JP2008226327A - 光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 4種の光記録媒体に対する記録・再生に適用可能であって、しかも回折効率が高く、かつ光学性能をさらに高めた光学素子及びその光学素子を用いた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 等方性材料の第1部材11aと、入射偏光方向によって屈折率が異なる第2部材11bと、等方性材料の第3部材11cとが順に積層され、第1部材11aと第2部材11bの境界に設けられた第1回折部11dと、第3部材11cに設けられた第2回折部11eとによって、光学素子11を構成する。その光学素子11を単一の対物レンズの前に配置し、かつその光学素子11の入射光の偏光方向を切り換えることにより、4種の光記録媒体に対応する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、複数の光記録媒体に対して記録又は再生を行う光ピックアップ装置に用いられる光学素子であって、1つの対物レンズで4種類の光記録媒体に対する記録又は再生を行うことを可能にする光学素子及びその光学素子を用いた光ピックアップ装置に関する。
一般的に、円盤状の光ディスクやカード状の光カードなどの光記録媒体は、映像情報、音声情報、あるいはコンピュータデータなどの情報信号を透明基板上の螺旋状又は同心円状に形成されたトラックに高密度に記録できること、及び記録済みのトラックを再生する際に所望のトラックを高速にアクセスできることから、多用されている。
この種の光記録媒体となる光ディスクとして、例えばCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などは既に市販され、最近では、より一層高密度化を図った2種類の高密度光記録媒体、すなわちBD(Blu−ray Disc)及びHD−DVD(High Definition DVD)が流通している。
まず、上記したCDには、波長が785nm前後のレーザ光を開口数(以下「NA」という)が0.45程度の対物レンズで絞って得たレーザビームが照射され、レーザビーム入射面から1.2mm(基板厚さ)隔てられた位置にある信号面に情報信号が記録され、記録された情報信号が再生される。
また、上記したDVDには、波長が650nm前後のレーザ光をNAが0.6から0.65程度の対物レンズで絞って得たレーザビームが照射され、レーザビーム入射面から0.6mm(基板厚さ)隔てられた位置にある信号面に情報信号が記録され、記録された情報信号が再生される。この際、DVDの記録容量はCDよりも6〜8倍高められており、ディスク基板の直径が12cmのDVDでは、片面で4.7GB(ギガバイト)程度である。
また、上記したBDには、波長が405nm前後のレーザ光をNAが0.85程度の対物レンズで絞って得たレーザビームが照射され、レーザビーム入射面から0.1mm(基板厚さ)隔てられた位置にある信号面に情報信号が記録され、記録された情報信号が再生される。この際、BDの記録容量はDVDよりも5倍高められており、ディスク基板の直径が12cmのBDでは、片面で25GB(ギガバイト)程度である。
また、上記したHD−DVDには、波長が405nm前後のレーザ光をNAが0.65程度の対物レンズで絞って得たレーザビームが照射され、レーザビーム入射面から0.6mm(基板厚さ)隔てられた位置にある信号面に情報信号が記録され、記録された情報信号が再生される。この際、HD−DVDの記録容量はDVDよりも3倍高められており、ディスク基板の直径が12cmのHD−DVDでは、片面で15GB(ギガバイト)程度である。
上述した4種類の光記録媒体に対して1つの光ピックアップを用いて、記録又は再生を行う光ピックアップ装置が特許文献1に示されている。
図17は特許文献1に示された光ピックアップ装置100の一例を示した図であり、図18は光ピックアップ装置100に使われる偏光選択性回折格子107の一例を示した図である。以下図17及び18を参照して従来の光ピックアップ装置を説明する。
光ピックアップ装置100は、特許文献1に開示されている1つの対物レンズで4種類の光記録媒体に対する記録又は再生を行う光ピックアップ装置であり、図18に示した偏光選択性収差補正素子107は光ピックアップ装置100に必要不可欠な重要部品である。
図17には、光記録媒体となる光ディスクとして、第1光記録媒体(BD)110a、第2光記録媒体(HD−DVD)110b、第3光記録媒体(DVD)110c、第4光記録媒体(CD)110dが示されている。記録又は再生時にはいずれかの光記録媒体1種のみが図示しない回転機構にセットされ、駆動回転される。
まず、第1光記録媒体(BD)110aに対する記録又は再生を行う場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射された直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光面切換素子103で偏光方向が90°回転され、ハーフミラー104、トリクロイックプリズム115を透過し、偏向プリズム105で光路が90°偏向され、ゲストホスト型液晶開口制限素子106aと、偏光選択性収差補正素子107を不感帯透過し、対物レンズ109に入射し、第1光記録媒体(BD)110a上に微小スポットとして集光され、情報の記録又は再生が行われる。
次に、第2光記録媒体(HD−DVD)110bに対する記録又は再生を行う場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射された直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光面切換素子103では偏光面を回転せずにそのまま通過し、ハーフミラー104、トリクロイックプリズム115を透過し、偏向プリズム105で光路が90°偏向され、ゲストホスト型液晶開口制限素子106aでNAが0.65に制限され、偏光選択性収差補正素子107において所定の球面収差が付加され、対物レンズ109に入射し、第2光記録媒体(HD−DVD)110b上に微小スポットとして集光され、情報の記録又は再生が行われる。
次に、第3光記録媒体(DVD)110cに対する記録又は再生を行う場合について説明する。ホログラムユニット201の半導体レーザ201aから出射された波長660nmの光束は、ホログラム201bを透過し、コリメートレンズ202で所定の有限系の光束とされ、ダイクロイックプリズム204を透過し、トリクロイックプリズム115によって偏向プリズム105の方向に反射され、偏向プリズム105によって光路が90°偏向され、ゲストホスト型液晶開口制限素子106aでNAが0.65に制限され、偏光選択性収差補正素子107において所定の球面収差が付加され、対物レンズ109に入射し、第3光記録媒体(DVD)110c上に微小スポットとして集光され、情報の記録又は再生が行われる。
次に、第4光記録媒体(CD)110dに対する記録又は再生を行う場合について説明する。ホログラムユニット211の半導体レーザ211aから出射された波長785nmの光束は、ホログラム211bを透過し、コリメートレンズ212で所定の有限系の光束とされ、ダイクロイックプリズム204で反射し、トリクロイックプリズム115によって偏向プリズム105の方向に反射され、偏向プリズム105によって光路が90°偏向され、ゲストホスト型液晶開口制限素子106aでNAが0.5に制限され、偏光選択性収差補正素子107において所定の球面収差が付加され、対物レンズ109に入射し、第4光記録媒体(CD)110d上に微小スポットとして集光され、情報の記録又は再生が行われる。
次に、重要部品である偏光選択性収差補正素子107について簡略に説明する。図18(a)と図18(b)に示した偏光選択性収差補正素子107は、等方性媒質133と複屈折媒質134と、これらを挟むようにして配置されたガラス130とからなる。複屈折媒質134は図18(a)に示すように鋸歯状に形成されたものが円心部から円周に向けて、同心円に多数形成された形状となっている。等方性媒質133はこの複屈折媒質134と相補的な形状であり、複屈折媒質134の鋸歯状に形成された面に密着している。
第1光記録媒体(BD)110aと第2光記録媒体(HD−DVD)110bは基板厚さが異なるため、NAが0.85で基板厚さが0.1mmの第1光記録媒体(BD)110aに対して無限系の光束で波面収差が最小となる対物レンズ109を使い、NAが0.65で基板厚さが0.6mmの第2光記録媒体(HD−DVD)110bに無限系の光束で記録又は再生をしようとしても、球面収差が発生し、情報の記録又は再生が困難となる。第3光記録媒体(DVD)110c及び第4光記録媒体(CD)110dについても無限系の光束で記録又は再生をしようとしても同様に球面収差が発生し、情報の記録又は再生が困難となる。
