JP2008233273A - 光ファイバケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】 苛酷な環境下においても伝送特性が劣化せず、温度変化に対する耐久性を有し、かつ、容易に被覆除去可能で防水性に優れた光ファイバケーブルを提供すること。
【解決手段】 本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバ心線と光ファイバ心線の両外側に配置された鋼線とが、ポリアミド系熱可塑性樹脂からなるシース層により一括被覆されている。前記光ファイバ心線は、石英系ガラスファイバの外周に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層を設けたものである。前記被覆層は、ウレタンアクリレートオリゴマーを40〜80重量%配合したベース樹脂からなり、ベース樹脂100重量部に対して、2個又は3個のアルコキシ基とチオール基又はアミノ基とを同一分子内に有するシランカップリング剤を0.5〜2重量部含有し、かつ、平均分子量5000〜30000のシリコーン樹脂又はシリコーンアクリレートを1〜30重量部含有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は光ファイバケーブルに関連する。
近年、高精度画像情報伝送など伝送速度の増加が求められLANや機器間配線に光ファイバが使用されることが増えている。また、使用環境も多様化されはじめ高温で長期間にわたり使用される事例も生じてきた。
現在よく使用されるメタルのハーネスでも800Mbps以上の大容量の通信用途に適用することは可能であるが、ノイズ対策としてシールド線が必要であり、かつ複数本の電線を束ねる必要があるので全体として太くなり空間使用効率が悪くなる。
一方、光ファイバを用いたハーネスも提案されている。例えば、特許文献1にはプラスチック系光ファイバケーブルが開示されている。このプラスチック系光ファイバケーブルは屈曲性が高く自在に曲げて配線することが可能なので、短距離の通信に適している。
特許文献2には、石英系のガラスファイバが樹脂により被覆された被覆光ファイバを熱可塑性樹脂によりさらに被覆した光ファイバドロップケーブルについて開示されている。また、特許文献3及び特許文献4には、被覆光ファイバ用の紫外線硬化型樹脂組成物が記載されている。
特開2004−212871号公報 特開2004−21110号公報 特開2005−338240号公報 特開2005−283773号公報
特許文献1のようなプラスチック系光ファイバは、一般に石英系光ファイバに比べて透明性が低いため85℃以上の高温に曝されると伝送特性が劣化するという問題があり、高温環境下で使用することが困難である。
特許文献2に記載されている光ファイバケーブルでは、上記の問題は解消できるが、ヒートショック試験(例えば−40〜125℃)のような過酷な温度履歴を付与した際に、ガラスファイバの周囲に2層被覆された紫外線硬化型樹脂のうち内側の被覆層がガラスファイバ部分とともに突き出てくる現象(ピストニング)が認められた。
これは、温度履歴を付与させる際に、熱可塑樹脂成型時に残存していた加工歪が解放され、熱収縮が長手方向に発生し、ケーブル内部の樹脂層界面で最も密着力の弱い部分に剥離が発生するために起こると考えられる。
ピストニングが起こると突き出し部分の光ファイバに力が加わり、伝送損失が大きくなるという問題がある。さらには光源側の受光素子を破損させてしまう恐れもある。
一方、ケーブルにコネクタ付けをする際に熱可塑性樹脂を除去して光ファイバ心線を露出させ、光ファイバ心線にコネクタを付ける場合は、被覆層とシース層の密着力が大きくなりすぎて被覆除去が困難とならないようにしなければならない。
また、湿度の高い箇所に端部が接続されるケーブルは、その端部から水分子が被覆層間に入り込み反対の端部まで伝って行くことがある。他端部が基板に接続されている場合、水が伝ってくると当該基板の回路が短絡してしまい故障が発生することがある。このようなことがないように、湿度の高い箇所で使用される場合には気密性が求められている。
