JP2008246293A - 調湿剤およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】潮解により生じた水が漏れ出るなどといった不具合が生じない、相対湿度が60%を超える高湿度域で高い調湿能を有し、床下や小屋裏の防湿により建物の耐久性を高めるのに適した調湿剤を提供する。
【解決手段】粒状の黒炭を水酸化カリウム水溶液に入れ、攪拌し、吸引濾過し、乾燥させることによって黒炭の細孔内部と外部表面に水酸化カリウムを収着させ、吸湿に有効な水酸化カリウムを収着量の2分の1程度としたものを調湿剤とする。
【選択図】なし
【解決手段】粒状の黒炭を水酸化カリウム水溶液に入れ、攪拌し、吸引濾過し、乾燥させることによって黒炭の細孔内部と外部表面に水酸化カリウムを収着させ、吸湿に有効な水酸化カリウムを収着量の2分の1程度としたものを調湿剤とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、調湿剤およびその製造方法に関し、特に高湿度域での調湿能に優れ、かつ高湿度域でも潮解しない調湿剤およびその製造方法に関する。
日本の気候が元来、高温多湿であること、及び、近年の冷暖房効率の向上や高断熱・高気密化による建築工法の変化に伴う建物内の気候環境を考えた場合、床下や小屋裏の防湿が建物の耐久性を高める上できわめて大切である。
例えば床下や押入れなどの乾燥に用いられる吸湿材ないしは調湿材としては、一般に、シリカゲルなどの乾燥剤が広く用いられている。しかし、シリカゲルは、通常は使い捨てであるので、省資源の観点からは好ましいものであるとはいえない。また、吸着剤として代表的なものに活性炭があるが、活性炭の製造には炭化だけでなく賦活の工程を加えることで吸着力を増強させている。しかしその賦活の工程が必要なため高価なものとなってしまう。
備長炭等の木炭も吸湿作用ないしは調湿作用を有するので、吸湿材ないしは調湿材として利用されている(例えば、特許文献1参照)。木炭は、加熱により再生して再使用することができるといった利点も有する。
特開2001−164741号公報
しかしながら、木炭は高湿度環境下では吸湿能力が低下し、最も吸湿能力が必要とされる湿度領域で平衡状態に達してしまうので、良好な吸湿材であるとはいいがたい。木炭が調湿剤として利用されるのは、一般に、微細な毛管系が発達しているため多孔質で内部表面積が広いことから優れた調湿能を有すると言われているためである。しかし、実際には木炭の調湿能は木材と同程度しかなく、優れた調湿能を有するとは言いがたい。また、その比表面積との相関も認めにくい。
また、従来の吸湿材は、空気中の水蒸気を吸収すると、潮解性物質が潮解し、潮解によって生じた水が吸湿材の外に漏れ出る(ダレる)ことがあるといった問題がある。本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、潮解により生じた水が漏れ出るなどといった不具合が生じない、高い調湿能を有する調湿剤を提供することを課題とする。
本発明の第1の特徴は、調湿剤であって、粒状の黒炭の細孔内部と外部表面に水酸化カリウムを収着させたことにある。
本発明の第2の特徴は、調湿剤の製造方法であって、粒状の黒炭を、水酸化カリウム水溶液に入れ、攪拌し、吸引濾過し、乾燥させることによって前記粒状の黒炭の細孔内部と外部表面に前記水酸化カリウムを収着させることにある。
黒炭をKOH水溶液に浸漬させるだけの簡単な処理で、その調湿能を大幅に改善することができる。処理炭の調湿能はKOH収着量に依存しており、その効果は高湿度になるほど高くなる。後述するように、60%RHを超える高湿度域での調湿能は特に優れ、高性能調湿剤として一般的に用いられている活性炭の約3倍もの高い性能を発揮した。この調湿能は乾湿繰り返しても一定の能力を保つ。
また、収着したKOHは処理炭の細孔内に充填されることが明らかになり、その影響で吸湿に有効なKOHの量は 実際の2分の1程度であった。しかし、この充填効果により、高湿度域でも潮解しない。
以下に本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、以下の説明は、単なる例示に過ぎず、本発明の技術的範囲は以下の説明に限定されるものではない。
[供試試料]
表1に供試試料を示す。アルカリ水溶液処理と調湿能との関係については、市販ナラ黒炭(岩手県久慈市山形町産)と調製黒炭を用いて調べた。調製黒炭は、ミズナラ木粉11(45メッシュ未満)を図1(a)に示す半気密鉄製容器12に入れて、図1(b)に示す木炭製造装置13を用いて、5時間かけて炭化温度の500℃、700℃、900℃まで昇温し、各温度で3時間保持後、自然放冷させたものである。これらはいずれも30〜60メッシュに篩別したものを後述のアルカリ水溶液処理に供した。
