JP2008249332A - 唾液中の脂質・ラフトおよびaqp5を用いた唾液腺機能検査と全身疾患検査法 - Google Patents
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Abstract
【課題】唾液中成分を測定することにより、簡便な病態の診断方法を提供する。
【解決手段】唾液中に含まれる脂質・ラフトおよびアクアポリン5(AQP5)を測定し、当該両成分の量的構成比および増減について健常者の測定値と比較することによって、老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常或いはアルツハイマー病などの病態を診断でき、少なくともいずれかの値が健常者の変動値に比べ乖離しているときにはリズム病であると診断できる。
脂質・ラフト量はGM1またはプロリチン−1および−2を測定することによって求めることができ、AQP5量はAQP5測定試薬を用いたELSAによって求めることができる。
【選択図】図1
【解決手段】唾液中に含まれる脂質・ラフトおよびアクアポリン5(AQP5)を測定し、当該両成分の量的構成比および増減について健常者の測定値と比較することによって、老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常或いはアルツハイマー病などの病態を診断でき、少なくともいずれかの値が健常者の変動値に比べ乖離しているときにはリズム病であると診断できる。
脂質・ラフト量はGM1またはプロリチン−1および−2を測定することによって求めることができ、AQP5量はAQP5測定試薬を用いたELSAによって求めることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、病態の診断方法に関する。特に、唾液中の脂質・ラフトおよび/またはAQP5の量を測定することからなる、病態の診断方法に関する。また、本発明は、当該唾液中構成成分の測定用キットにも関する。
一般に唾液は、一日1〜1.5リットル分泌されている。その殆どは水分であり、他に消化酵素など他種成分が含有されている。例えば、Na+, K+, Ca++, Mg++の塩化物、炭酸塩、燐酸塩などの無機成分やアミラーゼ、ムチン、リゾチーム、神経成長因子、上皮成長因子、免疫グロブリンなどの有機成分が含まれている。また、その分泌量には日内変動があり、例えばシェーグレン症候群などにより口腔乾燥症が生じ唾液分泌量が大きく抑制される場合がある。
唾液の殆どを占める水分は、水チャンネルによって唾液腺より供給されているが、唾液腺にはAQP1, 3, 5, 8の存在が知られている。
また、耳下腺切片をセビメリン、ピロカルピンやアセチルコリンなどによるM3ムスカリン受容体作動薬やα1アドレナリン受容体作動薬と反応させた後Mg++を用いて管腔膜を調製すると、管腔膜にAQP5の増量が認められる。また、例えば、セビメリンによって細胞質より管腔膜に移動したAQP5は、投与後10分でピークに達し、60分後に元のレベルに戻る、即ち細胞質側に移動することが確認されている。このように、AQP5は自律神経に支配されており、ダイナミックにより唾液腺細胞内で細胞質と膜間を移動している。
また、AQP5は、唾液腺管腔膜上においては主として脂質・ラフト構造上に存在していることが判明している。
また、AQP5は、唾液腺管腔膜上においては主として脂質・ラフト構造上に存在していることが判明している。
ちなみに、脂質・ラフトは、1988年、Kai SimonsとGerrit van Meerがラフト仮説を提唱したもので、トランスゴルジ領域でスフィンゴ糖脂質やコレステロールに富む小胞が形成され、この小胞に種々のタンパク質が組み込まれた後、細胞膜上に輸送され、基底膜側極性の異なる膜を形成するというものである。つまり、膜上に存在する脂質・ラフトは動的に存在しており、エンドサイトーシスやエキソサイトーシスを行いながら、シグナル伝達や免疫応答、物質輸送などの場として多様な機能を発揮している。
正常組織からの分泌液中におけるAQP5の測定を報告した文献はない。
特許文献1は、AQP5に着目し唾液腺或いは涙腺におけるAQP5量或いは、腺分泌液のAQP5量を測定することによって、シェーグレン症候群など、唾液腺や涙腺障害を呈する病態の病状を診断できることを記載する。具体的には、特許文献1は自己免疫性涙腺機能障害を呈し、涙腺細胞が破壊されてAQP5と脂質・ラフトが涙液中に放出されるモデル動物において、AQP5の組織から涙液への離脱を測定している。
