった後にワイヤカット放電加工でセカンドカットを行なうと、このような被加工物の欠損が頻繁に発生するため、新しい加工方法の障害になっている。
本発明は、上記課題に鑑みて、材質がグラファイトのような脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、セカンドカットを行なうときに、アウトコーナや切り出し部分で被加工物に欠損が発生しないワイヤカット放電加工方法を提供することを目的とする。
本発明のワイヤカット放電加工方法は、脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、セカンドカットの少なくともアウトコーナまたは切出し部分においてセカンドカットの取り代に対応してセカンドカットにおける要求される加工面粗さが得られる所要の平均加工電流値よりも大きいワイヤ電極がアウトコーナまたは切出し部分を通過する直前に形成される突出した加工部分を塊で吹き飛ばさないように加工するような所定の値以上の平均加工電流値で加工するようにした。
また、本発明のワイヤカット放電加工法は、脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、セカンドカットで要求される加工面粗さに基づいて所要の平均加工電流値になるように加工条件を設定してセカンドカットを加工するとともに、アウトコーナまたは切出し部分においてセカンドカットの取り代に対応して所要の平均加工電流値よりも大きい所定の値以上の平均加工電流値になるように加工条件を変更して加工し、アウトコーナや切出し部分を通過したら加工条件を元の値に戻すようにする。
また、本発明のワイヤカット放電加工方法は、脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、ワイヤ電極の材質と径および被加工物の材質と板厚における所定の取り代毎に各取り代に対する被加工物に欠損が発生しない平均加工電流値を記録した加工データを参照してセカンドカットの取り代がセカンドカットにおける与えられ得る平均加工電流値で加工するときに被加工物に欠損が発生しない取り代よりも大きいときは、加工データを参照してセカンドカットの取り代と与えられ得る平均加工電流値とに基づいて被加工物に欠損が発生しない取り代になるようにセカンドカットを複数の加工工程に分割して、分割された各加工工程を上記取り代とその取り代に対する被加工物に欠損が発生しない平均加工電流値で加工するようにする。
好ましくは、分割された加工工程の最後の加工工程における取り代を、セカンドカットにおける残し代を得る値であってかつセカンドカットで要求される加工面粗さを得る所要の平均加工電流値で被加工物に欠損が発生しない値以下とする。
また、好ましくは、分割された加工工程の最後の加工工程においてセカンドカットで要求される加工面粗さに基づいて所要の平均加工電流値になるように加工条件を設定して加工し、アウトコーナまたは切出し部分において最後の加工工程の取り代に対応して所要の平均加工電流値よりも大きい所定の値以上の平均加工電流値になるように加工条件を変更して加工し、アウトコーナや切出し部分を通過したら加工条件を元の値に戻すようにする。
ファーストカットにおける加工残部が大きい、言い換えれば、セカンドカットで除去しなければならない取り代が大きいときに、被加工物に欠損が頻繁に発生している。また、被加工物に欠損が発生する部位はアウトコーナや切出し部分であって、切込み部分ではこのような被加工物の欠損は発生していない。研究の結果、セカンドカットにおける取り代が大きいときは、ワイヤ電極がアウトコーナや切出し部分を抜ける直前に加工部分が非常に薄くなって突出して残り、その加工部分に放電反力が集中すると、焼結して製造されたグラファイト材が脆性の高い材料であるために、放電反力によってその加工部分が折れるように塊で吹き飛ばされてしまい、その加工部分の根元に当たるアウトコーナや切出し部分の頂点の端面で材料が剥離するように欠落することを突き止めた。
ワイヤカット放電加工でファーストカットを行なう場合は、残し代が70μm〜90μm程度であって、ときどき被加工物に欠損が発生する程度で加工がうまくいく場合と失敗する場合とがあるために、その原因についてあまり研究されていなかった。しかしながら、特に、ウォータジェット加工でファーストカットを行なう新しい加工方法の場合は、水柱で加工を行なうという特性から切断面が粗く、また切断面が傾斜しており、ワイヤカット放電加工におけるファーストカットに比べて加工形状誤差が相当大きくなるので、残し代を150μm〜200μm程度とワイヤカット放電加工でファーストカットを行なう場合に比べて倍以上大きくせざるを得ない。そのため、セカンドカットで要求される残し代に対する取り代が相当大きくなる。その結果、アウトコーナや切出し部分で欠損が頻繁に発生したと考えられる。