表1に供試試料を示す。アルカリ水溶液処理と調湿能との関係については、市販ナラ黒炭(岩手県久慈市山形町産)と調製黒炭を用いて調べた。調製黒炭は、ミズナラ木粉11(45メッシュ未満)を図1(a)に示す半気密鉄製容器12に入れて、図1(b)に示す木炭製造装置13を用いて、5時間かけて炭化温度の500℃、700℃、900℃まで昇温し、各温度で3時間保持後、自然放冷させたものである。これらはいずれも30〜60メッシュに篩別したものを後述のアルカリ水溶液処理に供した。
これら炭化試料とは別に、多孔性の白炭、活性炭およびシリカゲルと、無孔性のガラスビーズも比較試料として供した。
[アルカリ試薬の選択]
予備実験において1価のNaOH、KOH、2価のCa(OH)2、Mg(OH)2を処理アルカリ水溶液として検討した結果、前二者は1、2、3mol/l(1,2、3N)の水溶液を調製できたが、後二者は溶解度が低く、飽和濃度は0.1N以下であった。
予備実験において1価のNaOH、KOH、2価のCa(OH)2、Mg(OH)2を処理アルカリ水溶液として検討した結果、前二者は1、2、3mol/l(1,2、3N)の水溶液を調製できたが、後二者は溶解度が低く、飽和濃度は0.1N以下であった。
さらに、アルカリ処理炭と調湿能との関係を調べたところ、Ca(OH)2とMg(OH)2で処理した処理炭の調湿能は、処理アルカリ濃度が低いことが関係して未処理のものとほとんど差が見られなかった。KOHで処理したものは、処理濃度の増加に伴って調湿能も増加した。しかし、NaOHで処理したものは、高湿度域において若干潮解するという欠点を有した。よって、アルカリ処理試薬としてKOHを採用することにした。
[KOH水溶液処理方法と収着量の測定]
アルカリ処理溶液として1、2、3NのKOH水溶液を用いた。処理は、供試黒炭15gに各濃度のKOH水溶液750mlを入れ、スターラーで48時間攪拌した後、吸引濾過した。その後、110℃で24時間乾燥させた。
アルカリ処理溶液として1、2、3NのKOH水溶液を用いた。処理は、供試黒炭15gに各濃度のKOH水溶液750mlを入れ、スターラーで48時間攪拌した後、吸引濾過した。その後、110℃で24時間乾燥させた。
[処理炭水抽出液の濃度測定]
アルカリ処理炭に収着したKOHが水抽出によって全て溶解するか否かについて、アルカリ水溶液処理試料と処理後に水抽出した試料の調湿能を検討した。その結果、図2に示すように、水抽出後の調湿能は未処理炭の調湿能より若干小さくなった。このことから、収着されていたKOHは水抽出により全て水に流出するものと判断した。
アルカリ処理炭に収着したKOHが水抽出によって全て溶解するか否かについて、アルカリ水溶液処理試料と処理後に水抽出した試料の調湿能を検討した。その結果、図2に示すように、水抽出後の調湿能は未処理炭の調湿能より若干小さくなった。このことから、収着されていたKOHは水抽出により全て水に流出するものと判断した。
KOH収着量は以下の方法で測定した。
円筒濾紙に試料2gを入れ、蒸留水100mlで12時間ソックスレー抽出した。抽出液の濃度を、0.1NのHClを用いて自動滴定装置(メトローム・シバタ(株)製、Basicティトリーノ794型)で滴定してKOH収着量を求め、試料1gあたりの収着量(mg/g)に換算した。
円筒濾紙に試料2gを入れ、蒸留水100mlで12時間ソックスレー抽出した。抽出液の濃度を、0.1NのHClを用いて自動滴定装置(メトローム・シバタ(株)製、Basicティトリーノ794型)で滴定してKOH収着量を求め、試料1gあたりの収着量(mg/g)に換算した。
[塩基性官能基量の測定]
未処理炭に含まれる塩基性官能基量を以下の方法で測定した。
110℃で水分を除いた全乾試料1gに0.1NのHCl水溶液100mlを入れて振とう機(EYELA製、MMS-310型)で168時間振とうさせ、その上澄み液を0.1NのNaOHを用いて自動滴定装置(メトローム・シバタ(株)製、Basicティトリーノ794型)で滴定し、HClの吸着量を求めた。この値は試料に収着していた塩基性官能基量に相当する。
未処理炭に含まれる塩基性官能基量を以下の方法で測定した。
110℃で水分を除いた全乾試料1gに0.1NのHCl水溶液100mlを入れて振とう機(EYELA製、MMS-310型)で168時間振とうさせ、その上澄み液を0.1NのNaOHを用いて自動滴定装置(メトローム・シバタ(株)製、Basicティトリーノ794型)で滴定し、HClの吸着量を求めた。この値は試料に収着していた塩基性官能基量に相当する。
[細孔構造の測定]
窒素ガス吸着による供試試料の細孔構造を、窒素吸着装置NOVA-1200を用いて測定した。
試料(0.05〜0.5g)をフラスコ形の試料セルに投入し、あらかじめ真空下200℃で4時間以上脱気したのち、液体窒素温度(−196℃)での窒素吸着等温線を求めた。得られた窒素吸着等温線から、全細孔容積Vpと、BET法による比表面積SBETを求めた。
BET法はIUPACによるII型等温線の吸着メカニズムを説明したもので、下記式(1)で求められる。
窒素ガス吸着による供試試料の細孔構造を、窒素吸着装置NOVA-1200を用いて測定した。
