JP2008252998A - モータ制御装置およびモータ制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータを迅速に停止させることができるとともに、不要な揺れ動きを抑えたモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ11に電力を供給して回転させる駆動状態と、モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させる第1制動状態と、モータ11内の電流の流れを断絶または第1制動状態より抑制する第2制動状態とを切換可能な回路部110と、回路部110の動作を切換制御する制御部(CPU20)とを備えたモータ制御装置100である。制御部は、回転しているモータ11を停止させる場合に、駆動状態から第1制動状態に切り換え、モータ11が回転数閾値Vth以下になった際に第1制動状態から第2制動状態に切り換えることで、モータ11を緩やかに停止させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、モータ制御装置およびモータ制御方法に関し、特に車両のアンチロックブレーキ制御や姿勢制御などに好適に用いることができるモータ制御装置およびモータ制御方法に関する。
車両のアンチロック制御装置や、姿勢制御装置などの車両の動作を制御する装置においては、各車輪に適宜ブレーキ力を発生し、またはブレーキ液をマスタシリンダへ汲み上げるため、ブレーキ液のポンプが設けられている。このポンプの駆動には、モータが用いられ、制御プログラムに応じて適宜モータの駆動・停止がなされている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されているような従来の車両用制御装置においては、モータを停止する場合には、単にモータの駆動信号をOFFにすることが行われていた。
ところで、駆動信号をOFFにしても、モータは慣性によりしばらく回り続けてしまい、不要に作動音が継続したり、必要以上にブレーキ液をマスタシリンダへ汲み上げてしまうという問題がある。
特開平11−170997号公報 特開2004−148869号公報 谷腰欣司、「DCモータ活用実践のノウハウ」、初版、CQ出版株式会社、2000年4月15日、p225−227
このような問題を解決するため、モータにブレーキをかける方法として、モータの両端子を短絡する方法が知られている(例えば、非特許文献1)。また、停止しているモータをロックするために同様の構成を用いた技術として、特許文献2の車両用電力制御装置が知られている。
しかし、回転しているモータの両端子を単に短絡してブレーキをかけた場合には、モータが停止した瞬間に反動が生じる。すなわち、車両に急ブレーキをかけて停止した瞬間に車両が前のめりになるように、モータが停止する瞬間にモータ自体が揺れ動くという現象が生じる。
このような揺れ動きは、車両に搭載するモータ、特に車両の動作を制御するためのモータとしては、振動や騒音を発生することになり好ましくない。また、車両に対して不要な振動や異音を発生することからも乗り心地に影響を与えるという問題がある。
そこで、本発明では、モータを迅速に停止させることができるとともに、不要なモータの揺れ動きを抑えたモータ制御装置を提供することを課題とする。
前記した課題を解決するため、本発明は、モータに電力を供給して回転させる駆動状態と、前記モータに流れる電流を制御して前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させる第1制動状態と、前記モータ内の電流の流れを断絶または前記第1制動状態より抑制する第2制動状態とを切換可能な回路部と、前記回路部の動作を切換制御する制御部とを備えたモータ制御装置であって、前記制御部は、回転している前記モータを停止させる場合に、前記駆動状態から第1制動状態に切り換え、前記モータが所定回転数以下になった際に前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とする。
このようなモータ制御装置によれば、モータが所定回転になるまでは、第1制動状態の形成により迅速にモータを減速させ、所定回転数以下になった後は、第2制動状態により緩やかに減速して停止に至る。このため、迅速なモータの停止を実現しつつ、モータが停止する際のモータ自体の揺れ動きも抑制することができる。
なお、本明細書でいう「回転数」は、回転速度(例えば、単位でrpm)の意味である。
前記したモータ制御装置においては、前記制御部は、前記所定回転数を複数記憶しており、前記モータの停止制御に使用する所定回転数が切り換え可能となっているように構成するのが望ましい。
