JP2016506501A - 異染性白質ジストロフィーの診断方法 - Google Patents

異染性白質ジストロフィーの診断方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ステップa)を含む、対象における異染性白質ジストロフィーを診断する方法に関し、ステップa)は、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含み、ここで、サンプルは、血液、乾燥した血液、血清および血漿からなる群より選択され、バイオマーカーは酵素とは異なる。

Description

本発明は、異染性白質ジストロフィーを診断する方法、異染性白質ジストロフィーを患っていることまたは患うリスクがあることに関する試験が陽性である対象に適用される少なくとも1つの治療の有効性を判定する方法、異染性白質ジストロフィーの治療用化合物の有効性を判定する方法、バイオマーカーの検出のための質量分析の使用、および、対象由来のサンプルにおけるバイオマーカーの存在を判定するキットに関する。
リソソーム病(本明細書においてリソソーム蓄積症またはLSDとも呼ぶ)は、リソソーム機能の欠陥に起因する稀な遺伝性代謝性疾患のグループである。LSDは、体の細胞中の特定のオルガネラ−リソソーム−が機能不全である場合に生じる。より著名なリソソーム病の一部は、ゴーシェ病およびファブリ病である。
LSDは、通常、脂質、糖タンパク質またはいわゆるムコ多糖類の代謝に必要な単一の酵素の不足の結果として、リソソーム機能障害によって引き起こされる。個体では、LSDは約1:10,000〜1:250,000の頻度で生じるが、グループとしては、発生率は約1:5,000である。これらの疾患の大部分は常染色体劣性遺伝であるが、いくつかは、ファブリ病およびハンター症候群(MPS II)のようにX連鎖遺伝である。
他の遺伝子疾患と同様、個体は典型的に、その両親からリソソーム病を受け継ぐ。各疾患は、酵素活性の欠乏につながる異なる遺伝子変異から生じるが、それらは全て、一般的な生化学的特性−ほとんど全てが、リソソーム内での物質の異常な蓄積が原因であるリソソーム障害−を共有する。
リソソーム病は、主に子どもに発症し、予測できない若い年令で死亡することが多く、たいていは生後数か月または数年以内である。多くの他の子どもは、それらの特定の障害の様々な症状を何年も患った後にこの疾患で死亡する。
リソソーム病の症状は、特定の障害および発症年齢などの他の変数によって異なり、軽度から重度になり得る。それらは、発育遅延、運動障害、発作、認知症、難聴および/または失明を含み得る。リソソーム病を有する一部の人は、肥大した肝臓(肝腫大)および肥大した脾臓(脾腫大)、肺および心臓の問題、および異常に成長する骨を有する。
リソソーム病のための原因治癒(causative cure)は存在せず、治療はほとんどが対症であるが、骨髄移植および酵素補充療法(ERT)は、一部の適応症に対してとても成功して用いられている。加えて、多くのこれらの疾患のために、臍帯血移植が専門センターで行なわれている。加えて、貯蔵物質の蓄積を減少させるために用いられる方法である基質還元療法(SRT)が、これらの疾患の一部について現在のところ評価されている。さらに、患者による産生が不足する酵素を安定化するために用いられる技術であるシャペロン療法が、特定のこれらの障害について試験されている。遺伝子療法は、これらの疾患の治療のためのさらなる選択肢を構成する。
本明細書において用いられる異染性白質ジストロフィー(本明細書においてMLDまたはアリールスルファターゼA欠乏とも呼ぶ)は、リソソームアリールスルファターゼA(本明細書においてARSAとも呼ぶ)の不足によって引き起こされるLSDである。ARSAはスルファチドを異化する(Von Figura et al, ,,Metachromatic leukodystrophy"In:Scriver CR et al."The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease"8th edn)。スルファチドは、オリゴデンドロサイトおよびシュワン細胞を含む様々な組織内に蓄積し、中枢神経系および末梢神経系の両方で脱髄を引き起こす(Sedel et al.,J Inherit Metab Dis.,2008 Jun)。
現在のところ、MLDの確定診断は、遺伝子の確認とともに白血球上のARSA活性の測定によってのみ行なうことができる。非常に多くの異なる変異が特定のリソソーム病の原因であり得るため、診断を確認するためにリソソームアリールスルファターゼA遺伝子のシーケンシングがMLDにおいて用いられている。
関連する生化学的異常に基づく診断方法を適用する試みがされているが、疾患の進行をモニタリングし、適用する治療の有効性を早期にモニタリングする、初期段階における前記のリソソーム病の高い特異性および高感度の検出を示す簡潔な生化学的試験の要望が、未だ対処されていない。
したがって、MLDの早期検出および診断のためのバイオマーカーの同定は、患者の臨床転帰を改善することが非常に期待される。それは、曖昧な症状または無症状の患者にとって、または、治療に反応しない患者を検出するために、特に重要である。
バイオマーカーは、多くの手で技術的に実行可能で、測定が容易で;罹患者とコントロールの間、または、治療と未治療の間で、一貫した相対的振れ幅で便利であり;信頼性があり、そして、臨床的に正確で、および、強力な予測または予後として分類可能でなければならない。
今日では、MLDを診断するためのバイオマーカーは利用可能でない。
ゴーシェ病(別のLSD)では、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ、ヘキソサミニダーゼ、および、ヒトキチナーゼ、キトトリオシダーゼを含む一部のリソソーム酵素(間接的なバイオマーカーとして用いられる)が、増加することが分かった。したがって、ゴーシェ細胞のそのような代替マーカー(キトトリオシダーゼおよびCCL18など)の測定により、組織中の貯蔵細胞の減少をモニターする試みがされている(C.E. Hollak et al.,J.Clin.Invest.93(1994)1288−1292;R.G. Boot et al.,Blood 103(2004)33−39)。しかしながら、ゴーシェ病に関するバイオマーカーとしてのキトトリオシダーゼの使用における他の欠点に加えて、前記酵素は、ゴーシェ病の病理に対する直接の関連とは独立して蓄積する。さらに、既知の民族性の最大で35%が、キトトリオシダーゼをコードする遺伝子の欠損を示し、人為的に減少した、または測定不能な、キトトリオシダーゼ活性をもたらす。
主な貯蔵分子のバイオマーカーとしての使用を、ゴーシェ病患者の血漿においてグルコシルセラミドに関して評価し、健康な個体におけるグルコシルセラミドのレベルと比較した(Groener et al.Biochim Biophys Acta.2008 Jan−Feb;1781(1−2):72−8.Epub 2007 Dec 5.;Plasma glucosylceramide and ceramide in type 1 Gaucher disease patients:correlations with disease severity and response to therapeutic intervention.;Groener JE et al.)。それにもかかわらず、前記試験で測定されたグルコシルセラミドは前記患者の血漿において増加したが、グルコシルセラミドの前記増加は顕著でなく、したがって、その方法の特異性および感度は低く、グルコシルセラミドはゴーシェ病のバイオマーカーとして適用できないことが示された。
1989年には既に、Rosengrenら(lyso−sulfatide(galactosylsphingosine−3−O−sulfate)from metachromatic leukodystrophy and normal human brain, Rosengren B,Fredman P,Mansson JE,Svennerholm L.;J Neurochem.1989 Apr;52(4):1035−41.)は、リピドーシスにおいて、主要なスフィンゴ脂質の異化作用だけでなくそのリソ−化合物も影響を受けることを示した。それにもかかわらず、前記試験は、リソ−化合物はスフィンゴリピドーシスにおける病原的メカニズムにおいて重要な役割を果たしていないと結論付けた。したがって、前記リソ−化合物は、ゴーシェ病などのスフィンゴリピドーシスの診断の適切なバイオマーカーとならないであろう。
今日に至るまで、検出限界、感度および/または特異性が不十分な上述の方法の他に、特異性が高くて感度の高いバイオマーカーの使用およびMLDの診断方法は利用不可能であり、したがって、臨床適用に適していないことが示されることに注目することは重要である。
したがって、迅速で、簡潔でありかつ、より重要なことには信頼性のある、MLDの診断方法に対する要求が存在する。
上記に照らすと、本発明に潜在する問題は、MLDの診断方法を提供することである。
さらに、本発明に潜在するさらなる問題は、対象がMLDを患っているか否か、または、対象がMLDを患うリスクがあるか否かを、判定することのできる方法を提供することである。
本発明に潜在するさらなる問題は、MLDの進行および予後を判定する方法を提供することである。
さらに、本発明に潜在するさらなる問題は、MLDを患っていることまたは発症するリスクがあることに関する試験が陽性である対象に適用される少なくとも1つの治療の有効性を、より早く判定する方法を提供することである。
本発明に潜在するさらなる問題は、MLDの治療用化合物の有効性を判定する方法を提供することである。
本発明に潜在する別の問題は、特異的かつ感度の良いMLDの診断を可能にするバイオマーカーを提供することである。
さらに、本発明に潜在するさらなる問題は、MLDに特異的かつ感度の良いバイオマーカーと相互作用する、化合物を含むキットである。
好ましくは、本発明に潜在する各問題および任意の問題、および、特に上記の問題のバイオマーカーは、酵素とは異なり、より好ましくは、バイオマーカーは、アリールスルファターゼA、N−アセチル−α−グルコサミニダーゼ、アリールスルファターゼおよびβ−グルクロニダーゼを含む群から選択される酵素とは異なる。
これらの問題および他の問題は、添付の独立請求項の要旨により解決される。好ましい実施態様は、添付の従属請求項から得ることができる。本発明のさらなる態様およびそれらの様々な実施態様は以下に開示される。特に、さらなる態様および実施態様は以下に示され、そして、カウンターが後に続く実施態様、すなわち、「実施態様1」から「実施態様83」と呼ばれ、それらのそれぞれおよび任意のものが、これらおよび他の問題に対する解決を同等に構成する。
実施態様1:ステップa)を含む、対象における異染性白質ジストロフィーを診断する方法であって、ステップa)は、対象由来のサンプルにおけるバイオマーカーを検出するステップを含む。
実施態様2:実施態様1に記載の方法であって、前記方法はステップb)を含み、ステップb)は、サンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップを含む。
実施態様3:実施態様1または2のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーのレベルは、対象が異染性白質ジストロフィーを患っているか否か、または、対象が異染性白質ジストロフィーを患うリスクがあるか否かの、指標である。
実施態様4:実施態様1から3のいずれか1つに記載の方法であって、対象由来のサンプルは、以前に異染性白質ジストロフィーを治療したことのある対象由来のサンプル、または、以前に異染性白質ジストロフィーと診断されたことのある対象由来のサンプルである。
実施態様5:実施態様1から3のいずれか1つに記載の方法であって、対象由来のサンプルは、以前に異染性白質ジストロフィーを治療したことのない対象由来のサンプル、または、以前に異染性白質ジストロフィーと診断されたことのない対象由来のサンプルである。
実施態様6:実施態様1から5のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップc)を含み、ステップc)は、対象が異染性白質ジストロフィーを患っているかどうか、または、異染性白質ジストロフィーを患うリスクがあるかどうかに基づき、治療を、適用するステップ、維持するステップ、低減するステップ、増大するステップ、または適用しないステップを含む。
実施態様7:実施態様1から6のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップd)を含み、ステップd)は、ステップc)において治療が適用された後、維持された後、低減された後、増大された後、または適用されなかった後に、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含む。
実施態様8:実施態様1から7のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップe)を含み、ステップe)は、ステップc)において治療が適用された後、維持された後、低減された後、増大された後、または適用されなかった後に、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを判定するステップを含む。
実施態様9:実施態様8に記載の方法であって、前記方法はステップf)を含み、ステップf)は、ステップb)において判定されるバイオマーカーのレベルが、ステップe)において判定されるバイオマーカーのレベルよりも低いかどうかを判定するステップを含む。
実施態様10:実施態様9に記載の方法であって、前記方法はステップg)を含み、ステップg)は、ステップf)に基づき、治療を、適用するステップ、維持するステップ、低減するステップ、増大するステップ、または適用しないステップを含む。
実施態様11:実施態様1から10のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーは、イムノアッセイ、質量分析、バイオチップアレイ、機能性核酸、および/または、バイオマーカーの蛍光誘導体を用いて検出される。
実施態様12:実施態様11に記載の方法であって、バイオマーカーは、質量分析を用いて検出される。
実施態様13:実施態様12に記載の方法であって、質量分析は、SELDI、MALDI、MALDI−Q TOF、MS/MS、TOF−TOFおよびESI−O−TOFを含む群から選択される。
実施態様14:実施態様13に記載の方法であって、質量分析は、MS/MSを含み、または用いる。
実施態様15:実施態様1から14のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、タンパク質沈殿および/またはHPLCを含む。
実施態様16:実施態様1から15のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、タンパク質沈殿、HPLCおよびMS/MSを含む。
実施態様17:実施態様1から16のいずれか1つに記載の方法であって、対象はヒトである。
実施態様18:実施態様1から17のいずれか1つに記載の方法であって、サンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含むステップd)は、サンプルをタンパク質沈殿ステップに供するステップ、サンプルからタンパク質を沈殿させるステップ、サンプルの上清を提供するステップ、サンプルの上清をHPLCおよびMS/MSに供するステップ、および、サンプルの上清中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップ、を含む。
実施態様19:実施態様1から18のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーは、遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様20:対象における異染性白質ジストロフィーを診断する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
i)対象由来のサンプルに、内部標準を添加するステップ(対象由来のサンプルは、血漿、血清および血液を含む群から選択される);
ii)場合により、内部標準を含むサンプルを混合するステップ;
iii)サンプルをタンパク質沈殿ステップに供するステップ(これにより、サンプル由来のタンパク質は沈殿し、サンプルの第一の上清が提供される);
iv)場合により、サンプルの第一の上清またはその少なくとも一部を、第二の上清を提供する第一の分離ステップに供するステップ(これにより、好ましくは、第一の分離ステップは遠心分離のステップである);
v)第一の上清および/または第二の上清、またはそれらの少なくとも一部を、第二の分離ステップに供するステップ(ここで、第二の分離ステップは、第一の上清の少なくとも一部および/または第二の上清の少なくとも一部をHPLC−MS/MSシステムに注入するステップ、および、酸性水からアセトニトリル/アセトンのグラジエントでHPLCカラムを用いるステップ、を含み;ここで、HPLCカラムは、好ましくはC8 HPLCカラムおよびC18 HPLCカラムを含む群から選択されるHPLCカラムであり、ここで、第二の分離ステップは分離サンプルを提供する);
vi)分離サンプルをMS/MSに供するステップ(ここで、MS/MSは、エレクトロスプレーイオン化およびマルチプルリアクションモニタリングを含む);
を含み、
および、
対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含むステップa)、
および場合により、
サンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップを含むステップb)
を含み、
ここで、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、および、
ここで、前記方法は、好ましくは実施態様1から19のいずれかに記載の方法である。
実施態様21:実施態様20のいずれか1つに記載の方法であって、内部標準はリソ−Gb2を含む。
実施態様22:実施態様1から21のいずれか1つに記載の方法であって、ステップb)、ステップc)および/またはステップe)は、カットオフ値を用いて、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを比較するステップを含む。
実施態様23:実施態様1から22のいずれか1つ、好ましくは実施態様22に記載の方法であって、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがカットオフ値よりも高い場合に、対象は異染性白質ジストロフィーを患っている、または、異染性白質ジストロフィーを患うリスクがあることを示す。