試料(0.05〜0.5g)をフラスコ形の試料セルに投入し、あらかじめ真空下200℃で4時間以上脱気したのち、液体窒素温度(−196℃)での窒素吸着等温線を求めた。得られた窒素吸着等温線から、全細孔容積Vpと、BET法による比表面積SBETを求めた。
BET法はIUPACによるII型等温線の吸着メカニズムを説明したもので、下記式(1)で求められる。
ここで、xを横軸に、x/V(1−x)を縦軸にてプロットすると、傾き(C−1)/VmCで、切片1/VmCの直線が得られ、これからVmとCを求めることができる。相対圧0.01〜0.22の間で良い直線性が得られたためこの範囲の値を用いて計算した。表面積は求めたVmにガス分子の占有断面積を乗ずることにより得られ、比表面積は表面積と試料量により算出できる。窒素ガスの分子断面積16.2×10-20m2とアボガドロ数6.02×1023より下記式(2)で求めた。
また、t法による検討も行った。この方法はLippensらによって提唱されたもので、吸着等温線の簡単な解析から、窒素分子の収着および充填機構を説明すると同時に、表面積Stと空隙の大きさに関する知見も提供する。その方法は、各相対圧での吸着層厚さtに対して、収着窒素分子の容積が液体窒素のそれに近似するとして求めた吸着量VlをプロットしたVl‐tプロット(図3)から解析する。
吸着媒の表面積をSとした場合、それが無孔質のときには、Vl=S×tとなり、図3(a)のようにVl‐tは原点を通る直線となる。吸着媒を多孔質とし、ある相対圧xiで毛管凝縮を起こすときには、Vlは吸着層の容積(S×t)と毛管凝縮量の和となるため、Vl>S×tとなり、図3(b)のようにX1以上で原点を通る直線より上にずれる。また、空隙の大きさが小さく、相対圧X2で吸着層の厚さのみで容積充填を起こすときには、それによってtが増加しうるSが減少するため、Vl<S×tとなり、図3(c)のようにX2で直線より下にずれる。しかし、X3で容積充填が完了し、X4まで未充填の空隙の内壁面上に吸着層の形成のみが行われ、X4に至って初めて毛管凝縮が起こるときには、X3〜X4間ではプロットに直線関係が、また、X4以上ではその直線よりも上にずれる。したがって、以上のようにVl‐tプロットを検討することによって、逆に系の収着機構を知ることができる。
また、Vl‐tプロットから、原点を通る直線の勾配(Vl/t)はそのまま吸着媒の全表面積Stを、さらに、図3(c)でのX3〜X4間の原点を通らない直線の勾配も表面積St′を示す。後者の値は、X3の時点で未充填状態にある空隙の表面積に等しく、StとSt′の差は、容積充填された空隙の表面積となる。
また、図3(b)と図3(c)において、毛管凝縮を開始する相対圧X1とX4をそれぞれ知ることによって、毛管凝縮を起こす最小空隙の大きさが、また、図3(c)の容積充填を開始または完了するところのt2とt3から、容積充填を起こす空隙の大きさの範囲が下記式(3)、(4)で計算できる。
収着KOHが炭化細胞壁中に浸潤しているかを調べるため、エネルギー分散型X線光法(energy dispersive X-ray spectroscopy: EDS)で細胞壁の元素組成および元素の重量比を求めた。EDSは、電子線を試料に照射した時に試料から放出される元素固有の波長を有する特性X線を分析し、元素の種類とそのエネルギー強度を求めるもので、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope: SEM)と併用することで試料表面の微小部分の元素分析を行うことができる。
したがって、細胞壁をEDS分析し、Kのエネルギー強度が未処理炭に比べ処理炭で大きくなっていれば、細胞壁中にKOHは浸潤していると考えられる。そこで、木炭の主な構成元素であるCとAu蒸着膜のAuを基準にした重量比K/C、あるいはK/Auを求めた。
したがって、細胞壁をEDS分析し、Kのエネルギー強度が未処理炭に比べ処理炭で大きくなっていれば、細胞壁中にKOHは浸潤していると考えられる。そこで、木炭の主な構成元素であるCとAu蒸着膜のAuを基準にした重量比K/C、あるいはK/Auを求めた。
図4にEDS分析試料の調製方法と測定位置を示す。調製方法は、ナラの市販炭からブロック体のサンプル(約5×5×20mm)を切り出し、1NのKOH水溶液で48時間処理した後、木口面を破断した。この破断面が電子線走査軸に垂直になるように破断面とは反対側の面を紙やすりで削り、厚さ約1mmの試片を調製した。EDSの測定は、SEM(日本電子(JEOL)製、JSM-5310LV)付置のEDS装置(日本電子(JEOL)製、JED-2110)を用い、加速電圧20.0kV、有効時間120秒で破断木口面を分析し、装置付属のソフトを用いてデータを解析した。木繊維と道管の細胞壁木口面、1試料あたり5測定点についての重量比を算出し、その平均値を求めた。
調湿能は以下の二つの方法で測定した。
[水蒸気収着等温線]
110℃で24時間乾燥させた試料約1gを秤量瓶に入れ、25℃における相対湿度23〜93%RHの平衡含水率をデシケーター法により測定した。各デシケーター内の相対湿度と調湿時間は表2に示す通りである。高湿度条件になるほど、平衡含水率に達するまでに長時間必要だった。
