JP3706913B2 - 精神分裂病の診断薬キット - Google Patents
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Description
発明の背景
1.本発明の分野
本発明は、精神分裂病の診断薬キットに関する。細胞には抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor:EGF)抗体を用いることを特徴とする精神分裂病の診断薬キットに関する。
2.背景技術
精神分裂病は青年期から壮年期にかけて知覚・思考・感情・行動面に特徴的な症状で発病し、多くは慢性に経過し、社会適応にさまざまな困難を生じる精神障害である。精神症状について陽性症状(幻覚、妄想、減弱思考、緊張症状、奇異な行動など)と、陰性症状(感情の平板化、意欲低下、社会的引きこもりなど)の分類がある。このように、現在の精神分裂病の診断学は、患者の心理症候学でのみ規定され、診断医師の主観にかなり影響されているため、しばしばその診断の客観性には問題が提起されていた。社会的には、本疾患の病態の特殊性から早期発見、治療、社会復帰活動、再発予防といった一貫した包括的治療体系の確立が望まれている。精神分裂病の治療には薬物療法(多くは年余にわたる長期投与)が不可欠であり、フェノチアジン系化合物、チオキサンチン系化合物、ブチロフェノン系化合物、ベンザアミド系化合物、セレトニン・ドパミン・アンタゴニストが患者に投与されている。
精神分裂病に遺伝的に規定されるような生化学的変化があるとすれば、どのようにしてそれを証明できるのであろうか。それが先天性アミノ酸代謝や、糖代謝の異常のように、全身に存在する酵素の異常の場合は、血液や尿を用いて比較的容易に発見できる。血液中のアミノ酸やその代謝物のレベルからどの酵素に異常があるかがわかるし、その酵素異常を血球や皮膚の培養組織を用いたり、剖検材料を用いて証明できることが多い。精神分裂病患者の体液の研究は数えきれないはど多いが、いまだに何らの異常も見出されていない。ときおり分裂病患者の血中あるいは尿中に、ある物質が特異的に発見されたという報告はみられたが、追試が重ねられるに従ってすべて否定された。
一方、上皮細胞成長因子は従来より、ガンや良性腫瘍の成長に関与する悪性因子として研究がなされてきた。しかし、精神疾患である精神分裂病における上皮細胞成長因子の役割等については知られていない。本発明は、血清中の上皮細胞成長因子濃度と精神分裂病の関係を初めて明らかにしたものである。
発明の概要
精神分裂病は全人口の0.7−1.0%に発症がみられ、精神障害の約40%を占める重要な疾患である。それにも関わらず精神分裂病における生化学的診断法は知られていないために、医療現場から精神分裂病と関連した生化学的変化を検出するような診断薬キットの開発が望まれており、その様な精神分裂病の診断薬キットを提供する事が本発明の課題である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、慢性精神分裂病患者と急性精神分裂病患者において、その血清中の上皮細胞成長因子のレベルが健常人のそれに比して有意に低下していること、及び慢性精神分裂病患者の死後剖検脳で上皮細胞成長因子の含量が有意に低下していることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明を詳しく説明するが、これら好適形態の詳細な説明及び実施例は本発明の有効範囲を限定または制限することを何ら意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
図1は、コントロールボランティア群と慢性精神分裂病群のヒトにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量を比較したグラフである。
図2は、コントロール群とハロペリドール投与群のラットにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量を比較したグラフである。
図3は、コントロールボランティア群と慢性精神分裂病群のヒトにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量の分布を、対数で比較したグラフである。
図4は、コントロールボランティア群と未投薬の慢性精神分裂病群のヒトにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量を比較したグラフである。
好適形態の詳細な説明
本発明はヒトの血液から血清を調製し、血清中のEGF量を種々の方法により定量する、精神分裂病の診断薬キットである。本発明の方法において、望ましくはEGF特異性の高い、サンドイッチELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定法)によってEGFを検出する。精神分裂病患者の血清中EGF濃度は健常人に比べ、有意に低下していることを利用し、精神分裂病を診断する。