このように第1制動状態と第2制動状態の切り換え条件となる所定回転数を複数記憶しておくことで、モータが使用される装置の特性に応じて動作特性を変化させることができる。
前記したモータ制御装置においては、前記回路部は、前記モータと直列に接続された第1の電界効果トランジスタと、前記モータと並列に接続された第2の電界効果トランジスタと、前記モータと並列に、かつ前記第2の電界効果トランジスタと直列に接続され、前記第2の電界効果トランジスタと寄生ダイオードの向きが逆向きに接続された第3の電界効果トランジスタと、を備えて構成され、前記第2および第3の電界効果トランジスタの間の電圧を検出することで前記第2および第3の電界効果トランジスタの少なくとも一方の異常を診断可能な異常検出部を備えるのが望ましい。
このように第2の電界効果トランジスタと第3の電界効果トランジスタの間の電圧を検出することで、これらの第2および第3の電界効果トランジスタの少なくとも一方の異常を診断することができる。なぜなら、第2の電界効果トランジスタまたは第3の電界効果トランジスタをONにし、その際の電圧を検出すると、電界効果トランジスタが正常にONになっているなら、モータの端子に掛かる電圧が検出できるはずだからである。また、第2および第3の電界効果トランジスタをともにOFFにした場合には、それらが正常にOFFになったなら、第2および第3の電界効果トランジスタの間の部分が、回路の他の部分とは隔離され、隔離されたことにより定まる電圧が検出できるはずだからである。
前記したモータ制御装置においては、前記回路部に発生する、前記モータの逆起電圧を検出する電圧検出部を有し、前記制御部は、前記電圧検出部の検出した逆起電圧に基づいて前記モータの回転数を算出し、この算出結果に基づいて前記回路部を前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えるように構成することができる。
このように構成することで、回転数を正確に検出でき、最適な状態でモータを停止させることができる。
前記したモータ制御装置においては、前記制御部は、前記異常検出部が検出した電圧に基づいて前記モータの回転数を算出し、この算出結果に基づいて前記回路部を前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えるように構成することができる。
このように構成することで、モータの停止制御のための回転数の検出と、電界効果トランジスタの異常検出のための電圧の検出を1つの検出部で行うことができる。
前記したモータ制御装置においては、前記モータの回転数を検出可能な回転数センサを有し、前記制御部は、前記回転数センサで検出された回転数に基づいて前記回路部を前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えるように構成することができる。
このように構成することで、回転数を正確に検出でき、最適な状態でモータを停止させることができる。
また、前記した課題を解決する本発明は、モータに電力を供給して回転させる駆動状態と、前記モータに流れる電流を制御して前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させる第1制動状態と、前記モータ内の電流の流れを断絶または前記第1制動状態より抑制する第2制動状態とを切換可能な回路部と、前記回路部の動作を切換制御する制御部とを備えたモータ制御装置であって、前記制御部は、回転している前記モータを停止させる場合に、前記駆動状態から第1制動状態に切り換え、この切り換え時から所定時間が経過した後に、第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とする。
このようなモータ制御装置によれば、第1制動状態に切り換えた時から所定時間、つまり、モータがある程度減速するまで、第1制動状態の形成より迅速にモータを減速させる。そして、所定時間が経過してモータが所定回転数以下になった後は、第2制動状態により緩やかに減速して停止に至る。このため、迅速なモータの停止を実現しつつ、モータが停止する際のモータ自体の揺れ動きも抑制することができる。
前記したモータ制御装置においては、前記制御部は、前記所定時間を複数記憶しており、当該所定時間が切り換え可能となっていることが望ましい。
このように構成することで、モータの種類や、モータの使用回転数に応じて適切な切り換えタイミングを設定することができる。
前記したモータ制御装置においては、前記制御部は、時間を測定するタイマを有しており、前記タイマにより測定された時間に基づき、前記回路部を第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えるように構成することができる。