次に、この偏光選択性収差補正素子107を利用した収差補正方法について説明する。偏光選択性収差補正素子107の複屈折媒質134は入射される光束の偏光方向によって、常光線に対する屈折率noと、異常光線に対する屈折率neをもつ。波長405nmに対する複屈折媒質134の屈折率をno_405及びne_405とする。また、波長405nmに対する等方性媒質133の屈折率n1_405と複屈折媒質134の異常光線に対する屈折率ne_405は等しく設定してある。
第1光記録媒体(BD)110aに対する記録又は再生を行う場合は、偏光選択性収差補正素子107への入射光束の偏光方向を異常光線の偏光方向と等しくする。すると、等方性媒質133の屈折率n1_405と複屈折媒質134の異常光線に対する屈折率ne_405が同じであるため、波長405nmの光束は何の影響も受けずに透過する。すなわち、第1光記録媒体(BD)110aに対して、偏光選択性収差補正素子107は不感帯となっている。
第2光記録媒体(HD−DVD)110bに対する記録又は再生を行う場合は、偏光選択性収差補正素子107への入射光束の偏光方向は第1光記録媒体(BD)110aの時の偏光方向と直交する方向(常光線の偏光方向)に偏光された光束とする。その光束が入射されると、等方性媒質133の屈折率n1_405と複屈折媒質134の常光線に対する屈折率no_405とが異なっているので、偏光選択性収差補正素子107の等方性媒質133と複屈折媒質134の境界面の形状によって回折が起きて光束の進行経路が変わり、球面収差を補正することができる。
第3光記録媒体(DVD)110cに対する記録又は再生を行う場合は、波長660nmに対する等方性媒質133の屈折率n1_660と複屈折媒質134の異常光線に対する屈折率ne_660を等しくしているので、等方性媒質133の屈折率n1_660と波長660nmに対する複屈折媒質134の屈折率no_660は異なるものとなる。すなわち、波長660nmの光束に対しては等方性媒質133と複屈折媒質134で互いに異なる屈折率となるため、偏光選択性収差補正素子107の等方性媒質133と複屈折媒質134の境界面の形状によって回折が起きて、球面収差を補正することができる。またこの時、球面収差補正をより満足なものとするため有限系の光学系を使用している。
第4光記録媒体(CD)110dに対する記録又は再生を行う場合も、第3光記録媒体(DVD)110cの場合と同様に球面収差を補正することができる。
特開2006−12391号公報
ところで、従来の光ピックアップ装置100が各光記録媒体に対する記録又は再生を行う場合の偏光選択性収差補正素子107の光学性能、すなわち回折効率やレンズシフトによる収差特性などが、特許文献1には開示されていない。本願発明の発明者が解析したところ、回折次数の選択次第ですべての光記録媒体について回折効率を高くすることができるが、この場合、収差補正を行うと、光記録媒体によっては、倍率の高い有限系の光束でなければ情報の記録又は再生ができないことがある。しかし、有限系の倍率を高くすると、レンズシフトによる収差特性などの光学性能が厳しくなる問題がある。一方、すべての光記録媒体に対し倍率の低い有限系あるいは無限系の光束を用いる場合には、偏光選択性収差補正素子として回折効率が低いものを用いなければ情報の記録又は再生を実現できないことが確認された。
本発明は、この点を考慮してなされたものであり、BD、HD−DVD、DVD、及びCDの4種全ての光記録媒体に対する記録・再生に適用可能であって、しかも回折効率が高く、かつ光学性能をさらに高めた光学素子及びその光学素子を用いた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、複数の光記録媒体に対する記録又は再生を行う光ピックアップ装置に用いられる光学素子であって、等方性材料からなる第1部材(11a)と、入射光の偏光方向によって屈折率が異なる第2部材(11b)と、等方性材料からなる第3部材(11c)とが順に積層され、前記第1部材と第2部材の境界に第1回折部(11d)が設けられ、前記第3部材に第2回折部(11e)が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学素子であって、異なる3種類の波長λi(i=1〜3)を有する3種類のレーザ光に対応可能な光学素子であり、前記波長λiはそれぞれ、400≦λ1≦416(nm)、650≦λ2≦670(nm)、及び770≦λ3≦800(nm)なる関係を満たし、前記波長λiにおける前記第3部材(11c)の屈折率をnciとし、前記第2回折部(11e)の階段状段差の1段当たりの深さをdcとするとき、次の2式を共に満たすことを特徴とする:
(nc1−1)・dc/λ1≒k1
(nc3−1)・dc/λ3≒k3
ただし、k1及びk3は共に整数で且つk1>k3。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学素子であって、前記波長λiにおける前記第1部材(11a)の屈折率をnaiとし、前記波長λiにおける前記第2部材(11b)の第1直線偏光(P)に対する屈折率をngiとし、前記波長λiにおける前記第2部材(11b)の前記第1直線偏光(P)と直交する第2直線偏光(S)に対する屈折率をnoiとし、前記第1回折部(11d)の全体の深さをdaとするとき、次の4式を共に満たすことを特徴とする:
(ng1−na1)・da/λ1≒0
(ng2−na2)・da/λ2≒0
(no1−na1)・da/λ1≒mo1
(no3−na3)・da/λ3≒mo3
ただし、mo1=2j,mo3=j、jは1以上の整数。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光学素子であって、前記波長λiにおける前記第1部材(11a)の屈折率をnaiとし、前記波長λiにおける前記第2部材(11b)の第1直線偏光(P)に対する屈折率をngiとし、前記波長λiにおける前記第2部材(11b)の前記第1直線偏光(P)と直交する第2直線偏光(S)に対する屈折率をnoiとし、前記第1回折部(11d)の全体の深さをdaとするとき、次の4式を共に満たすことを特徴とする:
(ng1−na1)・da/λ1≒0
(ng2−na2)・da/λ2≒0
(no1−na1)・da/λ1≒mo1
(no3−na3)・da/λ3≒mo3
ただし、mo1=3j,mo3=2j、jは1以上の整数。
請求項5に記載の発明は、複数の光記録媒体に対する記録又は再生を行う光ピックアップ装置において、第1基板厚さを有する第1光記録媒体(BD)と、前記第1基板厚さよりも厚い第2基板厚さを有する第2光記録媒体(HD−DVD)とに対して選択的に記録又は再生を行うために、第1波長の第1レーザ光を出射する第1レーザ光源と、前記第2基板厚さと略同等の基板厚さである第3基板厚さを有する第3光記録媒体(DVD)に対して選択的に記録又は再生を行うために、前記第1波長よりも長い第2波長の第2レーザ光を出射する第2レーザ光源と、前記第2基板厚さよりも厚い第4基板厚さを有する第4光記録媒体(CD)に対して選択的に記録又は再生を行うために、前記第2波長よりも長い第3波長の第3レーザ光を出射する第3レーザ光源と、前記第1光記録媒体(BD)に対する記録又は再生を行う際に最適に設計されている対物レンズと、前記対物レンズの前に配置され、球面収差を補正するための光学素子とを備え、前記第1光記録媒体(BD)及び前記第3光記録媒体(DVD)に対する記録又は再生を行う場合には、前記光学素子に対して、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を第1直線偏光(P)で入射させ、前記第2光記録媒体(HD−DVD)及び前記第4光記録媒体(CD)に対する記録又は再生を行う場合には、前記光学素子に対して、前記第1レーザ光及び前記第3レーザ光を前記第1直線偏光(P)と直交する第2直線偏光(S)で入射させ、前記光学素子は、等方性材料からなる第1部材(11a)と、入射光の偏光方向によって屈折率が異なる第2部材(11b)と、等方性材料からなる第3部材(11c)とが順に積層され、前記第1部材(11a)と第2部材(11b)の境界に第1回折部(11d)が設けられ、前記第3部材(11c)に第2回折部(11e)が設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光ピックアップ装置において、前記第1〜第3レーザ光源と前記光学素子との間に、偏光面を切り換えるための偏光面切換素子をさらに備え、前記第1光記録媒体(BD)及び前記第3光記録媒体(DVD)に対する記録又は再生を行う場合には、前記偏光面切換素子に入射された直線偏光を前記第1直線偏光(P)として出射し、前記第2光記録媒体(HD−DVD)及び前記第4光記録媒体(CD)に対する記録又は再生を行う湯合には、前記偏光面切換素子に入射された直線偏光を前記第2直線偏光(S)として出射するように前記偏光面切換素子を制御することを特徴とする。
