〔第1実施形態〕
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための第1実施形態について詳述する。
図1は、第1実施形態に係る車両走行制御システムの一例を示す構成図である。車両走行制御システムが搭載される車両1は、車両前方の外界情報等に基づいて目標走行軌跡に追従して走行するように自律運転の実行が可能である。
車両1は、操舵輪である左前輪2及び右前輪3と、非操舵輪である左後輪4及び右後輪5と、を有する4輪車両である。車両1は、駆動輪が左前輪2及び右前輪3である前輪駆動方式、駆動輪が左後輪4及び右後輪5である後輪駆動方式、又は、車輪2~5が駆動可能な四輪駆動方式のいずれの駆動方式であってもよい。
車両1は、制動装置6、制動力制御装置7、動力装置8、駆動力制御装置9、操舵装置10、操舵量制御装置11、外界認識装置12及び自律運転コントローラ13を備える。
制動装置6は、車輪2~5を個別に制動する機構であり、例えば液圧式ブレーキシステムである場合には、車輪2~5にホイルシリンダ6a,6b,6c,6dを具備する。具体的には、左前輪2に左前輪用ホイルシリンダ6aを備え、右前輪3に右前輪用ホイルシリンダ6bを備え、左後輪4に左後輪用ホイルシリンダ6cを備え、右後輪5に右後輪用ホイルシリンダ6dを備える。なお、制動装置6には、液圧式ブレーキシステムを構成するホイルシリンダ6a~6dに代えて、電動式の摩擦ブレーキを用いることができる。
制動力制御装置7は、制動装置6によって発生する制動力を制御するものであり、例えば、ホイルシリンダ6a~6dの液圧を個別に調整する液圧調整手段として機能する。また、制動力制御装置7は、これに接続された各種センサから、前後加速度、横加速度及びヨーレート等の情報を集約して車両1の横滑りを防止する横滑り防止装置としての機能を備える。かかる機能の1つとして、制動力制御装置7は、車両1の現在の車体速度Vvを取得するとともに、車両1の走行路面の推定摩擦係数μを求める。なお、横滑り防止装置は、制動力制御装置7から独立して別個に構成されてもよい。また、推定摩擦係数μを取得できない場合や路面外乱変化を保証しない簡易的な自律運転の場合においては、推定摩擦係数μを任意の固定値としてもよい。
動力装置8は、駆動方式に応じて車輪2~5の少なくとも1つに伝達される駆動力の動力源であり、例えば、電子制御スロットルを備えたエンジンやインバータを備えた車両駆動用の電動モータ等を有する。
駆動力制御装置9は、動力装置8により発生する駆動力を制御し、例えば、動力装置8がエンジンである場合には、電子制御スロットルの開度を変化させることでエンジンの出力トルクを制御する。
操舵装置10は、左前輪2及び右前輪3を操舵するための操舵力を発生するアクチュエータを有する装置であり、例えば、操舵力を発生するアクチュエータとして電動モータを備える電動パワーステアリング装置である。操舵量制御装置11は、このアクチュエータを駆動することで操舵量を制御するものであり、自動操舵に対応することが可能となっている。
外界認識装置12は、カメラ、レーダー及びGPS(Global Positioning System)と地図情報とを併用するなどして車両1の外界情報を認識する外界認識手段である。
自律運転コントローラ13は、制動力制御装置7、駆動力制御装置9、操舵量制御装置11及び外界認識装置12とCAN(Control Area Network)等の車載通信線によって通信可能に接続される。自律運転コントローラ13は、制動力制御装置7及び外界認識装置12から入力した情報を処理し、自律運転に必要となる操作指令を、制動力制御装置7、駆動力制御装置9及び操舵量制御装置11に出力する、車両走行制御装置である。
制動力制御装置7、駆動力制御装置9、操舵量制御装置11及び自律運転コントローラ13は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有するマイクロコンピュータをコントロール部として備える。かかるマイクロコンピュータは、プロセッサと内部バスによって通信可能に接続されたROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有し、プロセッサはROMから制御プログラムをRAMに読み出して各種制御処理を実行する。以下の実施形態において同様である。
図2は、自律運転コントローラ13の機能ブロックを示す。なお、図2の機能ブロックの理解容易のために、車両1の目標移動点において予測される車両状態を示す図3も併せて参照されたい。
自律運転コントローラ13は、自車両位置算出部101、前方注視点算出部102、走行可能範囲判断部103、目標走行軌跡算出部104及び目標移動点算出部105の各機能を有する。また、自律運転コントローラ13は、目標前後加速度算出部106、前後力制御量算出部107、目標横加速度算出部108、横力制御量算出部109及び車両情報取得部110の各機能を有する。自律運転コントローラ13の各機能は、マイクロコンピュータのプロセッサがROMから制御プログラムをRAMに読み出して実行して実現されるものとして説明するが、機能の一部又は全部がハードウェアの構成により実現されることを排除するものではない。以下の実施形態において同様である。
自車両位置算出部101は、外界認識装置12から入力した外界情報に基づいて、車両1の現在の走行位置である自車両位置(Xv,Yv)を求める。前方注視点算出部102は、自車両位置算出部101で求めた自車両位置(Xv,Yv)と制動力制御装置7から入力した車両1の現在の車体速度Vvに関する情報とに基づいて、所定時間Tp後の自車両位置を示す前方注視点(Xs,Ys)を求める。
走行可能範囲判断部103は、外界認識装置12から入力した外界情報と自車両位置算出部101で求めた自車両位置(Xv,Yv)とに基づいて車両1の前方の走行可能範囲の情報(道路情報)を求める。目標走行軌跡算出部104は、走行可能範囲判断部103で求めた車両前方における走行可能範囲の情報(道路情報)に基づいて、車両1の目標走行軌跡を求める。なお、目標走行軌跡算出部104は、後述する目標移動点の設定毎に目標走行軌跡を更新することができる。
目標移動点算出部105は、前方注視点算出部102で求めた前方注視点(Xs,Ys)と目標走行軌跡算出部104で求めた目標走行軌跡とに基づいて目標移動点(Xp,Yp)を定める。具体的には、目標移動点算出部105は、前方注視点(Xs,Ys)から最も近い目標走行軌跡上の点(最近傍点)を目標移動点(Xp,Yp)として定める。そして、目標移動点算出部105は、目標移動点(Xp,Yp)における速度条件(例えば、外界情報から得られる速度規制値等)に基づいて、目標移動点(Xp,Yp)における目標走行速度Vpを求める。
目標前後加速度算出部106は、目標移動点算出部105で求めた目標走行速度Vpと制動力制御装置7で取得した現在の車体速度Vvとに基づいて、自車両位置(Xv,Yv)から目標移動点(Xp,Yp)への移動に必要となる目標前後加速度apを求める。
前後力制御量算出部107は、目標前後加速度算出部106で求めた目標前後加速度apに基づいて、制動装置6の目標制動力(例えば目標ブレーキモーメント)または動力装置8の目標駆動力(例えば目標エンジントルク)を車両1の前後力制御量として求める。例えば、目標前後加速度apが正の値であれば目標駆動力が求められ、目標前後加速度apが負の値であれば目標制動力が求められる。
