JP2008247066A - 車両の運動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両が急激に不安定になってしまう事態を防止あるいは抑制する。
【解決手段】目標横力、目標前後力、目標ヨーモーメントとなるように、前後左右の各タイヤ1FL〜1RRへの横力fxiおよび前後力fyiが個々独立して変更制御される(i=各タイヤを区別する識別子)。タイヤ力検出センサ20で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率ηiが決定される。負荷率ηiが所定値以上となる飽和タイヤが存在することが検出されたとき、飽和タイヤにおける横力不足分が、飽和タイヤに対して左右反対側にある他のタイヤに加算される。
【選択図】図7
【解決手段】目標横力、目標前後力、目標ヨーモーメントとなるように、前後左右の各タイヤ1FL〜1RRへの横力fxiおよび前後力fyiが個々独立して変更制御される(i=各タイヤを区別する識別子)。タイヤ力検出センサ20で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率ηiが決定される。負荷率ηiが所定値以上となる飽和タイヤが存在することが検出されたとき、飽和タイヤにおける横力不足分が、飽和タイヤに対して左右反対側にある他のタイヤに加算される。
【選択図】図7
Description
本発明は、車両の運動制御装置に関するものである。
車両の運動制御、特に姿勢制御を行う技術の1つとして、各タイヤのタイヤ力を個々独立して変更制御するものが提案されている。特許文献1には、前後左右の4つのタイヤの負荷率が互いに均等となるように制御するものが提案されている。ここで、タイヤ力は、タイヤに作用している横力と前後力とを合成した力であり、タイヤが発生できる最大タイヤ力に対する実際のタイヤ力の割合が、タイヤの負荷率とされる。換言すれば、最大タイヤ力と実際のタイヤ力との差分力はタイヤの余裕力となり、最大タイヤ力に対する上記差分力の割合は、タイヤ余裕率となる。そして、最大タイヤ力は、主としてタイヤの接地荷重と路面μ(μは摩擦係数)とによって決定されることになる。
特開2005−145256号公報
ところで、各タイヤのタイヤ力を個々独立して変更制御する運動制御は、運転者によってハンドル操作されたとき、ブレーキ操作されたとき、さらにはアクセルペダルが踏み込み操作されたときのように、各タイヤのタイヤ力が大きく変更されて車両の姿勢状態が不安定になる過渡期において重要となり、とりわけ障害物の回避操作が行われるときのように、車両の限界付近での制御として重要となる。
車両の限界付近での各タイヤのタイヤ力の変化(つまり負荷率の変化)、例えばハンドル操作量を徐々に増大させたときのタイヤ力の変化は、全タイヤが同時に同じタイヤ力でもって変化することはまれで、通常は、ある一部のタイヤのタイヤ力がほぼ飽和状態となり(負荷率がほぼ100%)、その後、他のタイヤのタイヤ力が徐々に飽和していくという過程を経ることになる。
一方、車両の限界付近では、車両が急激に不安定にならないように運動制御することが望まれることになる。このような観点から、一部のタイヤがほぼ飽和状態となる飽和タイヤとなったときは、飽和タイヤによる車両のコントロールがそれ以上は期待できないことから、その後において車両が急激に不安定にならないようにする上で極めて重要となる。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、各タイヤのタイヤ力を個々独立して変更制御する場合に、車両が急激に不安定になってしまう事態を防止あるいは抑制できるようにした車両の運動制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって飽和タイヤが存在することが検出されたとき、該飽和タイヤにおける横力不足分を算出する不足横力算出手段と、
前記不足横力算出手段で算出された不足横力を、前記飽和タイヤに対して左右反対側にある他のタイヤに加算する横力増大手段と、
を備えているようにしてある。
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって飽和タイヤが存在することが検出されたとき、該飽和タイヤにおける横力不足分を算出する不足横力算出手段と、
前記不足横力算出手段で算出された不足横力を、前記飽和タイヤに対して左右反対側にある他のタイヤに加算する横力増大手段と、
を備えているようにしてある。
上記第1の解決手法によれば、飽和タイヤにおいて不足する横力を、飽和タイヤとは左右反対側に位置する他のタイヤの横力を増大させることによって補償するようにしてあるので、飽和タイヤが検出された後に車両が急激に不安定になってしまう事態が防止されることになる。勿論、横力の補償は、左右関係にあるタイヤ同士で行うので、前後関係にあるタイヤ間でもって横力の補償を行う場合に比して、車両姿勢の変化、特にヨーモーメントの変化を生じさせないようにする上でも好ましいものとなる。以上に加えて、飽和タイヤが存在するといる車両限界付近での車両安定制御を、極めて簡単に行うことができる。
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2、請求項3、請求項7、請求項8に記載のとおりである。すなわち、