詳しくは本発明は、固相、固相に抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体及び標識化抗上皮細胞成長因子抗体を備えることを特徴とする、精神分裂病の診断薬キットである。本発明において、抗上皮細胞成長因子抗体は酵素標識、蛍光標識または放射標識等により標識される。ここで酵素標識は、パーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素等の酵素による標識である。本発明の診断薬キットは必要に応じて、前記標識化抗上皮細胞成長因子抗体の標識を検出するための検出試薬もまた備える。
更に本発明は、固相、固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体、ビオチン修飾した抗上皮細胞成長因子抗体およびビオチンと反応する標識化アビジンを備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キットである。更に本発明は、固相、固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体、2,4−ジニトロフェノール修飾した抗上皮細胞成長因子抗体および2,4−ジニトロフェノールと反応する標識化抗2,4−ジニトロフェノール抗体を備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キットである。本発明の診断薬キットは必要に応じて、前記標識化アビジンまたは前記標識化2,4−ジニトロフェノール抗体の標識を検出するための検出試薬もまた備える。上記のように、本発明の精神分裂病の測定キットは、抗上皮細胞成長因子抗体を用いて、患者の血清中の上皮細胞成長因子の濃度を測定する事を特徴としている。本発明の精神分裂病の測定キットは、急性精神分裂病又は慢性精神分裂病の診断を行うのに有効である。
以下、本明細書における用語の意味あるいは定義について述べる。
「抗上皮細胞成長因子抗体」とは、上皮細胞成長因子(英語名;Epidermal Growth Factor)(以下EGFと略す。)を抗原として用いて調製された抗体をいう。該抗体は、上皮細胞成長因子に結合する能力を有していればよく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む。また好ましいものとしては、特異的に上皮細胞成長因子に結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。
「標識化抗上皮細胞成長因子抗体」とは、抗上皮細胞成長因子抗体をパーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素等の酵素で標識し、デルフィニウム等の蛍光で標識し、又は放射性同位元素で標識することにより、抗上皮細胞成長因子抗体を定量化できるように工夫した抗体をいう。酵素により標識を行った場合には、当該酵素を適切な基質と反応させることにより、酵素反応生成物をマーカーとして、結合した抗上皮細胞成長因子抗体検出することができる。また、蛍光標識や放射性同位元素による標識の場合には、蛍光や放射活性をマーカーとして、結合した抗上皮細胞成長因子抗体検出することができる。
更に「標識化抗上皮細胞成長因子抗体」には、ビオチン、2,4−ジニトロフェノール等で標識した抗上皮細胞成長因子抗体も含まれる。ビオチンはアビジンと、2,4−ジニトロフェノールは抗2,4−ジニトロフェノール抗体と特異的に結合する。よって、上記の標識化抗上皮細胞成長因子抗体を、パーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素等の酵素で標識化したアビジンや抗2,4−ジニトロフェノール抗体を用いて、定量することができる。
「精神分裂病」とは、「主として青年期に発病する内因性精神病で、思考、知覚、自我意識、感情、欲動など幅広い領域において特徴的障害を呈しながら、多くは慢性の経過をたどって次第に人格が崩れ、その一部は精神荒廃に至る重篤な疾患」である。
具体的な血清中のEGF量を測定する方法としては、例えば、
(1)ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバー、Sepharose等の固相に抗EGF抗体を固定する工程;
(2)診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
(3)固相を洗浄する工程;
(4)標識化された抗EGF抗体を加える、または接触させる工程;
(5)該標識を用いて、EGF量を測定する工程
からなる方法等が挙げられる。
更に具体的な血清中のEGF量を測定する方法としては、例えば、
(1)ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバー、Sepharose等の固相に抗EGF抗体を固定する工程;
(2)診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
(3)固相を洗浄する工程;
(4)ビオチンで修飾した抗上皮細胞成長因子抗体を加える、または接触させる工程;
(5)標識化アビジンを加える、または接触させる工程;
(6)該標識を用いて、EGF量を測定する工程;
からなる方法等が挙げられる。
更に具体的な血清中のEGF量を測定する方法としては、例えば、
(1)ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバー、Sepharose等の固相に抗EGF抗体を固定する工程;