110℃で24時間乾燥させた試料約1gを秤量瓶に入れ、25℃における相対湿度23〜93%RHの平衡含水率をデシケーター法により測定した。各デシケーター内の相対湿度と調湿時間は表2に示す通りである。高湿度条件になるほど、平衡含水率に達するまでに長時間必要だった。
[Humidity-Control Capacity(HCC)]
HCCは、一定の温度下で相対湿度を変化させた時の高湿度と低湿度間での水分収着量差を調湿能とする指標である。
110℃で24時間乾燥させた試料約1gずつを秤量瓶に入れ、恒温恒湿器(エスペック製、PR−1KP)内で25℃における40%RHでの48時間後の収着水分量(W1)を測定した。次に、80%RHに上げて48時間後の収着水分量(W2)を、その後再び40%RHに下げて48時間後の収着水分量(W3)を測定した。以上から、40→80%RHの吸湿量ΔWa=W2−W1、80→40%RHの脱湿量ΔWd=W2−W3を求めた(図5)。
相対湿度の変化を繰り返した場合の効果を調べるため、40%RH→80%RH→40%RHの湿度変化は3回繰り返して行った。
HCCは、一定の温度下で相対湿度を変化させた時の高湿度と低湿度間での水分収着量差を調湿能とする指標である。
110℃で24時間乾燥させた試料約1gずつを秤量瓶に入れ、恒温恒湿器(エスペック製、PR−1KP)内で25℃における40%RHでの48時間後の収着水分量(W1)を測定した。次に、80%RHに上げて48時間後の収着水分量(W2)を、その後再び40%RHに下げて48時間後の収着水分量(W3)を測定した。以上から、40→80%RHの吸湿量ΔWa=W2−W1、80→40%RHの脱湿量ΔWd=W2−W3を求めた(図5)。
相対湿度の変化を繰り返した場合の効果を調べるため、40%RH→80%RH→40%RHの湿度変化は3回繰り返して行った。
[未処理炭化試料の多孔構造と塩基性官能基量]
表3に供試試料の比表面積と細孔半径、および未処理炭に含まれる塩基性官能基量に相当するHCl吸着量を示す。
表3に供試試料の比表面積と細孔半径、および未処理炭に含まれる塩基性官能基量に相当するHCl吸着量を示す。
供試黒炭のうち、N500からN900の多孔構造については炭化温度の上昇に伴う傾向が無く、N900の比表面積および細孔容積はN700より小さかった。一般的に、炭化温度が高くなるにしたがって比表面積は大きくなると言われているがその関係は認められなかった。供試黒炭の比表面積および細孔容積は、比較試料である活性炭の約3分の1以下、シリカゲルの約2分の1以下であった。また、炭化温度500℃以上の黒炭の微細空隙はミクロ孔(孔径1nm以下の空隙)が主体であると報告されているが、供試黒炭ではN700のみにミクロ孔が存在した。N700は比表面積と細孔容積から求めた平均細孔半径も1nm以下と小さくなっている。なお、活性炭とシリカゲルにもミクロ孔の存在が認められた。
黒炭のHCl吸着量は炭化温度が高くなるほど増加した。比較試料である白炭は黒炭より小さく、活性炭でもN700、N900以下の値だった。
黒炭のHCl吸着量は炭化温度が高くなるほど増加した。比較試料である白炭は黒炭より小さく、活性炭でもN700、N900以下の値だった。
[KOH収着量]
表4に処理炭から水抽出で溶脱したアルカリ量とそれから求めたKOH収着量を示す。
表4に処理炭から水抽出で溶脱したアルカリ量とそれから求めたKOH収着量を示す。
未処理炭からも若干のアルカリが溶脱するため、処理炭へのKOH収着量はアルカリ溶脱量から未処理炭のそれを差し引いた値とした。
各処理炭のKOH収着量はKOH処理濃度を高くするにしたがって増大する関係が認められたが、N700では2N処理より3N処理した時の収着量は小さくなった。
一方、無孔質ガラスビーズにおいても、KOH収着量はKOH濃度増大とともに多くなり、KOH収着膜の厚さが増加することを示唆している。
各処理炭のKOH収着量はKOH処理濃度を高くするにしたがって増大する関係が認められたが、N700では2N処理より3N処理した時の収着量は小さくなった。
一方、無孔質ガラスビーズにおいても、KOH収着量はKOH濃度増大とともに多くなり、KOH収着膜の厚さが増加することを示唆している。
[処理炭でのKOH収着様式]
前述のように、処理炭中のKOHは水抽出により全て溶脱することから、木炭と化学的に結合していないことは確かである。これを根拠にすると、木炭内部表面でのKOHの収着様式として図6の4モデルが考えられる。
前述のように、処理炭中のKOHは水抽出により全て溶脱することから、木炭と化学的に結合していないことは確かである。これを根拠にすると、木炭内部表面でのKOHの収着様式として図6の4モデルが考えられる。
このうちモデルIは、試料の外部および内部表面に均一厚さのKOH収着層が形成されるもので、未処理炭と処理炭に関わらず表面積はほぼ等しいと考えられる。そこで、この点を明らかにするために、ナラ市販炭(精錬度3)について未処理炭と1N KOH処理炭の比表面積SBETを求めた。その結果、表5に示すように、前者では238 m2/gだったのに対し、後者では1 m2/g以下となり、モデルIの収着様式を説明することができない。