前記飽和タイヤ検出手段によって、左右で対をなす2つのタイヤがそれぞれ飽和タイヤであることが検出されたとき、該各飽和タイヤにおける前後力を減少させる前後力減少手段と、
前記前後力減少手段によって減少された前後力を、前記飽和タイヤに対して前後方向の位置関係となる他のタイヤの前後力として加算する前後力増大手段と、
をさらに備えているようにしてある(請求項2対応)。この場合、左右位置関係にあるタイヤ間でもって横力の補償ができないときは、飽和タイヤの前後力を減少させることによって飽和タイヤについての横力を確保しつつ、不足する前後力が前後位置関係にある他のタイヤでもって補償されることになる。なお、前後位置関係にあるタイヤ間で前後力を補償することは、横力を補償する場合に比して、車両の姿勢変化、特にヨーモーメント変化を生じさせにくいものとなる。
前記飽和タイヤ検出手段によって、左右で対をなす2つのタイヤがそれぞれ飽和タイヤであることが検出されたとき、該各飽和タイヤにおける前後力を減少させる前後力減少手段と、
前記前後力減少手段によって減少された前後力を、前記飽和タイヤに対して前後方向の位置関係となる他のタイヤの前後力として加算する前後力増大手段と、
をさらに備えているようにしてある(請求項2対応)。この場合、左右位置関係にあるタイヤ間でもって横力の補償ができないときは、飽和タイヤの前後力を減少させることによって飽和タイヤについての横力を確保しつつ、不足する前後力が前後位置関係にある他のタイヤでもって補償されることになる。なお、前後位置関係にあるタイヤ間で前後力を補償することは、横力を補償する場合に比して、車両の姿勢変化、特にヨーモーメント変化を生じさせにくいものとなる。
前記減少される前後力が制動力であって、かつ前記前後力増大手段による前後力の増大によって前記他のタイヤも飽和タイヤになるときは、前記前後力減少手段および前後力増大手段の作動が禁止される、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、全てのタイヤを積極的に飽和タイヤにしてしまう事態を避ける上で好ましいものとなる。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項4に記載のように、
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、左右で対をなす2つのタイヤが飽和タイヤであることが検出されたとき、該各飽和タイヤにおける前後力を減少させる前後力減少手段と、
前記前後力減少手段によって減少された前後力を、前記飽和タイヤに対して前後方向の位置関係となる他のタイヤの前後力として加算する前後力増大手段と、
を備えているようにしてある。上記第2の解決手法によれば、請求項2に対応した効果と同様に効果を得ることができる。
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、左右で対をなす2つのタイヤが飽和タイヤであることが検出されたとき、該各飽和タイヤにおける前後力を減少させる前後力減少手段と、
前記前後力減少手段によって減少された前後力を、前記飽和タイヤに対して前後方向の位置関係となる他のタイヤの前後力として加算する前後力増大手段と、
を備えているようにしてある。上記第2の解決手法によれば、請求項2に対応した効果と同様に効果を得ることができる。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第3の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項5に記載のように
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、前後いずれか一方のタイヤにのみ飽和タイヤが存在することが検出されたとき、目標ヨーモーメントとなるように前後他方のタイヤの横力を補正する横力補正手段と、
を備えているようにしてある。上記第3の解決手法によれば、前後関係にあるタイヤのうち、飽和タイヤとなっていない他のタイヤを有効に利用して、目標ヨーモーメントとして、車両の急激な姿勢変化を防止あるいは抑制することができる。また、飽和タイヤが存在するときの車両限界付近での車両安定制御を、極めて簡単に行うことができる。
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、前後いずれか一方のタイヤにのみ飽和タイヤが存在することが検出されたとき、目標ヨーモーメントとなるように前後他方のタイヤの横力を補正する横力補正手段と、
を備えているようにしてある。上記第3の解決手法によれば、前後関係にあるタイヤのうち、飽和タイヤとなっていない他のタイヤを有効に利用して、目標ヨーモーメントとして、車両の急激な姿勢変化を防止あるいは抑制することができる。また、飽和タイヤが存在するときの車両限界付近での車両安定制御を、極めて簡単に行うことができる。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第4の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項6に記載のように
