JP2008236292A - アンテナ用コイル部品およびキーレスエントリシステム - Google Patents

アンテナ用コイル部品およびキーレスエントリシステム Download PDF

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Abstract

【課題】できる限り低いコストにて、コイルが形成する磁界を有効に利用して信号電波の送受信を行うことのできるアンテナ用コイル部品を提供し、送受信感度の向上とセンシングエリアの拡大の要求を満たすことのできるキーレスエントリシステムをあわせて提供する。
【解決手段】開磁路構造を有する磁性体コアと前記磁性体コアに巻回されたコイルと前記コイルに直列接続されたコンデンサとを具備したアンテナ用コイル部品において、前記磁性体コアの重心位置が、前記コイルの断面中心軸に対して、これと交差する方向にオフセットしてなることを特徴とするアンテナ用コイル部品;および上記アンテナ用コイル部品を備える送信用アンテナと当該送信用アンテナが伝播させた磁界の変化を契機としてドアを施錠または開錠するリモートコントロール装置とを用いたキーレスエントリシステム。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁性体コアに巻回されたコイルと、これに直列に接続されたコンデンサとで共振回路が構成されたアンテナ用コイル部品、およびこれを備える送信用アンテナを用いたキーレスエントリシステムに関する。
信号電波の送受信によって自動車や家屋等のドアに直接触れることなくこれを施錠または開錠することのできるキーレスエントリシステムが各種提供されている。
特に近年では、内部に送受信アンテナを内蔵したリモートコントロール装置を持つユーザが、ドア側に設置された送信用アンテナの発生する磁界伝播領域に入るか、または磁界伝播領域から出ることを契機として、リモートコントロール装置を作動させてドアを施錠または開錠する、いわゆるオートキーレスエントリーシステムが開発されている。このシステムでは、ユーザはリモートコントロール装置をポケットや鞄から取り出す必要がないため、特に両手がふさがっている場合の施錠・開錠操作をきわめて楽に行うことができるという利点がある。
ドア側に設置される送信用アンテナは、開磁路構造を有する磁性体コアに巻回されたコイルと、これに直列接続されたコンデンサとで構成される共振回路からなるアンテナ用コイル部品を備えており、かかる共振回路の共振周波数に対応する交流電流をコイルに印加すると、磁界が発生してこれを空気中へ伝播させることができる。具体的には、下式(1)で表される共振回路の共振周波数(f)と、印加する交流電流の周波数とを一致させることで、コイルに大きな共振電流を流すことができる。なお下式(1)で、Lはコイルのインダクタンス、Cはコンデンサの静電容量を表している。
(数1)
共振周波数:f=1/ 2π√(L×C) (1)
ここで、下記特許文献1に例示される従来の送信用アンテナに交流電流を印加した場合に形成される磁界伝播領域(等磁界線図)の関係を図13に模式的に示す。
従来の送信用アンテナ180は、(a)円柱状や角柱状などの棒状の磁性体コア120、(b)その長手方向に沿って巻回された巻線コイル130、(c)巻線コイル130の一端に接続されたチップコンデンサ150からなるアンテナ用コイル部品110と、(d)巻線コイル130の他端およびチップコンデンサ150の間に接続された図示しない交流電源とから構成される。
かかる送信用アンテナ180に対して、巻線コイル130のインダクタンス(L)、チップコンデンサの静電容量(C)、および上式(1)から決まる共振周波数(f)の交流電流を印加した場合に形成される磁界伝播領域160は、図示のように磁性体コア120の断面中心軸(CL)を中心として、全周囲に亘って略均一な形状となる。これは、棒状の磁性体コア120およびこれに巻回された巻線コイル130が断面中心軸CLに関して軸対称形状であり、コアの端部からは断面中心軸CLに関して対称に磁界が伝播されるためである。より詳しくは、磁性体コア120の横断面(長手方向に直交する平面で切った断面)形状が円形の場合、これに巻回される巻線コイル130の巻軸中心と磁性体コア120の断面中心(断面中心軸CL)とは一致し、磁界伝播領域160は断面中心軸CLまわりに回転対称形となる。また磁性体コア120の横断面形状が楕円形や長円形、長方形などの場合も同様に、断面中心と巻軸中心とは一致し、断面の長軸または短軸と、断面中心軸CLとで張られる平面に関して対称の磁界伝播領域160が形成される。
特許第3735104号公報(WO2003/036761号公報)
