JP2008258597A - 被銅メッキ処理材 - Google Patents

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Abstract

【課題】初期ピール強度及び耐熱ピール強度に優れた銅積層ポリイミドフィルムを得ることができる被銅メッキ処理材を提供する。
【解決手段】ポリイミドフィルムW1の少なくとも片面に、主成分としてニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とを含有する混合スパッタ膜3を形成した被銅メッキ処理材W2とした。この混合スパッタ膜の厚みを8nm以上であって、80nm以下とした。また、上記ニクロムスパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合を、上記ポリイミドフィルムとの接触表面から混合スパッタ膜の表層に向けて上記ニクロムスパッタ粒子が少なくなり、かつ上記銅スパッタ粒子が多くなるように変化させた。
【選択図】図1

Description

本発明は、携帯電話やディスプレイ等のプリント配線板として利用される銅積層ポリイミドフィルムを製造するための被銅メッキ処理材の製造方法に関するものである。
この銅積層ポリイミドフィルムとしては、例えば、非特許文献1に示されているように、厚さ数十μmのポリイミドフィルム上に、銅スパッタ膜を形成した後に、この銅スパッタ膜上にメッキ処理によって銅メッキ層を形成したものが知られているものの、加熱処理によって銅スパッタ膜が剥離し易くなることから、使用時の耐久性に劣るとの問題があった。
これは、銅積層ポリイミドフィルムに加熱処理を行うと、剥離後のポリイミドフィルム表面に酸化銅の粒塊が付着していることから、銅スパッタ膜が酸化して、酸化銅の粒子がポリイミド内部に拡散して、粒塊となることにより、剥離し易い性質に変化し、かつポリイミドフィルムも酸化して、これらの銅とポリイミドフィルムとの化学結合が変化することが原因であると推測される。
そこで、特許文献2においては、上記ポリイミドフィルムと銅スパッタ膜との間にニクロム合金のスパッタ膜を形成した被銅メッキ処理材が提案されている。
加熱によるポリイミド銅積層体の剥離強度変化,真空,第39巻,第2号(1996)P15−20 特開2003−318533号公報
この被銅メッキ処理材は、ニクロムスパッタ膜が銅スパッタ膜の銅のポリイミドフィルムへの拡散を防止して、銅スパッタ膜上に銅メッキを施した銅積層ポリイミドフィルムの耐熱ピール強度を改善することができる。
しかしながら、この銅積層ポリイミドフィルムによっても、銅積層ポリイミドフィルムの加熱処理後の引き剥がし強度である耐熱ピール強度が333N/m程度しかなく、あらゆるところで使用されるプリント配線板として充分な耐熱ピール強度が得られないものであった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、常態接着強さである初期ピール強度のみならず、耐熱ピール強度にも優れた銅積層ポリイミドフィルムを得ることができる被銅メッキ処理材を提供することを課題とするものである。
請求項1に記載の発明に係る被銅メッキ処理材は、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、主成分としてニッケルクロム合金スパッタ粒子と銅スパッタ粒子とを含有する混合スパッタ膜が形成されてなる被銅メッキ処理材であって、上記混合スパッタ膜は、その厚みが8nm以上であって、80nm以下であるとともに、上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合が、上記ポリイミドフィルムとの接触表面から当該混合スパッタ膜の表層に向けて上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子が少なくなり、かつ上記銅スパッタ粒子が多くなるように変化することを特徴としている。
ここで、この被銅メッキ処理材は、最終的に、上記混合スパッタ膜上に銅メッキが施されて、銅積層ポリイミドフィルムとして使用されるものであり、上記混合スパッタ膜上に直接、上記銅メッキを施して、又は上記混合スパッタ膜上に他のスパッタ膜等を介在させて上記銅メッキを施して、使用してもよいものである。