次に、モデルIIのように、外部表面のみに吸着層が形成され細胞壁中の細孔にはKOHが入っていない場合には、壁中の元素Kの組成は未処理炭と同一である。そこで、細胞壁中の基準元素(CまたはAu)のエネルギー強度に対するKのそれとの比、すなわち強度比(K/C またはK/Au)をEDSから解析した。
一例として、図7にAu蒸着した木繊維細胞壁の特性X線スペクトルを示す。丸を付したAuのエネルギー強度に対する丸を付したKのそれが強度比となる。この強度比を図7(a)に示す未処理炭と図7(b)に示す処理炭で比較すると、処理の影響によって差があることが分かる。
木繊維および道管細胞壁について得られた強度比K/C およびK/Auを表6に示す。
一例として、図7にAu蒸着した木繊維細胞壁の特性X線スペクトルを示す。丸を付したAuのエネルギー強度に対する丸を付したKのそれが強度比となる。この強度比を図7(a)に示す未処理炭と図7(b)に示す処理炭で比較すると、処理の影響によって差があることが分かる。
木繊維および道管細胞壁について得られた強度比K/C およびK/Auを表6に示す。
未蒸着試料の場合、木繊維のK/Cは未処理炭の8.0に対し処理炭では約3.3倍の26.3となった。また、道管のK/Cは未処理炭の10.0に対し処理炭では約5.1倍の51.4となった。処理炭道管の強度比が木繊維のそれより大きかったことは、KOH処理溶液が道管に直接接触するためだと考えられる。因みに、EDSで求めた未蒸着試料のCの構成割合は50%以下で、木炭でのCの組成割合90%以上とは大きくかけ離れている。これは、Cの原子量が小さいため特性X線の強度が実際よりも小さく検知されたことが原因したものと考えられる。そこで、比較基準としてCを用いた強度比の値が確かかどうか、原子量が大きく検知能が高いAuを基準に木繊維のK/Auを求めたところ、未蒸着の時と同様に強度比の増加割合(表6のB/A)も約3.3倍となり、K/Cで得られたものと同じ値を示した。
以上から、KOHが細孔中に入っていることは確かと考えられるため、収着様式としてモデルIIは不適当と判断した。
以上から、KOHが細孔中に入っていることは確かと考えられるため、収着様式としてモデルIIは不適当と判断した。
残りのモデルIIIとIVはいずれも細孔内がKOHで充填されているが、外部表面上に収着層が形成されているか否かに違いがある。その点を検討するために、細孔容積VpとKOH収着量の関係を求めた。
図8に示すように、1Nおよび2N処理した場合、KOH収着量は細孔容積の増大に比例して多くなるが、3N処理した場合は細孔容積が増加しても収着量は増加せず、ほぼ一定の約60mg/gの値を示した。
そこで、1Nおよび2N処理について回帰直線を求めたところ、いずれの切片も約10mg/gの値を示した。この切片の値は細孔が無い場合の収着量、すなわち外部表面上での収着層重量と考えることができる。このことは、外部表面にもKOH収着層が形成されていることを示唆することから、モデルIIIよりもモデルIVの収着様式の方が妥当だと判断することができる。
この場合、外部表面上の収着層の厚さは1N、2Nでほぼ変わらず、3Nで前者の約6倍に厚くなると考えられる。また、回帰直線の勾配が1Nより 2Nで大きくなっていることから、2Nは1Nより細孔への充填度が高いと考えられる。つまり、細孔は1N、2Nと処理濃度が高くなるに伴ってKOHで充填していき、3Nでは飽和状態になると考えられる。以上から、処理KOH濃度増加に伴う収着様式は図9に示すようになると考えられる。
図8に示すように、1Nおよび2N処理した場合、KOH収着量は細孔容積の増大に比例して多くなるが、3N処理した場合は細孔容積が増加しても収着量は増加せず、ほぼ一定の約60mg/gの値を示した。
そこで、1Nおよび2N処理について回帰直線を求めたところ、いずれの切片も約10mg/gの値を示した。この切片の値は細孔が無い場合の収着量、すなわち外部表面上での収着層重量と考えることができる。このことは、外部表面にもKOH収着層が形成されていることを示唆することから、モデルIIIよりもモデルIVの収着様式の方が妥当だと判断することができる。
この場合、外部表面上の収着層の厚さは1N、2Nでほぼ変わらず、3Nで前者の約6倍に厚くなると考えられる。また、回帰直線の勾配が1Nより 2Nで大きくなっていることから、2Nは1Nより細孔への充填度が高いと考えられる。つまり、細孔は1N、2Nと処理濃度が高くなるに伴ってKOHで充填していき、3Nでは飽和状態になると考えられる。以上から、処理KOH濃度増加に伴う収着様式は図9に示すようになると考えられる。
[水蒸気収着等温線]
(1)未処理炭の水蒸気収・脱着等温線
未処理試料の水蒸気収・脱着等温線を図10に示す。Aは供試黒炭、Bは比較試料である。