ここで、キーレスエントリシステムの送受信感度の向上や、センシングエリア(送受信距離)の拡大を目的として、送信用アンテナが発生する磁界伝播領域を広げることが要求されている。この要求を満足するにあたっては、(i)印加電流を増大させる、(ii)磁気特性の優れた磁性材料を磁性体コアに用いる、などの対処法を採ることも考えられるが、これらは送信用アンテナのコスト高騰要因となる。
一方、送信用アンテナを自動車や家屋のドアに搭載したキーレスエントリシステムの場合、上記目的で磁界伝播領域を大きくすべきは自動車や家屋の外側方向である。換言すれば、ドアの内側方向に広がる磁界伝播領域は、リモートコントロール装置のセンシングには通常寄与しない。したがって図13に示す従来の送信用アンテナ180の場合で、図中上側をドアの外側方向とした場合、磁性体コア120の断面中心軸CLに関して対称に形成された磁界伝播領域160の下側半分はセンシングに有効に利用されていないといえ、磁界伝播領域を広げるという要求に対してそもそも送信用アンテナの形成する磁界を有効に利用し切れていないという問題がある。
またキーレスエントリシステムおよびその送信用アンテナの分野を離れ、アンテナコイルを備える受信用アンテナや送受信用アンテナに関しても、その感度向上やセンシングエリアの拡大という目的は広く共通するものである。この場合も、指向する方向とは逆方向にも等しく形成される磁界を有効に利用することができないという共通の問題が生じている。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、すなわちできる限り低いコストにて、コイルが形成する磁界を有効に利用して信号電波の送受信を行うことのできるアンテナ用コイル部品を提供することを目的とする。またかかるコイル部品を用いることで送受信感度の向上とセンシングエリアの拡大の要求を満たすことのできるキーレスエントリシステムを提供することを更なる目的とする。
開磁路構造のアンテナ用コイル部品に用いる磁性体コアを上記のように円柱状や角柱状などの軸対称形状とすることは従来の当業者のいわば技術常識であったところ、本発明者らは磁性体コアの形状に工夫を凝らし、その重心位置を断面中心軸と交差する方向にオフセットさせることにより、形成される磁界伝播領域を当該オフセット方向に拡大させることができるとの知見を得た。また本発明者らの検討によれば、磁性体コアのコア端部を巻軸交差方向に向けることによっても、形成される磁界伝播領域を当該方向に拡大させることができるとの知見を得、これらに基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明のアンテナ用コイル部品は、
(1)開磁路構造を有する磁性体コアと、前記磁性体コアに巻回されたコイルと、前記コイルに直列接続されたコンデンサと、を具備したアンテナ用コイル部品において、前記磁性体コアの重心位置が、前記コイルが巻回される領域に位置する当該磁性体コアの断面中心軸に対して、これと交差する方向にオフセットしてなることを特徴とするアンテナ用コイル部品;
(2)開磁路構造を有する磁性体コアと、前記磁性体コアに巻回されたコイルと、前記コイルに直列接続されたコンデンサと、を具備したアンテナ用コイル部品において、前記磁性体コアが、前記コイルの巻軸方向に対して、これと交差する方向の一方側を向くコア端部を備えることを特徴とするアンテナ用コイル部品;
を要旨とする。
また本発明のキーレスエントリシステムは、
(3)上記(1)または(2)に記載のアンテナ用コイル部品を備える送信用アンテナと、当該送信用アンテナが伝播させた磁界の変化を契機としてドアを施錠または開錠するリモートコントロール装置と、を用いたキーレスエントリシステム;
を要旨とする。
また本発明は、さらに具体的な態様として、
(4)開磁路構造を有する磁性体コアと、前記磁性体コアに巻回されたコイルと、前記コイルに直列接続されたコンデンサと、を具備したアンテナ用コイル部品において、前記磁性体コアの重心位置が、前記コイルが巻回される領域に位置する当該磁性体コアの断面中心軸に対して、これと交差する方向にオフセットしてなるとともに、当該磁性体コアが、前記コイルの巻軸に対して、これと交差する方向の一方側を向くコア端部を備えることを特徴とするアンテナ用コイル部品;
(5)上記(1),(2)または(4)に記載のアンテナ用コイル部品と、前記コイルの両端に交流電流を印加する交流電源回路と、を備える送信用アンテナ;
(6)前記交差方向が、前記ドアの外側にあたることを特徴とする上記(3)に記載のキーレスエントリシステム;
によっても上記課題を解決し本発明の目的を達成することができる。