また、本発明において、ニッケルクロム合金とは、ニッケル85wt%とクロム15wt%とを含有する85Ni−15Cr、ニッケル80wt%とクロム20wt%とを含有する80Ni−20Cr(ニクロム80)、ニッケル60wt%とクロム40wt%とを含有する60Ni−40Cr(ニクロム60)、ニッケル40wt%とクロム60wt%とを含有する40Ni−60Crやニッケル20wt%とクロム80wt%とを含有する20Ni−80Crなどのニッケル及びクロムを主成分とするニクロム(登録商標、以下同様)を意味するものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被銅メッキ処理材において、上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合が上記接触表面から上記表層に向けて段階的に変化することを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の被銅メッキ処理材において、上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合が上記接触表面から上記表層に向けて漸次変化することを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一項に記載の被銅メッキ処理材において、上記混合スパッタ膜の上記銅スパッタ粒子の質量割合が多い表層上に、銅スパッタ膜が形成されていることを特徴としており、この被銅メッキ処理材は、最終的に、上記銅スパッタ膜上に、直接銅メッキが施されて、銅積層ポリイミドフィルムとして使用されるものである。
請求項1〜4に記載の発明によれば、ポリイミドフィルム上に、主成分としてニッケルクロム合金スパッタ粒子と銅スパッタ粒子とを含有する混合スパッタ膜を、上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合をポリイミドの接触表面から表層に向けて上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子が少なくなり、かつ上記銅スパッタ粒子が多くなるように変化させて、厚みが8nm以上であって80nm以下となるように形成したため、メッキ処理を施すことにより、初期ピール強度のみならず、耐熱ピール強度にも優れて、あらゆるところで使用可能な銅積層ポリイミドフィルムを得ることができる。
上述のように耐熱ピール強度を有する銅積層ポリイミドフィルムを得られたのは、厚み8nm以上の混合スパッタ膜を形成することによって、表層に向けて質量割合の多くなる銅スパッタ粒子や混合スパッタ膜上に形成される銅メッキのポリイミドフィルムへの拡散を抑制することにより、銅とポリイミドフィルムとの化学結合の変化による剥離現象を防止できたためであると推測される。
他方、混合スパッタ膜の厚みを80nm以下とすることによって、後工程のエッチング処理においてニッケルクロム合金スパッタ粒子の存在により混合スパッタ膜のパターン形成が困難となることを防止できる。
また、上記接触表面から上記表層に向けて上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合を、請求項2に記載の発明のように段階的に変化させた場合や、請求項3に記載の発明のように漸次変化させた場合に、効果的に耐熱ピール強度の低下を抑制でき、銅積層ポリイミドフィルムの剥離を防止することができる。
加えて、請求項4に記載の発明によれば、混合スパッタ膜の銅スパッタ粒子の質量割合が多くなった表層上に、銅スパッタ膜を形成することによって、被メッキ処理材に銅メッキを施した際に、スパッタ膜とメッキ層とがいずれも銅であって、結晶構造が同一であることから、スパッタ膜とメッキ層との結合力が大きくなって、銅積層ポリイミドフィルムの剥離強度を高めることができる。
以下、本発明に係る被銅メッキ処理材の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の被銅メッキ処理材W2を示す模式図であるとともに、図2は、この被銅メッキ処理材W2における混合スパッタ膜3及び銅スパッタ膜4におけるニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合を示すグラフである。また、図1及び図2における●は、ニクロムスパッタ粒子を示すものであるとともに、同図中における□は、銅スパッタ粒子を示すものである。
本実施形態の被銅メッキ処理材W2は、ポリイミドフィルムW1上にニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とからなる混合スパッタ膜3が形成されるとともに、この混合スパッタ膜3上に銅スパッタ膜4が形成されて構成されている。
この混合スパッタ膜3は、その厚みが8nm以上であって、かつ80nm以下(本実施形態においては32nm)となるように形成されるとともに、図1及び図2に示すように、ポリイミドフィルムW1との接触表面から表層に向けて、段階的に、ニクロムスパッタ粒子(●)の質量割合が少なくなり、かつ銅スパッタ粒子(□)の質量割合が多くなるように変化して構成されている。
