JP2008246398A - 溶融飛灰からの石膏の回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】工程や薬剤を増大せず、またフィルタを目詰りさせずに、純度の高い石膏を生成するとともに、溶融飛灰の固形分を効率良く減容する。
【解決手段】本発明は、カルシウム成分と塩素成分と有価金属成分とを含有する溶融飛灰から石膏を回収する方法である。先ず溶融飛灰を塩酸含有水溶液でpHを7〜10に調整して浸出処理することにより溶融飛灰からカルシウム成分の大部分及び塩素成分を浸出して浸出液を生成する。次いで上記浸出工程13で生成された浸出液から溶融飛灰中のカルシウム成分の残部及び有価金属成分を含有する固形分を分離する。次にこの固形分が除去された浸出液に硫酸を添加して反応させ石膏を沈殿させるとともに浸出液を石膏ろ液である塩酸含有水溶液とする。更にこの沈殿した石膏を塩酸含有水溶液から分離した後に、この塩酸含有水溶液の一部又は全部を浸出工程13に戻す。
【選択図】図1

Description

本発明は、都市ごみや産業廃棄物を溶融したときに生じる溶融飛灰や、都市ごみや産業廃棄物を焼却したときに生じた焼却飛灰を更に溶融したときに生じる溶融飛灰から良質の石膏を回収する方法に関するものである。
従来、カルシウム及び各種の重金属を含む飛灰と水とを混合して得られたスラリーに塩酸を添加してpHを7.0〜11.0に調整した後に、飛灰中のカルシウムの一部を含む液分と、飛灰中のカルシウムの残部及び各種の重金属を含む固形分とに固液分離し、この固形分と水とを混合して得られたスラリーに硫酸を添加してpH1.5〜3.0に調整した後に、固形分から溶出した銅及び亜鉛を含む液分と、カルシウムの残部を含む固形分とに固液分離し、更にこの固形分と水とを混合して得られたスラリーにアルカリ化剤を添加してpHを13.0以上に調整した後に、固形分から溶出した鉛を含む液分と、カルシウムの残部を含む固形分とに固液分離する飛灰の処理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
このように構成された飛灰の処理方法では、飛灰に含まれるカルシウムの含有率が高い場合であっても、処理に要する硫酸等の薬剤の使用量を過度に増大させることなく、カルシウムを効率的に回収でき、また回収されたカルシウムが鉛等の重金属を殆ど含まず、セメントの原料として好適に用いられる。
一方、カルシウム成分と塩素成分と有価金属を含む飛灰から有価金属を回収する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この飛灰からの有価金属回収方法では、先ず第1工程で飛灰を塩酸酸性液で処理した後に、第2工程で処理液を濾過し除滓する。次の第3工程で除滓した液に硫酸を加えて反応させた後に、第4工程で反応生成液を濾過して石膏と塩酸酸性液を生成する。なお、この塩酸酸性液を飛灰の処理に用いられる塩酸酸性液の一部又は全部として再利用してもよい。
このように構成された飛灰からの有価金属回収方法では、先ず第1工程で飛灰を塩酸酸性液で処理することにより、主成分のカルシウム、鉛分の一部及びその他の重金属が溶出する一方、鉛分の残部とシリカとアルミナの不溶な残渣が生じる。次いで第2工程で処理液を濾過することにより鉛残渣を分離できる。次に鉛残渣は鉛製錬工程で鉛として回収される。更に第3工程でこの濾過液に硫酸を加えることにより石膏と塩酸酸性液が生成され、第4工程で濾過して石膏と塩酸酸性液に分離される。なお、この塩酸酸性液を飛灰の処理に用いられる塩酸酸性液の一部又は全部として再利用すれば、塩酸の薬品代が安価で済む。
特開2003−320336号公報(請求項1、段落[0025]) 特開2000−109938号公報(請求項1及び2、段落[0009]、段落[0010])