本発明のアンテナ用コイル部品によれば、磁性体コアの形状を工夫するのみで、コイルの形成する磁界伝播領域を巻軸交差方向に拡大することができるため、かかるコイル部品を送信用、受信用または送受信用アンテナに用いることにより、当該方向の送受信感度を向上し、センシングエリアの拡大を図ることができる。
またかかるコイル部品を送信用アンテナとして備えるキーレスエントリシステムによれば、拡大された磁界伝播領域をドアの外側方向に向けることにより、リモートコントロール装置との間での送受信感度が向上して施錠/開錠動作の誤作動が少なくなる。またセンシングエリアが拡大してより遠方位置でドアを施錠/開錠することができるため、例えば自動車の降車時について言えば、リモートコントロール装置を持った運転手が同乗者を車中に残したまま一足先に僅かに自動車を離れただけでドアが施錠されてしまったり、逆に乗車時について言えば、運転手が自動車にきわめて接近するまでドアが開錠できずに同乗(予定)者がドア外で待たされたりするなどの不都合を回避することができる。
本発明のアンテナ用コイル部品(以下、コイル部品と略記する場合がある。)は、コイルが巻回される磁性体コアの重心位置が、前記コイルが巻回される領域に位置する当該磁性体コアの断面中心軸上に存在せず、これと交差する方向にオフセットしていることを一つの特徴とする。これにより重心位置のオフセット方向に磁界伝播領域を拡大し、その反対方向の磁界伝播領域を縮小することができるため、キーレスエントリシステムに代表されるような、特定方向に広い磁界伝播領域が求められる送受信システムに対して本発明のコイル部品を好適に用いることができる。なお本発明において、「磁性体コアの重心位置が、コイルが巻回される領域に位置する当該磁性体コアの断面中心軸に対してこれと交差する方向にオフセットしている」とは、磁性体コアにコイルを巻回する巻回部を、磁性体コアの重心を含むようにして切った横断面(平面)内において、コアの重心位置と、当該横断面形状に対する断面中心とが互いにずれあっていることを意味する。
材料密度が均一な磁性体コアによってこれを実現するためには種々の方法があるが、例えば磁性体コアの断面中心軸を全体に屈曲または湾曲形状とすればよい。これにより、コアの重心位置が、巻回部における断面中心軸に対して当該屈曲または湾曲方向にシフトすることとなる。
具体的には、磁性体コアの端部または中間部に、断面中心軸から側方(巻軸線交差方向)に突出する突出部を一つまたは二つ以上設けることで、断面中心軸を屈曲形状とすることができる。または磁性体コアを全体に弓形に湾曲させることで、断面中心軸を湾曲形状としてもよい。
また本発明のコイル部品は、磁性体コアがコイルの巻軸方向と交差する方向を向くコア端部を備えることを第二の特徴とする。かかるコア端部より磁界を伝播させることで、当該方向に磁界伝播領域を拡大し、その反対方向の磁界伝播領域を縮小することができるため、上記第一の特徴と同様に、キーレスエントリシステムなどの特定の方向に広い磁界伝播領域が求められる送受信システムに対して本発明のコイル部品を好適に用いることができる。
なお本発明でいうコイルの巻軸方向とは、コイルの中心において巻軸線が伸びる直線方向を意味するものである。すなわち磁性体コアにコイルが巻回される巻回部の断面中心軸が直線状の場合は、巻軸方向は当該直線の伸びる方向と一致する。また巻回部が湾曲形状の場合については、巻軸方向とは、コイルの中心における巻軸線の接線方向を意味するものである。
かかる特徴を備える磁性体コアを実現するためには、
(ア)磁性体コアの断面中心軸方向の端部または中間部に、当該断面中心軸と交差する方向に突出する一つまたは二つ以上の突出部を設けてコア端部とする。
(イ)磁性体コアの断面中心軸を全体に屈曲または湾曲させることで、コイルの巻軸方向に対してコアの両端を側方に向けることでコア端部とする。
などの方法を採ることができる。
なお、磁性体コアの形状を選択することで上記第一の特徴と第二の特徴とは両立することができる。すなわちコイルの巻軸方向と交差する方向を向くコア端部を磁性体コアに設けて第二の特徴を実現することにより、磁性体コアの重心位置を断面中心軸に対して当該交差方向にオフセットして第一の特徴が実現される。
以下、本発明の実施形態として、上記(ア)の方法により第一および第二の特徴をともに実現した磁性体コアを用いてなるコイル部品について図面を用いて具体的に説明する。
図1は本実施形態にかかるコイル部品10の平面模式図、図2はこれに用いる磁性体コア20の平面図、図3は送信用アンテナ80およびこれが形成する磁界伝播領域60の平面模式図である。