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、前後両方のタイヤについて飽和タイヤが存在することが検出されたとき、目標ヨーモーメントとなるように全タイヤの制動力を調整する制動力調整手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、安全方向への制御となる制動力制御によって目標ヨーモーメントとして、車両の急激な姿勢変化を防止あるいは抑制することができる。また、飽和タイヤが存在するときの車両限界付近での車両安定制御を、極めて簡単に行うことができる。
前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、前後両方のタイヤについて飽和タイヤが存在することが検出されたとき、目標ヨーモーメントとなるように全タイヤの制動力を調整する制動力調整手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、安全方向への制御となる制動力制御によって目標ヨーモーメントとして、車両の急激な姿勢変化を防止あるいは抑制することができる。また、飽和タイヤが存在するときの車両限界付近での車両安定制御を、極めて簡単に行うことができる。
前記各解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項7、請求項8に記載のとおりである。すなわち、
前記タイヤ力配分制御手段によって決定された各タイヤ毎の横力と前後力とに基づいて各タイヤの予測負荷率を決定する予測負荷率決定手段を備え、
前記飽和タイヤ検出手段は、前記予測負荷率に基づいて前記飽和タイヤの検出を行うようにされている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、タイヤ力配分制御手段によって決定される各タイヤの横力と前後力とから各タイヤについての予測負荷率を決定して、この予測負荷率に基づいて飽和タイヤが存在するか否か等をシュミレーション的に決定することができる。
前記タイヤ力配分制御手段によって決定された各タイヤ毎の横力と前後力とに基づいて各タイヤの予測負荷率を決定する予測負荷率決定手段を備え、
前記飽和タイヤ検出手段は、前記予測負荷率に基づいて前記飽和タイヤの検出を行うようにされている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、タイヤ力配分制御手段によって決定される各タイヤの横力と前後力とから各タイヤについての予測負荷率を決定して、この予測負荷率に基づいて飽和タイヤが存在するか否か等をシュミレーション的に決定することができる。
タイヤ力配分制御手段が、次式(1)に基づく評価関数Jが最小となるように、各タイヤに配分する横力fxiと前後力fyiを決定する、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、評価関数Jの最小化制御という簡単な計算手法によって、タイヤ力の配分制御を行なうことができる。特に、対角線上に位置するタイヤ同士の負荷率が互いに均等となる配分制御とされ、しかも前左右タイヤの負荷率を加算した値が最小となるようにつまり各タイヤの負荷率が最小となるようにな配分制御とされる。
J=K1×(η1+η2)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|) −−(1)
ただし、
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、評価関数Jの最小化制御という簡単な計算手法によって、タイヤ力の配分制御を行なうことができる。特に、対角線上に位置するタイヤ同士の負荷率が互いに均等となる配分制御とされ、しかも前左右タイヤの負荷率を加算した値が最小となるようにつまり各タイヤの負荷率が最小となるようにな配分制御とされる。
J=K1×(η1+η2)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|) −−(1)
ただし、
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
本発明によれば、各タイヤのタイヤ力を個々独立して変更制御する場合に、車両が急激に不安定になってしまう事態を防止あるいは抑制することができる。
図1において、車両のとしての自動車VCは、左前輪1FLと、右前輪1FRと、左後輪1RLと、右後輪1RRとを有し、各車輪を特に区別する必要のないときは、車輪1として総称することとする。また、車輪について使用した符号を、そのタイヤについての符号として用いることもある。各車輪1は、車体に対して、サスペンションアーム等を介して上下方向に揺動可能に保持されている。各車輪1は、個々独立して、その転舵角度、制動力および駆動力が変更可能となっている他、接地荷重も変更可能となっている。このため、各車輪1には、舵角制御装置10、制動力制御装置11,駆動力制御装置12,サスペンション制御装置13が個々独立して設けられている。