実施態様24:実施態様1から22のいずれか1つ、好ましくは実施態様22に記載の方法であって、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがカットオフ値よりも低い場合に、対象は異染性白質ジストロフィーを患っていない、または、異染性白質ジストロフィーを患うリスクがないことを示す。
実施態様25:実施態様1から24のいずれか1つに記載の方法であって、カットオフ値は、対象における異染性白質ジストロフィーを診断するための感度が、好ましくは約98.5%〜100%、より好ましくは99、5%〜100%であるようなものであり、および/または、対象における異染性白質ジストロフィーを診断するための特異性が、99.4%〜100%、好ましくは100%であるようなものである。
実施態様26:実施態様1〜25のいずれか1つに記載の方法であって、ステップb)および/またはステップc)および/またはステップe)は、前記対象におけるバイオマーカーのレベルを、コントロールサンプル由来のサンプルにおいて検出されるバイオマーカーのレベルと比較することを含む。
実施態様27:実施態様26に記載の方法であって、コントロールサンプルは、異染性白質ジストロフィーを有さない対象由来のサンプルである。
実施態様28:実施態様26に記載の方法であって、コントロールサンプルは、異染性白質ジストロフィーキャリアを有する対象由来のサンプルである。
実施態様29:実施態様26から28のいずれか1つに記載の方法であって、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがコントロールサンプル中のバイオマーカーのレベルよりも高い場合に、対象は異染性白質ジストロフィーを患っている、および/または、患うリスクがあることを示す。
実施態様30:実施態様1から29のいずれか1つ、好ましくは実施態様29に記載の方法であって、対象由来のサンプルは、血液、血液産物、尿、唾液、脳脊髄液、排泄物、組織サンプル、およびリンパを含む群から選択される。
実施態様31:実施態様30に記載の方法であって、対象由来のサンプル由来のサンプルは、血液および血液産物を含む群から選択される。
実施態様32:実施態様30から31のいずれか1つに記載の方法であって、血液産物は、血漿、血清および乾燥した血液を含む群から選択される。
実施態様33:実施態様1から32のいずれか1つ、好ましくは実施態様32に記載の方法であって、前記方法は、遊離リソ−Gb1−スルファチドの判定限界が0.05ng/mlである。
実施態様34:実施態様1から33のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、異染性白質ジストロフィーキャリアの診断のための方法であり、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、カットオフ値は0.05ng/mlであり、対象由来のサンプルは、好ましくは血清または血漿である。
実施態様35:実施態様30から31のいずれか1つに記載の方法であって、血液は、全血、血漿、血清または乾燥した血液であり、好ましくは血漿または血清である。
実施態様36:実施態様35に記載の方法であり、全血、血漿または血清は、乾燥血液フィルターカード上に集められる。
実施態様37:対象における異染性白質ジストロフィーの進行を判定する方法であって、前記方法はステップa)を含み、ステップa)は、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを、いくつかの時点において判定するステップを含む。
実施態様38:実施態様37に記載の方法であって、対象は以前に異染性白質ジストロフィーを治療されたことがあり、および/または、対象は以前に異染性白質ジストロフィーと診断されたことがある。
実施態様39:実施態様37に記載の方法であって、対象は以前に異染性白質ジストロフィーを治療されたことがなく、および/または、対象は以前に異染性白質ジストロフィーと診断されたことがない。
実施態様40:実施態様37から39のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップb)を含み、ステップb)は、対象が異染性白質ジストロフィーを患っているかどうか、または、異染性白質ジストロフィーを患うリスクがあるかどうかに基づき、治療を、適用するステップ、維持するステップ、低減するステップ、増大するステップ、または適用しないステップを含む。
実施態様41:実施態様37から40のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップc)を含み、ステップc)は、ステップb)において治療が適用された後、維持された後、低減された後、増大された後、または適用されなかった後に、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含む。
実施態様42:実施態様37から41のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップd)を含み、ステップd)は、ステップb)において治療が適用された後、維持された後、低減された後、増大された後、または適用されなかった後に、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを判定するステップを含む。
実施態様43:実施態様37から42のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップe)を含み、ステップe)は、ステップa)において判定されるバイオマーカーのレベルが、ステップd)において判定されるバイオマーカーのレベルよりも低いかどうかを判定するステップを含む。
実施態様44:任意の実施態様43に記載の方法であって、前記方法はステップf)を含み、ステップf)は、ステップe)に基づき、治療を、適用するステップ、維持するステップ、低減するステップ、増大するステップ、または適用しないステップを、含む。
実施態様45:実施態様37から44のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様46:実施態様37から45のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを判定するステップを含む。
実施態様47:実施態様37から46のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドを検出するステップを含む。
実施態様48:実施態様37から47のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーは、イムノアッセイ、質量分析、バイオチップアレイ、機能性核酸、および/または、バイオマーカーの蛍光誘導体を用いて検出される。
実施態様49:実施態様48に記載の方法であって、バイオマーカーは、質量分析を用いて検出される。
実施態様50:実施態様49に記載の方法であって、質量分析は、SELDI、MALDI、MALDI−Q TOF、MS/MS、TOF−TOFおよびESI−O−TOFからなる群から選択される。
実施態様51:実施態様50に記載の方法であって、質量分析は、MS/MSを含み、または用いる。
実施態様52:実施態様37から51のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、タンパク質沈殿および/またはHPLCを含む。
実施態様53:実施態様37から52のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、タンパク質沈殿、HPLCおよびMS/MSを含む。
実施態様54:実施態様37から53のいずれか1つに記載の方法であって、対象はヒトである。
実施態様55:実施態様37から54のいずれか1つに記載の方法であって、サンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含むステップd)は、サンプルをタンパク質沈殿ステップに供するステップ、サンプルからタンパク質を沈殿させるステップ、サンプルの上清を提供するステップ、サンプルの上清をHPLCおよびMS/MSに供するステップ、および、サンプルの上清中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップ、を含む。
実施態様56:異染性白質ジストロフィーを患っていることまたは患うリスクがあることに関する試験が陽性である対象に適用される少なくとも1つの治療の有効性を判定する方法であって、ステップa)を含み、ステップa)は、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを、いくつかの時点において検出するステップを含む。
実施態様57:実施態様56に記載の方法であって、前記方法はステップb)を含み、ステップb)は、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルをいくつかの時点において判定するステップを含む。
実施態様58:実施態様56または57のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様59:実施態様56から58のいずれか1つに記載の方法であって、対象は以前に異染性白質ジストロフィーを治療されたことがある、または、異染性白質ジストロフィーと診断されたことがある。
実施態様60:実施態様56から58のいずれか1つに記載の方法であって、対象は以前に異染性白質ジストロフィーを治療されたことがない、または、対象は以前に異染性白質ジストロフィーと診断されたことがない。
実施態様61:実施態様56から60のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップd)を含み、ステップd)は、ステップb)で判定されるバイオマーカーのレベルの減少に基づいて、対象に適用される少なくとも1つの治療を、適用するステップ、維持するステップ、低減するステップ、増大するステップ、または適用しないステップ、を含む。
実施態様62:実施態様56から61のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップe)を含み、ステップe)は、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップ(ここでサンプルは、ステップd)において少なくとも1つの治療が適用された後、維持された後、低減された後、増大された後、または、適用されなかった後の、治療の開始前に取られている)を含み、場合により、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを検出するステップを含む。
実施態様63:実施態様56から62のいずれか1つに記載の方法であって、治療は、酵素補充療法、基質還元療法、シャペロン療法、遺伝子療法、DNA/RNAスキッピングの幹細胞移植を含む群から選択される。
実施態様64:実施態様56から63のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法はステップf)を含み、ステップf)は、ステップb)において判定されるバイオマーカーのレベルが、ステップe)において判定されるバイオマーカーのレベルよりも低いかどうか判定するステップを含む。
実施態様65:実施態様64に記載の方法であって、前記方法はステップg)を含み、ステップg)は、ステップf)に基づいて、対象に適用される少なくとも1つの治療を、適用するステップ、維持するステップ、低減するステップ、増大するステップ、または、適用しないステップ、を含む。
実施態様66:実施態様56から65のいずれかに記載の方法であって、バイオマーカーは、イムノアッセイ、質量分析、バイオチップアレイ、機能性核酸、および/または、バイオマーカーの蛍光誘導体を用いて検出される。
実施態様67:実施態様66に記載の方法であって、バイオマーカーは、質量分析を用いて検出される。
実施態様68:実施態様67に記載の方法であって、質量分析は、SELDI、MALDI、MALDI−Q TOF、MS/MS、TOF−TOFおよびESI−O−TOFからなる群から選択される。
実施態様69:実施態様68に記載の方法であって、質量分析は、MS/MSを含む、または用いる。
実施態様70:実施態様56から69のいずれかに記載の方法であって、前記方法は、タンパク質沈殿および/またはHPLCを含む。
実施態様71:実施態様56から70のいずれかに記載の方法であって、前記方法は、タンパク質沈殿、HPLCおよびMS/MSを含む。
実施態様72:実施態様56から71のいずれか1つに記載の方法であって、対象はヒトである。
実施態様73:実施態様56から72のいずれか1つに記載の方法であって、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップは、対象由来のサンプルからタンパク質を沈殿させるステップ(サンプルからタンパク質を沈殿させるステップは、サンプルの上清を提供する);一定量の上清をHPLCおよびMS/MSに供するステップ、および、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップ、を含む。
実施態様74:異染性白質ジストロフィーの治療用化合物の有効性を判定する方法であって、前記方法は以下のステップを含む:
a)異染性白質ジストロフィーを有する対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを判定するステップ;
b)前記化合物を前記対象に投与するステップ;
c)化合物が対象に投与された後に、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを再度判定するステップ;および、
d)ステップc)において判定されるバイオマーカーのレベルが、ステップa)において判定されるバイオマーカーのレベルよりも低いかどうか判定するステップ;
ここで、ステップc)において判定されるバイオマーカーのレベルが、ステップa)において判定されるバイオマーカーのレベルよりも低い場合に、前記化合物の有効性を示す。
実施態様75:実施態様74に記載の方法であって、バイオマーカーは、遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様76:実施態様74から75のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法は、コントロールサンプルにおけるバイオマーカーのレベルを判定するステップを含む。
実施態様77:実施態様1から76のいずれか1つに記載の方法であって、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルが、0.05ng/mlのカットオフ値よりも高い場合に、対象は異染性白質ジストロフィーを患っていることを示す。
実施態様78:バイオマーカーの検出のための質量分析の使用であって、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様79:実施態様78に記載の使用であって、検出はHPLCの使用を含む。
実施態様80:実施態様78から79のいずれか1つに記載の使用であって、質量分析は、MS/MSを含み、または用いる。
実施態様81:好ましくは実施態様1から77のいずれか1つに記載の方法における、異染性白質ジストロフィーの診断のためのバイオマーカーの使用であって、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様82:対象由来のサンプル中のバイオマーカーの存在を判定するキットであって、前記キットは、
a)バイオマーカーの相互作用パートナー;
b)場合により、少なくとも1つのキャプチャー試薬が付着した固体支持体、ここで、キャプチャー試薬はバイオマーカーと結合する;および、
c)バイオマーカーを検出するための固体支持体の使用に関する指示書、
を含み、
ここで、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。
実施態様83:実施態様82に記載のキットであって、前記キットは、
a)異染性白質ジストロフィーを診断する方法での使用;
b)対象における異染性白質ジストロフィーの進行を判定する方法での使用;および/または、
c)対象に適用される少なくとも1つの治療の有効性を判定する方法での使用、
のためであり、
好ましくは、a)、b)および/またはc)の方法は、実施態様1から77のいずれか1つに記載の方法である。
ここで、本発明を、以下の図および実施例によりさらに説明し、それにより、さらなる特性、実施態様および利点を得ることができる。
より具体的には、
図1Aは、健康対象の、遊離リソ−Gb1−スルファチドおよびISのピーク強度を示すHPLC質量分析クロマトグラムである。(上のクロマトグラムは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、下のクロマトグラムは内部標準である。) 図1Bは、MLD陽性と診断された対象の、遊離リソ−Gb1−スルファチドおよびISのピーク強度を示すHPLC質量分析クロマトグラムである。(上のクロマトグラムは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、下のクロマトグラムは内部標準である。) 図2は、MLDと診断された対象の第一のコホートにおける遊離リソ Gb1−スルファチド(ng/ml・血漿)のレベルを、他のLSDを患っていることが陽性と診断された対象における遊離リソ Gb1−スルファチド(ng/ml・血漿)のレベルと比較した、ボックスプロットである。 図3は、MLDと診断された対象の第二のコホートにおける遊離リソ Gb1−スルファチド(ng/ml・血漿)のレベルを、他のLSDを患っていることが陽性と診断された対象における遊離リソ Gb1−スルファチド(ng/ml・血漿)のレベル、MLDキャリアであることが陽性と診断された対象における遊離 リソGb1−スルファチド(ng/ml・血漿)のレベル、および健康コントロールである対象におけるレベルと比較した、ボックスプロットである。 図4は、MLDと診断された対象の第二のコホートにおける酵素的アリールスルファターゼA活性(U/mg・タンパク質)のレベルを、他のLSDを患っていることが陽性と診断された対象におけるレベル、MLDキャリアであることが陽性と診断された対象におけるレベル、および健康コントロールである対象におけるレベルと比較した、ボックスプロットである。 図5は、MLDの診断に関するレシーバーオペレーティング特性(receiver operating characteristics)(ROC)を示すグラフである。
