JP2008243697A - 直接アルコール型燃料電池及びアノード触媒 - Google Patents

直接アルコール型燃料電池及びアノード触媒 Download PDF

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Abstract

【課題】 直接アルコール型燃料電池においてエタノールをはじめとしたアルコール燃料に対し高起電力と高出力を実現するアノード触媒、及びこのアノード触媒を備えた直接アルコール型燃料電池20の提供。
【解決手段】 ヘテロ元素を含む大環状化合物の金属錯体と、白金又は周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金とを有効成分とすることを特徴とする燃料電池用のアノード触媒、及びこのアノード触媒を備えた固体電解質タイプの直接アルコール型燃料電池20。
【選択図】 図1

Description

本発明は、直接アルコール型燃料電池、アノード触媒、アノード触媒の製造方法及び直接アルコール型燃料電池を搭載した電子機器に関する。
水素ガスを燃料とする燃料電池は、高い出力密度が得られ、特に水素燃料を用いた固体高分子型燃料電池(固体電解質型燃料電池、PEFCとも称される。)は、電気自動車など高速移動体の電源として、あるいは分散型電源として期待されている。一般にPEFCでは、燃料極(アノード、負極)および酸素極(カソード、正極)の二つの電極と、これらに挟まれた固体高分子電解質膜(PEMと略称される。)からなる膜電極接合体(MEAと略称される。)が形成され、これをセルユニットとして複数のセルユニットを積層し、スタックとした構成をとっている。セルユニットのアノードには水素を、カソードには、酸化剤として酸素または空気を供給し、それぞれの電極で生じる酸化あるいは還元反応によって起電力を得ることができ、生成物は水のみである。また、電極における電気化学反応を活性化するため、電極には殆どの場合、アノードにも、カソードにも、白金触媒が使用される。
図7は、一般的な固体高分子型燃料電池の単一構成要素を構成する単セル構造の燃料電池60(一般にセル又は単セルと呼ばれる。)を示す模式図である。図7に示した燃料電池60は、筐体1aおよび1bの中にイオン伝導性の電解質膜4と、電解質膜4を挟持するようにアノード3aとカソード3bとが設けられている。このアノード3aと電解質膜4カソード3bとの接合体を膜電極接合体と呼んでいる。さらに、この膜電極接合体の両側には、アノード3a側に燃料供給部2a、カソード3b側に酸化剤供給部2bが配置されている。図7に示す例では、燃料として、例えば、水素やアルコールと水の混合溶液を使う場合を想定しているが、一般的には燃料として、水素ガスや改質ガス燃料を使うことが多い。カソードに供給される酸化剤は、一般的に空気や酸素である。
図7に示されているように、燃料供給部2a側には、上方に燃料を導入するための燃料導入孔が設けられている一方、下方に未反応燃料や生成物を排出するための燃料排出孔が設けられている。この場合、燃料の強制供給及び/又は未反応燃料や生成物の強制排出手段を付設してもよい。酸化剤供給部2b側には、下方に酸化剤(多くの場合は空気)を導入するための酸化剤導入孔が設けられる(図では見えていない。)一方、上方に未反応空気と生成物(多くの場合は水)を排出するための酸化剤排出孔が設けられる。この場合、酸化剤の強制供給及び/又は未反応空気と生成物の強制排気手段を付設してもよい。また、筐体1bには空気孔を設けて空気供給手段としてもよい。このようなセルが単独で又は複数のセルが組み合わされて燃料電池として使用される。
水素燃料電池は、発電時に温暖化ガスである炭酸ガスを発生しないことや、発電効率が良いという環境適合型電源であることから大きな期待がかけられている。しかし、水素燃料電池は、水素ガス燃料供給のインフラストラクチャーが整備されなければ有効に利用することができない。しかも、水素燃料の貯蔵や運搬、取り扱い、燃料供給の方法などにはまだ解決すべき課題が多く、特に小型携帯機器等の電子機器用電源を目的としたパーソナル用途には不向きであると言われている。
これらの問題を解決する方法として、メタンやプロパンガスのような炭化水素系燃料やメタノールのような液体燃料を改質して水素を生成させて燃料電池の燃料とする、いわゆる改質形燃料電池が検討されている。しかし、原燃料の改質によって得られる水素ガス燃料中には微量の一酸化炭素(CO)やその他の不純物が含まれており、特にCOが燃料電池の電極触媒の機能を損なう問題が知られている。CO濃度がわずか10ppm以下であっても白金の触媒作用を失活させ発電機能が損なわれる、いわゆる触媒の被毒が大きな問題として知られており、従来からこの課題を解決するため触媒に関して様々な技術が提案されてきた。例えば、触媒被毒を低減するために、白金−ルテニウム(Pt−Ru)合金触媒の使用が提案されている。この技術では、水素ガス中にCOが不純物として数ppm〜数10ppm程度含まれている場合などにおいて、COが触媒毒として白金表面に吸着し、白金の触媒活性を失活させることを防止する効果が得られるのが確認されている。
一方で、燃料電池の更なる小型化に適合する技術として、改質燃料形燃料電池とは異なる技術が望まれている。直接アルコール型燃料電池(DAFCと略称する。)は、固体高分子型燃料電池と同様なセル構成で、アノードに直接アルコールを燃料として供給するタイプの燃料電池であり、改質器が不要であり、装置自体が小型化ならびに安価にできるだけでなく、燃料の取扱いの安全性や燃料電池全体の運転手段も簡素化できる好ましい特徴を有している。そのため、モバイル電子機器への適用を検討すべく、昨今注目を集めている。