しかし、上記従来の特許文献1に示されたカルシウムを含む飛灰の処理方法では、飛灰に塩酸を添加して飛灰中のカルシウムの一部を浸出し、固形分に水を添加してスラリーにした後に硫酸を添加して固形分中から銅及び亜鉛を浸出し、更にこの固形分に水を添加してスラリーにした後にアルカリ化剤を添加してカルシウムを回収するため、工程及び薬剤の使用量が増大する不具合があった。
一方、上記従来の特許文献2に示された飛灰からの有価金属回収方法では、第1工程で飛灰を比較的強酸の塩酸酸性液で処理しているため、シリカやアルミナの微粒子が多く残り、第2工程における濾過時にこれらの微粒子がフィルタに詰るおそれがあった。
また、上記従来の特許文献2に示された飛灰からの有価金属回収方法では、第1工程で塩酸酸性液に飛灰の主成分のカルシウム、鉛分の一部及びその他の重金属が溶出するため、第3工程で濾過液に硫酸を加えて生成された石膏の純度が低くなるおそれもあった。
本発明の目的は、工程や薬剤を増大せず、またフィルタを目詰りさせずに、純度の高い石膏を生成できるとともに、溶融飛灰の固形分を効率良く減容できる、溶融飛灰からの石膏の回収方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、浸出工程で溶融飛灰中の有価金属成分を殆ど溶出させることなく、溶融飛灰中のカルシウム成分を効率良く浸出できるとともに、有価金属成分を含有する固形分を洗浄した水を浸出工程で再利用することにより、廃水処理の負荷を低減できる、溶融飛灰からの石膏の回収方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、図1に示すように、カルシウム成分と塩素成分と有価金属成分とを含有する溶融飛灰から石膏を回収する方法の改良である。
その特徴ある構成は、溶融飛灰を塩酸含有水溶液でpHを7〜10に調整して浸出処理することにより溶融飛灰からカルシウム成分の大部分及び塩素成分を浸出して浸出液を生成する浸出工程13と、この浸出工程13で生成された浸出液から溶融飛灰中のカルシウム成分の残部及び有価金属成分を含有する固形分を分離する第1固液分離工程11と、この第1固液分離工程11で固形分が除去された浸出液に硫酸を添加して反応させ石膏を沈殿させるとともに浸出液を石膏ろ液である塩酸含有水溶液とする反応工程14と、この反応工程14で沈殿した石膏を塩酸含有水溶液から分離する第2固液分離工程12と、この第2固液分離工程12で石膏が除去された塩酸含有水溶液の一部又は全部を浸出工程13に戻す工程とを含むところにある。
この請求項1に記載された溶融飛灰からの石膏の回収方法では、先ず浸出工程13で固体の溶融飛灰中の有価金属成分が殆ど溶出することなく、溶融飛灰からカルシウム成分の大部分と塩素成分の殆ど全てが塩酸含有水溶液に浸出されて浸出液が生成される。ここで、溶融飛灰中のカルシウム成分の多くは、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化水酸化カルシウム(Ca(OH)Cl)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)として固定されているため、これらのアルカリ性カルシウム成分は、次の反応式(1)〜反応式(3)に示すように、塩酸含有水溶液中の塩酸と反応して溶解する。
Ca(OH)Cl+ HCl → CaCl2 + H2O ……(1)
Ca(OH)2 +2HCl → CaCl2 +2H2O ……(2)
CaCO3 +2HCl → CaCl2+CO2+ H2O ……(3)
次に第1固液分離工程11で固形分が除去された上記浸出液に硫酸(H2SO4)を添加すると、反応して石膏(CaSO4)が沈殿するとともに浸出液が石膏ろ液である塩酸含有水溶液になる。更に第2固液分離工程12で石膏が除去された塩酸含有水溶液の一部又は全部を浸出工程13に戻すと、この塩酸含有水溶液により新たな溶融飛灰からカルシウム成分の大部分と塩素成分の殆ど全てが浸出される。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、第1固液分離工程11で塩酸含有水溶液が除去された固形分を水で洗浄した後に、この洗浄後の水を浸出工程13に供給することを特徴とする。