本発明の各態様および任意の態様および本発明の各実施態様および任意の実施態様に関連して用いられるバイオマーカーまたは言及されるバイオマーカーは、好ましくは酵素とは異なり、より好ましくは、バイオマーカーは、アリールスルファターゼA、N−アセチル−α−グルコサミニダーゼ、アリールスルファターゼおよびβ−グルクロニダーゼを含む群から選択される酵素とは異なることは、本発明の範囲内である。
好ましくは、本発明の各態様および任意の態様および本発明の各実施態様および任意の実施態様の対象は、以下のMLD変異を含む群から選択される変異を患っている者である。
Figure 2016506501
これらおよび他の変異は、例えば、Pediatric Neurology,Part III:Handbook of Clinical Neurology,Eds.Olivier Dulac Maryse Lassonde Harvey B.Sarnat;Elsevier,2013に記載されている。
特異的変異がMLD患者で示される可能性を、上記リストに括弧で示す。
本発明者らは、驚くべきことに、遊離リソ−Gb1−スルファチド(本明細書において、好ましくは、遊離リソ−グリコセレブロシド−スルファチドとも呼ぶ)が、対象におけるMLDを診断する方法、より具体的には、前記遊離リソ−Gb1−スルファチドをバイオマーカーとして用いて、対象においてMLDを高い特異性および感度で診断する方法を可能にする、バイオマーカーを構成することを見いだした。MLD診断におけるバイオマーカーとしての遊離リソ−Gb1−スルファチドの信頼性は、酵素および特にアリールスルファターゼAに基づくMLDの診断のための任意の方法に勝る。遊離リソ−Gb1−スルファチドに基づく診断のそのような優位性は、感度および特異性の両方の観点から示される。遊離リソ−Gb1−スルファチドに基づく診断で見られる、アリールスルファターゼAに基づくMLD診断に勝る優位性の理由の1つは、アリールスルファターゼA活性の低下が−不正確に−MLDの適応症として取られる、アリールスルファターゼA偽欠損症の存在である。同様の欠点が、遺伝学に基づくMLD診断のケースで見られる:アリールスルファターゼAの変異が見られるものの一部は、非病原性のアリールスルファターゼA偽欠損症をもたらす。
また、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法により検出することのできる遊離リソ−Gb1−スルファチドが、対象の血液中、および特に血漿および血清中を、全Gb1−スルファチドのおよそ1/1000の濃度で循環していることを見いだした。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、全Gb1−スルファチドとは異なり、対象の血液中、および特に血漿および血清中に存在する遊離リソ−Gb1−スルファチドが、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップ(ここで、バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである)を含む、対象においてMLDを診断する方法に有用であることを見いだした。また、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法により対象由来のサンプルにおいて判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルは、高い感度および高い特異性を有するMLD診断を可能にすることを見いだした。
これまでにおいて、本発明は、本発明の方法が、リソ−化合物のレベルを判定するステップおよび前記リソ−化合物をバイオマーカーとしてLSDの診断に用いるステップを含むという点において、従来技術の教示を覆す。より具体的には、本発明者らは、驚くべきことに、対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを判定するステップは、高い感度および高い特異性でのMLD診断を可能にすることを見いだした。
また、MLDで蓄積する全Gb1−スルファチドの画分が、その遊離リソ形態での分子、すなわち遊離リソ−Gb1−スルファチドとして存在すること、および、対象の血液中、および特に血漿および血清中を、Gb1−スルファチドの他に前記の遊離リソ形態で循環していることを認識したことも、本発明者らの有利な点である。
本明細書において好ましく用いられる用語「リソソーム蓄積症」(本明細書において「リソソーム病」または「LSD」とも呼ばれる)は、リソソーム機能の欠陥に起因する遺伝子疾患および代謝障害を指す。リソソーム蓄積症は、通常、脂質、糖タンパク質またはいわゆるムコ多糖類の代謝に必要な単一の酵素の不足の結果として、リソソーム機能障害によって引き起こされる。他の遺伝子疾患と同様、個体は、その両親からリソソーム病を受け継ぐ。各疾患は、酵素活性の不足につながる異なる遺伝子変異から生じるが、それらは全て、一般的な生化学的特性−全て、リソソーム内での物質の異常な蓄積が原因であるリソソーム障害−を共有する。
MLDは、一般に白質脳症のファミリーに挙げられる常染色体劣性遺伝のLSDである。用語「白質脳症」は、脳の白質を選択的にまたは主に含む疾患または障害を意味する。それは、ミエリン自体、オリゴデンドロサイト、星状細胞、または軸索さえにも影響を及ぼす疾患のグループと関連する。白質脳症の主な後天的原因は、炎症性疾患、血管疾患、感染、腫瘍および中毒性の原因を含む(Filley and Kleinschmidt−DeMasters,2001,N Engl J Medにおいてレビュー)。遺伝性の白質脳症は、3つのカテゴリーに分類することができる(Baumann and Turpin,2000,J Neurol;Schiffmann and van der Knaap,2004,Curr Opin Neurol;Sedel et al,2005,Rev Neurol):(1)白質脳症の原因となる遺伝子はいまだに未知であるが、臨床的に、放射線学的に、または病理学的に特徴付けられる白質脳症;(2)代謝経路に直接関与しないタンパク質をコードする遺伝子に起因し、診断は遺伝子分析に直接頼る白質脳症;および、(3)細胞代謝に関与する酵素またはタンパク質をコードする遺伝子に起因し、診断は主に、血漿および尿のサンプルの生化学的分析に頼る白質脳症。3つめのカテゴリーは、先天的な代謝エラーに相当し、本明細書においてIEMとも呼び、特異的な治療が存在することが多いので、理解することが重要である(Sedel et al., 2007,Nat Clin Pract Neurol)。白質脳症を引き起こす大部分のIEMは小児期に始まり、神経小児科により説明されてきた。しかしながら、異なる臨床的および放射線学的特徴を示す遅発型も存在し、古典的な小児科医の説明とは大きくかけ離れていることがある。特定のリソソームまたはペルオキシソーム障害に起因する一部の白質脳症を除き、神経科医はたいてい、IEMに精通していない。
MLDは3つめのグループの白質脳症、すなわち、細胞代謝に関与する酵素またはタンパク質をコードする遺伝子に起因する白質脳症に属する。MLDは、リソソームアリールスルファターゼA(本明細書においてARSAとも呼ぶ)の不足に起因する。ARSAはスルファチドを異化する(上記のVon Figuraら、2001年)。
疾患の発症率は約1/100 000であり、成体が症例の約20%を代表する。臨床的な発症は、70歳代のように遅くあり得る(上記の、Bosch and Hart,1978,Arch Neurol;Von Figura et al,2001)。成体では、最初の症状は通常、精神医学的であり、妄想、幻覚、混乱した行動および社会的機能障害を伴う神経分裂症に似ている(Baumann et al 1991,Dev Neurosci)。臨床像は、数年または数十年後に、認知障害ならびに運動兆候、例えば、痙性対麻痺、小脳性運動失調または軽度の脱髄性多発性神経障害によって完成される。疾患の運動発症型は、優先的にホモ接合型変異P426Lと関連し、一方で、精神医学型はI179S変異に関連する(Rauschka et al,2006,Neurology)。磁気共鳴イメージングは、前方優性の両側性脳室周囲白質脳症および脳萎縮症を示す。重要なことに、弓状線維(U−fibres)は少なくとも疾患の初期において相対的に保存される(relatively spared)(上記のSedelら、2001年)。
現在までに、提案することのできる唯一の治療は骨髄移植であり、疾患の遅発型においてほとんど成功していない(Kiddら、1998年、Arch Neurol)。
従来技術によるMLD診断は、白血球上のARSA活性の測定に基づく。しかしながら、欧米人の約15%が、臨床症状を伴わずに、および、組織または尿中にスルファチドを蓄積せずに、低いARSA活性を示す(上記のVon Figuraら、2001年)。これらの偽欠損症は、ARSAコード遺伝子内の特定の多型に起因する(上記のVon Figuraら、2001年)。
したがって、従来技術による、ARSA活性が低い患者におけるMLD診断は、スルファチドの尿中排泄が高いこと、または、ARSA遺伝子の分子分析を要する。
スルファチド分解を活性化するのに必要なアクチベーターであるサポシンBの欠乏は、正常なARSA活性にもかかわらずMLDを生じ得る(Deconinck et al.,2007,Eur J Paediatr Neurol)。我々の知る限り、そのような欠乏は成体において説明されたことはないが、白質ジストロフィーを有しスルファチドの尿中排泄が高い患者では疑わしい。
脂質代謝に影響を及ぼす多くの他の遺伝子疾患と同様、MLDにはいくつかの形態があり、それらは、遅発幼児型、幼若型、および成体型である。
MLDの最も一般的な形態(50〜60%)である遅発幼児型では、発症した子どもは1才経過後、通常は15〜24ヶ月に、歩行困難になり始める。症状は、筋肉の消耗および衰弱、筋硬直、発育遅延、失明をもたらす進行性の視力喪失、痙攣、嚥下障害、麻痺、および認知症を含む。子どもは昏睡状態になり得る。治療されなければ、この形態のMLDを有する大部分の子どもたちは、5歳までに死亡し、もっと早いことも多い。
幼若型のMLDを有する子ども(3才から10才に発症)は通常、学業低下、精神低下、および認知症で始まり、それから、遅発幼児型と同様の症状を発症するが、進行がより遅い。死亡年齢は変動し、普通は兆候発症の10〜15年以内であるが、一部の幼若型は発症後、数十年またはそれ以上の間、生きることができる。
成体型は一般に、神経障害または進行性認知症として、16才以降に始まる。成体発症MLDは、遅発幼児型および幼若型よりもゆっくり進行し、10年またはそれ以上、経過が長引く。
緩和ケアを多くの症状に役立てることができ、通常は生活の質および寿命を改善する。
MLDが常染色体劣性の様式での遺伝性であることは、その疾患を発症する人に関して、ヌクレオチド配列は変化しているが機能の破壊は生じない多型とは対照的に、機能が阻害されるようにして、遺伝子の両コピーまたは両方の対立遺伝子が変異導入または改変されなければならないことを意味する。常染色体劣性の疾患を有する子供の親は、発症していないが1コピーの改変遺伝子のキャリアであることが最も多い。そのようなキャリアは、本明細書においてMLDキャリアと呼ぶ。両親がキャリアである場合は、発症する子どもは、それぞれの妊娠で25%の可能性である。MLDのキャリアであり得る家族には、遺伝相談および遺伝試験が推奨される。
スルファチドは、オリゴデンドロサイトおよびシュワン細胞を含む様々な組織に蓄積し、中枢神経系および末梢神経系の両方において脱髄を引き起こす(上記のSedelら)。スルファチドは、中枢神経系において主にオリゴデンドロサイトで合成される硫酸化ガラクトシルセラミドのクラスである。スルファチドはスルホリピドの一種である。
Gb1−スルファチドは、セラミドのコア、すなわち、アミド結合を介して脂肪酸に結合したスフィンゴシン、および、1−ヒドロキシル部分における1つのグリコシル残基からなる。硫酸部分は、グリコシル部分のC原子に存在する。好ましくは、グリコシル部分は、ガラクトシル部分またはグルコシル部分のいずれかである。より好ましくは、グリコシル部分はガラクトシル部分である。
当業者は、本明細書において用いられる用語「リソ−Gb1−スルファチド」は、好ましくは本発明の様々な方法に関連して、分子がその遊離アミノ形態で存在することを好ましくは意味することを理解するであろう。より正確には、本明細書において用いられるリソ−Gb1−スルファチドは、好ましくは、脂肪酸部分が分子のスフィンゴシン部分の−第1の−アミノ基(−primary−amino group)に結合していない点で、Gb1−スルファチドとは異なる。さらに、リソ−Gb1−スルファチドは、本明細書において、グリコシルスフィンゴシン−スルファチドとも呼ぶ。本発明の好ましい実施態様では、リソ−Gb1−スルファチドは式(I)であり、
Figure 2016506501
(I)
および、リソ−ガラクトシル−セラミドまたはリソ−ガラクトシルセラミドスルファチドまたはガラクトシルスフィンゴシンスルファチドとも呼ぶ。
用いる分析方法に応じて、検出されるグリコシルスフィンゴシン−スルファチドが、グリコシル部分として、ガラクトシル部分またはグルコース部分を含むかどうか区別することは不可能であるかもしれないことが当業者によって認識されよう。そのような方法は、例えばHPLC−MS/MSである。このため、本明細書において用いられる用語「リソ−Gb1−スルファチド」は、それのより一般的な意味において、ガラクトシルスフィンゴシン−スルファチドおよび/またはグルコシルスフィンゴシン−スルファチドを含み、それにより、好ましくは、用語「リソ−Gb1−スルファチド」は、式(I)の化合物を意味する。
本明細書において用いられる用語「遊離リソ−Gb1−スルファチド」は、好ましくは対象由来のサンプル中、例えば、乾燥した血液を含む血液または血漿または血清中に、それ自体として存在し、好ましくは、前記対象のサンプルの操作の結果ではない、リソ−Gb1−スルファチドを指すことが当業者により理解されよう。そのようなサンプル操作は、Groenerらにより開示されるものであってよい(Groener et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1781(2908)72−78,2007)。それにしたがって、サンプルが取られる対象の、乾燥した血液を含む血液または血漿または血清中に、それ自体として存在する遊離リソ−Gb1−スルファチドは、より具体的には、好ましくは患者の体外で、血液サンプル、血漿サンプルおよび/または血清サンプル中に含まれるサンプルの、化学的、生化学的または物理的処理により生産されるリソ−Gb1−スルファチドではない。好ましくは、遊離リソ−Gb1−スルファチドは、対象のサンプル中に含まれる遊離リソ−Gb1−スルファチドの化学的処理により調製されるリソ−Gb1−スルファチドではなく、それにより、サンプルは、好ましくは、血漿、血清、および、乾燥した血液を含む血液からなる群から選択されるサンプルである。より好ましくは、本明細書において用いられる遊離リソ−Gb1−スルファチドは、Toda K.ら(Toda K.et al.,(1989)Biochemical and Biophysical Research Communications,Vol.159,No.2,pp 605−611)により調製されるリソ−Gb1−スルファチドとは異なり;換言すれば、Toda Kらは、リソ−Gb1−スルファチドの化学的処理により、遊離リソ−Gb1−スルファチドを調製し、そのような遊離リソ−Gb1−スルファチドは、サンプル(より具体的には、血漿サンプル、血清サンプル、および乾燥した血液を含む血液サンプル)中に、より一層少ない量ではあるが、既に存在することを認識していなかった;リソ−Gb1−スルファチドを、前記の化学的処理に供することにより、サンプル自体に既に存在する遊離リソ−Gb1−スルファチドの量は曖昧であった。以上から、Toda Kら、およびGroenerらの両方とも、誘導体化の観点から同一のストラテジーに従ったことが明らかである。また、当業者は、本明細書において用いられる遊離リソ−Gb1−スルファチドは、好ましくはGb1−スルファチドに加えて存在し、対象の代謝活性により生産される化合物であることも理解するであろう。したがって、Gb1−スルファチドは、MLDに関連して蓄積する分子であり、対象由来のサンプル中に存在し、遊離リソ形態での分子、すなわち、対象の血液中、および血漿中および/または血清中に存在する遊離−リソ−Gb1−スルファチドと比較して、少なくとも、リソ−Gb1−スルファチドのスフィンゴシン部分の−第1の−アミノ基に結合した脂肪酸部分を有する。
本発明に係るバイオマーカーの一実施態様では、バイオマーカーは、イムノアッセイ、質量分析、バイオチップアレイ、機能性核酸、および/または、バイオマーカーの蛍光誘導体を用いて検出される。それに関連して、そのような検出は、対象の血液中にそれ自体として存在するバイオマーカーの選択的検出を可能にし、特に、前記対象のサンプルの操作の結果ではなく(例えば、上述の従来技術の方法による、リソ−Gb1へのGb1の誘導体化)、バイオマーカーの濃度変化をもたらすことに注目することが重要である。そのような操作は、その遊離リソ形態で存在するバイオマーカーを、前記操作の結果(例えば前記誘導体化の結果)である物質から、区別することができない場合がある。したがって、操作されたさらなる物質、例えば従来技術の方法によりリソ−Gb1に変換されたGb1を検出しなければ、それぞれ、本発明のバイオマーカーはそれ自体として検出することができず、および、前記バイオマーカーのレベルは、それ自体として判定することができない。これらに照らすと、対象の血液中に存在するバイオマーカー、例えば、対象の血液中にそれ自体として存在する遊離リソ−Gb1−スルファチドは、対象のサンプル中にもそれ自体として存在し、それにもかかわらず、バイオマーカーに特異的に結合する蛍光色素または核酸分子のような手段で選択的に標識および/または結合され得ることが直ちに理解されよう。そのような選択的な標識または結合は、さらなる物質(例えば、バイオマーカー(より正確には、標識または結合したバイオマーカー)から区別することができない、従来技術の変換されたリソ−Gb1)の標識、結合、または変換をせずに、標識または結合したバイオマーカーのレベルを、検出および/または判定することを可能とする。これに関連して、例えば、本発明のバイオマーカーの蛍光誘導体は、蛍光色素または分子で標識および/または結合したバイオマーカー(すなわち、バイオマーカーの蛍光誘導体をもたらす)に関与し、蛍光誘導体を検出し、および/または、本発明のバイオマーカーの蛍光誘導体のレベルを判定することが可能である。