したがって、セカンドカットにおける取り代を小さくして加工すれば、被加工物に欠損が発生しないように加工できると言える。しかしながら、各加工工程の加工条件は、段階的に加工面粗さが小さくするように設定されており、セカンドカットにおける加工条件と要求される残し代は、概ね定まっている。ワイヤカット放電加工でファーストカットを行なったときのように、セカンドカットの取り代がそれほど大きくないと思われるときでも被加工物に欠損が発生することがあるため、安全を考えると、セカンドカットの取り代を相当小さくしなければならないことになる。したがって、単にセカンドカットの取り代を小さくすると、残し代が多くなってサードカット以降の加工が困難になるとともに、加工時間が大幅にかかってしまい、現実的ではない。
ワイヤカット放電加工における加工環境を決めている要素は多数あり、各要素が複雑に関係している。例えば、加工間隙に加工液噴流を供給する方法などの違いによって加工の状況は大きく変化する。また、加工条件の種類は多数あり、その組合せは膨大である。したがって、被加工物に欠損が発生しないようにする因子を特定することが困難である。しかしながら、さらなる研究の結果、取り代の大きさに対応して放電エネルギを大きくして加工速度(面積加工速度)が速くなるような平均加工電流値で加工することによって被加工物の欠損を確実になくすことができるということに到達した。
本発明は、少なくともアウトコーナや切出し部分をセカンドカットにおける取り代に対応して平均加工電流値を大きくして、大きい放電エネルギで十分速い加工速度で加工するようにしたので、材質がグラファイトのような脆性の高い被加工物を加工するときに、アウトコーナや切出し部分で薄く突出した加工部分を塊で吹き飛ばさないように加工することができる。その結果、アウトコーナや切出し部分で被加工物に欠損が発生せず、グラファイトの形状加工における加工の失敗をより確実に防止することができる。
また、本発明は、加工データを参照してセカンドカットの取り代と与えられ得る平均加工電流値とに基づいて被加工物に欠損が発生しない取り代になるようにセカンドカットを複数の加工工程に分割して、分割された各加工工程における取り代に対応する大きい放電エネルギで十分速い加工速度で加工するようにしたので、材質がグラファイトのような脆性の高い被加工物を加工するときに、アウトコーナや切出し部分で薄く突出した加工部分を塊で吹き飛ばさないように加工することができる。その結果、アウトコーナや切出し部分で被加工物に欠損が発生せず、加工時間もあまり長くならない。そして、例えば、ファーストカットをウォータジェット加工で行ない、セカンドカット以降をワイヤカット放電加工で行なう加工のように、ファーストカットにおける加工残部が大きくならざるを得ない加工においても、加工時間をあまり犠牲にすることなく、加工の失敗をより確実に防止して所望の加工面粗さと加工形状精度を得ることができ、グラファイトのような脆性の高い被加工物の形状加工の高速化に寄与する。
図1は、本発明のセカンドカットにおける分割された加工工程のオフセット値と被加工物の加工面に対するワイヤ電極の取り代および寄せ量の関係を示す。被加工物に欠損が発生することは、分割された加工工程の取り代Wの大きさに密接に関係しており、取り代Wを被加工物に欠損が発生しない値で加工しようとする場合は、オフセット値Hを適値に設定することで所定の取り代Wにすることができる。取り代Wは寄せ量Lに放電ギャップGを加えた値であり、取り代Wを寄せ量Lに置き換えて考えることができる。
実施の形態では、取り代と加工速度および平均加工電流との関係を示す加工データを得る試験加工を行なうときに、取り代Wに基づいてプログラム軌跡を基準にワイヤ電極の相対移動軌跡を決めて加工するよりも、寄せ量Lに基づいて被加工物の端面を基準にワイヤ電極の相対移動軌跡を決めて加工する方が容易であるため、寄せ量Lに基づいて実験を行なって加工データを収集した。したがって、以下の実施の形態では、適宜取り代と寄せ量の何れかを用いて説明するが、互いに置き換えることができる。
ファーストカットのオフセット値とセカンドカットの分割された最初の加工工程のオフセット値Hとの差は、ファーストカットのワイヤ電極の半径とセカンドカットにおけるワイヤ電極の半径Rとの差に、ファーストカットにおける放電ギャップと寄せ量Lを加えた値である。ファーストカットとセカンドカットで同じ径のワイヤ電極を使用する場合は、上記オフセットの差は、ファーストカットの放電ギャップに寄せ量Lを加えた値である。ファーストカットの加工溝幅の加工データからファーストカットの放電ギャップがわかるので、所要の寄せ量Lで加工するオフセット値Hを設定することができる。なお、オフセット値Hは、ワイヤ電極の半径Rと、放電ギャップGと、最初の加工工程における残し代とで設定することもできる。分割された最後の加工工程のオフセット値は、セカンドカット全体の残し代Kに基づいて設定する。