この請求項4に記載された溶融飛灰からの石膏の回収方法では、有価金属成分を含有する固形分を洗浄した水が浸出工程13で再利用されるので、廃水処理の負荷を低減できる。
本発明によれば、溶融飛灰を塩酸含有水溶液でpHを7〜10に調整して浸出処理することにより溶融飛灰からカルシウム成分の大部分及び塩素成分を浸出して浸出液を生成し、浸出工程で生成された浸出液から溶融飛灰中のカルシウム成分の残部及び有価金属成分を含有する固形分を分離し、この固形分が除去された浸出液に硫酸を添加して反応させ石膏を沈殿させるとともに浸出液を石膏ろ液である塩酸含有水溶液とし、更にこの石膏を塩酸含有水溶液から分離した後に、この石膏が除去された塩酸含有水溶液の一部又は全部を浸出工程に戻すので、浸出工程及び第1固液分離工程を経て得られた浸出液中に、溶融飛灰に含有されていたカルシウム成分の大部分が浸出されるけれども、この浸出液中の有価金属成分の含有量は極めて少ない。この結果、比較的少ない工程で、アルカリ化剤を用いることなく、純度の高い石膏を生成できるとともに、溶融飛灰の固形分を効率良く減容できる。
また第1固液分離工程で浸出液が除去された固形分を水で洗浄した後に、この洗浄後の水を浸出工程に供給すれば、洗浄後の水を処理しなくて済む。この結果、廃水処理の負荷を低減できる。
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の溶融飛灰からの石膏の回収方法は、溶融飛灰を塩酸含有水溶液で浸出処理して浸出液を生成する浸出工程13と、この浸出液から固形分を分離する第1固液分離工程11と、この固形分が除去された浸出液に硫酸を添加して反応させ石膏を生成するとともに浸出液を石膏ろ液である塩酸含有水溶液とする反応工程14と、この石膏を塩酸含有水溶液から分離する第2固液分離工程12と、この石膏が除去された塩酸含有水溶液の一部を浸出工程13に戻す工程とを含む。溶融飛灰は、都市ごみや産業廃棄物を溶融したときに生じる溶融飛灰の他に、都市ごみや産業廃棄物を焼却したときに生じた焼却飛灰を更に溶融したときに生じる溶融飛灰も含む。この溶融飛灰はカルシウム(Ca)成分と塩素(Cl)成分と有価金属成分(Zn、Pb、Cu等)とを含有する。この実施の形態では、溶融飛灰は平均組成で、15〜20質量%の塩素(Cl)、15〜30質量%のカルシウム(Ca)、4〜15質量%のナトリウム(Na)、4〜15質量%のカリウム(K)、2〜6質量%のアルミナ(Al23)、3〜9質量%のシリカ(SiO2)と、0.5〜1.5質量%の鉄(Fe)と、1〜10質量%の亜鉛(Zn)と、0.3〜3質量%の鉛(Pb)と、0.05〜0.5質量%の銅(Cu)、0.01〜0.1質量%のカドミウム(Cd)等を含む。また上記溶融飛灰は、上記組成物の酸化物、複合酸化物、塩化物、炭酸化物、硫酸化物等を組合せた化合物であり、具体的には、NaCl、KCl、CaCl2、Ca(OH)Cl、Ca(OH)2、CaCO3、CaSO4、PbCl2、ZnO、2CaO・Al23・SiO2等を組合せた化合物である。
先ず浸出工程13では、溶融飛灰100質量%に対して水を100〜500質量%、好ましくは150〜250質量%を加えて混合しスラリーを調整した後に、このスラリーに塩酸含有水溶液を添加して、10〜40℃の温度に保って1〜8時間撹拌する。このとき塩酸含有水溶液の添加量はスラリーのpHが7〜10、好ましくは8〜10、更に好ましくは8.5〜9.5になるように調整される。このpHはpHセンサで検出される。この浸出工程13では、固体である溶融飛灰からカルシウム成分の大部分と塩素成分の殆ど全てが塩酸含有水溶液によって溶出される。ここで、溶融飛灰中のカルシウム成分の多くは、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化水酸化カルシウム(Ca(OH)Cl)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)として固定されているため、このアルカリ性カルシウム成分は浸出液中の塩酸と反応して溶解する。