特許第3504524号
本発明は、病態の状況を唾液中の生体成分を用いて診断し、必要に応じて対照群と比較することにより患者の病態の状態を把握し、治療の指標の1つとする簡便な診断方法を提供することを目的とする。また、その診断方法を実施するために必要な測定試薬を提供する。
本発明は、唾液中に存在する脂質・ラフトと水チャンネル分子であるAQP5に着目し、当該成分を数値化もしくは可視化することにより、その比較から全体的な患者の病状を簡便に把握する診断方法を提供できることを見出した。また、本発明は、該診断方法を実施する上で必要となる測定用試薬を含む診断キットを提供する。
項1. 唾液中に含まれる脂質・ラフトおよび/またはAQP5を測定することを特徴とする、病態診断方法。
項2. 唾液中に含まれる脂質・ラフトおよびAQP5を測定し、当該両生体成分の量的構成比および増減を比較することを特徴とする項1に記載の病態診断方法。
項3. GM1またはフロチリン-1および-2を測定することにより脂質・ラフト量とする項1または2に記載の方法。
項4. 脂質・ラフトおよび/またはAQP5の測定値を健常者の測定値と比較する項1〜3のいずれかに記載の診断方法。
項5. 病態が老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病である項1乃至3記載の診断方法。
項6. 唾液中の脂質・ラフトおよびAQP5の日内変動値を求め、健常者に比較して、少なくともいずれかの値が健常者の変動値に比べ乖離しているとき、リズム病であると診断する病態診断方法。
項7. GM1またはフロチリン-1および-2を測定することにより脂質・ラフト量とする項6に記載の方法。
項8. 少なくとも脂質ラフトおよび/またはAQP5測定用試薬を含む病態診断用キット。
項9. 脂質ラフト測定試薬がGM1および/またはフロチリン-1および-2測定試薬である項8記載のキット。
項10. AQP5測定用試薬がELISAキットである項8または9に記載の病態診断用キット。
項11. 老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病であるかどうか診断するための項8〜10のいずれかに記載の病態判定キット。
項1. 唾液中に含まれる脂質・ラフトおよび/またはAQP5を測定することを特徴とする、病態診断方法。
項2. 唾液中に含まれる脂質・ラフトおよびAQP5を測定し、当該両生体成分の量的構成比および増減を比較することを特徴とする項1に記載の病態診断方法。
項3. GM1またはフロチリン-1および-2を測定することにより脂質・ラフト量とする項1または2に記載の方法。
項4. 脂質・ラフトおよび/またはAQP5の測定値を健常者の測定値と比較する項1〜3のいずれかに記載の診断方法。
項5. 病態が老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病である項1乃至3記載の診断方法。
項6. 唾液中の脂質・ラフトおよびAQP5の日内変動値を求め、健常者に比較して、少なくともいずれかの値が健常者の変動値に比べ乖離しているとき、リズム病であると診断する病態診断方法。
項7. GM1またはフロチリン-1および-2を測定することにより脂質・ラフト量とする項6に記載の方法。
項8. 少なくとも脂質ラフトおよび/またはAQP5測定用試薬を含む病態診断用キット。
項9. 脂質ラフト測定試薬がGM1および/またはフロチリン-1および-2測定試薬である項8記載のキット。
項10. AQP5測定用試薬がELISAキットである項8または9に記載の病態診断用キット。
項11. 老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病であるかどうか診断するための項8〜10のいずれかに記載の病態判定キット。
本発明により、唾液中のAQP5および脂質・ラフト成分を測定することにより簡便な病態診断方法を提供することができるようになった。さらに、この診断を元に的確な治療方針を提供できる可能性がある。また、本診断を実施する上で、必要な測定キットの提供も可能にした。
唾液中に存在する脂質・ラフトおよび水チャンネル分子であるAQP5に着目し、当該2成分を数値化もしくは可視化することにより、その比較から全体的な患者の病状を簡便に把握する診断方法を提供する。また、該診断方法を実施する上で必要となる測定用試薬を含む診断キットを提供する。