前後力制御量算出部107は、目標制動力又は目標駆動力のうち後輪4,5に配分する割合を示す制駆動配分率αを求める。ただし、目標駆動力の配分に関する制駆動配分率αは車両1が四輪駆動方式である場合に求められる。制駆動配分率αは、限定するものではないが、例えば目標ヨーレートと実際のヨーレートとの乖離状況等、車両1の走行状態に応じて適宜設定される。あるいは、制駆動力配分率αは、簡易的に固定値としてもよい。この場合、目標制動力の配分に関する制駆動配分率αは、目標制動力のうち後輪4,5に配分される制動力よりも前輪2,3に配分される制動力が大きくなるように設定される。
前後力制御量算出部107は、目標制動力を求めた場合には、目標制動力及び制動力配分率αに関する情報を制動力制御装置7に出力する。一方、前後力制御量算出部107は、目標駆動力を求めた場合には、目標駆動力及び駆動力配分率αに関する情報を駆動力制御装置9に出力する。
制動力制御装置7は、制動力が目標制動力に近づくように、制動力配分率に応じて車輪2~5を制動する。例えば、制動力制御装置7は、ホイルシリンダ6a~6dの液圧を目標ブレーキモーメント及び制動力配分率に応じた目標液圧に近づけるように制御する。また、駆動力制御装置9は、駆動力が目標駆動力に近づくように、駆動力配分率に応じて車輪2~5を駆動する。例えば、駆動力制御装置9は、電子制御スロットルの開度を、目標エンジントルク及び駆動力配分率(四輪駆動方式の場合)に応じた目標開度に近づけるように制御する。
目標横加速度算出部108は、目標移動点算出部105で求めた目標走行速度Vpと目標移動点(Xp,Yp)におけるカーブ形状とに基づいて、前方のカーブを安定的に走行した場合に発生することが予測される目標横加速度ypを求める。目標横加速度ypは、車両1の車体における横方向の加速度であり、正の値であるときに進行方向に向かって左向きを意味し、負の値であるとき進行方向に向かって右向きを意味するものとする。目標移動点(Xp,Yp)におけるカーブ形状は、例えば、外界認識装置12から入力した外界情報に基づいて求められる、目標移動点(Xp,Yp)における曲率Kpを用いることができる。
横力制御量算出部109は、各種パラメータに基づいて、車両1の横力制御量として左前輪2及び右前輪3の目標舵角δを求めて、この目標舵角δに関する制御指令を操舵量制御装置11へ出力する。各種パラメータには、制動力制御装置7で求めた推定摩擦係数μ、目標前後加速度算出部106で求めた目標前後加速度ap、前後力制御量算出部107で求めた制駆動配分率α、目標横加速度算出部108で求めた目標横加速度yp、及び、外界情報から求められた曲率Kpが含まれる。操舵量制御装置11は、左前輪2及び右前輪3の舵角が目標舵角δに近づくように操舵装置10を制御する。例えば、操舵量制御装置11は、操舵力を発生するアクチュエータである電動モータの回転量が目標舵角δに応じた目標回転量となるように、インバータを介して電動モータを制御する。
一般的に、目標舵角δは、目標横加速度ypと車両情報(車両諸元)の固有値から求められる基準スタビリティファクタAとを用いた下記の関係式(1)によって算出することができる。ここで、Lは車両1のホイールベースである。しかし、基準スタビリティファクタAは、車両1の前後加速度、走行路面の摩擦係数、制駆動配分率等の車両走行状態によって変化し得る。したがって、目標移動点における車両走行状態を予測できる場合には、その車両走行状態に応じて基準スタビリティファクタAを補正することが、自律運転において車両1の目標走行軌跡に対する追従性低下を抑制するうえで好ましい。そこで、横力制御量算出部109は、推定摩擦係数μ、目標前後加速度ap及び制駆動配分率αに基づいて基準スタビリティファクタAを補正した補正後スタビリティファクタApを用いて、すなわち、下記の関係式(2)によって、目標舵角δを求めている。
車両情報取得部110は、マイクロコンピュータに内蔵のROMや外付けROM等から、車両1に関する車両情報(車両諸元)の固有値を読み出して取得する。車両1に関する車両情報の固有値には、車両重量m、重心高さh、前輪軸と後輪軸との距離であるホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr、前輪の基準コーナリングパワーKf、後輪の基準コーナリングパワーKr等が含まれる。また、車両1の車両情報の固有値には、前輪軸荷重Wf及び後輪軸荷重Wrが含まれる。前輪軸荷重Wfは、車両重量mとホイールベースLに対する重心-後輪軸距離Lrの比率とに基づいて予め求められている。後輪軸荷重Wrは、車両重量mとホイールベースLに対する重心-前輪軸距離Lfの比率に基づいて予め求められている。
図4は、横力制御量算出部109の詳細な機能ブロックを示す。横力制御量算出部109は、さらに、予想荷重移動量算出部201、予想コーナリングパワー算出部202及び目標舵角算出部203に細分化される。なお、図4の機能ブロックの理解容易のために、車両1の目標移動点において予測される走行状態を示す図3も併せて参照されたい。
予想荷重移動量算出部201は、車両情報取得部110で取得した、車両重量m、重心高さh、ホイールベースLと、目標前後加速度算出部106で求めた目標前後加速度apと、に基づいて、前輪軸と後輪軸との間で予想される予想荷重移動量Wsを求める。
予想荷重移動量算出部201で予想荷重移動量Wsを求めているのは以下の理由による。すなわち、前輪軸と後輪軸との間で荷重が変化すると、目標移動点(Xp,Yp)において予想されるコーナリングパワー(予想コーナリングパワー)は、基準スタビリティファクタAの算出に用いられる基準コーナリングパワーKf,Krから乖離するからである。
予想コーナリングパワー算出部202は、予想荷重移動量算出部201で求めた予想荷重移動量Wsと車両情報取得部110で取得した前輪軸荷重Wf及び後輪軸荷重Wrとに基づいて、前輪及び後輪の予想コーナリングパワーKfs,Krsを求める。
目標舵角算出部203は、目標前後加速度ap、推定摩擦係数μ、制駆動配分率α及び曲率Kpに加えて、予想荷重移動量Ws、予想コーナリングパワーKfs,Krs、及び、車両情報の固有値に基づいて、補正後スタビリティファクタApを求める。ここでの車両情報の固有値には、車両重量m、重心高さh、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr、前輪の基準コーナリングパワーKf、後輪の基準コーナリングパワーKrが含まれる。そして、目標舵角算出部203は、求めた補正後スタビリティファクタAp、目標横加速度yp、ホイールベースL及び曲率Kpの各値を上記の関係式(2)に代入することで、目標舵角δを求める。
なお、推定摩擦係数μを取得できない場合や路面外乱変化を保証しない簡易的な自律運転の場合にはおいては、推定摩擦係数μを任意の固定値としてもよい。
図5は、自律運転コントローラ13において繰り返し実行される目標舵角算出処理の一例を示す。
ステップS11(図中では「S11」と略記する。以下同様である。)では、自車両位置算出部101により外界情報に基づいて自車両位置(Xv,Yv)を求める。ステップS12では、前方注視点算出部102により自車両位置(Xv,Yv)と現在の車体速度Vvとに基づいて前方注視点(Xs,Ys)を求める。ステップS13では、目標移動点算出部105により、前方注視点(Xs,Ys)からの目標走行軌跡上の最近傍点である目標移動点(Xp,Yp)を求める。目標走行軌跡は、上記のように、走行可能範囲判断部103及び目標走行軌跡算出部104によって求められる。
