JP2008229504A - 有機物分解フィルタおよび有機物分解方法 - Google Patents

有機物分解フィルタおよび有機物分解方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機物を少ない動力で高効率に分解することが可能な有機物分解フィルタおよび有機物分解方法を提供する。
【解決手段】水透過性を有するイオン交換層と、該イオン交換層を挟んで対向する陽極および陰極からなる電極と、該電極に電力を供給するための電力供給部とを備える有機物分解フィルタ、および、該有機物分解フィルタを用い、有機物と水とを含む流体を少なくともイオン交換層の内部および電極の表面に流通させることにより電極の表面上で有機物を分解する有機物分解方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水を電気分解する方法を用いて効率的にラジカルを発生させて流体中の有機物を分解除去するための有機物分解フィルタおよび有機物分解方法に関する。
従来、水の電気分解に関しては種々の方法が知られており、たとえば、固体高分子膜であるイオン交換膜を隔膜および電解質膜として用いて水の電気分解を行なうSPE(Solid Polymer Electrolyte)電解法等がある。この方法では、イオン交換膜の両面に電極を接合して水を電気分解することにより、高純度の水素を高い効率で得ることができる。
特開2006−175384号公報(特許文献1)には、水道水を用いてラジカル酸素を含むラジカル酸素水を効率的に生成するための、ラジカル酸素水生成装置およびラジカル酸素水生成システムが開示されている。このラジカル酸素水生成装置は、固体電解質膜と、該固体電解質膜の一方の面に接するように設けられ、水が流通可能な陽極部と、該固体電解質膜の他方の面に接合するように設けられ、水が流通可能な陰極部とを具備する。陽極部は、一方の面を固体電解質膜に接するように設けられた陽極と、陽極の他方の面に接するように設けられた網状の構造を有する陽極保持部とを備える。陰極部は、一方の面を固体電解質膜に接するように設けられた陰極と、陰極の他方の面に接するように設けられた網状の構造を有する陰極保持部とを備える。固体電解質膜と電極との隙間に対し、固体電解質膜の面に対して水平な方向に通水し、電極間に電力を供給することによって、陽極表面で酸素ラジカルを生成させ、水中の有機物を分解する。
しかしながら、特許文献1の技術においては、固体電解質膜の水の透過性が考慮されていないため、水を流通させる部分が、電極と固体電解質膜との隙間、および電極と電極保持部との隙間に限られる。そのため、たとえば電極面積を増加させる目的で水の流通方向における電極長さを大きくした場合に流体抵抗が著しく増加するという問題がある。また、ラジカル酸素水を効率良く生成させるためには、電極の裏側、すなわち電極の固体電解質膜側の面にも水をまんべんなく流通させることが求められるが、特許文献1の技術においては、電極の裏側において電極の網目近傍の水が流通し難いという問題がある。
よって、特許文献1で提案される構成の装置を用いて電極表面にまんべんなく水を供給してラジカル酸素水を生成させるためには、乱流を発生させて、電極の裏側の網目近傍にも水を回り込ませる必要がある。これらの理由から、特許文献1の技術では水の流速を大きくすることが必要であり、必要な水の流速を確保するための動力が大きくなってしまう問題があった。
特開2006−175384号公報
本発明は上記の課題を解決し、有機物を少ない動力で高効率に分解することが可能な有機物分解フィルタおよび有機物分解方法を提供することを目的とする。
本発明は、水透過性を有するイオン交換層と、該イオン交換層を挟んで対向する陽極および陰極からなる電極と、該電極に電力を供給するための電力供給部と、を備える、有機物分解フィルタに関する。
本発明の有機物分解フィルタにおいて、イオン交換層は繊維状構造を有することが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、電極が厚み方向の貫通孔を設けた形状を有することにより、有機物と水とを含む流体を流通させるための流路が電極の主面に対して垂直な成分を含む方向に少なくとも形成されていることが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、流路が、上記主面に対して略垂直の方向に形成されていることが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいて、電極は網目状構造を有し、網目状構造のパターンが陽極と陰極とで同一であり、陽極と陰極とは、上記主面に対して垂直の方向においてパターンが重ならない位置関係となるように配置されることが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、イオン交換層の主面の面積が陽極および陰極の各々の主面の面積よりも大きいことが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、電極がイオン交換層に接するように形成されていることが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、電極の主面のうちイオン交換層と接する側の面に凹凸形状が形成されることにより、電極とイオン交換層との間に間隙部が形成されていることが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、イオン交換層の主面の少なくともいずれかに凹凸形状が形成されることにより、電極とイオン交換層との間に間隙部が形成されていることが好ましい。
本発明はまた、上述の有機物分解フィルタを用い、有機物と水とを含む流体を、少なくともイオン交換層の内部および電極の表面に流通させることにより、電極の表面上で有機物を分解する、有機物分解方法に関する。
本発明の有機物分解方法においては、イオン交換層が繊維状構造を有し、流体を、陽極および陰極のうちの一方からイオン交換層内部への拡散浸透を経て陽極および陰極のうちの他方に流通させることにより、該他方の電極の表面上で有機物を分解することが好ましい。
本発明の有機物分解方法においては、電極が厚み方向の貫通孔を設けた形状を有することにより、流体を流通させるための流路が電極の主面に対して垂直な成分を含む方向に少なくとも形成され、該流路において陰極よりも陽極が下流となるように流体を流通させることが好ましい。
本発明の有機物分解方法においては、流路が、上記主面に対して略垂直の方向に形成されてなることが好ましい。
本発明の有機物分解方法において、電極は網目状構造を有し、網目状構造のパターンが陽極と陰極とで同一であり、陽極と陰極とは、上記主面に対して垂直の方向においてパターンが重ならない位置関係となるように配置されることが好ましい。
本発明の有機物分解フィルタは、水透過性を有するイオン交換層を備えるため、有機物と水とを含む流体を処理して有機物を分解する際に、イオン交換層の内部も流体の流路とすることができ、該流体の流速を過度に大きくすることなく電極表面近傍にまんべんなく流体を流通させることができる。よって本発明の有機物分解フィルタおよび有機物分解方法によれば、有機物を少ない動力で高効率に分解することが可能となる。
本発明の有機物分解フィルタは、水透過性を有するイオン交換層と、該イオン交換層を挟んで対向する陽極および陰極からなる電極(以下、単に電極ともいう)と、該電極に電力を供給するための電力供給部とを備える。本発明の有機物分解フィルタは、典型的には、有機物と水とを含む流体を該有機物分解フィルタに備えられた電極の表面近傍に流通させた状態で、電極間に電圧を印加することによって水の電気分解を行ない、このとき発生するラジカルで該有機物を分解除去することに用いられる。
以下、図面を参照しながら、本発明の典型的な実施の形態について説明する。図中、同一の参照符号は同様の機能を有する部材であることを表す。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する斜視図であり、図2は、図1で示される陽極の一部を拡大した斜視図である。図1に示す有機物分解フィルタ100は、水透過性を有するイオン交換層11と、該イオン交換層11を挟んで対向する陽極12および陰極13からなる電極と、電極に電力を供給するための、陽極12および陰極13に電気的に接続された電力供給部14と、を備える。
本発明で用いられるイオン交換層は、陽極と陰極との電気的な短絡を防ぐとともにイオンを伝導する役割を有する。本発明においては、水透過性を有するイオン交換層を用いるが、ここで水透過性を有するイオン交換層とは、内部を水が流通できる形状および/または材質とされたイオン交換層を意味する。
本発明においては、有機物と水とを含む流体中の該有機物を分解する際、水透過性を有するイオン交換層を用いることにより、イオン交換層の内部も流体の流路とすることができる。すなわち、該流体をイオン交換層の内部および電極表面近傍に流通させることが可能であるため、たとえば電極面積を増加させる目的で流体の流通方向における電極長さを長くするような場合にも、流体抵抗の上昇を抑えることができる。また、電極とイオン交換層との間にもイオン交換層の内部を介して流体をより効率的に供給できるため、イオン交換層が水を透過させない場合のように乱流の発生等により流体を電極とイオン交換層との間に回り込ませることが必要なく、流体の流速を過度に高くしなくても電極とイオン交換層との間に流体を流通させることができる。すなわち電極表面の全体に流体を流通させて有機物の分解を効率良く行なうことができる。よって本発明の有機物分解フィルタを用いた場合、有機物を少ない動力で高効率に分解することが可能となる。