本明細書において用いられる用語「サンプル」は、好ましくは、制限された量の対象の物質を意味し、ここで前記対象の物質は、対象および/または対象の体の一部であり、または、対象および/または対象の体から得られている。好ましくは、前記物質は、体液、例えば血液、血液産物、例えば好ましくは血漿、血清、尿、唾液、脳脊髄液およびリンパ、ならびに、排泄物または任意の種類の組織およびまたは、対象および/または対象の体の一部である細胞物質、を含む群から選択される。特に好ましいサンプルは、本発明の任意の方法で使用される、または、本発明の任意の方法での使用のための、血清サンプルまたは血漿サンプルである。さらに好ましいサンプルは、乾燥した血液のサンプルである。前記サンプル中の本発明のバイオマーカーの存在および/またはレベルは、より多量のその対象の物質におけるバイオマーカーの存在および/またはレベルと同様であり代表することを意図することが、当業者によって理解されよう。より正確には、および説明としては、非限定的に挙げると、対象由来の血液(例えば数ml)のサンプル中で判定される本発明のバイオマーカーのレベルは、また、対象の体の血液中の前記バイオマーカーのレベルも代表する。さらに、対象においてMLDを診断するための本発明の方法の一実施態様では、対象由来のサンプルは、前記対象の物質を、前記サンプルが本発明の方法での使用に適切なように、例えば加工され、固定され、および/または保存された形態で含み、それにより、そのような加工、固定、および/または保存は、好ましくは、患者の血液中にそれ自体として存在しなかったリソ−Gb1−スルファチドを生産しない。したがって、サンプル中の対象の物質は、例えばメタノールおよび/または水など本発明の方法に適切な溶媒を用いて希釈してよく、例えば、フィルターカード上で乾燥してよく、そのように乾燥させた後に、例えばメタノールおよび/または水など本発明の方法に適切な溶媒を用いて溶解してよく、または、物質を添加してよく、ここで、前記物質は、例えばEDTA、シトレートまたはヘパリンのように、血液を凝固から防ぐ。本発明の方法は、前記対象の物質が前記対象の物質の単一の構成要素に分離されること、および/または、前記対象の物質の単一の構成要素が前記対象の物質から抽出されることを含み、例えば、血液は血漿または血清に分離され、および、細胞の血液構成要素またはタンパク質はサンプルから沈殿されることが、当業者によりさらに理解されるであろう。したがって、タンパク質沈殿および/またはHPLCを含む本発明に係る方法の一実施態様では、タンパク質の沈澱は、好ましくは、a)細胞の血液構成要素および/またはタンパク質の沈澱をもたらし、より好ましくは、遠心分離ステップの後にペレットを形成し、および、b)バイオマーカーは、遠心分離ステップの後に、沈殿せずに上清に存在する。当業者は、HPLCを含む本発明に係る方法の一実施態様では、本発明のバイオマーカー(単数または複数)またはその一部を含む上清を、HPLCに供することを直ちに理解するであろう。それに関連して、HPLCに供せられる上清またはその一部が、検出されるべきバイオマーカー、および、好ましくは内部標準を含むことを理解することが重要である。本発明の方法の一実施態様では、内部標準をサンプルに添加し、内部標準は、沈殿ステップの前または後にサンプルに添加してよく、すなわち、内部標準は、対象からサンプルを取った直後に、または、分析前の血液、血漿または血清などのサンプルの融解後に、サンプルに添加してよく、または、HPLCに供せられる上清に添加してよく、ならびに、これらの時点の間に添加してよい。当業者は、バイオマーカーのレベルの正確な検出および判定を得るために、内部標準をいつどのように、サンプルに添加するのが好ましいか知っている。用語「乾燥血液」および「乾燥した血液」が好ましくは交換可能な様式で用いられることは本発明の範囲内であり、それとは逆に明示的に示さない。
そのような加工、固定および/または保存の後に、前記サンプル中に含まれるバイオマーカーのレベルを検出および/または判定するために、サンプルを本発明の方法に供し、それにより、そのような加工、固定および/または保存は、好ましくは患者由来のサンプル中にそれ自体として存在しなかったリソ−Gb1−スルファチドを産生しないことが、直ちに理解されよう。
本発明の方法の一実施態様では、全血は、乾燥血液フィルターカード上に、好ましくはおよそ50〜200μlの全血を回収し、血漿または血清は、前記乾燥血液フィルターカードに3mmの直径でスポット上に回収する。当業者は、こうして回収される正確な容量は、特定の患者のヘマトクリットによって異なり得ることを理解するであろう。
グルコシルセラミドおよびその前駆体セラミドのレベルは、従来技術において、血漿中のそれらの存在を、I型ゴーシェ病の重症度および治療適用に対する応答と関連付けるために用いられた(Groener et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1781(2908)72−78,2007)。それにより、リソ−グルコシルセラミドのレベルは異なることが分かったが、セラミドのレベルは、治療されたI型ゴーシェ病患者および未治療のI型ゴーシェ病患者の血漿中で有意差はなかった。
Groenerらにより報告された試験では(上記のGroenerら)、グルコシルセラミド/セラミドの比を用いてゴーシェ病患者と健康患者とを区別した。グルコシルセラミドおよびセラミドは、本質的にGroenerらに記載(J.E.M.Groener et al.,Clin.Chern.53(2007)742−747)のように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。それに関連して、血漿中に存在するグルコシルセラミドは、主に糖部分およびセラミド部分からなることを理解することが重要である。セラミド部分は、スフィンゴシンおよび脂肪酸部分を含む。従来技術の方法により、脂質が抽出されて、セラミドおよびグルコシルセラミドはアルカリ加水分解により脱アセチル化され、そして、リソ形態、すなわちリソ−グルコシルセラミドが形成される(T. Taketomi et al.,J.Biochem.(Tokyo)120(1996)573−579)。続いて、こうして生産されたリソ−グルコシルセラミドを、O−フタルジアルデヒド(OPA)を用いて一級アミン基において誘導体化により蛍光色素で標識する。その後に、誘導体化スフィンゴイド塩基を逆相HPLCにより分離し、蛍光検出器を用いて検出した。したがって、従来技術の前記方法は、遊離リソ−グルコシルセラミドおよびグルコシルセラミドからなる、全グルコシルセラミドを検出することが可能であり、対象由来のサンプル中のグルコシルセラミドのレベルから、遊離リソ−グルコシルセラミドのレベルを区別することは不可能である。グルコシルセラミドのNH基から様々な脂肪酸部分を切断した後の、前記の全グルコシルセラミドのレベルは、通常、血漿または血清(mL)あたり、5〜30μgの範囲である。このことから、Groenerら(上記のGroenerら)の方法では、血液中(結果的にまた、脂肪酸部分(単数)/部分(複数)の切断、好ましくはサンプルを扱う操作者により行われる切断が行われないサンプル中)に含まれる遊離リソ−グルコシルセラミドではなく、対象由来のサンプル(好ましくは血液サンプル)から、個々に調製および得ることのできる全グルコシルセラミドが、バイオマーカーとして用いられることが明らかである。この限りにおいて、本発明は、全Gb1−スルファチドではなく、遊離リソ−Gb1−スルファチドの検出に関する。
従来技術の前記試験においてリソ−グルコシルセラミドとして測定された全グルコシルセラミドは、前記患者の血漿中で増加したが、全グルコシルセラミドにおける前記増加は顕著でなく、したがって、当該方法の特異性および感度は低く、グルコシルセラミドは、ゴーシェ病に関するバイオマーカーとして適切でないことが示された。
本発明の方法の一実施態様は、対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを検出および/または判定するステップを含み、遊離リソ−Gb1−スルファチドおよび/または遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルは、対象の血液中に存在し得るGb1−スルファチドまたはGb1−スルファチドのレベルから区別および/または切り離して判定される。さらなる実施態様では、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの検出および/または判定に加えて、Gb1−スルファチドおよび/またはGb1−スルファチドのレベルが検出/判定される。
重要なことに、血漿中を循環し、従来技術の前記方法により有機溶媒を用いてGb1−スルファチドと同時に抽出するのに十分に脂溶性である各一級アミンは、それに応じて標識されていて、したがって、切断されたリソ−Gb1−スルファチドの検出を妨げる可能性がある。
遊離リソ−Gb1−スルファチドに関して上記に概説した本発明に係るバイオマーカーの実施態様では、遊離リソ形態として存在する本発明の任意のバイオマーカーにも適用する。
この限りにおいて、本発明のバイオマーカーおよびその使用は、従来技術で知られるMLDを診断する方法の実施、より具体的にはバイオマーカーを用いたそのような方法の試みよりも、明らかに優る。したがって、Toda KらによるMLDを診断する方法(上記のToda Kら)は、ゴーシェ病を診断するためにGroenerらにより適用された方法(上記のGroenerら)と同様に、遊離リソ−グルコシルセラミドではなく全グルコシルセラミドを用いた従来技術の方法のように、遊離リソ−Gb1−スルファチドではなく全Gb1−スルファチドを用いた従来技術のそのような方法に基づくMLDの診断は、信頼性のあるその臨床適用に適切でなく、すなわち当該方法は、信頼性があり統計的に確実な予測によりゴーシェ病を診断するのに十分な感度および特異性を有さないという点において、本発明の方法と比較して不利であるということが直ちに理解されよう。
これと明らかに対照的に、本発明は、MLDの診断のための方法、および、高い感度および高い特異性でMLDの診断を可能にする前記方法において使用されるバイオマーカーを提供する。
用語「MLDステイタス」(本明細書において「MLDステイタス」とも呼ぶ)は、好ましくは、対象における疾患の状態を指す。MLDステイタスのタイプの例は、限定されないが、対象の、MLDを患うリスクまたは発症するリスク、対象における疾患の段階、および疾患の治療の有効性を含む。他のステイタスおよび各ステイタスの度合いは、当技術分野で知られている。本発明の一実施態様では、MLDステイタスは、重度、軽度、または健康のMLDステイタスを含む。
本明細書で好ましく用いられる用語「診断」は、対象における疾患または障害の存在または不存在を判定すること、および/または、対象が、疾患、障害、または、疾患または障害に関連する症状を発症するリスクがあるかどうか判定すること、ならびに、疾患の状態を予測することを意味する。また、本明細書において用いられる「診断」または「診断すること」は、好ましくは、存在する疾患または存在するであろう疾患の症状の原因が特定されることも意味する。
それに関連して、当業者、例えば、症状を患っている対象または病気であることが疑われる対象によって受診された熟練臨床医は、本発明の方法を適用し、それにより、対象が疾患(特にMLD)を発症するリスクがあるかどうか、対象がそのような疾患を患っているかどうか決定し、または、そのような疾患の状態を、好ましくは本発明の方法を実施することにより得られる結果に基づいて予測することに、注目することが重要である。
前記診断に基づき、当業者は、治療を適用する、維持する、低減する、増大する、または適用しないこと、または、さらなる診断試験を行なうことを勧める。
したがって、MLDを診断するための本発明の方法の一実施形態は、治療を適用すべきか、維持すべきか、低減すべきか、増大すべきか、または適用しないべきか、推薦するステップを含む方法である。
本発明の文脈における用語「検出」は、好ましくは、サンプル中の物質の存在または不存在を検出するステップ、および/または、前記物質のタイプを認定するステップを含む方法を意味する。検出は、当技術分野で知られている方法、および、さらに本明細書に記載の方法(制限されないが、影響を受けたタンパク質(単数または複数)の直接測定、例えばARSAをコードする遺伝子のシーケンシングを含む)により達成することができる。任意の適切な方法を用いて、本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーを検出することができる。これらの方法は、制限されずに、質量分析(例えばHPLC−MS/MS)、蛍光(例えばサンドイッチイムノアッセイ)、HPLC−蛍光またはHPLC−UV(好ましくは遊離リソ−Gb1−スルファチドの誘導体化後)を含む。
好ましく本明細書で用いられるバイオマーカーは、任意の生物学的化合物、例えばタンパク質およびそのフラグメント、ペプチド、ポリペプチド、プロテオグリカン、糖タンパク質、リポタンパク質、炭水化物、脂質、核酸、有機化合物または無機化合物、天然ポリマー、および小分子であり、ある表現型の状態(例えば疾患を有する)の対象由来のサンプル中に、別の表現型の状態(例えば疾患を有さない)と比較して示差的に存在し、対象由来のサンプルから分離され、または対象由来のサンプル中で測定されてよい。さらに、バイオマーカーは完全な無傷の分子であってよく、または、その一部分(好ましくは質量分析により検出される)、抗体、バイオマーカーに特異的に結合する別のタンパク質、バイオマーカーおよび/または蛍光標識に特異的に結合する機能性核酸であってよい。バイオマーカーの測定可能な態様が患者の所定の状態、例えば特定のMLDステイタスと関連する場合は、バイオマーカーはさらに情報価値があると考えられる。そのような測定可能な態様は、例えば、対象由来のサンプル中のバイオマーカーの存在、不存在、またはレベル、および/または、バイオマーカーの特性の一部としてのその存在を含んでよい。また、測定可能な態様は、バイオマーカーの測定可能な2以上の態様の比であってよい(例えば、バイオマーカーは公知の識別情報(identity)であってもそうでなくてもよい)。バイオマーカーの特性は、少なくとも2つのそのような測定可能な態様を含み、測定可能な態様は、同一または異なるクラスのバイオマーカー(例えば核酸と炭水化物など)に相当し得る。また、バイオマーカーの特性は、少なくとも3、4、5、10、20、30またはそれ以上の測定可能な態様を含んでよい。一実施態様では、バイオマーカーの特性は、何百または何千もの測定可能な態様を含む。別の実施態様では、バイオマーカーの特性は、少なくとも1つのバイオマーカーの少なくとも1つの測定可能な態様、および、少なくとも1つの内部標準の少なくとも1つの測定可能な態様を含む。
本発明に係る方法の一実施態様では、対象由来のサンプルに内部標準を添加する。サンプルへの内部標準(本明細書においてISとも呼ぶ)の前記添加、すなわち、本発明に係る方法に供せられるサンプルのスパイキングにより、サンプル中のIS濃度が分かり、例えば、HPLC質量分析クロマトグラムなどにおける内部標準のピークより下の面積(すなわちピーク面積)を判定することにより、ピーク面積と、物質(例えば、ISおよび/または遊離リソ−Gb1−スルファチドなどの本発明のバイオマーカー)の濃度との関係を、例えば遊離リソ−Gb1−スルファチドのピーク面積とISのピーク面積との比を計算することによって計算することができることが理解されよう。当業者は、様々な分子をISとして用いてよいことをさらに理解するであろう。それにもかかわらず、バイオマーカー(遊離リソ−Gb1−スルファチドなど)のような分子と比較して、似た化学構造を有するIS、または、同位体標識されたリソ−Gb1−スルファチドが好ましい。それに関連して、本発明者らは、一実施態様において、リソ−Gb1−スルファチドの正確な判定に影響し得る濃度でそれ自体として天然には存在しないリソ−Gb2を選択した。好ましい実施態様では、本発明の方法において、本発明のバイオマーカー(単数)またはバイオマーカー(複数)(例えば遊離リソ−Gb1−スルファチド)から、ISである分子を区別することができる。さらに好ましい実施態様では、ISは、理想的には存在しないか、または天然では稀である分子であるように選択する。対象由来のサンプルに内部標準が添加される本発明の実施態様では、サンプルへの前記添加の前に、エタノールなどの溶媒中に溶解されるように、ISを添加することが好ましい。さらに好ましい実施態様では、溶媒は、前記溶媒がタンパク質沈殿を生じることが可能なように、好ましくは、本発明の方法に供した際にタンパク質沈殿ステップを生じることが可能なように、選択する。
本発明の一部の実施態様では、タンパク質沈殿および/またはタンパク質沈殿ステップは、本発明の方法の一部である。本明細書において用いられる沈殿は、好ましくは、溶液中での固形物の形成、すなわち、例えば、対象由来のサンプル(血清など)中でのタンパク質沈殿物の形成を意味することが理解されよう。沈殿(例えばタンパク質沈殿)がサンプル中で生じる場合は、形成される固形物を沈殿物と呼び、または、遠心分離機により圧縮される場合は、ペレットと呼ぶ。固形物の上に残る液体は、どちらの場合にも、上清と呼ぶ。本発明は、沈殿および/または前記上清および前記沈殿物またはペレットを分離する異なる方法を検討し、とりわけ、沈下または沈降および遠心分離を含む。当業者は、タンパク質沈殿に関する、および/または、上清およびタンパク質沈殿物の分離に関する、さらなる方法を知っていて、それにもかかわらず、前記当業者は、方法(好ましくは本発明の方法)が用いられて沈殿したタンパク質が本発明との関連で用いられるカラムまたはHPLCカラムなどの装置を無効にする場合、沈殿したタンパク質は、好ましくは、溶媒および/またはサンプルから分離されることを理解するであろう。
本発明の一部の実施態様では、サンプルにおいて本発明の方法により判定される本発明のバイオマーカー(例えば遊離リソ−Gb1−スルファチド)のレベルを、別のサンプル(例えば同一患者由来、別の患者由来、コントロール由来、および/または、同一または異なる時点由来)において本発明の方法により判定される本発明と同一または別のバイオマーカーのレベル、および/またはカットオフ値、および/またはコントロールのレベル、および/またはISのレベルと、比較する。それに関連して、本明細書において用いられる「比較する(comparing)」または「と、比較する(compared to)」は、好ましくは、バイオマーカー(単数または複数)のレベルの2以上の値の数学的比較を意味する。したがって、少なくとも2つのそのような値を互いに比較した場合に、前記値のうちの1つがより高い、より低い、または同一であるかどうか、直ちに明らかであろう。
本明細書で好ましく用いられる用語「カットオフ値」は、本発明のバイオマーカーのレベル、濃度、および/または力価を指し、より好ましくは、バイオマーカーのレベル範囲、濃度範囲および/または力価範囲を指す。
特定のその一実施態様では、遊離リソ−Gb1−スルファチドをバイオマーカーとして用いて、0.05ng/ml(血漿または血清)の遊離リソ−Gb1−スルファチドに関するカットオフ値を用いてMLDを診断することが可能である。
さらなる特定のその実施態様では、遊離リソ−Gb1−スルファチドをバイオマーカーとして用いて、0.05ng/ml(血漿または血清)の遊離リソ−Gb1−スルファチドに関するカットオフ値を用いて、100%の感度および100%の特異性で、MLDを診断することが可能である。