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、苛酷な環境下においても伝送特性が劣化せず、温度変化に対する耐久性を有し(ピストニングが生じない)、容易にシース層が除去可能で、かつ気密性に優れた光ファイバケーブルを提供することである。
上記課題は下記手段により解決される。
1.光ファイバ心線と前記光ファイバ心線の両外側に配置された鋼線とが、ポリアミド系熱可塑性樹脂からなるシース層により一括被覆された光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバ心線は、石英系ガラスファイバの外周に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層を設けたものであり、前記被覆層は、ウレタンアクリレートオリゴマーを40〜80重量%配合したベース樹脂からなり、ベース樹脂100重量部に対して、2個又は3個のアルコキシ基とチオール基又はアミノ基とを同一分子内に有するシランカップリング剤を0.5〜2重量部含有し、かつ、平均分子量5000〜30000のシリコーン樹脂又はシリコーンアクリレートを1〜30重量部含有し、
前記被覆層のヤング率が500〜1000Mpaの範囲内であり、
前記光ファイバ心線の外径が0.10〜0.25mmの範囲内であり、
前記シース層の最小厚みが0.1〜0.4mmであり、前記シース層のヤング率が500〜1300Mpaであることを特徴とする光ファイバケーブル。
2.上記1に記載の光ファイバケーブルをその端末でコネクタ付けしたコネクタ付き光ファイバケーブルであって、
前記コネクタが、前記光ファイバ心線の径と実質的に等しい内径の挿通孔をその一端に有し、前記光ファイバケーブル本体を固定する固定部分を他端に有し、かつ前記挿通孔と前記固定部分との間に前記光ファイバ心線を撓ませる空間を有し、
前記光ファイバケーブルの一端のシース層を除去して、石英系ガラスファイバと前記被覆層とを一体化した状態で前記挿通孔に挿通し、前記光ファイバケーブルを前記固定部分で前記コネクタに固定したコネクタ付き光ファイバケーブル。
本発明によれば、石英系ガラスファイバを用いるので伝送容量を大きくすることができ、苛酷な環境下においても伝送損失が小さい。さらに、ガラスファイバの被覆層として特定の紫外線硬化型樹脂を用いることにより、ガラスファイバと被覆層との密着性を維持されているので、高温環境下においてもピストニングが発生せず、コネクタ・受光部分との良好な接続状態を維持できる。被覆層とシース層との剥離性が得られ、容易に被覆除去可能であるので加工効率に優れている。また、被覆層とシース層との界面における撥水性が高く、気密性にも優れている。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る光ファイバケーブルの好適な一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、光ファイバケーブル10は、中心に光ファイバ心線13を有しており、その両側に抗張力体として鋼線12が配置されている。光ファイバ心線13と鋼線12とはシース層14により一括被覆されており、長手方向に沿って溝15が光ファイバ心線の配列面の上下に各々形成されている。図1に示されている光ファイバケーブル10では、溝15は断面略V字形状をしている。溝15の先端部分(ケーブルの厚さの薄い箇所)を引き裂いて光ファイバ心線を取り出すことができる。光ファイバ心線の直径は約0.10〜0.25mmとすることができる。また、鋼線の直径は0.2〜0.5mmの範囲とすることができる。光ファイバ心線13は、ガラスファイバ30の外周が紫外線硬化型樹脂からなる被覆層31によって被覆されている。本発明では光ファイバ心線の被覆層は1層のみである。
ガラスファイバ30は、コア及びクラッドが石英系ガラスからなるガラスファイバ(石英系ガラスファイバ)を用いる。ここで、石英系ガラスとは、石英を主成分とするガラスを意味する。石英系ガラスファイバを用いることで800Mbps以上の伝送容量を実現することができ、画像データ通信に適したケーブルが得られる。また、石英系ガラスファイバはプラスチック系のものに比べて耐熱性が高く、85℃以上の高温環境においても高い伝送特性を維持することができる。
また、ガラスファイバ30としては石英系細径マルチモードファイバを使用することが好ましい。細径マルチモードファイバを使用することにより、800Mbps以上の大伝送量を実現できるとともに伝送距離を飛躍的に向上することができる。