図2は、同一の加工条件を設定して同一の放電エネルギで異なる板厚のグラファイト(ISO−63)の被加工物を加工したときの寄せ量(μm)と加工速度(mm/min)の関係とそのときに被加工物のアウトコーナに欠損が発生したかどうかを示す。使用したワイヤ電極は、φ0.3mmの黄銅線であり、主要な電気的加工条件は、図2に示す通りである。与えられ得る平均加工電流値で得られる加工速度が寄せ量に対してある加工速度以上でないと被加工物に欠損が発生することがわかる。
図3は、異なる加工条件を設定して平均加工電流値を1.0A,3.6A,6.2Aでそれぞれ板厚25mmのグラファイト(ISO−63)の被加工物を加工したときの寄せ量(μm)と加工速度(mm/min)の関係とそのときに被加工物のアウトコーナに欠損が発生したかどうかを示す。ワイヤ電極は、φ0.3mmの黄銅線であり、各電気的加工条件は、図3に示す通りである。例えば、寄せ量を100μmにした場合、平均加工電流値が1.0Aで加工速度が50mm/minのときは被加工物に欠損が生じたが、平均加工電流値が3.6Aで加工速度が188mm/minのときは被加工物に欠損が生じていない。しかしながら、寄せ量を175μmにした場合は、平均加工電流値が6.2Aで213mm/minの加工速度が得られたときでも、被加工物に欠損が生じた。したがって、寄せ量が大きくなるほど、より平均加工電流を大きくしてより速い加工速度で加工する必要があることがわかる。
図4は、異なる加工条件を設定して平均加工電流値を変えたときでそれぞれ板厚25mmのグラファイト(ISO−63)の被加工物を加工したときの寄せ量(μm)、平均加工電流値(A)、加工速度(mm/min)とそのときに被加工物のコーナに欠損が発生したかどうかを示す。ワイヤ電極は、φ0.3mmの黄銅線である。その結果、板厚25mmのグラファイトでφ0.3mmの黄銅線で加工する場合、そのときの寄せ量に対応する大きさの放電エネルギで所定の加工速度以上の加工速度が得られる平均加工電流値で加工すれば、被加工物に欠損が発生しないことがわかる。端的に言えば、所定の寄せ量に対して、ある平均加工電流値以上で加工すれば、被加工物の欠損が発生しないことがわかる。
以上のことから、基本的には、取り代(寄せ量)に対して放電エネルギを大きくして十分速い加工速度になるように平均加工電流値をある値以上にすることによって、被加工物の欠損をなくすことができる。したがって、少なくとも被加工物に欠損が発生するおそれのあるアウトコーナまたは切出し部分においてセカンドカットの取り代に対応してセカンドカットにおける要求される加工面粗さを得られる所要の平均加工電流値よりも大きいワイヤ電極がアウトコーナまたは切出し部分を通過する直前に形成される薄く突出した加工部分を塊で吹き飛ばさないように加工するような所定の値以上の平均加工電流値で加工するようにする。
図5に、被加工物に欠損が発生する状況が示されている。取り代が小さいときは、ワイヤ電極がアウトコーナを抜ける直前に残されている加工部分は、あまり突出しておらず厚みがあるので、放電反力を受けても吹き飛ばされるように取れることがなく、徐々に除去されていく。取り代が大きいときは、ワイヤ電極がアウトコーナを抜ける直前に加工部分が大きく薄く突出して残り、グラファイトが脆弱であるため、残された加工部分が徐々に除去されていく前に放電反力によって折れるように取られてしまい、その加工部分の根元に当たる頂点の端面で材料が剥離するように被加工物の板厚方向ほぼ全体にわたって欠落する。図5に示されるように、このような傷痕はセカンドカットの取り代よりも大きく、アウトコーナを曲がった後の加工で除去することができずに残されることがわかる。この残された欠落部分は、大きいところで幅数百μmに達し、サードカット以降の加工工程で除去することができない。切出し部分でも同じ理由で被加工物に欠損が生じると考えられる。
このとき、本発明のワイヤカット放電加工方法は、上記突出した加工部分を塊で吹き飛ばさないように加工するために、放電エネルギを大きくして十分速い加工速度になるように所定の値以上の平均加工電流値で加工するものであるが、このことは意外なことである。なぜなら、上記突出した加工部分が放電反力によって折れるように吹き飛ばされるとすると、物理的には、放電反力が小さくなるように放電エネルギを小さくすれば上記突出した加工部分に加えられる力が小さくなって上記突出した加工部分が吹き飛ばされなくなるのではないかと考えるのがふつうであるからである。しかしながら、実際には、同じ取り代のときに放電エネルギを小さくして加工速度を遅くすると、かえって被加工物に欠損が発生する結果になることが確認された。
