JP2008248366A - 準結晶粒子分散合金成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 準結晶粒子分散構造を有する合金粉末を固化成形して、安定的に準結晶粒子分散合金成形体を製造できる方法を提供する。
【解決手段】 準結晶相を含む合金粉末からなる準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、前記準結晶相を含む合金粉末を200〜800MPaの圧力で、前記準結晶相の分解温度より低く、前記準結晶相の分解温度より200℃低い温度以上の温度範囲で、加圧成形する。
【選択図】図4
【解決手段】 準結晶相を含む合金粉末からなる準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、前記準結晶相を含む合金粉末を200〜800MPaの圧力で、前記準結晶相の分解温度より低く、前記準結晶相の分解温度より200℃低い温度以上の温度範囲で、加圧成形する。
【選択図】図4
Description
アルミニウム合金等の準結晶相を含む粒子からなり、軽量で高温強度が高い準結晶粒子分散合金成形体の製造方法に関する。
軽量化に資するアルミニウム合金は、固溶強化、結晶粒微細化および分散強化といった手法により、強度向上を図ることができる。固溶強化および結晶粒微細化の場合、再結晶により高温でその結晶構造が変化するため、高温での強度を図ることが困難である。
分散強化材料の一つとして、セラミックス等の硬質粒子をアルミニウム合金基材中に分散させたアルミニウム合金基分散強化材料がある。この分散強化材料の製造には、微細な硬質粒子をアルミニウム合金基材中に均一に分散させることが必要であるが、この微細な硬質粒子を分散させることは極めて困難である。
一方、液体急冷法等の急冷凝固手段により得られるアルミニウム合金を利用した強化材料がある。特許文献1によれば、急冷凝固手段により製造されたアルミニウム基合金が開示されている。このアルミニウム基合金は非晶質と微結晶質の複合体よりなり、その耐熱強度が高められている。特許文献2によれば、非晶質相を含む合金を、その非晶質相の結晶化温度±100℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、平均粒径が10nm以下の微細な結晶粒よりなる金属組織を有する合金の製造方法が開示されている。この製造方法では、非晶質相を微細な結晶相へ変態させるものであり、この変態によって合金の強度向上が図られている。
アルミニウム合金等の耐熱強度向上には、急冷凝固により生成する非平衡・準周期構造の一つである準結晶相が有用である。準結晶相よりなる粒子(以下「準結晶粒子」という)はそのベースとなる合金に比べ、はるかに高い硬さおよび弾性率並びに小さい熱膨張率を有している。また、準結晶粒子は非晶質軽合金よりも熱的安定性が高い。準結晶粒子をアルミニウム合金基材に対する分散強化粒子として利用すれば、アルミニウム合金の耐熱強度を向上させることができる。
準結晶粒子が基材中に分散した分散強化材料は冶金的に準結晶粒子をアルミニウム合金等の基材中に分散させて製造される。そのため、球状粒子である準結晶粒子を基材中へ微細かつ均一に分散させることができる。特許文献3では、粒径サイズ100nm以下の微細球状粒子を約80%までの高体積率で均一に分散させることで、基材に耐熱強度および対摩耗性を向上させている。
しかしながら、前記した準結晶粒子分散構造を有する合金粉末の固化成形は、その成形条件によって、製造される成形体の強度が変化し、固化成形体が使用不能になる場合や成形自体ができない場合がある。本発明の目的は、準結晶粒子を含む合金粉末を固化成形して、安定的に準結晶粒子分散合金成形体を製造できる方法を提供することである。
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、準結晶相を含む合金粉末からなる準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、前記準結晶相を含む合金粉末を200〜800MPaの圧力で、前記準結晶相の分解温度より低く、前記準結晶相の分解温度より200℃低い温度以上の温度範囲で、加圧成形することを特徴とする。
かかる特徴によれば、準結晶粒子を含む粉末が強固に固化成形されるとともに、固化成形過程において合金粉末に含まれる準結晶粒子が熱により分解して、金属間化合物が形成・成長しないので、固化成形体の脆化が防がれる。