ステップS14では、目標前後加速度算出部106により、下記の関係式(3)に目標走行速度Vp及び現在の車体速度Vvの各値を代入して目標前後加速度apを求める。目標前後加速度apは、車両1の車体における前後方向の加速度であり、正の値であるときに加速を意味し、負の値であるときに減速を意味するものとする。
また、ステップS14では、目標横加速度算出部108により、下記の関係式(4)に目標走行速度Vp、及び目標移動点(Xp,Yp)における曲率Kpの各値を代入して目標横加速度ypを求める。目標横加速度ypは、車両1の車体における横方向の加速度であり、正の値であるときに進行方向に向かって左向きを意味し、負の値であるとき進行方向に向かって右向きを意味するものとする。
ステップS15では、予想荷重移動量算出部201により、下記の関係式(5)に、目標前後加速度ap、車両重量m、重心高さh、ホイールベースLの各値を代入して、予想荷重移動量Wsを求める。予想荷重移動量Wsは、正の値であるときに前輪軸から後輪軸に荷重が移動し、負の値であるときに後輪軸から前輪軸に荷重が移動するものとする。
ステップS16では、予想コーナリングパワー算出部202により、先ず、下記の関係式(6),(7)に、予想荷重移動量Ws、前輪軸荷重Wf及び後輪軸荷重Wrの各値を代入して、予想前輪軸荷重Wfs及び予想後輪軸荷重Wrsを求める。
そして、ステップS16において、予想コーナリングパワー算出部202により、図6に示す軸荷重とコーナリングパワーとの既知の相関関係を用いて、予想前輪軸荷重Wfs及び予想後輪軸荷重Wrsに基づいて予想コーナリングパワーKfs,Krsを求める。
具体的には、予想コーナリングパワー算出部202により、図6(a)の前輪軸荷重と前輪コーナリングパワーとを関連付けた相関マップを参照して、予想前輪軸荷重Wfsに対応する前輪の予想コーナリングパワーKfsを求める。また、予想コーナリングパワー算出部202により、図6(b)の後輪軸荷重と後輪コーナリングパワーとを関連付けた相関マップを参照して、予想後輪軸荷重Wrsに対応する後輪の予想コーナリングパワーKrsを求める。図6(a)及び図6(b)のいずれの相関マップも実験やシミュレーション等の結果から予め得られ、マイクロコンピュータに内蔵のROMや外付けROM等に記憶されている。
ステップS17では、目標舵角算出部203により、補正後スタビリティファクタApを用いる関係式(2)によって目標舵角δを求める。補正後スタビリティファクタApは下記の関係式(8)で示される。
ここで、関係式(8)における3つの成分A0,A1,A2は、下記の関係式(9)~(11)を用いて求められる。関係式(9)及び(10)には、車両1の旋回時におけるトー角変化、及び、コンプライアンスステア成分の影響の相際を目的とした任意のゲインaG,bGが設定される。ただし、微小変動であることを考慮して零に設定してもよい。なお、関係式(9)で示される成分A0は、任意のゲインaGを零に設定した場合、補正前の基準スタビリティファクタAと同じものとなる。
上記の関係式(8)~(11)に、目標前後加速度ap、推定摩擦係数μ、制駆動配分率α、予想荷重移動量Ws、予想コーナリングパワーKfs,Krs、及び、車両情報の固有値の各値を代入することで、補正後スタビリティファクタApが求められる。ここでの車両情報の固有値には、車両重量m、重心高さh、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr、基準コーナリングパワーKf,Krが含まれる。
さらに、上記の関係式(2)に、補正後スタビリティファクタAp、目標横加速度yp、目標移動点(Xp,Yp)における曲率Kp、及び、車両情報の固有値であるホイールベースLの各値を代入して目標舵角δが求められる。
図7は、駆動方式別に目標前加速度apと補正後スタビリティファクタApとの関係を示す。前輪駆動方式、四輪駆動方式及び後輪駆動方式のいずれの駆動方式においても、目標前後加速度apが零であるときに、補正後スタビリティファクタApが基準スタビリティファクタAに等しくなる。そして、目標前後加速度apが零から大きくなると、すなわち、車両1の加速時には、補正後スタビリティファクタApは基準スタビリティファクタAよりも大きくなり、アンダーステア傾向が強まる。一方、目標前後加速度apが零から小さくなると補正後スタビリティファクタApは基準スタビリティファクタAより小さくなり、オーバーステア傾向が強まる。したがって、補正後スタビリティファクタApの値によれば、目標前後加速度apに応じた車両1の旋回特性変化を予測して目標舵角δを求めることができる。
図8は、車両1の加速時における本実施形態による効果を示す。具体的には、車両1の加速時において、補正後スタビリティファクタApを用いて求めた目標舵角δによる走行軌跡と基準スタビリティファクタAを用いた求めた目標舵角δによる走行軌跡との比較例を模式的に示す。
図8において、自車両位置(Xv,Yv)から目標走行軌跡上の目標移動点(Xp,Yp)までがカーブ形状の走行路面を、車両1が加速しながら旋回する。この場合、基準スタビリティファクタAを用いて求めた目標舵角δには、車両1の加速時に予測されるアンダーステア傾向の増大が反映されていないので、車両1は、目標走行軌跡に対して旋回半径が大径化して径方向外方へ位置ズレを起こしやすくなる。これと比較すると、補正後スタビリティファクタApを用いて求めた目標舵角δには、車両1の加速時に予測されるアンダーステア傾向の増大が反映されている。したがって、車両1は、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下を抑制できる。
図9は、車両1の減速時における本実施形態による効果を示す。具体的には、車両1の減速時において、補正後スタビリティファクタApを用いて求めた目標舵角δによる走行軌跡と基準スタビリティファクタAを用いた求めた目標舵角δによる走行軌跡との比較例を模式的に示す。
図9において、自車両位置(Xv,Yv)から目標走行軌跡上の目標移動点(Xp,Yp)までがカーブ形状である走行路面を、車両1が減速しながら旋回する。この場合、基準スタビリティファクタAを用いた求めた目標舵角δには、車両1の減速時に予測されるオーバーステア傾向の増大が反映されていないので、車両1は、目標走行軌跡に対して旋回半径が小径化して径方向内方へ位置ズレを起こしやすくなる。これと比較すると、補正後スタビリティファクタApを用いて求めた目標舵角δには、車両1の減速時に予測されるオーバーステア傾向の増大が反映されている。したがって、車両1は、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下を抑制できる。
〔第2実施形態〕
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための第2実施形態について詳述する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略ないし簡潔化する。
上記の関係式(5),(9)~(11)に示されるように、目標舵角δの算出過程では車両重量mの情報が必要不可欠であるが、車両重量mは車両1に関する車両情報の固有値の1つであり、大部分は車体自体の重量で占められる。そこで、本実施形態では、自律運転において目標走行軌跡への追従性をさらに向上させるために、車体自体の重量以外に乗員重量や積載物重量等の影響が反映された実車両重量に近い車両状態を考慮して目標舵角δを算出する。