請求項1、請求項2、請求項3、及び請求項4に記載の発明によれば、単一の対物レンズで、第1〜第4光記録媒体に対する記録又は再生を行う光ピックアップ装置に利用する光学素子であって、すべての光記録媒体で光学性能が良く、且つ回折効率が高い光学素子を提供することができる。
請求項5及び請求項6に記載の発明によれば、第1〜第3レーザ光源から出射される第1〜第3レーザ光が、球面収差を補正する光学素子、及び第1光記録媒体に対する記録又は再生を行う際に最適に設計されている対物レンズを介して第1〜第4光記録媒体の何れかに照射され、情報の記録又は再生が行われる。第1及び第3光記録媒体に対する記録又は再生を行う場合には、それぞれ第1及び第2レーザ光が第1直線偏光Pとして光学素子に入射され、第2及び第4光記録媒体に対する記録又は再生を行う場合には、それぞれ第1及び第3レーザ光が第1直線偏光Pと直交する第2直線偏光Sとして光学素子に入射される。これにより、光学素子において、各光記録媒体に適した球面収差補正が行われる。光学素子は、請求項1に記載された光学素子に相当するものであるので、第1〜第4光記録媒体のすべてに対して光学性能が良く、且つ回折効率が高い状態で記録又は再生を行うことができる。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の一実施形態にかかる光ピックアップ装置の全体構成を示すブロック図である。光ピックアップ装置1は、波長λ1=408nmの第1レーザ光L1により、第1光記録媒体信号面21bに情報信号を有する基板厚さt1(=0.1mm)の第1光記録媒体(以下「BD」という)21に対する記録又は再生を行う。BD21は、その信号面21bに情報信号が記録される。
また、光ピックアップ装置1は、上記した第1レーザ光L1により、基板厚さt2(=0.6mm)の第2光記録媒体(以下「HD−DVD」という)22に対する記録又は再生を行う。HD−DVD22は、その信号面22bに情報信号が記録される。
また、光ピックアップ装置1は、波長λ2=655nmの第2レーザ光L2により、基板厚さt3(=0.6mm)の第3光記録媒体(以下「DVD」という)23に対する記録又は再生を行う。DVD23は、その信号面23bに情報信号が記録される。
また、光ピックアップ装置1は、波長λ3=785nmの第3レーザ光L3により、基板厚さt4(=1.2mm)の第4光記録媒体(以下「CD」という)24に対する記録又は再生を行う。CD24は、その信号面24bに情報信号が記録される。
ここで、上記した光記録媒体となるBD21、HD−DVD22、DVD23、及びCD24は、信号面までの基板と補強板を貼り合せた合計厚さが約1.2mmである。
図1を用いて、光ピックアップ装置1を構成する光学部品について説明する。第1レーザ光源2は波長λ1=408nmの第1レーザ光L1を出射する。第1グレーティング3はBD21に対する記録又は再生を行う際のトラック位置を検出するために、第1レーザ光源2から射出された第1レーザ光L1を3つのビームに分割する。第1プリズム4は第1波長選択性誘電体多層膜4aを備え、この第1波長選択性誘電体多層膜4aによって波長λ1の第1レーザ光L1を透過させ、波長λ2の第2レーザ光L2を反射する。
ハーフミラー5は、誘電体多層膜5aを備え、波長λ1及びλ2の第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2に対して、それぞれ入射光の30%を透過させ、70%を反射する。第2プリズム6は第2波長選択性誘電体多層膜6aを備え、この第2波長選択性誘電体多層膜6aによって波長λ1及びλ2の第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を透過させ、波長λ3の第3レーザ光L3を反射する。コリメータレンズ7は、波長λ1、λ2、及びλ3の第1レーザ光L1、第2レーザ光L2、及び第3レーザ光L3を平行光、倍率の低い収束光、もしくは倍率の低い発散光とする。
偏光面切換素子8は、波長λ1の光に対してλ1/2板、波長λ2の光に対してλ2/2板、波長λ3の光に対してλ3/2板の作用を与える波長板である。以下、偏光面切換素子8を波長板8と記す。図2(a)、(b)、及び(c)は波長板8とそれによる偏光面切換方法を説明するための図である。図2(a)は波長板8の初期状態(実線部)と45°方向回転させたときの状態(破線部)を示している。図2(b)及び(c)はそれぞれ図2(a)の初期状態(状態A)及び45°方向回転させたときの状態(状態B)をz(光軸)方向から見た図である。図2(a)及び(b)に示すように、状態Aでは、波長板8の光学軸がy軸に平行に配置される。y軸は光軸(z軸)と垂直な方向である。入射光の波長板8への入射偏光方向がy軸と平行なときは、入射光はy軸と平行な状態の偏光方向のまま出射する。波長板8を45°方向回転させた場合(状態B:図2(c))において、入射光の波長板8への入射偏光方向がy軸と平行なときは、入射光は偏光方向が90°回転し、x軸と平行な状態の偏光方向で出射する。
立上ミラー9は、反射膜9aを備え、波長λ1、λ2、及びλ3の第1レーザ光L1、第2レーザ光L2、及び第3レーザ光L3を反射する。開口制限素子10は、波長選択性誘電体多層膜(図示せず)を備え、HD−DVD22に対して、NAを0.65、DVD23に対してNAを0.6、CD24に対してNAを0.45に制限する。
光学素子11は各光記録媒体に対応して球面収差を補正するためのものであり、詳細は後述する。対物レンズ12は、第1レーザ光L1をBD21の信号面21b、またはHD−DVD22の信号面22bに集光するとともに、第2レーザ光L2及び第3レーザ光L3をそれぞれDVD23の信号面23b、CD24の信号面24bに集光する。なお、対物レンズ12の第1レーザ光源2側の第1面12aと各光記録媒体側の第2面12bは共に非球面形状に形成されている。
検出レンズ13はハーフミラー5側の面がシリンドリカル面に形成され、反対側の面が凹状の球面に形成されている。光検出器14は、BD21、HD−DVD22、又はDVD23の各情報記録面に記録された各情報の読取信号を得る。
第2レーザ光源15は波長λ2=655nmの第2レーザ光L2を出射する。第2グレーティング16はDVD23に対する記録又は再生を行う際のトラック位置を検出するために、第2レーザ光源15から射出された第2レーザ光L2を3つのビームに分割する。
ホログラムデバイス17はCD24に対する記録又は再生を行うためのものであり、第3レーザ光源17a、受光部17b、第3グレーティング17c、及びホログラム17dからなる。第3レーザ光源17aは波長λ3=785nmの第3レーザ光L3を出射する。受光部17bはCD24の信号面24bに記録された各情報の読取信号を得るものであって、ホログラム17dはCD24の信号面24bからの戻り光を受光部17bへ導くための素子である。第3グレーティング17cは、CD24の信号面24bに対する記録又は再生を行う際のトラック位置を検出するために、第3レーザ光源17aから射出された第3レーザ光L3を3つのビームに分割する。
表1は、第1レーザ光L1によりBD21に対する記録又は再生を行うように無限共役で最適設計した対物レンズ12の仕様を示している。
Figure 2008226327
次に、対物レンズ12の第1面12a及び第2面12bを非球面に形成する際、下記の式(1)の多項式を用いて非球面形状を表すものとする。
Figure 2008226327
この式(1)で、Zは対物レンズ12の第1面12a又は第2面12bの頂点からの距離、Cは各面の曲率(曲率:半径分の1)、hは対物レンズの光軸からの距離、Kはコーニック定数、Nは多項式係数の数、A2iは次数2i(i:2以上の整数)の非球面係数である。
上記式(1)の多項式を用いた時に、対物レンズ12の第1面12aを非球面に形成するための非球面係数A4〜A16の一例(N=7)を下記の表2に示す。
Figure 2008226327
また、上記式(1)の多項式を用いた時に、対物レンズ12の第2面12bを非球面に形成するための非球面係数A4〜A14の一例(N=6)を下記の表3に示す。
Figure 2008226327
図3は、光学素子11の断面図である。まず、第1レーザ光源2側について説明する。等方性材料からなる第1部材11aと、偏光方向によって屈折率が異なるように作用する複屈折材料からなる第2部材11bと、等方性材料からなる第3部材11cとがこの順序で積層されている。第1部材11aと第2部材11bの境界には第1部材11aで形成されるブレーズ状の第1回折部11dが設けられている。第1部材11aには例えば、合成石英が用いられる。また、第3部材11cの対物レンズ12側の面には第2回折部11eが階段状に形成されている。第3部材11cにも例えば、合成石英が用いられる。