請求項2に記載の発明は、準結晶相を含む合金粉末からなる準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、前記準結晶相を含む合金粉末を5以上であって30以下の押出し比で、前記準結晶相の分解温度より低く、前記準結晶相の分解温度より200℃低い温度以上の温度範囲で、押出し成形することを特徴とする。
かかる特徴によれば、押出し加工によって、準結晶粒子を含む粉末が強固に固化成形されるとともに、押出し加工による固化成形過程において合金粉末に含まれる準結晶粒子が熱により分解して金属間化合物が形成・成長しないので、固化成形体の脆化が防がれる。
本発明の準結晶粒子分散合金成形体の製造方法によれば、準結晶粒子を含む粉末が強固に固化成形させるとともに、準結晶粒子の脆化を引き起こすことがない。その結果、耐熱強度に優れたアルミニウム合金等の成形体を提供することができる。
以下、本発明に係る準結晶粒子分散合金成形体の製造方法を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明に係る準結晶粒子分散合金成形体の製造方法では、まず、準結晶相を含む粉末を準備する。この合金粉末は、急冷凝固法により得られる。たとえば、アルミニウム合金の溶湯をガスアトマイズ法により、急冷することにより微細な準結晶粒子が均一に内部に分散したアルミニウム合金粉末を得ることができる。
本発明に係る準結晶粒子分散合金成形体の製造方法では、まず、準結晶相を含む粉末を準備する。この合金粉末は、急冷凝固法により得られる。たとえば、アルミニウム合金の溶湯をガスアトマイズ法により、急冷することにより微細な準結晶粒子が均一に内部に分散したアルミニウム合金粉末を得ることができる。
この急冷凝固合金粉末中の準結晶粒子は球状であり、その平均粒子径が10〜1000nmであることが好ましい。平均粒子径が10nm未満の準結晶粒子および1000nmを超える準結晶粒子は析出強化の機能が小さい。また、この急冷凝固合金粉末中において、準結晶粒子間の平均距離は10〜1000nmの範囲内であることが好ましい。準結晶粒子間の平均距離が10nm以下の場合、同粉末の靭性が低下するため、同粉末から作製する固化成形体の靭性も低下する。一方、準結晶粒子間の平均距離が1000nmを超える場合、アルミニウム合金等のマトリックス相中において準結晶粒子の析出強化機能が十分に発揮されない。
このようにして得られた準結晶相を含む粉末中に均一に分散している準結晶粒子は、その準結晶相の分解温度以上に加熱されると、準結晶相の状態から結晶化状態に変化し、比較的脆い金属間化合物が形成され成長する。そのため、本発明に係る準結晶粒子分散合金成形体の製造方法においては、所定の準結晶相の分解温度よりも低い温度で、準結晶相を含む粉末を保持して固化成形を行う。
この温度範囲で固化成形を行うことにより、準結晶相を含む粉末の準結晶相が分解し、脆い金属間化合物が形成・成長しない。そのため、準結晶粒子分散合金成形体が全体として、脆くなることがない。
また、固化成形により成形体の密度を十分に高くするために、準結晶相を含む粉末をこの準結晶相の分解温度−200℃以上の温度に保持し、200MPa以上800MPa以下の圧力を加えて、固化成形を行う。この固化成形により、準結晶相を含む粉末が十分に変形して、同粉末同士が互いに強固に結合するため、十分密度が高く、準結晶粒子が均一に分散している準結晶粒子分散合金成形体が形成される。
形成された準結晶粒子分散合金成形体は、平均粒子径が10〜1000nmの準結晶粒子が、アルミニウム合金等のマトリックス相中に均一に分散した固化成形体である。この固化成形体の靭性を維持するとともに、アルミニウム合金等のマトリックス相中で準結晶粒子の析出強化機能を十分に発揮させるため、準結晶粒子間の平均距離は10〜1000nmであることが望ましい。
以上の製造方法によって固化成形された準結晶粒子分散合金成形体は比較的耐熱強度が高く、また準結晶相を含む粉末のマトリックス相がアルミニウム合金等の軽合金で形成されている場合、軽量化の効果がある。
固化圧力が200MPa未満の場合、準結晶相を含む粉末の塑性変形が不十分なため、同粉末表面の強固な酸化皮膜が破壊されず、同粉末間の原子の相互拡散が十分におきない。その結果、固化成形が不完全になり、固化成形体が低強度で脆くなる。逆に、固化圧力は高い方が好ましいが、500MPaを超えると、密度、ビッカース硬度等の材料特性は飽和する。そこで、実用的な装置の能力を考慮して、固化圧力の上限を800MPaとした。
本実施形態の準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、固化成形の際に準結晶相を含む粉末に加える圧力は、一軸性の圧力であってもよいし、また静水圧であってもよい。したがって、たとえば、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスで行うことができるものである。