被加工物に欠損が発生しない寄せ量と加工速度の関係は、少なくとも板厚で異なっている。加工速度は、放電エネルギとの関係で結果的に得られる数値であるから、直接設定することができない。本発明では、図4に代表的に示されるように、放電エネルギに影響を与える平均加工電流に着目して、寄せ量と平均加工電流および被加工物の欠損との関係を明らかにすることができた。ただし、現在のところ、ワイヤ電極の材質と径および被加工物の材質と板厚の全ての組合せに対して、寄せ量と平均加工電流が特定の関数の関係にあるかどうかは明確ではない。
したがって、実際に加工を行なう場合は、予め試験加工を行なって、または実際に加工を行なった加工結果から、例えば、図4に示されるように、使用するワイヤ電極の材質と径および加工する被加工物の材質と板厚において所定の取り代毎に各取り代に対応する被加工物に欠損が発生しない平均加工電流値を加工データとして記録しておく。当然、取り代と平均加工電流値を調整することができるピーク電流値やオン時間のような加工条件との関係を示すデータであってよい。このような加工データは、寄せ量と平均加工電流値との間に特定の関数の関係が明らかにされた場合は、寄せ量と平均加工電流値の関数のデータを含む。また、加工データは、電子データとして記憶装置に記憶させることで記録しておくことができる。
加工データをワイヤカット放電加工装置のメーカの作業者が収集してデータベースを作成しておくことによって、ユーザの操作者は、その加工データを参照してセカンドカットの取り代に対して被加工物に欠損が発生しない大きい平均加工電流値で加工することができる。加工データを参照するときは、被加工物に欠損が発生しない最大の寄せ量とそのときの平均加工電流値をコンピュータで検索させて得ることができ、あるいは与えられ得る平均加工電流値に基づいてその平均加工電流値に対応する被加工物に欠損が発生しない寄せ量を検索して得ることができる。
ところで、セカンドカットには、ファーストカットの残し代を殆ど取り除いて加工面粗さがファーストカットの半分程度になるように仕上げていく重要な目的があるので、基本的には、要求される仕上げ面粗さと加工形状精度に対応する所要の平均加工電流値で加工しなければならない。したがって、被加工物に欠損が発生しないように取り代に対して大きい平均加工電流値で加工するようにした場合、セカンドカットで要求される加工面粗さと加工形状精度が得られないことがある。特に、アウトコーナでは、所望のコーナの形状が得られないおそれがある。その結果、加工面粗さを最終仕上げ面粗さに仕上げるまでに加工工程数が増えるだけではなく、その後の加工工程でセカンドカットで生じた加工形状誤差を最後まで取り切れずに加工が終わる可能性がある。
このような意味では、一般に、セカンドカットにおいて本発明のように平均加工電流値の大きな領域で加工が行なわれることが殆どなかった。したがって、本発明では、これまでのセカンドカットと加工条件の領域が異なっている。そこで、本発明は、セカンドカットにおける残し代を、加工速度を速くすることによって生じた加工形状誤差をサードカット以降で形状出しの加工を行なって修正できる最低限必要な値にすることで最終的に所望の加工形状精度が得られるようにし、かつセカンドカットで要求される加工面粗さよりも加工面粗さが大きくなる場合は、加工全体の仕上げ加工工程数を増やすことによって最終的に要求される所望の加工面粗さに仕上げられるようにしている。
セカンドカットで要求される加工面粗さに基づいて所要の平均加工電流値になるように加工条件を設定して加工し、加工データを使ってアウトコーナや切出し部分において薄く突出した加工部分が吹き飛ばされる直前の位置に到達したときから平均加工電流値を上記薄く突出した加工部分が吹き飛ばされない値になるようにピーク電流値やオン時間等の平均加工電流値を調整できる加工条件を変更して加工し、アウトコーナや切出し部分を通過したら加工条件を元の値に戻すように構成することができる。このように構成することによって、基本的には、セカンドカットの加工条件を変えずに加工することができるので、セカンドカットで要求される加工面粗さと加工形状精度を得ることができ、加工工程数が増えることがない。