具体的に、混合スパッタ膜3として、ポリイミドフィルムW1上から厚さ8nm未満の範囲内の第1堆積部において、ニクロムスパッタ粒子のみが堆積されており、厚さ8nm以上16nm未満の範囲内の第2堆積部において、ニクロムスパッタ粒子が75質量%、銅スパッタ粒子が25質量%となるように堆積されている。同様に、混合スパッタ膜3は、同16〜24nmの範囲内の第3堆積部においてニクロムスパッタ粒子が50質量%、銅スパッタ粒子が50質量%、同24〜32nmの範囲内の第4堆積部においてニクロムスパッタ粒子が25質量%、銅スパッタ粒子が75質量%となるように堆積されており、各堆積部が均一の厚み(本実施形態では8nm)を有して形成されている。
すなわち、混合スパッタ膜3として、ポリイミドフィルムW1との接触面にニクロムスパッタ粒子のみが堆積することにより、銅スパッタ粒子のポリイミドフィルムW1への拡散を確実に抑制して、銅とポリイミドフィルムW1との化学結合の変化による被銅メッキ処理材W2の剥離現象が阻止されるものである。
また、混合スパッタ膜3の厚みを8nm以上としたのは、銅スパッタ粒子等の銅のポリイミドフィルムW1への拡散を抑制して、銅とポリイミドフィルムとの化学結合の変化による剥離現象を防止して、初期ピール強度のみならず、耐熱ピール強度の低下を阻止するためである。他方、混合スパッタ膜3の厚みを80nm以下としたのは、後工程のエッチング処理においてニクロムスパッタ粒子の存在により混合スパッタ膜3のパターン形成が困難になることを防止するためである。
他方、この銅スパッタ粒子の質量割合が多くなった混合スパッタ膜3の表層上には、上記銅スパッタ膜4が形成されており、この銅スパッタ膜4は、主成分が銅スパッタ粒子からなり、200nmの厚みを有して形成されている。
以上のようにして構成される被銅メッキ処理材W2は、この銅スパッタ膜4上に銅メッキ処理を施すことによって、銅積層ポリイミドフィルムとして使用可能である。
次いで、本発明に係る被銅メッキ処理材の第2の実施形態について説明する。
なお、第1の実施形態と同一の構成については、簡略して説明する。
本実施形態の被銅メッキ処理材W2は、第1実施形態と同様に、ポリイミドフィルムW1上にニクロムスパッタ粒子及び銅スパッタ粒子からなる8nm〜80nmの膜厚の混合スパッタ膜3と、この混合スパッタ膜3上に形成された銅スパッタ膜4とによって構成されている。
この混合スパッタ膜3は、ポリイミドフィルムW1との接触表面から表層に向けて、漸次、ニクロムスパッタ粒子の質量割合が少なくなり、かつ銅スパッタ粒子の質量割合が多くなるように変化して構成されており、ポリイミドフィルムW1との接触面にニクロムスパッタ粒子のみが堆積されている。
他方、この銅スパッタ粒子の質量割合が多い混合スパッタ膜3の表層上には、上記銅スパッタ膜4が形成されている。
以上のようにして構成される被銅メッキ処理材W2は、この銅スパッタ膜4上に銅メッキ処理を施すことによって、銅積層ポリイミドフィルムとして使用可能である。
次に、第1の被銅メッキ処理材の製造装置について、図3及び図4を用いて説明する。
まず、本実施形態の製造装置は、図3に示すように、ポリイミドフィルムW1を巻出す巻出しロール31と、この巻き出しロール31から巻出されたポリイミドフィルムW1が帯幅方向を上下方向に向けた状態で搬入するDCマグネトロンスパッタ装置1と、このスパッタ装置1内において、ポリイミドフィルムW1上に混合スパッタ膜3と銅スパッタ膜4とが順次成膜されて、スパッタ装置1から搬出された被銅メッキ処理材W2を巻取る巻取りロール32とによって構成されている。
このDCマグネトロンスパッタ装置1は、外観視略円筒状に構成されるとともに、上部及び下部がそれぞれ閉塞されて、内部に搬入されたポリイミドフィルムW1に混合スパッタ膜3と銅スパッタ膜4とを成膜するための成膜室10が気密的に設けられており、その外壁面にポリイミドフィルムW1の搬入口18と被銅メッキ処理材W2の搬出口19とがそれぞれ細長状に形成されている。
また、スパッタ装置1は、その中央部に円筒状の回転可能な冷却ドラム11が設けられており、この冷却ドラム11は、伝熱性を有する導電性部材によって構成されるとともに、上部及び下部がそれぞれ閉塞的に設けられて、その内周壁面に沿って冷却水が循環するようになっている。
そして、この冷却ドラム11の内周壁面に沿って循環する冷却水は、冷却ドラム11を介して、ポリイミドフィルムW1を冷却することにより、スパッタ粒子の凝集熱によるポリイミドフィルムW1の温度上昇を抑制して、ポリイミドフィルムW1の熱負けによる銅積層ポリイミドフィルムの初期ピール強度の低下を抑制する。