燃料としてはメタノールが有望視されているが、メタノールは毒性が強く、健康や環境を害する可能性があり、保管や取扱いに規制が設けられている。この点からは、より毒性の少ないエタノールのほうが望ましい。また、植物から製造されるバイオエタノールはカーボンニュートラルで環境負荷のない燃料であり、昨今、ガソリンへの混合などが検討、実施されている。メタノールやエタノールなどのアルコール電極酸化には、水素の電極酸化と同様、白金触媒が好適であることが知られているが、白金よりも白金とルテニウムの合金がさらに好適であることも公知である(非特許文献1)。また、例えば特許文献1のようにモリブデン、タングステン等の遷移金属を含む二元系、三元系の触媒開発が行われている。また、特許文献2のように、ルテニウム代替として、開環状の窒素化合物を用いた有機金属錯体(例えばモノキノリルフェニレンジアミン)を用いた検討もなされている。
直接メタノール型燃料電池では、アノードにおいて主に下式(1)の反応が生じる。
CHOH+HO→6H+6e+CO (1)
さらに詳細には、触媒表面などで以下の素反応が生じていると考えられている。
CHOH+Pt→Pt−CHOH+H+e (2)
Pt−CHOH→Pt=CHOH+H+e (3)
Pt=CHOH→Pt−CHO+H+e (4)
Pt−CHO→Pt−CO+H+e (5)
Pt−CO+Pt−OH→Pt+CO+H+e (6)
CHOH+Pt→Pt−OCH+H+e (7)
Pt−OCH→Pt+HCHO+H+e (8)
Pt−OCH→Pt−CHO−Pt+H+e (9)
Pt−CHO−Pt→Pt−CHO+H+e (10)
Pt−CHO+Pt−OH→Pt−CHOHO−Pt+H+e (11)
Pt−CHOHO−Pt→Pt+HCOOH (12)
Pt−CHOHO−Pt→Pt−COOH+H+e (13)
Pt−COOH→Pt+CO+H+e (14)
CHOH+HCOOH→HCOOCH+HO (15)。
上記の諸反応から判るように、水素イオンH及び電子e以外の生成物としては、炭酸ガス、ホルムアルデヒド、ギ酸、ギ酸メチルが考えられる。しかし、メタノール酸化による生成物は、実際にはそのほとんどがCOであることから素反応(2)〜(6)が優勢であると考えられる。また、メタノールの酸化過程で発生する−CHO、−COが白金に対する強い吸着種となり、これに対しルテニウムは以下の式(16)〜(18)のような反応により白金を賦活していると考えられている。
Ru+HO→Ru−OH+H+e (16)
Pt−CHO+Ru−OH→Pt+Ru+CO+2H+2e (17)
Pt−CO+Ru−OH→Pt+Ru+CO+H+e (18)。
炭素を一つ含む化合物であるメタノールでさえ、上記のように推測される複雑な反応過程を含んでおり、その他のアルコール、例えば炭素を二つ含むエタノールの電極酸化反応の複雑さは、メタノールのそれとは比べようもない。例えば、非特許文献2の800〜802ページに詳述されているように、エタノールの電極酸化反応は、理想的には下式(19)で表される。
OH+3HO→12H+12e+2CO (19)
実際は、被毒物となる白金表面への強い吸着種である、−CHO、CO、−COOH、−CHなどの活性種の発生を含み、また、C−C結合を開裂できないことによる不完全酸化体(CHCHO、CHCOOH)も容易に形成されると考えられる。
このように、先の非特許文献2に見られるように、エタノールの酸化電流はメタノールのそれと比較して、まだ低いものに留まっている。また、非特許文献3に見られるように、直接エタノール型燃料電池の単セル発電特性(出力電圧、出力密度)は、直接メタノール型燃料電池に比べて半分以下となっており、直接エタノール型燃料電池は発電可能であるとしながらも、未だ実用レベルに達していない。更に直接エタノール型燃料電池の発電時には発電持続性が悪く、出力の経時減衰が大きな問題点である。このように、複数の吸着種・中間体を形成するアルコール電極酸化に対応できる触媒材料の開発において、金属や金属酸化物などの無機材料だけではこれ以上の高性能化は見込めないのが現状である。
特開2004−152748号公報 特許第3632087号公報 Souza et al,Journal of Electroanalytical Chemistry,420(1997),17−20,Performance of a co−electrodeposited Pt−Ru electrode for the electro−oxidation of a ethanol studied by in situ FTIR spectroscopy Lamy et al,Journal of Applied Electrochemistry,31,799−809(2001),Electrocatalytic oxidation of aliphatic alcohols:Application to the direct alcohol fuel cell(DAFC) 藤田他、電池討論会講演要旨集、42nd、590−591(2001)、直接エタノール型燃料電池の発電特性
上述のように水素を燃料とする燃料電池に比べ、液体燃料を直接燃料とする燃料電池は、小型化、取り扱い性、機器の単純化など多くのメリットがある。その中でも、すでに多くの研究がなされ、実用化の可能性が高いとされる直接アルコール型燃料電池は、小型化が容易で、電子機器、電気機械、電子機械を稼動させることができる。
しかし、メタノール燃料を使用する直接メタノール型燃料電池では、毒性の強いメタノールの使用が避けられない。さらに、アノード触媒が水素燃料電池に比べ活性が不十分である。エタノール燃料を使用する直接エタノール型燃料電池では、毒性の問題は少ないが、アノード触媒の性能がメタノール燃料以上に複雑で高度な反応を推進する必要がある。しかし、現状では、アルコール燃料、特にエタノール燃料に対して高い酸化活性を有するアノード触媒は報告されていない。