(2)診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
(3)固相を洗浄する工程;
(4)2,4−ジニトロフェノールで修飾した抗上皮細胞成長因子抗体を加える、または接触させる工程;
(5)標識化抗2,4−ジニトロフェノール抗体を加える、または接触させる工程;
(6)該標識を用いて、EGF量を測定する工程;
からなる方法等が挙げられる。
固相の形状としては小球、ウエル、試験管等が挙げられる。
抗原または、ELISAのスタンダードとして用いられる上皮細胞成長因子は市販されているか、または以下の方法で製造することができる。
遺伝子工学的手法を用いる場合、上皮細胞成長因子をコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適切な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の細胞、もしくは培養上清から目的とする組み換えEGFを得ることができ(例えば、Biotechnol Appl Biochem 2000 Jun;31(Pt 3):245-248)、均質かつ大量のEGFの生産に好適である。上記宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、植物又は動物細胞を用いることができる。
抗上皮細胞成長因子(EGF)抗体は、EGFかその部分ペプチドを抗原として、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウなどに免疫することにより、調製される。シチメンチョウの例では、精製されたEGF(200μg)を完全フロイントアジュバントと混合し、皮下投与する。1月に1度、免疫を繰り返し、適切な力価になった時点で動物より血清を取得する。
標識化抗上皮細胞成長因子抗体は、抗EGF抗体をビオチン化試薬(NHS-LC-Biotin,Pirece社)や、例えば架橋剤付きペルオキシダーゼ(Maleimide activated HRP、Pirce社)の市販されているキットを用いて反応させ、調製することができる。
そして、本発明の測定キットを用いて、精神分裂病を診断する事ができる。即ち、ヒトの血液から血清を調製し、血清中のEGF量を種々の方法により定量する事により、正常コントロールのEGF量の範疇であるかどうかを判定することで、精神分裂病を診断する事が可能である。下記の実施例において示す様に、精神分裂病のヒトにおける血清中のEGF量はコントロール群と比較して有意に低下していた。よって、ヒトより血液を採取して血清中のEGF量を測定し、血清中のEGF量の平均値が、同様に測定した正常コントロール群のEGF量の1/2以下である場合に精神分裂病であると診断する過程、もしくは精神分裂病群のEGF量の平均値の2倍以上である場合に精神分裂病でないと診断する過程、よりなる精神分裂病の診断方法は、本発明の範囲内である。下記の実施例より、精神分裂病のヒトにおける血清中のEGF量は、好ましくは200pg/ml以下である。より詳しくは、ヒトより血液を採取し、抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を固定した反応容器及び標識化抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を備えることを特徴とする、本発明の診断薬キットを用いて血清中のEGF量を測定し、血清中のEGF量が同様に測定した正常コントロール群のEGF量の平均値の1/2以下である場合に精神分裂病であると診断する過程、もしくは精神分裂病群のEGF量の平均値の2倍以上である場合に精神分裂病でないと診断する過程、よりなる精神分裂病の診断方法は、本発明の範囲内である。
本発明の測定キットを用いて、ヒトのみならず、精神分裂病のモデル動物においても血清中のEGF量を測定することができる。ヒトのみならず、動物において本発明のキットを用いて血清中のEGF量を測定することにより、精神分裂病を診断する方法もまた、本発明の範囲内である。そして、その様なモデル動物を用いて、精神分裂病の治療薬の開発や薬効評価を行う事が可能となる。即ち、本発明の測定キットはインビボにおける抗精神分裂病薬の評価を可能とするために、精神分裂病の治療薬の開発や薬効評価を行うための強力なツールとなる。
実施例
以下、本発明を実施例にて説明する。ヒトより血液を本人もしくは患者家族の同意のもと、採取後、通常の方法で血清をプロテアーゼ阻害剤の入った燐酸緩衝液で適宜希釈する。このサンプルを抗EGF抗体でコーティング(100ng/well)された96穴(ウェル)プレートに添加する。定量用のスタンダードとして、EGFを1-300pg/ウェルを添加したものを用いる。室温で終夜放置後、サンプルを抜き取りウェルを同上緩衝液で洗浄する。ビオチン化抗EGF抗体(30ng/ml)を添加し、室温で終夜放置する。この二次抗体を除去し、ウェルを洗浄後、上記緩衝液で適当に希釈されたストレプトアビジン−ガラクトシダーゼ(通常数100倍−数万倍)を添加し、室温で数時間放置する。この三次抗体を除去し、ウェルを洗浄後、ガラクトシダーゼの発色基質(200μM 4-メチルウンベリフェリル-(-D-ガラクトシド/50mMリン酸ナトリウムpH7.3,10mM MgCl2等)を添加し、適切な標準曲線が引けそうな時間まで、発色させる。本発色基質のような蛍光基質の場合、蛍光プレートリーダーで364nmの励起光で448nmの蛍光強度を測定する。ひとつのサンプルにつき複数のウェルを使用し、検量線からサンプルのEGF濃度を算出する。