なお本発明において、特記なしに単に流体というときは上記の有機物と水とを含む流体を意味する。また、イオン交換層と電極とが対向する面と平行の面をイオン交換層および電極について主面ともいう。また、本発明において特記なしに単に表面というときはその部材の露出部すべてを意味する。
イオン交換層としては、たとえば固体高分子電解質層等を例示できる。固体高分子電解質層は、イオン交換層の水透過性やイオン伝導性の制御が容易であり好ましい。
固体高分子電解質層は、典型的には、イオン交換基を含む材料で形成される。イオン交換基としては、スルホン酸基やアクリル酸等を例示できる。またイオン交換基を含ませる材料としては、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン等を例示できる。
イオン交換層としては、繊維状構造を有するものが好ましく、特に繊維状構造の固体高分子電解質層からなるイオン交換層が好ましい。繊維状構造を有するイオン交換層(以下、イオン交換繊維ともいう)は、繊維間に空隙を有するため水透過性、水保持性に優れ、電極近傍に流体を流通させるときの流体抵抗の低減効果および電極表面全体に流体を回り込ませる効果が特に良好となる。繊維状構造を有するイオン交換層としては、繊維状構造を形成する繊維がイオン交換基を含む材料からなるものや、イオン交換基を有しない材料からなる繊維状構造の層の表面にイオン交換基が付加されたもの等を使用できる。なお、繊維状構造とは、長細形状の材料が複数集合した構造すべてを包含し、たとえば、織布、不織布、編布、紙繊維からなる構造等を包含する。
また、繊維状構造を有するイオン交換層は、毛細管現象を利用してイオン交換層内部に流体を拡散浸透させ、電極表面に流体を供給することを可能とする点でも好ましい。この場合、流体の供給を外部からの動力手段なしで行なうことができる点で有利である。
さらに、繊維状構造を有するイオン交換層は、たとえば粒子形状のイオン交換樹脂等を用いる場合と比べて、流体中においても流動し難く形状維持性が良好で陽極と陰極との間に安定して存在できる点でも好ましい。粒子形状のイオン交換樹脂等を用いる場合には、イオン交換樹脂の粒子径よりも小さい網目を有する絶縁性の網を設ける等の手段によって粒子の流動を防止することが好ましい。
イオン交換層の厚さは、1mm以上30mm以下であることが望ましい。イオン交換層の厚さが1mm以上である場合、流体抵抗の増大の防止効果が良好であり、30mm以下である場合、ラジカル発生のために必要な電圧の過度な上昇を防止でき、有機物分解の効率が良好である。
繊維状構造を有するイオン交換層としては、たとえばフッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、等にイオン交換基としてスルホン酸基やアクリル酸を導入した高分子材料からなる層や、フッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の材料からなる層の表面にイオン交換基としてスルホン酸基やアクリル酸を付加したもの等が好ましく用いられる。上記いずれの層も、厚みはたとえば1〜5mmの範囲内であることが好ましい。
粒子形状のイオン交換樹脂としては、フッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等にイオン交換基としてスルホン酸基やアクリル酸を導入した高分子材料からなる粒子や、フッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の材料からなる粒子の表面にイオン交換基としてスルホン酸やアクリル酸を付加したもの等が好ましく用いられる。上記いずれの粒子も、平均粒径はたとえば0.1〜1mmの範囲内であることが好ましい。
ポリスチレン系樹脂は、広く用いられているため容易に入手可能である点で好ましい。またポリビニル系樹脂は、通水性がより良好である点で好ましい。
次に、本発明の有機物分解フィルタを用いて有機物と水とを含む流体中の該有機物を分解する有機物分解方法について説明する。本発明の有機物分解方法においては、有機物と水とを含む流体を少なくともイオン交換層の内部および電極の表面に流通させることにより電極表面にて有機物を分解する。