図6には、直接アルコール型燃料電池の分極特性を表す概念図を示した。電流値が零のときが理論起電圧を表し、アノード、カソードとも電流値が上昇するほど過電圧が増加し、結果として出力電圧が低下する。この際、例えば、アノードにおける触媒により過電圧発生曲線は異なる。実線と点線の過電圧曲線を示すアノードでは、アノード過電圧の少ない実線の特性を示すアノードが同じ電流値に対して出力電圧が大きくなり、効率のよい起電力の大きい電極である。エタノール燃料に対する直接アルコール型燃料電池の場合、カソードは、酸素還元電極であり、他の燃料電池と共通の電極であるので、比較的高性能の電極が開発されている。しかし、アノードは、図の実線に示すような小さな過電圧を示すアノードができていないのが現状である。過電圧を小さくするためには、アノードの性能、すなわち、アノードにおけるエタノール酸化触媒の性能の向上が重要な要素である。エタノール燃料用の直接アルコール型燃料電池において、低い過電圧を示し高起電力と高出力を示すアノード触媒が得られれば、メタノール燃料は勿論プロパノール燃料、ブタノール燃料など他のアルコール燃料にも有効なアノード触媒となると考えられる。このように直接アルコール型燃料電池においては、エタノール燃料に対して効果的に作用するアノード触媒を見いだすことが重要な課題の一つとなっている。
このような直接アルコール型燃料電池の課題に鑑み、本発明の目的は、エタノールをはじめとしたアルコール燃料に対し高起電力と高出力を実現する燃料電池用のアノード触媒及びその製造方法の提供、並びにこのアノード触媒を有する直接アルコール型燃料電池及びに直接アルコール型燃料電池を備えた電子機器の提供にある。
以下に、本発明の課題を解決するための手段を記載する。
本発明は、ヘテロ元素を含む大環状化合物の金属錯体と、白金又は周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金とを有効成分とすることを特徴とする燃料電池用のアノード触媒を含む。好ましくは、前記大環状化合物の金属錯体において錯体を構成する金属元素は鉄、コバルト、及びニッケルのいずれかである。さらに好ましくは、前記大環状化合物がフタロシアニンである。
本発明は、白金又は周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金とヘテロ元素を含む大環状化合物の金属錯体とを触媒担持体に担持することを特徴とする燃料電池用のアノード触媒の製造方法を含む。
また、本発明は、直接アルコールを酸化するアノードと、酸化剤を還元するカソードと、アノードとカソードとに挟持された電解質膜と、アノードにアルコール燃料を供給する燃料供給部と、カソードに酸化剤を供給する酸化剤供給部とを有する直接アルコール型燃料電池であって、アノードは、前記アノード触媒を含むことを特徴とする直接アルコール型燃料電池である。好ましくは、前記直接アルコール型燃料電池を単セルとすると、複数個の単セルを備え、それぞれの単セルの燃料供給部が同一平面上に配置され、電極が直列に接続されている直接アルコール型燃料電池、及び複数個の単セルが積層されており、隣り合うセルのアノードとカソードが両極板により連結している直接アルコール型燃料電池である。
さらに、本発明は、前記直接アルコール型燃料電池を搭載した電子機器である。
本発明によれば、エタノールをはじめとしたアルコール燃料に対し高起電力と高出力を実現する燃料電池用のアノード触媒及びその製造方法、並びにこのアノード触媒を有する直接アルコール型燃料電池及びに直接アルコール型燃料電池を備えた電子機器を提供することができる。
本発明の燃料電池用のアノード触媒は、ヘテロ元素を含む大環状化合物の金属錯体(大環状錯体ともいう。)と白金とを有効成分とする、又は大環状錯体と白金中に周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金とを有効成分とする。大環状化合物中のヘテロ元素としては、窒素、酸素、硫黄などが挙げられる。具体的な大環状錯体としては、クラウンエーテル錯体、クリプタンド錯体、環状ポリアミン錯体、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体などが挙げられる。これらヘテロ元素を含む大環状化合物のヘテロ元素に金属元素が多座配位した有機金属錯体は、例えば、配位数4の場合、ヘテロ元素の種類に対して、N4−錯体、O4−錯体、S4−錯体、N2O2−錯体、N2S2−錯体などと呼ばれる。N4−錯体としては、環状ポリアミン錯体、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体などであり、その中でもフタロシアニン錯体やテトラフェニルポルフィリン錯体が本発明のアノード触媒として好ましく用いられる。
大環状錯体の例として、例えば、フタロシアニン錯体の構造を下式に示す。
Figure 2008243697
大環状錯体において錯体を構成する中心金属元素は、イオン結合的要素の強いNa,K,Be,Ca,Ba,Cd,Mg,Hgなど、共有結合的要素の強いCu,Fe,Zn,Co,Pt,Cr,Ni,Pdなどが挙げられる。本発明においては、これらの金属元素の中でも鉄、コバルト、ニッケルが好ましい大環状錯体の中心金属元素である。
アルコール、特にC以上のアルコールは、電極酸化反応により複数の不完全酸化生成物(エタノールの場合、アセトアルデヒドや酢酸など)を排出するため、それらをより円滑に分解、除去するには、白金又は白金合金に大環状錯体を添加することが好ましいと推定される。白金又は白金合金と、大環状錯体との混合比は特に制限はなく、材料選択、プロセス条件によって最適値を見出せばよい。