光学素子11の第1回折部11d、及び第2回折部11eの回折構造は下記の式(2)の多項式を用いて回折面形状を表すものとする。下記の式(2)に示した位相関数Φ(h)により、第1回折部11d、及び第2回折部11eの光軸からの距離hにおける位相差が求まり、半径方向の回折面形状が決定する。
Figure 2008226327
ここで、Nは多項式係数の数、B2iは次数2iの位相関数係数、hは光学素子11の光軸からの距離である。
式(2)の多項式を用いた時に、第1回折部11dの回折面形状を形成するための位相関数係数B2〜B10の一例(N=5)を下記の表4に示す。
Figure 2008226327
なお、第1回折部11dの回折面の次数は、波長λ1=408nmに対しては2次、波長λ3=785nmに対しては1次が使用される。表4は波長λ1=408nm使用時の回折次数が2次での値である。
上記式(2)の多項式を用いた時に、第2回折部11eの回折面形状を形成するための位相関数係数B2〜B8の一例(N=4)を下記の表5に示す。
Figure 2008226327
なお、第2回折部11eの回折面の次数は、波長λ1=408nmに対して2次(整数倍の位相差で見かけ回折作用なし)、波長λ2=655nmに対して1次、波長λ3=785nm(整数倍の位相差で見かけ回折作用なし)に対して1次が使用される。表5は波長λ1=408nm使用時の回折次数が1次での値である。
また、第2回折部11eは、回折面の他、屈折面も同時に形成されている。表6はこの屈折面を上記式(1)の多項式を用いて非球面形状を表したものである。ここでは、非球面係数A4〜A8の一例(N=3)が示されている。
Figure 2008226327
それぞれ計算で得られた回折面及び屈折面を足し合わせて、図3に示す階段状の形状が得られる。
下記表7は各光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の光学素子11と対物レンズ12の各光学面関係を示している。ここで、面間隔(物体距離)で使われる∞記号は入射光が平行光であることを示し、−の記号が付されたものは収束光であることを示している。
Figure 2008226327
BD21及びDVD23の場合は、光学素子11に対する物体距離が∞であるため、光学素子11への入射光は平行光である。HD−DVD22の場合は、光学素子11に対する物体距離が−170mmなので、光学素子11への入射光は収束光であり、CD24の場合は、光学素子11に対する物体距離が24.5mmなので、光学素子11への入射光は発散光である。なお、表7の光ディスク/面間隔の欄のBDが0.1ではなく0.0875となっているのは、記録層が2層のBD21について、2層の中間の厚さ0.0875mmに基板厚さを設定することで、2層のそれぞれの記録層に対して緩い有限光とすることができるためである。このとき、基板厚さ0.1mmのBD21に対しては、入射光を800mmの緩い発散光とすることで最適な特性が得られる。
下記表8は使用されるレーザ光の波長λi(i=1〜3)にそれぞれ対応する、光学素子11の第1部材11a、第2部材11b、及び第3部材11cの屈折率を示している。naiが第1部材11aの屈折率を表し、nciが第3部材11cの屈折率を表している。また、複屈折材料の第2部材11bは常光線と異常光線で屈折率が異り、noiが第2部材11bの常光線に対する屈折率を表し、ngiが異常光線に対する屈折率を表している。
Figure 2008226327
下記表9は第1回折部11d及び第2回折部11eにおける理論的な回折効率を示している。第1回折部11dはブレーズ状に形成され、第2回折部11eは多段の階段状に形成されている。
Figure 2008226327
まず、第1回折部11dの深さdaについて説明する。波長λiの入射光が第2直線偏光Sであって、第1回折部11dの深さda(ブレーズ状の全体の深さ)が下記式(3)を満たすとき、波長λiに対して回折効率の理論値が100%となる。
Figure 2008226327
ここで、moiは整数である。
また、波長λiに対して入射光線が第1直線偏光P、上記式(3)の第1回折部11dの深さda(ブレーズ状の全体の深さ)であって、下記式(4)がmgiの値が略「0」で成り立つとき、第1直線偏光Pの波長λiに対しても回折効率の理論値が100%となる。
Figure 2008226327
まず、HD−DVD22の場合、第1レーザ光L1(λ1=408nm)が光学素子11に第2直線偏光Sで入射され、回折次数は2次を使用するため、パラメータmo1=2である。さらに、第2部材11bの常光線に対する屈折率no1=1.7、第1部材11aの屈折率na1=1.4693、及び波長λ1=408nmを上記式(3)に代入すると、第1回折部11dの深さda=3.537μmとなる。このとき、波長λ1=408nm(HD−DVD22)での回折効率が100%となる。CD24の場合は、第3レーザ光L3(λ3=785nm)が光学素子11に第2直線偏光Sで入射されるので、パラメータmo3=1(回折次数が1次)のとき、HD−DVD22のときと同様に、no3=1.684、na3=1.4536、λ3=785nmを上記式(3)に代入すると、深さda=3.407μmとなる。波長λ1で算出した深さda=3.537μmとほぼ等しい値となる。よって、第1回折部11dの深さda=3.537μmのとき、CD24においても、1次回折光の回折効率は略100%となる。
一方、BD21の場合は、光学素子11に入射される第1レーザ光L1(λ=408nm)の偏光方向は第1直線偏光Pであって、複屈折材料の第2部材11bの異常光線に対する屈折率ng1と等方性材料(合成石英)の第1部材11aの屈折率na1とを等しくしてあるため、回折作用は生じない。このときのパラメータmg1は、上記式(4)で屈折率ng1と屈折率na1の差が「0」、すなわちmg1=0となり、BD21では回折効率が100%となる。また、DVD23についても、光学素子11に入射される第2レーザ光L2(λ=655nm)の偏光方向は第1直線偏光Pであって、複屈折材料の第2部材11bの異常光線に対する屈折率ng2と等方性材料(合成石英)の第1部材11aの屈折率na2が略等しくなっている。第1回折部11dの深さda=3.537μm、ng2=1.458、na2=1.4564、及びλ2=655nmを上記式(4)に代入し、パラメータmg2を求めると、mg2=0.00864となり、パラメータmg2は略「0」とみなすことができる。そして、DVD23でも、回折効率は略100%となる。
次に、第2回折部11eの深さdcについて説明する。第2回折部11eは段数がq段の階段状に形成されている。そして、階段状の1段当たりの深さdcが下記式(5)を満たすとき、ki次の回折光の波面が揃うため、波長λiに対して見かけ上、回折作用のない光となり、回折効率の理論値が100%となる。
Figure 2008226327
ここで、kiは整数である。
第2回折部11eの1段当たりの深さdcを波長λ1の2倍の位相差が付与されるように決めて、波長λ1=408nmに対しては2次光(k1=2)で見かけ上、回折作用が生じないようにする。k1=2、nc1=1.4693、及びλ1=408nmを上記式(5)に代入すると、dc=1.739μmとなり、BD21及びHD−DVD22の場合は見かけ上、回折作用のない2次回折効率が100%となる。
第2回折部11eの1段当たりの深さdc=1.739μmのとき、DVD23の場合、波長λ2=655nmに対して略0.65倍の位相差が付与された1次回折光が生じ、1次回折効率は86%となる。また、CD24の場合、上記式(5)に波長λ3=785nm、nc3=1.4536、及びk3=1を代入し、第2回折部の1段当たりの深さdcを計算すると、dc=1.731μmとなり、波長λ1で算出した深さdc=1.739μmとほぼ等しい値となる。よって、第2回折部の1段当たりの深さdc=1.739μmのとき、CD24では、見かけ1次光の回折光によって波長λ3=785nmの略1倍の位相差が付与され、波長λ3=785nmに対しては回折作用がほとんど生じないことになり、CD24での1次回折効率も略100%となる。
図4は光学素子11の機能を示している。BD21に対する記録又は再生を行う場合の入射偏光方向を第1直線偏光Pとする。第1直線偏光Pは図2に示したy軸に平行な偏光方向である。第1直線偏光Pに対して直交する直線偏光を第2直線偏光Sとして表す。すなわち、第2直線偏光Sは図2に示したx軸に平行な偏光方向である。本実施形態では、第1直線偏光Pの偏光方向と第2部材11bの異常光線に対する偏光方向が等しくなるように構成されている。