このとき、ワイヤ電極の材質と径によってワイヤ電極が断線しない供給できる限界の平均加工電流値が存在する。また、平均加工電流を大きくして放電一発当たりの取り量を大きくし過ぎると放電ギャップがショート気味になって異常放電が頻発して加工が進行しなくなることがある。一方で、取り代が大きくなるほど加工速度が得にくくなるとともにいっそう速い加工速度で加工しなければ、被加工物に欠損が発生する。したがって、供給できる平均加工電流値に限界があって、その平均加工電流で得られる加工速度に限界があるので、被加工物に欠損が発生しない最大の寄せ量が存在する。例えば、図4に示されるように、ワイヤ電極がφ0.3mmの黄銅線で被加工物が板厚25mmのグラファイトである場合、被加工物に欠損が発生しない寄せ量の限界はおよそ150μmで、そのときの平均加工電流値は約7.4A、得られる加工速度は約260mm/minである。
このようなことから、被加工物に欠損が発生させないようにしてセカンドカットを行なうために、本発明は、セカンドカット全体の取り代がセカンドカットにおける与えられ得る平均加工電流値で加工するときに被加工物に欠損が発生しない取り代よりも大きいときは、分割された各加工工程の取り代を与えられ得る平均加工電流値で被加工物に欠損が発生しない値であるように可能な限り少ない分割数でセカンドカットを複数の加工工程に分割して加工を行なうようにした。セカンドカットにおける与えられ得る平均加工電流値は、基本的には、セカンドカットで設定される加工条件に対応する所要の平均加工電流値である。セカンドカットにおける加工条件で設定される平均加工電流値が、ワイヤ電極が断線したり、加工が不能になったりしない供給できる可能な限り大きい値でよい場合は、分割された各加工工程における取り代は、使用するワイヤ電極の材質と径および加工する被加工物の材質と板厚において被加工物に欠損が発生しない限界の取り代にすることができる。
実際に加工を行なう場合は、与えられ得る平均加工電流値に制限があることがある。例えば、平均加工電流は放電一発当たりの取り量と関係し、加工面粗さに直接影響するため、セカンドカットにおいて要求される加工面粗さが存在する場合は、平均加工電流値をセカンドカットで要求される加工面粗さに対応して設定されなければならない。セカンドカットを複数の加工工程に分割して加工を行なうとすると、分割された各加工工程のうち、加工面粗さに影響する加工工程は、最後の加工工程である。したがって、少なくとも、最後の加工工程における取り代は、セカンドカットにおける残し代Kを得る値であってかつセカンドカットで要求される加工面粗さに対応する所要の平均加工電流で得られる加工速度で被加工物に欠損が発生しない値以下とする。
また、平均加工電流は放電一発当たりの放電エネルギに関係し、放電エネルギはワイヤ電極の挙動などに関係するので、間接的に加工形状精度に影響を与えることがある。そのため、セカンドカットにおける加工誤差に制限がある場合は、取り代をセカンドカットにおける加工誤差に対応する平均加工電流で得られる加工速度で被加工物に欠損が発生しない値以下とする。
以下に、図1および図4を用いて具体的な加工例を説明する。図4に示される加工データが所定の寄せ量毎に各寄せ量に対応する平均加工電流値を採取したものであるので、説明をわかりやすくするために、放電ギャップGを無視して取り代Wと寄せ量Lが等しいものとして考える。板厚25mmのグラファイト(ISO−63)をφ0.3mmの黄銅のワイヤ電極で加工するときで、ファーストカットでセカンドカットの残し代Kを除いて300μmの残し代がある場合、言い換えれば、セカンドカット全体で300μmの取り代Sがある場合は、図4に示される加工データを参照すると、セカンドカットの寄せ量が被加工物に欠損が発生しない限界の寄せ量150μmよりも大きいので、セカンドカットを複数の加工工程に分割する。
このようなときは、加工データを参照して、セカンドカット全体の取り代Sと与えられ得る平均加工電流値とから分割された各加工工程の取り代が被加工物に欠損を発生させない取り代Wになるようにセカンドカットを複数の加工工程に分割する。各加工工程で与えられ得る平均加工電流値に制限がなく、供給され得る最大の平均加工電流値で加工できる場合は、セカンドカットの取り代Sが300μmあって、被加工物に欠損が発生しない限界の寄せ量Lが150μmであるので、同一の加工条件で2回の加工工程に分割する。そうすると、分割された各加工工程の寄せ量は150μmになる。図4に示される加工データを参照すると、寄せ量Lが150μmのときに被加工物に欠損が発生しない加工速度約260mm/minが得られる平均加工電流値約7.4Aであるように電気的加工条件を設定する。
一般のワイヤカット放電加工装置では、平均加工電流値を直接加工条件として設定する構成になっていないことから、所定の平均加工電流値になるように、オン時間、ピーク電流値、オフ時間を設定する。また、既に述べられているように、寄せ量Lまたは取り代Wは、オフセット値Hを適値に設定することで決定される。なお、分割された加工工程の最後の加工工程では、セカンドカットの残り代Kを変えることができないから、残り代Kに基づいてオフセット値Hを設定する。