Aの供試黒炭の平衡含水率は、炭化温度が高いほど40%RH以下の低湿度域では低くなるが、40%RHから60%RH間で急に増大し、それより高湿度域では炭化温度に関わらず増加割合は緩やかになった。95%RHでの平衡含水率はN500で8.7%、市販炭で9.1%、N700で12.3%、N900で15.0%と、炭化温度が高いほど大きい値を示した。したがって、収着等温線のパターンは市販炭およびN500ではゆるいS字型を、N700およびN900では急なS字型を示した。また、ヒステレシスは、市販炭とN500では小さいが、N700とN900では大きくなった。多孔性炭の調湿能は、細孔容積の増大にと伴って大きくなることや、内部表面に露出した塩基性官能基量の増大に伴って大きくなることが報告されていることから、供試黒炭の水蒸気収着の特徴には試料の持つ空隙や塩基性官能基量が関与していると考えられる。
(1)未処理炭の水蒸気収・脱着等温線
未処理試料の水蒸気収・脱着等温線を図10に示す。Aは供試黒炭、Bは比較試料である。
Aの供試黒炭の平衡含水率は、炭化温度が高いほど40%RH以下の低湿度域では低くなるが、40%RHから60%RH間で急に増大し、それより高湿度域では炭化温度に関わらず増加割合は緩やかになった。95%RHでの平衡含水率はN500で8.7%、市販炭で9.1%、N700で12.3%、N900で15.0%と、炭化温度が高いほど大きい値を示した。したがって、収着等温線のパターンは市販炭およびN500ではゆるいS字型を、N700およびN900では急なS字型を示した。また、ヒステレシスは、市販炭とN500では小さいが、N700とN900では大きくなった。多孔性炭の調湿能は、細孔容積の増大にと伴って大きくなることや、内部表面に露出した塩基性官能基量の増大に伴って大きくなることが報告されていることから、供試黒炭の水蒸気収着の特徴には試料の持つ空隙や塩基性官能基量が関与していると考えられる。
一方、Bの比較試料を見ると、白炭の収着等温線は黒炭のN700と同様のパターンを示し、ヒステレシスは小さかった。活性炭の場合、平衡含水率は40%RH以下の低湿度域では低いが、40%RH以上の高湿度域では急激に大きく増大し、95%RHでは42.5%となった。また、40%RHから95%RH間で大きなヒステレシスが認められた。シリカゲルの平衡含水率は50%RHまで順次増大した後、それよりも高湿度域ではほぼ一定値を保ち、明らかなヒステレシスは認められなかった。
このように、試料によって等温線パターンは異なる。IUPACによると、収着等温線は図11の6パターンに分類されている。これに供試試料の収着等温線を当てはめると、木炭はいずれもV型、活性炭、シリカゲルではそれぞれIII型およびI型に区分された。以上の結果から各試料の特徴をまとめると、表7のようになる。
このように、試料によって等温線パターンは異なる。IUPACによると、収着等温線は図11の6パターンに分類されている。これに供試試料の収着等温線を当てはめると、木炭はいずれもV型、活性炭、シリカゲルではそれぞれIII型およびI型に区分された。以上の結果から各試料の特徴をまとめると、表7のようになる。
(2)処理炭の水蒸気収着等温線
図12に、処理炭の水蒸気収着等温線を示す。未処理炭の収着等温線パターンはV型であったが、処理炭のそれは炭化温度およびKOH処理濃度に関係なくII型に変化した。すなわち平衡含水率は60%RHまではわずかな増大を示す程度であるが、60%RH以上の高湿度域で大きく増大する傾向が見られた。また、各湿度での平衡含水率はKOH処理濃度が高いほど大きくなる関係が見られた。
図12に、処理炭の水蒸気収着等温線を示す。未処理炭の収着等温線パターンはV型であったが、処理炭のそれは炭化温度およびKOH処理濃度に関係なくII型に変化した。すなわち平衡含水率は60%RHまではわずかな増大を示す程度であるが、60%RH以上の高湿度域で大きく増大する傾向が見られた。また、各湿度での平衡含水率はKOH処理濃度が高いほど大きくなる関係が見られた。
図13に、各相対湿度における処理炭のKOH収着量と平衡含水率の関係を示す。
いずれの相対湿度においても、平衡含水率はKOH収着量の増大に比例して大きくなり、KOH収着量に依存していると言える。また、その回帰直線の傾きを見ると23%RHから62%RHまではほぼ一定の0.07の値を示すが、それ以上の湿度域では75%RHで0.16、85%RHで0.34、93%RHで0.56と、相対湿度が高くなるにしたがって大きくなった。この現象は、処理炭の吸湿能は62.%RHを超える高湿度域で高くなり、且つ相対湿度が高くなるほどその効果が顕著になることを示唆している。
いずれの相対湿度においても、平衡含水率はKOH収着量の増大に比例して大きくなり、KOH収着量に依存していると言える。また、その回帰直線の傾きを見ると23%RHから62%RHまではほぼ一定の0.07の値を示すが、それ以上の湿度域では75%RHで0.16、85%RHで0.34、93%RHで0.56と、相対湿度が高くなるにしたがって大きくなった。この現象は、処理炭の吸湿能は62.%RHを超える高湿度域で高くなり、且つ相対湿度が高くなるほどその効果が顕著になることを示唆している。