図5(a)及び(b)は、上記した仕様の対物レンズ12と光学素子11を組合せた場合におけるBD21に対応する縦収差及び正弦条件を示したものである。図5(a)に示す縦収差及び図5(b)に示す正弦条件は、良好なものになっている。
BD21に対する記録又は再生を行う場合には、光学素子11の入射光は、第1直線偏光Pとされる。第1部材11aと第2部材11bには屈折率差Δnがない(Δn=0)ので、第1回折部11dでは回折作用が生じない。そして、上記したように第2回折部11eの1段当たりの深さdcが、波長λ1=408nmの整数倍の位相差を付与するように設定されているので、第2回折部11eでも見かけ上、回折作用が生じない。よって、BD21の場合には、光学素子11が何ら作用しないので、対物レンズ12単体で縦収差や正弦条件が決まる。
図6(a)及び(b)は、上記した仕様の対物レンズ12と光学素子11を組合せた場合におけるHD−DVD22に対する縦収差及び正弦条件を示したものである。図6(a)に示す縦収差は良好なものになっており、図6(b)に示す正弦条件は光ピックアップ装置が正常に動作する意味においてはシステムとして成立し得るレベルになっている。
HD−DVD22に対する記録又は再生を行う場合には、光学素子11の入射光は、第2直線偏光Sとされる。第1部材11aと第2部材11bには屈折率差Δnが生じる(Δn≠0)ので、第1回折部11dで回折作用が生じ、本実施形態では2次光が用いられる。そして、上記したように第2回折部11eの1段当たりの深さdcが、波長λ1=408nmに対しても整数倍の位相差相当になるので、第2回折部11eでは見かけ上、回折作用は生じない。よって、HD−DVD22の場合には、光学素子11の第1回折部11dと対物レンズ12の組合せで縦収差や正弦条件が決まる。
図7(a)及び(b)は、上記した仕様の対物レンズ12と光学素子11を組合せた場合におけるDVD23に対応する縦収差及び正弦条件を示したものである。図7(a)の縦収差及び図7(b)の正弦条件は、ほぼ良好なものになっている。
DVD23に対する記録又は再生を行う場合には、光学素子11の入射光は、第1直線偏光Pとされる。第1部材11aと第2部材11bには、ほとんど屈折率差がない(Δn≒0)ので、第1回折部11dでの回折作用はほとんどない。そして、上記したように第2回折部11eの1段当たりの深さdcが、波長λ2=655nmに対しては0.65倍の位相差相当になるので、第2回折部11eでは回折作用が生じ、本実施形態では1次光が用いられる。よって、DVD23の場合には、光学素子11の第2回折部11eと対物レンズ12の組合せで縦収差や正弦条件が決まる。
図8(a)及び(b)は、上記した仕様の対物レンズ12と光学素子11を組合せた場合におけるCD24に対応する縦収差及び正弦条件を示したものである。図8(a)に示す縦収差及び図8(b)に示す正弦条件は、ほぼ良好なものになっている。
CD24に対する記録又は再生を行う場合には、光学素子11の入射光は、第2直線偏光Sとされる。第1部材11aと第2部材11bには屈折率差Δnが生じる(Δn≠0)ので、第1回折部11dで回折作用が生じ、本実施形態では1次光が用いられる。そして、上記したように第2回折部11eの1段当たりの深さdcが、波長λ3=785nmに対しては略整数倍の位相差相当になるので、第2回折部11eでは見かけ上、回折作用は生じない。よって、CD24の場合には、光学素子11の第1回折部11dと対物レンズ12の組合せで縦収差や正弦条件が決まる。
再び、図1に戻って各光記録媒体に記録又は再生を行う場合の光学系について説明する。
まず、基板厚さt1=0.1mmのBD21の信号面21bに対する記録又は再生を行う場合について説明する。第1レーザ光源2から出射された第1レーザ光L1は第1直線偏光Pの発散光であり、第1グレーティング3を通って、トラッキング信号を検出するために所定の分岐比で3つのビームに分割される。ここでは、メイン信号を得るためのメインビームについてのみ説明する。第1グレーティング3を通って得られるメインビームは、第1プリズム4の第1波長選択性誘電体多層膜4aを透過し、ハーフミラー5で70%が反射され、反射された第1レーザ光L1は第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aを透過し、コリメータレンズ7で800mmの緩い発散光となり、初期状態である状態A(図2(b)参照)の波長板8では偏光方向の影響を受けずに透過する。その後、第1レーザ光L1の緩い発散光は、立上ミラー9の反射膜9aにより90°方向を転じて、開口制限素子10を透過し、光学素子11に入射する。
第1レーザ光L1は、光学素子11の第2部材11bの異常光線に対する偏光方向と同じ第1直線偏光Pで光学素子11に入射する。よって、第1部材11aと第2部材11bの屈折率が等しい状態にあるので、第1回折部11dで回折は生じない。また、第2回折部11eはλ1=408nmの2倍の位相差相当となるので、第2回折部11eにおいても2次光により見かけ上の、回折は生じない。よって、光学素子11での回折効率理論値は100%×100%=100%となる。
光学素子11を透過した第1レーザ光L1の緩い発散光が、対物レンズ12の第1面12aに入射される。NAが0.85の対物レンズ12で絞られた第1レーザ光L1はBD21のビーム入射面21aから入射し、信号面21b上で収差が良好な状態で集光し、情報の記録又は再生が行われる。
そして、BD21の信号面21bで反射された第1レーザ光L1による戻りの反射光は対物レンズ12に再入射し、対物レンズ12により緩い収束光となり、光学素子11に入射する。往路と同様に第2回折部11eで回折が生じず、反射光も往路と同様に第1直線偏光Pであるため、第1回折部11dでも回折は生じない。
その後、開口制限素子10を透過した後に、第1レーザ光L1の緩い収束光は立上ミラー9で90°光線方向を転じ、波長板8で偏光方向の影響を受けずに透過し、コリメータレンズ7により収束光となり、第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aを透過して、ハーフミラー5に入射する。ハーフミラー5を透過した30%の第1レーザ光L1が検出レンズ13で絞られて、光検出器14に入射する。光検出器14は、BD21の信号面21bを再生したときのトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、及びメインデータ信号を検出する。
次に、基板厚さt2=0.6mmのHD−DVD22の信号面22bに対する記録又は再生を行う場合について説明する。第1レーザ光源2から出射された第1レーザ光L1は第1直線偏光Pの発散光であり、第1グレーティング3を通って、トラッキング信号を検出するために所定の分岐比で3つのビームに分割される。ここでは、メイン信号を得るためのメインビームについてのみ説明する。第1グレーティング3を通って得られるメインビームは、第1プリズム4の第1波長選択性誘電体多層膜4aを透過し、ハーフミラー5で70%が反射され、反射された第1レーザ光L1は第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aを透過し、コリメータレンズ7で−170mmの収束光となる。コリメータレンズ7を透過した収束光は、45°方向に回転された状態B(図2(c)参照)の波長板8で偏光方向が90°回転した第2直線偏光Sとなる。その後、第1レーザ光L1の平行光は立上ミラー9の反射膜9aにより、90°方向を転じて、開口制限素子10でNAが0.65に制限されて透過し、光学素子11に入射する。
第1レーザ光L1は、光学素子11の第2部材11bの常光線に対する偏光方向と同じ第2直線偏光Sで光学素子11に入射する。よって、第1部材11aと第2部材11bには屈折率差が生じ、入射光は第1回折部11dで回折し、2次光が使用される。また、第2回折部11eはλ1=408nmの2倍の位相差相当なので、第2回折部11eでは2次光によって見かけ回折作用は生じない。第1回折部11dは波長λ1=408nmに対して、2次回折効率が100%となる(表9参照)ので、光学素子11での回折効率理論値は100%×100%=100%となる。
第1レーザ光L1が光学素子11で回折してさらに収束光となり、対物レンズ12の第1面12aに入射する。NAが0.65の対物レンズ12で絞られた第1レーザ光L1はHD−DVD22のビーム入射面22aから入射し、信号面22b上で収差が良好な状態で集光し、情報の記録又は再生が行われる。