性別と年齢平均を合致させた慢性精神分裂病群(45名)とコントロールボランティア群(45名)において、ヒト新鮮血清中EGFレベルをtwo site ELISA法にて測定したした。EGFレベルは、慢性精神分裂病群で平均値が136pg/ml,S.D.が111であり、コントロールボランティア群で平均値が392pg/ml,S.D.が343であった。この2群間で、血清EGFレベルを比較したところ、慢性精神分裂病群で有意に低下していた(p<0.001)(図1)。図1において、左にコントロール群の血清EGFレベルを、右に精神分裂病群の血清EGFレベルを、それぞれ示す。薬物による血清EGFレベルへの影響をみるため、ハロペリドール(0.5mg/kg)を2週間投与したラットを作成した。そしてこのラットの血液とコントロールのラットの血液を採取し、ヒト血清と同様にtwo site ELISA法にて血清中EGFレベルを測定した。2群問で比較したところ有意な差を認めなかった(p>0.05)(図2)。図2において、左にコントロール群の血清EGFレベルを、右にハロペリドール投与群の血清EGFレベルを、それぞれ示す。図2の結果より、慢性精神分裂病群で見られたEGFレベルの低下は、慢性的な薬物の影響を反映しているものではないと推定される。
統計検定:これら3群のEGF値の分布は、いずれも正規性がなく、このままでは個別EGF値の異常性を検定できない。これらEGF値の対数(log値)は、別表の通り正規分布に従う。これを図表化したものが図3である。コントロール値のEGF値の平均値は対数で2.43、標準偏差は0.41となる。この分布から想定される異常値、下限5%以下のレベルは、2.43-(0.41×1.9)=1.64(44pg/ml)となり、慢性分裂病患者45名中5名が「正常値の範囲内にない」と判定される。また、分裂病患者群のEGF値の平均値は対数で2.01、標準偏差は0.275となる。この分布から想定される上側異常値、上限5%以上のレベルは2.01+(0.275×1.9)=2.53(339pg/ml)となり、コントロール45名中の21名が「病的な値の範囲内にない」と判定される。なお、残りの人々は擬陽性となり判定不能である。
図1は服薬している患者における結果であるが、服薬がEGFレベルに及ぼす影響を検討するために、コントロールボランティア群と未投薬の慢性精神分裂病患者群(未投薬患者群)において、血清EGFレベルの測定を行った。図4に、14名のコントロールボランティア(○)と未投薬患者(▲)において、前記と同様の方法によりEGFレベルを測定した結果を示す。図4の縦軸は、コントロールボランティア群における血清EGFレベルの平均値を100とした場合の、コントロールボランティア群と未投薬患者群の各個体における血清EGFレベルを表す。これら2群間において血清EGFレベルを比較したところ、未投薬の慢性精神分裂病群においても血清EGFレベルが有意に低下しており(p<0.001)、図1と同様の結果が得られた。よって慢性精神分裂病群における血清EGFレベルの低下は、服薬によるものではないことが確認された。
本発明により、抗上皮細胞成長因子抗体を用いて血清中の上皮細胞成長因子量を測定することを特徴とする、精神分裂病の診断薬キットが提供された。
1.本発明の分野
本発明は、精神分裂病の診断薬キットに関する。細胞には抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor:EGF)抗体を用いることを特徴とする精神分裂病の診断薬キットに関する。
2.背景技術
精神分裂病は青年期から壮年期にかけて知覚・思考・感情・行動面に特徴的な症状で発病し、多くは慢性に経過し、社会適応にさまざまな困難を生じる精神障害である。精神症状について陽性症状(幻覚、妄想、減弱思考、緊張症状、奇異な行動など)と、陰性症状(感情の平板化、意欲低下、社会的引きこもりなど)の分類がある。このように、現在の精神分裂病の診断学は、患者の心理症候学でのみ規定され、診断医師の主観にかなり影響されているため、しばしばその診断の客観性には問題が提起されていた。社会的には、本疾患の病態の特殊性から早期発見、治療、社会復帰活動、再発予防といった一貫した包括的治療体系の確立が望まれている。精神分裂病の治療には薬物療法(多くは年余にわたる長期投与)が不可欠であり、フェノチアジン系化合物、チオキサンチン系化合物、ブチロフェノン系化合物、ベンザアミド系化合物、セレトニン・ドパミン・アンタゴニストが患者に投与されている。
精神分裂病に遺伝的に規定されるような生化学的変化があるとすれば、どのようにしてそれを証明できるのであろうか。それが先天性アミノ酸代謝や、糖代謝の異常のように、全身に存在する酵素の異常の場合は、血液や尿を用いて比較的容易に発見できる。血液中のアミノ酸やその代謝物のレベルからどの酵素に異常があるかがわかるし、その酵素異常を血球や皮膚の培養組織を用いたり、剖検材料を用いて証明できることが多い。精神分裂病患者の体液の研究は数えきれないはど多いが、いまだに何らの異常も見出されていない。ときおり分裂病患者の血中あるいは尿中に、ある物質が特異的に発見されたという報告はみられたが、追試が重ねられるに従ってすべて否定された。
