JP2008240911A - 直動用焼結含油軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑油保持性を高めて、良好な摺動特性を継続して発揮し得る直動用焼結含油軸受を提供する。
【解決手段】一方の直動用焼結含油軸受1の内周に設けた軸受面4の一端側には、軸3との相対直動に伴い、直動方向一端側から他端側に向けて潤滑油を引き込み可能とする第1引き込み部5が形成されている。また、軸受面4の他端側には、軸3との相対直動に伴い、直動方向他端側から一端側に向けて潤滑油を引き込み可能とする第2引き込み部6が形成されている。各引き込み部5、6は、それぞれ楔状をなす複数の溝部7、8からなる。これら複数の溝部7、8のうち、軸受面4の一端側に形成された溝部7の溝長さL1は、軸受面4の他端側に形成された溝部8の溝長さL2に比べて大きく設定されている。
【選択図】図1
【解決手段】一方の直動用焼結含油軸受1の内周に設けた軸受面4の一端側には、軸3との相対直動に伴い、直動方向一端側から他端側に向けて潤滑油を引き込み可能とする第1引き込み部5が形成されている。また、軸受面4の他端側には、軸3との相対直動に伴い、直動方向他端側から一端側に向けて潤滑油を引き込み可能とする第2引き込み部6が形成されている。各引き込み部5、6は、それぞれ楔状をなす複数の溝部7、8からなる。これら複数の溝部7、8のうち、軸受面4の一端側に形成された溝部7の溝長さL1は、軸受面4の他端側に形成された溝部8の溝長さL2に比べて大きく設定されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、相手部材との相対直動を許容する直動用焼結含油軸受に関する。
焼結含油軸受は、支持すべき相手部材との相対変位に伴い、内部に含浸した潤滑流体が相手部材との摺動部に滲み出ることで、相手部材を潤滑流体を介して支持するものである。このうち、相手部材を相対直動可能に支持する直動用焼結含油軸受として、例えばプリンタの印字部や光磁気ディスクの読み取り部などに用いられるキャリッジの直動機構用軸受に好適に使用されている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
このように、焼結金属製の軸受であれば、従来の転がり軸受等に比べて小型、軽量となるため、これらキャリッジを備えた電子機器の小型化にも対応することができる。また、キャリッジの軽量化を図ることで、キャリッジの慣性を小さくしてディスクの高速読み取りや高速印刷時の精度向上を図ることができる。また、自己潤滑性を有するため、スライド軸との摩耗を低減して長期使用が可能となる。
特開2000−301794号公報
特開平05−144197号公報
しかしながら、焼結軸受をこの種の直動機構に用いる際には、油漏れの問題に留意する必要がある。焼結含油軸受は、その内部空孔に保持した潤滑油を摺動に伴い摺動部に供給することで高い摺動潤滑特性を得るものであるが、摺動機構はその特性上、往復運動を要求され、かつ摺動部に供給された油が軸上に残った場合、この油を進行方向前方に向けて掻き出す場合がある。従って、往復領域の両端には、キャリッジにより掻き出された潤滑油が溜まることとなり、自己潤滑性を低下させる一因となっている。
また、最近の読み取り速度等の増大化(高速化)に伴い、軸受にかかる負担が大きくなることが想定されることから、当該軸受の更なる摺動潤滑性あるいは耐摩耗性の向上が求められる。しかしながら、上述のように、摺動面に滲み出た潤滑油が軸受外に漏出したのでは、軸受の潤滑性の低下を招き、軸受寿命の低下につながる恐れがある。また、摩耗により精度低下を生じるため、読み取り精度の悪化を招く恐れもある。
例えば特許文献1では、潤滑油の偏りを抑える目的で、キャリッジに設けられたスラスト軸受に摺動可能に挿通されたガイド軸を回転駆動させる構成が開示されている。しかしながら、この構成では、上述の問題、すなわち往復領域の両端に、キャリッジにより掻き出された潤滑油が溜まるという本願の問題の根本的な解決手段とはならない。