そして、HD−DVD22の信号面22bで反射された第1レーザ光L1による戻りの反射光は対物レンズ12に再入射し、対物レンズ12によって発散光となり、光学素子11に入射する。往路と同様に第2回折部11eで見かけ回折は生じず、反射光も往路と同様に第2直線偏光Sであるため、第1回折部11dで回折が生じて発散光となる。
その後、開口制限素子10を通過した後に、第1レーザ光L1の発散光は立上ミラー9で90°光線方向を転じ、波長板8で偏光方向が往路とは反対方向に90°回転して第1直線偏光Pとなり、コリメータレンズ7により収束光となり、第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aを透過して、ハーフミラー5に入射する。ハーフミラー5を透過した30%の第1レーザ光L1が検出レンズ13で絞られて、光検出器14に入射する。光検出器14は、HD−DVD22の信号面22bを再生したときのトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、及びメインデータ信号を検出する。
次に、基板厚さt3=0.6mmのDVD23の信号面23bに対する記録又は再生を行う場合について説明する。第2レーザ光源15から出射された第2レーザ光L2は第1直線偏光Pの発散光であり、第2グレーティング16を通って、トラッキング信号を検出するために所定の分岐比で3つのビームに分割される。ここでは、メイン信号を得るためのメインビームについてのみ説明する。第2グレーティング16を通って得られるメインビームは、第1プリズム4の第1波長選択性誘電体多層膜4aで反射され、ハーフミラー5で70%が反射され、反射された第2レーザ光L2は第2プリズム6の第2波長選択制誘電体多層膜6aを透過し、コリメータレンズ7で平行光となる。コリメータレンズ7を透過した平行光は、初期状態である状態A(図2(b)参照)の波長板8で偏光方向の影響は受けずに透過する。その後、第2レーザ光L2の平行光は立上ミラー9の反射膜9aにより90°方向を転じて、開口制限素子10でNAが0.6に制限されて透過し、光学素子11に入射する。
第2レーザ光L2は、光学素子11の第2部材11bの異常光線に対する偏光方向と同じ第1直線偏光Pで入射する。よって、第1部材11aと第2部材11bは屈折率が等しい状態のため、入射光は第1回折部11dでは回折しない。また、入射光は第2回折部11eで回折し、1次光が使用される。第2回折部11eは波長λ2=655nmに対して、1次回折効率が86%となる(表9参照)ので、光学素子11での回折効率理論値は100%×86%=86%となる。
第2レーザ光L2が光学素子11で回折して収束光となり、対物レンズ12の第1面12aに入射する。NAが0.6の対物レンズ12で絞られた第2レーザ光L2はDVD23のビーム入射面23aから入射し、信号面23b上で収差が良好な状態で集光し、情報の記録又は再生が行われる。
そして、DVD23の信号面23bで反射された第2レーザ光L2による戻りの反射光は対物レンズ12に再入射し、対物レンズ12によって発散光となり、光学素子11に入射する。往路と同様に第2回折部11eで回折が生じ、反射光も往路と同様に第1直線偏光Pであるため、第1回折部11dで回折が生じずに平行光となる。
その後、開口制限素子10を通過した後に、第2レーザ光L2の平行光は立上ミラー9で90°光線方向を転じ、波長板8で偏光方向の影響を受けずに透過し、コリメータレンズ7により収束光となり、第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aを透過し、ハーフミラー5に入射する。ハーフミラー5を透過した30%の第2レーザ光L2が検出レンズ13で絞られて、光検出器14に入射する。光検出器14は、DVD23の信号面23bを再生したときのトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、及びメインデータ信号を検出する。
次に、基板厚さt4=1.2mmのCD24の信号面24bに対する記録又は再生を行う場合について説明する。第3レーザ光源17aから出射された第3レーザ光L3は第1直線偏光Pの発散光であり、第3グレーティング17cを通って、トラッキング信号を検出するために所定の分岐比で3つのビームに分割される。ここでは、メイン信号を得るためのメインビームについてのみ説明する。第3グレーティング17cを通って得られるメインビームは、ホログラム17dを透過し、第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aで反射され、コリメータレンズ7で物体距離24.5mmの発散光となる。コリメータレンズ7を透過した発散光は、45°方向に回転した状態B(図2(c)参照)の波長板8で偏光方向が90°回転した第2直線偏光Sとなる。その後、第3レーザ光L3の発散光は立上ミラー9の反射膜9aにより、90°方向を転じて、開口制限素子10でNAが0.45に制限されて透過し、光学素子11に入射する。
第3レーザ光L3は、光学素子11の第2部材11bの常光線に対する偏光方向と同じ第2直線偏光Sで光学素子11に入射する。よって、第1部材11aと第2部材11bには屈折率差が生じ、第1回折部11dで回折作用が生じ、1次光が使用される。また、第2回折部11eは波長λ3=785nmの1倍の位相差相当なので、第2回折部11eでは1次光によって見かけ回折作用は生じない。第1回折部11dは波長λ3=785nmに対して、1次光の回折効率100%となる(表9参照)ので、光学素子11での回折効率理論値は100%×100%、=100%となる。
第3レーザ光L3が光学素子11で回折して緩い発散光となり、対物レンズ12の第1面12aに入射する。NAが0.45の対物レンズ12で絞られた第3レーザ光L3はCD24のビーム入射面24aから入射し、信号面24b上で収差が良好な状態で集光し、情報の記録又は再生が行われる。
そして、CD24の信号面24bで反射された第3レーザ光L3による戻りの反射光は対物レンズ12に再入射し、対物レンズ12により緩い収束光となり、光学素子11に入射する。往路と同様に第2回折部11eでは回折が生じず、反射光は往路と同様に第2直線偏光Sであるため、第1回折部11dでは回折が生じて、収束光となる。
その後、開口制限素子10を通過した後に、第3レーザ光L3の収束光は立上ミラー9で90°光線方向を転じ、波長板8で偏光方向の影響は受けずに第1直線偏光Pのまま、コリメータレンズ7により収束光となり、第2プリズム6の第2波長選択性誘電体多層膜6aで反射し、ホログラム17dに入射する。第3レーザ光L3は、ホログラム17dで光線方向が変えられ、受光部17bに入射する。受光部17bは、CD24の信号面24bを再生したときのトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、及びメインデータ信号を検出する。
ここで、第2回折部11eの1段当たりの深さdcはパラメータk1及びk3が共に整数になるように設計することで、波長λ1及びλ3のそれぞれに対してに見かけ上回折作用がないものとみなせるため、回折効率が100%となるので望ましい。しかしながら、パラメータk1及びk3が共に整数となる条件は難しいので、使用可能な特性が得られる条件及び望ましい特性が得られる条件を以下に説明する。
信号に必要な光の回折効率は、少なくとも不要光より高いことが必要である。これにより、不要光でフォーカスサーボがかかり、正常に動作しない状況が避けられる。不要光となる回折光は様々な次数で発生する可能性があるが、信号に必要な光が少なくとも50%以上であれば使用可能である。
一般にh方向の周期をΛとする薄い回折格子のk次回折効率ηkは下記式(6)で求められる。
Figure 2008226327
第2回折部11eは周期性を有するとは限らず、ほとんどの場合、周期Λ=1であるが、周期Λを有するとみなして回折効率ηkを求めてもほぼ同じ結果となる。例えば、周期性を有すると仮定した場合、位相関数φ(h)は、0≦h<Λ/5のとき次の式で表される。
φ(h)=2・π・dc・(1−nc1)/λ1
φ(h)=2・π・dc・(1−nc3)/λ3
また、Λ/5≦h<2・Λ/5のとき次の式で表される。
φ(h)=2・π・dc・(3・(1−nc1)/4+1/4)/λ1
φ(h)=2・π・dc・(3・(1−nc3)/4+1/4)/λ3
位相関数φ(h)は波長λ1及びλ3と、第2回折部11eの1段当たりの深さdcと、回折面の硝材の屈折率nc1及びnc3とで決まる関数であり、上記式(4)から求められるパラメータkと階段状段数qにより回折効率が一義的に決まることになる。
図9には階段状段数qに対して、回折効率ηkが50%以上となるパラメータkの範囲が斜線部で示されている。なお、INT(k)はパラメータkの整数部分を表している。図9より、回折効率が50%以上となるパラメータkの範囲は下記式(7)で表すことができる。