ガラスファイバ30のクラッド径は50〜125μmの範囲とすることが好ましく、80μmであることがより好ましい。このように、細径の光ファイバを使用することでガラスファイバに付与される実効的な曲げ歪を軽減させることができ、耐衝撃性が得られる。
被覆層31は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを40〜80重量%配合し、反応性希釈モノマー、光開始剤、溶剤等を添加したベース樹脂からなる。ベース樹脂中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合量がベース樹脂100重量部に対して80重量部を超えた場合、樹脂液粘度が高くなってしまい、樹脂組成物の塗布性が低下してしまう。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用されるジイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートが挙げられ、脂環族イソシアネートとしては、例えばイソフォロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独でも複数使用してもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用される水酸基(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独でも複数使用してもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用されるポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルジオール(具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソブテンオキシド、2−メチルテトラヒドロフラン等)、脂環式ポリエーテルジオール(具体的には水添ビスフェノールAアルキレンオキシド、1,4−シクロヘキサンジオールのアルキレンオキシド等)或いは芳香族ポリエーテルジオール類(ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオール、ヒドロキノンのアルキレンオキシド付加ジオール等)、ポリカーボネートジオール(ポリテトラヒドロフランのポリカーボネート等)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独でも複数使用してもよい。
反応性希釈モノマーとしては、Nビニル−ピロリドン、Nビニル−カプロラクタム、イソボルニルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独でも複数使用してもよい。
反応希釈モノマーの配合量は、ベース樹脂100重量部に対して18〜55.5重量部の範囲とすることが好ましい。モノマー配合量が55.5重量部を超えた場合、モノマーの希釈効果が強すぎて、樹脂液の粘度が低くなり過ぎて(水あめより粘度が低くなる)、ダイスコーティングできなくなる。
光開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独でも複数使用してもよい。
光開始剤の配合量は、ベース樹脂100重量部に対して0.5〜2重量部の範囲とすることが好ましい。光開始剤の配合量が0.5重量部より少ないと硬化不良に陥り、2重量部より多いと未反応の光開始剤が被覆中に大量に存在するようになるため、硬化塗膜の耐久性が低下する。
また、被覆層31には、ガラスファイバとの密着力向上をさせるために2個又は3個のアルコキシ基とチオール基又はアミノ基とを同一分子内に有するシランカップリング剤を配合する。このシランカップリング剤としては、メルカプト系シランカップリング剤を使用することができ、より具体的には、γ−メルカプトプロピルシランカップリング剤、γ−アミノプロピルシランカップリング剤等を使用することができるが、これらに限定されない。また、これらは単独でも複数使用してもよい。
シランカップリング剤の配合量は0.5〜2重量部の範囲とし、0.5〜1.0重量部の範囲とすることがより好ましい。