また第1固液分離工程11で除去された固形分(浸出残渣)を水で洗浄した後に、この洗浄後の水を浸出工程13に戻す。これにより廃水処理への負荷を低減できるだけでなく、溶融飛灰と洗浄後の水とを混合してアルカリ性スラリーを調製し、飛灰中の金属分を殆ど溶出させることのない高いpH領域から徐々に塩酸含有水溶液を加えながら、最適なpHに簡単に調整できる。ここで、浸出工程に戻す洗浄後の水の量は、溶融飛灰100質量%に対して100〜500質量%の範囲に限定したのは、100質量%未満ではスラリーの撹拌が困難となり、500質量%を越えると更に塩酸含有水溶液を加えたときにスラリー中の液量が多くなり、反応工程における浸出液の加熱費用が増大したり、液に溶解する石膏分が多くなって石膏の回収率が低下してしまうからである。また第1固液分離工程で除去された固形分(浸出残渣)を洗浄するのに必要な水量は浸出残渣中の水分の2〜10倍の量で十分である。例えば、飛灰が100gである場合、浸出残渣は湿潤状態で120gとなり、乾燥状態で70gとなるので、約50gの水分を100g〜500gの水で置換洗浄し、ろ過した後に、ろ液を浸出工程に戻す。このように浸出工程に戻す洗浄後の水の添加量は飛灰100質量%に対して100〜500質量%に自ずと定まる。更にスラリーのpHを7〜10の範囲に限定したのは、溶融飛灰中の有価金属成分を殆ど溶出させずにカルシウム成分の大部分と塩素成分の殆ど全てを効率良く浸出させるためである。
なお、上記塩酸含有水溶液は純粋な塩酸水溶液ではなく、一度、純粋な塩酸水溶液を用いて浸出工程13、第1固液分離工程11、反応工程14及び第2固液分離工程12を経た後に石膏が除去された塩酸含有水溶液が用いられる。この理由は次の通りである。塩酸含有水溶液として純粋な塩酸水溶液を用いた場合、浸出工程13で塩化物又は水酸化物として存在し微量な溶解度を示す鉛などが、反応工程14における硫酸イオンの存在下で上記浸出工程13での溶解度の1/1000程度の溶解度で硫酸鉛として沈殿する。このため回収された石膏には許容範囲を越える鉛が含まれてしまい、石膏の品質が低下してしまう。これに対し、この石膏を除去して得られた塩酸含有水溶液には石膏分がある程度溶解しているため、この塩酸含有水溶液を浸出工程13に戻すと、この塩酸含有水溶液に溶解していた石膏分が析出することにより、共沈の働きにより浸出工程13で僅かに溶解する鉛などの有価金属を更に沈殿させるので、塩酸含有水溶液中のカルシウム塩の品位を向上できるからである。即ち、浸出工程13で添加される塩酸含有水溶液には石膏分がある程度、例えば塩酸含有水溶液1リットルに対して10〜20g溶解している。
次いで第1固液分離工程11では、上記浸出工程13でカルシウム成分の大部分及び塩素成分を浸出した浸出液から、溶融飛灰中のカルシウム成分の残部及び有価金属成分を含有する固形分を分離する。分離後の浸出液には、上記カルシウム成分及び塩素成分の他にナトリウム成分やカリウム成分などの可溶性のアルカリ金属塩が含まれるけれども、有価金属のイオンを殆ど含まない。また分離後の固形分には有価金属が濃縮された状態で含まれる。更にこの分離はシックナー(濃縮沈降装置)やフィルタプレス等を用いて行われる。なお、固形分に含まれるカルシウム成分は飛灰の浸出液に含まれるカルシウム成分100質量%に対して70〜120質量%程度である。次に反応工程14では、上記第1固液分離工程11で固形分が除去された浸出液に硫酸を添加して次の反応式(4)で示すように反応させ、石膏を沈殿させる。