このように構成することで、適切なタイミングで第1制動状態から第2制動状態に切り換えて、最適な状態でモータを停止させることができる。
前記した課題を解決する本発明は、モータ制御方法であって、回転状態のモータを停止させる場合に、前記モータに流れる電流を制御することで前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させ、前記モータの回転数が所定回転数以下になった際に前記逆向きのトルクを解除することを特徴とする。
このようなモータ制御方法によれば、逆向きのトルクの発生により迅速にモータを減速させつつ、回転数が所定回転数以下になった際に逆向きのトルクを解除するので、緩やかに停止し、モータ自体の揺れ動きを抑制することができる。
前記した課題を解決する本発明は、モータ制御方法であって、回転状態のモータを停止させる場合に、前記モータに流れる電流を制御することで前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させ、前記逆向きのトルクを発生した時から所定時間経過した後に前記逆向きのトルクを解除することを特徴とする。
このように、モータに逆向きのトルクを発生したときから所定時間経過した後に逆向きのトルクを解除することによっても、モータの迅速な減速と、揺れ動きの抑制を実現することができる。
本発明によれば、モータを停止する場合において、迅速に減速させることができるとともに、モータの揺れ動きを抑制して、振動や異音の発生を抑えることができる。
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
参照する図面において、図1は、本発明の第1実施形態に係るモータ制御装置の回路図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係るモータ制御装置の制御パターンを示す表である。
図1に示すように、モータ制御装置100は、回路部110に、モータ11と、CPU20が接続されて構成されている。モータ11は、12Vの電源10とグラウンド19との間に接続されて、モータ制御装置100により制御される。モータ11のグラウンド19側には、第1の電界効果トランジスタFET1(以下、単に「FET1」とする)が直列に接続されている。また、モータ11には、第2の電界効果トランジスタFET2(以下、単に「FET2」とする)と第3の電界効果トランジスタFET3(以下、単に「FET3」とする)が並列に接続されている。FET3とFET2は、直列に接続され、この順に、電源10側からグラウンド19側へ並んで配置されている。FET2とFET3の整流方向(寄生ダイオードD2,D3の向き)は、互いに逆向きであり、FET3は、電源10の方向、FET2は、グラウンド19の方向を向いている。
なお、FET1の寄生ダイオードD1の整流方向は、FET1をモータ11の駆動電流のON・OFFの切り換えに用いるため、電源10側に向いている。
FET3は、後述するように、モータ11の停止時にモータ11に制動力をかけるべく、電流を環流するためのスイッチである。
FET2は、電源10を逆接続した場合に、短絡を防ぐために設けられているものである。
FET1,FET2およびFET3は、CPU20により、ゲート制御回路21を介してゲート電圧が負荷され、スイッチとして機能するようになっている。
CPU20には、FET2とFET3の間の診断用電圧Vcが分圧回路32を介して入力されている。診断用電圧VcをCPU20に繋ぐ配線30は、プルダウン抵抗31を介してグラウンド19に接続されている。また、電源電圧Vbが分圧回路32を介してCPU20に入力されている。なお、配線30は、電圧検出部または異常検出部の一例である。
CPU20には、図示しない記憶装置が接続され、CPU20は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、ゲート制御回路21を介してFET1,FET2およびFET3を制御する制御部として機能する。また、CPU20は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、FET1,FET2,FET3を診断動作させ、そのときの診断用電圧Vcを検出して異常を検知する異常検出部として機能する。
記憶装置には、診断用電圧Vcとモータ回転数VMの関係を示したテーブルまたは関数を記憶してある。また、記憶装置には、モータブレーキ制御からモータOFF制御へ切り換える所定回転数としての回転数閾値Vthを記憶している。回転数閾値Vthは、複数の値を記憶しておいてもよい。例えば、接続されるモータ11の大きさや特性に応じて利用者が設定値を選択して変更可能なように構成しておくとよい。