前記舵角制御装置10は、例えば、各車輪1を転舵させる力を付与する油圧式や電気式のアクチュエータを利用して構成することができる。前記制動力制御装置11は、例えば、車輪1に付与するブレーキ力を調整する油圧式あるいは電気式のアクチュエータを利用して構成することができ、特に最近の車両において搭載されていることの多いABS制御装置やトラクション制御装置を利用することができる。
前記駆動力制御装置12は、各車輪共通用のエンジンやモータからの駆動力をトルク配分制御するものとして構成することができ、この他、各車輪1毎に個々独立して駆動モータを有する場合は、この各駆動モータの発生トルクを制御するものとして構成することができる。前記サスペンション制御手段13は、いわゆるアクティブサスペンション制御装置において用いられている車高調整用のシリンダ装置を制御するものとして構成することができる。
各車輪1には、個々独立して、そのタイヤ力等を検出するタイヤ力センサ20が設けられている。このタイヤ力センサ20としては、例えば、各車輪1が保持されるハブに組み込まれた6分力センサを用いることができる。この6分力センサによって、左右、前後、上下の各方向において車輪(つまりタイヤ)に作用している力を検出することが可能となっている。
図1において、Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)であり、このコントローラUは、後述するように、各車輪1のタイヤ力配分を制御するものとなっている。コントローラUを含む制御系統の全体が、ブロック図的に図2に示される。この図2において、コントローラUによって、前述した各制御装置10〜13が制御される。このため、コントローラUには、前述のタイヤ力センサ20からの信号の他、各種センサS1〜S5からの信号が入力される。センサS1は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサである。センサS2は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサである。センサS3は、ハンドル15(図1参照)の操作量を検出するハンドルセンサである。センサS4は、路面μ(摩擦係数)を検出するμセンサである(図1をも参照)。
コントローラUは、前述したセンサS1〜S5からの信号に基づいて、車体重心位置での目標前後力Fyoと目標横力Fxoと目標ヨーモーメントYMoとを決定する。そして、この目標前後力Fyoと目標横力Fxoと目標ヨーモーメントYMoとを満足するように、後述のようにして、各車輪1(各タイヤ)のタイヤ力を個々独立して制御する。
ここで、タイヤ力について、図3を参照しつつ説明する。まず、Fmaxで示す円が摩擦円であり、最大タイヤ力となる。この最大タイヤ力Fmaxは、主として接地加重と路面μとによって決定される。タイヤに作用している前後力がFyで示され、横力がFxで示される。前後力Fyと横力Fxの合成力Fxyが実際のタイヤ力であり、タイヤ力Fxyは、「(Fxの2乗+Fyの2乗)の1/2乗」となる。そして、最大タイヤ力Fmaxに対するタイヤ力Fxyの割合が、負荷率ηとなる。また、最大タイヤ力Fmaxからタイヤ力Fxyを差し引いた差分力△fが、さらに発揮できるタイヤ力の余裕力であり、また、最大タイヤ力に対する差分力△fの割合が、タイヤ余裕率となる。
運動制御において、重要なことは、各タイヤについて、そのタイヤ力Fxyがその最大タイヤ力Fmaxを超えないようにすることである(負荷率を100%未満にする)。特に、全ての車輪1がほぼ同時に負荷率100%を超えないようにすることが、車両の急激な姿勢変化を防止あるいは抑制する上で重要となる。
本実施形態では、基本的に、各タイヤへのタイヤ力の配分制御は、4つの車輪1について、対角線上に位置する(平面視において対角線上に位置する)対となる車輪を想定した制御が行われる。すなわち図5,図6に示すように、左前輪1FLと右後輪1RRとが対となる車輪(タイヤ)を構成し、同様に、右前輪1FRと左後輪1RLとが対となる車輪(タイヤ)を構成する。
そして、本実施形態では、対となる左前輪(タイヤ)1FLの負荷率η1と、右後輪1RR(タイヤ)の負荷率η4とが互いに均等となるように制御される。同様に、対となる右前輪(タイヤ)1FRの負荷率η2と、左後輪1RL(タイヤ)の負荷率η3とが互いに均等となるように制御される。
タイヤ力配分制御の実際を、図示的に示したのが図5,図6である。すなわち、図5は、安定して車両が運転されている状態であり(例えば直進定常運転状態)、各車輪のタイヤについて、その負荷率η1〜η4がほぼ同じ値で、かつタイヤ力にも十分に余裕がある状態である。図5の状態から、ブレーキ操作、アクセル踏み込み操作あるいはハンドル操作が行われて、車両の限界付近の状態になると、各タイヤへのタイヤ力の配分状態が、例えば図6に示すように変更される。図6の状態では、1組目の対となる右前輪(タイヤ)1FRの負荷率η2と、左後輪1RL(タイヤ)の負荷率η3とが、互いに均等とされつつ、ほぼ飽和した極めて大きい値に変化されて、余裕タイヤ力を殆ど有しない状態となる。この一方、もう1組の対となる左前輪(タイヤ)1FLの負荷率η1と、右後輪1RR(タイヤ)の荷率η4とは、互いに均等とされつつ大きい値とされるが、η2,η3に比しては大きくされる度合が小さいものとなり、余裕タイヤ力がまだ十分に残っている状態となる。