もう一方の触媒成分である白金合金を形成する金属元素は、多元機能説やリガンド説で説明されているような効果を持つ金属元素が好ましく、周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む。このような金属元素としては、ルテニウム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、パラジウム、スズなどが挙げられる。その中でも、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、ニッケルなどが好ましく用いられる。
本発明のアノード触媒は、カーボンなどの担持体表面に担持してアノードとすることが好ましい。担持体としては、従来公知のもの、例えば、炭素材料や、ステンレス、ニッケル等の金属薄膜やメッシュ状、ハニカム状、あるいはスポンジ状の金属膜が挙げられる。炭素材料としては、カーボンブラックなどのカーボン微粒子(キャボット社製バルカン、ライオン社製ケッチェンブラックなど)、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーなどが挙げられる。
本発明のアノード触媒の作製方法は、従来公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、湿式還元法、錯体熱処理分解法、物理的混合、メッキ法、スパッタや蒸着といったPVD、CVDなどが挙げられる。湿式還元法の場合、例えば、以下の手順で製作すればよい。まず、白金前駆体、または白金前駆体を含む複数の前駆体混合物をカーボン担持体とともに、エタノールなどの還元剤を含む溶液中で加熱還流する。還流後、固体をろ過、乾燥し、白金担持カーボン又は白金合金担持カーボンを作成する。なお、複数前駆体を用いた場合は合金化させるため水素雰囲気下で熱処理を行う。大環状錯体を含む分散液又は溶液に、作成した白金担持カーボンまたは白金合金担持カーボンを添加し、十分攪拌し、大環状錯体を白金担持カーボン等に吸着させて、ろ過、乾燥し、必要であれば熱処理を行い、カーボンに担持された本発明のアノード触媒を得る。このようにして作製された本発明のアノード触媒は、本発明の直接アルコール型燃料電池に好適に使用できる。
本発明のアノード触媒によれば、白金または白金合金に中心金属元素が複数のヘテロ元素により配位された大環状錯体を添加することにより、白金または白金合金を単体として用いた場合と比較して、過電圧が低く高電流密度の直接アルコール型燃料電池を得ることができる。また、この直接アルコール型燃料電池は、経時減衰を抑えることができ、長時間発電が可能となる。
本発明のアノード触媒によれば、直接アルコール型燃料電池においては、メタノール燃料用、エタノール燃料用は勿論プロパノール燃料、ブタノール燃料、アミルアルコール燃料にも使用できる。さらに、エーテル燃料、カルボン酸燃料、エステル燃料などにも有効な燃料電池用のアノード触媒とすることも可能となる。本発明のアノード触媒を利用すれば、燃料電池における燃料の選択、燃料の入手、燃料の取扱いの選択肢が広がり、安全が確保できることから、今までには考えられなかった産業上の利用分野に燃料電池を活用することができる。
本発明の直接アルコール型燃料電池は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとに挟持された電解質膜と、アノードにアルコール燃料を供給する燃料供給部と、カソードに酸化剤を供給する酸化剤供給部とを有する。そして、アノードは、上述の本発明のアノード触媒を含んでいる。一般に、上述のような構成要素を一組だけ備えている燃料電池をセル又は単セルと称している。そして、実用的は、このようなセルを複数組み合わせて大きな起電力を有する装置としている。このようなセルを複数組み合わせた装置も燃料電池と呼んでいる。本発明の直接アルコール型燃料電池においても、複数のセルの燃料供給部を平面上に並列に配置し、電極を直列に接続した装置、複数のセルを電極が直列に対向するように積層して、隣り合うセルのアノードとカソードは、一体化している両極板(バイポーラプレートともいう。)からなる装置が実用的で好ましい。
基本となる単セルである本発明の直接アルコール型燃料電池の製作方法について説明する。本発明の直接アルコール型燃料電池の製作方法は、アノード触媒の製作方法を除いては、通常の固体電解質型燃料電池の製作方法と同様にすればよい。まず、本発明のアノード触媒を、イオン伝導性電解質膜成分を含む溶液や、撥水剤を含むディスパージョンとともに分散液にして、イオン伝導性電解質膜、またはカーボンペーパーなどの拡散層に塗布してアノード触媒層を形成する。イオン伝導性電解質膜は、アニオンまたはカチオンのいずれのイオン伝導タイプでも使用できるが、プロトン伝導タイプのものが好適に使用される。イオン伝導性電解質膜としては、パーフルオロアルキルスルホン酸ポリマーを代表とする高分子膜をはじめとする公知の材料すべてが使用できる。また、カーボンペーパーなどの拡散層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表される撥水剤を添加することが好ましい。
対となるカソードは、アノード触媒の替わりに従来使用されているカソード触媒を用いて、アノード触媒層と同様にして形成することができる。カソードの触媒としては、白金、白金ルテニウム又は白金コバルト、白金ニッケルなどの白金合金を使用すればよい。白金ルテニウム、白金コバルト、白金ニッケルなどの白金合金は、カソード触媒としてより好ましい。イオン伝導性電解質膜上にカソード触媒層を形成した場合、必要であればカーボンペーパーなどの拡散層とともにホットプレス処理をすることで触媒層/拡散層間の密着性を向上することができる。また、カーボンペーパー上に触媒層を形成した場合、必要であればイオン伝導性電解質膜とともにホットプレス処理することで触媒層/イオン伝導性電解質膜の密着性を向上することができる。このようにして、イオン伝導性電解質膜の両側に拡散層を備えたアノード触媒層とカソード触媒層とが密着した膜電極接合体が得られる。なお、拡散層は、燃料や酸化剤の触媒層への拡散を容易にするための層であり、通常は電極の機能も担うためカーボンなどの導電性の素材が用いられる。膜電極接合体の両側に燃料供給部と酸素材供給部とを配置すれば、本発明の直接アルコール型燃料電池(単セルタイプ)となる。このようなセルを複数個積層したり、並列に並べたりすることにより、所望の起電力と出力の複数セルタイプの直接アルコール型燃料電池が製造できる。