AQP5および脂質・ラフトは、生体のホメオスタシスの上に存在しており、この状態が崩れた状態が病態であるとすれば、何らかの異変が生じている可能性も考えられる。
したがって、より簡便な方法としてAQP5に脂質・ラフト成分を組み合わされた形で病態を診断する方法を提供するものである。
本発明は、唾液中に含まれる生体構成成分即ち脂質・ラフトおよびAQP5を測定することにより、これら唾液中に存在する2成分のパターンを可視化或いは数値化することにより、また必要に応じて健常者と患者を比較することにより、老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症またはリズム病病態の状態を全体的に診断評価することをその内容としている。
従来、AQP5は、自己免疫疾患などの自己組織を破壊する疾患またはそのモデルにおいて、涙液などの分泌液に存在することは知られていたが、自己免疫疾患以外の患者或いは健常者の唾液において脂質・ラフトないしAQP5が測定可能であり、これらの測定値を相互に或いは健常者と比較することにより、病態の診断が可能であることは本発明者により初めて見出された。
老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病などの病態の診断には、AQP5と脂質・ラフトの絶対量、AQP5と脂質・ラフトの比、或いは健常者との比較が重要である。これらの脂質・ラフトの絶対量、AQP5と脂質・ラフトの比と、病態との関係を以下の表1に示す。
老化は、実年齢ではなく臓器年齢、特に唾液腺機能の老性低下の度合いを測定できる。
糖質代謝異常としては、糖尿病が挙げられる。糖尿病の主訴は口渇であり、糖尿病患者の唾液分泌は、健常者の半分にまで低下する。
脂質代謝異常としては、高脂血症などが挙げられる。
体内脂質蓄積症としては、スフィンゴリピドーシス、ガングリオシドーシス、リソソーム病、アルツハイマー病などが挙げられる。
リズム病としては、時計遺伝子のリズム、ホルモン分泌のリズムなどが不規則になることに関連する疾患を意味し、例えば、リウマチ、睡眠障害などが挙げられる。
唾液分泌異常症としては、薬の副作用、シェーングレン症候群をはじめとする自己免疫疾患、癌、X線照射、ストレス、過労、気質などが挙げられる。
糖尿病は、血糖値を測定することにより診断することも可能であるが、血糖値が高くても糖質代謝異常が存在しなければ高血糖のみでは問題はなく、また、血糖値が低くても糖質代謝異常があれば糖尿病としてはより進行している/重症であると診断されることもあり、本発明により糖質代謝の状況を把握することで糖尿病のより正確な診断が可能となる。
シェーグレン症候群、リウマチなどの自己免疫疾患、睡眠障害(リズム病)は診断が難しいが、本発明によれば唾液を調べるだけで容易に診断可能である。
測定対象としては、AQP5および脂質・ラフト成分であるが、脂質・ラフト成分としては構成成分として判明しているものであれば特に制限が無いが、例えばGM1, フロチリン-1および-2を好適なマーカーとして挙げることができる。
測定方法としては、特に制限はなく、AQP5及び脂質・ラフト成分を測定できる方法であればよい。汎用されている生化学的手法特に免疫学的原理を利用した手法を好適な例として挙げることができる。例えば、ELISA,ウエスタンブロッテイング法および、ラジオイムノアッセイ法(RIA)などの測定対象物に対する抗体を利用した手法を好適な例として挙げることができる。 更に、抗体を使用する場合であれば、モノクローナル抗体および、ポリクローナル抗体いずれでもよい。或いは、アプタマーのような核酸由来成分で測定対象物に対して親和性を有する分子として使用することができる。 さらに、唾液中に夾雑物質が混在している場合は目的分子をまず精製するか夾雑物質の影響を無くする程度まで純度を上げた後、測定に供することができる。例えば、精製手法としては、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニテイークロマログラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、各種電気泳動、硫安沈殿、有機溶媒による沈殿法、等電点沈殿法などを状況に従い使用できるが、もちろん一例として挙げたのであり、精製方法としてはこれらの方法に限定されるものではない。