与えられ得る平均加工電流値に制限がある場合、例えば、セカンドカットで要求される加工面粗さと加工形状精度が平均加工電流値約7.4Aでは得られない場合は、平均加工電流を小さくする必要がある。そのときは、分割された各加工工程の寄せ量を与えられ得る平均加工電流値に対応して小さくする。例えば、平均加工電流値が3.5A以下でなければならないときは、図4に示される加工データを参照すると、限界の寄せ量は約100μmである。セカンドカット全体の取り代Sは300μmであるから、セカンドカットを同一の加工条件で3回の加工工程に分割することができる。各加工工程の加工速度は、約190mm/minである。
このように、セカンドカットを複数の加工工程に分割するときに、同一の加工条件で同じ取り代になるように各加工工程を等分割するようにすると、加工計画が容易である。しかしながら、加工時間をより短くしようとする場合は、同一の加工条件で同一の取り代になるように各加工工程に分割する方法以外に、異なる加工条件で異なる取り代になるように各加工工程を分割する方法がある。例えば、セカンドカット全体で150μmの取り代があり、所要の平均加工電流値が3.5A以下で加工しなければならない場合は、セカンドカットを同一の加工条件で2回の加工工程に分割する方法と、異なる加工条件で2回の加工工程に分割する方法がある。
セカンドカットを同一の加工条件で2回の加工工程に等分割する場合は、与えられ得る平均加工電流値3.5Aで被加工物に欠損が発生しない限界の寄せ量は100μmであるが、セカンドカットの取り代Sが150μmであり、同一の加工条件で加工を行なうので、セカンドカットを等分割して分割された各加工工程の寄せ量は75μmになり、平均加工電流値は3.5A、得られる加工速度は約220mm/minになる。セカンドカットを同一の加工条件で3回の加工工程に分割する場合は、セカンドカットの取り代Sが150μmであり、セカンドカットを等分割して、分割された各加工工程の寄せ量Lは50μmになり、平均加工電流値は約3.5A、得られる加工速度は約240mm/minになる。したがって、2回の加工工程で加工した方が有利である。
セカンドカットを異なる加工条件で2回の加工工程に分割する場合は、最初の加工工程では供給し得る最大の平均加工電流値で加工して、最後の加工工程ではセカンドカットで要求される加工面粗さが得られる平均加工電流値で加工するように、かつセカンドカット全体の加工時間が比較的短くなるように分割する。このケースの場合、セカンドカットの取り代Sが150μm、最後の加工工程で与えられ得る平均加工電流値3.5Aで、被加工物に欠損が発生しない寄せ量は100μm以下である。そこで、最後の加工工程の寄せ量を100μmとした場合、与えられ得る平均加工電流値3.5Aで得られる加工速度は約190mm/minである。そうすると、セカンドカットの取り代Sが150μmであるので、最初の加工工程の寄せ量Lは50μmになり、供給し得る最大の平均加工電流値が約5.2Aであるとすると、得られる加工速度は約320mm/minである。
逆に、最初の加工工程の寄せ量Lを100μmにした場合は、与えられ得る平均加工電流値を供給し得る最大の平均加工電流値約6.1Aとして、得られる加工速度は約300mm/minである。セカンドカットの取り代Sは150μmであるので、最後の加工工程の寄せ量は50μmであり、与えられ得る平均加工電流値は約3.5Aであるので、加工速度は約240mm/minになる。したがって、このケースの場合、最初の加工工程の寄せ量Lを100μm、最後の加工工程の寄せ量を50μmにする方が、セカンドカット全体の加工時間を短くすることができる。
このように、与えられ得る平均加工電流値に制限のある最後の加工工程を基準にして寄せ量を仮に決めておき、加工時間に対して最後の加工工程の寄せ量を大きくする方が有利であるか、小さくする方が有利であるかを比較して、セカンドカット全体の加工速度が速くなるように、セカンドカットを複数の加工工程に分割するようにすると、比較的容易にセカンドカットを複数の加工工程に分割できる。もちろん、寄せ量と平均加工電流値および加工速度との関係から、より加工速度を重視してセカンドカットを複数の加工工程に分割することができる。
最後の加工工程の取り代を小さい値にして最初の加工工程の取り代を大きくするように分割することもできる。このような場合は、最後の加工工程における取り代がその直前の加工工程によって生じる最大の加工誤差よりも小さいと、セカンドカットの残し代Kに大きな平均加工電流値で加工した場合の誤差が残ってしまうので、最後の加工工程における取り代は、直前の加工工程によって生じる最大の加工誤差以上とする。