本実施形態のコイル部品10は、磁性体コア20が長手方向の両端に突起部21(21a,21b)を備え、巻線コイル30が突起部同士の間に巻回されていることを特徴とする。磁性体コア20の断面中心軸CLと重心位置CGを図2に、巻線コイル30の中心における巻軸AXの伸びる方向(巻軸方向)を図3にあわせて示す。図示のように、巻線コイル30が巻回される巻回部22の外側に突起部21を形成したことにより、磁性体コア20の重心位置CGは、巻回部22の断面中心軸CLに対して当該突出方向にオフセットする。
また磁性体コア20は、突起部21a,21bを除く巻回部22については太さが均一な柱状をなしている。ただし、巻回部22の横断面形状を凸字形や紡錘形などの偏心形状とし、その偏心方向が突起部21の突出方向を向くよう磁性体コア20を形成してもよい。これにより、磁界伝播領域60を当該突出方向に拡大する上記本発明の効果をさらに高めることができる。
なお図2に示す各寸法については後述する。
図示のように、巻軸方向と交差する方向(側方)に磁界を伝播させる突起部21a,21bを磁性体コア20の両端にそれぞれ設けることにより、突起部21a,21bの先端であるコア端部25a,25bは、巻線コイル30の巻軸方向に対して当該側方側を向くこととなる。本実施形態の場合、コア端部25a,25bがそれぞれ向く方向は、巻軸方向と直交する方向である。
また突起部21a,21bが一方側(図中上側)に突出することで、磁性体コア20の断面中心軸CLも屈曲形状となり、また重心位置CGも、巻軸AXに対し、突起部21a,21bの突出方向にオフセットする。
また突起部21a,21bは、巻線コイル30の巻き緩みを防止する鍔部材としての用途を兼用している。
コイル部品10には、巻線コイル30の一端にチップコンデンサ50が直列に接続されることで、直列共振回路が構成される。
かかるコイル部品10に対し、図示しない交流電源回路を接続して巻線コイル30の両端に所定の周波数および電圧の交流電流を印加可能としたものが本実施形態の送信用アンテナ80である。本実施形態の送信用アンテナ80によれば、図3に示すように突起部21a,21bの突出方向に拡大された磁界伝播領域60が形成される。
螺旋状の巻線コイル30が生成する磁束は、図3に矢印にて示すように、空気よりも透磁率の高い磁性体コア20の中を巻軸に沿って進行し、開磁路構造ゆえに磁性体コア20の一端から空気中に放射状に放出されると、ループを描いて他端より流入する。したがって本実施形態の送信用アンテナ80の場合、磁束は、磁性体コア20のうち巻回部22については磁性体コア20の断面中心軸CLを中心として流れ、また巻線コイル30の端部を抜けて突起部21a,21bに出たところで磁束の流れる向きは突起部21a,21bの突出方向(図中上側)に曲げられることとなる。これにより、巻線コイル30が形成する磁界伝播領域60は、突起部のない棒状の磁性体コアの場合(図13を参照)に比べ、当該突出側が拡大し、その反対側が縮小する。
なお、巻線コイル30を巻回する巻回部22の長さを長く確保するため、突起部21a,21bの間隔を極力大きく取ることが好ましい。またこのように突起部21a,21bに接するぎりぎりの位置まで巻線コイル30を巻回することで、巻線コイル30から空気中に直接放射される磁束の漏れ量を抑制し、突起部21a,21bを経由して空気中に伝播される磁束の量を十分に得ることができるため、磁界伝播領域60を突起部の突出方向にシフトさせる効果を十分に享受することができる。
ただし後述のように磁性体コア20には、巻線コイル30と直列に接続されるチップコンデンサ50や交流電流を印加するための端子部などを一体化した他のアンテナ用部材と組み合わせるための凹凸部(例えば後記図7に示す嵌合凸部26)を形成してもよい。
これにより、磁界伝播領域60が拡大された当該突起部21a,21b形成側を、キーレスエントリシステムにおいてはドアの外側に向けることで、リモートコントロール装置との送受信感度を向上させ、センシングエリアを拡大することができる。
磁性体コア20の材料は磁性材料であるかぎり特に限定されるものではないが、フェライト、特にMn−Zn系フェライトが高周波特性に優れ、低損失であることから好適に用いられる。このほか、アモルファス合金箔帯を積層して磁性体コア20を構成してもよい。
また磁性体コア20に設ける突起部21の突出量は、送信用アンテナ80全体の包絡寸法を過大とすることがない範囲で選択される。磁界伝播領域60を拡大する効果を十分に得る観点からは、図2に示す巻回部幅W2に対し、コア幅W1をその1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上とするとよい。