本発明の一部の実施態様では、バイオマーカーのレベルを、コントロールにおいても判定する。本明細書において用いられるコントロールは、好ましくは対象由来のサンプルであり、前記対象のMLDステイタスは分かっている。一実施態様では、コントロールは健康患者のサンプルである。さらなる実施態様では、前記バイオマーカーの量を健康患者の前記サンプルに加えてから、健康患者の前記サンプル中の前記バイオマーカーのレベルを判定する(本発明の方法での前記の添加バイオマーカーを含む)。さらなる実施態様では、コントロールは、MLDステイタスが分かっている少なくとも1の対象由来のサンプルであり、そのような、分かっているMLDステイタスは、重度、軽度、または、健康なMLDステイタス(例えばコントロール患者)を含む。また、さらに好ましい実施態様では、MLDステイタスは、前記疾患において影響を受ける遺伝子(単数)または遺伝子(複数)の変異に関する遺伝子状態も含み(ARSAをコードする遺伝子を含む)、すなわち、ホモ接合型および/または複合ヘテロ接合型の変異を有する対象を含み、対象は変異のキャリアである。
さらに好ましい実施態様では、コントロールは、MLDの治療がされていない対象由来のサンプルである。また、さらに好ましい実施態様では、コントロールは、単一の対象由来のサンプル、または、異なる対象由来のサンプルおよび/または異なる時点に対象(単数または複数)から得られたサンプルのプールである。
本明細書において用いられる用語「レベル」または「バイオマーカーのレベル」は、好ましくは、対象のサンプル中の、好ましくは本発明のバイオマーカーの、より好ましくは遊離リソ−Gb1−スルファチドの、物質の濃度および/または物質の力価を意味する。当業者は、特定の実施態様では、前記サンプルは、未処理サンプルとして本発明の方法に必ずしも供する必要はなく、その方法は前記バイオマーカーのレベルを判定するステップを含み、すなわち、前記サンプルは、例えば、タンパク質沈殿、分離、例えば遠心分離および/またはHPLCのステップに供してよく、そして続いて、質量分析などを用いてバイオマーカーのレベルを判定するステップに供してよいことを理解するであろう。本発明により判定される本発明のバイオマーカーのレベルとの関係で、用語、バイオマーカーの「a」レベル、が用いられる場合は常に、本発明の方法により判定され、および、本発明の方法(単数または複数)に供されるサンプル中に含まれる、本発明のバイオマーカーの「the」レベル、を意味することに、さらに注目すべきである。好ましいサンプルは、血液サンプル、血清サンプルまたは血漿サンプルのいずれかである。
異なるグループにおけるバイオマーカーの平均またはメジアンのレベルが、統計的に有意であることが計算される場合は、バイオマーカーのレベルは、異なるステイタスのMLD間で異なる。統計的有意性に関する一般的検定は、とりわけ、t検定、ANOVA、Wilcoxon、Mann−Whitney、オッズ比およびKruskal−Wallisを含む。バイオマーカーは、単独または組み合わせて、対象がある表現型の状態または別のものに属する相対的なリスクの尺度を与える。したがって、本発明のバイオマーカーは、本発明の実施態様において、疾患、薬または治療の治療有効性に関するマーカーとして有用である。
本明細書において用いられる用語、バイオマーカーの「レベルを判定する」は、好ましくは、対象由来のサンプル中の少なくとも1つの物質の量を定量化するステップ、および/または、対象の体の一部分(例えば唾液、血液、リンパ、血清、血漿または溶液)に含まれる前記物質の量を定量化するステップ、および/または、対象における前記物質の量を定量化するステップを含む方法を意味し、物質は、バイオマーカーを含む群から選択される。
対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを検出および/または判定するステップは、それゆえ、好ましくは、遊離リソ−Gb1−スルファチドを検出することができない、および/または、そのレベルをGb1−スルファチドから区別および/または切り離して判定することができないように、対象の血液中に存在するGb1−スルファチドが化学的に変換、形質転換または誘導体化されていない、ということを含むことを、当業者は理解するであろう。当業者は、メタノール水酸化ナトリウム中での加水分解などによる脱アシル化ステップに供される、対象由来のサンプル中に存在するGb1−スルファチドは、Gb1−スルファチドから脂肪酸部分の切断をもたらし、したがって、化学的に変換、形質転換または誘導体化された形態のGb1−スルファチドを不必要にもたらし、それは遊離リソ−Gb1−スルファチドから区別することができないということを理解するであろう。したがって、Gb1−スルファチドから区別して、遊離リソ−Gb1−スルファチドが、診断MLDを診断する方法において有用であることを認識することは、本発明者らの有利な点である。
本発明の方法の好ましい実施態様では、当該方法は、対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを検出および/または判定するための方法であって、ここで、対象由来のサンプル中に存在するGb1−スルファチドは、Gb1−スルファチドの脱アシル化をもたらすステップに供されず、好ましくは、サンプル中に含まれるGb1−スルファチドから脂肪酸部分の切断をもたらすステップに供されない。本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、対象由来のサンプル中に存在するGb1−スルファチドは、化学的に変換、形質転換または誘導体化されない。また、本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、対象由来のサンプル中に存在する遊離リソ−Gb1−スルファチドは、Gb1−スルファチドから脂肪酸部分の切断をもたらすステップの前に、および/または、Gb1−スルファチドが化学的に変換、形質転換または誘導体化されるステップの前に、対象由来のサンプル中に存在するGb1−スルファチドから分離される。また、さらに好ましい実施態様では、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを検出および/または判定するステップ(バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである)は、質量分析の適用によるHPLCを用いた分離ステップの後に行なわれる。
本発明の方法の一実施態様では、対象は、ARSAをコードする遺伝子の機能性部分の変異がない場合、および/または、ARSAをコードする遺伝子の変異が、それぞれのタンパク質またはその活性の低減または不足をもたらさず、MLDと関連する症状をもたらさない場合に、MLDに関して健康であるとみなされる。
対象は、MLDと関連する症状を患わない場合に、MLDに関して健康対象であるとみなされる。さらに、本発明の方法の一実施態様では、対象は、ARSAをコードする遺伝子の機能性部分の変異がない場合、および/または、ARSAをコードする遺伝子の変異が、それぞれのタンパク質またはその活性の低減または不足をもたらさず、MLDと関連する症状をもたらさない場合に、MLDに関して健康であるとみなされる。
それに関連して、上記に概説される変異のキャリアである患者は、前記キャリアがMLDと関連する症状を患わないかもしれないとしても、本発明の意味において健康対象であるとはみなされないということを理解することが重要である。本発明の方法の特定の実施態様では、MLDはMLDキャリアも含む。本発明の方法は、MLDキャリアを同定するために等しく適切であることに注目することは重要である。本発明の方法は、対象がMLDキャリアであるかどうか、または、対象がMLDキャリアでないかどうかを、診断するのに適切である。本発明の方法は、対象が健康であるかどうか、MLDキャリアであるかどうか、またはMLD患者であるかどうかを、区別する、診断する、および/または示差的に診断するのにさらに適切である。
前記変異、すなわちARSAをコードする遺伝子の変異は、対象由来のサンプルを、本明細書に記載のそのような変異に関する遺伝子試験に供せば検出される。本発明のさらなる実施態様では、健康対象由来のサンプルは、本発明の方法において、コントロールサンプルとして、またはブランクマトリックスとして用いられる。本明細書において用いられるブランクマトリックスは、好ましくは、健康対象由来のサンプルである。それにもかかわらず、そのようなブランクマトリックスは、元々のレベルの遊離リソ−Gb1−スルファチドを含んでよいことが理解されよう。
本発明の一実施態様では、バイオマーカーのレベルは、疾患または障害を患っている、または発症するリスクがあることに関する、対象に関する指標である。本発明に係る方法により判定されるバイオマーカーのレベルは、バイオマーカーのコントロールレベルと比較され、ここで前記比較の結果は、疾患の診断を可能にする。
より具体的には、バイオマーカーのコントロールレベルに対して対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを比較するステップは、カットオフ値に対して対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを比較するステップを含み、ここで、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがカットオフ値よりも高い場合は、MLDを患っている、または、発症するリスクがあることを示し;および/または、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがカットオフ値よりも低い場合は、対象はMLDを患っていない、または発症するリスクがないことを示す。
本明細書において用いられる用語「疾患を発症するリスクがある」は、好ましくは、対象が前記疾患を患う可能性があること、および/または、特に治療が適用されない場合に、前記疾患または前記疾患と関連する症状を発症することを意味する。それに関連して、LSDは遺伝子疾患であることが分かっており、したがって、親戚、特に、前記疾患または前記疾患の原因であることが知られる変異を有する親の存在は、対象、例えば2人のMLD患者の子どもが、前記疾患を発症するリスクがあることの指標である。疾患の進行は、症状の出現および前記症状の重症度に関連することがさらに理解される。したがって、今現在、症状を患っていない人であっても、例えば、疾患を引き起こすことが知られる遺伝子の遺伝学的変異が存在するが、症状または重度の症状が生じていないために、疾患を発症するリスクがあり得る。それにもかかわらず、本発明の方法およびバイオマーカーは、特に、本発明に係る前記バイオマーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)が増大した場合に、そのような対象は、症状の存在または不存在に関係なく、疾患を発症するリスクがあると診断することができることが直ちに理解されよう。したがって、本発明に係る方法は、対象がMLDを患うリスクがあるか判定することを可能にする。また、対象がMLDを患うリスクがあるか、またはないかに基づいて、治療を適用し、維持し、低減し、増大し、または適用しないことも、本発明の範囲内である。
また、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを、コントロールレベルに対して比較するステップにより、MLDの重症度を判定することを可能にすることも、本発明の範囲内であり、ここで、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがカットオフ値の範囲内である場合は、対象は、より重度のステイタスまたは進行のMLDを、患っている、または、発症するリスクがあることを示し;および、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルがコントロールレベル(すなわちカットオフ値)よりも低いまたは高い場合は、対象は、より低い重度のステイタスまたは進行のMLDを、患っていない、または発症するリスクがないことを示す。本発明のさらなる実施態様では、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルをコントロールレベルに対して比較するステップは、前記対象におけるバイオマーカーのレベルをコントロール由来のサンプル中に検出されるバイオマーカーのレベルと比較するステップを含み、ここで、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルが、コントロールサンプルよりも増大し、増加し、または高い場合は、対象がMLDを患っている、および/または、発症するリスクがあることを示し;および/または、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルが、コントロールサンプルよりも増大し、増加し、または高い場合は、対象が、より重度のステイタスまたは進行のMLDを患っている、または、発症するリスクがあることを示す。前記コントロールは、好ましくは、健康対象、MLDを患っているかMLDの症状を患うリスクがある対象、ARSAをコードする遺伝子の変異または変異の組み合わせに関する試験が陽性の対象を含む群から選択され、ここで、ARSAをコードする遺伝子の変異または変異の組み合わせは、対象が、より重度またはより低い重度のステイタスまたは進行のMLDを発症する見込みの指標である。本発明のさらなる実施態様では、コントロールレベルがコントロール由来のサンプルにおいて判定され、ここで、場合により、コントロール由来のサンプルにおける遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを判定する前に、遊離リソ−Gb1−スルファチドが特定の量でコントロール由来のサンプルに添加される。
対象においてMLDを診断する方法を確立することができたことは、本発明者らの有利な点であり、ここで、前記方法は、対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含み、前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、好ましくは、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを判定するステップをさらに含み、および、より好ましくは、対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルをカットオフ値に対して比較するステップをさらに含み、高い感度、すなわち、少なくとも99、0%、99、1%、99、2%、99、3%、99、4%、99、5%、99、6%、99、7%、99、8%、99、9%または100%の感度を示す。換言すれば、感度は、それ自体として正しく同定される実際の陽性の割合が高いことを意味し、疾患を有するとして正しく同定されるMLD患者のパーセンテージが上記に概説したのと同じくらいに高いことを意味する。対照的に、本明細書に記載の統計的試験では、特異性は、陰性として正しく同定される陰性の割合、換言すれば、MLDを有さないとして正しく同定される健康患者のパーセンテージを意味する。したがって、当業者は、例えば本発明に係る方法の一部の実施態様では診断試験における最適な予測は、一般に、100%の感度を得ること、すなわち、MLDなどの疾患を有する、または、前記疾患を患うリスクがある全ての患者を、それぞれ、疾患を有する、または、前記疾患を患うリスクがあるとして予測することを目的とすることを理解するであろう。そのような感度は、遊離リソ−Gb1−スルファチドに関する0.05ng/ml(血漿または血清)のカットオフ値を用いて達成することができる。
本発明に係る方法の一実施態様では、少なくとも80.0%、85.0%、90.0%、95.0%、97.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%の特異性が好ましい。本発明に係る方法の本発明のさらなる実施態様では、前記方法は、対象におけるMLDの進行状態によらずに、対象におけるMLD診断を可能にする。そのような特異性は、遊離リソ−Gb1−スルファチドに関する0.05ng/ml(血漿または血清)のカットオフ値を用いて達成することができる。
より具体的には、本発明の方法は、MLDの初期のステイタスを有する対象におけるMLD診断、および、MLDの発展または進行したステイタスを有する対象におけるMLD診断を可能にする。
MLDを正確に診断する方法の力は、方法の感度として、方法の特異性として、または、レシーバーオペレート特性(receiver operated characteristic)曲線(本明細書において「ROC曲線」とも呼ぶ)の下の面積として、一般に測定される。ROC曲線は、診断方法の異なる陽性カットオフ値に関する、偽陽性率に対する真陽性率のプロットである。ROC曲線は、感度と特異性との間の関係を示す。感度は、試験により陽性であると予測される真陽性のパーセンテージであり、一方で、特異性は、試験により陰性であると予測される真陰性のパーセンテージである。ROC曲線は、1−特異度(specificity)の関数として試験の感度を提供する。ROC曲線の下の面積が大きければ大きいほど、試験の予測値はより強力である。したがって、感度の増大は、特異性の減少を伴う。曲線が左軸およびその結果ROC領域の上端に近づけば近づくほど、試験はより正確である。反対に、曲線がROCグラフの45度対角線に近づけば近づくほど、試験はより不正確になる。したがって、ROCより下の面積は、試験の精度の尺度である。試験の精度は、試験が、問題となっている疾患を有する、および有さないものに、試験されるグループをいかに上手く分けるかに依存する。曲線の下の面積(本明細書において「AUC」とも呼ぶ)の1は、完璧な方法を意味し、一方で、0.5の面積は、より有用でない方法を意味する。したがって、本発明の好ましい診断方法は0.50よりも高いAUCを有し、より好ましい方法は0.9よりも高いAUCを有し、および、最も好ましい方法は0.99よりも高いAUCを有する。
方法の有用性に関する他の有用かつ適切な尺度は、陽性予測値および陰性予測値である。陽性予測値は、陽性として試験する実際の陽性のパーセンテージである。陰性予測値は、陰性としてテストする実際の陰性のパーセンテージである。
当業者は、本発明に係る方法の特異性および/または感度が上述と同じくらいに高く、以下の実施例に記載のように判定されたとしても、本発明の方法を用いて、MLDを有する患者が偽陰性と試験される、またはMLDを有さない患者が偽陽性であると試験される、それぞれのケースが、除外され得ないことを理解するであろう。したがって、当業者は、本発明に係る方法(ここで、バイオマーカーのレベルをカットオフ値と比較し、前記カットオフ値に対する前記比較を、MLDなどの疾患を診断するために用いる)によれば、前記カットオフ値は、特定の疾患の状態を別のものから区別する(例えば、対象がMLDを有することを示すバイオマーカーのレベルを、対象がMLDキャリアであることを示すバイオマーカーのレベルから、および/または、健康対象におけるレベルおよび/または値から、区別する)、前記バイオマーカーのレベルを代表することを、直ちに理解するであろう。これを言ったので、本発明の方法によれば(ここで、前記方法はMLDを診断するための方法である)、本発明の方法を用いて、MLDを有する患者が偽陰性と試験される、または、MLDを有さない患者が偽陽性と試験される、または、タイプおよび/または状態が不正確に診断される、それぞれのケースが、除外され得ないことも、当業者にとって明らかである。