図2を参照して、CPU20による制御パターンを説明すると、CPU20は、モータ11を通常回転制御(駆動状態)、モータブレーキ制御(第1制動状態)、モータOFF制御(第2制動状態)、の3つのパターンで制御する。
通常回転制御では、FET2をONにし、FET3をOFFにし、FET1を、必要なモータ駆動力に応じてPWM制御する。これにより、電源10からモータ11、FET1を電気が流れてモータ11が駆動される。
モータブレーキ制御では、FET1をOFFにし、FET2をONにし、FET3を短時間のみOFFとするようなPWM制御とする。これにより、回転しているモータ11の両端子は短絡され、FET2,FET3を通過して電流が環流する。そして、モータ11には大きな制動力がかかる。
モータOFF制御では、FET1をOFFにし、FET2をONにし、FET3をOFFにする。FET1をOFFにすることで、モータ11への電力供給が断たれ、また、FET3をOFFにすることで、モータ11の短絡もなされないので、回転しているモータ11は、慣性により回るが、機械的抵抗により自然に停止する。
以上のような3つのパターンの制御を利用して、本実施形態のモータ制御装置100は、次のような停止制御をする。図3は、本発明の第1実施形態に係るモータ制御装置によるモータの停止制御を説明するタイムチャートであり、図4は、モータ停止制御を説明するフローチャートである。
図3に示すように、モータ11を通常回転制御しているとき(t0〜t1)には、FET1をPWM制御し、FET2をONとし、FET3をOFFとしている。そのため、デューティ比に応じた出力でモータ11は回転し、例えばモータ回転数VMはV1となる。
モータ11を停止しようとするとき(t1)、通常回転制御からモータブレーキ制御へと切り換える(S101)。すなわち、FET1をOFFにし、FET2とFET3をONにする。これにより、モータ11に生じた逆起電圧により、モータ11、FET2、FET3の経路(電流の向きは、モータ11の回転方向によるので、この限りでない)で電流が還流し、この還流する電流によりモータ11に働く力が、モータ11の制動力として働く。そのため、図3の時刻t1〜t2のように、モータ回転数VMは迅速に減速していく。
この減速中に、制御部(CPU20)は、短時間のみFET3をOFFとして診断用電圧Vcおよび電源電圧Vbを取得し(S102)、この診断用電圧Vcと電源電圧Vbとの電位差Vdに基づき、モータ回転数VMを計算する(S103)。電位差Vdは、モータ11の逆起電圧を反映している。一方、逆起電圧はモータ回転数VMと相関関係を有しているので、予めテーブルまたは関数として記憶してあった、モータ回転数VMと、電位差Vdとの関係を示すテーブルを参照して、電位差Vdからモータ回転数VMを計算することができる。
そして、制御部は、予め記憶していた回転数閾値Vthを読み出して取得する(S104)。
制御部は、モータ回転数VMと回転数閾値Vthとを比較して、モータ回転数VMが回転数閾値Vthより大きかった(モータ回転数VMが回転数閾値Vth以下ではない)なら(S105,No)、迅速な減速を続けるために、ステップS102〜S105までの処理を繰り返す。
一方、制御部は、モータ回転数VMと回転数閾値Vthとを比較して、モータ回転数VMが回転数閾値Vth以下だったなら(S105,Yes)、モータブレーキ制御からモータOFF制御に切り換える(S106,t2)。すなわち、FET1をOFFにし、FET2をONにし、FET3をOFFにする。
これにより、モータ11への電力供給が断たれるだけでなく、モータ11の両端の電気的接続も断たれ、モータ11には、電流が流れない。したがって、モータ11の逆起電圧による制動力も働かず、モータ11は、機械的抵抗によって自然に停止へと至る(t2〜t3)。
このように、本実施形態のモータ制御装置100によれば、時刻t1〜t2の間に、モータ11の両端子を短絡させることによって、大きな制動力を発生し、迅速にモータ11を減速することができる。この効果を、従来と比較すると、従来の場合、図3に示した破線のように時刻t1から、なだらかにモータ回転数VMが低下して、時刻t4まで掛かってモータ11が停止する。
本実施形態では、この時刻t1〜t2の間に、モータ11を迅速に減速した後、時刻t2〜t3では、モータOFF制御に切り換えて緩やかに停止する。そのため、モータ11が迅速に停止する上、モータ11が停止する時に、モータ11に揺れ動きが生じにくいという効果がある。そのため、モータ11が車両用の姿勢制御装置などに用いられた場合には、車両に不要な振動や異音を与えることがなく、車両の姿勢および居住性を良好にすることができる。