図6の状態から明らかなように、車体前部に着目すると左前輪1FLに余裕タイヤ力が十分残っており、車体後部に着目すると右後輪1RRに余裕タイヤ力が十分残っており、車体左側部に着目すると左前輪1ELに余裕タイヤ力が十分残っており、車体右側部に着目すると、右後輪1RRに余裕タイヤ力が十分残っている状態となる。このように、全ての車輪についてそのタイヤ負荷率がほぼ同時に飽和することがないので、車両が急激に不安定になってしまう事態が防止あるいは抑制されることになる。
ここで、図4は、運転者による回避操舵と、車両応答性(運転者の応答要求の度合)との関係を示すものである。符合H1で示す回避操舵が小さい範囲では、横応答性およびヨー応答性に比して、前後応答性が強く要求され、回避操舵が増大されて符合H2で示す範囲になると、横応答性およびヨー応答性と前後応答性とがほぼ同程度要求され、さらに回避操舵が増大して符合H3で示す範囲になると、横応答性およびヨー応答性が前後応答性よりも強く要求されることになる。そして、車両の運動制御においては、上記H2の範囲からH3の範囲に渡る範囲でもって重要となり、特にH3の車両の限界に近づくH3の範囲において重要となる。そして、図5,図6について前述した説明から明かなように、車体前部、車体後部、車体左側部、車体右側部のいずれの箇所においても、余裕タイヤ力が十分残った車輪(タイヤ)を存在させることができて、車両が急激に不安定になってしまう事態を防止あるいは抑制することができる(図6の状態から、運転者がさらに回避操作したときに、この回避操作に応じて車両の姿勢状態を変更可能な余裕タイヤ力が残っている)。
上述したタイヤ力の配分制御は、例えば、次式(A)に示す評価関数Jを最小化するように、各タイヤのタイヤ力Fxi、Fyi(i=1〜4)を決定することにより行われる。
J=K1×(η1+η2)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|) −−(A)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|) −−(A)
ただし、
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
上記式(A)において、K2の項は、η1=η4となるように、かつη2=η3となるようにする制御となる。同様に、K1の項が、左右の前輪用タイヤの負荷率η1とη2との合計値が最小となるようにする制御となる(対角線上に位置する対となるタイヤの負荷率が最小となる制御ともなる)。また、K1=0とすることもでき、この場合は、負荷率η1とη2との合計値が最小となる制御が実質的に実行されない制御となる。
上記式(A)によって得られたタイヤ力の配分目標値としての各タイヤ力Fxi、Fyiは、コントローラUにあらかじめ記憶されているタイヤモデルを参照して、目標転舵角、目標スリップ率に置換されて、各車輪(タイヤ)毎に目標転舵角、目標スリップ率となるように舵角制御装置10,制動力制御装置11,駆動力制御装置12が制御されることになる(制御された結果の一例が図6に示される)。
上述の式(A)に代えて、次式(B)を用いるようにしてもよい。タイヤ力の配分制御は、この式(B)に示す評価関数Jを最小化するように、各タイヤのタイヤ力Fxi、Fyiを決定することにより行なわれる。
J=K1×(η1+η2)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|)
+K3×(|η1−η2|−α) −−(B)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|)
+K3×(|η1−η2|−α) −−(B)
ただし、
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
K3=重み付け係数(0<K3)
α=η1とη2との間に設定すべき所定差分の負荷率
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
K3=重み付け係数(0<K3)
α=η1とη2との間に設定すべき所定差分の負荷率
上記式(B)において、K1の項とK2の項との意味するところは、式(A)の場合と同じである。式(B)においては、K3の項が、左右の前輪用タイヤの負荷率η1とη2との差分が、所定の差分負荷率αとなるようにする制御となる。差分負荷率αは、例えば、10〜20%程度の値に設定することができる。なお、式(B)において、K1を0に設定してもよい。
次に、飽和タイヤ、つまり負荷率が所定値(例えば95%)以上となるほぼ飽和状態のタイヤが存在するときの制御について、図7を参照しつつ説明する。この図7では、右前タイヤ1FRが飽和タイヤとされ、他の3つのタイヤ1FL、1RL、1RRはその負荷率がそれぞれ上記所定値よりも小さくされ、余裕タイヤ力が十分に大きいものとなっている。この図7の場合では、飽和タイヤとなっている右前タイヤについて、不足する分の横力が算出されて、この不足分の横力が、飽和タイヤである右前タイヤ1FRに対して左右で対となる左前タイヤ1FLのタイヤの横力増大として補償される。このような横力の補償は、左右後タイヤ1RL、1RRにおいて、そのいずれか一方のタイヤのみが飽和タイヤであるときにも同様に行われる(例えば、左後タイヤ1RLが飽和タイヤのときは、その横力不足分が、右後タイヤ1RRのタイヤに対する横力増大として補償される)。なお、不足分の横力は、飽和タイヤと判断されるしきい値となる所定値との差分とされるが、負荷率100%との差分としてもよい。