(1)未処理炭のHCC
図14に、未処理炭について、40⇔80%RHの湿度範囲で3サイクル乾湿繰り返した時の水蒸気収着量変化を示す。
40%RHにおける水蒸気収着量の初期値は、N500で26mg/g、市販炭で25mg/g、N700で14mg/g、N900で12mg/gと、炭化温度が高いほど低い値を示した。しかし、この値は乾湿繰り返し2サイクルまでは増大傾向を示すが、3サイクル目は2サイクル目と等しい値となった。一方、80%RHでの水蒸気収着量はN500で80mg/g、市販炭で85mg/g、N700で112mg/g、N900で136mg/gと炭化温度が高くなるほど大きい値を示したが、これらの値は乾湿繰り返しサイクル数に関わらず変化しなかった。以上はヒステレシスが関係したものと考えられ、2サイクル目以後は完全なヒステレシスループに乗り、繰り返しても各湿度での水蒸気収着量が一定値を示したと考えられる。
図15に、40→80%RHの水蒸気吸着量をΔWa、80→40%RHの脱着量をΔWdとして、乾湿繰り返し回数とそれらの関係を示す。図14を反映して、どの試料もΔWaとΔWdは徐々に差が小さくなり3サイクル目でほぼ等しくなった。したがって、以後3サイクル目のΔWa=ΔWdを、調湿能を示す指標としてHCCと読み替えた。HCCはN500、市販炭、N700およびN900でそれぞれ41、54、71および102mg/gと炭化温度が高くなるほど大きくなり、最大で2.5倍の差が見られた。以上は、繰り返し湿度範囲40⇔80%RHでは炭化温度が高くなるほど調湿能も高くなることを示唆している。
図14に、未処理炭について、40⇔80%RHの湿度範囲で3サイクル乾湿繰り返した時の水蒸気収着量変化を示す。
40%RHにおける水蒸気収着量の初期値は、N500で26mg/g、市販炭で25mg/g、N700で14mg/g、N900で12mg/gと、炭化温度が高いほど低い値を示した。しかし、この値は乾湿繰り返し2サイクルまでは増大傾向を示すが、3サイクル目は2サイクル目と等しい値となった。一方、80%RHでの水蒸気収着量はN500で80mg/g、市販炭で85mg/g、N700で112mg/g、N900で136mg/gと炭化温度が高くなるほど大きい値を示したが、これらの値は乾湿繰り返しサイクル数に関わらず変化しなかった。以上はヒステレシスが関係したものと考えられ、2サイクル目以後は完全なヒステレシスループに乗り、繰り返しても各湿度での水蒸気収着量が一定値を示したと考えられる。
図15に、40→80%RHの水蒸気吸着量をΔWa、80→40%RHの脱着量をΔWdとして、乾湿繰り返し回数とそれらの関係を示す。図14を反映して、どの試料もΔWaとΔWdは徐々に差が小さくなり3サイクル目でほぼ等しくなった。したがって、以後3サイクル目のΔWa=ΔWdを、調湿能を示す指標としてHCCと読み替えた。HCCはN500、市販炭、N700およびN900でそれぞれ41、54、71および102mg/gと炭化温度が高くなるほど大きくなり、最大で2.5倍の差が見られた。以上は、繰り返し湿度範囲40⇔80%RHでは炭化温度が高くなるほど調湿能も高くなることを示唆している。
(2)処理炭のHCC
図16に、処理炭について繰り返し湿度範囲40⇔80%RHで3サイクル乾湿繰り返した時の水蒸気収着量変化を示す。
乾湿繰り返し数と水蒸気収着量の関係は未処理炭と同様であり、ここでも3サイクル目の値をHCCとした。
図16に、処理炭について繰り返し湿度範囲40⇔80%RHで3サイクル乾湿繰り返した時の水蒸気収着量変化を示す。
乾湿繰り返し数と水蒸気収着量の関係は未処理炭と同様であり、ここでも3サイクル目の値をHCCとした。
表8に、繰り返し湿度範囲40⇔80%RHにおける各試料のHCCを示す。
供試黒炭のHCCはKOH処理濃度が高くなるにしたがって大きくなる。因みに、未処理炭のHCCに対する3N処理炭のそれの比は市販炭で約2.6倍、N500で約3倍、N700およびN900で約1.9倍と大きくなり、アルカリ処理が調湿能を増大することを示す。尚、この湿度範囲での3N処理炭のHCCはシリカゲルのそれと同程度の調湿能を有することを示している。
図13に示されるように、処理炭の平衡含水率は60%RH以上で、急激に増大するため、より高湿度での調湿性能に優れることが示唆される。このことから、繰り返し湿度範囲60⇔95%RHでのHCCも同様に検討した。その結果を図17に示す。
水蒸気収着量は炭化温度による差より処理濃度による差の方が大きく、処理濃度に高い依存性を持っていた。また、乾湿繰り返し数と水蒸気収着量との関係は等しかったので、HCCは40⇔80%RHの時と同様に、3サイクル目の値をとった。
水蒸気収着量は炭化温度による差より処理濃度による差の方が大きく、処理濃度に高い依存性を持っていた。また、乾湿繰り返し数と水蒸気収着量との関係は等しかったので、HCCは40⇔80%RHの時と同様に、3サイクル目の値をとった。
表9に、繰り返し湿度範囲60⇔95%RHにおけるHCCを示す。