CaCl2+H2SO4 → CaSO4↓+2HCl ……(4)
このとき硫酸としては、濃度90質量%以上の濃硫酸を用いることが好ましく、浸出液に種石膏を添加して混合した後に硫酸を添加することが好ましい。これは、硫酸を添加したときに種石膏から石膏の結晶が効率良く成長し、高品質の大型の石膏を回収できるからである。また上記浸出液に硫酸を添加する前に、この浸出液を40〜80℃、好ましくは50〜60℃に加熱し、この浸出液に硫酸を添加した後に、この浸出液を1〜6時間、好ましくは4〜6時間撹拌する。この反応工程で上記浸出液は石膏ろ液である塩酸含有水溶液となる。ここで、浸出液を40〜80℃の範囲に加熱するのは、40℃未満では均一でかつ水切りの良い石膏粒子を生成し難くなり、80℃を越えると保温の問題や硫酸を加えたときの発熱の作用で石膏スラリーが沸騰してしまうからである。また硫酸を添加した浸出液を1〜6時間撹拌するのは、1時間未満では石膏粒子が十分に成長せず、6時間を越えると石膏粒子が十分に成長してこれ以上の石膏粒子の成長が望めないからである。
更に第2固液分離工程12では、上記反応工程14で生成された石膏を塩酸含有水溶液から分離する。この分離は遠心分離器やフィルタプレス等を用いて行われる。この第2固液分離工程12で石膏が除去された塩酸含有水溶液の一部は浸出工程13に戻され、塩酸含有水溶液の残部は廃水処理される。浸出工程13に戻される塩酸含有水溶液の量は、溶融飛灰中のアルカリ性成分の含有量や浸出スラリーのpHや塩酸含有水溶液の濃度にもよるけれども、石膏が除去された塩酸含有水溶液100質量%に対して10〜90質量%である。この結果、有価金属成分を殆ど含まない純度の高い石膏を生成できるとともに、塩酸含有水溶液を自己生成させて繰返し利用できるので、比較的高価な塩酸の使用量を抑制でき、コストを低減できる。なお、廃水処理される塩酸含有水溶液は石灰石や消石灰を用いて塩酸を中和すれば、塩酸含有水溶液中の溶解していた石膏の大部分が沈殿・除去された後に、無害の塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)の水溶液となるので、河川に放流できる。
一方、第1固液分離工程11で除去された固形分(浸出残渣)を水で洗浄した後に、この洗浄後の水を浸出工程13に戻す。これにより廃水処理への負荷を低減できるだけでなく、溶融飛灰と洗浄後の水とアルカリ性スラリーを調製し、飛灰中の金属分を殆ど溶出させることのない高いpH領域から徐々に塩酸含有水溶液を加えながら、最適なpHに簡単に調整できる。また洗浄した固形分の重さは処理前の溶融飛灰の重さを100質量%とするとき50〜70質量%となる。この結果、溶融飛灰を効率良く減容できる。
なお、この実施の形態では、第2固液分離工程で石膏が除去された塩酸含有水溶液の一部を浸出工程に戻したが、浸出工程における塩酸含有水溶液のpHを所定の範囲内に調整するために、第2固液分離工程で石膏が除去された塩酸含有水溶液の全部を浸出工程に戻してもよい。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
溶融飛灰を1kg用意した。この溶融飛灰を100gずつ10ロットに分け、1ロット目は塩酸含有水溶液として純粋な塩酸水溶液を用いて石膏を回収し、2ロット目以降は前ロットの石膏回収後の塩酸含有水溶液を用いて石膏を回収した。図1に示すように、先ず浸出工程13で溶融飛灰100gに水200mlを混合してスラリーを調製し、このスラリーに塩酸水溶液(1ロット目)又は塩酸含有水溶液(2ロット目以降)を混合して、スラリーのpHを8.1〜9.7になるように調製した。このときの塩酸水溶液(1ロット目)又は塩酸含有水溶液(2ロット目以降)の添加量は、約315ml、即ち塩酸水溶液(1ロット目)又は塩酸含有水溶液(2ロット目以降)の70体積%であった。なお、上記スラリーを調製するための水は1ロット目は水道水であり、2ロット目以降は第1固液分離工程11で分離された固形分を洗浄した後の水であった。浸出工程13での固体(溶融飛灰)と液体(水及び塩酸水溶液(1ロット目)又は塩酸含有水溶液(2ロット目以降))との質量比を1:5とし、浸出温度を30℃とし、浸出時間を1時間とし、撹拌子の回転速度を150rpmとした。