図10は、第2実施形態に係る車両走行制御システムの一例を示す構成図である。車両走行制御システムが搭載される車両1Aは、車両前方の外界情報等に基づいて目標走行軌跡に追従して走行するように自律運転の実行が可能である。車両1Aは、上記の車両1に対し、シートベルト警告装置14、姿勢制御装置15及び燃料残量センサ16を更に備える。
シートベルト警告装置14は、乗車定員(図中では5名)に応じた座席にそれぞれ備えられた図外のシートベルトの締結状況を乗員に報知するものである。シートベルト警告装置14には、座席毎に設置された着座センサ14a~14eと、各座席のシートベルトの締結の有無を検出する図外のシートベルトセンサと、が接続される。シートベルト警告装置14は、着座センサ14a~14eの出力信号とシートベルトセンサの出力信号とに基づいて乗員が実際に着座している着座位置のシートベルトが締結されているか否かを判断する。シートベルト警告装置14は、着座位置のシートベルトが締結されていないと判断した場合には、警告表示あるいは警告音によって乗員に報知する。
また、シートベルト警告装置14は、自律運転のために、着座センサ14a~14eの出力信号に基づいて乗員数nを検出する。
姿勢制御装置15は、減衰力の変更が可能な電制サスペンション(図示省略)を用いて車両1Aの車体姿勢を制御するものである。電制サスペンションは、左前輪2、右前輪3、左後輪4及び右後輪5のそれぞれに取り付けられ、電制サスペンションのストローク量Sを検出するためのストロークセンサ15a~15dを有している。具体的には、左前輪2についてはストロークセンサ15aを有し、右前輪3についてはストロークセンサ15bを有し、左後輪4についてはストロークセンサ15cを有し、右後輪5についてはストロークセンサ15dを有する。姿勢制御装置15は、ストロークセンサ15a~15dの出力信号に基づいてストローク量Sを取得し、このストローク量Sを用いて所望の車体姿勢となるように電制サスペンションを制御する。
燃料残量センサ16は、動力装置8にエンジンが含まれる場合に、エンジンに供給される燃料を貯蔵する燃料タンク17内の燃料残量vfを検出するためのセンサである。
自律運転コントローラ13Aは、制動力制御装置7、駆動力制御装置9、操舵量制御装置11及び外界認識装置12に加えて、シートベルト警告装置14、姿勢制御装置15及び燃料残量センサ16とCAN等によって通信可能に接続される。自律運転コントローラ13Aは、制動力制御装置7、外界認識装置12、シートベルト警告装置14、姿勢制御装置15及び燃料残量センサ16から入力した情報を処理し、自律運転に必要となる操作指令を、制動力制御装置7、駆動力制御装置9及び操舵量制御装置11に出力する、車両走行制御装置である。
図11は、自律運転コントローラ13Aの機能ブロックを示す。自律運転コントローラ13Aは、上記の自律運転コントローラ13に対し推定車両重量算出部111の機能を更に有する。
車両情報取得部110は、マイクロコンピュータに内蔵のROMや外付けROM等から、車両1Aに関する車両情報(車両諸元)の固有値を読み出して取得する。ここでの車両情報の固有値には、1人当たりの乗員重量whや燃料タンク17に貯蔵される燃料の比重ρが含まれる。1人当たりの乗員重量whは、例えば、車両情報の固有値から、車両総重量、車両重量及び乗車定員を取得し、車両総重量と車両重量との差分を乗車定員で除した値として求めることができる。また、車両情報の固有値には、重心高さh、前輪軸と後輪軸との距離であるホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr、前輪の基準コーナリングパワーKf、後輪の基準コーナリングパワーKr等が含まれるが、車両重量mは含まれない。
推定車両重量算出部111は、シートベルト警告装置14で取得された乗員数nに関する情報を入力し、姿勢制御装置15で検出されたストローク量Sに関する情報を入力し、燃料残量センサ16で検出された燃料残量vfに関する情報を入力する。そして、推定車両重量算出部111は、後述するように、乗員数n、ストローク量S及び燃料残量vfと車両情報取得部110で取得した車両情報の固有値とを、車両1Aの構成に応じて選択して用いることで推定車両重量mpを求める。
横力制御量算出部109Aは、各種パラメータに基づいて、車両1Aの横力制御量として左前輪2及び右前輪3の目標舵角δを求めて、この目標舵角δに関する情報を操舵量制御装置11へ出力する。各種パラメータには、推定摩擦係数μ、目標前後加速度ap、制駆動配分率α、目標横加速度yp及び曲率Kpに加えて、推定車両重量算出部111で求めた推定車両重量mpが、含まれる。
図12は、横力制御量算出部109Aの詳細な機能ブロックを示す。横力制御量算出部109Aは、さらに、車両情報取得部110、予想荷重移動量算出部201A、予想コーナリングパワー算出部202A及び目標舵角算出部203Aに細分化される。
予想荷重移動量算出部201Aは、車両情報取得部110で取得した車両情報の固有値と、目標前後加速度算出部106で求めた目標前後加速度apと、推定車両重量算出部111で求めた推定車両重量mpと、に基づいて予想荷重移動量Wsを求める。ここでの車両情報の固有値には、重心高さh及びホイールベースLが含まれ、車両重量mは含まれない。
予想コーナリングパワー算出部202Aは、予想荷重移動量算出部201Aで求めた予想荷重移動量Wsと推定車両重量算出部111で求めた推定車両重量mpと車両情報取得部110で取得した車両情報の固有値とに基づいて、予想コーナリングパワーKfs,Krsを求める。ここでの車両情報の固有値には、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf及び重心-後輪軸距離Lrが含まれ、車両重量mは含まれない。
目標舵角算出部203Aは、推定車両重量mp、目標前後加速度ap、推定摩擦係数μ、制駆動配分率α及び曲率Kpに加えて、予想荷重移動量Ws、予想コーナリングパワーKfs,Krs、及び、車両情報の固有値に基づいて、補正後スタビリティファクタApを求める。ここでの車両情報の固有値には、重心高さh、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr、前輪の基準コーナリングパワーKf、後輪の基準コーナリングパワーKrが含まれ、車両重量mは含まれない。そして、目標舵角算出部203Aは、求めた補正後スタビリティファクタAp、目標横加速度yp、ホイールベースL及び曲率Kpの各値を上記の関係式(2)に代入することで、目標舵角δを求める。
図13は、自律運転コントローラ13Aにおいて繰り返し実行される目標舵角算出処理の一例を示す。
ステップ21では、推定車両重量算出部111により、例えば、後述する第1の車両重量推定方法又は第2の車両重量推定方法のいずれかによって、推定車両重量mpを求める。第1及び第2の車両重量推定方法の詳細については後述する。ステップS22~S25は、上記のステップS11~S14と同様であるので、説明を省略する。
ステップS26では,予想荷重移動量算出部201Aにより、下記の関係式(12)に、推定車両重量mp、目標前後加速度ap、重心高さh、ホイールベースLの各値を代入して、予想荷重移動量Wsを求める。