図4(a)は磁性体コア20の第一変形例,同図(b)は第二変形例をそれぞれ示す平面図である。これらは上記(イ)の方法により、上記第一および第二の特徴をともに実現した磁性体コア20を例示するものである。すなわち図4各図に示す磁性体コア20は、横断面積は断面中心軸CLに沿って不変としながらも、同図(a)では磁性体コア20の断面中心軸CLを円弧状とし、同図(b)ではこれを長円弧状とすることで、巻軸AXに対して磁性体コア20の重心位置CGを一方側(円弧や長円弧の中心側)にオフセットさせている。また磁性体コア20の断面中心軸CLが湾曲していることから、その両端であるコア端部25a,25bは巻軸方向に対して当該一方側を向いている。
これにより、第一および第二変形例にかかる磁性体コア20に対して巻線コイル30を巻回することにより、図3と同様に当該一方側に磁界伝播領域60を拡大することができる。
図5(a)は磁性体コア20の第三変形例を示す斜視図、同図(b)はそのB矢視図(正面図)、同図(c)はC矢視図(側面図)である。また図6(a)は磁性体コア20の第四変形例を示す斜視図、同図(b)はそのB矢視図(正面図)、同図(c)はC矢視図(側面図)である。
図5,図6各図に示す磁性体コア20は、角柱状の巻回部22の両端に、巻軸AXに対していずれかの方向に突出したコア端部25a,25bをもつ鍔部23a,23bを設けることで、磁性体コア20の重心位置CGを当該突出方向にシフトさせている。またこれにより、鍔部23a,23bでは磁性体コア20中を流れる磁束の方向が当該突出方向に曲げられるため、磁性体コア20まわりに形成される磁界伝播領域60(図3を参照)を当該突出方向に拡大することができる。
図5に示す第三変形例にかかる磁性体コア20の鍔部23a,23bは、角柱状の巻回部22の両端において、その矩形状の横断面を、巻軸AXに対して一方向の両側にそれぞれ延出してなる。延出量を片側(側面視上側)に大きくすることで、磁性体コア20の重心位置CGを巻軸AXに対して当該片側にオフセットさせている。
一方、図6に示す第四変形例にかかる磁性体コア20の鍔部23a,23bは、角柱状の巻回部22の両端において、その矩形状の横断面を巻軸AXに対して二方向の両側、すなわち全周囲に延出してなる。延出量をそれぞれ片側(側面視上側および左側)に大きくすることで、磁性体コア20の重心位置CGを巻軸AXに対して斜め方向(側面視左上方向)にオフセットさせている。
これにより、図5に示す磁性体コア20に巻回された巻線コイル30に交流電流を印加した場合は、矩形状断面の辺方向に磁界伝播領域60(図3を参照)を拡大することができる。また図6に示す磁性体コア20に巻回された巻線コイル30に交流電流を印加した場合は、矩形状断面の対角方向に磁界伝播領域60を拡大することができる。
また図5,6に示す磁性体コア20の鍔部23a,23bは、コア端部25a,25bと反対側にこれよりも小さな延出量の突出部24a,24bが形成されている。これは巻回された巻線コイル30の巻き緩みを防止する鍔部の機能を高めるための段差であり、巻線コイル30の巻厚と同等またはそれ以上の高さに形成すると良い。換言すると、巻線コイル30は突出部24a,24bと面一またはそれ以下の厚さで巻回部22に巻回するとよい。
図7(a)は、図2に示す本実施形態の磁性体コア20の巻軸AX方向の一方の端部に、当該方向に伸びる嵌合凸部26を延出して形成した第五変形例の斜視図である。同図(b)は、かかる磁性体コア20の巻回部22に巻線コイル30を巻回するとともに、嵌合凸部26をベース70に装着してなる送信用アンテナ80の斜視図である。ベース70は、チップコンデンサ50や各種給電端子等を搭載するアンテナ用部材であり、磁性体コア20等とともに送信用アンテナ80を構成する。
ベース70は、巻線コイル30が発する磁束の伝播を阻害する磁気回路の閉ループが形成されないよう、非磁性材料により構成するとよい。またベース70は巻線コイル30が発した磁束に起因する渦電流が生じないよう非導電性の材料とすることが好ましく、さらに成形加工性などの観点から、樹脂材料から成形するとよい。
ベース70は全体が略直方体形状をなし、嵌合凸部26を嵌合装着するための装着口(図示せず)がその一の面に開口形成されている。嵌合凸部26および装着口の形状は、本実施形態の場合、磁性体コア20の厚さ寸法(T)よりも幅寸法(W)が大きな横長矩形状に形成され、コア端部25a,25bは巻回部22より幅方向に突出して設けられている。
ベース70には絡げ端子71、ハーネス端子72aおよび72bがそれぞれ突出して設けられている。またベース70にはチップコンデンサ50が搭載され、絡げ端子71およびハーネス端子72aと互いに導通している。