次に、本実施形態のモータ制御装置100において、FET1〜FET3の異常を検出する方法を説明する。
図5は、第1実施形態における異常診断の動作を説明するタイムチャートであり、図6は、第1実施形態における異常診断の場合の電流の流れを説明する図であり、図7は、異常診断処理のフローチャートである。
なお、図5において、診断用電圧Vcは、実線は異常が無かった場合、破線は、異常があった場合を示す。
図5に示すように、異常診断をする場合、例えば時刻t0〜t1のように、FET1〜FET3をすべてOFFにすると、配線30には、12Vの電源10からの電圧が届かないので、診断用電圧Vcは0Vを示す。一方、FET2またはFET3がON固着していた場合には、これらのどちらかから診断用電圧Vcの配線30に電源電圧が回ってくるので、診断用電圧Vcは、12Vを示す。
そして、時刻t1〜t2のように、FET1をOFF、FET2をON、FET3をOFFにした場合には、配線30には、図6(a)に示すように、電源10、モータ11、FET2、配線30、プルダウン抵抗31、グラウンド19の経路で電流が流れる。プルダウン抵抗31の抵抗値は、モータ11の抵抗値よりも遙かに大きいので、配線30には、ほぼ12Vの電圧が掛かる。ところが、FET2がOFF固着していた場合には、この経路で電流が流れないので、配線30に電圧が掛からず、診断用電圧Vcは0Vとなる。
時刻t3〜t4のように、FET1をOFF、FET2をOFF、FET3をONにすると、配線30には、図6(b)に示すように、電源10、FET3、配線30、プルダウン抵抗31、グラウンド19の経路で電流が流れ、配線30には、ほぼ12Vの電圧が掛かる。ところが、FET3がOFF固着していた場合には、この経路で電流が流れないので、配線30に電圧が掛からず、診断用電圧Vcは0Vとなる。
次に、FET1を診断する場合、時刻t5〜t6のように、FET1をPWM制御し、FET2をON、FET3をOFFにする。このとき、FET1が正常であれば、診断用電圧Vcは、FET1の電圧変化とは逆相で変動する。電流がモータ11、FET1を通ってグラウンド19へ流れるときは、モータ11で電圧降下が生じるので診断用電圧Vcは0Vとなり、FET1がOFFになっている瞬間は、診断用電圧Vcがほぼ12Vとなるからである。
FET1がON固着している場合、FET1へ電流が流れ続けるので、診断用電圧Vcは、0Vの状態が続く。
逆に、FET1がOFF固着している場合、図6(a)の状態が続くので、診断用電圧Vcは、12Vの状態が続く。
このように、FET1、FET2およびFET3のON固着およびOFF固着を診断するため、異常診断部は、例えば図7に示すフローにより、診断を行う。図7において、Vcthは、診断用電圧Vcが12Vか0Vかを診断するための閾値である。診断用閾値Vcthは、0Vと12Vの間の値であれば、任意に選択することができるが、例えば、3Vなどの一定値を用いることができる。
まず、異常診断部(CPU20)は、FET1〜FET3をすべてOFFにする(S201)。そして、診断用電圧Vcと診断用閾値Vcthとを比較し、診断用電圧Vcが診断用閾値Vcthより小さくなければ(S202,No)、FET2またはFET3のON固着であると判断する(S203)。
次に、異常診断部は、FET1とFET3をOFFにし、FET2をONにする(S204)。そして、診断用電圧Vcと診断用閾値Vcthとを比較し、診断用電圧Vcが診断用閾値Vcthより大きくなければ(S205,No)、FET2のOFF固着、またはFET1のON固着であると判断する(S206)。
そして、異常診断部は、FET1とFET2をOFFにし、FET3をONにする(S207)。そして、診断用電圧Vcと診断用閾値Vcthとを比較し、診断用電圧Vcが診断用閾値Vcthより大きくなければ(S208,No)、FET3のOFF固着であると判断する(S209)。
以上の処理により、これまでの異常診断で正常であると判断された場合には(S210,Yes)、ステップS211からの処理で、FET1の診断を行う。一方、いずれかが異常である判断された場合には(S210,No)、フェールセーフ制御へと進む(S220)。
これまでの異常診断で正常であった場合、FET1をPWM制御し、FET2をON、FET3をOFFにする(S211)。そして、診断用電圧Vcに、FET1の変動に応じた変動があるかどうかを判断し、変動があった場合には(S212,Yes)、FET1〜FET3のすべてが正常であると判断する(S213)。