ステップS27では、予想コーナリングパワー算出部202Aにより、先ず、下記の関係式(13),(14)に、予想荷重移動量Wsの値を代入して、予想前輪軸荷重Wfs及び予想後輪軸荷重Wrsを求める。ただし、関係式(13)の前輪軸荷重Wpf及び関係式(14)の後輪軸荷重Wprは、推定車両重量mp、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf及び重心-後輪軸距離Lrの各値を下記の関係式(15),(16)に代入することで求められる。
そして、ステップS27では、ステップS16と同様にして、予想コーナリングパワー算出部202Aにより、図6に示す軸荷重とコーナリングパワーとの既知の相関関係から、予想コーナリングパワーKfs,Krsを求める。具体的には、予想コーナリングパワー算出部202Aにより、図6(a)に示す前輪軸荷重と前輪コーナリングパワーとを関連付けた相関マップを参照して、予想前輪軸荷重Wfsに対応する前輪の予想コーナリングパワーKfsを求める。また、予想コーナリングパワー算出部202Aにより、図6(b)に示す後輪軸荷重と後輪コーナリングパワーとを関連付けた相関マップを参照して、予想後輪軸荷重Wrsに対応する後輪の予想コーナリングパワーKrsを求める。
ステップS28では、目標舵角算出部203Aにより、先ず、上記の関係式(8)を用いて補正後スタビリティファクタApを求める。ここで、関係式(8)における3つの成分A0,A1,A2は、下記の関係式(17)~(19)を用いて求められる。関係式(17)~(19)は、上記の関係式(9)~(11)の車両重量mを推定車両重量mpに置換したものである。
上記の関係式(8),(17)~(19)に、推定車両重量mp、目標前後加速度ap、推定摩擦係数μ、制駆動配分率α、予想荷重移動量Ws、予想コーナリングパワーKfs,Krs、及び、車両情報の固有値の各値を代入することで、補正後スタビリティファクタApが求められる。ここでの車両情報の固有値には、重心高さh、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr、基準コーナリングパワーKf,Krが含まれ、車両重量mは含まれない。
さらに、上記の関係式(2)に、補正後スタビリティファクタAp、目標横加速度yp、目標移動点(Xp,Yp)における曲率Kp、及び、車両情報の固有値であるホイールベースLの各値を代入して目標舵角δが求められる。
図14は、自律運転コントローラ13Aにおいて推定車両重量算出部111により繰り返し実行される、第1の車両重量推定方法による推定車両重量算出処理の一例を示す。なお、自律運転コントローラ13AのRAMには、推定車両重量mpが初期値を車両重量mとして格納され(mp=m)、また、乗員数nが初期値を零として格納されている(n=0)。
ステップS101では、車両1Aが水平状態であるか否かを判定する。車両1Aが水平状態であるか否かを判定するのは、後続のステップにおいて車両1Aの車高を精度良く推定するためには各車輪の電制サスペンションのストローク量Sが極力均等な状態である必要があるからである。車両1Aが水平状態であるか否かは、例えば、制動力制御装置7で取得される前後加速度や横加速度に基づいて判定することができる。そして、車両1Aが水平状態であると判定された場合には(YES)、電制サスペンションのストローク量Sに基づいて推定車両重量mpを算出すべく、処理をステップS102へ進める。一方、車両1Aが水平状態でないと判定された場合には(NO)、ストローク量Sに基づいて推定車両重量mpを算出できないので、補助的に乗員数増減に伴う重量変化によって推定車両重量mpを更新すべく、処理をステップS106へ進める。
ステップS102では、車両1Aが停止状態であるか否かを判定する。車両1Aが停止状態であるか否かを判定するのは、後続のステップにおいて車両1Aの車高を精度良く推定するためには各車輪の電制サスペンションのストローク量Sが安定している必要があるからである。車両1Aが停止状態であるか否かは、制動力制御装置7で取得される現在の車体速度Vvに基づいて判定することができる。そして、車両1Aが停止状態であると判定された場合には(YES)、処理をステップS103へ進める。一方、車両1Aが停止状態でないと判定された場合には(NO)、ステップS103及びS104を省略して、処理をステップS105へ進める。
ステップS103では、姿勢制御装置15から入力したストローク量Sに関する情報に基づいて車両1Aの推定車高Hを取得する。ストローク量Sは、車輪2~5の電制サスペンションのストローク量S1~S4のうち複数(例えば左前輪2の電制サスペンションのストローク量S1と右後輪5の電制サスペンションのストローク量S4)の平均値としてもよい。あるいは、ストローク量Sは、車輪2~5の電制サスペンションのストローク量S1~S4のいずれか1つの値としてもよい。
ステップS104では、RAM等に記憶されている推定車両重量mpの前回値にかかわらず、車高と実車両重量との既知の相関関係を用いて、推定車高Hに基づいて推定車両重量mpを求める。車高と実車両重量との相関関係は、例えば、実験やシミュレーション等の結果から車高と実車両重量とを関連付けた図15の相関マップとして、マイクロコンピュータに内蔵のROMや外付けROM等に予め記憶されている。この場合、相関マップを参照することで、推定車高Hに対応する推定車両重量mpが求められる。そして、本ステップで求められた推定車両重量mpの値により、RAM等に記憶されている推定車両重量mpの前回値(あるいは初期値)が書き換えられる。
ステップS105では、シートベルト警告装置14から入力した情報に基づいて乗員数nを取得する。本ステップで乗員数nを取得するのは、ステップS101で車両1Aが水平状態でないと判定されて、乗員数増減に伴う重量変化によって推定車両重量mpを算出する場合に必要となるからである。
ステップS106では、動力装置8を始動する際の始動信号(例えばスタータ作動信号)を検出することで、動力装置8(例えばエンジン)の始動を検出したか否かを判定する。かかる判定を行うのは、動力装置8を始動する際には乗員数の増加が見込まれるからである。例えば、動力装置8の始動を検出したときに、RAM等に格納された始動フラグが所定値に書き換えられ、この始動フラグの値に基づいて動力装置8の始動を検出したか否かを判定できる。なお、判定後、始動フラグは元の値に書き換えられる。そして、動力装置8の始動を検出した場合には(YES)、処理をステップS108へ進める一方、動力装置8の始動を検出しなかった場合には(NO)、処理をステップS107へ進める。
ステップS107では、ドア開閉センサの出力信号に基づいて、車両1Aのドア開閉を検出したか否かを判定する。かかる判定を行うのは、動力装置8の始動が検出されなかった場合でも、車両1Aのドアを開閉する際に乗員数の変化が見込まれるからである。例えば、ドア開閉センサの出力信号に基づいてドア開閉を検出したときに、RAM等に格納されたドア開閉フラグが所定値に書き換えられ、このドア開閉フラグの値に基づいて車両1Aのドア開閉を検出したか否かを判定できる。なお、判定後、ドア開閉フラグは元の値に書き換えられる。そして、車両1Aのドア開閉を検出した場合には(YES)、処理をステップS108へ進める一方、車両1Aのドア開閉を検出しなかった場合には(NO)、ステップS108~S111を省略して、推定車両重量算出処理を終了する。