本実施形態の準結晶粒子分散合金成形体の製造方法は、準結晶相を含む粉末をこの準結晶相の分解温度よりも低く、この準結晶相の分解温度−200℃以上の温度に保持して、5以上30以下の押出し比による押出し加工を行う固化成形を行うことにしてもよい。ここで、押出し比とは、準結晶相を含む粉末よりなる被成形体の押出し前の断面積に対する押出し後の断面積の比である。
押出し比が5未満の場合、準結晶相を含む粉末の塑性変形が不十分なため、同粉末表面の強固な酸化皮膜が破壊されず、同粉末間の原子の相互拡散が十分におきない。その結果、固化成形が不完全になり、固化成形体が低強度で脆くなる。逆に、固化圧力は高い方が、同粉末の塑性流動が促進され好ましいが、500MPaを超えると、密度、ビッカース硬度等の材料特性は飽和する。そこで、実用的な装置の能力を考慮して、押出し比の上限を30とした。
この押出し加工によっても、準結晶相を含む粉末が十分に変形して、同粉末同士が互いに強固に結合するため、十分密度が高く、準結晶粒子が均一に分散している準結晶粒子分散合金成形体が形成され、前記した準結晶粒子分散合金成形体と同様な効果を有する。
以下、本実施形態の準結晶粒子分散合金成形体の製造方法の実施例について説明する。
<実施例1>
表1に示す組成の母合金を高周波溶解炉で溶解し、Arガスを用いた高圧ガスアトマイズ法により急冷凝固合金粉末を作製した。この粉末作製におけるガスアトマイズ冷却速度は約1×103℃/秒であった。作製された急冷凝固合金粉末の平均粒径は、約27μmであった。
<実施例1>
表1に示す組成の母合金を高周波溶解炉で溶解し、Arガスを用いた高圧ガスアトマイズ法により急冷凝固合金粉末を作製した。この粉末作製におけるガスアトマイズ冷却速度は約1×103℃/秒であった。作製された急冷凝固合金粉末の平均粒径は、約27μmであった。
作製された急冷凝固合金粉末についてのX線回折の測定結果を図1に示す。このX線回折測定結果から、この急冷凝固合金粉末は、fcc構造の微細なアルミニウム合金結晶相と微細な正20面体準結晶相との混相組織からなることがわかる。図1において、(111)、(200)、(220)および(311)で示すピークは、fcc構造のアルミニウム合金結晶相に該当するものである。(211111)および(221001)で示すピークは正20面体準結晶相に該当するものである。これらピークの解析により、この準結晶相は、Al80Cr13.5Fe6.5であることがわかった。
この急冷凝固合金粉末につき示査熱分析を実施した結果を、図2に示す。本示査熱分析において、昇温速度は毎分40Kである。図2に示す示査熱分析結果において、430℃で立ち上がる第1ピークと475℃で立ち上がる第2ピークがある。第1ピークに対応する発熱反応は、本急冷凝固合金粉末中に残存していた非晶質相が準結晶相に変態する反応である。一方、第2ピークに対応する発熱反応は、準結晶相の分解反応である。以上から、本急冷凝固合金粉末の準結晶分解温度は475℃である。
この急冷凝固合金粉末を、固化温度(固化成形時の急冷凝固合金粉末の温度)および固化圧力(固化成形時に急冷凝固合金粉末に印加される圧力)を変化させて、パルス通電焼結装置により固化成形する試験を実施した。固化成形時の設定温度までの昇温は、設定温度―100℃までは50℃/分、設定温度―20℃までは、20℃/分、さらに設定温度までは10℃/分の昇温速度で行った。成形圧力は、昇温開始時より印加した。
固化圧力を600MPaで一定として、固化温度を250℃、300℃、400℃、450℃、500℃に変化させて固化成形して作製した各固化成形体の密度、ビッカース硬度、組織についての測定結果を表2に示す。
表2からわかるように、固化温度が250℃の場合、密度が理論密度に対して低く、固化成形が不十分である。一方、固化温度が300℃、400℃、450℃の場合、理論密度の固化成形体ができている。
固化温度400℃で固化圧力600MPaの条件で固化成形して作製した固化成形体につき、X線回折測定した結果を図3に示す。同じ固化成形体につきTEM観察および制限視野電子線回折測定行った結果をそれぞれ、図4(a)および図4(b)に示す。
図3からこの固化成形体は、もとの急冷凝固合金粉末と同じ、fcc構造の微細なアルミニウム合金結晶相と微細な正20面体準結晶相との混相組織であることがわかる。