供試黒炭のHCCはKOH処理濃度が高くなることで大きくなり、40⇔80%RH の時のそれよりいずれも約2倍の値を示した。このことから、アルカリ処理は高湿度域において特に調湿効果を高める処理方法と言える。尚、この湿度範囲において3N処理炭のHCCは活性炭のそれの3倍以上の値を示し、他の多孔性試料と比較しても非常に高い調湿能を持つことが言える。
図13で平衡含水率とKOH収着量との間に直線回帰が得られたことから、HCCとKOH収着量との関係も検討したところ、図18に示すようになった。
繰り返し湿度範囲40⇔80%RH において、HCCはKOH収着量との間に比例関係が見られた。この回帰直線の傾きが大きいほど、KOH収着量あたりの調湿効果は高くなることを意味する。因みに、処理炭の繰り返し湿度範囲60⇔95%RHの時も同様に比例関係が得られ、傾きは 40⇔80%RHのそれより約2.3倍大きい5.4となり、高湿度域の方がKOH収着量あたりの調湿効果は高いことを示した。
多孔質の処理炭と無孔質のガラスビーズを比較すると前者は後者より約2分の1の傾きを示し、調湿に有効なKOH量が半分程度と表れている。これは、処理炭の場合KOHが細孔に入っているために、48時間の調湿では外の湿度環境と直に接する無孔質のものよりも吸湿に遅れが生じているためだと考えられる。
繰り返し湿度範囲40⇔80%RH において、HCCはKOH収着量との間に比例関係が見られた。この回帰直線の傾きが大きいほど、KOH収着量あたりの調湿効果は高くなることを意味する。因みに、処理炭の繰り返し湿度範囲60⇔95%RHの時も同様に比例関係が得られ、傾きは 40⇔80%RHのそれより約2.3倍大きい5.4となり、高湿度域の方がKOH収着量あたりの調湿効果は高いことを示した。
多孔質の処理炭と無孔質のガラスビーズを比較すると前者は後者より約2分の1の傾きを示し、調湿に有効なKOH量が半分程度と表れている。これは、処理炭の場合KOHが細孔に入っているために、48時間の調湿では外の湿度環境と直に接する無孔質のものよりも吸湿に遅れが生じているためだと考えられる。
しかし、実際使用する上では高湿度域での潮解が懸念される。そこで、潮解の有無を調べた結果を表10に示す。
ガラスビーズは無孔質のため表面にむき出したKOHが80%RHで潮解し、表面に液体をまとった状態になった。一方、処理炭はKOHが細孔の内部に収着されていることが関係し、95%RHにおいても潮解は認められなかった。
以上から、KOHが細孔の内部に収着されていることは潮解の点で非常に重要であり、処理炭は高湿度域で実際使用する場合にも取り扱いに問題が無いと考えられる。
以上から、KOHが細孔の内部に収着されていることは潮解の点で非常に重要であり、処理炭は高湿度域で実際使用する場合にも取り扱いに問題が無いと考えられる。
前記の如く、黒炭をKOH水溶液に浸漬させるだけの簡単な処理で、その調湿能を大幅に改善することができた。処理炭の調湿能はKOH収着量に依存しており、その効果は高湿度になるほど高くなることが分かった。60%RHを超える高湿度域での調湿能は特に優れ、高性能調湿剤として一般的に用いられている活性炭の約3倍もの高い性能を発揮した。この調湿能は乾湿繰り返しても一定の能力を保つことが分かった。
また、収着したKOHは処理炭の細孔の中に充填されることが明らかになり、その影響で吸湿に有効なKOHの量は 実際の2分の1程度であった。しかし、この充填効果により、高湿度域でも潮解しない利点が認められた。以上から、本実施形態の処理炭は高湿度環境下(床下など)での高性能調湿剤として期待できる。
また、収着したKOHは処理炭の細孔の中に充填されることが明らかになり、その影響で吸湿に有効なKOHの量は 実際の2分の1程度であった。しかし、この充填効果により、高湿度域でも潮解しない利点が認められた。以上から、本実施形態の処理炭は高湿度環境下(床下など)での高性能調湿剤として期待できる。
11 ミズナラ木粉
12 半気密鉄製容器
13 木炭製造装置
12 半気密鉄製容器
13 木炭製造装置
Claims (2)
- 粒状の黒炭の細孔内部と外部表面に水酸化カリウムを収着させたことを特徴とする調湿剤。
- 粒状の黒炭を、水酸化カリウム水溶液に入れ、攪拌し、吸引濾過し、乾燥させることによって前記粒状の黒炭の細孔内部と外部表面に前記水酸化カリウムを収着させることを特徴とする調湿剤の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012171804A (ja) * | 2011-02-17 | 2012-09-10 | Ohbayashi Corp | 高強度モルタル組成物 |
JP2012187548A (ja) * | 2011-03-11 | 2012-10-04 | Gaia Kankyo Gijutsu Kenkyusho:Kk | 調湿材及びその製造方法 |
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2007
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