また、この冷却ドラム11の外周面に沿って複数基(本実施形態においては7基)のターゲット2がそれぞれ間に隔壁部材12を設けて設置されており、これらのターゲット2としては、ポリイミドフィルムW1の搬送方向の上流側からニクロムターゲット2A、第1の混合ターゲット2B、第2の混合ターゲット2C、第3の混合ターゲット2D及び複数基(本実施形態においては3基)の銅ターゲット2Eが設置されている。
さらに、各ターゲット2A〜2Eは、図4に示すように、それぞれ冷却ドラム11に対向配置された細長矩形板状のバッキングプレート21を天板とする筺体25の底板が成膜室10の外壁面と一体的に設けられており、この筺体25は、その内部が気密的に設けられて、幅方向の中央部に上下方向に向けて細長状の磁石24が配置されるとともに、内部に冷却水が循環するようになっている。
そして、ニクロムターゲット2Aのバッキングプレート21の表面には、ターゲット材22として厚板状のニクロム合金22Aが貼設されるとともに、第1の混合ターゲット2Bのターゲット材22としては、厚板状のニクロム合金75質量%、銅25質量%の第1の混合合金22Bが貼設されている。同様に、第2の混合ターゲット2Cのターゲット材22としてはニクロム合金50質量%、銅50質量%の第2の混合合金22C、第3の混合ターゲット2Dのターゲット材22としてはニクロム合金25質量%、銅75質量%の第3の混合合金22D及び銅ターゲット2Eのターゲット材22としては銅22Eがそれぞれ貼設されている。これにより、各ターゲット材22並びに筺体25の天板及び底板は、冷却ドラム11の外周面に沿って円弧状に湾曲して形成されるとともに、各ターゲット2の間に設置された上記隔壁部材12は、各ターゲット材22によるスパッタ粒子が隣接する他のターゲット材22のスパッタ粒子が堆積するポリイミドフィルムW1上に堆積しないように各ターゲット材22よりもポリイミドフィルムW1側に突出して設けられている。
また、これらの各ターゲット材22には、それぞれ電流を供給するイオン引き出し電極(図示を略す)が接続されており、これによって、各引き出し電極は、各ニクロム合金22A等のターゲット材22に電圧を印加するようになっているとともに、アースが冷却ドラム11に接続されている。
また、スパッタ装置1には、空気を排出して、成膜室10を真空状態に近付ける内圧調整機能と、内部にアルゴン等の不活性ガスを供給するガス供給機能とを備えた内部雰囲気調整手段(図示を略す)が設けられている。これによって、スパッタ装置1内は、作動時にアルゴン等の不活性ガス雰囲気に保たれて、アルゴン等のイオン化に伴ってプラズマが生じるとともに、イオン化したアルゴンが各ターゲット材22に衝突して、各ターゲット材22のスパッタ粒子が叩き出されて、ポリイミドフィルムW1上に堆積されるようになっている。
上述の実施の形態の製造装置を用いて、被銅メッキ処理材W2を製造する場合には、まず、巻出しロール31から巻出されたポリイミドフィルムW1がスパッタ搬入口18からスパッタ装置1内の冷却ドラム11の外周面及び搬出口19を経て巻取りロール32に巻取られている状態で、内部雰囲気調整手段によって、成膜室10にアルゴンガスを供給するとともに、成膜室10の内圧を調整して、内部雰囲気を調整する。
次いで、各引き出し電極を通じて、各ターゲット2に電圧を印加して、スパッタ装置1を作動させるとともに、巻出しロール31、冷却ドラム11及び巻取りロール32を同一の周速となるように同期して回転させる。
すると、搬入口18から搬入されたポリイミドフィルムW1は、冷却ドラム11の外周面によって冷却されつつ冷却ドラム11の回転によって下流側に搬送されると同時に、アルゴンイオンがニクロム合金22Aに衝突することによって叩き出されたニクロムスパッタ粒子が堆積される。次いで、アルゴンイオンが第1の混合合金22Bに衝突することにより、ニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とが堆積され、順次同様に、第2の混合合金22Cによるニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とが、第3の混合合金22Dによるニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とが、銅22Eによる銅スパッタ粒子がそれぞれ連続的に堆積される。
その際、各スパッタ粒子は、隔壁部材12がポリイミドフィルムW1側に突出して設けられているため、隣接する他のターゲット材22によるスパッタ粒子が堆積するポリイミドフィルムW1上に堆積しないことから、隣接するターゲット材22によるスパッタ粒子と混合することなく、ポリイミドフィルムW1上に堆積する。