図8は、左右前タイヤ1FL、1RRが共に飽和タイヤとされているときである。このような図8の状態は、図5の状態から生じるときもあり、あるいは図7の状態から生じることもある。いずれにしても、左右で対となる2つのタイヤ間での横力補償ができない状態となっている。この場合は、図9に示すように、飽和タイヤとなっている左右前タイヤ1FL、1RRのタイヤの前後力を減少させ、この減少された前後力を、飽和タイヤとなっていない後タイヤ1RLと1RRのタイヤに加算することによって補償される。なお、前後力の減少量は、飽和タイヤと判定されるしきい値としての所定値との差分に対応した大きさとされるが、負荷率100%との差分に対応した大きさとしてもよい。
図10、図11は、前述した図7,図9に示す制御を行うためのフローチャートであり、以下この図10,図11について説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。まず、図10のQ1において、各種センサからの信号が読み込まれた後、Q2において、車両の操作状態としての例えばハンドル舵角、ブレーキ踏み込み量、アクセル開度等から、車体重心位置でも目標横力Fxoとも目標前後力Fyoと目標ヨーモーメントYMoとが決定される。この後、Q3において、タイヤ力センサ20によって検出された各タイヤの接地荷重とμセンサS4で検出された路面μとに基づいて、各タイヤの最大タイヤ力fmaxi(i=1〜4)が決定される。
Q4では、前述した式(A)(あるいは(式B))に基づいて、各タイヤについての目標横力fxi(i=1〜4)と目標前後力fyi(i=1〜4)とが決定される。この後、Q5において、Q4で決定された目標横力fxiと目標前後力fyiとが、予測負荷率ηi(i=1〜4)として設定される。そして、後述するように、図11のQ11〜Q19での横力補償あるいは前後力補償が行われた後(補償が行われない場合もある)、図11のQ20に移行される。このQ20では、最終的に決定されたfxiとfyiをタイヤモデルに照合して、各タイヤについての目標転舵角と目標スリップ率とが決定される。そして、Q21において、決定された目標転舵角と目標スリップ率となるように、各制御装置10〜12が制御される。
前記Q11〜Q19での補償のための制御は、次のようにして行われる。まず、Q11において、左右で対(ペア)となる左右前タイヤ1FLと1FRについて、あるいは左右で対となる左右後タイヤ1RLと1RRについて、Q5で決定された予測負荷率がそれぞれ所定値以上であるか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときは、左右で対となるタイヤ同士の間で、例えば図7で示すように横力補償が可能なときである。このときは、まずQ12において、左右で対となるタイヤの一方の予測負荷率が所定値以上であるか否か(飽和タイヤであるか否か)が判別される。このQ12の判別でYESのときは、予測負荷率が所定値以上となる飽和タイヤの横力不足分が、左右で対となる他のタイヤの横力増大分として決定される(補正あるいは補償)。Q13の後、Q14において、Q13での横力補正(補償)後の状態において、左右で対となるタイヤの予測負荷率が共に所定値以上であるか否かが判別される。このQ14の判別でNOのときは、横力補正を行っても問題のないときであるとして、Q18において、Q13での横力補正が確定される。
前記Q12の判別でNOのときは、横力補正等の補正がなんら必要のないときなので(各車輪の予測負荷率がそれぞれ所定値未満となる)、このときは、前述したQ20へ移行される。
前記Q11の判別でYESのとき、あるいはQ14の判別でYESのときは、それぞれQ15において、それぞれ予測負荷率が所定値以上となる左右で対をなす各タイヤについて、目標前後力fyが減少補正される。この後、Q16において、Q15で減少された前後力が、前後力が減少されたタイヤに対して前後関係位置となる他のタイヤに対して加算される補正が行われる。この後、Q17において、前後力補正後の各タイヤの予測負荷率がそれぞれ所定値未満であるか否かが判別される。このQ17の判別でYESのときは、Q18に移行して、Q15,Q16での補正が確定された後、Q20へ移行される。上記Q17の判別でNOのときは、前後力補正が不可能なときであり、このときは、Q19において、Q15,Q16での補正を禁止した後、Q20へ移行される。
図12〜図14は、本発明の第2の実施形態を示すものである。本実施形態では、前後のタイヤのいずれか一方のみに飽和タイヤが存在する場合と、前後両方のタイヤに飽和タイヤが存在する場合との両方に対応する制御を行うものとなっている。
前後いずれか一方のタイヤにのみ予測負荷率が所定値以上となる飽和タイヤが存在する場合は、前後他方のタイヤが飽和タイヤを含んでいないときとなる。この場合は、飽和タイヤを含んでいない他のタイヤについて横力補正して、この横力補正によって、車体が目標ヨーモーメントYMoとなるように制御される。例えば、図12は、前左右のタイヤがそれぞれ飽和タイヤとされる一方、後ろ左右のタイヤは飽和タイヤとなっていない状態である。このときは、飽和タイヤとなっていない左右後タイヤに、目標ヨーモーメントなるように横力補正が実行される。