イオン交換層の内部の流体の流通は、イオン交換層の有する水透過性によって実現するが、イオン交換層が繊維状構造を有する場合には、毛細管現象によるイオン交換層への拡散浸透によって流体をイオン交換層の内部に吸引し、かつイオン交換層の内部を流通させることができる。すなわち、流体を、陽極および陰極のうちの一方からイオン交換層内部への拡散浸透を経て陽極および陰極のうちの他方に流通させ、他方の電極の表面上で有機物を分解することができる。この場合、外部からの動力を用いなくても流体が自発的に流通するため、少動力化の点で有利である。
図1に示す有機物分解フィルタ100において、イオン交換層11は陽極12と陰極13との間に形成されている。イオン交換層11は、流体中でも流動しないように固定することが好ましい。固定の方法は、流体の流動性が確保される方法であれば良く、たとえば、陽極12と陰極13とでイオン交換層11を挟み、両側から押し付けることによって電極からの圧力のみで保持しても良いし、絶縁性のピン等で電極とイオン交換層とを一体に保持しても良い。
イオン交換層11の働きを以下に示す。電力供給部14から電極間に電圧を印加するとともに有機物分解フィルタ100に流体を流通させると、イオン交換層11の表面近傍では、イオン交換層11の寄与、典型的にはイオン交換基の寄与により水が解離するため、水のイオン積が増加する。水の解離で増加した水素イオンと水酸化物イオンとが電流経路を形成することによって流体の導電性が向上する。これにより、流体が接触する電極表面において電荷量が増加し、電極表面で効率的にラジカルを発生させることが出来る。
イオン交換層に含有させるイオン交換基としては、陽イオン交換能、または、陰イオン交換能を有する官能基を用いることができるが、水中におけるキャリアが水素イオンである陽イオン交換基がより望ましい。なぜならば、25℃の水におけるイオン移動度は、水素イオンが36.3×10-4cm2-1-1、水酸化物イオンが20.5×10-4cm2-1-1であり、水素イオンのキャリア移動度が水酸化物イオンのキャリア移動度に比べ約1.8倍と大きく、陽イオン交換基を含有するイオン交換層においては、電流駆動能力が大きく、電極間の印加電圧に対する応答のスルーレートをより大きくすること等が可能となるためである。
特に、陽イオン交換基はスルホン酸基であることがより好ましい。スルホン酸基は強酸性であるため、スルホン酸基を含有するイオン交換層を用いる場合には水の解離が促進され、電気分解をより効率的に行なうことが可能となる。
陽イオン交換基を有するイオン交換層としては、化学的安定性と耐熱性とを持たせるため、フッ素樹脂からなるたとえば直径0.1mmの繊維にスルホン酸基を導入した、強酸性陽イオン交換樹脂からなる繊維を用いて作製した、厚さ1mmの不織布等からなるイオン交換繊維等を好ましく例示できる。
本発明の有機物分解フィルタにおいては、電極が厚み方向の貫通孔を設けた形状を有することにより、有機物と水とを含む流体を流通させるための流路が電極の主面に対して垂直な成分を含む方向に少なくとも形成されていることが好ましい。厚み方向の貫通孔を設けた形状としては、網目状構造、多孔質構造、厚み方向に貫通孔を開けた平板状構造、等の形状を例示できる。
図1に示す有機物分解フィルタにおいては、陽極12,陰極13が網目状構造を有する。本発明において用いられるイオン交換層は水透過性を有するため、本発明において用いられる電極が、たとえば図1の電極に示す網目状構造のように、厚み方向の貫通孔を設けた形状を有する場合、流体を流通させるための流路が、イオン交換層の内部および電極の貫通孔を通る流路として、イオン交換層および電極の主面に対して垂直な成分を含む方向に形成される。よって、流体抵抗を大きく増大させずにより多くの流体を有機物分解フィルタに流通させることができるため、有機物の分解効率がより良好になる。また、たとえば電極主面の面積が大きい場合にも流体抵抗の増大を抑制することができる。
網目状構造を有する電極は、イオン交換層の流体と接触し得る部分の面積をより多くできる点、および、イオン交換層の内部に取り込まれてから電極表面に達するまでの流体の移動距離を一層短くできる点で特に有利である。
特に、流体の流路が、図1および図2の矢印A1,A2に示すように、イオン交換層および電極の主面に対して略垂直の方向に形成されることが好ましい。この場合、流体抵抗の低減効果を最も良好に得ることができる。矢印A1は、有機物分解フィルタ100を通過させる前の流体の流路、矢印A2は、有機物分解フィルタ100を通過させた後の流体の流路を示している。
網目状構造の好ましいサイズとしては、たとえば、網目のピッチが0.5〜5mm、線径が0.1〜1mm、厚みが0.1〜1mmのものが例示できる。
本発明においては、流体中の有機物を分解するための電荷を電極表面に供給できれば良く、電極とイオン交換層とが直接接していなくても良いが、電極とイオン交換層とが近接している方が電極間の導電性を高くでき好ましい。特に、電極がイオン交換層と接するように形成される場合、電極間の導電性が一層向上するため、ラジカルを発生させるための電極間への印加電圧を低減するとともに、電極表面により効率的に電荷を供給することができ、有機物分解を促進できる点で好ましい。