本発明の直接アルコール型燃料電池は、本発明のアノード触媒を用いることで、より小型で長時間駆動できる燃料電池を得ることができる。また、メタノールだけでなく毒性が少ないエタノールを使えることができるようになるので、身近なモバイル電子機器への適合性も良く、特に未利用バイオマス資源からも生成可能なエタノールを燃料とすることから自然環境保護に有効である。また、本発明の直接アルコール型燃料電池においては、エタノール燃料用は勿論プロパノール燃料、ブタノール燃料、アミルアルコール燃料やエーテル燃料、カルボン酸燃料、エステル燃料などにも有効な燃料電池となるであろう。燃料の選択、燃料の入手、燃料の取扱いの選択肢が広がり、安全が確保できることから、多くの産業上や個人用の利用分野に燃料電池を活用することができる。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態として、単セル構造の直接アルコール型燃料電池を図1に示す。図1に示した直接アルコール型燃料電池(単セル構造)20は、すでに図7に示して説明した従来の固体高分子型燃料電池(単セル構造)60と外観的には類似しているが、アノード3Aの触媒が異なっている。図1に示した燃料電池20は、筐体1aおよび1bの中にイオン伝導性の電解質膜4と、電解質膜4を挟持するようにアノード3Aとカソード3bとにより膜電極接合体が形成されている。さらに、この膜電極接合体の両側には、アノード3A側に燃料供給部2a、カソード3b側に酸化剤供給部2bが配置されている。これらの燃料電池本体に相当する部分を筺体1a,1bに収容している。
ここで、図1に示した直接アルコール型燃料電池20が、図7に示した従来の固体高分子型燃料電池60と根本的に異なるのは、アノード3Aの触媒成分である。従来の固体高分子型燃料電池60にはアノード触媒として白金や白金合金がカーボンなどの単体に担持されて使用されているが、本発明の直接アルコール型燃料電池におけるアノード3Aには、本発明のアノード触媒である白金又は白金合金と大環状錯体とが有効成分として使用されている。すなわち、本発明の第1の実施形態では、アノード3Aのアノード触媒構成材料として、中心金属元素が複数のヘテロ元素により配位された大環状錯体と白金、あるいは周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金と上記大環状錯体とを有するアノード触媒を用いている。
固体電解質膜4を介してアノード3Aに対向するカソード3bの触媒は白金を使用すればよいが、白金コバルト、白金ニッケルなどの合金を使用すればより好ましい結果が得られる。固体電解質膜4は、イオン交換膜であり、アニオン伝導タイプおよびカチオン伝導タイプのいずれのイオン伝導型交換膜でも使用できるが、プロトン伝導タイプのものが好適に使用される。固体電解質膜4としては、バーフルオロアルキルスルホン酸ポリマーを代表とする高分子膜をはじめとする公知の材料すべてが使用できる。
図1に示すように、アノード3Aの外側には、燃料供給部2aが設けられる。燃料供給部2aはアルコール燃料を収納するためのアルコール燃料保持部であってもよいが、また外部燃料収納部(図示せず)と連通したアルコール燃料の流通路であってもよい。アルコール燃料は、毛管現象及び/又は強制循環により供給されるが、必要に応じて強制供給手段(図示せず)を付設してもよい。アノード3Aに直接供給される燃料は、アルコール単独ないしはアルコールと水の混合物が適当であるが、水との混合物として用いるとクロスオーバーが緩和されるので良好なセル起電圧と出力が得られる。
図1に例示する燃料電池の模式図は、単セル構造を表しているが、本発明においてはこのような単セルをそのまま使用しても良いが、複数の単セルを並列及び/又は直列に並べて実装燃料電池とすることもできる。これらは、第2の実施形態、及び第3の実施形態として説明する。
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態である直接アルコール型燃料電池(複数セルタイプ)30の模式図である。図2に示した直接アルコール型燃料電池30は偏平な直方体の形状の筐体1を有し、筐体1内には、内部空間を上下に仕切るように燃料供給部2aが形成されている。本発明の直接アルコール型燃料電池は、2個以上の直接アルコール型燃料電池の本体部分(セル)を備えており、図2に示す直接アルコール型燃料電池30では、燃料供給部2aの上側に並列に3個のセルからなる第1のセル群が配置されており、燃料供給部2aの下側にも並列に3個のセルからなる第2のセル群が配置されている。各セルは、何れもアノード3A、カソード3b及びこれらの間に配置されたイオン伝導性電解質膜4から構成されており、燃料供給部を除いて互いに分離して配置されている。ここでそれぞれのセルは、第1の実施形態で説明したセルで構成されている。
燃料供給部2aの上下のセル群における各セルは、平面状に配置されており、且つ電極は直列に結線されている。第1のセル群のセルと、第2のセル群のセルとは、それぞれのアノード3Aが燃料供給部2aを挟んで相対向するように配置されている。そして、第1のセル群のセルと、第2のセル群のセルとは、それぞれのカソード3bが筺体1の上下両側を向くように配置されている。セルをこのように配置することで、燃料電池の小型化が容易となり、小型電源、特に携帯機器の電源として適した燃料電池を製造できる。