一方、上皮細胞成長因子は従来より、ガンや良性腫瘍の成長に関与する悪性因子として研究がなされてきた。しかし、精神疾患である精神分裂病における上皮細胞成長因子の役割等については知られていない。本発明は、血清中の上皮細胞成長因子濃度と精神分裂病の関係を初めて明らかにしたものである。
発明の概要
精神分裂病は全人口の0.7−1.0%に発症がみられ、精神障害の約40%を占める重要な疾患である。それにも関わらず精神分裂病における生化学的診断法は知られていないために、医療現場から精神分裂病と関連した生化学的変化を検出するような診断薬キットの開発が望まれており、その様な精神分裂病の診断薬キットを提供する事が本発明の課題である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、慢性精神分裂病患者と急性精神分裂病患者において、その血清中の上皮細胞成長因子のレベルが健常人のそれに比して有意に低下していること、及び慢性精神分裂病患者の死後剖検脳で上皮細胞成長因子の含量が有意に低下していることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明を詳しく説明するが、これら好適形態の詳細な説明及び実施例は本発明の有効範囲を限定または制限することを何ら意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
図1は、コントロールボランティア群と慢性精神分裂病群のヒトにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量を比較したグラフである。
図2は、コントロール群とハロペリドール投与群のラットにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量を比較したグラフである。
図3は、コントロールボランティア群と慢性精神分裂病群のヒトにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量の分布を、対数で比較したグラフである。
図4は、コントロールボランティア群と未投薬の慢性精神分裂病群のヒトにおいて、血清中の上皮細胞成長因子量を比較したグラフである。
好適形態の詳細な説明
本発明はヒトの血液から血清を調製し、血清中のEGF量を種々の方法により定量する、精神分裂病の診断薬キットである。本発明の方法において、望ましくはEGF特異性の高い、サンドイッチELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定法)によってEGFを検出する。精神分裂病患者の血清中EGF濃度は健常人に比べ、有意に低下していることを利用し、精神分裂病を診断する。
詳しくは本発明は、固相、固相に抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体及び標識化抗上皮細胞成長因子抗体を備えることを特徴とする、精神分裂病の診断薬キットである。本発明において、抗上皮細胞成長因子抗体は酵素標識、蛍光標識または放射標識等により標識される。ここで酵素標識は、パーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素等の酵素による標識である。本発明の診断薬キットは必要に応じて、前記標識化抗上皮細胞成長因子抗体の標識を検出するための検出試薬もまた備える。
更に本発明は、固相、固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体、ビオチン修飾した抗上皮細胞成長因子抗体およびビオチンと反応する標識化アビジンを備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キットである。更に本発明は、固相、固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体、2,4−ジニトロフェノール修飾した抗上皮細胞成長因子抗体および2,4−ジニトロフェノールと反応する標識化抗2,4−ジニトロフェノール抗体を備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キットである。本発明の診断薬キットは必要に応じて、前記標識化アビジンまたは前記標識化2,4−ジニトロフェノール抗体の標識を検出するための検出試薬もまた備える。上記のように、本発明の精神分裂病の測定キットは、抗上皮細胞成長因子抗体を用いて、患者の血清中の上皮細胞成長因子の濃度を測定する事を特徴としている。本発明の精神分裂病の測定キットは、急性精神分裂病又は慢性精神分裂病の診断を行うのに有効である。
以下、本明細書における用語の意味あるいは定義について述べる。
「抗上皮細胞成長因子抗体」とは、上皮細胞成長因子(英語名;Epidermal Growth Factor)(以下EGFと略す。)を抗原として用いて調製された抗体をいう。該抗体は、上皮細胞成長因子に結合する能力を有していればよく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む。また好ましいものとしては、特異的に上皮細胞成長因子に結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。