ステップS108では、シートベルト警告装置14から入力した情報に基づいて乗員数nを取得する。
ステップS109では、前ステップで取得した乗員数nに基づいて、乗員数nが前回値から変化したか否かを判定する。そして、乗員数nが変化したと判定した場合には(YES)、処理をステップS110へ進める一方、乗員数nが変化していないと判定した場合には(NO)、ステップS110及びS111を省略して、推定車両重量算出処理を終了する。
ステップS110では、前回の乗員数nから今回の乗員数nまでの乗員増減数Δnを求め、この乗員増減数Δnと車両情報取得部110で取得した1人当たりの乗員重量whとを下記の関係式(20)に代入して乗員重量増減値Δwhを求める。
ステップS111では、下記の関係式(21)で示すように、乗員重量増減値Δwhに基づいてRAM等に記憶されている推定車両重量mpの前回値(あるいは初期値)を補正することで、新たな推定車両重量mpを算出する。これにより、推定車両重量mpが補正後の値に書き換えられる。
図16は、自律運転コントローラ13Aにおいて推定車両重量算出部111により繰り返し実行される、第2の車両重量推定方法による推定車両重量算出処理の一例を示す。なお、自律運転コントローラ13AのRAMには、推定車両重量mpが初期値を車両重量mとして格納され(mp=m)、また、乗員数n及び燃料残量vfが初期値を零として格納されている(n=0,vf=0)。
第2の車両重量推定方法は、車両1Aが電制サスペンションを備えていない、すなわち、ストロークセンサ15a~15dを備えていない場合に、推定車両重量mpを求める方法である。ステップS201~S205は、上記のステップS106~S110と同様であるので、説明を省略する。
ステップS206では、上記のステップS101と同様に、車両1Aが水平状態であるか否かを判定する。ステップS207では、上記のステップS102と同様に、車両1Aが停止状態であるか否かを判定する。そして、ステップS206及びS207により、車両1Aが水平状態かつ停止状態であると判定された場合には、処理をステップS208へ進める。車両1Aが水平状態でない、又は車両1Aが停止状態でない、と判定された場合には、ステップS208及びステップS209を省略して、処理をステップS210へ進める。
ステップS208では、燃料残量センサ16の出力信号に基づいて燃料残量vfを取得する。
ステップS209では、先ず、燃料残量vfの前回取得値と今回取得値との差分である燃料残量増減値Δvfを求める。そして、この燃料残量増減値Δvfと車両情報取得部110から取得した燃料の比重ρとを下記の関係式(22)に代入して燃料重量増減値Δwfを求める。
ステップS210では、下記の関係式(23)に示すように、乗員重量増減値Δwh及び燃料重量増減値Δwfに基づいて、RAM等に記憶されている推定車両重量mpの前回算出値(あるいは初期値)を補正することで新たな推定車両重量mpを算出する。これにより推定車両重量mpが補正後の値に書き換えられる。
図17は、本実施形態による効果を示す。具体的には、推定車両重量mpを用いて算出した目標舵角δによる走行軌跡と車両重量mを用いて算出した目標舵角δによる走行軌跡との比較例を模式的に示す。
図17において、自車両位置(Xv,Yv)から目標走行軌跡上の目標移動点(Xp,Yp)までがカーブ形状の走行路面を、車両1Aが旋回する。ここで、実車両重量は車両諸元情報の車両重量mよりも大きい値であるとする。車両重量mを用いた補正後スタビリティファクタApで算出された目標舵角δには車両重量mに対して増加した実車両重量が考慮されていないので、目標舵角δが不足し、車両1Aは、目標走行軌跡に対して径方向外方へ位置ズレを起こしやすくなる。これと比較すると、補正後スタビリティファクタApにおいて車両重量mを推定車両重量mpに置き換えて算出された目標舵角δには実車両重量が考慮されているので、車両1Aは、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下をさらに抑制できる。
〔第3実施形態〕
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための第3実施形態について詳述する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略ないし簡潔化する。
上記の関係式(9)~(11),(17)~(19)において、目標舵角δの算出に用いられる基準コーナリングパワーKf,Krは、タイヤ空気圧の増減によって変化する可能性がある。そして、タイヤ空気圧は、外気温の変化やタイヤと走行路面との摩擦による熱の影響によって充填空気が膨張し又は収縮することで、刻々と変化する。そこで、本実施形態では、自律運転において目標走行軌跡への追従性をさらに向上させるために、タイヤ空気圧の増減による基準コーナリングパワーKf,Krの変化を考慮して目標舵角δを求める。
図18は、第3実施形態に係る車両走行制御システムの一例を示す構成図である。車両走行制御システムが搭載される車両1Bは、車両前方の外界情報等に基づいて目標走行軌跡に追従して走行するように自律運転の実行が可能である。車両1Bは、上記の車両1Aに対し、空気圧検出装置18を更に備える。
空気圧検出装置18は、車輪2~5のタイヤ空気圧Pを検出する装置であり、車輪2~5のそれぞれのタイヤのエアバルブ等において空気圧センサ18a~18dを有する。具体的には、左前輪2のタイヤに空気圧センサ18aが取り付けられ、右前輪3のタイヤに空気圧センサ18bが取り付けられ、左後輪4のタイヤに空気圧センサ18cが取り付けられ、右後輪5のタイヤに空気圧センサ18dが取り付けられる。空気圧センサ18a~18dの出力信号は無線信号として空気圧検出装置18に送信され、空気圧検出装置18は空気圧センサ18a~18dの出力信号に基づいてタイヤ空気圧Pを検出する。なお、空気圧検出装置18は、車輪2~5の回転速度を検出する回転速度センサの出力信号に基づいてタイヤ空気圧を検出するものであってもよい。
自律運転コントローラ13Bは、制動力制御装置7、駆動力制御装置9、操舵量制御装置11、外界認識装置12、シートベルト警告装置14、姿勢制御装置15及び燃料残量センサ16に加えて、空気圧検出装置18とCAN等によって通信可能に接続される。自律運転コントローラ13Bは、制動力制御装置7、外界認識装置12、シートベルト警告装置14、姿勢制御装置15、燃料残量センサ16及び空気圧検出装置18から入力した情報を処理し、自律運転に必要となる操作指令を、制動力制御装置7、駆動力制御装置9及び操舵量制御装置11に出力する、車両走行制御装置である。
図19は、自律運転コントローラ13Bの機能ブロックを示す。自律運転コントローラ13Bの横力制御量算出部109Bは、各種パラメータに基づいて、車両1Bの横力制御量として左前輪2及び右前輪3の目標舵角δを求めて、この目標舵角δに関する情報を操舵量制御装置11へ出力する。各種パラメータには、推定摩擦係数μ、目標前後加速度ap、制駆動配分率α、目標横加速度yp、曲率Kp及び推定車両重量mpに加えて、空気圧検出装置18からの入力情報より取得したタイヤ空気圧Pが含まれる。
図20は、横力制御量算出部109Bの詳細な機能ブロックを示す。横力制御量算出部109Bは、さらに、予想荷重移動量算出部201A、予想コーナリングパワー算出部202B及び目標舵角算出部203Bに細分化される。