一方、変動が無かった場合には(S212,No)、診断用電圧Vcと診断用閾値Vcthとを比較し、診断用電圧Vcが診断用閾値Vcthより大きければ(S214,Yes)、FET1のOFF固着であると判断し(S215)、大きくなければ(S214,No)、FET1のON固着、またはFET2のOFF固着であると判断する(S216)。そして、FET1のON固着、OFF固着、またはFET2のOFF固着のいずれの場合にも、フェールセーフ制御へと進む(S220)。
このようにして、FET1〜FET3のそれぞれのON固着、OFF固着について判断することができる。
次に、FET1〜FET3に異常があった場合のフェールセーフ制御を説明する。フェールセーフ制御は、図8の表を参照しながら説明する。
図8に示すように、FET1がON固着していた場合、PWM制御はできなくなるものの、モータ11は回転を継続するので、ON固着のまま、100%デューティ(Duty)制御をする。FET1がOFF固着していた場合、モータ11の駆動が出来なくなるので、モータ制御を停止する。
FET2がON固着していた場合は、モータ11のON、OFF自体には影響しないので、通常通りの制御ができるのであるが、上述したように、FET2とFET3のいずれがON固着であるか、本実施形態では判断できないので、FET3がON固着した場合と同様にモータ制御を停止する。
FET2がOFF固着していた場合、PWM制御ができなくなるので、100%デューティ制御をする。
FET3がON固着した場合、モータ制御ができなくなるので、モータ制御を停止する。
FET3がOFF固着した場合、PWM制御に影響はないので、通常のPWM制御を継続する。
このように、本実施形態のモータ制御装置100では、モータ11の停止を迅速かつ、揺れ動き無く行うことができるだけでなく、診断用電圧Vcに基づいて、FET1〜FET3の故障を診断し、さらに、故障状態に応じて、可能な限りモータ11の制御を維持することができる。また、モータ11の正しい制御ができなくなる場合には、モータ11の制御を停止して、モータ11が使われる装置、例えば、アンチロックブレーキ装置や、車両の姿勢制御装置などの2次的な故障を防止することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の部分については、同じ符号を付して適宜説明を省略する。参照する図面において、図9は、本発明の第2実施形態に係るモータ制御装置の回路図であり、図10は、第2実施形態における異常診断の動作を説明するタイムチャートであり、図11は、第2実施形態における異常診断の場合の電流の流れを説明する図である。
図9に示すように、第2実施形態に係るモータ制御装置200は、第1実施形態のモータ制御装置100に対し、回路部210の構成が異なっている。
回路部210は、電源10から、FET1、モータ11、グラウンド19が直列に接続されている。FET2は、モータ11と並列に接続され、FET3は、モータ11と並列に接続されるとともに、FET2とは直列に接続されている。FET2とFET3は、電源10側からグラウンド19側に向かってこの順に並んで配置されている。FET2とFET3の寄生ダイオードD2,D3の向きは互いに逆向きであり、寄生ダイオードD2は、整流方向がグラウンド19側を向いており、寄生ダイオードD3は、整流方向が電源10側を向いている。なお、FET1の寄生ダイオードD1は、整流方向が電源10側を向いている。
FET2とFET3の間には、配線40が接続され、配線40により診断用電圧Vcが分圧回路32を介してCPU20へと入力されている。配線40には、プルアップ抵抗41を介して12Vの電源10′が接続されている。
以上のような構成の回路部210を有するモータ制御装置200によっても、第1実施形態と同様にモータ停止制御をすることができる。このモータ停止制御の場合の処理および作用効果は第1実施形態と同様であるので省略する。
モータ制御装置200の場合のFET1〜FET3の異常診断を説明すると、図10に示すように、時刻t0〜t1のように、FET1〜FET3がすべてOFFの場合、配線40に電流が流れず電圧降下が無いので、診断用電圧Vcは12Vを示す。
時刻t1〜t2のように、FET1とFET3がOFF、FET2がONの場合、図11(a)に示すように、電源10′、プルアップ抵抗41、FET2、モータ11、グラウンド19の経路で電流が流れ、モータ11よりもプルアップ抵抗41の抵抗値が遙かに大きいので、診断用電圧Vcは、ほぼ0Vとなる。
時刻t3〜t4のように、FET1とFET2がOFF、FET3がONの場合、図11(b)に示すように、電源10′、プルアップ抵抗41、FET3、グラウンド19の経路で電流が流れ、診断用電圧Vcは、0Vとなる。