「標識化抗上皮細胞成長因子抗体」とは、抗上皮細胞成長因子抗体をパーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素等の酵素で標識し、デルフィニウム等の蛍光で標識し、又は放射性同位元素で標識することにより、抗上皮細胞成長因子抗体を定量化できるように工夫した抗体をいう。酵素により標識を行った場合には、当該酵素を適切な基質と反応させることにより、酵素反応生成物をマーカーとして、結合した抗上皮細胞成長因子抗体検出することができる。また、蛍光標識や放射性同位元素による標識の場合には、蛍光や放射活性をマーカーとして、結合した抗上皮細胞成長因子抗体検出することができる。
更に「標識化抗上皮細胞成長因子抗体」には、ビオチン、2,4−ジニトロフェノール等で標識した抗上皮細胞成長因子抗体も含まれる。ビオチンはアビジンと、2,4−ジニトロフェノールは抗2,4−ジニトロフェノール抗体と特異的に結合する。よって、上記の標識化抗上皮細胞成長因子抗体を、パーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素等の酵素で標識化したアビジンや抗2,4−ジニトロフェノール抗体を用いて、定量することができる。
「精神分裂病」とは、「主として青年期に発病する内因性精神病で、思考、知覚、自我意識、感情、欲動など幅広い領域において特徴的障害を呈しながら、多くは慢性の経過をたどって次第に人格が崩れ、その一部は精神荒廃に至る重篤な疾患」である。
具体的な血清中のEGF量を測定する方法としては、例えば、
(1)ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバー、Sepharose等の固相に抗EGF抗体を固定する工程;
(2)診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
(3)固相を洗浄する工程;
(4)標識化された抗EGF抗体を加える、または接触させる工程;
(5)該標識を用いて、EGF量を測定する工程
からなる方法等が挙げられる。
更に具体的な血清中のEGF量を測定する方法としては、例えば、
(1)ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバー、Sepharose等の固相に抗EGF抗体を固定する工程;
(2)診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
(3)固相を洗浄する工程;
(4)ビオチンで修飾した抗上皮細胞成長因子抗体を加える、または接触させる工程;
(5)標識化アビジンを加える、または接触させる工程;
(6)該標識を用いて、EGF量を測定する工程;
からなる方法等が挙げられる。
更に具体的な血清中のEGF量を測定する方法としては、例えば、
(1)ポリスチレン、ナイロン、ガラス、シリコンラバー、Sepharose等の固相に抗EGF抗体を固定する工程;
(2)診断する患者の血清を固相に加える、または接触させる工程;
(3)固相を洗浄する工程;
(4)2,4−ジニトロフェノールで修飾した抗上皮細胞成長因子抗体を加える、または接触させる工程;
(5)標識化抗2,4−ジニトロフェノール抗体を加える、または接触させる工程;
(6)該標識を用いて、EGF量を測定する工程;
からなる方法等が挙げられる。
固相の形状としては小球、ウエル、試験管等が挙げられる。
抗原または、ELISAのスタンダードとして用いられる上皮細胞成長因子は市販されているか、または以下の方法で製造することができる。
遺伝子工学的手法を用いる場合、上皮細胞成長因子をコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適切な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の細胞、もしくは培養上清から目的とする組み換えEGFを得ることができ(例えば、Biotechnol Appl Biochem 2000 Jun;31(Pt 3):245-248)、均質かつ大量のEGFの生産に好適である。上記宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、植物又は動物細胞を用いることができる。
抗上皮細胞成長因子(EGF)抗体は、EGFかその部分ペプチドを抗原として、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウなどに免疫することにより、調製される。シチメンチョウの例では、精製されたEGF(200μg)を完全フロイントアジュバントと混合し、皮下投与する。1月に1度、免疫を繰り返し、適切な力価になった時点で動物より血清を取得する。
標識化抗上皮細胞成長因子抗体は、抗EGF抗体をビオチン化試薬(NHS-LC-Biotin,Pirece社)や、例えば架橋剤付きペルオキシダーゼ(Maleimide activated HRP、Pirce社)の市販されているキットを用いて反応させ、調製することができる。