前後両方のタイヤがそれぞれ、予測負荷率が所定値以上となる飽和タイヤが存在する場合は、各タイヤについて前後力のうち制動力についての補正を行うことによって、目標ヨーモーメントYMoとする制御が実行される。例えば、図13は、前右タイヤが飽和タイヤとされ、後ろ左タイヤ飽和タイヤとされた状態が示され、このときは、各タイヤについて、目標ヨーモーメントYMoとなるように制動力補正が行われる。
上述した第2の実施形態を示すフローチャートが図14であり、以下このフローチャートについて説明する。なお、本実施形態においても、図10のQ1〜Q5のステップを有するものとされて、図14の制御は、図10のQ5の後に実行される。すなわち、図10のQ5の後、図14のQ41に移行して、前後どちらのタイヤにも飽和タイヤが存在するか否かが判別される。このQ41の判別でNOのときは、Q42において、前側のタイヤに飽和タイヤが存在するか否かが判別される。このQ42の判別でYESのときは、Q43において、飽和タイヤを含まない他のタイヤとなる後ろタイヤの横力が、目標ヨーモーメントYMoを実現するように補正される。この後、Q47,Q48の処理を経るが、Q47は図11のQ20に対応し、Q48は図11のQ21へ対応している。
前記Q42の判別でNOのときは、Q44において、後側のタイヤに飽和タイヤが存在するか否かが判別される。このQ44の判別でYESのときは、飽和タイヤを含まない他のタイヤとなる前タイヤの横力が、目標ヨーモーメントYMoを実現するように補正される。上記Q44の判別でNOのときは、飽和タイヤが存在しないときなので、このときはそのままQ47に移行される。
前記Q41の判別でYESのときは、例えば、図13に示すような状態のときである。このときは、Q46において、目標ヨーモーメントYMoとなるように、各タイヤの制動力が補正される。
以上実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、特許請求の範囲に記載された範囲において適宜変更可能である。例えば、図10のQ4における式(A)あるいは式(B)を用いたタイヤ力の配分制御において、決定されるタイヤ力として、横力fxi、前後力fyiの他に、接地荷重fzi(i=1〜4)を加えるようにしてもよい。この場合は、用いるパラメータとしてさらに、Fzf、Fzr、Fz1,Fz2,Fz3、Fz4を用いればよい。ただし、Fz1は左前輪1FLに作用する荷重であり、Fz2は右前輪1RRに作用する荷重であり、Fz3は左後輪1RLに作用する荷重であり、Fz4は右後輪1RRに作用する荷重である。また、Fzfは、車体前部での荷重であり、Fz1とFz2とを加算した値となる。さらに、Fzrは、車体後部の荷重であり、Fz3とFz4とを加算した値となる。勿論、FzfとFzrとの加算値が、車体重量となる。このように、接地荷重fziを用いた制御は、各タイヤについて、最大タイヤ力fmaxを積極的に運動制御のために変更するものとなり(各タイヤの負荷率ηiとして式(A)あるいは式(B)に反映される)、接地荷重fziに関する制御は、具体的にはサスペンション制御装置13を制御することによるロール/ピッチ制御となる。そして、決定された接地荷重fziは、Q20あるいはQ47において、目標ロール/ピッチ角となり、Q21あるいはQ48での制御では、目標ロール/ピッチ角となるようにサスペンション制御装置13が制御される。
式(A)あるいは式(B)に用いた負荷率ηの代わりに、負荷率に関連した他の値、例えばタイヤ余裕力を用いてもよく、この場合は、各式(A)あるいは(B)において、ηの代わりにタイヤ余裕力の逆数を用いて、評価関数Jを最小化する横力fxiと前後力fyi(さらにはfzi)を決定すればよい。また、タイヤ力配分の制御のためのロジック(制御式)は、実施形態に示すものに限らず、タブ特許文献1に記載のもの等、適宜のものを選択し得るものである。なお、フローチャートに示すステップあるいはステップ群は、コントローラUの有する機能として把握することができ、またその機能を示す総称に「手段」の名称を付して表現することもできる。
VC:自動車(車両)
U:コントローラ(タイヤ力配分制御装置)
10:転舵角制御装置
11:制動力制御装置
12:駆動力制御装置
13:サスペンション制御装置
20:タイヤ力センサ
S1:ブレーキセンサ
S2:アクセルセンサ
S3:ハンドルセンサ
S4:路面μセンサ
fmax:最大タイヤ力
fx:横力
fy:前後力
η:負荷率
J:評価関数
Fxo:目標横力
Fyo:目標前後力
YMo:目標ヨーモーメント
U:コントローラ(タイヤ力配分制御装置)
10:転舵角制御装置
11:制動力制御装置
12:駆動力制御装置
13:サスペンション制御装置
20:タイヤ力センサ
S1:ブレーキセンサ
S2:アクセルセンサ
S3:ハンドルセンサ
S4:路面μセンサ
fmax:最大タイヤ力
fx:横力
fy:前後力
η:負荷率
J:評価関数
Fxo:目標横力
Fyo:目標前後力
YMo:目標ヨーモーメント
Claims (8)