最初の加工工程で与えられ得る平均加工電流値は基本的に制限がないとみなすと、例えば、上述した加工例では、最初の加工工程の寄せ量Lを125μmとしたとき、平均加工電流値約6.2Aにすると加工速度は約280mm/minである。そうすると、セカンドカット全体の取り代Sが150μmであるので、最後の加工工程の寄せ量は25μmで与えられ得る平均加工電流値が3.5A、加工速度は約250mm/minになる。このとき、実験によると、平均加工電流値が6.2Aの加工条件で加工したときの加工形状誤差の最大値は約15.2μmであるので、最後の加工工程の寄せ量25μmは条件を満たし、最初の加工工程で生じた加工形状誤差を最後の加工工程で小さくしてセカンドカットで許される加工形状誤差以下にすることができる。
与えられ得る平均加工電流値に制限のある最後の加工工程をセカンドカットで要求される加工面粗さに基づいて所要の平均加工電流値になるように加工条件を設定して加工する場合に、アウトコーナや切出し部分においてワイヤ電極がアウトコーナまたは切出し部分を通過する直前に形成される突出した加工部分が吹き飛ばされる直前の位置に到達したときから平均加工電流値を最後の加工工程における取り代で上記突出した加工部分が吹き飛ばされない平均加工電流値になるように加工条件を変更して加工し、アウトコーナや切出し部分を通過したら加工条件を元の値に戻すように構成することができる。このように構成することによって、最後の加工工程における取り代を与えられ得る最大の平均加工電流値で被加工物に欠損が発生しない値にすることができる。したがって、最後の加工工程における取り代をセカンドカットで要求される加工面粗さを得ることができる所要の平均加工電流値に依存して決定する必要がないので、セカンドカットを複数の加工工程に分割するときに分割された各加工工程の取り代を決めることが容易になる。
以上に説明されるように、本発明は、被加工物がグラファイトのような脆性の高い材質である場合に被加工物の欠損に対して取り代と取り代に対応する平均加工電流値が密接に関係していることに着目した点が重要である。平均加工電流値を大きく放電エネルギを大きくすることによって加工速度を速くすることで、取り代が大きいときにワイヤ電極がアウトコーナ部分や切出し部分を抜ける直前に残されている薄く突出した加工部分が塊で吹き飛ばされないように加工して、その結果、より確実にアウトコーナや切出し部分で被加工物に欠損が発生することを防止することができる。
セカンドカットにおける残し代を変えることができないとき、本発明では、セカンドカットを複数の加工工程に分割して分割された各加工工程における取り代を被加工物に欠損が発生しない値にするようにすることで、被加工物に欠損を発生させずに所要のセカンドカットを行なえるようにした。
ワイヤカット放電加工では、加工効率がよい加工方法として、ファーストカットで荒加工してから、ファーストカットで残された加工残部をセカンドカットで取り除いて要求される加工面粗さに近付けるとともに加工形状を整えるようにし、さらにサードカット以降で段階的に加工面粗さを小さくしていく加工を行なうことが常識的に行なわれているが、本発明は、このような常識から離れてセカンドカットを分割するとともに、取り代と取り代に対応する被加工物の欠損が発生しない大きい放電エネルギで十分速い加工速度が得られる平均加工電流値との関係から、分割された各加工工程を望ましい取り代と与えられ得る平均加工電流値で効率よく加工するようにして、被加工物がグラファイトのような脆性の高い材料でなる場合、ワイヤカット放電加工のセカンドカットで、加工時間をあまり犠牲にすることなく、被加工物の欠損を確実に防止することができるようにした。
セカンドカットを分割した各加工工程をカット数から見てセカンドカット、サードカット、フォースカットのように称することができるが、既に説明されているように、本発明におけるセカンドカットを分割した各加工工程は、本来のサードカット、フォースカットとは、加工の目的と加工方法が全く異なっており、明確に区別される。したがって、本発明のセカンドカットを分割した各加工工程と実質的に同じ加工方法であって単に呼び方としてサードカット以降の呼称を用いる場合は、本発明に含まれる。一方、従来のように、取り代と平均加工電流値を考慮せずに単にファーストカットの加工面粗さをほぼ半減させるように電気的加工条件を小さくしてセカンドカットを行なう場合は、本発明に含まれない。