以上の事情に鑑み、本発明では、潤滑油保持性を高めて、良好な摺動特性を継続して発揮し得る直動用焼結含油軸受を提供することを技術的課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、摺動面を有する焼結金属製の軸受でその内部気孔に潤滑流体を含浸させてなるものであって、相手部材との直線的な相対摺動に伴い、内部気孔に含浸した潤滑流体が摺動面上に滲み出ることにより、潤滑流体を介して相手部材を支持する直動用焼結含油軸受において、摺動面の少なくとも一端側に、相手部材との相対摺動に伴い潤滑流体をその他端側に向けて引き込むための引き込み部が形成されていることを特徴とする直動用焼結含油軸受を提供する。
このように、本発明は、摺動面の少なくとも一端側に、相手部材との相対摺動に伴い潤滑流体をその他端側に向けて引き込み可能とする引き込み部を設けたことを技術的な特徴とする。そのため、例えば当該軸受が相手部材に対して、引き込み部の引き込み方向とは反対の向きに相対直動する場合、引き込み部による潤滑流体の引き込み作用は、軸受の直動方向前方側から後方側に向けて生じることになる。そのため、軸受の直動方向前方側にある潤滑流体は、引き込み部の作用により軸受中央側へと引き戻され、結果的に、軸受自体により潤滑流体が掻き出されるのを防ぎ、あるいは掻き出された潤滑流体を回収することができる。従って、軸受内部に含浸させた潤滑油の不要な漏れ出しを防いで、含浸させた潤滑流体を有効かつ効率よく使用することができる。これにより、摺動潤滑性を高めて、良好な摺動状態を継続することができる。
このように、潤滑流体の引き込み作用を考慮した場合、引き込み部としては、相手部材との間に形成されるすき間空間の断面積を、摺動面の一端側から他端側に向けて、すなわち潤滑油の引き込み方向に向けて減少させた形状をなすものがよい。なお、ここでいう断面積とは、引き込み部と相手部材との間に形成されるすき間空間を、その直動方向に直交する面で切った際に得られる断面部分の面積を意味する。
引き込み部の形状に関していえば、例えば摺動面の一端側から他端側に向けて延びかつその周方向寸法を他端側で狭くした複数の溝部からなるものが考えられる。ここで、上述の観点から見れば、溝部の具体的かつ好適な例として、引き込み部を、摺動面との間に段差を設けた複数の溝部で構成し、これら溝部を、直動方向一端側から他端側に向けてその溝幅が漸次縮小する楔形状とする構成が考えられる。
あるいは、引き込み部の形状として、摺動面の一端側から他端側に向けて相手部材との対向間隔を減少させた面からなるものが考えられる。この場合の具体的かつ好適な例として、引き込み部を、摺動面の直動方向一端側に隣接して設けられるテーパ面で構成し、かつその傾斜方向を、相手部材との対向間隔が直動方向一端側から他端側に向かうにつれて減少する向きとする構成が考えられる。
また、往復摺動に供する場合を想定すれば、第1の引き込み部に加えて、摺動面の他端側に、相手部材との相対摺動に伴い潤滑流体をその一端側に向けて引き込むための第2の引き込み部がさらに形成されている構成も考えられる。このように、摺動面の両端にそれぞれ軸受内部に向けて潤滑流体を引き込み可能な引き込み部を設けることで、かかる軸受の往復摺動時、その摺動方向に拘らず、常に摺動方向前方にある潤滑流体を軸受内部へ引き込むことができる。従って、潤滑流体の回収効率および循環効率を一層高めて、摺動潤滑性の更なる向上を図ることが可能となる。
また、その用途によっては、複数の軸受を直動方向に並列配置する場合も考えられるが、かかる場合には、軸受間の組付け精度、特に同軸度を確保することが肝要となる。このような場合には、焼結含油軸受を、摺動面の他端側にさらに第2の摺動面を設けた構成とし、かつ第2の摺動面の他端側に、相手部材との相対摺動に伴い潤滑流体をその一端側に向けて引き込むための第2の引き込み部がさらに形成されている構成を採るのが好ましい。かかる構成とすれば、1つの軸受に、往復摺動に対応した引き込み部が直動方向に離隔して形成されているので、高い同軸度が組付けの精度によらず得られる。
上記構成の直動用焼結含油軸受は、例えば当該軸受を備え、その内周に挿入された軸に対して往復直動を行うキャリッジとして好適に提供することができる。さらには、このキャリッジを組み込んでなるプリンタ、あるいは光磁気ディスク装置として好適に提供することができる。