ELISA測定方法は、AQP5測定用ELISAキットの作製の場合、直接法およびサンドイッチ法いずれでも良く、常法に従い測定を行うことができる。また、この場合モノクローナル抗体を用いてもポリクローナル抗体を用いてもいずれでも良い。 例えば、サンドイッチ法の場合であれば、通常96穴プレートに対して、一次抗体(抗AQP5抗体)をプレートに固相化しておき、唾液試料を添加し一定時間抗体と接触させることにより結合させる。その後、適当な緩衝液で洗浄を行った後、標識2次抗体(標識抗AQP5抗体)を反応させる。例えば、標識体がビオチンであればアビジン(或いはストレプトアビジン)標識ペルオキシダーゼを反応させ、適当な反応基質(例えばTBM)を作用させることにより発色させる。一定時間後、所定の波長この場合であれば450 nmで測定することにより、比色定量を行う。
アビジン標識抗体にペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリホスファターゼ、サンホスファターゼ、グルコースオキシダーゼおよびチロシナーゼ標識などが考えられる。基質としては、市販で一般に使用されているものであれば特に制限はない。
ウエスタンブロッテイング法は、電気泳動例えばSDS-PAGE、PAGE、等電点電気泳動或いはろ紙電気泳動などを代表とする電気泳動法を行った後、例えばニトロセルロース膜、PVDF膜など転写可能な膜に転写し、測定対象分子に対する一次抗体で処理後、色素粒子などの標識抗体を結合させた2次抗体を使用し、或いは酵素標識の場合は処理後基質処理を行うことにより可視化させることが可能である。 標識抗体としては、ビオチン標識抗体これに対してアビジン或いはストレプトアビジン、或いは、2次抗体にペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリホスファターゼ、サンホスファターゼ、グルコースオキシダーゼおよびチロシナーゼ標識などが考えられる。基質としては、市販で一般に使用されているものであれば特に制限はない。
測定対象唾液中の脂質・ラフトおよびその構成成分。例えば該成分のマーカーとして通常用いられ知られているGM1或いはフロチリン-1および-2等を挙げることができる。そして、水チャンネルであるAQP5を代表として挙げることができる。 また、好ましいのは、それぞれの組み合わせにより更に詳しく判定することが可能となる。
また、測定に用いる抗体の取得に関しては、常法に従い取得することができる。 例えば、ポリクローナル抗体を作製する場合は、ウサギ、ヒツジ、モルモット、ニワトリのような温血動物に、上記目的抗原を通常、フロイントの完全アジュバントと混和して調製した乳化物を、複数回免疫し、得られる抗血清を常法に従い取得することが可能である。また、ニワトリの場合には、上記免疫抗原を複数回免疫して、該ニワトリが産卵する鶏卵にIgYを産生させ、そして該鶏卵の卵黄より、常法に従いIgYを取得することができる。
また、抗体はモノクローナル抗体として取得することもできる。該モノクローナル抗体は、例えば上記免疫抗原をフロイントの完全アジュバントとともにマウスに複数回免疫し、抗体を産生させるとともに、例えば細胞融合法などの情報に従い、得られる抗体産生細胞と骨髄脾細胞を分離し、該細胞の培養により取得することができる。このようにして得られた抗体は、さらに必要に応じて硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニテイークロマトグラフィー等の情報に従ってさらに精製することが可能である。
診断対象となる疾患
対象可能な診断としては以下の疾患を例示することができるが、これに特に制限されるものではない。
対象可能な診断としては以下の疾患を例示することができるが、これに特に制限されるものではない。
1.唾液腺機能の老性低下の度合いを測定できる。生理現象としての老化現象は、単位分泌量当たりに含有されるAQP5量は老化とともに減少するが、脂質・ラフトの量は減少しない。
2. 糖尿病、シェーングレン症候群などの、口渇感、口腔乾燥感や唾液分泌異常のある疾患診断に使用することができ、結果としてその治療方法の決定の一助とすることができる。例えば糖尿病患者であれば唾液量は減少し、単位分泌量当りに含有されるAQP5量および脂質・ラフト量が減少する。