シランカップリング剤の配合量が0.5重量部より少ない場合、ガラスファイバと被覆層31との間に適当な密着力形成されず、ガラスファイバの突き出しを抑制できない。一方、シランカップリング剤配合量が2重量部より多い場合、シランカップリング剤が、紫外線によるラジカル重合反応過程で連鎖移動剤的な役割を果たし、所望の架橋密度が得られない可能性がある。
さらに、被覆層31には、平均分子量5000〜30000のシリコーン系添加剤(シリコーン樹脂又はシリコーンアクリレート)を配合する。シリコーン系添加剤を被覆層31に添加することにより、被覆層31とシース層14との界面に非極性であるシリコーン系添加剤が偏在することで撥水性が向上し、被覆層31とシース層14との間の水の伝播を抑制できるため、防水性の高いケーブルが得られる。さらには、被覆層31とシース層14との間の剥離性が増すので、コネクタ付け時にシース層のみを引き抜いて除去することが可能となり加工性が向上することになる。
平均分子量が5000未満であると、紫外線硬化後でシリコーン系添加剤がベース樹脂中に相溶してしまい、被覆層31の表面近くに存在するシリコーン系添加剤が低減し、シース層との適切な密着力が強くなり過ぎてシース層を引き抜き除去できなくなるばかりか、紫外線硬化型樹脂の極性成分とポリアミド系熱可塑樹脂のアミド基の偏析により、ケーブルの一端から被覆層31とシース層14との間に浸入した水が毛管現象により層間を伝播し易くなる。これは極性基が偏在することで水がその極性に引かれて上昇していくためと考えられる。この結果、ケーブル片末端に存在する光部品(VCSEL等)が浸水してしまうことになる。
また、平均分子量が5000未満の場合、分子サイズが小さいため、ガラスファイバ30と被覆層31との界面にもシリコーン系添加剤が達し、シランカップリング剤とガラスファイバ30表面の脱水重合反応を阻害させてしまい、その結果、ガラスファイバ−被覆層界面の密着力が低下して、ピストニングが発生したり、水の浸入を許してしまうことになる。
一方、分子量が30000以上の場合、ベース樹脂との相溶性が極端に悪くなり、その結果樹脂組成物を製造した段階で白濁等の問題が発生してしまう。
シリコーン樹脂としては、一般に知られているものを用いることができ、前述の密着性や水密性を損なわない範囲であればメチル基、アルコキシ基等の修飾基を有していてもよい。
また、シリコーンアクリレートとは、ポリシロキサンの側鎖の一部または末端にアクリレート基を1つ以上導入したものを意味する。シリコーンアクリレートもメチル基、アルコキシ基等の修飾基を有していてもよい。
シリコーン樹脂又はシリコーンアクリレートの配合量は、1〜30重量部の範囲とし、2〜20重量部配合することが好ましい。
1重量部より少ない場合には、被覆層31とシース層14との剥離性が低下し、シース層の除去加工性が低下する。また、被覆層31とシース層14との界面における極性が高くなるため、毛細管作用により系外から浸入した水がケーブル内を走り易く、水密性が低下する。一方、30重量部より多い場合には、被覆層31を構成する樹脂の硬化性が低下し、機械特性が低下する。
被覆層31のヤング率は、500〜1000Mpaの範囲であり、600〜900Mpaの範囲とすることが好ましい。被覆層31のヤング率を前記範囲とすることで、シース層を除去して被覆層31を露出した状態でコネクタ付けするときに、光ファイバとして必要な機械強度(耐側圧性など)を確保できるという利点が得られる。
シース層14は、ポリアミド系熱可塑性樹脂から形成される。ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、ナイロン12、ナイロン612等を用いることができる。
シース層14のヤング率は、500〜1300Mpaの範囲とすることが好ましく、850〜1200Mpaの範囲とすることがより好ましい。シース層14のヤング率を前記範囲とすることで、ハーネス加工時における衝撃により光ファイバが断芯する等の問題、またハーネス加工性という面でシース材がある程度柔軟でなければならないという問題が各々克服されるという利点が得られる。