また、この実施形態の直接アルコール型燃料電池30は、アルコール燃料を収納し、筐体1に着脱自在に配置される燃料容器5を備えている。燃料容器5には、その側面に孔5aが形成されており、燃料容器5内に収納されたアルコール燃料は孔5aを通じて燃料供給部2aに供給される構造になっている。孔5aは燃料容器5が筐体1に装着される前は所定の封止手段(図示せず)によって封止されており、燃料容器5内に燃料を密封収容することが可能になっている。孔5aは、燃料容器5が燃料電池内に装着された際に、孔5aが前述の燃料供給部2aと連通するような位置に形成されている。このようにすることにより、燃料を収納した容器5が着脱可能になり、燃料の補充が容易であり、これによっても本発明の燃料電池は携帯機器の電源として適したものとなる。
燃料の円滑な供給や漏れ防止の観点から、燃料供給部2a及び燃料容器の接合部5aは、例えばSiOやAlなどを焼結して得られた多孔質体、高分子繊維、高分子多孔質膜等で形成され、毛管現象により燃料容器5中のアルコール燃料が各セルのアノード3Aに供給されることが好ましい。高分子繊維や高分子多孔質膜を用いる場合には、これらが燃料により変化や変形をしない材質であることが必要である。
図2において、横方向に隣接するセルの間隙には、未反応燃料が燃料供給部2aからカソード3bに流出する(一種のクロスオーバー)ことを防止するため、燃料遮断機能を有する部材を配置することが望ましい(図示せず)。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンに代表される高分子材料や、ガラス及び酸化アルミニウムをはじめとする無機酸化物薄膜を、隣接するセル間の間隙に充填することで、燃料のカソード3bへの流出を遮断できる。
各セルのカソード3bは筺体側を向いて設けられている。即ちカソード3bは筐体1の内面と対向している。カソード3bと筐体1との間には空間が設けられている。また筐体1には空間と外部とを連通させる通気孔(図示せず)が設けられている。従って、カソード3bと筐体との間の空間には、空気が流通する。これによってカソード3bに酸素(酸化剤)が供給される。カソード3bへの空気(酸素)の供給を制御したい場合には、筐体1の所定部位にファン等の強制空気供給手段を付設してもよい。
図2に示す直接アルコール型燃料電池30で使用される各素材としては、第1の実施形態で説明したものがそのまま使用し得る。本発明は、それらに限定されるものではなく、例えば、図2に示す実施形態は本発明を説明するための一例であり、各々のセルの配置、配列、結線などに関して、図示する以外の公知の方法を使用することはまったく差し支えがない。
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態に係る直接アルコール型燃料電池(積層タイプ)40の模式図を示す。この直接アルコール型燃料電池40は、図1に示したセルと同様なアノード3Aとカソード3b、およびイオン伝導性電解質膜4で構成された膜電極接合体を、両極板(バイポーラプレートともいう。)6で挟持し、さらにこのバイポーラプレート6を共有しながら複数のセルを積層した構造(スタック構造ともいう。また、複数の積層されたセルをスタックともいう。)をしている。膜電極接合体は、第1の実施形態で説明した膜電極接合体と同じである。
バイポーラプレート6は、積層された両側のセルの電極を兼ねるものであり、通常は、一方のセルのアノードと他方のセルのカソードの導電部(電極)の役目を担っている。バイポーラプレート6の材質は、カーボン材料、カーボンと高分子との複合材料、金属材料の何れであっても良い。バイポーラプレート6の表面には、両側のセルのそれぞれの面に溝が形成され、アノード側の面ではアルコール水溶液、カソード側の面では酸化剤が流通するようになって、燃料供給部、酸化剤供給部を構成している。この積層型の直接アルコール型燃料電池40では多数のセルがバイポーラプレート6により直列に連結され、その結果、スタックのセル数に対応した所望の出力電圧を得ることができる。
セル同士の接続は、膨張黒鉛に流体通路の溝加工を施したバイポーラプレート、膨張黒鉛等の炭素材料と耐熱性樹脂の混合物を成形したバイポーラプレート、ステンレス基材等の金属板に耐酸化性被膜ならびに導電性被膜を施したバイポーラプレート、など公知の方法で作製したバイポーラプレートによればよい。場合によっては、平面接続方式を採用してもよいし、むろんその他の公知の接続方式を採用することもできる。
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態である直接アルコール型燃料電池40を実際に稼動し電力を得るための直接アルコール型燃料電池システム50のブロック図を図5に示す。図5に示した直接アルコール型燃料電池システム50においては、アルコール燃料および酸化剤を強制的にスタックに供給する上で、燃料や生成水の流通を工夫し、高濃度アルコール燃料を追加して生成水との混合により希釈循環するシステムとなっている。システムとしては、この例に限定されるものではなく、セルスタックに対し燃料や酸化剤を強制的に供給しない、いわゆるパッシブ型も可能であることはもちろんである。
図5に示すように、直接アルコール型燃料電池発電システム50はアルコールを燃料とする直接アルコール型燃料電池であるスタック11を含み、スタック11には燃料供給部12および酸化剤供給部13を備えている。燃料は高濃度アルコールを保管した燃料容器14から燃料送出機構15によって混合容器16に送られ、アルコールセンサー17により適正な濃度調整を行った後に、イオンフィルター18を介して強制的に燃料供給部12に送られる。一方、主に空気を用いる酸化剤は酸化剤フィルタ19を通して酸化剤送出機構21によって強制的に酸化剤供給部13に送られる。燃料供給部12および酸化剤供給部13からの排出物(水や二酸化炭素などの生成物を含む)は、第1の気液分離装置22および熱交換器23、あるいは冷却ファン24を備えた凝縮器25を含む第2の気液分離装置26によって、燃料、排ガス、循環水として回収または排出される。スタックの直流出力は出力調整器27によって所望の出力電圧、出力仕様に制御される。