このため、ポリイミドフィルムW1上には、ニクロムターゲット2Aに臨む位置において、ニクロムスパッタ粒子のみが堆積され、同様に、第1の混合ターゲット2B〜銅ターゲット2Eに臨む位置おいても、順次各ターゲット材22によるスパッタ粒子のみが堆積される。これにより、ニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合を段階的に変化させた第1〜第4堆積部からなる混合スパッタ膜3と、銅スパッタ膜4とが形成されたポリイミドフィルムW1は、被銅メッキ処理材W2として搬出口19から搬出されて、巻取りロール32に巻き取られる。
次に、第2の被銅メッキ処理材W2の製造装置及びそれを用いた本発明に係る第2の被銅メッキ処理材W2の製造方法について、図5を用いて説明する。
なお、第1の実施形態の製造装置と同一の構成については、略して説明するとともに、第1の被銅メッキ処理材W2の製造方法と同一の方法については、簡略して説明する。
まず、本実施形態の製造装置は、巻出す巻出しロール31と、この巻き出しロール31から巻出されたポリイミドフィルムW1が帯幅方向を上下方向に向けた状態で搬入するDCマグネトロンスパッタ装置1と、このスパッタ装置1内においてポリイミドフィルムW1に混合スパッタ膜3と銅スパッタ膜4とが順次成膜されて、スパッタ装置1から搬出された被銅メッキ処理材W2を巻取る巻取りロール32とによって構成されており、マグネトロンスパッタ装置1において隔壁部材12が設けられていない点を除き、第1の実施形態の製造装置と同一である。
上記被銅メッキ処理材の製造装置を用いて、被銅メッキ処理材を製造する場合には、第1の実施形態と同様に、内部雰囲気調整手段によって、成膜室10にアルゴンガスを供給するとともに、成膜室10の内圧を調整し、各ターゲット2に電圧を印加して、スパッタ装置1を作動させるとともに、巻出しロール31、冷却ドラム11及び巻取りロール32を同一の周速となるように同期して回転させる。
すると、ポリイミドフィルムW1は、冷却ドラム11の回転によって下流側に搬送されつつ、アルゴンイオンがニクロム合金22Aに衝突することによって叩き出されたニクロムスパッタ粒子が堆積される。次いで、アルゴンイオンが第1の混合合金22Bに衝突することにより、ニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とが堆積され、順次同様に、第2の混合合金22Cによるニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とが、第3の混合合金22Dによるニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子とが、銅22Eによる銅スパッタ粒子がそれぞれ連続的に堆積される。
その際、各スパッタ粒子は、アルゴンイオンによって叩き出されることによって、ポリイミドフィルムW1上に堆積することから、隣接する他のターゲット材22によるスパッタ粒子が堆積するポリイミドフィルムW1上にも拡散して堆積するため、隣接するターゲット材22によるスパッタ粒子が混合された状態で堆積する。
このため、ポリイミドフィルムW1上には、ニクロムターゲット2Aに臨む位置において、ニクロム合金22Aによるニクロムスパッタ粒子に、一部ターゲット2Aの下流側に隣接する第1の混合ターゲット2Bのスパッタ粒子が混合して堆積され、次いで、第1の混合ターゲット2Bに臨む位置において、第1の混合合金22Bによるニクロムスパッタ粒子及び銅スパッタ粒子に、一部ターゲット2Bの上流側及び下流側に隣接するニクロムターゲット2A及び第2の混合ターゲット2Cのスパッタ粒子が混合して堆積される。
同様にして、順次、ポリイミドフィルムW1上には、第2の混合ターゲット2Cに臨む位置において、第2の混合合金22Cによるスパッタ粒子に、上下流側に隣接する第1及び第3の混合ターゲット2B、2Dのスパッタ粒子が一部混合して堆積され、第3の混合ターゲット2Dに臨む位置において、第3の混合合金22Dによるスパッタ粒子に上下流側に隣接する第2の混合ターゲット2C及び銅ターゲット2Eのスパッタ粒子が一部混合して堆積される。
これにより、ポリイミドフィルムW1上には、各ターゲット2に臨む位置において、各ターゲット材22によるスパッタ粒子に、上下流側に隣接する他のターゲット2のスパッタ粒子が一部混合するため、ポリイミドフィルムW1との接触表面から表層に向けて、漸次、各スパッタ粒子の質量割合が変化する混合スパッタ膜3が形成される。