また、シース層14の最小厚み(図1の厚みd)は、樹脂のヤング率にもよるが、0.1〜0.4mmの範囲とすることが好ましく、0.2〜0.35mmの範囲とすることがより好ましい。例えば、ヤング率が850Mpaの樹脂を用いた場合、0.1mm以上とすることができる。
本発明の光ファイバケーブルでは抗張力体として鋼線を含むのでシース層のヤング率を500〜1300MPaとするとシース層の厚みは0.1〜0.4mmとすればケーブルとしての機械強度を確保できる。鋼線の直径は0.2〜0.5mmとする。図1に示すように2本を光ファイバ心線からみて対象な位置に配置すると光ファイバ心線にかかる力が均等化されるようになるので好ましい。なお、シース層14の縦方向の厚みは0.5〜0.8mmの範囲とすることが好ましい。
次に、図2および図3に基づいて、本発明に係るコネクタ付き光ファイバケーブルの実施形態について説明する。
図2はオス型コネクタ20Aを装着したコネクタ付き光ファイバケーブル10Gaと、メス型コネクタ20Bを装着したコネクタ付き光ファイバケーブル10Gbとを嵌合させる前の状態を示す断面図、図3は両コネクタ20A、20Bを嵌合させて両ケーブルを接続した状態を示す断面図である。
コネクタ付き光ファイバケーブル10Ga、10Gbは、前述した光ファイバケーブル10の端末にコネクタ20A、20Bを付けたものである。コネクタ20A、20Bは、光ファイバケーブル10に含まれる光ファイバ心線13の径と実質的に等しい内径の挿通孔21をその一端(オス型コネクタ20Aについては左端、メス型コネクタ20Bについては右端)に有し、光ファイバケーブル10本体を固定する固定部分22を他端に有し、かつ挿通孔21と固定部分22との間に光ファイバ心線13を撓ませる空間23を有している。
固定部分22にはケーブル固定部材22aが設けられており、ケーブル固定部材22aが光ファイバケーブル10のシース層14に食い込むようになっている。また、光ファイバ心線13を上方へ撓ませる空間23においては、空間23の底面23aが挿通孔21の底面と同じ高さで設けられており、光ファイバ心線13をスムーズに挿通孔21へ挿入できるようになっている。
メス型コネクタ20Bの先端部には、オス型コネクタ20Aを嵌合させて接続するためのハウジング26が設けられており、ハウジング26の内径がオス型コネクタ20Aの外径に対応している。オス型コネクタ20Aの先端には位置合せ用凸部24が設けられており、メス型コネクタ20Bの先端に設けられている位置合せ用凹部25に嵌合して、両コネクタ20A、20Bの挿通孔21の位置を容易に合わせることができるようになっている。また、メス型コネクタ20Bのハウジング26内部には、オス型コネクタ20Aの先端の外周壁28を嵌合して固定するための嵌合凹部27が設けられている。
なお、オス型コネクタ20Aの位置合せ用凸部24の先端からは、オス型コネクタ20Aに取り付けられている光ファイバケーブル10の光ファイバ心線13の先端がわずかに突出しており、メス型コネクタ20Bの位置合せ用凹部25の内部にはメス型コネクタ20Bに取り付けられている光ファイバ心線13の先端が突出している。
従って、コネクタ20A、20Bを光ファイバケーブル10に取り付ける際には、光ファイバケーブル10の一端のシース層14を除去して光ファイバ心線13を剥き出し、かつ抗張力体12を切断し、光ファイバ心線13を挿通孔21に挿通し、光ファイバケーブル10を固定部分22でコネクタ20A、20Bに固定する。この時に、接続する2本の光ファイバ心線13の先端面は、光学的に接続可能となるように研磨等の処理を施していておくことが望ましい。
図3に示すように、光ファイバケーブル10に装着されたコネクタ20A、20B同士を接続すると、オス型コネクタ20Aの先端部の外周壁28がメス型コネクタ20Bのハウジング26の嵌合凹部27に挿嵌されて固定されるとともに、オス型コネクタ20Aの位置合せ用凸部24がメス型コネクタ20Bの位置合せ用凹部25に挿嵌されて両挿通孔21が芯合せされる。このとき、位置合せ用凸部24から突出している光ファイバ心線13の先端面と、位置合せ用凹部25に突出している光ファイバ心線13の先端面とが当接して押し合い、その結果両光ファイバ心線13が図3中左右両外向きに押し込まれて各々空間23において撓む(撓み部分29が生じる)ことになる。