この直接アルコール型燃料電池システム50では、スタック11の起動、並びに発電を維持するための機構、いわゆるBOP(Balance of Plant)が必要で、燃料供給量やアルコール濃度制御、補給のタイミングや手順など発電維持のために使用する液送ポンプや空気ブロアー、濃度センサーなどの補機を用いて各種制御を行うための補機、出力制御器28を具備している。
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態は、直接アルコール型燃料電池システム50を使い、周辺制御機器等を付設して電源としたモバイル用小型パーソナルコンピュータである。図5には、第5の実施形態として、直接アルコール型燃料電池システム50を装着したモバイル用小型パーソナルコンピュータであるノートパソコン8を示した。このノートパソコン8では、従来モバイル用補助電源として内蔵していたリチウムイオン電池のスペース全部と光ディスクドライブ(DVD駆動装置)の一部のスペースを利用することで、本発明の燃料電池システムを内蔵することができ、ノートパソコン8の専用内蔵電源として用いることができる。
本実施形態では、ノートパソコン8用の電源ユニットとしたが、本発明の電子機器はこれに限定されるものではなく、搭載対象機器の設計によっては、本発明の直接アルコール型燃料電池を外付けとし、専用直流電源あるいは商用電源を代替する汎用電源タイプにすることも容易である。また、燃料電池システムの対象電子機器はモバイル用小型パーソナルコンピュータに限ったものではなく、デスクトップパーソナルコンピュータ、ワークステーション、PDA、電子機器向け充電器用電源、PHSおよび携帯電話、GPS端末、普通紙複写機、ファクシミリ装置、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、電子ブックディスプレイ、LCDモニター機器、液晶プロジェクター、投射型ディスプレイ、ICカード読取/書込端末、非接触ICカード読取/書込端末、電子黒板(ホワイトボード)、フォトプリンタ(昇華型等)、デジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラ、DVDドライブ等のパーソナルコンピュータ周辺機器、産業用分散電源、家庭用定置型分散電源、無停電電源、非常用屋外電源(投光器用など)、キャンプ用電源、無線送受信装置、移動型ロボット電源、災害救助用ロボット電源、エンターテインメントロボット電源、介護補助装置(介護ベッド等)、介護補助ロボット電源、電動車椅子電源、電動自転車電源、医療機器用補助、分散電源、電動義肢電源、無人搬送車用電源、調理用電気機器などが挙げられる。
本発明のアノード触媒につき、実施例及び比較例によってさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
フタロシアニンニッケル(pcNi)10mgをイオン交換水10gに分散させた。これに白金担持カーボン(白金質量比;50質量%)300mgを添加して、1時間超音波で分散処理を行った。この分散液を吸引ろ過し、濾過物を乾燥した。乾燥後に得られたフタロシアニンニッケルと白金担持カーボンの混合触媒量は297mgであった。この混合触媒を窒素流通下で600℃、2時間熱処理を行ったところ、混合触媒重量は270mgとなった。この熱処理した混合触媒103mgと、1000mgのイオン交換水と、735mgの5%ナフィオン溶液(エレクトロケム社製)とを混合し、触媒インクを作製した。触媒インク100μlをグラッシーカーボン上に滴下し、十分乾燥させて触媒層を形成した。グラッシーカーボンの重量変化、及び触媒層中の白金重量比から白金重量を算出した。次いで、5%ナフィオン溶液40μlを触媒層上に滴下し、ナフィオンコーティングを施して、アノード(1)を作成した。
窒素で脱気した1N硫酸水溶液を電解液、アノード(1)を作用極、Ag/AgClを基準極、Ptワイヤーを対極として、ポテンシオスタットを用いて−200〜1000mV(vs.Ag/AgCl)の電位幅でサイクリックボルタンメトリーを10サイクル行い、安定なバックグラウンドボルタモグラムを得た。次いで、電解液を1Mメタノール/1N硫酸水溶液にかえて、自然電位から400mV(vs.Ag/AgCl)まで1mV/sでリニアスイープボルタンメトリーを行った。測定は50℃で行った。その後、400mV(vs.Ag/AgCl)でクロノアンペロメトリーを30分行った。次いで、電解液を1Mエタノール/1N硫酸水溶液にかえて、同様な電気化学測定を行った。触媒活性評価には、分極電位400mV(vs.Ag/AgCl)における30分後の電流値を用いた。結果を表1に示した。
〔実施例2〕
実施例1において、フタロシアニンニッケルのかわりにフタロシアニンコバルト(pcCo)を用いた以外は、実施例1と同様にしてアノード(2)を作成し、実施例1と同様にしてアノード(2)の酸化電流値を測定して、結果を表1に示した。
〔実施例3〕
実施例1において、フタロシアニンニッケルのかわりにフタロシアニン鉄(pcFe)を用いた以外は、実施例1と同様にしてアノード(3)を作成し、実施例1と同様にしてアノード(3)の酸化電流値を測定して、結果を表1に示した。
〔実施例4〕