上述の第1及び第2の実施の形態の被銅メッキ処理材W2は、上述のようにして厚み8nm以上の混合スパッタ膜3を、ニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合がポリイミドフィルムW1の接触表面から表層に向けて、ニクロムスパッタ粒子が少なくなり、かつ銅スパッタ粒子が多くなるように段階的に変化又は漸次変化するように形成したため、初期ピール強度のみならず、著しく耐熱ピール強度に優れた銅積層ポリイミドフィルム得ることができる。
また、銅被銅メッキ処理材W2は、ポリイミドフィルムW1との接触面にスパッタ粒子のみを堆積させたため、銅スパッタ粒子のポリイミドフィルムW1への拡散を抑制して、銅とポリイミドフィルムW1との化学結合の変化による剥離現象を阻止することができる。
加えて、混合スパッタ膜3の上に銅スパッタ膜4を形成したため、銅メッキ処理を施す際にメッキ層と銅スパッタ膜4との結合力が大きくなって、剥離強度を高めることができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、例えば、混合スパッタ膜3上に銅スパッタ膜4が形成されていなくてもよいものである。
上記第1の被銅メッキ処理材の製造装置を用いて、ポリイミドフィルムW1を冷却ドラム11の回転によって搬送しつつ、この搬送されるポリイミドフィルムW1にニクロムターゲット2A〜銅ターゲット2Eの各ターゲット材22によるスパッタ粒子を順次、連続して堆積させた。
なお、スパッタ装置1内に設置されるニクロム合金22AとしてNi80wt.%−Cr20wt.%を用いるとともに、第1の混合合金22Bとして(Ni80wt.%−Cr20wt.%)75−Cu25、第2の混合合金22Cとして(Ni80wt.%−Cr20wt.%)50−Cu50、第3の混合合金22Dとして(Ni80wt.%−Cr20wt.%)25−Cu75、銅22EとしてCuをそれぞれ用いた。すなわち、各ターゲット材22として、ポリイミドフィルムW1の搬送方向の上流側から下流側に向けて順次、組成式(Ni80wt.%−Cr20wt.%)x−Cu(100−x)におけるx=100、75、50、25、0であるものを用いた。
また、スパッタ装置1内は、内部雰囲気調整手段によって到達真空度が1e-6 [Torr]となるように真空引きされるとともに、アルゴンガスが充填されており、圧力6.2e-3 [Torr]となるように保たれている。また、イオン引き出し電極によって各ターゲット材22にそれぞれ3.16W/cm2 の電力が印加されている。
これにより、ポリイミドフィルムW1に、上記第1の被銅メッキ処理材W2と同様に、第1〜第4堆積部をそれぞれ8nmとした32nmの混合スパッタ膜3と膜厚200nmの銅スパッタ膜4とが形成された実施例1の被銅メッキ処理材W2と、第1〜第4堆積部をそれぞれ20nmとした80nmの混合スパッタ膜3と膜厚200nmの銅スパッタ膜4とが形成された実施例2の被銅メッキ処理材W2とを得た。
さらに、ポリイミドフィルムW1に、第2実施形態の隔壁部材12が設けられていない図5に示したスパッタ装置1を用いて、上記第2の被銅メッキ処理材W2に対応する膜厚32nmの混合スパッタ膜3と膜厚200nmの銅スパッタ膜4とが形成された実施例3の被銅メッキ処理材W2を得た。同様にして、膜厚80nmの混合スパッタ膜3と200nmの銅スパッタ膜4とが形成された実施例4の被銅メッキ処理材W2とを得た。
なお、実施例1及び3の被銅メッキ処理基材W2における混合スパッタ膜3および銅スパッタ膜4のポリイミドフィルムW1との接触表面から表層に向けて膜厚方向に変化するニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合と、実施例2及び4の被銅メッキ処理基材W2における混合スパッタ膜3および銅スパッタ膜4の同膜厚方向に変化するニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合とをそれぞれ断面TEM−EDSによって測定して、前者のグラフを図6に、後者のグラフを図7にそれぞれ示した。図6及び図7から判るように、実施例3および4の隔壁部材12が設けられていないスパッタ装置1を用いた場合には、漸次、膜厚方向にニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合が変化している。
次いで、実施例1の被銅メッキ処理材W2に、銅スパッタ膜4上に8μmの銅メッキ層を施した後に、初期ピール強度及び耐熱ピール強度を測定して、それらの結果を表1に示した。なお、本実施例における耐熱ピール強度は、150℃で168時間加熱した後の引き剥がし強度であり、JISC6471に従ったものである。