Figure 2008226327
上記式(7)で表されるパラメータkの範囲を値k1及びk3が共に満たすことが必要である。回折効率が50%以上であれば、光ピックアップ装置が正常に動作するという意味においてシステム上は成立するものの、BD21、HD−DVD22、又はDVD23に対する記録を行うためには、光の復路でも50%以上の光量を確保する必要から、回折効率は70%以上が望ましい。
図10には階段状段数qに対して、回折効率ηkが70%以上となるパラメータkの範囲が斜線部で示されている。図10より、回折効率が70%以上となるパラメータkの範囲は下記式(8)で表すことができる。
Figure 2008226327
上記式(8)で表されるパラメータkの範囲をk1及びk3が共に満たすことが光記録媒体に対する記録を行うためには望ましいが、単に再生のみを行う光ディスクのための光ピックアップ装置では、再生のみを行うとき使用される波長に対応するパラメータk(k1もしくはk3)は上記式(7)を満たせば良い。なお、光記録媒体に高倍速記録を行う場合には、回折効率は90%以上が望ましい。
図11には階段状段数qに対して、回折効率ηkが90%以上となるパラメータkの範囲が斜線部で示されている。図11より、回折効率が90%以上となるパラメータkの範囲は下記式(9)で表すことができる。
Figure 2008226327
なお、λ1<λ3であるから、上記式(5)より、k1>k3となる。さらに、レーザ光源の波長は一定の範囲が許容されており、BD21やHD−DVD22に対する記録又は再生を行う場合、使用する波長λ1は400nm≦λ1≦416nmの範囲の値であり、DVD23に対する記録又は再生を行う場合、使用する波長λ2は650nm≦λ2≦670nmの範囲の値であり、CD24に対する記録又は再生を行う場合、使用する波長λ3は770nm≦λ3≦800nmの範囲の値であり、この値のとき、前記条件を満たすものである。
また、第1回折部11dの全体の深さdaについては、mo1=2、mo3=1、mg1=0、mg2=0になるように設定できれば、回折効率が100%となるので望ましい。しかしながら、これらについても整数となる条件は難しい。第2回折部11eの場合と同様に考えることができるが、第1回折部11dはブレーズ状に形成されているため、階段状段数qに相当するものはなく、パラメータmo1、mo3、mg1若しくはmg2の値のみで決まる。
図12はパラメータmo1の値に対する回折効率を示している。パラメータmo1の値を略「2」とすると、第2回折部11eの場合と同様に、回折効率が50%以上となるためのパラメータmo1の範囲は、1.557≦|mo1|≦2.443となる。また、回折効率が70%以上となるための範囲は、1.676≦|mo1|≦2.324となる。また、回折効率が90%以上となるための範囲は、1.822≦|mo1|≦2.178となる。
図13はパラメータmo3の値に対する回折効率を示している。パラメータmo3の値を略「1」とすると、回折効率が50%以上となるためのパラメータmo3の範囲は、0.557≦|mo3|≦1.443となる。また、回折効率が70%以上となるための範囲は、0.676≦|mo3|≦1.324となる。また、回折効率が90%以上となるための範囲は、0.822≦|mo3|≦1.178となる。
なお、パラメータmo1とmo3の組合せは、mo1=2とmo3=1の他、それぞれを同じ整数倍にした、mo1=4とmo3=2の組合せ、mo1=6とmo3=3の組合せ等でも良い。すなわちmo1=2j,mo3=j(jは1以上の整数)としても良い。例えば、パラメータmo1の値が略「6」のとき、回折効率50%以上となるためのパラメータmo1の範囲は、パラメータmo1の値を略「2」としたときの範囲の整数部分のみが変わった値、5.557≦|mo1|≦6.443となる。
図14はパラメータmgiの値に対する回折効率を示している。パラメータmg1及びmg2は共に略「0」であることが望ましいので、その範囲は同一条件となる。回折効率が50%以上となるためのパラメータmg1及びmg2の範囲は、0≦|mg1|≦0.445及び0≦|mg2|≦0.445となる。また、回折効率が70%以上となるための範囲は、0≦|mg1|≦0.325及び0≦|mg2|≦0.325となる。また、回折効率が90%以上となるための範囲は、0≦|mg1|≦0.179及び0≦|mg2|≦0.179となる。
なお、本実施形態でパラメータmo1の範囲を、絶対値|mo1|で表記して定めているのは、1次回折光(mo1=1)と−1次回折光(mo1=−1)は等価と考えることがあるためである。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
第2の実施形態では図1に示した光ピックアップ装置の構成、及び表1〜3及び7で示される対物レンズ12の形状は同一である。また、図3に示す光学素子11の部材の構成は同じであるが、HD−DVD22及びCD24で作用する第1回折部11dのみが第1の実施形態とは異なる。
第1回折部11dの回折面の次数は、波長λ1=408nmに対しては3次(mo1=3)が使用され、波長λ3=785nmに対しては2次(mo3=2)が使用される。このとき、上記式(2)の多項式を用いて、第1回折部11dの回折面形状を形成するための位相関数係数B2〜B10の一例(N=5)を下記の表10に示す。なお、表10は波長λ1=408nm使用時の回折次数が3次での値である。
Figure 2008226327
DVD23の場合だけで作用する第2回折部11eについての回折面形状を形成するための非球面形状A及び位相関数係数Bは、第1の実施形態のものと同一であって、表5及び6に示したものである。表11は各光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の光学素子と対物レンズの各光学面関係を示している。
Figure 2008226327
HD−DVD22及びCD24に関して、面間隔の数値が、第2の実施形態の表11のものと第1の実施形態の表7のものとは異なるものになっている。つまり、使用される回折次数を変えることにより、物体距離や作動距離を変えることができる。第2の実施形態の場合、第1の実施形態よりも物体距離を長くとることができるので、レンズシフト特性に強い構成になっている。
下記の表12は第1回折部11d及び第2回折部11eにおける理論的な回折効率を示している。第1回折部11dはブレーズ状に形成され、第2回折部11eは多段の階段状に形成されている。
Figure 2008226327
表12に示すように、波長λ1=408nmで回折次数を3次、波長λ3=785nmで回折次数を2次とすると、波長λ3=785nmでは回折効率が低い(第1回折部11dのCDで50%)。この回折効率50%では、再生については問題ないものの高倍速記録には向かない。そこで、第1回折部の深さda=5.888μmにすると、波長λ1=408nmでの回折効率が69%となり、λ3=785nmでの回折効率が78%となり、回折効率のバランスをとることが可能になる。
各光ディスクに対する記録又は再生を行う場合の縦収差及び正弦条件は、BD21及びDVD23については、第1の実施形態と同じであって、図5及び図7に示すとおりである。HD−DVD22及びCD24については、それぞれ図15及び図16に示すとおり第1の実施形態とは異なっている。
図15(a)及び(b)は、上記仕様の対物レンズ12と光学素子11を組合せた場合におけるHD−DVD22に対応する縦収差及び正弦条件を示したものである。図15(a)に示す縦収差は良好なものになっており、図15(b)に示す正弦条件もほぼ良好なものになっている。
図16(a)及び(b)は、上記仕様の対物レンズ12と光学素子11を組合せた場合におけるCD24に対応する縦収差及び正弦条件を示したものである。図16(a)に示す縦収差及び図16(b)に示す正弦条件は、ほぼ良好なものになっている。
なお、パラメータmo1は略「3」であれば良く、回折効率が50%以上となるためのパラメータmo1の範囲は、2.557≦|mo1|≦3.443となる。また、回折効率が70%以上となるための範囲は、2.676≦|mo1|≦3.324となる。また、回折効率が90%以上となるための範囲は、2.822≦|mo1|≦3.178となる。パラメータmo3については略「2」であれば良く、回折効率が50%以上となるための範囲は、1.557≦|mo3|≦2.443となる。また、回折効率が70%以上となるための範囲は、1.676≦|mo3|≦2.324となる。また、回折効率が90%以上となるための範囲は、1.822≦|mo3|≦2.178となる。なお、使用する回折次数は本実施形態以外のものであっても良い。すなわち、mo1=3j,mo3=2j(jは1以上の整数)としても良い。