したがって、巻線コイル30の一端を絡げ端子71に接合固定し、他端をハーネス端子72bに接合固定することにより、巻線コイル30とチップコンデンサ50とは直列に接続されて直列共振回路が構成される。またハーネス端子72aおよび72bに交流電流を印加することで、送信用アンテナ80はコア端部25a,25bの突出方向(同図右手前側)に拡大された磁界伝播領域60を形成することができる。
すなわちかかる磁性体コア20を用いることで、コア端部25a,25bの突出によっても全体の厚さ寸法を増大させることがなく、その幅方向に磁界伝播領域を拡大することのできる薄型の送信用アンテナ80を得ることができる。したがってセンシング方向を側方とする場合は、かかる送信用アンテナ80を平置き(横幅W方向を接地)することで、横に薄い設置スペースによって、本発明の目的である送受信感度の向上やセンシングエリアの拡大を図ることができる。
図8(a)は、図7(a)に示す磁性体コア20に対し、コア端部25a,25bの突出方向を厚さ(T)方向とした第六変形例の斜視図である。また図8(b)は、かかる磁性体コア20の巻回部22に巻線コイル30を巻回するとともに、図7(b)と共通のベース70にこれを装着してなる送信用アンテナ80の斜視図である。
かかる送信用アンテナ80は、厚さ(T)方向に磁界伝播領域を拡大することができる。したがってかかる送信用アンテナ80を縦置き(厚さT方向を接地)することで、自動車のドア内など縦に薄い設置スペースに取り付ける場合についても、側方の送受信感度を向上し、センシングエリアを拡大することができる。
なお図7,図8に示す送信用アンテナ80は、巻線コイル30の巻軸AXの伸びる方向に摺動可能な移動コア81を備えることを特徴とする。
移動コア81は磁性材料からなり、磁性体コア20との相対位置を変化させることで巻線コイル30のインダクタンスを調整することができる。具体的には、移動コア81を磁性体コア20に近づけることで両者の磁気結合度が向上して巻線コイル30のインダクタンスを増大し、逆に移動コア81を磁性体コア20から遠ざけることで巻線コイル30のインダクタンスを減少することができる。これにより、チップコンデンサ50の製品個体ごとに不可避的に生じる静電容量(C)のバラつきに応じて巻線コイル30のインダクタンス(L)を調整し、上式(1)で示される共振周波数fを、交流電源の印加周波数と高い精度で一致させることができる。
したがってベース70には、移動コア81を摺動可能に装着するための凹溝を巻線コイル30の巻軸方向に伸びて開口形成した移動コア収納凹部73が設けられている。また移動コア収納凹部73の内周面には、対応する移動コア81の周面と凹凸嵌合するガイドレール74が巻軸AX方向に設けられており、移動コア81が傾いたり移動コア収納凹部73から脱離したりすることなくこれを巻軸AX方向に摺動させることができる。
また移動コア81には、移動コア収納凹部73から露出する面に、係合部82が形成されており、マイナスドライバのような位置調整用冶工具をこれに掛合させて摺動位置の調整を行うことが可能である。具体的には、図示のように摺動方向(巻軸AX方向)と交差する方向に伸びる凹溝または凸条などによって係合部82を形成することができる。
なお、移動コア81の位置調整は、送信用アンテナ80の共振周波数の測定器をハーネス端子72a,72bに接続した状態で行うとよい。すなわち位置調節用冶工具によって移動コア81を磁性体コア20に徐々に近づけまたは遠ざけつつ送信用アンテナ80の共振周波数を測定し、所望の共振周波数(f)が得られた位置で移動コア81をベース70に固定するとよい。
移動コア81とベース70との固定は、移動コア収納凹部73と移動コア81との間に接着剤を含浸させて行ってもよいが、ガイドレール74と移動コア81とが圧接するよう互いにきつく嵌合させておき、位置調整した移動コア81がそのまま移動コア収納凹部73に固定保持される圧入方式としてもよい。移動コア81を脆性の低いフェライトの焼結体により構成した場合、ベース70を弾性のある樹脂材料で成形することにより、移動コア81を移動コア収納凹部73に圧入固定した場合にも移動コア81が破損することがなく好適である。
[検証実験]
上記本実施形態の送信用アンテナ80によるセンシングエリアの拡大の効果を実証するための検証実験を行った。具体的には、図2に示す磁性体コア20を、Mn−Zn系フェライトを材料として作製し、巻回部22に絶縁性皮膜付導線ワイヤを40ターン巻回し、当該導線ワイヤの一端にチップコンデンサ50を直列接続し、さらにチップコンデンサおよび導線ワイヤの他端との間に交流電源回路を接続して、図3に示す送信用アンテナ80を得た。