このように構成されたコネクタ付き光ファイバケーブル10Gにおいては、光ファイバケーブル10の一端のシース層14を除去して光ファイバ心線13を剥き出すとともに抗張力体12を切断して除去し、光ファイバ心線13の径と実質的に等しい内径でコネクタ20に設けられている挿通孔21に光ファイバ心線13を挿入して固定部分22において固定するので、光ファイバ心線13の被覆部がついたままコネクタ20を取り付けることができる。このため、被覆部を除去する作業が不要となるばかりでなく、被覆屑等をふき取るといった清掃作業も不要となり、光ファイバケーブル10にコネクタ20を容易に取り付けることができるので、コネクタ20の組み立て作業性が向上する。
また、挿通孔21と固定部分22との間には、光ファイバ心線13を撓ませる空間23を有するので、光ファイバ心線13の先端は、挿通孔21に沿って軸心を大きくずらすことなく後方へ移動可能な状態となる。従って、オス型コネクタ20Aとメス型コネクタ20Bとを接続した際に空間23において生じる両光ファイバ心線13の撓み部分29が真っ直ぐになろうとして両端面を押し合うので、接続端を固定することなく光学的に確実に接続することができることになる。
なお、以上の実施形態において例示した各部材の形状、寸法、数、配置個所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
〔光ファイバケーブルの作製〕
図1に示す光ファイバケーブル10と同様の構成の光ファイバケーブルを作製した。ガラスファイバ30としては、石英系ガラスよりなる細径マルチモードファイバ(コア径50μm・クラッド径80μmの)を使用した。被覆層31は、ガラスファイバ30上に下記表1に示す組成の樹脂組成物を塗布して硬化させて形成した。
また、シース層14としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂を使用した。シース層14の最小厚みd0.3をmmとした。
鋼線は、φ0.4(その外周に0.1mm厚で接着剤を塗布したもの)mmのものを使用した。
Figure 2008233273
表1における各化合物は以下のものを示す。
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー:トリレンジジイソシアネート、ポリプロピレングリコール、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(共重合比は2:1:2)
・N−ビニルピロリドン
・光開始剤:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、商品名:ルシリンTPO
・シリコーンアクリレート
・シランカップリング剤
・酸化防止剤
〔評価〕
作製した光ファイバケーブルに対して下記項目について評価を行った。
1)伝送特性
−40〜125℃のヒートサイクル試験を行った後、伝送損失増加量(ヒートサイクル試験前の値からの増加量)を測定した。なお、ヒートサイクル試験は5サイクルとし、各温度での保持時間は2時間以上とした。また、伝送損失測定においては、サンプル長さを50mとし、測定波長を1.3μmとした。
2)シース層除去性
ケーブル外被の除去に使用されるジャケットリムーバ(住電ハイプレシジョン社製ケーブル端末処理工具)を用いて、上記で作製した光ファイバケーブルからシース層を除去して、除去時に、ガラスファイバが破断する等の被覆除去し難い状況が発生した場合を×、これらのような問題が発生しなかった場合を○として評価した。なお、除去長は100mmとした。
3)ピストニング性
温度サイクル機構が備わり、かつ瞬時に昇降温可能な恒温槽内を用いて、-40〜125℃の温度ショック試験を100回実施し、その後の光ファイバ心線の突き出し量を電子顕微鏡で測定した。なお、ヒートショック試験における各温度での保持時間は30分とし、温度転移(例:−40→125℃)は、ほぼ瞬時であった。ガラスファイバまたは光ファイバ心線の突き出し量が30μm未満の場合を○とし、30μm以上の場合を×として評価した。
4)硬化性
プラスチックフィルム上に、各被覆層の紫外線硬化型樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布したものを、下記2条件で硬化させた。膜厚は100μmとした。この硬化物に対して、下記の条件でMEK抽出によるゲル分率評価を行い、両者の比率(低硬化度/高硬化度)をとり、0.9以上の値を示すものを十分に硬化しているものと判定した。