もちろん、アウトコーナ部分や切出し部分において初期の加工条件を変更して平均加工電流値を初期の平均加工電流値よりも大きくして被加工物に欠損が発生しないように制御を行なう場合は、本発明に含まれる。また、本発明のワイヤカット放電加工方法は、ファーストカットがどのような加工方法で行なわれたかに関係なく、ファーストカットで残り代が大きいときのセカンドカットに適用される。なお、グラファイト以外を加工する場合でも、同じ原因によって被加工物に欠損が発生する脆性の高い材料を加工する場合は、本発明の効果を得る範囲において本発明の加工方法を実施することができる。
本発明は、材質がグラファイトの被加工物を加工するワイヤカット放電加工のセカンドカットに適用できる。特に、ファーストカットをウォータジェット加工で行なったときのように、ファーストカットにおける加工残部が大きいときに有益である。本発明は、被加工物を形状加工する切断加工の発展に寄与する。
本発明のセカンドカットにおける分割された加工工程のオフセット値と取り代および寄せ量の関係を示す平面図である。 同一の放電エネルギで異なる板厚のグラファイトの被加工物を加工したときの寄せ量と加工速度の関係および被加工物の欠損の状態を示すグラフである。 異なる放電エネルギで板厚25mmのグラファイトの被加工物を加工したときの寄せ量と加工速度の関係および被加工物の欠損の状態を示すグラフである。 異なる放電エネルギで板厚25mmのグラファイトの被加工物を加工したときの寄せ量、平均加工電流値、加工速度の関係および被加工物の欠損の状態を示すグラフである。 被加工物のアウトコーナに欠損が発生する状況を示す平面図である。 従来のワイヤカット放電加工方法のセカンドカットにおけるオフセット値と取り代の関係を示す平面図である。
符号の説明
R ワイヤ電極の半径
G 放電ギャップ
H オフセット値
S 取り代
W 取り代
K 残し代
L 寄せ量

Claims (5)

  1. 脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、セカンドカットの少なくともアウトコーナまたは切出し部分において前記セカンドカットの取り代に対応して前記セカンドカットにおける要求される加工面粗さが得られる所要の平均加工電流値よりも大きいワイヤ電極が前記アウトコーナまたは切出し部分を通過する直前に形成される突出した加工部分を塊で吹き飛ばさないように加工するような所定の値以上の平均加工電流値で加工するようにしたワイヤカット放電加工方法。
  2. 脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、セカンドカットで要求される加工面粗さに基づいて所要の平均加工電流値になるように加工条件を設定して前記セカンドカットを加工するとともに、アウトコーナまたは切出し部分において前記セカンドカットの取り代に対応して前記所要の平均加工電流値よりも大きい所定の値以上の平均加工電流値になるように加工条件を変更して加工し、前記アウトコーナや切出し部分を通過したら前記加工条件を元の値に戻すようにしたワイヤカット放電加工方法。
  3. 脆性の高い材質の被加工物を加工するワイヤカット放電加工方法において、ワイヤ電極の材質と径および被加工物の材質と板厚における所定の取り代毎に前記各取り代に対する被加工物に欠損が発生しない平均加工電流値を記録した加工データを参照してセカンドカットの取り代が前記セカンドカットにおける与えられ得る平均加工電流値で加工するときに被加工物に欠損が発生しない取り代よりも大きいときは、前記加工データを参照して前記セカンドカットの取り代と与えられ得る平均加工電流値とに基づいて被加工物に欠損が発生しない取り代になるようにセカンドカットを複数の加工工程に分割して、前記分割された各加工工程を前記取り代と前記取り代に対する被加工物に欠損が発生しない平均加工電流値で加工するようにしたワイヤカット放電加工方法。
  4. 前記分割された加工工程の最後の加工工程における取り代は、前記セカンドカットにおける残し代を得る値であってかつ前記セカンドカットで要求される加工面粗さを得る所要の平均加工電流値で被加工物に欠損が発生しない値以下である請求項3に記載のワイヤカット放電加工方法。
  5. 前記分割された加工工程の最後の加工工程において前記セカンドカットで要求される加工面粗さに基づいて前記所要の平均加工電流値になるように加工条件を設定して加工し、アウトコーナまたは切出し部分において前記最後の加工工程の取り代に対応して前記所要の平均加工電流値よりも大きい所定の値以上の平均加工電流値になるように加工条件を変更して加工し、前記アウトコーナや切出し部分を通過したら前記加工条件を元の値に戻すようにした請求項3に記載のワイヤカット放電加工方法。
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