次いで第1固液分離工程11で濾紙を用いた吸引濾過した。これにより溶融飛灰の固形分から浸出液を分離できた。次に反応工程14で上記浸出液を40℃まで加熱し、浸出液中のカルシウム濃度に応じて濃硫酸(1化学当量)を添加した。濃硫酸の添加により反応が開始して石膏が沈殿し始め、石膏スラリーとなった。このスラリーの温度は50〜60℃まで上昇した。このスラリーを保温した状態で1時間撹拌して、石膏を生成するとともに、石膏粒子を成長させた。更に第2固液分離工程12で上記石膏スラリーを濾過し、石膏を回収して乾燥させた。回収石膏の品質は後述するように極めて良質であった。石膏を除去した後の塩酸含有水溶液の一部を次のロットの浸出工程13に戻した。浸出工程13に戻した塩酸含有水溶液は第2固液分離工程12で分離された塩酸含有水溶液の約7割を必要とした。残った3割の濾液は廃水処理した。
<試験1及び評価>
上記実施例1の溶融飛灰の組成と、固形分(平均66g)の組成(2〜10ロットの平均)と、第1固液分離後の浸出液(平均430ml)の組成(2〜10ロットの平均)と、第2固液分離後の塩酸含有水溶液(平均450ml)の組成(1〜10ロットの平均)とを分析した。その結果を表1に示す。また2〜10ロートで回収された石膏(平均28g)の組成を分析した。その結果を表2に示す。更に2〜10ロートで回収された石膏(平均28g)について溶出試験を行った。具体的には、石膏と蒸留水を質量比で1:10の割合で混合し、6時間浸透させて石膏からの溶出成分及びその溶出量を分析した。その結果を表3に示す。
Figure 2008246398
Figure 2008246398
Figure 2008246398

表1〜表3から明らかなように、有価金属成分を殆ど含まない純度の高い石膏を生成できるとともに、溶融飛灰100gを66g(固形分)まで減容できることが分った。また塩酸含有水溶液を自己生成させて繰返し利用できることも分った。
<実施例2>
浸出工程におけるスラリーのpHを8.8に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<実施例3>
浸出工程におけるスラリーのpHを8に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<実施例4>
浸出工程におけるスラリーのpHを7.6に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<実施例5>
浸出工程におけるスラリーのpHを7に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<比較例1>
浸出工程におけるスラリーのpHを6.8に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<比較例2>
浸出工程におけるスラリーのpHを5.6に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<比較例3>
浸出工程におけるスラリーのpHを3.4に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<比較例4>
浸出工程におけるスラリーのpHを2.4に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<比較例5>
浸出工程におけるスラリーのpHを1.6に調整したこと以外は、実施例1と同様にして石膏を回収した。