なお、電極とイオン交換層とが接しない態様としては、たとえば、電極とイオン交換層との間に、シリコーン等の絶縁材料からなるスペーサを設ける態様を例示できる。この場合、電極とイオン交換層との距離を固定できるという利点が得られる。
電極が網目状構造を有する場合、陽極と陰極とは、主面に対して垂直の方向において網目状構造のパターンが重ならない位置関係となるように配置されることが好ましい。これにより、該主面に対して略垂直の方向に流体を流通させる場合に、流体の流通方向からみたときの陽極および陰極の重なり部分を低減でき、陽極および陰極に対してより効率良く流体を接触させることができる。
より典型的には、網目状構造のパターンが陽極と陰極とで同一であり、主面に対して垂直の方向において該パターンが重ならない相対的位置関係となるように陽極および陰極が配置されることが好ましい。
網目状構造のパターンとしては種々の多角形や円を採用し得るが、平面内に隙間なくパターン形成できる点で、三角形、四角形および六角形はパターンの形状として好ましい。
図3は、電極が網目状構造を有する場合の、陽極と陰極との好ましい相対的な位置関係について説明する模式図である。図3においては、網目状構造が四角形のパターンによって形成される場合について示している。流体は紙面に対して垂直な方向に流通するものとする。なお図3においては、陽極12と陰極13との相対的な位置関係を説明し易くするために図示していないが、陽極12と陰極13との間にはイオン交換層が存在するものとする。
本発明においては、たとえば図3に示すように、陽極12,陰極13の網目状構造のパターンが同一となるように、網目の太さが陽極12と陰極13とで同一とされ、さらに、ピッチW1とピッチW3、ピッチW2とピッチW4、がそれぞれ同一とされ、該パターンが主面に対して垂直の方向において重ならないように配置されることが好ましい。
なお、主面に対して垂直の方向からみたときに、陽極12の網目の格子点が、陰極13の網目の孔領域の中央に位置するような配置が最も好ましい。この場合、最も効率的に流体を電極表面へ供給することができ、ラジカルと有機物との反応を促進することができる。
網目状構造を有する陽極および陰極としては、たとえば、線の太さが0.2mmで、網目のピッチが1mmである白金線を用いることができる。電極の材質としては、たとえば、チタンやSUSなどの、耐腐食性があり、導電性がある材質が好ましい。なお、より好ましくは、貴金属系材料、たとえば、白金、インジウム、ロジウム、パラジウム、ルテニウムが用いられる。この場合、電極の腐食が最小限に抑えられる。貴金属系以外の材料を用いる場合でも、メッキ等により前述の貴金属系材料で電極表面を被覆して同様の効果を得ることができる。
以下に、電極間に電圧を印加したときの電極表面近傍での反応について説明する。陽極表面近傍では、水酸化ラジカルまたは酸素ラジカルを発生させることが可能である。陽極表面近傍では、下記の式1に示す反応のように、水分子がイオン交換層のイオン交換基によってイオン化される。次に、式2に示す反応のように、生成した水酸化物イオンが陽極により引き寄せられ、陽極表面で電子を奪われて水酸化ラジカルが発生する。また、式3に示す反応のように、水酸化ラジカル同士が反応して、酸素ラジカルが発生する。
2O→H++OH- (式1)
HO-→HO・+e- (式2)
HO・+HO・→O・+H2O (式3)
また、限られた条件下ではあるが、印加電圧等の条件によっては、陰極側で水素ラジカルが生成され、式4に示すように、生成した水素ラジカルが水を還元し、水酸化ラジカルを発生することもある。
H・+H2O→HO・+2H2 (式4)
また、流体中に含まれる酸素、水素、窒素、二酸化炭素、塩素等の気体により、その他のラジカル等の活性種を生成することも可能である。すなわち、本発明のラジカル生成手段は、上記に記載されたラジカルの生成のみに限定されるものではない。
上記の反応で生成した水酸化ラジカルや酸素ラジカルを用いて、流体中の有機物を分解して浄化された水を得ることが可能である。水酸化ラジカルおよび酸素ラジカルは反応性に富み、強い酸化力を有するため、有機物を分解除去することが可能である。さらに、本発明では、特別な薬液を使用せずに、水の電気分解により、水酸化ラジカルまたは酸素ラジカルを生成させ、有機物を分解除去するため、フィルタで浄化した後の水を再利用することが容易である。