3.リズム病があるか否かの診断に使用する。唾液の分泌量は日内変動を生じており生体内バイオリズムにより分泌量が変動している。ところが、リズム病に罹患した患者では、この日内変動に変化が生じており、唾液中に存在する脂質・ラフトおよびAQP5に関しても結果的に同様の現象を生じている。したがって、ポイントとなる時間帯における脂質・ラフトおよびAQP5の値を測定することにより、リズム病に罹患している可能性があるのかどうか、また健常者とのそれらの成分値の乖離率により病状の深刻度を推定することができ、簡易な診断を可能とする。これを指標として、より精密な医療の提供を可能とする。リズム病としては、睡眠障害(睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群、睡眠相前進症候群)を代表例として挙げることができる。また、日内変動はこれらリズム病においては特定の疾患により日内変動値は健常者に比べ時間帯により高値になる場合や低値になる場合など様々な局面が想定されるが、たとえば健常者であれば、夜間において脂質・ラフト量が減少することや、AQP5に値においても夜間同様に低値になるため、たとえば昼間と夜間の特定に時間帯の個々のマーカーの成分値を求め比率を取るかまたは、測定値を患者の同時刻の値と比較することにより、病状の程度あるいは、それに基づいた治療方法の指針、方向性を示すことが可能になる。
4.老化アミロイド症や肥満、糖尿病等の体内に脂質を蓄積する病気のヒトの診断に使用することが可能である。例えば、老化アミロイド症ではAQP5およびGM1の量が健常者に比べ低値になる。したがって、その乖離度を求めることにより、或いは時間経過と共に乖離度がどのように変化するか調べることにより、症状が快方に向かっているのか或いは進行しているのか、病状の深刻度などおおよその目安をつけることが可能となる。
5.脂質代謝異常のヒトの診断に使用できる。
6.アルツハイマーの診断にも使用できる可能性がある。
測定キット 先述に説明したAQP5および脂質・ラフト成分の測定を通して病態の診断を行うキットを提供することができる。 即ち、ELISAキットおよびウエスタンブロッテイング法のための各種試薬を含めたキット組成物を提供することができる。特に、キット中にはAQP5および脂質・ラフトマーカーであるGM1あるいはフロチリン-1および-2に対する抗体を含む。
測定キット 先述に説明したAQP5および脂質・ラフト成分の測定を通して病態の診断を行うキットを提供することができる。 即ち、ELISAキットおよびウエスタンブロッテイング法のための各種試薬を含めたキット組成物を提供することができる。特に、キット中にはAQP5および脂質・ラフトマーカーであるGM1あるいはフロチリン-1および-2に対する抗体を含む。
以下本発明の内容を具体的に実験例で示すが、本発明内容は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
AQP5のELISA測定システムの構築
抗原の作製
AQP5遺伝子は既に公知になっており、常法に従ってクローニングを行った。但し、C末端領域(アミノ酸131個)のクローニングをSalivary Gland Quick-clone cDNAを鋳型cDNAとして、PCR法にてクローニングを行った。PCR産物は、QIAEX II Extraction Kitを用いて精製した後、Zero Blunt PCR Cloning Kitを用いて、PCR-Blunt ベクターに挿入した後、大腸菌に対してtransformationを行い、コロニーPCRを行った。目的の遺伝子を含むコロニーを選別しplasmidの精製後、配列確認を行った後、pET32b発現ベクターに挿入しC末端131アミノ酸をTrx融合蛋白質として大腸菌に。即ち、該発現plasmidを大腸菌にtransformationした後、IPTG添加により発現誘導を行い、目的の融合蛋白を菌体内に発現させることに成功した。 なお、発現の有無および度合いはSDS-PAGEにより確認を行った。また、本融合蛋白を免疫原として使用するために、菌体破砕後Inclusion Bodyを回収し、7M塩酸グアニジン可溶化画分Ni-Resinカラムにかけ500 mMイミダゾール/8M 尿素溶出液にて溶出させることにより精製し、これを免疫原とした。
ウサギポリクローナル抗体の作製
上記の手順に従って調製されたhAQP5を約2週間間隔で3回免疫し、部分採血し力価を測定した後、4回目の最終免疫を行い、3週間後全血採血を行った。該ウサギ抗血清は、WB法にても反応性を確認した。また、抗体価チェックは、hAQP5/TrxおよびhAQP5/GSTを用いて行ったが、差異は認められなかった。
ELISA法の確立
上述の手順に従って調製されたウサギ抗血清はProteinAカラムを用いて精製し、第一抗体としてはプレート固相化用抗体として使用し、第2抗体としてはBiotin標識抗体として使用した。また、標準蛋白質として、hAQP5/GST蛋白を使用した。 ELISA操作手順は以下に示す。