以上より、本発明によれば、潤滑油保持性を高めて、良好な摺動特性を継続して発揮し得る直動用焼結含油軸受を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1および図2に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る直動用焼結含油軸受1の断面図を示している。同図における直動用焼結含油軸受1は円筒形状をなすもので、保持体2によってその内側に保持されている。また、同図では、2つの直動用焼結含油軸受1、11が保持体2内に直列に配置されている。
例えば一方の直動用焼結含油軸受1は焼結金属で形成され、その内部気孔に潤滑油を含浸した構成をなす。直動用焼結含油軸受1はその内周に、支持すべき軸3(同図中1点鎖線)の外周面と摺動する概ね環状の軸受面4を有する。軸受面4には、多数の微細な気孔が開孔しており、軸3の相対運動(直動)に伴い、軸受面4の表面開孔を介して軸受内部に保持されている潤滑油が滲み出すようになっている。
摺動面としての軸受面4の直動方向端部には、軸3の相対直動に伴い、その進行方向前方側から後方側に向けて潤滑油を引き込み可能とする引き込み部が形成されている。ここでは、軸受面4の一端側に、軸3との相対直動時、その一端側から他端側に向けて潤滑油を引き込み可能とする第1引き込み部5が形成される。また、軸受面4の他端側に、軸3との相対直動時、その他端側から一端側に向けて潤滑油を引き込み可能とする第2引き込み部6が形成されている。
各引き込み部5、6は、それぞれ潤滑油の引き込み方向に向けてその円周方向寸法を漸次減少させた形状(ここでは楔状)をなす複数の溝部7、8からなる。この場合、各溝部7、8は軸受面4よりも大径に形成される。そのため、溝部7、8と軸3との対向間隔は軸受面4と軸3との対向間隔よりも大きい。図2は、一方の溝部7に沿った一部拡大断面図で、上記対向間隔の違いが明確となるよう、これら対向間隔を、軸受厚み寸法に比べて誇張して描いている。
また、複数の溝部7、8のうち、軸受面4の一端側(引き込み始端側)に形成された溝部7の溝長さL1は、軸受面4の他端側(引き込み終端側)に形成された溝部8の溝長さL2に比べて大きく設定されている。言い換えると、軸受面4上に形成された溝部7、8は軸方向中央を境に非対称な溝形状をなす。なお、図1では、円筒面上に形成された溝部7、8の形状を容易に理解できるよう、かかる円筒面を平面上に展開した形態を示している。後述する図4や図6についても同様に展開した状態の溝形状を示している。
この実施形態では、他方の直動用焼結含油軸受11にも、上記構成の引き込み部5、6を有するものが用いられ、これら2つの直動用焼結含油軸受1、11が保持体2内に並列に設けられる。また、併せて、引き込み作用の強い側の引き込み部(ここでは第1引き込み部5)が互いに離反する向きの端面1a、11a側に設けられる。この実施形態では、一方側の直動用焼結含油軸受1を上下反転させたものを他方側の直動用焼結含油軸受11として使用した場合を例示している。
以下、上記構成の直動用焼結含油軸受1、11が保持体2と一体に軸3に対して直動する場合における、潤滑油の引き込み作用を説明する。
まず、図1中矢印aの方向に直動用焼結含油軸受1、11が軸3に対して直線的に移動した場合、直動方向前方側の直動用焼結含油軸受1に着目すると、直動用焼結含油軸受1と軸3との対向面間に、軸受面4あるいは溝部7の表面開孔を介して軸受内部に含浸、保持される潤滑油が滲み出る。これにより、直動用焼結含油軸受1が潤滑油の介在下で軸3に対して相対直動を行う。また、上記方向への相対直動に伴い、溝部7による潤滑油の引き込み作用が生じ、軸3との対向部にある潤滑油、あるいは溝部7の幅広側端部にある潤滑油がその直動方向後方側に向けて引き込まれる。従って、相対直動と共に、直動前方側にある潤滑油を軸受内側に回収して、潤滑油の漏れを可及的に防止しつつも、潤滑油による優れた自己潤滑性能を発揮することができる。
また、この実施形態では、引き込み部5を複数の溝部7で構成することで、円周方向に配列される溝部7、7間に軸受面4を設けるようにした。そのため、直動時の軸3に対する負荷が最も直動前方側で高まる場合においても、かかる負荷を確実に軸受面4で受けることができ、円滑な摺動状態を確保することができる。