たとえば厚み方向の貫通孔を設けた形状の電極を用い、流体の流路を電極の主面に対して垂直な成分を含む方向とする場合には、流路において陰極よりも陽極が下流となるように流体を流通させることが好ましい。この場合、水の電気分解によって陽極表面近傍で生成した水酸化ラジカルまたは酸素ラジカルがイオン交換層表面で消費されることを防ぎ、イオン交換層の寿命が延びるとともに有機物の分解効率が特に良好となる。図1には、矢印A1,A2に従って、陰極13からイオン交換層11を経て陽極12に向かう方向に流体を流通させる態様を示している。
なお、陰極側の上記の式4の反応が主体となる場合には、水の流通方向を逆にし、陽極よりも陰極が下流になるように流体を流通させることが好ましい。
有機物分解フィルタに流体を流通させる手段としては、図示しないが、たとえば、電極に接続する形で絶縁性配管を設けて、ポンプ動力によって流体を流通させてもよい。また、水道の蛇口に有機物分解フィルタを接続して蛇口を開放し、重力によるエネルギーを利用して流体を流通させても良い。本発明は、イオン交換層が水透過性を有することによってイオン交換層内部にも流体を流通させることができることを特徴とし、流体の流通手段は限定されない。
他の好ましい実施形態についてさらに説明するが、以下の実施形態において第1実施形態と同様に考えることができる好ましい構成、作用等については説明を繰返さない。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。図4に示す有機物分解フィルタ200においては、水透過性を有するイオン交換層21を挟んで対向するように陽極22および陰極23が設けられ、陽極22および陰極23は、電極に電力を供給するための電力供給部24と電気的に接続され、電極間に電圧を印加できるように構成されている。
第1実施形態においては、電極の主面に対して略垂直の方向に流体を流通させる場合について主に説明したが、本発明においては、電極の主面に沿う方向に流体を流通させても良い。図4に示す構成の有機物分解フィルタは、流体の流路を紙面に対して垂直な方向として用いることができる。
陽極22,陰極23としては、たとえば厚み0.1〜2mm程度の、貫通孔を有しない平板等を好ましく使用できる。電極の材質としては、第1実施形態で前述したのと同様の材質を好ましく用いることができる。
本発明においてはイオン交換層の内部にも流体を流通させることができるため、図4のような構成において、電極の主面に平行な方向に流体を流通させる場合にも、電極とイオン交換層との隙間に加えてイオン交換層の内部をも流体の流路とすることができる。これにより、たとえば電極面積を増加させる目的で水の流通方向における電極長さを大きくした場合にも流体抵抗を低く維持でき、流体を流通させるための動力の低減が可能である。また、電極の裏側への流体の流通も効率良く行なうことができ、電極表面の全体に流体を効率良く供給して有機物を効率良く分解することができる。
なお、本実施形態のように電極の主面と平行の方向に流体を流通させる場合には、上述したような貫通孔を有しない平板を好ましく使用できるが、たとえば第1実施形態で例示したような厚み方向の貫通孔を設けた形状の電極を用いても構わない。
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。図5に示す有機物分解フィルタ300においては、水透過性を有するイオン交換層31を挟んで対向するように陽極32および陰極33が設けられ、陽極32および陰極33は、電極に電力を供給するための電力供給部34と電気的に接続され、電極間に電圧を印加できるように構成されている。図5に示す構成の有機物分解フィルタは、流体の流路を紙面に対して垂直な方向として用いることができる。
本発明において、電極がイオン交換層に接するように形成される場合、電極の主面のうちイオン交換層と接する側の面に凹凸形状が形成されることにより、電極とイオン交換層との間に間隙部が形成されることが好ましい。この場合、上記の凹凸形状の凸部において電極とイオン交換層とが接触していることによって電極間の導電性が良好であるとともに、該凹凸形状の凹部によって電極とイオン交換層との間に間隙部が形成されることによって、イオン交換層の内部と該間隙部とが流体の流路となり、電極とイオン交換層との間により多くの流体を流通させることができる。これにより、流体抵抗の低減効果と有機物の分解効率の向上効果とがより良好に得られる。
図5に示す構成においては、陽極32および陰極33のイオン交換層と接する側の面に凹凸形状が形成され、凹部によって間隙部35が形成されている。
凹凸形状としては、これに限定されるものではないが、たとえば図5に示すようなジグザグパターン等を好ましく例示できる。図5に示すようなジグザグパターンによれば、間隙部35が流体の流通方向(すなわち図5における紙面に対して垂直の方向)に貫通していることによって流路に障害物がなく、流体がたとえば層流で供給される場合にも、電極表面により多くの流体を供給できるため、有機物を効率良く分解できる。また電極表面に流体を供給するための動力を少なくできる点でも有利である。