操作方法
・ 抗hAQP5抗体を96ウエルプレートに固相化する。(10 ug/mL, 100 uL/well)
・ 0.1%BSA/PBSでブロッキング。
・ 1st Bufferを添加する(100 uL/well)。 1stBuffer: 0.1% BSA/1% Triton X-100/0.1M Tris-HCl(pH 8.0)
・ Standard/Sampleをアプライする。
・ 室温で一夜反応させる。
・ 洗浄を3回行う。
・ 2次抗体と反応させる。(室温、2時間)
・ 洗浄3回行う。
・ HRP
・ HRP標識Streptavidinと反応させる。(室温、2時間)
・ 洗浄5回行う。
・ OD450で測定を行う。
実施例1
AQP5のELISA測定システムの構築
抗原の作製
AQP5遺伝子は既に公知になっており、常法に従ってクローニングを行った。但し、C末端領域(アミノ酸131個)のクローニングをSalivary Gland Quick-clone cDNAを鋳型cDNAとして、PCR法にてクローニングを行った。PCR産物は、QIAEX II Extraction Kitを用いて精製した後、Zero Blunt PCR Cloning Kitを用いて、PCR-Blunt ベクターに挿入した後、大腸菌に対してtransformationを行い、コロニーPCRを行った。目的の遺伝子を含むコロニーを選別しplasmidの精製後、配列確認を行った後、pET32b発現ベクターに挿入しC末端131アミノ酸をTrx融合蛋白質として大腸菌に。即ち、該発現plasmidを大腸菌にtransformationした後、IPTG添加により発現誘導を行い、目的の融合蛋白を菌体内に発現させることに成功した。 なお、発現の有無および度合いはSDS-PAGEにより確認を行った。また、本融合蛋白を免疫原として使用するために、菌体破砕後Inclusion Bodyを回収し、7M塩酸グアニジン可溶化画分Ni-Resinカラムにかけ500 mMイミダゾール/8M 尿素溶出液にて溶出させることにより精製し、これを免疫原とした。
ウサギポリクローナル抗体の作製
上記の手順に従って調製されたhAQP5を約2週間間隔で3回免疫し、部分採血し力価を測定した後、4回目の最終免疫を行い、3週間後全血採血を行った。該ウサギ抗血清は、WB法にても反応性を確認した。また、抗体価チェックは、hAQP5/TrxおよびhAQP5/GSTを用いて行ったが、差異は認められなかった。
ELISA法の確立
上述の手順に従って調製されたウサギ抗血清はProteinAカラムを用いて精製し、第一抗体としてはプレート固相化用抗体として使用し、第2抗体としてはBiotin標識抗体として使用した。また、標準蛋白質として、hAQP5/GST蛋白を使用した。 ELISA操作手順は以下に示す。
操作方法
・ 抗hAQP5抗体を96ウエルプレートに固相化する。(10 ug/mL, 100 uL/well)
・ 0.1%BSA/PBSでブロッキング。
・ 1st Bufferを添加する(100 uL/well)。 1stBuffer: 0.1% BSA/1% Triton X-100/0.1M Tris-HCl(pH 8.0)
・ Standard/Sampleをアプライする。
・ 室温で一夜反応させる。
・ 洗浄を3回行う。
・ 2次抗体と反応させる。(室温、2時間)
・ 洗浄3回行う。
・ HRP
・ HRP標識Streptavidinと反応させる。(室温、2時間)
・ 洗浄5回行う。
・ OD450で測定を行う。
標準曲線は以上の操作手順で行い作成した(図1)。
実施例2
健常者と糖尿病患者の唾液量と唾液中AQP5量の測定
健常者および糖尿病患者(いずれも年齢60歳から75歳で、各4名)の一分間の唾液を採取し、その25マイクロリットルを電気泳動用サンプルバッファーを加え調製後、SDS−PAGEを行った。泳動後、ニトロセルロース膜(Hybond ECL, Amersham Pharmacia Biotech UK) に対してトランスブロットした後、5% Blocking agent (ECL, Amersham Pharmacia Biotech UK)溶液にてブロッキング操作を行い、次いで抗AQP5ポリクローナル抗体および抗GM1抗体にてそれぞれ処理後洗浄し、2次抗体(horseradish peroxidase-conjugated secondary antibodies)で処理後、基質(electrochemiluminascence reagents, Amersham Pharmacia Biotech UK)を加え反応させることによりAQP5の検出を行った。