同様に、実施例2〜4の被銅メッキ処理材W2に、銅スパッタ膜4上に8μmの銅メッキ層を施した後に、初期ピール強度及び耐熱ピール強度を測定し、それらの結果を表1に示した。
次いで、比較例として、実施例1及び2と同一のポリイミドフィルムW1上に、膜厚20nmのニクロムスパッタ膜と、膜厚200nmの銅スパッタ膜4と、膜厚8μmの銅メッキ層とが順に積層された銅積層ポリイミドフィルムを用いて、実施例1及び2と同様に、初期ピール強度及び耐熱ピール強度を測定し、その結果を表1に示した。
Figure 2008258597
表1から判るように、比較例1の銅積層ポリイミドフィルムは、初期ピール強度が360.5N/mであるとともに、耐熱ピール強度が307.2N/mであり、初期ピール強度及び耐熱ピール強度がともに小さくなってしまった。これは、銅のポリイミドフィルムW1への拡散を完全に防止することができず、この銅の拡散によって銅メッキ層とポリイミドフィルムW1との化学結合が変化したことによるものと推測される。
これに対して、実施例1の銅積層ポリイミドフィルムは、混合スパッタ膜3及び銅スパッタ層4が比較的薄いために、耐熱ピール強度が521.3N/mと比較的小さいかったものの、耐熱ピール強度及び初期ピール強度が共に優れていることが判った。
また、実施例2の銅積層ポリイミドフィルムは、混合スパッタ膜3及び銅スパッタ層4が比較的厚いために、スパッタ粒子の凝集熱によってポリイミドフィルムW1の表面が熱せられることにより、初期ピール強度が低下して、同強度が560.6N/mと比較的小さいものの、初期ピール強度及び耐熱ピール強度が共に優れていることが判った。
さらに、実施例3の銅積層ポリイミドフィルムは、実施例1よりも耐熱ピール強度および初期ピールがともに向上しており、同様に 実施例4の銅積層ポリイミドフィルムは、実施例2よりも耐熱ピール強度および初期ピールがともに向上している。特に、実施例3および実施例4は、それぞれ耐熱ピール強度が実施例1および実施例2よりも著しく向上しており、漸次、スパッタ粒子の質量割合が変化する混合スパッタ膜3を形成することによって耐熱ピール強度および初期ピール強度は、一段と向上することが判った。
本発明に係る第1の被銅メッキ処理材W2を示す模式図である。 混合スパッタ膜3及び銅スパッタ膜4の質量割合を示すグラフである。 第1の被銅メッキ処理材の製造装置を示す横断面模式図である。 ターゲット2の構成を説明する横断面斜視図である。 第2の被銅メッキ処理材の製造装置を示す横断面模式図である。 実施例1及び3の被銅メッキ処理材W2における混合スパッタ膜3及び銅スパッタ膜4のニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合を示すグラフである。 実施例2及び4の被銅メッキ処理材W2における混合スパッタ膜3及び銅スパッタ膜4のニクロムスパッタ粒子と銅スパッタ粒子との質量割合を示すグラフである。
符号の説明
W1 銅積層ポリイミドフィルム
W2 被銅メッキ処理材
3 混合スパッタ膜
4 銅スパッタ膜

Claims (4)

  1. ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、主成分としてニッケルクロム合金スパッタ粒子と銅スパッタ粒子とを含有する混合スパッタ膜が形成されてなる被銅メッキ処理材であって、
    上記混合スパッタ膜は、その厚みが8nm以上であって、80nm以下であるとともに、上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合が、上記ポリイミドフィルムとの接触表面から当該混合スパッタ膜の表層に向けて上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子が少なくなり、かつ上記銅スパッタ粒子が多くなるように変化することを特徴とする被銅メッキ処理材。
  2. 上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合は、上記接触表面から上記表層に向けて段階的に変化することを特徴とする請求項1に記載の被銅メッキ処理材。
  3. 上記ニッケルクロム合金スパッタ粒子と上記銅スパッタ粒子との質量割合は、上記接触表面から上記表層に向けて漸次変化することを特徴とする請求項1に記載の被銅メッキ処理材。
  4. 上記混合スパッタ膜の上記銅スパッタ粒子の質量割合が多い表層上に、銅スパッタ膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の被銅メッキ処理材。
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