たとえば図5の高さH1で表される凹凸形状の深さは、1〜5mmの範囲内とされることが好ましい。凹凸形状の深さが1mm以上である場合、より広い流路を形成できることによって流体抵抗の低減効果と有機物の分解効率とが良好となり、5mm以下である場合、電極を過度に厚くする必要がないためより低い印加電圧で効率良く有機物の分解を行なうことができる。
たとえば図5の幅D1で表される凹凸形状のパターンのピッチは、0.5〜2mmの範囲内とされることが好ましい。凹凸形状のピッチが0.5mm以上である場合、より広い流路を形成でき、2mm以下である場合、電極とイオン交換層との接触部位を多くできるため電極間の導電性が良好である。
また、図5に示すような凹凸形状を有する電極の厚みは、電極の機械的強度を良好に保てる厚みとすることが好ましく、凹部においてたとえば0.1〜5mmの範囲内とすることが好ましい。
なお凹凸形状を有する電極においても、電極の材質としては第1実施形態で前述したのと同様のものを好ましく用いることができる。
なお本実施形態では、電極に凹凸形状を設ける場合について説明したが、本発明においては、イオン交換層の主面の少なくともいずれかに凹凸形状を形成することにより、電極とイオン交換層との間に間隙部を形成しても良い。この場合も、電極に凹凸形状を設ける場合と同様に、流体抵抗の低減効果と有機物の分解効率の向上効果とがより良好に得られる。
本発明においては、凹凸形状をイオン交換層の主面のいずれかにのみ形成しても良いが、流体抵抗の低減効果と有機物の分解効率の向上効果とをより良好に得るためには、イオン交換層の両方の主面に凹凸形状を形成することが好ましい。
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。本発明においては、イオン交換層の主面の面積が陽極および陰極の各々の主面の面積よりも大きくされても良い。図6に示す有機物分解フィルタ400においては、イオン交換層41を挟んで対向するように、主面の面積が該イオン交換層41よりも小さくされた陽極42および陰極43が設けられ、陽極42および陰極43と電気的に接続された電力供給部44が設けられている。
イオン交換層の主面の面積を電極の主面の面積よりも大きくすることにより、たとえば図6の矢印で示されるように、イオン交換層が露出している部位に流体が直接接触するため、イオン交換層の側面のみならず、主面のうち電極と対向していない部分からもイオン交換層の内部に流体を流通させることができる。このようにして有機物を効率的にイオン交換層の内部に流通させることによって、電極表面により多くの流体を供給できる。また、イオン交換層が繊維状構造を有する場合には、毛細管現象によってイオン交換層の内部に流体を吸引できるため、さらに効率良く電極表面に流体を供給できる。
イオン交換層の主面の面積が陽極および陰極のそれぞれの主面の面積よりも大きい場合、陽極および陰極の形状は、たとえば厚み0.1〜2mm程度の、貫通孔を有する平板または貫通孔を有しない平板や、多孔質体等とすることができる。また、前述したような網目状構造を有する電極は特に好ましい。電極が厚み方向の貫通孔を有する場合には、イオン交換層の露出部が多くなってより多くの流体をイオン交換層の内部に流通させることができるとともに、イオン交換層の内部に取り込まれてから電極表面に達するまでの流体の移動距離を短くすることができるため、有機物とラジカルとをより効率良く反応させることができる。網目状構造を有する電極は、イオン交換層の流体と接触し得る部分の面積をより多くできる点、および、流体の上記移動距離を一層短くできる点で特に有利である。
電極の材質としては第1実施形態で前述したのと同様のものを好ましく用いることができる。
イオン交換層の材料としては、第1実施形態で前述したような材料を使用できるが、本実施形態においては、たとえば、ポリビニル系材料からなる繊維にスルホン酸基が付加されたイオン交換繊維を特に好ましく使用できる。ポリビニル系材料はそれ自体が親水性であり、イオン交換層内部により多くの流体を吸引することができるからである。
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。図7に示す有機物分解フィルタ500においては、1つの有機物分解フィルタ中にイオン交換層51,陽極52および陰極53を複数形成することによって、イオン交換層51と該イオン交換層51を挟んで対向する陽極52および陰極53とからなる構成が複数含まれるように多段配置されている。このような構成によれば、流体の流量を維持したままで、流体中の有機物に対するラジカルの合計暴露時間を増加させることができるため、ラジカルと反応する有機物の量が増加し、流体中の有機物をより効率的に分解することが可能となる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれていることが意図される。