硬化条件:
低硬化条件=紫外線照射光量 100mJ/cm
高硬化条件=紫外線照射光量 1000mJ/cm
MEK抽出条件:
サンプルをMEK水溶液中に60℃×16時間放置し、抽出前後の重量を計測する。
5)防水試験
1mの光ファイバケーブルの一端を水に漬け、水面に4.9×10(Pa)の気圧を24時間かけて、他端に水が伝わるか否かを目視確認し、水が無ければ○、水が有れば×と判定した。
〔結果〕
表1に示すように、本発明に係る光ファイバケーブル(実施例1〜6)は、いずれの評価項目においても優れた性能を示すものであった。また、いずれの実施例ともハーネス組み立てや配索時の取り扱い性は良好であった。一方、比較例1はシリコーンアクリレートの平均分子量が小さく被覆層の外表面に存在するシリコーンアクリレートが少ないので、シース除去性および水密性が悪い。比較例2は、シリコーンアクリレートの平均分子量が大きすぎ、被覆層の外表面近くに多く分布し過ぎるため被覆層とシース層との滑りが大きくなりピストニングが悪化する。また、比較例2については、上記評価項目については問題なかったが、白濁して外観が不良であった。比較例3はシリコーンアクリレートの量が少なすぎるのでシース除去性および水密性が悪い。比較例4はシリコーンアクリレートの量が多すぎるので、硬化性が悪い。また、被覆層とシース層との滑りが大きくないピストニングが悪化する。比較例5は、シランカップリング剤の量が少なすぎるので、ガラスファイバと被覆層との滑りが大きくピストニングが悪化する。またガラスファイバと被覆層の密着力が弱くなるのでそこに水が浸入し易いので水密性が悪化する。比較例6は、シランカップリング剤の量が多すぎるので、硬化性が悪い。
本発明に係る光ファイバケーブルの一実施形態を示す断面図である。 オス型コネクタを装着したコネクタ付き光ファイバケーブルとメス型コネクタを装着したコネクタ付き光ファイバケーブルとを接続する前の状態を示す断面図である。 オス型コネクタを装着したコネクタ付き光ファイバケーブルとメス型コネクタを装着したコネクタ付き光ファイバケーブルとを接続した状態を示す断面図である。
符号の説明
10 光ファイバケーブル
13 光ファイバ心線
14 シース層
30 ガラスファイバ
31 被覆層
32 第2被覆層

Claims (2)

  1. 光ファイバ心線と前記光ファイバ心線の両外側に配置された鋼線とが、ポリアミド系熱可塑性樹脂からなるシース層により一括被覆された光ファイバケーブルであって、
    前記光ファイバ心線は、石英系ガラスファイバの外周に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層を設けたものであり、前記被覆層は、ウレタンアクリレートオリゴマーを40〜80重量%配合したベース樹脂からなり、ベース樹脂100重量部に対して、2個又は3個のアルコキシ基とチオール基又はアミノ基とを同一分子内に有するシランカップリング剤を0.5〜2重量部含有し、かつ、平均分子量5000〜30000のシリコーン樹脂又はシリコーンアクリレートを1〜30重量部含有し、
    前記被覆層のヤング率が500〜1000Mpaの範囲内であり、
    前記光ファイバ心線の外径が0.10〜0.25mmの範囲内であり、
    前記シース層の最小厚みが0.1〜0.4mmであり、前記シース層のヤング率が500〜1300Mpaであることを特徴とする光ファイバケーブル。
  2. 請求項1に記載の光ファイバケーブルをその端末でコネクタ付けしたコネクタ付き光ファイバケーブルであって、
    前記コネクタが、前記光ファイバ心線の径と実質的に等しい内径の挿通孔をその一端に有し、前記光ファイバケーブル本体を固定する固定部分を他端に有し、かつ前記挿通孔と前記固定部分との間に前記光ファイバ心線を撓ませる空間を有し、
    前記光ファイバケーブルの一端のシース層を除去して、石英系ガラスファイバと前記被覆層とを一体化した状態で前記挿通孔に挿通し、前記光ファイバケーブルを前記固定部分で前記コネクタに固定したコネクタ付き光ファイバケーブル。
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