そして、本発明の測定キットを用いて、精神分裂病を診断する事ができる。即ち、ヒトの血液から血清を調製し、血清中のEGF量を種々の方法により定量する事により、正常コントロールのEGF量の範疇であるかどうかを判定することで、精神分裂病を診断する事が可能である。下記の実施例において示す様に、精神分裂病のヒトにおける血清中のEGF量はコントロール群と比較して有意に低下していた。よって、ヒトより血液を採取して血清中のEGF量を測定し、血清中のEGF量の平均値が、同様に測定した正常コントロール群のEGF量の1/2以下である場合に精神分裂病であると診断する過程、もしくは精神分裂病群のEGF量の平均値の2倍以上である場合に精神分裂病でないと診断する過程、よりなる精神分裂病の診断方法は、本発明の範囲内である。下記の実施例より、精神分裂病のヒトにおける血清中のEGF量は、好ましくは200pg/ml以下である。より詳しくは、ヒトより血液を採取し、抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を固定した反応容器及び標識化抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を備えることを特徴とする、本発明の診断薬キットを用いて血清中のEGF量を測定し、血清中のEGF量が同様に測定した正常コントロール群のEGF量の平均値の1/2以下である場合に精神分裂病であると診断する過程、もしくは精神分裂病群のEGF量の平均値の2倍以上である場合に精神分裂病でないと診断する過程、よりなる精神分裂病の診断方法は、本発明の範囲内である。
本発明の測定キットを用いて、ヒトのみならず、精神分裂病のモデル動物においても血清中のEGF量を測定することができる。ヒトのみならず、動物において本発明のキットを用いて血清中のEGF量を測定することにより、精神分裂病を診断する方法もまた、本発明の範囲内である。そして、その様なモデル動物を用いて、精神分裂病の治療薬の開発や薬効評価を行う事が可能となる。即ち、本発明の測定キットはインビボにおける抗精神分裂病薬の評価を可能とするために、精神分裂病の治療薬の開発や薬効評価を行うための強力なツールとなる。
実施例
以下、本発明を実施例にて説明する。ヒトより血液を本人もしくは患者家族の同意のもと、採取後、通常の方法で血清をプロテアーゼ阻害剤の入った燐酸緩衝液で適宜希釈する。このサンプルを抗EGF抗体でコーティング(100ng/well)された96穴(ウェル)プレートに添加する。定量用のスタンダードとして、EGFを1-300pg/ウェルを添加したものを用いる。室温で終夜放置後、サンプルを抜き取りウェルを同上緩衝液で洗浄する。ビオチン化抗EGF抗体(30ng/ml)を添加し、室温で終夜放置する。この二次抗体を除去し、ウェルを洗浄後、上記緩衝液で適当に希釈されたストレプトアビジン−ガラクトシダーゼ(通常数100倍−数万倍)を添加し、室温で数時間放置する。この三次抗体を除去し、ウェルを洗浄後、ガラクトシダーゼの発色基質(200μM 4-メチルウンベリフェリル-(-D-ガラクトシド/50mMリン酸ナトリウムpH7.3,10mM MgCl2等)を添加し、適切な標準曲線が引けそうな時間まで、発色させる。本発色基質のような蛍光基質の場合、蛍光プレートリーダーで364nmの励起光で448nmの蛍光強度を測定する。ひとつのサンプルにつき複数のウェルを使用し、検量線からサンプルのEGF濃度を算出する。
性別と年齢平均を合致させた慢性精神分裂病群(45名)とコントロールボランティア群(45名)において、ヒト新鮮血清中EGFレベルをtwo site ELISA法にて測定したした。EGFレベルは、慢性精神分裂病群で平均値が136pg/ml,S.D.が111であり、コントロールボランティア群で平均値が392pg/ml,S.D.が343であった。この2群間で、血清EGFレベルを比較したところ、慢性精神分裂病群で有意に低下していた(p<0.001)(図1)。図1において、左にコントロール群の血清EGFレベルを、右に精神分裂病群の血清EGFレベルを、それぞれ示す。薬物による血清EGFレベルへの影響をみるため、ハロペリドール(0.5mg/kg)を2週間投与したラットを作成した。そしてこのラットの血液とコントロールのラットの血液を採取し、ヒト血清と同様にtwo site ELISA法にて血清中EGFレベルを測定した。2群問で比較したところ有意な差を認めなかった(p>0.05)(図2)。図2において、左にコントロール群の血清EGFレベルを、右にハロペリドール投与群の血清EGFレベルを、それぞれ示す。図2の結果より、慢性精神分裂病群で見られたEGFレベルの低下は、慢性的な薬物の影響を反映しているものではないと推定される。
統計検定:これら3群のEGF値の分布は、いずれも正規性がなく、このままでは個別EGF値の異常性を検定できない。これらEGF値の対数(log値)は、別表の通り正規分布に従う。これを図表化したものが図3である。コントロール値のEGF値の平均値は対数で2.43、標準偏差は0.41となる。この分布から想定される異常値、下限5%以下のレベルは、2.43-(0.41×1.9)=1.64(44pg/ml)となり、慢性分裂病患者45名中5名が「正常値の範囲内にない」と判定される。また、分裂病患者群のEGF値の平均値は対数で2.01、標準偏差は0.275となる。この分布から想定される上側異常値、上限5%以上のレベルは2.01+(0.275×1.9)=2.53(339pg/ml)となり、コントロール45名中の21名が「病的な値の範囲内にない」と判定される。なお、残りの人々は擬陽性となり判定不能である。