本発明の有機物分解フィルタおよび有機物分解方法は、水を電気分解する方法を用いて効率的にラジカルを発生させて有機物を分解する有機物分解フィルタおよび有機物分解方法として有用である。
本発明の第1実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する斜視図である。 図1で示される陽極の一部を拡大した斜視図である。 電極が網目状構造を有する場合の、陽極と陰極との好ましい相対的な位置関係について説明する模式図である。 本発明の第2実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。 本発明の第3実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。 本発明の第4実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。 本発明の第5実施形態に係る有機物分解フィルタの構成について説明する図である。
符号の説明
11,21,31,41,51 イオン交換層、12,22,32,42,52 陽極、13,23,33,43,53 陰極、14,24,34,44 電力供給部、35 間隙部、100,200,300,400,500 有機物分解フィルタ。

Claims (14)

  1. 水透過性を有するイオン交換層と、前記イオン交換層を挟んで対向する陽極および陰極からなる電極と、前記電極に電力を供給するための電力供給部と、を備える、有機物分解フィルタ。
  2. 前記イオン交換層は繊維状構造を有する、請求項1に記載の有機物分解フィルタ。
  3. 前記電極が厚み方向の貫通孔を設けた形状を有することにより、有機物と水とを含む流体を流通させるための流路が、前記電極の主面に対して垂直な成分を含む方向に少なくとも形成されてなる、請求項1または2に記載の有機物分解フィルタ。
  4. 前記流路が、前記主面に対して略垂直の方向に形成されてなる、請求項3に記載の有機物分解フィルタ。
  5. 前記電極は網目状構造を有し、
    前記網目状構造のパターンが前記陽極と前記陰極とで同一であり、
    前記陽極と前記陰極とは、前記主面に対して垂直の方向において前記パターンが重ならない位置関係となるように配置される、請求項3または4に記載の有機物分解フィルタ。
  6. 前記イオン交換層の主面の面積が前記陽極および前記陰極の各々の主面の面積よりも大きい、請求項1または2に記載の有機物分解フィルタ。
  7. 前記電極が前記イオン交換層に接するように形成されてなる、請求項1〜6のいずれかに記載の有機物分解フィルタ。
  8. 前記電極の主面のうち前記イオン交換層と接する側の面に凹凸形状が形成されることにより、前記電極と前記イオン交換層との間に間隙部が形成されてなる、請求項7に記載の有機物分解フィルタ。
  9. 前記イオン交換層の主面の少なくともいずれかに凹凸形状が形成されることにより、前記電極と前記イオン交換層との間に間隙部が形成されてなる、請求項7または8に記載の有機物分解フィルタ。
  10. 請求項1に記載の有機物分解フィルタを用い、
    有機物と水とを含む流体を、少なくとも前記イオン交換層の内部および前記電極の表面に流通させることにより前記電極の表面上で前記有機物を分解する、有機物分解方法。
  11. 前記イオン交換層が繊維状構造を有し、
    前記流体を、前記陽極および前記陰極のうちの一方から前記イオン交換層内部への拡散浸透を経て前記陽極および前記陰極のうちの他方に流通させることにより、前記他方の電極の表面上で前記有機物を分解する、請求項10に記載の有機物分解方法。
  12. 前記電極が厚み方向の貫通孔を設けた形状を有することにより、前記流体を流通させるための流路が、前記電極の主面に対して垂直な成分を含む方向に少なくとも形成され、
    前記流路において前記陰極よりも前記陽極が下流となるように前記流体を流通させる、
    請求項10に記載の有機物分解方法。
  13. 前記流路が、前記主面に対して略垂直の方向に形成されてなる、請求項12に記載の有機物分解方法。
  14. 前記電極は網目状構造を有し、
    前記網目状構造のパターンが前記陽極と前記陰極とで同一であり、
    前記陽極と前記陰極とは、前記主面に対して垂直の方向において前記パターンが重ならない位置関係となるように配置される、請求項12または13に記載の有機物分解方法。
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