前記のケースを考慮すれば、本発明に係る方法の特異性および感度を判定するに際し、特異性および感度は上述の値よりも低い。それにもかかわらず、当業者は、上記に概説されたそのような高い特異性およびそのような高い感度は、MLDを診断するための方法に関して、これまでに開示されたことが決してなかったことも理解するであろう。したがって、実施例部分で報告されるもの以外の患者集合体(例えば患者の数が異なる)が本発明の方法に供される場合、本発明の方法の感度および特異性は変化し得るが、特にバイオマーカーを用いた従来技術における公知の方法が、本発明に係る方法と比較してより高い特異性およびより高い感度を得ることはないということが本発明者らの強い信念であるということに注目することが重要である。このことは、本発明の方法の検出限界は、健康対象における遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを判定することができるので、特に正しい。したがって、本発明の方法を用いて偽陰性と試験された罹患対象は、前記の偽陰性と試験された罹患対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルが健康対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルと同じくらいの高さであるという理由のため、偽陰性であると試験される。前記の偽陰性と試験された対象は、バイオマーカーのレベルが本発明の方法により判定するのに低すぎたという理由のため陰性とは試験されない、ということに注目することが特に重要である。
本明細書において用いられる物質(例えば遊離リソ−Gb1−スルファチド)の「検出限界(limit of detection)」または「判定限界(limit of determination)」(どちらの用語も本明細書において同義で用いられる)は、好ましくは、物質のレベルを判定する方法により判定される物質のレベルであり、ここで、前記検出限界よりも小さいまたは低いレベルは、前記方法により判定することができない。したがって、本明細書において用いられる「カットオフ値」および「検出限界」は、好ましくは、必ずしも同一である必要はないが、どちらも、物質(例えば本発明のバイオマーカー)の特定のレベルを反映するということが直ちに明らかである。対照的に、カットオフ値は、方法の特異性および感度ができるだけ高くなるように好ましくは選択されるということが、直ちに理解されよう。これと対照的に、検出限界は、本発明のバイオマーカーの絶対的レベルを表し、前記バイオマーカーのレベルを判定する方法を用いて検出することのできるバイオマーカーの最小限のレベルを反映する。したがって、検出限界は、物質のレベルを判定する方法、およびその方法によりレベルが判定される物質に、依存するということが直ちに明らかである。当業者は、高い検出限界(例えば理想的なカットオフ値よりも高い)は、試験により陽性であると予測される真陽性のパーセンテージが、バイオマーカーのレベルが前記真陽性と判定され得るかどうかにも依存するために、場合により、方法の感度が低い結果となるということを直ちに理解するであろう。換言すれば、検出限界が理想的なカットオフ値よりも高い場合、カットオフ値よりもわずかに高いバイオマーカーのレベルを有する真陽性およびカットオフ値よりも低いバイオマーカーのレベルを有する陰性の両方に関してバイオマーカーのレベルが判定され得ないので、カットオフ値よりもわずかに高いバイオマーカーのレベルを有する真陽性は、カットオフ値よりも低いバイオマーカーのレベルを有する真陰性から区別され得ない。したがって、低い検出限界が有利であることが直ちに明らかである。したがって、より低い検出限界が、サンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを、より高い特異性および感度で判定するステップを含む、対象におけるMLDを診断する方法を可能にするということを示したことは、本発明者らの有利な点でもある。本明細書において用いられる「理想的なカットオフ値」は、好ましくは、本明細書に記載のカットオフ値であり、前記の理想的なカットオフ値を用いる方法は最も高い特異性および感度を有する。
対象における疾患または障害、好ましくはMLDを本発明の方法により診断することにより前記方法を検証するステップ;対象における疾患または障害、好ましくはMLDを遺伝子試験により診断するステップ(遺伝子をシーケンスするステップ、好ましくは、変異が疾患または障害を引き起こすことが当業者に知られている遺伝子をシーケンスするステップ、より好ましくは、MLDの場合にはARSAをコードする遺伝子をシーケンスするステップを含む);および、前記方法の結果と前記遺伝子試験の結果とを比較するステップ、を含むことは、本発明に係る方法の一実施態様である。本明細書において用いられる健康対象は、好ましくは、前記対象が前記疾患または障害と関連する症状を患っていない場合に、および、遺伝子試験の結果が、疾患または障害を引き起こすことが当業者に知られている遺伝子変異を示さない場合に、疾患または障害に関して健康であるとみなされる。また、健康対象は、MLDを有さないことに関する試験が陽性である対象であることも理解される。好ましい実施態様では、健康対象は、MLDのキャリアでない対象である。
本明細書において用いられる用語、対象における「MLDステイタスを認定する」は、好ましくは、対象においてMLDの存在または不存在を同定または検出すること、対象においてMLDの発症または発症するリスクを予測すること、対象においてMLDの進行を判定すること、対象においてMLDの重症度を判定および/または予測すること、対象がMLDの初期のステイタスまたはMLDの発展または進行したステイタスを患うかどうか判定すること、または、対象においてバイオマーカーのレベルが経時的に有意に変化したかどうかを判定することを含む群から選択される、対象のバイオマーカーの特性の分類を意味する。
本明細書において用いられる用語「対象の治療を扱う」または「対象の扱い」は、好ましくは、MLDステイタスの判定後の臨床医または医師の行動を指す。例えば、本発明に係る方法の結果が決定的でない場合、または、ステイタスの確認が必要である理由がある場合、医師は、影響を受けたタンパク質の機能試験および/またはARSAをコードする遺伝子のシーケンシングなどの新たな試験を要求し得る。あるいは、MLDの治療が適切であることをステイタスが示す場合は、医師はMLDの治療を対象に予定し得る。同様に、ステイタスがネガティブの場合、または、治療が成功したことを結果が示す場合、さらなる扱いは必要でないであろう。それにもかかわらず、当業者は、遺伝子療法の他に、適用される任意の治療をMLD患者に対して生涯適用すべきであることを直ちに理解するであろう。さらに、対象の治療を扱うことが、患者に投与される、MLDの治療として適用される薬の投与量(例えば、ERTに適用される組み換え酵素のユニット数)を決めることを含むことは、本発明の一実施態様である。本発明の方法の一部の実施態様では、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルは、いくつかの時点で判定され、または、バイオマーカーの他のレベル、カットオフ値、および/または、コントロール中の前記バイオマーカーのレベルと比較され、当業者は、治療を適用し、または適用せず、または、治療するためまたは治療しないため、またはMLDの治療を続けるために、すでに適用した治療を修正する。
バイオマーカーのレベルのそのような比較が、例えば、前記バイオマーカーのレベルが、カットオフ値などよりも高いこと(すなわち、患者はMLDを有すると診断される);または、同一の患者において、より早い時期に判定されたレベルが、より低いか、または同一であること(すなわち適用された治療が十分でないこと、すなわちレベルの低下をもたらさないこと)を示す場合に、当業者が、用量を適用すること、および/または、用量を維持すること、または用量を修正すること、例えば、用量以上を適用すること、すなわち用量を増やすことは、本発明の範囲内である。一方で、バイオマーカーのレベルのそのような比較が、例えば、前記バイオマーカーのレベルが、カットオフ値などよりも低いこと(すなわち患者はMLD疾患を有さないと診断される);または、同一の患者において、より早い時期に判定されたレベルが、より高いこと(すなわち適用された治療が十分であること、すなわちレベルの低下をもたらすこと)を示す場合に、当業者は、用量を適用し、または適用せず、または、用量を維持または低減し、例えば、用量を適用せず、またはより少ない用量を適用する(すなわち用量を低減する)。本発明の一実施態様では、そのような比較に基づき相対的に高いレベルの遊離リソ−Gb1−スルファチドが、ERTで使用する組み換え酵素を高い用量で用いる指標であり、および/または、そのような比較に基づき相対的に低いレベルの遊離リソ−Gb1が、ERTで使用する組み換え酵素を低い用量で用いる指標である。それにもかかわらず、当業者は患者の病歴を考慮する、すなわち、MLDを患っていてバイオマーカーのレベルがカットオフ値よりも低くなるように治療される患者の対象の治療を扱う当業者は、例えば、治療の中止をすることを決定せず、むしろ、用量を低減する、そして、本発明の方法のさらなる適用の時間間隔を増やすということも、直ちに理解されよう。
MLDの進行は、疾患の進行における異なる時点での対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを判定することにより、本発明に係る方法により判定することができる。本発明に係るMLDを診断する方法の単一適用は、MLDの診断を可能にし、特定の実施態様では、対象がMLDを患っているかどうか、または、発症するリスクがあるかどうかの診断に基づいて、対象の治療を扱うステップを含むということに注目することが重要である。サンプルがこのように本発明の方法に供される対象が、MLDを患っていることまたは発症するリスクがあることに関して陽性であることが試験された場合、熟練した臨床医は、対象の治療を扱うことに関してどのように決定するか、すなわち、対象をどのように治療するか、例えばERTに関して特定の投与量の酵素を適用するか、知っている。対象の治療の扱い方に対する、熟練した臨床医の決断とは独立に、熟練した臨床医は、より遅い時点での本発明に係る方法の少なくとも1つの追加の適用について決定し得るということが、直ちに理解されよう。したがって、異なる時点で判定されたバイオマーカーのレベル(ここで、異なる時点は少なくとも2つの時点を意味する)を比較し得ることは、本発明の一実施態様である。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、1人の特定の患者由来のサンプルにおける本発明のバイオマーカーのレベルは、患者由来のサンプルが得られた時点における前記患者での疾患の重症度と相関し得ることを見いだした。したがって、より早い時点のサンプルにおいて判定されるバイオマーカーのレベルと比較した、より遅い時点のサンプルにおいて判定されるバイオマーカーのレベルの増大は、より早い時点での対象の状態と比較した、より遅い時点での、対象のより重度の状態に関する指標であるということが直ちに理解されよう。より早い時点のサンプルにおいて判定されるバイオマーカーのレベルと比較した、より遅い時点のサンプルにおいて判定されるバイオマーカーのレベルの低下は、より早い時点での対象の状態と比較した、より遅い時点での、対象のより低い重度の状態の指標である。したがって、一態様では本発明は、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルをいくつかの時点で判定するステップを含む、対象におけるMLDの進行を判定する方法を提供し、ここで、前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。さらなる態様では、本発明は、MLDを患っていることまたは発症するリスクがあることに関する試験が陽性である対象に適用される、少なくとも1つの治療の有効性を判定する方法に関し、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルをいくつかの時点で判定するステップを含み、ここで、前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。本発明の方法は、このように、本発明の方法の結果に基づき、治療の選択、および/または、投与量および/または選択する治療の用量の調節をすることを可能にすることが、当業者により直ちに理解されよう。例えば、対象がMLDの治療を予定している場合、本発明に係る対象におけるMLDを診断する方法は、3ヶ月毎に適用してよく、したがって、判定されるバイオマーカーのレベルは、対象に適用される治療(単数または複数)および/または治療(単数)/治療(複数)の有効性を判定するために比較される。安定したレベルのバイオマーカーが経時的に維持される状態に対象が到達したら、本発明に係る、対象におけるMLDを診断する方法の適用頻度は6ヶ月毎に減少してよい。治療の用量を変える場合、例えば、ERTにおいて適用される組み換え酵素のユニットを減少または増加する場合、本発明に係る対象におけるMLDを診断する方法の適用頻度は、3ヶ月毎に戻してよい。対象由来のサンプル中のバイオマーカーの判定されるレベルの比較により、熟練した医師は、バイオマーカーのレベルが増大、減少するのか、または、安定したレベルのバイオマーカーが経時的に維持されるのか、認識する。したがって、熟練した医師は、本発明に係る方法を用いて判定されるバイオマーカーのレベルの比較に従って、治療の用量(例えばERTで適用される組み換え酵素のユニット)を低減すること;治療の用量を増大すること;または、治療の用量を維持することを決定してよい。12ヶ月の期間内の、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの有意な低減は、MLDの治療の成功に関する指標であり、ここで、本明細書において用いられる低減は、好ましくは、期間の終わりに判定される本発明の方法により判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルが、前記期間の初めに判定される本発明の方法により判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルに対して比較されることを意味する。したがって、熟練した医師は、適用する治療の用量を低減すること、または、治療の用量を維持することを、決定し得る。遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの低減が著しく弱い場合は、熟練した医師は、治療の用量を増大することを決定し得る。遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの低減が治療の有効性と相関することを認識したこともまた、本発明者らの有利な点である。12ヶ月などの期間内に遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルがより激しく低減すればするほど、治療(例えばERT、SRTまたはシャペロンなどに基づく治療)はより成功である。したがって、本発明の方法が、治療の有効性または対象に適用される少なくとも2つの治療の有効性の比較に関するということは、本発明のさらなる実施態様である。
したがって、当業者は、MLDの発展(すなわち進行)および単一の対象における治療の有効性を、対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの頻繁な判定によりモニターすることができるということを理解するであろう。
さらなる態様では、本発明は、MLDを患っていることまたは発症するリスクがあることに関する試験が陽性である対象に適用される少なくとも1つの治療の有効性を判定する方法に関し、対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルをいくつかの時点で判定するステップを含み、ここで、前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである。対象の治療を扱うことに関して上記に概説したことに関連して、当業者は、1つの治療または少なくとも2つの治療の組み合わせの有効性が、本発明の方法を用いて比較され得ることを直ちに理解するであろう。したがって、本発明の方法によって、MLDのための様々な新規の薬、剤形、用量または治療を試験および比較することが可能である。
本発明に係るMLDを診断する方法が、対象が以前にMLDを治療されたことがあるかどうか、または治療されたことがないかどうかとは独立していることは、本発明の一実施態様である。したがって、対象由来のサンプルは、以前にMLDを治療されたことがある対象由来のサンプル、および、以前にMLDを治療されたことがない対象由来のサンプルであってよい。したがって、本発明の方法が、対象の治療を扱うステップ、および/または、対象の扱い後に対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを判定するステップを含むことは、本発明のさらなる実施態様である。前記の対象の治療は、対象がMLDを患っている、または発症するリスクがあるかどうかの診断に基づくことができ;対象の扱い後の対象由来のサンプル中のバイオマーカーの検出に基づくことができ;または、対象の扱い後の対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルの判定に基づくことができる。それにもかかわらず、当業者は、MLDを有さない一部の患者またはMLDの治療が成功した一部の患者のサンプルは、検出限界よりも低い遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを示すことを理解するであろう。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、対象由来のサンプル中に存在する遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルは、MLDを患っている患者における疾患の重症度とさらに相関すると仮定する。それに関連して、本発明者らは、本明細書で得られた結果を評価することにより(例えば本明細書の図2に示す)、原理的には遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルは特定の個体で異なり、より具体的には同一の変異(単数または複数)を有する特定の個体で異なり得ると仮定するが、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルが高ければ高いほど、臨床スコアによる統計的意義の観点からMLDの進行の重症度はより高くなるとことを見いだした。それにより、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルは、ARSAをコードする遺伝子の明らかな変異に関する試験が陽性である患者(一般に軽度またはより重度の進行のMLDを引き起こすことが知られる)では、前記患者で判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルは、そのような変異に一般的に関連する重症度と統計的に相関するという点において、MLDの重症度と相関する。