なお、図2中に示す磁性体コア20の各寸法値は、コア長さL1=30.0mm、突起部21aおよび21bの長さL2=L3=2.8mm、コア幅W1=12.0mm、巻回部幅W2=7.0mmとし、またコア厚さT=2.8mmとした。したがって巻回部22の長さはL1−L2−L3=24.4mmである。
したがってかかる実施例のコイル部品10は、磁性体コア20の重心位置CGが巻軸AX(図3を参照)から約0.5mm((12.0*2.8*2+7.0*24.4)/2/30.0−7.0/2≒0.467)だけ図中上方にオフセットし、またコア端部25(25a,25b)は、巻軸方向と交差する図中上方をともに向いている。
一方、比較例として、図14(a)に平面図を示すようにコア長さL1=30mm、コア幅W1=7.0mm(突起部なし)、コア厚さT=2.8mmの単純な角型棒状の磁性体コア20’を上記実施例と同一の材料により作製し、また実施例と同様に、コアの長さ方向の中央に24.4mmにわたって導線ワイヤを40ターン巻回し、さらにチップコンデンサ50と交流電源回路をこれに接続して送信用アンテナ80’を得た(図14(b))。
かかる比較例の磁性体コア20’は、断面中心軸CLと巻軸AXとが一致し、重心位置CGもその上に載っている。またコア端部25a,25bは巻軸AXや断面中心軸CLの伸びる方向をそれぞれまっすぐ向いている。
具体的な検証実験方法を以下に記す。
1.上述において作成した送信用アンテナ80,80’を実験台の上に設置し、該送信用アンテナの直列共振周波数に合致する周波数で交流電流を印加し、磁界を励起する。
2.送信用アンテナ80,80’において、巻線コイル30の中心から1mはなれた位置に受信コイル(空芯コイル)を設置し、送信用アンテナ80,80’により励起されている磁界によって誘起された誘導起電力の値を測定することで磁界強度を算出した。
かかる実験装置の模式図を図9に示す。同図は、本実施例の送信用アンテナ80を実験台に設置した状態を示すものである。
受信コイル90の設置箇所は、送信用アンテナ80,80’の周囲に、その巻軸方向を方位角0度および180度とする30度毎の合計12箇所とした。また正確な磁界強度を測定するために、送信用アンテナ80,80’の巻線コイル30と中心をあわせた半径1mの円状であって、当該円の上記測定箇所における接線と、受信コイル90の巻軸とが合致するようにした。
方位角0度および180度を車内/屋内または車外/屋外の境界とし、方位角30度〜150度を車外/屋外側、方位角210度〜330度を車内/屋内側として、受信コイル90による測定結果を下表1に示す。
Figure 2008236292
図10は、表1に示す受信コイル90の測定結果を、磁界強度分布図としてレーダーチャート形式で示したものである。実線が本実施例、破線が比較例に関するものである。
表1および図10より、本実施例の送信用アンテナ80が誘起した磁界は、その磁性体コア20の重心位置CGのオフセット方向に遷移していることがわかる。具体的には、30度から150度の方位角範囲である車外/屋外側において、磁界強度が比較例よりも最大で約15%向上していることが確認された。換言すると、本実施例の送信用アンテナ80を用いることにより、従来に比べて磁界伝播領域を拡大することができることがわかった。
また、方位角210度〜330度にあたる車内/室内側については、逆に実施例の磁界強度の方が比較例の場合よりも最大で約15%低くなることがわかった。これにより、本実施例の送信用アンテナ80をキーレスエントリシステムに用いることで、ドアの施錠/開錠操作が不要な車内/室内側のセンシングエリアを縮小する一方、これが必要な車外/室外側のセンシングエリアを拡大することが可能になり、本発明の目的を達成することができる。
以上により、本発明にかかる送信用アンテナは、特に自動車や家屋の外側に対しての磁界伝播領域を増大させるという効果を有している。また上述の効果を得るにあたって、印加する交流電流を大きくしたり、磁気特性に優れた磁性体コアを採用したりするなどの手段が不要となり、磁性体コアの形状を変更するというきわめて簡易的な方法によってこれを実現することが可能である。
[キーレスエントリシステム(1)]
本発明にかかる送信用アンテナ80を、例えば自動車のキーレスエントリシステムとして採用する場合には、図11に示すような配置にて送信用アンテナ80を組み付けることで送受信エリアの拡大を容易に得ることが可能となる。同図は、自動車95の二枚の前部ドア(運転席ドアおよび助手席ドア)と、一枚の後部ドアの内側に、それぞれ図1に示す送信用アンテナ80を組み付けた状態を示す平面図である。
三式設けられた送信用アンテナ80のいずれかが形成する磁界伝播領域に対して、リモートコントロール装置を持つユーザが出入りしたことを契機として、自動車95のすべてのドアが同時に施錠または開錠される。