図4(a)からこの固化成形体の組織は、アルミ過飽和固溶体相のマトリックス中に微細粒子が均一に分散している組織であることがわかる。この固化成形体中の微細粒子サイズは10〜1000nmであり、同微細粒子間の平均距離は、10〜1000nmである。また、図4(b)の制限視野電子線回折像のSADパターンが典型的な2回対称パターンを示していることから、この微細粒子は正20面体準結晶相であることがわかる。したがって、この微細粒子は準結晶相からなる準結晶粒子である。
固化温度500℃で固化圧力600MPaの条件で固化成形して作製した固化成形体につき、X線回折測定した結果を図5に示す。図5のX線回折測定結果より、この固化成形体はfcc構造のアルミニウム合金結晶相と金属間化合物相の混相組織となっていることがわかる。
他の固化温度で固化成形した固化成形体についても同様に、X線回折測定を行った結果、表2のように固化温度が300℃、400℃、450℃の各温度で固化成形した固化成形体は、fcc構造の微細なアルミニウム合金結晶相と微細な正20面体準結晶相との混相組織であることがわかった。
急冷凝固合金粉末の準結晶分解温度より高い固化温度である500℃では、固化成形体中の準結晶相が分解して、金属間化合物が形成・成長している。その結果、ビッカース硬度が上昇し脆くなっている。以上より、固化成形時の固化温度は、準結晶分解温度より低く、準結晶温度−200℃以上に設定する必要があることがわかる。
次に、固化温度を400℃で一定として、固化圧力を150MPa、200MPa、400MPa、600MPa、800MPaに変化させて固化成形して作製した各固化成形体の密度、ビッカース硬度、組織についての測定結果を表3に示す。
表3からわかるように、固化圧力が150MPaの場合、密度が理論密度よりも低く、固化成形が不十分である。一方、固化圧力が200MPa以上の場合、準結晶分散構造を有する理論密度の固化成形体ができている。また、固化圧力が600MPa以上の場合、固化成形体の密度およびビッカース硬度は飽和している。以上から、固化成形時の固化圧力は200MPa〜800MPaの範囲であることが望ましいことがわかる。
<実施例2>
実施例1で作製した急冷凝固合金粉末を用いて、押出し固化成形試験を実施した。
本試験において、押出し固化成形は図6に示す工程によりなされた。すなわち、実施例1で作製した急冷凝固合金粉末を冷間成形後、金属製カプセルに封入し、脱ガスした押出し用日レットを電気炉で所定の温度まで加熱した後、押出し機により押出し固化成形を行った。
実施例1で作製した急冷凝固合金粉末を用いて、押出し固化成形試験を実施した。
本試験において、押出し固化成形は図6に示す工程によりなされた。すなわち、実施例1で作製した急冷凝固合金粉末を冷間成形後、金属製カプセルに封入し、脱ガスした押出し用日レットを電気炉で所定の温度まで加熱した後、押出し機により押出し固化成形を行った。
押出し比を11で一定とし、押出し固化温度(以下「押出し温度」という)を250℃、300℃、400℃、450℃、500℃に変化させて、押出し固化成形を実施し、作製された各固化成形体の密度、ビッカース硬度、組織についての測定結果を表4に示す。
押出し温度が250℃の場合、温度が低すぎて急冷凝固合金粉末の変形抵抗が大きく、固化成形体を作製できなかった。一方、押出し温度が300℃、400℃、450℃の場合、理論密度の固化成形体ができている。
押出し温度400℃で押出し比11の条件で押出し固化成形して作製した固化成形体につき、X線回折測定した結果を図7に示す。同じ固化成形体につきTEM観察および制限視野電子線回折測定行った結果をそれぞれ、図8(a)および図8(b)に示す。
図7からこの固化成形体は、もとの急冷凝固合金粉末と同じ、fcc構造の微細なアルミニウム合金結晶相と微細な正20面体準結晶相との混相組織であることがわかる。
図8(a)からこの固化成形体の組織は、アルミ過飽和固溶体相のマトリックス中に微細粒子が均一に分散している組織であることがわかる。この固化成形体中の微細粒子サイズは10〜1000nmであり、同微細粒子間の平均距離は、10〜1000nmである。また、図4(b)の制限視野電子線回折像のSADパターンが典型的な2回対称パターンを示していることから、この微細粒子は正20面体準結晶相であることがわかる。したがって、この微細粒子は準結晶相からなる準結晶粒子である。
押出し温度500℃で押出し比11の条件で押出し固化成形して作製した固化成形体につき、X線回折測定した結果を図9に示す。図9のX線回折測定結果より、この固化成形体はfcc構造のアルミニウム合金結晶相と金属間化合物相の混相組織となっていることがわかる。これは、押出し温度が準結晶分解温度よりも高かったため、急冷凝固合金粉末中の準結晶相が分解した結果である。