したがって、本発明の異なる態様のさらなる実施態様は、対象におけるMLDの重症度を判定する方法に関し、
a)対象由来のサンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップ(ここで前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである)、および、
b)例えば、対象における遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベル(好ましくは本発明の方法により判定される)を、臨床スコアに対して比較することにより、MLDの重症度を判定するステップ、を含む。
それに関連して、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルが、本発明の方法に供されるそれぞれの遺伝子(ホモ接合型および複合ヘテロ接合)のシーケンスの際に、通常はより重度の進行のMLDに関連するL444Pa変異を示すMLDを患っている患者由来のサンプルにおいて判定される場合、遊離リソ−Gb1−スルファチドの平均レベルは、同一の方法を用いてそれぞれの遺伝子のシーケンスの際に、通常はより軽度の進行のMLDに関連する変異を示すMLDを患っている患者由来のサンプルにおいて判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドの平均レベルよりも、高いことに注目することが重要である。本明細書において用いられる「通常はより重度の進行のMLDに関連する変異」は、好ましくは、より重度の進行のMLDを引き起こすことが知られ−これは特に、対象が前記変異に関してホモ接合型である場合に当てはまる。それに対応して、一実施態様では、ホモ接合型変異(通常はより軽度の進行のMLDに関連する)よりも高い遊離リソ−Gb1−スルファチドの平均レベルが、ホモ接合型において判定される。さらに、複合ヘテロ接合型を有する患者(通常はより重度の進行のMLDに関連する)は、ホモ接合型の人よりも有意に低い遊離リソ−Gb1−スルファチドレベルを有する。当業者は、MLDの重症度または症状またはその症状全般を分類する臨床スコアを知っている。したがって、患者におけるMLDの進行を予測すること、より具体的には、本発明の方法により判定されるバイオマーカーのレベルに基づいてMLDの重症度を判定することは、本発明の方法の一実施態様である。
当業者は、対象由来のサンプル中で判定される本発明のバイオマーカーのレベル(ここでバイオマーカーの前記レベルは上述のようにMLDの重症度と相関する)が、特定の治療および/または投与量を適用すること、または、前記治療の用量の、指標となることを理解するであろう。例えば、本発明の方法により判定されるバイオマーカーのレベルが、「重度の」MLDステイタスと相関する場合、その対象はMLDの治療が予定され、本発明により対象においてMLDを診断する方法を3月毎に適用してよく、対象に適用される治療(単数または複数)および/または治療(単数)/治療(複数)の有効性を判定するために、こうして判定されるバイオマーカーのレベルを比較する。対象が、バイオマーカーのレベルが「軽度の」MLDと相関し、または、安定したレベルのバイオマーカーが経時的に維持されるステイタスに到達する場合は、本発明による対象においてMLDを診断する方法の適用頻度は6ヶ月毎に減少し得る。
別の態様では、本発明は、MLDを治療するための組成物の有効性を判定する方法に関する。そのような方法は、MLDを有する対象において遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを判定するステップ;前記対象に、前記化合物を、前記化合物の有効性を判定するのに十分な量で投与するステップ;前記対象において遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを再度判定するステップ;前記組成物の投与前および投与後に判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを比較するステップ(ここで、前記組成物の投与後に判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルと比較して、前記組成物の投与後に判定される遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルが低いことは、MLDを治療するための前記化合物の有効性を示す。)を含んでよい。
MLDは主に子どもに発症し、予測できない若い年令で死亡することが多く、たいていは生後数か月または数年以内である。多くの他の子どもは、それらの疾患の様々な症状を何年も患った後にこの疾患で死亡する。
MLDの診断のための好ましいバイオマーカーは、対象の年齢によらず高い感度および高い特異性でのMLDの診断を可能にする。
本発明のバイオマーカーが、対象の年齢によらずに、対象におけるMLDの診断に有用であることを見いだしたことは、本発明者らの有利な点である。したがって、本発明の方法が、対象の年齢によらずに(好ましくは対象が少なくとも2ヶ月の月齢である場合に)、対象におけるMLD診断を可能にすることは、発明の一実施態様である。本発明の方法の好ましい実施態様では、対象は幼齢の対象である。本明細書において用いられる幼齢の対象は、好ましくは、30才未満、より好ましくは20才未満、最も好ましくは10才未満の対象である。
本発明の診断方法の感度および特異性、すなわち正しく同定される実際の陽性の割合は、少なくともある程度は、試験される患者群に依存することが、当業者により理解されよう。本発明および本発明の様々な方法に関して、患者または対象は、好ましくは少なくとも2ヶ月の月齢のヒトである。
本発明の方法、特に、異染性白質ジストロフィーを診断するための本発明の方法は、異染性白質ジストロフィーの幼若型および/または異染性白質ジストロフィーの成体型を診断するための方法であることは、本発明の範囲内である。
また、0.05ng/ml(血漿または血清)の遊離リソ−Gb1−スルファチドに関するカットオフ値は、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルまたは濃度を判定するのに用いられる分析方法の判定限界(本明細書において検出限界とも呼ぶ)が、0.05ngの遊離リソ−Gb1−スルファチド/ml(血漿または血清)である場合に、または、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルまたは濃度を判定するのに用いられる分析方法の判定限界が、0.05ngの遊離リソ−Gb1−スルファチド/ml(血漿または血清)に設定される場合に、好ましくは適用されるものであるということも、当業者により理解されよう。
以下に示す実施例では、対象由来のサンプルとして、ヒト血漿または血清を用いた。それにもかかわらず、当業者は、使用する対象由来のサンプルのタイプ(例えば唾液、液体、血漿、血清、全血、乾燥血液フィルターカード上の血液または別の血液産物を含む)によって、本発明の方法をサンプルのタイプに調節しなければならず、そしてさらに、カットオフ値を、以下の実施例に示す方法によるサンプルの各タイプに関して決定しなければならないということを理解するであろう。本発明者らは、ヒト血漿のサンプルの代わりに以下に記載する方法においてヒト血清のサンプルを使用することは、ヒト血清のサンプルおよびヒト血漿のサンプルが同一の対象から同一の時点に得られる場合、および、サンプルが並行して測定された場合、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの観点から同一の結果をもたらすこと;より具体的には、同一のカットオフ値をもたらすことを見いだした。
(実施例1)ヒト血漿/血清における遊離リソ−Gb1−スルファチドの検出方法
機器
対象由来の血漿サンプルにおいて遊離リソ−Gb1−スルファチドを検出するために、以下の機器を用いた。
Figure 2016506501
試薬
対象由来の血漿サンプルにおいて遊離リソ−Gb1−スルファチドを検出するために、以下の試薬を用いた。
値が温度に依存する限りにおいて(例えばpH値)、そのような値は25℃の温度で決定した。
Figure 2016506501
本明細書において用いられる略称「p.a.」は、「前分析」を意味する。
本明細書において用いられる用語「purum」は、好ましくは、規定値より高い純度を有する化学物質の市販グレードを意味する。
本明細書において用いられるASTM−Iは、逆浸透および紫外線(UV)酸化を含む精製方法により達成される水のグレードの標準的な純度を指す。
校正標準の調製
5mLの50%MeOH中に0.62mgのリソ−Gb1−スルファチド(Matreyaより取得)を溶解して、リソ−Gb1−スルファチドストック溶液を調製した。
続いて、溶液V1−A−626を、以下に示すように、50μLのリソ−Gb1−スルファチドストック溶液および10mLの50%MeOHの混合物として調製した:
Figure 2016506501
続いて、溶液V1−A−626またはより高い濃度の校正標準を健康なヒト由来のブランクヒト血漿中にスパイキングすることにより、校正標準を調製した。
スパイキングスキームの詳細を以下に示す。
Figure 2016506501
校正のために、0.05〜5.00ng/mLの間の4つの濃度レベルを有する校正標準、すなわち校正標準Std1B−626、Std2B−626、Std3B−626およびStd4B−626を用いた。
コントロールサンプルの調製
溶液V1−A−626またはより高い濃度のコントロールサンプルを、ブランクヒト血漿中にスパイキングすることにより、コントロールサンプルを調製した。
スパイキングスキームの詳細を以下に示す。
Figure 2016506501
ブランクマトリックス
ブランクマトリックスとして、検出可能なレベルの遊離リソ−Gb1−スルファチドを含まない健康対象のヒト血漿を用いた。そのようなブランクマトリックスをスパイキングのために用いる前に、リソ−Gb1−スルファチドは、その不存在を評価するために、このマトリックスにおいて判定しなければならない。
試験サンプル
内部標準の調製
2mLのDMSO/MeOH(1/1;vol/vol)中に1.00mgのリソ−Gb2(Matreyaより取得)を溶解させて、内部標準(IS1)ストック溶液を調製した。
続いて、内部標準の検量線用溶液(Working Solution)を、82μLのIS1ストック溶液および500mLのエタノールの混合物として調製した。エタノールは任意の市販元から購入してよく、ここでエタノールは、本明細書に記載の方法に適切なグレードを有する無水エタノールである。当業者は、100μLの前記内部標準の検量線用溶液をサンプルに添加すると、50μlのサンプル中に含まれるタンパク質は沈殿せざるを得ないことを認識するであろう。
サンプルおよび溶液の保管
コントロールサンプルまたは試験サンプルのいずれかを、−20℃より低い温度ですぐに保管し、または、同一の条件下で保管する前にアリコートを新しいガラスバイアル中に移した
濃縮溶液(ストック溶液、V1−A−534など)、および、内部標準ストック溶液を、次のスパイキングまでの間、−20℃より低い温度で冷凍した。
内部標準の検量線用溶液を、使用するまで−20℃よりも低い温度で保管した。
本発明者らは、遊離リソ−Gb1−スルファチドが、上記の溶液内で安定であることを見いだした。また、リソ−Gb1−スルファチドは、−20℃よりも低い温度での血漿/血清における少なくとも数週間の保管、および、血漿/血清での数回よりも多い冷凍/解凍サイクルにおいても安定である。
分析のためのサンプル調製
分析バッチで用いられる全てのサンプルは、以下のようにして分析のために調製する:
冷凍サンプルを、周囲条件から得られる、およそ20〜25℃のウォーターバス中で解凍した。融解後、サンプルを混合した。
50μLのサンプルをサンプルバイアル中に移した。
100μLの内部標準の検量線用溶液(EtOH中)をサンプルに加えた。
続いて、このように得られた混合物を、DVX−2500マルチチューブボルテックス装置を用いて2500rpmで約30秒間混合した。
このように得られた混合物を、4000rpmで2分間、相分離のために遠心分離した。
適切な(円錐)自動サンプラーバイアル中への、注入目的に適切な容量の上清の移行(約100μL)
方法
クロマトグラフィーおよびオートサンプラーのパラメーター
上述のように分析のために調製されたサンプルを、続いて、以下に記載の方法に供した:
Figure 2016506501
本明細書で用いたYMC Pro C8カラム(Nr.OS12S031003QT)は、YMC(ドイツ)から購入した。
「±」の範囲が示されるパラメーターは、数列の間に調節され得るパラメーターを表すことが、当業者により理解されよう。本明細書において用いられる数列は、好ましくは、規定数(好ましくは連続して分析される最大150)のサンプルのバッチであり、ここで、パラメーターは、変更されないままの流れおよび温度を含む。数列の間で行なわれる調節および校正は当業者に知られており、カラムの交換を含む。
規定制限範囲内のこれらの調節は小さな変更であり、測定ステーションにおいて試験の生データ内に記録される。
検出
このように調製されたサンプルを、続いて検出方法に供した。そのパラメーターを以下に記載する:
Figure 2016506501
当業者は、遊離リソ−Gb1−スルファチドを検出する方法、および/または、質量分析を用いて対象由来のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを判定する方法は、対象由来の前記サンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドの特異的な検出および/または定量化を可能にする他の遷移およびフラグメントも用いてよいことを、理解するであろう。
結果の評価および計算
上記に規定した方法により得られた結果を評価および計算するために、以下のプロトコルを採用した。
概数化(Rounding)手順
クロマトグラフィーデータシステム(CDS)に送り込まれて検索された濃度データを、5桁の有効数字に概数化した。スプレッドシートでのさらなる計算を完全な計算精度まで行なって、続いて、レポートすべき有効数字/小数位に概数化した。それ故に、中間結果の偏差が、概数化によって引き起こされる場合がある。精度および変動係数(CV)は、それぞれ小数第一位および小数第二位でレポートされる。
概数化手順に関する注意:レポートされる最後の桁は、次の桁が「5」以上であった場合は切り上げる。
回帰および統計
校正標準に基づき、ピーク面積の比(対象由来のサンプル中に含まれる遊離リソ物質のピーク面積/内部標準のピーク面積)を用いて、データ処理ソフトウェアを用いて校正曲線のフィッティングを確立した。評価される全バッチ中の各分析物の濃度を計算するために用いられる重み係数1/conc.を用いた内部標準メソッドA線形(y=ax+b)回帰モデルを用いて、遊離リソ物質の濃度を評価した。濃度は以下の式を用いて計算した:
Figure 2016506501
平均値に基づいて、精度結果(CVの観点から)および確度(式を下に示す)を、プログラム「Lotus 123」を用いて計算する。
Figure 2016506501
適切な統計モデルは、例えば、
Green,J.R.,Statistical Treatment of Experimental Data(Elsevier,New York,1977),page 210 ff
Lothar Sachs,Angewandte Statistik−Anwendung statistischer Methoden(Springer,Berlin,Heidelberg,New York,Tokyo 1984)に記載されている。
ソフトウェア
データ確度、データ精度、統計および計算は、Analyst(登録商標)ソフトウェア1.4.2、またはそれより上(AB SCIEX、USA/Canada)、および、Lotus 1−2−3 97またはそれより上(Lotus Corp、USA)を用いて行なった。
ハンドブック
Figure 2016506501
上記1に記載のプロトコルを用いて、実施例2により詳細に記載の150の対象由来の150の血漿サンプルのHPLC質量分析クロマトグラムを作成した。健康なコントロールの人の、および、MDL陽性と診断された患者の、遊離リソ−Gb1−スルファチドおよびISのピーク強度を示す例示的なHPLC質量分析クロマトグラムを、図1Aおよび図1Bに示す。
より具体的には、図1Aは、健康対象由来のサンプルの遊離リソ−Gb1−スルファチド(上のパネル)およびIS(下のパネル)のピーク強度(cps)を、保持時間(分)に対する関数として示す、HPLC質量分析クロマトグラムを示す。図1Bは、MLD患者由来のサンプルの遊離リソ−Gb1−スルファチド(上のパネル)およびIS(下のパネル)のピーク強度(cps)を、保持時間(分)に対する関数として示す、HPLC質量分析クロマトグラムを示す。
本明細書において用いられる、物質の保持時間は、好ましくはx軸上に描かれ、溶質(例えば本発明に係るバイオマーカーおよび/または内部標準)の注入時間と、前記溶質の最大ピークの溶出時間との間の経過時間である。当業者は、本明細書に記載の方法による物質の保持時間は、前記溶質の特有の性質であり、同定目的に用いることができることを理解するであろう。リソ−Gb2を内部標準として含む内部標準の検量線用溶液を、上述のサンプルに添加した。本発明に係る方法に供せられるサンプルへのISの前記添加(すなわちサンプルのスパイキング)により、サンプル中のISの濃度が分かり、そして、前記HPLC質量分析クロマトグラムにおける内部標準の、ピークより下の面積(すなわちピーク面積)を判定することにより、ピーク面積と、物質(例えばISおよび/またはバイオマーカー)の濃度との間の関係を計算することができるということを理解することが重要である。より正確には、当業者は、HPLC質量分析クロマトグラム(例えば図1Aまたは図1Bに示すHPLC質量分析クロマトグラム)に示される物質のピーク面積は、HPLC質量分析に供した前記物質の量に関する尺度を表すということを理解するであろう。さらに、当業者は、HPLC質量分析に供された対象由来のサンプル中の物質の量、例えば本発明の方法に供されたサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドの量を、遊離リソ−Gb1−スルファチドのピーク面積の比を用いて計算することができ、その量は、前記方法およびIS(例えば遊離リソ−Gb2)のピーク面積;ならびに、前記方法および前記遊離リソ−Gb1−スルファチドおよび/またはISにより作成された校正曲線により判定される。したがって、これは続いて、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルの判定を可能にする。