FET1の故障を診断する場合、時刻t5〜t6のように、FET1をPWM制御、FET2をON、FET3をOFFにした場合、FET1がONになっている瞬間には、FET1に接続された電源10から12Vの電圧が配線40に掛かり、FET1がOFFになっている瞬間には、図11(a)の場合と同様になって、診断用電圧Vcは0Vとなる。また、FET1がON固着していた場合には、診断用電圧Vcは12Vとなり続け、FET1がOFF固着していた場合には、診断用電圧Vcは、0Vとなり続ける。
このように、第2実施形態のモータ制御装置200においても、FET1〜FET3のON固着、OFF固着の故障を診断することができる。そして、第1実施形態と同様にして、フェールセーフ制御を行うことも可能である。
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、以下のように、適宜変形して実施することができる。
前記した実施形態においては、モータOFF制御において、モータ11への電流の流れを完全に断ったが、必ずしも完全に断つ必要はなく、例えば、モータブレーキ制御の場合と同様にモータ11に電気を還流させつつ、抵抗を還流回路に配置して、電気の流れをモータブレーキ制御の場合よりも抑制するように構成してもよい。
また、前記実施形態においては、モータブレーキ制御において、モータ11の両端子を短絡させたが、このような方法ではなく、電源10からの電源供給をプラスマイナス逆にして、外部からの電力で積極的にブレーキを掛けてもよい。
前記した実施形態においては、診断用電圧Vcに基づいて(つまり、電圧検出部または異常検出部が検出した逆起電圧に基づいて)モータ回転数VMを計算していたが、モータ11に、別途、回転速度を検出する回転数センサを設け、この回転数センサが検出した回転数に基づいて制御部がモータ停止制御を行ってもよい。
さらに、前記した実施形態においては、制御部は、モータ回転数VMが、所定回転数である回転数閾値Vth以下になった際にモータブレーキ制御からモータOFF制御に切り換えたが、必ずしもモータ回転数VMに基づいて制御しなくてもよく、モータブレーキ制御を開始してから所定時間を経過した後に、モータブレーキ制御からモータOFF制御に切り換えるように構成してもよい。このようにしても、モータ回転数VMを基準に制御を切り換えた場合と同様に、迅速なモータ11の減速と、モータ11の揺れ動きの防止を実現することができる。このような制御方式は、簡易であり、モータ11を駆動しているときの回転数V1が一定の場合に、特に有効である。
また、このようにモータブレーキ制御を開始してから所定時間を経過した後に、モータブレーキ制御からモータOFF制御に切り換える場合、制御部は、所定時間を複数記憶しておき、状況に応じて複数の所定時間の中から適切な値を選択して用いると、モータ11の回転数が変動する場合にも対応できる。つまり、所定時間が切り換え可能となっていることが望ましい。
また、モータブレーキ制御を開始してから所定時間を経過した後に、モータブレーキ制御からモータOFF制御に切り換える場合、時間を測定するタイマを設けておき、タイマにより測定された時間に基づき、切り換え動作を行うことで、より正確な制御をすることが可能となる。
前記実施形態においては、異常検出部としての配線30,40を電圧検出部として利用したが、異常検出部とは別途のモータ逆起電圧のみの電圧検出部を設けて、この電圧検出部が検出した電圧に基づいてモータ回転数VMを計算することも可能である。
本発明の第1実施形態に係るモータ制御装置の回路図である。 本発明の第1実施形態に係るモータ制御装置の制御パターンを示す表である。 本発明の第1実施形態に係るモータ制御装置によるモータの停止制御を説明するタイムチャートである。 モータ停止制御を説明するフローチャートである。 第1実施形態における異常診断の動作を説明するタイムチャートである。 第1実施形態における異常診断の場合の電流の流れを説明する図である。 異常診断処理のフローチャートである。 フェールセーフ制御を説明する表である。 本発明の第2実施形態に係るモータ制御装置の回路図である。 第2実施形態における異常診断の動作を説明するタイムチャートである。 第2実施形態における異常診断の場合の電流の流れを説明する図である。
符号の説明
10 電源
11 モータ
19 グラウンド
21 ゲート制御回路
30 配線
31 プルダウン抵抗
40 配線
41 プルアップ抵抗
100 モータ制御装置
110 回路部
200 モータ制御装置
210 回路部
D1 寄生ダイオード
D2 寄生ダイオード
D3 寄生ダイオード
FET1 第1の電界効果トランジスタ
FET2 第2の電界効果トランジスタ
FET3 第3の電界効果トランジスタ