- 前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって飽和タイヤが存在することが検出されたとき、該飽和タイヤにおける横力不足分を算出する不足横力算出手段と、
前記不足横力算出手段で算出された不足横力を、前記飽和タイヤに対して左右反対側にある他のタイヤに加算する横力増大手段と、
を備えていることを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項1において、
前記飽和タイヤ検出手段によって、左右で対をなす2つのタイヤがそれぞれ飽和タイヤであることが検出されたとき、該各飽和タイヤにおける前後力を減少させる前後力減少手段と、
前記前後力減少手段によって減少された前後力を、前記飽和タイヤに対して前後方向の位置関係となる他のタイヤの前後力として加算する前後力増大手段と、
をさらに備えていることを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項2において、
前記減少される前後力が制動力であって、かつ前記前後力増大手段による前後力の増大によって前記他のタイヤも飽和タイヤになるときは、前記前後力減少手段および前後力増大手段の作動が禁止される、ことを特徴とする車両の運動制御装置。 - 前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、左右で対をなす2つのタイヤが飽和タイヤであることが検出されたとき、該各飽和タイヤにおける前後力を減少させる前後力減少手段と、
前記前後力減少手段によって減少された前後力を、前記飽和タイヤに対して前後方向の位置関係となる他のタイヤの前後力として加算する前後力増大手段と、
を備えていることを特徴とする車両の運動制御装置。 - 前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、前後いずれか一方のタイヤにのみ飽和タイヤが存在することが検出されたとき、目標ヨーモーメントとなるように前後他方のタイヤの横力を補正する横力補正手段と、
を備えていることを特徴とする車両の運動制御装置。 - 前後左右の各タイヤへの横力および前後力を個々独立して変更制御するタイヤ力配分制御手段を備えた車両の運動制御装置であって、
各タイヤの実際のタイヤ力を検出するタイヤ力検出手段と、
前記タイヤ力検出手段で検出されたタイヤ力に基づいて、各タイヤの負荷率を決定する負荷率決定手段と、
前記負荷率が所定値以上となってタイヤ力が飽和状態近くにある飽和タイヤを検出する飽和タイヤ検出手段と、
前記飽和タイヤ検出手段によって、前後両方のタイヤについて飽和タイヤが存在することが検出されたとき、目標ヨーモーメントとなるように全タイヤの制動力を調整する制動力調整手段と、
を備えていることを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記タイヤ力配分制御手段によって決定された各タイヤ毎の横力と前後力とに基づいて各タイヤの予測負荷率を決定する予測負荷率決定手段を備え、
前記飽和タイヤ検出手段は、前記予測負荷率に基づいて前記飽和タイヤの検出を行うようにされている、
ことを特徴とする車両の運動制御装置。 - 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
タイヤ力配分制御手段が、次式(1)に基づく評価関数Jが最小となるように、各タイヤに配分する横力fxiと前後力fyiを決定する、
ことを特徴とする車両の運動制御装置。
J=K1×(η1+η2)
+K2×(|1−η1/η4|+|1−η2/η3|) −−(1)
ただし、
Fxo=Σfxi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標横力
Fyo=Σfyi(i=1〜4)で、車体重心位置での目標前後力
YMo=Σfxi(i=1〜2)×Lf+Σfxi(i=3〜4)×Lrで、目標モーメント
Lf=車体重心位置と前タイヤとの距離
Lr=車体重心位置と後タイヤとの距離
η1=左前タイヤの負荷率
η2=右前タイヤの負荷率
η3=左後タイヤの負荷率
η4=右後タイヤの負荷率
K1=重み付け係数(0<K1)
K2=重み付け係数(0<K2)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007087689A JP2008247066A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 車両の運動制御装置 |
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JP2007087689A JP2008247066A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 車両の運動制御装置 |
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- 2007-03-29 JP JP2007087689A patent/JP2008247066A/ja active Pending
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