遊離リソ−Gb1−スルファチドに関して、<LLOQ(判定限界)は0.025で置き換えられていて、それは検出限界の半分を指す。
(実施例2)試験被験者の遺伝子試験および分類
試験への参加に対する患者の承諾後、患者を、ARSAをコードする遺伝子の変異に関する遺伝子試験に供した。したがって、5〜10mlのEDTA血液を、Seemanら(Seeman et al.,1995;Seeman,N.C.(1995)J.Am.Chem.Soc.117,1194−1200;N.C.Seeman,Biochemistry 34,673−682(1995);N.C.Seeman,Structural Domains of DNA Mesojunctions,Biochemistry 34,920−929(1995);N.C.Seeman,The Chemical Intelligencer 1(3),38−47(1995);N.C.Seeman,Journal of the Chemical Society,Chemical Communications,2249−2250(1995))に従ってシーケンスした。適切な場合は、ARSAをコードする遺伝子以外の遺伝子を、追加で(特にコントロールにおいて)シーケンスした。年齢および性別がマッチしたコントロール患者の試験サンプルを用いて、前記遺伝子試験を調節した。
93の対象の第一のコホート由来の血漿サンプルを分析した。
前記93の対象のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを、実施例1に記載の方法に従って判定した。表1は、前記93の対象の前記サンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのメジアンおよび最低および最高のレベルを示す。前記表1から明らかなように、MLD患者は、他のLSDを患っている対象から明確に区別することができた。そのような他のLSDは、ファブリ病、ゴーシェ病およびC型ニーマン・ピック病を含んだ。
Figure 2016506501
150の対象の第二のコホート由来の血漿サンプルを分析し、それにより、そのような第二のコホートは、第一のコホートを含んだ。
前記150の対象のサンプル中の遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを、実施例1に記載の方法に従って判定した。150の患者の前記の第二のコホートに関し、183サンプルを分析した。そのグループ全体は、25人のMLD患者、3人のキャリア、6人の健康なコントロールおよび他のリソソーム蓄積症を有する116人の患者:5人のゴーシェ患者(27サンプル)、20人のファブリが不明の患者(20サンプル)、11人の男性ファブリ患者(15サンプル)、9人の女性ファブリ患者(11サンプル)、7人のNPC1患者(9サンプル)、6人のNPC1キャリア(9サンプル)、5人のNPA/B患者(5サンプル)、6人のクラッベ病患者(6サンプル)、8人の男性ハンター病患者(8サンプル)、2人の女性ハンター病患者(2サンプル)、3人のGM1ガングリオシドーシス患者(3サンプル)、3人のサンフィリッポB患者(MPS3b)(3サンプル)、9人のMPS6患者(9サンプル)、1人のMPS6キャリア(1サンプル)、1人のテイ・サックス病患者(1サンプル)、4人のMPS1(4サンプル)、3人のサンフィリッポA患者(MPS3a)(3サンプル)、12人のMPS3a患者(Morquio)(12サンプル)および1人のMPS3aキャリア(Morquio)(1サンプル)を含む。これらの患者を、健康なコントロール(「健康コントロール」)、MLDを患っている患者(「MLD」)、MLDキャリアである患者(「MLDキャリア」)、他のリソソーム病を患っている患者(「他のLSD」)に階層化すると、表2に要約したコホートの構成となる。
Figure 2016506501
第二のコホートの分析からの結果を図2に示す。
図2は、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを示すボックスプロットであり;y軸は、本発明に係る方法により患者の血漿において判定された遊離リソ−Gb1−スルファチドの絶対レベル(ng/ml)を示し、ここでx軸は、上記のようにグループ分けした患者のグループを示す。ボックスプロットは、ボックスの底部および上部により、それぞれ患者の各グループの25thおよび75thパーセンタイルを示し;ボックスの中央付近のバンドは各グループの50thパーセンタイル(すなわちメジアン)を示し;ウィスカ(whisker)は、データの平均より上および平均より下の1つの標準偏差を示し;ウィスカの間に含まれない任意のデータは、異常値として小さい円で示す。
(実施例3)遊離リソ−Gb1−スルファチドをバイオマーカーとして用いたMLDの診断
実施例1で定義した患者の第一のコホート由来の血漿サンプルを、実施例1に記載の方法及び分析に供した。前記分析による結果を図2に示す。
図2は、MLD陽性として、または他のLSDを患っているとしてのいずれかで診断された患者における、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを示すボックスプロットである。y軸は、実施例1の方法による患者の血漿において判定された遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベル(ng/ml)を示し、ここでx軸は、実施例2に記載のようにグループ分けした患者のグループを示す。ボックスプロットは、ボックスの底部および上部により、それぞれ患者の各グループの25thおよび75thパーセンタイルを示し;ボックスの中央付近のバンドは各グループの50thパーセンタイル(すなわちメジアン)を示し;ウィスカは、データの平均より上および平均より下の1つの標準偏差を示す。ウィスカの間に含まれない任意のデータは、異常値として小さい円または星で示す。
実施例1で定義した患者の第二のコホート由来の血漿サンプルを、実施例1に記載の方法及び分析に供した。前記分析による結果を図3に示す。
図3は、遊離リソ−Gb1−スルファチドのレベルを示すボックスプロットであり;y軸は、実施例1の方法により患者の血漿において判定された遊離リソ−Gb1−スルファチドの絶対レベル(ng/ml)を示し、ここでx軸は、上記のようにグループ分けした患者のグループを示す(健康コントロール、MLDを患っている患者、MLDキャリアである患者、およびMLDとは異なるLSDを患っている患者)。ボックスプロットは、ボックスの底部および上部により、それぞれ患者の各グループの25thおよび75thパーセンタイルを示し;ボックスの中央付近のバンドは各グループの50thパーセンタイル(すなわちメジアン)を示す。ウィスカは、データの平均より上および平均より下の1つの標準偏差を示す。ウィスカの間に含まれない任意のデータは、異常値として小さい円で示す。
患者の第二のコホートに関して、標準的な蛍光定量的手法を用いて、血漿においてアリールスルファターゼAの活性を判定した。前記分析による結果を図4に示す。
図4は、上記で定義したグループにおけるアリールスルファターゼ酵素活性を示すボックスプロットである。y軸はアリールスルファターゼ酵素(U/mg・タンパク質)を示し、ここでx軸は、上記のようにグループ分けした患者のグループを示す。ボックスプロットは、ボックスの底部および上部により、それぞれ患者の各グループの25thおよび75thパーセンタイルを示し;ボックスの中央付近のバンドは各グループの50thパーセンタイル(すなわちメジアン)を示し;ウィスカは、データの平均より上および平均より下の1つの標準偏差を示し;ウィスカの間に含まれない任意のデータは、異常値として小さい円または星で示す。
異なるバイオマーカー(すなわち遊離リソ−Gb1−スルファチドおよびアリールスルファターゼAの酵素活性)の診断値を比較するため、および、2つのバイオマーカー間の相関を計算するため、MLD患者に関する全てのマーカーの第一の測定値を用いて、上述の方法により得られたデータを初めに総計した。
2つのバイオマーカーの比較のために、対のサンプル統計手法を用いた。その方法は、AUCの数学的等価をMann−Whitney U−統計に活用する(Delong E.R.,Delong D.M.,Clarke−Pearson D.L.,1988,Biometrics,44,837−45.)。
上記実施例1に記載の方法により得られた異なるバイオマーカー(遊離リソ−Gb1−スルファチド)のレベルの精度を評価して、レシーバーオペレーティング特性(ROC)曲線分析(Metz C.E.,1978,Semin Nucl Med,8,283−98; Zweig M.H.,Campbell G.,1993,Clin Chem,39,561−77)を用いて、MLDを有する患者を、MLDを有さない患者から区別した。
PASW Statistics 18,リリースバージョン18.0.2(CopyRight SPSS,Inc.,2009,Chicago,IL,www.spss.com)を用いてROC曲線を計算した。SASソフトウェア、WindowsのSASシステムのVersion 9.2(CopyRight 2008 SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を用いて、ROC曲線および線形混合モデルの比較を行なった。
それぞれのROC曲線を図5に示す。
図5は、遊離リソ−Gb1−スルファチドおよびアリールスルファターゼAのレシーバーオペレーティング特性(ROC)曲線を示すグラフである。x軸は「1−特異性」を示し、y軸は感度を示す。遊離リソ−Gb1−スルファチドは、98%の感度および99.1%の特異性を示し、一方で、アリールスルファターゼAは、最高でそれぞれ、92.1%の感度および94%の特異性を有する。
結果を表3にも要約する。
Figure 2016506501
(実施例4)アリールスルファターゼAの酵素活性に基づく、MLD陽性としての患者の不正確な診断
2人の患者は、アリールスルファターゼの酵素活性が病理学的に減少した;しかしながら、リソ−Gb1−スルファチドは正常であった;1人の患者は変異p.N352Sに関してホモ接合型であり、もう1人は複合ヘテロ接合型であった。
HGMDデータベースにおいて(Institute of Medical Genetics(Cardiff)のヒト遺伝子変異データベース)、この変異p.N352Sは3文献が発行されている(Gieselmann 1989,Proc.Natal.Acad.Sci USA;86(23):9436−40;Baronica 2011,Coll Antropol.2011 Jan;35 Suppl 1:11−6;およびRickettes 1996,Am J Med Genet.67(4):387−92)。それらは、p.N352SをASA偽欠損症と関連付けている(インビトロおよびインビボ試験は、この対立遺伝子が正常な安定性および活性を有することを示すが、より安定性が低く、より活性が低いと予測した)。その上、Gieselmann(1989)は、複合ヘテロ接合型の個体由来の組織におけるARSA活性が、ホモ接合型p.N352Sの個体よりも低いことを示す。これは、HGMDにおける、疾患に関連する多型であり、最も重要なことに、dbSNP(rs2071421)において、このSNPに関するマイナー対立遺伝子の頻度は、一般集団において20%であり、様々なハップマップ集団において13〜39%の間で異なる。最後に、PolyPhenの予測は「良性」である(変異がある可能性は1.2%である)。
本明細書、特許請求の範囲、配列リストおよび/または図面に開示された本発明の特徴は、別個およびそれらの任意の組み合わせのどちらでも、様々なそれらの形態で本発明の理解のための材料となり得る。

Claims (20)

  1. 対象における異染性白質ジストロフィーを診断する方法であって、
    前記方法はステップa)を含み、
    前記ステップa)は、前記対象由来のサンプル中のバイオマーカーを検出するステップを含み、
    ここで、前記サンプルは、血液、乾燥した血液、血清および血漿からなる群より選択され、
    前記バイオマーカーは酵素とは異なる、
    方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    前記酵素は、アリールスルファターゼA、N−アセチル−α−グルコサミニダーゼ、アリールスルファターゼおよびβ−グルクロニダーゼを含む群から選択される、
    方法。
  3. 請求項1から2のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記サンプルが、前記対象の血清サンプル、前記対象の血漿サンプル、または前記対象の乾燥した血液サンプルであり、
    好ましくは、前記対象の血漿サンプルまたは前記対象の血清サンプルである、
    方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記方法はステップb)を含み、
    前記ステップb)は、前記サンプル中に存在するバイオマーカーのレベルを判定するステップを含む、
    方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記バイオマーカーのレベルは、前記対象が異染性白質ジストロフィーを患っているか否か、または、前記対象が異染性白質ジストロフィーを患うリスクがあるか否かの、指標である、
    方法。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記バイオマーカーは、イムノアッセイ、質量分析、バイオチップアレイ、機能性核酸および/または、前記バイオマーカーの蛍光誘導体を用いて検出される、
    方法。
  7. 請求項6に記載の方法であって、
    前記バイオマーカーは、質量分析を用いて検出され、
    好ましくは、質量分析はHPLCと組み合わされる、
    方法。
  8. 請求項7に記載の方法であって、
    質量分析は、SELDI、MALDI、MALDI−Q TOF、MS/MS、TOF−TOFおよびESI−O−TOFを含む群から選択される、
    方法。
  9. 請求項7および8のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記質量分析は、MS/MSを含み、または用いる、
    方法。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、
    ここで、リソ−Gb1−スルファチドは式(I)である、
    方法。
    Figure 2016506501
    (I)
  11. 請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、
    ステップb)は、前記対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルを、カットオフ値と比較するステップを含む、
    方法。
  12. 請求項11に記載の方法であって、
    遊離リソ−Gb1−スルファチドに関する前記カットオフ値が0.05ng/mlである、
    方法。
  13. 請求項1から12のいずれか一項、好ましくは請求項12に記載の方法であって、
    前記対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルが前記カットオフ値よりも高い場合は、前記対象が異染性白質ジストロフィーを患っている、または、異染性白質ジストロフィーを患うリスクがあることの指標であり;
    一方で、前記対象由来のサンプル中のバイオマーカーのレベルが前記カットオフ値よりも低い場合は、前記対象は異染性白質ジストロフィーを患っていない、または、異染性白質ジストロフィーを患うリスクがないことの指標である、
    方法。
  14. 請求項1から13のいずれか一項、好ましくは請求項12から13のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記方法、好ましくは、サンプル中に存在する前記バイオマーカーのレベルの検出および/または判定に用いる分析的方法は、
    遊離リソ−Gb1−スルファチドに関する判定限界が0.05ng/mlである、
    方法。
  15. 好ましくは請求項1から14のいずれか一項に記載の方法における、異染性白質ジストロフィーの診断のためのバイオマーカーの使用であって、
    前記バイオマーカーが遊離リソ−Gb1−スルファチドである、
    使用。
  16. バイオマーカーの検出のための質量分析の使用であって、
    前記バイオマーカーは、遊離リソ−Gb1−スルファチドであり、
    前記質量分析は、好ましくは、MS/MSを含み、または用いる、
    使用。
  17. 請求項16に記載の使用であって、
    前記バイオマーカーは対象由来のサンプル中で検出され、
    それによって、前記サンプルは、前記対象由来の血漿サンプル、前記対象由来の血清サンプル、および、前記対象由来の乾燥した血液サンプルからなる群より選択される、
    使用。
  18. 請求項16から17のいずれか一項に記載の使用であって、
    質量分析がHPLCと組み合わされる、
    使用。
  19. 対象由来のサンプル中のバイオマーカーの存在を判定するキットであって、
    前記キットは、
    a)前記バイオマーカーの相互作用パートナー;
    b)場合により、少なくとも1つのキャプチャー試薬が付着した固体支持体、ここで、前記キャプチャー試薬は、前記バイオマーカーと結合する;および
    c)前記バイオマーカーを検出するための前記固体支持体の使用に関する指示書、
    を含み、
    ここで、前記バイオマーカーは遊離リソ−Gb1−スルファチドである、
    キット。
  20. 請求項19に記載のキットであって、
    前記サンプルは、前記対象由来の血漿サンプル、前記対象由来の血清サンプル、および、前記対象由来の乾燥した血液サンプルからなる群より選択される、
    キット。
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