本実施例にかかるキーレスエントリシステムでは、三式の送信用アンテナ80のいずれもが、図示のように磁性体コア20に設けられた突起部21の突出方向を車外側に向けて自動車95に組み付けられている。これにより、各送信用アンテナ80の形成する磁界伝播領域(センシングエリア)が自動車95の車外方向に拡大し、リモートコントロール装置との送受信感度が向上する。
[キーレスエントリシステム(2)]
図12は、自動車95のキーレスエントリシステムの他の実施例であり、図6に示す第四変形例にかかる磁性体コア20を備えた送信用アンテナ80を用いる態様を示す正面図である。すなわち本実施例に用いる磁性体コア20は、矩形状の横断面をもつ巻回部22の両側に、当該矩形の二辺方向に断面を大きく延出した鍔部23a,23bを設けることで、その対角方向(コア端部25a,25bの方向)に磁界伝播領域を拡大する機能を持っている。
かかる送信用アンテナ80は、自動車95の運転席ドアや助手席ドアに対して、コア端部25a,25bが車外方向かつ上方を向くように組み付けられる。これにより、同図に両側矢印で示すように、送信用アンテナ80の形成する磁界伝播領域が、自動車95の車外上方に向かって斜めに拡大されることとなる。
なお本実施例は、ユーザのポケットや鞄などに相当するリモートコントロール装置の保持高さが、自動車95のドア位置よりも高い場合を想定したものである。
このように本発明においては、磁性体コア20の重心位置のオフセット量や、コア端部25a,25bの向きを調整することにより、想定されるケースに応じて、送信用アンテナ80の形成する磁界伝播領域を所望の方向に拡大することができる。
本発明の実施形態にかかるアンテナ用コイル部品10の平面模式図の一例である。 これに用いる磁性体コア20の平面図である。 アンテナ用コイル部品10およびこれが形成する磁界伝播領域60の平面模式図である。 (a)は磁性体コア20の第一変形例を示す平面図、(b)は第二変形例を示す平面図である。 (a)は磁性体コア20の第三変形例を示す斜視図、(b)はそのB矢視図(正面図)、(c)はそのC矢視図(側面図)である。 (a)は磁性体コア20の第四変形例を示す斜視図、(b)はそのB矢視図(正面図)、(c)はそのC矢視図(側面図)である。 (a)は磁性体コア20の第五変形例を示す斜視図、(b)はかかる磁性体コア20を備える送信用アンテナ80の斜視図である。 (a)は磁性体コア20の第六変形例を示す斜視図、(b)はかかる磁性体コア20を備える送信用アンテナ80の斜視図である。 実験装置の模式図である。 実施例および比較例にかかる送信用アンテナの磁界強度分布図である。 自動車95の二枚の前部ドアと、一枚の後部ドアとに、それぞれ図1に示す送信用アンテナ80を組み付けた状態を示す平面図である。 自動車95のキーレスエントリシステムの他の実施例を示す正面図である。 従来の送信用アンテナ180およびこれが形成する磁界伝播領域160の模式図である。 (a)比較例にかかる磁性体コア20’、および(b)送信用アンテナ80’の平面図である。
符号の説明
10,110 アンテナ用コイル部品
20,120 磁性体コア20
21a,21b 突起部
22 巻回部
23a,23b 鍔部
24a,24b 突出部
25a,25b コア端部
26 嵌合凸部
30,130 巻線コイル
50,150 チップコンデンサ
60,160 磁界伝播領域
70 ベース
80,180 送信用アンテナ
81 移動コア

Claims (3)

  1. 開磁路構造を有する磁性体コアと、
    前記磁性体コアに巻回されたコイルと、
    前記コイルに直列接続されたコンデンサと、
    を具備したアンテナ用コイル部品において、
    前記磁性体コアの重心位置が、前記コイルが巻回される領域に位置する当該磁性体コアの断面中心軸に対して、これと交差する方向にオフセットしてなることを特徴とするアンテナ用コイル部品。
  2. 開磁路構造を有する磁性体コアと、
    前記磁性体コアに巻回されたコイルと、
    前記コイルに直列接続されたコンデンサと、
    を具備したアンテナ用コイル部品において、
    前記磁性体コアが、前記コイルの巻軸方向に対して、これと交差する方向の一方側を向くコア端部を備えることを特徴とするアンテナ用コイル部品。
  3. 請求項1または2に記載のアンテナ用コイル部品を備える送信用アンテナと、
    当該送信用アンテナが伝播させた磁界の変化を契機としてドアを施錠または開錠するリモートコントロール装置と、を用いたキーレスエントリシステム。
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