以上説明したように、本実施形態の光ピックアップ装置に用いる光学素子は、等方性材料からなる第1部材11aと、入射偏光方向によって屈折率が異なる第2部材11bと、等方性材料からなる第3部材11cとが順に積層され、第1部材11aと第2部材11bの境界に第1回折部11dが設けられ、第3部材11cには階段状の第2回折部11eが設けられている。この光学素子は、BD21に適用するレーザ光に対しては、第1回折部11d及び第2回折部11eがともに作用せず、HD−DVD22に適用するレーザ光に対しては、第2回折部11eは作用せず、第1回折部11dが作用した結果の回折光を出射し、DVD23に適用するレーザ光に対しては、第1回折部11dは作用せず、第2回折部11eが作用した結果の回折光を出射し、CD24に適用するレーザ光に対しては、第2回折部11eは作用せず、第1回折部11dが作用した結果の回折光を出射する。したがって、光記録媒体21〜24に対する記録又は再生を行う際に、すべての光記録媒体に対して、高い回折効率を得ることができ、且つ適切に球面収差を補正することができる。
本発明の一実施形態にかかる光ピックアップ装置の全体構成を示すブロック図である。 偏光面切換方法を説明するための図である。 光学素子の断面図である。 光学素子の機能を説明するための図である。 第1光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の縦収差及び正弦条件を示す図である。 第2光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の縦収差及び正弦条件を示す図である。 第3光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の縦収差及び正弦条件を示す図である。 第4光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の縦収差及び正弦条件を示す図である。 第2回折部の回折効率が50%以上になるパラメータkの小数部分の範囲を示す図である。 第2回折部の回折効率が70%以上になるパラメータkの小数部分の範囲を示す図である。 第2回折部の回折効率が90%以上になるパラメータkの小数部分の範囲を示す図である。 パラメータmo1に対する回折効率を示す図である。 パラメータmo3に対する回折効率を示す図である。 パラメータmgiに対する回折効率を示す図である。 第2の実施形態における第2光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の縦収差及び正弦条件を示す図である。 第2の実施形態における第4光記録媒体に対する記録又は再生を行う際の縦収差及び正弦条件を示す図である。 従来の光ピックアップ装置の全体構成の一例を示すブロック図である。 従来の光ピックアップ装置の偏光選択性回折格子の一例を説明するための図である。
符号の説明
1 光ピックアップ装置
2 第1レーザ光源
8 偏光面切換素子(1/2波長板)
11 光学素子
11a 第1部材(等方性材料)
11b 第2部材(複屈折材料)
11c 第3部材(等方性材料)
11d 第1回折部
11e 第2回折部
12 対物レンズ
15 第2レーザ光源
17a 第3レーザ光源
21 第1光記録媒体(BD)
22 第2光記録媒体(HD−DVD)
23 第3光記録媒体(DVD)
24 第4光記録媒体(CD)

Claims (6)

  1. 複数の光記録媒体に対する記録又は再生を行う光ピックアップ装置に用いられる光学素子であって、
    等方性材料からなる第1部材と、入射光の偏光方向によって屈折率が異なる第2部材と、等方性材料からなる第3部材とが順に積層され、前記第1部材と第2部材の境界に第1回折部が設けられ、
    前記第3部材に第2回折部が設けられていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記光学素子は、異なる3種類の波長λi(i=1〜3)を有する3種類のレーザ光に対応可能な光学素子であり、前記波長λiはそれぞれ、400≦λ1≦416(nm)、650≦λ2≦670(nm)、及び770≦λ3≦800(nm)なる関係を満たし、
    前記波長λiにおける前記第3部材の屈折率をnciとし、前記第2回折部の階段状段差の1段当たりの深さをdcとするとき、次の2式を共に満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学素子:
    (nc1−1)・dc/λ1≒k1
    (nc3−1)・dc/λ3≒k3
    ただし、k1及びk3は共に整数で且つk1>k3。
  3. 前記波長λiにおける前記第1部材の屈折率をnaiとし、前記波長λiにおける前記第2部材の第1直線偏光に対する屈折率をngiとし、前記波長λiにおける前記第2部材の前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光に対する屈折率をnoiとし、前記第1回折部の全体の深さをdaとするとき、次の4式を共に満たすことを特徴とする請求項2に記載の光学素子:
    (ng1−na1)・da/λ1≒0
    (ng2−na2)・da/λ2≒0
    (no1−na1)・da/λ1≒mo1
    (no3−na3)・da/λ3≒mo3
    ただし、mo1=2j,mo3=j、jは1以上の整数。
  4. 前記波長λiにおける前記第1部材の屈折率をnaiとし、前記波長λiにおける前記第2部材の第1直線偏光に対する屈折率をngiとし、前記波長λiにおける前記第2部材の前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光に対する屈折率をnoiとし、前記第1回折部の全体の深さをdaとするとき、次の4式を共に満たすことを特徴とする請求項2に記載の光学素子:
    (ng1−na1)・da/λ1≒0
    (ng2−na2)・da/λ2≒0
    (no1−na1)・da/λ1≒mo1
    (no3−na3)・da/λ3≒mo3
    ただし、mo1=3j,mo3=2j、jは1以上の整数。
  5. 複数の光記録媒体に対する記録又は再生を行う光ピックアップ装置において、
    第1基板厚さを有する第1光記録媒体と、前記第1基板厚さよりも厚い第2基板厚さを有する第2光記録媒体とに対して選択的に記録又は再生を行うために、第1波長の第1レーザ光を出射する第1レーザ光源と、
    前記第2基板厚さと略同等の基板厚さである第3基板厚さを有する第3光記録媒体に対して選択的に記録又は再生を行うために、前記第1波長よりも長い第2波長の第2レーザ光を出射する第2レーザ光源と、
    前記第2基板厚さよりも厚い第4基板厚さを有する第4光記録媒体に対して選択的に記録又は再生を行うために、前記第2波長よりも長い第3波長の第3レーザ光を出射する第3レーザ光源と、
    前記第1光記録媒体に対する記録又は再生を行う際に最適に設計されている対物レンズと、
    前記対物レンズの前に配置され、球面収差を補正するための光学素子とを備え、
    前記第1光記録媒体及び前記第3光記録媒体に対する記録又は再生を行う場合には、前記光学素子に対して、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を第1直線偏光で入射させ、
    前記第2光記録媒体及び前記第4光記録媒体に対する記録又は再生を行う場合には、前記光学素子に対して、前記第1レーザ光及び前記第3レーザ光を前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光で入射させ、
    前記光学素子は、等方性材料からなる第1部材と、入射光の偏光方向によって屈折率が異なる第2部材と、等方性材料からなる第3部材とが順に積層され、前記第1部材と第2部材の境界に第1回折部が設けられ、
    前記第3部材に第2回折部が設けられていることを特徴とする光ピックアップ装置。
  6. 前記第1〜第3レーザ光源と前記光学素子との間に、偏光面を切り換えるための偏光面切換素子をさらに備え、
    前記第1光記録媒体及び前記第3光記録媒体に対する記録又は再生を行う場合には、前記偏光面切換素子に入射された直線偏光を前記第1直線偏光として出射し、
    前記第2光記録媒体及び前記第4光記録媒体に対する記録又は再生を行う湯合には、前記偏光面切換素子に入射された直線偏光を前記第2直線偏光として出射するように前記偏光面切換素子を制御することを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
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