予想コーナリングパワー算出部202Bは、予想荷重移動量Ws、推定車両重量mp及び車両情報の固有値に基づいて、予想コーナリングパワーKfs,Krsを求める。ここでの車両情報の固有値には、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lr及び基準コーナリングパワーKf,Krが含まれる。
また、予想コーナリングパワー算出部202Bは、基準コーナリングパワーKf,Krをタイヤ空気圧Pに基づいて補正することで、補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1を求める。この補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1は、目標舵角算出部203Bにおいて用いられる。
目標舵角算出部203Bは、推定車両重量mp、目標前後加速度ap、推定摩擦係数μ、制駆動配分率α及び曲率Kpに加えて、予想荷重移動量Ws、予想コーナリングパワーKfs,Krs、補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1、及び、車両情報の固有値に基づいて、補正後スタビリティファクタApを求める。ここでの車両情報の固有値には、重心高さh、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf、重心-後輪軸距離Lrが含まれる。そして、目標舵角算出部203Bは、求めた補正後スタビリティファクタAp、目標横加速度yp、ホイールベースL及び曲率Kpの各値を上記の関係式(2)に代入することで、目標舵角δを求める。
図21は、自律運転コントローラ13Bにおいて繰り返し実行される目標舵角算出処理の一例を示す。なお、ステップS31~S36は、上記のステップS21~S26と同様であるので、説明を省略する。
ステップS37では、予想コーナリングパワー算出部202Bにより、図22に示すタイヤ空気圧とコーナリングパワーとの既知の相関関係を用いて、タイヤ空気圧Pに基づいて補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1を求める。なお、図22から明らかなように、タイヤ空気圧が標準圧力P0であるときのコーナリングパワーが基準コーナリングパワーKf,Krとなる。
具体的には、予想コーナリングパワー算出部202Bにより、図22(a)の前輪タイヤ空気圧と前輪コーナリングパワーとを関連付けた相関マップを参照して、前輪タイヤ空気圧Pfに対応する前輪の補正後基準コーナリングパワーKf1を求める。前輪タイヤ空気圧Pfは、左前輪2のタイヤ空気圧P1又は右前輪3のタイヤ空気圧P2のいずれか一方又はタイヤ空気圧P1,P2の平均値等として得られる。また、予想コーナリングパワー算出部202Bにより、図22(b)の後輪タイヤ空気圧と後輪コーナリングパワーとを関連付けた相関マップを参照して、後輪タイヤ空気圧Prに対応する後輪の補正後基準コーナリングパワーKr1を求める。後輪タイヤ空気圧Prは、左後輪4のタイヤ空気圧P3又は右後輪5のタイヤ空気圧P4のいずれか一方又はタイヤ空気圧P3,P4の平均値等として得られる。図22(a)及び図22(b)のいずれの相関マップも実験やシミュレーション等の結果から予め得られ、マイクロコンピュータに内蔵のROMや外付けROM等に記憶されている。
ところで、車輪2~5のうち1つの車輪(例えば左前輪2)のタイヤ空気圧のみを検出できる場合には、前輪タイヤ空気圧Pf及び後輪タイヤ空気圧Prの両方を、タイヤ空気圧の検出が可能な車輪について検出されたタイヤ空気圧の値(例えばタイヤ空気圧P1)とする。
なお、補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1は、基準コーナリングファクタKf,Krにタイヤ空気圧Pに応じた補正ゲインを掛けて求めてもよい。かかる補正ゲインは、タイヤ空気圧Pが標準圧力P0よりも大きい場合には、補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1が、基準コーナリングファクタKf,Krよりも大きいか同一の値となるように設定される。また、上記の補正ゲインは、タイヤ空気圧Pが標準圧力P0よりも小さい場合には、補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1が、基準コーナリングファクタKf,Krよりも小さい値となるように設定される。
車輪2~5のタイヤが意図的に過剰充填されている場合には、タイヤ特性上、接地面積の減少により、コーナリングパワーの低下を招くため、タイヤ空気圧Pが過剰充填を示す値であるときには、自律運転を実行しない等、任意のフェールセーフを設けることが好ましい。
ステップS38では、ステップS27と同様にして、予想コーナリングパワー算出部202Bにより、図6に示す軸荷重とコーナリングパワーとの既知の相関関係から、予想コーナリングパワーKfs,Krsを求める。
ステップS39では、目標舵角算出部203Bにより、先ず、上記の関係式(8)を用いて補正後スタビリティファクタApを求める。ここで、関係式(8)における3つの成分A0,A1,A2は、下記の関係式(24)~(26)を用いて求められる。
上記の関係式(8),(24)~(26)に、推定車両重量mp、目標前後加速度ap、推定摩擦係数μ、制駆動配分率α、予想荷重移動量Ws、補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1、予想コーナリングパワーKfs,Krs、及び、車両情報の固有値の各値を代入することで、補正後スタビリティファクタApが求められる。ここでの車両情報の固有値には、重心高さh、ホイールベースL、重心-前輪軸距離Lf及び重心-後輪軸距離Lrが含まれる。
さらに、上記の関係式(2)に、補正後スタビリティファクタAp、目標横加速度yp、目標移動点(Xp,Yp)における曲率Kp、及び、車両情報の固有値であるホイールベースLの各値を代入して目標舵角δが求められる。
図23は、タイヤ空気圧低下時の本実施形態による効果を示す。具体的には、タイヤ空気圧が低下したときにおいて、基準コーナリングパワーKf,Krを用いて算出した目標舵角δによる走行軌跡と補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1を用いて算出した目標舵角δによる走行軌跡との比較例を模式的に示す。
図23において、自車両位置(Xv,Yv)から目標走行軌跡上の目標移動点(Xp,Yp)までがカーブ形状の走行路面を、車両1Bが旋回する。ここで、車両1Bにおける実際のタイヤ空気圧が標準圧力P0よりも低いタイヤ空気圧Pであるものとする。基準コーナリングパワーKf,Krを用いた補正後スタビリティファクタApで算出された目標舵角δには、標準圧力P0から低下した実際のタイヤ空気圧が考慮されていないので、目標舵角δが不足し、車両1Bは、目標走行軌跡に対して径方向外方へ位置ズレを起こしやすくなる。これと比較すると、補正後スタビリティファクタApにおいて基準コーナリングパワーKf,Krをタイヤ空気圧Pに応じて補正した補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1に置き換えて算出された目標舵角δには、実際のタイヤ空気圧が考慮されている。したがって、車両1Bは、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下をさらに抑制できる。