また、溝部7を楔形状とすることで、相対直動する軸3との間に形成される対向すき間の断面積が、その引き込み方向に向けて漸次減少するような形状(絞り形状)となる。そのため、各溝部7による潤滑油の引き込み作用を高めることができる。また、このような形状とすることで、溝部7としての機能を発揮しつつも、その軸受面4における面積を最小限に留めて、十分な軸受面積を確保することができる。
また、この実施形態では、並列配置される2つの直動用焼結含油軸受1、11の互いに離反する向きの端面1a、11aの側に、それぞれ引き込み部5、5を設けたので、例えば図1中矢印bの向きに直動用焼結含油軸受1、11が直動した場合、直動前方側の直動用焼結含油軸受11の引き込み部5(溝部7)による潤滑油の引き込み作用が生じる。これにより、直動用焼結含油軸受1、11の往復直動時、その直動方向によらず、常に直動前方側にある潤滑油を軸受内側(軸受面4の軸方向中央)に引き込むことができる。従って、潤滑油の回収効率および循環効率を一層高めて、軸受性能の更なる向上を図ることが可能となる。
なお、この実施形態では、1つの直動用焼結含油軸受(例えば図1中左側の直動用焼結含油軸受1)の軸受面4の両端にそれぞれ軸受内側に向けて潤滑油を引き込むための引き込み部5、6を設けている。このような構成とすることで、当該軸受の往復摺動時、常に引き込み部5、6の何れか一方が潤滑油の引き込み作用を奏する。また、直動後方側に溝部があることで潤滑油の循環効率を高めることもできるため、好ましい。
さらに、この実施形態では、保持体2内に直列保持された2つの直動用焼結含油軸受1、11に設けた引き込み部5、6のうち、最も直動方向他端側に位置する直動用焼結含油軸受1の第1引き込み部5の溝部7の溝長さL1を、同一の軸受面4上に形成される第2引き込み部6の溝部8の溝長さL2より大きくした。かかる構成とすることで、軸受面4の面積(軸受面積)を確保しつつも、直動前方側における所要の大きさの潤滑油の引き込み作用を得ることできる。特に、この種の直動用軸受においては、その直動方向前方側に負荷が集中するため、軸3に付着した潤滑油を直動方向前方に向けて掻き出す場合があるが、この構成の如く、特に直動方向前方側における引き込み部5の引き込み作用を高めることで、上述の問題を解決することが可能となる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る直動用焼結含油軸受は、この実施形態に限定されることなく、上記以外の構成を採ることもできる。以下、他の構成例を図示と共に説明する。
例えば上記実施形態では、引き込み部5として、複数の溝部7からなるものを例示したが、もちろんこれ以外の形態をなす引き込み部5を設けることもできる。図3はその一例を示すもので、同図に係る直動用焼結含油軸受21は、その内周に軸3を相対直動可能に支持する軸受面24を有すると共に、その直動方向一端側にテーパ状の縮径面27を全周にわたって有する。縮径面27は、その一端側で最も大径であり、かつテーパ状に漸次縮径した側の端部で軸受面24と連続するような形状をなしている。このように、軸受内側に向けて漸次縮径する縮径面27で引き込み部25を構成することで、相対直動する軸3との対向間隔が、その縮径方向に向けて漸次減少するような形状(絞り形状)となる。
よって、上記構成の直動用焼結含油軸受21を軸3に対して例えば図3中矢印cの方向に直動させた場合、直動用焼結含油軸受21と軸3との対向面間に、軸受面24あるいは縮径面27の表面開孔を介して軸受内部に含浸、保持される潤滑油が滲み出る。また、上記方向への相対直動に伴い、縮径面27と軸3の外周面との間に形成される空間による潤滑油の引き込み作用が生じ、軸3との対向部にある潤滑油、あるいは縮径面27の大径側端部にある潤滑油がその直動方向後方側に向けて引き込まれる。従って、図1と同様、相対直動と共に、直動前方側にある潤滑油を軸受内側に回収して、潤滑油の漏れを可及的に防止しつつも、潤滑油による優れた自己潤滑性能を発揮することができる。