他の押出し温度で押出し固化成形した固化成形体についても同様に、X線回折測定を行った結果、表4のように押出し温度が300℃、400℃、450℃の各温度で押出し固化成形した固化成形体は、fcc構造の微細なアルミニウム合金結晶相と微細な正20面体準結晶相との混相組織であることがわかった。
以上より、押出し成形においても押出し固化成形時の押出し温度は、準結晶分解温度より低く、準結晶温度−200℃以上に設定する必要があることがわかる。
次に、押出し温度を400℃で一定として、押出し比を3.5、5、11、15、30に変化させて押出し固化成形して作製した固化成形体の密度、ビッカース硬度、組織についての測定結果を表5に示す。
表5からわかるように、押出し比が3.5の場合、密度が理論密度よりも低く、押出し固化成形が不十分である。一方、押出し比が5以上の場合、準結晶分散構造を有する理論密度の固化成形体ができている。また、押出し比が11以上の場合、固化成形体の密度およびビッカース硬度は飽和している。以上から、押出し固化成形時の押出し比は5〜300の範囲であることが望ましいことがわかる。
<実施例3>
表6に示す組成の母合金を高周波溶解炉で溶解し、水ガトマイズ法により急冷凝固合金粉末を作製した。この粉末作製における水アトマイズ冷却速度は約1×105℃/秒であり、実施例1で作製したガスアトマイズ法により作製した急冷凝固合金粉末の冷却速度より速い。作製された急冷凝固合金粉末の平均粒径は、約16μmであった。
表6に示す組成の母合金を高周波溶解炉で溶解し、水ガトマイズ法により急冷凝固合金粉末を作製した。この粉末作製における水アトマイズ冷却速度は約1×105℃/秒であり、実施例1で作製したガスアトマイズ法により作製した急冷凝固合金粉末の冷却速度より速い。作製された急冷凝固合金粉末の平均粒径は、約16μmであった。
この急冷凝固合金粉末を用いて、実施例2と同様な図6に示す工程により、押出し固化成形試験を行った。押出し固化成形は、押出し温度は400℃、また押出し比は11に設定して行った。
本実施例の固化成形体につき、実施例1および2と同様にX線回折、TEM観察および電子線回折により、準結晶相からなる微細粒子がアルミ合金結晶相中に均一に分散した組織であることがわかった。図10に実施例3の固化成形体のTEM観察結果を示す。図10に示すTEM観察の結果から、準結晶粒子径は概ね15〜30nmであり、また準結晶粒子の間隔は概ね15〜25nmである。
<実施例4>
表7に示す組成の母合金を高周波溶解炉で溶解し、Arガスを用いた高圧ガスアトマイズ法により急冷凝固合金粉末を作製した。この粉末作製におけるガスアトマイズ冷却速度は約5×102℃/秒であり、実施例1で作製したガスアトマイズ法により作製した急冷凝固合金粉末の冷却速度より遅い。作製された急冷凝固合金粉末の平均粒径は、約50μmであった。
表7に示す組成の母合金を高周波溶解炉で溶解し、Arガスを用いた高圧ガスアトマイズ法により急冷凝固合金粉末を作製した。この粉末作製におけるガスアトマイズ冷却速度は約5×102℃/秒であり、実施例1で作製したガスアトマイズ法により作製した急冷凝固合金粉末の冷却速度より遅い。作製された急冷凝固合金粉末の平均粒径は、約50μmであった。
この急冷凝固合金粉末を用いて、実施例2と同様な図6に示す工程により、押出し固化成形試験を行った。押出し固化成形は、押出し温度は400℃、また押出し比は11に設定して行った。
本実施例の固化成形体につき、実施例1および2と同様にX線回折、TEM観察および電子線回折により、準結晶相からなる微細粒子がアルミ合金結晶相中に均一に分散した組織であることがわかった。図11に実施例4の固化成形体のTEM観察結果を示す。図11に示すTEM観察の結果から、準結晶粒子径は概ね500〜1000nmであり、また準結晶粒子の間隔は概ね500〜1000nmである。
Claims (2)
- 準結晶相を含む合金粉末からなる準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、
前記準結晶相を含む合金粉末を200〜800MPaの圧力で、前記準結晶相の分解温度より低く、前記準結晶相の分解温度より200℃低い温度以上の温度範囲で、加圧成形することを特徴とする準結晶粒子分散合金成形体の製造方法。 - 準結晶相を含む合金粉末からなる準結晶粒子分散合金成形体の製造方法において、
前記準結晶相を含む合金粉末を5以上であって30以下の押出し比で、前記準結晶相の分解温度より低く、前記準結晶相の分解温度より200℃低い温度以上の温度範囲で、押出し成形することを特徴とする準結晶粒子分散合金成形体の製造方法。
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