図24は、タイヤ空気圧上昇時の本実施形態による効果を示す。具体的には、タイヤ空気圧が上昇したときにおいて、基準コーナリングパワーKf,Krを用いて算出した目標舵角δによる走行軌跡と補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1を用いて算出した目標舵角δによる走行軌跡との比較例を模式的に示す。
図24において、自車両位置(Xv,Yv)から目標走行軌跡上の目標移動点(Xp,Yp)までがカーブ形状の走行路面を、車両1Bが旋回する。ここで、車両1Bにおける実際のタイヤ空気圧が標準圧力P0よりも高いタイヤ空気圧Pであるものとする。基準コーナリングパワーKf,Krを用いた補正後スタビリティファクタApで算出された目標舵角δには、標準圧力P0から上昇した実際のタイヤ空気圧が考慮されていないので、目標舵角δが過多となり、車両1Bは、目標走行軌跡に対して径方向内方へ位置ズレを起こしやすくなる。これと比較すると、補正後スタビリティファクタApにおいて基準コーナリングパワーKf,Krをタイヤ空気圧Pに応じて補正した補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1に置き換えて算出された目標舵角δには、実際のタイヤ空気圧が考慮されている。したがって、車両1Bは、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下をさらに抑制できる。
なお、上記の目標舵角算出処理におけるステップS38では、図6に示す軸荷重とコーナリングパワーとの既知の相関関係から、予想コーナリングパワーKfs,Krsを求めている。しかし、図6が実際のタイヤ空気圧を標準圧力P0としたときの相関関係である場合には、実際のタイヤ空気圧に応じた予想コーナリングパワーKfs,Krsを求めるために図6の相関関係を用いるのは好ましくない。これは、実際のタイヤ空気圧が標準圧力P0より大きくなると、同じ軸荷重でもコーナリングパワーは大きくなる一方、標準圧力P0より小さくなると、同じ軸荷重でもコーナリングパワーは小さくなるからである。したがって、上記の関係式(25)において、予想コーナリングパワーKfs,Krsを用いる代わりに、タイヤ空気圧の変化に応じて予想コーナリングパワーKfs,Krsを補正した補正後予想コーナリングパワーKfss,Krssを用いてもよい。補正後予想コーナリングパワーKfss,Krssは、基準コーナリングパワーKf,Krから補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1への変化に基づいて求めることができる。
例えば、下記の関係式(27),(28)で示すように、基準コーナリングパワーKf,Krから補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1への変化量を予想コーナリングパワーKfs,Krsに加算して補正後予想コーナリングパワーKfss,Krssを求めることができる。
あるいは、下記の関係式(29),(30)で示すように、基準コーナリングパワーKf,Krに対する補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1の比率(変化率)を予想コーナリングパワーKfs,Krsに乗算して補正後予想コーナリングパワーKfss,Krssを求めることができる。
上記の第1~第3実施形態において、補正後スタビリティファクタApを求めるためには、上記のように、関係式(8)に加えて、関係式(9)~(11)、又は関係式(17)~(19)、又は関係式(24)~(26)を用いることが好ましい。一方、演算コストや適合優位性を踏まえ、関係式(8)における主要成分A1及びA2を、下記の関係式(12)で示されるように任意のゲインG1,G2に置き換えて簡易的に補正後スタビリティファクタApを求めてもよい。例えば、関係式(8)において、A1及びA2の各値が目標前後加速度apの値と比較して補正後スタビリティファクタApの値に与える影響が小さい場合には、ゲインG1,G2を用いる下記の関係式(31)によって補正後スタビリティファクタApを求めることができる。
上記の関係式(31)のゲインG1は、前後荷重移動、及びトー角変化、コンプライアンスステアの影響による傾きを示し、実験やシミュレーション等の結果に基づいて適合させることが好適である。
また、上記の関係式(31)のゲインG2は、制駆動時のコーナリング特性変化を模擬した曲線を示し、主に駆動方式の別により適合させる。ゲインG2の値は任意であるが、車両1,1A,1Bが前輪駆動方式の場合に正の値を設定し、車両1,1A,1Bが後輪駆動方式の場合に負の値を設定し、車両1,1A,1Bが四輪駆動方式の場合には零近傍の値とすることが好適である。
上記の第1~第3実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。
例えば、第2実施形態において、補正後スタビリティファクタApを用いずに、上記の関係式(1)で示されるように、基準スタビリティファクタAを用いて目標舵角δを算出してもよい。このとき、基準スタビリティファクタAには、車両重量mに代えて推定車両重量mpが用いられる。このようにしても、基準スタビリティファクタAには実車両重量が反映されているので、車両1Aは、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下を抑制できる。
また、第3実施形態において、補正後スタビリティファクタApを用いずに、上記の関係式(1)で示されるように、基準スタビリティファクタAを用いて目標舵角δを算出してもよい。このとき、基準スタビリティファクタAに用いられる基準コーナリングパワーKf,Krに代えて補正後基準コーナリングパワーKf1,Kr1が用いられる。このようにしても、基準スタビリティファクタAには実際のタイヤ空気圧が反映されるので、車両1Bは、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下を抑制できる。
さらに、第3実施形態において、推定車両重量mpの算出を行わず、上記の関係式(24)~(26)の推定車両重量mpに代えて車両重量mを用いて補正後スタビリティファクタApを算出してもよい。このようにしても、補正後スタビリティファクタApには実際のタイヤ空気圧が反映されるので、車両1Bは、目標走行軌跡からの位置ズレを起こし難くなって、目標走行軌跡への追従性低下を抑制できる。
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、横力制御量算出部109,109A,109Bで目標舵角δを求める際に目標横加速度ypを用いているが、目標横加速度ypは、目標横力を算出する際に必要となる物理量(目標横力に関する物理量)の一例である。横力制御量算出部109,109A,109Bは、目標横加速度ypを用いずに、目標走行速度Vp、目標移動点(Xp,Yp)における曲率Kp、目標ヨーレート等の目標横力に関する他の物理量を適宜組み合わせることで目標舵角δを求めることができる。同様に、現在の車体速度Vv、目標走行速度Vp、目標前後加速度ap、予想荷重移動量Ws、予想輪軸荷重Wfs,Wrs、推定車両重量mp、推定車高H、タイヤ空気圧P等についても、これらに関する物理量を用い得ることはいうまでもない。