また、図1や図3に例示の引き込み部5、25においては、これらを構成する溝部7や縮径面27の全てが軸受面4、24の直動方向一端側(あるいは他端側)に設けられていたが、必ずしもこの構成に限る必要はない。例えば溝部7や縮径面27のように、実質的に引き込み作用を奏する部分が一部でも直動方向前方側端部に設けられていればよく、その全てが一端側(直動方向前方側)にある必要はない。
図4はその一例を示すもので、同図に係る直動用焼結含油軸受31は、その内周に軸3を相対直動可能に支持する軸受面34を有すると共に、直動方向一端側から他端側に向けて潤滑油を引き込むための複数の第1引き込み部35と、他端側から一端側に向けて潤滑油を引き込むための複数の第2引き込み部36とを軸受面34の軸方向全長にわたって交互に設けた構成をなす。この図示例では、軸方向一端側から他端側に向かうにつれて円周方向一端側(図4では下方側)に傾斜し、かつその溝幅が狭まる楔状の第1溝部37で第1引き込み部35が構成されている。また、軸方向他端側から一端側に向かうにつれて円周方向他端側(図4では上方側)に傾斜し、かつその溝幅が狭まる楔状の第2溝部38で第2引き込み部36が構成されている。従い、第1溝部37と第2溝部38とは互いに相反する向きに狭まり、かつ軸方向全長にわたって交互かつ連続的に配設されている。なお、この図示例では、第1溝部37と第2溝部38とを共に同じ溝長さとした場合を例示したが、軸受の上記実施形態と同様、2つの直動用焼結含油軸受を並列配置して使用する場合を想定し、第1溝部37の溝長さと、第2溝部38の溝長さとが互いに異なるよう構成しても構わない。
上記構成の直動用焼結含油軸受31であれば、軸受面34の直動方向前方側端部に位置する第1溝部37(あるいは第2溝部38)により潤滑油の引き込みが生じ、上記構成と同様、潤滑油の回収および循環を図ることができる。
もちろん、上述の引き込み部5、6、25、35、36は例示に過ぎず、相対直動に伴い所要の引き込み作用を奏する限りにおいて、任意の構成を採ることができる。もちろん、上記例示の引き込み部5、6、25、35,36は、その組合せにおいても特に限定されない。
また、相対直動可能に支持する相手部材は軸3に限らない。従って、軸受面4の形状も円筒状に限らず、挿入する相手部材の断面形状に応じて適宜選択することが可能である。図5はその一例を示すもので、同図に係る直動用焼結含油軸受41は、略矩形状の内面を有し、さらに、対向する上下2面に、内側に挿入される断面矩形状の軸状部材(図示は省略)を直動支持するための平坦な軸受面44、44を有する。各軸受面44には、図1と同様、軸受面44の一端側および他端側からそれぞれ直動方向中央部に向けて潤滑油を引き込むための第1引き込み部45と第2引き込み部46とが形成されている。また、各引き込み部45、46は、それぞれ楔状をなす複数の溝部47、48から構成される。
従って、上記構成に係る直動用焼結含油軸受41であれば、直動支持すべき部材が断面矩形状をなすものであっても、上記と同様、引き込み部45、46(の溝部47、48)による潤滑油の引き込み作用で、潤滑油を軸受内側に回収し、また潤滑油の漏れを可及的に防止することができる。
あるいは、以上説明した直動用焼結含油軸受を2個以上並列に配置して使用する場合には、これらを一体に形成することもできる。図6はその一例を示すもので、同図に係る直動用焼結含油軸受51は、図1に示す直動用焼結含油軸受1、11を同一材料からなる焼結体で一体につないだ形態をなす。この場合、大径の逃げ部53を介して2つの軸受面54、54が軸方向に離隔して設けられる。一方の軸受面54の直動方向両端側に、潤滑油をその反対側の端部に向けて引き込むための引き込み部55、56が設けられる点、および、各引き込み部55が、楔状をなす複数の溝部57、58で構成される点は、図1に示す実施形態と同様である。また、各溝部57、58の配置態様や溝長さの関係等についても第1実施形態と同様である。
このように、1つの軸受に往復直動に対応した引き込み部55、55が形成されていれば、双方の軸受面54、54間で高い同軸度を得ることができる。そのため、軸3とのクリアランス(対向すき間)をより高精度に(小さく)設定して、軸受諸性能のさらなる向上を図ることができる。また、複数の軸受の同軸合わせが不要となるため、組付けに要する時間やコストの削減にもつながり好適である。