Claims (11)

  1. モータに電力を供給して回転させる駆動状態と、前記モータに流れる電流を制御して前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させる第1制動状態と、前記モータ内の電流の流れを断絶または前記第1制動状態より抑制する第2制動状態とを切換可能な回路部と、
    前記回路部の動作を切換制御する制御部とを備えたモータ制御装置であって、
    前記制御部は、回転している前記モータを停止させる場合に、
    前記駆動状態から第1制動状態に切り換え、前記モータが所定回転数以下になった際に前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記制御部は、前記所定回転数を複数記憶しており、前記モータの停止制御に使用する所定回転数が切り換え可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記回路部は、前記モータと直列に接続された第1の電界効果トランジスタと、前記モータと並列に接続された第2の電界効果トランジスタと、前記モータと並列に、かつ前記第2の電界効果トランジスタと直列に接続され、前記第2の電界効果トランジスタと寄生ダイオードの向きが逆向きに接続された第3の電界効果トランジスタと、を備えて構成され、
    前記第2および第3の電界効果トランジスタの間の電圧を検出することで前記第2および第3の電界効果トランジスタの少なくとも一方の異常を診断可能な異常検出部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記回路部に発生する、前記モータの逆起電圧を検出する電圧検出部を有し、
    前記制御部は、前記電圧検出部の検出した逆起電圧に基づいて前記モータの回転数を算出し、この算出結果に基づいて前記回路部を前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記制御部は、前記異常検出部が検出した電圧に基づいて前記モータの回転数を算出し、この算出結果に基づいて前記回路部を前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
  6. 前記モータの回転数を検出可能な回転数センサを有し、
    前記制御部は、前記回転数センサで検出された回転数に基づいて前記回路部を前記第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  7. モータに電力を供給して回転させる駆動状態と、前記モータに流れる電流を制御して前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させる第1制動状態と、前記モータ内の電流の流れを断絶または前記第1制動状態より抑制する第2制動状態とを切換可能な回路部と、
    前記回路部の動作を切換制御する制御部とを備えたモータ制御装置であって、
    前記制御部は、回転している前記モータを停止させる場合に、
    前記駆動状態から第1制動状態に切り換え、この切り換え時から所定時間が経過した後に、第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とするモータ制御装置。
  8. 前記制御部は、前記所定時間を複数記憶しており、当該所定時間が切り換え可能となっていることを特徴とする請求項7に記載のモータ制御装置。
  9. 前記制御部は、時間を測定するタイマを有しており、前記タイマにより測定された時間に基づき、前記回路部を第1制動状態から前記第2制動状態に切り換えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のモータ制御装置。
  10. モータ制御方法であって、
    回転状態のモータを停止させる場合に、
    前記モータに流れる電流を制御することで前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させ、
    前記モータの回転数が所定回転数以下になった際に前記逆向きのトルクを解除することを特徴とするモータ制御方法。
  11. モータ制御方法であって、
    回転状態のモータを停止させる場合に、
    前記モータに流れる電流を制御することで前記モータの回転方向に対し逆向きのトルクを発生させ、
    前記逆向きのトルクを発生した時から所定時間経過した後に前記逆向きのトルクを解除することを特徴とするモータ制御方法。
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