<比較試験1及び評価>
実施例2〜5及び比較例1〜5の第1固液分離工程で分離された浸出液中の鉛濃度と、第2固液分離工程で分離された石膏中の鉛濃度をそれぞれ分析した。そして、浸出液中の鉛濃度と、石膏中の鉛濃度との関係を図2に示す。また浸出液中の鉛濃度と、浸出工程におけるスラリーのpHとの関係を図3に示す。
第1固液分離工程で固形分が除去された浸出液に硫酸を添加すると、次の反応式(4)のように石膏が沈殿するけれども、この際に浸出液中の鉛成分も次の反応式(5)のように析出するため、石膏の品質が低下するおそれがある。
CaCl2+H2SO4 → CaSO4↓+2HCl ……(4)
PbCl2+H2SO4 → PbSO4↓+2HCl ……(5)
なお、鉛以外の有価金属のイオンについては、硫酸や石膏析出時に生成する塩酸に溶解するので、石膏の品質に与える影響は少ない。よって、回収された石膏の品質を高く保つためには、溶融飛灰中の鉛成分の浸出液への浸出と、その濃度を制御する必要がある。
図2から明らかなように、第1固液分離工程で分離された浸出液中の鉛濃度と、第2固液分離工程で分離された石膏中の鉛濃度とは、直線関係にあることが分った。これにより、鉛濃度を0.01質量%以下にするには、鉛濃度を100ppm以下に保つ必要がある。一方、図3から明らかなように、pHがほぼ中性の領域では鉛イオンの溶出が少ないことが分った。これは、pHが7以下では、反応式(6)及び反応式(7)において矢印とは逆の方向、即ち右側から左側に進み始めるため、鉛が溶解するものと考えられる。
PbCl2+2H2O → Pb(OH)2↓ +2HCl ……(6)
PbCl2+ H2O → Pb(OH)Cl↓+ HCl ……(7)
従って、石膏中の鉛濃度を0.01質量%未満に保つためには、浸出工程におけるスラリーのpHを7以上にしなければならないことが分った。
本発明実施形態の溶融飛灰から石膏を回収する方法を示す工程図である。 第1固液分離工程で分離された浸出液中の鉛濃度と、第2固液分離工程で分離された石膏中の鉛濃度との関係を示す図である。 浸出液中の鉛濃度と、石膏中の鉛濃度との関係を示す図である。
符号の説明
11 第1固液分離工程
12 第2固液分離工程
13 浸出工程
14 反応工程

Claims (4)

  1. カルシウム成分と塩素成分と有価金属成分とを含有する溶融飛灰から石膏を回収する方法において、
    前記溶融飛灰を塩酸含有水溶液でpH7〜10に調整して浸出処理することにより前記溶融飛灰から前記カルシウム成分の大部分及び前記塩素成分を浸出して浸出液を生成する浸出工程と、
    前記浸出工程で生成された浸出液から前記溶融飛灰中の前記カルシウム成分の残部及び前記有価金属成分を含有する固形分を分離する第1固液分離工程と、
    前記第1固液分離工程で前記固形分が除去された前記浸出液に硫酸を添加して反応させ石膏を沈殿させるとともに前記浸出液を石膏ろ液である塩酸含有水溶液とする反応工程と、
    前記反応工程で沈殿した前記石膏を前記塩酸含有水溶液から分離する第2固液分離工程と、
    前記第2固液分離工程で前記石膏が除去された前記塩酸含有水溶液の一部又は全部を前記浸出工程に戻す工程と
    を含む溶融飛灰からの石膏の回収方法。
  2. 第1固液分離工程で固形分が除去された浸出液に硫酸を添加する前に、前記浸出液を40〜80℃に加熱する請求項1記載の溶融飛灰からの石膏の回収方法。
  3. 第1固液分離工程で固形分が除去された浸出液に硫酸を添加した後に、前記浸出液を1〜6時間撹拌する請求項1記載の溶融飛灰からの石膏の回収方法。
  4. 第1固液分離工程で浸出液が除去された固形分を水で洗浄した後に、この洗浄後の水を浸出工程に供給する請求項1記載の溶融飛灰からの石膏の回収方法。
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