以上説明した直動用焼結含油軸受は、例えば原料粉末を圧粉成形する工程(a)、圧粉成形体を焼結する工程(b)、焼結体にサイジングを施す工程(c)、および潤滑油を含浸する工程(d)とを経ることで製造することができる。この場合、引き込み部5(あるいは引き込み部5を構成する溝部7など)は、例えばサイジング工程(c)時、引き込み部5に対応する形状をその外周に設けたサイジングピンを用いて焼結体の内周を圧迫することで、サイジングと同時に引き込み部5を成形することができる。あるいは、引き込み部5の形状(例えば図1〜図3、もしくは図5に示す形状など)によっては、圧粉成形工程(a)時など、サイジング工程(c)以外の工程時に形成することも可能である。
以上の説明に係る直動用焼結含油軸受1は、潤滑油の回収機能や油漏れ防止機能に優れたものであり、また軽量のため高速追従性やその際の位置精度にも優れるものである。従い、この種の軸受を、例えば高速かつ高精度な往復直動が要求されるプリンタや光磁気ディスク装置のキャリッジ用の軸受として好適に使用することができる。
1、11、21、31、41、51 直動用焼結含油軸受
2 保持体
3 軸
4、24、34、44、54 軸受面
5、6、25、35、36、45、46、55、56 引き込み部
7、8、37、38、47、48、57、58 溝部
27 縮径面
53 逃げ部
2 保持体
3 軸
4、24、34、44、54 軸受面
5、6、25、35、36、45、46、55、56 引き込み部
7、8、37、38、47、48、57、58 溝部
27 縮径面
53 逃げ部
Claims (7)
- 摺動面を有する焼結金属製の軸受でその内部気孔に潤滑流体を含浸させてなるものであって、相手部材との直線的な相対摺動に伴い、前記内部気孔に含浸した前記潤滑流体が前記摺動面上に滲み出ることにより、前記潤滑流体を介して前記相手部材を支持する直動用焼結含油軸受において、
前記摺動面の少なくとも一端側に、前記相手部材との相対摺動に伴い前記潤滑流体をその他端側に向けて引き込むための引き込み部が形成されていることを特徴とする直動用焼結含油軸受。 - 前記引き込み部が、前記相手部材との間に形成されるすき間空間の断面積を前記摺動面の一端側から他端側に向けて減少させた形状をなす請求項1記載の直動用焼結含油軸受。
- 前記引き込み部が、前記摺動面の一端側から他端側に向けて延びかつその周方向寸法を他端側で狭くした複数の溝部からなる請求項1記載の直動用焼結含油軸受。
- 前記引き込み部が、前記摺動面の一端側から他端側に向けて前記相手部材との対向間隔を減少させた面からなる請求項1記載の直動用焼結含油軸受。
- 前記摺動面の他端側に、前記相手部材との相対摺動に伴い前記潤滑流体をその一端側に向けて引き込むための第2の引き込み部がさらに形成されている請求項1記載の直動用焼結含油軸受。
- 前記摺動面の他端側に第2の摺動面が設けられ、かつ該第2の摺動面の他端側に、前記相手部材との相対摺動に伴い前記潤滑流体をその一端側に向けて引き込むための第2の引き込み部がさらに形成されている請求項1記載の直動用焼結含油軸受。
- 請求項1〜6の何れかに記載の直動用焼結含油軸受を備えたキャリッジ。
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JP2012255488A (ja) * | 2011-06-09 | 2012-12-27 | Thk Co Ltd | すべり軸受及び振動アクチュエータ |
JP2013046972A (ja) * | 2011-08-29 | 2013-03-07 | Brother Industries Ltd | 液体噴射装置 |
JP2015013451A (ja) * | 2013-07-08 | 2015-01-22 | セイコーエプソン株式会社 | 記録装置 |
-
2007
- 2007-03-27 JP JP2007082412A patent/JP2008240911A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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