健常者と糖尿病患者の唾液量と唾液中AQP5量の測定
健常者および糖尿病患者(いずれも年齢60歳から75歳で、各4名)の一分間の唾液を採取し、その25マイクロリットルを電気泳動用サンプルバッファーを加え調製後、SDS−PAGEを行った。泳動後、ニトロセルロース膜(Hybond ECL, Amersham Pharmacia Biotech UK) に対してトランスブロットした後、5% Blocking agent (ECL, Amersham Pharmacia Biotech UK)溶液にてブロッキング操作を行い、次いで抗AQP5ポリクローナル抗体および抗GM1抗体にてそれぞれ処理後洗浄し、2次抗体(horseradish peroxidase-conjugated secondary antibodies)で処理後、基質(electrochemiluminascence reagents, Amersham Pharmacia Biotech UK)を加え反応させることによりAQP5の検出を行った。
また、実施例1において確立したELISA測定方法を行い、健常者および糖尿病患者における唾液中のAQP5濃度を算出した(図2)。
その結果、健常者に比べて、糖尿病患者において唾液量が少なく、またAQP5濃度およびGM1(脂質・ラフト量)においても低値を示すことがウエスタンブロッテイング法においても確認された(表2)。
実施例3
健常者とリズム病患者の唾液中AQP5量とGM1量の日内リズム
健常者およびリズム病患者の唾液中に含まれる、AQP5量およびGM1量の日内変動を測定するために、午前1時、5時、および9時と午後1時、5時および9時に唾液を採取した。その後、実施例1記載の方法に従い測定を行った。 その結果、AQP5量およびGM1量共に健常者では昼夜に比べて夜間(午前1時および5時)においては、低値になるが、リズム病患者においては有意な日内変動はAQP5およびGM1においていずれも観察されなかった(図3)。
健常者とリズム病患者の唾液中AQP5量とGM1量の日内リズム
健常者およびリズム病患者の唾液中に含まれる、AQP5量およびGM1量の日内変動を測定するために、午前1時、5時、および9時と午後1時、5時および9時に唾液を採取した。その後、実施例1記載の方法に従い測定を行った。 その結果、AQP5量およびGM1量共に健常者では昼夜に比べて夜間(午前1時および5時)においては、低値になるが、リズム病患者においては有意な日内変動はAQP5およびGM1においていずれも観察されなかった(図3)。
Claims (11)
- 唾液中に含まれる脂質・ラフトおよび/またはAQP5を測定することを特徴とする、病態診断方法。
- 唾液中に含まれる脂質・ラフトおよびAQP5を測定し、当該両生体成分の量的構成比および増減を比較することを特徴とする請求項1に記載の病態診断方法。
- GM1またはフロチリン-1および-2を測定することにより脂質・ラフト量とする請求項1または2に記載の方法。
- 脂質・ラフトおよび/またはAQP5の測定値を健常者の測定値と比較する請求項1〜3のいずれかに記載の診断方法。
- 病態が老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病である請求項1乃至3記載の診断方法。
- 唾液中の脂質・ラフトおよびAQP5の日内変動値を求め、健常者に比較して、少なくともいずれかの値が健常者の変動値に比べ乖離しているとき、リズム病であると診断する病態診断方法。
- GM1またはフロチリン-1および-2を測定することにより脂質・ラフト量とする請求項6に記載の方法。
- 少なくとも脂質ラフトおよび/またはAQP5測定用試薬を含む病態診断用キット。
- 脂質ラフト測定試薬がGM1および/またはフロチリン-1および-2測定試薬である請求項8記載のキット。
- AQP5測定用試薬がELISAキットである請求項8または9に記載の病態診断用キット。
- 老化、糖質代謝異常、脂質代謝異常、体内脂質蓄積症、リズム病、唾液分泌異常症或いはアルツハイマー病であるかどうか診断するための請求項8〜10のいずれかに記載の病態判定キット。
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