図1は服薬している患者における結果であるが、服薬がEGFレベルに及ぼす影響を検討するために、コントロールボランティア群と未投薬の慢性精神分裂病患者群(未投薬患者群)において、血清EGFレベルの測定を行った。図4に、14名のコントロールボランティア(○)と未投薬患者(▲)において、前記と同様の方法によりEGFレベルを測定した結果を示す。図4の縦軸は、コントロールボランティア群における血清EGFレベルの平均値を100とした場合の、コントロールボランティア群と未投薬患者群の各個体における血清EGFレベルを表す。これら2群間において血清EGFレベルを比較したところ、未投薬の慢性精神分裂病群においても血清EGFレベルが有意に低下しており(p<0.001)、図1と同様の結果が得られた。よって慢性精神分裂病群における血清EGFレベルの低下は、服薬によるものではないことが確認された。
本発明により、抗上皮細胞成長因子抗体を用いて血清中の上皮細胞成長因子量を測定することを特徴とする、精神分裂病の診断薬キットが提供された。
Claims (11)
- 固相、前記固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体及び標識化抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キット。
- 前記標識が、酵素標識、蛍光標識または放射標識である、請求項1記載の精神分裂病の診断薬キット。
- 前記酵素標識が、パーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素から成る群より選択された酵素による標識である、請求項2記載の精神分裂病の診断薬キット。
- 固相、前記固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体、ビオチン修飾した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体および前記ビオチンと反応する標識化アビジンを備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キット。
- 固相、前記固相に固定化した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体、2,4−ジニトロフェノール修飾した抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体および前記2,4−ジニトロフェノールと反応する標識化抗2,4−ジニトロフェノール抗体を備える事を特徴とする、精神分裂病の診断薬キット。
- 抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を用いて、血清中の上皮成長因子の濃度を測定することを特徴とする、請求項1ないし5記載の精神分裂病の診断薬キット。
- 前記精神分裂病が、急性精神分裂病又は慢性精神分裂病である、請求項1ないし6記載の精神分裂病の診断薬キット。
- 被験者が精神分裂病に罹患しているか否かを診断するための精神分裂病の診断方法であって、
(1)前記被験者および正常コントロール群より血液を採取して各個体の前記血液より各個体の血清を得る過程、
(2)抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を用いて各個体の前記血清中の上皮細胞成長因子の濃度を測定する過程、および;
(3)前記被験者における上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)の濃度が、前記正常コントロール群における上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)の濃度の平均値の1/2以下である場合に、前記被験者が精神分裂病であると診断する過程よりなる、精神分裂病の診断方法。 - 被験者が精神分裂病に罹患しているか否かを診断するための精神分裂病の診断方法であって、
(1)前記被験者および精神分裂病群より血液を採取して各個体の前記血液より各個体の血清を得る過程、
(2)抗上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)抗体を用いて各個体の前記血清中の上皮細胞成長因子の濃度を測定する過程、および;
(3)前記被験者における上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)の濃度が、前記精神分裂病群における上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)の濃度の平均値の2倍以上である場合に、前記被験者が精神分裂病ではないと診断する過程よりなる、精神分裂病の診断方法。 - 請求項1記載の精神分裂病の診断薬キットを用いて前記血清中の上皮細胞成長因子(Epidermal Growth factor)の濃度を測定することを特徴とする、請求項8または請求項9記載の精神分裂病の診断方法。
- 前記精神分裂病が、急性精神分裂病又は慢性精神分裂病である、請求項8または請求項9記載の精神分裂病の診断方法。
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