フタロシアニンニッケル10mgをイオン交換水10gに分散させた。これに白金ルテニウム担持カーボン(白金質量比;29質量%、ルテニウム質量比;23質量%)300mgを添加して、1時間超音波分散処理を行った。吸引ろ過、乾燥後、フタロシアニンニッケルと白金ルテニウム担持カーボンの混合触媒質量は306mgであった。この混合触媒を窒素流通下で600℃、2時間熱処理を行ったところ、混合触媒重量は232mgとなった。この熱処理後の混合触媒108mgと、1000mgのイオン交換水と、735mgの5%ナフィオン溶液(エレクトロケム社製)とを混合し、触媒インクを作製した。この触媒インクを用いてグラッシーカーボン上への触媒層の作成、及びアノード(4)を実施例1と同様にして作成した。アノード(4)を実施例1と同様にして酸化電流を測定した結果を表1に示す。
〔実施例5〕
実施例4において、フタロシアニンニッケルのかわりにフタロシアニンコバルト(pcCo)を用いた以外は、実施例4と同様にしてアノード(5)を作成し、実施例1と同様にしてアノード(5)の酸化電流値を測定して、結果を表1に示した。
〔比較例1〕
フタロシアニン金属錯体を添加していない白金担持カーボン290mgを窒素流通下で600℃、2時間熱処理を行ったところ、触媒量は231mgとなった。この触媒100mgと、1000mgのイオン交換水と、735mgの5%ナフィオン溶液(エレクトロケム社製)とを混合し、触媒インクを作製した。この触媒インクを用いてグラッシーカーボン上への触媒層の作成、及びアノード(6)を実施例1と同様にして作成した。アノード(6)を実施例1と同様にして酸化電流を測定した結果を表1に示す。
〔比較例2〕
フタロシアニン金属化合物を添加していない白金ルテニウム担持カーボン293mgを窒素流通下で600℃、2時間熱処理を行ったところ、触媒量は252mgとなった。この触媒105mgと、1000mgのイオン交換水と、735mgの5%ナフィオン溶液(エレクトロケム社製)とを混合し、触媒インクを作製した。この触媒インクを用いてグラッシーカーボン上への触媒層の作成、及びアノード(7)を実施例1と同様にして作成した。アノード(6)を実施例1と同様にして酸化電流を測定した結果を表1に示す。
Figure 2008243697
表1に示すように、本発明のアノード触媒はメタノール酸化電流だけでなく、エタノール酸化電流値においても良好な結果を示した。特に、実施例4,5に示すように白金ルテニウム合金を用いたアノード触媒は、非常に優れた効果を発揮した。また、実施例1と比較例1との比較、実施例4と比較例2との比較から判るように大環状錯体を用いることによりアノード触媒の性能が向上している。
本発明によれば、アルコール酸化反応の活性が高く、発電持続性が良好な直接アルコール型燃料電池用のアノード触媒が得られる。これによって、モバイル電子機器等の小型電源用燃料電池の燃料にメタノールのみならず、エタノールなどのそれ以外のアルコールを使用することができる直接アルコール型燃料電池が製造でき、モバイル電子機器等の電源選択肢も広がる。
直接アルコール型燃料電池(単セルタイプ) 直接アルコール型燃料電池(複数セルタイプ) 直接アルコール型燃料電池(積層セルタイプ) 直接アルコール型燃料電池システムのブロック図 直接アルコール型燃料電池を搭載したノートパソコン 直接アルコール型燃料電池のセル分極、及びアノード分極特性の優劣を示す概念図 従来の固体高分子電解質型燃料電池(単セルタイプ)
符号の説明
20、30、40 直接アルコール型燃料電池
50 直接アルコール型燃料電池システム
60 燃料電池
1、1a、1b 筐体
2a 燃料供給部
2b 酸化剤供給部
3a、3A アノード
3b カソード
4 電解質膜
5 燃料容器
6 両極板(バイポーラプレート)
7 膜電極接合体
8 ノートパソコン

Claims (8)

  1. ヘテロ元素を含む大環状化合物の金属錯体と、白金又は周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金とを有効成分とすることを特徴とする燃料電池用のアノード触媒。
  2. 前記大環状化合物の金属錯体において錯体を構成する金属元素は鉄、コバルト、及びニッケルのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のアノード触媒。
  3. 前記大環状化合物がフタロシアニンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池のアノード触媒。
  4. 白金又は周期律表第4族、6族、7族、8族、9族、10族、14族、16族、及び17族の金属元素のうち少なくとも一つの元素を含む白金合金と、ヘテロ元素を含む大環状化合物の金属錯体とを触媒担持体に担持させることを特徴とする燃料電池のアノード触媒の製造方法。
  5. 直接アルコールを酸化するアノードと、酸化剤を還元するカソードと、アノードとカソードとに挟持された電解質膜と、アノードにアルコール燃料を供給する燃料供給部と、カソードに酸化剤を供給する酸化剤供給部とを有する直接アルコール型燃料電池であって、
    アノードは、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアノード触媒を含むことを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  6. 請求項5に記載の直接アルコール型燃料電池を複数個備え、それぞれの直接アルコール型燃料電池の燃料供給部が同一平面上に配置され、電極が直列に接続されていることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  7. 請求項5に記載の直接アルコール型燃料電池が複数個積層されており、隣り合う直接アルコール型燃料電池のアノードとカソードは両極板により連結していることを特徴とする直接アルコール型燃料電池。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載の直接アルコール型燃料電池を搭載したことを特徴とする電子機器。
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